以下、本発明の実施形態について図1〜図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態に係る電力管理システムの全体構成図である。図2は、第一主空気圧縮機の制御フローを示すチャート図である。図3は、第二主空気圧縮機の制御フローを示すチャート図である。
本発明の実施形態に係る電力管理システム1は、図1に示したように、複数の補機2に電力を供給可能な複数の発電機3を備えた構造物の電力管理システムであって、発電機3の使用電力量を監視する電力監視部4と、補機2の始動及び停止を制御する補機制御部5と、を有し、補機制御部5は、電力監視部4の出力値から発電機3のうち稼動中である稼動発電機3a(例えば、第一発電機31)の出力上限値までの許容電力ΔPを確認し、許容電力ΔPと補機2のうち始動させようとする始動対象補機2a(例えば、第一主空気圧縮機21)の消費電力Wとを比較し、消費電力Wが許容電力ΔPを超えている場合に、補機2のうち稼動中である稼動補機2b(例えば、第一空調用圧縮機23等)を停止して、許容電力ΔPが消費電力Wよりも大きくなった後、始動対象補機2aを始動させるように制御を行う。
前記構造物は、例えば、船舶、海上浮体構造物、車両、航空機、プラント、発電設備、各種工場等の構造物であるが、図1に示した電力管理システム1は、船舶に使用されるものである。図1に示したように、電力管理システム1は、例えば、第一主空気圧縮機21、第二主空気圧縮機22、第一空調用圧縮機23、第二空調用圧縮機24、消防・雑用ポンプ25,26、その他の圧縮機27、その他のポンプ28、その他のファン29等の複数の補機2を有する。これらの補機2は、船内に配置された配電盤6に接続されている。なお、上述した補機2(21〜29)は単なる例示であり、図示したものに限定されるものではない。
配電盤6には、例えば、三台の発電機3(第一発電機31、第二発電機32、第三発電機33)が接続されている。これらの発電機3により生成された電力は、配電盤6を介して補機2に供給され、補機2が駆動される。なお、発電機3の台数は三台に限定されるものではなく、二台以下であってもよいし、四台以上であってもよい。また、配電盤6は、電力監視部4や補機制御部5を備えた制御部7を有している。電力監視部4は、発電機3の使用電力量を監視する。補機制御部5は、発電機3の使用電力量に基づいて補機2の始動及び停止を制御することができるように構成されている。
また、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22は、圧縮空気を貯留する主空気槽8に接続されている。主空気槽8は、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22により生成された圧縮空気を一定の圧力で貯留する。主空気槽8に蓄えられた圧縮空気は、船内において、エンジン始動、スートブロー、消火活動、清掃活動、空調等、種々の用途に用いられる。ここで、スートブロー(Soot Blow)とは、排管内の煤を吹き飛ばす作業であり、一般的には一日に二回程度の頻度で行われる。スートブロー時には、多量の圧縮空気を使用することが多い。また、主空気槽8には、圧力計81が接続されており、主空気槽8の圧力(内圧)を計測できるように構成されている。圧力計81の計測値は、制御部7に送信される。
ここで、補機制御部5による第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22の制御フローについて、図2及び図3を用いて説明する。図2に示した第一主空気圧縮機21のチャート図は、説明の便宜上、第二主空気圧縮機22を始動させずに、第一主空気圧縮機21を始動させ、第一主空気圧縮機21を停止させる場合を示している。
図2に示したように、補機制御部5は、まず、「主空気槽8の圧力が2.0MPa以下か否か」を確認する(SP101)。主空気槽8の圧力が2.0MPaを超えている場合(No)には、主空気槽8の圧力は正常である又は十分に圧縮空気が貯留されているものとして現状の状態を維持する。一方、主空気槽8の圧力が2.0MPa以下の場合(Yes)には、主空気槽8の圧力が異常である又は圧縮空気が不足しているものとして、第一主空気圧縮機21を始動させようとする。すなわち、第一主空気圧縮機21は始動対象補機2aとして認識される。なお、第一主空気圧縮機21の消費電力Wは90kWであるものとする。
