JP2012511542A - 可逆的電荷蓄積性有機レドックス活性化合物及びそれらにより構成される基板及び分子記憶デバイス - Google Patents

可逆的電荷蓄積性有機レドックス活性化合物及びそれらにより構成される基板及び分子記憶デバイス Download PDF

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Abstract

式(I):
R−M−Y−T (I)
[式中:
−Rは脱共役基を表す;
−Mは、いずれの金属イオンまたは金属をも含有せず、少なくとも1個の電荷を可逆的に蓄積し得る有機レドックス活性フラグメントを表す;
−Tは、同じ原子に結合し、化学的にグラフトし得る3個の基Fから構成され、固体基板表面に、化学的に、好ましくは共有結合によりグラフトし得るトリポッド基を表す;
−Yは、TからMを隔てるスペーサー基を表す]
で示される可逆的電荷蓄積性有機レドックス活性化合物。
当該化合物をグラフトした基板。
かかる化合物またはかかる基板から構成される分子記憶デバイス。
かかる分子記憶デバイスから構成される電子装置。
【選択図】 なし

Description

本発明は、可逆的電荷蓄積性を有する、換言すると、電荷を可逆的に蓄積し得る有機レドックス活性化合物に関する。
さらに、本発明は電荷を可逆的に蓄積し得る分子としてのこれらの有機レドックス活性化合物により構成される基板および分子記憶デバイスに関する。
さらに詳しくは、当該基板は半導体材料から作製される基板であり、その表面に可逆的電荷蓄積性を有する有機レドックス活性化合物を化学的にグラフトされている。
また、本発明は電子装置、取り分け少なくとも1種のかかる分子記憶デバイスから構成されるポータブル電子装置に関する。
記憶デバイスとは、データを受容し、保持し、および/または復元することの可能なデバイスを意味する。
本発明の技術分野は、一般的に、不揮発性分子記憶装置の分野と定義し得る。
記憶デバイスは基本素子、記憶セルからなり、データの保存を意図する。数種のタイプの記憶装置が存在する:すなわち、
−ランダムアクセス記憶装置は、いわゆる揮発性記憶装置であるRAM(Random Access Memory)記憶装置とも呼称される;その理由は、電力を切断した場合に、そこに含まれるデータが二三秒後に失われ、また必要に応じて何度もデータを書き込み、読み出し、または書き直すことができるからである;
−読出し専用記憶装置は、ROM(Read Only Memory)記憶装置とも呼称され、電源電圧なしにそこに含まれるデータを保持し、またそのデータの読み出し専用に利用可能であることから、製造業者がプログラムした記憶装置であり、いわゆる不揮発性記憶装置である;
−フラッシュメモリは、ランダムアクセス記憶装置の利点(データブロックの書き込み、読出し、および削除の点で)および読出し専用記憶装置の利点(電力供給なしの場合でも内容を永続する点で)の両方を組合わせたものであり、フラッシュという名称は、記憶の削除操作が、これらの記憶の全部のセクタについて削除可能であって、個々のセルごとではないといる事実のため、非常に迅速であるという事実に由来する。
本明細書において、我々はより特定的に不揮発性記憶装置に関心をもっているが、本発明はフラッシュメモリにも適用する。
半導体材料に基づく不揮発性記憶装置の技術は、現在、2つの重要な問題に直面している。第一は、それらの単位あたりのコストを下げるために、また記録密度を増大させるために、これらのデバイスのサイズを小さくすることの難しさが増していることに関係する。第二は、一般に10Vを超える高いプログラミング電圧を使用する必要性に関係する。理想的な操作電圧は1V以下に設定されるべきである。
電荷を可逆的に蓄積する手段として化学分子を使用するハイブリッド型電子デバイスである分子記憶装置によって、これらの問題の両方を解決することが可能である。
これらのデバイスの原理は、一般に金属複合体である分子での電荷の蓄積に基づいている。1個以上の電荷を蓄積させるには、これらの金属複合体が十分に規定されたレドックス性を有し、また少なくとも2つの酸化状態またはレドックス状態で存在しなければならない。従って、該分子は少なくとも2つの電荷状態を有するが、その状態の一方は「削除された」状態であり、他方は「書き込まれた」状態である。一方の状態から他方への切り替えは、分子に特定のバイアス電圧を加えることにより、酸化−還元反応メカニズムを経由して電荷を移動させることにより実施する。
電荷蓄積性をもつこれらの分子記憶装置は、デバイスの寸法の縮小と、より低圧の供給電圧の使用を可能とした。さらに、電荷の移動速度は、分子をグラフトさせる、例えば、シリカなどの層の厚さを調節することにより調整し得ることが証明されている。
電荷蓄積材料としてメタロセンおよびポルフィリンなどの分子化合物の使用は、すでに文献にも幅広く記載されている。
このように、例えば、文献US−A1−2005/0121660[1]は、活性レドックス分子のフィルムから構成される分子記憶装置を有するハイブリッドデバイスについて記載しているが、そこでのレドックス分子は、取り分け、ポルフィリン;フェロセンなどのメタロセン類、直鎖および環状のポリエン類、テトラチアルフルバレン類、テトラセレナフルバレン類、金属の配位複合体などである。該フイルムは自己集合性単層(または「SAM」)の形状であると思われる。
留意すべきこととして、「自己集合性」とは単一要素からの複雑な階層集群の自然発生的形成を意味する。自己集合現象は、SAM、LBLまたはラングミュア−ブロジェット層の形成を基礎としている。この現象に関わる力は、超分子型のもの、取り分け、ファンデルワールス、双極性力、水素結合などのものである。
文献US−B2−6,943,054[2]は、有機分子、取り分け、耐熱活性レドックス分子で、固着基を備えた分子と、半導体の表面とをカップリング結合させることについて記載している;カップリング結合は、当該分子を当該表面と接触させ、次いで、表面を少なくとも200℃の温度に加熱することからなるが、その際に固着基が該表面と共有結合を形成する。
シリコン(100)基板上のポルフィリン単層は特別に調製される。
文献US−B2−7,324,385[3]は、電荷を蓄積するための分子(該分子は金属イオンの多環状複合体である)の薄層から構成される分子記憶装置に関する。この薄層は取り分け自己集合性単層(またはSAM)の形成によるものであってもよい。
電極表面にレドックス活性フラグメントを固定化する可能性を付与する固着基は、単一の基を介してこの表面に結合し得る−そのためこの結合は「モノポッド」固定化もしくは付着という−または数個の基を介して結合する−その場合は、「ポリポッド」もしくは「マルチポッド」、例えば、トリポッド(三脚)固定化もしくは付着という−。
文献US−A1−2005/0243597[4]は、分子記憶装置を作製するためのデバイスであって、その場合に、記憶活性分子の溶液を、取り分け、自己集合性単層(またはSAM)を形成するように基板の表面に塗布することからなるデバイスに関する。
シリコン上の単層の形成は、基板と分子間のSi−C型の共有結合の生成に基づくものである。この型の結合の生成を可能とする反応は、ヒドロシリル化として既知であり、文献上、かなり集中的に検討されている。
