[本発明の概要]
本発明は、内視鏡手術のトレーニングを行う内視鏡トレーニングシステムにおいて、内視鏡技術として必要とされる技能ごとに、異なる内容のトレーニングを行うための複数のタスクボックスを、内視鏡手術における指導項目と関連させて備えるものである。
具体的には、内視鏡手術における指導項目に応じて、内視鏡手術に必要な技術を素因数分解的に複数のトレーニング内容に分割し、分割したトレーニング内容ごとにタスクボックスを準備し、各タスクボックスにより行われるトレーニング内容の評価指標を、各指導項目に関連させる。これにより、本発明は、高度な内視鏡技術について、定量的・客観的な技能評価を可能とし、指導医によらずとも、サイコモータスキル等といった高度な技術が習得できるように、独自に効率的なトレーニングを行うことを可能とするものである。
[本発明に係る内視鏡トレーニングシステムの概念]
図1に、本発明に係る内視鏡トレーニングシステムの概念図を示す。図1に示すように、本発明に係る内視鏡トレーニングシステム100は、内視鏡手術のトレーニングを行うものであり、内視鏡手術に必要とされる技術を複数のトレーニング内容に分割し、トレーニング内容ごとに準備される複数のタスクボックス200を備える。
各タスクボックス200は、トレーニング内容に対応する操作を受ける操作対象を内部に有する。このタスクボックス200が有する操作対象は、例えば内視鏡手術が行われる患部を模擬した生体模型等である。タスクボックス200は、一面側に開口部200aを有し、この開口部200aから、タスクボックス200内の操作対象への操作が行われる。タスクボックス200は、内視鏡トレーニングシステム100が備えるタスクボックス保持部としてのタスクボックススロット300に挿入され保持される。
タスクボックススロット300は、タスクボックス200が挿入される挿入口300aを有し、挿入口300aから挿入された1個のタスクボックス200を保持する。タスクボックススロット300は、タスクボックス200内の操作対象が操作を受ける側(開口部200a側)が挿入口300aの開口側を向くように挿入口300aから挿入されたタスクボックス200を保持する。
つまり、タスクボックス200がタスクボックススロット300に保持された状態においては、タスクボックススロット300の挿入口300aとタスクボックス200の開口部200aとは同じ側を向く。トレーニングする者(以下「訓練者」という。)は、タスクボックススロット300の挿入口300aに対向するように位置し、トレーニングとして、タスクボックススロット300に挿入されセットされたタスクボックス200の操作対象に対する操作を、開口部200a側から行う。
訓練者は、内視鏡と、鉗子やプローブ等の手術器具とを用いて、タスクボックス200の操作対象に対する操作を行う。訓練者は、例えば、内視鏡によりタスクボックス200の操作対象の任意の場所を映し、モニタにより映し出される映像を見ながら、鉗子等の手術器具による操作を行う。
訓練者による操作を受けるタスクボックス200の操作対象は、タスクボックススロット300の挿入口300aに装着される蓋部によって覆われ、隠された状態とされる。つまり、訓練者は、タスクボックス200の操作対象が挿入口300aに装着される蓋部により隠された状態において、蓋部を介して、タスクボックス200の内部の様子を内視鏡による映像で確認しながら操作を行う。このため、蓋部には、内視鏡および手術器具を貫通させ、訓練者による操作対象に対する操作を可能とするための孔部が設けられる。
このように、タスクボックススロット300の挿入口300aに装着されタスクボックス200の操作対象を隠す蓋部は、タスクボックススロット300の挿入口300aを覆うとともに、内視鏡および操作対象の操作に用いる手術器具を貫通させ、内視鏡および手術器具による操作対象に対する操作を許容する。
図1に示すように、内視鏡トレーニングシステム100は、表示部としてのタッチパネル400を備える。タッチパネル400は、タスクボックススロット300にセットされたタスクボックス200のトレーニング内容に応じた映像を表示する。タッチパネル400は、トレーニングを行う訓練者が操作可能な位置に配置される。
タッチパネル400には、トレーニングの開始・進行・終了等を実行するための表示や、トレーニング内容についての結果等が表示される。訓練者は、タッチパネル400の表示内容にならって画面にタッチし、適宜トレーニングを進める。このように、表示部としてのタッチパネル400は、トレーニングを進めるために訓練者により操作される操作部としての機能も兼ねる。
タッチパネル400に表示される内容は、内視鏡トレーニングシステム100が備える制御部により制御される。制御部は、タスクボックススロット300に挿入されセットされたタスクボックス200に対応するトレーニング内容を識別し、識別したトレーニング内容に応じた制御情報を出力する。
そして、タッチパネル400は、制御部から出力された制御情報に基づき、トレーニング内容に応じた映像を表示する。タスクボックススロット300にセットされたタスクボックス200のトレーニング内容は、タスクボックス200およびタスクボックススロット300がそれぞれ有する所定のコネクタ同士が互いに接続されることで、制御部により認識される。
以上のような構成を備える内視鏡トレーニングシステム100において、タスクボックス200ごとに異なる各トレーニング内容は、例えば、あらかじめ設定されたトレーニング内容を達成するまでの所要時間やトレーニング内容の達成度等の複数の技能評価項目を有する。つまり、各トレーニング内容は、訓練者により行われたトレーニングに関し、そのトレーニング内容に対して訓練者が有する技能を定量的・客観的に表すための評価指標として、トレーニング内容を達成するまでの所要時間等の複数の技能評価項目を有する。
そして、各タスクボックス200によるトレーニング内容は、内視鏡の種類に応じて設定される、内視鏡手術のトレーニングについての複数の指導項目に対して相関関係を有する。内視鏡には、関節鏡、腹腔鏡、胸腔鏡、喉頭内視鏡、小腸内視鏡、大腸内視鏡、カプセル内視鏡等、様々な種類が存在する。各内視鏡を用いた手術において内視鏡技術として必要とされる技能は、内視鏡の種類によって異なる。そこで、内視鏡の種類ごとに、内視鏡手術のトレーニングについての指導項目が存在する。指導項目は、内視鏡手術のトレーニングにおいて指導医等となる専門医が、訓練者に対して指摘・指導する項目である。
このように、各トレーニング内容が複数の指導項目と相関関係を有することにより、訓練者は効率的なトレーニングを行うことができる。また、各トレーニング内容について、例えばトレーニング内容を達成するまでの所要時間等の評価指標による評価結果を用いることで、評価の低いトレーニング内容と関連性が高い指導項目についての技能が未熟であるといった客観的な評価を行うことが可能となる。また、トレーニング内容の評価指標であるトレーニング内容を達成するまでの所要時間等の値を参照することで、トレーニング内容についての定量的な評価を行うことが可能となる。
このように、本実施形態に係る内視鏡トレーニングシステム100によれば、関節鏡技術のような高度な内視鏡技術について、定量的・客観的な評価を行うことができ、効率的なトレーニングを行うことができる。
また、各トレーニング内容に限らず、各トレーニング内容の技能評価項目が、内視鏡手術のトレーニングについての複数の指導項目に対して相関関係を有することが好ましい。このように、各トレーニング内容の技能評価項目が複数の指導項目と相関関係を有することにより、内視鏡手術について、より定量的・客観的な評価を行うことができ、より効率的なトレーニングを行うことができる。
具体的には、訓練者が、複数のタスクボックス200を用いて、各タスクボックス200のトレーニング内容に応じた操作対象に対する操作を行う。これにより、タスクボックス200ごとのトレーニング内容の各技能評価項目についての評価結果が得られる。
トレーニング内容の各技能評価項目は、上記のとおり複数の指導項目に対して関連性を有し、相関関係を有する。ここで、トレーニング内容の技能評価項目が指導項目に対して関連性を有するとは、ある技能評価項目についての評価が向上することが、対応する指導項目についての技術が向上することに相当する関連性が存在することである。技能評価項目についての評価が向上することとしては、例えば技能評価項目が所要時間の場合にその所要時間が短くなること等が挙げられる。
訓練者は、タスクボックス200ごとのトレーニング内容の各技能評価項目についての評価結果から、複数の指導項目のうち、どの指導項目についての技能が不足しているか等、指導項目ごとに、自己の技能の状況を定量的・客観的に把握することができる。そこで、訓練者は、自己の技能の状況に応じて、例えば技能が不足している指導項目に対応する技能評価項目を有するトレーニング内容を重点的・集中的にトレーニングするように、タスクボックス200を選択し、トレーニングを行う。このようなトレーニングを行うことで、指導医によらずに、無駄のない効率的な自己トレーニングを行うことができる。
以下、本発明に係る内視鏡トレーニングシステムについて、実施の形態を用いてより具体的に説明する。なお、以下に説明する実施の形態では、本発明に係る内視鏡として、整形外科領域にて用いられる関節鏡を例に挙げる。つまり、以下に説明する実施の形態では、本発明に係る内視鏡トレーニングシステムの一例である関節鏡トレーニングシステムについて説明する。
[関節鏡トレーニングシステムの構成]
図2から図10を用いて、本実施形態に係る関節鏡トレーニングシステム1の構成について説明する。関節鏡トレーニングシステム1は、関節鏡手術のトレーニングを行うものである。関節鏡手術は、関節鏡と、鉗子等の手術器具とが用いられて行われる。
このため、図3に示すように、関節鏡トレーニングシステム1を使用する訓練者50は、関節鏡手術に用いられる関節鏡技術として、関節鏡51および手術器具52の操作技術のトレーニングを行う。図3では、訓練者50が左手で関節鏡51を操作し、右手で手術器具52の一例である鉗子を操作する例が示されている。
本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1は、システム本体2と、複数のタスクボックス3と、タッチパネル4とを備える。関節鏡トレーニングシステム1は、関節鏡手術に必要とされる技術を複数のトレーニング内容に分割し、各内容のトレーニングを行うため、複数のタスクボックス3を備える。このため、複数のタスクボックス3は、トレーニング内容ごとに準備される。
図3に示すように、関節鏡トレーニングシステム1を使用する訓練者50は、システム本体2に対向するように位置し、トレーニングを行う。以下の説明では、システム本体2に対向するように位置する訓練者50からみた左右方向および上下方向を、それぞれ関節鏡トレーニングシステム1のシステム本体2における左右方向および上下方向とする。
システム本体2は、制御部としての制御ボックス5と、タスクボックス保持部としてのタスクボックススロット6とを有する。制御ボックス5は、互いに反対側に位置する一対の面部が外側に凸な曲面として形成された略箱状の外形を有する。タスクボックススロット6は、制御ボックス5と略同じ外形を有し、全体的に制御ボックス5よりも一回り小さい外形寸法を有する。制御ボックス5およびタスクボックススロット6は、いずれも、トレーニングを行う訓練者50から見て左右両側に、上記のとおり外側に凸な曲面として形成された一対の面部が位置するように配置される。
タスクボックススロット6は、制御ボックス5の上方に設けられる。システム本体2は、机や台等の所定の載置面53上に置かれた状態で用いられる。システム本体2は、制御ボックス5を載置面53上に載せた状態で、載置面53上に置かれる。
タスクボックススロット6は、制御ボックス5の上面5aに設けられる支持機構10を介して設けられる。支持機構10は、制御ボックス5の上面5aに立った状態で設けられる支持板11を有する。支持板11は、矩形板状の外形を有する部材であり、その長手方向が上下方向となるように設けられる。支持板11に、タスクボックススロット6が支持される。
支持機構10の詳細な構成について、図5を用いて説明する。支持機構10は、タスクボックススロット6を、昇降可能かつ回転可能に支持する。図5に示すように、支持機構10は、上記のとおり上面5aに設けられる支持板11を有する。
支持板11は、矩形板状の外形の周縁に、矩形板状の部分から後側に略直角に折れ曲った縁部11aを有する。つまり、支持板11の後側は、上下両側および左右両側から縁部11aによって囲まれる。縁部11aのうち、支持板11の下側の辺部に沿う下縁部11bが、制御ボックス5の上面5aにネジ等の固定具12により固定されることで、支持板11が上面5aに固定される。
支持板11は、支持板11の長手方向に沿う長孔11cを有する。長孔11cは、制御ボックス5上に設けられた支持板11において左右方向の略中央位置にて、支持板11の上下方向の略全体にわたって形成される。タスクボックススロット6は、その背面6bを、支持板11の正面11d(図4参照)側に対向させた状態で、支持板11により支持される。
支持機構10は、長孔11cにより支持板11を貫通してタスクボックススロット6の背面6b側に連結される支持体13を有する。支持体13は、円板状の外形を有し、長孔11cの幅寸法よりも大きい外径を有する。支持体13は、円板状の外形における中心軸方向が前後方向となる姿勢で、タスクボックススロット6の背面6b側との間に支持板11を挟んだ状態で設けられる。タスクボックススロット6は、支持体13との間に支持板11を挟持することで、支持板11に支持される。
タスクボックススロット6と支持体13とにより支持板11を挟持した状態と、支持板11の挟持が解除された状態とは、操作レバー14の操作により切り換えられる。操作レバー14は、回転軸の位置を円板状の支持体13の中心軸の位置に一致させ、回転操作可能に設けられる(矢印A1参照)。操作レバー14は、回転基部を支持体13の部分に位置させ、支持体13の径方向に延びる形状を有する。
操作レバー14の操作により、タスクボックススロット6と支持体13とによる支持板11の挟持が解除されることで、タスクボックススロット6の昇降動作および回転動作が許容される。タスクボックススロット6は、支持体13および操作レバー14とともに長孔11cに沿って上下方向に移動することで、所定の範囲で昇降動作する(矢印A2参照)。また、タスクボックススロット6は、操作レバー14の回転軸と同じ位置の回転軸を中心に回転することで、回転動作する(矢印A3参照)。タスクボックススロット6は、操作レバー14の操作により、上下方向および回転方向について任意の位置で、支持体13とともに支持板11を挟持することで、支持板11に固定され支持される。
また、支持機構10は、タスクボックススロット6の昇降動作を支持するためのリール機構15を有する。リール機構15は、支持体13と同様に支持板11の裏側に設けられ、板バネ16により、タスクボックススロット6と一体的に昇降する支持体13を介して、タスクボックススロット6を支持する。
リール機構15は、板バネ16と、板バネ16を巻回する回転リール17と、回転リール17を回転可能に支持する支持ステー18とを有する。支持ステー18は、門状の形状を有する板状の部材であり、支持板11の縁部11aのうち、支持板11の上側の辺部に沿う上縁部11eに対して下側に固定される。支持ステー18は、例えば、縁部11aの上縁部11eを上下方向に貫通するネジ等の固定具18aにより固定される。
回転リール17は、門状の支持ステー18の内側にて、支持ステー18により、左右方向を回転軸方向として支持される。回転リール17に巻回される板バネ16は、例えば金属製の帯状の部材であり、リール機構15の下側に位置する支持体13に連結される。板バネ16は、回転リール17から下方に延びる先端部を、支持体13の上端部にピン等の固定部材16aにより固定させることで、支持体13に連結される。
このような構成を有するリール機構15により、タスクボックススロット6が下降することで、回転リール17の回転をともなって板バネ16が引き出され、タスクボックススロット6が上昇することで、板バネ16の弾性により、回転リール17の回転をともなって板バネ16が巻き取られる。このようにタスクボックススロット6を支持するリール機構15によれば、操作レバー14の操作によって支持板11の挟持状態を解除した際におけるタスクボックススロット6の急な落下が防止される。したがって、リール機構15は、板バネ16により、タスクボックススロット6が自重で落下しない程度の力で、タスクボックススロット6を支持する。
以上のような構成を有する支持機構10により、タスクボックススロット6が昇降および回転が可能な状態で支持される。
制御ボックス5は、関節鏡トレーニングシステム1によるトレーニングにおいて所定の制御を行うための制御構成を内蔵する。制御ボックス5は、あらかじめ記憶されている制御プログラムにしたがって所定の処理を実行することにより、関節鏡トレーニングシステム1を制御する。制御ボックス5は、データ通信用のバス等により接続されるCPUやメモリや複数の入出力インターフェース等の各種機能部分を有し、バス等を介して各種情報の送受信を行う。
