JP2012502640A - アロマトレウム・アロマチカムEbN1(アゾアルカス・エスピーEbN1)のアルコールデヒドロゲナーゼを用いたL−フェニレフリンの製造方法 - Google Patents

アロマトレウム・アロマチカムEbN1(アゾアルカス・エスピーEbN1)のアルコールデヒドロゲナーゼを用いたL−フェニレフリンの製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、酵素により触媒される合成ステップ、具体的にはアルコールデヒドロゲナーゼにより触媒される合成ステップを含む、光学活性置換アルコールを製造するための多段階方法に関する。本発明の方法は、具体的にはフェニレフリン、すなわち3-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-メチルアミノ-エチル]-フェノールの製造に適している。
【選択図】図1

Description

本発明は、酵素により触媒される合成ステップ、具体的にはアルコールデヒドロゲナーゼにより触媒される合成ステップを含む、光学活性置換アルコールを製造するための多段階方法に関する。本発明の方法は、具体的にはフェニレフリン、すなわち3-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-メチルアミノ-エチル]-フェノールの製造に適している。
フェニレフリンは、交感神経興奮薬群の薬理学的活性物質であり、α1-アドレナリン作用受容体に対してアゴニスト活性を有する。欠失した3-ヒドロキシル基以外は、構造的にアドレナリンと同じであり、主に局所的血管収縮薬としての用途がある。従って、これは、点鼻薬中の活性物質として、粘膜に対する充血除去作用を有する。点眼薬の場合には、散瞳作用も有するため、瞳孔の散大を引き起こす。
フェニレフリンの製造については、すでに文献に記載されている。ラセミ体として所望の生成物を製造した後、好適なキラル補助剤での分割により該生成物に変換する多数の方法以外に、立体選択的合成方法は、生じる50%の不適当な鏡像異性体の不経済な破壊を回避することができるため、好ましいものとして考えることができる。
従来技術から公知の塩酸L-フェニレフリンの製造方法は、Tetrahedron Letters 30 (1989), 367-370又はChem. Pharm. Bull. 43 (5) (1995) 738-747に従ってプロキラルN-ベンジル-N-メチル-2-アミノ-m-ベンジルオキシアセトフェノン塩酸塩の不斉水素化反応を含む。
Achiwaらは、Tetrahedron Letters 30 (1989), 367-370に、触媒としての[Rh(COD)Cl]2 / (2R,4R)-4-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ-メチル)-N-メチル-アミノピロリジンの存在下で、水素と、基質としての3-ベンジルオキシ-2-(N-ベンジル-N-メチル)-アミノアセトフェノン塩酸塩の不斉水素化反応を記載している。反応混合物の濾過及びエバポレーションによる濃縮の直後に、ベンジル窒素保護基を切断すれば、フェニレフリンが生成物として得られる。L-鏡像異性体と一緒に、D-鏡像異性体が少なくとも7.5%(85% ee)の割合で不純物として生成される。反応のためには、触媒を基質に対して1:2,000のモル比で用いなければならない。この方法の欠点は、得られたL-フェニレフリンを少なくとも98% eeの純度(医薬品として使用するのに要求される)まで経済的に精製することができないことである。
Chem. Pharm. Bull. 43 (5) (1995) 738-747では、基質と触媒のモル比約1,000:1が不斉水素化反応のために好ましいと記載されている。しかし、不斉反応ステップにおけるかなり多量の触媒の使用にもかかわらず、高価な精製工程なしには、製薬を目的とするL-鏡像異性体として十分な純度で製造することができず、不純物としてかなり高い割合のD-鏡像異性体を含む混合物としてしか得ることができない。また、工業的規模でのL-フェニレフリンの製造を目的として、不斉水素化反応ステップの約20時間という比較的長い反応時間も、設備の点からみると高価で、コスト高であり、しかも無視することができない安全上のリスクをかかえた反応ステップを意味している。
WO 00/43345号に記載される方法は、塩酸L-フェニレフリンの経済的に有意義な製造のための前記条件のいくつかを満たしているが、ここでもやはり保護基の使用が必要であるため、製造方法は不経済になってしまう。さらに、この方法では、立体選択ステップにおいて、所望の生成物は93% eeでしか取得されないため、該生成物に費用のかかる精製を再度行う必要がある。
従って、本発明が解決しようとする課題は、従来技術と比較してより経済的に実施することができる、光学活性アルコール、例えばL-フェニレフリンの製造の新規方法を提供することである。具体的には、上記の改善された方法は、保護基の使用を必要とせず、高度の立体選択性を有するものでなければならない。
驚くことに、上記の課題は、特許請求の範囲に記載の式IVの光学活性置換アルコール:
Figure 2012502640
の製造方法を提供することにより解決することができる。
これに基づき、本発明は、特に、活性物質であるフェニレフリン(3-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-メチルアミノ-エチル]-フェノール;4)の予想外に有利な製造方法を可能にする。この好ましい実施形態は、以下の反応スキームによって表すことができる:
Figure 2012502640
本方法における2つの重要なステップの1つは、3’-ヒドロキシアセトフェノン(3-HAP、1)の選択的側鎖塩素化により、3'-ヒドロキシ-2-クロロアセトフェノン(HCAP、2)を得ることである。
第2の重要なステップは、特に酵素、すなわちアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を用いて、HCAP(2)のエナンチオ選択的還元により、(R)-3-(2-クロロ-1-ヒドロキシエチル)-フェノール(HCPE、3)を得ることに関する。
本発明において提供される方法は、前述した従来技術とはいくつかの重要な点で有意に異なる。
従って、保護基を使用することなく合成全体を行うため、本方法は従来技術と比較して、より経済的である。これは、特に第1段階については、驚くべきことで、予想外のことである。
水素化反応触媒としてデヒドロゲナーゼを使用することにより、高光学純度の(R)-3-(2-クロロ-1-ヒドロキシエチル)-フェノール(HCPE、3)を取得する経済的経路がもたらされる。顕著な量の不要な鏡像異性体は形成されない(所望の鏡像異性体の%ee値は、>98%の範囲、例えば>99%〜最大約100%、例えば最大約99.9%である)。
上記反応は(限定されるわけではないが)さらに、有機溶媒と水の二相系において実施することができ、これによって、より経済的な操作がさらに可能になる。そして、所望のアルコールへのケトンの完全な変換が可能である。混合物をさらに処理すれば、その二相性である故に特に好ましい。なぜなら、生成物は抽出により触媒残留物(タンパク質)から分離されるからである。さらに、有機相の使用によって、生体触媒の低分子フェノールケトンへの暴露が少なくなるため、触媒の不活性化及び/又は阻害が阻止される。
アロマトレウム・アロマチカム(アゾアルカス・エスピー)EbN1由来のフェニル−エタノールデヒドロゲナーゼの核酸配列及びアミノ酸配列(それぞれ、配列番号1及び2)を示す。
1. 好ましい実施形態
本発明の第1の目的は、式IVの光学活性置換アルコール:
Figure 2012502640
〔式中、
Cycは、単核又は多核、特に単核の、4〜7員、特に5又は6員の、飽和又は不飽和、特に不飽和の、主として芳香族、炭素環式又は複素環式環、特に炭素環式環であり、少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基を有し、場合により1回以上置換されていてもよく、6員環の場合には、ヒドロキシル基は、特にアミノ基を含むCycの側鎖に対してメタ位に位置し;
R1及びR2は、互いに独立して、H、又は場合により1回以上置換されていてもよい同一若しくは異なるアルキル残基である。〕
又は該化合物の塩、例えば、特に無機酸(HClなど)の酸付加塩
の製造方法であって、
いずれの場合も、純粋な立体異性体形態、例えば(R)若しくは(S)形態、又は立体異性体の混合物、例えばラセミ体であり、
(a)式Iのケトン:
Figure 2012502640
〔式中、Cycは前記と同じ意味である。〕
を、アルコール、特に脂肪族アルコールの存在下で、ハロゲン化、例えば特に塩素化させるが、特に塩化スルフリルと反応させて、式IIのハロゲン化合物、特に塩素化合物:
Figure 2012502640
〔式中、Cycは前記と同じ意味であり、Halはハロゲン原子、例えばF、Br若しくは特にClである。〕
を取得し、
(b)得られた式IIの化合物を、場合により事前の単離又は濃縮後、酵素的に還元して、式IIIのアルコール:
Figure 2012502640
〔式中、Cyc及びHalは前記と同じ意味である。〕
を取得し、
(c)得られた式IIIのアルコールを、場合により事前の単離又は濃縮後、式HNR1R2のアミン(R1及びR2は前記と同じ意味である)と反応させて式IVの化合物を取得し、場合により該化合物を反応混合物から、場合により純粋な立体異性体形態で単離する、
上記方法に関する。
合成に用いられる前記式Iのケトンは、それ自体公知であり、一般的に公知の有機合成方法を用いて取得することができる。
特に、段階(a)での反応は、式Iのケトンのモル当たり1〜10モル当量、2〜8モル当量又は3〜5モル当量の脂肪族アルコールの存在下で実施する。
好適な脂肪族アルコールは、特に、1〜6個、特に1〜4個の炭素原子と、1〜5個、特に1〜3個のヒドロキシル基を有するモノオール又はポリオール、特に1〜4個の炭素原子を有するモノオール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノール;又はより長鎖のモノオール、例えばn-ペンタノール及びn-ヘキサノール、又はポリオール、例えばプロパンジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール若しくはペンタン-1,3,5-トリオール;及び上記アルコールの異性体形態である。
