JP2012526035A - カーボンナノチューブから出発する窒素変性を有するカーボン材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、カーボンナノチューブから出発する、少なくとも表面上でピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基により変性されたカーボン材料の新規な製造方法に関する。
Description
本発明は、カーボンナノチューブから出発する、少なくとも表面上でピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基により変性されたカーボン材料の新規な製造方法に関する。
カーボンナノチューブは、通常、Iijimaによる1991年における記載(S.Iijima、Nature 354、第56〜58頁、1991年)から少なくとも当業者に知られている。それ以降、用語カーボンナノチューブとは、炭素を含み、および3〜80nmの範囲の直径および該直径の数倍、少なくとも10倍の長さを有する円筒体のことである。
これらのカーボンナノチューブの更なる特性は、規則炭素原子の層である。カーボンナノチューブについての同義語は、例えば「炭素繊維」若しくは「中空炭素繊維」若しくは「カーボンバンブー」、または「ナノスクロール」若しくは「ナノロール」(巻いた構造の場合)である。
上記カーボンナノチューブは、その寸法および特定の特性に起因して、複合材料の製造のために工業的に重要である。更なる重要な可能性は、上記カーボンナノチューブが通常、例えば導電性カーボンブラックの形態での黒鉛炭素より高い比導電率を有するので、電子工学およびエネルギー用途における可能性である。カーボンナノチューブの使用は、これらが上記の特性(直径、長さ等)について極めて均一である場合、特に有利である。
また、これらのカーボンナノチューブを、ヘテロ原子、例えば第5主族(例えば窒素)の原子で、カーボンナノチューブの製造方法の間に、塩基性触媒を得るためにドープする可能性も知られている。
窒素ドープトカーボンナノチューブの一般に知られた製造方法は、古典カーボンナノチューブ用の従来の製造方法、例えばアーク放電法、レーザーアブレーション法および触媒法をベースとする。
電気アーク法およびレーザーアブレーション法は、とりわけ、カーボンブラック、非晶質炭素および大きな直径を有する繊維が副生成物としてこれらの製造方法において形成されることを特徴とするので、得られるカーボンナノチューブは通常、該方法から得られた生成物および該方法の経済的魅力を損なわせる複雑な後処理工程に付されなければならない。
対照的に、触媒法は、品質の高い生成物を該方法によって良好な収率で製造することができるので、カーボンナノチューブの経済的製造について優位性を示す。触媒法の場合には、通常、担持系を用いる方法と「浮遊触媒」法との間で区別される。
担持系を用いる方法は通常、それ自体が活性であり得る担体マトリックス上に置かれる触媒を含むが、浮遊触媒法の用語は通常、触媒が前駆体からカーボンナノチューブを製造するための反応条件下で形成される方法のことである。
Maldonado等(Carbon 2006、44(8)、第1429〜1437頁)は、先行技術による「浮遊触媒」法の典型的な実施態様を開示する。窒素ドープトカーボンナノチューブの製造方法は、NH3およびキシレンまたはピリジンの存在下での触媒成分(フェロセン)のインサイチュ分解を特徴とする。このような方法の一般的な欠点は、このような方法を実施するための高価な有機金属化学薬品の使用が避けられないことである。さらに、有機金属化学化合物の多くは、健康に極めて有害であるか、または発癌性の疑いが少なくとも持たれている。
WO2005/035841A2には、電導性コアおよびその上に堆積した窒素ドープトカーボンナノチューブの層を含む電極の製造を含む方法が開示されている。該方法は、上記の定義に従う「浮遊触媒」法であり、関連する欠点を有する。
Van Dommele等およびMatter等(S.van Dommele等、Surf.Sci.and Cat.、2006年、第162巻、第29〜36頁、編集:E.M.Gaigneaux等、P.H.Matter等、J.Mol.Cat A:Chemical 第264巻(2007年)、第73〜81頁)はそれぞれ、窒素ドープトカーボンナノチューブを、コバルト、鉄またはニッケルをSiO2またはMgOマトリックス上に含む担持触媒上で、その上に炭素および窒素源としてアセトニトリルまたはピリジンをカーボンナノチューブの形態で堆積させるために用いる、先行技術による担持法の典型的な実施態様を開示する。この製造方法は、とりわけ、実験室において固定床反応器中で行うことを特徴とする。
