JP2012505262A - Copd及びその他の肺疾患の治療方法 - Google Patents

Copd及びその他の肺疾患の治療方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、メチルキサンチン/ステロイド混合物を誘導及び中枢気道に効果的に投与することによって肺疾患を患う患者を治療する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、エアロゾル化されたメチルキサンチンと局所ステロイドの混合物を患者の誘導及び中枢気道に投与することによって肺疾患を患う患者を治療するための方法である。上記方法では、特定の治療プロトコルと、所定の空気動力学的中央粒子径(MMAD)の粒子を有するエアロゾルを超過気圧を加えて制御された状態で誘導及び中央肺に投与するためのネブライジングシステムが用いられる。
【選択図】なし

Description

本発明は、エアロゾル化されたメチルキサンチン及び局所ステロイド剤の組み合わせから成る吸入可能なステロイドを投与して、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、重症喘息、ステロイド依存性喘息、喫煙者又は副流煙にさらされた対象における喘息、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、肺動脈高血圧症及びその他の類似する肺疾患のある患者を治療する方法に関する。吸入可能なエアロゾルは、メチルキサンチン/ステロイド又はメチルキサンチンプロドラッグ/ステロイドの混合物を含むエアロゾルの投与を包含する特定の治療プロトコルに従って患者の誘導及び中枢気道に投与され、3〜8μmの間の所定の空気動力的中央粒子径(MMAD)を有する粒子のエアロゾルは、ジェット式又は超音波式ネブライザー、コンプレッサ、電子的制御手段及びネブライジングプロトコルからなるネブライジングシステムを用いて、主に誘導肺及び中央肺に超過気圧を加えて投与される。ネブライザーは空気流制御と併せて用いられ、エアロゾルは超過気圧を加えて投与される。上記方法によって、中枢誘導気道にメチルキサンチン/ステロイド混合薬の選択的な標的沈着を行うことができる。また、治療効果を有する量の混合薬の迅速且つ有効な投与が可能となる。本件方法により、副作用が除去又は大幅に削減され、COPD及びその他の肺疾患を患う患者における臨床症状に大幅な改善が得られる。
肺疾患は、それを患う多くの人にとって重大な問題を呈する。これら疾患に用いられる治療にはステロイドの投与が含まれる。ステロイドによる治療は、しばしば望ましくない副作用やステロイド抵抗性の発現に繋がるため問題が生じやすい。いわゆる「ステロイド抵抗性」は、喘息、COPD及び嚢胞性線維症においてはよく知られた問題である。
ステロイド抵抗性を発現する全ての肺疾患は、本件発明による治療に適する。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、いくつかの病気を包含する肺疾患である。COPDとは、気管支炎、喘息性気管支炎又は肺気腫に関連した咳、粘液又は痰の過剰生成又は呼吸困難等の臨床症状の総称としての非特異的用語である。従って、COPDは上記症状の全てを含むことも数種のみを含むこともあるが、通常この用語は気道の狭窄及び炎症を伴う慢性的な肺疾患を表わす場合に用いられる。気管支炎は、気管支及び/又は気管における炎症を引き起こすが、肺気腫は肺胞及び細気管支の破壊に繋がるさらに進行した病気である。
ほとんどの場合、COPDの発生は喫煙又は副流煙に長期間さらされることに起因する。喫煙又は副流煙は気道内膜に損傷を与え炎症を引き起こす。炎症によって損傷した内膜が刺激されると異常量の粘液が分泌され、気道の狭窄を引き起こす。COPDにおける病態生理学の一環は、HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)の機能の低下によってもたらされる「ステロイド抵抗性」である。
COPDの基礎症状は回復不能であり、結果としてCOPDの唯一の治療はCOPD症状を緩和し病気の進行を遅らせる薬の投与のみと言える。
COPDの治療に用いられる薬の1つは、サルブタモール、チオトロピウム、ステロイド吸入剤又はステロイド錠剤等の短期間又は長期間作用型の気管支拡張剤である。長期間に渡るステロイドの使用は、周知のように、外見の変化、にきび、体重増加、顔面及び腹部のむくみ、敏感肌、あざが出来やすい、苛立ち、興奮、高揚感、鬱病、不眠症、感染症への感受性増大、緑内障、高血圧、白内障、筋力低下、阻血性骨壊死及び骨粗鬆症などの非常に深刻な副作用に繋がる。
従って、COPDのステロイド治療に伴う深刻な副作用を改善する、COPDの何らかの代替治療法が利用できることは有利となる。
COPDとしばしば重複する症状を有するまた別の肺疾患に、喫煙者及び副流煙に長期間さらされた人々における喘息である重度のステロイド依存性喘息が挙げられる。2つの疾患における唯一の違いは、COPDでは気道への損傷は永久的で回復不能であるのに対し、喘息では気道狭窄は間欠性で治療薬によって好転することも可能であるが、該治療薬は大抵ステロイドを含有し、ここでも患者はステロイド治療の望ましくない副作用にさらされる。
特発性肺線維症(IPF)とは、自己免疫疾患に起因する又は感染症の後遺症である肺疾患であり、肺における制御できない炎症や免疫活性及び線維化過程の原因となる。IPFの症状は、空咳と進行性呼吸困難である。結果的に、IPFは疾患によってもたらされる呼吸不全、低酸素血症、右心不全、心臓発作、肺における血栓(塞栓)、脳卒中又は肺感染症による死に繋がる。IPFの初期段階は、肺胞における炎症であり肺胞の損傷、瘢痕、線維化の原因となる肺胞炎を特徴とする。肺胞の瘢痕によって、酸素を血に送る肺機能が低下し低酸素血症を引き起こし、ひいては肺血管内の圧力の上昇に繋がる。
IPFの治療における主な目的は、肺胞における炎症を抑制し、回復不能な線維化に終わる異常過程を抑止することである。一般的に用いられる薬としては、プレドニゾン(ステロイド)、各種の吸入ステロイド及びシトキサン(シクロホスファミド)等の免疫抑制剤が挙げられる。
本件発明によって治療が奏功可能となるまた別の肺疾患は、主に肺細動脈の疾患であり、肺血管抵抗の進行的上昇と右室心不全の原因となる肺血管高血圧症(PAF)である。
肺血管高血圧症(PAF)は、心臓と肺を繋ぐ血管における高血圧によって血管に変化が生じ、心臓が肺に十分な血液を輸送することが困難になる肺高血圧症の一種である。このような変化によって、肺の血管では常に高血圧が保たれた状態になる。健康な肺動脈は血液が容易に流れるような開通した弾力性のある状態である一方、PAHの肺動脈では肺血管壁の肥厚、瘢痕組織及び血栓によって肺血管が狭く硬くなるため血流に対する抵抗が高くなる。
この疾患を完治する方法は知られておらず、現在可能な治療は、例えばカルシウムβ遮断薬、ステロイド、抗凝固薬及び利尿薬等の、該疾患の症状を緩和する薬の使用のみである。
また別の深刻な肺疾患に、嚢胞性線維症(CF)がある。CFは気道粘液の異常生成及び蓄積と気道表面液の高さによって特徴づけられる。このような蓄積の結果、患者は慢性的な気道感染症及び炎症を発症する。肺における粘液の蓄積は、緑膿菌やその他の病原菌による寿命を損なう肺感染症に繋がる。
嚢胞性線維症の典型的な症状には、肺における多量の粘性粘液の分泌、度重なる感染症及び炎症、反復性肺炎、慢性的な咳、気管支炎、喘息、慢性副鼻腔炎及び鼻ポリープがある。
しかしながら、ほとんどの嚢胞性線維症の患者に見られる重大な医学的問題は、肝機能の低下である。嚢胞性線維症患者は、度重なる感染症と炎症により、毎年徐々に肝機能の悪化を経験する。一般的に、度重なる肺の感染症及び炎症によって、嚢胞性線維症の肺は永久的な瘢痕化が生じる。
CFの治療は、抗生物質、気管支拡張剤、粘液溶解剤及びステロイドの投与を包含する。これらの治療は短期間であれば有効であるが、抗生物質に対する抵抗性とステロイドの継続投与による重度の副作用を引き起こすため、嚢胞性線維症悪化の間の治療及び長期間に及ぶ治療にはあまり有効ではない。
上記全ての肺疾患における共通のテーマは、肺における炎症の存在である。肺炎症は、肺機能の低下を防ぐために、局所ステロイドの高用量投与等の抗炎症投薬治療による処置が可能である。高用量ステロイドの副作用は、局所ステロイドの長期間投与においては容量が制限され、十分に立証されている。
炎症性肺疾患のもう1つの共通テーマは、例えばNFカッパーB等の炎症促進転写因子によって制御される複数の炎症性遺伝子の発現増加である。
炎症性遺伝子の発現は、内在性ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性を有し、他のHAT酵素を補充することが可能なコアクチベーターCBP(CREB結合タンパク質)等のコアクチベーターの協調作用によるコアヒストンのアセチル化によって上方制御される。反対に、遺伝子抑制(下方制御)はヒストン脱アセチル酵素(HDAC)及びその他のコリプレッサーによって行われる。例えば、喘息患者の生検ではHAT活性の増加とHDAC活性の低下が観察される。炎症性遺伝子の発現の上方制御及び下方制御は共に、コルチコステロイド治療によってある程度は回復可能である。
コルチコステロイドは、HAT活性を直接的に阻害し、活性化したNFkB刺激性炎症遺伝子複合体にHDAC2を補充することによって、喘息における炎症遺伝子をオフ状態にする。
コルチコステロイド非感受性疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、HDAC活性及びHDAC2発現の低下が見られ、これがコルチコステロイドの作用に耐性を持つ炎症増幅の原因となる。
このようなHDAC活性及びHDAC2発現の低下は、喫煙と、特に重度の喘息、喫煙喘息患者及び嚢胞線維症患者の喘息に見られる重度の炎症による酸化的及び硝化的ストレスに続発する。
酸化的ストレスによって誘発されるHDAC活性の低下は、特定のキナーゼを介して作用するテオフィリンによって回復することが可能で、COPD及びその他の炎症性肺疾患におけるステロイド抵抗性を改善することもできるかもしれない。このようなテオフィリンの作用は経口投与において実証されており、テオフィリン及びその他のメチルキサンチンの吸入投与においても同様に又はそれ以上に効果的である。
従って、HAT/HDAC酵素活性のテオフィリン/メチルキサンチンによる制御及び上方制御によって、炎症性肺疾患の新しい抗炎症方法の開発への新たなアプローチとなる。
