JP2012244999A - 植物の育種 - Google Patents
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Abstract
【課題】制御された栄養分の供給および水の供給を伴なう制御された気候条件の環境を提供すること。
【解決手段】均一の特徴の生育用培地で満たした容器のアレイ中で1つの種の植物を生育させる工程、およびその容器中の全ての植物のその環境中の条件に対する少なくとも実質的に均一の曝露を保証することが必要な場合、その環境内でその容器の位置を変化させる工程を包含する、植物を育種するためのプロセス。本発明に従うプロセスは、好ましくは、表現型特徴(例えば、生育、収穫高および植物の非生物的なストレスに対する抵抗性)を生育周期中に間隔をおいて同定する工程を、さらに包含する。
【選択図】なし
【解決手段】均一の特徴の生育用培地で満たした容器のアレイ中で1つの種の植物を生育させる工程、およびその容器中の全ての植物のその環境中の条件に対する少なくとも実質的に均一の曝露を保証することが必要な場合、その環境内でその容器の位置を変化させる工程を包含する、植物を育種するためのプロセス。本発明に従うプロセスは、好ましくは、表現型特徴(例えば、生育、収穫高および植物の非生物的なストレスに対する抵抗性)を生育周期中に間隔をおいて同定する工程を、さらに包含する。
【選択図】なし
Description
本発明は、植物の育種に関連し、特に、育種プロセスの間、植物を生育させる条件に関する。
植物育種は、本質的に、所定の種の植物の間の遺伝子型変異の作製により開始する。遺伝子型変異の作製は、伝統的交配、化学的突然変異誘発、放射線誘導性突然変異、体細胞雑種、種内交配および遺伝子操作を含む技術により獲得され得る遺伝的変化の生成に依存する。遺伝子変化の作製の後、最も好ましい農学的な表現型を有する遺伝子型の選択が行なわれる。
植物育種において、最も好ましい農学的な表現型を有する遺伝子型を選択するプロセスは、代表的には、いくつかの区画からなるフィールドで実施され、各区画は代表的に、少なくとも数平方メートルまたは少なくとも数十の植物が生育するために十分な面積からなる。統計的に有効な様式での表現型の評価は、各遺伝子型が生育し、その表現型がいくつかの異なる区画、代表的には、3以上の区画で評価されることを必要とする。さらに、フィールド実験が開始され得る前に、植物育種者は、実験のために必要とされる多数の植物を生育させるための十分な種子を必要とする。所定の遺伝子型の種は、多くの場合、少量のみ利用可能であり、従って、多くの場合、より多数の種子の産生が、実験を開始し得る前に必要である。フィールド規模の実験を行なうために必要な種子の量を得るために、種子の産生は、代表的には、時折、植物の複数の世代の生育により行なわれる。
育種を成功させるためには、農学的な関連性がある多数の中から少数を同定するために、十分な数の遺伝的な変化が実験されなければならない。遺伝子型の選択のための手順は、異なる遺伝子型の間の表現型の違いを検出するために、十分に差別的でなければならず、基礎として、観察された表現型を適切に記載するために十分に詳細なパラメーターのセットを必要とする。
表現型(例えば、生育習性、収穫高およびストレス抵抗性の観察例に基づく)は、遺伝子型それ自体が寄与した結果(遺伝子型関連表現型)および環境が寄与した結果(環境関連表現型)である。環境関連表現型は、例えば、温度、湿度、光、栄養分および供給の変化によって引き起こされる生育環境の変化に影響される。表現型主導の所望する遺伝型の選択を不明瞭にする重要な因子は、環境関連表現型構成要素における変化である。表現型に基づいた育種が、フィールドで行われる場合、ほとんどの環境変化は、植物が生育している土壌の不均一性から生じる。土壌の組成、土壌の物理学的な特性、栄養分、水の利用可能性および土壌に生息する微生物の存在は、天然の土壌では、短い距離にわたって変動し得る。土壌の不均質に起因する変化を避けるための一つの方法は、よりよく規定された物質(例えば、鉢植え用の土、バーミキュライト、またはロックウール)を含む容器(ポット、トレイなど)中で植物を生育させることである。