JP2012230801A - Maldi質量分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】MALDI用サンプルの中で測定に最適であるスイートスポットを効率的に探索することにより、スループットの向上を図るとともにサンプル消費量を減らす。
【解決手段】サンプルプレート上に形成されているウェル1aの中心点Oを起点Pとして、該起点Pから外方に渦巻き状の走査軌跡Qを描くように所定間隔で測定点を設定し、サンプルS上の各測定点に対する予備的な測定を実行してピーク強度、S/N等の指標値を取得する。指標値が規定値を下回る状態が所定回数続いたら、レーザ光照射がサンプルSを外れたと判断し測定を打ち切る。そして、最大の指標値を与える測定点がスイートスポットであると判断し、該測定点に対し複数回の測定を実行して当該サンプルSについてのマススペクトルを取得する。これにより、サンプルSを外れた無駄な予備測定の実行を減らしながら的確にスイートスポットを見い出すことができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、マトリクス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)法によるイオン源を用いたMALDI質量分析装置に関する。
質量分析装置のイオン化法の1つとしてMALDI法がよく知られている。MALDI法は、レーザ光を吸収しにくい試料やタンパク質などレーザ光で損傷を受けやすい試料を分析するために、レーザ光を吸収し易く且つイオン化し易い物質をマトリクスとして試料に予め混合しておき、これにレーザ光を照射することで試料をイオン化する手法である。特にMALDIイオン源を用いた質量分析装置は、分子量の大きな高分子化合物をあまり開裂させることなく分析することが可能であり、しかも微量分析にも好適であることから、近年、生命科学などの分野で広範に利用されている。
MALDI質量分析では一般に、図7に示すようにサンプルプレート(又はターゲットプレート)1と呼ばれる金属製のプレート上に多数形成されているウェル1aと呼ばれる凹部に、目的試料とマトリクスとが混合されたサンプル溶液が滴下され、それが乾化されることでサンプルが調製される(例えば特許文献1など参照)。1個のウェル1aの形状は例えば図7(a)に示すように上面視円形状であるが、サンプルSは図8(a)に示すようにそのウェル1aと同心円状に形成されるとは限らず、図8(b)に示すようにウェル1a内で中心からずれた位置に形成される場合もある。また、サンプルS中の目的試料の分布は均一ではないため、図8(a)に示すようにウェル1aと同心円状にサンプルSが形成されている場合であっても、そのサンプルSが占める領域の中で測定に最も適した部位(以下「スイートスポット」という)が該サンプル領域の中心からずれている場合もある。
MALDI質量分析において高感度且つ高精度の分析を行うには、各サンプルのスイートスポットに対してレーザ光を照射し、それにより生成されたイオンを質量分析に供することが好ましい。しかしながら、上記理由により、サンプル毎にスイートスポットの位置のばらつきは大きく、また顕微鏡を通した目視観察によってスイートスポットがどこにあるのかを判別することも難しい。そこで、従来の装置(島津製作所のMALDI−TOFMS:AXIMAシリーズ)では、1個のウェル中のサンプル領域内で互いに異なる位置に予め設定した複数の測定点のそれぞれにおいて規定回数のレーザ光照射を行って測定データを取得し、それら全ての測定データを積算することによって最終測定データを導出するようにしている。また、実際の測定データを取得する前に、予備的に上記のような複数の測定点における測定を実施し、その予備測定によって得られる信号強度を比較してスイートスポットを探索することも行われている。
いずれにしても、上記のように1個のサンプル領域に対して複数の測定点でそれぞれ測定を実行する際には、例えば図9に示すように、予め設定された測定点に順次レーザ光を照射するべく、所定のステップ幅でサンプルプレートを移動させる位置走査を実施している。こうした測定点の位置走査の方式としては、図9(a)のようなTVラスタ(TV raster)方式や図9(b)に示すような蛇行ラスタ(Serpentine raster)方式が知られている。
しかしながら、上記のような従来のMALDI質量分析装置では次のような問題がある。
上述したような位置走査を伴う測定によってスイートスポットを探索する場合、一般的に、スイートスポット又はそれに最も近い部位を見つけ出すまでに時間が掛かる。通常、サンプルプレート上には多数のウェルが設けられており、各ウェルに形成されているサンプル全てについてそれぞれスイートスポットを探索する動作を実行すると、それだけでかなりの時間を要することになり分析のスループットを上げることが難しい。
また、上記のような位置走査の際には、実際のサンプル領域よりも十分に大きな範囲について位置走査を実施する必要がある。そのため、実際にはサンプルが存在しない部位でもレーザ光を照射して測定を実施することになり、無駄な測定時間を費やすことになる。
また、前述のようにスイートスポットの位置のばらつきは大きく、隣接する測定点の間にスイートスポットが位置している可能性も高いため、上記のように位置走査を伴う測定を行っても必ずしもスイートスポットに対する測定データが得られるとは限らず、最良の測定感度が達成されるとは限らない。