メチルキサンチンがHAT/HDACの制御に関連した様々な酵素に作用する作用メカニズムはいくつか知られている。メチルキサンチンはホスホジエステラーゼ阻害剤としての作用を有する。また、これらはアデノシン受容体拮抗薬として作用し、カテコールアミンの分泌を促進する。炎症促進転写因子NF−kB及びホスホイノシチド3−キナーゼを阻害し、アポトーシスを増加する。しかし、これらは主にヒストン脱アセチル化活動(HDAC)を増加させ、これによって肺疾患の治療のためのコルチコステロイドの有効性を向上させる。
メチルキサンチンの一つであるテオフィリンは、下記の出版物に開示されるように、経口投与された場合、肺疾患におけるステロイド治療の抵抗性を低減することが知られている。COPD、2(4):445-55(2005)には、炎症性肺疾患におけるヒストン脱アセチル化の重要性が記載されている。Proc. Am. Thorac. Soc., 2(4):334-9 (2005)の340-341には、慢性閉塞性肺疾患におけるテオフィリンの働きが記載されている。Proc. Am. Thorac. Soc., 1(3):264-8 (2004)には、気道疾患におけるコルチコステロイド抵抗性が論じられている。テオフィリンは、J. Exper. Med., 6:200(5):689-95 (2004) に記載のように投与された場合、COPDマクロファージにおいてヒストン脱アセチル化活動及びステロイド反応を回復することが示されている。
多くの出版物でメチルキサンチンの経口又は全身投与について触れられているが、いくつかの試みでは、メチルキサンチンの吸入による投与が指摘されている。
メチルキサンチンのエアロゾル化が可能である点については、多数の出版物で開示されているが、同時にそのようなエアロゾル化に伴う問題についても指摘されている。テオフィリン及びその他のメチルキサンチンのエアロゾル化することに伴う上気道に見られる副作用は、例えば、Aerugi, 44(12):1379-86 (1995)において記載される。この出版物では、喘息患者におけるエアロゾル化されたアミノフィリン吸入の気管支拡張作用について開示される。また、喘息における吸入投与によるキサンチン誘導体の気管支拡張作用については、Thorax, 40(3):176-9 (1983)に記載される。この出版物では、10mg/mLの濃度のテオフィリン、50mg/mLのグリシンテオフィリネート、50mg/mLのアミノフィリン、125mg/mLのジプロフィリンのエアロゾル化について記載される。喘息患者における、蒸留水の超音波ミストに対する気管支反応へのアミノフィリンエアロゾルの効果については、Respiration, 54(4):241-6 (1998)に記載される。最大1000mgの用量の吸入アミノフィリンを用いた、アミノフィリンの吸入による使用についてはBr. J. Clin. Pharmacol., 14(3):463-4 (1982)に記載される。
上記で引用した全ての出版物では、エアロゾル化されたメチルキサンチンの有益な効果について記載される傾向があるが、そのような効果は最大1000mgの非常に高用量での吸入薬の使用において見られるものである。従って、気管支拡張及び気道抵抗の低下による有益性がやがて見られるものの、そのような濃度の吸入メチルキサンチンによる嫌な、耐えがたい味と咳によって、吸入目的でのこれら化合物の概念、使用及びその後の開発は断念されたことが明らかに判明した。50mg/mLの濃度のメチルキサンチンでは患者は全く受け付けなかったが、25mg/mLであれば何とか耐えられることが判った。
上記参考資料で開示されるように、何らかの治療上の効果を得るのに必要とされる実際の吸入薬の用量は、最大1000mgである。何とか耐えられる25mg/mLの濃度であっても、25mg/mLでは実際には40mLの溶液が、50mg/mLでは80mLの溶液が肺に送られなければならないことを考えると、そのような投与は実用的でも合理的でもないことが容易に理解できる。
Snape et.al., ERS (2009) Viennaの要約には、吸入低用量テオフィリン(ADC4022)をICSと共に投与することによって、COPD患者におけるステロイド反応の回復が可能であるという仮説を裏付けるような前臨床試験について記載されている。2週間のウォッシュアウト期間後、中等度から重度のCOPDを患う91人の対象(n=47はADC4022、n=44は偽薬)は、ブデソニド噴霧(1mgを1日2回)による治療が行われる4週間のランイン期間を経て、ADC4022(パリ社製ジェットネブライザーにより12.5mgを10分間投与)又はプラシーボの噴霧投与を受けるグループに無作為に分けられ、ブデソニドに加え1日2回の投与をさらに4週間受け続ける。その結果から、ADC4022による治療を受けたグループにおいては肺機能は安定していたのに対し、偽薬のグループにおいては低下したことが判った。
それに加えて、2006年2月13日出願の米国登録出願第11/883,635では、慢性呼吸器系疾患を治療するためにメチルキサンチン化合物とブデソニドの組み合わせを吸入による投与法で用いる方法が記載されている。テオフィリン250〜375mgとブデソニド400μgからなる上記組み合わせを、マウスの鼻腔内に投与した結果、ステロイドと共に投与されるとテオフィリンの使用を節約する効果があることが判った。
これら試みは望ましい方向への前進ではあるが、一般的にテオフィリン及びメチルキサンチンの投与に見られる数々の問題点については触れられていない。
吸入テオフィリンは上気道において副作用が現れることが知られており、そのため吸入治療におけるその使用は、非常に低用量且つ短時間での投与に限られていた。また、テオフィリン等のメチルキサンチンは、上気道及び中咽頭に付着すると苦い嫌な味が生じるため、大量での有用性が限られていた。また、気管支けいれんの原因にもなる。さらに、パリ社製ジェットネブライザー等の従来のネブライザーによってテオフィリンが投与された場合、肺線量にかなりのばらつきが生じ、テオフィリンの肺における有効な効果は定量化できず、一定に提供することもできない。加えて、テオフィリンが経口投与された場合、吐き気、頻脈等の副作用やその他心血管系への影響があるため、血漿中濃度を監視する必要があり、従って、このようなモニタリングは肺への高用量投与を行う場合に必要であると考えられる。
従って、短時間で効果的且つ定量化可能な用量を投与でき、メチルキサンチン又はテオフィリンが低用量ステロイドの作用を増強するのに最も高い効果を発揮する気道の位置をとりわけ標的として高沈着を行う吸入式の治療法が利用可能となることは有利である。
上記で説明したように、多くの肺疾患では炎症を抑えるために一般的にステロイドによる治療が施される。
これらの疾患をβアドレナリン逆作動薬とステロイド又はキサンチン化合物との組み合わせを経口、非経口又は吸入ルートで用いて治療する試みは、米国特許第7,528,175に開示されている。
その他の肺疾患治療法のための試みは、2006年2月16日公開の米国特許出願第20060035877に記載されるように、ホスホジエステラーゼ4阻害剤を抗炎症コルチコステロイドと共に吸入により投与することに関する。
2007年9月13日公開の米国特許出願第20070213296は、B群アデノシン活性上方調整剤をコルチコステロイドと共に吸入により投与することによる、免疫炎症性疾患の治療のための組成物及び方法に関する。
従って、治療的に効果的な量の薬剤を、以前はこのような投与に関連するとして知られていた同時発生する二次的症状を生じることなく、選択されたメチルキサンチンを選択されたステロイドと組み合せて主に肺の誘導及び中枢気道に投与する吸入法が利用可能となることは有利である。
よって、本件発明の主な目的は、メチルキサンチン/ステロイド混合物をAKITA(登録商標)ネブライジングシステムを用いて誘導及び中枢気道に効果的に投与する方法を提供することであって、該混合物の薬剤は、大部分の粒径が約3〜8ミクロンの限られた空気動力学的中央粒子径を有するエアロゾル化された形態で、1〜2分間という短時間での薬の高沈着を可能にする制御された緩やかな呼吸パターンを用いて、軽度から中程度の調整可能な圧力で肺に送られる。本発明で用いられるネブライジングシステムは、薬剤を口腔咽頭領域にほとんど沈着させることなく、メチルキサンチン/ステロイド組成物を主に誘導肺及び中央肺の気管支及び気管に効果的に投与することが可能であり、これによって口腔咽頭における副作用がなくなる。
本文で参照される全ての特許、特許出願及びその他の参考文献は、参照として本件に組み込まれる。
本件発明の一態様は、必要な患者にエアロゾル化されたテオフィリン、アミノフィリン、エンプロフィリン、ペントキシフィリン、ジプロフィリン及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなるグループから選択されるメチルキサンチンと、フルチカゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド及びシクレソニドからなるグループから選択される局所ステロイドの混合物を、約3〜8ミクロンの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有するエアロゾルの形態で、ジェット式、超音波式、電子式、振動メッシュ式又は振動膜式のネブライザー、ドライパウダー吸入器又はAKITA(登録商標)ネブライジングシステムによって超過気圧を加えて又は加えずに主に誘導肺及び中央肺に投与してCOPD、喘息、嚢胞性線維症及びその他の肺疾患の治療を行う方法であって、上記エアロゾルは1日当たりの量が約1〜3mlの溶剤に溶解された約0.1〜2mgの上記ステロイドと約25〜約50mgの上記メチルキサンチンの混合物からなり、1回の治療当たり少なくとも0.1mgのステロイドと少なくとも2〜15mgのメチルキサンチンを含む上記エアロゾルの少なくとも1mLは誘導肺及び中央肺に沈着する。
本発明の別の態様は、以下のステップからなる肺疾患の治療法である。
メチルキサンチンと局所ステロイド、メチルキサンチンプロドラッグとステロイドの薬剤混合物又はメチルキサンチンのみからなる懸濁液を作成するステップであって、該懸濁液は約1〜3mLの溶剤に溶解された約0.1〜2mgの上記ステロイドと約25〜50mgの上記メチルキサンチンからなるステップ。
上記懸濁液を、約3〜8μmMMADの粒径を有するエアロゾルにエアロゾル化するステップ。
