JP2013018863A - 高耐熱結晶性ポリエステルおよびその製造方法ならびにそれを用いたフィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ジカルボン酸成分とスピログリコール成分とからなる芳香族ポリエステルであって、全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、スピログリコール成分のモル数が81〜100モル%の範囲で、かつ数平均分子量が12000〜32000の範囲で、さらに分子量が6000以下である低分子量成分の割合が、高耐熱結晶性ポリエステルの質量を基準として、15質量%以下である高耐熱結晶性ポリエステルおよびそれを用いたフィルム。
【選択図】なし
Description
このように優れた芳香族ポリエステルではあるが、例えばフレキシブルプリント配線板等、耐熱性において高度な性能が求められる分野には適用が難しく、その改良が求められている。
しかしながら、これらに記載されているポリエステルは結晶性が極めて乏しく、製膜・延伸が難しいという問題があった。なお、これらの特許文献によれば、SPGの割合が60モル%を超えると成形性が乏しくなり、具体的に70モル%の場合、ひどく成形性が劣ることも教示されている。
全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、スピログリコール成分のモル数が81〜100モル%の範囲であること、そして
エステル化反応もしくはエステル交換反応を、触媒としてマンガン化合物およびチタン化合物の併存下で行い、重縮合反応を触媒としてさらにアンチモン化合物の存在下で行う高耐熱結晶性ポリエステルの製造方法、ならびに、上記本発明の高耐熱結晶性ポリエステルからなるフィルムも提供される。
本発明の芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分とスピログリコール成分とからなり、全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、スピログリコール成分のモル数が81〜100モル%の範囲である。該スピログリコールの割合が上記範囲内にあることで、得られる芳香族ポリエステルに高度の耐熱性と適度な結晶性と具備させることができ、耐熱性に優れたフィルムを、生産性良く製造することができる。好ましい、スピログリコール成分の割合は、85〜100モル%、90〜100モル%の範囲である。なお、スピログリコール成分以外のグリコール成分としては、特に制限はされないが、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールなどのアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコールなどを挙げることができる。これらの中でもエチレングリコールが耐熱性の観点から好ましい。
もちろん、本発明の高耐熱結晶性ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の共重合成分を、例えば10モル%以下の範囲で共重合してもよい。
そこで、以下に、低分子量成分を抑えるための方法の一例として、本発明の高耐熱結晶性ポリエステルの製造方法を説明する。
また、本発明の高耐熱結晶性ポリエステルは、安定剤としてそれ自体公知のリン化合物を含んだほうが良く、リン化合物の中ではホスホネート化合物を用いることが好ましい。また、その添加時期は任意の時期で良い。
もちろん、本発明の芳香族ポリエステルは、成形品の取扱い性などを考慮し、本発明の効果を阻害しない範囲で、不活性粒子(無機粒子や有機粒子など)や各種機能剤(例えば可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤)などを含有させたり、他のポリマーを少量、例えば20質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下の範囲で混合したりした組成物として用いても良い。
本発明のフィルムは、前述の高耐熱結晶性ポリエステルからなり、機械的特性を高度に具備させるために、二軸方向、すなわちフィルムの製膜方向(以下、長手方向または縦方向と称することがある。)とフィルムの幅方向(以下、横方向と称することがある。)とに延伸された二軸配向フィルムであることが好ましい。
フェノール/2,4,6−トリクロロフェノール=3/2の質量比の混合溶液中、40℃で測定した。なお、単位はdl/gである。
本試験では、簡易評価として下記の方法でテストフィルムを作成し評価した。
ポリエステル樹脂組成物からなるペレットを、170℃で5時間乾燥した後、1軸の溶融混練押出機に供給し、融点+10℃の温度にて溶融状態でダイから回転冷却ドラムの上にシート状に押出し、急冷固化した後に125℃にて製膜方向および幅方向にそれぞれ3.5倍に延伸し、260℃で製膜方向および幅方向にそれぞれ2%収縮させつつ熱固定し、厚み75μmの二軸配向フィルムを得る。
得られたフィルムから、押出方向を縦、幅方向を横として、縦、横100mmの正方形試験片を切り出し、この試験片を260℃のメタルバス中で暖めたビーカーに貼り付け30秒経過後取り出し、5%以上の収縮や丸まりといった変形がなければ耐熱性良好と判断した。
TA Instruments社製、熱示差分析計DSC2920を使用し、20℃/分で350℃まで昇温し、融解ピーク温度(Tm)を求めた。
試料を重トリフルオロ酢酸:重水素化クロロホルム(1:1)混合溶媒に溶解し、日本電子製NMR JEOL A−600を用いてスピログリコール成分を定量した。
試料3mgをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)1mLに溶解したのちクロロホルム11mLを加えて希釈し、SHODEX GPC 101(クロロホルム溶媒、リファレンス:ポリスチレン)にて、カラムとしてLF−804を2本使用し、温度40℃、流量1ml/minにて流しUVにて検出した。また、低分子量成分の含有量は、得られた分子量から分子量6000以下のピークと全体との面積比で算出した。
