JP2012503491A - プロバイオティック酵母を操作するための組成物および方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示するようプロバイオティック酵母を操作するための組成物および方法、ならびに感染の防止または処置におけるその使用を提供する。
Description
発明の分野
本発明は、病原体の上皮への付着の阻害を通して感染を防止するプロバイオティック酵母を操作するための組成物および方法を提供する。
本発明は、病原体の上皮への付着の阻害を通して感染を防止するプロバイオティック酵母を操作するための組成物および方法を提供する。
発明の背景
世界的に、伝染性下痢は、5歳未満の子供の全死亡率のおよそ20%の原因となっており、年間250万人と推定される死亡の原因となっている。米国においては、感染性下痢は、2億例を超える年間罹患率を有し、毎年およそ900,000人の入院および5,000人の死亡の原因となっている。これらの数字には、各年、米国内で活動性下痢性疾患で入院する5歳未満の子供200,000人が含まれており、これは、ほぼ880,000日という入院日数、500人を超える死亡、およびほぼ10億ドルの入院費の理由となっている。
世界的に、伝染性下痢は、5歳未満の子供の全死亡率のおよそ20%の原因となっており、年間250万人と推定される死亡の原因となっている。米国においては、感染性下痢は、2億例を超える年間罹患率を有し、毎年およそ900,000人の入院および5,000人の死亡の原因となっている。これらの数字には、各年、米国内で活動性下痢性疾患で入院する5歳未満の子供200,000人が含まれており、これは、ほぼ880,000日という入院日数、500人を超える死亡、およびほぼ10億ドルの入院費の理由となっている。
本発明は、胃腸管における病原性生物の付着またはコロニー形成を減少させることにより、腸の健康を促進するプロバイオティック製剤として、細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを産生するよう操作された酵母細胞を含む組成物を提供する。任意の食用酵母細胞がグリカンの発現のための適当な宿主である。好ましくは、酵母細胞の属はクルイベロミセス(Kluyveromyces)である。その他の属の酵母も使用され得るが、クルイベロミセス・ラクチス(lactis)は、ヒト消化管に見出される条件に対して抵抗性であり、プロバイオティック適用に特に好適であり得る。例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)酵母細胞が、酵母細胞の細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示するために使用される。一例として、製剤は、ラクトバチルス(Lactobacilli)のようなプロバイオティック細菌も含有する;あるいは、製剤は細菌性のプロバイオティック株を含まない。
操作された酵母細胞は、GDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GMD)をコードする外来性(組換え)核酸分子、およびGDP-L-フコースシンセターゼ(GFS)をコードする外来性(組換え)核酸分子を保持している。一つの局面において、GMDは、H.ピロリ(H.pylori)GMD、大腸菌(E.coli)GMD、およびホモ・サピエンス(Homo sapiens)GMDからなる群より選択され、GFSは、H.ピロリGFS、大腸菌GFS、およびホモ・サピエンスGFSからなる群より選択される。任意で、組成物は、GDP-マンノースピロホスホリラーゼ(例えば、K.ラクチスPSA1)をコードし、この酵素の増加した発現を指図する組換え核酸構築物をさらに含む。さらに、組成物は、ホスホマンノースイソメラーゼ(例えば、K.ラクチス遺伝子座KLLA0D13728g、PMI)および/またはホスホマンノースムターゼ(例えば、K.ラクチスSEC53、PMM)をコードして、これらの酵素の増加した発現をもたらす組換え核酸構築物を任意で含んでいてもよい。組成物は、ホスホマンノースイソメラーゼをコードする核酸および/またはホスホマンノースムターゼをコードする核酸分子を任意で含む。
本発明は、(細胞質で合成された適切な前駆体分子が、細胞表面グリカンへの取り込みのため、ゴルジにおいて利用可能になることを確実にするため)ヌクレオチド糖トランスポーター(NST)をコードする核酸分子をさらに保持している酵母細胞も提供する。一つの局面において、NSTは、ヒトFUCT1(GDP-フコーストランスポーター)、マウスSLC35a2(UDP-ガラクトーストランスポーター)、ヒトUGT1(UDP-ガラクトーストランスポーター)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)GMS1(UDP-ガラクトーストランスポーター)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)HUT1(UDP-ガラクトーストランスポーター)からなる群より選択される。任意で、酵母細胞は内在性NSTを過剰発現する。
もう一つの局面において、酵母細胞は末端N-アセチルグルコサミン転移酵素活性またはUDP-N-アセチルグルコサミントランスポーター活性を欠く。好ましくは、酵母細胞は、GNT1(MNN2-1)(N-アセチルグルコサミン転移酵素)遺伝子またはMNN2(MNN2-2)(UDP-N-アセチルグルコサミントランスポーター)遺伝子に変異を保持しているクルイベロミセス・ラクチス酵母細胞である。
本発明は、α(1,2)ガラクトース転移酵素をコードする核酸分子をさらに保持している酵母細胞も提供する。任意で、α(1,2)ガラクトース転移酵素をコードする核酸分子は、シゾサッカロミセス・ポンベGMA12である。
もう一つの局面において、酵母細胞は、β(1,3)ガラクトース転移酵素をコードする核酸分子をさらに保持している。任意で、β(1,3)ガラクトース転移酵素をコードする核酸分子は、シゾサッカロミセス・ポンベPVG3である。
本発明は、フコシル基転移酵素をコードする組換え核酸分子をさらに保持している酵母細胞も提供する。好ましくは、フコシル基転移酵素は、ヒトα(1,2)フコシル基転移酵素(FUT1またはFUT2)である。
好ましくは、酵母細胞は、細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示する。より好ましくは、酵母細胞はクルイベロミセス・ラクチス酵母細胞である。
本発明は、コードされたGDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼおよびコードされたGDP-L-フコースシンセターゼが発現される条件下で、GDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GMD)をコードする組換え核酸分子およびGDP-L-フコースシンセターゼ(GFS)をコードする組換え核酸分子を保持している酵母を培養する工程を含む、GDP-フコースを含有している酵母を作製する方法を提供する。
コードされたヌクレオチド糖トランスポーターが発現される条件下で、ヌクレオチド糖トランスポーターをコードする核酸分子をさらに保持している酵母を培養する工程を含む、GDP-フコースおよびUDP-ガラクトースの両方をゴルジに移入する能力を有する酵母を作製する方法も提供される。
本発明は、クルイベロミセス・ラクチス酵母細胞mnn2-1変異またはmnn2-2変異を、ヌクレオチド糖トランスポーターをコードする核酸分子をさらに保持している酵母細胞へ導入する工程を含む、末端α(1,2)GlcNAcマンナンを欠く酵母を作製する方法も提供する。
コードされたα(1,2)糖転移酵素が発現される条件下で、α(1,2)ガラクトース転移酵素をコードする核酸分子をさらに保持している酵母を培養する工程を含む、表面ポリマンノース上にα(1,2)ガラクトース残基を有する酵母を作製する方法も提供される。
本発明は、β(1,3)糖転移酵素が発現される条件下で、β(1,3)ガラクトース転移酵素をコードする核酸分子をさらに保持している酵母を培養する工程を含む、表面α(1,2)ガラクトース残基に連結されたβ(1,3)ガラクトースを有する酵母を作製する方法も提供する。
細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを有する酵母を作製する方法は、フコシル基転移酵素が発現される条件下で、フコシル基転移酵素をコードする核酸分子をさらに保持している酵母を培養することにより実施される。
本発明は、細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示する酵母細胞を対象へ投与する工程を含む、哺乳動物対象(ヒトまたは動物)における感染を防止するか、感染を処置するか、感染を低下させるか、または感染を発症するリスクを低下させる方法も提供する。対象は、フコシル化グリカンに結合する病原体に感染しているか、または感染するリスクを有する。グリカンは、対象の細胞への病原体の結合を阻害するかまたは低下させ、それにより感染を低下させる。一つの局面において、感染は、ノーウォーク(Norwalk)様ウイルスのようなノロウイルス、またはカンピロバクター(Campylobacter)(例えば、C.ジェジュニ(jejuni))、エスケリキア(Escherichia)(例えば、大腸菌)、サルモネラ(Salmonella)(例えば、S.エンテリカ(enterica))、ビブリオ(Vibrio)(例えば、コレラ菌(V.cholerae))、またはヘリコバクター(例えば、H.ピロリ)を含むが、これらに限定されない属の細菌株により引き起こされる。治療用組成物は、ヒトのために有用であるのみならず、ブタ、ウマ、ニワトリ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、またはネコのような家畜またはペットにおける病原体の結合および感染を防止しかつ/または阻害するための予防的または治療的な介入のためにも有用である。製剤は、野生動物および飼育動物への投与に適している。
任意で、本発明は、ベクター、例えば、核酸を含有しているベクターを特色とする。ベクターは、一つまたは複数の調節要素、例えば、異種プロモーター、または酵母における翻訳のために必要とされる要素をさらに含むことができる。調節要素は、融合タンパク質を発現させるために融合タンパク質に機能的に連結され得る。さらにもう一つの局面において、本発明は、上記の核酸分子またはベクターを含有している単離された組換え細胞、例えば、酵母細胞を特色とする。核酸配列は、任意で、ゲノムへ組み込まれる。例示的なK.ラクチス発現ベクターの配列を以下に提供する;ベクターは、強力なプロモーター活性を保有する二つのK.ラクチスプロモーター配列「s2」および「s3」を発現プラスミド内に含んでいる。
「精製されたタンパク質」とは、それが天然に関連している他のタンパク質、脂質、および核酸から分離されているタンパク質をさす。好ましくは、タンパク質は、乾燥重量で、精製された調製物の少なくとも10%、20%、50%、70%、80%、90%、95%、99〜100%を構成する。
「単離された核酸」とは、その構造が、天然に存在する核酸のものと同一でないか、または三つを超える別々の遺伝子にかかる天然に存在するゲノム核酸の断片のものと同一でない核酸である。その用語は、例えば、(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部であるが、それが天然に存在する生物のゲノムにおいて分子のその一部に隣接している核酸配列の両方が隣接していないDNA;(b)得られる分子が、天然に存在するベクターまたはゲノムDNAと同一でないような様式で、ベクターまたは原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに取り込まれた核酸;(c)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により作製された断片、または制限断片のような別々の分子;および(d)ハイブリッド遺伝子、即ち、融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列:をカバーする。本発明に係る単離された核酸分子には、さらに、合成的に作製された分子が含まれ、化学的に改変されかつ/または修飾された骨格を有する核酸も含まれる。
「核酸分子」という語句は、主として、物理的な核酸分子をさし、「核酸配列」という語句は、ヌクレオチド、核酸分子の配列をさすが、これらの二つの語句は交換可能に使用され得る。
所定のポリペプチドに関して「実質的に純粋な」という用語は、ポリペプチドが、他の生物学的高分子を実質的に含まないことを意味する。実質的に純粋なポリペプチドは、乾燥重量で、少なくとも75%(例えば、少なくとも80%、85%、95%、または99%)純粋である。純度は、適切な標準的な方法、例えば、カラムクロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析により測定され得る。
「異種プロモーター」とは、核酸配列に機能的に連結される場合、その核酸配列に天然には関連していないプロモーターをさす。
「発現する」および「過剰発現する」という用語は、いくつかの場合、本明細書中の方法において有用な細胞が、産生するよう遺伝学的に改変される因子を、ある程度、固有に発現し得るという事実を意味するために使用され、その場合、ポリヌクレオチド配列の付加は、因子の過剰発現をもたらす。即ち、同一条件下で野生型細胞によって発現されるより多くの因子が、改変された細胞によって発現される。同様に、細胞が、産生するよう遺伝学的に改変される因子を固有に発現しない場合、野生型細胞はその因子を全く発現していなかったため、使用される用語は、因子を単に「発現する」であろう。
α(1,2)フコシル化グリカンを細胞表面上に提示する操作された酵母細胞は、(これらのグリカンの提示は多価であるため)アビディティ効果により、強力な病原体吸着剤である。操作された酵母は、生酵母または不活化(例えば、乾燥)酵母のいずれかとして、栄養補助食品として提供される。生成物は、ヨーグルトおよびケフィアのような食品、もしくは離乳食に添加されるか、または加熱調理済み食品を含む多様なその他の調理済み食品に含まれる。動物健康適用においては、例えば、乾製生成物が、例えば、粗びきの穀物(例えば、イヌ用)またはペレット(例えば、ニワトリ、ウマ、ウシ用)の形態で、既存の乾燥飼料と混和される。動物飼料の場合、酵母細胞は、野菜もしくは肉(例えば、ドッグフード用)、またはトウモロコシおよび/もしくは乾草、大豆、オートミール、小麦、もしくはその他の穀粒(例えば、家畜用)と組み合わせられる。
本発明のその他の特色および利点は、以下の好ましい態様の説明、および特許請求の範囲から明白になるであろう。本明細書に引用された全ての参照が、参照により本明細書に組み入れられる。