上記エアロゾルを、患者の気流及び呼吸パターン並びに治療プロトコルに基づくエアロゾルのボーラス投与を制御するための電子式又はジェット式ネブライザー、コンプレッサ及び電子的制御手段からなるネブライジングシステムを用いて必要な患者に投与するステップであって、上記治療プロトコルは患者の緩やかで制御された呼吸パターン、空気又はエアロゾルの制御された気流、ボーラス薬剤投与及び約60〜70%の有効率をもって30mbar又はそれ以下の超過気圧で主に誘導及び中枢気道への上記エアロゾルの制御された状態での投与を規定するステップ。
上記薬剤混合物を、上記プロトコルに基づいて主に患者の誘導及び中枢気道に、上記エアロゾルが少なくとも60%の有効率をもって誘導及び中枢気道へ沈着するように投与するステップ。
上記治療により、努力肺活量75%(FEF75)の努力呼気流、口腔咽頭への沈着の減少及びメチルキサンチン又はステロイドの副作用の減少によって観測される肺機能の改善が認められる。
本発明のまた別の態様は、メチルキサンチンとステロイドの混合物をエアロゾル化して投与する方法であり、上記混合物の投与によってメチルキサンチンの副作用が軽減すると共にステロイドの効果が増強し、上記投与によってCOPD及びその他の肺疾患を患う患者における肺機能が改善される。
本発明の別の態様は、必要な患者にエアロゾル化されたテオフィリンと、プレドニゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド及びシクレソニドからなるグループから選択される局所ステロイドの混合物を、約3〜8ミクロンの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有するエアロゾルで、ジェット式、超音波式、電子式、振動メッシュ式又は振動膜式のネブライザー、ドライパウダー吸入器又はAKITA(登録商標)ネブライジングシステムによって超過気圧を加えて又は加えずに主に誘導肺及び中央肺へ投与することによる、COPD、喘息、嚢胞性線維症及びその他の肺疾患の治療法であり、上記エアロゾルは約1〜4mlの溶剤に溶解された約0.1〜2mgの上記ステロイドと約3〜50mgの上記テオフィリンからなり、少なくとも50ugのステロイドと少なくとも5mgのテオフィリンを含有する少なくとも0.5mLの上記エアロゾルは誘導肺及び中央肺に沈着することを特徴とする。本発明のまた別の側面は、テオフィリンとステロイドの混合物をエアロゾル化して投与する方法であり、上記混合物の投与によってテオフィリンの副作用を軽減すると共にステロイドの効果を増強し、上記投与によってCOPD及びその他の肺疾患を患う患者における肺機能が改善される。
本発明のまた別の態様は、必要な患者にエアロゾル化されたメチルキサンチンフェニルリン酸プロドラッグと、プレドニゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド及びシクレソニドからなるグループから選択される局所ステロイドの混合物を、約3〜8ミクロンの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有するエアロゾルでAKITA(登録商標)ネブライジングシステムを用いて超過気圧を加えた低い吸入気流で主に誘導肺及び中央肺に投与することで、COPD、喘息、嚢胞性線維症及びその他の肺疾患を治療する方法であり、上記エアロゾルは約1〜4mlの溶剤に溶解された約0.1mg〜2mgの上記ステロイドと約5〜50mgの上記メチルキサンチンプロドラッグの混合からなり、少なくとも50ugのステロイドと少なくとも5mgのテオフィリンを含有する少なくとも0.5mLの上記エアロゾルは誘導肺及び中央肺に沈着することを特徴とする。
本発明のまた別の態様は、メチルキサンチンフェニルリン酸プロドラッグとステロイドの混合物をエアロゾル化して投与する方法であり、上記混合物の上記投与によってメチルキサンチンによる口腔的及び局所的な副作用が軽減される。
本発明のまた別の態様は、必要な患者にテオフィリン、アミノフィリン、エンプロフィリン、ペントキシフィリン、ジプロフィリン及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなるグループから選択されるエアロゾル化されたメチルキサンチンの混合物を、約3〜8ミクロンの空気動力学的中央粒子径(MMAD)を有するエアロゾルでAKITA(登録商標)ネブライジングシステムを用いて超過気圧を加えた低い吸入気流で主に誘導肺及び中央肺に投与することで、COPD、喘息、嚢胞性線維症及びその他の肺疾患を治療する方法であり、上記エアロゾルは約1〜4mlの溶剤に溶解された約5〜50mgの上記メチルキサンチンからなり、メチルキサンチンの少なくとも10mgが誘導肺及び中央肺に沈着することを特徴とする。
本発明のまた別の態様は、メチルキサンチンとβアゴニスト、抗コリン作動薬、クロモン又はロイコトリエン阻害剤の混合物をエアロゾル化して投与する方法である。
本件で用いられる定義
「MMAD」とは、空気動力学的中央粒子径を意味する。
「メチルキサンチン薬剤」又は「メチルキサンチン」とは、テオフィリン、アミノフィリン、エンプロフィリン、ペントキシフィリン、ジプロフィリン及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなるグループから選択されるメチルキサンチンを意味する。
「ステロイド剤」又は「ステロイド」とは、プレドニゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、モメタゾン及びシクレソニドからなるグループから選択される局所ステロイドを意味する。
「誘導肺(conducting lung)」又は「中央肺(central lung)」とは、肺線維における気管支及び気管を意味する。この領域における吸入メチルキサンチンとステロイドの混合物の選択的な沈着によって、COPD及びその他の肺疾患の症状の改善に繋がる。
「一呼吸」とは、人が通常の呼吸パターンで息を吸って(吸入して)吐き出す期間を意味する。
「吸気時間」又は「吸気期」とは、人が空気又は本件においてはエアロゾル化されたメチルキサンチン/ステロイド混合物を吸入する際の一呼吸のうちの一期間を意味する。本発明の目的上、エアロゾル化されたメチルキサンチン/ステロイド混合物は、吸気期間の第2期に最大30mbarの低度又は中程度の超過気圧を加えてエアロゾルを肺下部へ送り込むようにAKITA(登録商標)プロトコル及びネブライザーを用いて必要な患者に投与されるか、又は送りこまれた粒子を含まない空気の第1と第2容量の間の第2容量として呼吸活性ネブライザー及びプロトコルを用いて投与される。
「呼気時間」とは、人が空気、一酸化窒素又はその他の肺からの代謝産物を吐き出す際の一呼吸のうちの一期間を意味する。本発明の目的上、エアロゾル化されたメチルキサンチン/ステロイド混合物は、吸気中に低度又は中程度の超過気圧で誘導肺及び中央肺に送り込まれ、呼気時間中には全く又はほんの僅かしか排出されないことが望ましい。
「ボーラス法」とは、メチルキサンチン/ステロイド混合物を含むエアロゾルの、肺の所定の領域への運搬を意味する。
「無粒子空気(particle-free air)」とは、薬剤を全く含まない空気であり、エアロゾル化された薬剤の投与の前後に投与される。
「超過気圧吸入(overpressure inhalation)」とは、好適には所定の時間における気流として定義される積極的に送り込まれる空気の吸入を意味する。吸気する際、患者は吸気流速に合わせて行う。患者が吸入を消極的に行った場合、呼吸努力を軽減するために吸気期の際に最大30mbarの超過気圧が加えられる。結果として、患者は自発的な吸入に比べて、より深く大量の吸入容積をより緩やかな吸気流速で吸入することが可能となる。
「FEF」とは、努力呼気流を意味する。
「FVC」とは、努力肺活量を意味する。
「VC」とは、肺活量を意味する。
「FEV」とは、努力呼気容量を意味する。
「FEV1」とは、1秒間における努力呼気容量を意味する。
「PFT」とは、患者の肺機能に問題があるかどうかを特定するために、肺活量及び肺と胸壁の構造の機能を計測する肺機能検査を意味する。肺機能検査は、一般的にPFTと称される。患者がPFTを受けるということは、簡単な肺活量測定スクリーニング、肺気量の静的測定、一酸化炭素の拡散能力、気道抵抗性、呼吸筋力の強度、動脈血液ガスを含む一連の検査が行われることを意味する。
「MEF」とは、最大呼気流を意味する。
「主に」とは、少なくとも70〜90%を意味する。
「実質的に」とは、少なくとも44%を意味する。
本発明は、一般的に高用量のステロイドによる長期間に及ぶ治療を伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)、重度のステロイド抵抗性喘息、喫煙者における喘息、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、肺動脈高血圧症及びその他の類似する肺疾患等の様々な肺疾患を治療するための方法に関する。本発明による方法は、エアロゾル化されたメチルキサンチンと局所ステロイドの混合物からなる吸入エアロゾルを提供することによって、ステロイドによる長期間に及ぶ治療に関連する問題を解消する手段となる。
メチルキサンチン/ステロイド混合物は、吸入可能なエアロゾルの形態で、肺の特定の領域、すなわち主に中枢及び誘導気道にメチルキサンチン/ステロイドを効率的に届けるための特定の治療プロトコルに従って、患者の誘導及び中枢気道に投与される。この治療プロトコルは、主に誘導及び中央肺にジェット式、超音波式、電子式、振動多孔板、振動膜のネブライザー又は加圧された(energized)ドライパウダー吸入器を用いて超過気圧を加えて又は加えずに投与される、3〜8μmという所定の空気動力学的中央粒子径(MMAD)の粒子サイズを有するエアロゾルの調合を規定する。ジェット式又は電子式のネブライザーは気流制御をして用いることもでき、エアロゾルは超過気圧を加えて投与されることも可能である。この方法によって、COPD及びその他の肺疾患を患う患者における臨床症状が実質的に改善する。
この方法では、気流制御及び気流超過気圧が加えられた状態で投与された体積流量及び気化されたエアロゾルを、炎症性肺疾患の治療に適した治療プロトコルに個別化することが可能なネブライジング装置及びシステムが使用される。このような個別化された治療プロトコルは、いわゆるAKITA(登録商標)治療プロトコルによると、ネブライザーで投与された薬剤の主に誘導及び中央肺への沈着パターンの変化をもたらす。