しかし、シリコン表面上に分子を付着、固定化、固着させることについて論じる論文、特許および特許出願の殆どは、単一の固着機能を含む分子に関する。この点については、上記の文献[1]〜[4]並びに以下の文献に参照し得る:G.F. Cerofolini, G. Arena, C.M. Camalleri, C. Galati, S. Reina, L. Renna, D. Mascolo, “A hybrid approach to nanoelectronics”(ナノエレクトロニクスへのハイブリッド法), Nanotechnology 16 (2005), 1040-1047 [5]; J.M. Buriak, “Organometallic chemistry on silicon surfaces: formation of functional monolayers bound through Si-C bonds” (シリコン表面に関する有機金属化学;Si−C結合を介して結合する機能性単層の形成), Chem. Commun. 1999, 1051-1060 [6]; T. Strother, R.J. Hamers, L.M. Smith, “Covalent attachment of origodeoxyribonucleotides to amine-modified Si(001) surfaces” (アミン−修飾Si(001)表面へのオリゴデオキシリボヌクレオチドの共有付着), Nucleic Acids Research, 2000, 28 (18), 3535-3541 [7]。
レドックス活性分子をシリコン表面にグラフトさせる数個の同一の固着官能基の使用について、最近、報告されている。
例えば、文献、Z. Liu et al., “Synthesis of porphyrins bearing hydrocarbon tethers and facile covalent attachment to Si(100)” (ポルフィリン担持炭化水素連結鎖の合成およびSi(100)への簡単な共有付着), J. Org. Chem. 2004, Vol. 69, 5568-5577 [8] は、17種の異なるポルフィリンを、カルボシラン結合経由でSi(100)表面に固定化することについて記載している。これらのポルフィリンの内、その3種は2つの同一の(ハロゲノまたはビニル)官能基を2つのベータ部位に担持し、それによって2点を介してシリコン表面に結合するのを可能とする。
文献、K. Padmaja et al., “A compact all carbon tripodal tether affords high coverage of porphyrins on silicon surfaces” (高密度全炭素トリポッド連結鎖はシリコン表面上でポルフィリンの高適用範囲を提供する), J. Org. Chem. 2005, Vol. 70, No. 20, 7972-7978 [9] は、亜鉛、ニッケルおよびコバルトキレート中、固着基として、p−フェニレン単位を介してポルフィリンに連結するトリアルキルトリポッド(三脚)を含む分子からなるレドックス活性分子について記載している。
シリコン(100)基板表面上で、これらの分子の単層が調製されている。
マルチポッド(多脚)レドックス分子がすでに上記の文献[3]に記載されていることは見て来た。
文献、S. Katano, Y. Kim, H. Matsubara, T. Kitagawa, M. Kawai, “Hierarchical chiral framework based on a rigid adamantane tripod on Au(111)” (Au(111)上の剛性アダマンタントリポッドに基づく階層キラル枠組み), J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 2511-2515 [10] は、金(111)上トリポッド形状のブロモアダマンタントリチオール(BATT)分子の吸着が、金上、3つの接触点で自己集合性単層(SAM)の形成に導くことを示している。
表面上にグラフトさせるためのマルチポッド(多脚)レドックス活性分子の使用を正当化する主たる理由は、取り分け以下の理由による:
−1分子につき数個の固着部を使用することにより、特に熱に対してより強固な層を得ることが可能となるはずである;
−分子の対称性が表面上でより良好なグラフト密度を提供し、より良好に組織化された単層に導く。
しかし、文献に記載されているマルチポッド分子、取り分けトリポッド分子は、大多数が金属イオンから構成されており、それが多くの欠点、例えば、汚染、高コスト、および嵩高いという欠点を有する。
それ故、金属イオンを含まない電荷蓄積性レドックス活性分子が必要とされる。
これらのレドックス活性分子は、さらに電気的安定性、すなわち換言すると、一旦蓄積された電荷の保持、および安定なレドックス状態を持たねばならない。
これらのレドックス活性分子は、化学的安定性を有しなけれならない;すなわち使用する条件下、それらはそれらの分解または不所望な副産物の形成に導くような化学反応を受けてはならない。
これらのレドックス活性分子は、最終的に、明らかに異なる酸化状態並びに低電荷移動電位を有しなければならない。
本発明のゴールは、可逆的電荷蓄積のための、可逆的に電荷を蓄積し得る有機レドックス活性分子、化合物を提供することであって、該化合物はこれまでになかった上記掲載の必要性に合致し、また上記の基準および要件に合致する。
本発明の目標は、さらに、先行技術の電荷蓄積のための有機レドックス活性分子、化合物の欠点、欠陥、制限および不利益をもたず、またこれらの化合物が抱える問題を解決する可逆的電荷蓄積のための有機レドックス活性分子、化合物を提供することにある。
本目標、およびさらに他の目標は、本発明に従い、下記式(I)で示される可逆的電荷蓄積性有機レドックス活性化合物により達成される:
R−M−Y−T (I)
式中:
−Rは脱共役基を表す;
−Mは、いずれの金属イオンまたは金属をも含有せず、少なくとも1個の電荷を可逆的に蓄積し得る有機レドックス活性フラグメントを表す;
−Tは、同じ原子に結合し、化学的にグラフトし得る3個の基Fから構成され、固体基板表面に、化学的に、好ましくは共有結合によりグラフトし得るトリポッド(三脚)基を表す;
−Yは、トリポッド基Tから有機レドックス活性フラグメントMを隔てるスペーサー基を表す。
該基板は、金属材料、絶縁材料もしくは半導体材料から、またはこれらの材料の2種類以上から作製し得る。従って、基板の表面は、半導体、絶縁性または金属性であってもよい。
本発明による式(I)の、可逆的電荷蓄積性の有機レドックス活性化合物は、これまで先行技術において記載されたことがなく、また先行技術の有機レドックス活性化合物とは基本的に異なる新規化合物である。
本発明による式(I)の化合物は、同じ構造中で会合する以下の4種の必須要素R、M、TおよびYを一度に含有してなる全体として新規の特定構造を有する:
−トリポッド基Tは、3個の基Fからなり、同じ1個の元素に結合し、基板表面に化学的に、好ましくは共有結合としてグラフトすることができる。これらの基Fはまた固着官能基または固着基とも呼称される。
このトリポッド基が存在するために、該化合物、本発明による分子は、すべて、すでに記載した、また同様に文献[9]に記載されているこのタイプの基と典型的に関連する利点、取り分け、得られる層の堅牢さ、安定性、高いグラフト密度、従って信頼し得る読み取り、および基板に沈着した分子層のより良好な組織化という意味での利点を有する;
−任意の脱共役性スペーサー基Yは、当該トリポッド基Tを担持し、有機レドックス活性フラグメントMをトリポッド基Tから隔て、有利に電気的に絶縁し、また例えば、シリコンで作製された基板から有機活性レドックスフラグメントMへの電荷の移動の制御を可能とする;
−少なくとも1個の電荷の可逆的蓄積を可能とする有機レドックス活性フラグメントM。本発明によると、このレドックス活性フラグメントは、電荷を蓄積させ得るいずれの金属実体をも含有するものではなく、金属イオンまたは金属を含まない有機フラグメントである。
