JP2013022637A - 焼き入れ処理された鋼板のスポット溶接における十字引張強さの予測方法及びその予測方法を用いたスポット溶接方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)本溶接の前に、(a1)種々の通電条件で焼入鋼板をスポット溶接し、軟化部の軟化量ΔHvと溶接継手のCTSを測定し、(a2)溶接熱影響部の温度履歴を計算し、該温度履歴から焼戻しパラメータλを計算して、焼戻しパラメータλと軟化量ΔHvとの関係を求め、(a3)軟化量ΔHvから軟化度合Nを計算し、CTSと軟化度合Nの関係を求めておき、(B)ついで、本溶接にあたり、(b1)設定した本溶接の通電条件から焼戻しパラメータλを計算し、(b2)焼戻しパラメータλから軟化量ΔHvを求め、(b3)軟化量ΔHvから軟化度合Nを求め、(b4)軟化度合Nから設定した通電条件で溶接した場合のスポット溶接継手のCTSを求めるようにする。
【選択図】図11
Description
しかし、鋼板の高強度化はプレス成形性の低下を招き、特にスプリングバック等により製品精度の確保がより難しくなってくる。
そのような軟化部が形成されると、スポット溶接部の引張強さに影響を与えることが予想される。
しかし、焼入れ処理された鋼板で形成される上記軟化部の軟化度合とCTSとの関連については十分に明らかにされていない。
そこで、本発明では、熱間プレス法などの適用によって焼き入れ処理された鋼材や鋼板(以下、「焼入鋼板」と記載する。)のスポット溶接において、熱影響部に生じる軟化部のCTSに対する影響を評価して、溶接条件から軟化部の軟化度合(軟化度)を予測し、軟化度からCTSを予測できるようにして、CTSの予測値に基づいて溶接条件を変更し、CTSが設定した値を超えることができるようにすることを課題とする。
A3点を超えて加熱される領域では冷却の際に再度焼きが入って硬化するが、A1点以下の温度までしか加熱されない領域では焼入相の焼戻しが起こり軟化することが予想される。
そこで、熱影響部の軟化量を、焼戻しパラメータで評価することを試みた。そして、スポット溶接の際の温度履歴の数値解析を行い、その結果から熱影響部の焼きが入らない領域における焼き戻しパラメータを導出し、焼き戻しパラメータから軟化量を予測できること見出した。また、実際に測定した軟化量と十字引張強さCTSの関係から、溶接条件毎にCTSを予測できることを見出した。
(1) 焼き入れ処理された鋼板のスポット溶接において、
(A)本溶接の前に、あらかじめ、
(a1)板厚sの焼き入れ処理された鋼板を種々の通電条件でスポット溶接し、通電条件毎に、ナゲット径Lと溶接熱影響部に発生する軟化部の軟化量ΔHvと溶接継手の十字引張強さCTSを測定し、
(a2)前記の通電条件毎に溶接熱影響部の温度履歴を計算し、該温度履歴から焼戻しパラメータλを計算して、焼戻しパラメータλと軟化量ΔHvとの関係を求め、
(a3)軟化量ΔHvから下記(1)式を用いて通電条件毎の軟化度合Nを計算し、
(a4)十字引張強さCTSを、下記(2)式を用いて軟化度合Nと板厚sとナゲット径Lの関数として予測しておき、
(B)ついで、板厚sの鋼板の本溶接にあたり、
(b1)設定した本溶接の通電条件から前記(a2)と同様にして焼戻しパラメータλを計算し、
(b2)焼戻しパラメータλから前記(a2)で求めた関係を用いて軟化量ΔHvを求め、
(b3)軟化量ΔHvから下記(1)式を用いて軟化度合Nを求め、
(b4)軟化度合Nから下記(2)式を用いて設定した通電条件で溶接したスポット溶接継手の十字引張強さCTSを求める、
ことを特徴とする焼き入れ処理された鋼板のスポット溶接における十字引張強さCTSの予測方法。
ここで、A、α、β、γは定数であり、それぞれ0.10≦A≦0.15、0.6≦α≦0.7、β=0.5である。
本発明では、本溶接の前に、種々の組成や強度を有する焼入鋼板を用いて溶接試験を行い、様々なサンプルを得て、そのサンプルの熱影響部の硬さ分布及びCTSなどを測定し、用いた溶接条件の温度履歴から、焼入鋼板ごとに軟化部の軟化量ΔHvと溶接継手の十字引張強さCTSの関係をあらかじめ求めておき、実際の本溶接に当たり、用いる溶接条件の温度履歴から、その溶接条件で溶接して得られる溶接継手のCTSを溶接前に予測できるようにする。
