JP2012227361A - 窒化物半導体レーザ素子、光源装置および窒化物半導体レーザ素子の製造方法 - Google Patents

窒化物半導体レーザ素子、光源装置および窒化物半導体レーザ素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】半極性面を主面とするGaN基板を用いた場合でも容易に作製することができ、かつ低閾値電流となる窒化物半導体レーザ素子、それを用いた光源装置およびその窒化物半導体レーザ素子の製造方法を提供する。
【解決手段】{20−21}面を第1の主面とする窒化ガリウム基板と、窒化ガリウム基板の第1の主面に接して設けられた窒化物半導体厚膜と、窒化物半導体厚膜上に設けられた窒化物半導体レーザ素子層とを備え、窒化物半導体厚膜は、窒化物半導体厚膜の主面である{20−21}面と89.95°以上90.05°以下の角度を為す範囲内に{−1017}面を有する窒化物半導体レーザ素子、それを用いた光源装置およびその窒化物半導体レーザ素子の製造方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化物半導体レーザ素子、光源装置および窒化物半導体レーザ素子の製造方法に関する。
GaN(窒化ガリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)およびそれらの混晶に代表される窒化物半導体は、AlGaInAs系半導体やAlGaInP系半導体に比べてバンドギャップEgが大きく、かつ直接遷移型の半導体材料であるという特徴を有している。
そのため、窒化物半導体は、紫外線から緑色光までの波長領域のレーザ光の発光が可能な半導体レーザ素子、および紫外線から赤色光までの広い波長領域の光の発光が可能な発光ダイオード素子などの窒化物半導体発光素子を構成する材料として注目されている。そして、これらの窒化物半導体発光素子は、プロジェクタおよびフルカラーディスプレイなどの電気分野へ適用が考えられているだけでなく、環境分野および医療分野などにも広く応用が考えられている。
また、近年、窒化物半導体発光素子において、その発光波長を長波長化することによって、緑色領域で発光する窒化物半導体レーザ素子を実現しようとする試みが各研究機関で精力的に行われている。
窒化物半導体レーザ素子においては、一般的に、基板として、六方晶系のGaN基板などの窒化物半導体基板が用いられており、窒化物半導体基板のc面((0001)面)が成長主面とされている。そして、窒化物半導体基板のc面上に発光層を含む窒化物半導体層が積層されることによって窒化物半導体レーザ素子を形成している。また、窒化物半導体基板を用いて窒化物半導体レーザ素子を形成する場合には、一般的に、Inを含む発光層が用いられており、発光層のIn組成比を増加させることによって、発光波長の長波長化が図られている。
しかしながら、GaN基板のc面はc軸方向に極性を有する極性面であるため、GaN基板のc面上に発光層を含む窒化物半導体層を積層した場合には、発光層内に自発分極が生じる。また、GaN基板のc面上に発光層を含む窒化物半導体層を積層した場合には、発光層のIn組成比を増加させることに伴い、発光層の格子歪みが増大して、発光層に強いピエゾ電界が誘起される。そして、これらの発光層における自発分極およびピエゾ電界によって生じる内部電界(自発分極とピエゾ電界との和)により、電子と正孔との波動関数の重なりが減少し、電子と正孔とが再結合することによって、発光する割合が低下する。
そのため、緑色領域の発光を実現することを目的として発光層のIn組成比を増加させた場合には、発光波長の長波長化に伴って発光効率が著しく低下するという問題が生じていた。
そこで、近年では、発光層における内部電界の影響を回避するために、一般的なc面ではなく、半極性面または無極性面上に窒化物半導体層を積層した窒化物半導体レーザ素子が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
特許文献1には、半極性面を有する窒化物半導体基板を用いた窒化物半導体レーザ素子とその共振器端面の形成方法が開示されており、半極性面の一例としてGaN基板の{20−21}面が挙げられている。
特開2011−3660号公報
しかしながら、一般に、低閾値電流の半導体レーザ素子を作製するためには良好な共振器端面を形成することが必要であるが、半極性面を主面とするGaN基板を用いた窒化物半導体レーザ素子で良好な共振器端面を形成することは難しいという問題があった。
その理由の1つとしては、GaN基板の主面である半極性面に対して垂直な端面を形成することができないことが挙げられる。たとえば、GaN基板の半極性面である{20−21}面を主面とした場合、結晶学的に{20−21}面に対して略垂直な面は{−1017}面である。しかしながら、{20−21}面と{−1017}面とが為す角度は89.90°であるため、僅かながら90°からずれている。そのため、劈開により良好な共振器端面を形成することができず、低閾値電流の窒化物半導体レーザ素子を作製することが困難であった。なお、特許文献1の実施例3で記載されている90.10°と、本明細書の89.90°とは補角の関係にあるため等価である。
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、半極性面を主面とするGaN基板を用いた場合でも容易に作製することができ、かつ低閾値電流となる窒化物半導体レーザ素子、それを用いた光源装置およびその窒化物半導体レーザ素子の製造方法を提供することにある。
本発明は、{20−21}面を第1の主面とする窒化ガリウム基板と、窒化ガリウム基板の第1の主面に接して設けられた窒化物半導体厚膜と、窒化物半導体厚膜上に設けられた窒化物半導体レーザ素子層とを備え、窒化物半導体レーザ素子層は、n型窒化物半導体層と、窒化物半導体からなる発光層と、p型窒化物半導体層とを含み、窒化物半導体厚膜は、窒化物半導体厚膜の主面である{20−21}面と89.95°以上90.05°以下の角度を為す範囲内に{−1017}面を有する窒化物半導体レーザ素子である。