図4に示すように、タスクボックススロット6は、タスクボックス3が挿入される挿入口6aを有し、挿入口6aから挿入された1個のタスクボックス3を保持する。タスクボックススロット6は、上記のとおり略箱状の外形を有しながら、中空状に構成され、タスクボックススロット6の一面側に設けられる挿入口6aにより、内部空間を外部に開口させる。タスクボックススロット6は、その内部空間に1個のタスクボックス3を挿入させ、挿入口6aからタスクボックス3を外部に臨ませた状態で保持する。
タスクボックス3は、タスクボックススロット6に対してカートリッジ式に構成される。図6(a)、(b)に示すように、タスクボックス3は、略直方体状の外形を有し、トレーニング内容に対応する操作を受ける操作対象20を内部に有する。タスクボックス3は、略直方体状の外形における一面側に、開口部3aを有する。タスクボックス3は、開口部3aによって外部に開放される操作対象20の収容空間を有し、この収納空間の内部に操作対象20が設けられる。操作対象20は、開口部3a側から操作を受ける。なお、図6(a)は、タスクボックス3を正面側(開口部3a側)から見た斜視図であり、同図(b)は、タスクボックス3を背面側から見た斜視図である。
タスクボックス3の開口部3aは、訓練者50による関節鏡51および手術器具52の動作範囲を規定する。つまり、訓練者50によるタスクボックス3内の操作対象20に対する関節鏡51および手術器具52の操作範囲は、開口部3aの寸法により規定される。
関節鏡51および手術器具52を動かす範囲は、通常、幅80〜120mm、高さ30〜70mm、奥行40〜80mmの範囲である。このため、タスクボックス3の開口部3aの幅、高さ、および奥行の各寸法が、上記の各範囲内の値に設定されることで、関節鏡手術のトレーニングとして良好な操作感が得られる。特に、関節鏡トレーニングにおいては、タスクボックス3の開口部3aの幅、高さ、および奥行の各寸法が、それぞれ85mm×40mm×70mmに設定されることが最適な操作感を得るうえで好ましい。
タスクボックス3が有する操作対象20は、例えば関節鏡手術が行われる患部を模した生体模型等である。図6(a)には、操作対象20の一例として、関節鏡手術が行われる膝関節の模型を含む構造が示されている。
また、図7に示すように、タスクボックス3は、タスクボックススロット6の挿入口6aに挿入された状態から引き出されるための把持体31を有する。把持体31は、タスクボックス3の略直方体状の外形における底面3c側に設けられる。
把持体31は、略矩形板状の部材であり、タスクボックス3の底面3cに沿って、開口部3a側を前側とした場合に前後方向(図7における上下方向)に移動可能に設けられる(図7、矢印B1参照)。把持体31は、前側の辺部に沿う把持部31aを有する。把持部31aは、板状の部材である把持体31を貫通する矩形状の開口31bとともに形成される。
把持体31は、2箇所の係止部32と、2箇所の留め部33とにより、タスクボックス3の底面3cに沿って前後方向に移動可能に支持される。係止部32は、タスクボックス3の底面3cの前側(開口部3a側)の端部において把持体31の左右両側に位置するように設けられる。
係止部32は、板状の係止部材32aがねじ等の固定具32bにより底面3cに固定されることで構成される。係止部32を構成する係止部材32aは、固定具32bにより底面3cに固定される固定部32cと、底面3cに対して所定の間隔を隔てて対向する面を形成し、底面3cとの間に把持体31を支持する支持部32dとを有する。
留め部33は、板状の把持体31を貫通するとともにタスクボックス3の底面3cに固定される留め具33aにより構成される。2箇所の留め部33は、把持体31の前後方向における中間部にて、左右方向に所定の間隔を隔てた位置に設けられる。留め具33aは、把持体31に形成される長孔31cを貫通して底面3cに固定される。長孔31cは、把持体31の移動方向を長手方向とし、把持体31の移動を許容するとともに、把持体31の移動方向を規制する。この長孔31cに沿う把持体31の移動が、係止部32によりガイドされる。
このように前後方向に移動可能に支持される把持体31が用いられ、タスクボックススロット6の挿入口6aに挿入された状態のタスクボックス3が、挿入口6aから引き出される。把持体31は、その全体がタスクボックス3の底面3cに重なるように収納された状態から、把持部31aが開口部3a側に突出する状態(図7、二点鎖線参照)となるまで引き出される。開口部3a側に突出した把持部31aが把持され、挿入口6aに挿入された状態のタスクボックス3が引き出される。以上のような構成を有するタスクボックス3が、タスクボックススロット6に挿入され保持される。
タスクボックススロット6は、タスクボックス3内の操作対象20が操作を受ける側(開口部3a側)が挿入口6aの開口側を向くように挿入口6aから挿入されたタスクボックス3を保持する。つまり、タスクボックス3がタスクボックススロット6に保持された状態においては、タスクボックススロット6の挿入口6aとタスクボックス3の開口部3aとは同じ側を向く。言い換えると、略直方体状の外形を有するタスクボックス3は、開口部3a側を正面側とした場合、正面側と反対側の背面側から、挿入口6aに挿入される。挿入口6aは、タスクボックス3の外形に対応して略長方形状の開口形状を有する。
訓練者50は、タスクボックススロット6の挿入口6aに対向するように位置し、トレーニングとして、タスクボックススロット6に挿入されセットされたタスクボックス3の操作対象20に対する操作を、開口部3a側から行う。以下の説明では、システム本体2において、タスクボックススロット6の挿入口6aが開口する側を正面側とし、その反対側を背面側とする。
図3に示すように、訓練者50は、関節鏡51と、鉗子やプローブ等の手術器具52とを用いて、タスクボックス3の操作対象20(図4参照)に対する操作を行う。つまり、関節鏡手術のトレーニングを行う訓練者50は、関節鏡51により映される関節鏡映像(内視鏡映像)を見ながら、タスクボックス3の操作対象20に対する操作を行う。図3に示すように、関節鏡51により取得される映像は、所定のモニタ54により映し出される。モニタ54は、トレーニングを行う訓練者50により視認できる位置に配置される。訓練者50は、例えば、関節鏡51によりタスクボックス3の操作対象20の任意の場所を映し、モニタ54により映し出される関節鏡映像54aを見ながら、鉗子等の手術器具52による操作を行う。
訓練者50による操作を受けるタスクボックス3の操作対象20は、タスクボックススロット6の挿入口6aに装着される蓋体40によって覆われ、隠された状態とされる。つまり、訓練者50は、タスクボックス3の操作対象20が挿入口6aに装着される蓋体40により覆い隠された状態において、蓋体40を介して、タスクボックス3の内部の様子を関節鏡51によるモニタ54の関節鏡映像54aで確認しながら操作を行う。
図8に示すように、蓋体40は、タスクボックススロット6の正面側に開口する挿入口6aを覆う略矩形板状の部材であり、タスクボックススロット6の正面側に取り付けられる。このため、蓋体40は、少なくとも挿入口6aの開口面積よりも大きい外形寸法を有する。なお、図2および図3では、蓋体40がタスクボックススロット6に取り付けられた状態が示されており、図4では、蓋体40がタスクボックススロット6から取り外された状態が示されている。また、図8では、蓋体40のタスクボックススロット6に対する取付けまたは取外しの過程の状態が示されている。
図9(a)に示すように、蓋体40には、訓練者50により操作される関節鏡51および手術器具52を貫通させ、訓練者50による操作対象20に対する操作を可能とするための孔部41が設けられる。本実施形態では、蓋体40は、2つの孔部41を有する。2つの孔部41は、タスクボックススロット6に取り付けられた状態で、同じ高さに位置し、左右方向に所定の間隔を隔てて設けられる。2つの孔部41のうち、一方の孔部41は、関節鏡51を貫通させ、他方の孔部41は、鉗子等の手術器具52を貫通させる。
図9(a)に示すように、孔部41は、蓋体40がタスクボックススロット6に取り付けられた状態での上下方向を長手方向とする短冊状の開口42を形成する。開口42は、ゴム等の弾性材料により構成される閉塞パネル43により塞がれる。閉塞パネル43には、関節鏡51または手術器具52を貫通させるための切込み43aが形成されている。
切込み43aは、開口42の中央部にて、開口42の長手方向に沿って直線状に形成される。関節鏡51または手術器具52は、開口42を塞ぐ閉塞パネル43の切込み43aを貫通することで、孔部41を貫通する。閉塞パネル43は、切込み43aにより、孔部41を貫通する関節鏡51および手術器具52を操作する訓練者50に対して、関節鏡51または手術器具52の操作にともなう抵抗感を与える。このため、閉塞パネル43の切込み43aは、貫通させる関節鏡51または手術器具52に対して、閉塞パネル43が接触することによる、訓練者50の操作による移動にともなう抵抗が作用するように形成される。
図9(a)、(b)に示すように、閉塞パネル43は、蓋体40の裏面40aに貼り付けられ、蓋体40の裏側から開口42を覆う。図9(b)は、同図(a)におけるX−X矢視断面図である。本実施形態では、2つの孔部41の開口42は、1枚の矩形状の閉塞パネル43により覆われる。このため、閉塞パネル43は、少なくとも2つの孔部41の開口42が設けられる範囲を覆うことができる大きさを有する。ただし、閉塞パネル43は、孔部41ごとに設けられてもよい。
孔部41において開口42を塞ぐ閉塞パネル43は、実際の関節鏡手術に近い感覚を得るための部材である。本実施形態では、閉塞パネル43は、図9(b)に示すように、一般的な合成ゴムからなる表側層43bと、多数の気泡を含むスポンジ状の発泡ゴムからなる裏側層43cとの2層構造を有する。裏側層43cは、表側層43bに対して比較的柔らかい軟組織である。閉塞パネル43は、蓋体40の表側(図9(b)における左側)において、表側層43b側を開口42に臨ませた状態で、蓋体40の裏面40aに貼り付けられる。
このように、閉塞パネル43は、表側層43bにより、人体における皮膚の表皮部分を模擬し、裏側層43cにより、表皮部分の下にある真皮や脂肪等の組織を模擬する。これにより、訓練者50は、孔部41において閉塞パネル43の切込み43aに挿入された関節鏡51や手術器具52の操作にともなう抵抗感等について、実際の関節鏡手術に近い感覚を得ることができる。
蓋体40は、マグネットによる磁力で吸着されることで、タスクボックススロット6に取り付けられる。具体的には、図9(b)に示すように、略矩形板状の蓋体40は、上側の辺部に、裏面40a側に向けて略直角に折れ曲がった屈曲部40bを有する。蓋体40は、屈曲部40bを有することにより、略L字状の側面形状を有する(図9(b)参照)。
このような形状を有する蓋体40において、本体部分の裏面40aに第1マグネット44aが設けられ、屈曲部40bの下面40cに第2マグネット44bが設けられる。第1マグネット44aは、帯状の形状を有し、長手方向を蓋体40の左右方向として蓋体40の下辺に沿うように、蓋体40の左右方向の略全体にわたる範囲で、裏面40aに貼り付けられる。第2マグネット44bは、第1マグネット44aと同様に蓋体40の左右方向の略全体にわたる帯状の形状・寸法を有し、屈曲部40bの下面40cに貼り付けられる。
蓋体40は、図9(b)に示すように、裏面40aに設けられる第1マグネット44aをタスクボックススロット6の正面6cに吸着させ、下面40cに設けられる第2マグネット44bをタスクボックススロット6の上面6dに吸着させることで、タスクボックススロット6に取り付けられる。なお、蓋体40をタスクボックススロット6に吸着させるためのマグネットの配置や形状等は、本実施形態に限定されず、蓋体40をタスクボックススロット6に所望の吸着力で吸着させることができれば、適宜の配置や形状を採用することができる。
このように、磁力による吸着力によって蓋体40をタスクボックススロット6に取り付ける構成を採用することにより、蓋体40のタスクボックススロット6に対する取り付け位置を容易にずらすことができ、蓋体40の取り付け位置の微調整を容易に行うことができる。これにより、蓋体40の孔部41の位置などの観点から、関節鏡手術における関節鏡や手術器具の挿入位置や、患部までの距離感覚等、訓練者50によって異なる手術状況をより忠実に再現することが可能となる。
以上のような構成を有する蓋体40により、タスクボックススロット6にセットされたタスクボックス3の操作対象20は、訓練者50に対して覆い隠された状態とされる。以上のように、本実施形態では、蓋体40は、タスクボックススロット6の挿入口6aを覆うとともに、関節鏡51および操作対象20の操作に用いる手術器具52を貫通させ、関節鏡51および手術器具52による操作対象20に対する操作を許容する蓋部として機能する。そして、訓練者50は、上述したようにタスクボックス3の開口部3aの寸法により規定される範囲で、蓋体40を介して関節鏡51および手術器具52を操作し、操作対象20によるトレーニングを行う。
タッチパネル4は、タスクボックススロット6にセットされたタスクボックス3のトレーニング内容に応じた映像を表示する表示部として機能する。タッチパネル4は、トレーニングを行う訓練者50が操作可能な位置に配置される。例えば、タッチパネル4は、図3に示すように、載置面53上におけるシステム本体2の前に配置される。
タッチパネル4には、トレーニングの開始・進行・終了等を実行するための表示や、トレーニング内容についての結果等が表示される。訓練者50は、タッチパネル4の表示内容にならって画面にタッチし、適宜トレーニングを進める。このように、表示部としてのタッチパネル4は、トレーニングを進めるために訓練者50により操作される操作部としての機能も兼ねる。
タッチパネル4に表示される内容は、関節鏡トレーニングシステム1が備える制御部としての制御ボックス5により制御される。このため、タッチパネル4は、ケーブル4aにより制御ボックス5に接続される。制御ボックス5は、タスクボックススロット6に挿入されセットされたタスクボックス3に対応するトレーニング内容を識別し、識別したトレーニング内容に応じた制御情報を出力する。
そして、タッチパネル4は、制御ボックス5から出力された制御情報に基づき、トレーニング内容に応じた映像を表示する。タスクボックススロット6にセットされたタスクボックス3のトレーニング内容は、タスクボックス3およびタスクボックススロット6がそれぞれ有する所定のコネクタ同士が互いに接続されることで、制御ボックス5により認識される。
具体的には、図6(b)および図7に示すように、タスクボックス3においては、略直方体状の外形における背面3dに、コネクタ(以下「ボックス側コネクタ」とする。)22が設けられる。背面3dは、タスクボックス3において開口部3aが開口する面と反対側の面である。ボックス側コネクタ22は、タスクボックス3の背面3dにおいて、略矩形板状の外形を有しながら突出するように構成される。
ボックス側コネクタ22は、タスクボックス3の背面3dからの突出方向の先端部に、接続端子22aを露出させる。したがって、ボックス側コネクタ22は、タスクボックス3の背面3dからの突出方向を、接続対象となるタスクボックススロット6側のコネクタ(以下「スロット側コネクタ」とする。)21に対する接続方向とする。
図10に示すように、スロット側コネクタ21は、タスクボックススロット6の内部空間に臨む状態で設けられる。スロット側コネクタ21は、制御ボックス5が内蔵する制御構成に対して、ケーブル23により接続される。ケーブル23は、制御ボックス5の背面側から延出され、タスクボックススロット6を背面6b(図5参照)側から貫通して、スロット側コネクタ21をタスクボックススロット6の内部に位置させる。
図10に示すように、スロット側コネクタ21は、タスクボックススロット6の内部において、タスクボックススロット6の背面6bの反対側の面である奥側面6eから、ボックス側コネクタ22と同様に、略矩形板状の外形を有しながら突出するように構成される。したがって、スロット側コネクタ21は、タスクボックススロット6の挿入口6aから臨む位置に設けられる。スロット側コネクタ21は、タスクボックススロット6の奥側面6eからの突出方向の先端部に、接続端子21aを露出させる。
このように、タスクボックス3およびタスクボックススロット6にそれぞれコネクタ22、21が設けられる構成において、タスクボックススロット6の挿入口6aに対するタスクボックス3の挿入動作により、ボックス側コネクタ22がスロット側コネクタ21に接続される。すなわち、開口部3aを正面側とするタスクボックス3の、タスクボックススロット6の挿入口6aからの挿入の過程では、ボックス側コネクタ22とスロット側コネクタ21とが互いに対向した状態となり、タスクボックス3が挿入口6aの内部に押し込まれることで、ボックス側コネクタ22とスロット側コネクタ21とが嵌合し、各コネクタ22、21の接続端子22a、21a同士が接続された状態となる。
以上のように、本実施形態では、タスクボックススロット6は、挿入口6aから臨む位置に、制御ボックス5と接続され、制御ボックス5がトレーニング内容を識別するための信号を受けるスロット側コネクタ21を有する。また、タスクボックス3は、タスクボックススロット6の挿入口6aに対する挿入側の面である背面3dに、タスクボックス3の挿入口6aへの挿入動作により、スロット側コネクタ21に接続されるボックス側コネクタ22を有する。本実施形態では、タスクボックススロット6が有するスロット側コネクタ21が、第1のコネクタに相当し、タスクボックス3が有するボックス側コネクタ22が、第2のコネクタに相当する。