段階(c)における化学反応は、特に開鎖又は環状エーテル中の溶液中で実施することができる。好適なエーテルは、特にMTBE、メチル-THF、ジオキサン、特にTHFである。
特に、本発明の反応の段階(b)は、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(E.C 1.1.1.1)から選択される少なくとも1つの酵素により触媒される。
ADHは、例えば、アロマトレウム属(Aromatoleum)(アゾアルカス属(Azoarcus))の微生物に由来する、特にアロマトレウム・アロマチカム(Aromatoleum aromaticum)EbN1菌に由来するデヒドロゲナーゼから選択される。
例えば、段階(b)を実施するための酵素は、
(i)配列番号2、あるいは
(ii)配列番号1に対してアミノ酸残基の25%以下、例えば1〜24%、2〜20%、3〜15%若しくは4〜10%が、付加、欠失、挿入、置換、逆位若しくはこれらの組合せにより改変されている、及び/又は少なくとも50%、例えば少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%若しくは100%以上、例えば1〜20倍、若しくは2〜10倍若しくは3〜5倍の、配列番号2の酵素の酵素活性の活性を依然として有する配列
から選択されるポリペプチド配列を有する酵素から選択される。
別の実施形態において、段階(b)における反応は、還元等価体、特にNADH又はNADPHの添加により実施され、場合により反応中に消費された還元等価体の同時又は時間差再生を行ってもよい。
このために、再生は、それ自体公知の方法で、酵素的、電気化学的、又は電気−酵素的に実施することができる(Biotechnology Progress, 2005, 21, 1192; Biocatalysis and Biotransformation, 2004, 22, 89;Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 2001, 40, 169;Biotechnol Bioeng, 2006, 96, 18;Biotechnol Adv., 2007, 25, 369;Angew. Chem. Int. Ed. Engl, 2008, 47, 2275;Current Opinion in Biotechnology, 2003, 14, 421;Current Opinion in Biotechnology, 2003, 14, 583)。特に、再生は酵素的に実施し、再生酵素は、ADH(EC 1.1.1.1)、並びにADHとは異なるデヒドロゲナーゼ、例えば、特にグルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.47)、ギ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.2又はEC 1.2.1.43)及び亜リン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.20.1.1)から選択されるが、上記の再生は、好ましくはいわゆる「犠牲アルコール」、例えばブタン-又はペンタン-2-オールの存在下で行われ、これらは、還元等価体の酵素による再生において消費、すなわち酸化される。
特に、段階(b)における反応は、ADHを天然に若しくは組換えにより発現する微生物の存在下、又は該微生物に由来する、すなわち該細胞から得られたADH含有画分、又は該細胞から得られた細胞抽出物の存在下、又は純粋な若しくは実質的に純粋な酵素の存在下のいずれかで、実施することができる。本発明において用いられる酵素(純粋な形態、濃縮形態、又は酵素含有細胞抽出物として)は、さらに、それ自体公知の方法で用いられ、溶解、分散又は支持体上に固定で使用される。
例えば、段階(b)における反応は、エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、バチルス科(Bacillaceae)、リゾビウム科(Rhizobiaceae)、ラクトバチルス科(Lactobacillaceae)、ストレプトマイセス科(Streptomycetaceae)、ロドコッカス科(Rhodococcaceae)、ロドシクルス科(Rhodocyclaceae)及びノカルディア科(Nocardiaceae)の細菌から選択される微生物の存在下、又はこれら微生物に由来する画分若しくは抽出物の存在下で実施する。好適な属の具体例として、特にエッシェリヒア属(Escherichia)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)及びバチルス属(Bacillus)がある。好適な種の具体例は、特に大腸菌(E. coli)である。
特に、微生物は、前記の定義に従うADHをコードする核酸構築物で形質変換されている組換え微生物でよい。場合により、用いる組換え微生物は、補因子再生を支持するために、前記の定義に従うADHとは異なる外因性若しくは内因性デヒドロゲナーゼをさらに発現することができるものであってもよい。
別の実施形態では、段階(b)の反応は、二相液体反応培地中で実施することができる。このために、例えば水性−有機反応培地が用いられ、式IIの遊離物及び式IIIの生成物の両方が水相よりも有機相における溶解度が高くなり、例えば水相−エーテル相、又は例えば水/ヘプタン及び水/ヘキサン相などがある。
本発明の別の目的は、一般式IIの化合物:
Figure 2012502640
〔式中、Cyc及びHalは前記と同じ意味である。〕
の製造方法であって、
式Iのケトン:
Figure 2012502640
〔式中、Cycは前記と同じ意味である。〕
をハロゲン化、特に塩素化するが、特に好適なハロゲン化剤、特に塩化スルフリルと、脂肪族アルコールの存在下で反応させて、式IIのハロゲン化合物、特に塩素化合物を取得する、
上記方法に関する。
段階(a)における反応は、特に、式Iのケトンのモル当たり1〜10、例えば2〜8又は3〜5モル当量のアルコールの存在下で実施する。
本発明の別の目的は、式IIIの化合物:
Figure 2012502640
〔式中、Cyc及びHalは前記と同じ意味である。〕
の製造方法であって、一般式IIの化合物:
Figure 2012502640
〔式中、Cyc及びHalは前記と同じ意味である。〕
を酵素的に還元して、式IIIのアルコールを取得する、上記方法に関する。この間、前述のように酵素反応を実施する。
本発明において、Cycは、少なくとも1つのHO基、例えば、特に3-ヒドロキシフェニル残基を含む、特に単核、炭素環式又は複素環式4、5若しくは6員の芳香環である。Halは、特に塩素原子である。
本発明の別の目的は、式III若しくはIVの化合物の製造、特に3-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-メチルアミノ-エチル]-フェノールの製造のための、前記の定義に従うアルコールデヒドロゲナーゼ又は前記の定義に従う該酵素を産生する微生物の使用に関する。
2. 定義
2.1 一般的な用語
特に示さない限り、以下の一般的意義が適用される。
本発明において「光学活性」とは、分子中に少なくとも1つの不斉中心を有する化合物である。
本発明において「遊離ヒドロキシル基」とは、誘導体化形態(例えば、エステル又はエーテル基として)ではないことを意味する。
本発明において「純粋な立体異性体生成物、又は純粋な鏡像異性体生成物」という用語、例えば、(3-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-メチルアミノ-エチル]-フェノール)又は(R)-3-(2-クロロ-1-ヒドロキシエチル]-フェノールは、鏡像異性体濃縮を示す鏡像異性体を意味する。具体的には、本発明の方法では、少なくとも90%ee、好ましくは少なくとも95%ee、特に好ましくは少なくとも98%ee、及び極めて好ましくは少なくとも99%ee以上の鏡像異性体純度が達成される。
「鏡像異性体純度」は、パラメーター
ee%=[XA-XB]/[XA+XB]*100
(XA及びXBは、鏡像異性体A及びBのモル分率を意味する)
を用いて決定される。
反応は、純粋な酵素、濃縮酵素又は全細胞のいずれかの存在下で「酵素的に」実施される。
2.2 具体的化学用語
「単核」若しくは「多核」残基は、1個以上の環状基を含む残基であり、多核残基の場合には、該環状基は、互いに直接、若しくは一般的架橋基を介して結合してもよいし、又は、互いに縮合してもよい。
「炭素環式」残基は、環炭素原子だけを含み、「複素環式」残基は、さらに1個以上、例えば1個、2個若しくは3個の同じ若しくは異なる環ヘテロ原子、例えばN、O若しくはSを含む。
これらの炭素環式又は複素環式環は、特に3〜12個、好ましくは4個、5個又は6個の環炭素原子を含む。具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、それらの一価不飽和又は多価不飽和類似体、例えばシクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル;そしてまた、O、N及びSから選択される1〜4個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和又は一価不飽和若しくは多価不飽和複素環式残基(該複素環は、場合により、もう1つの複素環又は炭素環と縮合していてもよい)を挙げることができる。特に、ピロリジン、テトラヒドロフラン、ピペリジン、モルホリン、ピロール、フラン、チオフェン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、クマロン、インドール及びキノリンから誘導される複素環式残基を挙げることができる。
好適な「置換基」の非制限的な例は、ハロゲン、OH、-SH、-NO2、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ及びアリールから選択される。
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素、特にフッ素、臭素又は塩素を意味する。