ここで、本発明の窒化物半導体レーザ素子において、窒化物半導体厚膜の厚さは、窒化物半導体レーザ素子層の厚さよりも厚いことが好ましい。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子において、窒化物半導体厚膜はAlxGa1-xNの式で表わされる窒化物半導体からなり、当該式におけるxは0.11以上0.23以下であることが好ましい。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子において、窒化物半導体厚膜は、格子緩和していることが好ましい。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子において、窒化物半導体厚膜の厚さは、0.45μm以上2μm以下であることが好ましい。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子において、窒化ガリウム基板の厚さは、80μm以上120μm以下であることが好ましい。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子において、窒化ガリウム基板の第1の主面とは反対側の第2の主面の30μm×30μmの範囲内におけるRMS値は2nm以下であることが好ましい。
さらに、本発明は、{20−21}面を第1の主面とする窒化ガリウム基板を準備する工程と、窒化ガリウム基板の第1の主面上に第1の主面に接する窒化物半導体厚膜を形成する工程と、窒化物半導体厚膜上に窒化物半導体レーザ素子層を形成する工程と、窒化ガリウム基板の第1の主面とは反対側から窒化ガリウム基板を薄くする工程と、窒化ガリウム基板の第1の主面とは反対側の第2の主面に罫書き溝を形成する工程と、罫書き溝に沿って窒化ガリウム基板を分割することによって窒化物半導体レーザ素子層を劈開する工程とを含む窒化物半導体レーザ素子の製造方法である。
ここで、本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、窒化ガリウム基板を薄くする工程と罫書き溝を形成する工程との間に、窒化ガリウム基板の第2の主面をCMP法によって処理する工程を含み、窒化ガリウム基板の第2の主面の30μm×30μmの範囲内におけるRMS値が2nm以下とされることが好ましい。
また、本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法においては、罫書き溝を形成する工程において、罫書き溝は[−12−10]の方向に沿って形成されることが好ましい。
さらに、本発明の窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、窒化物半導体レーザ素子層を劈開する工程は、窒化ガリウム基板の第1の主面側から罫書き溝に圧力をかけることによって行なわれることが好ましい。
本発明によれば、半極性面を主面とするGaN基板を用いた場合でも容易に作製することができ、かつ低閾値電流となる窒化物半導体レーザ素子、それを用いた光源装置およびその窒化物半導体レーザ素子の製造方法を提供することができる。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の積層構造の一例の模式的な断面図である。 本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の一部について図解する模式的な断面図である。 本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部について図解する模式的な断面図である。 本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部について図解する模式的な断面図である。 本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部について図解する模式的な断面図である。 本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例の製造工程の他の一部について図解する模式的な断面図である。 バルク状結晶またはフリースタンディングのAlxGa1-xN結晶とInxGa1-xN結晶の各結晶のAlまたはInの組成比xと、各結晶の{−1017}面と{20−21}面とが為す角度(°)との関係を示す図である。 実施例において作製された窒化物半導体レーザ素子の積層構造の模式的な断面図である。 実施例においてn側電極を形成した後のn型GaN基板の裏面の模式的な平面図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
なお、結晶面および方向を表わす場合に、本来であれば所要の数字の上にバーを付した表現をするべきであるが、表現手段に制約があるため、本明細書においては、所要の数字の上にバーを付す表現の代わりに、所要の数字の前に「−」を付して表現している。
図1に、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の積層構造の一例の模式的な断面図を示す。本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、n型のGaN基板101と、GaN基板101上に設けられた窒化物半導体厚膜110と、窒化物半導体厚膜110上に設けられた窒化物半導体レーザ素子層102とを有している。
GaN基板101は、{20−21}面からなる第1の主面101aと、第1の主面101aと反対側の主面である第2の主面101bとを有している。
GaN基板101の{20−21}面からなる第1の主面101aに接するようにして窒化物半導体厚膜110が形成されており、窒化物半導体厚膜110は{20−21}面からなる主面110aを有している。
窒化物半導体厚膜110の{20−21}面からなる主面110aに接するようにしてn型窒化物半導体層103が形成されている。また、n型窒化物半導体層103に接するようにして窒化物半導体からなる発光層104が形成されている。さらに、発光層104に接するようにしてp型窒化物半導体層105が形成されている。このようにして形成されたn型窒化物半導体層103と、発光層104と、p型窒化物半導体層105との積層体から窒化物半導体レーザ素子層102が形成されている。