次に、補機制御部5は、「稼動発電機3aの使用電力が900kW以下か否か」を確認する(SP102)。いま、稼動発電機3aは、第一発電機31のみであり、第一発電機31の定格出力は1100kWであるものとする。第一発電機31の負荷率は、例えば、90%であり、出力上限値は1100kW×0.9=990kWとして求めることができる。第一主空気圧縮機21の消費電力Wは90kWであることから、第一発電機31のみで第一主空気圧縮機21を始動させるためには、少なくも90kWの許容電力ΔPが必要である。許容電力ΔPは、出力上限値から使用電力を差し引くことにより容易に求めることができる。したがって、許容電力ΔPが消費電力Wよりも大きい場合(例えば、許容電力ΔPが90kWより大きい場合)に第一発電機31のみで第一主空気圧縮機21を始動させることができる。また、換言すれば、第一発電機31の使用電力が990kW−90kW=900kW以下であれば、第一発電機31のみで第一主空気圧縮機21を始動させることができる。
そして、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が900kW以下の場合(Yes)には、第一主空気圧縮機21を始動させる(SP103)。このとき、稼動発電機3aである第一発電機31以外の発電機3(第二発電機32及び第三発電機33)を始動させる必要はない。
その後、補機制御部5は、「主空気槽8の圧力が2.5MPa以上か否か」を確認する(SP104)。主空気槽8の圧力が2.5MPa未満の場合(No)には、まだ十分に圧縮空気が貯留されていないものとして、第一主空気圧縮機21の駆動を維持する。
そして、主空気槽8の圧力が2.5MPa以上である場合(Yes)には、主空気槽8の圧力は正常である又は十分に圧縮空気が貯留されているものとして第一主空気圧縮機21を停止させる(SP105)。以後、補機制御部5は、主空気槽8の圧力の監視モードに移行し、主空気槽8の圧力に応じてステップSP101〜SP105を繰り返す。したがって、第一主空気圧縮機21は常時自動運転されている状態になっている。
また、補機制御部5は、ステップSP102において、稼動発電機3aの使用電力が900kWを超えている場合(No)には、稼動発電機3aのみで第一主空気圧縮機21を始動させることができないため、稼動補機2b(例えば、第一空調用圧縮機23)の停止を行う(SP106)。このとき、どの稼動補機2bを停止させるかは任意であるが、船舶の運航条件、時間帯、天候等を考慮して、停止可能な稼動補機2bを選択できるように設定しておいてもよいし、特定の稼動補機2bを停止するように設定しておいてもよい。また、停止可能な稼動補機2bが複数存在する場合には、消費電力の最も大きいものを停止させるようにすると効果的である。
続いて、補機制御部5は、「稼動発電機3aの使用電力が900kW以下か否か」を確認する(SP107)。このステップSP107では、第一発電機31のみで第一主空気圧縮機21を始動させることができるか否かの確認を行っている。
そして、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が900kW以下の場合(Yes)には、第一主空気圧縮機21を始動させる(SP103)。このとき、稼動発電機3aである第一発電機31以外の発電機3(第二発電機32及び第三発電機33)を始動させる必要はない。
さらに、補機制御部5は、ステップSP107において、稼動発電機3aの使用電力が900kWを超えている場合(No)には、許容電力ΔPを増やすために、「停止可能な稼動補機2bがあるか否か」の確認を行う(SP108)。停止可能な稼動補機2bがある場合(Yes)には、ステップSP106に戻り、稼動補機2b(例えば、第二空調用圧縮機24)の停止を行う。以後、稼動発電機3aの使用電力が900kW以下となるまで、ステップSP106〜SP108を繰り返す。複数の稼動補機2bを停止させる場合には、消費電力の大きいものから順に停止させるようにすると効果的である。
また、稼動発電機3aの使用電力が900kWを超えた状態で、停止可能な稼動補機2bがなくなった場合には、稼動発電機3aのみで第一主空気圧縮機21を始動させることができないため、本制御フローを終了する。本制御フローを終了した後は、例えば、第二発電機32を始動させて電力を確保するようにすればよい。
図3に示した第二主空気圧縮機22のチャート図は、説明の便宜上、第一主空気圧縮機21を始動させた状態(図2のステップSP103以降の状態)で、第二主空気圧縮機22を始動させ、第二主空気圧縮機22を停止させる場合を示している。
図3に示したように、補機制御部5は、「主空気槽8の圧力が1.8MPa以上か否か」を確認する(SP201)。主空気槽8の圧力が1.8MPa以上の場合(Yes)には、主空気槽8の圧力は正常である又は圧縮空気が十分であるものとして現状の状態(第一主空気圧縮機21を駆動させた状態)を維持する。一方、主空気槽8の圧力が1.8MPa未満の場合(No)には、主空気槽8の圧力が異常である又は圧縮空気が不足しているものとして、第二主空気圧縮機22を始動させようとする。すなわち、第二主空気圧縮機22は始動対象補機2aとして認識される。なお、第二主空気圧縮機22の消費電力Wは90kWであるものとする。