本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1のように、タスクボックス3のタスクボックススロット6に対する挿入動作により、スロット側コネクタ21とボックス側コネクタ22とが自動的に接続される構成を採用することで、タスクボックス3の入れ替えを簡単に行うことができる。これにより、複数のタスクボックス3が用いられて行われるトレーニングにおいて、手間を省略することができ、トレーニングの効率を向上させることができる。
図10に示すように、タスクボックススロット6内には、タスクボックススロット6に対するタスクボックス3の挿入動作をガイドするためのガイド機構24が設けられている。ガイド機構24は、上述したようなタスクボックス3のタスクボックススロット6に対する挿入動作にともなうスロット側コネクタ21とボックス側コネクタ22との接続を可能とするため、タスクボックススロット6内においてタスクボックス3をスライドさせてガイドする。
ガイド機構24は、左右一対のガイド板25と、複数のガイドローラ26とを有する。一対のガイド板25は、左右方向に互いに対向するように、上下方向に立った状態で設けられる。一対のガイド板25は、左右方向に互いに対向させる面として、ガイド面25aを有する。
一対のガイド板25は、タスクボックススロット6の挿入口6aから挿入されるタスクボックス3に対してガイド面25aを左右両側から接触させることで、タスクボックス3をガイドする。また、一対のガイド板25は、タスクボックス3の挿入方向における手前側の端部に、手前側にかけて左右方向に広がる導入板部25bを有する。ガイド機構24は、一対のガイド板25の導入板部25bにより、タスクボックススロット6の挿入口6aから挿入されるタスクボックス3を受け入れる。
複数のガイドローラ26は、左右方向を回転軸方向として回転自在に設けられる。複数のガイドローラ26は、タスクボックススロット6の挿入口6aから挿入されるタスクボックス3の底面3c(図7参照)に接触することで、タスクボックス3をガイドする。
複数のガイドローラ26は、上下方向に立った状態で設けられる支持板27に支持される。本実施形態では、ガイドローラ26は、タスクボックススロット6の挿入口6aから挿入されるタスクボックス3の左右両端側に対応するように、片側4個ずつ左右両側に計8個設けられている。
このような構成のガイド機構24により、スロット側コネクタ21に対してボックス側コネクタ22の左右方向および上下方向の位置が一致するように、タスクボックススロット6の挿入口6aから挿入されるタスクボックス3がガイドされる。なお、挿入口6aから挿入されるタスクボックス3をガイドするガイド機構24の構成は、本実施形態に限定されない。ガイド機構24としては、タスクボックススロット6に対するタスクボックス3の挿入動作によってボックス側コネクタ22がスロット側コネクタ21に接続されるように、タスクボックス3をガイドする構成を有するものであればよい。
このように、タスクボックス3がタスクボックススロット6に挿入され、ボックス側コネクタ22とスロット側コネクタ21とが接続されることで、挿入されたタスクボックス3のトレーニング内容が、制御ボックス5により認識される。このため、各タスクボックス3には、ボックス側コネクタ22とスロット側コネクタ21とが接続されることで、接続端子22a、21aを介して、制御ボックス5が内蔵する制御構成にトレーニング内容を識別させるための識別回路が組み込まれている。
制御ボックス5は、例えば、トレーニング内容ごとに付された番号を識別することで、挿入口6aに挿入され、スロット側コネクタ21にボックス側コネクタ22を接続させたタスクボックス3のトレーニング内容を識別する。制御ボックス5は、識別したトレーニング内容についての表示を、タッチパネル4に出力する。タッチパネル4の表示内容については後述する。なお、本実施形態の説明では、タスクボックス3をタスクボックススロット6の挿入口6aに挿入し、ボックス側コネクタ22をスロット側コネクタ21に接続させることを、タスクボックス3について「セット」という。
図2に示すように、本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1は、上述した構成に加え、フットスイッチ7と、スピーカ8と、手術器具52として用いられるプローブ9とを備える。
フットスイッチ7は、例えば、訓練者50が、トレーニング中に、関節鏡51と手術器具52とを両手で操作している状態で、トレーニングの進行状況を制御ボックス5に認識させるためのスイッチとして用いられる。また、フットスイッチ7の操作は、タッチパネル4に対するタッチ操作の代わりに用いられてもよい。このように、フットスイッチ7は、トレーニングを進めるために訓練者により操作される操作部として機能する。フットスイッチ7は、ケーブル7aにより、制御ボックス5に接続される。
スピーカ8は、訓練者50に対し、トレーニングに関する音を発する。具体的には、スピーカ8からは、トレーニングの開始・終了を報知させる音や、タッチパネル4に対するタッチ操作に連動する音や、フットスイッチ7の操作に連動する音や、手術器具52による操作対象20に対する操作に連動する音等が発せられる。
プローブ9は、実際の関節鏡手術で手術器具として用いられるプローブ器具を模擬したものであり、訓練者50により、関節鏡51とともに手術器具52として用いられる。プローブ9は、電子プローブとして構成され、所定のトレーニング内容のトレーニングにおいて、タスクボックス3の操作対象20に対する接触を検知するためのものである。例えば、手術器具52としてプローブ9を用いるトレーニング内容において、プローブ9により操作対象20の所定の場所に接触する操作が行われる場合、その所定の位置に対するプローブ9の接触が、プローブ9による検出信号として、タッチパネル4を介して制御ボックス5に入力される。このため、プローブ9は、タッチパネル4に接続される。
以上のような構成を備える関節鏡トレーニングシステム1において、タスクボックス3ごとに異なる各トレーニング内容は、操作対象20に対する操作により、あらかじめ設定されたトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびに操作対象20に対する操作によるトレーニング内容の達成度および失敗数の少なくともいずれかを含む技能評価項目を有する。つまり、各トレーニング内容は、訓練者により行われたトレーニングに関し、そのトレーニング内容に対して訓練者が有する技能を定量的・客観的に表すための評価指標として、トレーニング内容を達成するまでの所要時間等の複数の技能評価項目を有する。
[関節鏡手術トレーニングにおける指導項目]
そして、各トレーニング内容が有する複数の技能評価項目は、関節鏡手術のトレーニングについての複数の指導項目の少なくともいずれかに対応する。関節鏡手術のトレーニングについての指導項目は、関節鏡手術のトレーニングにおいて指導医等となる専門医が、訓練者に対して指摘・指導する項目である。
関節鏡手術トレーニングにおける指導項目は、(a)関節鏡による鏡視技能(Inspection)、(b)関節鏡および手術器具を操作する両手の協調動作(Bi-hand(Bilateral) coordination)、(c)手術にともなう損傷・合併症の回避(Complications)、(d)関節鏡の映像からの情報取得(Information gathering)、および(e)手術時間(Time)の5つを含む。
(a)関節鏡による鏡視技能(Inspection)は、関節鏡により患部における所望の場所の映像を得るための技能である。本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1によるトレーニングにおいては、関節鏡51によって操作対象20の任意の場所の映像を得て視認する技能に相当する。
(b)関節鏡および手術器具を操作する両手の協調動作(Bi-hand(Bilateral) coordination)は、関節鏡と鉗子等の手術器具とを操作する両手を協調させながらの操作を行う技能である。本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1によるトレーニングにおいては、関節鏡51によって操作対象20の任意の場所の映像を得て視認しながら、手術器具52による所定の操作を行う技能に相当する。
(c)手術にともなう損傷・合併症の回避(Complications)は、手術中に、関節鏡や手術器具により生体組織に無駄な力を加え過ぎたり、関節鏡や手術器具の移動にともなって関節鏡や手術器具を生体組織に不意に接触させたりするといった、術中・術後の損傷・合併症を誘発する操作を行わない技能である。本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1によるトレーニングにおいては、操作対象20における所定の場所を適度な力でつまんだり引き抜いたりする技能に相当する。
(d)関節鏡の映像からの情報取得(Information gathering)は、関節鏡により、患部における必要な映像を取得する技能である。本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1によるトレーニングにおいては、関節鏡51によって操作対象20の任意の場所の映像を取得するため、関節鏡51の操作についての総合的な技能に相当する。
(e)手術時間(Time)は、関節鏡および手術器具を用いた関節鏡手術における所定の手術動作について、手術時間を短縮させる技能に相当する。本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1によるトレーニングにおいては、関節鏡51や手術器具52を用いた所定のトレーニング内容について、所定の操作を完了するまので時間を短縮させる技能に相当する。
[タスクボックスのトレーニング内容]
本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1が有する各タスクボックス3のトレーニング内容について、各タスクボックス3が有する操作対象20の構成とともに説明する。本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1は、タスクボックス3として、トレーニング内容の違いによって、第1〜第9タスクボックスの9種類のタスクボックス3を有する。9種類のトレーニング内容としては、単純な鏡視の操作、鉗子やハサミ等の手術器具の操作を訓練するトレーニング内容から、解剖学的位置情報の把握が必要なトレーニング内容まで準備されている。
以下の説明では、9種類のタスクボックス3を、それぞれ第1タスクボックス3A、第2タスクボックス3B、第3タスクボックス3C、第4タスクボックス3D、第5タスクボックス3E、第6タスクボックス3F、第7タスクボックス3G、第8タスクボックス3H、第9タスクボックス3Iとする。
(1)第1タスクボックス3Aのトレーニング内容
第1タスクボックス3Aによるトレーニング内容は、「Inspection」と称され、関節鏡による鏡視の技術の向上を目的とする。第1タスクボックス3Aによるトレーニング内容は、関節鏡による通常の鏡視が可能かどうかの評価に用いられる。第1タスクボックス3Aによるトレーニング内容において、関節鏡による鏡視は、関節鏡の操作能力に重点を置く。
図11に、第1タスクボックス3Aの操作対象20である第1操作対象20Aを示す。図11に示すように、第1操作対象20Aは、膝関節模型111を有する。膝関節においては、大腿骨と脛骨との端部同士が対向する。このため、膝関節模型111は、大腿骨の端部を模擬した大腿骨部112と、脛骨の端部を模擬した脛骨部113とを含む。大腿骨部112は、第1タスクボックス3Aの略直方体状の内部空間において上面から突出するように設けられ、脛骨部113は、同じく内部空間において下面から突出するように設けられる。これにより、大腿骨部112と脛骨部113とは上下方向に互いに対向する。
そして、膝関節模型111を構成する大腿骨部112および脛骨部113の表面には、所定の数字が記載された複数のチェックポイント114が設けられる。本実施形態では、1〜10の各数字が記載された10個のチェックポイント114が設けられる。なお、チェックポイント114は、膝関節模型111の裏側等にも設けられるため、図11においては、1〜10のうちの一部の番号のみが表れている。また、番号の数は特に限定されない。
第1タスクボックス3Aによるトレーニング内容は、膝関節模型111の表面上に設けられた10個のチェックポイント104を、数字の順番に、関節鏡51で探し出して捉えるというものである。具体的には、訓練者50は、関節鏡51を操作し、10個のチェックポイント114を1番目から順にモニタ54に関節鏡映像54aとして映し出して確認する。訓練者50は、一つのチェックポイント114をモニタ54における関節鏡映像54aの画面の中央に捉えることができたら、その都度フットスイッチ7を足で押し、次の番号のチェックポイント114の探索を開始する。
図12に、第1タスクボックス3A内の第1操作対象20Aについての、関節鏡51により映された関節鏡映像54aの一例を示す。図12に示す例では、関節鏡映像54aにおいて、複数のチェックポイント114のうちの大腿骨部112に設けられた「6」の数字が関節鏡51によって捉えられた状態が示されている。訓練者50は、こうした関節鏡映像54aを見ながら、上述したような第1操作対象20Aに対する操作を行う。図12に示すように、関節鏡映像54aにおいては、撮像対象が肉眼とは異なり歪んだ状態で映るため、関節鏡映像54aを見ながらの操作は難しい。
第1タスクボックス3Aによるトレーニングにおいては、制御ボックス5は、訓練者50によるフットスイッチ7の操作により、訓練者50が関節鏡51によってチェックポイント114を確認したことを検出し、タッチパネル4の表示内容に反映する。ここで、例えば、制御ボックス5は、訓練者50によるフットスイッチ7の操作を検出するたびに、スピーカ8から報知音を発生させる。10番目のチェックポイント114の探索(確認)が完了することで、第1タスクボックス3Aによるトレーニング内容はクリアとなる。
第1タスクボックス3Aによるトレーニング内容の技能評価項目は、第1操作対象20Aに対する関節鏡51の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間である。つまり、訓練者50が関節鏡51を操作することにより1番目から10番目までのチェックポイント114すべての探索を完了するまでの所要時間が、このトレーニング内容の技能評価項目となる。
以上のように、第1タスクボックス3Aは、第1操作対象20Aに対する関節鏡51の操作をトレーニング内容とし、技能評価項目を、第1操作対象20Aに対する関節鏡51の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間とする。第1タスクボックス3Aによるトレーニング内容によれば、関節鏡51の操作性を向上させることができる。
(2)第2タスクボックス3Bのトレーニング内容
第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容は、「Inspection & Touching」と称され、関節鏡による鏡視と手術器具による接触動作、つまり関節鏡および接触用の手術器具の協調動作の技術の向上を目的とする。第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容は、関節鏡と接触用の手術器具を操作する両手の協調動作が可能かどうかの評価に用いられる。第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容において、関節鏡による鏡視は、関節鏡による奥行感の把握能力に重点を置く。第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容は、第1タスクボックス3Aによるトレーニング内容の発展型とも言える。
図13に、第2タスクボックス3Bの操作対象20である第2操作対象20Bを示す。図13に示すように、第2操作対象20Bは、第1操作対象20Aと同様に、大腿骨の端部を模擬した大腿骨部212と、脛骨の端部を模擬した脛骨部213とを含む膝関節模型211を有する。
そして、膝関節模型211を構成する大腿骨部212および脛骨部213の表面には、複数の接触端子214が設けられる。接触端子214は、膝関節模型211の表面からわずかに突出する金属製の円板であり、円形状の接触面を有する。接触端子214は、所定の配線により第2タスクボックス3Bのボックス側コネクタ22の接続端子22aに接続される。
本実施形態では、10個の接触端子214が設けられ、膝関節模型211の表面における各接触端子214の近傍には、1〜10のいずれかの数字が記載される。なお、接触端子214は、膝関節模型211の裏側等にも設けられるため、図13においては、1〜10のうちの一部の番号に対応する接触端子214のみが表れている。また、番号の数は特に限定されない。