本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子においては、窒化物半導体厚膜110が、窒化物半導体厚膜110の主面110aである{20−21}面と、89.95°以上90.05°以下の角度αを為す範囲内に{−1017}面を有している。これにより、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子においては、劈開によって、窒化物半導体厚膜110上の窒化物半導体レーザ素子層102に良好な共振器端面を容易に形成することができるため、半極性面である{20−21}面を第1の主面101aとするGaN基板101を用いた場合でも低閾値電流を実現することができる。
従来、窒化物半導体レーザ素子層は、主に、GaN基板のc面({0001}面)上に形成されていた。窒化物半導体が属する六方晶系において、c面は六方晶系の主軸の1つであるc軸の結晶面であることから結晶学的に対称性の高い面である。そのため、GaN基板のc面上に、GaNとは異なる窒化物半導体材料(たとえば、AlGaNやInGaN)を含む窒化物半導体レーザ素子層を積層した場合でも、GaN基板のc面に対する法線方向(c軸)と窒化物半導体レーザ素子層の表面に対する法線方向(c軸)とは一致する。
c面と同様に、GaN基板のc面上に形成された窒化物半導体レーザ素子層の劈開面であるm面もまたGaN基板の劈開面であるm面と一致する。これは、GaN基板のc面上にGaN基板と異なる格子定数を有する窒化物半導体レーザ素子層を積層した場合にも成立する。これは、c面上の結晶成長では等方性弾性歪によって窒化物半導体レーザ素子層が変形するためである。よって、GaN基板のc面を主面上に形成された窒化物半導体レーザ素子層の劈開面は、そのGaN基板の劈開面とも一致するため、劈開による形成が容易である。
一方、本実施の形態のように、半極性面であるGaN基板101の{20−21}面からなる第1の主面101a上に窒化物半導体レーザ素子層102を形成した場合には、仮にGaN基板101と窒化物半導体レーザ素子層102との間の格子不整合差に起因する格子歪が生じていない場合であっても、窒化物半導体材料に応じて、{20−21}面に対する劈開面(たとえば{−1017}面)の角度が変化する。また、GaN基板101と窒化物半導体レーザ素子層102との間に格子歪が生じている場合には、さらに複雑な振る舞いをする。なぜならば、GaN基板101の{20−21}面を第1の主面101aとする場合には、せん断応力による歪も考慮しなければならないためである。
このようなGaN基板101の{20−21}面からなる第1の主面101a上に形成された窒化物半導体レーザ素子層102に良好な劈開面を形成するためには、{20−21}面を第1の主面101aとするGaN基板101と窒化物半導体レーザ素子層102との間に窒化物半導体厚膜110を具備するとともに、窒化物半導体厚膜110はGaN基板101と接して設けられ、かつ窒化物半導体厚膜110は、その主面110aである{20−21}面に対する角度αが89.95°以上90.05°以下の範囲内に{−1017}面を有する必要がある。これにより、窒化物半導体厚膜110を窒化物半導体レーザ素子層102に良好な劈開面を形成するための誘導層として機能させることができ、窒化物半導体レーザ素子層102に劈開による良好な共振器端面を形成することができる。
以下、図2〜図6を参照して、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子の製造方法の一例について説明する。なお、後述する各工程の前後にそれぞれ他の工程を含んでいてもよいことは言うまでもない。
まず、図2の模式的断面図に示すように、{20−21}面を第1の主面101aとするGaN基板101を準備する工程を行なう。ここで、GaN基板101を準備する工程は、たとえば、バルク状のGaN結晶を{20−21}面の方位に沿って切り出し、切り出したGaN結晶の{20−21}面からなる主面を研削および研磨することによって行なうことができる。
次に、図3の模式的断面図に示すように、GaN基板101の{20−21}面からなる第1の主面101aに接するように窒化物半導体厚膜110を形成する工程を行なう。ここで、窒化物半導体厚膜110を形成する工程は、たとえばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などによってGaN基板101の{20−21}面からなる第1の主面101a上に窒化物半導体厚膜110を成長させることなどによって行なうことができる。
窒化物半導体厚膜110としては、Alx0Gay0Inz0N(0≦x0≦1、0≦y0≦1、0≦z0≦1、x0+y0+z0=1)の式で表わされる窒化物半導体を成長させることができ、たとえば、Alx0Gay0N(0<x0<1、0<y0<1、x0+y0=1)またはGay0Inz0N(0<y0<1、0<z0<1、y0+z0=1)の式で表わされる窒化物半導体を成長させることができる。
なかでも、窒化物半導体厚膜110としては、AlxGa1-xNの式で表わされ、当該式におけるAlの組成比xが0.11以上0.23以下である窒化物半導体を成長させることが好ましい。この場合には、GaN基板101の{20−21}面からなる第1の主面101a上に、AlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜110をほぼ格子緩和した状態で成長させることができ、{20−21}面と89.95°以上90.05°以下の角度を為す範囲内に{−1017}面を有する窒化物半導体厚膜110をより安定して成長させることができる傾向が大きくなる。また、実際に、AlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜110を窒化物半導体レーザ素子に適用する場合には、高いAl組成比xを有する窒化物半導体厚膜110よりも低いAl組成比xを有する窒化物半導体厚膜110を用いた場合の方が、窒化物半導体レーザ素子を構成する窒化物半導体層の結晶性が良好となる傾向が大きくなる。
次に、図4の模式的断面図に示すように、窒化物半導体厚膜110上に窒化物半導体レーザ素子層102を形成する工程を行なう。ここで、窒化物半導体レーザ素子層102を形成する工程は、たとえば、MOCVD法などによって、窒化物半導体厚膜110の{20−21}面からなる主面110aに接するようにn型窒化物半導体層103を成長させ、n型窒化物半導体層103に接するように発光層104を成長させ、発光層104に接するようにp型窒化物半導体層105を成長させることなどによって行なうことができる。
