JP2013037982A - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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Takuji Tsujita
卓司 辻田
Yukihiro Morita
幸弘 森田
Iwao Ueno
巌 上野
Takahito Nakayama
貴仁 中山
Akinobu Iwamoto
章伸 岩本
Hideji Kawarasaki
秀司 河原崎
Yusuke Fukui
裕介 福井
Yayoi Okui
やよい 奥井
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Abstract

【課題】本発明は、高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のプラズマディスプレイパネルを実現する上で有用である。
【解決手段】本発明のプラズマディスプレイパネルは、表示電極対、誘電体層、および保護層を有した前面板と、背面板とを放電空間を形成して対向配置し、前記保護層は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含み、前記第1の金属酸化物は、酸化マグネシウムであり、前記第2の金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムの1種であり、前記保護層の前記放電空間側の前記第2の金属酸化物濃度は、前記保護層中の濃度よりも高く、前記放電空間に面した領域に少なくともゼオライトを含む気体吸着材を備えることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

ここに開示された技術は、表示デバイスなどに用いられるプラズマディスプレイパネルに関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、前面板と背面板とで構成される。前面板は、ガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成された表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。
保護層からの初期電子放出数を増加させるために、たとえば保護層のMgOに珪素(Si)やアルミニウム(Al)を添加するなどの試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−260535号公報
PDPの低消費電力化を進めるにあたっては、画像表示に要する放電電圧を低く保つことが求められる。本発明はこの目的を達成するものであって、低電圧駆動が可能なPDPを提供する。
本発明のPDPは、表示電極対、誘電体層、および保護層を有した前面板と、背面板とを放電空間を形成して対向配置し、前記保護層は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含み、前記第1の金属酸化物は、酸化マグネシウムであり、前記第2の金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムの1種であり、前記保護層の前記放電空間側の前記第2の金属酸化物濃度は、前記保護層中の濃度よりも高く、前記放電空間に面した領域に少なくともゼオライトを含む気体吸着材を備えることを特徴とする。
本発明によれば、低電圧駆動が可能なPDPを提供することができ、PDPの低消費電力化に貢献できる。
実施の形態にかかるPDPの構造を示す斜視図 実施の形態にかかる前面板の構成を示す断面図 実施の形態にかかるPDPの製造フローを示す図 第1の温度プロファイル例を示す図 第2の温度プロファイル例を示す図 第3の温度プロファイル例を示す図 実施の形態にかかる下地層表面のX線回折分析結果を示す図 実施の形態にかかる他の下地層表面のX線回折分析結果を示す図 実施の形態にかかる凝集粒子の拡大図 PDP下地層のカルシウム濃度の変化を示す図 PDP下地層膜厚方向のカルシウム濃度の変化を示す図 PDPライフ試験でのアドレス電圧の変化を示す図 PDPライフ試験でのアドレス電圧の変化を示す図
[1.PDP1の構造]
PDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPである。図1および図2に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる背面板10とが対向して配置されている。前面板2と背面板10とは、外周部がガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、ネオン(Ne)およびキセノン(Xe)などの放電ガスが53kPa(400Torr)〜80kPa(600Torr)の圧力で封入されている。
前面ガラス基板3上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6とブラックストライプ7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成される。さらに誘電体層8の表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成されている。なお、保護層9については、後に詳細に述べられる。
走査電極4および維持電極5は、それぞれインジウム錫酸化物(ITO)、酸化錫(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物からなる透明電極上にAgからなるバス電極が積層されている。
背面ガラス基板11上には、表示電極6と直交する方向に、銀(Ag)を主成分とする導電性材料からなる複数のデータ電極12が、互いに平行に配置されている。データ電極12は、下地誘電体層13に被覆されている。さらに、データ電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝には、データ電極12毎に、紫外線によって赤色に発光する蛍光体層15、緑色に発光する蛍光体層15および青色に発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。表示電極6とデータ電極12とが交差する位置に放電セルが形成されている。表示電極6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
なお、本実施の形態において、放電空間16に封入する放電ガスは、10体積%以上30体積%以下のXeを含む。
[2.PDP1の製造方法]