第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容は、膝関節模型211の表面上に設けられた10個の接触端子214を、数字の順番に、関節鏡51で捉えながら手術器具52としてのプローブ9でタッチしていくというものである。つまり、第2タスクボックス3Bによるトレーニングは、関節鏡51によって番号を順番に捉えるまでは第1タスクボックス3Aと同じであり、そこからさらに、番号付近に設置された接触端子214にプローブ9でタッチするというトレーニングを追加したものである。
具体的には、訓練者50は、関節鏡51を操作し、10個の数字を1から順にモニタ54に関節鏡映像54aとして映し出して確認しながら、数字の近傍に存在する接触端子214にプローブ9の先端を接触させていく。1〜10の番号順の接触端子214の探索(確認)およびタッチは、タッチパネル4における表示により促される。例えば、タッチパネル4には、現在探索すべき順番の接触端子214の番号が表示され、その接触端子214の探索およびタッチが行われると、タッチパネル4には、次の番号が表示される。
図14に、第2タスクボックス3B内の第2操作対象20Bについての、関節鏡51により映された関節鏡映像54aの一例を示す。図14に示す例では、関節鏡映像54aにおいて、複数の接触端子214のうちの大腿骨部112に設けられた「1」の数字に対応する接触端子214が関節鏡51によって捉えられた状態が示されている。訓練者50は、こうした関節鏡映像54aを見ながら、上述したような第2操作対象20Bに対する操作を行う。
第2タスクボックス3Bによるトレーニングにおいては、制御ボックス5は、訓練者50によるプローブ9の接触端子214に対するタッチにより、訓練者50が関節鏡51によって接触端子214を捉えるとともにプローブ9により接触端子214に接触したことを検出し、タッチパネル4の表示内容に反映する。ここで、例えば、制御ボックス5は、訓練者50によるプローブ9の接触端子214へのタッチを検出するたびに、スピーカ8から報知音を発生させる。
プローブ9が接触端子214に接触したことは、プローブ9が接触端子214に接触することにより得られる電気信号が、プローブ9の接触端子214に対する接触の信号として、接触端子214から所定の配線ならびにボックス側コネクタ22およびスロット側コネクタ21等を介して制御ボックス5に入力されることで検出される。1番目から10番目までの接触端子214の探索およびタッチが完了することで、第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容はクリアとなる。
第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容の技能評価項目は、第2操作対象20Bに対する関節鏡51および手術器具52としてのプローブ9の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数である。トレーニング内容を達成するまでの所要時間は、訓練者50が関節鏡51およびプローブ9を操作することにより1番目から10番目までの接触端子214すべての探索およびタッチを完了するまでの所要時間である。
トレーニング内容の達成度は、所定の制限時間内に探索およびタッチすることができた接触端子214の数であり、スコアとして表れる。また、トレーニング内容の失敗数(エラー数)は、1番目から10番目までの順番を間違えて接触端子214にタッチしたり、操作を誤って順番とは異なる数字の接触端子214にタッチしたりした回数であり、エラーとしてカウントされる。なお、上記のとおり制御ボックス5が接触端子214へのタッチにともなう報知音をスピーカ8から発生させる場合は、エラーとしてカウントされる接触端子214へのタッチを検出したときに、順番通りの正しい接触端子214へのタッチを検出した際の報知音とは異なるエラー音を発生させてもよい。
以上のように、第2タスクボックス3Bは、第2操作対象20Bに対する関節鏡51の操作および手術器具52としてのプローブ9による接触操作をトレーニング内容とし、技能評価項目を第2操作対象20Bに対する関節鏡51およびプローブ9の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数とする。第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容によれば、関節鏡51だけでなく接触用の手術器具52も同時に正確に操作する技術を向上させることができる。
(3)第3タスクボックス3Cのトレーニング内容
第3タスクボックス3Cによるトレーニング内容は、「Removing loose body」と称され、関節鏡による鏡視と手術器具による把持動作、つまり関節鏡および鉗子等の把持用の手術器具の協調動作の技術の向上を目的とする。第3タスクボックス3Cによるトレーニング内容は、関節鏡と把持用の手術器具を操作する両手の協調動作が可能かどうかの評価に用いられる。つまり、第3タスクボックス3Cによるトレーニングは、第2タスクボックス3Bによりトレーニングされる両手の協調動作に加え、把持用の手術器具52による把持操作のトレーニングを行うものである。第3タスクボックス3Cによるトレーニング内容において、関節鏡による鏡視は、関節鏡による奥行感の把握能力に重点を置く。
図15に、第3タスクボックス3Cの操作対象20である第3操作対象20Cを示す。図15に示すように、第3操作対象20Cは、膝関節を構成する大腿骨の端部を模擬した大腿骨部312を有する。大腿骨部312は、第3タスクボックス3Cの略直方体状の内部空間において下面から突出するように設けられ、第3タスクボックス3Cの内部空間の大部分を占める。また、大腿骨部312の上側には、膝蓋骨を模擬した膝蓋骨部313が設けられている。膝蓋骨部313は、第3タスクボックス3Cの内部空間の上面からわずかに突出するように設けられ、大腿骨部312に対向する。
そして、大腿骨部312の表面には、複数の遊離体部314が設けられる。遊離体部314は、大腿骨部312に対して十分に小さい例えば球状の小物体である。遊離体部314は、大腿骨部312とは別体であり、大腿骨部312に対して着脱可能な状態で保持される。本実施形態では、遊離体部314は、その表面から突出する針状の突起314aを有し、この突起314aを大腿骨部312に刺すことで、大腿骨部312の表面上に保持される。遊離体部314は、例えば発泡スチロール製である。また、遊離体部314の突起314aは、例えばポリアミド樹脂等の材料により構成されることで可撓性を有する。
遊離体部314は、遊離体と呼ばれる、膝関節において生じる骨や軟骨の欠片を模擬したものである。遊離体は、膝関節において残存したり引っ掛かったりすると痛みを引き起こすため、除去される必要がある。第3タスクボックス3Cにおいて、遊離体部314は、例えば5〜10個程度設けられるが、本実施形態では、6個の遊離体部314が設けられている。なお、遊離体部314は、大腿骨部312の裏側等にも設けられるため、図15においては、一部の遊離体部314のみが表れている。また、遊離体部314の数は特に限定されない。
第3タスクボックス3Cによるトレーニング内容は、大腿骨部312の表面上に設けられた6個の遊離体部314を、関節鏡51で捉えながら手術器具52で取り除いていくというものである。具体的には、訓練者50は、関節鏡51を操作し、6個の遊離体部314をモニタ54に関節鏡映像54aとして映し出して確認しながら、鉗子等の把持用の手術器具52で掴んで取り除いていく。6個の遊離体部314を取り除く順番は、訓練者50の任意である。訓練者50は、一つの遊離体部314を取り除くことができたら、その都度フットスイッチ7を足で押し、次の遊離体部314の探索および除去を開始する。
図16に、第3タスクボックス3C内の第3操作対象20Cについての、関節鏡51により映された関節鏡映像54aの一例を示す。図16に示す例では、関節鏡映像54aにおいて、複数の遊離体部314のうちの大腿骨部312に設けられた1つの遊離体部314が鉗子によって掴まれた状態が示されている。訓練者50は、こうした関節鏡映像54aを見ながら、上述したような第3操作対象20Cに対する操作を行う。
第3タスクボックス3Cによるトレーニングにおいては、制御ボックス5は、訓練者50によるフットスイッチ7の操作により、訓練者50が関節鏡51および手術器具52によって遊離体部314を除去したことを検出し、タッチパネル4の表示内容に反映する。ここで、例えば、制御ボックス5は、訓練者50によるフットスイッチ7の操作を検出するたびに、スピーカ8から報知音を発生させる。6個すべての遊離体部314の除去が完了することで、第3タスクボックス3Cによるトレーニング内容はクリアとなる。
第3タスクボックス3Cによるトレーニング内容の技能評価項目は、第3操作対象20Cに対する関節鏡51および鉗子等の把持用の手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間である。つまり、訓練者50が関節鏡51および手術器具52を操作することにより6個すべての遊離体部314の除去を完了するまでの所要時間が、このトレーニング内容の技能評価項目となる。
第3操作対象20Cにおいて、大腿骨部312の表面に遊離体部314を保持させるための構成は、本実施形態に限定されず、例えば磁石や粘着剤を用いるものであってもよい。ただし、耐久性や遊離体部314を除去する際の操作感の観点からは、本実施形態のように、遊離体部314が突起314aを大腿骨部312に刺すことにより保持される構成であることが好ましく、また、突起314aについては、金属等と比較して柔らかい樹脂製であることがさらに好ましい。
以上のように、第3タスクボックス3Cは、第3操作対象20Cに対する関節鏡51の操作および手術器具52による把持操作をトレーニング内容とし、技能評価項目を第3操作対象20Cに対する関節鏡51および手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間とする。第3タスクボックス3Cによるトレーニング内容によれば、関節鏡51だけでなく把持用の手術器具52も同時に正確に操作する技術を向上させることができる。
(4)第4タスクボックス3Dのトレーニング内容
第4タスクボックス3Dによるトレーニング内容は、「Size estimation」と称され、関節鏡による鏡視と手術器具による接触動作、つまり関節鏡および接触用の手術器具の協調動作の技術の向上を目的とする。第4タスクボックス3Dによるトレーニング内容は、内視鏡の映像による大きさの判定と、関節鏡と接触用の手術器具を操作する両手の協調動作が可能かどうかの評価に用いられる。第4タスクボックス3Dによるトレーニング内容において、関節鏡による鏡視は、関節鏡による大きさ判定の能力に重点を置く。
図17に、第4タスクボックス3Dの操作対象20である第4操作対象20Dを示す。図17に示すように、第4操作対象20Dは、形状が同じで大きさが互いに異なる複数の物体411を有する。物体411は、接触端子として機能する。複数の物体411は、第4タスクボックス3Dの内部空間において異なる位置に配置され、様々な向きで設けられる。物体411は、所定の配線により第4タスクボックス3Dのボックス側コネクタ22の接続端子22aに接続される。
本実施形態では、第4操作対象20Dは、円柱状の外形を有する5個の物体411を有する。5個の物体411は、第4タスクボックス3Dの内部空間を形成する各壁面から突出するように設けられている。ただし、物体411の形状や個数は特に限定されない。
第4タスクボックス3Dによるトレーニング内容は、5個の物体411を、大きさが小さいものから順番に、関節鏡51で捉えながらプローブ9でタッチしていくというものである。具体的には、訓練者50は、関節鏡51を操作し、5個の物体411を小さいものから順にモニタ54に関節鏡映像54aとして映し出して確認しながら、物体411にプローブ9の先端を接触させていく。
図18に、第4タスクボックス3D内の第4操作対象20Dについての、関節鏡51により映された関節鏡映像54aの一例を示す。図18に示す例では、関節鏡映像54aにおいて、5個の物体411のうちの4個が映った状態が示されている。訓練者50は、こうした関節鏡映像54aを見ながら、上述したような第4操作対象20Dに対する操作を行う。
第4タスクボックス3Dによるトレーニングにおいては、制御ボックス5は、訓練者50によるプローブ9の物体411に対するタッチにより、訓練者50が関節鏡51によって物体411の相対的な大きさを捉えてプローブ9により物体411に接触したことを検出し、タッチパネル4の表示内容に反映する。ここで、例えば、制御ボックス5は、訓練者50によるプローブ9の物体411へのタッチを検出するたびに、スピーカ8から報知音を発生させる。
プローブ9が物体411に接触したことは、プローブ9が物体411に接触することにより得られる電気信号が、プローブ9の物体411に対する接触の信号として、物体411から所定の配線ならびにボックス側コネクタ22およびスロット側コネクタ21等を介して制御ボックス5に入力されることで検出される。大きさの順番通りに5個の物体411の探索およびタッチが完了することで、第4タスクボックス3Dによるトレーニング内容はクリアとなる。
第4タスクボックス3Dによるトレーニング内容の技能評価項目は、第4操作対象20Dに対する関節鏡51および手術器具52としてのプローブ9の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数である。トレーニング内容を達成するまでの所要時間は、訓練者50が関節鏡51およびプローブ9を操作することにより5個の物体411すべての探索およびタッチを完了するまでの所要時間である。
トレーニング内容の達成度は、所定の制限時間内に探索およびタッチすることができた物体411の数であり、スコアとして表れる。また、トレーニング内容の失敗数(エラー数)は、大きさの順番を間違えて物体411にタッチしたり、操作を誤って順番とは異なる大きさの物体411にタッチしたりした回数であり、エラーとしてカウントされる。なお、上記のとおり制御ボックス5が物体411へのタッチにともなう報知音をスピーカ8から発生させる場合は、エラーとしてカウントされる物体411へのタッチを検出したときに、順番通りの正しい物体411へのタッチを検出した際の報知音とは異なるエラー音を発生させてもよい。
以上のように、第4タスクボックス3Dは、第4操作対象20Dに対する関節鏡51の関節鏡映像54aによる大きさの判断および手術器具52としてのプローブ9による接触操作をトレーニング内容とし、技能評価項目を第4操作対象20Dに対する関節鏡51およびプローブ9の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数とする。第4タスクボックス3Dによるトレーニング内容によれば、関節鏡を通した状況下においても、対象物の大きさを正確に把握できるようになる。
具体的には、図17に示すように、第4タスクボックス3Dの第4操作対象20Dを肉眼で見た場合は、複数の物体411の大きさの違いは明瞭であり、容易に把握することができる。しかし、関節鏡51で得られる映像は2次元映像であるため、図18に示すような関節鏡映像54aからは、相対的な大きさの違いを把握することが難しい。そこで、第4タスクボックス3Dによるトレーニング内容を行うことで、2次元映像としての関節鏡映像から、遠近感を排除し、対象物の大小を区別することができるようになる。
(5)第5タスクボックス3Eのトレーニング内容
第5タスクボックス3Eによるトレーニング内容は、「Cutting」と称され、関節鏡による鏡視と手術器具による切断動作、つまり関節鏡およびハサミ(剪刀)等の切断用の手術器具の協調動作の技術の向上を目的とする。第5タスクボックス3Eによるトレーニング内容は、関節鏡と切断用の手術器具を操作する両手の協調動作が可能かどうかの評価に用いられる。つまり、第5タスクボックス3Eによるトレーニングは、第2タスクボックス3Bによりトレーニングされる両手の協調動作に加え、切断用の手術器具52による切断操作のトレーニングを行うものである。第5タスクボックス3Eによるトレーニング内容において、関節鏡による鏡視は、関節鏡による奥行感の把握能力に重点を置く。
図19に、第5タスクボックス3Eの操作対象20である第5操作対象20Eを示す。図19に示すように、第5操作対象20Eは、所定の位置にて引っ掛けられた状態で設けられる複数の輪ゴム511を有する。輪ゴム511は、マイクロスイッチ512上を跨いだ状態で引っ掛けられる。マイクロスイッチ512は、引っ掛けられた輪ゴム511の弾性により、閉じた状態とされる。具体的には次のとおりである。
図19に示すように、マイクロスイッチ512は、略直方体状の本体512aと、本体512aの一側の面に設けられるアクチュエータとしてのレバー512bとを有する。レバー512bは、本体512aにおいてレバー512bが設けられる面に押し付けられることで、マイクロスイッチ512を閉じた状態とする。なお、マイクロスイッチ512は、本体512aにおけるレバー512b側と反対側の面に、複数の端子を有し、これらの端子は、第5タスクボックス3Eのボックス側コネクタ22の接続端子22aと所定の配線により接続される。
マイクロスイッチ512は、第5タスクボックス3Eの内部空間を形成する面に設置され、各面に対してレバー512b側が上側となるように、つまり本体512aのレバー512bが設けられる側と反対側の面が、同内部空間を形成する面側となるように設けられる。本実施形態では、第5タスクボックス3Eの内部空間の下面および左右両側面に、マイクロスイッチ512が設けられている。