n型窒化物半導体層103としては、Alx1Gay1Inz1N(0≦x1<1、0<y1≦1、0≦z1<1、x1+y1+z1=1)の式で表わされる窒化物半導体にSiなどのn型ドーパントをドープさせたものを成長させることができ、たとえば、Alx1Gay1N(0<x1<1、0<y1<1、x1+y1=1)、GaN、Gay1Inz1N(0<y1<1、0<z1<1、y1+z1=1)、またはAlx1Gay1Inz1N(0<x1<1、0<y1<1、0<z1<1、x1+y1+z1=1)の式で表わされる窒化物半導体にSiなどのn型ドーパントをドープさせたものを成長させることができる。
発光層104としては、たとえば、窒化物半導体からなる井戸層と、窒化物半導体からなる障壁層とを含むものを用いることができる。窒化物半導体からなる井戸層としては、たとえば、Gay2Inz2N(0<y2<1、0<z2<1、y2+z2=1)の式で表わされる窒化物半導体などを成長させることができ、Inの組成比z2を変化させることにより所望の発光波長を有する窒化物半導体レーザ素子を得ることができる。また、窒化物半導体からなる障壁層としては、Alx3Gay3Inz3N(0≦x3<1、0<y3≦1、0≦z3<1、x3+y3+z3=1)の式で表わされる窒化物半導体などを成長させることができ、たとえば、Alx3Gay3N(0<x3<1、0<y3<1、x3+y3=1)、GaN、Gay3Inz3N(0<y3<1、0<z3<1、y3+z3=1)、またはAlx3Gay3Inz3N(0<x3<1、0<y3<1、0<z3<1、x3+y3+z3=1)の式で表わされる窒化物半導体を成長させることができる。
p型窒化物半導体層105としては、Alx4Gay4Inz4N(0≦x4<1、0<y4≦1、0≦z4<1、x4+y4+z4=1)の式で表わされる窒化物半導体にMgなどのp型ドーパントをドープさせたものを成長させることができ、たとえば、Alx4Gay4N(0<x4<1、0<y4<1、x4+y4=1)、GaN、Gay4Inz4N(0<y4<1、0<z4<1、y4+z4=1)、またはAlx4Gay4Inz4N(0<x4<1、0<y4<1、0<z4<1、x4+y4+z4=1)の式で表わされる窒化物半導体にMgなどのp型ドーパントをドープさせたものを成長させることができる。
ここで、窒化物半導体厚膜110の厚さt1が、窒化物半導体レーザ素子層102の厚さt2よりも厚くなることが好ましい。この場合には、劈開によって、窒化物半導体レーザ素子層102に良好な共振器端面を歩留まり良く形成することができる傾向が大きくなる。
その後、窒化物半導体レーザ素子層102にリッジストライプ部(図示せず)を形成する工程、誘電体保護膜(図示せず)を形成する工程、およびp側電極(図示せず)を形成する工程等を順次行なうことができる。
次に、図5の模式的断面図に示すように、GaN基板101の第1の主面101aとは反対側からGaN基板101を薄くする工程を行なう。GaN基板101を薄くする工程は、たとえば、GaN基板101の第1の主面101aとは反対側から研削することなどによって行なうことができる。これにより、GaN基板101の厚さを薄くして、GaN基板101の第1の主面101aとは反対側に第2の主面101bを露出させることができる。
GaN基板101を薄くする工程後におけるGaN基板101の厚さt3は、80μm以上120μm以下とすることが好ましい。この場合には、後述する劈開する工程において、劈開によって、窒化物半導体レーザ素子層102に良好な共振器端面を容易に形成することができる傾向にある。
GaN基板101を薄くする工程の後には、GaN基板101の第2の主面101bをCMP(Chemical Mechanical Polishing)法によって処理する工程を含むことが好ましく、CMP法による処理後のGaN基板101の第2の主面101bの30μm×30μmの範囲内におけるRMS(Root Mean Square)値を2nm以下とすることがより好ましい。この場合には、後述する罫書き溝を形成する工程において、罫書き溝を精度良く形成することができる傾向が大きくなるため、後述する劈開によって形成された劈開面である共振器端面を有する窒化物半導体レーザ素子の歩留まりを向上させることができる傾向が大きくなる。
なお、RMS値は、GaN基板101の第2の主面101bの30μm×30μmの範囲内において、JIS B 0601:2001(ISO 4287:1997)に基づいてRqを算出することなどによって求めることができる。
その後、GaN基板101の第2の主面101b上にp側電極(図示せず)を形成する工程等を行なうことができる。
次に、図6の模式的平面図に示すように、GaN基板101の第1の主面101aとは反対側の第2の主面101bに罫書き溝107を形成する工程を行なう。罫書き溝107を形成する工程は、たとえばスクライブ装置を用いてGaN基板101の第2の主面101bに罫書き溝107を形成することにより行なうことができる。
ここで、罫書き溝107は、[−12−10]の方向に沿って形成することが好ましい。この場合には、窒化物半導体レーザ素子層102に良好な劈開面を形成することができる傾向が大きくなる。
また、罫書き溝107の深さは、3μm以上5μm以下であることが好ましい。この場合にも、窒化物半導体レーザ素子層102に良好な劈開面を形成することができる傾向が大きくなる。
次に、罫書き溝107に沿ってGaN基板101を分割することによって窒化物半導体レーザ素子層102を劈開する工程を行なう。ここで、窒化物半導体レーザ素子層102を劈開する工程は、たとえば、ブレーキング装置を用いて、GaN基板101の第1の主面101a側から罫書き溝107と対向する位置に沿って刃を押し当ててGaN基板101の第1の主面101a側から罫書き溝107に圧力を加えることなどによって行なうことができる。
GaN基板101の第1の主面101a側から罫書き溝107に圧力を加えることによって、GaN基板101の第2の主面101b側からGaN基板101に亀裂が入り、その後、GaN基板101から窒化物半導体厚膜110を介して窒化物半導体レーザ素子層102へと劈開が進行する。このとき、GaN基板101から窒化物半導体厚膜110に劈開が進行する過程で、劈開面が窒化物半導体厚膜110内において、所定の範囲内({20−21}面に対して90°±0.05°の範囲内。以下「±0.05°の範囲内」という。)に収められ、その状態が窒化物半導体レーザ素子層102にも伝播することによって良好な劈開面が形成され得ると考えられる。