規定された物質上での植物の生育は、通常温室内で行われるので、植物に与えられる水および栄養分の量は、制御され得る。これらの条件下で、生育する植物は、環境の変化を顕著に低減する。しかし、気候制御(加温、冷却、通気、湿度制御システム)、および栄養分/水の送達のためのシステムを備える温室内で、植物が生育する場合でさえも、環境条件はなお温室内の幾何学的な位置によって変化する。環境変化は、植物間の距離の違い、ならびに気候制御および栄養分/水の送達に使用されるデバイス(例えば、加熱素子、冷却素子、窓、ドア、噴霧デバイス、換気装置、水注入口および水流出口)との近さまたは遠さに起因し得る。
温室内で生育する植物は、自動化操作の影響を受ける。なぜなら、それらは、通常自動化デバイスへ、そして自動化デバイスから容易に運搬され得るポットに生育しているからである。
温室環境内で、放任受粉植物(例えば、トウモロコシ)を育種する場合、その環境内で花粉の流れを制限することが重要である。そのようにすることができない場合、環境内に存在する種々の遺伝的性質の混合を生じ、望ましくない。放任受粉植物であるトウモロコシを温室環境内で生育させるための従来の方法は、植物の雌性部分を覆うことにより、花粉の流れを制限する必要性に対応する。トウモロコシの場合には、各雌性器官(伸張した絹状物を有する穂)を(紙の)袋で覆い、花粉がこれらの部分に接触するのを防止する。そして、受粉は、この袋を除去し、雌性部分を露出し、次いで、雌性器官の隣りの房(トウモロコシ植物の雄性器官)を振動させることにより、制御された様式で行われる。このプロセスは、受粉効率にかなりのばらつきをもたらす。このばらつきは、適用される花粉の量および質における変動のみに起因するのではなく、雌性器官が、受粉に最適な状態にある利用可能な短い時間を考えると、受粉現象の適時性に関連する困難にも起因する。従って、温室環境における放任受粉植物の育種についての従来の方法に関連する主要な問題が存在する。
本発明の一つの目的は、植物を育種するための改良されたプロセスを提供することである。
本発明の別の目的は、植物育種が従来の育種プロセスより少ない種子量を使用して行われ得る、植物を育種するための改良されたプロセスを提供することである。
本発明の別の目的は、後述する課題のいくつかを克服し、温室環境内における放任受粉植物の育種のための改良されたプロセスを提供することである。
本発明者らは、温室内で植物を成育させる場所を変えることにより、表現型結果に対する環境に関連する表現型の影響を顕著に減少し得ることを見出した。表現型結果に対する環境に関連する表現型の影響は、植物を、制御された栄養分の供給および水の供給を伴なう制御された気候条件の環境で均一の特徴の生育用培地上で生育させることによって、さらに減少され得る。
従って、本発明は、その局面の一つで、植物を育種するためのプロセスを提供し、そのプロセスは、一つの種の植物を、制御された栄養分の供給および水の供給を伴なう制御された気候条件の環境で、均一の特徴の成長培地で満たした容器のアレイで生育させる工程、ならびに、その容器中の全ての植物の、その環境中の条件に対する少なくとも実質的に一定の曝露を保証することが必要な場合、その環境内でその容器の位置を変化させる工程を包含する。本発明に従うプロセスは、好ましくは、表現型特徴(例えば、生育、収穫高および植物の非生物的なストレスに対する抵抗性)を生育周期中に間隔をおいて同定する工程を、さらに包含する。例えば、植物は、視覚的に、または適切な機器を使用することによって、評価され得る。所望の場合、情報を選択し、評価するために、アルゴリズムが使用され、その結果は、特徴のてがかりを同定するために、統計的に分析され得る。好ましくはまた、植物は、さらに育種または商業的利用のために、その植物の表現型特徴を比較することによって選択される。したがって、本発明は以下を提供する。
(1)植物を育種するためのプロセスであって、該プロセスは、制御された栄養分の供給および水の供給を伴なう制御された気候条件の環境で、均一の特徴の生育用培地で満たした容器のアレイで1つの種の植物を生育させる工程、および該容器中の全ての植物の、該環境中の条件に対する少なくとも実質的に均一曝露を保証することが必要な場合、該環境内で該容器の位置を変化させる工程を包含し、そして、該プロセスは、該植物の表現型特徴を比較することにより、さらなる育種または市販用途のための植物を選択する工程をさらに包含する、プロセス。