また、一般にウェル内に形成されたサンプルの厚みや結晶構造は均一ではなく空間的に異なる。こうしたサンプル自体の特性が異なる場合、サンプルのイオン化に対する最適なレーザ光強度が空間的に異なることが非特許文献1などにより知られている。
このことを示した実験データを図10に示す。図10において横軸はMALDIイオン源のレーザ光強度を示しており、縦軸は得られたピーク強度を示している。図10中にF1とF2で示す2つのプロットは同一ウェル内のサンプルの異なる位置を測定した結果である。これを見れば、同一サンプル内であってもレーザ光照射位置が異なると最適レーザ強度が大きく異なることが分かる。この結果は、特定のレーザ光強度でスイートスポット探索を行うだけでは必ずしも最良のスイートスポットを発見できないことを示している。例えば、図10中の結果では、レーザ光強度80でスイートスポット探索を行った場合はF1の測定を行ったプロット位置がスイートスポットであると判定されるが、実際はF2の測定を行ったプロット位置でレーザ光強度を110程度にして測定を行ったほうがS/Nの高い結果が得られた筈である。即ち、スイートスポットの探索を行う際にはレーザ光強度もパラメータの1つであるが、レーザ光強度の最適化まで考慮するとなるとスイートスポット探索に要する時間はさらに長くなってしまう。
特開2008−261825号公報
ドレイスウェルド(K Dreisewerd)、ほか2名、「インフルエンス・オブ・ザ・レーザ・インテンシティ・アンド・スポット・サイズ・オン・ザ・ディソープション・オブ・モレキュールズ・アンド・イオンズ・イン・マトリクス-アシステッド・レーザ・ディソープション/イオニゼイション・ウィズ・ア・ユニフォーム・ビーム・プロファイル(Influence of the laser intensity and spot size on the desorption of molecules and ions in matrix-assisted laser desorption/ionization with a uniform beam profile」、インターナショナル・ジャーナル・オブ・マス・スペクトロメトリ・アンド・イオン・プロセス(International Journal of Mass Spectrometry and Ion Process)141、1995年、p.127-148
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的は、スイートスポットを見い出すまでの時間をできる限り短縮することで効率良くスイートスポットを見つけて測定を実行することができるMALDI質量分析装置を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、サンプルの中で測定感度がより良好である部位をスイートスポットとして見つけ出すことができるMALDI質量分析装置を提供することにある。さらにまた、本発明の別の目的は、単にサンプル中の部位だけでなく、イオン化のためのレーザ光強度との組み合わせで最良又はそれに近い測定感度が得られるスイートスポットとレーザ光強度とを求めることができるMALDI質量分析装置を提供することにある。
上記課題を解決するために成された本発明は、MALDI法によるイオン源と、該イオン源により生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、を具備するMALDI質量分析装置において、
a)サンプルプレートを該プレート面の広がり方向に移動させる移動手段と、
b)前記サンプルプレート上の所定位置にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、
c)前記サンプルプレート上に形成された1個のサンプルに対し、該サンプルプレート上の規定の位置を起点とし、該起点から外周方向に渦巻き状又は同心円状で周方向に所定間隔でもって測定点を順次設定して各測定点について少なくとも1回のレーザ光照射を実行しながら測定位置走査を実行するように、前記移動手段及び前記レーザ照射手段を制御する測定制御手段と、
d)前記測定制御手段の制御の下に、渦巻き状又は同心円状に設定される測定点毎に前記レーザ光照射に応じて前記質量分析部で得られる測定データに基づいて、そのサンプルに対応したデータを取得するのに適切な測定点を見い出す測定点抽出手段と、
を備えることを特徴としている。
本発明に係るMALDI質量分析装置において、測定点抽出手段は、測定点毎に得られる測定データに基づいて当該サンプルに対応したデータを取得するのに適切な測定点を見い出すために、各測定点で得られた信号の強度値やS/Nを利用することができる。サンプル中の目的試料が未知のものである場合、つまり検出される質量電荷比が事前に不明である場合には、例えば最大強度を示すピークの強度値やS/Nを利用すればよい。一方、目的試料が既知のものである場合には、既知である特定の質量電荷比におけるピークの強度値やS/Nを利用すればよい。また、1つのピークの強度値やS/Nではなく、代表的な複数のピークの強度値やS/Nを利用してもよい。
