JP2013035716A - グラフェン構造体及びグラフェン構造体の製造方法 - Google Patents

グラフェン構造体及びグラフェン構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ドーピングされたグラフェンの導電特性の経時劣化を抑制することが可能なグラフェン構造体及びその製造方法を提供すること
【解決手段】本技術のグラフェン構造体は、基板と、グラフェン層とを具備する。グラフェン層は、基板に積層され、ドーパントによりドーピングされたグラフェンからなり、水と同程度の酸化還元電位を有する。この構成によれば、グラフェン層が水と同程度の酸化還元電位を有するため、環境中の水分からグラフェンへの電子供与が発生しない。したがって、環境中の水分からグラフェンへの電子供与に起因する、グラフェン層の導電特性の経時変化を防止することが可能となる。
【選択図】図1

Description

本技術は、電極材料等として用いられるグラフェン構造体及びその製造方法に関する。
グラフェンは炭素原子が六角形格子構造に配列したシート状の物質であり、その導電性や光透過性からタッチパネルや太陽電池等の電極材料等として注目されている。ここで、近年、グラフェンにドーパントをドーピングすることによりキャリア濃度を向上させ、電気抵抗を低下(導電性を向上)させることが可能であることがわかっている。
しかしながら、ドーピングされていないグラフェンの導電特性は経時的に安定であるのに対し、ドーピングによりグラフェンのキャリア濃度を一定値以上とした場合、時間の経過と共にキャリア濃度が徐々に減少(抵抗が徐々に増加)するという問題がある。例えばこのようなグラフェンを利用したデバイスでは、時間の経過と共に導電特性が変動してしまい、精度等の点で問題となる。
このような問題に対し、例えば非特許文献1には、多層グラフェン(単層グラフェンが複数層積層されたもの)の層間にドーパントを挿入し、導電特性の経時劣化を抑制する技術について開示されている。
Fethullah Gunes et al., "Layer-by-Layer Doping of Few-Layer Graphene Film", ACS Nano, July 27 2010, Vol.4, No.8, pp4595-4600
しかしながら、非特許文献1に記載の技術では導電特性の経時劣化の抑制効果は小さく、さらには多層グラフェンを利用するため、単層グラフェンの場合に比べて光透過性が小さいという問題があった。
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、ドーピングされたグラフェンの導電特性の経時劣化を抑制することが可能なグラフェン構造体及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係るグラフェン構造体は、基板と、グラフェン層とを具備する。
上記グラフェン層は、上記基板に積層され、ドーパントによりドーピングされたグラフェンからなり、水と同程度の酸化還元電位を有する。
この構成によれば、グラフェン層が水と同程度の酸化還元電位を有するため、環境中の水分からグラフェンへの電子供与が発生しない。したがって、環境中の水分からグラフェンへの電子供与に起因する、グラフェン層の導電特性の経時変化を防止することが可能となる。
上記グラフェン構造体は、水と同程度の酸化還元電位を有する物質からなり、上記グラフェン層に接触する接触層をさらに具備してもよい。
この構成によれば、接触層により、グラフェン層の酸化還元電位を水と同程度とすることが可能である。
上記グラフェン層は、キャリア濃度が6×1013/cm以下であってもよい。
キャリア濃度をこの範囲とすることにより、グラフェン層の酸化還元電位を水と同程度とすることが可能である。
上記グラフェン層は、キャリア濃度が4×1013/cm以上6×1013/cm以下であってもよい。
キャリア濃度をこの範囲とすることにより、グラフェン層の酸化還元電位を水と同程度とすることが可能である。
上記グラフェン層は、キャリア濃度が4.5×1013/cm以上5.5×1013/cm以下であってもよい。
キャリア濃度をこの範囲とすることにより、グラフェン層の酸化還元電位を水と同程度とすることが可能である。
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係るグラフェン構造体の製造方法は、基板上にグラフェンからなるグラフェン層を積層する。