(2)前記少なくとも一つの容器の位置が、6時間〜2週間の時間間隔で変化する、項目1に記載のプロセス。
(3)前記容器の位置の変化がプログラムされている、項目1または2に記載のプロセス。
(4)前記環境内の前記容器の位置が、自動的に変化する、項目1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
(5)生育サイクル中に間隔をおいて、前記植物の表現型特徴を同定する工程をさらに包含する、項目1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
(6)前記容器が、多数の同延の保存運搬装置を備える運搬手段上に水平に配置された均一のアレイ中に支持される、項目1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
(7)前記運搬手段と関連するモーター手段が、所定の距離まで前記容器を移動させる、項目6に記載のプロセス。
(8)項目7に記載のプロセスであって、保存運搬装置は、そのモーター手段によって移動され、該保存運搬装置上に支持される前記容器の列を第一移動ステーションの方に移動させ、該第一移動ステーションで、該列の一番端の容器が、輸送運搬手段に移され、該輸送運搬手段は、該輸送運搬装置上に支持された容器を第二移動ステーションに移動させるように操作され、そして、第二保存運搬装置のモーター手段が、該容器を回収するように操作される、プロセス。
(9)前記容器が、前記第一保存運搬装置から前記第二保存運搬装置へ、直線通路内を運ばれる、項目8に記載のプロセス。
(10)前記容器が、前記第一保存運搬装置から前記第二保存運搬装置へ、閉鎖通路内を運ばれる、項目8に記載のプロセス。
(11)各容器が、ただ一つの植物を含む、項目1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
(12)表現型の検査(表現型評点に基づいて最も所望される遺伝子型を選択する工程)のための、植物の生育を改良するためのプロセスであって、該方法は、該植物の生育周期の間に該植物を自動的に移動させることにより、特定の微小環境に長期間曝露することを避ける工程、その工程により、該植物の表現型に対する微小環境の変化の影響を減少させる工程からなる、プロセス。
(13)前記植物が、放任受粉植物または自家受粉する植物である、項目1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
(14)温室内で、放任受粉植物を育種するためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
a)雄性不稔放任受粉植物を提供する工程;
b)該雄性不稔植物を花粉と接触させる工程;および必要に応じて、
c)所望の表現型を有する植物を選択する工程、
を包含する、プロセス。
(15)前記接触させる工程が、前記雄性不稔植物の受粉チャンバーへの導入、および該受粉チャンバー中の該雄性不稔植物を、約2日間〜約3週間の期間、好ましくは、約3日間〜約10日間の期間生育する工程を包含する、項目14に記載のプロセス。
(16)前記放任受粉植物が、トウモロコシである、項目14または15に記載のプロセス。
(1)植物を育種するためのプロセスであって、該プロセスは、制御された栄養分の供給および水の供給を伴なう制御された気候条件の環境で、均一の特徴の生育用培地で満たした容器のアレイで1つの種の植物を生育させる工程、および該容器中の全ての植物の、該環境中の条件に対する少なくとも実質的に均一曝露を保証することが必要な場合、該環境内で該容器の位置を変化させる工程を包含し、そして、該プロセスは、該植物の表現型特徴を比較することにより、さらなる育種または市販用途のための植物を選択する工程をさらに包含する、プロセス。
(2)前記少なくとも一つの容器の位置が、6時間〜2週間の時間間隔で変化する、項目1に記載のプロセス。