図3に示すように、本実施の形態にかかるPDP1の製造方法は、前面板作製工程A1、背面板作製工程B1、フリット塗布工程B2、封着工程C1、還元性ガス導入工程C2、排気工程C3および放電ガス供給工程C4を有する。
[2−1.前面板作製工程A1]
前面板作製工程A1においては、フォトリソグラフィ法によって、前面ガラス基板3上に、走査電極4および維持電極5とブラックストライプ7とが形成される。走査電極4および維持電極5は、導電性を確保するための銀(Ag)を含む金属バス電極4b、5bを有する。また、走査電極4および維持電極5は、透明電極4a、5aを有する。金属バス電極4bは、透明電極4aに積層される。金属バス電極5bは、透明電極5aに積層される。
透明電極4a、5aの材料には、透明度と電気伝導度を確保するためインジウム錫酸化物(ITO)などが用いられる。まず、スパッタ法などによって、ITO薄膜が前面ガラス基板3上に形成される。次にリソグラフィ法によって所定のパターンの透明電極4a、5aが形成される。
金属バス電極4b、5bの材料には、銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含む電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、電極ペーストが、前面ガラス基板3上に塗布される。次に、乾燥炉によって、電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、電極ペーストが露光される。
次に、電極ペーストが現像され、金属バス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、金属バス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、金属バス電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、金属バス電極パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融していたガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。以上の工程によって、金属バス電極4b、5bが形成される。ブラックストライプ7は、黒色顔料を含む材料により、形成される。
次に、誘電体層8が形成される。誘電体層8の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。まずダイコート法などによって、誘電体ペーストが所定の厚みで表示電極6を覆うように前面ガラス基板3上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融、再凝固する。以上の工程によって、誘電体層8が形成される。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法などを用いることができる。
そして保護層9が形成される。保護層9の詳細は、後述される。
以上の工程により前面ガラス基板3上に所定の構成部材を有する前面板2が完成する。
[2−2.背面板作製工程B1]
フォトリソグラフィ法によって、背面ガラス基板11上に、データ電極12が形成される。データ電極12の材料には、導電性を確保するための銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含むデータ電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、データ電極ペーストが所定の厚みで背面ガラス基板11上に塗布される。次に、乾燥炉によって、データ電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、データ電極ペーストが露光される。次に、データ電極ペーストが現像され、データ電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、データ電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、データ電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、データ電極パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融していたガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。以上の工程によって、データ電極12が形成される。ここで、データ電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法などを用いることができる。
次に、下地誘電体層13が形成される。下地誘電体層13の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む下地誘電体ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法などによって、下地誘電体ペーストが所定の厚みでデータ電極12が形成された背面ガラス基板11上にデータ電極12を覆うように塗布される。次に、乾燥炉によって、下地誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、下地誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、下地誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。溶融していた誘電体ガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。以上の工程によって、下地誘電体層13が形成される。ここで、下地誘電体ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、ダイコート法、スピンコート法などを用いることができる。また、下地誘電体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、下地誘電体層13となる膜を形成することもできる。
