JP2013023997A - 防音断熱構造及び防音断熱材 - Google Patents

防音断熱構造及び防音断熱材 Download PDF

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Abstract

【課題】衝撃音を効果的に低減し得るとともに歩行感の改善を図ることができ、しかも断熱性を付与することができ、且つ簡単に施工することができる防音断熱構造及び防音断熱材を提供すること。
【解決手段】構造物の床または壁を構成する躯体Bの上に緩衝材1を介在させて面材Aを設けた構造の防音断熱構造であって、緩衝材1が、熱伝導率0.02〜0.04W/m・Kの可撓性発泡樹脂成形体により構成されていると共に、面材Aと当接し且つ躯体Bと間隔を有して配置される面材当接部2と、躯体Bと当接し且つ面材Aと間隔を有して配置される躯体当接部3と、面材当接部2と躯体当接部3とを連結する連結部4とから形成されており、面材当接部と躯体当接部とは平行且つ交互に線上配置されており、連結部の厚みtが面材当接部および躯体当接部の厚みT以下である構造からなり、面材Aが、曲げ剛性0.5〜30N・m2である防音断熱構造とした。
【選択図】図1

Description

本発明は、防音断熱構造及び防音断熱材に関するもので、特に、衝撃音を効果的に低減し得る防音断熱構造及び防音断熱材に関するものである。
戸建住宅やマンションなどの複数階建ての建物において、居室内や廊下で、飛び跳ね、走行、歩行、物の落下などによって床に衝撃が加わると、その振動は建物の躯体、例えばコンクリートスラブ、コンクリート壁を介して周囲に伝播するため、近隣住人が騒音の被害を受ける可能性がある。
従来では、このような床に発生する振動の伝播を抑制するために、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されているように、フローリング材などの床材と構造躯体である床梁との間に複数の防振ゴムを介在させて、床衝撃音を低減するようにした床構造が提案されている。また、例えば特許文献3に開示されているように、やはり床材と躯体との間に減衰機構を有する複数の液封マウントを介在させて、床衝撃音を低減するようにした床構造が提案されている。更には、例えば特許文献4に開示されているように、床材の裏面側に複数の凹溝を形成するとともに、収縮性樹脂シートを介してクッション材を床材の裏面側に接着し、常温下、収縮性樹脂シートの収縮により山反り状とされた防音直貼り床材が提案されている。
特開2002−106099号公報 特開2002−201754号公報 特開2004−3283号公報 特開2011−6885号公報
しかしながら、上記のような防振ゴムを使用して床衝撃音を低減する構造においては、床材を防振ゴムで弾性支持するものであるために床材が揺れ易くなっており、歩行感が悪くなるといった問題があった。また、液封マウントを使用して床衝撃音を低減する構造においては、液封マウントが防振ゴムなどの緩衝材に比べて高価であり、このような液封マウントを数多く使用することで、工事費が高騰するといった問題があった。更には、上記したいずれの構造においても、十分な断熱性を建物に付与できる技術ではなかった。
本発明は、上述した背景技術が有する課題に鑑みなされたものであって、その目的は、衝撃音を効果的に低減し得るとともに歩行感の改善を図ることができ、しかも断熱性を付与することができ、且つ工事費を安価に抑えることができる防音断熱構造及び防音断熱材を提供することにある。
上記した目的を達成するため、本発明は、次の(1)〜(6)に記載した防音断熱構造及び防音断熱材とした。
(1)構造物の床または壁を構成する躯体の上に緩衝材を介在させて面材を設けた構造の防音断熱構造であって、前記緩衝材が、熱伝導率0.02〜0.04W/m・Kの可撓性発泡樹脂成形体により形成されているとともに、前記面材と当接し且つ前記躯体と間隔を有して配置される面材当接部と、前記躯体と当接し且つ前記面材と間隔を有して配置される躯体当接部と、前記面材当接部と前記躯体当接部とを連結する連結部とから構成されており、前記面材当接部と前記躯体当接部とは平行且つ交互に線条配置されており、前記連結部の厚みが前記面材当接部および前記躯体当接部の厚み以下である構造からなり、前記面材が、曲げ剛性0.5〜30N・m2であることを特徴とする、防音断熱構造。