(3)前記容器の位置の変化がプログラムされている、項目1または2に記載のプロセス。
(4)前記環境内の前記容器の位置が、自動的に変化する、項目1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
(5)生育サイクル中に間隔をおいて、前記植物の表現型特徴を同定する工程をさらに包含する、項目1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
(6)前記容器が、多数の同延の保存運搬装置を備える運搬手段上に水平に配置された均一のアレイ中に支持される、項目1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
(7)前記運搬手段と関連するモーター手段が、所定の距離まで前記容器を移動させる、項目6に記載のプロセス。
(8)項目7に記載のプロセスであって、保存運搬装置は、そのモーター手段によって移動され、該保存運搬装置上に支持される前記容器の列を第一移動ステーションの方に移動させ、該第一移動ステーションで、該列の一番端の容器が、輸送運搬手段に移され、該輸送運搬手段は、該輸送運搬装置上に支持された容器を第二移動ステーションに移動させるように操作され、そして、第二保存運搬装置のモーター手段が、該容器を回収するように操作される、プロセス。
(9)前記容器が、前記第一保存運搬装置から前記第二保存運搬装置へ、直線通路内を運ばれる、項目8に記載のプロセス。
(10)前記容器が、前記第一保存運搬装置から前記第二保存運搬装置へ、閉鎖通路内を運ばれる、項目8に記載のプロセス。
(11)各容器が、ただ一つの植物を含む、項目1〜10のいずれか1項に記載のプロセス。
(12)表現型の検査(表現型評点に基づいて最も所望される遺伝子型を選択する工程)のための、植物の生育を改良するためのプロセスであって、該方法は、該植物の生育周期の間に該植物を自動的に移動させることにより、特定の微小環境に長期間曝露することを避ける工程、その工程により、該植物の表現型に対する微小環境の変化の影響を減少させる工程からなる、プロセス。
(13)前記植物が、放任受粉植物または自家受粉する植物である、項目1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
(14)温室内で、放任受粉植物を育種するためのプロセスであって、該プロセスは、以下:
a)雄性不稔放任受粉植物を提供する工程;
b)該雄性不稔植物を花粉と接触させる工程;および必要に応じて、
c)所望の表現型を有する植物を選択する工程、
を包含する、プロセス。
(15)前記接触させる工程が、前記雄性不稔植物の受粉チャンバーへの導入、および該受粉チャンバー中の該雄性不稔植物を、約2日間〜約3週間の期間、好ましくは、約3日間〜約10日間の期間生育する工程を包含する、項目14に記載のプロセス。
(16)前記放任受粉植物が、トウモロコシである、項目14または15に記載のプロセス。
本発明がより明確になり得るために、ここで、例として本発明を例示するための記述に対して選択される本発明に従う好ましいプロセスにおいて使用するための装置の添付の図面と一緒に読まれるべき説明は、以下の通りである。
図1は、例示的な装置の運搬手段の略図である。
図2は、チャンネル部材、および植物ポットを支持する運搬手段の運搬ベルトの透視図である。
用語「含む(comprising)」は、本明細書中で使用される場合、「含む(including)」および「本質的に以下からなる(consisting essentially of)」を含むことが意図される。
本発明に従うプロセスにおいて、容器の位置は、連続して、または、時々で変化され得る。一つの好ましいプロセスにおいて、それらは、植物の生育特徴の観察結果に従って操作者によって予め設定された程度、および間隔で変化される。環境内の容器の位置は、2週間までの間隔で、好ましくは、6時間〜2週間の、より好ましくは、1日間〜1週間の間隔で変化され得る。好ましくは、環境内の容器の位置は、自動的に変化される。植物を含むポットの形態で容器のアレイを支持する装置が好ましい。好ましくは、一つの植物は、各ポット内で生育するが、植物は、いくつかの個体ともに、大きなポットまたは物理的に接続したポットからなるトレイ内で生育し得る。