上記方法の代替法は、US2007/0157348に開示され、窒素ドープトカーボンナノチューブは、H2Oプラズマを用いて固定床中で触媒により製造される。該方法は、とりわけ、カーボンナノチューブが引き続いて形成される基材表面上での触媒金属層の製造を含む。従って、これは、カーボンナノチューブを製造するための異なった担持法の特定の実施態様である。
また、前述の方法(担持法および「浮遊触媒」法)は、通常、触媒による化学気相堆積(触媒的化学炭素蒸着、CCVD)の総称として当業者に知られている。全てのCCVD法の特徴は、使用されおよび触媒と呼ばれる金属成分が合成法の過程において消費されることである。この消費は通常、金属成分の不活性化、例えば粒子の完全な被覆をもたらす全ての粒子上でのカーボンの堆積に起因する(これは「エンキャッピング」として当業者に既知である)。
再活性化は通常、不可能であるか、または経済的に実現不可能である。
例えば、Van Dommele等およびMatter等ならびにUS2007/0157348の先に開示された方法のような方法は、これらの方法が固定床反応器中で行われ、従って、任意の不活性化触媒の交換および置き換えが極めて困難を伴ってのみ可能であるので有利ではない。
このように支持された実施態様は同様に、窒素変性カーボンナノチューブを形成する出発材料の反応に利用可能な触媒金属部位が、粒子の表面または基材の表面上にのみ存在する点で不利である。また、このことは、1粒子当たりの窒素ドープカーボンナノチューブの達成可能な収率または基材の量についてこれらの実施態様の特有の制限をもたらす。さらに、用いる反応器の型は、窒素変性カーボンナノチューブ形成中に、固定床の体積が大きく変化するので長期間の連続操作に適していない。従って、反応器のこれらの型のスケールアップは、効率的な方法において可能ではない。
これに制限されない方法は、とりわけ、流動床法である。
DE102006017695A1には、流動床におけるカーボンナノチューブの製造を含む方法が開示されている。とりわけ、カーボンナノチューブを新しい触媒の導入および生成物の取り出しを伴って連続的に製造することができる流動床の操作の有利な様式が、開示される。また、用いる出発物質がヘテロ原子を含んでよいことが開示される。
他方、カーボンナノチューブの窒素による引き続きの変性は、開示されない。
DE102006007147には、用いた触媒に基づく高収率を達成するため、およびカーボンナノチューブの有利な生成物特性を達成するための代替法が開示されている。ここでは、触媒活性金属成分を高い割合で含み、従って所望の高い収率をもたらす触媒が開示される。また、用いる出発材料がヘテロ原子を含んでよいことが開示される。
他方、カーボンナノチューブの窒素による引き続きの変性は、開示されていない。
未公開ドイツ特許出願DE102007062421.4には、先行技術の上記の欠点を解消することができる有利な方法が開示されるが、窒素による変性は未だ、炭素および/または窒素を含む少なくとも1つの出発材料の使用による窒素変性カーボンナノチューブの実際の製造方法においてのみ開示される。
従って、DE102007062421.4には、表面上でピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基により変性された炭素材料を製造するために窒素でのカーボンナノチューブの引き続きの変性法は開示されていない。
アミン窒素でのカーボンナノチューブの引き続きの変性法は、Z. Konya等により「Large scale production of short functionalized carbon nanotubes」(Chem.Phys.Letters、第360巻、2002年:第429〜435頁)に開示される。
Z.Konya等は、反応性気体、例えば硫化水素、アンモニア、塩素、一酸化炭素、メチルメルカプタンおよびホスゲン等の存在下でカーボンナノチューブを粉砕することにより、これらの反応性気体由来の化学基で変性された炭素材料を得ることが可能になることを開示する。従って、アンモニアにより粉砕する場合、アミン基および/またはアミド基がカーボンナノチューブに結合することができることが開示される。しかしながら、用いるボールミルを、反応性粉砕前に、窒素でフラッシュするかまたは減圧下で焼成し、次いで反応性気体を、粉砕しながら導入することが更に開示される。反応性粉砕後、残存反応性気体を、窒素でフラッシュするか減圧下で再び除去する。
Z.Konya等も、カーボンナノチューブから出発する方法により、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を、少なくとも表面上に含む炭素材料を得ることが可能となることを開示しない。さらに、Z.Konya等の方法は、窒素と比べて有毒かつ腐食性である気体アンモニアを、アミン窒素基をカーボンナノチューブの表面上に得るために用いなければならない欠点を有する。
S.Iijima、「Nature」、第354巻、第56〜58頁、1991年