発明の詳細な説明
病原体の宿主細胞への付着は、感染における不可避の最初の工程であり、特異的な分子間相互作用により媒介される場合が多い。例えば、ヒト感染性下痢の細菌性およびウイルス性の主因であるカンピロバクター種およびノーウォークウイルスは、両方とも、腸細胞の表面上で同化される特異的な糖(即ち、α(1,2)フコシル化グリカン)との結合を通して、消化管上皮表面に付着する。これらの同一のα(1,2)フコシル化グリカンは、ヒト母乳中にも可溶型で見出され、最近の研究は、母親から新生児に天然に提供されるこれらの分子の、消化管感染からの乳児の防御における重大な役割を証明した。例えば、以下のような乳児においては、消化管感染を発症するリスクがはるかに高い:(1)母乳中に見出される防御因子が、子供の食事から低下するかまたは除去される、離乳期の子供、または(2)乳児がα(1,2)フコシル化グリカンを含有していない従来の調整粉乳で育てられる場合、または(3)十分なα(1,2)フコシル化グリカンを乳中に提供することが遺伝的にできない母親の乳児。
病原体の宿主細胞への付着は、感染における不可避の最初の工程であり、特異的な分子間相互作用により媒介される場合が多い。例えば、ヒト感染性下痢の細菌性およびウイルス性の主因であるカンピロバクター種およびノーウォークウイルスは、両方とも、腸細胞の表面上で同化される特異的な糖(即ち、α(1,2)フコシル化グリカン)との結合を通して、消化管上皮表面に付着する。これらの同一のα(1,2)フコシル化グリカンは、ヒト母乳中にも可溶型で見出され、最近の研究は、母親から新生児に天然に提供されるこれらの分子の、消化管感染からの乳児の防御における重大な役割を証明した。例えば、以下のような乳児においては、消化管感染を発症するリスクがはるかに高い:(1)母乳中に見出される防御因子が、子供の食事から低下するかまたは除去される、離乳期の子供、または(2)乳児がα(1,2)フコシル化グリカンを含有していない従来の調整粉乳で育てられる場合、または(3)十分なα(1,2)フコシル化グリカンを乳中に提供することが遺伝的にできない母親の乳児。
ヒト母乳中に豊富に存在するα(1,2)フコシル化グリカンは、インビトロおよびインビボの両方で、(ノーウォーク様ウイルス、またはカンピロバクター(例えば、C.ジェジュニ)、エスケリキア(例えば、大腸菌)、サルモネラ(例えば、S.エンテリカ)、およびビブリオ(例えば、コレラ菌)のような属の細菌株のような)多数の重要な消化管病原体の結合を効果的に防止し、従って、これらの生物による感染を防止する。従って、ヒト母乳中に存在する可溶性α(1,2)フコシル化グリカンは、重要な生得的な予防的防御の層を低月齢の乳児に提供する天然の抗感染剤のクラスを表す。しかしながら、世界中の下痢罹患率に影響を与えるために十分な量、抗感染剤としてのα(1,2)フコシル化グリカンを作製することは、未だに非常に困難である。化学合成は、可能であるが、立体的特異性の問題、生成物の不純物、および高い全体コストにより制限されている。インビトロ酵素合成も可能であるが、高価なヌクレオチド糖前駆体が必要であるために制限されている。従って、病原体の消化管上皮への結合の、α(1,2)フコシル化グリカンにより媒介される阻害のための新たな戦略が、緊急に必要とされている。
旅行者下痢
旅行者下痢は、旅行者に影響を与える極めて一般的な疾病である。国際旅行者の20〜50%が、毎年、この状態を発症すると推定されており、これは、1000万例を越える年間罹患率に相当する。この疾患は、典型的には、自然に治癒する(self-limiting)(症例の90%が1週間以内に処置なしに消散する)が、症状は不愉快で破壊的であり、国際旅行者、特に、中南米、アフリカ、中東、およびアジアの開発途上国のようなハイリスクの目的地への国際旅行者は、疾病に罹患するリスクを低下させるため、旅行中の食事に注意するよう助言される。さらに、旅行者下痢から回復した個体の10%超が、現在のところ良好な処置オプションのない慢性衰弱性状態である炎症性腸症候群(IBS)へと進行する。旅行者下痢症例の80パーセント(80%)が、毒素原性大腸菌による感染に起因し、通常、排泄物によって汚染された食品または水の摂取により罹患する。毒素原性大腸菌により誘導される症状の多くは、生物によって分泌される小さい耐熱性ペプチド毒素により引き起こされ、腸細胞表面受容体であるグアニリンシクラーゼ受容体への毒素の結合を通して媒介される。α(1,2)フコシル化乳由来グリカンは、この特異的な毒素結合を阻害し、毒素原性大腸菌感染から防御する。
旅行者下痢は、旅行者に影響を与える極めて一般的な疾病である。国際旅行者の20〜50%が、毎年、この状態を発症すると推定されており、これは、1000万例を越える年間罹患率に相当する。この疾患は、典型的には、自然に治癒する(self-limiting)(症例の90%が1週間以内に処置なしに消散する)が、症状は不愉快で破壊的であり、国際旅行者、特に、中南米、アフリカ、中東、およびアジアの開発途上国のようなハイリスクの目的地への国際旅行者は、疾病に罹患するリスクを低下させるため、旅行中の食事に注意するよう助言される。さらに、旅行者下痢から回復した個体の10%超が、現在のところ良好な処置オプションのない慢性衰弱性状態である炎症性腸症候群(IBS)へと進行する。旅行者下痢症例の80パーセント(80%)が、毒素原性大腸菌による感染に起因し、通常、排泄物によって汚染された食品または水の摂取により罹患する。毒素原性大腸菌により誘導される症状の多くは、生物によって分泌される小さい耐熱性ペプチド毒素により引き起こされ、腸細胞表面受容体であるグアニリンシクラーゼ受容体への毒素の結合を通して媒介される。α(1,2)フコシル化乳由来グリカンは、この特異的な毒素結合を阻害し、毒素原性大腸菌感染から防御する。
旅行者下痢のための現在の処置は、主として対症的であり、ロペラミド(Imodium(登録商標))またはジフェノキシレート(Lomotil(登録商標))のような腸運動抑制剤のOTC製剤は、症候の緩解を提供することができるが、反対に、病原体の排除も遅延させることがある。次サリチル酸ビスマス(Pepto-Bismol(登録商標))は、症状を軽減するために有効であり得るが、12歳未満の子供、妊婦、またはアスピリンに対するアレルギーを有する人々が使用することは推奨されない薬剤である。抗生物質の許容されていない予防的使用以外に、予防は、現在、旅行者下痢に対するオプションではない。下痢は軍隊にとって長年の問題であり、配備された部隊における主要な医学的懸念であり続けている。本明細書に記載された組成物および方法は、軍事上の適用において有用である。
プロバイオティクス
プロバイオティクスは、有益な細菌または酵母を含有している健康補助食品である。世界保健機構は、妥当な量で投与された場合に、宿主に健康上の利益を授与する生微生物として、プロバイオティクスを特徴決定している。
プロバイオティクスは、有益な細菌または酵母を含有している健康補助食品である。世界保健機構は、妥当な量で投与された場合に、宿主に健康上の利益を授与する生微生物として、プロバイオティクスを特徴決定している。
本発明は、(アビディティ効果により)高い効率で細胞表面上に病原性生物を吸着する「デコイ」として作用する、細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを発現するプロバイオティック酵母株を提供する。株は、「プロバイオティクス」として販売されるヨーグルト、ケフィア、発酵飲料、または調製粉乳のような食品または飲料の中に提供される。あるいは、微生物は、水、果汁、または乳製品のような液体との混合による再生についての説明書と共に、乾燥状態、例えば、凍結乾燥状態で提供される。
本発明は、予防剤および治療剤の新規のクラスを表すグリカンを提供する。これらの薬剤は、安価に多量に作製され、室温で安定しており、大規模保管、経口投与が可能であり、かつ安全であって耐容性がよい。これらのグリカンは、カンピロバクター・ジェジュニ、カリシウイルス(ノーウォークウイルスを含むノロウイルス)、病原性ビブリオ、およびある種の下痢原性のエスケリキア株およびサルモネラ株を含むが、これらに限定されない、広域の病原体による感染を阻害する(Chessa, D, Winter, MG, Jakomin, M and Baumler, AJ, Mol Microbiol 71:4, 864-75 (2009))。
フコシルグリカンは病原体のための受容体である
胃腸粘膜への接着は、腸管感染における必須の最初の工程である。細胞は、外的環境とコミュニケートするために表面上にグリカンを発現しているが、これらのグリカンは、病原体によっても宿主細胞の認識および結合の過程のために使用される。細胞表面グリカンのうち、フコシル化モエティを有するものは、腸粘膜において多量に発現されており、カンピロバクター種、コレラ菌、いくつかの下痢原性大腸菌、ヒトカリシウイルス(ノロウイルス)、ヘリコバクター・ピロリ等を含む、多数の腸管病原体のための標的受容体として使用される(Ruiz-Palacios G. M. et al., 2003 J Biol Chem, 278:14112-14120;Marionneau S. et al., 2002 Gastroenterology, 122:1967-1977;Glass R.I. et al., 1985 Am J Epidemiol, 121:791-796;Barua D. and Paguio A.S., 1977 Ann Hum Biol, 4:489-492;Ilver D. et al., 1998 Science, 279:373-377;Newburg D.S. et al., 1990 J Infect Dis, 162:1075-1080;Huang P. et al., 2003 J Infect Dis, 188:19-31)。例えば、「分泌型」α(1,2)-フコシル基転移酵素遺伝子(FUT2)に関してホモ接合性に劣性の子供は、腸粘膜表面上にα(1,2)結合型グリカンを過少発現し、下痢に対して天然に耐性であり;FUT2対立遺伝子にそのような変異を有しない(即ち、FUT2に関してホモ接合性に優性である)ものは、最高レベルのこれらのフコシル化受容体を発現し、最も高い下痢性疾患のリスクを有する。このように、細胞表面グリカン受容体は、多くの腸管病原体およびその他の病原体の病原性の重大な決定基である。
胃腸粘膜への接着は、腸管感染における必須の最初の工程である。細胞は、外的環境とコミュニケートするために表面上にグリカンを発現しているが、これらのグリカンは、病原体によっても宿主細胞の認識および結合の過程のために使用される。細胞表面グリカンのうち、フコシル化モエティを有するものは、腸粘膜において多量に発現されており、カンピロバクター種、コレラ菌、いくつかの下痢原性大腸菌、ヒトカリシウイルス(ノロウイルス)、ヘリコバクター・ピロリ等を含む、多数の腸管病原体のための標的受容体として使用される(Ruiz-Palacios G. M. et al., 2003 J Biol Chem, 278:14112-14120;Marionneau S. et al., 2002 Gastroenterology, 122:1967-1977;Glass R.I. et al., 1985 Am J Epidemiol, 121:791-796;Barua D. and Paguio A.S., 1977 Ann Hum Biol, 4:489-492;Ilver D. et al., 1998 Science, 279:373-377;Newburg D.S. et al., 1990 J Infect Dis, 162:1075-1080;Huang P. et al., 2003 J Infect Dis, 188:19-31)。例えば、「分泌型」α(1,2)-フコシル基転移酵素遺伝子(FUT2)に関してホモ接合性に劣性の子供は、腸粘膜表面上にα(1,2)結合型グリカンを過少発現し、下痢に対して天然に耐性であり;FUT2対立遺伝子にそのような変異を有しない(即ち、FUT2に関してホモ接合性に優性である)ものは、最高レベルのこれらのフコシル化受容体を発現し、最も高い下痢性疾患のリスクを有する。このように、細胞表面グリカン受容体は、多くの腸管病原体およびその他の病原体の病原性の重大な決定基である。
人乳グリカン
未結合のオリゴ糖およびそれらの複合糖質の両方を含む人乳グリカンは、乳児の胃腸(GI)管の防御および発達において有意な役割を果たす。様々な哺乳動物に見出される乳オリゴ糖は、大きく異なっており、ヒトにおける組成は独特である(Hamosh M., 2001 Pediatr Clin North Am, 48:69-86;Newburg D.S., 2001 Adv Exp Med Biol, 501:3-10)。さらに、人乳中のグリカンレベルは授乳期間中に変化し、個体間でも広く変動する(Morrow A.L. et al., 2004 J Pediatr, 145:297-303;Chaturvedi P et al., 2001 Glycobiology, 11:365-372)。およそ200種の別個の人乳オリゴ糖が同定されており、単純なエピトープの組み合わせが、この多様性を担っている(Newburg D.S., 1999 Curr Med Chem, 6:117-127;Ninonuevo M. et al., 2006 J Agric Food Chem, 54:7471-74801)。人乳オリゴ糖は、5種の単糖:D-グルコース(Glc)、D-ガラクトース(Gal)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、L-フコース(Fuc)、およびシアル酸(N-アセチルノイラミン酸、Neu5Ac、NANA)から構成されている。人乳オリゴ糖は、通常、化学構造によって二つの群に分類される:ラクトース(Galβ1-4Glc)コアに連結された、Glc、Gal、GlcNAc、およびFucを含有している中性化合物、および同一の糖を含み、しばしば同一のコア構造を含むが、それに加えてNANAも含む酸性化合物(Charlwood J. et al., 1999 Anal Biochem, 273:261-277;MartΔn-Sosa et al., 2003 J Dairy Sci, 86:52-59;Parkkinen J. and Finne J., 1987 Methods Enzymol, 138:289-300;Shen Z. et al., 2001 J Chromatogr A, 921:315-321)。人乳中のオリゴ糖のおよそ70〜80%が、フコシル化されている。大部分の個体においてフコシル化オリゴ糖の大半が、FUT2遺伝子によりコードされるフコシル基転移酵素により合成される1個または複数個のα(1,2)結合型フコースを含有している。人乳フコシルオリゴ糖の約3分の1は、ルイス遺伝子(FUT3)ファミリーによりコードされるフコシル基転移酵素により合成される1個または複数個のα(1,3)結合型またはα(1,4)結合型のフコースを含む(Le Pendu, 2004 Adv Exp Med Biol, 554:135-143)。これらのフコシル基転移酵素は、合わせて6個の主要エピトープを作製する(図1;I型経路およびII型経路は異なる前駆体分子により開始する)。大部分の母親において、優勢な乳オリゴ糖は、2'-フコシルラクトース(2'-FL)およびラクト-N-フコペンタオースI(LNF-I)である。しかしながら、ヨーロッパ系、アフリカ系、およびアジア系の個体の20〜25%、ならびにメキシコ系の2〜3%は、非分泌型個体である、即ち、活性FUT2対立遺伝子を欠き、従って、乳中にα(1,2)-フコシルグリカンを完全に欠く。これらの個体は、より低い全オリゴ糖の量、ならびにα(1,3)結合型およびα(1,4)結合型のフコースのみを含有しているオリゴ糖の優勢を有する。