ポリエステル樹脂組成物からなるペレットを、170℃で5時間乾燥した後、1軸の溶融混練押出機に供給し、融点より10℃高い温度まで加熱して溶融状態でダイから回転冷却ドラムの上にシート状に押出し、急冷固化し、厚さ250μmの原反を得た。それを10cm角に切り出し、140℃にて製膜方向および幅方向にそれぞれ6倍に二軸延伸したとき、延伸速度に追随できず途中で破断したものを製膜延伸性×とし、破断せずに均一な延伸フィルムが得られたものを製膜延伸性○とした。
蛍光X線装置(リガクZSX)にて定量した。
TA Instruments社製、熱示差分析計DSC2920を使用し、20℃/分で350℃まで昇温したときの、発熱ピーク(Tci)の熱量(ΔH)J/gが5J/gを超えるものを結晶性良好とした。
撹拌装置、精留塔、凝縮器を備えたエステル交換反応器に、ジメチルテレフタル酸100モル%とスピログリコール82モル%、エチレングリコール40モル%、酢酸マンガン、チタンテトラブトキシレート、トリエチルホスホノアセテートを表1に示す量(全酸成分のモル数を基準としたときの、mmol%)となるように供給した後、230℃まで徐々に昇温し、生成したメタノールを連続的に反応系外へ留出させながらエステル交換反応を行った。理論量のメタノールの留去確認後、こうして得られた反応物に重縮合触媒として三酸化二アンチモンを加え、引き続いて250℃まで昇温しつつ、第一段階として30分間、常圧(1.01×105Pa)で反応を続けた。その後、300℃まで昇温しつつ、圧力を、第二段階として4×103〜8×103Pa、第三段階として30〜400Paまで減圧してエチレングリコールを連続的に留出させながら重縮合反応を行い、固有粘度0.70dl/gの芳香族ポリエステルを得た。
得られた芳香族ポリエステルを、縦2mm、横4mmの楕円断面を有するストランドとして押出し、水で冷却した後、長さ4mmにカットして、一粒あたり、平均質量30〜35mgの芳香族ポリエステルのチップとした。
得られた芳香族ポリエステルのチップを、前述の(2)耐熱性試験に記載した条件により製膜して、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた高耐熱結晶性ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
撹拌装置、精留塔、凝縮器を備えたエステル交換反応器に、ジメチルテレフタル酸100モル%とスピログリコール90モル%、エチレングリコール20モル%とし、触媒を表1に示す量にした他は実施例1と同様にして芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルチップを得た。その後、得られた芳香族ポリエステルのチップを、前述の(2)耐熱性試験に記載した条件により製膜して、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた高耐熱結晶性ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
撹拌装置、精留塔、凝縮器を備えたエステル交換反応器に、ジメチルテレフタル酸100モル%とスピログリコール100モル%、触媒を表1に示す量にした他は実施例1と同様条件にてエステル交換反応を行い、重縮合触媒を添加後、310℃に昇温しつつ、実施例1と同様に第一段階、第二段階、第三段階の3つの真空度に段階的に切替え、重合をおこなった。その他は、実施例1と同様にして芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルチップを得た。
その後、得られた芳香族ポリエステルのチップを、前述の(2)耐熱性試験に記載した条件により製膜して、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた高耐熱結晶性ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
撹拌装置、精留塔、凝縮器を備えたエステル交換反応器に、ジメチルテレフタル酸93モル%と2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル7モル%、スピログリコール82モル%、エチレングリコール40モル%、触媒を表1に示す量にした他は実施例1と同様条件にてエステル交換反応を行い、重縮合触媒を添加後、310℃に昇温しつつ、実施例1と同様に第一段階、第二段階、第三段階の3つの真空度に段階的に切替え、重合をおこなった。その他は実施例1と同様にして芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルチップを得た。その後、得られた芳香族ポリエステルのチップを、前述の(2)耐熱性試験に記載した条件により製膜して、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた高耐熱結晶性ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
実施例4において、ジメチルテレフタル酸97モル%、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル3モル%、スピログリコール95モル%、エチレングリコール10モル%に変更した他は、同様な操作を繰り返して、芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルチップを得た。その後、得られた芳香族ポリエステルのチップを、前述の(2)耐熱性試験に記載した条件により製膜して、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた高耐熱結晶性ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