「低級アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状アルキル残基を意味し、例えばメチル、エチル、イソプロピル又はn-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-又はtert-ブチル、n-ペンチル又は2-メチル-ブチル、n-ヘキシル、2-メチル-ペンチル、3-メチル-ペンチル、2-エチル-ブチルがある。
「低級アルケニル」とは、2〜6個の炭素原子を有する前記アルキル基の、一価不飽和又は多価不飽和、好ましくは一価不飽和又は二価不飽和類似体を意味し、二重結合は炭素鎖の任意の位置に存在することが可能である。
「低級アルコキシ」とは、前記アルキル残基の、酸素終端類似体を意味する。
「アリール」とは、任意の環位置を介して結合する、単核又は多核、好ましくは単核又は二核の、場合により置換されていてもよい芳香族残基、特にフェニル又はナフチル、例えば1-又は2-ナフチルを意味する。これらのアリール残基は、場合により、前記の定義に従うハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、又はトリフルオロメチルから選択される1個又は2個の同じ又は異なる置換基を含んでいてもよい。
好適なCyc残基の具体例としては、フェニル、ナフチル、2-チエニル、3-チエニル; 2-フラニル、3-フラニル; 2-ピリジル、3-ピリジル又は4-ピリジル; 2-チアゾリル、4-チアゾリル又は5-チアゾリル; 4-メチル-2-チエニル、3-エチル-2-チエニル、2-メチル-3-チエニル、4-プロピル-3-チエニル、5-n-ブチル-2-チエニル、4-メチル-3-チエニル、3-メチル-2-チエニル; 3-クロロ-2-チエニル、4-ブロモ-3-チエニル、2-ヨード-3-チエニル、5-ヨード-3-チエニル、4-フルオロ-2-チエニル、2-ブロモ-3-チエニル及び4-クロロ-2-チエニルがあり、これらは、少なくとも1個のヒドロキシル環置換基をさらに含んでいる。
3. 本発明の方法の具体的実施形態
前述のスキーム1に示す多段階反応を参照しながら、本発明の別の実施形態を以下に説明する。これに基づき、ここで具体的に説明される方法の改変は、当業者の能力の範囲内である。
3.1 3'-ヒドロキシアセトフェンの選択的側鎖塩素化
ケトンのα塩素化のために塩化スルフリルを用いる原理はそれ自体公知であり、例えばD.P. Wymanら、J. Organic. Chem. Vol.29, 1964, p.1956〜1960に記載されている。
米国特許第4,310,702号及びD. Masilamaniら、J. Organic. Chem., Vol.46, 1981, p.4486〜4489には、ケトンの塩素化のために塩化スルフリルを用いると、一般に一回及び複数回塩素化されたケトンの混合物、従って、不要な副産物が生じることが報告されている。この問題を解決するために、上記文献は、調節剤としてアルコール又はエーテルの使用を教示している。さらに、この文献は、フェノールを塩化スルフリルと反応させることによって、まず、対応するスルホン酸エステル、次いで各種クロロフェノールを取得することを教示している。米国特許第5,710,341号は、対応するケトンを塩化スルフリルで塩素化することによるαクロロアルキルアリールケトンの製造に関するが、該文献も、脂肪族アルコールを用いて、所望の生成物、すなわち、モノ-α-塩素化ケトンの選択性を高めることを教示している。
驚くことに、米国特許第5,710,341号に教示された条件下で、3-ヒドロキシアセトフェノン(フェニレフリンの合成に有利に用いられる)の反応、すなわち塩素化により、ほぼ対応するαクロロアルキルアリールケトンのみが生成されることが見出された。選択性を制御するために、1〜10当量のアルコール(C1〜C10)を反応混合物に添加し、特に好ましくは、3〜5当量のアルコールを用いる。さらに、反応は、反応条件下で不活性の溶媒、例えば、水と不混和性の芳香族化合物、エーテル、エステル及びハロゲン化溶媒中で実施する。好ましくは、該反応は、エステルおよびハロゲン化溶媒、特に好ましくは酢酸エチル又はジクロロメタン中で実施する。
Figure 2012502640
これは、当業者には驚くことであった。というのは、分子中に存在するフェノール官能基の反応によって、D. Masilamaniにより教示される方法と同様に、対応するクロロフェノールの形成をもたらすことが予想されたからである。有利なことに、上記の反応は、保護基を使用せずに実施することができる。
3.2 3'-ヒドロキシ-2-クロロアセトフェノンのエナンチオ選択的水素化反応
2の還元は、酵素により触媒される。この酵素は、(アゾアルカス・エスピー)アロマトレウム・アロマチカムEbN1由来のデヒドロゲナーゼEbN1であり、これは、特定の場合では、大腸菌において組換えにより調製される。
Figure 2012502640
デヒドロゲナーゼは、光学活性ヒドロキシ化合物の製造のための生体触媒として好適である。これらは、十分に特性決定された生体触媒であり、いくつかの技術的プロセスにすでに用いられている(Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 788;Tetrahedron, 2004, 60, 633;Chiral catalysis - asymmetric hydrogenation supplement to Chemistry Today, 2004, 22, 26;Current Opinion in Chemical Biology, 2004, 8, 120;Organic Process Research & Development, 2002, 6, 558;Tetrahedron: Asymmetry, 2003, 14, 2659;Chiral catalysis - asymmetric hydrogenation supplement to Chemistry Today, 2004, 22, 43)。
デヒドロゲナーゼは、ケトン又はアルデヒドを、対応する二次又は一次アルコールに変換するが、原則として、この反応は可逆性である。デヒドロゲナーゼは、カルボニル化合物のプロキラル炭素原子へのエナンチオ選択的水素化物イオン移動を触媒する。
水素化物イオンは、いわゆる補因子、例えばNADPH又はNADH(還元ニコチンアミド−アデニンジヌクレオチドリン酸又は還元ニコチンアミド−アデニンジヌクレオチド)によって。これらは、非常に高価な化合物であるため、触媒量のみを反応混合物に添加する。還元補因子は、同時に起こる第2のレドックス反応によって反応中に再生される。メーヤワイン−ポンドルフ−バーレー反応から知られているように、反応全体の熱力学的及び速度論的条件に応じて、イソプロパノールのような安価な二次アルコール(いわゆる「犠牲アルコール」)が反応の最終水素化物供与体として存在する可能性がある。往々にして、ケトンの還元及び犠牲アルコールの酸化は、同じ生体触媒により実施することができる(基質結合)。
上記のほかに、第2の触媒を用いて、消費した補因子を再生することもできる。公知の具体例として、ギ酸デヒドロゲナーゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ又は亜リン酸デヒドロゲナーゼがあり、これらは、ギ酸塩、グルコース又は亜リン酸塩の酸化によって、NAD又はNADPから水素化物イオンを移動させる(Biocatalysis and Biotransformation, 2004, 22, 89;Applied Microbiology and Biotechnology, 1997, 48, 699;Bioscience Biotechnology and Biochemistry, 1998, 62, 167;Methods Enzymol., 1987, 136, 9;Ann.N.Y.Acad.Sci., 1984, 434, 91;FEBS Journal, 2005, 272, 3816; Applied Microbiology and Biotechnology, 2003, 61, 133)。
ここで試験した反応物の還元等価体は、イソプロパノール(又は別の二次、いわゆる「犠牲アルコール」)(アセトンに酸化される)、又はグルコース(並行反応においてグルコノラクトンに酸化される)のいずれかを起源とするものである。2からR-3への還元も実施する同じ酵素により多種の犠牲アルコールの酸化が可能であるが、グルコースの酸化のためには、第2酵素としてグルコースデヒドロゲナーゼを添加する必要がある。
これ以外にも、グルコースデヒドロゲナーゼの代わりに、別の再生系、例えば、亜リン酸デヒドロゲナーゼ(Biotechnol Bioeng, 2006, 96, 18)又は電気化学的補因子再生(Angew.Chem.Int.Ed Engl., 2001, 40, 169)、(Angewandte Chemie Int.Ed.Engl., 1999, 29, 388)を用いることも可能である。
R-3の製造のための好適な生体触媒がすでに以下のBASF SEの特許出願に記載されている:(DE 2004022686、EP 2005004872、WO 2005108590)又は(EP 06123814、WO2008055988 A3)。
3.2 L-フェニレフリンの製造
L-フェニレフリン及びその塩の新規な製造方法は、還元後に得られる成分3とメチルアミンとの反応によって、所望の生成物を得ることにより終了する。
Figure 2012502640
これは、反応条件下で不活性である多種溶媒、例えば水、アルコール又はエーテル中で達成される。出発材料3が、操作上、経済的に有意義な濃度で、十分な程度まで溶解するエーテルが、特に好ましい。THFの使用は特に好ましい。反応後、L-フェニレフリンは、例えば限定するものではないが、WO 00/43345号に教示される方法において、塩基として、またその塩の形態で取得することができる。
4. 本発明の他の実施形態
4.1 アルコールデヒドロゲナーゼ
本発明において使用する酵素は、特にアルコールデヒドロゲナーゼ(E.C. 1.1.1.1)から選択される。
これに限定されるものではないが、かかる酵素は、好ましくはアロマトレウム属(Aromatoleum)(アゾアルカス属(Azoarcus)と称される場合もある)の微生物、例えばアロマトレウム・アロマチカム(Aromatoleum aromaticum)、特にEbN1株から得られる。