未結合のオリゴ糖およびそれらの複合糖質の両方を含む人乳グリカンは、乳児の胃腸(GI)管の防御および発達において有意な役割を果たす。様々な哺乳動物に見出される乳オリゴ糖は、大きく異なっており、ヒトにおける組成は独特である(Hamosh M., 2001 Pediatr Clin North Am, 48:69-86;Newburg D.S., 2001 Adv Exp Med Biol, 501:3-10)。さらに、人乳中のグリカンレベルは授乳期間中に変化し、個体間でも広く変動する(Morrow A.L. et al., 2004 J Pediatr, 145:297-303;Chaturvedi P et al., 2001 Glycobiology, 11:365-372)。およそ200種の別個の人乳オリゴ糖が同定されており、単純なエピトープの組み合わせが、この多様性を担っている(Newburg D.S., 1999 Curr Med Chem, 6:117-127;Ninonuevo M. et al., 2006 J Agric Food Chem, 54:7471-74801)。人乳オリゴ糖は、5種の単糖:D-グルコース(Glc)、D-ガラクトース(Gal)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、L-フコース(Fuc)、およびシアル酸(N-アセチルノイラミン酸、Neu5Ac、NANA)から構成されている。人乳オリゴ糖は、通常、化学構造によって二つの群に分類される:ラクトース(Galβ1-4Glc)コアに連結された、Glc、Gal、GlcNAc、およびFucを含有している中性化合物、および同一の糖を含み、しばしば同一のコア構造を含むが、それに加えてNANAも含む酸性化合物(Charlwood J. et al., 1999 Anal Biochem, 273:261-277;MartΔn-Sosa et al., 2003 J Dairy Sci, 86:52-59;Parkkinen J. and Finne J., 1987 Methods Enzymol, 138:289-300;Shen Z. et al., 2001 J Chromatogr A, 921:315-321)。人乳中のオリゴ糖のおよそ70〜80%が、フコシル化されている。大部分の個体においてフコシル化オリゴ糖の大半が、FUT2遺伝子によりコードされるフコシル基転移酵素により合成される1個または複数個のα(1,2)結合型フコースを含有している。人乳フコシルオリゴ糖の約3分の1は、ルイス遺伝子(FUT3)ファミリーによりコードされるフコシル基転移酵素により合成される1個または複数個のα(1,3)結合型またはα(1,4)結合型のフコースを含む(Le Pendu, 2004 Adv Exp Med Biol, 554:135-143)。これらのフコシル基転移酵素は、合わせて6個の主要エピトープを作製する(図1;I型経路およびII型経路は異なる前駆体分子により開始する)。大部分の母親において、優勢な乳オリゴ糖は、2'-フコシルラクトース(2'-FL)およびラクト-N-フコペンタオースI(LNF-I)である。しかしながら、ヨーロッパ系、アフリカ系、およびアジア系の個体の20〜25%、ならびにメキシコ系の2〜3%は、非分泌型個体である、即ち、活性FUT2対立遺伝子を欠き、従って、乳中にα(1,2)-フコシルグリカンを完全に欠く。これらの個体は、より低い全オリゴ糖の量、ならびにα(1,3)結合型およびα(1,4)結合型のフコースのみを含有しているオリゴ糖の優勢を有する。
人乳グリカンは腸管病原体の受容体への結合を阻害する
人乳グリカンは、腸管病原体のための細胞受容体との構造的な相同性を有し、受容体デコイとして機能する。例えば、カンピロバクターの病原性株は、H-2を含有しているグリカン、即ち、2'-フコシル-N-アセチルラクトサミンまたは2'-フコシルラクトース(2'FL)に特異的に結合し;カンピロバクターの結合および感染性は、このH-2エピトープを含有している2'FLおよびその他のグリカンにより阻害される。同様に、いくつかの下痢原性大腸菌病原体は、2結合型フコースモエティを含有している人乳オリゴ糖によりインビボで強く阻害される。ヒトカリシウイルスのいくつかの主要な株、特に、ノロウイルスも、2結合型フコシル化グリカンに結合し、この結合は人乳2結合型フコシル化グリカンにより阻害される。これらの2結合型フコシルオリゴ糖を高レベルに有する人乳の消費は、メキシコの母乳栄養の子供のコホートにおいて、ノロウイルス関連下痢、カンピロバクター関連下痢、大腸菌ST関連下痢、および全ての原因の中程度〜重度の下痢の、より低いリスクに関連していた(Newburg D.S. et al., 2004 Glycobiology, 14:253-263;Newburg D.S. et al., 1998 Lancet, 351:1160-1164)。
人乳グリカンは、腸管病原体のための細胞受容体との構造的な相同性を有し、受容体デコイとして機能する。例えば、カンピロバクターの病原性株は、H-2を含有しているグリカン、即ち、2'-フコシル-N-アセチルラクトサミンまたは2'-フコシルラクトース(2'FL)に特異的に結合し;カンピロバクターの結合および感染性は、このH-2エピトープを含有している2'FLおよびその他のグリカンにより阻害される。同様に、いくつかの下痢原性大腸菌病原体は、2結合型フコースモエティを含有している人乳オリゴ糖によりインビボで強く阻害される。ヒトカリシウイルスのいくつかの主要な株、特に、ノロウイルスも、2結合型フコシル化グリカンに結合し、この結合は人乳2結合型フコシル化グリカンにより阻害される。これらの2結合型フコシルオリゴ糖を高レベルに有する人乳の消費は、メキシコの母乳栄養の子供のコホートにおいて、ノロウイルス関連下痢、カンピロバクター関連下痢、大腸菌ST関連下痢、および全ての原因の中程度〜重度の下痢の、より低いリスクに関連していた(Newburg D.S. et al., 2004 Glycobiology, 14:253-263;Newburg D.S. et al., 1998 Lancet, 351:1160-1164)。
治療用グリカン
人乳グリカンは、強力な抗微生物剤の新たなクラスを表し(Newburg D.S. et al., 2005 Annu Rev Nutr, 25:37-58;Sharon N. and Ofek I., 2000 Glycoconj J, 17:659-664)、データは、それらが緊急の薬物耐性を誘導しないことを示している。人乳から単離されたグリカン構造は、インビトロおよびインビボで、特定の病原体による感染を阻害することが見出された。いくつかの病原体(例えば、C.ジェジュニ、コレラ菌)は、モノマー型の特定のフコシル化エピトープ、即ち、遊離オリゴ糖により阻害されるが、より複雑な型による阻害は、より強力である。その他の病原体(例えば、ノロウイルス)は、これらのエピトープが、多価型(高分子上の同一エピトープの複数のコピー)または多重価型(高分子上のエピトープの組み合わせ)として高分子に繋がれた場合にのみ、これらのエピトープにより阻害される。一般に、オリゴ糖の多価発現および多重価発現は、特定のレクチンに対する結合アビディティの増加を伴う。これらの観察は、自由生活集団に見出される多数の病原体を阻害することを目的とした製剤には、(人乳中に見出されるような)複数のエピトープが必要であることを示す。しかしながら、(1)大部分の人乳防御的グリカンは、腸管病原体の最も一般的な主要ファミリーを阻害する6個の中性フコシル化グリカンエピトープ、ルイスエピトープのみを共通に含有しており(図1)、(2)人乳が含有している、病原体に強く結合する高分子は、ほんの少数であり、それらの中で主要であるのは、MUC1遺伝子から発現されるムチンである。例えば、組換えフコシル化ムチンは、H.ピロリによる結合を阻害する。
人乳グリカンは、強力な抗微生物剤の新たなクラスを表し(Newburg D.S. et al., 2005 Annu Rev Nutr, 25:37-58;Sharon N. and Ofek I., 2000 Glycoconj J, 17:659-664)、データは、それらが緊急の薬物耐性を誘導しないことを示している。人乳から単離されたグリカン構造は、インビトロおよびインビボで、特定の病原体による感染を阻害することが見出された。いくつかの病原体(例えば、C.ジェジュニ、コレラ菌)は、モノマー型の特定のフコシル化エピトープ、即ち、遊離オリゴ糖により阻害されるが、より複雑な型による阻害は、より強力である。その他の病原体(例えば、ノロウイルス)は、これらのエピトープが、多価型(高分子上の同一エピトープの複数のコピー)または多重価型(高分子上のエピトープの組み合わせ)として高分子に繋がれた場合にのみ、これらのエピトープにより阻害される。一般に、オリゴ糖の多価発現および多重価発現は、特定のレクチンに対する結合アビディティの増加を伴う。これらの観察は、自由生活集団に見出される多数の病原体を阻害することを目的とした製剤には、(人乳中に見出されるような)複数のエピトープが必要であることを示す。しかしながら、(1)大部分の人乳防御的グリカンは、腸管病原体の最も一般的な主要ファミリーを阻害する6個の中性フコシル化グリカンエピトープ、ルイスエピトープのみを共通に含有しており(図1)、(2)人乳が含有している、病原体に強く結合する高分子は、ほんの少数であり、それらの中で主要であるのは、MUC1遺伝子から発現されるムチンである。例えば、組換えフコシル化ムチンは、H.ピロリによる結合を阻害する。
既存の合成法の限界
人乳グリカンが抗微生物抗付着剤の新規のクラスとして使用され得ることは、公開されている豊富な研究によって示唆されているが、ヒトの消費に適した品質で、これらの薬剤を、妥当な量、作製することは困難かつ高価であるため、本格的な試験および認知された利用可能性は制限されている。本発明より以前には、合理的なコストで、十分な量、適切なグリカンを作製するための適当な方法が必要とされていた。グリカン合成のための合成アプローチが試みられた。新規の化学的アプローチは、オリゴ糖を合成することができるが、これらの方法のための反応体は高価であり、毒性である可能性がある。操作された生物から発現された酵素は、正確かつ効率的な合成を提供するが、反応体、特に、糖ヌクレオチドのコストが高いため、低コストの大規模作製のための利用可能性は制限されている。細菌のヌクレオチド糖の生得的なプールからオリゴ糖を合成するために必要とされる糖転移酵素を発現するよう、細菌が遺伝学的に操作された。一つのそのような例において、糖転移酵素、およびヌクレオチド糖再生経路を含む酵素を含む、オリゴ糖合成のために必須の全ての酵素が、単一のプラスミドへと組み立てられ、ある大腸菌「スーパーバグ(superbug)」(Chen X. et al., 2001 J Am Chem Soc, 123:8866-8867)において発現させられた;オリゴ糖はg/Lスケールで合成された。しかしながら、ヒトにとって強力な抗原および毒素であり、それにより、望ましくない危険な副作用を引き起こすリポ多糖およびペプチドグリカンのような細胞成分を、細菌は産生する。従って、人乳グリカンを製造するためのより安くかつより安全な手段を開発すべく努力がなされた。
人乳グリカンが抗微生物抗付着剤の新規のクラスとして使用され得ることは、公開されている豊富な研究によって示唆されているが、ヒトの消費に適した品質で、これらの薬剤を、妥当な量、作製することは困難かつ高価であるため、本格的な試験および認知された利用可能性は制限されている。本発明より以前には、合理的なコストで、十分な量、適切なグリカンを作製するための適当な方法が必要とされていた。グリカン合成のための合成アプローチが試みられた。新規の化学的アプローチは、オリゴ糖を合成することができるが、これらの方法のための反応体は高価であり、毒性である可能性がある。操作された生物から発現された酵素は、正確かつ効率的な合成を提供するが、反応体、特に、糖ヌクレオチドのコストが高いため、低コストの大規模作製のための利用可能性は制限されている。細菌のヌクレオチド糖の生得的なプールからオリゴ糖を合成するために必要とされる糖転移酵素を発現するよう、細菌が遺伝学的に操作された。一つのそのような例において、糖転移酵素、およびヌクレオチド糖再生経路を含む酵素を含む、オリゴ糖合成のために必須の全ての酵素が、単一のプラスミドへと組み立てられ、ある大腸菌「スーパーバグ(superbug)」(Chen X. et al., 2001 J Am Chem Soc, 123:8866-8867)において発現させられた;オリゴ糖はg/Lスケールで合成された。しかしながら、ヒトにとって強力な抗原および毒素であり、それにより、望ましくない危険な副作用を引き起こすリポ多糖およびペプチドグリカンのような細胞成分を、細菌は産生する。従って、人乳グリカンを製造するためのより安くかつより安全な手段を開発すべく努力がなされた。
α(1,2)フコシル化グリカン
ヒト母乳中に存在するα(1,2)フコシル化グリカンは、主要な病原体の消化管上皮への付着を競合的に阻害し、消化管病原体による感染および/またはコロニー形成に対する予防的防御を低月齢の乳児および成人に提供する抗感染剤のクラスを表す。リスクのある乳児集団に加えて、下痢性疾患のリスクを有する他の大きな集団がさらにいくつか存在し(例えば、高齢者、国際旅行者、および軍隊)、これらの薬剤が容易に入手可能であれば、これらの薬剤の予防的投与から利益を得ることができる。しかしながら、前述のように、本明細書に記載された本発明より以前には、ヒト母乳由来α(1,2)フコシル化グリカンの受け入れられている商業的に実行可能な合成起源は存在せず、ウシまたはヤギの乳に基づく既存の乳製品には、このクラスの分子が欠けている。