(A)板厚sの焼き入れ処理された鋼板のスポット溶接において、本溶接の前に、あらかじめ、((a1)軟化部の軟化量ΔHvと溶接継手の十字引張強さCTSを測定し、(a2)溶接熱影響部の温度履歴から焼戻しパラメータλを計算して、焼戻しパラメータλと軟化量ΔHvとの関係を求め、(a3)軟化量ΔHvから通電条件毎の軟化度合Nを計算し、十字引張強さCTSと軟化度合Nの関係を求め、さらに(a4)軟化度合Nと板厚sと通電条件から決め合うナゲット径Lの関数としてのCTS予測式の作成しておく。
これら(a1)〜(a4)のステップについて、次に説明する。
種々の板厚sの焼き入れ処理された鋼板を種々の通電条件でスポット溶接し、多数のスポット溶接継手のサンプルを作成し、得られたサンプルからナゲットを含む試験片を採取し、通電条件毎に、溶接熱影響部に発生する軟化部の軟化量ΔHvと溶接継手の十字引張強さCTSを測定する。
溶接部の硬度は、得られたサンプルからナゲットを含む断面を切り出し、図2に示すように、鋼板の圧接面より0.2mmずれた線に沿って、ナゲットの境界(溶融境界線FL)からほとんど軟化しない位置までのビッカース硬度Hvを測定して求める。そして、図1(a)に示すようなFLからの距離に対するHvの変化の図を作成し、図1(b)に示すように、焼入部平均硬さ(母材平均硬さ)と測定した硬さの差を軟化量ΔHvとして求める。
また、CTSは、得られたサンプルからJIS Z 3137に基づく引張り試験を実施して求める。
焼戻しパラメータλと軟化量ΔHvとの関係を求めるには、
(i)前記の通電条件毎に溶接熱影響部の温度履歴を計算し、
(ii)該温度履歴から通電条件毎の焼戻しパラメータλを計算し、
(iii)焼戻しパラメータλと前記(a1)で求めた通電条件毎の軟化量ΔHvから、焼戻しパラメータλと軟化量ΔHvとの関係を求める。
スポット溶接時の温度履歴解析は、市販ソフト、例えばQucik Spot(商品名)を用いて行うことができる。この解析では、まず、スポット溶接しようとする焼入鋼板の物性値(抵抗値、熱伝導率、高温強度)を、焼入鋼板を用いて予め実測しておき、その物性値に基づいて電磁場解析を行なう。そして、その結果から得られる電流分布による抵抗発熱を熱源とした熱伝導解析を行ない、その結果から得られる温度分布による熱膨張と電極加圧とについての弾塑性解析を行ない、さらに、これらの解析結果に対応するように物性値を書き換えるというステップを指定した時間刻み毎に実行し、溶接時の温度履歴を導出する。その際、1500℃に達した領域をナゲットとみなして計算を行う。
数値解析は、スポット溶接の通電パターンを設定し、鋼板圧接面より0.2mmずれた線上の、ナゲット中心、FL内側0.5mmから外側3.0mmまでの位置において行い、図1(c)に示すような各位置での溶接時の温度履歴を導出する。
軟化領域は、焼き戻しにより軟化していると考えられる。焼き戻しによる軟化の程度を表わすパラメータとして、式(3)で定義される焼き戻しパラメータが用いられている。
そこで、焼戻しパラメータλを計算して、焼戻しパラメータλと軟化量ΔHvとの関係を求めるようにする。
λ = T(logt+D) ・・・(3)
なお、Tは絶対温度で表される温度、tは加熱時間であり、Dは定数であり、通常は20が用いられる。
この場合、前半だけの焼き戻しにおける焼き戻しパラメータは、
λ1= T1{log(t1−t0)+D} ・・・(3a)
になり、温度T2で同等の焼き戻しを加えるには、式(3b)を満たす時間t2´が必要になる。
λ1= T2(logt'2 +D) ・・・(3b)
そこで、この2段の焼き戻しを、時間(t2−t1+t'2 )の一定温度T2での焼き戻しとして、式(3C)のように決定することができる。
λ= T2{log(t2−t1+t'2 )+D} ・・・(3c)
この論法を逐次繰り返し、温度履歴の計算結果から得られるn点の時間と温度の系列を温度変化をn段階(n>1)の焼き戻しとして、k番目(k>1)での焼き戻しパラメータλk
λk=Tk{log(tk−tk-1+t'k-1)+D} ・・・(3d)
を逐次計算し、温度履歴全体に対する焼き戻しパラメータを、最終温度Tnにおける一定温度での焼き戻しに換算して焼き戻しパラメータλとして以下の式(3e)のように決定する。
λ=λn=Tn{log(tn−tn-1+t'n-1)+D} ・・・(3e)
軟化部の軟化度合Nを、図1(b)に示すように、FLからの距離に対するHvの変化を表す線における焼入部平均硬さより硬さが低い部分の占める面積と定義する。そして、軟化量ΔHvから下記(1)式を用いて通電条件毎の軟化度合Nを計算し、前記(a1)のステップで得られた通電条件毎の十字引張強さCTSの値を用いて十字引張強さCTSと軟化度合Nの関係を求める。