(2)上記連結部の厚みが3〜25mmであることを特徴とする、上記(1)に記載の防音断熱構造。
(3)上記躯体と上記躯体当接部との当接面積〔X〕と、上記緩衝材が配置される上記躯体の面積〔Y〕との比率〔X/Y〕が0.1〜0.7であり、前記当接面積〔X〕と上記面材と上記面材当接部との当接面積〔Z〕との合計面積〔X+Z〕と、前記躯体の面積〔Y〕との比率〔(X+Z)/Y〕が0.2〜1.0であることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の防音断熱構造。
(4)上記緩衝材を構成する可撓性発泡樹脂成形体が、圧縮強さ5〜50N/cm2、見掛け密度0.015〜0.050g/cm3のポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の防音断熱構造。
(5)上記緩衝材を構成する可撓性発泡樹脂成形体が、圧縮強さ4〜30N/cm2、見掛け密度0.020〜0.050g/cm3のポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の防音断熱構造。
(6)構造物の床または壁を構成する躯体の上に設けられる緩衝材と面材とからなる防音断熱材であって、前記緩衝材が、熱伝導率0.02〜0.04W/m・Kの可撓性発泡樹脂成形体により形成されているとともに、前記面材と接着され且つ該防音断熱材を前記躯体の上に設けた時に該躯体と間隔を有して配置される面材当接部と、該防音断熱材を前記躯体の上に設けた時に該躯体と当接し且つ前記面材と間隔を有して配置される躯体当接部と、前記面材当接部と前記躯体当接部とを連結する連結部とから形成されており、前記面材当接部と前記躯体当接部とは平行且つ交互に線条配置されており、前記連結部の厚みが前記面材当接部および前記躯体当接部の厚み以下である構造からなり、前記緩衝材がその面材当接部において接着された前記面材が、曲げ剛性0.5〜30N・m2であることを特徴とする、防音断熱材。
上記した本発明に係る防音断熱構造及び防音断熱材によれば、衝撃音を効果的に低減し得るとともに歩行感の改善を図ることができ、しかも構造物に断熱性を付与することができ、且つ施工性にも優れるものとなる。
本発明に係る防音断熱構造及び防音断熱材の一実施の形態を示した概念的な横断面図である。 本発明に係る防音断熱構造及び防音断熱材の他の実施の形態を示した概念的な横断面図である。 No.1,No.8〜No.10の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.2の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.3の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.4の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.5の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.6の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.7の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.11〜No.13の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.14の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.15の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.16の試験例において使用した緩衝材の一スパン分を示した概念的な横断面図である。 No.17の試験例において使用した緩衝材の100mm分を示した概念的な横断面図である。 No.18の試験例において使用した緩衝材の100mm分を示した概念的な横断面図である。 No.19の試験例において使用した遮音フローリング材の100mm分を示した概念的な横断面図である。 試験No.1〜No.4の試験結果を示したグラフである。 試験No.5〜No.8の試験結果を示したグラフである。 試験No.9〜No.12の試験結果を示したグラフである。 試験No.13〜No.16の試験結果を示したグラフである。 試験No.17〜No.19の試験結果を示したグラフである。