Maldonado、「Carbon」、第44巻(8)、第1429〜1437頁、2006年WO2005/035841A2
S.van Dommele、「Surf.Sci.and Cat.」、第162巻、第29〜36頁、2006年、編集:E.M.Gaigneaux他
P.H.Matter、「J.Mol.Cat A:Chemical」、第264巻、第73〜81頁、2007年
Z. Konya、「Large scale production of short functionalized carbon nanotubes」、Chem.Phys.Letters、第360巻、第429〜435頁、2002年
従って、先行技術に従えば、黒鉛炭素材料、特にピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含む炭素材料が得られ、および窒素による変性をカーボンナノチューブの製造方法とは別に行うことができ、および窒素による変性を、極めて簡単かつ安価に、プロセス工学的に問題のない条件下で行う方法を提供することの問題がなお存在する。
意外にも、本発明の第1の主題として、カーボンナノチューブを、窒素雰囲気下で粉砕することを特徴とする、カーボンナノチューブから出発する、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含む黒鉛炭素材料の製造方法により、上記課題を解決することができることを見出した。
本発明の目的のために、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含む黒鉛炭素材料は、黒鉛炭素を含み、および表面にピリジン形態、ピロール形態および/または第4級形態で少なくとも1原子%の割合の窒素を有する炭素材料である。
また、以下に記載の本発明の方法の好ましい実施態様では、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含み、ピリジン形態、ピロール形態および/または第4級形態で少なくとも5原子%の窒素を有する黒鉛炭素材料が得られる。
本発明の目的のために、黒鉛炭素材料の表面は、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を、少なくとも、X線光電子分光法(以下、省略のため、XPSと呼ぶ)による測定が可能である表面上に含む黒鉛炭素材料の割合である。当業者には、X線光電子分光法(XPS)により、試験する材料の分析が分析装置および試験試料に依存する特定の深度にのみ可能となることが通常知られる。
ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含む好ましい黒鉛炭素材料は、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含むカーボンナノチューブである。
本発明によれば、上記カーボンナノチューブは、少なくとも1原子%の窒素、好ましくは少なくとも5原子%の窒素の割合を、本明細書に開示の方法の後に、ピリジン形態、ピロール形態および/または第4級形態で表面上に有する炭素材料である。
本発明の方法により得られた黒鉛炭素材料およびその好ましい実施態様は、上記窒素の割合を、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基としての上記形態だけでなく、他の形態で有してよい。このような他の形態の例は、アミン窒素である。
しかしながら、本発明にとって、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基が、黒鉛炭素材料上/黒鉛炭素材料中に、既知の先行技術において不可能であったか、または窒素変性カーボンナノチューブの製造方法の過程においてのみ可能であった本発明の方法により得られることが必要である。
本発明の方法は、第1に、窒素の上記形態を有するカーボンナノチューブの引き続きの変性を可能とし、第2に、触媒反応法と比べて行うことが特に簡単であり、最後に、開始時に存在するカーボンナノチューブの任意の凝集体を、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を表面に有する微細に分割したカーボンナノチューブが得られるように粉砕することを同時に可能とするので特に有利である。さらに、アンモニアのような毒性および腐食性ガスの使用を省くことができる。
上記凝集体を粉砕することについての研究中に、意外にも、窒素の種々の形態でのカーボンナノチューブの化学変性は、カーボンナノチューブが、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を有する黒鉛炭素材料を与えるように窒素雰囲気下で粉砕することにより応力を受ける場合でも起こることを見出した。従って、先行技術(Z.Konya等を参照)における一般的な考え方に対して、窒素は、不活性ガスではないが、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を有する黒鉛炭素材料を製造するのに直接用いることができる。