前述したように、一般的なMALDI用サンプル調製では、試料とマトリクスとを混合したサンプル溶液をサンプルプレート上に滴下し、それを乾化することでサンプルプレート上にサンプルを形成する。そのため、多くの場合、サンプルプレート上のサンプルの形状は上面視略円形状である。本発明に係るMALDI質量分析装置では、サンプルプレート上の規定の位置を起点とし、その起点から外周方向に向かって広がるように渦巻き状又は同心円状の測定位置走査を実行するので、上面視略円形状に形成されているサンプルの略中心に起点が設定されれば、サンプル中のスイートスポットを見つけ出すために、サンプルプレート上でサンプルの存在しない部分を測定するような無駄な測定を少なくすることができる。
またサンプルの形状が上面視略円形状である場合、1つのサンプルについて起点から測定位置走査を開始して渦巻き状又は同心円状に外周にいくほど測定点にサンプルが存在しなくなる確率が高まり、最終的にはいずれの測定点においてもサンプルが存在しなくなる筈である。そこで、本発明に係るMALDI質量分析装置の好ましい一態様として、前記測定制御手段は、前記質量分析部で得られる測定データに基づいて、渦巻き状又は同心円状の測定位置走査の終了タイミングを決定する構成とするとよい。
具体的には、例えば渦巻き状又は同心円状の測定位置走査の1周分の複数の測定点の全てにおいて、信号強度が極端に低い又はS/Nが極端に低いなどサンプルが存在しない状態であることが推測できる状況であれば、その時点で該サンプルに対する測定位置走査を打ち切ればよい。或いは、予め定めた所定数だけ連続した測定点においてサンプルが存在しない状態であることが推測できる状況であれば、測定位置走査を打ち切るようにしてもよい。こうした制御を行うことによって、サンプルが存在しない状況での無駄な測定を実施することを極力減らし、スイートスポットの探索に要する時間を短縮することができる。
上面視円形状のウェルが形成されたサンプルプレートが使用される場合、通常、そのウェルの中心付近にサンプル溶液は滴下される。また、一部のサンプルプレートではウェルの中心に親水性のコーティングがなされているため中心付近にサンプル溶液が集まり易い。そのため、「そのサンプルに対応したデータを取得するのに適切な測定点」つまりスイートスポットは、ウェルの中心付近に存在する可能性が高い。そこで本発明に係るMALDI質量分析装置の一態様として、サンプルプレート上に上面視円形状のウェルが形成されており、該ウェル中にサンプルが形成される場合には、前記起点は前記ウェルの中心点である構成とすることができる。即ち、ウェルの中心点を起点として渦巻き状又は同心円状に外方に向かって測定位置走査を実施すればよい。
一方、ウェルの底面形状が平面であったり、手作業でサンプル溶液の滴下を行ったりする場合には、サンプルがウェル内で片寄った位置に形成される場合がある。そこで、本発明に係るMALDI質量分析装置の別の態様として、前記サンプルプレート上の所定範囲の画像をユーザが観察するための観察手段と、前記起点をユーザが指定するための指定手段と、をさらに備える構成とするとよい。
この態様の構成によれば、ユーザは観察手段によりサンプルプレート上に形成されたサンプルの位置や形状を観察し、その位置や形状に応じて適切な位置に測定位置走査を開始するための起点を定め、指定手段により指定することができる。それによって、ウェル内でサンプルが形成される位置が片寄っていた場合でも、そのサンプルの中心付近を起点として渦巻き状又は同心円状に外方に向かって測定位置走査を実施することができる。
上記各態様のようにサンプル上の適切な位置に起点が設定されれば、測定位置走査の開始から比較的短い時間でスイートスポット又はそれに近い測定点に行き着くため、各サンプルにおいてスイートスポット探索に要する時間を短縮することができる。
なお、本発明に係るMALDI質量分析装置では、各測定点において質量分析を実行する際に、移動手段による移動を一旦停止してレーザ照射手段によりレーザ光を照射するようにしてもよいし、或いは、前記移動手段を連続的に駆動しつつ、つまりはサンプルプレートを一時停止させることなく、目的とする測定点がレーザ照射手段によるレーザ照射位置に来たときにレーザ光を照射するようにしてもよい。前者の場合には、同一測定点に対し複数回レーザ光を照射して、それら複数のレーザ光照射によって得られた測定データを積算して1つの測定点に対する測定データとすることもできる。後者の場合には、1回のレーザ光照射中にもサンプルプレート(つまりはサンプル)が移動してしまうため、1つの測定点に対する測定積算数が1回だけになり測定のS/Nは下がることになるが、スイートスポット探索のためにはS/N低下の影響は殆どなく、スイートスポット探索の高速化には特に有効である。
また、本発明に係るMALDI質量分析装置において、
前記測定制御手段は、前記測定点抽出手段により当該サンプルに対応したデータを取得するのに適切な測定点が一旦見い出された後に、該測定点を第2の起点として、該第2の起点から外周方向に渦巻き状又は同心円状で周方向に前記所定間隔よりも狭い所定間隔でもって測定点を順次設定して各測定点について少なくとも1回のレーザ光照射を実行しながら測定位置走査を実行するように、前記移動手段及び前記レーザ照射手段を制御し、
前記測定点抽出手段は、前記測定制御手段の制御の下に、前記第2の起点から渦巻き状又は同心円状に設定される測定点毎に前記レーザ光照射に応じて前記質量分析部で得られる測定データに基づいて、そのサンプルに対応したデータを取得するのにより適切な測定点を見い出す構成とすることができる。