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。
本発明は、構造物の床または壁を構成する躯体の上に緩衝材を介在させて面材を設けた構造の防音断熱構造であり、また、本発明は、構造物の床または壁を構成する躯体の上に設けられる緩衝材と面材とからなる防音断熱材である。
本発明における上記構造物の床または壁を構成する躯体は、構造物を構成する骨格部材であり、通常、コンクリート系の場合にはコンクリートスラブ、コンクリート壁などが対象となり、鉄骨系の場合には軽量気泡コンクリートパネル、プレキャストコンクリートパネルなどが対象となる。また木質系の場合には合板、パーティクルボード等の硬質且つ厚肉の木質パネルなどが対象となる。
また、本発明における上記緩衝材は、熱伝導率0.02〜0.04W/m・K、好ましくは0.023〜0.038W/m・K、特に好ましくは0.025〜0.035W/m・Kの可撓性発泡樹脂成形体からなるものである。熱伝導率が0.04W/m・Kを超えるものである場合には、十分な断熱性を有する防音断熱構造或いは防音断熱材を形成することができない。かかる観点から熱伝導率は低いほど好ましいが、熱伝導率が0.02W/m・Kに満たないものは低コストで得ることが困難であり、経済的な観点から現実的ではない。
なお、本明細書における上記熱伝導率は、JIS A9511(2006R)の5.7項記載の平板熱流計法(平均温度23℃)により測定したものである。
緩衝材を構成する可撓性発泡樹脂成形体の基材樹脂としては、ポリスチレン,耐衝撃性ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンサクシネート,ポリエチレンテレフタレート,ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂などを挙げることができる。これらの中でも、圧縮等の機械的物性、軽量性に優れるポリスチレン系樹脂が好ましく、また、柔軟性、靭性に富み、耐久性、防振特性に優れている点でポリオレフィン系樹脂が好ましい。
上記ポリスチレン系樹脂には、ポリスチレン、基材樹脂中のスチレン成分単位が50モル%以上であるスチレンと他のコモノマー成分との共重合体やスチレンと他の重合体との混合物が包含される。より具体的には、ポリスチレンやスチレンを主成分とするスチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、或いは耐衝撃性ポリスチレン等が挙げられる。スチレン系共重合体におけるスチレン成分含有量は60モル%以上、特に80モル%以上が好ましい。
また、上記ポリオレフィン系樹脂には、ポリオレフィン、基材樹脂中のオレフィン成分単位が50モル%以上であるオレフィンと他のコモノマー成分との共重合体やオレフィンと他の重合体との混合物が包含される。より具体的には、低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,直鎖状超低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂や、プロピレン単独重合体,各種のプロピレン−エチレン共重合体,プロピレン−ブテン共重合体,プロピレン−エチレン−ブテン三共重合体等のポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
