JP2012224922A - 銅合金および銅合金の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い強度および導電率を有すると共に、金型摩耗を軽減することができる銅合金および銅合金の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の銅合金は、Coを0.5質量%以上3.0質量%以下、Siを0.1質量%以上1.0質量%以下、残部としてCuおよび不可避不純物を含み、CoとSiとの質量比(Co/Si)が3.0以上5.0以下であり、銅合金の表面部に含まれる析出物の平均粒子径を銅合金の中央部に含まれる析出物の平均粒子径よりも大きくすることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気・電子機器などの電子部品用材料として用いるのに好適な銅合金および銅合金の製造方法に関する。
電気・電子機器などのコネクタ、スイッチ、リレー、ピン、端子、リードフレーム等の各種電子部品の通電部品に使用される電子材料として、銅合金が広く用いられている。近年、各種の電気・電子機器において小型、軽量化及びこれに伴う電子部品の高集積化及び小型化・薄肉化が急速に進み、電気・電子機器の高性能化が進行している。
この電気・電子機器の高性能化に伴い、電子部品に設置される電極数の増加や通電電流も増加し、高電流化の傾向にある。そのため、電子部品の通電部品に使用される銅合金は高電流化に対応する必要があるが、高電流化に対応しようとした場合、通電部品が大型化してしまうことになる。電子部品を大型化させずに高電流化に対応するためには、高い導電率(例えば、55%IACS(international annealed copper standard)以上)を有することが必要である。
また、電気・電子機器内の電気接続の信頼性を保つ必要から、高いばね性を持った銅系材料であることが必要であり、高いばね性を確保するためには、耐力も所定値(例えば600MPa)以上必要である。
更に、コネクタ等の通電部品はプレス成形して作製されるが、通電部品の生産性を向上させると共に、製造コストを下げるため、金型の摩耗が少ないことが求められている。
したがって、電気・電子機器の複雑化・高集積化に伴い、電子部品の通電部品に使用される銅合金についても種々の特性について高い水準が求められてきている。
銅合金としては、従来のリン青銅、丹銅、黄銅等に代表される固溶強化型銅合金から、強度、電気伝導性および熱伝導性に優れる析出硬化型の銅合金の使用量が増加している。析出硬化型銅合金では、溶体化処理された過飽和固溶体を時効処理することにより、微細な析出物が均一に分散して、合金の強度が高くなると同時に、銅中の固溶元素量が減少し電気伝導性が向上する。このため、強度、ばね性などの機械的性質に優れ、しかも電気伝導性、熱伝導性が良好な材料が得られる。
析出硬化型銅合金としては、Cu−Ni−Si系銅合金、Cu−Co−Si系銅合金、Cu−Ni−P系銅合金などがある。これらの銅合金は、合金成分であるNi、Si、Coなどが単独又は化合物の形で母相となるCu相中に析出する。析出硬化型銅合金のうち、コルソン系銅合金と一般に呼ばれるCu−Ni−Si系合金は比較的高い導電性、強度、及び曲げ加工性を兼備する代表的な銅合金である。この銅合金では、銅相中に微細なNi−Si系金属間化合物粒子を析出させることによって強度と導電率の向上が図れる。
しかし、60%IACS以上の高い導電率はCu−Ni−Si系銅合金で達成することは困難であった。このようなコルソン系銅合金に対し、Coを添加することによって特性の更なる向上を図ろうとする試みがなされており、Cu−Co−Si系銅合金やCu−Ni−Co−Si系銅合金の開発が進められている。CoはNiと同様にSiと反応して化合物を形成し、組成がCo2Siで表されるコバルトシリサイドを生じ、機械的強度を向上させる。また、Cu−Co−Si系銅合金は、コバルトシリサイドの固溶量がCu−Ni−Si系銅合金のニッケルシリサイドの固溶量よりも少ないため、Cu−Co−Si系合金は時効処理させた場合、Cu−Ni−Si系合金より導電性を高くすることができる。
