JP2012229934A - 応力履歴記録システム及び応力履歴記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】応力発光体から得られる発光を一定期間積算記録する時の残光記録の影響を低減し、応力発光パターンを選択的に記録することのできる応力履歴記録システムを提供する。
【解決手段】応力履歴記録媒体10は、機械的な外力に応じて発光する応力発光材料を含む発光部1、発光部1からの発光によって生じた光反応の履歴を記録する記録部2を備えている。さらに、発光部1における残光の光強度は、記録部2が相反性不軌を示すレベルにまで低減されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、応力履歴を記録するための応力履歴記録システムに関する。
特定の物質が、外部からの様々な刺激(外部刺激)によって可視光を発する現象は、いわゆる蛍光現象として従来から知られている。このような蛍光現象を示す物質(蛍光体)は、ランプ、照明灯、ブラウン管、プラズマディスプレイパネルなどの各種ディスプレイ、および顔料等の様々な分野で用いられている。紫外線、電子線、X線、放射線、電界または化学反応などの外部刺激によって発光する物質(発光体)もまた、数多く知られている。
一方、本発明者らは、機械的な外力によって生じた歪みにより発光する応力発光材料を見出しており、その評価方法および利用方法を開発している。
具体的には、本発明者らは、このような応力発光材料として、スピネル構造、コランダム構造またはβアルミナ構造の応力発光体(特許文献1参照)、ケイ酸塩の応力発光体(特許文献2、3参照)、欠陥制御型アルミン酸塩の高輝度応力発光体(特許文献4参照)、エポキシ樹脂を含む複合材料および当該複合材料の塗布膜により作製した試験片に、圧縮、引張、摩擦、ねじりなどの機械的な力を加えることによって応力分布を可視化評価する方法(特許文献4、5参照)、ウルツ鉱型構造と閃亜鉛鉱型構造とが共存する構造を有し、酸化物、硫化物、セレン化物またはテルル化物を主成分として構成される高輝度メカノルミネッセンス材料(特許文献6参照)等を、開発している。
このような応力発光体は、肉眼で確認し得る程度の輝度を有しており、半永久的に繰り返し発光し得るものである。これらの応力発光体を用いれば、応力発光体を含む構造体の応力分布を測定することが可能となる。このような応力分布の測定方法としては、例えば、特許文献7および8を参照のこと。
さらに、本発明者らは、応力発光体の利用分野および/または応用分野を広げるために、応力履歴を記録するための応力履歴記録システムを開発し、これを特許文献9において開示している。この応力履歴記録システムで使用される応力履歴記録媒体は、機械的な外力に応じて発光する応力発光材料を含む発光部(応力発光体)、発光部からの発光によって生じた光反応の履歴を記録する記録部、および発光部と記録部とを固定している固定部を備えている。記録部は、発光部からの発光によって光反応を生じる光反応部を有している。
上記応力履歴記録媒体は、上述した構成を有することにより、機械的な外力が付与された場合に、外力に応じて発光部が発光し、その発光によって光反応部が光反応を生じて感光(変色または脱色)し、光反応部での感光の結果を応力履歴の記録として利用する。すなわち、上記応力履歴記録媒体は、機械的なエネルギーにより発光する応力発光体と光反応により感光する物質とを組み合わせることにより、付与された機械エネルギーの情報を記録することができる。
特開2000−119647号公報(2000年4月25日公開) 特開2000−313878号公報(2000年11月14日公開) 特開2003−165973号公報(2003年6月10日公開) 特開2001−49251号公報(2001年2月20日公開) 特開2003−292949号公報(2003年10月15日公開) 特開2004−43656号公報(2004年2月12日公開) 特開2001−215157号公報(2001年8月10日公開) 特開2004−77396号公報(2004年3月11日公開) 国際公開特許2007/105539号公報(2007年9月20日国際公開)