このように、窒化物半導体厚膜110内において±0.05°の範囲内に収められた劈開面を窒化物半導体レーザ素子層102に連続的に伝播させることによって、窒化物半導体レーザ素子層102に良好な劈開面を形成するためには、上述したように、窒化物半導体厚膜110の厚さを窒化物半導体レーザ素子層102の厚さよりも厚くすることが好ましい。これにより、窒化物半導体レーザ素子層102に劈開面である共振器端面を良好に、かつ歩留まり良く形成することができる傾向にある。
また、窒化物半導体厚膜110内において劈開面を±0.05°の範囲内により精度良く収めるためには、窒化物半導体厚膜110が格子緩和していることが好ましい。たとえば、GaN基板101の{20−21}面からなる第1の主面101a上にAlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜110を形成した場合には、比較的容易に格子緩和が生じるが、この現象は、従来のように、GaN基板のc面上にAlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜を形成した場合と大きく異なっている。
ここで、格子緩和とは、たとえばX線回折装置(以下、「XRD装置」と言う。)を用いて、GaN基板101の{20−21}面におけるX線の反射と、GaN基板101上に形成された窒化物半導体厚膜110の{20−21}面におけるX線の反射とを観察したとき、これらのX線の反射が、逆格子空間におけるGaN基板101の[20−21]逆格子ベクトル方向の延長線上に載らない現象のことを意味する。
本発明者の実験結果によれば、厚さ0.94μmのAl0.05Ga0.95Nからなる窒化物半導体厚膜をGaN基板の{20−21}面上に形成したときに、窒化物半導体厚膜の格子緩和が発生した。また、厚さ0.56μmのAl0.057Ga0.943Nからなる窒化物半導体厚膜をGaN基板の{20−21}面上に形成したときにも、窒化物半導体厚膜の格子緩和が発生した。さらに、厚さ1.36μmのAl0.035Ga0.965Nからなる窒化物半導体厚膜をGaN基板の{20−21}面上に形成したときにも格子緩和が発生した。
一般に、GaN基板のc面上に、上記と同様のAlGaNからなる窒化物半導体厚膜を形成した場合には格子緩和は発生しない。ここで、GaN基板のc面上にAlGaNからなる窒化物半導体厚膜を形成した場合の格子緩和とは、たとえばXRD装置を用いて、GaN基板の{10−13}面におけるX線の反射と、GaN基板上に形成されたAlGaNからなる窒化物半導体厚膜の{10−13}面におけるX線の反射とを観察したときに、これらのX線の反射が、逆格子空間におけるGaN基板の[0001]逆格子ベクトル方向の延長線上に載らない現象のことを意味する。
上記の{20−21}面に関する実験で、格子緩和がほとんど発生しなかった(厳密には多少の緩和が始まりかけていた)のは、たとえば、GaN基板の{20−21}面上に、厚さ0.45μmのAl0.035Ga0.965Nからなる窒化物半導体厚膜を形成したときであった。一般に、AlGaNのAl組成比が高くなるにつれて格子緩和が顕著に発生する傾向にある。
上記の結果に示されるように、GaN基板の{20−21}面上に形成されたAlGaNからなる窒化物半導体厚膜のAl組成比が0.035であって、厚さが0.45μmであるときに格子緩和が発生し始めたのであるから、格子緩和を発生させるためのAlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜110の厚さt1は0.45μm以上であることが好ましいと考えられる。
一般に、AlとNH3原料ガスとの間の気相反応性が高いため、高いAl組成比でAlGaN層を気相成長させる場合には、AlGaN層の成長速度が低下する傾向にある。また、さらに高いAl組成比を有するAlGaN層を良好な結晶性を有するように気相成長させるためには、できるだけ高い温度でAlGaN層を気相成長させる必要があり、これもAlGaN層の成長速度を低下させる原因となる。
上記の劈開に関する観点からは、AlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜110の厚さt1の上限については特に限定されない。しかしながら、Al組成比xを高くした場合には窒化物半導体厚膜110の成長速度が低下して成長時間が増大するため、窒化物半導体レーザ素子の生産性の低下をもたらす。よって、窒化物半導体レーザ素子の生産性を向上させる観点から、AlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜110の厚さt1は、2μm以下であることが好ましい。
上述のように、GaN基板の{20−21}面からなる主面上にAlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜110を形成した場合には、GaN基板のc面上に形成する場合と比較して極めて容易に格子緩和が発生する。これは、c面には発生しない{20−21}面に特有のせん断応力が印加されたためではないかと考えられる。
これは、たとえば、上記のような格子緩和が生じた場合、GaN基板の{20−21}面におけるX線の反射と、GaN基板上に形成されたAlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜の{20−21}面におけるX線の反射とを観察したとき、これらのX線の反射が、逆格子空間におけるGaN基板の[20−21]逆格子ベクトルの延長線上に載らない現象も同時に観察されるためである。
なお、上記においては、AlxGa1-xN(0.11≦x≦0.23)からなる窒化物半導体厚膜110が格子緩和する場合について説明したが、窒化物半導体厚膜110がAlxGa1-xN以外のAlx0Gay0Inz0N(0≦x0≦1、0≦y0<1、0≦z0≦1、x0+y0+z0=1)の式で表わされる窒化物半導体からなる場合も上記と同様にして格子緩和の有無を判断することができる。
また、{20−21}面を第1の主面101aとするGaN基板101は、バルク状のGaN結晶とほぼ同等であり、バルク状のGaN結晶の格子定数を有している。バルク状のGaN結晶の格子定数は、c軸方向が0.5185nmであり、a軸方向が0.3189nmである。{20−21}面を主面とするGaN基板101の劈開面である{20−21}面と完全に直交する低指数で表わせる結晶面は存在しないが、限りなく垂直に近い{−1017}面が存在する。ここで、バルク状のGaN結晶の{−1017}面と{20−21}面とが為す角度は89.899°と計算することができる。これと同様にして、バルク状のAlxGa1-xN結晶とバルク状のInxGa1-xN結晶とについても{20−21}面と{−1017}面とが為す角度を見積もることができる。