この構成によれば、当初の測定位置走査によって順次設定された測定点のうち隣接する測定点の間に最適なスイートスポットが存在するような場合であっても、第2の起点からスタートする2回目の測定位置走査によってその最適なスイートスポットを見つけ出すことができる可能性がある。したがって、一層高い感度で以て質量分析を行うことが可能となる。
また本発明に係るMALDI質量分析装置において、好ましくは、前記測定制御手段は、渦巻き状又は同心円状に測定位置走査を行いつつ、サンプルに照射されるレーザ光の強度を繰り返し変化させるように前記レーザ照射手段を制御する構成とするとよい。
サンプル調製の際に一般的なマトリクスを用いた場合には、サンプルにおいて略同一円周上の結晶状態は比較的類似していることが知られている。そこで特に好ましくは、渦巻き状又は同心円状の測定位置走査の1周期間中に1サイクルのレーザ光強度の掃引を実行するように測定位置走査とレーザ光強度掃引とを同期させるとよい。
もちろん、同一測定点において複数のレーザ光強度における測定をそれぞれ実行するようにしてもよいが、そうすると測定回数が多くなりすぎてスイートスポット及び最適レーザ光強度を見つけ出すのに要する時間が長くなりすぎる。これに対し、上記構成によれば、例えばスイートスポットを探索しながら渦巻き状又は同心円状の測定位置走査1周毎にレーザ光強度の最適値を見い出すことができる。したがって、高いスループットで測定感度が最良又はそれに近い状態となるスイートスポットと最適なレーザ光強度との組み合わせを探すことができる。
本発明に係るMALDI質量分析装置によれば、従来の装置に比べて、短い時間でもって測定感度が最良又はそれに近いスイートスポットを見い出すことができる。それにより、高いスループットで高感度測定が可能となる。また、スイートスポット探索のための予備的な測定の回数を減らすことができるため、サンプルの消費量も少なくて済む。
また、本発明に係るMALDI質量分析装置において1回目の測定位置走査によってスイートスポットに近い測定点を見い出した後にその測定点を中心に2回目の測定位置走査を行う構成とすれば、サンプルの中で測定感度がより良好である部位をスイートスポットとして見つけ出すことができる。それによって、特に微量成分を分析する場合であっても信頼性の高いデータを得ることができる。
さらにまた、本発明に係るMALDI質量分析装置において測定位置走査を行いながらレーザ光強度を掃引する構成とすることにより、単にサンプル中の高感度な部位だけでなく、高感度測定が可能なレーザ光強度も併せて求めることができる。それによって、より一層高感度な測定が可能となる。
本発明の一実施例によるMALDI−TOFMSの概略構成図。 本実施例のMALDI−TOFMSにおける測定位置走査の軌跡を示す図。 本実施例のMALDI−TOFMSにおけるスイートスポット探索処理動作手順を示すフローチャート。 別の実施例のMALDI−TOFMSにおける測定位置走査の軌跡を示す図。 別の実施例のMALDI−TOFMSにおける測定位置走査の軌跡を示す図。 さらに別の実施例のMALDI−TOFMSにおけるレーザ光強度の時間的変化を示す図。 サンプルプレート上に形成されているウェルの上面図(a)及びA−A’線端面図(b)。 ウェル内のサンプル形成位置を説明するための概念図。 従来の測定位置走査方式を示す概念図。 1個のサンプル中における部位によるレーザ光強度とピーク強度との関係の相違を説明するための実験データを示す図。
本発明の一実施例であるMALDI−TOFMSについて、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例によるMALDI−TOFMSの概略構成図である。
イオンを生成するためのMALDIイオン源は、その上面にサンプルプレート1が載置される試料ステージ2と、レーザ光を発するレーザ照射部6と、該レーザ光を反射するとともにサンプルプレート1上に形成されたサンプルSに集光する反射鏡7と、を含む。サンプルSの観察像は反射鏡8を介してCCDカメラ等の撮像部9に導入され、撮像部9で形成されるサンプル観察像が制御部22を介して表示部24の画面上に表示される。試料ステージ2はモータ等を含むステージ駆動部3により、図1中のX軸、Y軸の2軸方向(サンプルプレート1のプレート面の広がり方向)にそれぞれ移動可能である。試料ステージ2と後述する質量分析部10との間には、拡散するイオンを遮蔽するアパーチャ4と、イオンを質量分析部10まで輸送するためのイオン輸送光学系としてのアインツェルレンズ5が配設されている。もちろん、アインツェルレンズ5以外の各種の構成のイオン輸送光学系、特に静電レンズ光学系を用いることができる。
質量分析部10は、電場の影響なくイオンが自由に飛行する自由飛行空間11と、直流電場の作用によりイオンを折返し飛行させる反射器12とを含むリフレクトロン型のTOFMSであり、その飛行の終端にはイオン検出器13が配設されている。このイオン検出器13による検出信号はデータ処理部20に入力されてデジタル値に変換された上でデータ処理が実行される。データ処理部20は特徴的な機能ブロックとしてスイートスポット探索部21を含む。制御部22にはユーザインターフェイスである入力部23や表示部24が接続されており、予め決められた制御プログラムに従って、ステージ駆動部3、レーザ照射部6などの各部の動作を制御する。