結果として、ポルフィリンまたはメタロセンなどの先行技術における化合物の主要欠点の一つ、取り分け金属イオンの、および金属の存在したことの欠点が、克服される。
本発明による化合物は、完全に有機化合物であって、電荷を蓄積させ得るいずれの金属実体も含有せず、(その構造中に)金属イオンまたは金属を含まない;就中、金属塩による汚染または分子記憶デバイスの製造に際しての、また同様にそれらの廃棄に際しての金属による汚染の低下、これらデバイスのコスト削減、およびデバイス全体の嵩高さの減少などは、言及し得る特徴である。
−有機レドックス活性フラグメントMへの電荷注入のモニター、調節、制御を可能とし、従って、フラグメントMと基板の間の電荷移動電位のモニター、調節、制御を可能とする脱共役基R。
基Rは容易に修飾し、調節することが可能であるが、この基は好ましくは電気絶縁基である。
例えば、アルキル鎖からなるこの基の長さ、および/またはそのサイズを変化させることにより、電荷の注入を容易に制御することが可能である。直観的に、鎖が長く、嵩高い程、より絶縁性が高く、より電荷注入が困難となろう。
驚くべきことに、本発明者らは、同じ分子中に、脱共役基、好ましくは電気絶縁性基R、および有機レドックス活性フラグメントMを会合させ、電荷注入の制御を確実なものとした。
他方、スペーサー基Yは、基板からの電荷の移動の制御を可能とする。従って、フラグメントMから、またMへの、および基板から、また基板への電荷の循環は、完全に本発明による化合物の制御下にある。
さらに、本発明による化合物は、全く驚くべき様式で、電荷蓄積(M)の専用部分にいずれの金属イオンおよび金属をも含有しないに拘わらず、すぐれた電気的化学的安定性を有する。本発明による化合物は、上記の要件と基準に合致する。
さらに、本発明による化合物の酸化状態は明らかに異なるものである。
本発明による化合物の電荷移動電位は低く、例えば、−5ないし+5ボルトであり、すでに述べたように、長鎖および/または嵩高い基Rの場合、取り分け炭素鎖が特に長い炭素鎖、例えば、6個ないし16個の炭素原子、取り分け8個ないし12個の炭素原子の炭素鎖を含む基Rの場合に、例えば、−2ボルトまで低下し得る。
従って、記憶デバイス中に、本発明によるレドックス分子を使用すると、これらの記憶デバイスの電力消費を相当に低下させ得る。
結論として、本発明による化合物は、取り分け、上記掲載の必要性に合致し、先行技術の化合物が示した問題を解決し、またこれら先行技術化合物の欠点を示さない一方で、これらの化合物の利点をすべて有している。
さらに詳細に本発明について説明する前に、我々は以下の定義を具体的に掲げる:
−金属材料で作製された基板とは、当業者周知の固体材料、例えば、貴金属、取り分け、Ag、Au、Pt、Pd;遷移金属、例えば、CuもしくはNi;およびこれらの金属から構成される合金などから選択される材料で作製された基板を意味する;
−絶縁材料で作製される基板とは、SiO、TiO、ZrOなどの酸化物のような絶縁材料から選択される固体材料で作製された基板を意味する;
−半導体材料で作製された基板とは、当業者周知の半導体材料、例えば、シリコン、ゲルマニウム、SiGe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、AlS、AlP、AlSb、PbS、PbSeから選択される固体材料で作製された基板を意味する。
好適な半導体材料は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムおよびそれらの誘導体であり、選択肢として、例えば、ホウ素により、またはリンによりドープしてもよい。
基板の結晶方位は変化し得る。従って、シリコンの場合は、それが固有であろうとドープしてあろうと、(100)または(111)結晶方位を有し得る。
基板は単一の材料により、または2種以上の材料の混合物により作製し得る。
このことは常に必要であるわけではないが、基板の表面、特にシリコンで作製された基板の表面は、その使用前に、本発明による化合物をグラフトさせる前に、標準的な清浄法および/または酸洗い法により清浄化するのがよい。
従って、例えば、取り分けシリコンで作製された表面は、同時にまたは連続して使用される以下の溶媒からの1種以上の溶媒中(アセトン、トルエン、エタノールおよび水)で清浄として、次いで、硫酸と過酸化水素の混合物(例えば、3/1の容量比)など、ウェーハ清浄化のための標準溶液により酸洗いする。例えば、一般には該表面をこの混合物に1〜5分間浸漬し、次いで、それを脱イオン水で十分にすすぎ、さらにそれを、例えば、アルゴン気流下で乾燥することが可能である。
SOとHのこの混合物で処理することにより、例えば、シリコンで作製した表面は酸洗いすることが可能であり、微量の有機残留物をグラフティングの前に除去することができる。
特定の事例において、取り分けシリコンの場合には、酸化物が基板の表面から除去され、またその表面は次いで水素化することができる(水素による不動態化)。
実際に、シリコン表面の場合には、本来の酸化物SiO層(一般に薄い層であり、例えば、約2nmの層)が空気中で自動的に形成されるので、それを本発明による化合物のグラフティングの前に除去することが推奨される。
この酸化物層は、例えば、1%フッ化水素酸溶液により酸洗いすることにより除去し得る。従って、この表面を、例えば、1分間、HF溶液に浸漬し、次いで乾燥するとよい。
表面の水素化、換言すると、水素によるその不動態化は、当業者周知の一般的方法により、例えば、不動態化すべき表面をフッ化アンモニウム溶液と接触させることにより達成し得る。
この基板はいずれの形状であってもよく、例えば、ブロックとして、(または一部)、または、例えば、厚さが10nmないし100μmのコーティングとしてもよいことが特記される。
本発明による式(I)の化合物をグラフトさせた表面は、好ましくは平面状の表面とする。
−「レドックス活性」もしくは「活性レドックス」化合物、分子またはフラグメントとは、一般に、この化合物、この分子またはこのフラグメントがそれらに適切な電圧を掛けることにより酸化または還元し得ることを意味する;
−電気的に絶縁性の基とは、一般に、この基が電荷の移動、輸送を全体として、または部分的に防止または制限し、この輸送、移動を定量的に調整、調節、制御することを意味する;
−脱共役基とは、一般に、この基がパイ軌道の重なりを破壊することにより共役の破壊を達成することを意味する;
−トリポッド基とは、本発明の意向として、この基が炭素もしくはシリコン原子などの単一かつ同一の原子に結合した3個の基Fから構成されるこを意味し、これらの3個の基Fは、好ましくは同一であり、また好ましくはアリル基である;
化学的グラフティングとは、前記において、また以下においても、基板上に、有利には共有結合により、またはさらにはイオン共有化学結合によっても、上記の式(I)の化合物を固定することを意味する。具体的に示すと、この固定化は基板表面で実施される。
化学的グラフティングが上記の式(I)の化合物と上記の基板の間の、いわゆるファンデルワールス相互作用または水素結合型の相互作用などの単純な物理的相互作用の存在を排除するものではないことは、十分に理解される。
当該基板に化学的にグラフトさせ得る基Fとは、有利には半導体材料から作製される基板の表面に存在する反応性基、例えば、水素化されたシリコン基板の場合、シラン基Si−Hなどと反応する基を意味する。
スペーサー基とは、一般に、2つの官能性実体を隔てる少なくとも1個の原子に存在する一単位を意味する。
基Rは、脱共役基、好ましくは電気的絶縁性基を表す。
有利には、基Rは、水素、アルキル基、アルコキシ基;ヘテロ環;アリール基から選択される。
好ましくは、基Rはn−オクチル基またはn−ドデシル基である。