図7に、バルク状結晶またはフリースタンディングのAlxGa1-xN結晶とInxGa1-xN結晶の各結晶のAlまたはInの組成比xと、各結晶の{−1017}面と{20−21}面とが為す角度(°)との関係を示す。ここで、AlxGa1-xN結晶の各Al組成比xでの格子定数は、バルク状のAlN結晶の格子定数とバルク状のGaN結晶の格子定数とからベーガード則を用いて算出することができる。また、InxGa1-xN結晶の各In組成比xでの格子定数は、バルク状のInN結晶の格子定数とバルク状のGaN結晶の格子定数とからベーガード則を用いて算出することができる。
図7に示す関係を算出するのに用いたバルク状のGaN結晶の格子定数は、c軸方向を0.5185nmとし、a軸方向を0.3189nmとした。また、バルク状のAlN結晶の格子定数は、c軸方向を0.4982nmとし、a軸方向を0.3112nmとした。さらに、バルク状のInN結晶の格子定数は、c軸方向を0.5703nmとし、a軸方向を0.3545nmとした。
図7に示す関係から、AlxGa1-xN結晶については、Alの組成比xが約0.2であるとき、InxGa1-xN結晶については、Inの組成比xが約0.3であるときに、{−1017}面と{20−21}面とが為す角度が90°となることがわかる。
低閾値電流の窒化物半導体レーザ素子を製造するための1つの方法としては、良好な共振器端面を形成することが挙げられる。共振器端面は、窒化物半導体レーザ素子層102の発光層104に形成されるが、発光層104はInxGa1-xN結晶からなる井戸層を含み得る。
ここで、InxGa1-xN結晶からなる井戸層のInの組成比xが0.16以上0.47以下である場合には、図7に示す結果から、{−1017}面と{20−21}面とが為す角度は90°±0.05°の範囲内に収まるため、良好な劈開面を形成することができる可能性がより高くなる。InxGa1-xN結晶からなる井戸層のInの組成比xが0.16以上0.47以下であるときの発光波長は、約465nm〜710nmとなる。
また、InxGa1-xN結晶からなる井戸層のInの組成比xが高くなりすぎると井戸層の結晶性が悪化しやすい傾向にあるため、劈開性と結晶性とを共に良好なものにする場合には、InxGa1-xN結晶からなる井戸層のInの組成比xは0.16以上0.31以下とすることが好ましい。
ここで、InxGa1-xN結晶からなる井戸層のInの組成比xが0.16以上0.31以下である場合には、図7に示す結果から、{−1017}面と{20−21}面とが為す角度は90°±0.05°の範囲内に収まる。また、InxGa1-xN結晶からなる井戸層のInの組成比xが0.16以上0.31以下であるときの発光波長は、青色領域から緑色領域にまで及ぶ。
このことから、劈開の観点から{20−21}面を第1の主面101aとするGaN基板101上の窒化物半導体レーザ素子の発光色は青色領域〜緑色領域であることが好ましく、その発光波長は、たとえば440nm〜540nmであることが好ましい。
上記のようにして作製された本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子は、光ディスプレイ装置やレーザプロジェクタ装置などのRGB(赤緑青)光源装置のような光源装置に利用することができる。
図8に、本実施例において作製された窒化物半導体レーザ素子の積層構造の模式的な断面図を示す。この窒化物半導体レーザ素子は、{20−21}面を主面とするn型GaN基板200と、n型GaN基板200の{20−21}面からなる主面上に、順次積層された、n型AlGaN厚膜201と、n型AlGaNクラッド層202と、n型GaN層203と、n型InGaN光ガイド層204と、発光層205と、p型AlGaNキャリアブロック層206と、p型InGaN光ガイド層207と、p型GaN層208と、p型AlGaNクラッド層209と、p型GaNコンタクト層210とを含んでいる。
ここで、{20−21}面を主面とするn型GaN基板200が図1に示すGaN基板101に相当し、n型AlGaN厚膜201が図1に示す窒化物半導体厚膜110に相当し、n型AlGaNクラッド層202からp型GaNコンタクト層210までの層が窒化物半導体レーザ素子層102に相当する。
本実施例における窒化物半導体レーザ素子は以下のようにして製造した。まず、MOCVD装置内に{20−21}面を主面とするn型GaN基板200を設置し、n型GaN基板200を1050℃まで加熱してその温度に保持した。
次に、MOCVD装置内に、III族元素の原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびTMA(トリメチルアルミニウム)ガスを供給し、V族元素の原料ガスとしてNH3(アンモニア)ガスを供給し、ドーピングガスとしてSiを含むSiH4(シラン)ガスを供給し、キャリアガスとしてH2(水素)ガスを供給した。これにより、n型GaN基板200の{20−21}面からなる主面に接するように、厚さ1.4μmのn型AlGaN厚膜201を形成した。ここで、n型AlGaN厚膜201中のSi不純物濃度は3×1018個/cm3であって、n型AlGaN厚膜201のIII族元素中のAl組成比は0.12であった(すなわち、n型AlGaN厚膜201は、n型Al0.12Ga0.88N結晶から構成されていた。)。
次に、原料ガスおよびドーピングガスの供給量を調節すること等によって、n型AlGaN厚膜201の{20−21}面からなる主面に接するように、厚さ0.1μmのn型AlGaNクラッド層202を形成した。ここで、n型AlGaNクラッド層202中のSi不純物濃度は1×1018個/cm3であって、n型AlGaNクラッド層202のIII族元素中のAl組成比は0.07であった(すなわち、n型AlGaNクラッド層202は、n型Al0.07Ga0.93N結晶から構成されていた。)。