AKITA(登録商標)治療プロトコルは、肺の中央及び誘導領域に主に沈着する粒子サイズである3〜8μmに制限された空気動力学的中央粒子径の粒子を有するエアロゾルの形態でメチルキサンチン/ステロイド混合物を投与することで、炎症性肺疾患を治療する方法からなる。また、AKITA(登録商標)治療プロトコルでは、AKITA(登録商標)ネブライジングシステムと呼ばれるネブライジングシステムによって行われる緩やかな制御された吸入によって達成される呼吸パターンが用いられる。
全体として、本発明による方法によってメチルキサンチン又はテオフィリンの副作用を効果的に抑制しながら、1〜3分間の吸入で効果的な用量のメチルキサンチン/ステロイド混合物、テオフィリン/ステロイド混合物又はメチルキサンチンプロドラッグ/ステロイド混合物を投与することが可能となる。その実用の範囲を狭めるテオフィリンの味の悪さという副作用については、呼吸制御及び緩やかな吸入によると薬剤の高沈着を達成するのためにはほんの25mg/mLのテオフィリン製剤しか必要としないため、テオフィリンの味の悪さが排除される。
ネブライジングシステムは、吸入時に陽圧(またの呼称をNIPPVという)をかけることで呼吸パターンの制御を可能とする性質を累積的に有するジェット式又は電子式ネブライザー、コンプレッサ及び制御手段から構成される。この圧力によって、COPD患者における能動的な呼吸の必要性が低減し、その結果として呼吸に困難性を有する又は酸素なしで呼吸が不可能なCOPD患者に対して、薬剤混合物をより効率的且つ容易に肺へ投与することができる。
また、このシステムによると、最小限の濃度の薬剤を含む最少容量の投与しか必要とせず、作用部位のみに投与されるため、実際に投与された薬剤混合物の量が容易に測定でき、投与量の定量化が容易に行える。
これらの目的で用いられる周知のその他全ての装置は、大量且つ高容量の薬剤と患者側により能動的な呼吸努力を要するが、上記のような的確且つ効率的な沈着は達成できていない。このような的確さに欠ける投与装置を用いると、メチルキサンチン又はテオフィリンをステロイドと共に用いるという利点が損なわれ、味の悪さや気管支けいれん等の副作用の排除には繋がらない。
さらに本件のネブライジングシステムは、メチルキサンチン/ステロイド混合物又はメチルキサンチンプロドラッグ/ステロイド混合物のいずれかを収容する小さな手持ちの装置を備え、肺沈着を最大に高めるためにミニチュア化された呼吸制御及び気流制御手段を単独で、あるいは振動メッシュ式ネブライザーなどと共に用いることでより実用的となる。
本件の方法は、上記で説明されたような方法で投与されるメチルキサンチン及びテオフィリンプロドラッグにも適用される。ステロイドと混合されたプロドラッグは、吸入により誘導及び中枢気道に送り込まれ、そこで酵素的にメチルキサンチン及び/又は具体的にはテオフィリンに転換される。
肺疾患及びステロイド抵抗性
本発明による方法は、ステロイド抵抗性を生じる肺疾患の治療のために意図されたものである。
肺疾患
長期間に渡り主にステロイドによって治療される肺疾患は、炎症が疾患の一因であるか、又は疾患の一症状である慢性炎症性肺疾患である。治療期間の長さにより、これら疾患の多くはステロイド抵抗性を生じる。本件発明による治療の候補となる炎症性肺疾患は、患者がステロイド抵抗性を発症した慢性閉塞性肺疾患(COPD)、重度の喘息、喫煙者における喘息又は副流煙にさらされた喘息患者、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、肺動脈高血圧症である。
本発明による方法は、肺疾患の効果的な治療のために、吸入により中枢及び誘導気道にメチルキサンチン、好ましくはテオフィリンをステロイドと共に効率的に同時投与することによって、このようなステロイド抵抗性を克服する手段を提供する。
B.治療的メチルキサンチン/ステロイド混合物
本発明による治療的混合物は、吸入可能なエアロゾルの形態で同時投与される異なる2種類の薬剤から構成される。2種類の薬剤は、共に抗炎症薬としてこれまでに特定されている。しかし、両方の薬剤は治療的に有効な用量で個別に投与されると、重度の二次的な副作用をもたらす。
第1の種類の薬剤は、プレドニゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、モメタゾン及びシクレソニドからなるグループから選択される局所ステロイドである。それぞれの肺疾患の治療に適する局所ステロイドは、治療する疾患、患者の耐溶性又は抵抗性の程度及び疾患の段階及び重症度によって異なる。本発明の目的は、疾患の治療のために最も有効なステロイドを、強い副作用なく望ましい治療的効果が得られる可能な限り最小限の用量だけ用いることである。エアロゾル化可能な混合物で用いられる用量は状況によって異なるが、一般的に混合物は、肺に沈着するステロイドの望ましい量が0.1〜約1.5mgとなる約0.1〜2mgのステロイドを含有する。
第2の種類の薬剤は、テオフィリン、アミノフィリン、エンプロフィリン、ペントキシフィリン、ジプロフィリン及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなるグループから選択されるメチルキサンチンであるが、最も好ましいメチルキサンチンはテオフィリンである。エアロゾル化可能な混合物におけるメチルキサンチンの用量は、肺に沈着する望ましい量が2〜5mgとなる約2〜50mgである。この用量は、これら化合物の高用量投与に見られる咳、味の悪さ及び気管支けいれんの原因となる、吸入されたメチルキサンチンの局所的な不耐性の問題を克服できるくらい少ない量である(Am. J. Respir. Crit. Care Med., 167: 813-818 (2003))。
テオフィリンは、血漿中濃度の厳密な監視を必要とする治療域の狭い肺に対する有効な薬である。血漿中濃度の推奨される有効な範囲は10〜20mg/Lである。全身(経口又は点滴)投与によりこの範囲を超えると、頭痛、吐き気、嘔吐、腹部不快感、情動不安、酸分泌の増加、胃食道逆流及び利尿を引き起こす。より高い濃度になると、けいれん、不整脈及び死に繋がる。また、テオフィリン及びその他のメチルキサンチンは、複数の薬のCYP450肝代謝を阻害する。そのため、メチルキサンチン使用は20mg/L以下の安全な範囲内に厳密に制限される。本発明で得られた血漿中濃度は1〜3mg/L又はそれ以下の数値であった。
本発明のさらなる重要な側面は、例えば置換フェニルリン酸などのメチルキサンチンプロドラッグの使用である。肺に送り込まれた際、肺組織及び気道に存在する内在性酵素によってこれらプロドラッグは対応するメチルキサンチンに分解される。メチルキサンチンプロドラッグは、プロドラッグに応じて、肺の中でテオフィリン、アミノフィリン、エンフィリン又はペントキシフィリンに転換される。本実施形態では、メチルキサンチンよりむしろメチルキサンチンプロドラッグがステロイドと混合され、本発明による方法に応じて肺に送り込まれる。
このようなアプローチは、プロドラッグが肺に到達するまでステロイドと特にメチルキサンチンの薬理学的特性を覆い隠す水溶性のステロイド/メチルキサンチンプロドラッグを使用することによって、カンジダ症、喉の痛み及び発声障害などのICS(吸入コルチコステロイド)の有害な副作用プロフィール及び咳、味の悪さ及び頻脈などのメチルキサンチンの有害な副作用プロフィールに関連する問題や不利点を解決するための手段となり、これによりICSによる口腔咽頭における副作用及びメチルキサンチンによる複数の副作用を軽減する。
肺の内部では、プロドラッグはアルカリホスファターゼによって代謝され、メチルキサンチンの活性型になる。アルカリホスファターゼは口及び咽頭内には存在しないため、メチルキサンチンの味の悪さなどの副作用は口及び咽頭内には及ばず、プロドラッグが変換されると肺内でメチルキサンチンが有効となる。
メチルキサンチンプロドラッグは、荷電リン酸及び第4級アンモニウム基を包含し、分子を高極性及び水溶性にすると共に肺DNA及びタンパク質に対する親和性を与え、これによって急速な全身吸収及び嚥下による吸収を最小限に抑える。さらに、プロドラッグはアルカリホスファターゼなしでは活性化されず、この酵素は口腔咽頭領域には存在しないため、口腔咽頭における及び全身的な副作用は排除される。
プロドラッグ/ステロイド組成物は液体又はドライパウダーのいずれかとして処方される。この処方は、プロドラッグを主に3〜8μの空気動力学的中央粒子径を有するエアロゾルとして肺気道に送り込むのに適する。置換フェニルリン酸プロドラッグの処方及び送り込まれる有効量は、肺疾患の治療のために要されるメチルキサンチンとステロイド双方の治療量を送り込むのに十分である。
従って、本発明ではステロイド抵抗性及びメチルキサンチン治療に伴う副作用に関してこれまでに見られた問題を解決するための新規なアプローチが用いられている。
第1として、エアロゾル装置の気流制御及び粒子径設計、それに薬剤を口腔咽頭領域でそれほど失われるころなく、混合物を最も有効となる肺の誘導領域及び中央領域に送り込むことによって、吸入メチルキサンチンに対する局所的な不耐性が解消できる。
第2として、肺における薬剤の安定した沈着によって、必要な臨床研究の規模及び費用が削減できる。第3として、メチルキサンチンをステロイドに混合することによって、ステロイド及びメチルキサンチン両方の治療有効性が向上する。このような混合では、各薬剤の濃度はそれぞれ個別に肺の関連する作用部位に放出して投与される場合よりも、格段に低濃度で済む。
第4として、メチルキサンチンプロドラッグ/ステロイド混合物を用いることで、肺に常在する酵素が、例えば置換フェニルリン酸などのメチルキサンチンプロドラッグを作用薬に開裂する肺の関連する部位にこの混合物が送り込まれることにより、肺においてメチルキサンチンがより高い濃度で得られる可能性が高くなる。
肺におけるステロイドの有効的な効果(enabling effect)は、10-6〜10-5Mという低い全身レベルで発揮され、メチルキサンチンの有効的な効果は10mg/L以下の全身レベルで発揮され、これらのレベルは本発明によるメチルキサンチン/ステロイド混合物をエアロゾル化することで局所的に達成することができる。
II.肺疾患の治療方法
肺疾患を治療するための方法は、メチルキサンチン、好ましくはテオフィリンと混合されたステロイドの混合物を、誘導及び中枢気道の気管及び気管支の寸法に応じて制御された均一な粒子径を有する噴霧状のエアロゾルの形態で、エアロゾルボーラス(aerosol bolus)が噴霧の最初に送り込まれるような緩やか且つ制御された呼吸パターンを可能にする手段を含むよう改良された電子式ネブライザー(AKITA(登録商標)ネブライジングシステム)を用いて患者に投与することからなる。