ヒト母乳中に存在するα(1,2)フコシル化グリカンは、主要な病原体の消化管上皮への付着を競合的に阻害し、消化管病原体による感染および/またはコロニー形成に対する予防的防御を低月齢の乳児および成人に提供する抗感染剤のクラスを表す。リスクのある乳児集団に加えて、下痢性疾患のリスクを有する他の大きな集団がさらにいくつか存在し(例えば、高齢者、国際旅行者、および軍隊)、これらの薬剤が容易に入手可能であれば、これらの薬剤の予防的投与から利益を得ることができる。しかしながら、前述のように、本明細書に記載された本発明より以前には、ヒト母乳由来α(1,2)フコシル化グリカンの受け入れられている商業的に実行可能な合成起源は存在せず、ウシまたはヤギの乳に基づく既存の乳製品には、このクラスの分子が欠けている。
本発明より以前には、世界中の下痢罹患率に影響を与えるのに十分な量、抗感染剤としてのα(1,2)フコシル化グリカンを作製することは、非常に困難であった。化学合成は可能であるが、立体的特異性の問題、生成物の不純物、および高い全体コストにより制限されている(Flowers H.M., 1978 Methods Enzymol, 50:93-121;Seeberger P.H., 2003 Chem Commun (Camb), 1115-1121;Koeller K.M. and Wong C.H., 2000 Chem Rev, 100:4465-4494)。インビトロ酵素合成も可能であるが、高価なヌクレオチド糖前駆体物質の必要性のため制限されている。
本発明は、抗感染剤として、大量にこれらの分子を製造するための、より安価な手段を記載する。本発明は、リスクのある乳児(例えば、非母乳栄養児、部分母乳栄養児、乳中に十分な防御的グリカンを提供することが遺伝的にできない母親の母乳栄養児、離乳期の乳児、保育園または水衛生が損なわれている地域のような感染性下痢のリスクが高い環境にいる乳児)のみならず、感受性の成人(例えば、高齢者、特に、養護ホーム環境にいる高齢者、旅行者、水衛生が損なわれている地域のような高リスク環境にいる全ての成人)のためにも、栄養補助剤および/または治療薬としてこれらの薬剤を提供する。本発明は、病原のためにフコシル化グリカンを利用する生物(例えば、ブタのF18線毛保有毒素原性大腸菌(Snoeck, V, Verdonck, F, Cox, E and Goddeeris, BM, Vet Microbiol 100:3-4, 241-6 (2004)))による感染性下痢のリスクを低下させるため、動物(例えば、ブタ、ウシ、ニワトリ)のための栄養補助剤または飼料添加剤としても、これらの薬剤を提供する。
内在性遺伝子の操作と、所望の活性をコードする異種の遺伝子の導入との組み合わせを通して、一般的な食用乳製品酵母クルイベロミセス・ラクチスにおいて、グリカン合成経路を操作した。K.ラクチスを、キーの前駆体糖であるGDP-フコースを合成し(このヌクレオチド糖の産生を最適化し、細胞GDP-マンノースプールを押し上げることにより酵母細胞壁合成に対するこの影響を最小化して)、GDP-フコースおよびUDP-ガラクトースの両方をゴルジへ輸送し、細胞表面上でα(1,2)フコシル化グリカンを同化するよう操作した。表面結合α(1,2)フコシル化グリカンの収率を最適化した。操作された酵母を、インビトロでの病原体結合、およびカンピロバクター感染またはビブリオ感染のインビボ動物モデルにおけるプロバイオティクスとしての使用に関して評価した。病原体の上皮への付着を阻害することにより、操作された酵母は、例えば、腸管障害、肺(気道)障害、および尿路障害のような様々な障害に関連した感染因子を阻害することにより、様々な感染因子による感染を処置しかつ/または防止するために使用される。表面α(1,2)フコシル化プロバイオティックK.ラクチスは、ノーウォーク様ウイルスおよびC.ジェジュニの両方を標的とし、病原性のビブリオ、ヘリコバクター、シュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aerugionosa)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ならびにある種の下痢原性のエスケリキア株およびサルモネラ株を含むが、これらに限定されない、その他のフコース結合病原体も標的とする。
発現宿主の選択
多様な理由のため、クルイベロミセス・ラクチスを、α(1,2)フコシル化糖タンパク質を提示するために選択した。第一に、この生物は真核生物であり、グリカンの産生および分泌のための固有の機序を保有している。K.ラクチスゲノムは完全に配列決定されており、生物は良性で、単純な培地で容易に発酵される。さらに、K.ラクチスは様々なチーズに含まれヒトの食事において確立されているため、この生物の適切に操作された型、または生物により産生される産物は、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)によりGRAS(Generally Recognized as Safe)ステータスとして認定され得る(Leclercq-Perlat M.N. et al., 2004 J Dairy Res, 71:346-354;Fadda, M. E. et al., 2001 Int J Food Microbiol, 69:153-156;Prillinger, H. et al., 1999 Antonie Van Leeuwenhoek, 75:267-283)。
多様な理由のため、クルイベロミセス・ラクチスを、α(1,2)フコシル化糖タンパク質を提示するために選択した。第一に、この生物は真核生物であり、グリカンの産生および分泌のための固有の機序を保有している。K.ラクチスゲノムは完全に配列決定されており、生物は良性で、単純な培地で容易に発酵される。さらに、K.ラクチスは様々なチーズに含まれヒトの食事において確立されているため、この生物の適切に操作された型、または生物により産生される産物は、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)によりGRAS(Generally Recognized as Safe)ステータスとして認定され得る(Leclercq-Perlat M.N. et al., 2004 J Dairy Res, 71:346-354;Fadda, M. E. et al., 2001 Int J Food Microbiol, 69:153-156;Prillinger, H. et al., 1999 Antonie Van Leeuwenhoek, 75:267-283)。
従来の抗菌剤および抗生物質の広い使用が耐性株の発達をもたらすことは、よく確立されているが、フコシル化グリカン付着阻害剤ではこの問題が回避される(従来の抗生物質アプローチを超える利点)。抗菌剤は、典型的には、標的生物の増殖および/または生存能に対して直接作用し、耐性の発達の機会を提供する重度の選択圧をかける。抗付着抗感染剤は、この直接の選択圧を及ぼすのではなく、病原体の環境適所を利用不可能にする。従って、病原体は、母乳中に存在する天然の抗感染性グリカンを避けるための機序を進化させていないため、本明細書に記載された組成物は、耐性の発生を駆動しない。
操作されたプロバイオティック酵母を含む組成物
細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示する、操作されたプロバイオティック酵母、例えば、K.ラクチスは、店頭販売の食品、飲料、または機能性食品(nutraceutical product)として投与されるか、または操作された酵母と、薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水中のエタノールの混合物、水、および水中油型乳濁剤または油中水型乳濁剤のような乳濁剤、ならびに様々な湿潤剤または賦形剤とを含有している薬学的組成物として投与される。操作されたプロバイオティック酵母は、患者に投与された場合に、有害反応、アレルギー反応、またはその他の望まれない反応を生じない材料と組み合わせられる。使用される担体または媒体には、溶剤、分散剤、コーティング、吸収促進剤、放出制御剤、および(デンプン、ポリオール、造粒剤、微晶質セルロース、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を含む)一つまたは複数の不活性賦形剤等が含まれる。所望により、開示された組成物の錠剤は、標準的な水性または非水性の技術によりコーティングされる。
細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示する、操作されたプロバイオティック酵母、例えば、K.ラクチスは、店頭販売の食品、飲料、または機能性食品(nutraceutical product)として投与されるか、または操作された酵母と、薬学的に許容される担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水中のエタノールの混合物、水、および水中油型乳濁剤または油中水型乳濁剤のような乳濁剤、ならびに様々な湿潤剤または賦形剤とを含有している薬学的組成物として投与される。操作されたプロバイオティック酵母は、患者に投与された場合に、有害反応、アレルギー反応、またはその他の望まれない反応を生じない材料と組み合わせられる。使用される担体または媒体には、溶剤、分散剤、コーティング、吸収促進剤、放出制御剤、および(デンプン、ポリオール、造粒剤、微晶質セルロース、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を含む)一つまたは複数の不活性賦形剤等が含まれる。所望により、開示された組成物の錠剤は、標準的な水性または非水性の技術によりコーティングされる。
操作されたプロバイオティック酵母は、例えば、予定された量のプロバイオティック酵母を含有している錠剤、ペレット、ゲル、ペースト、シロップ、巨丸剤、なめ薬(electuary)、スラリー、カプセル、粉末、顆粒として、水性液体中もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁物として;水中油型乳濁液もしくは油中水型乳濁液として、またはその他の何らかの形態で経口投与される。経口投与される組成物は、任意で、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、滑沢剤、表面活性剤または分散剤、風味剤、および湿潤剤を含む。錠剤のような経口投与される製剤は、任意で、コーティングされてもよいしまたは刻み目を付けられてもよく、プロバイオティック酵母の徐放、放出遅延、または放出制御を提供するために製剤化されてもよい。もう一つの局面において、本発明の薬剤は、直腸坐剤、エアロゾルチューブ、経鼻胃管、GI管もしくは胃への直接注入により、または非経口的に投与される。
プロバイオティック酵母を含有している薬学的組成物は、抗ウイルス剤、抗生物質、プロバイオティクス、鎮痛薬、および抗炎症剤のような治療剤を含んでいてもよい。適正な投薬量は、当業者により決定され、例えば、患者の免疫状態、体重、および年齢のような因子に依る。いくつかの例において、投薬量は、ヒト母乳中に存在する類似オリゴ糖について見出されるのと類似した濃度である。
プロバイオティック酵母は、他の組成物に添加される。例えば、それらは、調製粉乳、栄養組成物、経口補液、高齢個体または免疫低下個体のための食事補助剤(dietary maintenance)または健康補助食品に添加される。プロバイオティック酵母は、食用脂質、炭水化物、およびタンパク質のような多量養素を含む組成物に含まれる。食用脂質には、例えば、やし油、大豆油、ならびにモノグリセリドおよびジグリセリドが含まれる。炭水化物には、例えば、グルコース、食用ラクトース、およびコーンスターチ加水分解物が含まれる。タンパク質源は、例えば、大豆タンパク質、乳清、および脱脂乳を含むか例えばこれらであり得る。プロバイオティック酵母を含有している、栄養組成物を含む組成物は、ビタミンおよびミネラル(例えば、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、塩化物、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素、ならびにビタミンA、E、D、C、およびB複合体)も含み得る。
細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示する操作されたプロバイオティック酵母は、生培養物として送達されるか、あるいは細胞表面フコシル化グリカンの病原体結合活性の維持と一致する処理(例えば、乾燥)を通して、不活化された調製物、もしくは生存能が実質的に低下した調製物として送達される。生存能低下型プロバイオティック酵母は、公知の方法を使用して作製され、例えば、フラッシュ乾燥(flash-dried)プロバイオティック酵母は、便利なヒトの食品または動物飼料添加剤として使用される。
実施例1 乳児におけるグリカン発現の不均一性は下痢のリスクを定義する
子供において、胃腸管内のルイス式組織血液型抗原が、いくつかの主要な腸管病原体のための主要な受容体として役立つと考えられている。赤血球および唾液におけるルイス式血液型表現型の発現の違いとして、特に、より正確であるルイス遺伝子型として反映される、消化管およびその他の組織における不均一なフコース発現の基礎となっているのは、乳児におけるフコシル基転移酵素の遺伝子多型である。腸粘膜上の細胞表面フコシル化グリカンへの結合が、病原の必須の最初の工程であるならば、乳児における下痢性感染のリスクは、フコシルグリカンの不均一な発現に関係しているはずである(Marionneau S. et al., 2001 Biochimie, 83:565-573)。
子供において、胃腸管内のルイス式組織血液型抗原が、いくつかの主要な腸管病原体のための主要な受容体として役立つと考えられている。赤血球および唾液におけるルイス式血液型表現型の発現の違いとして、特に、より正確であるルイス遺伝子型として反映される、消化管およびその他の組織における不均一なフコース発現の基礎となっているのは、乳児におけるフコシル基転移酵素の遺伝子多型である。腸粘膜上の細胞表面フコシル化グリカンへの結合が、病原の必須の最初の工程であるならば、乳児における下痢性感染のリスクは、フコシルグリカンの不均一な発現に関係しているはずである(Marionneau S. et al., 2001 Biochimie, 83:565-573)。
メキシコ人乳児297人のコホートを、出生時から2歳まで試験し、追跡した(Noguera-Obenza M. et al., 2003 Emerg Infect Dis, 9:545-551)。下痢の相対リスクは、血液型により変動した(表1)。主としてFucα(1,2)エピトープ(O、ルイスa-b-)としてフコースを発現する子供は、3.0例/人・年という最も高い下痢のリスクを有した。主としてFucα(1,4)(O、ルイスa+b-)としてフコースを発現し、Fucα(1,2)エピトープを欠くものは、1.5例/人・年という最低のリスクを有していた(P=0.002)。血液型A型およびB型(全て、Fucα(1,2)エピトープを発現するが、末端に付加的な糖を含む)は、中間の下痢のリスクを有していた;追加の糖が、活性エピトープへの接近を立体的に妨害するのかもしれないし、AグリカンおよびBグリカンの産生が、より活性のFucα(1,2)エピトープを含むグリカンの量を枯渇させるのかもしれない。