次に、MOCVD装置内へのTMAガスの供給を停止するとともに、n型GaN基板200の成長温度を1000℃に保持し、キャリアガスをH2ガスからN2(窒素)ガスに切り替え、SiH4ガスの供給量も変化させることによって、n型AlGaNクラッド層202上に、厚さ0.2μmでSi不純物濃度が1×1018個/cm3のn型GaN光ガイド層203を形成した。
本発明者らの実験結果によれば、n型GaN基板の{20−21}面からなる主面上にc面成長では一般的なH2ガスをキャリアガスとする雰囲気でGaN結晶を成長させたところ、表面が荒れてしまい、うまく成長することができなかった。そこで、様々な実験を行なった結果、キャリアガスとして使用するH2ガスの体積割合を5%以下(0%も含む。)とし、その代替としてN2ガスを使用したところ、GaN結晶の表面モフォロジーが大幅に改善されることが明らかとなった。
さらに成長温度おいては、c面成長ではできるだけ高い温度で成長させるのが一般的であるが、{20−21}面上にGaN結晶を成長させた場合には、逆に表面が荒れる傾向にあった。本発明者らの実験結果によれば、n型GaN基板の温度が1000℃以下でGaN結晶を成長させた方がGaN結晶の表面モフォロジーが改善されることがわかった。しかしながら、n型GaN基板の温度を低下させ過ぎた場合には、窒化物半導体レーザ素子の抵抗が増大する傾向にあったため、n型GaN基板の温度が900℃以上1000℃以下の条件でn型GaN光ガイド層203を成長させることが好ましいことが確認された。
次に、n型GaN基板200の温度を800℃まで低下させ、MOCVD装置内に、III族元素の原料ガスとしてTMGガスおよびTMI(トリメチルインジウム)ガスを供給し、V族元素の原料ガスとしてNH3ガスを供給し、ドーピングガスとしてSiを含むSiH4ガスを供給し、キャリアガスとしてH2ガスを供給した。これにより、n型GaN光ガイド層203上に厚さ50nmのn型InGaN光ガイド層204を形成した。ここで、n型InGaN光ガイド層204のIII族元素中のIn組成比は0.06であった(すなわち、n型InGaN光ガイド層204は、n型In0.06Ga0.94N結晶から構成されていた。)。
次に、n型InGaN光ガイド層204上に、多重量子井戸構造を有する発光層205を形成した。ここで、発光層205は、n型InGaN光ガイド層204上に、厚さ10nmのアンドープAl0.05Ga0.95N障壁層、厚さ4.5nmのアンドープInGaN井戸層、厚さ10nmのアンドープAl0.05Ga0.95N障壁層、厚さ4.5nmのアンドープInGaN井戸層、厚さ10nmのアンドープAl0.05Ga0.95N障壁層、厚さ4.5nmのアンドープInGaN井戸層および厚さ10nmのアンドープAl0.05Ga0.95N障壁層を順次積層することによって形成された。
次に、n型GaN基板200の温度を1000℃まで上昇させて、Mgが添加された厚さ10nmのp型AlGaNキャリアブロック層206を発光層205上に形成した。
次に、n型GaN基板200の温度を再び800℃まで低下させて、Mgが添加された厚さ50nmのp型InGaN光ガイド層207をp型AlGaNキャリアブロック層206上に形成した(すなわち、p型InGaN光ガイド層207は、p型In0.06Ga0.94N結晶から構成されていた。)。
次に、n型GaN基板200の温度を再び1000℃まで上昇させて、p型InGaN光ガイド層207上に、Mgが添加された厚さ0.2μmのp型GaN層208、Mgが添加された厚さ0.3μmのp型AlGaNクラッド層209、およびMgが添加された厚さ0.1μmのp型GaNコンタクト層210を順次形成した。
ここで、p型AlGaNキャリアブロック層206におけるIII族元素中のAl組成比は0.2であった(すなわち、p型AlGaNキャリアブロック層206は、p型Al0.2Ga0.8N結晶から構成されていた。)。また、p型AlGaNクラッド層209におけるIII族元素中のAl組成比は0.06であった(すなわち、p型AlGaNクラッド層209は、p型Al0.06Ga0.94N結晶から構成されていた。)。なお、Mgを含む原料ガスとしては(EtCp)2Mgが用いられた。
本実施例で作製された窒化物半導体レーザ素子のn型AlGaNクラッド層202からp型GaNコンタクト層210までの積層構造体の厚さ、すなわち、図1に示す窒化物半導体レーザ素子層102に相当する厚さは、約1.06μmであった。この積層構造体の厚さは、n型AlGaN厚膜201(図1に示す窒化物半導体厚膜110に相当)の厚さである1.5μmよりも小さくなるように設計された。
その後、p型GaNコンタクト層210の形成後までのウエハをMOCVD装置から取り出した後、リッジストライプ部(図示せず)を形成し、その後、誘電体保護膜(図示せず)を形成し、さらにp側電極(図示せず)を形成した。
p側電極の形成後のn型GaN基板200の{20−21}面からなる主面(n型AlGaN厚膜201の形成側の主面)とは反対側の裏面から研削を行なうことによってn型GaN基板200を薄くして、n型GaN基板200の厚さを100μm〜150μmとした。
n型GaN基板200を研削した後、n型GaN基板200の研削した裏面についてCMP処理を行なうことによって、n型GaN基板200の厚さを120〜80μmとし、n型GaN基板200の裏面の30μm×30μmの範囲内におけるRms値が2nm以下になるように鏡面処理を行なった。その後、n型GaN基板200の裏面にn側電極を形成した。
図9に、n側電極を形成した後のn型GaN基板200の裏面の模式的な平面図を示す。図9に示すように、n型GaN基板200の裏面に、長方形状の表面を有する島状のn側電極400が互いに所定の間隔を空けて蒸着されており、n側電極400の長手方向が[−1014]方向と平行になるようにn側電極400が配置された。
そして、n型GaN基板200の裏面におけるn側電極400の間の領域401が罫書き溝402を形成するための領域として設けられており、罫書き溝402は、[−1014]方向と垂直な方向である[−12−10]方向と平行に領域401に設けられた。ここで、罫書き溝402の深さは3μm〜5μmであった。
次に、上記の罫書き溝402の形成後のウエハのリッジストライプ部の形成側を十分に保護した後、ウエハをブレーキング装置に設置した。このとき、罫書き溝402が形成されたn型GaN基板200の裏面がブレーキング装置のステージ側に向くようにウエハを設置した。
次に、上記のようにしてブレーキング装置に設置されたウエハのn型GaN基板200の主面側(n型GaN基板200の裏面とは反対側)にブレーキング装置の刃を当てた。このとき、ブレーキング装置の刃は、罫書き溝402の位置と対向する位置に沿って押し当てられた。