本明細書の記載において、アルキル遊離基、基について、並びにアルキル部分を含む基、遊離基、フラグメント基について使用する用語“アルキル”とは、他に特に断りのない限り、飽和の直鎖または分枝または環状の炭素鎖であって、1個ないし30個の炭素原子、好ましくは1個ないし24個の炭素原子、さらに好ましくは1個ないし16個、より好適には1個ないし8個、さらにより好適には1個ないし4個の炭素原子を含む炭素鎖を意味し、該アルキル基は一般に、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素などのハロゲン原子;ヘテロ環;置換されていてもよいアリール遊離基;ヒドロキシル;アルコキシ;アミノ;C−Cアシル;カルボキサミド;COH;アルコキシカルボキシル、カルボキシアミノ、−SOH;−PO;−PO;−NHSOH;スルホンアミド;シアノ;モノアルキルアミノ;トリアルキルアンモニウム遊離基;から選択される1個以上の同一もしくは異なる基により置換されていてもよく;あるいはさらにジアルキルアミノ遊離基により置換されていてもよい。
該アルキル遊離基が直鎖または分枝の遊離基である場合、該遊離基の1個以上の炭素原子は、1個以上のカルボニル基および/または窒素、酸素およびイオウ原子から選択される1個以上のヘテロ原子と置換わり得る。
アルキル遊離基が環状遊離基である場合、それは一般に3個ないし30個の炭素原子、好ましくは4個ないし16個の炭素原子、より好適には4個ないし8個の炭素原子、さらにより好適には5個ないし7個の炭素原子を有し、炭素−炭素二重結合を含まず、また該環状遊離基の1個以上の炭素原子は1個以上のカルボニル基と置換わり得る。
また本発明によると、アルコキシ遊離基について、同様にアルコキシ部分を含む基について使用する用語“アルコキシ”は、他に特に断りのない限り、O−アルキル鎖を意味し、“アルキル”という用語は上記の意味を有する。
本発明によると、ヘテロ環とは、環状の、飽和もしくは不飽和の、芳香族もしくは非芳香族の5員ないし12員、好ましくは5員ないし7員の環であって、好ましくは窒素、イオウおよび酸素原子から選択される1個ないし3個のヘテロ原子を含む環を意味する。これらのヘテロ環は他のヘテロ環と縮合しいてもよいし、またはフェニル基など、他の、取り分け芳香族の環に縮合しいてもよい。これらのヘテロ環はさらに、取り分けアルキル遊離基により四級化されていてもよい。
ヘテロ環の内、縮合または非縮合のものも含め、以下の環を例示し得る:チオフェン、ベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、インドール、インドリン、カルバゾール、ピリジン、デヒドロキノリン、クロモン、ジュロジニン、チアジアゾール、トリアゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアジン、チアジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、ジアゼピン、オキサゼピン、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、アゼチチジン、ピロリジン、アジリジン、ピロール、ピペリジン。
本発明によると、ヘテロ環は選択肢として置換されていてもよいことが特記される。この場合、ヘテロ環は同一または異なる1個以上の置換基を担持しており、該置換基は一般に、置換されていてもよい直鎖もしくは分枝のC−C16、好ましくはC−C10アルキル遊離基、カルボキシ遊離基、直鎖もしくは分枝のアルコキシカルボニル遊離基、C−C16アルコキシ、好ましくはC−C10アルコキシであるアルコキシ、アミノ遊離基、アミノ−アルキルまたはアミノアルキルカルバモイル(HN−アルキル−NH−CO−)遊離基(ただし、アルキル部分は直鎖もしくは分枝のC−C16、好ましくはC−C10アルキルである)から選択される。
本発明によると、ヘテロ環状基の1個以上の炭素原子は、1個以上のカルボニル基と置き換わり得る。
本発明によると、アリールとは、他に特に断りのない限り、芳香性を有する環状のC−C30の共役系を意味し、このものは同一または異なる1個以上の基により置換されていてもよく、該基は、ハロゲン原子;C−C16、好ましくはC−C10の直鎖もしくは分枝のアルキル遊離基;C−C16の直鎖もしくは分枝のアルコキシ遊離基、好ましくはC−C10の直鎖もしくは分枝のアルコキシ遊離基;置換されていてもよいアリールオキシ遊離基;メシル(CH−SO−);シアノ;カルボキサミド;−COH;スルホ(SOH);−PO;−PO;ヒドロキシル;アミノ遊離基;モノもしくはジ−置換アミノ遊離基、例えば、モノ−(C−C)アルキルアミノまたはジ−(C−C)アルキルアミノ遊離基から選択される。
また、アリールは、遊離基、取り分け二価の遊離基、例えば、ビフェニル遊離基などの単結合もしくはアルキル鎖を介して結合する上記定義の数個のアリール遊離基を含んでなる遊離基を意味する。
好ましくは、該アリール基は上記のように置換されていてもよいフェニル基またはナフチル基である。
有機レドックス活性フラグメントMは、有利には、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、テトラセンおよびコロネンなどのパイ共役をもつ1個以上の多環状基から構成されるフラグメントから選択される。
フラグメントMは少なくとも1個の電荷の可逆的蓄積を可能としなければならないが、有利には、このフラグメントのレドックス系は多重の接触性レドックス状態をもち、また数個の電荷、例えば、2個ないし4個の電荷の蓄積を可能としなければならない。
好ましくは、該有機レドックス活性フラグメントMは、以下の式(IIA)、(IIB)、(IIC)、(IID)または(IIE)に合致する:
Figure 2012511542
Figure 2012511542
式中、nは0、1、2、3などの0ないし6の数値のすべてを取り得る整数である。
式(IIA)において、nが0に等しい場合、フラグメントMはナフタレンテトラカルボキシジイイミドフラグメントである。
式(IIB)および(IIC)においては、式(IIA)における角括弧間のナフタレンが、それぞれアントラセンおよびテトラセンと置き換えられている。
式(IID)および(IIE)においては、有機レドックス活性フラグメントMが、コロネンとフェナントレンに基づいている。
フラグメントMは、さらに選択肢として、酸化および還元レベルを調節するために、1個以上の電子供与体基または電子受容体基により置換されていてもよい。
電子供与体基は、取り分けアルキル基、アルコキシ、アミンから選択し得る。
電子受容体基は、取り分けハロゲン、カルボニル、ニトリル官能基から選択し得る。
有利には、スペーサー基Yは電気的に絶縁性であり、一般に基Rについて述べた一価の基に相当する二価の基、すなわち、二価アルキル基(アルキレン);二価アルコキシ基;二価(芳香族または非芳香族)ヘテロ環;および二価アリール基から選択される。
Yとしての好適な基は、フェニレン基およびジフェニレン基である。
有利には、材料から作製された基板、好ましくは半導体材料から作製された基板の表面に、化学的結合、好ましくは共有結合し得る基Fは、典型的に以下の官能基、基から選択される:ヒドロキシル、メルカプト、セレニル、テルリル、シアノ、イソシアノ、カルボキシル、アミノ、ジヒドロキシホスホリル、ジチオ、ジチオカルボキシル、ジアゾニウム、ハロゲノ、アリルなどのアルケニル、アルキニル、アルコキシル、シリル、ホスファート−ホスホナート;および好ましくは、1個ないし5個の炭素原子からなる炭素鎖、有利には3個の炭素原子をもつ炭素鎖から選択される;該炭素鎖は、官能基、基:ヒドロキシル、メルカプト、セレニル、テルリル、シアノ、イソシアノ、カルボキシル、アミノ、ジヒドロキシホスホリル、ジチオ、ジチオカルボキシル、ジアゾニウム、ハロゲノ、アリルなどのアルケニル、アルキニル、アルコキシル、シリル、ホスファート−ホスホナートから選択される1個以上の官能基、基を含む。