血液型による下痢感受性の差は、ヒトにおけるグリカン発現の変動、特に、α(1,2)結合型フコースの発現に関する変動が、病原体感受性の差に反映されることを示している。腸管病原体のグリカン受容体への結合の特異性が、病原における必須の最初の工程であるため、α(1,2)結合型フコースを含有している細胞表面受容体は、ヒト集団における多くの腸管病原体の病原性の主要決定基である。ルイス式血液型の表現型および遺伝子型は、乳児における下痢の強力な予測因子であり、特定の発現パターンによって、一部の子供は、これらの主要な腸管病原体に対して、固有に、より感受性になっている。
実施例2 特異的なフコシルグリカンが特異的な病原体を阻害する
カンピロバクターのグリカンによる阻害
カンピロバクター・ジェジュニのHEp2細胞への結合は、H(O)血液型エピトープ(Fucα(1,2)Galβ(1,4)GlcNAc)を含有しているフコシル化炭水化物モエティにより阻害される(Ruiz-Palacios 2003)。ニトロセルロースに固定化されたネオ糖タンパク質(高分子量合成グリカン)により、カンピロバクターは、H-2抗原に対する高いアビディティを有し、この特異性は、モノクローナル抗体による阻害により確認された。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に通常は結合しないC.ジェジュニが、その細胞を、H-2抗原の過剰発現を引き起こすヒトα(1,2)-フコシル基転移酵素遺伝子によりトランスフェクトした場合には、強力に結合した(図2)。
カンピロバクターのグリカンによる阻害
カンピロバクター・ジェジュニのHEp2細胞への結合は、H(O)血液型エピトープ(Fucα(1,2)Galβ(1,4)GlcNAc)を含有しているフコシル化炭水化物モエティにより阻害される(Ruiz-Palacios 2003)。ニトロセルロースに固定化されたネオ糖タンパク質(高分子量合成グリカン)により、カンピロバクターは、H-2抗原に対する高いアビディティを有し、この特異性は、モノクローナル抗体による阻害により確認された。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に通常は結合しないC.ジェジュニが、その細胞を、H-2抗原の過剰発現を引き起こすヒトα(1,2)-フコシル基転移酵素遺伝子によりトランスフェクトした場合には、強力に結合した(図2)。
この結合は、H-2に結合するリガンド、例えば、UEA I、ロータスレクチン、および抗H-2 mAbにより、または細胞受容体と競合するH-2可溶性模倣体(mimetics)、例えば、H-2ネオ糖タンパク質、人乳フコシル化オリゴ糖、および2'FLにより阻害された。従って、H-2抗原は、カンピロバクター感染に対する感受性の決定基である宿主細胞表面抗原として確立された。
H-2エピトープへの結合の阻害の、疾患からの防御における関連性を、三つのモデルにおいて査定した。人乳オリゴ糖は、インビボでマウスにおけるカンピロバクターコロニー形成を阻害し、エクスビボで侵襲性病原性カンピロバクターがヒト腸粘膜に結合するのを阻害した。2結合型グリカンによる阻害を、トランスジェニック動物においても査定した。授乳期に乳腺、従って、乳における2結合型フコース抗原の発現を誘導する、乳清酸性タンパク質プロモーターの制御下で発現されるヒトα(1,2)-フコシル基転移酵素遺伝子(FUT1)を保持するよう、雌マウスを操作した。対照として、非トランスジェニック親マウスを使用した。哺乳仔犬を、C.ジェジュニの接種物によりチャレンジした。非トランスジェニック対照の最大90%が、追跡の間、コロニー形成され続けた。トランスジェニックマウスのコロニー形成は一時的であり、コロニー形成の時間は、直接、接種原に関係した(表2)。従って、乳中のα(1,2)結合型フコシル化複合糖質は、インビボでカンピロバクター感染から防御し、このことから、カンピロバクターのための主要な腸内リガンドがH-2組織血液型抗原であること、および乳フコシルオリゴ糖、特に、α(1,2)結合型フコースを含有しているものが、この結合を阻害することが確認された。
人乳フコシルオリゴ糖画分は、重量基準で、カンピロバクターに対して、その主成分2'FLより大きな阻害活性を有する。より大きな阻害活性を有する2'FLホモログを検索するための最初の工程は、還元末端にグルコースを含有している2'FLの活性を、還元末端の糖がN-アセチルラクトサミンである以外は同一である2'-フコシル-N-アセチルグルコサミン(2'FLNAc)と比較することであった。2'FLNAcは、高分子グリカンを含む、人乳中に天然に見出される2'FLの全ての高等ホモログの末端に見出される構造的エピトープである。2'FLNAcは、2'FLよりカンピロバクター結合を阻害する効果が18%高く、これは、人乳中の最も強力な阻害剤が、高分子内に発現されたH-2エピトープであることと一致している。人乳は、カンピロバクターに強く結合したフコシル化高分子グリカンを含有している。
カリシウイルスのグリカンによる阻害
ウサギ出血性疾患ウイルス(RHDV)は、H-2エピトープを通して、胃腸管上部および気道のウサギ上皮細胞に特異的に接着する(Ruvoen-Clouet N. et al., 2000 J Virol, 74:11950-11954)。ノロウイルス(NV)のVLPも、分泌型表現型の個体に由来するヒト胃十二指腸上皮細胞に結合するが、非分泌型表現型の個体に由来するものには結合しない;非分泌型個体は、FUT2遺伝子によりコードされる機能性のα(1,2)-フコシル基転移酵素を欠き、このことは、α(1,2)-フコースエピトープが結合に必須であることを示している。NV結合の特異性は、分泌型個体からの人乳により、H-1抗原およびH-3抗原に特異的なモノクローナル抗体により、分泌型抗原を含有している合成オリゴ糖コンジュゲートにより、そしてα(1,2)-フコシダーゼによる組織の処理により、結合が特異的に阻止されたことから決定された。α(1,2)-フコシル基転移酵素cDNAによるCHO細胞のトランスフェクションは、NV VLPの接着を可能にした(Marionneau S. et al., 2002 Glycobiology, 12:851-856)。
ウサギ出血性疾患ウイルス(RHDV)は、H-2エピトープを通して、胃腸管上部および気道のウサギ上皮細胞に特異的に接着する(Ruvoen-Clouet N. et al., 2000 J Virol, 74:11950-11954)。ノロウイルス(NV)のVLPも、分泌型表現型の個体に由来するヒト胃十二指腸上皮細胞に結合するが、非分泌型表現型の個体に由来するものには結合しない;非分泌型個体は、FUT2遺伝子によりコードされる機能性のα(1,2)-フコシル基転移酵素を欠き、このことは、α(1,2)-フコースエピトープが結合に必須であることを示している。NV結合の特異性は、分泌型個体からの人乳により、H-1抗原およびH-3抗原に特異的なモノクローナル抗体により、分泌型抗原を含有している合成オリゴ糖コンジュゲートにより、そしてα(1,2)-フコシダーゼによる組織の処理により、結合が特異的に阻止されたことから決定された。α(1,2)-フコシル基転移酵素cDNAによるCHO細胞のトランスフェクションは、NV VLPの接着を可能にした(Marionneau S. et al., 2002 Glycobiology, 12:851-856)。
カリシウイルス(CV)のその他の株の結合特異性を決定するため、51人の有志者からの唾液試料を、CVの7個の遺伝子クラスタを表す、8個の組換えカプシド抗原に結合する能力について試験した(Huang 2003)。組織血液型表現型を、ルイス抗原およびABO抗原に対するモノクローナル抗体により決定した。四つのパターンの結合が見出された:これらのうちの三つ(株387、NV、およびMOH)は分泌型個体に結合し、一つ(株207)は非分泌型個体および分泌型個体の両方と反応するが、非分泌型個体の方を好む。三つの分泌型個体結合株を、ABO抗原特異性に基づきさらに特徴決定した:387は全ての分泌型個体(A、B、およびO)を認識し、NVはAおよびOを認識し、MOHはAおよびBを認識する。
NVによりチャレンジされた有志者77人において、分泌型個体からの唾液試料の75%がNVカプシドに結合したが、非分泌型個体からはゼロであった(P<0.001)。分泌型個体は、非分泌型個体よりNVに感染する可能性がほぼ40倍高く、このことから、NV感染に対する感受性が分泌状態に依ることが強く示唆された。CVの最も優勢な株(VA387、遺伝子型II)のその受容体への結合を阻止する人乳の能力を試験した(図3)。母親60人中54人からの乳は、この一般的なヒト腸管病原体を阻止し;結合を阻止し得なかったのは、6人の非分泌型個体からの乳のみであったが、このことは、結合がα(1,2)結合型フコースエピトープにより阻害されたことを示している。遊離の人乳オリゴ糖の調製物は、結合を阻害し得なかったが、人乳高分子量グリカンは、ノーウォークウイルスに結合し、ノーウォークウイルスのその受容体への結合を阻止した。データは、人乳が、CVの組織血液型抗原受容体への結合を特異的に阻止するフコシル化グリカンを含有していることを示している。
実施例3 人乳中のフコシルグリカンが下痢を阻害する
母親のルイス式組織血液型は、乳中のオリゴ糖およびフコシルグリカンのフコシル化パターンの発現の不均一性と関連している。乳オリゴ糖発現のこの生得的な変動を、下痢から哺乳児を防御するための、天然に存在する人乳グリカンの有効性を調査するために使用した。
母親のルイス式組織血液型は、乳中のオリゴ糖およびフコシルグリカンのフコシル化パターンの発現の不均一性と関連している。乳オリゴ糖発現のこの生得的な変動を、下痢から哺乳児を防御するための、天然に存在する人乳グリカンの有効性を調査するために使用した。
メキシコ人母親93人から産後2〜5週目に乳試料を入手し;出生時から生後2年まで母親および乳児を追跡した。乳児の病歴を前向きに記録し、これらの乳試料中の個々のオリゴ糖の濃度を測定した。母乳中の最も一般的なオリゴ糖は、フコシル化されたものであり、全オリゴ糖の73%(50%〜92%)を構成していた。これらのうち、ルイスH-2エピトープのオリゴ糖ホモログである2'FLは、全ての母親の乳において最も一般的であった。乳中の2'FLの平均濃度は、3854±108nmol/mL(全フコシル化オリゴ糖の34%)であったが、ルイス式血液型によって母親間で大きく変動した。
STECに感染した(即ち、大便中に安定毒素陽性大腸菌を示した)母乳栄養児を、二つのカテゴリーに分類した:下痢の臨床症状を示すもの(症候性)、および症状を示さないもの(無症候性)。下痢の症状を有した子供は、2結合型オリゴ糖の相対量が低い乳を消費していた:母親の乳中のα(1,2)結合型フコシル化オリゴ糖とα(1,3/4)結合型フコシル化オリゴ糖との比は、3.9±0.7[SE](n=4)であり、これは、STECに感染したが、下痢を発症しなかった乳児(7.6±1.0、n=43)、または非感染対照(7.5±1.0、n=46)が消費していた乳のものより有意に低かった(P<0.01)。従って、(乳児によるより多い消費を反映する)乳中のα(1,2)結合型オリゴ糖のより高い濃度は、ST関連下痢から乳児を防御する。この観察は、人乳中のフコースエピトープの可変性の発現が、病原体から乳児を防御する乳の能力の差に関連していることを例証している。
93人の哺乳期の子供において、他のオリゴ糖ではなく2'FLを高レベルに含有している乳の消費は、カンピロバクター下痢からの防御に有意に関連していた(ポアソン回帰、P=0.004;図4、パネルA)。他のオリゴ糖ではなくLDFH-I(Lebエピトープのオリゴ糖ホモログであるもう一つの2結合型フコシルオリゴ糖)を多量に含有している乳の消費は、カリシウイルス下痢からの防御に関連していた(ポアソン回帰、P=0.012;図4、パネルB)。より一般に、全ての測定された2結合型オリゴ糖が比較的高い乳を消費している乳児は、全ての原因の下痢から有意に(P<0.001)防御された(図4、パネルC)。従って、特定のオリゴ糖を高レベルに含有している人乳は、病原体特異的な下痢および全下痢の減少したリスクと関連している。いくつかの病原体については、これらの特定のグリカンエピトープを含有している高分子量乳成分のみならず、これらの乳オリゴ糖自体も、インビボおよびインビトロで病原体を阻害するが;関連エピトープを含有している乳中の高分子量成分のみが阻害を示す病原体もある。同一のグリカンエピトープを共有するオリゴ糖および高分子量グリカンの両方が、同一のフコシル基転移酵素により合成されるため、乳中のオリゴ糖発現と、乳児における減少したリスクとの間の関係は、遊離オリゴ糖および相同グリカンの両方を合成する母親の能力を反映している。特定の人乳オリゴ糖は、子供の腸内受容体への病原体の結合を阻害することにより、母乳栄養の子供を疾患から防御する。
実施例4 K.ラクチス細胞質におけるGDP-フコース合成
既にチーズのようなヒトの食品の一般的な成分である酵母クルイベロミセス・ラクチスは、ヒト消化管内に見出される条件においてよく生存することが公知である。細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示するよう、以下に概説される(図5に要約される)工程を通して修飾されたクルイベロミセス・ラクチス細胞は、特定の調製物として、または食品および飲料の成分として、経口摂取された場合に、消化管内で高アビディティデコイとして作用し、病原体を吸着し、感染に対する耐性を提供する。クルイベロミセス・ラクチスは、細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示する新たな能力を提供するため、以下のように修飾される。
既にチーズのようなヒトの食品の一般的な成分である酵母クルイベロミセス・ラクチスは、ヒト消化管内に見出される条件においてよく生存することが公知である。細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示するよう、以下に概説される(図5に要約される)工程を通して修飾されたクルイベロミセス・ラクチス細胞は、特定の調製物として、または食品および飲料の成分として、経口摂取された場合に、消化管内で高アビディティデコイとして作用し、病原体を吸着し、感染に対する耐性を提供する。クルイベロミセス・ラクチスは、細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを提示する新たな能力を提供するため、以下のように修飾される。