本発明における緩衝材を構成する可撓性発泡樹脂成形体は、特有の目的形状を容易に成形できることから、上記基材樹脂を用いた合成樹脂発泡粒子成形体であることが好ましい。この合成樹脂発泡粒子成形体は、例えば合成樹脂粒子を発泡させて発泡ビーズを得、該発泡ビーズを所定形状の金型内に充填し、蒸気等で加熱して発泡ビーズを融着させることで得られる。
上記ポリスチレン系樹脂を用いた合成樹脂発泡粒子成形体を緩衝材として用いる場合には、該ポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体の圧縮強さは、配置される床、壁などの使用箇所における耐久性能と防振性能の観点から、好ましくは5〜50N/cm2、更に好ましくは10〜40N/cm2、特に好ましくは20〜35N/cm2である。また、見掛け密度は、断熱性能、曲げや圧縮などの機械的強度の観点から、好ましくは0.015〜0.050g/cm3、更に好ましくは0.020〜0.040g/cm3、特に好ましくは0.030〜0.035g/cm3である。
また、上記ポリオレフィン系樹脂を用いた合成樹脂発泡粒子成形体を緩衝材として用いる場合には、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体の圧縮強さは、上記と同様の観点から、好ましく4〜30N/cm2、更に好ましくは7〜20N/cm2、特に好ましくは10〜15N/cm2である。また、見掛け密度は、やはり上記と同様の観点から、好ましくは0.020〜0.050g/cm3、更に好ましくは0.025〜0.040g/cm3、特に好ましくは0.030〜0.035g/cm3である。
なお、本明細書における上記圧縮強さは、JIS K 7220(1999)に準拠して求められる5%圧縮強さとして測定される値である。また、上記見掛け密度は、発泡成形体の重量(g)を水没法にて求められる発泡成形体の体積(cm3)で除して得られる値である。また、上記のとおり、ポリスチレン系樹脂を用いた合成樹脂発泡粒子成形体を緩衝材として採用する場合と、ポリオレフィン系樹脂を用いた合成樹脂発泡粒子成形体を緩衝材として採用する場合とで、好ましい圧縮強さや見掛け密度が相違するのは、両者の圧縮エネルギー分散性能の違いや、断熱性能の違いによる。
また、本発明における緩衝材は、図1及び図2にその実施の形態を例示したように、該緩衝材1は、面材Aと当接し且つ上記したコンクリートスラブなどの躯体Bと間隔を有して配置される面材当接部2と、前記躯体Bと当接し且つ前記面材Aと間隔を有して配置される躯体当接部3と、前記面材当接部2と前記躯体当接部3とを連結する連結部4とから形成されており、前記面材当接部2と前記躯体当接部3とは平行且つ交互に線上配置されており、前記連結部4の厚みtが前記面材当接部2および前記躯体当接部3の厚みT以下である構造の上記した可撓性発泡樹脂成形体からなるものである。
かかる構造の緩衝体とすることにより、衝撃が加わると、その衝撃力によって面材当接部2と躯体当接部3とを連結する上記連結部4が板バネの如く撓み、振動エネルギーを有効に吸収することができ、衝撃音を効果的に低減し得るものとなる。
上記構造の可撓性発泡樹脂成形体において、前記面材当接部2の前記躯体Bとの間隔αおよび前記躯体当接部3の前記面材Aとの間隔βは1〜5mm、更には2〜4mmが、より優れた所期の目的を達成する上で好ましい。なお、前記間隔αは面材当接部2と躯体Bとの間隔の最大値、前記間隔βは躯体当接部3の面材Aとの間隔の最大値を意味する。また、本発明の目的効果を阻害しない範囲で、面材当接部2の一部に躯体Bと接する凸部や躯体当接部3の一部に面材Aと接する凸部を設けることもできる。
ここで、上記緩衝材1は、上記面材当接部2および上記躯体当接部3の厚みTが5〜50mmであることが好ましく、10〜30mmであることが更に好ましい。
また、上記連結部4の厚みtは、前記面材当接部2および前記躯体当接部3の厚みTの10〜90%であることが好ましく、30〜80%であることが更に好ましい。具体的に連結部4の厚みtは、3〜25mmであることが好ましく、3〜15mmであることが更に好ましい。連結部の厚みが上記の範囲内である場合には、特に優れた振動エネルギー吸収性能が発現されるように面材当接部と躯体当接部とが連結されることになる。