好適な基Fはアリル基である。
有利には、トリポッド(三脚)基は、式−C−(−CH−CH=CHで示される4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル基、または式Si−(−CH−CH=CHで示されるトリポッド基である。
本発明による化合物は、有利には、以下の式(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(IIID),または(IIIE)に合致する:
Figure 2012511542
Figure 2012511542
式中、R、nおよびYについてはすでに上に定義したとおりであり、R2は、水素または電子供与体もしくは電子受容体基を表す。
本発明による好適な化合物は以下の化合物である:
N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド;
N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−N’−n−オクチル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド;
N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−N’−n−ドデシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド。
これらの化合物の構造式を以下に示す:
Figure 2012511542
本発明による化合物は、一般に、すでに定義したレドックス活性フラグメント、並びに脱共役気Rを含む第一の前駆体からのカップリングにより、また予め基板に結合していてもよいトリポッド基、並びにすでに定義したスペーサー基Yを含む第二の前駆体からのカップリングにより調製し得る。これらの前駆体は共通して化合物(I)の前駆体と呼称される。
第一の前駆体または実体および第二の前駆体または実体は、それらを適切な条件(優先的には、前駆体、実体に他の官能基が存在する場合の緩和な不安定とならない条件)下に置く場合、両前駆体、両実体間に共有結合を形成させ得るさらなる官能基を有利に含み得る。
必要であれば、勿論、有機化学の最も一般的な方法に従って、最も感受性の高い官能基を保護することが可能である。
有機官能基の保護に関しては、以下の教科書を参照することが可能である;“Protective Groups in Organic synthesis”(有機合成における保護基)Theodora W. Greene, Peter G.M. Wuts, ed. Wiley-Interscience, 3rd edition, 1999 [11]。
カップリングを可能とする官能基は、第一前駆体用のレドックスフラグメント上、および第二前駆体用のスペーサー基Y上に位置することが好ましい。
カップリン反応の一例としては、例えば、縮合反応に言及することが可能であるが、この反応はエステルまたはイミド結合に導き得る。実際に、後者は典型的に単純に加熱することにより実施される。具体的には、特別に実例を参照し得る。
勿論、他のカップリング反応を使用することも可能であるが、当業者が利用可能な前駆体のタイプによって後者が適用される。
本発明はまた、好ましくは半導体材料により作製された基板にも関し、その表面に、上記定義の本発明による式(I)の電荷蓄積可能な有機レドックス活性化合物を化学的に、好ましくは共有結合としてグラフトさせる。
当該基板は、有機(式(I)の化合物)/無機(基板の固体材料、例えば、半導体、絶縁性、または金属性の基板材料)ハイブリッド材料により作製される基板と定義し得る。
この材料は新規であり、本質的に式(I)で示される化合物による有益な性質を有するが、その性質についてはすでに上に記載した。
基板および材料、好ましくは半導体、その作製については、すでに上に定義した。
有利には、この半導体材料はシリコンであり、選択肢としてドープされていてもよい。
留意点として、該基板は、これが上記のものである場合、選択肢として洗浄および/または酸洗い及び/又は表面酸化物除去、および水素化処理を受けた基板であるとよい。
本発明による式(I)の化合物を基板の表面、好ましくは半導体基板の表面(上)にグラフティングするためには、種々の技法、特に液体経路を経由する技法を想定し得る;すなわち、上記の基板に、式(I)の化合物またはさもなければ上記定義のその(それらの)前駆体を含んでなる有機溶液をしみ込ませる技法である。
従って、基板表面での化学的グラフティングは、好ましくは半導体材料により作製した基板の場合、以下の含侵法の一法により実施し得る:
−浸漬コーティング
−スピンコーティング
−層流コーティング
−噴霧コーティング
−浸透コーティング
−ロール−ツー−ロール法
−塗装コーティング
−スクリーン印刷。
この操作は一般に、例えば、シリコンで作製された表面、および例えば、アリルタイプのF基を含むトリポッド基などのトリポッドとの間の反応を可能とする工程に従う。実施例に示すように、この工程は約180℃に加熱する工程であり得、これによって該分子と表面間に共有結合が形成され得る。
この工程で適用される反応は多様な性質の反応であり、取り分け、光により促進され得る。
特定の様式によると、化合物(I)の前駆体から、カップリングにより化合物(I)を調製するための工程、および基板表面とトリポッド基との間のグラフティング反応は同時に実施する。
この場合、適用されるカップリングおよびグラフティングの条件は、共存し得ることが好ましい。
これらの異なる技法(浸漬および次の反応)は、一般に、基板と、化合物(類)(I)またはその(それらの)前駆体(類)を含有する有機溶液とを、基板の表面全体が含侵されて、該化合物が表面で反応し得るように、最適に接触させるために、適切な時間適用される。例えば、この時間は1時間ないし48時間、例えば、16時間とし得る。
反応は、適当な分光学的手段、例えば、赤外スペクトル法またはX線光電子分光法(XPS)などにより追跡し、モニターし得る。
当該溶液の溶媒は、当業者が容易に選択し得る。
この溶媒は、例えば、THFから、メタノールおよびエタノールなどのC−C脂肪族アルコール、ハロゲン化溶媒、芳香族溶媒、およびその混合物から選択し得る。
当該溶液中の化合物(I)またはその前駆体の濃度は、当業者が容易に決定し得るものであり、その濃度は一般に10−3Mないし1Mである。
含侵を実施する際の温度について当業者が容易に決定し得る場合、一般に20℃ないし80℃であり、好ましくはこの含侵は室温で実施する。
本発明による分子(I)を、特に予め洗浄、酸洗いしたシリコン表面(その未変性酸化物層は除去されており、また上記のように水素化した表面)の場合に、グラフティングする好適な方法は、熱ヒドロシリル化を適用する方法である。
様々の結晶化度をもつシリコン表面を使用し得る。
かかる方法は特に以下の文献に記載されている:A.B. Sieval, A.L. Demirel, J.W.M. Nissink, M.R. Linford., J.H. van Der Mass, W.H. de Jeu, H. Zuilhof, E.J.R. Sudholter, “Highly stable Si-C linked functionalized monolayers on the silicon(100) surface” (シリコン(100)表面上の高安定性Si−C結合官能化単層), Langmuir, 1998, 14(7), 1759 [12]; この文献の記載を参照文献とする。