本発明に従うプロセスにおいて、容器の位置は、連続して、または、時々で変化され得る。一つの好ましいプロセスにおいて、それらは、植物の生育特徴の観察結果に従って操作者によって予め設定された程度、および間隔で変化される。環境内の容器の位置は、2週間までの間隔で、好ましくは、6時間〜2週間の、より好ましくは、1日間〜1週間の間隔で変化され得る。好ましくは、環境内の容器の位置は、自動的に変化される。植物を含むポットの形態で容器のアレイを支持する装置が好ましい。好ましくは、一つの植物は、各ポット内で生育するが、植物は、いくつかの個体ともに、大きなポットまたは物理的に接続したポットからなるトレイ内で生育し得る。
本発明に従うプロセスにおける使用に適した装置は、容器が水平に配置された均一なアレイ中に支持される運搬手段を備える。好ましくは、この運搬手段は、多数の同延の保存運搬装置を備え、各保存運搬装置は、溝の底に平らに横たわるベルトおよび輸送運搬手段を備え付けられた「U」型の溝を備える。好ましくは、このベルトは、モーター(例えば、電気モーター)の手段によって溝内を移動する。後述する一つの好ましい装置において、特定の溝の前に自身を配置し得るシャトルロボットが提供され、ロボット内のモーターは、作動され、溝内のベルトを前後に引き得、それによって、溝内へまたは溝からの容器の輸送を可能にする。溝の末端は、輸送運搬装置と連絡し、従って、容器は、溝から溝へ、前後に輸送され得、そして、アレイの特定の領域へと前後に輸送され得る。好ましくは、このモーターは、容器を連続して、または時間間隔(例えば、6時間〜2週間の間隔、より好ましくは、1日間〜1週間の間隔)をおいて動かすようにされる。従って、保存運搬装置は、モーター手段によって移動され、保存運搬装置上に支持された容器の列を、列の一番端の容器が輸送運搬手段に移される第一移動ステーションに移動させることを可能にし、その輸送運搬手段は、その上に支持された容器を第二移動ステーションに移動させるように操作され得、第二保存運搬装置のモーター手段は、容器を回収するように操作され得る。
一つの好ましい配置において、輸送運搬手段は、容器が、直線通路内を上記第一保存運搬装置から第二保存運搬装置に運ばれるように配置される。別の配置において、輸送運搬手段は、容器が閉鎖通路内を上記第一保存運搬装置から第二保存運搬装置へ運ばれるように配置され;例えば、回転式テーブルが使用され得、そしてその場合、いくつかの容器は、その上に搭載され、そこから取り除かれ、第二保存運搬装置に無作為な順番で送達され得る。
本発明に従ったプロセスにおいて、容器は、容器内の植物によって占められる体積に配慮して実行可能に有するように、密接して一緒に配置される。本発明に従ったプロセスは、種々の利点を有する。そのプロセスは、植物の表現型に影響し、従って、所望の遺伝子型に関連する表現型の選択を妨害する環境の変化の有効な緩和を可能にする。植物の生育周期の間に、植物の位置を変えることによって、植物は、各位置でわずかに異なる環境設定に露出される。育種集団の全ての植物の移動が、十分に高頻度で(例えば、一日に一回または一週間に一回)生じる場合、空間の効果は、集団にわたって、無作為化される。育種の間の植物の表現型に対する環境の寄与の緩和は、所望の遺伝子型がより確実に選択されることを可能にする。(生育、収穫高またはストレス抵抗性のような植物を特徴的にする)表現型を同定する工程は、植物の位置を変化させることによって容易になる。例えば、植物の表現型が適切な機器によって評価される場合、植物は、評価のための機器が位置するステーションに適切な間隔で移動し得る。また、生育する植物の均一性が増強されることにより、研究のために、より小さい植物集団を使用することが可能になり、同様にコストを減少させることが可能になる。このことは、異なる遺伝子型と関連する表現型変化を正確に評価するために、より大きな植物集団(代表的には、フィールド規模)を必要とする従来の方法と比較して、より小さい植物集団(代表的には、温室規模)を使用して、種々の農学的な特徴(例えば、収穫高)の育種を可能にする。また、このプロセスは、より効率的な植物の育種を提供する。なぜならば、研究される遺伝的変化の固定数、必要な差別力の固定レベル、特定の遺伝的変化を表す集団の大きさを減少させ、種子の限定された利用可能性の条件下(遺伝的変化の作製後の世代における場合、よくあることである)で、確実に表現型を確立する能力を生じ、そういうものとして、多数の種子の増殖およびその結果生じる時間の浪費に対する必要性を取り除くことを可能にする。