そして、輪ゴム511は、レバー512b上からマイクロスイッチ512を跨いだ状態で引っ掛けられ、弾性によってレバー512bを押し付ける。このような状態で輪ゴム511を引っ掛けるため、各マイクロスイッチ512に対しては、そのマイクロスイッチ512が設けられる面と同じ面上に、輪ゴム511を係止する一対の係止突起513が設けられる。
一対の係止突起513は、対応するマイクロスイッチ512が設けられる面において、そのマイクロスイッチ512を挟んで対向する位置に設けられる。一対の係止突起513は、マイクロスイッチ512を跨ぐ輪ゴム511によりレバー512bが押し付けられてマイクロスイッチ512が閉じた状態となるように、輪ゴム511を両側から引っ張った状態で係止して保持する。係止突起513は、対となる係止突起513とともに、マイクロスイッチ512を跨ぐ輪ゴム511を係止するフック状の形状を有する。
本実施形態では、輪ゴム511、マイクロスイッチ512、および一対の係止突起513の組み合わせが、10組設けられており、各マイクロスイッチ512が設けられる面におけるそのマイクロスイッチ512の近傍には、それぞれ1〜10のいずれかの数字が記載される。なお、輪ゴム511の数や配置、輪ゴム511を係止するための構成は特に限定されない。
第5タスクボックス3Eによるトレーニング内容は、マイクロスイッチ512を跨いだ状態で係止突起513に引っ掛けられた状態の輪ゴム511を、数字の順番に、関節鏡51で捉えながら手術器具52としてのハサミで切断していくというものである。
具体的には、訓練者50は、関節鏡51を操作し、10本の輪ゴム511を番号の順番にモニタ54に関節鏡映像54aとして映し出して確認しながら手術器具52としてのハサミで切断していく。1〜10の番号順の輪ゴム511の切断は、タッチパネル4における表示により促される。例えば、タッチパネル4には、現在切断すべき順番の輪ゴム511の番号が表示され、その輪ゴム511の切断が行われると、タッチパネル4には、次の番号が表示される。
図20に、第4タスクボックス3D内の第4操作対象20Dについての、関節鏡51により映された関節鏡映像54aの一例を示す。図20に示す例では、関節鏡映像54aにおいて、輪ゴム511、マイクロスイッチ512、および一対の係止突起513の組み合わせについて、10組のうちの9組が映った状態が示されている。訓練者50は、こうした関節鏡映像54aを見ながら、上述したような第5操作対象20Eに対する操作を行う。
第5タスクボックス3Eによるトレーニングにおいては、制御ボックス5は、訓練者50による輪ゴム511の切断により、訓練者50が関節鏡51によって輪ゴム511を捉えるとともに手術器具52により切断したことを検出し、タッチパネル4の表示内容に反映する。ここで、例えば、制御ボックス5は、訓練者50による輪ゴム511の切断を検出するたびに、スピーカ8から報知音を発生させる。
輪ゴム511が切断されたことは、マイクロスイッチ512の開閉動作により、制御ボックス5によって検出される。具体的には、上述のとおり輪ゴム511によりレバー512bが押し付けられてマイクロスイッチ512が閉じた状態から、輪ゴム511が切断されることで、レバー512bが解放され、マイクロスイッチ512が開いた状態となる。このマイクロスイッチ512の開動作の信号が、輪ゴム511の切断の信号として、マイクロスイッチ512の端子から所定の配線ならびにボックス側コネクタ22およびスロット側コネクタ21等を介して、制御ボックス5により検出される。1番目から10番目までの輪ゴム511の切断が完了することで、第5タスクボックス3Eによるトレーニング内容はクリアとなる。
第5タスクボックス3Eによるトレーニング内容の技能評価項目は、第5操作対象20Eに対する関節鏡51およびハサミ等の切断用の手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数である。トレーニング内容を達成するまでの所要時間は、訓練者50が関節鏡51および手術器具52を操作することにより1番目から10番目までの輪ゴム511すべての切断を完了するまでの所要時間である。
トレーニング内容の達成度は、所定の制限時間内に切断することができた輪ゴム511の数であり、スコアとして表れる。また、トレーニング内容の失敗数(エラー数)は、1番目から10番目までの順番を間違えて輪ゴム511を切断したり、操作を誤って順番とは異なる数字の輪ゴム511を切断したりした回数であり、エラーとしてカウントされる。なお、上記のとおり制御ボックス5が輪ゴム511の切断にともなう報知音をスピーカ8から発生させる場合は、エラーとしてカウントされる輪ゴム511の切断を検出したときに、順番通りの正しい輪ゴム511の切断を検出した際の報知音とは異なるエラー音を発生させてもよい。
以上のように、第5タスクボックス3Eは、第5操作対象20Eに対する関節鏡51の操作および手術器具52による切断操作をトレーニング内容とし、技能評価項目を第5操作対象20Eに対する関節鏡51および手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数とする。第5タスクボックス3Eによるトレーニング内容によれば、関節鏡51だけでなく切断用の手術器具52も同時に正確に操作し、体内の組織を正確に切除する技術を向上させることができる。
(6)第6タスクボックス3Fのトレーニング内容
第6タスクボックス3Fによるトレーニング内容は、「Pinch & Connection」と称され、関節鏡による鏡視と手術器具による把持動作、つまり関節鏡および鉗子等の把持用の手術器具の協調動作の技術の向上を目的とする。第6タスクボックス3Fによるトレーニング内容は、関節鏡と把持用の手術器具を操作する両手の協調動作が可能かどうかの評価に用いられる。つまり、第6タスクボックス3Fによるトレーニングは、第3タスクボックス3Cによりトレーニングされる操作に加え、把持用の手術器具52による2ステップの動作(抜いて、差す動作)のトレーニングを行うものである。第6タスクボックス3Fによるトレーニング内容において、関節鏡による鏡視は、関節鏡による奥行感の把握能力に重点を置く。
図21に、第6タスクボックス3Fの操作対象20である第6操作対象20Fを示す。図21に示すように、第6操作対象20Fは、所定の位置に差し込まれた状態で設けられる複数のピン611を有する。ピン611は、プラグとして機能し、ジャックとして機能する孔部612に差し込まれる。
ピン611は、対応する孔部612が設けられる面から延出する配線611aの先端に設けられる。配線611aおよび孔部612は、第6タスクボックス3Fのボックス側コネクタ22の接続端子22aに所定の配線により接続される。また、ピン611が差し込まれている孔部612の近傍には、孔部612が設けられる面において孔部612に対して所定の距離を隔てて、孔部612と同様に構成される孔部(以下「隣接孔部」という。)613が設けられている。
本実施形態では、ピン611、孔部612、および隣接孔部613の組み合わせが、第6タスクボックス3Fの内部空間の上面および下面に、計5組設けられており、孔部612の近傍には、それぞれ1〜5のいずれかの数字が記載される。なお、ピン611の数や配置は特に限定されない。
第6タスクボックス3Fによるトレーニング内容は、始め孔部612に差し込まれているピン611を、関節鏡51で捉えながら手術器具52により引き抜き、隣接孔部613に差し替えることを、数字の順番に行っていくというものである。
具体的には、訓練者50は、関節鏡51を操作し、ピン611をモニタ54に関節鏡映像54aとして映し出して確認しながら、鉗子等の把持用の手術器具52で掴んで孔部612から引き抜き、その孔部612に隣接する隣接孔部613にピン611を再度差し込む。こうしたピン611の差替えを、1〜5の番号の順番に行っていく。1〜5の番号順のピン611の差替え(引抜き・差込み)は、タッチパネル4における表示により促される。例えば、タッチパネル4には、現在差し替えるべき順番のピン611の番号が表示され、そのピン611の差替えが行われると、タッチパネル4には、次の番号が表示される。
図22に、第6タスクボックス3F内の第6操作対象20Fについての、関節鏡51により映された関節鏡映像54aの一例を示す。図22に示す例では、関節鏡映像54aにおいて、「3」の番号に対応するピン611が鉗子によって孔部612から引き抜かれた状態が示されている。訓練者50は、こうした関節鏡映像54aを見ながら、上述したような第6操作対象20Fに対する操作を行う。
第6タスクボックス3Fによるトレーニングにおいては、制御ボックス5は、訓練者50によるピン611の差替えにより、訓練者50が関節鏡51によってピン611を捉えるとともに手術器具52によりピン611を差し替えたことを検出し、タッチパネル4の表示内容に反映する。ここで、例えば、制御ボックス5は、訓練者50によるピン611の差替えを検出するたびに、スピーカ8から報知音を発生させる。
ピン611が差し替えられたことは、ピン611の孔部612から隣接孔部613への差替え動作自体により、制御ボックス5によって検出される。具体的には、ピン611が差し替えられることにより、プラグとしてのピン611がジャックとしての孔部612または隣接孔部613に差し込まれることで構成される接続回路が切り替わる。このピン611の差替えにともなう接続回路の切替わりが、ピン611の差替えの信号として、孔部612および隣接孔部613から所定の配線ならびにボックス側コネクタ22およびスロット側コネクタ21等を介して、制御ボックス5により検出される。1番目から5番目までのピン611の差替えが完了することで、第6タスクボックス3Fによるトレーニング内容はクリアとなる。
第6タスクボックス3Fによるトレーニング内容の技能評価項目は、第6操作対象20Fに対する関節鏡51および鉗子等の把持用の手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数である。トレーニング内容を達成するまでの所要時間は、訓練者50が関節鏡51および手術器具52を操作することにより1番目から5番目までのピン611すべての差替えを完了するまでの所要時間である。
トレーニング内容の達成度は、所定の制限時間内に差し替えることができたピン611の数であり、スコアとして表れる。また、トレーニング内容の失敗数(エラー数)は、1番目から5番目までの順番を間違えてピン611を差し替えたり、操作を誤って順番とは異なる数字のピン611を引き抜いたり、誤って他の番号の隣接孔部613に差し込んだりした回数であり、エラーとしてカウントされる。なお、上記のとおり制御ボックス5がピン611の差替えにともなう報知音をスピーカ8から発生させる場合は、エラーとしてカウントされるピン611の操作を検出したときに、順番通りの正しいピン611の差替えを検出した際の報知音とは異なるエラー音を発生させてもよい。
以上のように、第6タスクボックス3Fは、第6操作対象20Fに対する関節鏡51の操作および手術器具52による引抜き・差込み操作をトレーニング内容とし、技能評価項目を第6操作対象20Fに対する関節鏡51および手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数とする。第6タスクボックス3Fによるトレーニング内容によれば、関節鏡51だけでなく把持用の手術器具52も同時に正確に操作し、体内の組織を適切な角度から掴む技術を向上させることができる。
(7)第7タスクボックス3Gのトレーニング内容
第7タスクボックス3Gによるトレーニング内容は、「Going over the line(Tracing)」と称され、関節鏡による鏡視と手術器具によるトレース操作、つまり関節鏡および接触用の手術器具の協調動作の技術の向上を目的とする。第7タスクボックス3Gによるトレーニング内容は、関節鏡と接触用の手術器具を操作する両手の協調動作が可能かどうかの評価に用いられる。つまり、第7タスクボックス3Gによるトレーニングは、第2タスクボックス3Bによりトレーニングされる操作に加え、接触用の手術器具52によるトレース操作という高度な操作のトレーニングを行うものである。第7タスクボックス3Gによるトレーニング内容において、関節鏡による鏡視は、関節鏡による奥行感の把握能力に重点を置く。
図23に、第7タスクボックス3Gの操作対象20である第7操作対象20Gを示す。図23に示すように、第7操作対象20Gは、所定の位置に配される針金等からなる複数の金属ライン711と、金属ライン711の両端部の近傍に設けられる始端側接触端子712および終端側接触端子713とを有する。各接触端子712、713は、第7タスクボックス3Gの略直方体状の内部空間を形成する面からわずかに突出する金属製の円板であり、円形状の接触面を有する。金属ライン711、および接触端子712、713は、所定の配線により第7タスクボックス3Gのボックス側コネクタ22の接続端子22aに接続される。
本実施形態では、第7操作対象20Gは、金属ライン711として、曲線金属ライン711aと、直線金属ライン711bと、面間金属ライン711cとの3種類の金属ライン711を有する。曲線金属ライン711aは、第7タスクボックス3Gの内部空間における所定の面に沿って略円弧状に配される。直線金属ライン711bは、曲線金属ライン711aと同様に所定の面に沿って直線状に配される。面間金属ライン711cは、第7タスクボックス3Gの内部空間において異なる面間を架け渡された状態で配される。これらの金属ライン711a、711b、711cは、膝関節の関節内にある半月板の形状、前十字靱帯、後十字靱帯の存在を意識して作成されたものであり、臨床で行われる触診のトレーニングを想定して配置されたものである。
本実施形態では、第7タスクボックス3Gの内部空間の下面において、曲線金属ライン711aおよび一対の接触端子712、713の組み合わせと、直線金属ライン711bおよび一対の接触端子712、713の組み合わせとが、2組ずつ設けられている。これら2組ずつの組み合わせの構成は、第7タスクボックス3Gの内部空間の下面において略左右対称に配置される。
また、本実施形態では、面間金属ライン711cは、第7タスクボックス3Gの内部空間の上面と下面との間に架け渡された状態で配される。したがって、面間金属ライン711cの両端近傍に設けられる接触端子712、713のうち一方は上面に設けられ、他方は下面に設けられる。本実施形態では、面間金属ライン711cおよびこの面間金属ライン711cの両端近傍に設けられる接触端子712、713の組み合わせの構成が2組設けられる。この面間金属ライン711cを含む2組の構成は、いずれも、上記のとおり略左右対称に配置される曲線金属ライン711aおよび直線金属ライン711bを含む構成の間において、左右方向の略中央部に設けられる。
このように、本実施形態では、金属ライン711および接触端子712、713の組み合わせが、計6組設けられており、各組み合わせにおいて始端側接触端子712が設けられる面におけるその始端側接触端子712の近傍には、それぞれ1〜6のいずれかの数字が記載される。なお、金属ライン711の配線形状や配線数等は特に限定されない。
第7タスクボックス3Gによるトレーニング内容は、6組設けられた金属ライン711および接触端子712、713の組み合わせを、数字の順番に、関節鏡51で捉えながら、手術器具52としてのプローブ9により、始端側接触端子712へのタッチ、金属ライン711に対するなぞり動作、終端側接触端子713へのタッチの順に行っていくというものである。
具体的には、訓練者50は、関節鏡51を操作し、金属ライン711および接触端子712、713の各部をモニタ54に関節鏡映像54aとして映し出して確認しながら、近傍に数字が記載される始端側接触端子712にプローブ9でタッチし、その始端側接触端子712に対応する金属ライン711に沿ってプローブ9を接触させながら移動させ、その金属ライン711に対応する終端側接触端子713にタッチする。こうした一連のトレースを、1〜6の番号の順番に行っていく。1〜6の番号順のプローブ9によるトレースは、タッチパネル4における表示により促される。例えば、タッチパネル4には、現在トレースすべき順番の金属ライン711および接触端子712、713の組み合わせの構成の番号が表示され、その組み合わせの構成についてのトレースが行われると、タッチパネル4には、次の番号が表示される。
図24に、第7タスクボックス3G内の第7操作対象20Gについての、関節鏡51により映された関節鏡映像54aの一例を示す。図24に示す例では、関節鏡映像54aにおいて、「6」の番号に対応する金属ライン711にプローブ9が接触している状態が示されている。訓練者50は、こうした関節鏡映像54aを見ながら、上述したような第7操作対象20Gに対する操作を行う。
第7タスクボックス3Gによるトレーニングにおいては、制御ボックス5は、訓練者50による始端側接触端子712、金属ライン711および終端側接触端子713の一連のトレースにより、訓練者50が関節鏡51によって金属ライン711および接触端子712、713の各部を捉えるとともにプローブ9によりその各部に接触したことを検出し、タッチパネル4の表示内容に反映する。ここで、例えば、制御ボックス5は、訓練者50による一連のトレースを検出するたびに、スピーカ8から報知音を発生させる。