次に、フォトリソグラフィ法によって、隔壁14が形成される。隔壁14の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。まず、ダイコート法などによって、隔壁ペーストが所定の厚みで下地誘電体層13上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。つまり、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融していたガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。以上の工程によって、隔壁14が形成される。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法などを用いることができる。
次に、蛍光体層15が形成される。蛍光体層15の材料には、蛍光体粒子とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。まず、ディスペンス法などによって、蛍光体ペーストが所定の厚みで隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上および隔壁14の側面に塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。以上の工程によって、蛍光体層15が形成される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法などを用いることができる。
以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
[2−3.フリット塗布工程B2]
背面板作製工程B1により作製された背面板10の画像表示領域外に封着部材であるガラスフリットが塗布される。その後、ガラスフリットは、350℃程度の温度で仮焼成される。仮焼成によって、溶剤成分などが除去される。
封着部材としては、酸化ビスマスや酸化バナジウムを主成分としたフリットが望ましい。この酸化ビスマスを主成分とするフリットとしては、例えば、Bi23−B23−RO−MO系(ここでRは、Ba、Sr、Ca、Mgのいずれかであり、Mは、Cu、Sb、Feのいずれかである。)のガラス材料に、Al23、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。また、酸化バナジウムを主成分とするフリットとしては、例えば、V25−BaO−TeO−WO系のガラス材料に、Al23、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。
[2−4.封着工程C1から放電ガス供給工程C4まで]
前面板2とフリット塗布工程B2を経た背面板10とが対向配置されて周辺部が封着部材により封着される。その後、放電空間16に放電ガスが封入される。
本実施の形態にかかる封着工程C1、還元性ガス導入工程C2、排気工程C3、および放電ガス供給工程C4は、同一の装置において、図4から図6に例示された温度プロファイルの処理を行う。
図4から図6における封着温度とは、前面板2と背面板10とが封着部材であるフリットにより封着されるときの温度である。本実施の形態における封着温度は、例えば約490℃である。また、図4から図6における軟化点とは、封着部材であるフリットが軟化する温度である。本実施の形態における軟化点は、例えば約430℃である。さらに、図4から図6における排気温度とは、還元性有機ガスを含むガスが放電空間から排気されるときの温度である。本実施の形態における排気温度は、例えば約400℃である。
[2−4−1.第1の温度プロファイル]
図4に示すように、まず、封着工程C1において、温度は、室温から封着温度まで上昇する。次に、温度は、a−bの期間、封着温度に維持される。その後、温度は、b−cの期間に封着温度から排気温度に下降する。b−cの期間において、放電空間内が排気される。つまり、放電空間内は減圧状態になる。
次に、還元性ガス導入工程C2において、温度は、c−dの期間、排気温度に維持される。c−dの期間に放電空間内に還元性有機ガスを含むガスが導入される。c−dの期間に保護層9は、還元性有機ガスを含むガスに曝される。
その後、排気工程C3において、温度は所定の期間、排気温度に維持される。その後、温度は、室温程度まで下降する。d−eの期間において、放電空間内が排気されることにより、還元性有機ガスを含むガスが排出される。
次に、放電ガス供給工程C4において、放電空間内に放電ガスが導入される。つまり、温度が室温程度に下がったe以降の期間に放電ガスが導入される。
[2−4−2.第2の温度プロファイル]
図5に示すように、まず、封着工程C1において、温度は、室温から封着温度まで上昇する。次に、温度は、a−bの期間、封着温度に維持される。その後、温度はb−cの期間に封着温度から排気温度に下降する。温度が排気温度に維持されているc−d1の期間において、放電空間内が排気される。つまり、放電空間内は減圧状態になる。
次に、還元性ガス導入工程C2において、温度は、d1−d2の期間、排気温度に維持される。d1−d2の期間に放電空間内に還元性有機ガスを含むガスが導入される。d1−d2の期間に保護層9は、還元性有機ガスを含むガスに曝される。
その後、排気工程C3において、所定の期間、温度は排気温度に維持される。その後、温度は、室温程度まで下降する。d2−eの期間において、放電空間内が排気されることにより、還元性有機ガスを含むガスが排出される。
次に、放電ガス供給工程C4において、放電空間内に放電ガスが導入される。つまり、温度が室温程度に下がったe以降の期間に放電ガスが導入される。
[2−4−3.第3の温度プロファイル]
図6に示すように、まず、封着工程C1において、温度は、室温から封着温度まで上昇する。次に、温度は、a−b1−b2の期間、封着温度に維持される。a−b1の期間に放電空間内が排気される。つまり、放電空間内は減圧状態になる。その後、温度はb2−cの期間に封着温度から排気温度に下降する。
還元性ガス導入工程C2は、封着工程C1の期間内に行われる。温度は、b1−b2の期間、封着温度に維持される。その後、b2−cの期間に温度は、排気温度まで下降する。b1−b2の期間に放電空間内に還元性有機ガスを含むガスが導入される。b1−b2の期間に保護層9は、還元性有機ガスを含むガスに曝される。
その後、排気工程C3において、温度は、所定の期間排気温度に維持される。その後、温度は、室温程度まで下降する。c−eの期間において、放電空間内が排気されることにより、還元性有機ガスを含むガスが排出される。
次に、放電ガス供給工程C4において、放電空間内に放電ガスが導入される。つまり、温度が室温程度に下がったe以降の期間に放電ガスが導入される。
なお、いずれの温度プロファイルにおいてもほぼ同等の作用を有する。
[2−4−4.還元性有機ガスの詳細]
表1に示すように、還元性有機ガスとしては、分子量が58以下の還元力の大きいCH系有機ガスが望ましい。種々の還元性有機ガスの中から選ばれる少なくとも一つが希ガスや窒素ガスなどに混合されることにより、還元性有機ガスを含むガスが製造される。