前述の図7に示したように、サンプルプレート1の上面にはウェル1aと呼ばれる多数の上面視円形状の凹みが二次元的に形成されており、このウェル1aの1個1個にサンプル溶液(目的試料とマトリクスとの混合溶液)が滴下され、それが乾燥されることにより固形状のサンプルSが各ウェル1a中に形成される。
本実施例のMALDI−TOFMSでは、分析対象であるサンプルSが形成されたサンプルプレート1を分析者が試料ステージ2上の所定位置にセットし、入力部23において所定の操作を行うと、自動的にサンプルプレート1上の各サンプルSに対する測定が実行される。実際に或る1つのサンプルSに対する測定データが取得される前に、そのサンプルSの広がり(領域)の中で最も良好な信号が得られる部位、つまりはスイートスポットを見つけるための予備的な測定が実施される。図3はその際の処理動作手順を示すフローチャートである。これに従って、本実施例のMALDI−TOFMSにおけるスイートスポット探索のための予備測定の動作を説明する。
サンプルプレート1上の或る1つのサンプルSに対する予備測定が開始されると、まず制御部22は測定位置走査を開始する起点を設定すべく、起点として定めたサンプルプレート1上の座標位置にレーザ光が照射されるようにステージ駆動部3を制御して試料ステージ2を移動させる(ステップS1)。上記起点としては、ウェル1aの中心点又は入力部23を通した分析者により指示された点のいずれか一方を選択し得るが、例えばデフォルトとしてはウェル1aの中心点が起点に設定されているようにすればよい。サンプルプレート1が試料ステージ2上の規定の位置にセットされれば、サンプルプレート1上の各ウェル1aの中心点の座標位置は定まるから、制御部22は測定対象のウェル1aの位置に応じて該ウェル1aの中心点の座標位置を割り出し、その座標位置にレーザ光が照射されるように試料ステージ2の移動を制御することができる。
一方、分析者が手動で起点を設定したい場合には、まず撮像部9により撮影されたサンプルプレート1上の任意の位置に対する画像を表示部24に表示させる。分析者が入力部(例えばマウス等のポインティングデバイス)23を操作して表示画像上でウェル1a中の任意の点を指定すると、制御部22は指定された点の座標位置を割り出し、それを起点として設定する。この手動設定は、ウェル1a中でサンプルSが形成されている領域が目視で明らかであり、しかも、その領域がウェル1aの中で片寄っている場合に有用である。図2(a)は起点Pが自動的にウェル1aの中心点Oに設定された例であり、図2(b)は起点Pが手動操作によりウェル1aの中心点Oとは外れた位置に設定された例である。
試料ステージ2の移動によって起点Pとして指定された部位がレーザ光照射位置に来たならば、制御部22の制御の下に、レーザ照射部6はパルス的に短時間レーザ光を出射する。それにより、サンプルSにレーザ光が照射される。例えば図2(a)の例では、ウェル1aの中心点Oに設定されている起点Pが最初の測定点となり、サンプルS上のこの測定点にレーザ光が当たる。それによって発生したイオンが質量分析部10に導入されて質量分析される(ステップS2)。データ処理部20はレーザ光照射に対応して得られる測定データに基づいて、飛行時間スペクトル又は飛行時間を質量電荷比に換算したマススペクトルを作成する。なお、1回のパルス的なレーザ光照射に応じた測定データから飛行時間スペクトル又はマススペクトルを作成してもよいが、同一測定点に対しパルス的なレーザ光照射を複数回実行し、レーザ光照射毎に得られる測定データを積算して飛行時間スペクトル又はマススペクトルを求めるようにしてもよい。
データ処理部20では、得られた飛行時間スペクトルやマススペクトルからその測定点におけるサンプルの状態を評価するための指標値を取得し記録する(ステップS3)。目的試料の成分が既知である場合には検出される質量電荷比が事前に分かっているから、その質量電荷比に対するピークの強度値や該ピークのS/Nを指標値とすればよい。また、目的試料の成分が未知である場合には検出される質量電荷比が不明であるため、飛行時間スペクトル又はマススペクトル上で最大強度を示すピークの強度値や該ピークのS/Nを指標値とすればよい。或いは、1つのピークだけでなく複数のピークの強度の積算値や平均S/Nなどを指標値としてもよい。測定状態が良好である場合に大きな値を示すものであれば指標値とすることができる。
なお、ステップS3で算出される指標値は複数個存在してもよく、例えば異なる複数の成分が混合しているものが目的試料である場合などがそれにあたる。混合している成分が既知である場合には、各成分のピーク強度値や該ピークのS/Nを指標値として算出することもできる。他方、混合している成分が未知である場合には、測定される質量電荷比範囲を便宜的に複数に分割し、それぞれの質量電荷比範囲上で最大強度を示すピークの強度値や該ピークのS/Nを指標値としてもよい。即ち、例えば質量電荷比範囲全体を100−200Da、200−300Da、…と細かく分割し、その質量電荷比範囲毎にスイートスポットを探索すればよい(この場合、複数の成分のベースピークが同じ質量電荷比範囲内に存在するとそれは分離できないが、その確率は低いので実質的にはあまり問題が生じない)。こうした場合には、測定終了後(後述のステップS7の段階)に複数のスイートスポットが見い出されることになる。