クルイベロミセス・ラクチスは、フコシル化グリカンの合成のためのキー前駆体であるGDP-フコースを生成する能力を欠く。従って、必須の最初の工程は、K.ラクチスに、このヌクレオチド糖を生成する手段を提供することである。K.ラクチス細胞壁は、共有結合で連結されたマンノースおよびグルコース/グルコサミンポリマーを保持している糖タンパク質(マンノプロテイン)を含む(Gemmill T.R. and Trimble R.B., 1999 Biochim Biophys Acta, 1426:227-237)。一般に、酵母マンナン合成は、前駆体の豊富な供給量を必要とし;特に、多量のGDP-マンノースが、ゴルジへの輸送のため酵母細胞細胞質で産生され、ゴルジで、マンノシル化反応において使用される。酵母におけるGDP-マンノース合成またはマンノシル化を排除するかまたは物質的に低下させる変異は、致死性であるかまたは有害である。本発明の表面操作株においては、細胞GDP-マンノース流入の一部が、細胞質GDP-フコースの産生へと転換され、全体の細胞生存能は維持される。GDP-マンノースは、2種の酵素;GDP-D-マンノースデヒドラターゼ(GMD)およびGDP-L-フコースシンセターゼ(GFS)により触媒される3工程反応においてGDP-フコースへと変換される。これらの酵素をコードする遺伝子は、大腸菌、ヘリコバクター・ピロリ(Wu B. et al., 2001 Biochem Biophys Res Commun, 285:364-371)、およびヒト(Sullivan F.X. et al., 1998 J Biol Chem, 273:8193-8202)を含む、多数の生物から単離されている。これらの遺伝子を、プラスミドpEKs2,3ΔU-fcl-gmd(図6、SEQ ID:1)のようなプラスミド上に置き、または安定的な染色体挿入として、K.ラクチス(株「K25」:MATa,uraA trp1 lysA1 lac4-8[pKD1+])へ導入した。pEKs2,3ΔU-fcl-gmdは、(pUC-18複製起点およびアンピシリン耐性選択可能マーカー遺伝子により)大腸菌において、あるいは(pKD-1+株における複製を可能にするpKD-1複製起点およびS.セレビシエURA3選択可能マーカー遺伝子により)K.ラクチスにおいて、安定的に複製可能なシャトルベクターである。pEKs2,3ΔU-fcl-gmdは、それぞれ大腸菌のfcl遺伝子およびgmd遺伝子の発現を構成的に駆動する、二つの強力なK.ラクチスプロモーターs2およびs3を保持している。pEKs2,3ΔU-fcl-gmd内のfclおよびgmdの両方の下流には、P.パストリス(pastoris)のアルコールオキシダーゼ遺伝子のものに基づく転写終結因子(AOXter)のコピーが位置している。s2-fcl、s3-gmd、およびS.セレビシエURA3を保持している直鎖状のおよそ4.5kbのDNA断片は、NotIおよびPmeIによる消化により、pEKs2,3ΔU-fcl-gmdから便利に調製され得る。本発明のいくつかの態様において、この断片を、電気穿孔によりK.ラクチスに形質転換し、この生物において極めて活発な機序である非相同組換えを通して、ゲノムDNAへ効率的に組み込んだ。大腸菌のGMD酵素およびGFS酵素は、以前に、酵母サッカロミセス・セレビシエへ導入され、GDP-フコースの合成を指図することが示された(Mattila P. et al., 2000 Glycobiology, 10:1041-1047)。GDP-フコースレベルを決定するためのいくつかのアッセイが、当技術分野において公知である。操作されたK.ラクチスにおけるGDP-フコース産生を証明するため、本発明者らは、K.ラクチス細胞質においてGDP-フコースをラクトースと酵素的に化合させて2'-フコシルラクトース(2'-FL)を生成し、その存在を、薄層クロマトグラフィー(TLC)により便利にアッセイすることに決めた。図7は、pEKs2,3ΔU-fcl-gmdに基づくが、付加的なs2-futC-AOXter発現カセットがfclの5'に挿入されているプラスミドpEKs2,2,3ΔU-futC-fcl-gmdを示す。(futCは、ヘリコバクター・ピロリ由来のα(1,2)フコシル基転移酵素遺伝子である)。図8、パネルAは、「pEKs2,3ΔU-fcl-gmd」に基づくが、単一の遺伝子カセットのみを保持しているプラスミドによって指図された、MYCタグ付きのfutC、fcl、およびgmdの個々の発現を示す(レーン1〜3)。pEKs2,3ΔU-fcl-gmdにより指図されたfclおよびgmdの同一細胞における同時発現は、レーン4に示される。pEKs2,2,3ΔU-futC-fcl-gmdによって指図された同一細胞におけるfcl、gmd、およびfutCの同時発現は、レーン5に示される。図8、パネルBは、fcl、gmd、およびfutCを同時発現し、ラクトースの存在下で培養された細胞における2'-FLの産生を示す。2'-FLの産生は、K.ラクチスにおいてGDP-マンノースからGDP-フコースが成功裡に生成されたことを証明している。細胞GDP-マンノースの枯渇による細胞生存能に対する影響を軽減するため、中心的なグルコース代謝からのGDP-マンノースへの炭素の流れにおける3種の必須酵素:ホスホマンノースイソメラーゼ(PMI、KLLA0D13728g)、ホスホマンノースムターゼ(PMM、SEC53)、およびGDP-マンノースピロホスホリラーゼ(PSA1、(Uccelletti D. et al., 2005 FEMS Yeast Res, 5:735-746))をコードするK.ラクチス遺伝子の過剰発現を通して、K.ラクチスにおける細胞GDP-マンノースプールを増強した。図9は、酵母におけるGDP-マンノース合成の経路およびこのスキームにおけるこれらの3種の酵素の位置付けを示す。図9に示されるように、増殖培地中の外的なマンノースも直接この経路へ入ることができ、増殖培地にマンノースを含めることは、いくつかの態様におけるオプションである。図10は、pEKs2,3ΔU-fcl-gmdに基づくが、単一のs2-PSA1-MYCカセットを有し、S.セレビシエURA3遺伝子がS.セレビシエTRP1に交換されているプラスミドpEKs2T-PSA1-MYCを示す。K.ラクチス株「K25」において、TRP1およびURA3を保持しているプラスミドは、二重選択培地中で同一の細胞において複製し共存することができる。PMI、PMM、およびPSAのMYCタグ付きバージョンおよびタグなしバージョンのため、pEKs2Tに基づくベクターを構築した。同一細胞において3種の酵素全てを同時に生成し、fclおよびgmdと同時にpEKs2,3ΔU-fcl-gmdにより発現される、単一のpEKs2Tに基づくベクターも構築した。図11は、pEKs2Tに基づくプラスミド構築物を利用した、MYCタグ付きのPMI、PMM、およびPSA1の頑強な過剰発現を示す。
GDP-マンノースの細胞質プールは、酵母GDP-マンノースゴルジトランスポーターVRG4のある種の非致死変異体において上昇し得る(Gao X.D., 2001 J Biol Chem, 276:4424-4432)。これらの変異の使用は、達成される細胞質GDP-フコースの全収率を制限し得るフィードバック阻害に対して感受性である、GDP-フコースGMD/GFS(gmd/fcl)の産生を増加させることができる。しかしながら、GDP-フコース「シンク」の準備は、(例えば、フコシル化生成物の生成においてGDP-フコースを消費する酵素を細胞質内に提供するか、または異なる細胞コンパートメントへGDP-フコースを移動させるトランスポーターを提供することを通して(以下を参照))この阻害を軽減する。
操作された株の長期安定性は、商業的な製造において重要であるため、導入された組換え遺伝子が染色体に位置するのか、それともエピソームに位置するのか、およびエピソーム維持のための選択可能マーカーの選択が考慮される。
K.ラクチスへ導入されるGMDおよびGFSの種起源は、GRASを考慮して選択される。即ち、非病原体に由来する遺伝子が好ましい。
実施例5 細胞質のGDP-フコースおよびUDP-ガラクトースのK.ラクチスゴルジへの輸送
真核生物において、分泌されたタンパク質のグリコシル化は、ERおよびゴルジにおいて起こり、そこでは、膜結合型糖転移酵素が、適当なタンパク質アクセプターをグリコシル化するために管腔のGDP-糖基質、UDP-糖基質、またはCMP-糖基質(ヌクレオチド糖)を利用する。様々なヌクレオチド糖が、膜貫通型ヌクレオチド糖トランスポータータンパク質(NST)により、細胞質からERおよびゴルジの管腔へ輸出される。NSTは、単一特異的であって、ただ一つの特定のヌクレオチド糖を輸送する場合もあるし、または二重特異的もしくは多重特異的であって、緩い基質特異性を示す場合もある。特定の生物は、同化するよう進化したグリカンの型に依って、特定のヌクレオチド糖を輸送する能力を完全に欠く場合がある。
真核生物において、分泌されたタンパク質のグリコシル化は、ERおよびゴルジにおいて起こり、そこでは、膜結合型糖転移酵素が、適当なタンパク質アクセプターをグリコシル化するために管腔のGDP-糖基質、UDP-糖基質、またはCMP-糖基質(ヌクレオチド糖)を利用する。様々なヌクレオチド糖が、膜貫通型ヌクレオチド糖トランスポータータンパク質(NST)により、細胞質からERおよびゴルジの管腔へ輸出される。NSTは、単一特異的であって、ただ一つの特定のヌクレオチド糖を輸送する場合もあるし、または二重特異的もしくは多重特異的であって、緩い基質特異性を示す場合もある。特定の生物は、同化するよう進化したグリカンの型に依って、特定のヌクレオチド糖を輸送する能力を完全に欠く場合がある。
全てのヒトH抗原(およびルイス抗原)は、フコースモエティおよびガラクトースモエティの両方を含有している。K.ラクチスにおけるGDP-フコースの細胞質合成を操作するための工程は、実施例4に記載され、細胞質UDP-ガラクトースが通常のK.ラクチス代謝物である。しかしながら、K.ラクチスは、GDP-フコースまたはUDP-ガラクトースのいずれかをゴルジへ移入する固有の能力を保有するとは示されていない。本発明は、GDP-フコースおよびUDP-ガラクトースの両方をゴルジに移入する能力を有するK.ラクチスの株の開発を提供する。
野生型K.ラクチスについて、UDP-ガラクトースのゴルジへの輸送は記載されていない。完全ゲノム配列は、他の特徴決定されたUDP-ガラクトーストランスポーターとの有意な相同性を保有する推定遺伝子(遺伝子座Q6CR04、UDP-ガラクトーストランスポーター(HUT1のホモログ)の存在を含むことが見出された。さらに、サッカロミセス・セレビシエは、K.ラクチスHUT1とアミノ酸レベルで53%同一の相同遺伝子(HUT1)を含有しており、それは、(異種ガラクトース転移酵素の存在下で)グリカンにガラクトースを取り込む能力の増加と実験的に関連付けられている(Kainuma M. et al., 2001 Yeast, 18:533-541)。K.ラクチスのUDP-ガラクトースをゴルジに輸送する生得的な能力は、公開された手法を使用して調製される、放射標識されたUDP-ガラクトースおよびK.ラクチスゴルジ膜小胞を利用して、容易に確認することができる(Gao, XD, Nishikawa, A and Dean, N, J Biol Chem 276:6, 4424-32 (2001))。付加的なUDP-ガラクトーストランスポーター活性は、実施例4に概説されるような発現カセット、ベクター、および株を使用した、異種UDP-ガラクトーストランスポーター遺伝子の過剰発現により、K.ラクチスに提供される。使用される異種UDP-ガラクトーストランスポーターの例は、ヒトUDP-ガラクトーストランスポーター(UGT1)(Miura N.I et al., 1996 J Biochem, 120:236-241)、S.ポンベUDP-ガラクトーストランスポーター(GMS1)(Kainuma, M, Ishida, N, Yoko-o, T, Yoshioka, S, Takeuchi, M, Kawakita, M and Jigami, Y , Glycobiology 9:2, 133-41 (1999))、または上記のS.セレビシエUDP-ガラクトーストランスポーター(HUT1)である。
ヒトにおけるGDP-フコースのゴルジ移入は、フコース特異的なNST、FUCT1(これの変異は白血球付着不全症II型の原因となる)を通して達成される。K.ラクチスにおけるGDP-フコースのゴルジ輸送を確実にするための直接のアプローチは、生物においてヒトFUCT1を発現させることである。図15、レーン5は、実施例4に概説されたような発現カセット、ベクター、および株を利用した、K.ラクチスにおけるMYCタグ付きヒトFUCT1の発現を証明している。広範囲の既知のGDP-フコーストランスポーターが、任意で、ゴルジへGDP-フコースを輸送するためにK.ラクチスにおいて発現させられる(例えば、イヌ、マウス、ブタ、およびウシのような他の哺乳動物種、またはトリ(例えば、ニワトリ)もしくは魚(例えば、ゼブラフィッシュ)、またはその他の多くの種に由来するGDP-フコーストランスポーター)。別のアプローチは、リーシュマニア(Leishmania)LPG2タンパク質のような多重特異的NSTのK.ラクチスへの導入である(Segawa H. et al., 2005 J Biol Chem, 280:2028-2035)。LPG2は、GDP-マンノースおよびGDP-フコースの両方を輸送する能力を有するため、これらの二つのヌクレオチド糖の相対的な合成および輸送の平衡を保つための有用なツールである。このバランスの制御は、フコシル化生成物の全体収率を最大限にしつつ、株の生存能を維持するために重要である。操作された株におけるゴルジGDP-フコース輸送の成功の一つの直接の指標は、細胞質GDP-L-フコースシンセターゼに対する生成物フィードバック阻害の軽減を通して増加した全細胞GDP-フコースレベルである。K.ラクチスにおけるヒトFUCT1、またはリーシュマニアLPG2、またはヒトUGT1の機能的活性のより直接的な指標は、精製された酵母ゴルジ小胞調製物への標識されたヌクレオチド糖の取り込み量の測定である(Gao, XD, Nishikawa, A and Dean, N, J Biol Chem 276:6, 4424-32 (2001))。
実施例6 K.ラクチスマンナンにおけるα(1,2)GlcNAcの排除