このCu−Co−Si系合金は、プレス打抜き面のダレやバリが大きく、金型の摩耗量が増加するため、打抜き面のダレやバリを小さくすることが望まれていた。他の合金系では熱間圧延後の冷却速度を制御して、粒子径が20nm以上150nm以下のような析出粒子を分散させた銅合金が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この銅合金によれば、析出物がプレス打抜き時にクラックの発生源として機能し、ダレやバリの増大を防止するため、プレス金型の摩耗の軽減を図れる。
特開2007−100111号公報
しかしながら、Cu−Co−Si系銅合金の場合、析出が速く、熱間圧延後の冷却中に析出物が150nm以上に成長してしまい、金型磨耗の軽減が図れなくなるという問題がある。
また、Cu−Co−Si系銅合金の場合、溶体化温度を高くしないと十分な強度が得られないため、高温で溶体化処理を行う必要がある。このため、溶体化処理前に粒子径が20nm以上150nm以下の析出物を存在させても、溶体化処理時に大部分が固溶してなくなってしまうため、金型摩耗の軽減が図れなくなる、という問題がある。
更に、溶体化処理後に粒子径が20nm以上150nm以下の析出物が得られる熱処理を加えた場合、粒子径が20nm以上150nm以下の析出物のみ存在するため、十分な強度が得られなくなる。
また、溶体化処理前に、粒子径が200nm程度の析出物を得られる熱処理を加えた後に、溶体化処理で粒子径を20nm以上150nm以下に調整する方法も考えられるが、熱処理を高温で行う必要があるため、結晶粒径が大きくなりすぎて十分な強度が得られず、曲げ加工性も低下する、という問題が生じる。
そのため、電子部品の通電材料として、高い機械的強度および良好な導電性を有すると共に、金型摩耗の軽減を同時に満足する銅合金が切望されている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高い強度および導電率を有すると共に、金型摩耗を軽減することができる銅合金および銅合金の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明者らは銅合金および銅合金の製造方法について鋭意研究をした。その結果、プレス打ち抜き性に影響する表層にはプレス打ち抜き性の向上に寄与する粒子径の析出物を存在させ、強度に影響する中央部には強度の向上に寄与する粒子径の析出物を存在させることで、得られるCu−Co−Si系銅合金の強度および導電率を維持しつつ、金型摩耗を軽減することができることを見出した。そしてその評価を行う指標として、銅合金に含まれる析出物の平均粒子径に着目し、Cu−Co−Si系銅合金の表面部の所定範囲の粒子径の析出物の平均粒子径とその内部の所定範囲の析出物の平均粒子径を比較し、そのときの強度、導電率、金型摩耗への影響との関係について解明した。この得られた知見に基づいて、Cu−Co−Si系銅合金の表面部に含まれる所定範囲の粒子径の析出物の平均粒子径がCu−Co−Si系銅合金の内部に含まれる所定範囲の粒子径の析出物の平均粒子径よりも大きくなることで、得られるCu−Co−Si系銅合金の強度および導電率を維持しつつ、金型摩耗を軽減することができることを見出した。本発明は、係る知見に基づいて完成されたものである。
本発明の銅合金は、Coを0.5質量%以上3.0質量%以下、Siを0.1質量%以上1.0質量%以下、残部としてCuおよび不可避不純物を含み、CoとSiとの質量比(Co/Si)が3.0以上5.0以下であり、銅合金の表面部に含まれる析出物の平均粒子径を銅合金の厚さ方向の中央部に含まれる析出物の平均粒子径よりも大きくすることを特徴とする。
本発明の好ましい態様として、銅合金の表面部に含まれる5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径Dsと中央部に含まれる5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径Diとの比(Ds/Di)は、下記式を満たすことが好ましい。
1.2≦Ds/Di≦2.0 ・・・(1)
本発明の好ましい態様として、Ni、Cr、Mg、Mn、Ag、P、Sn、Zn、As、Sb、Be、B、Ti、Zr、Al及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を、副成分として含むことが好ましい。
本発明の伸銅品は、上記の何れか1つの銅合金を加工して得られることを特徴とする。
本発明の電子部品は、上記の何れか1つの銅合金を含むことを特徴とする。