なお、面材当接部2および上記躯体当接部3の厚みTは、図1〜10に示す緩衝材の横断面図における該当部分の平均厚みを意味する。具体的には該当部分の両端部及び中央部の3点の図面右端に示した矢印方向の厚みの算術平均厚みを指す。ただし、当該両端部及び中央部に上記の部分的な凸部がある場合は当該凸部を避けて両端部及び中央部の近傍の厚みを測定することとする。また、連結部4の厚みtは、図1〜10に示す緩衝材の横断面図における当該連結部の最も厚みの薄い箇所の図中連結部の矢印方向の厚みを意味する。
また、上記緩衝材1は、振動エネルギーの吸収作用において特に優れたものとするために、上記躯体Bと上記躯体当接部3との当接面積〔X〕と、上記緩衝材1が配置される上記躯体Bの面積〔Y〕との比率〔X/Y〕が0.1〜0.7であることが好ましく、0.3〜0.7であることが更に好ましく、0.4〜0.7であることが特に好ましく、前記躯体当接部3の当接面積〔X〕と上記面材Aと上記面材当接部2との当接面積〔Z〕との合計面積〔X+Z〕と、前記躯体の面積〔Y〕との比率〔(X+Z)/Y〕が0.2〜1.0であることが好ましく、更に0.2〜0.9、特に0.3〜0.8であることが好ましい。
本発明における上記面材としては、フローリング材、合板、石膏ボード、樹脂タイルなどが挙げられる。これらの面材は、主として構造物の床または壁の表層を形成するものであり、必要に応じて、突板貼り、化粧合成樹脂シート貼り、化粧紙貼り等の任意の化粧が施されているものである。かかる面材は、曲げ剛性が0.5〜30N・m2であることが好ましく、0.6〜20N・m2であることが更に好ましい。これは、曲げ剛性が0.5N・m2に満たない面材である場合には、床および壁面の剛性が低くなり床の歩行感および壁強度が低くなるために好ましくなく、逆に30N・m2を超える曲げ剛性を有する面材を用いた場合には、面材の振動が直接躯体に伝播しやすくなることにより防音効果が現れないために好ましくない。
なお、本明細書における上記曲げ剛性は、JIS A1408:2001に記載の曲げ試験に基づき、試験体寸法:長さ200mm、幅150mm、曲げ試験スパン:150mm、気燥状態:試験体を通風の良い室内に7日間静置、測定雰囲気温度23℃、湿度50%の条件にて測定される値である。
本発明に係る防音断熱構造は、構造物の床または壁を構成する躯体の上に、上記した所定の熱伝導率を有する可撓性発泡樹脂成形体により形成された上記した特種構造の緩衝材を介在させて、上記した所定の曲げ剛性を有する面材を設けたことに最大の特徴を有し、また、本発明に係る防音断熱材は、上記した所定の熱伝導率を有する可撓性発泡樹脂成形体により形成された上記した特種構造の緩衝材を、その面材当接部において、上記した所定の曲げ剛性を有する面材に接着させた構成からなることに最大の特徴を有するものである。
このような防音断熱構造或いは防音断熱材とすることによって、断熱性のみならず優れた防音効果が得られるものであるが、その理由、特に緩衝材を上記した特種構造のものとしたことによる防音効果の理由は、下記の通りであると考えられる。
床材に作用する衝撃音が階下の人間に感知されるメカニズムは、発生源から固体振動として床材に伝達され、該床材中を振動として伝搬し、最終的に空気中に音として放射或いは直接人体に振動として伝達されて人間の聴覚で感知されるものである。そのため、衝撃音の階下の人間による感知を防止するには、伝搬途中においてその振動を抑える、すなわち振動エネルギーを吸収させる必要がある。
この振動エネルギーの吸収は、加えられた振動エネルギーが素材中を伝搬する間の分子間摩擦エネルギー、換言すれば熱エネルギーに変換して減衰することなどによって達成されるものであるが、本発明に係る緩衝材は、面材と当接し且つ躯体と間隔を有して配置される面材当接部と、躯体と当接し且つ面材と間隔を有して配置される躯体当接部と、前記面材当接部と前記躯体当接部とを連結する連結部とから構成されているため、振動によって両当接部間を連結する連結部は特に大きく撓み変形することとなり、振動エネルギーを効果的に熱エネルギーに変換して減衰させることができるとともに、振動エネルギーの伝搬は面材当接部、連結部、そして躯体当接部と迂回した伝搬距離が長いものとなり、より振動エネルギーの吸収効果を向上させることができるものと考えられる。更には、面材当接部と躯体表面との間、及び躯体当接部と面材裏面との間に存在する隙間が吸音室として働くため、より防音効果を向上させることができると考えられる。かくして本発明の緩衝材の構造によれば、顕著な防音効果が得られ、かかる緩衝材を躯体と面材との間に介在させた本発明の防音断熱構造、及びかかる緩衝材と面材とからなる本発明の防音断熱材は、断熱性のみならず優れた防音効果を発揮するものとなる。