K.ラクチス細胞壁のマンナンは、直鎖状のα(1,6)結合型マンノース骨格を含み、それに、分枝状のα(1,2)結合型マンノース側鎖が接着している。これらの分枝の多くは単一のα(1,3)-マンノースで終結しており、末端の最後から二番目のα(1,2)マンノース基は、α(1,2)結合型N-アセチルグルコサミンによって修飾されていることが多い(Guillen E. et al., 1999 J Biol Chem, 274:6641-6646)。このα(1,2)GlcNAcは、ガラクトース付加のための適当なアクセプターではなく、従って、ガラクトースおよびフコースの付加のための活路を開くためには、K.ラクチスマンナンからGlcNAcを排除することが望ましい。末端α(1,2)GlcNAcの形成は、二つの以前に記載されたK.ラクチス変異、mnn2-1およびmnn2-2のいずれかの導入により防止される(Smith W. L. et al., 1975 J Biol Chem, 250:3426-3435)。前者はN-アセチルグルコサミン転移酵素活性を消滅させ、後者はUDP-GlcNAcゴルジ輸送活性を除去する。いずれかの変異を保持しているK.ラクチス株は生存可能であるが、いずれかの存在は、末端α(1,2)-GlcNAcを欠くマンナンをもたらす。図12、パネルAは、N-アセチルグルコサミン転移酵素をコードするGNT1(MNN2-1)遺伝子座の周囲のK.ラクチスゲノムを例示する。GNT1(MNN2-1)遺伝子全体ならびにおよそ1kbの5'および3'の隣接配列を含むおよそ3kbのK.ラクチス染色体DNAを、大腸菌プラスミドへクローニングした。次いで、5'末端がGNT1メチオニン開始コドンである、図中「Δ」と名付けられた正確な1000bp DNAセグメントを、組込みベクターpINT-1を作製するために欠失させた(図12、パネルB)。K.ラクチスにおいて複製できないこのベクターを、示された制限エンドヌクレアーゼSwaIにより直鎖化し、電気穿孔によりK.ラクチス株SAY572(uraA1 trp1 leu2 lysA1 metA1 nej::LEU2)(Kegel, A, Martinez, P, Carter, SD and Astrom, SU. Nucleic Acids Res 34:5, 1633-45 (2006))へと形質転換した。SAY572は、非相同組換え欠損であり、形質転換に由来するURA+コロニーは、GNT1遺伝子座における相同組換えにより直鎖状pINT-1を取り込むことにより生存し、図13に概説されるような共組込み体構造を作製した。非選択培地での増殖後、分解されたURA-共組込み体を、5FOAおよびウラシルを含有している培地へ播種することにより単離した。図14、パネルAは、(GlcNAcに特異的な、蛍光標識されたグリフォニア・シンプリシフォニアレクチンII、GSIIにより染色された)回収されたURA-クローンのプールのFACSスキャンを示す。二つの観察されたピークは予想通りであり、一つ(FACS bright)は野生型へと復帰したクローンを表し、第2のピーク(FACS dark)は1000bp GNT1欠失を維持するために分解したクローンであった。図14、パネルBは、FACS dark集団から精製された二つのクローンにおけるPCRによるこの欠失の確認を示す。これらのクローンは、マンナンにGlcNAcを取り込まない。
K.ラクチス細胞壁のマンナンは、直鎖状のα(1,6)結合型マンノース骨格を含み、それに、分枝状のα(1,2)結合型マンノース側鎖が接着している。これらの分枝の多くは単一のα(1,3)-マンノースで終結しており、末端の最後から二番目のα(1,2)マンノース基は、α(1,2)結合型N-アセチルグルコサミンによって修飾されていることが多い(Guillen E. et al., 1999 J Biol Chem, 274:6641-6646)。このα(1,2)GlcNAcは、ガラクトース付加のための適当なアクセプターではなく、従って、ガラクトースおよびフコースの付加のための活路を開くためには、K.ラクチスマンナンからGlcNAcを排除することが望ましい。末端α(1,2)GlcNAcの形成は、二つの以前に記載されたK.ラクチス変異、mnn2-1およびmnn2-2のいずれかの導入により防止される(Smith W. L. et al., 1975 J Biol Chem, 250:3426-3435)。前者はN-アセチルグルコサミン転移酵素活性を消滅させ、後者はUDP-GlcNAcゴルジ輸送活性を除去する。いずれかの変異を保持しているK.ラクチス株は生存可能であるが、いずれかの存在は、末端α(1,2)-GlcNAcを欠くマンナンをもたらす。図12、パネルAは、N-アセチルグルコサミン転移酵素をコードするGNT1(MNN2-1)遺伝子座の周囲のK.ラクチスゲノムを例示する。GNT1(MNN2-1)遺伝子全体ならびにおよそ1kbの5'および3'の隣接配列を含むおよそ3kbのK.ラクチス染色体DNAを、大腸菌プラスミドへクローニングした。次いで、5'末端がGNT1メチオニン開始コドンである、図中「Δ」と名付けられた正確な1000bp DNAセグメントを、組込みベクターpINT-1を作製するために欠失させた(図12、パネルB)。K.ラクチスにおいて複製できないこのベクターを、示された制限エンドヌクレアーゼSwaIにより直鎖化し、電気穿孔によりK.ラクチス株SAY572(uraA1 trp1 leu2 lysA1 metA1 nej::LEU2)(Kegel, A, Martinez, P, Carter, SD and Astrom, SU. Nucleic Acids Res 34:5, 1633-45 (2006))へと形質転換した。SAY572は、非相同組換え欠損であり、形質転換に由来するURA+コロニーは、GNT1遺伝子座における相同組換えにより直鎖状pINT-1を取り込むことにより生存し、図13に概説されるような共組込み体構造を作製した。非選択培地での増殖後、分解されたURA-共組込み体を、5FOAおよびウラシルを含有している培地へ播種することにより単離した。図14、パネルAは、(GlcNAcに特異的な、蛍光標識されたグリフォニア・シンプリシフォニアレクチンII、GSIIにより染色された)回収されたURA-クローンのプールのFACSスキャンを示す。二つの観察されたピークは予想通りであり、一つ(FACS bright)は野生型へと復帰したクローンを表し、第2のピーク(FACS dark)は1000bp GNT1欠失を維持するために分解したクローンであった。図14、パネルBは、FACS dark集団から精製された二つのクローンにおけるPCRによるこの欠失の確認を示す。これらのクローンは、マンナンにGlcNAcを取り込まない。
実施例7 α(1,2)ガラクトース残基のK.ラクチス表面ポリマンノースへの付加
後のガラクトースおよびフコースの付加のための土台として役立つよう、ガラクトース分子を、(実施例6のGNT1ヌル変異体背景で)K.ラクチス表面ポリマンノースへ付加する。シゾサッカロミセス・ポンベは、ガラクトースをマンノースアクセプターへ連結することができるgma12遺伝子の産物、α(1,2)ガラクトース転移酵素を保有している(Chappell T.G., et al., 1994 Mol Biol Cell, 5:519-528)。GMA12酵素は、S.セレビシエにおいて細胞壁マンナンにガラクトースを取り込む(Kainuma M. et al., 1999 Glycobiology, 9:133-141)。図15、レーン2は、実施例4に概説されたような発現カセット、ベクター、および株を利用した、K.ラクチスにおけるMYCタグ付きS.ポンベGMA12の発現を証明している。GMA12によるガラクトース取り込みは、mnn1株背景(即ち、α(1,3)マンノース転移酵素欠損)において、より効率的である(Kainuma M. et al., 1999 Glycobiology, 9:133-141)。K.ラクチスmnn1変異体は、ポリマンノースに取り込まれるα(1,2)ガラクトースの収率を最適化するためにここで利用される。
後のガラクトースおよびフコースの付加のための土台として役立つよう、ガラクトース分子を、(実施例6のGNT1ヌル変異体背景で)K.ラクチス表面ポリマンノースへ付加する。シゾサッカロミセス・ポンベは、ガラクトースをマンノースアクセプターへ連結することができるgma12遺伝子の産物、α(1,2)ガラクトース転移酵素を保有している(Chappell T.G., et al., 1994 Mol Biol Cell, 5:519-528)。GMA12酵素は、S.セレビシエにおいて細胞壁マンナンにガラクトースを取り込む(Kainuma M. et al., 1999 Glycobiology, 9:133-141)。図15、レーン2は、実施例4に概説されたような発現カセット、ベクター、および株を利用した、K.ラクチスにおけるMYCタグ付きS.ポンベGMA12の発現を証明している。GMA12によるガラクトース取り込みは、mnn1株背景(即ち、α(1,3)マンノース転移酵素欠損)において、より効率的である(Kainuma M. et al., 1999 Glycobiology, 9:133-141)。K.ラクチスmnn1変異体は、ポリマンノースに取り込まれるα(1,2)ガラクトースの収率を最適化するためにここで利用される。
実施例8 表面α(1,2)ガラクトース残基へのβ(1,3)ガラクトースの付加
次に、β(1,3)ガラクトースを、実施例7(前記)において既に取り込まれたα(1,2)ガラクトースへ付加する。シゾサッカロミセス・ポンベは、この目的のために好適な酵素、PVG3遺伝子の産物であるβ(1,3)ガラクトース転移酵素を保有している(Andreishcheva E.N. et al., 2004 J Biol Chem, 279:35644-35655)。この遺伝子を、実施例7の操作されたK.ラクチス株へ導入する。図15、レーン3は、実施例4に概説されるような発現カセット、ベクター、および株を利用した、K.ラクチスにおけるMYCタグ付きS.ポンベPVG3の発現を証明している。K.ラクチスマンナンへのガラクトースの成功した取り込みは、レクチン結合アッセイ(例えば、α結合型ガラクトースに関してはグリフォニア・シンプリシフォニアレクチンI-B4結合、β結合型ガラクトースに関してはピーナッツ凝集素結合)を使用してモニタリングされる。
次に、β(1,3)ガラクトースを、実施例7(前記)において既に取り込まれたα(1,2)ガラクトースへ付加する。シゾサッカロミセス・ポンベは、この目的のために好適な酵素、PVG3遺伝子の産物であるβ(1,3)ガラクトース転移酵素を保有している(Andreishcheva E.N. et al., 2004 J Biol Chem, 279:35644-35655)。この遺伝子を、実施例7の操作されたK.ラクチス株へ導入する。図15、レーン3は、実施例4に概説されるような発現カセット、ベクター、および株を利用した、K.ラクチスにおけるMYCタグ付きS.ポンベPVG3の発現を証明している。K.ラクチスマンナンへのガラクトースの成功した取り込みは、レクチン結合アッセイ(例えば、α結合型ガラクトースに関してはグリフォニア・シンプリシフォニアレクチンI-B4結合、β結合型ガラクトースに関してはピーナッツ凝集素結合)を使用してモニタリングされる。
実施例9 K.ラクチス細胞表面上のヒトHエピトープの発現およびHエピトープレベルの最適化
H抗原は、実施例8において作出された株のβ(1,3)ガラクトース修飾型マンナンへのα(1,2)フコシル基の付加により、K.ラクチス細胞表面上に発現される。α(1,2)フコシル化は、ヒトにおいては、二つの別個であるが関連している遺伝子の産物である二つのII型膜貫通型ゴルジα(1,2)フコシル基転移酵素、ホモ・サピエンスフコシル基転移酵素1(ガラクトシド2-α-L-フコシル基転移酵素;FUT1)およびホモ・サピエンスフコシル基転移酵素2(FUT2)のいずれかにより達成される(Sarnesto A. et al., 1992 J Biol Chem, 267:2737-2744;Larsen R.D. et al., 1990 Proc Natl Acad Sci U S A, 87, 6674-6678;Kelly R.J. et al., 1995 J Biol Chem, 270:4640-4649)。FUT1(H遺伝子としても公知)は、ヒト間葉組織において発現され;FUT2(分泌型遺伝子またはSeとしても公知)は、ヒト上皮組織において発現される。FUT2は、分泌物(涙、唾液、乳等)中および上皮/粘膜表面上のグリカンのα(1,2)フコシル化を担い、ヒトにおける病原体付着から防御することが示されているフコシル化を担う酵素である。FUT1およびFUT2は、触媒ドメインにおいてアミノ酸レベルで68%しか同一でない;しかしながら、それらは、実質的な差が存在し得ると予測した初期の研究にもかかわらず、基質優先に関しては酵素的にかなり類似していることが直接証明された。各酵素を、K.ラクチスにおいて個々に試験し、H抗原発現を、ハリエニシダ(Ulex europaeus)レクチン結合により、またはELISAによりモニタリングする。FUT1およびFUT2は、基質特異性の軽微な差を保有している。各遺伝子産物または両遺伝子産物を発現させ、発現のレベルまたは比を、H抗原の最終収率を最大限にするために操作することができる。図15、レーン4は、実施例4に概説されたような発現カセット、ベクター、および株を利用した、K.ラクチスにおけるMYCタグ付きヒトFUT1の発現を証明している。
H抗原は、実施例8において作出された株のβ(1,3)ガラクトース修飾型マンナンへのα(1,2)フコシル基の付加により、K.ラクチス細胞表面上に発現される。α(1,2)フコシル化は、ヒトにおいては、二つの別個であるが関連している遺伝子の産物である二つのII型膜貫通型ゴルジα(1,2)フコシル基転移酵素、ホモ・サピエンスフコシル基転移酵素1(ガラクトシド2-α-L-フコシル基転移酵素;FUT1)およびホモ・サピエンスフコシル基転移酵素2(FUT2)のいずれかにより達成される(Sarnesto A. et al., 1992 J Biol Chem, 267:2737-2744;Larsen R.D. et al., 1990 Proc Natl Acad Sci U S A, 87, 6674-6678;Kelly R.J. et al., 1995 J Biol Chem, 270:4640-4649)。FUT1(H遺伝子としても公知)は、ヒト間葉組織において発現され;FUT2(分泌型遺伝子またはSeとしても公知)は、ヒト上皮組織において発現される。FUT2は、分泌物(涙、唾液、乳等)中および上皮/粘膜表面上のグリカンのα(1,2)フコシル化を担い、ヒトにおける病原体付着から防御することが示されているフコシル化を担う酵素である。FUT1およびFUT2は、触媒ドメインにおいてアミノ酸レベルで68%しか同一でない;しかしながら、それらは、実質的な差が存在し得ると予測した初期の研究にもかかわらず、基質優先に関しては酵素的にかなり類似していることが直接証明された。各酵素を、K.ラクチスにおいて個々に試験し、H抗原発現を、ハリエニシダ(Ulex europaeus)レクチン結合により、またはELISAによりモニタリングする。FUT1およびFUT2は、基質特異性の軽微な差を保有している。各遺伝子産物または両遺伝子産物を発現させ、発現のレベルまたは比を、H抗原の最終収率を最大限にするために操作することができる。図15、レーン4は、実施例4に概説されたような発現カセット、ベクター、および株を利用した、K.ラクチスにおけるMYCタグ付きヒトFUT1の発現を証明している。