このシステムは、治療を受ける患者の呼吸パターンを制御する特異的に設計且つ個別化されたプロトコルに応じて、主に肺の誘導及び中枢気道へのエアロゾルの送達を可能にする。
B.エアロゾル
肺疾患の治療に用いられるエアロゾルは、局所ステロイドとメチルキサンチン又はメチルキサンチンプロドラッグの混合物が誘導及び中枢気道に選択的に沈着するように構成される。混合物は、粒子の少なくとも70%、好ましくは90%という大多数が下記範囲内の粒子径を有するように、約3〜8μmに制限された粒子径にエアロゾル化される。
エアロゾル化される前に、混合物αは上記で説明された濃度になるよう生理食塩水又は精製水に溶解される。一般的に、名目投与量は1〜5mlの溶剤で溶解される。混合物の溶解物はエアロゾル化され、エアロゾルとして誘導及び中枢気道に送り込まれる。
C.肺沈着
得られたエアロゾルは、AKITA(登録商標)ネブライジングシステムを用いて衝突(impaction)を起こすことによって、中枢気道と誘導気道の両方に沈着する。衝突は、中枢気道における主な沈着メカニズムである。3μm以上の大きさの粒子はより高速となるため、衝突を起こす可能性もより高くなる。
肺下部における末梢気道へ薬剤を投与するための沈着メカニズムは、エアロゾル中に存在する粒子の数及びサイズ、また肺の中枢及び誘導気道における分布及ぶ沈着や患者の呼吸パターンによって決められる。
しかし、粒子沈着を何らかの方法で促進しない限り、粒子サイズと患者の呼吸パターンのみでは患者の誘導肺及び中央肺に十分な量の薬剤を送り込むには不十分である。このような促進をしないと、粒子はその粒子サイズに応じた寸法を持つ肺部位及び特に口腔咽喉領域におけるその他の部位にのみ沈着する。しかしながら、肺疾患を患う患者は疾患によって肺に障害があるため、その障害の克服が可能な状況にない限り、このような沈着は起こらない。
本件で開示される方法及び装置は、軽度又は中程度の超過気圧で混合物を投与し、投与中に呼吸パターンをAKITA(登録商標)ネブライジングプロトコルに従って制御することで、このような状況を提供する。
D.治療的ネブライジングプロトコル
肺疾患を治療するための、AKITA(登録商標)ネブライジングプロトコルとも呼ばれる治療的ネブライジングプロトコルは、肺疾患患者の中枢及び誘導気道におけるステロイド/メチルキサンチン混合物の沈着効率を向上するためにエアロゾルを適切なサイズに製造し、そのエアロゾルをジェット式又は電子式ネブライザーを用いて上記中枢及び誘導気道に送り込み、各呼吸の最初にエアロゾルボーラスを伴ってエアロゾルを緩やかに吸入し、吸入治療の後に臨床評価を行うことから構成される。
エアロゾルの製造
中咽頭で薬剤の高損失を防ぐような、肺下部における末端気道に薬剤を均一に沈着するために最適な粒子サイズを有するエアロゾルは、ステロイドとメチルキサンチンの混合物からなる約1〜5mLの水溶液を約3〜8μmの適切なサイズのエアロゾルに噴霧することで製造され、患者の誘導及び中枢気道をターゲットとしたステロイド/メチルキサンチンの沈着効率を向上するために、好ましくはエアロゾル粒子の少なくとも90%は上記サイズを有するように製造される。
2.エアロゾルの送達
治療プロトコルに応じて任意的に振動メッシュ又は振動膜が備えられたジェット式又は電子式ネブライザーを用いたステロイド/メチルキサンチンの中央肺及び誘導肺への投与は、10分以下、好ましくは約1〜5分、最も好ましくは約2分で行われる。治療は必要に応じて1日に数回行われるが、好ましくは1度か2度までとされる。
3.エアロゾルボーラスを伴った緩やかな吸入
ステロイド/メチルキサンチンが中央肺及び誘導肺へ投与される際の患者の呼吸パターンは、噴霧されたステロイド/メチルキサンチンのエアロゾル粒子のサイズと同様に重要となる。
エアロゾルを吸入する際の呼吸パターンは気道における粒子の沈着に影響を及ぼす。高い吸気流は粒子の衝突を促進し、従ってより中枢への沈着を促進する。低い吸気流は粒子を肺のより深くまで到達させる。このような制御された呼吸パターンは、AKITA(登録商標)ネブライジングシステムを用いることで可能となる。
従って、緩やかな吸入を可能にする患者の呼吸パターンのための制御された状況を提供し、それと同時に緩やか且つ持続的な呼吸吸入法で各呼吸の最初により多量の薬剤を送り込むエアロゾルボーラスを提供するAKITA(登録商標)治療ネブライジングシステムの能力が本発明の重要な側面となる。
ジェット式又は電子式ネブライザーを使用した、主にMMAD約3〜8μmの粒子サイズにエアロゾル化されたステロイド/メチルキサンチンからなるエアロゾルを投与する治療ネブライジングシステムによってプログラムされた緩やかな吸入法を用いることで、エアロゾル化された粒子が肺下部の末梢へ深く到達し、嚢胞性線維症を患う患者の肺末梢部によりよく沈着する。
このような緩やかな吸入パターンは、呼吸量が約50〜300mL/秒、吸入量が約300〜1500mLまでに制限され、30mbar以下の軽度から中程度の超過気圧が加えられる。
一般的に吸入は、少なくとも1mgのメチルキサンチンと75μgのステロイドが、好ましくは中枢及び誘導気道に上記全ての量が沈着するように、約1〜5mL、好ましくは約1〜2mLのステロイド/メチルキサンチンが投与される。
緩やかな吸入法では一つの呼吸がいわゆる吸気時間と呼気時間の2つに分けられ、吸気時間中はいわゆるボーラス技術を用いて薬剤を含むエアロゾルを肺の所定の領域に送り込まれ、呼気時間中は呼吸の最後に両方の肺から最小限の薬を吐き出す。
本発明の方法は、治療上のネブライジングシステムを用い、現在使用されているネブライジングシステムによって達成された蓄積物に比べ、4〜5倍高い蓄積物とメチルキサンチン/ステロイド混合物を平均して2分〜4分以内に患者の中央肺及び誘導肺へ送り込むことになる。
臨床評価
この発明方法により、メチルキサンチン/ステロイド混合物を用いる吸入治療に従った患者の臨床評価は肺活量測定、酸素飽和度パラメーター及びその統計データ、強制呼気流(FEF75)、強制呼気量(FEV1)、強制肺活量(FVC)、肺機能検査(PET)、そして最大呼気流(MEF25又はMEF75)を含むものであるが、これに限定されるものではない。
蓄積投与量
現在の方法は他の従来のネブライザーに比べ、より短期間に、かつ二次的副作用が全くない状態、もしくははるかに少ない状態で、肺の中枢誘導気道へ設置された薬の約4〜5倍多い注入投与量の蓄積を可能にする。
治療ネブライジングシステム
治療ネブライジングシステム(AKITA(登録商標)ネブライジングシステム)は、約3〜8μmの粒子サイズを有する空気動力学的中央粒子径の少なくとも90%の大多数で、両方の薬を、主に約3〜8μmサイズを有する粒子へのエアロゾル化をコントロールするどちらの方法をももたらす。
このシステムを用いることにより、これらの粒子はこの範囲内のサイズを有する肺、気管支、又は気管の中枢誘導気道に蓄積される。しかしながら、このサイズ内の空気動力学的中央粒子径を有するエアロゾルが準備されたとしても、肺が損傷、収縮している場合、及び痰で満たされている場合、そして炎症を起こしている場合に、このようなエアロゾルを肺疾患に送り込むことは依然として非常に難しい。これらの要素全てがそこにある薬の蓄積に対する自然の障壁と抵抗をもたらす。結果的に、ある種の治療介入はこの問題を克服することが必要であることを意味する。
AKITA(登録商標)ネブライジングシステムは最大約30mbarという穏やかな、又は抑制のきいた過圧下において、エアロゾルをそういった損傷を受けた肺に送り込む方法を備えている。この過圧が原因で、噴霧剤は穏やかに患者の肺に押し込まれ、まず下肺の中枢誘導気道に蓄積する。加えて、AKITA(登録商標)ネブライジングシステムは患者の呼吸パターンに影響を与える方法も備えており、それがメチルキサンチン/ステロイド混合物の患者の肺への送達の改善のもう1つの要因である。
従って、肺疾患治療に用いられる治療ネブライジングシステムはこれらの疾患の治療に影響を及ぼし得るすべての重要な要因に対応することが可能である。本システムは中央肺及び誘導肺を第一のターゲットとするエアロゾルを提供することにより、肺疾患患者の呼吸パターンをコントロールする条件下である穏やかな、又は抑制のきいた過圧下において、メチルキサンチン/ステロイド混合物の投与に影響を及ぼす。
治療ネブライジングシステムは電子式又はジェット式ネブライザー、コンプレッサ、患者の気流及び呼吸パターンをコントロールする電子コントロール手段、治療プロトコル、すなわち、緩やかでコントロールされた患者の呼吸パターン、空気又はエアロゾルのコントロールされた気流、ボーラス薬の送達、そして30mbarもしくはより低いコントロール条件の過圧下で、約60〜70%の有効性をもつエアロゾルを主に誘導中枢気道への送達を備える前述の治療プロトコルを含む。
治療ネブライジングシステムはすべての利用可能な液体吸入薬に承認されている。個人用スマートカードを使うことで治療ネブライジングシステムの治療が患者の個別的要求に適応されることが保証される。中枢誘導気道には、蓄積、約3〜8μmというサイズの比較的小さな粒子、そして緩やかで深い吸入手順が用いられる。
治療ネブライジングシステムはコンプレッサユニット、ネブライザー、電子コントロール手段から成り、それらがともに設定されることによって肺疾患の吸入治療に非常に効果的な吸入システムが供給されている。
AKITA(登録商標)システムはなるべくAKITA(登録商標)2コンプレッサ及びAKITA(登録商標)1ジェット式、又はできることならAKITA(登録商標)2電子式ネブライザーを含むことが望ましい。AKITA(登録商標)2ネブライザーは3.0μmから8.0μmの空気動力学的中央粒子径と1.6のGSD(遺伝有意線量)を有する粒子を発生させることができる。
AKITA(登録商標)2ネブライザーは以下のパラメーター下で作用する:
騒音放射:<70dB(A)
作動電圧:230V±10%、50Hz、0.7A
吸引要因圧:−1.0〜−4.0mbar
吸入気流:50〜300ml/s、調整可能、スマートカード使用
気流パターン:定数吸気気流
ネブライザー圧:3mbar、調整可能、スマートカード使用
環境条件:5〜40℃
10〜95%相対湿度
600〜1100hPa気圧
エアロゾルの粒子サイズ
治療ネブライジングシステムは下肺内の損失及び中咽頭における混合薬の高損失を防ぐ下肺の中枢誘導気道内の均一な蓄積に最適な粒子サイズを有するエアロゾルを備える。