ADH活性を有する好ましい酵素は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。
具体的に開示されているADHの「機能的等価体」及び本発明の方法におけるその使用もまた本発明に含まれる。
具体的に開示されている酵素の「機能的等価体」又は類似体は、本発明の範囲内では、所望の生物活性(例えば、基質特異性)をさらに保有する種々のポリペプチドである。例えば、「機能的等価体」は、配列番号2に示されるアミノ酸配列の1つを含む酵素の活性の少なくとも20%、好ましくは50%、特に好ましくは75%、特に非常に好ましくは90%の活性を有し、かつ3'-ヒドロキシ-2-クロロアセトフェノン2を対応のR-アルコールである(R)-3-(2-クロロ-1-ヒドロキシエチル)フェノール3に還元する酵素を含むと理解される。
「機能的等価体」は、本発明においては、特に、前記アミノ酸配列の少なくとも1つの配列位置に、具体的に記載されているアミノ酸とは異なるアミノ酸を有するが前記生物活性の1つを有する変異体を含むことが理解される。したがって、「機能的等価体」は、1又は複数のアミノ酸の付加、置換、欠失及び/又は逆位により得られる変異体を含み、本発明の特性プロフィールを有する変異体をその変化が与える限り、該変化は任意の配列位置に存在することが可能である。特に、機能的等価性は、変異体と非改変ポリペプチドとの間で反応性パターンが定性的に一致する場合(すなわち、例えば同一基質が、異なる速度で変換される場合)にも達成される。
また、前記の意味での「機能的等価体」としては、記載されているポリペプチドの「前駆体」、並びに該ポリペプチドの「機能的誘導体」及び「塩」もある。
「前駆体」は、所望の生物活性を有する又は有しない該ポリペプチドの天然及び合成前駆体である。
「塩」という用語は、本発明のタンパク質分子のカルボキシル基の塩及びアミノ基の酸付加塩を意味する。カルボキシル基の塩は、自体公知の方法で調製することが可能であり、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄及び亜鉛塩のような無機塩、並びに例えばトリエタノールアミン、アルギニン、リシン、ピペリジンなどのアミンのような有機塩基などの塩を含みうる。酸付加塩、例えば、塩酸又は硫酸のような無機酸との塩並びに酢酸及びシュウ酸のような有機酸との塩もまた本発明に包含される。
本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」はまた、アミノ酸側鎖官能基又はそのN若しくはC末端において、公知技術により調製することができる。かかる誘導体には、例えば、カルボン酸基の脂肪族エステル、アンモニア又は第一級若しくは第二級アミンとの反応により得られるカルボキン酸基のアミド、アシル基との反応により調製される遊離アミノ基のN-アシル誘導体、あるいはアシル基との反応により調製される遊離ヒドロキシル基のO-アシル誘導体が含まれる。
また、「機能的等価体」は、もちろん、他の生物から入手可能なポリペプチド及び天然に存在するバリアントを含む。例えば、配列比較を用いて、相同配列領域のドメインを決定することが可能であり、本発明の具体的な説明に基づき、等価な酵素を決定することが可能である。
「機能的等価体」は同様に、例えば所望の生物学的機能を有する、本発明のポリペプチドの断片、好ましくは、個々のドメイン又は配列モチーフを含む。
さらに、「機能的等価体」としては、前記ポリペプチド配列の1つ又はそれに由来する機能的等価体と、それとは機能的に異なる少なくとも1つの他の異種配列とを、機能的N末端又はC末端連結で(すなわち、融合タンパク質部分の実質的な互いの機能が損なわれることなく)有する融合タンパク質がある。かかる異種配列の非限定的な例としては、例えば、シグナルペプチド又は酵素が挙げられる。
本発明には、具体的に開示されているタンパク質のホモログである「機能的等価体」も含まれる。これらは、具体的に開示されているアミノ酸配列の1つに対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、特に少なくとも85%、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有する。本発明の相同ポリペプチドの相同性(%)は、特に、本明細書に具体的に記載されているアミノ酸配列の1つの全長に対するアミノ酸残基の同一性(%)を意味する。
2つの配列間の「同一性」とは、特に、それぞれの全配列長にわたる残基の同一性を意味し、特に、Clustal法(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr; 5(2):151-1)を以下のパラメータ設定で使用するVector NTI Suite 7.1(Vector NTI Advance 10.3.0, Invitrogen Corp.)(又はInformax (USA)社製のソフトウエア)を用いた比較により算出される同一性を意味する:
マルチプルアライメントパラメータ:
ギャップ開始ペナルティ 10
ギャップ伸長ペナルティ 0.05
ギャップ分離ペナルティ範囲 8
ギャップ分離ペナルティ オフ
アライメントディレイに対する同一性% 40
残基特異的ギャップ オフ
親水性残基ギャップ オフ
トランジション重み付け 0

ペアワイズアライメントパラメータ:
FASTアルゴリズム オフ
K-tupleサイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウインドウサイズ 5
最良対角線数(Number of best diagonals) 5
タンパク質のグリコシル化が可能である場合には、本発明の「機能的等価体」は、上述したタイプのタンパク質の脱グリコシル化形態又はグリコシル化形態、及びグリコシル化パターンの変更により入手可能な修飾形態を含む。
本発明のタンパク質又はポリペプチドのホモログは、該タンパク質の突然変異誘発により、例えば点突然変異又は短縮により作製することができる。
本発明のタンパク質のホモログは、変異体(例えば、短縮変異体)のコンビナトリアルバンクをスクリーニングすることにより特定することができる。例えば、核酸レベルでのコンビナトリアル変異誘発により、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的連結により、タンパク質バリアントの多様化バンクを作製することが可能である。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的ホモログのバンクを作製するために、多数の方法を用いることができる。縮重遺伝子配列の化学合成を自動化DNA合成装置において行うことが可能であり、ついで該合成遺伝子を適当な発現ベクター内に連結することが可能である。遺伝子の縮重セットの使用によって、所望のセットの潜在的タンパク質配列をコードする配列の全てを1つの混合物において調製することが可能になる。縮重オリゴヌクレオチドの合成方法は当業者に公知である(例えば、Narang, S.A. (1983) Tetrahedron 39:3;Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53:323;Itakura et al., (1984) Science 198:1056;Ike et al. (1983) Nucleic Acids Res. 11:477)。
点突然変異又は短縮により作製されたコンビナトリアルバンクの遺伝子産物をスクリーニングするための、そして選択された特性を有する遺伝子産物に関してcDNAバンクをスクリーニングするためのいくつかの技術が、先行技術において公知である。これらの技術は、本発明のホモログのコンビナトリアル突然変異誘発により作製された遺伝子バンクの高速スクリーニングに応用されうる。ハイスループット分析の基礎をなす大きな遺伝子バンクをスクリーニングするために最も頻繁に用いられる技術は、複製可能な発現ベクター内への遺伝子バンクのクローニング、得られたベクターバンクでの適当な細胞の形質転換、及び該コンビナトリアル遺伝子の発現(これは、所望の活性の検出が、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を促進する条件下で行われる)を含む。該バンク中の機能的変異体の頻度を増加させる技術である反復アンサンブル突然変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)(REM)を、ホモログを特定するためのスクリーニング試験と組合せて用いることが可能である(Arkin and Yourvan (1992) PNAS 89:7811-7815;Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6(3):327-331)。
4.2 コード核酸配列
本発明においては、「発現」又は「過剰発現」という用語は、微生物における、対応DNAによりコードされる1以上の酵素の細胞内活性の産生又は増加を意味する。このため、例えば、遺伝子を生物内に挿入し、既存の遺伝子を別の遺伝子により置換し、遺伝子のコピー数を増加させ、強力なプロモーターを使用し、又は高い活性を有する対応酵素をコードする遺伝子を使用することが可能であり、場合によりこれらの手段を組合せることが可能である。
本発明は、特に、ADH活性を有する酵素をコードする核酸配列に関する。配列番号1に示される配列を含む核酸配列又は配列番号2に示されるアミノ酸配列から誘導される核酸配列が好ましい。
本明細書に記載の核酸配列のすべて(一本鎖及び二本鎖のDNA及びRNA配列、例えばcDNA及びmRNA)は、化学合成による自体公知の方法で、例えば、二本鎖の個々の重複相補的核酸ビルディングブロックの断片縮合により、ヌクレオチドビルディングブロックから製造することができる。オリゴヌクレオチドは、例えばホスホルアミダイト法(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press New York, p.896-897)により、公知の方法で化学合成することができる。合成オリゴヌクレオチドの付加、及びDNAポリメラーゼのクレノウフラグメントを使用するギャップの充填と連結反応、そしてまた、一般的なクローニング方法は、Sambrook et al. (1989), Molecular Cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