次に、補機制御部5は、「稼動発電機3aの使用電力が900kW以下か否か」を確認する(SP202)。いま、稼動発電機3aは、第一発電機31のみであるから、ステップSP102の説明と同様に、許容電力ΔPが消費電力W(90kW)よりも大きい場合に第一発電機31のみで第二主空気圧縮機22を始動させることができる。
そして、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が900kW以下の場合(Yes)には、第二主空気圧縮機22を始動させる(SP203)。このとき、稼動発電機3aである第一発電機31以外の発電機3(第二発電機32及び第三発電機33)を始動させる必要はない。
その後、補機制御部5は、「主空気槽8の圧力が2.5MPa以上か否か」を確認する(SP204)。主空気槽8の圧力が2.5MPa未満の場合(No)には、まだ十分に圧縮空気が貯留されていないものとして、第二主空気圧縮機22の駆動を維持する。
そして、主空気槽8の圧力が2.5MPa以上である場合(Yes)には、主空気槽8の圧力は正常である又は十分に圧縮空気が貯留されているものとして第二主空気圧縮機22を停止させる(SP205)。以後、補機制御部5は、主空気槽8の圧力の監視モードに移行し、主空気槽8の圧力に応じてステップSP201〜SP205を繰り返す。したがって、第二主空気圧縮機22は、第一主空気圧縮機21と同様に、常時自動運転されている状態になっている。
また、補機制御部5は、ステップSP202において、稼動発電機3aの使用電力が900kWを超えている場合(No)には、稼動発電機3aのみで第二主空気圧縮機22を始動させることができないため、稼動補機2bの停止を行う(SP206)。停止させる稼動補機2bの設定や選択については、ステップSP106の場合と同様である。
続いて、補機制御部5は、「稼動発電機3aの使用電力が900kW以下か否か」を確認する(SP207)。このステップSP207では、第一発電機31のみで第二主空気圧縮機22を始動させることができるか否かの確認を行っている。
そして、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が900kW以下の場合(Yes)には、第二主空気圧縮機22を始動させる(SP203)。このとき、稼動発電機3aである第一発電機31以外の発電機3(第二発電機32及び第三発電機33)を始動させる必要はない。
さらに、補機制御部5は、ステップSP207において、稼動発電機3aの使用電力が900kWを超えている場合(No)には、許容電力ΔPを増やすために、「停止可能な稼動補機2bがあるか否か」の確認を行う(SP208)。停止可能な稼動補機2bがある場合(Yes)には、ステップSP206に戻り、稼動補機2bの停止を行う。以後、稼動発電機3aの使用電力が900kW以下となるまで、ステップSP206〜SP208を繰り返す。
また、稼動発電機3aの使用電力が900kWを超えた状態で、停止可能な稼動補機2bがなくなった場合には、稼動発電機3aのみで第二主空気圧縮機22を始動させることができないため、本制御フローを終了する。本制御フローを終了した後は、例えば、第二発電機32を始動させて電力を確保するようにすればよい。
図2及び図3に示した制御フローは、補機2のうち始動させようとする始動対象補機2a(例えば、第一主空気圧縮機21、第二主空気圧縮機22)の消費電力W(例えば、90kW)が、発電機3のうち稼動中である稼動発電機3a(例えば、第一発電機31)の出力上限値(例えば、990kW)までの許容電力ΔPを超える場合に、補機2のうち稼動中である稼動補機2b(例えば、第一空調用圧縮機23、第二空調用圧縮機24)を停止して、許容電力ΔPが消費電力Wよりも大きくなった後、始動対象補機2aを始動させ、稼動発電機3a以外の発電機3(例えば、第二発電機32、第三発電機33)を始動させないようにした電力管理方法を実現可能とするものである。
上述した本実施形態に係る電力管理システム1及び電力管理方法によれば、始動対象補機2aの消費電力Wが稼動発電機3aの出力上限値までの許容電力ΔPを超える場合に、稼動補機2bを停止して、許容電力ΔPが消費電力Wよりも大きくなった後、始動対象補機2aを始動させるようにしたことにより、ピーク電力をカットすることができるとともに、ピーク電力の平準化を図ることができ、稼動発電機3a以外の発電機3を始動させる必要がなく、発電機3の始動台数を抑制することができ、エネルギー効率を向上させることができる。