上記グラフェンにドーパントをドーピングする。
上記グラフェン層の酸化還元電位を水と同程度に調整する。
この構成によれば、酸化還元電位が水と同程度であるグラフェン層を有するグラフェン構造体を製造することが可能となる。
上記グラフェンの酸化還元電位を調整する工程は、上記グラフェン層を水蒸気雰囲気においてエージングしてもよい。
この構成によれば、グラフェン層の酸化還元電位を水と同程度にすることが可能となる。
上記グラフェンの酸化還元電位を調整する工程は、上記グラフェン層に、水と同程度の酸化還元電位を有する物質からなる接触層を積層してもよい。
この構成によれば、グラフェン層の酸化還元電位を水と同程度にすることが可能となる。
以上のように、本技術によれば、ドーピングされたグラフェンの導電特性の経時劣化を抑制することが可能なグラフェン構造体及びその製造方法を提供することが可能となる。
本技術の第1の実施形態に係るグラフェン構造体の構造を示す模式図である。 本技術の第1の実施形態に係るグラフェン構造体の構造を示す模式図である。 本技術の第1の実施形態に係るグラフェン構造体の構造を示す模式図である。 比較に係るグラフェン構造体のバンドダイアグラムである。 本技術の第1の実施形態に係るグラフェン構造体の製造工程を示す模式図である。 本技術の第2の実施形態に係るグラフェン構造体の構造を示す模式図である。 本技術の第3の実施形態に係るグラフェン構造体の構造を示す模式図である。 本技術の第3の実施形態に係るグラフェン構造体の製造方法における、キャリア濃度とドーパント濃度の関係を示すグラフである。
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
本技術の第1の実施形態に係るグラフェン構造体について説明する。
<グラフェン構造体の構成>
図1は、本実施形態に係るグラフェン構造体10の層構造を示す模式図である。これらの図に示すように、グラフェン構造体10は、基板11、グラフェン層12、接触層13が順に積層されて構成されている。
基板11は、グラフェン構造体10の支持基板であり、材料は特に限定されないが、例えば石英基板とすることができる。グラフェン構造体10に光透過性が要求される場合には、基板11を光透過性を有する材料からなるものとすることができる。
グラフェン層12は、グラフェンからなる。グラフェンは互いにsp結合をした炭素原子により構成される平面的な六角形格子構造を有するシート状物質であり、積層されていない単層グラフェンと、複数層の単層グラフェンが積層された多層グラフェンがある。本実施形態においてはいずれにも限定されないが、グラフェン構造体10の光透過性や層間剥離が生じない点から単層グラフェンが好適である。
グラフェン層12は、ドーパントによってドーピングされている。ドーパントは、例えば、硝酸、TFSA(トリフルオロメタンスルホン酸)、塩化金、塩化パラジウム、塩化鉄、塩化銀、塩化白金、ヨウ化金等から選択することができる。ドーピングは、ドーパントをスピンコート等によりグラフェン上に塗布し、ドーパントをグラフェンに化学的に吸着させる化学ドーピングとすることができる。
接触層13は、水と同程度の酸化還元電位を有する物質からなり、グラフェン層12に接触する。水と同程度の酸化還元電位を有する物質は酸化剤でも還元剤でもない一般的な有機物であればよく、具体的には、UV(ultraviolet)硬化性のハードコーティング剤、各種樹脂基板、UV硬化性樹脂(接着剤)、粘着剤等が挙げられる。接触層13は、図1に示すように、グラフェン層12の上層(基板11と反対側)に積層されるものに限られない。例えば、図2に示すようにグラフェン層12の下層(基板11側)に積層されるものでもよく、図3に示すように、グラフェン層12の上下を挟むように積層されるものであってもよい。即ち接触層13は、グラフェン層12に接触していればよく、グラフェン層12との上下関係は問わない。
接触層13によって、グラフェン層12の酸化還元電位が水と同程度となり、グラフェン層12の導電特性の経時変化が防止されるが、その理由については後述する。なお、基板11が樹脂基板である場合やグラフェン層12の転写において接着剤バインダー層が用いられる場合には、これらによって接触層13を代替することも可能である。また、接触層13は、グラフェン構造体10に光透過性が要求される場合には、光透過性を有する材料からなるものとすることができる。