特許文献9において開示された応力履歴記録システムは、応力発光体から得られる発光を一定期間積算記録する。このようなシステムでは、理想的には、応力発光パターンのみ記録されることが望ましい。ただし、応力発光体には、多少の相違はあるが、残光が発生する(応力が作用していない状態でも幾分かの発光がある)。このため、応力発光パターンが記録されたとしても、積算に伴って増加する残光記録に埋もれることが問題であった(図8参照)。特に、上記システムの応用が期待される定期検査等では長期積算となるため、多くの場合、応力発光パターンの埋没(SN比の著しい低下)が問題となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、応力発光体から得られる発光を一定期間積算記録する時の残光記録の影響を低減し、応力発光パターンを選択的に記録することのできる応力履歴記録システムを提供することにある。
本発明の応力履歴記録システムは、上記の課題を解決するために、応力履歴を記録するための応力履歴記録システムであって、機械的な外力に応じて発光する応力発光材料を含む発光部、および上記発光部からの発光によって生じた光反応の履歴を記録する記録部を備え、上記発光部における残光の光強度は、上記記録部が相反性不軌を示すレベルに低減されていることを特徴としている。
また、本発明の応力履歴記録方法は、上記の課題を解決するために、応力履歴を記録するための応力履歴記録方法であって、機械的な外力に応じて発光する応力発光材料を含む発光部、および上記発光部からの発光によって生じた光反応の履歴を記録する記録部を備えた応力履歴記録媒体を計測対象物に貼り付ける第一の工程と、計測期間中に上記計測対象物において応力及び歪みが生じた場合に、上記発光部において生じる応力発光の履歴を上記記録部にて記録する第2の工程とを含み、上記発光部における残光の光強度は、上記第一の工程の前に行われる残光低減処理によって、上記記録部が相反性不軌を示すレベルに低減されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、上記発光部が機械的な外力に応じて発光した場合、その応力発光は上記記録部において記録される。また、上記記録部は、上記発光部からの発光によって生じた光反応の履歴を記録するものであるため、一定時間内に発生した応力の総和を応力履歴として記録することができる。さらに、上記発光部における残光の光強度は、上記記録部が相反性不軌を示すレベルに低減されているため、上記記録部において残光が記録されることは回避もしくは低減でき、上記発光部の応力発光を選択的に記録することができる。
また、上記応力履歴記録方法では、上記残光低減処理は、上記発光部を暗所にて待機させる処理および上記発光部を加熱する処理の少なくとも一方を含む処理である構成とすることができる。
上記の方法によって、上記発光部の残光を所定のレベルにまで低減することが可能となる。
本発明の応力履歴記録システムおよび応力履歴記録方法では、一定時間内に発生した応力の総和を応力履歴として記録することができ、かつ、残光記録を回避もしくは低減して、応力発光を選択的に記録することができるといった効果を奏する。
本発明の一実施形態を示すものであり、応力履歴記録システムの要部構成を示す断面図である。 本発明の応力履歴記録システムにおいて用いられる感光材料の照射光子数−記録率曲線を示すグラフである。 本発明の応力履歴記録システムにおいて用いられる応力発光体の長期待機時間に伴う残光の経時変化を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る応力履歴記録結果を示す図であり、(a)は応力が発生していない場合の結果、(b)は応力が発生した場合の結果である。 本発明の実施例2に係る応力履歴記録結果を示す図であり、(a)は応力が発生していない場合の結果、(b)は応力が発生した場合の結果である。 本発明の実施例3に係る応力履歴記録結果を示す図であり、(a)は応力が発生していない場合の結果、(b)は応力が発生した場合の結果である。 (a)は本発明の実施例4に係る応力履歴記録システムの設置箇所、(b)はその応力履歴記録結果を示す図である。 従来の応力履歴記録システムにおける残光記録による応力発光パターン埋没を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る応力履歴記録媒体(応力履歴記録システム)10は、基本的な構造は特許文献9に示す応力履歴記録媒体と同じである。応力履歴記録媒体10は、機械的な外力に応じて発光する応力発光材料を含む発光部1、発光部1からの発光によって生じた光反応の履歴を記録する記録部2を備えている。また、発光部1と記録部2とは固定部3に固定されている。記録部2は、発光部1からの発光によって光反応を生じる光反応部を有している。本実施形態において、発光部1は固定部3上に固定されており、固定された発光部1を記録部2が被覆することにより、記録部2もまた固定部3に固定されている。尚、固定部3は、応力履歴記録媒体10によって応力履歴が計測される計測対象物であって良い。但し、上記構造は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