次に、渦巻き状の位置走査の1周期間中の全ての測定点で上記指標値が規定値以下であるか否かを判定する(ステップS4)。ただし、起点を発した渦巻き状の位置走査が1周期間に達するまではステップS4の処理でNと判定されるものとする。したがって、起点Pを測定点とした質量分析の実行直後にはステップS4からS5へと進み、図2(a)に示したような起点Pから外周へ向かう渦巻き状の走査軌跡Qに沿った次の測定点(図中に×で示す点)に対応するサンプルプレート1上の座標位置にレーザ光が照射されるように、ステージ駆動部3を制御して試料ステージ2を移動させる(ステップS5)。そして、ステップS2へと戻り、レーザ光をサンプルSに照射して新たな測定点に対する質量分析を実行する。こうしてステップS2〜S5の処理を繰り返すことにより、図2(a)に示したような渦巻き状の走査軌跡Qに沿った各測定点に対する指標値を求める。
ステップS4における判定のための規定値はピークが有意であるとみなせるか否かを判断可能な値に予め設定される。したがって、レーザ光がサンプルSに当たり、或る程度十分な量のサンプルS由来のイオンが質量分析に供されている状態では指標値は上記規定値を上回る。これに対し、レーザ光がサンプルSの存在しない部分、つまりサンプルプレート1表面に直接的に当たった場合には信号強度は極端に低くなるため、指標値は規定値を下回る。この実施例では、レーザ光の照射位置がサンプルSが占める領域から完全に外れたことを検知するために、ステップS4において渦巻き状の位置走査の1周期間中の全ての測定点において有意なピークが得られない状況であるか否かを判定している。ただし、実際には、広がったサンプルSの縁部にスイートスポットが存在することは稀であるため、ステップS4では或る程度の測定点数だけ連続的に有意なピークが得られない状況が続いたならばYと判定するようにしてもよい。
図2(a)で理解できるように、位置走査が外周にいくと渦巻きの1周期間中の全ての測定点でサンプルSを外れるようになる。そうなった時点でステップS4からS6へと進み、制御部22は1個のサンプルに対するスイートスポット探索のための予備測定を終了させ、スイートスポット探索部21はそれまでに取得した各測定点の指標値に基づいてスイートスポットの位置を決定する(ステップS7)。具体的には、起点Pから測定終了の直前の測定点までの間で最も高い指標値を示す測定点がスイートスポットであると判断し、その測定点の座標位置をそのサンプルに対するスイートスポットの位置として記録する。
以上のような制御及び処理によって、1個のウェル1aに形成されたサンプルSの中で測定状態が最良であるスイートスポット(又はそれに近い部位)の座標位置が確定する。そこで、上記のスイートスポット探索処理に引き続き、スイートスポットとして確定した測定点について多数回のレーザ光照射を行い、それにより得られた測定データを積算することによりそのサンプルSに対する良好なマススペクトルを作成すればよい。
なお、図2(a)に示したような渦巻き状の測定位置走査を行う際に、径方向の走査軌跡Qの間隔や周方向に隣接する測定点の間隔は任意に決めることができる。これら間隔が狭いほど、サンプルS上で密に測定点が設定されるため、測定点が真のスイートスポット(測定状態が最適の位置)に当たる確率が高くなる。その反面、予備測定に時間が掛かることになる。逆に、上記間隔が広いほどサンプルS上に設定される測定点は疎らになるため、測定点が真のスイートスポットを外れる確率が高くなる。したがって、それら両方の要素を考慮して上記間隔を適宜に決めることが望ましい。
前述したように、ウェル1aは断面が浅い椀型の凹形状であるため、サンプル調製時にウェル1aに滴下されたサンプル溶液はウェル1aの中心点O付近を中心とした円形状となり易く、またその中心がスイートスポットとなることが多い。そのため、上述のようにウェル1aの中心点Oを起点Pとして位置走査を開始すると、予備測定を開始してから比較的短い時間でスイートスポットに行き当たる。また、レーザ光がサンプルSを外れた時点で予備測定が終了するので、従来のようにサンプルSが存在しない部位を無駄に測定するケースが少なくなり、スイートスポットを探索に要する時間を短縮することができるとともに予備測定の回数を減らしてサンプル消費量の削減にも繋がる。
なお、上記説明では、各測定点において試料ステージ2が一旦停止し、その状態でサンプルSにレーザ光が照射されるような制御が実行されていたが、試料ステージ2を停止することなく、図2(a)に示したような走査軌跡を描くように試料ステージ2を連続的に移動させながら、目的とする測定点がレーザ光照射位置に来たタイミングでパルス的にレーザ光を照射して質量分析を実行するようにしてもよい。一般に、MALDI法における1回のレーザ光の照射時間は10nsec程度と短く、この間に試料ステージ2が移動する距離は無視できる程度に小さいので、上述したように各測定点において試料ステージ2を停止させる際とほぼ同様の測定データを取得することができる。
分析者が測定位置走査の起点Pを例えば図2(b)に示すようにウェル1aの中心点Oからずれた位置に指定した場合には、同図中に示すように、起点Pを最初の測定点として渦巻き状の走査軌跡に沿って各測定点が設定される。なお、図2(a)中で各測定点に対応して示されている×を図2(b)では省略しており、図4、図5でも同様である。これにより、サンプルSの位置がウェル1a内でずれていても、適切にスイートスポット探索のための予備測定が実行され、迅速且つ的確にスイートスポットを見い出すことができる。