本実施形態に係るグラフェン構造体10は以上のように構成される。グラフェン構造体10は、例えばタッチパネルや太陽電池等の電極として用いることが可能である。
<導電特性の経時劣化について>
グラフェン構造体10の、導電特性の経時変化の防止について説明する。比較として、接触層13に相当する構成が設けられていないグラフェン構造体(以下、「比較に係るグラフェン構造体」とする)について説明する。
図4(a)〜(c)は、比較に係るグラフェン構造体についてのバンドダイアグラムである。これらの図において縦軸はエネルギー準位であり、破線Fはグラフェンのフェルミ準位(電子の存在確率が50%となる準位)である。フェルミ準位以下のところに電子が充填され、フェルミ準位近傍の電子の存在量がキャリア濃度に対応する。
図4(a)は、真空環境におけるグラフェン(ドーピングなし)の状態である。この状態から、グラフェンにドーパントを化学的にドーピングさせた場合、図4(b)に示すように、グラフェンのフェルミ準位Fがドーパントの酸化還元電位D1に一致するまでグラフェンからドーパントに電子が供与される。
この状態が維持できれば理想的であるが、実際にはそうはならない。図4(c)に示すように、環境中の水分が電子供与体として作用し、時間の経過と共にグラフェンのフェルミ準位が水及びドーパントの酸化還元電位D2まで上昇する。この結果、グラフェンのキャリア濃度が低下し、導電性が低下する。環境中の水分が電子供与体として作用すること、即ち、環境中の水分がドーピングされたグラフェンの導電特性の経時劣化の原因であることは、本発明者らが実験的に発見したものである。
このように、環境中の水分が導電特性の経時劣化の原因であることから、水(液相も気相も含む)によるグラフェンへの電子供与を防止することができれば、導電特性の経時劣化を抑制することが可能となる。本実施形態に係るグラフェン構造体10においては、グラフェン層12が水と同程度の酸化還元電位を有するので、水からグラフェンへの電子供与が防止され、グラフェン層12の導電特性の経時劣化を防止することが可能となる。
<グラフェン構造体の製造方法>
グラフェン構造体10の製造方法について説明する。図5は、図1に示すグラフェン構造体10の製造方法を示す模式図である。
図5(a)に示すように、触媒基板K上にグラフェンを成膜し、グラフェン層12を形成する。グラフェンの成膜は、触媒基板Kの表面に供給された炭素源物質(炭素原子を含む物質)を熱によりグラフェン化させる熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、炭素源物質をプラズマ化してグラフェンを生成させるプラズマCVD法等を用いてすることができる。また、CVD法以外にも、溶液剥離したグラフェンや物理的剥離したグラフェンを用いることも可能である。ただし、層数の制御(透明性)、結晶性(導電性)、均一に成膜可能な面積等の点からCVD法が好適である。
触媒基板Kの材料は特に限定されないが、例えばニッケル、鉄、銅等とすることができる。触媒基板Kとして銅を用いることにより、密着性の高い単層グラフェンが生成するため、好適である。触媒基板Kの表面に炭素源物質(メタン等)を供給し、触媒基板Kをグラフェン生成温度以上に加熱することにより、触媒基板K上にグラフェンを成膜することができる。具体的には、メタン及び水素(触媒基板Kの還元用)の混合ガス(メタン:水素=100cc:5cc)雰囲気中で、触媒基板Kを960℃に加熱し、10分間維持することにより、グラフェンを成長させることができる。
続いて、図5(b)に示すように、グラフェン層12を任意の基板11上に転写する。転写方法は特に限定されないが、次のようにすることができる。即ち、グラフェン層12上に4%PMMA(Poly(methyl methacrylate))溶液をスピンコート(2000rpm、40秒)により塗布し、130℃で5分間ベークする。これにより、グラフェン層12上にPMMAからなる樹脂層が形成される。次に、1M塩化鉄溶液を用いて触媒基板Kをエッチング(除去)する。
樹脂層上のグラフェン層12を超純水で洗浄した後、グラフェン層12を基板11(石英基板等)に転写し、自然乾燥させる。乾燥後、水素雰囲気中で400℃に加熱(アニール)し、PMMAを分解(除去)する。これにより、基板11上にグラフェン層12が転写される。他の転写方法としては、例えば接着剤を用いる方法や熱剥離テープを用いる方法を挙げることができる。