従って、本発明の方法において存在する窒素雰囲気は、本発明による粉砕が、窒素の割合が少なくとも78体積%、好ましくは少なくとも90体積%である環境において行われることを意味する。
本発明の方法の特に好ましい実施態様では、環境における窒素の割合が少なくとも99体積%である。しかしながら、本発明の方法は、周囲空気下で行ってもよい。
ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を有する、得られた黒鉛炭素材料の優位性は、特に、第1に、これらが、例えばDE102007062421.4において既に強調されている触媒活性であり、第2に、更なる化学基が、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を有する、得られた黒鉛炭素材料を、DE102007062421.4に同じく記載されている特に有利な方法で化学官能基化することができるような窒素基に結合することができることに基づく。
本発明による粉砕は、当業者に一般に知られ、および粉砕された材料がカーボンナノチューブの大きさとなることができるように構成される全ての粉砕装置において行うことができる。上記の構成は、当業者により容易に行うことができる。
本発明の好ましい実施態様では、粉砕は、粉砕性媒体ミル中で行う。
上記粉砕性媒体ミルの限定的な例は、遊星ミル、ボールミル、振動性ミルおよび撹拌ボールミルである。好ましい粉砕性媒体ミルは、遊星ミルである。
粉砕性媒体ミルの使用は、カーボンナノチューブについての摩擦応力がこのような装置中で起こるだけでなく、粉砕性媒体および/または粉砕室の壁の強い衝撃力もまた、粉砕性媒体に対する粉砕性媒体の衝突および粉砕室の壁に対する粉砕性媒体の衝突により起こり、1以上のカーボンナノチューブが、粉砕性媒体および粉砕媒体の間に存在するかまたは粉砕性媒体および粉砕室の壁の間に存在する場合に、強い機械応力に曝されるので特に有利である。
本発明の方法における粉砕は、1分〜16時間行うことができる。好ましくは、粉砕を4〜8時間行うことである。
粉砕を行う時間についての下限は、粉砕するカーボンナノチューブが応力を1回受ける可能性を時間により決定することに基づく。
1分間でさえ、カーボンナノチューブの窒素による測定可能な変性が生じ、この時間以降は、応力が1回適用される充分な可能性が考えられることを見出した。
時間についての上限は、有利であるが、粉砕中のカーボンナノチューブへ応力を与えることを継続することはまた、カーボンナノチューブが炭素の非晶質状態へ少なくとも表面で変換される可能性が上昇するからである。しかしながら、これは、特に、カーボンナノチューブの構造およびピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含む黒鉛炭素材料の構造は、積極的特性について重要であるので避けられるべきである。このことは、粉砕時間を最大16時間に限定することにより適切に得られることを見出した。
上述の通り、カーボンナノチューブが、粉砕時間に応じて、関連する直径と長さの比が満たされないので、現在、当分野において一般的に認識されるカーボンナノチューブの一般的な上記定義下に入らなくなるような方法での粉砕により、カーボンナノチューブを粉砕することができることは明らかである。しかしながら、カーボンナノチューブは、通常、短い範囲の化学秩序において炭素の黒鉛配置を含むので、本発明のために、黒鉛炭素材料とする。
しかしながら、当業者であれば、上記の可能性の考慮により、より短い粉砕時間およびより長い粉砕時間が、本発明の範囲外となることなく完全に可能であることに気付くであろう。
本発明の本質的な要素は、上記の可能性だけでなく、粉砕されるカーボンナノ粒子へのエネルギーの最小量の導入である。
本発明のために、上記エネルギー入力は、5kJ/gカーボンナノチューブ〜4000kJ/gカーボンナノチューブの範囲である。エネルギー入力は、好ましくは、500kJ/gカーボンナノチューブ〜2500kJ/gカーボンナノチューブの範囲である。
エネルギー入力および粉砕時間は、広い範囲にわたって導入される粉砕力により結合する。しかしながら、エネルギー入力も、粉砕装置自体に依存する。
しかしながら、エネルギー入力は、粉砕時間について上述された同じ理由のために、特に非晶質炭素の形成を防止するために下限、特に上限内であるべきである。
本発明の特に好ましい実施態様では、遊星ミルを粉砕性媒体ミルとして用い、500kJ/gカーボンナノチューブ〜2500kJ/gカーボンナノチューブのエネルギーを、4〜8時間の粉砕時間にわたり導入する。