可能である別な方法より少量の種子で育種プロセスを実施することを可能にすることの利点は、特に、種々の所望の表現型特徴(特性)に対するトランスジェニック植物の育種の場合に関連する。
トランスジェニック植物の育種は、少なくとも一つの核酸の、単一の植物への導入を必要とする。異なる植物は、その中に導入された同じであるかまたは異なる核酸を有しえ得る。次いで、植物は、生育され、所望の特性を有する植物を同定するために評価される。このような所望の特性を有する植物は、さらに、フィールド環境で評価され得るか、同一農作物種の近交系の異なる品種と戻し交配され得るか、ハイブリッドを作製するかもしくは試験するために使用され得るか、または、種子の産生、場合によっては市販用途のための種子の産生のために使用され得る。
任意の植物が、有利なことに、本発明の育種プロセスに供され得る。本発明の一局面に従って、育種プロセスに供される植物は、自家受粉植物(例えば、稲)である。自家受粉植物は、通常の条件下では、いずれか一つの所定の植物種の雌性器官は、同一植物種の雄性器官で産生された花粉によって受粉される。
本発明の別の局面に従って、育種プロセスに供された植物は、放任受粉植物種(例えば、トウモロコシ)である。放任受粉植物種は、実質的に、非自家受粉植物種である植物である。
本発明はまた、温室環境内で、放任受粉植物種の育種のためのプロセスを提供する。このプロセスは、放任受粉植物に適用可能であり、好ましくは、本明細書中の上記の植物を育種するプロセスと組み合わせて使用される。放任受粉植物の育種のためのプロセスは、有利なことに、放任受粉植物(例えば、トウモロコシ)の温室環境内での育種のための従来の方法に付随する受粉効率における変動性を排除する。このプロセスのさらなる利点は、従来の方法に付随する遺伝子型の混合の問題が避けられることである。
それゆえに、本発明に従って、以下の工程:
(i)雄性不稔放任受粉植物を提供する工程;
(ii)その雄性不稔植物を花粉と接触させる工程;および必要に応じて、
(iii)所望の表現型を有する植物を選択する工程、
を包含する、温室環境内で放任受粉植物を育種するためのプロセスが提供される。
(i)雄性不稔放任受粉植物を提供する工程;
(ii)その雄性不稔植物を花粉と接触させる工程;および必要に応じて、
(iii)所望の表現型を有する植物を選択する工程、
を包含する、温室環境内で放任受粉植物を育種するためのプロセスが提供される。
後述のプロセスは、放任受粉植物(特に、トウモロコシ)の育種に特に適用可能である。本発明のプロセスにおいて、植物を雄性不稔の育種プロセスに供することによって、受粉はより効率的になされ、そして、遺伝子型の混合は避けられる。このことにより、生じ得る自家受粉を実質的に完全に排除し、そして、さらに、植物の集団内の遺伝子型の混合を実質的に排除する。植物を雄性不稔にさせるための方法は、当該分野で周知であり、化学的技術または機械的技術が挙げられる。植物を雄性不稔にさせるための機械的技術の例としては、単に、雄性部分の物理的な除去(去勢)が挙げられる。植物を雄性不稔にさせるための化学的な技術の例としては、化学的交配剤またはCHAの使用が挙げられる。
このプロセスはさらに、雄性不稔植物を花粉と接触させる工程を包含する。これは、雄性不稔植物の受粉チャンバーへの導入によって行なわれ、その受粉チャンバー内で、雄性不稔植物は、約2日間〜約3週間、好ましくは、約3日間〜約10日間の間の範囲の期間生育する。雄性不稔植物の受粉チャンバー内での導入は、雌性不稔の期間と一致する。当業者は、雌性不稔の期間を容易に理解し、従って、雄性不稔植物の受粉チャンバーへの導入の時点および受粉チャンバー内で雄性不稔植物を維持するために必要な時間を十分に理解する。受粉チャンバーは、多数の受粉媒介(花粉を飛散する)植物を有する。