本発明はまた、前記ポリペプチド及びそれらの機能的等価体の1つをコードする核酸配列(一本鎖及び二本鎖のDNA及びRNA配列、例えばcDNA及びmRNA)に関する(例えば、人工ヌクレオチド類似体を使用して得られるもの)。
本発明は、本発明のポリペプチド若しくはタンパク質又は生物学的活性を有するその断片をコードする単離された核酸分子、及び核酸断片、例えば本発明のコード核酸を特定(同定)又は増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ又はプライマーとしての用途に使用することができる核酸断片の両方に関する。
本発明の核酸分子は更に、該遺伝子のコード領域の3'及び/又は5'末端からの非翻訳配列を含有しうる。
本発明は更に、具体的に記載されているヌクレオチド配列に相補的な核酸分子又はその断片を含む。
本発明のヌクレオチド配列は、他の細胞型及び生物における相同配列の特定(同定)及び/又はクローニングのために使用することができるプローブ及びプライマーの作製を可能にする。そのようなプローブ又はプライマーは通常、本発明の核酸配列のセンス鎖又は対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12、好ましくは少なくとも約25、例えば約40、50又は75個の連続したヌクレオチドに対して「ストリンジェント」な条件(後記を参照されたい)下でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含む。
「単離された」核酸分子は、該核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離されたものであり、さらに、それが組換え技術により製造された場合には、他の細胞物質又は培地を実質的に含有しないもの、あるいはそれが合成された場合には、化学前駆体又は他の化学物質を含有しないものでありうる。
本発明の核酸分子は、分子生物学の標準的な技術と本発明により提供される配列情報とを用いて単離することができる。例えば、具体的に開示されている完全配列の1つ又はその断片をハイブリダイゼーションプローブとして使用し、標準的なハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されているもの)を用いて、適当なcDNAバンクからcDNAを単離することが可能である。また、開示されている配列の1つ又はその断片を含む核酸分子は、該配列に基づいて作製されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応により単離することができる。このようにして増幅された核酸を適当なベクター内にクローニングし、DNA配列分析により特性決定することが可能である。さらに、本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成装置を使用する標準的な合成方法によっても製造することができる。
本発明の核酸配列、例えば配列番号1、又はその誘導体、これらの配列のホモログ若しくは一部は、例えば通常のハイブリダイゼーション法又はPCR技術を用いて、適当な微生物から、例えばゲノムバンク又はcDNAバンクにより単離することができる。これらのDNA配列は、標準的な条件下で本発明の配列にハイブリダイズする。短いオリゴヌクレオチドをハイブリダイゼーションに使用するのが有利である。しかし、本発明の核酸のより長い断片又は完全配列を、ハイブリダイゼーションに使用することも可能である。これらの標準的な条件は、使用する核酸に応じて(オリゴヌクレオチド、より長い断片若しくは完全配列)、又はハイブリダイゼーションに使用する核酸(DNA若しくはRNA)の種類に応じて様々である。例えば、DNA:DNAハイブリッドの融解点は、同じ長さのDNA:RNAハイブリッドの融解点より約10℃低い。
「標準的な条件」は、例えば、核酸に応じて、0.1〜5×SSC(1×SSC=0.15 M NaCl、15mM クエン酸ナトリウム、pH 7.2)の濃度のバッファー水溶液中の42〜58℃の温度、又は更に、50%ホルムアミドの存在下で、例えば、5×SSC、50%ホルムアミド中、42℃を意味する。DNA:DNAハイブリッドに関するハイブリダイゼーション条件は、有利には0.1×SSC及び約20℃〜45℃、好ましくは約30℃〜45℃の温度である。DNA:RNAハイブリッドに関するハイブリダイゼーション条件は、有利には0.1×SSC及び約30℃〜55℃、好ましくは約45℃〜55℃の温度である。ハイブリダイゼーションのために記載するこれらの温度は、例えば、ホルムアミドの非存在下で50%のG+C含量を有する約100ヌクレオチド長の核酸に関して算出された融解点である。DNAハイブリダイゼーションのための実験的条件は、関連する遺伝学の教科書、例えばSambrookら, “Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989に記載されており、当業者に公知の式を使用して、例えば、核酸の長さ、ハイブリッドのタイプ又はG+C含量の関数として算出されうる。ハイブリダイゼーションに関する更なる情報は以下の教科書中に当業者により見出されうる:Ausubelら (編), 1985, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York; Hames;及びHiggins (編), 1985, Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (編), 1991, Essential Molecular Biology: A Practical Approach, IRL Press at Oxford University Press, Oxford。
本発明はまた、具体的に開示されている又は誘導可能な核酸配列の誘導体に関する。
したがって、本発明の他の核酸配列は、例えば配列番号1から誘導することが可能であり、所望の特性プロフィールを有するポリペプチドを尚もコードするよう、それを1個又は複数のヌクレオチドの付加、置換、挿入又は欠失により異なるものとすることが可能である。
本発明はまた、「サイレント突然変異」を含む核酸配列、あるいは特定の起源生物又は宿主生物のコドン使用頻度に対応して具体的に記載されている配列と比較して改変されている核酸配列、並びに天然に存在するそれらのバリアント、例えばスプライスバリアント又はアリルバリアントを含む。
本発明はまた、保存的ヌクレオチド置換(すなわち、当該アミノ酸が、同じ電荷、サイズ、極性及び/又は溶解度を有するアミノ酸により置換される)により得られる配列に関する。
本発明はまた、具体的に開示されている核酸から配列多型により誘導された分子に関する。これらの遺伝的多型は自然の多様性(variation)により集団内の個体間で生じうる。これらの自然多様性は通常、遺伝子のヌクレオチド配列における1〜5%の変動を与える。
配列番号1の配列を有する本発明の核酸配列の「誘導体」は、例えば、全配列領域に対して、推定アミノ酸レベルで少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%の相同性、非常に好ましくは少なくとも80%の相同性を有するアリルバリアントと理解される(アミノ酸レベルでの相同性に関しては、ポリペプチドに関する前記説明を参照されたい)。有利には、相同性は、配列の部分領域において、より高くなりうる。
さらに、「誘導体」はまた、本発明の核酸配列、特に配列番号1のホモログ、例えば真菌又は細菌ホモログ、コード及び非コードDNA配列の短縮配列、一本鎖DNA又はRNAを意味する。例えば、DNAレベルでの配列番号1のホモログは、配列番号1に示されている全DNA領域にわたって少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、非常に好ましくは少なくとも80%の相同性を有する。
さらに「誘導体」は、例えば、プロモーターとの融合体と理解される。上記ヌクレオチド配列の前に位置するプロモーターは、該プロモーターの機能性又は効力を損なうことなく1以上のヌクレオチドの置換、挿入、逆位及び/又は欠失により改変されていることが可能である。さらに、該プロモーターの効力を、その配列を改変することにより増強することが可能であり、あるいは、該プロモーターを、より効率的なプロモーター(異なる種の生物のプロモーターを含む)で完全に置換することが可能である。
「誘導体」はまた、遺伝子発現及び/又はタンパク質発現を改変(好ましくは増強)するために開始コドンの前の-1〜-1000塩基の領域内又は終止コドンの後の0〜1000塩基の領域内のヌクレオチド配列が改変されているバリアントを意味する。
さらに本発明はまた、「ストリンジェントな条件」下で前記コード配列にハイブリダイズする核酸配列を含む。これらのポリヌクレオチドは、ゲノムバンク又はcDNAバンクの検査により見出すことが可能であり、適当な場合には、適当なプライマーを使用するPCRにより増幅し、ついで、例えば適当なプローブを使用して単離することが可能である。また、本発明のポリヌクレオチドは化学合成することもできる。この特性は、ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドが、実質的に相補的な配列にはストリンジェントな条件下で結合するが、これらの条件下、非相補的相手との非特異的結合が起こらないことを意味する。この目的には、該配列は70〜100%、好ましくは90〜100%相補的であるべきである。互いに特異的に結合しうる相補性配列の特性は、例えば、ノーザン又はサザンブロット技術に、あるいはPCR又はRT-PCRではプライマーの結合に利用される。この目的には、通常、30塩基対以上の長さのオリゴヌクレオチドが使用される。「ストリンジェントな条件」は、例えばノーザンブロット技術においては、非特異的にハイブリダイズしたcDNAプローブ又はオリゴヌクレオチドを溶離するための洗浄溶液、例えば、0.1%SDSを含有する0.1×SSCバッファー(20×SSC: 3M NaCl, 0.3Mクエン酸ナトリウム, pH 7.0)を使用して50〜70℃、好ましくは60〜65℃の温度に加熱すると理解される。上述したように、高度の相補性を有する核酸だけが互いに結合したまま残る。ストリンジェントな条件の設定は当業者に公知であり、例えば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