本発明の上記の特に好ましい実施態様は、まず、カーボンナノチューブが応力を少なくとも1回受ける上記可能性を最大化し、同時に、エネルギー入力を、非晶質炭素が最小量でのみ得られるように設定するので特に有利である。
本発明は、本発明により製造され、およびピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に有する黒鉛炭素材料の、ポリマー、セラミックまたは金属中における電気および/または熱伝導性および/または機械特性を向上させるための複合材料の構成物質としての使用を更に提供する。
本発明により製造され、およびピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に有する黒鉛炭素材料の、導体トラックおよび導電性構造を製造するための使用も可能である。
本発明により製造され、およびピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に有する黒鉛炭素材料の他の使用は、例えば水素またはリチウムのための貯蔵媒体として、例えば気体の精製のための膜中における、医療分野において、例えば細胞組織の成長制御のための骨格として、診断分野における、例えばマーカーとして、化学および物理分析における(例えば原子間力顕微鏡において)使用を含む。
本発明により製造され、およびピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上で有する黒鉛炭素材料の本発明による好ましい使用は、化学反応における触媒としてのその使用である。化学反応は、好ましくは電気化学反応である。化学反応は、特に好ましくは、酸素の電気化学還元を含む。
電気化学反応における触媒として用いる場合、燃料電池における電極材料および電解セルとしての使用は、特に好ましい。
本発明の方法により製造され、およびピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を有する黒鉛炭素材料の上記の使用は、本発明により得られ、およびピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を有する黒鉛炭素材料が、反応により得られる必要がなく、窒素雰囲気下で純粋な機械法により得られるにも拘わらず、窒素基で化学的に変性されるので、上記適用が簡単であり、安価になるため特に有利である。
本発明の方法および窒素雰囲気下で粉砕されたカーボンナノチューブの触媒としての好ましい使用を、以下に例を用いて説明するが、その例は、本発明の概念を制限するものとして解釈されない。
図1は、実施例2による計測を、実施例1に従って2分間(A)、6分間(B)、10分間(C)、30分間(D)、2時間(E)および6時間(F)粉砕した試料について示す。16時間(F)後の試料の像における縮尺目盛りは、上記試料A〜Eに当てはまる。
図2は、実施例3による測定を、実験(A)の開始時での試料または実施例1に従って2分間(B)、15分間(C)および30分間(D)ならびに1時間(E)、2時間(E)および6時間(F)粉砕した試料について示す。16時間(G)後の試料の像における縮尺目盛りは、2μmの長さに相当し、上記試料A〜Fに当てはまる。
図3は、実施例4による測定結果を示し、黒鉛ピーク(2)(CN)について規格化した測定値のみを、ナノチューブ(A)、10分間粉砕したカーボンナノチューブ(B)、4時間粉砕したカーボンナノチューブ(E)、16時間粉砕したカーボンナノチューブ(G)およびカーボンブラック(H)についてカーボンナノチューブ波数(W)に対して示す。数字(1、2、3)は、試料A、B、E、GおよびHの場合に、重要な記載が欠陥密度について作られる実施例4に従う関連する測定ピークを示す。
図4は、分での粉砕時間(t)に対する欠陥密度(1/R)の対数の対数プロットを、10分(B)、30分(C)、120分(D)、240分(E)、480分(F)および960分(G)後の実施例4に記載のカーボンナノチューブの測定について示す。
図5は、8時間後の粉砕時間後の実施例5による測定結果を示す。実際の測定信号(c/s)を、結合エネルギー(E)に対して黒実線としてプロットし、実際の測定信号は、窒素の結合の種々の可能性ある型についての測定信号を理想化した。ここで、ピリジン結合窒素の理想化測定信号(A)は、398.67eVの結合エネルギーで最大を有する波線から構成される黒色線として示され、ピロール結合窒素(B)の理想化測定信号は、400.67eVの結合エネルギーでの最大を有する黒色鎖線として示され、第4級窒素(C)の理想化測定信号は、401.87eVの結合エネルギーでの最大を有する長い波線から構成される黒色線として示され、窒素酸化物としてピリジン的に結合する窒素の理想測定信号(D)は、403.37eVの結合エネルギーでの最大を有する固体灰色線として示され、窒素酸化物として窒素結合の理想測定信号(E)を、404.77eVの結合エネルギーでの最大を有する長い波線から構成される灰色線として示す。