続いて、グラフェン層12を構成するグラフェンをドーピングする。これは例えば次のようにすることができる。即ち、塩化金を室温で4時間真空乾燥し、それを溶媒(脱水ニトロメタン等)に溶解して10mMの溶液(以下、ドーパント溶液)を得る。ドーパント溶液をスピンコート(2000rpm、40秒)によりグラフェン層12上に塗布し、真空乾燥させる。これによりグラフェンがドーピングされる。
さらにドーパント溶液におけるドーパントの濃度は適宜選択可能であるが、濃度が高すぎるとグラフェン層12の光透過率が低下し、濃度が低すぎるとドーピング後の抵抗劣化が生じやすくなる。
続いて、グラフェン層12上に接触層13を積層する(図1参照)。接触層13は、例えばグラフェン層12上に、接触層13の材料を含む溶液をスピンコート(4000rpm、40sec)により塗布し、乾燥させることによって形成させることができる。接触層13の材料は、例えばUV硬化性のハードコーティング剤であるものとすることができる。
以上のようにして図1に示すグラフェン構造体10を作製することができる。なお、図2及び図3に示すグラフェン構造体10は例えば、グラフェン層12と接触層13の積層の順序を変更することにより作製することが可能である。
<グラフェン構造体の効果>
以上のように、本実施形態に係るグラフェン構造体10は、グラフェン層12へのドーピングによりグラフェン層12の抵抗を減少させることが可能である。さらに、グラフェン層12の酸化還元電位が水と同程度であるため、環境中の水分によるグラフェン層12への電子供与が発生せず、グラフェン層12の導電特性の経時劣化を防止することが可能である。
(第2の実施形態)
本技術の第2の実施形態に係るグラフェン構造体について説明する。なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する場合がある。
<グラフェン構造体の構成>
図6は、本実施形態に係るグラフェン構造体20の層構造を示す模式図である。これらの図に示すように、グラフェン構造体20は、基板21及びグラフェン層22が積層されて構成されている。
基板21は、グラフェン構造体20の支持基板であり、材料やサイズ等は特に限定されないが、例えば石英基板とすることができる。グラフェン構造体20に光透過性が要求される場合には、基板21を光透過性を有する材料からなるものとすることができる。
グラフェン層22はグラフェンからなる。本実施形態においてもグラフェン構造体20の光透過性や層間剥離が生じない点から単層グラフェンが好適である。グラフェン層12は、ドーパントによってドーピングされている。ドーパントは、例えば、硝酸、TFSA(トリフルオロメタンスルホン酸)、塩化金、塩化パラジウム、塩化鉄、塩化銀、塩化白金、ヨウ化金等から選択することができる。ドーピングは、ドーパントをスピンコート等によりグラフェン上に塗布し、ドーパントをグラフェンに化学的に吸着させる化学ドーピングとすることができる。グラフェン層22は後述するエージング処理により、水と同程度の酸化還元電位に調整されている。
本実施形態に係るグラフェン構造体20は以上のように構成される。グラフェン構造体10は、例えばタッチパネルや太陽電池等の電極として用いることが可能である。
<グラフェン構造体の製造方法>
グラフェン構造体20の製造方法について説明する。本実施形態に係るグラフェン構造体20の製造方法は、グラフェン層22のドーピングまでは第1の実施形態と同様にすることができる。
グラフェン層22のドーピング後、グラフェン層22をエージングする。具体的には、基板21上にグラフェン層22が積層された積層体を、50℃の飽和水蒸気雰囲気中に1時間配置することによってエージングをすることができる。これにより、ドーパントのキャリア濃度をグラフェン層22の酸化還元電位が水と同程度となるまで減少させることが可能である。
なお、エージングは上記方法に限られず、キャリア濃度をグラフェン層22の酸化還元電位が水と同程度となるまで減少させることができるものであればよい。ただし、上記積層体を水中に浸漬させると、ドーパントが水に溶解するため不適当である。以上のようにして図6に示すグラフェン構造体20を作製することができる。
<グラフェン構造体の効果>
以上のように、本実施形態に係るグラフェン構造体20は、グラフェン層22へのドーピングによりグラフェン層22の抵抗を減少させることが可能である。さらに、グラフェン層22の酸化還元電位が水と同程度であるため、環境中の水分によるグラフェン層22への電子供与が発生せず、グラフェン層22の導電特性の経時劣化を防止することが可能である。
(第3の実施形態)