なお、(1)式の積分はナゲット中心から母材方向へ向かう硬さ測定経路上において、ほとんど軟化せずに焼入母材の硬さに一致するところまで行なう。
以上の結果を種々の板厚で得て、軟化度合Nと板厚sとを関数として回帰分析を行ない、CTSと軟化度合Nと板厚sとの関係を式(4)の形で得る。
CTS=A・Nα・tβ ・・・(4)
ここで、A、α、βは定数であり、以上のような溶接試験結果から実験的に決定される値である。
CTS=A・Nα・sβ・L2 ・・・(2)
本発明らは、複数の板厚sの鋼板を、ナゲット径L=5√(s)の複数の通電条件で溶接試験を実施し、得られたCTSと軟化度合Nの値から、それぞれ0.10≦A≦0.15、0.6≦α≦0.7、β=0.5であると決定した。
これら(b1)〜(b4)のステップについて、次に説明する。
設定した本溶接の通電条件から前記(a2)のステップと同様にして焼戻しパラメータλを計算する。
(b2)焼戻しパラメータλから軟化量ΔHvの算出
焼戻しパラメータλから前記(a2)のステップで求めた図1(d)で示すような関係を用いて軟化量ΔHvを求める。
上記(b3)で得られた軟化度合N、鋼板板厚s、設定した通電条件から決定されるナゲット径Lを用いて、前記(a4)のステップで求めた、下記(2)式を用いて設定した通電条件で溶接したスポット溶接継手のCTSを求める。
CTS=A・Nα・sβ・L2 ・・・(2)
通電パターン条件1〜3における溶接時の温度履歴の解析結果をそれぞれ図4〜6に示す。なお、図4において、1 Centerはナゲット中心、2 FLin0.5mmはFL内側0.5mmの位置、3 FLはFLの位置、4〜9 FLout0.5〜3.0mmはFL外側0.5〜3.0mmの位置での解析結果を示している。図5、6も同様である。
その結果、図8に示すように、焼き戻しパラメータλと軟化量ΔHvはほぼ比例関係にある結果が得られた。
また、図7に基づき前記式(1)を用いて軟化度合N(長さはmm単位で計算)を計算し、スポット溶接部CTSの関係を調べると、図9に示すように、Nが大きいほうがCTSは高くなっており、図に付記した関係式で近似できる結果が得られた。
その結果、図10に示すように、軟化度合Nが大きくなると、CTSが大きくなる結果が得られた。
CTS=0.32N0.64・s1.5 ・・・(4)’
Claims (2)
- 焼き入れ処理された鋼板のスポット溶接において、
(A)本溶接の前に、あらかじめ、
(a1)板厚sの焼き入れ処理された鋼板を種々の通電条件でスポット溶接し、通電条件毎に、ナゲット径Lと溶接熱影響部に発生する軟化部の軟化量ΔHvと溶接継手の十字引張強さCTSを測定し、
(a2)通電条件毎に溶接熱影響部の温度履歴を計算し、該温度履歴から焼戻しパラメータλを計算して、焼戻しパラメータλと軟化量ΔHvとの関係を求め、
(a3)軟化量ΔHvから下記(1)式を用いて通電条件毎の軟化度合Nを計算し、
(a4)十字引張強さCTSを、下記(2)式を用いて軟化度合Nと板厚sとナゲット径Lの関数として予測しておき、
(B)ついで、本溶接にあたり、
(b1)設定した本溶接の通電条件から前記(a2)と同様にして焼戻しパラメータλを計算し、
(b2)焼戻しパラメータλから前記(a2)で求めた関係を用いて軟化量ΔHvを求め、
(b3)軟化量ΔHvから下記(1)式を用いて軟化度合Nを求め、
(b4)軟化度合Nから下記(2)式を用いて設定した通電条件で溶接したスポット溶接継手の十字引張強さCTSを求める、
ことを特徴とする焼き入れ処理された鋼板のスポット溶接における十字引張強さCTSの予測方法。
ここで、A、α、β、γは定数であり、それぞれ0.10≦A≦0.15、0.6≦α≦0.7、β=0.5である。 - 焼き入れ処理された鋼板のスポット溶接において、鋼板の板厚と設定した通電条件から請求項1に記載の予測方法によって十字引張強さCTSを予測し、予測された十字引張強さCTSの値があらかじめ設定した基準値を下回るときは、再度通電条件を設定して十字引張強さCTSの値を予測し、その予測値が基準値を上回る通電条件でスポット溶接を実施することを特徴とする焼き入れ処理された鋼板のスポット溶接方法。
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