Figure 2013037982
表1において、Cの列は、有機ガスの一分子に含まれる炭素原子数を意味する。Hの列は、有機ガスの一分子に含まれる水素原子数を意味する。
表1に示すように、蒸気圧の列において、0℃での蒸気圧が100kPa以上のガスには、「A」が付されている。さらに、0℃での蒸気圧が100kPaより小さいガスには、「C」が付されている。沸点の列において、1気圧での沸点が0℃以下のガスには、「A」が付されている。さらに、1気圧での沸点が0℃より大きいガスには、「C」が付されている。分解しやすさの列において、分解しやすいガスには、「A」が付されている。分解しやすさが普通のガスには、「B」が付されている。還元力の列において、還元力が十分であるガスには、「A」が付されている。
表1において、「A」は良い特性であることを意味する。「B」は普通の特性であることを意味する。「C」は不十分な特性であることを意味する。
PDPの製造工程における有機ガスの取扱い易さの観点から考えると、ガスボンベに入れて供給できる還元性有機ガスが望ましい。また、PDPの製造工程における取扱い易さから考えると、0℃での蒸気圧が100kPa以上の還元性有機ガス、または沸点が0℃以下の還元性有機ガス、または分子量が小さい還元性有機ガスが望ましい。
さらに、排気工程C3の後にも還元性有機ガスを含むガスの一部が放電空間内に残留する可能性がある。よって、還元性有機ガスは、分解しやすい特性を有することが望ましい。
還元性有機ガスは、製造工程上での取扱い易さや、分解しやすい特性などの点を考慮して、アセチレン、エチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、プロピレンおよびシクロプロパンの中から選ばれる酸素を含まない炭化水素系ガスが望ましい。
これらの還元性有機ガスの中から選ばれる少なくとも一種を希ガスや窒素ガスに混合して用いればよい。なお、希ガスや窒素ガスと還元性有機ガスの混合比率は、使用する還元性有機ガスの燃焼割合に応じて下限が決定される。上限は、数体積%程度である。還元性有機ガスの混合比率が高すぎると、有機成分が重合して高分子となりやすい。この場合、高分子が放電空間に残留し、PDPの特性に影響を与えてしまう。よって、使用する還元性有機ガスの成分に応じて、混合比率を適宜調整することが好ましい。
発明者等は還元性ガスの他の例として水素ガスを用いて同様の検討を行ったが、還元性有機ガスと同等の効果は得られなかった。
なお、MgO、CaO、SrO、およびBaOなどは、水、二酸化炭素、炭化水素などの不純物ガスとの反応性が高い。特に水、二酸化炭素と反応することにより放電特性が劣化しやすく、放電セル毎の放電特性にばらつきが発生しやすい。
そこで、封着工程C1において、放電空間16に開口する貫通孔を通して放電空間16内が陽圧状態となるように不活性ガスを流し、その後、封着を行うことが好ましい。下地層91と不純物ガスとの反応が抑制できるからである。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンなどが用いられ得る。
また、不活性ガスの代わりにドライ空気(乾燥ガス)を流してもよい。少なくとも水との反応が抑制できる上に、不活性ガスより製造コストが低減できるからである。
具体的には、図4から図6に示す封着工程C1において、温度が軟化点に達するxまでの期間において、例えば窒素ガスを2L/min程度の流量で流してもよい。放電空間16は、窒素ガスによって陽圧に保たれる。温度が軟化点を超えると、窒素ガスの供給が止められる。放電空間16は、窒素ガスによって陽圧に保たれたままである。温度は、a−bの期間、封着温度に維持される。放電空間16は、窒素ガスによって満たされている。その後、温度は、b−cの期間に封着温度から排気温度に下降する。b−cの期間において、放電空間16を満たしていた窒素ガスが排気される。つまり、放電空間内は減圧状態になる。以降の期間についての説明は、前述の説明と同様である。
[3.保護層9の詳細]
保護層9は、放電を発生させるための電荷を保持する機能、および、維持放電の際に二次電子を放出する機能が求められる。電荷保持性能が向上することにより、印加電圧が低減される。二次電子放出数が増加することにより、維持放電電圧が低減される。
[3−1.下地層91]
本実施の形態にかかる保護層9は、下地層91と凝集粒子92とを含む。下地層91は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含む。第1の金属酸化物はMgO、であって、第2の金属酸化物は、CaO、SrOおよびBaOからなる群の中から選ばれる1種である。さらに、下地層91は、X線回折分析において少なくとも一つのピークを有する。このピークは、第1金属酸化物のX線回折分析における第1のピークと、第2金属酸化物のX線回折分析における第2のピークとの間にある。第1のピークと第2のピークは、下地層91のピークが示す面方位と同じ面方位を示す。
図7において、横軸はブラッグの回折角(2θ)である。縦軸はX線回折波の強度である。回折角の単位は1周を360度とする度で示される。回折光の強度は任意単位(arbitrary unit)で示されている。結晶面方位は括弧付けで示されている。
図7に示すように、CaO単体における(111)面方位は、回折角32.2度のピークで示される。MgO単体における(111)面方位は、回折角36.9度のピークで示される。SrO単体における(111)面方位は、回折角30.0度のピークで示される。BaO単体における(111)面方位は、回折角27.9度のピークで示される。
本実施の形態にかかる下地層91は、MgOと、さらにCaO、SrOおよびBaOからなる群の中から選ばれる少なくとも2つ以上の金属酸化物を含んでいる。
図7に示すように、A点は、MgOとCaOの2つから形成された下地層91の(111)面方位におけるピークである。B点は、MgOとSrOの二つから形成された下地層91の(111)面方位におけるピークである。C点は、MgOとBaOの二つから形成された下地層91の(111)面方位におけるピークである。
図7に示すように、A点の回折角は36.1度である。A点は、第1の金属酸化物であるMgO単体における(111)面方位のピークと、第2の金属酸化物であるCaO単体における(111)面方位のピークとの間に存在する。
B点の回折角は35.7度である。B点は、第1の金属酸化物であるMgO単体における(111)面方位のピークと、第2の金属酸化物であるSrO単体における(111)面方位のピークとの間に存在する。