本発明の防音断熱構造においては、防音断熱材の面材当接部と躯体当接部とは、各々、面材と躯体に接着剤等により接着固定されてことが好ましいが、例えば、床を構成する防音断熱構造の場合には、必ずしも面材当接部と躯体当接部が各々、面材と躯体に接着されていなくてもよい。また、ダンゴ状の接着剤を使用して面材当接部と面材とを接着する場合には、面材と躯体当接部との間隔を、できるだけ埋めることのないように施工する。
更に、断熱性向上の観点から、防音断熱材と躯体との隙間に水蒸気が進入しないように施工することが好ましい。
また、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、防音断熱材を構成する面材と可撓性発泡樹脂成形体との間や躯体と可撓性発泡樹脂成形体との間に補強材や防湿シート等を介在させることもできる。
試験例
以下、上記した本発明に係る防音断熱構造及び防音断熱材を見出した試験例を記載するが、本発明は、何らこれらの試験例によって限定されるものではない。
−使用材料−
・緩衝材
株式会社ジェイエスピー社製のポリスチレン発泡粒子ブロック成形体(圧縮強さ;15N/cm2、見掛け密度;0.028g/cm2、熱伝導率;0.034W/m・K)を用い、表1〜表5、及び図3〜図16に示した種々の形状寸法の緩衝材(幅600mm,長さ900mm)を作製した。
なお、表1等に記載した躯体当接面積(X),躯体面積(Y),面材当接面積(Z)の値は、図面に示した緩衝材の一スパン分(或いは幅100mm分)、奥行長さ1mm当たりの面積である。
・面材
以下の4種類の床材を用いた。
(a)パナソニック電工株式会社製の木質床材(商品名:ウディA、曲げ剛性0.8N・m2)。表において「PanaA」と記載。
(b)普通合板 JAS 1類 1等の3mm厚の木質合板(曲げ剛性3.4N・m2)。表において「合板3t」と記載。
(c)普通合板 JAS 1類 1等 の5.5mm厚の木質合板(曲げ剛性16.4N・m2)。表において「合板5.5t」と記載。
(d)普通合板 JAS 1類 1等 の12mm厚の木質合板(曲げ剛性146.9N・m2)。表において「合板12t」と記載。
・遮音フローリング
パナソニック電工株式会社製の遮音フローリング(商品名:ウディA45)。表において「遮音FL」と記載。また、図16に幅100mm分の概念的な断面図を示した。
−試験方法−
各試験体について、軽量衝撃音レベルの測定を、JIS A1440に基づいて行なった。
具体的には、厚さ150mmのコンクリートスラブの上に、各種の試験体(使用した緩衝材と面材は表1〜表5に記載)を載置し、試験体上面の中心を打撃点としてタッピングマシンによる軽衝撃(500gのハンマーによるタッピング)を加え、階下に設置したマイクロホンで衝撃音を捉えることにより行なった。
各試験体の測定結果を、表1〜表5に併記するとともに図17〜図21に示す。なお、図中に示した区分1〜5の線は、住宅性能表示制度の床仕上げ構造の床衝撃音低減性能における実験室測定による床衝撃音レベル低減量に基づいた床仕上げ構造区分1〜5の性能区分を示している。
Figure 2013023997
Figure 2013023997
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−試験結果−