また、上記実施例では、起点Pから渦巻き状に外方に広がるように測定位置走査を実施していたが、図5に示すように起点Pから周囲に向かって同心円状に測定位置走査を実施するようにしてもよい。即ち、図2に示した走査軌跡Qでは、該軌跡の半径が連続的に増加していたが、図5に示した走査軌跡では、該軌跡の半径は1周毎にステップ的に増加する。これによっても、渦巻き状走査と同様の効果を奏するのは明らかである。
次に、本発明の別の実施例によるMALDI−TOFMSを説明する。この実施例のMALDI−TOFMSの基本的な構成は図1に示した上記実施例と同じであり、スイートスポット探索のための制御及びデータ処理の一部のみが相違するので、その相違点について以下に説明する。
上記実施例のMALDI−TOFMSでは、スイートスポット探索のための測定位置走査が図2中或いは図5中に示されるように実施されるが、上述した真のスイートスポットを見つけるためには測定点の間隔を狭める必要がある。換言すれば、予備測定に要する時間を短縮するためには測定点の数を絞らざるを得ず、そうすると真のスイートスポットを見い出せる確率が下がる。そこで、この実施例のMALDI−TOFMSでは、起点Pから測定位置走査を実施してスイートスポットらしき測定点を見い出した後に、さらにその測定点を新たな起点P’に設定し、比較的狭い範囲で2回目の測定位置走査を実施することによって、真のスイートスポットに行き当たる確率を高めるようにしている。この場合の測定位置走査の走査軌跡の一例を図4に示す。
この例では、図4(a)に示すように、ウェル1aの中心点Oを1回目の測定位置走査の起点Pに設定し、該起点Pから外方に向かって渦巻き状に走査軌跡を描きながら測定点を定めて、各測定点に対する質量分析を実行する。その結果、測定点Uにおいて指標値が最大を示したものとすると、この測定点Uを2回目の測定位置走査の起点P’に定める。1回目の測定位置走査の際には、径方向の走査軌跡の間隔や周方向に隣接する測定点の間隔はそれほど狭くする必要はなく、そのため1回目の測定位置走査で設定される測定点の数は或る程度抑えられる。次に図4(b)に示すように、2回目の測定位置走査として、起点P’から外方に向かって渦巻き状に走査軌跡を描きながら測定点を定めて、各測定点に対する質量分析を実行する。このときには、径方向の走査軌跡の間隔や周方向に隣接する測定点の間隔を1回目の測定位置走査と比べて十分に狭くするが、走査範囲自体も起点P’付近の狭い範囲に設定する。
即ち、2回目の測定位置走査では、起点P’付近の狭い範囲に絞った密な予備測定が実施され、各測定点に対して得られた指標値に基づいてスイートスポットの位置が判断される。真のスイートスポットは起点P’を含め該起点P’付近の狭い範囲に存在している可能性がきわめて高いから、この範囲を密に調べることで真のスイートスポットに行き当たる確率が高まる。この実施例のスイートスポット探索手法によれば、サンプルS全体に亘って密に測定点を設定する必要がないので、予備測定に要する時間を短縮しながら真のスイートスポットを見い出す確率を高めることができる。
続いて、本発明のさらに別の実施例によるMALDI−TOFMSについて説明する。上記実施例では、予備測定によってサンプルS上で測定状態が最も良好であるスイートスポットの位置を探索していたが、この実施例ではスイートスポットの探索とともに照射レーザ光の強度の最適化も行うようにしている。
一般的なマトリクスを用いたサンプル調製を行った場合、サンプルにおいて同一円周上では結晶状態が比較的類似していることが知られている。例えば文献(関谷、「イオン液体マトリックスを用いた試料の液滴内脱塩効果とイオン種の選択的検出」、質量分析総合討論会講演要旨集、56巻、2008年、p.258-259)には、タンパク質を試料とし液体マトリクスを用いてサンプル調製を行った場合、サンプルの中心部では糖ペプチドが優先的に検出され、中心部以外ではペプチドが優先的に検出されることが報告されている。サンプルの同一円周上では結晶構造が比較的類似しているため、最適なレーザ強度も近くなる傾向にある。そこで、図2に示したように渦巻き状に又は図5に示すように同心円上に測定位置走査を行う際に、1周期間中で図6に示すようにレーザ光強度を変化させる。即ち、サンプルの結晶構造がほぼ同一であるとみなせる測定位置範囲において、レーザ光強度を1回掃引する。この例では、設定値aと設定値bの間で直線的にレーザ光強度を掃引するようにしているが、変化の態様はこれに限るものではない。
そして、測定位置走査の1周期間毎に、測定状態な最も良好であった、つまりは上記指標値が最大である測定点を見つけ、その測定点の位置座標と該測定点での測定時におけるレーザ光強度とを記録する。上述したように渦巻き状又は同心円状の測定位置走査の1周期間毎のサンプル特性は類似しているため、上記のように測定点の位置座標と測定時におけるレーザ光強度とを記録してゆけば、サンプル上に点在する複数のスイートスポットにおけるレーザ強度の最適値の傾向を取得することができる。