本システムは実質的に気管と気管支のサイズに対応するエアロゾル化された粒子サイズを有するエアロゾルを備えている。気管と気管支をターゲットとするのに正確な粒子サイズは3〜8ミクロンの間である。3μmよりも大きい粒子は選択的により中央に位置する肺と上肺、すなわち気管支と気管に蓄積されるが、そういった蓄積をコントロールしない場合、口や喉、すなわち口腔咽頭領域にも蓄積されることもある。ネブライジングシステムは呼吸パターンのコントロール、およびボーラスエアロゾル内の薬剤を送達することにより、口腔咽頭領域の薬剤の蓄積を制限する条件をもたらす。
結果的に、本方法はエアロゾルが2.5μm以下の幾何学的標準偏差(GSD)、望ましくは約1.6μmのGDSを有する3〜8μmサイズの粒子、すなわち空気動力学的粒子径に限定することを条件とする。
さらに、気管支および気管の収縮、気管壁の浮腫、痰、唾液、下肺の気管支収縮は気道内径の狭窄を引き起こし、結果的に吸入エアロゾルが、中枢誘導気道よりもむしろ、口腔咽頭領域に広く蓄積されることとなる。これはしばしば重度、あるいは病気の悪化時の肺疾患患者特許に見受けられ、その間は収縮、感染、炎症のため、しばしば気道閉塞が増えることとなる。結果的に、吸入治療を伴う肺疾患の治療は問題が起こる領域および治療が必要とされる領域のみをターゲットとすることを保証することが重要となってくる。
超過気圧下でのエアロゾルの送達
すでに上記で述べたように、エアロゾルによる強化されていないメチルキサンチン/ステロイド混合薬は薬剤の浪費と口腔咽頭領域への薬剤の蓄積と同種の送達の低効率という結果しか生まない。そういった強化は穏やかな、又は抑制のきいた超過気圧下におけるエアロゾルを含む薬剤の送達という即時治療によってもたらされる。この穏やかな超過気圧は呼吸機能障害を有する慢性閉塞性肺疾患患者(COPD)および他の肺疾患(重度の喘息や、嚢胞性線維症(CF)など)の患者に特に重要である。
本システムは30mbar以下の超過気圧下において、エアロゾルを含むメチルキサンチン/ステロイド混合薬を送達する方法を提供する。そういった穏やかなレベルから抑制のきいたレベル間の超過気圧によってエアロゾルは機能障害を有する場合においても、肺に何ら損害を及ぼすことなく活発に肺の中枢誘導気道に強制されることができる。
そういった超過気圧はAKITA(登録商標)ネブライザーに備えつけられているポンプ装置の有無にかかわらず、AKITA(登録商標)コンプレッサによって達成されるものであるが、そういった装置はさらに、超過気圧期間がメチルキサンチン/ステロイド混合薬エアロゾルが送り込むために、わずかな吸気時間任意にタイマーが備えつけられており、さらに治療ネブライジングシステムは気圧を30mbarで止める安全な手段を有している。
一実施形態では、超過気圧は患者の吸気時間呼吸から始まる。患者が超過気圧下で吸入する際、患者の呼吸努力は減少し、患者はより深く、ゆったりとした呼吸パターンで呼吸することができる。超過気圧を投与されない自発的な吸入と比べると、これは大きな違いである。超過気圧はプリセットであり、治療プロトコルに従って規制されている。
吸入の間、治療ネブライジングシステムはエアロゾルが投与される最高30mbarの超過気圧をもたらす。そのような超過気圧によって望ましいエアロゾル化薬剤の下肺末梢気道内の蓄積が可能となり、超過気圧が適用されないことを原因とする呼気間のエアロゾル除去をも防ぐことができる。このため、患者はいかなる気流や気圧を適用することなく、普通に息を吐くことができる。
ボーラス技術
治療ネブライジングシステムおよびその使用方法は一呼吸の2画分、すなわち空気時間と呼気時間への分離を定義するが、吸気時間の間、ボーラス技術はエアロゾルを含む薬剤をあらかじめ決定されていた領域、この場合、両肺の中枢誘導気道へ移送するために使われ、呼気時間の間は両肺から最小限の薬剤を吐き出す。
ボーラス技術のいくつかの実施形態では、吸気時間はさらに粒子自由大気がメチルキサンチン/ステロイド混合薬のエアロゾル送達の前後に送り込まれる副画分に分離されるかもしれない。
送達時間
本システムは両肺に蓄積された同種の薬剤量の送達時間を従来型のネブライザーよりもより短く提供する。典型的に、エアロゾル状態でのステロイドあるいはメチルキサンチンの個々の吸気送達は従来型のネブライザーでは少なくとも20分を要し、約5分の1ないし10分の1程度の量しか蓄積できない。現在の方法は両肺の蓄積をもたらし、さらにはエアロゾルを両肺に10分以下、可能ならば4分以内に、1回の治療につき、メチルキサンチン/ステロイド混合薬の4〜5倍以上の送達を可能にする。
吸入によって制限サイズを有するエアロゾルにメチルキサンチン/ステロイド混合薬を送達することは可能になるかもしれないが、ここで提供された発明に従って従来型のネブライザー、方法、装置およびプロトコルを用いることは、結果として患者の中枢誘導肺へのメチルキサンチン/ステロイド混合薬の送達および蓄積に関する非常に素晴らしい改善に繋がる。混合薬蓄積の効率は従来型のネブライザーで得られるそれの4〜5倍高いものである。
肺疾患治療に関する治療プロトコル
本発明に従い、肺疾患治療に関する実際の治療プロトコル(AKITA(登録商標)プロトコル)は踏まれるべきいくつかの手順から構成される。
AKITA(登録商標)プロトコルが治療に選ばれた場合、患者は以下に記載される治療ネブライジングシステムを提供される。
メチルキサンチン/ステロイド混合薬を含む既定量の約1〜5mlメチルキサンチン/ステロイド混合薬は既定範囲で充填される。例えば、2mlのメチルキサンチン/ステロイド混合薬は水性懸濁液の形態でネブライザーに充填される。
本ネブライザーはコンプレッサに接続された気圧センサーを備えるマウスピースに直接繋がれている。呼気期間(呼気時間)は患者に快適なパターン、例えば約1〜10秒、望ましくは3〜4秒という呼気時間にプリセットされている。呼気時間がプリセットされていない場合の患者自身の呼吸リズムが呼気時間をコントロールする。
患者がマウスピースから吸入する場合、気圧センサーが反応し、積極的な超過気圧を提供、または吸気バルブを開くことによって吸入を開始する。本ネブライザーは、あるいはエアロゾルシステムは、最大30mbarという圧縮空気超過気圧が搭載されており、メチルキサンチン/ステロイド混合薬はエアロゾル化され、50〜300ml/sというあらかじめ選択された気流値、あらかじめ選択された超過気圧でエアロゾルとして排出される。超過気圧は吸気時間全体の間持続する。吸気時間がある決められた時間として選択されていた場合、圧縮空気供給が吸気時間の終了時に阻止されるため、超過気圧はその決められた時間の終わりに自動的に停止あるいはスイッチが切れる。
呼気に割り当てられた時間の後、吸気期間全体の間、さらに言えば6分以内の間、本プロセスはオンとオフを繰り返す。吸気時間の間、全処置量は望ましいことにネブライザー内のごく少量の残留物とともにエアロゾル化される。
ネブライザーシステムに搭載されうる電子設備は吸気プロセスを記録し、治療のさらなる最適化のため、処方量、時間、気流および超過気圧に関するすべての記録を保存することができる。
この送達方法が選ばれた場合、吸気時間の間、エアロゾル化されたメチルキサンチン/ステロイド混合薬は超過気圧下において下肺の末梢気道に強制される。超過気圧が引き下げられ、患者が息を吐く際には、中枢肺に強制された薬剤は容易に置換されず、そこに留まり、結果、両肺の中枢誘導気道内において、超過気圧なしの標準呼吸パターンの際に発生するよりかなり高いメチルキサンチン/ステロイド混合薬の蓄積物とより強い抗炎症作用をもたらす。
呼気時間の間、吐き出されたメチルキサンチン/ステロイド混合薬の少量は吸気時間のまさに最後の瞬間に上肺にあったものである。口腔咽頭領域に蓄積されうるメチルキサンチン/ステロイド混合薬もわずかにあるが、本薬剤の大部分は口の外に排出される。
呼吸作動治療プロトコル
慢性閉塞性肺疾患(COPD)(およびその他の肺疾患)の第2の治療方法は患者の呼吸によって作動するネブライジングシステムの利用および呼吸作動ネブライザーを含むものである。
本ネブライザーは本装置のエアロゾル化パラメーターを規制し、3極吸気時間送達を設定することにより、エアロゾル化された粒子を肺の特定領域に蓄積させることが可能である。
呼吸作動ネブライザーシステムを利用し、上記で述べた既定量のメチルキサンチン/ステロイド混合薬はマウスピースと肺活量計を含むネブライザーに接続された薬剤カートリッジに充填される。
エアロゾル化された粒子の所定量は患者が吸入する際の流路に送達される。吸気時間は3つの既定期間を含むようプリセットされている。
第1の既定時間はエアロゾル化された粒子の自由大気をプリセットされた流路で両肺に送達するためにある。
第2の既定時間は既定量のメチルキサンチン/ステロイド混合薬のエアロゾル化された粒子をプリセットされた流路で送達するためにある。
第3の既定時間は粒子自由大気の第2の既定時間を送達するためにある。
任意で、第1の時間は0秒に設定することができるが、これは粒子自由大気の送達なく、すぐにエアロゾル化が始まることを意味する。
吸気の間、患者は吸入を始めるよう指示され、各吸気時間の間、3つの(あるいは2つの)既定時間が繰り返される。第2の粒子大気時間が終了する際、すなわち第2の既定時間の後、患者は吸入を止め、息を吐き出すよう指示される。プリセットされた流路の範囲内の流路で両肺へエアロゾル化された粒子の自由大気を送達する第2の既定時間が設定される理由は、エアロゾル化された粒子を上気道領域の外へ排出するためである。その方法で、上気道領域(口、喉、中咽頭、咽頭)が残っているエアロゾル粒子から排出され、当該領域内の薬剤の蓄積が減少する。これは口腔咽頭の蓄積、苦味、咳、気管支けいれんを減少するだろう。
加えて、この方法は流路を通じて被験者が息を吸う際の検出手順を含み、さらには第1、第2、第3の既定時間と患者の健康パラメーターに対するエアロゾル化された粒子の既定量の両方、またはいずれか一方の測定および適応手順をも含みうる。
この方法は第1の粒子自由大気の投与、エアロゾル化された吸入可能なメチルキサンチン/ステロイド混合薬の投与、および第2の粒子自由大気の投与のための最適な時間間隔を決定するが、そこではこれら3種の時間間隔の累積時間が1つの吸気時間に対応する。それぞれの時間間隔は約1ミリ秒〜10秒、望ましくは約200ミリ秒〜5秒に相当し、それぞれの間隔と同じ、あるいは異なりうる。
流路は既定かつ一定の流路であり、第1の既定粒子自由大気量は最高約0.15リットル、既定のエアロゾル化された粒子量は最高約3リットルであり、第2の既定粒子自由大気量は最高約0.5リットルである。
この方法で用いられるネブライザーは被験者が流路を通じて吸入する時を検知し、エアロゾル化された粒子の自由大気の第2の既定時間を終了した後の流路を流れる気流を防ぐための設備が備わっている。
装置とその特質