図6は、粉砕時間(t)に対してプロットした、実施例5に記載の通り決定した原子%(N)における炭素材料の表面上での窒素の割合を、実験の開始前(A)、15分後(B)および30分後(C)ならびに2時間後(D)、4時間後(E)、8時間後(F)および16時間後(G)に測定された試料について示す。
図7は、酸素の還元のための過電圧(U)における低下を、粉砕時間(t)の関数として、実施例6に記載の実験の開始前(A)、6分後(B)、30分後(C)、2時間後(D)、4時間後(E)、8時間後(F)および16時間後(G)の材料により示す。
実施例1:本発明の方法
8gのカーボンナノチューブ(BayTubes(登録商標)C 150P、Bayer MaterialScience AGから)を、530gの2mmの直径を有するスチール製ボールが存在するRetsch GmbHからの遊星ミル型PM4のためのスチール製容器中へ導入した。Baytubesの導入および容器の密閉を、純粋窒素で連続的にフラッシュしたグローブボックス中で行った。こうして、約100体積%の窒素雰囲気が、粉砕室の内部で広がった。
8gのカーボンナノチューブ(BayTubes(登録商標)C 150P、Bayer MaterialScience AGから)を、530gの2mmの直径を有するスチール製ボールが存在するRetsch GmbHからの遊星ミル型PM4のためのスチール製容器中へ導入した。Baytubesの導入および容器の密閉を、純粋窒素で連続的にフラッシュしたグローブボックス中で行った。こうして、約100体積%の窒素雰囲気が、粉砕室の内部で広がった。
遊星ミルを6時間操作し、試料を、試験の開始前、1分、2分、6分、10分、15分および30分、ならびに1時間、2時間、4時間、8時間および16時間後に採取し、実施例2に記載の共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)試験および/または実施例3に記載の走査型電子顕微鏡(SEM)試験および/または実施例4に記載のラマン分光試験および/または実施例5に記載のXPS(光電子分光法)試験を行い、および/または実施例6に記載の触媒として用いた。
実施例2:共焦点レーザー走査顕微鏡法試験
2分後(A)、6分後(B)、10分後(C)および30分後(D)ならびに2時間(E)および16時間後(F)の試料を、共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)型TCS−NT(Leicaから)下で試験した。
2分後(A)、6分後(B)、10分後(C)および30分後(D)ならびに2時間(E)および16時間後(F)の試料を、共焦点レーザー走査顕微鏡法(CLSM)型TCS−NT(Leicaから)下で試験した。
試験の結果を図1に集約した。カーボンナノチューブの凝集体の数は、粉砕時間が増加すると減少することが認められる。
実施例3:走査型電子顕微鏡(SEM)試験
試験の開始前(A)、2分後(B)、15分後(C)および30分後(D)並びに1時間後(E)、2時間後(F)および16時間後(G)の試料を、走査型電子顕微鏡(SEM)型S−FEG Sirion 100T(FEI Companyから)下で試験した。
試験の開始前(A)、2分後(B)、15分後(C)および30分後(D)並びに1時間後(E)、2時間後(F)および16時間後(G)の試料を、走査型電子顕微鏡(SEM)型S−FEG Sirion 100T(FEI Companyから)下で試験した。
試験の結果を図2に集約する。カーボンナノチューブの平均長さは粉砕時間が増加すると減少することが認められる。さらに、実施例2の通りの試験の結果は、カーボンナノチューブの凝集体の平均寸法が減少することを裏付ける。さらに、1〜16時間(E〜F)後の試験から、これらの時間後には、若干の非晶質炭素が凝集体の表面上に存在することが見られる。特に、なお得られる黒鉛炭素材料は、カーボンナノチューブの一般的な通常の定義下に入らない。任意の場合において、カーボンナノチューブとして明確に認められる構造は、表面にほとんど観測されない。
実施例4:ラマン分光法試験
試験の開始前(A)、10分後(B)、30分後(C)、2時間後(D)、4時間後(E)、8時間後(F)および16時間後(G)の試料を、ラマン分光計型INDURAM (Horiba Jobin Ivonから)を用いて試験した。さらに、カーボンブラック(H、Vulcanから入手したXC72R)を、同様の方法により試験した。
試験の開始前(A)、10分後(B)、30分後(C)、2時間後(D)、4時間後(E)、8時間後(F)および16時間後(G)の試料を、ラマン分光計型INDURAM (Horiba Jobin Ivonから)を用いて試験した。さらに、カーボンブラック(H、Vulcanから入手したXC72R)を、同様の方法により試験した。