雄性不稔植物は、受粉チャンバー内への導入の際に、(最も好ましくは、雄性不稔植物と同一系統の)同一種の単一系統の受粉媒介植物と一緒に一定期間生育される。花粉を雄性不稔植物と接触させる工程を最適化するために、受粉媒介植物は、雄性不稔植物の間に分散される。一つの配置において、受粉媒介植物の列の後ろに、雄性不稔植物の列が続いて、その後ろに、別の受粉媒介性植物が続いて(以下同様)提供される。あるいは、一つの受粉媒介性植物は、全ての列が十字型形成を満たすように、雄性不稔植物の隣に配置される。受粉チャンバーは、受粉チャンバーが、雄性不稔植物が雌性不稔性の時期以外で生育する位置から物理的または空間的に分離されるように配置され得る。この受粉チャンバーは、受粉に最適であり、かつこのプロセスが適用される交雑種の必要性に依存する制御された環境(気候またはその他)を備える。例示の目的で、トウモロコシについては、制御された気候条件は、約20℃と約35℃との間の温度、好ましくは、約24℃と約30℃との間の温度、および約70%と約90%との間の相対湿度が挙げられる。さらに、トウモロコシは、主として風の助けにより受粉されるので、受粉チャンバーは、空気の循環、従って花粉のチャンバー内の循環を促進するための装置を備える。植物の受粉はさらに、受粉を促進するための花粉の十分な密度を引き起こすような大きさの受粉チャンバーの提供によって補助される。
このプロセスは、必要に応じて任意の所定の特徴的についてのさらなる植物の選択工程を包含する。これは、特定の表現型の存在に基づいた選択であり得るか、または、例えば、輸送手段に対して適切な寸法、もしくは例えば、光に対する植物の近さを配慮に入れた温室環境に適した適切な高さを有する植物の選択であり得る。トウモロコシに関しては、比較的小さいか、または背丈の低い植物の使用と関連する特定の利点が存在し、そして、トウモロコシは、比較的短いサイクル時間を有し、好ましくは、約4ヶ月以下である。これらの植物は、異なる種、交配種、近交系または集団(例えば、Gaspe、または(多くの自家受粉世代を通じた)Gaspeに由来する任意の近交系であり得る。
例示的な装置は、植物ポット(10)(図2)の形態の複数の容器と連結して使用するために適しており、その植物ポットの中で、一つ以上の植物が、その目的のために選択された培地中で生育している。
装置は、運搬手段(20)を備え、この手段によってポットが支持され、所望の通り移動される。運搬手段(20)は、複数の同延の保存運搬装置(22)を備え、そのそれぞれが、いくつかのポットの列に対する支持、水平に配置されたアレイ中のポットの列を支持するための互いに隣接して配置された保存運搬装置を提供する。各保存運搬装置(22)は、隣接する溝の隣に平行な関係で固定された強固な「U」型の溝(24)により提供されるチャンネル部材を備える。エンドレスベルト(26)は、各溝内で作動し(図2)、上面を溝内に横たえて配置され、溝に沿って引かれるように配置される。各ベルト(26)は、密接に配置したポット(10)の列を支持する。溝(24)は、それらの末端部分が、溝(24)に対して横方向に位置する輸送運搬装置(28)のベルト運搬装置(30)に近接して配置される。
電気的に操作されるシャトルロボット(32、34)は、溝(24)内でベルト(26)を正確に動かすために使用される。この動きは、ポットのベルト運搬装置(30)への移動またはそこからの移動を引き起こす。モーター手段は、ベルト装置(30)を継続して動かすために提供される。ベルト(26)がその溝内を一方向に移動する場合、そのベルトに支持されるポットの列は、移動ステーションの方へ動かされ、その位置で、列の末端のポットは、ベルト運搬装置(30)に移される。他の向きに動く場合、ベルト(26)は、ベルトに支持されたポットの列を、ベルト運搬装置(30)から離れるように動かし、それにより、その列の末端に導入されるべきポットに対する空間が与えられる。各シャトルロボット(32、34)は、ベルト運搬装置(30)に沿った移動のために配置され、その結果、それは、所望の場合、個々に溝と連絡し得る。