また、上述した実施形態では、構造物は船舶であり、補機2は第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22を含み、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22は圧縮空気を貯留する主空気槽8に接続されており、補機制御部5は、主空気槽8の圧力が第一閾値(例えば、2.0MPa)以下となった場合に第一主空気圧縮機21を始動させ、主空気槽8の圧力が第一閾値よりも低い第二閾値(例えば、1.8MPa)以下となった場合に第二主空気圧縮機22を始動させ、主空気槽8の圧力が第一閾値よりも高い第三閾値(例えば、2.5MPa)以上となった場合に第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22を停止させるように制御するとともに、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22を始動対象補機2aとして制御するものであるといえる。
第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22は、消費電力Wが90kW程度であり、補機2の中でも消費電力Wが大きな方に分類される。したがって、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22を始動させる際には、使用電力量の変動が大きい。特に、両者を同時に使用する場合には、稼動発電機3aのみでは電力が不足することも想定され得る。さらに、使用頻度の比較的高いスートブロー時には、圧縮空気を大量に使用するため、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22を同時に使用する可能性が高い。そこで、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22の制御に、本実施形態に係る電力管理システム1及び電力管理方法を適用することにより、稼動発電機3a以外の発電機3を始動させることなく第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22を始動させることができ、発電機3の始動台数を抑制することができ、エネルギー効率を効果的に向上させることができる。
なお、上述した第一閾値〜第三閾値の数値は、単なる一例であり、主空気槽8の容量や第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22の容量等の条件によって変更されるものであり、かかる数値に限定されるものではない。
次に、図3に示した第二主空気圧縮機22の制御フローの変形例について説明する。ここで、図4は、第二主空気圧縮機の制御フローの変形例を示すチャート図であり、(a)は再始動フロー、(b)は緊急停止フロー、を示している。
図4(a)に示した再始動フローは、ステップSP206において停止した稼動補機2bを再始動させるためのフローである。すなわち、かかる変形例は、ステップSP203において第二主空気圧縮機22を始動させた後であっても、稼動発電機3aの許容電力ΔPに余裕がある場合には、停止した稼動補機2bを再始動させようとするものである。
まず、図3に示したステップSP203において、第二主空気圧縮機22を始動させた状態、すなわち、第一主空気圧縮機21と第二主空気圧縮機22の両方を駆動させた状態から開始する。また、説明の便宜上、ステップSP206において停止した稼動補機2bは、第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24であるものとする。なお、第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24の消費電力Wは30kWであるものとする。
図4(a)に示したように、補機制御部5は、「稼動発電機3aの使用電力が960kW以下か否か」を確認する(SP301)。上述したように、稼動発電機3aの出力上限値は990kWである。また、第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24の消費電力Wは30kWであることから、第一発電機31のみで第一空調用圧縮機23又は第二空調用圧縮機24を始動させるためには、少なくも30kWの許容電力ΔPが必要である。したがって、許容電力ΔPが消費電力Wよりも大きい場合(例えば、許容電力ΔPが30kWより大きい場合)に第一発電機31のみで第一空調用圧縮機23又は第二空調用圧縮機24を始動させることができる。また、換言すれば、第一発電機31の使用電力が990kW−30kW=960kW以下であれば、第一発電機31のみで第一空調用圧縮機23又は第二空調用圧縮機24を始動させることができる。
そして、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が960kW以下の場合(Yes)には、例えば、第一空調用圧縮機23を始動させる(SP302)。このとき、稼動発電機3aである第一発電機31以外の発電機3(第二発電機32及び第三発電機33)を始動させる必要はない。また、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が960kWを超えている場合(No)には、許容電力ΔPが不十分であるとして、停止した稼動補機2bの再始動を控える。