従って、熱ヒドロシリル化は、新たに酸洗いし水素化したシリコン基板を本発明による式(I)の分子を含むメシチレン溶液に入れ、次いで、例えば、2時間加熱還流することにより実施し得る。反応は一般に不活性気流、例えば、アルゴン気流下に実施する。
このグラフティングまたは機能化工程の後、本発明により無機−有機ハイブリッド材料から作製する基板の調製法には、グラフティング反応の残留物並びに未反応種を除去するための処理工程をも含み得る。
この処理ではハイブリッド材料を有機溶媒ですすぐが、この溶媒は、好ましくはグラフティングに使用したものと同じ溶媒である。
最後に、この処理は一般に無機−有機ハイブリッド材料により作製された基板の乾燥へと続く。
本発明による化合物は、基板の表面に、例えば、2nmないし3nmの厚さの単層を形成し得る。
これらの単層は、本発明よる化合物の特異的構造の故に、取り分け熱に対して強固であり、また先行技術化合物のグラフティングにより調製される層よりもより良好に組織化されている。
本発明はまた、可逆性電荷蓄積能をもつ本発明による式(I)で示される有機レドックス活性化合物から構成されるか、または有利には半導体材料により作製された基板であって、その基板表面には、可逆性電荷蓄積能をもつ上記定義の本発明によるレドックス活性化合物を化学的に、有利には共有結合としてグラフトさせた基板から構成される分子記憶デバイスに関する。
該基板は有利には分子記憶デバイスの電極であり、好ましくは作用電極である。
かかるデバイスは当業者既知であり、本明細書に詳細には説明しない。既知のデバイスとの唯一の違いは、本発明による特異的化合物を適用したことである。
かかるデバイスとその製造については、例えば、文献US−A1−2003/0111670[13]に記載されている。
本発明によるデバイスはすでに上に述べた利点のすべてを、また本発明による式(I)で示される分子の使用による利点のすべてを有する。
本発明はまた、上記定義の少なくとも1つの記憶デバイスから構成される電子機器に関し、該機器は、デジタルスチールカメラ、携帯電話、プリンター、ポータブルコンピュータなど、または携帯音楽MP3プレイヤーなどの音響再生録音装置などのポータブル電子機器から選択し得る。
最後に、本発明は分子記憶デバイスにおいて電荷を蓄積し得る分子として、式(I)の化合物を使用することに関する。
ここで、例示としての実施態様と関連付けて本発明につき説明するが、これらは説明として示すのものであって、限定するものではない。
図1Aは、実施例1にて調製し、水素化したシリコン(100)基板にグラフトした本発明による分子1(ただし、Rは水素である)のX線光電子分光法(XPS)スペクトルである。このスペクトルは電子の結合エネルギー(eV)に対する放出電子数を示す; 図1B、1C、1Dおよび1Eは、図1Aのスペクトルの部分的拡大であり、それぞれ当該分子1の炭素、窒素、シリコンおよび酸素原子を意味するピークに関する; 図2Aは、実施例2にて調製し、水素化したシリコン(100)基板にグラフトした本発明による分子2(ただし、Rはn−オクチル基である)のX線光電子分光法(XPS)スペクトルである。このスペクトルは電子の結合エネルギー(eV)に対する放出電子数を示す; 図2B、2Cおよび2Dは、図2Aのスペクトルの部分的拡大であり、それぞれ当該分子2のシリコン、窒素および炭素原子を意味するピークに関する; 図3は、実施例1、2および3にて調製した本発明による分子1、2および3の電気的性質を決定するために使用する測定デバイスの模式化した垂直断面図である; 図4Aは、シリコン基板にグラフトし、図3のデバイスに組み込んだ本発明による分子1の単層についてのゲート電圧VG(ボルト)に対するキャパシタンスC(F/cm)を示すグラフである;上部曲線(□)は70Hzで確立し、下部の曲線(○)は500Hzで確立した; 図4Bは、シリコン基板にグラフトし、図3のデバイスに組み込んだ本発明による分子1の単層についてのゲート電圧VG(ボルト)に対するコンダクタンスG(S/cm)を示すグラフである;上部曲線(□)は70Hzで確立し、下層(○)は500Hzで確立した。 図5Aは、シリコン基板にグラフトし、図3のデバイスに組み込んだ本発明による分子2の単層についてのゲート電圧VG(ボルト)に対するキャパシタンスC(F/cm)を示すグラフである;上部曲線(○)は70Hzで確立し、下層(□)は500Hzで確立した。 図5Bは、シリコン基板にグラフトし、図3のデバイスに組み込んだ本発明による分子2の単層についてのゲート電圧VG(ボルト)に対するコンダクタンスG(S/cm)を示すグラフである;上部曲線(□)は70Hzで確立し、下層(○)は500Hzで確立した。 図6Aは、シリコン基板にグラフトし、図3のデバイスに組み込んだ本発明による分子3の単層についてのゲート電圧VG(ボルト)に対するキャパシタンスC(F/cm)を示すグラフである;上部曲線(○)は70Hzで確立し、下層(□)は500Hzで確立した。 図6Bは、シリコン基板にグラフトし、図3のデバイスに組み込んだ本発明による分子3の単層についてのゲート電圧VG(ボルト)に対するコンダクタンスG(S/cm)を示すグラフである;上部曲線(□)は70Hzで確立し、下層(○)は500Hzで確立した。
〔実施例1〕
N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド(分子1)の合成
本実施例では、N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミドの合成を2工程で実施する。(本発明による分子1)
工程1:N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシ無水物の合成
滴下漏斗およびディーン−スターク型冷却器を備えた2頚丸底フラスコ中、1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボキシ二無水物(1当量、5.9g、22mmol)を100mLの無水DMF中に160℃で溶解させる。50mLの無水DMFに予め溶かした4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)アニリン(1当量、5g、22mmol)を当該無水溶液に滴下する。反応液を12時間還流する。還流の終末点で、減圧下にDMFを蒸発させ、次いで生成物をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにより、酢酸エチルとジクロロメタン(1/1、v/v)の混合物で精製する。ベージュ色の粉末を得て、これをメタノールで洗浄する。濾取、乾燥して、7.9gを得る(収率:75.7%)。
工程2:N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボキシジイミド(分子1)の合成
実施例1で調製したN−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシ無水物(1当量、7.07g、14.73mmol)および酢酸アンモニウム(20当量、21.56g、280mmol)を酢酸100mLおよびクロロホルム100mLに溶解する。反応液を120℃で4時間還流する。室温に戻した後、減圧下にクロロホルムを蒸発させ、沈殿を生成させる。濾過後、固形物を得て、これを水、メタノール、およびエチルエーテルでそれぞれ洗う。次に、固形物を乾燥し、本発明による分子1を薄いベージュ色の粉末として得る(5.43g、収率:76.7%)。