それらの溝は、類似する構造であり、ベルト運搬装置(30)に沿ってポットを導くためのガイド部材(示さず)を備える。含気的に操作されるピストンのシリンダーおよびシリンダーデバイス(示さず)は、ガイド部材の間のシャトルロボット上にマウントされ、そして、そのピストンが、ベルト運搬装置(30)を水平に横切って移動する、そして、その上を移動するように配置される。その残りの位置で、ピストンは、そのベルト(26)によって溝から送達されるポットを静止させる役目を果たす。ベルト運搬装置(30)からポットが取り除かれることが所望される場合、ピストンは、作動されてポットを押し、選択された溝(22)の中に推し進める。
受精機と合わせた位置に関する履歴データおよび灌水データは、装置の操作者に、アレイの各単一の植物の栄養レジメンの記録を維持することを可能にする。その情報はまた、操作者に、全ての植物の動きを、最も効率的な方法で計画することを可能にする。
装置は、シャトルロボットがデータベースに含まれるデータに応答して作動させ、ポットをある位置から別の位置へ移動するように配置される。
Claims (13)
- 制御された気候条件下で植物を表現型化する方法であって、該植物は均一の特徴の生育用培地上で、制御された栄養分の供給および水の供給を伴って生育され、該方法は、以下の工程:
該植物を成育させる工程、
該植物の生育周期の間に該植物を移動させる工程、
該植物の生育周期の間に該植物を評価する工程、
所望の表現型を有する植物を選択する工程、
を包含する、方法。 - 前記植物は温室内で生育される、請求項1に記載の方法。
- 前記方法は、前記植物の表現型特徴の少なくとも1つを該植物の生育周期中に間隔をおいて同定する工程をさらに包含する、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
- 前記評価する工程および/または選択する工程は、アルゴリズムおよび/または統計的分析を使用する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 前記植物を移動させる工程は、位置に関する履歴データ(受精機および灌水データと合わせられる)に基づいて行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 前記方法は、さらに育種するため、または市販用途のため、またはフィールド環境でさらに評価するため、または同一農作物種の近交系の異なる品種と戻し交配するため、または試験用ハイブリッドを作製するため、または種子の産生のために、選択された前記植物を使用する工程をさらに包含する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 前記植物は稲またはトウモロコシである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 前記植物は、Gaspeトウモロコシ、またはGaspeに由来する任意の近交系である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 前記植物の移動させる工程が運搬ベルト上で行われる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
- 前記表現型特徴は、収穫高および/またはストレス抵抗性である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
- 収穫高および/またはストレス抵抗性を分析するための方法であって、該方法は、以下の工程:
該植物を成育させる工程、
該植物の生育周期の間に該植物を移動させる工程、
該植物の生育周期の間に該植物を評価する工程、
を包含する、方法。 - 植物における異なる遺伝子型と関連する表現型変化を分析するための方法であって、
該植物を成育させる工程、
該植物の生育周期の間に該植物を移動させる工程、
該植物の生育周期の間に該植物を評価する工程、
所望の表現型を有する植物を同定する工程、
を包含する、方法。 - 前記植物はトランスジェニック植物である、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
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