C点の回折角は35.4度である。C点は、第1の金属酸化物であるMgO単体における(111)面方位のピークと、第2の金属酸化物であるBaO単体における(111)面方位のピークとの間に存在する。
図8に示すように、D点は、MgO、CaOおよびSrOの3つから形成された下地層91の(111)面方位におけるピークである。E点は、MgO、CaOおよびBaOの3つから形成された下地層91の(111)面方位におけるピークである。F点は、BaO、CaOおよびSrOの3つから形成された下地層91の(111)面方位におけるピークである。
すなわち、D点は特定方位面としての(111)面方位において、単体の酸化物の最大回折角となるMgO単体の(111)面方位の回折角36.9度と、最小回折角となるSrO単体の(111)面方位の回折角30.0度との間である回折角33.4度にピークが存在している。同様に、E点、F点もそれぞれ最大回折角と最小回折角との間の32.8度、30.2度にピークが存在している。
なお、本実施の形態では、面方位(111)について例示された。しかし、他の面方位についても同様である。
CaO、SrOおよびBaOの真空準位からの深さは、MgOと比較して浅い領域に存在する。そのため、PDPを駆動する場合において、CaO、SrO、BaOのエネルギー準位に存在する電子がXeイオンの基底状態に遷移する際に、オージェ効果により放出される電子数が、MgOのエネルギー準位から遷移する場合と比較して多くなると考えられる。
また、上述のように、X線回折分析における下地層91のピークは、第1金属酸化物のピークと第2金属酸化物のピークとの間にある。すなわち、下地層91のエネルギー準位は、単体の金属酸化物の間に存在し、オージェ効果により放出される電子数がMgOのエネルギー準位から遷移する場合と比較して多くなると考えられる。
その結果、本実施の形態にかかる下地層91では、MgO単体と比較して、良好な二次電子放出特性を発揮することができる。結果として、維持電圧を低減できる。特に、輝度を高めるために放電ガスとしてのXe分圧を高めた場合に、放電電圧を低減できる。つまり、低電圧でなおかつ高輝度のPDP1が実現できる。
下地層91は一般的な、スパッタリング法、EB蒸着方法などの薄膜形成方法によって形成される。本実施の形態においては下地層91はEB蒸着法によって形成した。真空蒸着室にターゲットとなる蒸着源を配置し、そこに対し電子ビームを照射する。電子ビームのエネルギーによって、蒸着源の成分が蒸発し、搬入された基板上に成膜する。真空蒸着室の真空度、雰囲気ガス、電子ビームの照射強度等は適宜調整する。
本実施の形態における下地層91は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含む。第1の金属酸化物はMgO、であって、第2の金属酸化物は、CaO、SrOおよびBaOからなる群の中から選ばれる1種である。蒸着源としては所望の濃度となる成分で準備する。
例えばMgOおよびCaOからなる下地層91を形成する場合、MgO粉末とCaO粉末とを所定の濃度となるように混合し焼結によって、約2mm厚、直径5mm程度のペレット形状の蒸着源を大量に作製する。この蒸着源を用いて試験片上に成膜し、別途分析によって膜の組成を確認する。このようにして作製した蒸着源を用い、所望の濃度の下地層91を作製する。
スパッタリング法などにおいても同様に、所望の濃度となるターゲットを作製することによって、下地層91を形成する。
[3-2.凝集粒子92]
凝集粒子92は、金属酸化物であるMgOの結晶粒子92aが複数凝集したものである。凝集粒子92は、下地層91の全面に亘って、均一に分散配置させると好ましい。PDP1内における、放電電圧のばらつきが減少するからである。
なお、MgOの結晶粒子92aは、気相合成法または前駆体焼成法のいずれかによって、製造することができる。気相合成法では、まず、不活性ガスが満たされた雰囲気下で純度99.9%以上の金属マグネシウム材料が加熱される。さらに、雰囲気に酸素を少量導入することによって、金属マグネシウムが直接酸化する。このように、MgOの結晶粒子92aが作製される。
前駆体焼成法では、MgOの前駆体が700℃以上の高温で均一に焼成される。次に、徐冷することにより、MgOの結晶粒子92aが作製される。前駆体としては、例えば、マグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、シュウ酸マグネシウム(MgC24)の内のいずれか1種以上の化合物を選ぶことができる。なお選択した化合物によっては、通常、水和物の形態をとることもある。前駆体として、水和物を用いることもできる。前駆体である化合物は、焼成後に得られる酸化マグネシウム(MgO)の純度が99.95%以上、望ましくは99.98%以上になるように調整される。前駆体である化合物中に、各種アルカリ金属、B、Si、Fe、Alなどの不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結が生じる。その結果、高結晶性のMgOの結晶粒子が得にくくなる。よって、化合物から不純物元素を除去するなど、予め前駆体を調整することが好ましい。
上記いずれかの方法で得られたMgOの結晶粒子92aを、溶媒に分散させることにより分散液が作製される。次に、分散液がスプレー法やスクリーン印刷法、静電塗布法などによって下地層91の表面に塗布される。その後、乾燥・焼成工程を経て溶媒が除去される。以上の工程によって、MgOの結晶粒子92aが下地層91の表面に定着する。
[3−2−1.凝集粒子92の詳細]
凝集粒子92とは、所定の一次粒径の結晶粒子92aが凝集またはネッキングした状態のものである。すなわち、固体として大きな結合力を持って結合しているのではなく、静電気やファンデルワールス力などによって複数の一次粒子が集合体の体をなしているもので、超音波などの外的刺激により、その一部または全部が一次粒子の状態になる程度で結合しているものである。図9に示すように、凝集粒子92の粒径としては、約1μm程度のもので、結晶粒子92aとしては、14面体や12面体などの7面以上の面を持つ多面体形状を有するのが望ましい。
また、結晶粒子92aの一次粒子の粒径は、結晶粒子92aの生成条件によって制御できる。例えば、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムなどの前駆体を焼成して生成する場合、焼成温度や焼成雰囲気を制御することで粒径を制御できる。一般的に、焼成温度は700℃から1500℃の範囲で選択できる。焼成温度を比較的高い1000℃以上にすることで、粒径を0.3〜2μm程度に制御できる。さらに、前駆体を加熱することにより、生成過程において、複数個の一次粒子同士が凝集またはネッキングして凝集粒子92を得ることができる。