さらに、補機制御部5は、「稼動発電機3aの使用電力が960kW以下か否か」を確認し(SP303)、稼動発電機3aの使用電力が960kW以下の場合(Yes)には、例えば、第二空調用圧縮機24を始動させる(SP304)。また、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が960kWを超えている場合(No)には、許容電力ΔPが不十分であるとして、停止した稼動補機2bの再始動を控える。
なお、停止した稼動補機2bがさらに存在する場合には、上述したステップSP301〜SP304と同様のステップを繰り返すようにすればよい。
このように、図4(a)に示した再始動フローによれば、稼動発電機3aの許容電力ΔPに余裕がある場合には、停止した稼動補機2bを再始動させることができ、無駄な電力や燃料を抑制することができ、効率的な電力管理を行うことができる。
また、図4(b)に示した緊急停止フローは、例えば、ステップSP206において停止した稼動補機2bを緊急始動させたい場合に、第二主空気圧縮機22を一時的に停止させるためのフローである。緊急始動指令を受ける補機2は、第二主空気圧縮機22を始動させるために停止した稼動補機2b(例えば、第一空調用圧縮機23、第二空調用圧縮機24)に限定されるものではなく、今まで停止していた他の補機2(例えば、その他の圧縮機27、その他のポンプ28、その他のファン29等)であってもよい。
まず、図3に示したステップSP203において、第二主空気圧縮機22を始動させた状態、すなわち、第一主空気圧縮機21と第二主空気圧縮機22の両方を駆動させた状態から開始する。
図4(b)に示したように、ある補機2に強制始動指令が発せられたものとする(SP401)。いま、強制始動指令が発せられた補機2は、第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24であるものとする。ここで、強制始動指令は、船舶の運航条件から必然的に発せられるものであってもよいし、一定時間(例えば、数分〜数十分)経過したら自動的に発せられるものであってもよい。
次に、補機制御部5は、「稼動発電機3aの使用電力が930kW以下か否か」を確認する(SP402)。上述したように、稼動発電機3aの出力上限値は990kWである。また、第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24の消費電力Wは30kWであることから、第一発電機31のみで第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24を始動させるためには、少なくも60kWの許容電力ΔPが必要である。したがって、許容電力ΔPが消費電力Wよりも大きい場合(例えば、許容電力ΔPが60kWより大きい場合)に第一発電機31のみで第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24を始動させることができる。また、換言すれば、第一発電機31の使用電力が990kW−60kW=930kW以下であれば、第一発電機31のみで第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24の両方を始動させることができる。
そして、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が930kW以下の場合(Yes)には、第一空調用圧縮機23を始動させ(SP403)、続いて、第二空調用圧縮機24を始動させる(SP404)。このとき、稼動発電機3aである第一発電機31以外の発電機3(第二発電機32及び第三発電機33)を始動させる必要はない。
また、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が930kWを超えている場合(No)には、許容電力ΔPが不十分であるとして、第二主空気圧縮機22を停止させる(SP405)。いま、第二主空気圧縮機22の消費電力Wは90kWであり、第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24の消費電力Wの合計である60kWよりも大きいことから、ステップSP402において、必然的に稼動発電機3aの使用電力が930kW以下となるため、第一発電機31のみで第一空調用圧縮機23及び第二空調用圧縮機24の両方を始動させることができる。
なお、強制始動指令が発せられた補機2の種類や台数によっては、第二主空気圧縮機22を停止させただけでは許容電力ΔPが不十分な場合もあり得る。その場合には、補機制御部5は、他の稼動補機2bを停止させるように制御してもよい。