4.3 本発明において使用する構築物
本発明では、本発明の酵素をコードする核酸配列を調節核酸配列の遺伝的制御下に含む発現構築物、及び該発現構築物の少なくとも1つを含むベクターを使用する。
本発明のそのような構築物は、好ましくは、それぞれのコード配列の5'上流のプロモーター及び3'下流のターミネーター配列、並びに適当な場合には他の通常の調節エレメント(各場合に、該コード配列に機能的に連結されている)を含む。
「機能的な連結」は、プロモーター、コード配列、ターミネーター、及び適当な場合には他の調節エレメントが、これらの調節エレメントのそれぞれが、該コード配列の発現においてその機能を果たすように連続的に配置されていると理解される。機能的に連結される配列の具体例としては、標的化配列及びエンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどが挙げられる。他の調節エレメントは、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点などを含む。適当な調節配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
本発明において使用する核酸構築物は特に、有利には遺伝子発現の制御(例えば増強)のための1以上の調節シグナルに機能しうる形で又は機能的に連結された、配列番号1の配列を有するADH並びにその誘導体及びホモログ並びに配列番号1から誘導される核酸配列であると理解される。
これらの調節配列に加えて、これらの配列の天然調節が尚も、実際の構造遺伝子の前に存在することが可能であり、場合により、天然調節配列が遺伝的に改変されていて天然調節が不活化されており該遺伝子の発現が増強されていることが可能である。しかし、該核酸構築物の構造が、より単純であること、すなわち、該コード配列(例えば、配列番号1又はそのホモログ)の前に追加的な調節シグナルが挿入されておらず、天然プロモーターがその調節と共に除去されていないことも可能である。その代わりに、該天然調節配列が突然変異されていて、もはや調節が行われず、遺伝子発現が増強されることも可能である。
また、好ましい核酸構築物は、有利には、該核酸配列の発現の増強を可能にする、プロモーターに機能的に連結された既に記載されている「エンハンサー」配列を1以上含む。追加的な有利な配列、例えば、更なる調節エレメント又はターミネーターが、DNA配列の3'末端に挿入されていることも可能である。本発明の核酸は、1以上のコピーで該構築物中に含まれうる。該構築物はまた、適当な場合には、該構築物の選択のための、抗生物質耐性又は栄養要求性相補遺伝子のような他のマーカーを含有してもよい。
本発明の方法のための有利な調節配列は、例えば、cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP(RhaPBAD)SP6、λ-PR又はλ-PLプロモーター(これらはグラム陰性菌において有利に使用される)のようなプロモーター中に存在する。他の有利な調節配列は、例えば、グラム陽性プロモーターamy及びSPO2、酵母又は真菌プロモーターADC1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH中に含まれる。この点においては、ピルビン酸デカルボキシラーゼ及びメタノールオキシダーゼのプロモーター、例えばハンセヌラ(Hansenula)由来のものも有利である。人工プロモーターを調節に使用することも可能である。
発現のために、核酸構築物は、有利には、例えば該遺伝子の宿主内での最適な発現を可能にするプラスミド又はファージのようなベクター内にそれを挿入することにより、宿主生物内に挿入される。ベクターは、プラスミド及びファージに加えて、当業者に公知の任意の他のベクター、すなわち例えばウイルス、例えばSV40、CMV、バキュロウイルス及びアデノウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファージミド、コスミド、及び直鎖状又は環状DNAと理解される。これらのベクターは宿主生物内で自律的に複製されてもよいし、又は染色体として複製されてもよい。これらのベクターは本発明のもう1つの実施形態を構成する。適当なプラスミドとしては、例えば、大腸菌(E. coli)においてはpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11又はpBdCI、ストレプトマイセス(Streptomyces)においてはpIJ101、pIJ364、pIJ702又はpIJ361、バチルス(Bacillus)においてはpUB110、pC194又はpBD214、コリネバクテリウム(Corynebacterium)においてはpSA77又はpAJ667、真菌においてはpALS1、pIL2又はpBB116、酵母においては2αM、pAG-1、YEp6、YEp13又はpEMBLYe23、あるいは植物においてはpLGV23、pGHlac+、pBIN19、pAK2004又はpDH51が挙げられる。記載されているプラスミドは、可能なプラスミドの一例に過ぎない。他のプラスミドは当業者によく知られており、例えば、書籍Cloning Vectors(Pouwels P. H.ら編, Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)に記載されている。
存在する他の遺伝子の発現のためには、核酸構築物は、有利には更に、選択された宿主生物及び遺伝子(1又は複数)に応じた最適発現のために選択された、発現を増強するための3'及び/又は5'末端調節配列を含む。
これらの調節配列は該遺伝子の標的化発現及びタンパク質発現を可能にするべきである。これは、宿主生物に応じて、例えば、該遺伝子が誘導後においてのみ発現又は過剰発現されること、あるいはそれが直ちに発現及び/又は過剰発現されることを意味しうる。
調節配列又は因子は、好ましくは、挿入された遺伝子の遺伝子発現に正の影響を及ぼし、したがって、該遺伝子発現を増強しうる。したがって、プロモーター及び/又はエンハンサーのような強力な転写シグナルを使用することにより、調節エレメントを転写レベルで有利に増強することが可能である。しかし、例えば、mRNAの安定性を向上させることにより、翻訳を増強することも可能である。
該ベクターの別の実施形態においては、本発明の核酸構築物又は本発明の核酸を含むベクターを、有利には、直鎖状DNAの形態で微生物内に挿入し、非相同又は相同組換えにより宿主生物のゲノム内に組込むことが可能である。この直鎖状DNAは、線状化ベクター、例えばプラスミドから構成されてもよいし、あるいは本発明の核酸構築物又は核酸のみから構成されてもよい。
生物内での異種遺伝子の最適発現のためには、該生物における特定のコドン使用頻度に従い核酸配列を改変することが有利である。コドン使用頻度は、当該生物の他の公知遺伝子のコンピューター評価に基づいて、容易に決定されうる。
本発明の発現カセットは、適当なプロモーターを適当なコード化ヌクレオチド配列及びターミネーター又はポリアデニル化シグナルに融合させることにより調製される。この目的には、組換え及びクローニングの通常の技術、例えば、T. Maniatis, E.F. Fritsch及びJ. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989);T.J. Silhavy, M.L. Berman及びL.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984);Ausubel, F.M.ら, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)に記載されているものを使用する。
適当な宿主生物における発現のために、組換え核酸構築物又は遺伝子構築物は、該宿主内での該遺伝子の最適な発現を可能にする宿主特異的ベクター内にそれを有利に挿入する。ベクターは当業者によく知られており、例えば、“Cloning Vectors”(Pouwels P. H.ら編, Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に記載されている。
4.4 本発明において使用可能な宿主
本発明のベクターを使用して、例えば本発明の少なくとも1つのベクターで形質転換された組換え微生物を製造することが可能であり、それを使用して本発明において用いるポリペプチドを製造したり又は本発明に従って酵素反応を行うことが可能である。
上述した本発明の組換え構築物は適当な宿主系内に有利に挿入され発現される。記載されている核酸を個々の発現系において発現させるためには、当業者に公知のクローニング及びトランスフェクション法、例えば、共沈、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションなどを用いることが好ましい。好適な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubelら編, Wiley Interscience, New York 1997又はSambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている。
また、本発明では、相同組換えにより微生物を製造することも可能である。この目的には、本発明のコード配列又は遺伝子の断片の少なくとも1つを含有し、適当な場合には、本発明の配列を改変するために(例えば機能的に破壊するために)少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加又は置換が導入されているベクター(「ノックアウト」ベクター)を製造する。また、導入される配列は、例えば、関連微生物由来のホモログであることが可能であり、あるいは哺乳動物、酵母又は昆虫源に由来するものでありうる。あるいは、内因性遺伝子が相同組換えの際に突然変異又は改変されるが尚も機能的タンパク質をコードするよう、相同組換えのために使用されるベクターを設計することが可能である(例えば、上流に位置する調節領域を改変して、これが該内因性タンパク質の発現を改変するようにすることが可能である)。本発明の遺伝子の改変された部分は相同組換えベクター内に存在する。相同組換えのための適当なベクターの構築は例えばThomas, K.R.及びCapecchi, M.R. (1987) Cell 51:503に記載されている。