試験の結果の幾つかを、試験の開始前(A)、10分後(B)、4時間後(E)および16時間後(G)に図3に集約し、カーボンブラック(H)を明確性のために示す。
図3では、測定分光がカーボンブラック(H)の測定分光に次第に近づくことが分かる。粉砕工程は、まず、約1350cm−1の波数としての第1欠陥ピーク(1)および約1580cm−1の波数において黒鉛ピーク(2)の半分の高さにおいて幅を増加させる。次に、約2700cm−1の波数における第2欠陥ピーク(3)の強度における顕著な減少が見られる。
図4では、式(I):
を用いて決定される欠陥密度(1/R)の対数を、分での粉砕時間の対数に対してプロットする。式(I)によれば、1/Rは、第2欠陥ピークI(3)の最も高い強度の測定値に対する黒鉛ピークI(1)の最も高い強度の測定値の割合である。
図4では、10分後(B)、30分後(C)、2時間後(D)ならびに4時間後(E)、8時間後(F)および16時間後(G)の試料についてそれぞれの値を示す。試験の開始前の値(t=0分)は、対数が不定であるので示していない。カーボンブラック(H)についての値は、既に非晶質である材料の第2欠陥ピークが明確に認められないので示していない。
図4から、粉砕時間の対数と欠陥密度の対数の間に直線関係が存在することが見られ、これは、非晶質ではない得られたカーボンナノチューブについて粉砕時間を最適化することを可能とする。また、図4から、本発明の粉砕時間が、非晶質状態への完全な変換が、ここまで未だ起こらなかったので有利であることも見られる。
欠陥密度が式(I)を用いて決定されることは、通常、既知である(例えばVix−Guterl等、J.Phys.Chem.B、第108巻、(2004年)、19361)。
実施例5:XPS試験
試験の開始前(A)、8時間後(B)および16時間後(C)の試料を、ULVAC PHI、型VersaProbeからのXPS機器(XPS)を用いて試験した。単色AlKα線(1486.6eV)を励起のために用いた。
試験の開始前(A)、8時間後(B)および16時間後(C)の試料を、ULVAC PHI、型VersaProbeからのXPS機器(XPS)を用いて試験した。単色AlKα線(1486.6eV)を励起のために用いた。
8時間後の試験結果(B)を図5に示す。結合エネルギー(E)に対してプロットしたN1線の実際の測定信号(c/s)の黒色実線が見られる。仮定窒素結合について可能性のある窒素の結合の異なった種類の測定信号は、測定信号下に描かれ、異なった結合状態についての測定信号の重ね合わせは、実際の測定信号を極めて正確に与える。
図5における区域として描かれた窒素の測定信号では、5つの異なった結合状態を見ることができる:398.67eVの結合エネルギーでのピリジン結合窒素(A、波線から構成される黒色線)、400.67eVの結合エネルギーでのピロール結合窒素(B、黒色鎖線)、401.87eVの結合エネルギーでの第4級窒素(C、長い波線から構成される黒色線)、403.37eVの結合エネルギーでの窒素酸化物としてピリジン的に結合する窒素(D、固体灰色線)および404.77eVの結合エネルギーでの窒素酸化物として存在する窒素(E、長い波線から構成される灰色線)。
測定表面の原子%による窒素の割合は、試験の開始前(A)、15分後(B)、30分後(C)、2時間後(D)、4時間後(E)、8時間後(F)および16時間後(G)の試料からの測定値について図5におけるデータから積分および線A〜E下での面積の変換により決定した。
結果を図6に集約する。窒素は、試験の開始時(A)に検出されないが、約6原子%の窒素を、16時間後(G)の炭素材料の表面で検出した。
実施例6:窒素雰囲気下での粉砕カーボンナノチューブの使用
実施例1に記載の通りに得られる、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に有する黒鉛炭素材料の電気化学触媒特性を試験するために、実施例1から得られた炭素材料の懸濁液を、まず、いずれの場合にも33.3mgの炭素材料を100mLのアセトンに三角フラスコ中で添加し、次いで、極めて均質の懸濁液を得るために該混合物を30分間超音波槽においていずれの場合にも処理することにより製造した。
実施例1に記載の通りに得られる、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に有する黒鉛炭素材料の電気化学触媒特性を試験するために、実施例1から得られた炭素材料の懸濁液を、まず、いずれの場合にも33.3mgの炭素材料を100mLのアセトンに三角フラスコ中で添加し、次いで、極めて均質の懸濁液を得るために該混合物を30分間超音波槽においていずれの場合にも処理することにより製造した。