H−NMR(DMSO−d6、200MHz、ppm):δ12.15(s、1H、NH)、8.63(s、4H)、7.52(d、2H、J=7.34Hz)、7.36(d、2H、J=7.34Hz);5.55−5.43(m、3H);5.02−4.95(m、6H)、2.60−2.38(m、6H)。
〔実施例2〕
分子2(R=n−オクチル)の合成:N−オクチル−N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド
滴下漏斗およびディーン−スターク型冷却器を備えた2頚丸底フラスコ中、N−オクチル−1,8−ナフタレン−ジカルボキシイミド・4,5−ジカルボキシ無水物(1当量、1g、2.64mmol)を無水DMF50mL中に160℃で溶解させる。10mLの無水DMFに予め溶かした4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)アニリン(1当量、0.6g、2.64mmol)を当該無水溶液に滴下する。反応液を15時間還流する。還流の終末点で、減圧下にDMFを蒸発させ、次いで生成物をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにより、酢酸エチルとジクロロメタン(1/1、v/v)の混合物で精製する。ピンク色の粉末を得て、これをメタノールで洗浄する(1.13g、収率:73%)。
H−NMR(CHCl−d、62.5MHz、ppm):δ14.57(CH)、23.10(CH)、27.55(CH)、28.54(CH)、29.66(CH)、29.75(CH)、32.26(CH)、41.52(Cq)、42.32(CH)、43.89(CH)、118.43(3=CH)、127.19(2CH)、127.26(2Cq)、127.36(CH)、127.49(Cq)、128.26(2C)、128.39(2C)、131.50(2CH)、131.75(2CH)、132.55(C)、134.69(3CH)、147.29(Cq)、163.22(2C=O)、163.48(2C=O)。
〔実施例3〕
分子3(R=n−ドデシル)の合成:N−ドデシル−N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド
滴下漏斗およびディーン−スターク型冷却器を備えた2頚丸底フラスコ中、N−ドデシル−1,8−ナフタレン−ジカルボキシイミド・4,5−ジカルボキシ無水物(1当量)を無水DMF50mL中に160℃で溶解させる。10mLの無水DMFに予め溶かした4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)アニリン(1当量)を当該無水溶液に滴下する。反応液を14時間還流する。還流の終末点で、減圧下にDMFを蒸発させ、次いで生成物をシリカゲルクロマトグラフィーカラムにより、酢酸エチルとジクロロメタン(1/1、v/v)の混合物で精製する。ピンク色様の粉末を得て、これをメタノールで洗浄する。
〔実施例4〕
シリコン基板上分子1、2および3のグラフティング
本実施例においては、本発明による分子1、2および3のグラフティングを、水素化したシリコン表面上、ヒドロシリル化反応により実施する。このヒドロシリル化反応に関する詳細については、上記の文献[12]に参照し得る。
基板の結晶方位は、Si(100)である。これは7〜10Ω・cmのP型伝導性基板であって、、ホウ素でドープされており、その活性表面積は、150×300μmおよび100×790μmである。
良好な品質の水素化シリコン表面を得るためには、空気中で自然発生的に形成される未変性の酸化物層を酸洗いしなければならない。
表面を酸洗いし、グラフティング前に微量の有機残留物を除去するために、デバイスは先ず第一に濃厚HSOとHの混合物(v/v、3/1)で酸洗いする。デバイスをこの溶液に1〜5分間浸漬し、脱イオン水で十分にすすぎ、次いでアルゴン気流下に乾燥する。
次に、厚さの薄い未変性の酸化物からなる部分のみを1%HF溶液に浸漬することにより1分間酸洗いし、次いで乾燥する。
次いで、このものは、フッ化水素酸で酸洗いした表面を5分間1%HFに浸漬することにより水素化を実施する。
Si−H官能基の形成はX線光電子分光法(XPS)および赤外スペクトル法により追跡する。
分子のグラフティングはすでに具体的に示したように、酸洗いしたばかりのシリコン基板を該分子を含有するメシチレンの溶液に入れ、次いで2時間加熱還流することによる熱ヒドロシリル化反応により実施する。該反応は不活性気流下に行う。
グラフトした表面はX線光電子分光法(XPS)により特性化する。
XPSの測定は単色光Kα(1486.6eV光子)を用いるS−プローブ分光計により、休止時間100msおよびエネルギーパス50eVで実施する。
シグナルは35°の取り出し角α(表面に相対的に測定)で得る。
分析チャンバー内の圧力は各測定で10−9トルである。
結合エネルギーに使用する基準は、84eVでAu4fピークである。
284.6eVでのシグナルC1sは電荷の影響の観測されないことを示す。
光電子は半球型分析球を用いて、角限界30°、エネルギー分解能850meVにて検出する。
図1Aは水素化シリコン(100)基板にグラフトした本発明による分子1のX線光電子分光法スペクトル(XPS)を示し、図1B〜1Eは図1Aのスペクトルの部分拡大である。
図1Aには、O(1s)、N(1s)、C(1s)、Si(2s)、Si(2p)に相当するピークを示した。
図1Bにおいては、分子1の炭素C1およびC2、およびベンゼン環のC−C結合に相当するピークを同定した。
図1Cにおいては、分子1の窒素原子N1、N2に相当するピークを同定した。
図1Dにおいては、Si−OおよびSi−Si結合に相当するピークを同定した。
図1Eにおいては、カルボニル基の酸素原子に相当するピークを同定した。
表1に、図1Aのスペクトルを説明するパラメータの数値を示す。
Figure 2012511542
図2Aは水素化シリコン(100)基板にグラフトした本発明による分子2のX線光電子分光法スペクトル(XPS)を示し、図2B〜2Dは図2Aのスペクトルの部分拡大である。
図2Aには、O、N、C、Si(2s)、およびSi(2p)に相当するピークを示した。
図2Bには、Si−OおよびSi−Si結合に相当するピークを示した。
図2Cには、分子2の窒素原子に相当するピークを示した。
図2Cにおいては、分子2のC=O、C−NおよびC−C結合に相当するピークを同定した。
〔実施例5〕
シリコンにグラフトした分子1、2および3の電気的性質の測定
シリコンにグラフトした本発明による分子1、2および3の電気的性質を測定するために、電気化学コンデンサーをシリコン基板上に作製した。(P型導体、7〜10Ω・cm、ホウ素でドープ)。
測定デバイスを図3で説明する。
本発明による分子(1)をシリコン(2)にグラフトしてなるキャパシタンスの活性表面域(150×300μm)は、厚さ500nm以上の熱酸化物SiO(4)およびPECVD(5)により成長させた厚さ10μm以上のSiOからなるSiOの薄壁(3)の中心に構築する。
電気防食用酸化物SiOは、PECVDにより、活性シリコン表面域上に10nm以上の厚さで成長する;この酸化物は1%HF水溶液に1分間浸漬する酸洗いにより除去して、本発明による分子(1)をグラフトする直前にアルゴン下で乾燥する。次いで、このものは上記ですでに特定した条件下で水素化を実施する。
分子(1)のグラフティングは、すでに上に説明したように、酸洗いしたばかりのシリコン基板を該分子含有のメシチレン溶液に入れ、次いで、2時間加熱還流することにより実施する。反応は不活性気流下で行うべきである。
Si上の分子の電気的性質は、キャパシタンス−電圧(C−V)およびコンダクタンス−電圧(G−V)測定により検討する。