プローブ9が金属ライン711および接触端子712、713の各部に接触し一連のトレースが行われたことは、プローブ9が始端側接触端子712、金属ライン711、および終端側接触端子713の順に接触することにより得られる電気信号が、プローブ9による一連のトレースの信号として、金属ライン711および接触端子712、713の各部から所定の配線ならびにボックス側コネクタ22およびスロット側コネクタ21等を介して制御ボックス5に入力されることで検出される。1番目から6番目までのトレースが完了することで、第7タスクボックス3Gによるトレーニング内容はクリアとなる。
第7タスクボックス3Gによるトレーニング内容の技能評価項目は、第7操作対象20Gに対する関節鏡51および手術器具52としてのプローブ9の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数である。トレーニング内容を達成するまでの所要時間は、訓練者50が関節鏡51およびプローブ9を操作することにより1番目から6番目までのすべてのトレースを完了するまでの所要時間である。
トレーニング内容の達成度は、所定の制限時間内にトレースすることができた構成の数であり、スコアとして表れる。また、トレーニング内容の失敗数(エラー数)は、1番目から6番目までの順番を間違えてトレースしたり、操作を誤って順番とは異なる構成に対してプローブ9を接触させたり、金属ライン711からプローブ9が外れたりした回数であり、エラーとしてカウントされる。なお、上記のとおり制御ボックス5が各構成に対するトレースにともなう報知音をスピーカ8から発生させる場合は、エラーとしてカウントされる構成に対するプローブ9の接触を検出したときに、順番通りの正しいトレースを検出した際の報知音とは異なるエラー音を発生させてもよい。
以上のように、第7タスクボックス3Gは、第7操作対象20Gに対する関節鏡51の操作および手術器具52としてのプローブ9によるトレース操作をトレーニング内容とし、技能評価項目を第7操作対象20Gに対する関節鏡51およびプローブ9の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数とする。第7タスクボックス3Gによるトレーニング内容によれば、関節鏡51だけでなく接触用の手術器具52も同時に正確に操作し、ラインに沿った動きを行うことで、膝関節に存在する半月板や十字靱帯等のトレースを行う技術を向上させることができる。
(8)第8タスクボックス3Hのトレーニング内容
第8タスクボックス3Hによるトレーニング内容は、「Pinch & Pulling」と称され、関節鏡による鏡視と手術器具による把持動作、つまり関節鏡および鉗子等の把持用の手術器具の協調動作の技術の向上を目的とする。第8タスクボックス3Hによるトレーニング内容は、関節鏡と接触用の手術器具を操作する両手の協調動作が可能かどうかに加え、関節鏡映像と第8タスクボックス3H内との位置関係の変化に対応可能かどうかの評価に用いられる。つまり、第8タスクボックス3Hによるトレーニングは、第3タスクボックス3Cによりトレーニングされる操作に加え、関節鏡映像と第8タスクボックス3H内の位置関係が上下/左右に変化した場合における、把持用の手術器具52による適切な引抜き動作のトレーニングを行うものである。第8タスクボックス3Hによるトレーニング内容において、関節鏡による鏡視は、関節鏡による上下/左右の感覚の向上に重点を置く。
図25に、第8タスクボックス3Hの操作対象20である第8操作対象20Hを示す。図25に示すように、第8操作対象20Hは、所定の位置に差し込まれた状態で設けられる複数のピン811を有する。ピン811は、プラグとして機能し、ジャックとして機能する孔部812に差し込まれる。ピン811は、孔部812に差し込まれる側については略円筒状の外形を有し、孔部812に差し込まれる側と反対側の端部に、略板状に形成される把持部811aを有する。
ピン811が差し込まれる孔部812は、第8タスクボックス3Hのボックス側コネクタ22の接続端子22aに所定の配線により接続される。また、第8タスクボックス3Hの内部空間においては、上面と下面との間に架け渡された状態で設けられる柱部813が設けられている。柱部813は、内部空間における略中央位置にて上下方向に立った状態で設けられ、訓練者50によるピン811に対する操作の障害物となる。
本実施形態では、ピン811および孔部812の組み合わせが、第8タスクボックス3Hの内部空間の左右両側の面および奥側の面に、計10組設けられており、孔部812の近傍には、それぞれ1〜10のいずれかの数字が記載される。なお、ピン811および孔部812の数や配置は特に限定されない。
第8タスクボックス3Hによるトレーニング内容は、孔部812に差し込まれているピン811を、数字の順番に、関節鏡51で捉えながら手術器具52により引き抜いていくというものである。ただし、6番目から10番目のピン811の引抜きは、第8タスクボックス3Hを90°回転させた状態で行われる。第8タスクボックス3Hの回転は、関節鏡トレーニングシステム1が備える支持機構10によるタスクボックススロット6の回転動作により行われる(図5参照)。
具体的には、訓練者50は、関節鏡51を操作し、ピン811をモニタ54に関節鏡映像54aとして映し出して確認しながら、鉗子等の把持用の手術器具52で掴んで孔部812から引き抜く。こうしたピン811の引抜きを、1番目から5番目まで番号の順番に行っていく。次に、支持機構10によって第8タスクボックス3Hを右方向または左方向に90°回転させ、残りの6番目から10番目までのピン811の引抜きを番号の順番に行っていく。1〜5および6〜10の番号順のピン811の引抜きは、タッチパネル4における表示により促される。例えば、タッチパネル4には、現在引き抜くべき順番のピン811の番号が表示され、そのピン811の引抜きが行われると、タッチパネル4には、次の番号が表示される。
なお、本実施形態では、第8タスクボックス3Hを図25に示すような通常の状態と90°回転させた状態との2つの角度状態として用いているが、第8タスクボックス3Hの角度状態の数は特に限定されない。例えば、第8タスクボックス3Hを通常の状態と45°回転させた状態と90°回転させた状態との3つの角度状態として用いてもよい。また、第8タスクボックス3Hの各角度状態で引き抜くピン811の本数の割り当ても適宜設定される。つまり、第8タスクボックス3Hによるトレーニング内容においては、第8タスクボックス3Hを異なる角度状態とし、少なくとも2つの角度状態の第8操作対象20Hに対する操作が行われればよい。
図26に、第8タスクボックス3H内の第8操作対象20Hについての、関節鏡51により映された関節鏡映像54aの一例を示す。図26に示す例では、関節鏡映像54aにおいて、通常の状態(90°回転させてない状態)で、「6」の番号に対応するピン811を鉗子により掴もうとしている状態が示されている。訓練者50は、こうした関節鏡映像54aを見ながら、上述したような第8操作対象20Hに対する操作を行う。
第8タスクボックス3Hによるトレーニングにおいては、制御ボックス5は、訓練者50によるピン811の引抜きにより、訓練者50が関節鏡51によってピン811を捉えるとともに手術器具52によりピン811を引き抜いたことを検出し、タッチパネル4の表示内容に反映する。ここで、例えば、制御ボックス5は、訓練者50によるピン811の引抜きを検出するたびに、スピーカ8から報知音を発生させる。
ピン811が引き抜かれたことは、ピン811の孔部812からの引抜き動作自体により、制御ボックス5によって検出される。具体的には、ピン811が引き抜かれることにより、孔部812を含む接続回路が切り替わる。このピン811の引抜きにともなう接続回路の切替わりが、ピン811の引抜きの信号として、孔部812から所定の配線ならびにボックス側コネクタ22およびスロット側コネクタ21等を介して、制御ボックス5により検出される。1番目から10番目までのピン811の差替えが完了することで、第8タスクボックス3Hによるトレーニング内容はクリアとなる。
第8タスクボックス3Hによるトレーニング内容の技能評価項目は、第8操作対象20Hに対する関節鏡51および鉗子等の把持用の手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数である。トレーニング内容を達成するまでの所要時間は、訓練者50が関節鏡51およびプローブ9を操作することにより1番目から10番目までのピン811すべての引抜きを完了するまでの所要時間である。
トレーニング内容の達成度は、所定の制限時間内に引き抜くことができたピン811の数であり、スコアとして表れる。また、トレーニング内容の失敗数(エラー数)は、1番目から10番目までの順番を間違えてピン811を引き抜いたり、操作を誤って順番とは異なる数字のピン811を引き抜いたりした回数であり、エラーとしてカウントされる。なお、上記のとおり制御ボックス5がピン811の引抜きにともなう報知音をスピーカ8から発生させる場合は、エラーとしてカウントされるピン811の引抜きを検出したときに、順番通りの正しいピン811の引抜きを検出した際の報知音とは異なるエラー音を発生させてもよい。
以上のように、第8タスクボックス3Hは、少なくとも2つの角度状態の第8操作対象20Hに対する関節鏡51の操作および手術器具52による引抜き操作をトレーニング内容とし、技能評価項目を第8操作対象20Hに対する関節鏡51および手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数とする。第8タスクボックス3Hによるトレーニング内容によれば、関節鏡51だけでなく把持用の手術器具52も同時に正確に操作し、サイコモータスキルを養うことができる。
具体的には、第8タスクボックス3Hが90°回転させられることで、モニタ54の関節鏡映像54aにおいて、例えば、物体が左右方向に落ちるような映像が示される。このように、モニタ54の関節鏡映像54aと第8タスクボックス3H内の位置関係が上下/左右に変化した場合、関節鏡51および手術器具52の正確な操作を行うことが難しくなる。そこで、第8タスクボックス3Hによるトレーニングを行うことで、関節鏡映像としてモニタに表示される映像と、実際の体内空間における手術対象との対応関係を正確に把握しながら関節鏡および手術器具の操作を行うことができる技術を向上させることができる。
(9)第9タスクボックス3Iのトレーニング内容
第9タスクボックス3Iによるトレーニング内容は、第8タスクボックス3Hによるトレーニング内容と同じであるが、第9タスクボックス3Iの操作対象20である第9操作対象20Iの構造が、第8操作対象20Hと左右対称(鏡像)の関係にある。第8タスクボックス3Hと第9タスクボックス3Iとは、それぞれ左足と右足の関節内をイメージしたものである。つまり、第8タスクボックス3Hおよび第9タスクボックス3Iのうち一方のタスクボックス3の操作対象20が左足の膝関節を想定して構成される場合、他方のタスクボックス3の操作対象20は、右足の膝関節を想定して構成される。
図27に、第9タスクボックス3Iの操作対象20である第9操作対象20Iを示す。図27に示すように、第9操作対象20Iは、図25に示す第8操作対象20Hと左右対称であり、孔部912に差し込まれた状態で設けられ把持部911aを有する10本のピン911と、中央部に設けられる柱部913とを備える。また、第9操作対象20Iにおいては、孔部912の近傍に記載される1〜10の数字が、図25に示す第8操作対象20Hとは左右方向に反対の順番となっている。
図28に、第9タスクボックス3I内の第9操作対象20Iについての、関節鏡51により映された関節鏡映像54aの一例を示す。図28に示す例では、関節鏡映像54aにおいて、通常の状態(90°回転させてない状態)で、「7」の番号に対応するピン911を鉗子により把持した状態が示されている。訓練者50は、こうした関節鏡映像54aを見ながら、上述したような第9操作対象20Iに対する操作を行う。
第9タスクボックス3Iによるトレーニングの方法、トレーニング内容、トレーニング内容の技能評価項目等については、第8タスクボックス3Hと同様であるため、説明を省略する。
以上のように、第9タスクボックス3Iは、操作対象20として第8タスクボックス3Hが有する第8操作対象20Hとは左右対称のものである第9操作対象20Iを有する。そして、第9タスクボックス3Iは、技能評価項目を第9操作対象20Iに対する関節鏡51および手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度および失敗数とする。第9タスクボックス3Iによるトレーニング内容によれば、第8タスクボックス3Hと同様に、関節鏡51だけでなく把持用の手術器具52も同時に正確に操作し、サイコモータスキルを養うことができる。
[タスクボックスの特徴]
上述した各タスクボックス3の構造の特徴について説明する。上述した9種類のタスクボックス3のうち、第1から第3までのタスクボックス3の課題については、関節鏡による「鏡視」のスキルアップが重要となる。このため、第1から第3までのタスクボックス3の各操作対象20については、生体関節内を忠実に再現した「生体模型」が導入されている。
具体的には、第1タスクボックス3Aおよび第2タスクボックス3Bにおいては、操作対象20A、20Bは、生体模型の部分として、大腿骨部112、212と脛骨部113、213とを有する。また、第3タスクボックス3Cにおいては、操作対象20Cは、生体模型の部分として、大腿骨部312と膝蓋骨部313とを有する。
このように第1から第3までのタスクボックス3が操作対象20として有する生体模型は、金型を起こして加工・製造することができるが、この方法は、非常に手間とコストがかかり好ましくない。そこで、各タスクボックス3において操作対象20を構成する生体模型は、次のような方法により製造されることが好ましい。
図29に示すように、まず、生体関節について、MRI(Magnetic Resonance Imaging)またはCT(Computerized Tomography)により複数の断面画像データ71を取得し、生体関節の輪郭を抽出する。これらの断面画像データ71群から、3次元CAD(computer aided manufacturing)データ72を構築し、生体形状を再現する。
また、生体模型において触感などの生体材料特性が必要な場合は、アニマトロニクス(animatronics)技術を応用し、特殊発泡ウレタン等の素材を適用することで、生体模型を再現する。このような製造方法を用いることで、タスクボックス3の操作対象20を構成する生体模型を製造するに際し、金型を起こして加工・製造する場合との比較において、手間とコストを大幅に削減することができる。
また、操作対象20を構成する生体模型は、より好ましくは、次のような方法により製造される。3次元CADと、RP(Rapid Prototyping)とを連携させた一体成型を行う。具体的には、まず、図29に示すように、生体関節について、MRIまたはCTにより複数の断面画像データ71を取得し、これを3次元CAD上に取り込む。3次元CAD上に取り込んだ断面画像データ71を、3次元CAD上で、タスクボックス3において操作対象20を収容する箱の部分の構成部品等の全ての部品と一体化させて一体成型する。RPとしては、例えば粉体形成方式RPが用いられる。RPは、金型を製造・利用することなく、受注ごとにプラスチック成形部品を製造することが可能であり、本システムのような小量生産に最適である。
そして、例えば第2タスクボックス3Bの第2操作対象20Bのように、生体模型に接触端子214を設ける必要がある構成の場合、接触端子214、接触端子214を設置するための生体模型表面の設置穴、接触端子214に接続される配線経路を、3次元CAD上で事前に作り込む。このような製造方法を用いることで、例えば接触端子214等の電気系端子の設置作業や配線作業を簡略化することができ、簡便かつ精密な組立て作業が実現でき、手間とコストを効果的に削減することができる。
一方、上述した9種類のタスクボックス3のうち、第4から第9までのタスクボックス3の課題については、操作対象20においてリアルな「生体模型」を再現することなく、敢えてシンプルな形式を採用している。このことは、第4から第9までのタスクボックス3によるトレーニングによってスキルアップさせる基本技能については、操作対象20をシンプルな構成とし、トレーニングとして行う操作の課題を明瞭にすることが、効率的なトレーニングを行ううえで好ましいという観点に基づく。
[トレーニングの手順]
本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1によるトレーニングの手順について、タッチパネル4の表示内容とともに説明する。基本的には、タッチパネル4に表示される制御ボックス5の指示に従ってトレーニングが行われることで、各トレーニング内容についての所定の技能評価項目による評価が、客観的な指標として、タッチパネル4に表示される仕組みとなっている。
まず、関節鏡トレーニングシステム1において、システム本体2の電源を入れると、システム本体2とタッチパネル4とが起動し、制御ボックス5によってアプリケーションが起動する。なお、システム本体2の電源を入れる操作は、通常、タスクボックススロット6にタスクボックス3がセットされていない状態で行われる。