このようにして得られた懸濁液を、回転環状円盤電極(電極材料:ガラス−炭素、Metromから)の形態での作業電極に、5μLの該懸濁液を4回、該作業電極に塗布し、次いで、いずれの場合にも周囲条件下(23℃、1013hPa)でアセトンを蒸発させることにより塗布した。フッ素化された炭化水素の層(Nafion(登録商標)、DuPontから)を、作業電極上に存在する炭素材料の頂上に、0.26mg/mLのフッ素化炭化水素をイソプロパノール中に含む5μLの懸濁液を塗布し、次いで周囲条件下でのイソプロパノールを蒸発させることにより適用した。
作用電極は、上記の製造工程後に、いずれの場合にも、60℃にて維持し、気体の直接導入により酸素で飽和した5重量%濃度塩化水素溶液中へつり下げた。
次いで、測定は、3電極配置において、作用電極、銀/塩化銀参照電極およびプラチナ対電極を用いて行った。作用電極および参照電極間の電位は、電気回路および制御(電圧源としての定電位制御)により設定した。同時に、電流は、作用電極よってのみ流れ、対電極および参照電極は電流が流れないことを電源により確保した。
作用電極への測定電位は、いずれの場合にも、上記銀/塩化銀参照電極に対して0.8Vの電位から20mV/秒の変化量で出発して上記銀/塩化銀参照電極に対して−0.2Vの電位へ調節可能な電源を用いて設定した。
得られる電流は、電位の関数として測定した。上記手順は、いずれの場合にも8回繰り返した。
実際の酸素の還元を生じさせるために真の条件下で要求される更なる電圧(更なる電圧)を示す実際の過電圧は、電流についての測定データから、一般的に既知の酸素の還元についての理論必要電位(+0.401)の関数として決定することができた。
本発明に従って製造され、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含む黒鉛炭素材料は、上記の還元反応のための触媒活性化合物であるので、例えば反応の動力学的限界に起因する上記過電圧は、低下した。
200μAの電流で、試験の開始前(A)、6分後(B)および30分後(C)および2時間後(D)、4時間後(E)、8時間後(F)および16時間後(G)の材料について適用されなければならない電位を比べた。
図7では、検出した過電圧(U)を、粉砕時間(t)の関数として示す。
過電圧は、粉砕時間の関数として指数関数的に減少することが見られる。このことは、酸素の電気化学還元のための、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含む得られる黒鉛炭素材料の本発明による有利な使用をもたらす。
このようにして、とりわけ、8時間までの粉砕時間がこのための特定の最適条件を示すことは、粉砕時間を16時間までに更に2倍にすることが、過電圧を更に大きく低下させず、価値があるように思えないので、確立された。
Claims (10)
- カーボンナノチューブから出発する、ピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に含む黒鉛炭素材料の製造方法であって、カーボンナノチューブを、窒素雰囲気下で粉砕することを特徴とする、方法。
- 窒素雰囲気は、少なくとも90体積%、好ましくは少なくとも99体積%の窒素の割合を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 粉砕は、粉砕性媒体ミル中で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
- 粉砕は、遊星ミル中で行うことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
- 粉砕は、1分〜16時間、好ましくは4〜8時間行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 5kJ/gカーボンナノチューブ〜4000kJ/gカーボンナノチューブ、好ましくは500kJ/gカーボンナノチューブ〜2500kJ/gカーボンナノチューブの範囲のエネルギーの量を、粉砕中に導入することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の方法により製造され、およびピリジン窒素基、ピロール窒素基および/または第4級窒素基を少なくとも表面上に有する黒鉛炭素材料の、化学反応における触媒としての使用。
- 化学反応は、電気化学反応であることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
- 電気化学反応は、酸素の還元を含むことを特徴とする、請求項8に記載の使用。
- 燃料電池および電解セルにおける電極材料としての請求項8に記載の使用。
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