この発明を実践するのに適している装置は本発明に従い、中枢誘導気道に吸入可能なメチルキサンチン/ステロイド混合薬を送達する基準に見合う特質を有する必要がある。
テオフィリンやアミノフィリンといったメチルキサンチンのエアロゾル化は問題であり、従来型のネブライザーで送達される場合、通常は咳や気管支けいれん(胸部, 40: 176-179 1985)を引き起こす。網状ネブライザーの振動を利用し、単分散粒子サイズを生成し、そして特定の気流コントロールとともに患者の呼吸パターンをコントロールする新しいアプローチのみが十分なメチルキサンチン量を肺に蓄積させることが可能である。
幾何学標準偏差(GSD)である1.6〜2μmの単分散粒子サイズはAKITA(登録商標)1および2によって達成される気流コントロールを併用しながら網状ネブライザーの振動を利用することによって達成できる。それらが組み合わさり、単分散粒子スペクトラムはコントロールされた気流とともに、メチルキサンチン吸入による問題の多い口腔咽頭副作用を克服するものである。
加えて、本発明を実践するのにふさわしいこの装置は吸入段階の間患者の呼吸パターンをコントロールするコンプレッサ駆動型のジェット式ネブライザーを含む吸入システムである。このシステムは下肺へのエアロゾルの蓄積を必要とする吸入治療に非常に効果が高い。吸入の間、本システムは呼吸数、流路および吸入量をコントロールする。これら3つのパラメーターをコントロールする能力は患者が適切な処方量を与えられることを保証する。
例えばFox−POP(登録商標、商標)、Medspray(商標)、Telemag(商標)などの装置はドイツ国Gemunden(Wohra)Activaero GmbHから市販可能、近い将来市販可能予定、または現在開発中の手持ち可能なネブライザーである。Fox−POP手持ちミニネブライザーは、米国特許仮出願シリアル番号第12/183747号(2008年7月31日出願)商標番号第2009/0056708号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されている。その他の適切なミニ装置は国際公開第2006/094796号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されているMedsprayである。
呼吸パターンコントロール装置
本発明を実践するのにふさわしいこの装置は吸入段階の間患者の呼吸パターンをコントロールするコンプレッサ駆動型のジェット式ネブライザーを含む吸入システムである。このシステムは下肺へのエアロゾルの蓄積を必要とする吸入治療に非常に効果が高い。吸入の間、本システムは呼吸数、流路および吸入量をコントロールする。これら3つのパラメーターをコントロールする能力は患者が適切な処方量を与えられることを保証する。
本システムはさらに治療プロトコルをパーソナライズ化するための電子手段を含む。治療プロトコルは個人の肺機能測定、最適呼吸パターン、患者の肺活量(VC)を維持ならびに回復させるのに望ましい薬剤処方量、呼気安静量(ERV)、および1秒間呼気努力容量(FEV1)などのパラメーターを含む。これらのパラメーターは個人化され、スマートカードと呼ばれる個人の電子記録に保存される。当該電子記録は治療プロトコルの情報を保存し、治療の間、本システムにその情報を転送するだけでなく、個人の治療情報を記録、保存し、可能性のあるエラーを指摘する。
スマートカードシステムは1つ以上の治療形態を保有することができ、完全に暗号化される。スマートカードシステムは米国特許同時係属出願番号第2001/0037806A1号(2001年11月8日出願)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で開示されている。同種のネブライジングシステムは米国特許番号第6,606,989号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)にて開示されており、AKITA(登録商標)吸入システムという商標名でドイツ国Gemunden(Wohra)Activaero GmbHから市販されている。
さらに、同種で吸入システムのために改良された装置はコアエレメントとして圧電物質アクチュエータによって振動するよう設定されうる円形の穴が開いた膜を含む。膜の振動動作は膜内のマイクロアレイの穿孔にネブライジング溶液を送り込む代替圧を発生させ、既定の粒子サイズを有する微細なエアロゾルを作り出す。同様に、このシステムは上記で述べたようにスマートカードを含む電子手段を備えている。このシステムはAKITA2 APIXNEB吸入システムという商標名でドイツ国Gemunden(Wohra)Activaero GmbHより市販されている。
現在の発明を実践するのに用いることのできる吸入システムの開慮を含むもう1つの装置に圧力センサーによって検出された陰圧トリガー信号によって作動されるネブライザーがある。このネブライザーは吸入の間毎秒12リットルの不変の吸入流路を備えるコンプレッサを含み、コントロールされた気流、量、および噴霧タイミングを有する。スマートカード設定は吸入量、呼吸ごとの吸入時間、1呼吸における噴霧時間を含む。このシステムはAKITAジェット吸入システムの商標名でドイツ国Gemunden(Wohra)Activaero GmbHより市販されている。
その他、現在の発明により快適に使用可能、あるいは使用のため改良された吸入装置およびシステムは米国特許番号第6401710B1号、第6463929B1号、第6571791B2号、第6681762B1号、 および第7077125B2号、または出願番号第2006/0201499号ならびに第2007/0006883号に開示されている(これらはすべてその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
呼吸作動ネブライザー装置
もう1つの現在の発明を実践するのに適切な装置に呼吸作動ネブライザーがある。このネブライザーは受動気流と能動的な量コントロールに特徴づけられ、通常、使いきりのエアロゾル発生器および多様コントロール装置を含む。
この装置は制御装置に接続されている吸入器から構成されている。吸入器そのものはネブライザーに接続されているが、そのネブライザー内では、エアロゾル発生器を使用して、テオフィリンやアミノフィリンといった吸入可能なメチルキサンチンがステロイドと混合して主に約3〜8μmの範囲内のサイズを有する既定の粒子、すなわち空気動力学的中央粒子径(MMAD)に噴霧される。本ネブライザーの充填量は正確に2〜4ミリリットルである。エアロゾル発生器は圧力検出により作動され、患者がエアロゾル化された見チルキサンチン/ステロイド混合薬を吸入する吸入段階の間にのみ作動する。圧力検出は電子コントロールされている。
さらにこの装置はそれぞれあらかじめ選択された時間と量で粒子自由大気の投与、エアロゾル化された吸入可能なメチルキサンチン/ステロイド混合薬の投与、粒子自由大気の第2投与を許可する手段を備えており、これら3つの時間間隔の累積時間が1回の吸入時間に対応している。各間隔の時間は約1ミリ秒から10秒の間、望ましくは約200ミリ秒から5秒の間に対応している。
吸入器は約10mbar以下の圧力で毎秒15リットルの平均気流および量を有する。マウスピースの圧力が5mbarより下の場合、流路は機械弁により制限される。機械弁はその断面積を調整することによって流路を制限する。制限装置は1回の呼吸における量にプリセットされている。1回の呼吸は1回の吸気と呼気発生する時間に設定されている。各吸気時間の後、吸気流は阻止され呼気が許可される。吸気流は次の呼吸の間の次の吸気時間のため再び回復される。
この装置は事前プログラミングおよび個別の喘息患者の要望に応えることのできる個人化が可能な多種多様の電気部品を有する。
この利用のため改良された装置及び方法は米国特許仮出願シリアル番号第12/204037号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
肺疾患治療の利点
慢性肺疾患、喘息、嚢胞性線維症、および特発性肺線維症などの肺疾患の治療法は、現在の発明に従い、現在利用可能な治療に優る利点がいくつかある。
現在の発明に従って行われる肺疾患治療法は現在利用可能な従来型の治療と比べ、混合薬送達の効果における実質的改善を提供する。1つ目は1つのエアロゾル化における2種類の薬剤の混合物を送達することによるものである。2つ目はより短い噴霧時間で患者の肺にこの混合薬の4倍から5倍の量を送達することによるものであり、3つ目はこれら2つの肺への送達によってあらかじめ観察されていた第二の副作用を除外することによってである。
現在の発明に従って行われる肺疾患治療法は、口腔咽頭副作用の同時還元とともに、緩やかで規制された呼吸パターンのため、狙いを定めた気道へ狙いを定め、選択された混合薬のエアロゾル化粒子を蓄積させることによって、患者の肺の中枢誘導気道にメチルキサンチン/ステロイド混合薬の高処方量の蓄積を可能とする。
さらに本治療法は口腔咽頭内、咽頭内、そして口内の薬剤の高損失を防ぐ肺の中枢誘導気道への薬剤の均質な送達を可能とする。さらに、治療法は以前従来型のネブライザー(例えば、パリ社製ジェット式ネブライザーなど)で見受けられたような蓄積のばらつきを減らす。
現在の発明に従って行われる肺疾患治療法は望ましいエアロゾル薬剤を肺の中枢誘導気道へ蓄積させることを可能とし、呼気段階でエアロゾルを吐き出すことを防ぐために、吸入間に穏やかな、又は抑制のきいた超過気圧下でエアロゾルの投与を提供する。
2つの薬剤又はプロドラッグの混合物はメチルキサンチン及びステロイドの薬理学的特性を隠すものであり、それゆえ咳、気管支けいれん、発声困難、および口腔咽頭腔におけるその他の副作用を完全になくす、または大幅に減らすことが可能である。混合物もまた、メチルキサンチン活性を隠し、全身性心臓血管副作用及び中枢神経副作用が起こる可能性を最小化する。
効用
本発明の化合物は肺炎及び気管支収縮作用に有用である。これらの治療の目的は肺疾患を発達させるステロイド耐性を克服することにある。吸入ステロイドはすべての肺疾患での治療において、喘息の治療で用いられる場合と同程度有用というわけではない。その結果、ステロイド耐性のテオフィリンやその他のメチルキサンチンの逆進効果は肺に直接作用される必要がある。
メチルキサンチン/ステロイド混合薬、部分的にテオフィリンは、どちらも従来よりもはるかに低い濃度で、肺疾患で見受けられるステロイド治療への耐性を克服する方法を提供する。このメチルキサンチン/ステロイド混合薬の低容量高濃度エアロゾル処方又はそのプロドラッグはエアロゾルとして、また、効果的な濃度で重軽度の慢性閉塞性肺疾患、喫煙中の喘息、慢性気管支炎、嚢胞性肺線維症、特発性肺線維症で苦しむ患者の気道に送達される。メチルキサンチン/ステロイド混合薬は、安定しており、容易に生産可能で商品流通上適当な保存期間を有し、かつ費用対効果の高い固体製剤として有利に処方されるかもしれない。