システム本体2のアプリケーションの起動が完了すると、タッチパネル4には、図30(a)に示すようなオープニング画面60が表示される。このオープニング画面60が表示された状態において、タスクボックススロット6にタスクボックス3がセットされると、タッチパネル4には、図30(b)に示すようなタスクボックスセット画面61が表示される。なお、ここでは、タスクボックス3として、「Inspection & touching」と称されるトレーニング内容を行う第2タスクボックス3Bがセットされるとする。
タスクボックススロット6に対するタスクボックス3のセットは、図31に示すように、タスクボックススロット6の挿入口6aから蓋体40を取り外した状態で、タスクボックス3を、開口部3aとは反対側から挿入口6aに差し込むことで行われる。ここで、タスクボックス3は、ボックス側コネクタ22がスロット側コネクタ21に差し込まれて互いに接続した状態となるまでタスクボックススロット6内に押し込まれる。タスクボックススロット6にタスクボックス3がセットされた後、挿入口6aに蓋体40が装着される(図8参照)。
図30(b)に示すように、タスクボックスセット画面61には、セットされているタスクボックス3の番号と、その番号のタスクボックス3のトレーニング内容(例えば、「Inspection & Touching」)が表示される。タスクボックスセット画面61は、イメージ画像表示部61aと、トレーニング導入操作表示部61bと、トレーニング内容表示部61cとを有する。イメージ画像表示部61aには、例えばセットされているタスクボックス3の操作対象20の拡大画像等の、トレーニング内容を想起させるイメージ画像が表示される。
トレーニング導入操作表示部61bは、訓練者50を実際のトレーニングへと導入させるためのボタン機能を有する。つまり、訓練者50によりトレーニング導入操作表示部61bがタッチされることにより、タッチパネル4の表示画面が図30(c)に示すようなトレーニング画面62へと切り替わる。図30(b)に示す例においては、トレーニング導入操作表示部61bには、「Training」の文字が表示されている。トレーニング内容表示部61cには、トレーニングを行うに際して必要な準備の指示や、トレーニング内容の説明や、トレーニング導入操作表示部61bの操作を促すメッセージ等が表示される。
図30(c)に示すように、トレーニング画面62は、トレーニング開始操作表示部62aと、番号表示部62bと、評価項目表示部62cとを有する。トレーニング開始操作表示部62aは、トレーニングを開始するためのボタン機能を有する。つまり、訓練者50によりトレーニング開始操作表示部62aがタッチされることにより、トレーニングが開始される。図30(c)に示す例では、トレーニング開始操作表示部62aには、「Start」の文字が表示されている。
番号表示部62bには、操作対象20における次のターゲットの番号が表示される。例えば、第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容の場合、訓練者50がプローブ9によって接触端子214にタッチするごとに、番号表示部62bの番号が1ずつ増えていく。
評価項目表示部62cは、トレーニング内容のスコア(達成度)と、エラー数(失敗数)と、経過時間(所要時間)とを表示する。図30(c)に示す例では、評価項目表示部62cにおいて、スコアとして「Clearing」の文字が表示され、エラー数として「Miss」の文字が表示され、経過時間として「Elapsed time」の文字が表示されている。
評価項目表示部62cにおいては、例えば、第2タスクボックス3Bによるトレーニング内容の場合、次のような表示が行われる。評価項目表示部62cにおいて表示されるスコアは、訓練者50がプローブ9によって接触端子214にタッチするごとに加算される。評価項目表示部62cにおいて表示されるエラー数は、訓練者50が、1番目から10番目までの順番を間違えて接触端子214にタッチしたり、操作を誤って順番とは異なる数字の接触端子214にタッチしたりするごとに加算される。評価項目表示部62cにおいて表示される経過時間は、トレーニング開始操作表示部62aが押されてから経過した時間であり、文字(秒数)とバーにより表示される。なお、トレーニング画面62には、セットされているタスクボックス3の番号と、その番号のタスクボックス3のトレーニング内容(例えば、「Inspection & Touching」)が表示される。
トレーニングは、訓練者50があらかじめ設定されたトレーニング内容をクリアするか、あらかじめ設定された所定の制限時間が経過することにより終了する。制限時間は、例えば、評価項目表示部62cにおけるバー表示により訓練者50に視認される。トレーニングが終了すると、図30(d)に示すように、トレーニング画面62の番号表示部62bにおいて、終了を報知する文字が表示される。図30(d)に示す例では、番号表示部62bに、「End」の文字が表示されている。また、トレーニングが終了した時点での評価項目表示部62cにおける表示が、そのトレーニング内容についての評価結果となる。このように、例えば第2タスクボックス3Bの場合、トレーニング内容についての評価結果として得られるスコア(達成度)、エラー数(失敗数)、および経過時間(所要時間)が、客観的指標となる。
図20に示すようなタッチパネル4による画面表示には、GUI(Graphical User Interface)を採用することで、より視覚的・感覚的な操作でトレーニングを行うことが可能となる。トレーニングの結果は、例えば、制御ボックス5に接続されるプリンタ等により出力される。トレーニング結果としては、タスクボックス3の番号、スコア、エラー数、および経過時間が出力される。
他のタスクボックス3のトレーニングを行う場合には、タスクボックススロット6からタスクボックス3を引き抜き、別のタスクボックス3をタスクボックススロット6にセットする。ここで、タスクボックススロット6からタスクボックス3を引き抜くと、タッチパネル4の画面表示は、図30(a)に示すオープニング画面60に戻る。また、タスクボックススロット6からタスクボックス3を引き抜く際には、タスクボックス3の底面3c側に設けられる把持体31が用いられる(図7参照)。以上のような手順により、第1から第9までのタスクボックス3によるトレーニングが行われる。
[指導項目とタスクボックスとの関連性]
関節鏡手術トレーニングにおける指導項目と、各タスクボックス3によるトレーニング内容との関連性について説明する。図32に、関節鏡トレーニングシステムにおける指導項目とタスクボックス3との関連性を示す。
図32において、左側の枠内は、関節鏡手術トレーニングにおける指導項目を示し、上から順に、「鏡視」は、「(a)関節鏡による鏡視技能(Inspection)」に、「両手協調動作」は、「(b)関節鏡および手術器具を操作する両手の協調動作(Bi-hand(Bilateral) coordination)」に、「損傷・合併症」は、「(c)手術にともなう損傷・合併症の回避(Complications)」に、「情報取得」は、「(d)関節鏡の映像からの情報取得(Information gathering)」に、「時間」は、「(e)手術時間(Time)」にそれぞれ対応する。また、図32において、右側の枠内は、上述したように9種類存在するタスクボックス3の番号(以下「ボックス番号」という。)を示す。なお、第8タスクボックス3Hと第9タスクボックス3Iとはトレーニング内容を共通にするため、同種類のタスクボックス3としている。
図32では、各指導項目から各ボックス番号への矢印により、指導項目とボックス番号との関連性を示している。図32では、指導項目とボックス番号との関連性について、各指導項目から、その指導項目が他のボックス番号と比べて比較的高い関連性を有する上位1〜3個のボックス番号に向かう矢印が示されている。
図32に示すように、指導項目「鏡視」からの矢印81a、81bは、ボックス番号「6」および「8&9」に向かう。つまり、指導項目「鏡視」は、第6タスクボックス3F、第8タスクボックス3H、および第9タスクボックス3Iによるトレーニング内容と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「鏡視」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、第6、第8、および第9タスクボックス3F、3H、3Iによるトレーニングを重点的・集中的に行うことで、効果的なトレーニングを行うことができる。
同様に、指導項目「両手協調動作」からの矢印82a、82bは、ボックス番号「1」および「6」に向かう。つまり、指導項目「両手協調動作」は、第1タスクボックス3A、および第6タスクボックス3Fによるトレーニング内容と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「両手協調動作」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、第1および第6タスクボックス3A、3Fによるトレーニングを重点的・集中的に行うことで、効果的なトレーニングを行うことができる。
また、指導項目「損傷・合併症」からの矢印83a、83bは、ボックス番号「6」および「8&9」に向かう。つまり、指導項目「損傷・合併症」は、第6タスクボックス3F、第8タスクボックス3H、および第9タスクボックス3Iによるトレーニング内容と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「損傷・合併症」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、第6、第8、および第9タスクボックス3F、3H、3Iによるトレーニングを重点的・集中的に行うことで、効果的なトレーニングを行うことができる。
また、指導項目「情報取得」からの矢印84aは、ボックス番号「1」に向かう。つまり、指導項目「情報取得」は、第1タスクボックス3Aによるトレーニング内容と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「情報取得」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、第1タスクボックス3Aによるトレーニングを重点的・集中的に行うことで、効果的なトレーニングを行うことができる。
また、指導項目「時間」からの矢印85a、85b、85cは、ボックス番号「2」、「6」、および「8&9」に向かう。つまり、指導項目「時間」は、第2タスクボックス3B、第6タスクボックス3F、第8タスクボックス3H、および第9タスクボックス3Iによるトレーニング内容と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「時間」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、第2、第6、第8、および第9タスクボックス3B、3F、3H、3Iによるトレーニングを重点的・集中的に行うことで、効果的なトレーニングを実践することができる。
以上のように、各タスクボックス3によるトレーニング内容は、関節鏡手術トレーニングにおける5つの指導項目に対して相関関係を有する。このように、各トレーニング内容が複数の指導項目と相関関係を有することにより、訓練者50は効率的なトレーニングを行うことができる。また、各トレーニング内容について、例えばスコア(達成度)等の評価指標による評価結果を用いることで、評価の低いトレーニング内容と関連性が高い指導項目についての技能が未熟であるといった客観的な評価を行うことが可能となる。また、トレーニング内容の評価指標であるスコア(達成度)等の値を参照することで、トレーニング内容についての定量的な評価を行うことが可能となる。
このように、本実施形態に係る関節鏡トレーニングシステム1によれば、内視鏡技術の中でも比較的高度な関節鏡技術について、定量的・客観的な評価を行うことができ、効率的なトレーニングを行うことができる。
[指導項目と技能評価項目の関連性]
続いて、関節鏡手術トレーニングにおける指導項目と、各タスクボックス3によるトレーニング内容が有する技能評価項目との関連性について説明する。各トレーニング内容は、上述したように技能評価項目を有し、各技能評価項目により、指導項目に対して細分化された相関関係を有する。図33に、関節鏡トレーニングシステムにおける指導項目と各トレーニング内容の技能評価項目との関連性の一例を示す。
図33に示す表において、「Parameter of arthroscopic surgical skills」は、関節鏡手術トレーニングにおける指導項目に対応する。また、「Task No.-parameter」は、ボックス番号と、そのボックス番号のトレーニング内容の技能評価項目に対応する。例えば、「No.6-time」は、第6タスクボックス3Fのトレーニング内容の所要時間であり、「No.8-score」は、第8タスクボックス3Hのトレーニング内容のスコア(達成度)であり、「No.2-error」は、第2タスクボックス3Bのトレーニング内容のエラー数(失敗数)である。また、「Correlation coefficient」は、指導項目と技能評価項目との相関係数である。この相関係数の値が大きいほど、指導項目と技能評価項目とが高い関連性を有する。また、「P-value」は、probability- valueであり、有意確率とも称され、検定の有意性を示す値である。
図33に示す表では、指導項目とボックス番号および技能評価項目との関連性について、指導項目が他のボックス番号および技能評価項目と比べて比較的高い関連性を有する上位1〜4個のボックス番号および技能評価項目が示されている。
図33に示すように、指導項目「鏡視」は、ボックス番号「6」の「所要時間」、ボックス番号「8(9)」の「スコア」および「所要時間」と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「鏡視」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、ボックス番号「6」の「所要時間」、ボックス番号「8(9)」の「スコア」および「所要時間」についての評価結果が向上するように(所要時間の場合は、所用時間が短くなるように)トレーニングを行うことで、効果的なトレーニングを行うことができる。
同様に、指導項目「両手協調動作」は、ボックス番号「1」の「所要時間」、ボックス番号「6」の「所要時間」、ボックス番号「8(9)」の「所要時間」と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「両手協調動作」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、ボックス番号「1」の「所要時間」、ボックス番号「6」の「所要時間」、ボックス番号「8(9)」の「所要時間」についての評価結果が向上するようにトレーニングを行うことで、効果的なトレーニングを行うことができる。
また、指導項目「損傷・合併症」は、ボックス番号「2」の「エラー数」、ボックス番号「6」の「エラー数」および「所要時間」、ボックス番号「8(9)」の「エラー数」と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「損傷・合併症」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、ボックス番号「2」の「エラー数」、ボックス番号「6」の「エラー数」および「所要時間」、ボックス番号「8(9)」の「エラー数」についての評価結果が向上するようにトレーニングを行うことで、効果的なトレーニングを行うことができる。
また、指導項目「情報取得」は、ボックス番号「1」の「所要時間」と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「情報取得」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、ボックス番号「1」の「所要時間」についての評価結果が向上するようにトレーニングを行うことで、効果的なトレーニングを行うことができる。
また、指導項目「時間」は、ボックス番号「6」の「所要時間」と比較的高い関連性を有する。したがって、指導項目「時間」の技能が未熟である場合やこの技能を向上させたい場合は、ボックス番号「6」の「所要時間」についての評価結果が向上するようにトレーニングを行うことで、効果的なトレーニングを行うことができる。
以上のように、各トレーニング内容の技能評価項目は、関節鏡手術トレーニングにおける5つの指導項目に対して相関関係を有する。このように、各トレーニング内容の技能評価項目が複数の指導項目と相関関係を有することにより、内視鏡技術の中でも比較的高度な関節鏡技術について、より定量的・客観的な評価を行うことができ、より効率的なトレーニングを行うことができる。
具体的には次のとおりである。図33に示す指導項目と各トレーニング内容の技能評価項目との関連性の例は、訓練者50として、関節鏡手術経験20例以下のレジデント医師を対象とした検討において、指導医としての専門医からの指導項目と各トレーニング内容の技能評価項目との関連性を明らかにしたものである。