本技術の第3の実施形態に係るグラフェン構造体について説明する。なお、本実施形態において第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する場合がある。
<グラフェン構造体の構成>
図7は、本実施形態に係るグラフェン構造体30の層構造を示す模式図である。これらの図に示すように、グラフェン構造体30は、基板31及びグラフェン層32が積層されて構成されている。
基板31は、グラフェン構造体30の支持基板であり、材料やサイズ等は特に限定されないが、例えば石英基板とすることができる。グラフェン構造体30に光透過性が要求される場合には、基板31を光透過性を有する材料からなるものとすることができる。
グラフェン層32はグラフェンからなる。本実施形態においてもグラフェン構造体30の光透過性や層間剥離が生じない点から単層グラフェンが好適である。グラフェン層32は、ドーパントによってドーピングされている。ドーパントは、例えば、硝酸、TFSA(トリフルオロメタンスルホン酸)、塩化金、塩化パラジウム、塩化鉄、塩化銀、塩化白金、ヨウ化金等から選択することができる。ドーピングは、ドーパントをスピンコート等によりグラフェン上に塗布し、ドーパントをグラフェンに化学的に吸着させる化学ドーピングとすることができる。
ここで、ドーピング量はグラフェンにおけるキャリア濃度が6×1013/cm以下となるように調整されている。ドーピング量はグラフェンをドーピングする際に、後述する方法によって調整することが可能である。グラフェン層32を、6×1013/cm以下のキャリア濃度とすることにより、グラフェン層32の酸化還元電位を水と同程度とすることが可能である。なおドーピング量は、キャリア濃度が6×1013/cm以下において特に4×1013/cm以上6×1013/cm以下が好適であり、さらに4.5×1013/cm以上5.5×1013/cm以下が好適である。
上記数値範囲は次のようにして求めることができる。
グラフェンのキャリア濃度nについて、グラフェンのフェルミエネルギー(〜電気化学ポテンシャル)をEfとすると、
n=7.77×1013・Ef (式1)
のようにEfにより決定される。
電化中性点(キャリア濃度ゼロ)におけるグラフェンの仕事関数φを4.5eVとすると、フェルミエネルギーは、
Ef=φ−4.5eV(φは仕事関数) (式2)
と表すことができる。
化学ドーピングを行うと、グラフェンの仕事関数が大きくなるためドーピングされる。この際、グラフェンの仕事関数は、ドーパントの標準酸化還元電位(別称:標準電極電位E)+4.44Vまで大きくなる。例えば、ドーパントが塩化金の場合、標準電極電位は1.52Vであるので仕事関数は5.96eVまで大きくなる。
したがって、理想的な状態ではキャリア濃度は、
n=7.77×1013・(5.96−4.5)=1.46×1014/cm (式3)
まで大きくなる。
しかしながら、大気中に長期間さらすと水と反応することで、水の還元電位までキャリア濃度が低下する。
水の還元電位は0.828Vであるので、仕事関数に換算すると5.27eVに相当する。このときのキャリア濃度は、
n=7.77×1013・(5.27−4.5)=4.61×1013/cm (式4)
したがって、この数値を含む上記数値範囲がグラフェン層32の酸化還元電位を水と同程度とすることが可能なキャリア濃度となる。なお、この数値範囲はドーパントの種類に係わらない。
本実施形態に係るグラフェン構造体30は以上のように構成される。グラフェン構造体30は、例えばタッチパネルや太陽電池等の電極として用いることが可能である。
<グラフェン構造体の製造方法>
グラフェン構造体30の製造方法について説明する。本実施形態に係るグラフェン構造体30の製造方法は、グラフェン層32の積層までは第1の実施系形態と同様にすることができる。
グラフェン層32の積層後、グラフェン層32を構成するグラフェンをドーピングする。これは例えば次のようにすることができる。即ち、塩化金を室温で4時間真空乾燥し、それを溶媒(脱水ニトロメタン等)に溶解して所定濃度(例えば3mM)の溶液(以下、ドーパント溶液)を得る。ドーパント溶液をスピンコート(2000rpm、40秒)によりグラフェン層12上に塗布し、真空乾燥させる。これによりグラフェンがドーピングされる。ドーパント溶液におけるドーパントの濃度を調整することにより、グラフェン層32のキャリア濃度を上記範囲とすることが可能となる。