実例1
慢性閉塞性肺疾患患者の治療に用いられる吸入のためのテオフィリン/フルチカゾン混合薬
この実例は慢性閉塞性肺疾患患者のため、吸入テオフィリン(7.5mg/ml、2ml、フルチカゾン500μgを1日につき2回)、2ml中フルチカゾン単体500μg、及び1日2回のプラシーボの臨床比較試験を述べるものである。臨床試験は慢性閉塞性肺疾患患者の二重盲検3群プラシーボ抑制対照試験である。
臨床試験のため、吸入テオフィリン(7.5mg/ml、フルチカゾン500μg、2ml)、フルチカゾン単体500μg、プラシーボ(等張食塩水2ml)は気流コントロール機能を持つAKITA−FOX電子式ネブライザーを経由して送達される。すべての吸入治療は1日2回(BID)投与される。
GOLD試験対象患者基準(1秒間努力呼気容量40〜80%の18〜65才の男女同数)を登録、ランダムに3つのグループに分けられ、4週間2回の処方を受けた。個々の2ml処方量はすべて3〜4分間の治療時間の間に投与された。
気道刺激及び急性気管支けいれんは第1回の処方でエアロゾル投与終了30分前に即時肺活量測定を行うことによって評価される。30分肺活量テストにおける1秒間努力呼気容量(FEV1)が20%以下に減少することは気管支けいれんの証拠であると考えられる。すべての患者が14日間及び28日間1秒間努力呼気容量試験、6分間の散歩、QOL質問票(Quality of Life Questionnaire, St. George’s Questionnaire)を受けた。
安全性エンドポイントは1秒間努力呼気容量、テオフィリンの全身性(血流)レベル並びに尿レベル、味、胃腸症状、その他の有害事象である。
有効性エンドポイントは肺機能(1秒間努力呼気容量)であり、14日間ないし28日間の第1処方時の2時間で測定される。そして、呼気に基準値に比べて増加率として表れた変化は見受けられなかった。6分間の散歩試験及び1秒間努力呼気容量の小さな変化はプラシーボ(第1の有効性解析)に比較されるテオフィリン/フルチカゾン混合薬とプラシーボに比較されるフルチカゾン単体の間に比較される。
実例2
メチルキサンチン/ステロイド混合薬の吸入
メチルキサンチン/ステロイド混合薬は実例1に従って用意される。AKITA(登録商標)ネブライザー(AKITA−FOX装置)は気流コントロール装置又は刺激応答装置に接続されている。この発明の要求を満たす場合、他のネブライザーが代用される場合もある。不変かつばらつきの少ない蓄積性のため、AKITA−FOX装置が望ましい。
メチルキサンチン/ステロイド混合薬又はメチルキサンチン/ステロイド混合プロドラッグはいわゆるネブライザー及び緩やかな呼吸パターン並びに混合薬のボーラス投与を可能とする吸入プロトコルを用いて吸入される。製剤から肺へ放出されるメチルキサンチン及びステロイドの量は既定である。

Claims (22)

  1. 肺疾患を治療するための方法であって、
    メチルキサンチンと局所ステロイドの混合物、メチルキサンチンプロドラッグとステロイドの混合物又はメチルキサンチンのみから構成される懸濁液を作成するステップであって、該懸濁液は約1〜3mLの溶剤に溶解された約0.1mg〜2mgの上記ステロイドと約25〜50mgの上記メチルキサンチンから構成されることを特徴とするステップと、
    上記懸濁液を約3〜8μmMMADの粒子サイズを有するエアロゾルにエアロゾル化するステップと、
    上記エアロゾルを、患者の気流及び呼吸パターン並びに治療プロトコルに基づくエアロゾルのボーラス投与を制御するための電子式又はジェット式ネブライザー、コンプレッサ及び電子的制御手段からなるネブライジングシステムを用いて必要な患者に投与するステップであって、上記治療プロトコルは患者の緩やかで制御された呼吸パターン、空気又はエアロゾルの制御された気流、ボーラス薬剤投与及び約60〜70%の有効率をもって30mbar又はそれ以下の超過気圧で主に誘導及び中枢気道への上記エアロゾルの制御された状態での投与を規定することを特徴とするステップと、
    上記薬剤混合物を、上記プロトコルに基づいて、上記エアロゾルが少なくとも60%の有効率をもって誘導及び中枢気道へ沈着するように主に患者の誘導及び中枢気道に投与するステップからなり、
    上記治療により、FEV1で測定される肺機能が改善し、口腔咽頭への沈着が減少し、メチルキサンチン又はステロイドの副作用が減少することを特徴とする方法。
  2. 上記肺疾患とは、慢性閉塞性肺疾患、喘息、ステロイド依存性喘息、喫煙者又は副流煙にさらされた対象における喘息、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、肺動脈高血圧症であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 上記メチルキサンチンはテオフィリン、アミノフィリン、エンプロフィリン、ペントキシフィリン、ジプロフィリン及びホスホジエステラーゼ阻害剤からなるグループから選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 上記ステロイドはプレドニゾン、フルチカゾン、ベクロメタゾン、ブデソニド、モメタゾン及びシクレソニドからなるグループから選択されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 上記混合物は、約0.1〜2mgの上記ステロイドと約25〜50mgの上記メチルキサンチンが混合され約1〜3mLの溶剤に溶解されてなり、各治療につき少なくとも0.1mgのステロイドと2〜15mgのメチルキサンチンからなる少なくとも1mLの上記溶剤は誘導肺及び中央肺に沈着することを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 上記ネブライザーはジェット式ネブライジング装置であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  7. 上記ネブライザーは電子式ネブライザーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  8. 上記電子式ネブライザーは振動メッシュ又は振動膜からさらに構成されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
  9. 上記治療は15分以内に行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  10. 上記粒子の少なくとも90%は3〜8μmのMMAD及び1.6〜2.25のGDSを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  11. 上記エアロゾルは、約10〜20mbar以下の超過気圧が加えられ、エアロゾルボーラス送達を伴った緩やかな吸入呼吸パターンからな制御された状態で、主に誘導及び中枢気道に投与され、上記送達によって少なくとも1mlのエアロゾル化された懸濁液が沈着することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  12. 上記メチルキサンチンはテオフィリンであって、テオフィリンの名目投与量は約3〜50mgであって、少なくとも0.1mgの上記ステロイドと少なくとも2mgの上記テオフィリンは誘導及び中枢気道に沈着することを特徴とする請求項11に記載の方法。
  13. 上記治療は1日に1回又は2回行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 上記治療は4〜10分の間に行われることを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 上記エアロゾルは3つの所定期間からなる吸気時間中に投与されることを特徴とする請求項14に記載の方法であって、
    約1ミリ秒〜1秒間継続する第1期では、エアロゾル化された無粒子空気があらかじめ設定された流速及び流量で投与され、
    約0.1〜7秒間継続する第2期では、エアロゾル化された薬剤混合物があらかじめ設定された流速及び流量で投与され、
    約1ミリ秒〜10秒間継続する第3期では、エアロゾル化された無粒子空気かあらかじめ設定された流速及び流量で投与され、
    第3期が終わると患者は吸入を止めて息を吐出するよう指示され、
    上記プロトコルは、約4〜15分間繰り返されることを特徴とする方法。
  16. 上記あらかじめ設定された流速及び流量は吸気的な流速及び流量であって、20リットル/分と同じかそれ以下であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
  17. 上記第1期に投与される上記エアロゾル化された無粒子空気は、約0.5秒で150ml以下のあらかじめ設定された流量で投与されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
  18. 上記第2期に投与されるエアロゾルは、約200〜2000mlの流量で、又は約1〜7秒間のあらかじめ設定された時間で投与されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
  19. 上記第3期に投与される無粒子空気は、約0.3〜3秒間で約200〜500mlのあらかじめ設定された流量で投与されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
  20. 上記吸気時間とそれを構成する3つの所定期間に投与される上記エアロゾルは。呼吸で作動するネブライザーによって生成されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
  21. 上記ネブライザーは手持ち式のネブライザーであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  22. 上記薬剤混合物はメチルキサンチンプロドラッグからなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
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