発光部1に含まれている応力発光材料は、特に限定されず、機械エネルギーにより発光するものであればよく、発光が歪みエネルギーに比例する特性を有する応力発光体は、定量性がよいのでより好ましい。
記録部2において使用される光反応部を構成する材料は、発光部1からの発光の波長に応じて感光するものが適宜選択される。光反応により感光する物質としては、色素、無機フォトクロミック材料、有機フォトクロミック材料、写真用感光フィルムが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、「感光」は、光や放射線(X線など)の作用を受けて物質が物理的変化および/または化学的変化を起こすことが意図される。
色素は、発光の強度に比例して光反応を生じるものが好ましく、加えた応力の総和、歪み、エネルギーの総和を容易に記録するためには、色の変化が不可逆的である色素を用いることがより好ましい。好ましい色素としては、アゾベンゼン類、スピロピラン類、スピロオキサジン類、ジアリールエテン類、フルギド類、クロメン類、銀ナノ粒子(銀イオン)、金ナノ粒子(球状、ロッド状、ナノプリズム(三角系)など)、レチナール(天然のフォトクロミック色素)、および光退色性色素(アゾ類、フルオレセイン類など)が挙げられるが、これらに限定されない。
固定部3は、応力履歴記録媒体10を適用する局面に応じて適宜選択され得るが、発光部1および記録部2を容易に固定し得る材料からなることが好ましい。
応力履歴を記録することは、例えば、大型建造物の安全管理の場合、安全性の観点から非常に重要である。本実施形態に係る応力履歴記録媒体10は、上述した構成を有することにより、機械的な外力が付与された場合に、外力に応じて発光部1が発光し、その発光によって光反応部が光反応を生じて感光(変色または脱色)し、光反応部での感光の結果を応力履歴の記録として利用する。すなわち、応力履歴記録媒体10は、機械的なエネルギーにより発光する応力発光体と光反応により感光する物質とを組み合わせることにより、付与された機械エネルギーの情報を記録することができる。また、本発明を用いれば、応力履歴の記録を、記録手段における吸収スペクトルの変化として容易に検出することができる。なお、本明細書を読んだ当業者は、上記吸収スペクトルが可視領域に限定されず、検出すべき吸収スペクトルに応じて公知の検出器を採用すればよいことを、容易に理解する。
本実施形態に係る応力履歴記録媒体10は、応力発光体から得られる発光を一定期間積算記録する時の残光記録の影響を低減し、応力発光パターンを明瞭に記録するために、以下の特徴点を有している。
第一の特徴点として、発光部1として使用される応力発光体には、残光を減らすための残光低減処理が施される。応力発光体の残光は、応力発光体を暗所で待機させることで減少する。あるいは、応力発光体を加熱する、もしくは応力発光体に光を照射する等の処理によって、その残光を加速的に減らすこともできる。
第二の特徴点として、記録部2として使用される感光材料は、低照度相反則不軌の領域が利用される。すなわち、発光部1における残光の光強度が、上記感光材料が相反性不軌を示すレベルに低減される。感光材料への記録において、相反則が成立する程度の強光の場合、記録は照射された光子数(光強度×照射時間)に依存する。写真の様な一般的な使用では、この領域を使用する。
図2は、感光材料への照射光子量を横軸とし、感光材料における記録率を縦軸として、照射光子数−記録率曲線を示したグラフである。図2における各種条件は以下の通りである。
記録対象:緑 平面光源(フィルター:0.01+32 %)
感光材料:Fujiインスタントフィルム:EI3000
評価方法:USB4000(S−1)、積算時間30ms、555nmの値を読む。
例えば、図2において、照射輝度(光強度)2.9mcd/mの場合と、0.77mcd/mの場合とを比較すると、照射光子数−記録率曲線が互いにほぼ重なっている。すなわち、上記感光材料は、光強度が2.9〜0.77mcd/mの領域の照射光に対して相反則が成立していることがわかる。したがって、この領域の残光が応力発光体から照射されれば、感光材料はその残光を記録することになり、残光記録を除去できない。
一方、本発明では、通常ではあまり使用しない、相反則が成立しない微弱光領域(低照度相反則不軌の領域)を利用する。これにより、記録開始にはより長時間残光が照射され続けることが必要となり、例え照射光子数が同じだとしても、記録は進行しない。