図8は、ドーパント溶液における塩化金の濃度と、ドーピング直後のキャリア濃度の関係を示すグラフである。このグラフから、キャリア濃度を6×1013/cm以下とするためには、塩化金の濃度は0.2〜0.4mMが好適であると考えられる。
以上のようにして図7に示すグラフェン構造体30を作製することができる。
<グラフェン構造体の効果>
以上のように、本実施形態に係るグラフェン構造体30は、グラフェン層32へのドーピングによりグラフェン層32の抵抗を減少させることが可能である。さらに、グラフェン層32の酸化還元電位が水と同程度であるため、環境中の水分によるグラフェン層32への電子供与が発生せず、グラフェン層22の導電特性の経時劣化を防止することが可能である。
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
基板と、
上記基板に積層され、ドーパントによりドーピングされたグラフェンからなり、水と同程度の酸化還元電位を有するグラフェン層と
を具備するグラフェン構造体。
(2)
上記(1)に記載のグラフェン構造体であって、
水と同程度の酸化還元電位を有する物質からなり、上記グラフェン層に接触する接触層
をさらに具備するグラフェン構造体。
(3)
上記(1)又は(2)に記載のグラフェン構造体であって、
上記グラフェン層は、キャリア濃度が6×1013/cm以下である
グラフェン構造体。
(4)
上記(1)から(3)のいずれかに記載のグラフェン構造体であって、
上記グラフェン層は、キャリア濃度が4×1013/cm以上6×1013/cm以下であるグラフェン構造体。
(5)
上記(1)から(4)のいずれかに記載のグラフェン構造体であって、
上記グラフェン層は、キャリア濃度が4.5×1013/cm以上5.5×1013/cm以下であるグラフェン構造体。
(6)
基板上にグラフェンからなるグラフェン層を積層し、
上記グラフェンにドーパントをドーピングし、
上記グラフェン層の酸化還元電位を水と同程度に調整する
グラフェン構造体の製造方法。
(7)
上記(6)に記載のグラフェン構造体の製造方法であって、
上記グラフェンの酸化還元電位を調整する工程は、上記グラフェン層を水蒸気雰囲気においてエージングする
グラフェン構造体の製造方法。
(8)
上記(6)又は(7)に記載のグラフェン構造体の製造方法であって、
上記グラフェンの酸化還元電位を調整する工程は、上記グラフェン層に、水と同程度の酸化還元電位を有する物質からなる接触層を積層する
グラフェン構造体の製造方法。
10、20、30…グラフェン構造体
11、21、31…基板
12、22、32…グラフェン層
13…接触層

Claims (8)

  1. 基板と、
    前記基板に積層され、ドーパントによりドーピングされたグラフェンからなり、水と同程度の酸化還元電位を有するグラフェン層と
    を具備するグラフェン構造体。
  2. 請求項1に記載のグラフェン構造体であって、
    水と同程度の酸化還元電位を有する物質からなり、前記グラフェン層に接触する接触層
    をさらに具備するグラフェン構造体。
  3. 請求項1に記載のグラフェン構造体であって、
    前記グラフェン層は、キャリア濃度が6×1013/cm以下である
    グラフェン構造体。
  4. 請求項3に記載のグラフェン構造体であって、
    前記グラフェン層は、キャリア濃度が4×1013/cm以上6×1013/cm以下であるグラフェン構造体。
  5. 請求項4に記載のグラフェン構造体であって、
    前記グラフェン層は、キャリア濃度が4.5×1013/cm以上5.5×1013/cm以下であるグラフェン構造体。
  6. 基板上にグラフェンからなるグラフェン層を積層し、
    前記グラフェンにドーパントをドーピングし、
    前記グラフェン層の酸化還元電位を水と同程度に調整する
    グラフェン構造体の製造方法。
  7. 請求項6に記載のグラフェン構造体の製造方法であって、
    前記グラフェンの酸化還元電位を調整する工程は、前記グラフェン層を水蒸気雰囲気においてエージングする
    グラフェン構造体の製造方法。
  8. 請求項6に記載のグラフェン構造体の製造方法であって、
    前記グラフェンの酸化還元電位を調整する工程は、前記グラフェン層に、水と同程度の酸化還元電位を有する物質からなる接触層を積層する
    グラフェン構造体の製造方法。
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