次に、n型GaN基板200の主面側からウエハに圧力を加えることによって罫書き溝402に沿って劈開を行ない、発光層205に当該劈開による劈開面からなる共振器端面を形成した。以上により、図8に示す積層構造を有する窒化物半導体レーザ素子を作製した。
以上のようにして形成された窒化物半導体レーザ素子のn型AlGaN厚膜201は、n型AlGaN厚膜201の主面である{20−21}面と89.95°以上90.05°以下の角度を為す範囲内に{−1017}面を有していることが確認された。これは、XRD装置を用いてn型GaN基板200とn型AlGaN厚膜201とのそれぞれの回折反射の角度のずれを測定することによって確認された。
また、上記のようにして形成された本実施例における窒化物半導体レーザ素子の発光波長は503nmであって、閾値電流値は320mAであった。一方、比較として、n型AlGaN厚膜201を形成しなかったこと以外は上記と同様にして作製した窒化物半導体レーザ素子の閾値電流値は350mAであった。
以上の結果により、本実施例においては、低閾値電流の窒化物半導体レーザ素子を容易に作製できることが確認された。このような本実施例において作製された窒化物半導体レーザ素子は、光ディスプレイ装置やレーザプロジェクタ装置などのRGB(赤緑青)光源装置として利用することができると考えられる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明に係る窒化物半導体レーザ素子は、RGB(赤緑青)光源を含む光ディスプレイ装置およびRGB光源を含むレーザプロジェクタなどの光源装置などに好適に利用することができる。
101 GaN基板、101a 第1の主面、101b 第2の主面、102 窒化物半導体レーザ素子層、103 n型窒化物半導体層、104 発光層、105 p型窒化物半導体層、107 罫書き溝、110 窒化物半導体厚膜、110a 主面、200 n型GaN基板、201 n型AlGaN厚膜、202 n型AlGaNクラッド層、203 n型GaN層、204 n型InGaN光ガイド層、205 発光層、206 p型AlGaNキャリアブロック層、207 p型InGaN光ガイド層、208 p型GaN層、209 p型AlGaNクラッド層、210 p型GaNコンタクト層、400 n側電極、401 領域、402 罫書き溝。

Claims (12)

  1. {20−21}面を第1の主面とする窒化ガリウム基板と、
    前記窒化ガリウム基板の前記第1の主面に接して設けられた窒化物半導体厚膜と、
    前記窒化物半導体厚膜上に設けられた窒化物半導体レーザ素子層とを備え、
    前記窒化物半導体レーザ素子層は、n型窒化物半導体層と、窒化物半導体からなる発光層と、p型窒化物半導体層とを含み、
    前記窒化物半導体厚膜は、前記窒化物半導体厚膜の主面である{20−21}面と89.95°以上90.05°以下の角度を為す範囲内に{−1017}面を有する、窒化物半導体レーザ素子。
  2. 前記窒化物半導体厚膜の厚さが、前記窒化物半導体レーザ素子層の厚さよりも厚い、請求項1に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  3. 前記窒化物半導体厚膜は、AlxGa1-xNの式で表わされる窒化物半導体からなり、前記式における前記xは0.11以上0.23以下である、請求項1または2に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  4. 前記窒化物半導体厚膜が、格子緩和している、請求項3に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. 前記窒化物半導体厚膜の厚さが、0.45μm以上2μm以下である、請求項4に記載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. 前記窒化ガリウム基板の厚さが、80μm以上120μm以下である、請求項1から5のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  7. 前記窒化ガリウム基板の前記第1の主面とは反対側の第2の主面の30μm×30μmの範囲内におけるRMS値が2nm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子を含む光源装置。
  9. {20−21}面を第1の主面とする窒化ガリウム基板を準備する工程と、
    前記窒化ガリウム基板の前記第1の主面上に前記第1の主面に接する窒化物半導体厚膜を形成する工程と、
    前記窒化物半導体厚膜上に窒化物半導体レーザ素子層を形成する工程と、
    前記窒化ガリウム基板の前記第1の主面とは反対側から前記窒化ガリウム基板を薄くする工程と、
    前記窒化ガリウム基板の前記第1の主面とは反対側の第2の主面に罫書き溝を形成する工程と、
    前記罫書き溝に沿って前記窒化ガリウム基板を分割することによって前記窒化物半導体レーザ素子層を劈開する工程とを含む、窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  10. 前記窒化ガリウム基板を薄くする工程と前記罫書き溝を形成する工程との間に、前記窒化ガリウム基板の前記第2の主面をCMP法によって処理する工程を含み、前記窒化ガリウム基板の前記第2の主面の30μm×30μmの範囲内におけるRMS値が2nm以下とされる、請求項9に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  11. 前記罫書き溝を形成する工程において、前記罫書き溝は[−12−10]の方向に沿って形成される、請求項9または10に記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  12. 前記窒化物半導体レーザ素子層を劈開する工程は、前記窒化ガリウム基板の前記第1の主面側から前記罫書き溝に圧力をかけることによって行なわれる、請求項9から11のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
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