本発明の核酸又は核酸構築物のための組換え宿主生物としては、原則として、すべての原核又は真核生物が可能と考えられる。有利に使用される宿主生物としては、微生物、例えば細菌、真菌又は酵母が挙げられる。有利には、グラム陽性又はグラム陰性細菌、好ましくはエンテロバクター科(Enterobacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、リゾビウム科(Rhizobiaceae)、ストレプトマイセス科(Streptomycetaceae)、バチルス科(Bacillaceae)又はノカルディア科(Nocardiaceae)の細菌、特に好ましくはエッシェリヒア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、ノカルディア属(Nocardia)、バークホルデリア属(Burkholderia)、サルモネラ属(Salmonella)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、バチルス属(Bacillus)又はロドコッカス属(Rhodococcus)の細菌が使用される。大腸菌(Escherichia coli)の属及び種が非常に好ましい。また、他の有利な細菌は、αプロテオバクテリア、βプロテオバクテリア又はγプロテオバクテリアの群において見出されうる。
本発明の宿主生物(1又は複数の宿主生物)は、好ましくは、本発明において記載するADH酵素をコードする核酸配列、核酸構築物又はベクターの少なくとも1つを含む。
宿主生物に応じて、本発明の方法において使用する生物を、当業者に公知の方法により増殖させる又は培養する。通常、微生物を、通常は糖類の形態の炭素源、通常は有機窒素源(例えば、酵母エキス)又は塩(例えば、硫酸アンモニウム)の形態の窒素源、微量元素、例えば鉄、マンガン、マグネシウムの塩、及び適当な場合にはビタミンを含む液体培地中、酸素を通気させながら、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃の温度で増殖させる。その場合、培養中に液体培地のpHを一定に維持してもよい(すなわち、調節しても調節しなくてもよい)。培養はバッチ法、半バッチ法(semibatchwise)又は連続的方法により行う。栄養素を、発酵の開始時に導入してもよいし、又は半連続的若しくは連続的に供給してもよい。
変換されるケトンは培養に直接的に加えられてもよいし、又は有利には培養後に加えることができる。
該酵素は、生物から単離されてもよいし、又は粗抽出物として該反応に使用されてもよい。
宿主生物は、例えば1U/l、好ましくは100U/l、特に好ましくは1000U/lを超える酵素活性、例えばADH活性を含有する。
4.5 酵素の組換え製造
本発明において使用する酵素は、組換え製造方法により得ることができる。該製造方法においては、酵素を産生する微生物を培養し、適当な場合にはポリペプチドの発現を誘導し、それを該培養から単離する。所望により、このようにして工業的規模でポリペプチドが製造されうる。
組換え微生物は公知方法により培養し発酵させることが可能である。例えば、TB又はLB培地中、20〜40℃の温度及びpH値6〜9で細菌を増殖させることが可能である。適当な培養条件は、例えば、T. Maniatis, E.F. Fritsch及びJ. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989)に詳細に記載されている。
ポリペプチドが培地内に分泌されない場合には、ついで細胞を破壊し、公知のタンパク質単離方法により溶解物から生成物を得る。細胞は、適当な場合には、高周波超音波により、高圧(例えば、フレンチプレスセルにおけるもの)により、浸透圧分解(osmolysis)により、界面活性剤、溶菌酵素若しくは有機溶媒の作用により、ホモジナイザーにより又は記載されているいくつかの方法の組合せにより破壊することができる。
ポリペプチドの精製は、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、例えばQ-セファロースクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及び疎水性クロマトグラフィーのような公知クロマトグラフィー法、並びに限外濾過、結晶化、塩析、透析及び自然ゲル電気泳動のような他の通常の方法により行うことができる。適当な方法は、例えばCooper, F. G., Biochemische Arbeitsmethoden [生化学手法], Verlag Walter de Gruyter, Berlin, New York又はScopes, R., Protein Purification, Springer Verlag, New York, Heidelberg, Berlinに記載されている。
特定のヌクレオチド配列によりcDNAを伸長させて、例えば精製の単純化のための修飾ポリペプチド又は融合タンパク質をコードするようにされたベクター系又はオリゴヌクレオチドを使用することにより、該組換えタンパク質を単離するのが有利かもしれない。この種の適当な修飾体としては、例えば、ヘキサヒスチジンアンカーとして公知の修飾のようなアンカーとして機能するいわゆる「タグ」、又は抗体により抗原として認識されうるエピトープ(例えば、Harlow, E.及びLane, D., 1988, Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor (N.Y.) Pressに記載されている)が挙げられる。これらのアンカーは、例えばクロマトグラフィーカラム内に充填されうる又はマイクロタイタープレート若しくは別の支持体上で使用することが可能である高分子マトリックスのような固相支持体にタンパク質を結合させるために使用することが可能である。
同時に、これらのアンカーは、タンパク質を識別するためにも使用されうる。さらに、蛍光色素、検出可能な反応生成物を基質との反応後に形成する酵素標識又は放射性標識のような通常の標識を、単独で又は該アンカーと組合せて使用して、タンパク質を識別し、該タンパク質を誘導体化することが可能である。
4.6 光学活性アルコールの製造のための本発明の方法のステップ(B)の実施
本発明の方法のステップにおいては、酵素を遊離又は固定化酵素として使用することが可能である。
本発明の方法のステップは、有利には、0℃〜60℃、好ましくは10℃〜40℃、特に好ましくは15℃〜35℃の温度で行う。
本発明の方法のステップにおけるpH値は、有利にはpH 4〜12、好ましくはpH 4.5〜9、特に好ましくはpH 5〜8に維持する。
本発明の方法には、本発明の核酸、核酸構築物又はベクターを含む増殖中の細胞を使用することが可能である。静止細胞又は破壊された細胞を使用することも可能である。破壊された細胞は、例えば溶媒での処理により透過性にされた細胞、又は酵素処理、機械的処理(例えば、フレンチプレス若しくは超音波)若しくはその他の方法により破裂された細胞と理解される。このようにして得られた粗抽出物は、本発明の方法に適している。本方法には、精製又は部分精製された酵素を使用することも可能である。固定化された微生物又は酵素も適している。
遊離した生物又は酵素を本発明の方法に使用する場合には、抽出の前に、これらを例えば濾過又は遠心分離により分離することが望ましい。
二相(水相/有機相)反応培地を使用する場合には、有益な生成物は有機相に選択的に溶解することができるため、これにより生成物の単離が容易となる。例えば、特に水と本質的に混和しない溶媒、例えばエーテルを用いて、二相系を形成させる。
逆に、一相反応培地を酵素プロセスのステップにおいて使用する場合には、得られた生成物は、水性反応溶液から、抽出又は蒸留により、あるいは有利には、抽出及び蒸留により得ることができる。該抽出を数回繰返して収量を増加させることが可能である。適当な抽出剤の具体例としては、トルエン、塩化メチレン、酢酸ブチル、ジイソプロピルエーテル、ベンゼン、MTBE又は酢酸エチルのような溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
エバポレーションによる有機相の濃縮後、通常、良好な化学純度、すなわち、80%、90%、95%又は99%を超える化学純度で生成物を得ることが可能である。しかし、抽出後、生成物を含有する有機相をエバポレーションにより単に部分的に濃縮し、生成物を晶出させることも可能である。この目的には、該溶液を、有利には、0℃〜10℃の温度に冷却する。また、有機溶液から又は水溶液から直接的に晶出を行うことも可能である。晶出生成物を再び、反復晶出のために、同じ又は異なる溶媒に入れ、再び晶出させることが可能である。さらに必要に応じて、生成物の鏡像体純度を増大させるために、後続の有利な晶出を少なくとも1回行うことが可能である。
記載されている方法のステップにより、本発明の方法の生成物を、反応に使用した基質に対して60〜100%、好ましくは80〜100%、特に好ましくは90〜100%の収率で単離することが可能である。単離された生成物は、>90%、好ましくは>95%、特に好ましくは>98%の高い化学純度により特徴づけられる。さらに、該生成物は、高い鏡像体純度を有し、これは、有利には、必要に応じて、晶出により更に増大しうる。
本発明の方法は、バッチ法、半バッチ法又は連続的方法により行いうる。
本方法は、有利には、例えばBiotechnology, Vol. 3, 2nd Edition, Rehmら編, (1993), 特にChapter IIに記載されているバイオリアクターにおいて行いうる。
以上の説明及び以下の実施例は本発明を説明するためのものに過ぎない。本発明は同様に、当業者に明らかな多数の可能な改変を包含する。
実施例
実験の部:
HCAP、2の合成(酢酸エチル中)