具体的には、0.12mcd/mの光強度において、照射光子数−記録率曲線が右方向へ移動していることが確認できる。従って、残光の光強度をこの程度まで減少・制御すれば、相反則不軌による残光記録の軽減は可能である。但し、以降の実施例等の記載から、より望ましくは、0.016mcd/m以下に応力発光体の残光を減少・制御することが望ましい。
ここで、応力発光体の長期待機時間に伴う残光の経時変化を確認した結果を図3に示す。ここでのサンプルは、SUS430の表面に、応力発光体SAOEを塗布したアルミシート(10×10mm)を貼りつけて用いた。残光の計測には、計測機器にフォトマルC8855(浜松ホトニクス社製)を用い、距離0mmで応力発光体シート中央を計測した。また、1回の計測時間は20msとした。応力発光体には、前処理として1分間のUV照射(距離5cm)を行い、その1分後から計測を開始した。尚、ここでのUV照射は、実験上、応力発光体の残光を最大状態にリセットするための処理であるため、実用上は必要の限りでは無く、残光の低減に影響を与えるものではない。後述する各実施例においても、同様の理由で応力発光体にUV照射を行っている。
図3より、計測開始後約1日で残光の光強度が0.016mcd/mに落ちていることが分かる。この残光の光強度は、図2に示した感光材料における低照度相反則不軌の領域に入っている。このため、図2の感光材料と、残光の光強度が0.016mcd/mに落とされた図3の応力発光体とを組み合わせた応力履歴記録媒体では、残光の記録は生じないと考えられる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例1では、応力発光体における残光が感光材料における記録の閾値以下になるのを待ち、応力履歴記録システムに組み入れることで、応力の履歴のみを選択的に記録できるシステムを作製した。
具体的には、UV光(0.7mW、355nm)を1分照射した後、7日間暗所で待機させた応力発光体(SUS430基板上に応力発光シートを接着)と、感光材料(Fuji、インスタント写真用フィルム、FB−3000B)とにより、応力履歴記録システムを作製した。
上記システムにおいて、応力発光体の残光を感光材料に30分間露光させて積算記録を行ったが、残光は全く記録されなかった(図4(a)参照)。その後、さらに30分の露光を行い、その際、15kNの引張荷重(ひずみ:1051μ、20回)をSUS430基板に印加すると、応力発光による記録が観測された(図4(b)参照)。
従って、本システムでは、応力発光体における残光を低減することで、応力・ひずみが生じていない場合は感光材料への記録がないが、応力がかかった際には、発光を記録し、可視化することができる。すなわち、応力のみの選択記録が可能となることが確認された。
上記実施例1では、応力発光体に対して暗所待機のみで残光を低減させているが、この方では、上記のような応力の選択記録が可能になるまでに長い待機時間が必要となる。実際、実施例1の応力履歴記録システムにおいて、30分の積算記録を行うためには7日間の待機が必要であった。また、1日の積算記録を行うためには60日間の待機が必要であり、1週間の積算記録を行うためには100日間の待機が必要であった。しかしながら、現場での使用では、これ程の長い待機時間は非現実的であり、より短い時間で残光を低減させることが求められる。
本実施例2では、熱処理による応力発光体の脱励起を行い、応力発光体における残光を感光材料における記録の閾値以下に落とした後、応力履歴記録システムに組み入れることで、応力の履歴のみを選択的に記録できるシステムを作製した。
具体的には、UV光(0.7mW、355nm)を1分照射した後、80度の熱で1時間処理した応力発光体(SUS430基板上に、応力発光シートを接着)と、感光材料(Fuji、インスタント写真用フィルム、FB−3000B)とにより、応力履歴システムを作製した。
上記システムにおいて、応力発光体の残光を感光材料に30分間露光させて積算記録を行ったが、残光は全く記録されなかった(図5(a)参照)。その後、さらに30分の露光を行い、その際、15kNの引張荷重(ひずみ:1051μ、1回)をSUS430基板に印加すると、応力発光による記録が観測された(図5(b)参照)。
従って、熱処理を施した本応力履歴記録システムでは、応力・ひずみが無い場合は全く記録されないが、露光中に一度でも応力・ひずみが発生すれば、その履歴が記録されることを証明した。また、応力発光体に熱処理を行う事で、応力の選択記録に必要な残光低減処理時間を、7日から1時間に短縮することに成功した。