レジデント医師が、専門医の前で関節鏡手術を行い、専門医から関節鏡手術トレーニングにおける指導項目に対応する指摘を受ける。指導項目「鏡視」については、鏡視技能が未熟であるとの指摘を受ける。指導項目「両手協調動作」については、両手協調動作が未熟であるとの指摘を受ける。指導項目「損傷・合併症」については、生体組織に無駄な力を加え過ぎる等、損傷・合併症の危険性の指摘を受ける。指導項目「情報取得」については、関節鏡技術の総合的な能力に欠けるとの指摘を受ける。指導項目「時間」については、手術時間がかかり過ぎるとの指摘を受ける。
このようにレジデント医師が専門医から受ける指摘に対応する指導項目については、図33に示すように、各トレーニング内容の技能評価項目との関連性が明瞭に表れる。例えば、専門医により、鏡視技能が低いと評価されたレジデント医師は、ボックス番号「6」のトレーニングに時間がかかり、ボックス番号「8(9)」のトレーニングのスコアが低く、時間もかかる。
また、専門医により、両手協調動作の技能が低いと評価されたレジデント医師は、ボックス番号「1」、「6」、「8」のトレーニングに時間がかかる。また、専門医により合併症を起こしやすいと評価されたレジデント医師は、ボックス番号「2」、「6」、「8」のトレーニングのエラー数が多く、ボックス番号「6」のトレーニングに時間がかかる。
このように、本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1においては、関節鏡手術に必要な基本技術要素が、関節鏡手術トレーニングにおける複数の指導項目に対して相関関係を有しながら、複数のタスクボックス3によるトレーニング内容として、必要十分な基本タスクに分割されている。また、各トレーニング内容は、複数の指導項目に対して相関関係を有する技能評価項目として、素因数分解的に分割されている。
そして、通常のトレーニングセミナー等で専門医が指摘・指導する指導項目と、各タスクボックス3によるトレーニング内容の各技能評価項目との相関関係は、明瞭である。つまり、各タスクボックス3によるトレーニング内容についてのスコアや所要時間等の各技能評価項目は、レジデント医師が専門医から教示される指導項目と綿密に連携している。これらの相関関係は、専門医がトレーニングを受ける医師の技能評価を行い、苦手な技術を指摘することで、最適なタスクボックス3による重点的・集中的なトレーニングが可能になることを示している。
具体的には、訓練者50は、タスクボックス3ごとのトレーニング内容の各技能評価項目についての評価結果から、複数の指導項目のうち、どの指導項目についての技能が不足しているか等、指導項目ごとに、自己の技能の状況を定量的・客観的に把握することができる。そこで、訓練者50は、自己の技能の状況に応じて、例えば技能が不足している指導項目に対応する技能評価項目を有するトレーニング内容を重点的・集中的にトレーニングするように、タスクボックス3を選択し、トレーニングを行う。このようなトレーニングを行うことで、指導医によらずに、無駄のない効率的な自己トレーニングを行うことができる。
以上のように、本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1によれば、関節鏡手術に必要な基本スキルの反復トレーニングが可能で、基本スキルの定量的・客観的な評価が可能となり、関節鏡手術に対する必須トレーニングが明瞭となる。このため、指導医としての専門医が存在しないまたは少ない状況でも、指導医の負担を軽減しつつ、効率的なトレーニングが可能となり、内視鏡技術の中でも比較的高度な関節鏡技術について、「自己トレーニングが可能な環境」を提供することができる。
本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1は、VRトレーニング装置と比べて価格帯が大幅に低い。しかも、例えばシステム構成において既存の汎用部品を多く用いることにより、コストを容易に下げることができる。このため、本実施形態の関節鏡トレーニングシステム1は、医療現場等に対する導入が容易であり、また、例えばアジア地域等の諸外国への展開を考えた場合に有利である。
[関節鏡トレーニングシステムの他の実施形態]
関節鏡トレーニングシステムの他の実施形態について説明する。本実施形態の関節鏡トレーニングシステムは、上述した実施形態の関節鏡トレーニングシステム1が有する機能と同様の機能を具備する。このため、共通する構成については同一の名称を用いる等して、重複する内容についての説明を適宜省略する。
図34に示すように、本実施形態の関節鏡トレーニングシステムは、システム本体1002において、一体的なハウジング1300を備える。ハウジング1300は、関節鏡トレーニングシステムによるトレーニングにおいて所定の制御を行うための制御構成を内蔵する制御ボックス部1310と、タスクボックススロット1006を支持するスロット支持部1320とを有する。
ハウジング1300において、制御ボックス部1310は、ハウジング1300の下側の部分を構成し、スロット支持部1320は、ハウジング1300の上側の部分を構成する。つまり、ハウジング1300においては、下側の内部空間に制御構成が収容され、上側の部分にタスクボックススロット1006が支持される。制御ボックス部1310とスロット支持部1320とは、ハウジング1300の外形形状について、一体的で連続的な形状を構成する。具体的には、次のとおりである。
図34に示すように、ハウジング1300は、下側(載置面側)の部分となる基部において略直方体状の外形を有し、この基部の部分から、上側、即ちスロット支持部1320側に行くにしたがい、前後方向の寸法が徐々に小さくなる形状を有する。詳細には、ハウジング1300の背面側は、略直方体形状の基部の部分に対して、略鉛直方向に沿うように形成され、ハウジング1300の正面側は、略直方体形状の基部の部分に対して、上側にかけて背面側に近付くようになだらかな曲面状に形成される。したがって、ハウジング1300は、その前後方向の寸法(厚さ)が下側から上側にかけて徐々に前側から小さく(薄く)なるような形状を有する。
このような形状を有するハウジング1300において、左右両側の側面1301は、ハウジング1300の底面側と背面側とがなす角度部分を直角部分としながら斜辺側となる正面側が曲線をなす略直角三角形状となる。また、ハウジング1300は、正面側において、略直方体形状の基部の前面1302と、前面1302の上側の部分であって、上記のとおりなだらかな曲面状に形成される正面1303とを有する。
ハウジング1300の制御ボックス部1310の内部には、上記のとおり所定の制御を行うための制御構成が内蔵されるとともに、タッチパネル1004が収容される。タッチパネル1004は、ハウジング1300において正面1303に開口するように設けられた開口部1304から表示画面を外部に臨ませるように設けられる。タッチパネル1004は、その表示画面がハウジング1300の正面1303に沿う態様で設けられる。
上記のとおりスロット支持部1320に支持されるタスクボックススロット1006は、ハウジング1300に設けられたトンネル部1330内において、スロット支持部1320に設けられた支持機構1010により支持される。
トンネル部1330は、スロット支持部1320の左右方向略中央部に設けられ、ハウジング1300の上側の部分を前後方向に貫通する孔部を形成する部分である。トンネル部1330は、ハウジング1300の正面視において、上下方向を長手方向とする長孔形状ないし楕円形状を有する。トンネル部1330は、その孔部の内周面1331の前後方向の寸法、即ち側面視での左右方向の寸法を、上述したようなハウジング1300の外形形状に対応して変化させる。したがって、内周面1331の前後方向の寸法は、下側から上側にかけて徐々に小さくなる。
タスクボックススロット1006を支持する支持機構1010は、ハウジング1300の背面側の左右略中央の位置において上下方向に沿って設けられる支持軸1011を有する。支持軸1011は、スロット支持部1320におけるトンネル部1330を形成する上側の部分、つまりハウジング1300の上端部分を上下方向に貫通し、内周面1331の下側の面部に開口する穴からハウジング1300内に挿入され、トンネル部1330内にて上下方向に架設された態様で設けられる。支持軸1011のトンネル部1330内に架け渡された部分の略全体に、ネジ面が形成されている。
タスクボックススロット1006は、支持軸1011に対して図示せぬステー等の支持部材を介して支持される。タスクボックススロット1006は、昇降および回転が可能な状態で支持される。
タスクボックススロット1006の昇降については、支持軸1011の外周面に形成されたネジ面のネジ作用により、タスクボックススロット1006が上下方向、つまり支持軸1011の軸方向についての位置が変化する。支持機構1010は、支持軸1011が回転することにより、タスクボックススロット1006の上下方向の位置が変化するように構成されている。このため、支持軸1011の上端側には、支持軸1011を回転させるための把持部1012が設けられている。把持部1012は、ハウジング1300の上端面の上側に設けられ、支持軸1011と同軸心の円板状の外形を有する。把持部1012を回転操作することにより、タスクボックススロット1006の上下方向の位置が調整される。
タスクボックススロット1006は、支持軸1011に対して、前後方向を回転軸方向として回動可能に設けられる。タスクボックススロット1006は、上述した実施形態の関節鏡トレーニングシステム1が備えるタスクボックススロット6と同様の外形を有し、左右両側に、外側に凸な曲面として形成された一対の側面部1006aを有する。
図35(a)に示すように、通常、タスクボックススロット1006は、外側に凸な側面部1006aを左右両側に向けた姿勢で用いられる。そして、図35(b)に示すように、タスクボックススロット1006は、回動させられることで、例えば両側の側面部1006aが上下を向く姿勢となる。図35(b)に示す態様は、上述したような第8タスクボックス3Hや第9タスクボックス3Iを用いたトレーニングにおいてタスクボックス3を90°回転させる場合に用いられる。
このようなタスクボックススロット1006の回動操作を行うため、タスクボックススロット1006において平面状に形成される上下面には、把持部1013が設けられている。把持部1013は、正面視でアーチ状となる板状の部分である。訓練者等によって上下の把持部1013が把持され、タスクボックススロット1006が回動操作される。
図35(a)、(b)に示すように、タスクボックススロット1006の上下面に設けられたアーチ状の把持部1013は、正面視において、タスクボックススロット1006の側面部1006aとともに共通の円周に沿った形状を有する。つまり、正面視において、タスクボックススロット1006の両側の側面部1006aと、上下の把持部1013の外周面とによって円形状が形成される。このような形状を採用することにより、意匠的な外観の向上が図られている。
また、タスクボックススロット1006においては、前面側に、上述したようなタスクボックス3が挿入される挿入口が開口し、この挿入口が、蓋体1040によって覆われる。蓋体1040は、上述した関節鏡トレーニングシステム1における蓋体40と同様の構成である。
また、本実施形態の関節鏡トレーニングシステムにおいては、ハウジング1300内に、訓練者に対してトレーニングに関する音を発するスピーカが内蔵されている。また、ハウジング1300の右側の側面1301の下側には、フットスイッチ(図2、フットスイッチ7参照)およびプローブ(図2、プローブ9参照)が接続される接続ピン1014が設けられている。
また、本実施形態の関節鏡トレーニングシステムは、上述したようなタスクボックス200ごとのトレーニング内容の各技能評価項目についての評価結果を印刷する印刷部を備える。印刷部は、トレーニングにおいて所定の制御を行うための制御構成に接続され、ハウジング1300の制御ボックス部1310の部分に内蔵される。そして、ハウジング1300の前面1302に、印刷部によって各技能評価項目の評価結果が印字された紙1016を排出する排紙口1015が設けられている。
本実施形態の関節鏡トレーニングシステムが備える印刷部によれば、例えば、上述したようなトレーニング画面62の評価項目表示部62cにおけるトレーニング終了時点での表示(図30(d)参照)が、評価結果として紙1016に印字され、排紙口1015からプリントアウトされる。各タスクボックス200によるトレーニングについてプリントアウトされる評価結果は、次のとおりである。
第1タスクボックス3Aについては、第1操作対象20Aに対する関節鏡51の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間の結果が、評価結果としてプリントアウトされる。また、第2タスクボックス3Bについては、第2操作対象20Bに対する関節鏡51およびプローブ9の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度(スコア)および失敗数(エラー数)の結果が、評価結果としてプリントアウトされる。
また、第3タスクボックス3Cについては、第3操作対象20Cに対する関節鏡51および手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間の結果が、評価結果としてプリントアウトされる。また、第4タスクボックス3Dについては、第4操作対象20Dに対する関節鏡51およびプローブ9の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度(スコア)および失敗数(エラー数)の結果が、評価結果としてプリントアウトされる。
また、第5タスクボックス3Eについては、第5操作対象20Eに対する関節鏡51および手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度(スコア)および失敗数(エラー数)の結果が、評価結果としてプリントアウトされる。また、第6タスクボックス3Fについては、第6操作対象20Fに対する関節鏡51および手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度(スコア)および失敗数(エラー数)の結果が、評価結果としてプリントアウトされる。
また、第7タスクボックス3Gについては、第7操作対象20Gに対する関節鏡51およびプローブ9の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度(スコア)および失敗数(エラー数)の結果が、評価結果としてプリントアウトされる。また、第8タスクボックス3Hおよび第9タスクボックス3Iについては、それぞれ第8操作対象20Hまたは第9操作対象20Iに対する関節鏡51および手術器具52の操作によりトレーニング内容を達成するまでの所要時間、ならびにトレーニング内容の達成度(スコア)および失敗数(エラー数)の結果が、評価結果としてプリントアウトされる。
印刷部による排紙口1015からのプリントアウトは、例えば、各タスクボックス200によるトレーニング内容が終了することで自動的に行われる。また、他の例としては、タッチパネル1004上のトレーニング画面62(図30(d参照))等において評価結果をプリントアウトするための操作ボタン(例えば、「プリント」等の文字表示部)を表示し、訓練者等による操作ボタンの画面操作によってプリンアウトする構成が挙げられる。
このように、印刷部を備え、各トレーニング内容についての評価結果をプリントアウトする構成を採用することにより、トレーニングの評価結果が紙媒体で出力されることから、訓練者は、自己のトレーニングの評価結果の保存や管理等を容易に行うことができる。このことは、例えば、長期的な評価結果の変化を観察することを容易とし、内視鏡技術について定量的・客観的な技術の向上を見るうえで役立つ。また、訓練者が、例えば指導医等の他者に対して、自己の評価結果を紙媒体で容易に提示することが可能となる。
以上のような本実施形態の関節鏡トレーニングシステムによれば、上述した実施形態の関節鏡トレーニングシステム1と同様の効果が得られることに加え、次のような効果が得られる。すなわち、本実施形態の関節鏡トレーニングシステムは、制御構成を収容するとともにタスクボックススロット1006を支持する構成として、一体的で連続的な形状を有するハウジング1300を備えることから、システム本体1002において一体感、安定感のある形状が実現され、高いデザイン性が得られる。
以上説明した本発明の実施の形態では、内視鏡トレーニングシステムの一例である関節鏡トレーニングシステムについて説明したが、本発明は、関節鏡のほか、腹腔鏡、胸腔鏡、喉頭内視鏡、小腸内視鏡、大腸内視鏡、カプセル内視鏡等、様々な種類が存在する内視鏡のトレーニングにおいて適用可能である。
具体的には、内視鏡手術に必要な技術を、内視鏡の種類に応じて設定される、内視鏡手術のトレーニングについての複数の指導項目に対して相関関係を有する複数のトレーニング内容に分割し、さらに指導項目に対して相関関係を有する各トレーニング内容についての技能評価項目に素因数分解的に分割する。そして、各トレーニング内容について、所定の技能評価項目の評価結果が得られるように、複数のタスクボックスを準備する。これにより、例えば腹腔鏡等の所定の種類の内視鏡手術に必要な基本スキルの反復トレーニングが可能で、基本スキルの定量的・客観的な評価が可能となり、その種類の内視鏡手術に対する必須トレーニングが明瞭となる。