本発明者らの実験により、MgOの結晶粒子が複数凝集した凝集粒子92は、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果と、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果が確認されている。凝集粒子92は下地層91に比べて初期電子放出特性に優れる。よって、本実施の形態においては、凝集粒子92が放電パルス立ち上がり時に必要な初期電子供給部として配設されている。
「放電遅れ」は、放電開始時において、トリガーとなる初期電子が下地層91表面から放電空間16中に放出される量が不足することが主原因と考えられる。そこで、放電空間16に対する初期電子の安定供給に寄与するため、凝集粒子92を下地層91の表面に分散配置する。これによって、放電パルスの立ち上がり時に放電空間16中に電子が豊富に存在し、放電遅れの解消が図られる。したがって、このような初期電子放出特性により、PDP1が高精細の場合などにおいても放電応答性の良い高速駆動ができるようになっている。なお下地層91の表面に金属酸化物の凝集粒子92を配設する構成では、主として書込放電における「放電遅れ」を抑制する効果に加え、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果も得られる。
[4.下地層91の変化]
上述したように、本実施の形態にかかる保護層9は、下地層91と凝集粒子92とを含む。下地層91は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含む。第1の金属酸化物はMgO、であって、第2の金属酸化物は、CaO、SrOおよびBaOからなる群の中から選ばれる1種である。
発明者らの検討により、封着排気時において、上記保護層9を還元性有機ガスに曝すと、特に下地層91において次のような変化が生じることが判明した。
PDP1の下地層91の放電空間側の表面近傍の組成と、下地層91中(バルク)の組成とが異なり、第2の金属酸化物の濃度が、表面近傍において膜中よりも高くなることが判明した。
ここで下地層91のバルクとは、放電空間側表面から、200nm以上深い領域を示す。また上記の変化は凝集粒子92の有無に関わらず生じる。つまり凝集粒子92が存在しない場合、バルクとは保護層中となる。
図10に、本実施の形態にかかる保護層9の下地層91組成変化の測定結果を示す。ここで使用した試料は、MgOとCaOからなる下地層91である。MgO粉末とCaO粉末とを混合し焼結したペレットを用い、EB蒸着法により成膜した。
サンプル1は、上述の方法により形成した前面板をサンプルとした。濃度測定については下地層の領域について行った。
サンプル2は、サンプル1の前面板と、上述の方法で作製した背面板とを対向配置し、還元性有機ガスの導入を行わずに封着・排気工程を経て、PDPを作製したサンプルである。すなわち前面板と背面板とを対向配置するまでは本実施の形態と同じである。濃度測定は、サンプル2のPDPを割断して下地層の領域について行った。
そしてサンプル3は本実施の形態のPDPと同様の作製方法によって作製したサンプルである。サンプル2と同様に濃度測定はサンプル3のPDPを割断して、下地層の領域について行った。
なお、サンプル1−3については前面板形成まですべて同時に作製し、サンプル1の濃度が12atm%となるように蒸着源のCaO粉末の濃度を調整した。また、いずれのサンプルにおいても隣接放電セル間隙に相当する領域、つまり放電による影響を受けていない領域での測定を行った。
これらの測定結果を図10(a)に示す。Ca濃度は、アルバック・ファイ製の走査型X線光電子分光分析装置(PHI Quantera SXM 型)で測定し、CaとMgの割合、Ca/(Ca+Mg)[atm%]と定義した。なお、当該測定の誤差として±0.5atm%程度存在する。
また、表面のCa濃度は走査型X線光電子分光分析装置にてそのまま測定したもの、バルクのCa濃度は、上記サンプルを1keVのArイオンビームで200nm程度スパッタリングして、測定したものである。
サンプル1、サンプル2共に、下地層表面およびバルクそれぞれのCa濃度が一定であることがわかる。つまり従来技術と同様のPDPは、下地層のCa濃度は膜厚方向に一定であり、下地層成膜後の状態と変化がないことがわかる。
これに対し、本実施の形態にかかるPDP1であるサンプル3では、下地層表面のCa濃度が、下地層バルクの濃度よりも上昇していることがわかる。サンプル3においては1.4倍程度に高くなっていることが確認された(保護層9のバルクのCa濃度については、比較例及び本実施の形態にかかるPDP1の両方で、パネル化前の表面と同程度であることがわかる。)。
これは、本実施の形態にかかるPDP1では、封着・排気工程にて下地層91を含む保護層9が高温で還元性有機ガスに暴露され、Caが表面へ偏析したことを示していると考えられる。
同様にサンプル1−3とはCa濃度の異なるサンプル4−6を作製し、Ca濃度の測定を行った。サンプル4はサンプル1と、サンプル5はサンプル2と、サンプル6はサンプル3に対応している。つまりサンプル6が本実施の形態と同様のPDP1である。
サンプル4−6については前面板形成まですべて同時に作製し、サンプル4の濃度が6atm%となるように蒸着源のCaO粉末の濃度を調整した。また、いずれのサンプルにおいても隣接放電セル間隙に相当する領域、つまり放電による影響を受けていない領域での測定を行った。この測定結果を図10(b)に示した。サンプル6においては、サンプル3と同様に、下地層表面のCa濃度が、下地層バルクの濃度よりも上昇していることがわかる。サンプル6においては1.20倍程度に高くなっていることが確認された。
このようにサンプル3およびサンプル6の結果から、Ca成分の下地層91表面への偏析は、下地層91に含まれるCa濃度が高いほど、大きく現出することがわかる。
さらに、本実施の形態におけるPDP1の下地層91の深さ方向のCa濃度の分布を確認した。その結果を図11に示す。Ca濃度については、図10と同様の手法を用い、Ca/(Ca+Mg)[atm%]で示した。いずれのサンプルも下地層の膜厚は700nmである。
サンプルの名前は図10と同じ試料である。○印がサンプル3を示し、△印がサンプル6を示している。サンプル3およびサンプル6から、本実施の形態におけるPDP1では、下地層91のCa濃度は膜厚方向200nmより深い領域ではほぼ一定の濃度であることがわかる。
なお、上記の現象は凝集粒子92の存在の有無に関わらず生じるものである。
[5.気体吸着材について]