このように、図4(b)に示した緊急停止フローによれば、必要に応じて稼動発電機3aの出力上限値の範囲内において、始動させる補機2を柔軟に選択又は変更することができ、運航条件に影響を与えることなく、効率的な電力管理を行うことができる。
次に、インターロック制御を行う場合について説明する。ここで、図5は、高負荷補機のインターロック解除フローを示すチャート図である。図6は、高負荷作業発生時のインターロック制御フローを示すチャート図である。
発電機3の効率的な運転を考慮して補機2をどのように駆動させるかという点について鋭意検討した結果、同時に使用すると新たな発電機3を始動させることが多い補機2が存在するとの知見が得られた。例えば、船舶の場合には、主空気圧縮機(第一主空気圧縮機21又は第二主空気圧縮機22)と消防・雑用ポンプ25,26を同時に使用した場合、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22を同時に使用した場合、消防・雑用ポンプ25,26を同時に使用した場合には、稼動発電機3aの使用電力が高くなり易いとの知見が得られた。
これは、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22の消費電力が90kW、消防・雑用ポンプ25,26の消費電力が110kWと、消費電力が補機2の中でも大きな方に分類される。また、これらの補機2は、同時に使用する可能性も比較的高い方である。そこで、主空気圧縮機(第一主空気圧縮機21又は第二主空気圧縮機22)と消防・雑用ポンプ25,26を同時に使用しない、第一主空気圧縮機21及び第二主空気圧縮機22を同時に使用しない、消防・雑用ポンプ25,26を同時に使用しないという条件をインターロックの制御条件として使用する。
すなわち、補機2のうち同時に使用する可能性があり、かつ、同時に使用すると許容電力ΔPを超える可能性がある高負荷補機2c(例えば、第一主空気圧縮機21、第二主空気圧縮機22、消防・雑用ポンプ25,26)の組合せを予め設定しておき、高負荷補機2cの一つが稼動中の場合に、他の高負荷補機2cを始動させないようにインターロックをする。かかる制御は補機制御部5が行う。
ここで、高負荷補機2cは、構造物の種類や運転条件等によって変更されるものであるが、例えば、高負荷補機2cの一つは、常時自動運転される自動運転補機(例えば、第一主空気圧縮機21、第二主空気圧縮機22)であり、他の高負荷補機2cは、自動運転補機の消費電力以上の消費電力を要する補機2(例えば、消防・雑用ポンプ25,26)である。このように、常時自動運転される自動運転補機(例えば、第一主空気圧縮機21、第二主空気圧縮機22)を基準とすることにより、使用頻度の少ない又は使用時期を選ばない用途(例えば、甲板洗浄、消火訓練等)に使用する高負荷補機2cにインターロックをすることができ、消費電力の増大を抑制することができる。
なお、自動運転補機(例えば、第一主空気圧縮機21、第二主空気圧縮機22)は常時自動運転されるが、全ての自動運転補機が停止している状態も存在することから、その時間帯に他の高負荷補機2c(例えば、消防・雑用ポンプ25,26)を使用するようにすればよい。
次に、高負荷補機2cが始動対象補機2aである場合について説明する。図5に示したように、高負荷補機2cに始動指令が発せられたものとする(SP501)。高負荷補機2cが始動対象補機2aとなる場合には、高負荷補機2cにインターロック制御の対象となっている場合がある。図示した制御フローは、インターロック制御の対象となっている高負荷補機2cが始動対象補機2aであっても、稼動発電機3aの許容電力ΔPに余裕がある場合には、インターロック制御を解除しようとするものである。
次に、始動対象補機2aである高負荷補機2cが「インターロックがされているか否か」を確認する(SP502)。高負荷補機2cがインターロックをされていない場合(No)には、始動対象補機2aである高負荷補機2cを始動させる(SP503)。高負荷補機2cがインターロックをされていない場合には、他の高負荷補機2cが駆動されていない状態であり、稼動発電機3aの許容電力ΔPに余裕があるものと想定される。したがって、高負荷補機2cを始動させても、稼動発電機3a以外の発電機3を始動させる必要がない。勿論、高負荷補機2cを始動させる(SP503)前に、高負荷補機2cの消費電力Wが稼動発電機3aの許容電力ΔPを超えていないか否か確認するようにしてもよい。
また、高負荷補機2cがインターロックをされている場合(Yes)には、稼動補機2bの停止を行う(SP504)。高負荷補機2cがインターロックをされている場合には、他の高負荷補機2cが駆動されている状態であり、稼動発電機3aの許容電力ΔPに余裕がない状態である。したがって、そのままでは、稼動発電機3a以外の発電機3を始動させずに高負荷補機2cを始動させることはできない。そこで、他の稼動補機2bを停止させることにより、稼動発電機3aの許容電力ΔPが高負荷補機2cの消費電力Wよりも大きくなるように制御する。