上記実施例1,2では、応力発光体における残光を記録に残らない程度にまで低減し、応力発酵のみを選択記録する応力履歴記録システムをしめした。これに対し、本実施例3では、応力発光体における残光低減量を制御(待機もしくは熱処理する際の時間・温度を制御)することで、高いSN比で応力履歴(応力発光)を記録しつつも、計測範囲(残光)を同時に記録し可視化可能なシステムを作製した。
具体的には、UV光(0.7mW、355nm)を1分照射した後、4日間暗所で保持した応力発光体(SUS430基板上に、応力発光シートを接着)と、感光材料(Fuji、インスタント写真用フィルム、FB−3000B)とから構成される応力履歴記録システムを作製した。
上記システムにおいて、応力発光体の残光を感光材料に30分間露光させて積算記録を行ったとところ、わずかに残光を記録し、計測範囲の可視化が確認された(図6(a)参照)。その後、さらに30分の露光を行い、その際、1.4kNの引張荷重(ひずみ:1041μ、2回)をSUS430基板に印加すると、亀裂先端への応力集中を反映した応力履歴が、残光に対して区別して記録できることを確認した(図6(b)参照)。
従って、応力発光体における残光低減量を制御することで、高いSN比で応力履歴を記録しつつも、同時に計測部分を可視化できる応力履歴記録システムが実証できた。
本実施例4では、劣化等のゆっくりとした変動現象などの定期検査にも適応可能な応力履歴記録システムについて説明する。
劣化は非常にゆっくりとした変動現象である。この様にゆっくりとした変動に由来する応力発光は極めて微弱であるため、CCD等を用いたリアルタイムでの計測は難しい。一方で、長時間積算が可能になった本応力履歴システムを使うことで、このような非常にゆっくりとした変動現象をも検知することができる。
本実施例4では、UV光(0.7mW、355nm)を1分照射した後、80度で24時間処理した応力発光体(応力発光シート、75×75mm)と、感光材料(Fuji、インスタント写真用フィルム、FB−3000B)とから構成される応力履歴記録システムを作製し、使用中の実構造物のひび割れ(図7(a)参照)に対して設置した。
上記システムにおいて、20時間の積算記録を行った結果、ひび割れに相当する位置に、発光パターンが記録された(図7(b)参照)。上記ひび割れは、温度変化、太陽光照射によりゆっくりとではあるが、開口変位していることがわかっている。したがって、本システムは、このような劣化に繋がるゆっくりとした変動現象を捕えることに成功した。
さらに、あえて残光を僅かに残す条件を選択したことで、敷設した応力発光シートのどの位置にひび割れがあるのかを可視化することに成功し、構造物の定期検査などに適応可能であることを実証した。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
応力履歴を記録することは、例えば、大型建造物の安全管理の場合、安全性の観点から非常に重要であるので、本発明は種々の産業において幅広く用いられ得る。
1 発光部
2 記録部
3 固定部
10 応力履歴記録媒体(応力履歴記録システム)

Claims (3)

  1. 応力履歴を記録するための応力履歴記録システムであって、
    機械的な外力に応じて発光する応力発光材料を含む発光部、および
    上記発光部からの発光によって生じた光反応の履歴を記録する記録部を備え、
    上記発光部における残光の光強度は、上記記録部が相反性不軌を示すレベルに低減されていることを特徴とする応力履歴記録システム。
  2. 応力履歴を記録するための応力履歴記録方法であって、
    機械的な外力に応じて発光する応力発光材料を含む発光部、および上記発光部からの発光によって生じた光反応の履歴を記録する記録部を備えた応力履歴記録媒体を計測対象物に貼り付ける第一の工程と、
    計測期間中に上記計測対象物において応力及び歪みが生じた場合に、上記発光部において生じる応力発光の履歴を上記記録部にて記録する第二の工程とを含み、
    上記発光部における残光の光強度は、上記第一の工程の前に行われる残光低減処理によって、上記記録部が相反性不軌を示すレベルに低減されていることを特徴とする応力履歴記録方法。
  3. 上記残光低減処理は、上記発光部を暗所にて待機させる処理および上記発光部を加熱する処理の少なくとも一方を含む処理であることを特徴とする請求項2に記載の応力履歴記録方法。
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