本実施の形態においてはさらに、前面ガラス基板3、背面ガラス基板11に挟まれた放電空間内に、ゼオライトを含む気体吸着材を備えている。これによって、画像表示放電電圧のライフ変動を抑制する効果が得られる。ここでいうライフ変動とはPDPの画像表示時間に依存して、放電に必要な電圧が上昇する現象を示す。すなわちライフ変動が大きい場合、ユーザーの使用時間に依存して画像表示に必要な電圧が上昇し、いずれは不灯となる画像表示領域が発生することになる。
これまでの本実施の形態にて示したように、封着排気工程において保護層9を還元性有機ガスにて曝したPDPにおいては放電電圧の低下効果が得られる。つまり放電空間内にゼオライトを含む気体吸着材(以下、単に気体吸着材と称する)を備えることによって、放電電圧のライフ特性変動を抑制するため、上記放電電圧低下効果を保持することができる。その効果を確認した実験について説明する。
まず、ここまで本実施の形態にて示した作製方法によりPDPを複数作製する。そしていずれかのPDPの放電空間には気体吸着材を配する。本実施の形態では、特開2008−218359号公報に記載の銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトを含む気体吸着材と同様のものを使用した。そして封着排気工程での還元性有機ガス導入はいずれのPDPにおいても実施する。
本実施の形態において、放電空間への気体吸着材の配置は次のように行った。気体吸着材は背面板10には蛍光体層15上に配置する。背面板10に蛍光体層15を形成後、粉末状(平均粒径1〜1.5μm程度)の吸着材を蛍光体層15上に散布した。
散布量はガラス基板上の被覆率にて判断した。本実施の形態においては別途用意したガラス基板上に当該気体吸着材を散布し、散布前後でのガラス基板の透過率を測定し、その変位量を被覆率として判断した。以下に示す実験結果では被覆率33%にて行った。
図12にPDP1のアドレス電圧のライフ変動の推移を示す。保護層9は上記サンプル3と同様の形成方法によるものである。ここでアドレス電圧とは、一般的なPDPの駆動方法において、画像表示を行う放電セルを選択する際に印加する電圧値である。ライフ試験に際しては、PDP画像表示領域全域を白色点灯して行った。そして同図横軸に記載の時間にてライフ試験を中断し、全領域白色点灯するのに必要なアドレス電圧値を測定した。測定結果は、気体吸着材を配置していないPDPのライフ時間0時間での全領域白色点灯に必要な電圧値を基準として、記載している。
同図に示すように、まず気体吸着材を配置することによって、初期(ライフ時間0時間)でのアドレス電圧が8V低くなることがわかる。さらにその後のライフ試験においてもアドレス電圧値が上昇することはなく、総じて気体吸着材を配置していないPDPと比較して、気体吸着材を配置したPDPはアドレス電圧を低く保つことができる。
次に単色ライフ試験および補色ライフ試験の結果について示す。ここで単色試験とは、例えば赤色のみ点灯させてライフ試験を行い、ライフ試験後の赤色を点灯させるのに必要なアドレス電圧を調べたものである。一方補色ライフ試験とは、例えば赤色以外、すなわち、緑色および青色(シアン色)を点灯させてライフ試験を行い、ライフ試験後に赤色を点灯させるのに必要なアドレス電圧値を調べたものである。
図13に単色ライフ試験および補色ライフ試験でのアドレス電圧のライフ変動での推移について示す。同図(a)が赤色についての単色ライフ試験について、同図(b)が補色ライフ試験についてである。使用したPDPは白色点灯でのライフ試験で使用したPDPと同じ作製方法にて作製したPDPである。同図においては気体吸着材を配置したPDPおよび気体吸着材を配置していないPDPそれぞれの初期値(ライフ時間0時間でのアドレス電圧値)に対する変化量で示した。
単色ライフ試験の結果では、図13(a)に示すように気体吸着材の配置の有無に関わらず、ライフ時間に伴いアドレス電圧値は低下し、少なくとも上昇しないことがわかる。その中でも、気体吸着材を配置することによってさらにアドレス電圧値を低く抑えることができることがわかる。
一方補色ライフ試験の結果では、図13(b)に示すように、気体吸着材を配置していないPDPは、赤色点灯に必要なアドレス電圧値はライフ時間に伴い上昇していく。それに対して気体吸着材を配置したPDPでは、赤色点灯に必要なアドレス電圧値はライフ時間に伴い下降し、アドレス電圧値のライフ変動が大幅に抑制できることがわかる。
アドレス電圧の低下やライフ時間に伴うアドレス電圧の上昇の改善は、アドレス電圧の設定電圧の低下に繋がるため、消費電力の低減、周辺回路のコスト削減に繋がり、メリットが大きいと言える。
これらの実験では、気体吸着材の被覆率が33%の場合を示したが、この実験以外にも気体吸着材の被覆率5%〜45%のPDPを作製し同種の実験を行い、同様の効果を確認している。
なお、本実施の形態では蛍光体層15形成後に気体吸着材を蛍光体層上部に散布したが、この形態に限らず、蛍光体ペーストに気体吸着材を分散させ、蛍光体層形成と同様に塗布することで、放電空間に配置する形態でも同様の効果が得られる。
次に本実施の形態において気体吸着材として使用する望ましい条件について述べる。まず上述した排気温度以上で活性化(活性化とは気体吸着材が雰囲気ガスの吸着を開始する現象を指す。)し、かつ排気温度以下で、二酸化炭素あるいは一酸化炭素を吸着する気体吸着材が望ましい。その例としては、銅(Cu)イオン交換型、コバルト(Co)イオン交換型、ニッケル(Ni)イオン交換型、ナトリウム(Na)イオン交換型、リチウム(Li)イオン交換型、カリウム(K)イオン交換型、マグネシウム(Mg)イオン交換型、カルシウム(Ca)イオン交換型、バリウム(Ba)イオン交換型、ストロンチウム(Sr)イオン交換型、などを有したゼオライトを含む気体吸着材が挙げられる。
さらに望ましくは、キセノンガスよりも、水、二酸化炭素を優先的に吸着する気体吸着材が望ましい。その例としては、銅(Cu)イオン交換型のゼオライトを含む気体吸着材が挙げられる。
また、ゼオライトは、Al23とSiO2とを主成分とした構造体であるが、本実施の形態における気体吸着材としては、ゼオライト中においてモル比率でSi濃度がAl濃度よりも高いゼオライトを含む気体吸着材が望ましい。Alをより多く含むゼオライトは親水性を示すが、Si濃度を高くすることによって、より疎水性に近くなり、二酸化炭素、一酸化炭素を吸着しやすくなり、本実施の形態の効果を奏しやすくなる。このようなSi濃度が高い例としてはZSM−5型、モルデナイト(MOR)型のゼオライトを含む気体吸着材が挙げられる。
[6.試作評価]