次に、補機制御部5は、「稼動発電機3aの使用電力が880kW以下か否か」を確認する(SP505)。上述したように、稼動発電機3aの出力上限値は990kWである。また、高負荷補機2c(例えば、消防・雑用ポンプ25)の消費電力Wは110kWであることから、第一発電機31のみで消防・雑用ポンプ25を始動させるためには、少なくも110kWの許容電力ΔPが必要である。換言すれば、第一発電機31の使用電力が990kW−110kW=880kW以下であれば、第一発電機31のみで消防・雑用ポンプ25を始動させることができる。
そして、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が880kW以下の場合(Yes)には、高負荷補機2cのインターロックを解除し(SP507)、高負荷補機2cを始動させる(SP503)。
また、補機制御部5は、稼動発電機3aの使用電力が880kWを超えている場合(No)には、許容電力ΔPを増やすために、「停止可能な稼動補機2bがあるか否か」の確認を行う(SP506)。停止可能な稼動補機2bがある場合(Yes)には、ステップSP504に戻り、稼動補機2bの停止を行う。以後、稼動発電機3aの使用電力が880kW以下となるまで、ステップSP504〜SP506を繰り返す。
また、稼動発電機3aの使用電力が880kWを超えた状態で、停止可能な稼動補機2bがなくなった場合には、稼動発電機3aのみで高負荷補機2cを始動させることができないため、本制御フローを終了する。本制御フローを終了した後は、例えば、第二発電機32を始動させて電力を確保するようにすればよい。
図5に示した制御フローは、他の高負荷補機2cが始動対象補機2aである場合に、稼動補機2bを停止して、許容電力ΔPが消費電力Wよりも大きくなった後、インターロックを解除して、他の高負荷補機2cを始動させるものである。かかる電力管理方法によれば、インターロック制御の対象となっている高負荷補機2cが始動対象補機2aであっても、稼動発電機3aの許容電力ΔPに余裕を作ることができ、インターロック制御を解除して高負荷補機2cを始動させることができ、電力管理システム1の弾力的な運用を行うことができる。
ところで、船舶の運航条件においては、二台以上の発電機3を使用することを前提とする高負荷作業がある。高負荷作業には、例えば、不活性ガス充填作業(I.G. topping up)、バラスト交換作業(Ballast exchange)、出入港作業、荷役作業、狭水道通過作業等がある。不活性ガス充填作業は、タンク内のガス密度を維持する作業である。バラスト交換作業は、バラスト水を交換する作業である。出入港作業は、アンカーや係船ロープ等を使用して出港又は入港する作業である。荷役作業はタンカー等のタンクから油等の運搬物を陸側に排出する作業である。狭水道通過作業は、衝突、座礁、海賊の襲来等の緊急時に備えて瞬時に対応できるように準備しながら狭水道を通過する作業である。
これらの高負荷作業では、構造物(例えば、船舶)の総使用電力量が二台以上の発電機3を必要とすることから、稼動発電機3a(例えば、第一発電機31及び第二発電機32)の許容電力ΔPに十分な余裕が生じている。したがって、上述した高負荷補機2cのインターロック制御を解除しても、三台目の発電機3(第三発電機33)を始動させることなく、高負荷補機2cを同時に使用することができる。
そこで、図6に示した制御フローでは、構造物の総使用電力量が二台以上の発電機3を必要とする高負荷作業を行う場合に、高負荷補機2cのインターロックを解除するようにしている。
まず、高負荷作業が発生したものとする(SP601)。次に、補機制御部5は、「稼動発電機3aが二台以上であるか否か」の確認を行う(SP602)。これは、発電機3の始動には、一定の時間を要するためである。そして、稼動発電機3aが二台以上でない場合(No)には、現状を維持し、高負荷補機2cのインターロックを解除しないようにする。また、稼動発電機3aが二台以上である場合(Yes)には、補機制御部5は、高負荷補機2cのインターロックを解除する(SP603)。
続いて、高負荷作業が終了したものとする(SP604)。この場合、稼動発電機3aの一台が停止され、いずれ稼動発電機3aに変更される。そこで、高負荷作業が終了した時点で、速やかにインターロック制御を開始することが好ましい(SP605)。早めにインターロック制御に切り替えることにより、意図しない発電機3の始動を抑制することができる。勿論、稼動発電機3aが一台であるか否かの確認を行ってから、インターロック制御を開始するようにしてもよい。
本発明は上述した実施形態に限定されず、船舶以外の海上浮体構造物、車両、航空機、プラント、発電設備、各種工場等の構造物にも適用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。