インペラ撹拌器、バッフル、温度計及び滴下漏斗を備えた6,000 mlミニプラント(Miniplant)反応器に、410.11 g(12.80モル)のメタノール中435.68 g(3.20モル)の3-ヒドロキシアセトフェノンと、1,200 mlの酢酸エチルを導入する。20〜30℃で冷却しながら、691.05 g(5.12モル)の塩化スルフリルを上記溶液に2時間以内で滴下する。滴下した後、混合物を室温でさらに1時間撹拌する。次に、混合物を室温で1,600 mlのH2Oを用いて加水分解した後、得られた二相混合物を分離させる。水相を800 mlの酢酸エチルで1回以上抽出する。蒸留ブリッジ(distillation bridge)を用いて、一緒にした有機相からメタノール及び酢酸エチルを蒸留する。同時に、1,880 mlのイソプロパノールを蒸留液溜めに滴下する。有益な(valuable)生成物の17.3%イソプロパノール溶液2462.5 g(これは、含量426 g(2.51モル)に相当する)を取得した。従って、収率は78%である。
HCAP、2の合成(ジクロロメタン中)
インペラ撹拌器、バッフル、温度計及び滴下漏斗を備えた2,000 mlミニプラント反応器に、192.24 g(6.00モル)のメタノール中204.23 g(1.50モル)の3-ヒドロキシアセトフェノンと、1,050 mlのCH2Cl2を導入する。20〜30℃で冷却しながら、283.44 g(2.10モル)の塩化スルフリルを上記溶液に2時間以内で滴下する。滴下した後、混合物を室温でさらに1時間撹拌する。次に、混合物を室温にて400 mlのH2Oで加水分解した後、得られた二相混合物を分離させる。相分離後、標準圧力で蒸留ブリッジを用いて、有機相からメタノール及びCH2Cl2を蒸留する。同時に、880 mlのイソプロパノールを同じ流速で滴下する。有益な生成物の25.7%イソプロパノール溶液837.78 g(これは、含量215 g(1.26モル)に相当する)を取得した。従って、収率は84%である。
HCPE、3の合成
実施例1又は2と同様に調製したケトン2を生体触媒により還元して、R-3を取得する。このために、好適な撹拌容器において、1 mM MgCl2、0.02 mMニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及び282 gのイソプロパノール(これも、補因子再生のための犠牲アルコールとして機能する)を1.44 Lの水性リン酸カリウムバッファー(50 mM、pH 7)中に溶解させる。立体選択性デヒドロゲナーゼ(E.C 1.1.1.1)を過剰産生する組換え大腸菌の細胞(生体乾燥重量3.75 gに相当する)を触媒として用いる。好適な生体触媒の製造については、WO 2005/108590号の実施例1〜3に記載されており、本明細書においてこの文献を明示的に参照する。水相を1.3 kgのMtBEで被覆する。292.8 gの2(イソパノール溶液として)を反応混合物に添加する。反応混合物中の2の濃度は、50 mMを超えてはならない。反応は、アキラル又はキラルクロマトグラフィーによりモニターすることができる。
反応後、有機相及び水相は、比重が異なるために分離する。有益な生成物R-3は主としてMtBE相中に存在する。
フェニレフリン、4の合成
85 mlのTHF中に15 g(86.9 mmol)の化合物R-3を溶解させ、圧力オートクレーブにおいて90℃で13.5 g(435mmol)のメチルアミンと反応させる。遊離物が完全に変換されるまで(約5時間)、反応させる。次に、室温まで冷却し、得られた懸濁液を蒸発により濃縮する。100 gの水を添加して、有益な生成物の遊離塩基を沈殿させ、これを単離する。12.85 g(76.8mmol、88%)のフェニレフリン遊離塩基を取得した。

Claims (21)

  1. 式IVの光学活性置換アルコール:
    Figure 2012502640
    〔式中、
    Cycは、単核又は多核の、飽和又は不飽和の、炭素環式又は複素環式の、場合により1若しくは複数回置換されていてもよい環であり、該環は、少なくとも1個の遊離ヒドロキシル基を有し;
    R1及びR2は、互いに独立して、H、又は場合により1若しくは複数回置換されていてもよいアルキル残基である。〕
    又は該化合物の塩
    の製造方法であって、
    いずれの場合も、純粋な立体異性体形態又は立体異性体の混合物であり、
    (a)式Iのケトン:
    Figure 2012502640
    〔式中、Cycは前記と同じ意味である。〕
    を、脂肪族アルコールの存在下で、ハロゲン化剤と反応させて、式IIのハロゲン化合物:
    Figure 2012502640
    〔式中、Cycは前記と同じ意味であり、Halはハロゲン原子である。〕
    を取得し、
    (b)得られた式IIの化合物を酵素的に還元して、式IIIのアルコール:
    Figure 2012502640
    〔式中、Cyc及びHalは前記と同じ意味である。〕
    を取得し、
    (c)得られた式IIIのアルコールを、式HNR1R2のアミン(R1及びR2は前記と同じ意味である)と反応させて式IVの化合物を取得する、
    上記方法。
  2. 段階(a)における反応が、式Iのアルカノンのモル当たり1〜10モル当量のアルコールの存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
  3. 段階(c)における化学反応が、開鎖又は環状エーテル中の溶液中で実施される、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
  4. 段階(b)が、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(E.C 1.1.1.1)から選択される酵素により触媒される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記アルコールデヒドロゲナーゼが、アロマトレウム属の微生物、特にアロマトレウム・アロマチカムEbN1菌に由来する酵素から選択される、請求項4に記載の方法。
  6. 段階(b)のための酵素が、
    (i)配列番号2、あるいは
    (ii)配列番号2に対してアミノ酸残基の25%以下が、付加、欠失、挿入、置換、逆位若しくはこれらの組合せにより改変されている、及び/又は配列番号2の酵素活性の少なくとも50%を依然として有する配列
    から選択されるポリペプチド配列を有する酵素から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 段階(b)における反応が、還元等価体、特にNADH又はNADPHの添加により実施され、また、場合により反応中に消費された還元等価体が再生される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記再生が、酵素的、電気化学的、又は電気−酵素的に実施される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記再生が、酵素的に実施され、再生酵素がADH、およびADHとは異なるデヒドロゲナーゼ、特にグルコースデヒドロゲナーゼ、ギ酸デヒドロゲナーゼ、亜リン酸デヒドロゲナーゼから選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 段階(b)における反応が、ADHを天然に若しくは組換えにより発現する微生物の存在下、又は該微生物に由来するADH含有画分の存在下、又は該微生物に由来するADH含有抽出物の存在下で実施される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 段階(b)における反応が、エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、リゾビウム科(Rhizobiaceae)、ラクトバチルス科(Lactobacillaceae)、ストレプトマイセス科(Streptomycetaceae)、ロドコッカス科(Rhodococcaceae)、ロドシクルス科(Rhodocyclaceae)及びノカルディア科(Nocardiaceae)の細菌から選択される、ADH産生微生物の存在下、又はこれら微生物に由来するADH含有画分若しくは抽出物の存在下で実施される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記微生物が、請求項4〜6のいずれか一項に定義されるアルコールデヒドロゲナーゼをコードする核酸構築物で形質変換されている組換え微生物である、請求項11に記載の方法。
  13. 段階(b)が、二相液体反応培地中で実施される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 水性有機反応培地が用いられ、式IIの遊離物及び式IIIの生成物の両方が水相よりも有機相における溶解度が高い、請求項13に記載の方法。
  15. 一般式IIの化合物:
    Figure 2012502640
    〔式中、Cyc及びHalは前記と同じ意味である。〕
    の製造方法であって、
    式Iのケトン:
    Figure 2012502640
    〔式中、Cycは前記と同じ意味である。〕
    を、脂肪族アルコールの存在下でハロゲン化剤と反応させて、式IIのハロゲン化合物を取得する、上記方法。
  16. 段階(a)における反応が、式Iのケトンのモル当たり1〜10モル当量のアルコールの存在下で実施される、請求項15に記載の方法。
  17. 式IIIの化合物:
    Figure 2012502640
    〔式中、Cyc及びHalは前記と同じ意味である。〕
    の製造方法であって、一般式IIの化合物:
    Figure 2012502640
    〔式中、Cyc及びHalは前記と同じ意味である。〕
    を酵素的に還元して、式IIIのアルコールを取得する、上記方法。
  18. 前記酵素反応が、請求項4〜14のいずれか一項に記載のように実施される、請求項16に記載の方法。
  19. Cycが、3-ヒドロキシフェニル残基であり、Halが塩素原子である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 式III若しくはIVの化合物の製造のための、請求項4〜7のいずれか一項に定義されるアルコールデヒドロゲナーゼ又は該酵素を産生する微生物の使用。
  21. 3-[(1R)-1-ヒドロキシ-2-メチルアミノ-エチル]-フェノールの製造のための、請求項20に記載の使用。
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