下地層の構成が異なる複数のPDPが作製された。PDPには60kPaのXe、Ne混合ガス(Xe15%)が封入された。サンプルAは、MgOとCaOによって構成されている。サンプルBは、MgOとSrOによって構成されている。サンプルCは、MgOとBaOによって構成されている。サンプルDは、MgO、CaOおよびSrOによって構成されている。サンプルEはMgO、CaOおよびBaOによって構成されている。また、比較例は、MgO単体によって構成されている。
サンプルAからEについて、維持電圧が測定された。比較例を100とした場合、サンプルAは90、サンプルBは87、サンプルCは85、サンプルDは81、サンプルEは82であった。サンプルAからEは、通常の製造方法で製造されたPDPである。つまり、サンプルAからEは、還元性有機ガス導入工程を有さない製造方法で製造されたPDPである。
放電ガスのXeの分圧を10%から15%に高めた場合には輝度が約30%上昇するが、比較例では、維持電圧が約10%上昇する。
一方、サンプルA、サンプルB、サンプルC、サンプルDおよびサンプルEの維持電圧はいずれも、比較例より約10%〜20%低減できた。
次に、本実施の形態にかかる製造方法でサンプルAからEと同じ構成の下地層91を有するPDP1が作製された。封着工程C1から放電ガス供給工程C4には、第1の温度プロファイルが用いられた。
還元性有機ガスは、一例として、プロピレン、シクロプロパン、アセチレン、およびエチレンが用いられた。本実施の形態にかかるPDP1の維持電圧は、サンプルAからEと比較してさらに5%程度低かった。
さらに、還元性有機ガスを導入する前に、封着工程C1において、放電空間16に開口する貫通孔を通して放電空間16内が陽圧状態となるように不活性ガスとして窒素ガスを流し、その後、封着を行った場合は、サンプルAからEの維持電圧と比較してさらに5から7%程度低かった。
[7.まとめ]
本実施の形態に開示されたPDP1の製造方法は、以下の工程を備える。還元性有機ガスを含むガスを放電空間に導入することにより、保護層9を還元性有機ガスに曝す。次に、還元性有機ガスを放電空間から排出する。次に、放電ガスを放電空間に封入する。
還元性有機ガスに曝された保護層9には、酸素欠損が生じる。酸素欠損が生じることにより、保護層の二次電子放出能力が向上すると考えられる。したがって、本実施の形態にかかる製造方法で製造されたPDP1は、維持電圧を低減することができる。
さらに、還元性有機ガスは、酸素を含まない炭化水素系ガスであることが好ましい。酸素を含まないことによって、還元能力が高まるからである。
さらに、還元性有機ガスは、アセチレン、エチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、プロピレン、シクロプロパン、プロパンおよびブタンの中から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。上記の還元性有機ガスは、製造工程上での取扱いが容易だからである。さらに、上記の還元性有機ガスは、分解が容易だからである。
なお、本実施の形態においては、放電空間を排気した後、還元性有機ガスを含むガスを放電空間に導入する製造方法が例示された。しかし、放電空間を排気することなく、放電空間に還元性有機ガスを含むガスを連続的に供給することによって、還元性有機ガスを含むガスを放電空間に導入することもできる。
保護層9が、下地層91上に、金属酸化物の結晶粒子92aあるいは金属酸化物の結晶粒子92aが複数凝集した凝集粒子92を備える場合、高い電荷保持能力および高い電子放出能力を有する。したがって、PDP1全体として、高精細なPDPでも高速駆動を低電圧で実現できる。かつ、点灯不良を抑制した高品位な画像表示性能を実現できる。
また、本実施の形態では、金属酸化物の結晶粒子としてMgOが例示された。しかし、この他の単結晶粒子でも、MgO同様に高い電子放出性能を持つSr、Ca、Ba、Alなどの金属酸化物による結晶粒子を用いても同様の効果を得ることができる。よって、金属酸化物の結晶粒子としてはMgOに限定されるものではない。
以上のように本実施の形態に開示された技術は、高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のPDPを実現する上で有用である。
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a、5a 透明電極
4b、5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ
8 誘電体層
9 保護層
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 データ電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
91 下地層
92 凝集粒子
92a 結晶粒子

Claims (4)

  1. 表示電極対、誘電体層、および保護層を有した前面板と、背面板とを放電空間を形成して対向配置し、
    前記保護層は、少なくとも第1の金属酸化物と第2の金属酸化物とを含み、
    前記第1の金属酸化物は、酸化マグネシウムであり、
    前記第2の金属酸化物は、酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび酸化バリウムの1種であり、
    前記保護層の前記放電空間側の前記第2の金属酸化物濃度は、前記保護層中の濃度よりも高く、
    前記放電空間に面した領域に少なくともゼオライトを含む気体吸着材を備えた、プラズマディスプレイパネル。
  2. 前記ゼオライトは、銅(Cu)イオン交換型、コバルト(Co)イオン交換型、ニッケル(Ni)イオン交換型、ナトリウム(Na)イオン交換型、リチウム(Li)イオン交換型、カリウム(K)イオン交換型、マグネシウム(Mg)イオン交換型、カルシウム(Ca)イオン交換型、バリウム(Ba)イオン交換型、ストロンチウム(Sr)イオン交換型、などを有したゼオライトである、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  3. 前記ゼオライトは、前記放電空間を排気する温度以上で活性化し、前記排気する温度以下で二酸化炭素、一酸化炭素を吸着する、ゼオライトである、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
  4. 前記ゼオライトは、アルミニウム(Al)およびシリコン(Si)を含み、前記ゼオライト中のモル比率でのシリコン(Si)濃度は、アルミニウム(Al)濃度よりも高い、請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
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