特開2008−169260の実施例1を参考にして、ジカルボン酸成分をジメチルテレフタル酸100モル%とスピログリコール82モル%、エチレングリコール40モル%、エステル交換触媒として酢酸マンガンを選択し、250℃にてエステル交換を実施、引き続き重合触媒として二酸化三アンチモンを添加し、300℃に昇温、徐々に減圧し重合反応を実施した。しかし、エステル交換反応でのメタノールの留出に途中から滞りが見られ、250℃で理論量のメタノールを留去できなかった。そのため、仕方なく二酸化三アンチモンを添加、300℃に昇温を開始し、重合反応へと進んだ。その影響か、重合途中からゴムのような弾性を示すようになり、分子量分布を測定すると主ピークの他に低分子側にもピークがあり、そのピーク面積比からポリマー質量の約30wt%がゲル化していると見積もれた。その他は実施例1と同様にして芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルチップを得た。その後、得られた芳香族ポリエステルのチップを、前述の(2)耐熱性試験に記載した条件により製膜して、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた高耐熱結晶性ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
撹拌装置、精留塔、凝縮器を備えたエステル交換反応器に、テレフタル酸ジメチル100モル%、エチレングリコール200モル%及び触媒を表1に示す量となるよう加え、250℃まで徐々に昇温しつつ、生成したメタノールを連続的に反応系外へ留出させながらエステル交換反応を行った。理論量のメタノールの留去確認後、こうして得られた反応物に重縮合触媒として三酸化二アンチモンを加え、引き続いて300℃まで昇温しつつ、徐々に減圧し、最終的に30〜400Paまで減圧してエチレングリコールを連続的に留出させながら重縮合反応を行い、固有粘度0.70の芳香族ポリエステルを得た。その他は実施例1と同様にして芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルチップを得た。その後、得られた芳香族ポリエステルのチップを、前述の(2)耐熱性試験に記載した条件により製膜して、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた高耐熱結晶性ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
触媒を表1に示す量となるよう変更する以外は実施例3と同様の方法で重合を実施したが、やはりエステル交換反応でのメタノール留出が途中から滞り、最終的に弾力のあるもろいポリマーとなってしまった。しかし、融点を測ると実施例3とほぼ同じ値が得られた。その他は実施例1と同様にして芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルチップを得た。その後、得られた芳香族ポリエステルのチップを、前述の(2)耐熱性試験に記載した条件により製膜して、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた高耐熱結晶性ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。
ジカルボン酸成分をジメチルテレフタル酸100モル%とスピログリコール50モル%、エチレングリコール100モル%に変える以外は実施例1と同等の条件で反応を行った。その他は実施例1と同様にして芳香族ポリエステル、芳香族ポリエステルチップを得た。その後、得られた芳香族ポリエステルのチップを、前述の(2)耐熱性試験に記載した条件により製膜して、厚み75μmの二軸配向フィルムを得た。
得られた高耐熱結晶性ポリエステルとフィルムの特性を表1に示す。ポリマーは得られたものの、表1に※−とあるように結晶性が認められない、すなわち非晶性のポリマーであり、耐熱性も比較例2と同等であった。
Claims (5)
- 芳香族ジカルボン酸成分とスピログリコール成分とからなる芳香族ポリエステルであって、全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、スピログリコール成分のモル数が81〜100モル%の範囲で、かつ数平均分子量が12000〜32000の範囲で、さらに分子量が6000以下である低分子量成分の割合が、高耐熱結晶性ポリエステルの質量を基準として、15質量%以下であることを特徴とする高耐熱結晶性ポリエステル。
- 触媒残渣として、マンガン化合物、チタン化合物およびアンチモン化合物を含有する請求項1記載の高耐熱結晶性ポリエステル。
- 触媒残渣であるマンガン化合物、チタン化合物およびアンチモン化合物の含有量が、それぞれ高耐熱結晶性ポリエステルの質量を基準として、マンガン金属元素量で50〜230ppm、チタン金属元素量で2〜75ppmおよびアンチモン金属元素量で60〜320ppmの範囲にある請求項2記載の高耐熱結晶性ポリエステル。
- 芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステル形成性誘導体とスピログリコールとを、エステル化反応もしくはエステル交換反応させた後、重縮合反応させる芳香族ポリエステルの製造方法であって、
全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、スピログリコール成分のモル数が81〜100モル%の範囲であること、そして
エステル化反応もしくはエステル交換反応を、触媒としてマンガン化合物およびチタン化合物の併存下で行い、重縮合反応を触媒としてさらにアンチモン化合物の存在下で行うことを特徴とする高耐熱結晶性ポリエステルの製造方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の高耐熱結晶性ポリエステルからなるフィルム。
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