もちろん、1個のサンプルに対し同一起点からの測定位置走査を複数回実施し、同一測定点でレーザ光強度を変更した測定を実施することも可能ではあるが、レーザ光強度を掃引しながら測定位置走査を行ったほうがスループットを向上させることができる。これは、一般的に、スイートスポット探索時のスループットの制約は試料ステージの駆動速度の限界にあるからである。例えば試料ステージの移動速度が10cm/sec、レーザ光の繰り返し周波数が1kHzという一般的な仕様の装置では、最大10cm/1kHz=0.1mm間隔で測定を行うことができるが、実際のサンプルサイズ(φ2mm程度)及びスイートスポットの確率(10%程度)では、1kHzというレーザ光繰り返し周波数では測定点数が多すぎることになる。そのため、試料ステージの移動速度に合わせてレーザ光の繰り返し周波数を低く設定することになる。この時間的余裕を利用してレーザ光強度を掃引することで、測定位置走査の1周期間中にレーザ光の強度の最適値とスイートスポットとを探索することができる。
なお、上記実施例はいずれも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変形、追加、修正を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
1…サンプルプレート
1a…ウェル
O…ウェルの中心点
P、P’…測定位置走査の起点
Q…走査軌跡
S…サンプル
2…試料ステージ
3…ステージ駆動部
4…アパーチャ
5…アインツェルレンズ
6…レーザ照射部
7、8…反射鏡
9…撮像部
10…質量分析部
11…自由飛行空間
12…反射器
13…イオン検出器
20…データ処理部
21…スイートスポット探索部
22…制御部
23…入力部
24…表示部

Claims (7)

  1. MALDI法によるイオン源と、該イオン源により生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、を具備するMALDI質量分析装置において、
    a)サンプルプレートを該プレート面の広がり方向に移動させる移動手段と、
    b)前記サンプルプレート上の所定位置にレーザ光を照射するレーザ照射手段と、
    c)前記サンプルプレート上に形成された1個のサンプルに対し、該サンプルプレート上の規定の位置を起点とし、該起点から外周方向に渦巻き状又は同心円状で周方向に所定間隔でもって測定点を順次設定して各測定点について少なくとも1回のレーザ光照射を実行しながら測定位置走査を実行するように、前記移動手段及び前記レーザ照射手段を制御する測定制御手段と、
    d)前記測定制御手段の制御の下に、渦巻き状又は同心円状に設定される測定点毎に前記レーザ光照射に応じて前記質量分析部で得られる測定データに基づいて、そのサンプルに対応したデータを取得するのに適切な測定点を見い出す測定点抽出手段と、
    を備えることを特徴とするMALDI質量分析装置。
  2. 請求項1に記載のMALDI質量分析装置であって、
    前記測定制御手段は、前記質量分析部で得られる測定データに基づいて、渦巻き状又は同心円状の測定位置走査の終了タイミングを決定することを特徴とするMALDI質量分析装置。
  3. 請求項1又は2に記載のMALDI質量分析装置であって、
    前記起点は、前記サンプルプレート上に形成されている上面視円形状のウェルの中心点であることを特徴とするMALDI質量分析装置。
  4. 請求項1又は2に記載のMALDI質量分析装置であって、
    前記サンプルプレート上の所定範囲の画像をユーザが観察するための観察手段と、前記起点をユーザが指定するための指定手段と、をさらに備えることを特徴とするMALDI質量分析装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のMALDI質量分析装置であって、
    前記測定制御手段は連続的に前記移動手段を駆動しつつ、目的の測定点が前記レーザ照射手段によるレーザ照射位置に来たときにレーザ光を照射するように該レーザ照射手段を駆動することを特徴とするMALDI質量分析装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のMALDI質量分析装置であって、
    前記測定制御手段は、前記測定点抽出手段により当該サンプルに対応したデータを取得するのに適切な測定点が一旦見い出された後に、該測定点を第2の起点として、該第2の起点から外周方向に渦巻き状又は同心円状で周方向に前記所定間隔よりも狭い所定間隔でもって測定点を順次設定して各測定点について少なくとも1回のレーザ光照射を実行しながら測定位置走査を実行するように、前記移動手段及び前記レーザ照射手段を制御し、
    前記測定点抽出手段は、前記測定制御手段の制御の下に、前記第2の起点から渦巻き状又は同心円状に設定される測定点毎に前記レーザ光照射に応じて前記質量分析部で得られる測定データに基づいて、そのサンプルに対応したデータを取得するのにより適切な測定点を見い出すことを特徴とするMALDI質量分析装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のMALDI質量分析装置であって、
    前記測定制御手段は、渦巻き状又は同心円状に測定位置走査を行いつつ、サンプルに照射されるレーザ光の強度を繰り返し変化させることを特徴とするMALDI質量分析装置。
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