測定は不活性気流(窒素)中、エイジレント(Agilent;登録商標)4284A電位差計(6)を用いて行った。ゲート電圧(VG)は銀電極(7)により加える。電気特性化に際し、電解液(8)1滴(1.0Mヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム/炭酸プロピレン溶液)は、分子(1)の単層による伝導接触ゲートとして使用する。銀電極(7)は電解質滴(8)に浸す。
シリコンにグラフトした本発明による分子1、2および3の電気的性質の測定結果を、それぞれ図4Aと4B(分子1)、図5Aと5B(分子2)、および図6Aと6B(分子3)のグラフにプロットする。
下記表2は、実施例1ないし3にて調製し、シリコン上にグラフトした本発明による分子それぞれについてのレドックスピークの存在に相当する電位(Vによる)を示す。
Figure 2012511542
キャパシタンスおよびコンダクタンス曲線(C−VおよびG−V)は、分子の2つのレドックス状態の応答に特徴的な2つのピークの存在を示す。
これらの結果は、1分子あたり1個または2個の電子をもつ2つの異なる電荷状態に従い、シリコンとパイ−共役コア間の可逆的電荷移動を確認するものである。
表2は、例えば、CまたはC12鎖を付加することにより、鎖をもたない場合と比べて、パイ−共役コアとシリコン間の電荷移動電位を調節し、それによってさらに電位を低下させることが可能であることを明瞭に示す。

Claims (18)

  1. 式(I):
    R−M−Y−T (I)
    [式中:
    −Rは脱共役基を表す;
    −Mは、いずれの金属イオンまたは金属をも含有せず、少なくとも1個の電荷を可逆的に蓄積し得る有機レドックス活性フラグメントを表す;
    −Tは、同じ原子に結合し、好ましくは共有結合により、固体基板表面に、化学的にグラフトし得る3個の基Fから構成されるトリポッド基を表す;
    −Yは、トリポッド基Tから有機レドックス活性フラグメントMを隔てるスペーサー基を表す]
    で示される可逆的電荷蓄積性有機レドックス活性化合物。
  2. 該基板が、絶縁材料、半導体材料もしくは金属材料から、またはこれらの材料の2種類以上から作製される請求項1記載の化合物。
  3. 基Rが、水素、n−オクチルおよびn−ドデシルなどのアルキル基、アルコキシ基;ヘテロ環、およびアリール基から選択されるものである請求項1記載の化合物。
  4. 有機レドックス活性フラグメントMが、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、テトラセンおよびコロネンなどのパイ共役をもつ1個以上の多環状基から構成されるフラグメントから選択されるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 該レドックス活性フラグメントMが、以下の式(IIA)、(IIB)、(IIC)、(IID)または(IIE)に合致する請求項4記載の化合物。
    Figure 2012511542
    Figure 2012511542
    [式中、nは0、1、2、3などの0〜6の数値のすべてを取り得る整数である]
  6. 該フラグメントMが、さらに、1個以上の電子供与体基または電子受容体基により置換されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
  7. スペーサー基Yが、二価アルキル基;二価アルコキシ基;二価ヘテロ環;およびフェニレン基およびジフェニレン基などの二価アリール基から選択される請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
  8. 固形基板、好ましくは半導体材料から作製された基板の表面に、化学的結合、好ましくは共有結合し得る基Fが、官能基、基:ヒドロキシル、メルカプト、セレニル、テルリル、シアノ、イソシアノ、カルボキシル、アミノ、ジヒドロキシホスホリル、ジチオ、ジチオカルボキシル、ジアゾニウム、ハロゲノ、アリルなどのアルケニル、アルキニル、アルコキシル、シリル、ホスファート−ホスホナート;および好ましくは、1〜5個の炭素原子からなる炭素鎖、有利には3個の炭素原子をもつ炭素鎖から選択され;該炭素鎖が、官能基、基:ヒドロキシル、メルカプト、セレニル、テルリル、シアノ、イソシアノ、カルボキシル、アミノ、ジヒドロキシホスホリル、ジチオ、ジチオカルボキシル、ジアゾニウム、ハロゲノ、アリルなどのアルケニル、アルキニル、アルコキシル、シリル、ホスファート−ホスホナートから選択される1個以上を含むものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
  9. 該トリポッド基が、式−C−(−CH−CH=CHで示される4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル基、または式−Si−(−CH−CH=CHで示される基である請求項8記載の化合物。
  10. 以下の式(IIIA)、(IIIB)、(IIIC)、(IIID),または(IIIE)に合致する請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物:
    Figure 2012511542
    Figure 2012511542
    [式中、RおよびYは請求項1に定義したとおりであり、nは0、1、2、3などの0〜6の数値のすべてを取り得る整数であり、R2は、水素または電子供与体もしくは電子受容体基を表す。]
  11. N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド;
    N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−N’−n−オクチル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド;または
    N−[4−(4−アリルヘプタ−1,6−ジエン−4−イル)フェニル]−N’−n−ドデシル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシジイミド;
    である請求項9記載の化合物。
  12. 基板、好ましくは半導体材料により作製された基板であって、その表面に、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電荷を蓄積し得る有機レドックス活性化合物を化学的に、好ましくは共有結合によりグラフトした基板。
  13. 該半導体材料がシリコンであり、選択肢としてドープしたシリコンである請求項12記載の基板。
  14. 電荷を蓄積し得る有機レドックス活性化合物が、基板表面に、例えば、厚さ2〜3nmの単層を形成する請求項12または13に記載の基板。
  15. 請求項1〜11のいずれか1項に定義の電荷蓄積レドックス活性化合物、または請求項12〜14のいずれか1項に定義の基板から構成される分子記憶デバイス。
  16. 請求項15記載の少なくとも1種の分子記憶デバイスから構成される電子装置。
  17. デジタルスチールカメラ、携帯電話、プリンター、ポータブルコンピュータなど、または携帯音楽MP3プレイヤーなどの音響再生録音装置などのポータブル電子機器から選択される請求項16記載の電子装置。
  18. 分子記憶デバイスにおいて、電荷を蓄積し得る分子として、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電荷を蓄積し得る有機レドックス活性化合物の使用。
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