図17〜図21から、本発明の構造に係る試験No.1,No.3〜No.8,No.11の試験体は、測定した全ての周波数帯域において床仕上げ構造区分の区分3をクリアしており、優れた防音効果を有するものであることが分かる。また、試験No.2の試験体は、連結部の厚みtが多少大きいため中心周波数250Hzにおいて区分3をクリアしていないものの十分な防音効果を有するものであることが分かる。また、試験No.9,No.12の試験体は、面材の曲げ剛性が緩衝材の弾性に対して多少大きいため区分3をクリアしていない周波数帯域があるものの十分な防音効果を有するものであることが分かる。また、試験No.1〜No.9,No.11,No.12の試験体は、歩行時において面材の揺れは感じられず歩行感が良好なものであり、また断熱性においても良好なものであった。
一方、面材の曲げ剛性が高すぎる試験No.10,No.13の試験体にあっては、いずれも低周波数帯域で、防音効果が十分ではないことが分かる。また、試験No.14〜No.18の試験体は、面材と間隔を有して配置される躯体当接部の構造、或いは躯体と間隔を有して配置される面材当接部の構造と躯体と当接し且つ前記面材と間隔を有して配置される躯体当接部の構造を有するものではない、特に面材当接部と躯体当接部とを連結する連結部を有するような構造ではないため、防音効果が十分ではないことが分かる。また、試験No.19の試験体は、十分な防音効果を有するものであるが、歩行時において面材の揺れが感じられ、歩行感が悪いものであった。

Claims (6)

  1. 構造物の床または壁を構成する躯体の上に緩衝材を介在させて面材を設けた構造の防音断熱構造であって、
    前記緩衝材が、熱伝導率0.02〜0.04W/m・Kの可撓性発泡樹脂成形体により構成されているとともに、前記面材と当接し且つ前記躯体と間隔を有して配置される面材当接部と、前記躯体と当接し且つ前記面材と間隔を有して配置される躯体当接部と、前記面材当接部と前記躯体当接部とを連結する連結部とから形成されており、前記面材当接部と前記躯体当接部とは平行且つ交互に線条配置されており、前記連結部の厚みが前記面材当接部および前記躯体当接部の厚み以下である構造からなり、
    前記面材が、曲げ剛性0.5〜30N・m2であることを特徴とする、防音断熱構造。
  2. 上記連結部の厚みが3〜25mmであることを特徴とする、請求項1に記載の防音断熱構造。
  3. 上記躯体と上記躯体当接部との当接面積〔X〕と、上記緩衝材が配置される上記躯体の面積〔Y〕との比率〔X/Y〕が0.1〜0.7であり、前記当接面積〔X〕と上記面材と上記面材当接部との当接面積〔Z〕との合計面積〔X+Z〕と、前記躯体の面積〔Y〕との比率〔(X+Z)/Y〕が0.2〜1.0であることを特徴とする、請求項1または2に記載の防音断熱構造。
  4. 上記緩衝材を構成する可撓性発泡樹脂成形体が、圧縮強さ5〜50N/cm2、見掛け密度0.015〜0.050g/cm3のポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の防音断熱構造。
  5. 上記緩衝材を構成する可撓性発泡樹脂成形体が、圧縮強さ4〜30N/cm2、見掛け密度0.020〜0.050g/cm3のポリオレフィン系樹脂発泡粒子成形体であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の防音断熱構造。
  6. 構造物の床または壁を構成する躯体の上に設けられる緩衝材と面材とからなる防音断熱材であって、
    前記緩衝材が、熱伝導率0.02〜0.04W/m・Kの可撓性発泡樹脂成形体により構成されているとともに、前記面材と接着され且つ該防音断熱材を前記躯体の上に設けた時に該躯体と間隔を有して配置される面材当接部と、該防音断熱材を前記躯体の上に設けた時に該躯体と当接し且つ前記面材と間隔を有して配置される躯体当接部と、前記面材当接部と前記躯体当接部とを連結する連結部とから形成されており、前記面材当接部と前記躯体当接部とは平行且つ交互に線条配置されており、前記連結部の厚みが前記面材当接部および前記躯体当接部の厚み以下である構造からなり、
    前記緩衝材がその面材当接部において接着された前記面材が、曲げ剛性0.5〜30N・m2であることを特徴とする、防音断熱材。
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