いくつかの付加的なアプローチが、最適化を与えるため、任意で、利用される。
・mnn1変異体およびmnn2変異体の使用(上記実施例6および7を参照のこと)
・VRG4変異体の使用(上記実施例4を参照のこと)
・ホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)、ホスホマンノースムターゼ(PMM)、およびGDP-マンノースピロホスホリラーゼ(PSA1)の過剰発現の使用(上記実施例4を参照のこと)
・発現パラメーターの制御、例えば、実施例4(上記)に記載された発現カセットにおけるより強力なまたはより弱いプロモーターの使用を通した酵素レベルの調整
・細胞収率は、基本増殖培地、炭素源、接種原調製法、および様々な物理的増殖条件(即ち、曝気/撹拌速度、培養温度、培養pH)のような変数を操作することにより、バイオリアクターにおいて制御された条件下で最適化される。発酵過程における複数の変数の迅速な最適化のための統計的手法が、よく確立されおり、ここで利用される(Kalil S.J. et al., 2001 Appl Biochem Biotechnol, 94:257-264)。
・mnn1変異体およびmnn2変異体の使用(上記実施例6および7を参照のこと)
・VRG4変異体の使用(上記実施例4を参照のこと)
・ホスホマンノースイソメラーゼ(PMI)、ホスホマンノースムターゼ(PMM)、およびGDP-マンノースピロホスホリラーゼ(PSA1)の過剰発現の使用(上記実施例4を参照のこと)
・発現パラメーターの制御、例えば、実施例4(上記)に記載された発現カセットにおけるより強力なまたはより弱いプロモーターの使用を通した酵素レベルの調整
・細胞収率は、基本増殖培地、炭素源、接種原調製法、および様々な物理的増殖条件(即ち、曝気/撹拌速度、培養温度、培養pH)のような変数を操作することにより、バイオリアクターにおいて制御された条件下で最適化される。発酵過程における複数の変数の迅速な最適化のための統計的手法が、よく確立されおり、ここで利用される(Kalil S.J. et al., 2001 Appl Biochem Biotechnol, 94:257-264)。
実施例10 生物学的試験
K.ラクチスの操作された株は、プロバイオティック生成物として使用される。操作された株は、多数の病原性生物の付着決定基へ効率的に結合する多価α(1,2)フコシル化グリカン構造をその細胞表面上に保持している。操作された株は、摂取された場合に、消化管病原体のためのデコイとして作用する。本発明において作出された表面α(1,2)フコシル化K.ラクチス株の能力は、病原体による付着および感染を防止する。K.ラクチス株は、消化管感染の適当な動物モデルにおいて効力について試験される(Newell D.G., 2001 Symp Ser Soc Appl Microbiol, 57S-67S)。
K.ラクチスの操作された株は、プロバイオティック生成物として使用される。操作された株は、多数の病原性生物の付着決定基へ効率的に結合する多価α(1,2)フコシル化グリカン構造をその細胞表面上に保持している。操作された株は、摂取された場合に、消化管病原体のためのデコイとして作用する。本発明において作出された表面α(1,2)フコシル化K.ラクチス株の能力は、病原体による付着および感染を防止する。K.ラクチス株は、消化管感染の適当な動物モデルにおいて効力について試験される(Newell D.G., 2001 Symp Ser Soc Appl Microbiol, 57S-67S)。
カンピロバクターの操作されたK.ラクチス細胞への直接結合
カンピロバクターの、操作されたK.ラクチスへ付着する能力は、顕微鏡で査定される。野生型K.ラクチスおよび操作されたK.ラクチスを、細菌と共にインキュベートし、洗浄し、結合した細菌を位相差顕微鏡下で可視化し定量化する。
カンピロバクターの、操作されたK.ラクチスへ付着する能力は、顕微鏡で査定される。野生型K.ラクチスおよび操作されたK.ラクチスを、細菌と共にインキュベートし、洗浄し、結合した細菌を位相差顕微鏡下で可視化し定量化する。
固相アッセイ
カンピロバクターの組織血液型抗原へ付着する能力、および様々な薬剤によるこの結合の阻害は、DIG標識された細菌を使用した細菌結合ウェスタンブロットアッセイにおいて査定される。ムチンをSDS-PAGEゲルのレーン上で泳動し、次いで、ニトロセルロース膜にエレクトロブロットする。次いで、膜を洗浄し、DIG標識された細菌懸濁物に浸漬し、結合した細菌を、X-リン酸およびニトロブルーテトラゾリウムにより染色されるアルカリホスファターゼ結合抗DIG抗体により可視化する。固相ノーウォークウイルス結合阻害アッセイにおいては、分泌型個体から入手された唾液を精製し、96穴プレートの底に置く。ノーウォークウイルスカプシドの結合を、公知の方法を使用して測定する。両アッセイにおいて、試験薬剤が付着を阻害する有効性は、容易に査定される。ここで作出された操作されたK.ラクチス株の場合、各アッセイにおいて観察されるシグナルを低下させる、病原体とのプレインキュベーション工程の有効性が査定される。
カンピロバクターの組織血液型抗原へ付着する能力、および様々な薬剤によるこの結合の阻害は、DIG標識された細菌を使用した細菌結合ウェスタンブロットアッセイにおいて査定される。ムチンをSDS-PAGEゲルのレーン上で泳動し、次いで、ニトロセルロース膜にエレクトロブロットする。次いで、膜を洗浄し、DIG標識された細菌懸濁物に浸漬し、結合した細菌を、X-リン酸およびニトロブルーテトラゾリウムにより染色されるアルカリホスファターゼ結合抗DIG抗体により可視化する。固相ノーウォークウイルス結合阻害アッセイにおいては、分泌型個体から入手された唾液を精製し、96穴プレートの底に置く。ノーウォークウイルスカプシドの結合を、公知の方法を使用して測定する。両アッセイにおいて、試験薬剤が付着を阻害する有効性は、容易に査定される。ここで作出された操作されたK.ラクチス株の場合、各アッセイにおいて観察されるシグナルを低下させる、病原体とのプレインキュベーション工程の有効性が査定される。
哺乳動物細胞結合アッセイ
本明細書に記載されるようにして生成されたα(1,2)フコシル化グリカンは、遺伝学的に修飾されたCHO細胞へのカンピロバクターの結合を阻害する能力について試験される。操作されたK.ラクチスとのプレインキュベーション工程の存在下または非存在下での、ヒトα(1,2)フコシル基転移酵素(FUT1)によりトランスフェクトされ、細胞表面α(1,2)フコシル化タンパク質を発現しているCHO細胞への、細菌の結合を、ベクターのみによりトランスフェクトされた細胞および親CHO細胞と比較する。データは、陽性対照と比べた、細菌の細胞への会合の阻害率として解釈される。
本明細書に記載されるようにして生成されたα(1,2)フコシル化グリカンは、遺伝学的に修飾されたCHO細胞へのカンピロバクターの結合を阻害する能力について試験される。操作されたK.ラクチスとのプレインキュベーション工程の存在下または非存在下での、ヒトα(1,2)フコシル基転移酵素(FUT1)によりトランスフェクトされ、細胞表面α(1,2)フコシル化タンパク質を発現しているCHO細胞への、細菌の結合を、ベクターのみによりトランスフェクトされた細胞および親CHO細胞と比較する。データは、陽性対照と比べた、細菌の細胞への会合の阻害率として解釈される。
インビボ試験
インビボのカンピロバクターコロニー形成は、近交系マウス系統BALB/cにおいて達成される(Blaser M.J. et al., 1983 Infect Immun, 39:908-916)。本明細書に記載されるようにして作出された表面α(1,2)フコシル化K.ラクチス株による感染の阻害または低下は、二つの様式で、即ち、予防および感染後処置により、査定される。操作された酵母、野生型酵母、または媒体を、108CFUのカンピロバクター・ジェジュニ侵襲性株287ipの接種の2日前または7日後のいずれかに、マウスへ経口投与する。コロニー形成のレベルを、大便試料中のカンピロバクターCFUを測定することによりモニタリングする。
インビボのカンピロバクターコロニー形成は、近交系マウス系統BALB/cにおいて達成される(Blaser M.J. et al., 1983 Infect Immun, 39:908-916)。本明細書に記載されるようにして作出された表面α(1,2)フコシル化K.ラクチス株による感染の阻害または低下は、二つの様式で、即ち、予防および感染後処置により、査定される。操作された酵母、野生型酵母、または媒体を、108CFUのカンピロバクター・ジェジュニ侵襲性株287ipの接種の2日前または7日後のいずれかに、マウスへ経口投与する。コロニー形成のレベルを、大便試料中のカンピロバクターCFUを測定することによりモニタリングする。
Claims (35)
- 酵母細胞を含む組成物であって、該酵母細胞がGDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GMD)をコードする外来性核酸分子およびGDP-L-フコースシンセターゼ(GFS)をコードする外来性核酸分子を含む、組成物。
- 前記GMDが、H.ピロリ(H.pylori)GMD、大腸菌(E.coli)GMD、およびホモ・サピエンス(Homo sapiens)GMDからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
- GDP-マンノースピロホスホリラーゼをコードする核酸分子をさらに含む、請求項1記載の組成物。
- ホスホマンノースイソメラーゼをコードする核酸分子をさらに含む、請求項1記載の組成物。
- ホスホマンノースムターゼをコードする核酸分子をさらに含む、請求項1記載の組成物。
- 前記酵母細胞が、ヌクレオチド糖トランスポーター(NST)をコードする核酸分子をさらに保持している、請求項1記載の組成物。
- 前記NSTが、ヒトFUCT1、ヒトUGT1、およびS.セレビシエ(S.cerevisiae)HUT1からなる群より選択される、請求項6記載の組成物。
- 前記酵母細胞が内在性NSTを過剰発現している、請求項1記載の組成物。
- 前記酵母細胞が末端N-アセチルグルコサミン転移酵素活性またはUDP-N-アセチルグルコサミントランスポーター活性を欠く、請求項6記載の組成物。
- 前記酵母細胞がクルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)酵母細胞である、請求項1記載の組成物。
- 前記酵母細胞がmnn2-1変異またはmnn2-2変異を保持しているクルイベロミセス・ラクチス酵母細胞である、請求項9記載の組成物。
- 前記酵母細胞がα(1,2)ガラクトース転移酵素をコードする核酸分子をさらに保持している、請求項9記載の組成物。
- α(1,2)ガラクトース転移酵素をコードする前記核酸分子が、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)gma12である、請求項12記載の組成物。
- 前記酵母細胞がβ(1,3)ガラクトース転移酵素をコードする核酸分子をさらに保持している、請求項12記載の組成物。
- β(1,3)ガラクトース転移酵素をコードする前記核酸分子がシゾサッカロミセス・ポンベPVG3である、請求項12記載の組成物。
- 前記酵母細胞がフコシル基転移酵素をコードする組換え核酸分子をさらに保持している、請求項12記載の組成物。
- 前記フコシル基転移酵素がヒトα(1,2)フコシル基転移酵素である、請求項16記載の組成物。
- 前記酵母細胞の属がクルイベロミセスである、請求項1記載の組成物。
- 細胞表面上に非天然グリカンを提示する酵母細胞を含む組成物。
- 前記非天然グリカンがαフコシル化グリカンを含む、請求項19記載の組成物。
- 前記非天然グリカンがシアリルグリカンを含む、請求項19記載の組成物。
- 前記酵母細胞の属がクルイベロミセスまたはサッカロミセス(Saccharomyces)である、請求項19記載の組成物。
- 前記酵母細胞がクルイベロミセス・ラクチス酵母細胞である、請求項19記載の組成物。
- コードされたGDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼおよびコードされたGDP-L-フコースシンセターゼが発現される条件下で請求項1記載の酵母を培養する工程を含む、GDP-フコースを含有している酵母を作製する方法。
- ホスホマンノースイソメラーゼ、ホスホマンノースムターゼ、およびGDP-マンノースピロホスホリラーゼからなる群より選択される少なくとも一つの過剰発現された酵素と同時に、コードされたGDP-マンノース-4,6-デヒドラターゼおよびコードされたGDP-L-フコースシンセターゼが発現される条件下で、請求項1記載の酵母を培養する工程を含む、GDP-フコースを含有している酵母を作製する方法。
- コードされたヌクレオチド糖トランスポーターが発現される条件下で請求項4記載の酵母を培養する工程を含む、GDP-フコースおよびUDP-ガラクトースの両方をゴルジに移入する能力を有する酵母を作製する方法。
- クルイベロミセス・ラクチス酵母細胞mnn2-1変異またはmnn2-2変異を請求項6記載の酵母細胞へ導入する工程を含む、末端α(1,2)GlcNAcマンナンを欠く酵母を作製する方法。
- コードされたα(1,2)糖転移酵素が発現される条件下で請求項12記載の酵母を培養する工程を含む、表面ポリマンノース上にα(1,2)ガラクトース残基を有する酵母を作製する方法。
- β(1,3)糖転移酵素が発現される条件下で請求項14記載の酵母を培養する工程を含む、表面α(1,2)ガラクトース残基に連結されたβ(1,3)ガラクトースを有する酵母を作製する方法。
- フコシル基転移酵素が発現される条件下で請求項16記載の酵母を培養する工程を含む、細胞表面上にα(1,2)フコシル化グリカンを有する酵母を作製する方法。
- 外来性グリカンを含む組成物を対象に投与する工程を含む、対象において感染を処置するか、感染を防止するか、または感染のリスクを低下させる方法であって、該グリカンが病原体に結合し、該対象が、該病原体に感染しているかまたは該病原体に感染するリスクを有している、方法。
- 前記感染がノーウォーク様(Norwalk-like)ウイルスまたはカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)により引き起こされる、請求項31記載の方法。
- 前記対象が哺乳動物である、請求項31記載の方法。
- 前記対象がヒトである、請求項31記載の方法。
- 前記対象がブタ、ウマ、ニワトリ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、またはネコである、請求項31記載の方法。
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