本発明の銅合金の製造方法は、Coを0.5質量%以上3.0質量%以下、Siを0.1質量%以上1.0質量%以下、残部としてCuおよび不可避不純物を含み、CoとSiとの質量比(Co/Si)が3.0以上5.0以下である組成を有する銅合金素材を溶解鋳造する溶解鋳造工程と、前記銅合金素材を950℃以上1050℃以下の温度で1時間以上5時間以下加熱した後、前記銅合金素材の仕上げ厚さを20mm以上100mm以下に熱間圧延を行う熱間圧延工程と、熱間圧延した銅合金素材を空冷する空冷工程と、空冷した銅合金素材を冷間圧延する第1の冷間圧延工程と、800℃以上1050℃以下で30秒以上8分以下熱処理する溶体化処理工程と、前記銅合金素材を350℃以上650℃以下で1時間以上48時間以下、時効処理を行う時効処理工程と、前記銅合金素材を圧下率10%以上で冷間圧延する第2の冷間圧延工程と、を含み、得られる銅合金の表面部に含まれる析出物の平均粒子径を銅合金の厚さ方向の中央部に含まれる析出物の平均粒子径よりも大きくすることを特徴とする。
本発明の好ましい態様として、前記時効処理工程における時効処理を、予め求めた所定の時効温度における時効時間と強度との関係を示す時効曲線のピークとなる温度又は時効時間の何れか一方又は両方の温度又は時効時間以上で行うことが好ましい。
本発明の好ましい態様として、銅合金の表面部に含まれる5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径Dsと中央部に含まれる5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径Diとの比(Ds/Di)は、下記式を満たすことが好ましい。
1.2≦Ds/Di≦2.0 ・・・(1)
本発明によれば、高い強度および導電率を有すると共に、金型摩耗を軽減することができる、という効果を奏する。
図1は、本実施形態に係る銅合金の断面の一部を模式的に示す部分断面図である。 図2は、本実施形態に係る銅合金の製造方法を示すフローチャートである。 図3は、時効時間又は温度と析出物の平均粒子径との関係を示す図である。 図4は、試験片のプレス打抜き部分の断面を模式的に示す部分断面図である。
以下、本発明を好適に実施するための形態(以下、実施形態という。)につき、詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施形態および実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態および実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態および実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
<銅合金>
本実施形態に係る銅合金は、Coを0.5質量%以上3.0質量%以下、Siを0.1質量%以上1.0質量%以下、残部としてCuおよび不可避不純物を含み、CoとSiとの質量比(Co/Si)が3.0以上5.0以下であり、銅合金の表面部に含まれる析出物の平均粒子径を銅合金の厚さ方向の中央部に含まれる析出物の平均粒子径よりも大きくするものである。
(Co及びSiの添加量)
Co及びSiは、適切な熱処理を施すことにより金属間化合物を形成し、導電率を低下させずに高強度化が図れる。Coの添加量は0.5質量%以上3.0質量%以下であり、Siの添加量は0.1質量%以上1.0質量%以下である。Coの添加量が0.5質量%未満であるか、Siの添加量が0.1質量%未満の場合には、析出物の総量が不足し、所望の強度を得ることができない。また、Coの添加量が3.0質量%より多いか、Siの添加量が1.0質量%より多い場合には、本実施形態に係る銅合金を作製する際に、溶体化処理を十分に行うことができなくなり、粗大な析出物が残存するため、添加量に見合う十分な強度を得ることができなくなる上、熱間加工性が劣化する。よって、Co及びSiの添加量を各々上記範囲内とすることで、本実施形態に係る銅合金の高強度化を図り、導電率の低下を抑制しつつ、熱間加工性の劣化を抑制する。
Cu−Co−Si系合金は、高強度が望まれるため、Coは高濃度で含まれることが好ましいことから、Coの添加量は1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましい。すなわち、Co及びSiの添加量は、好ましくは、Coが1.0質量%以上3.0質量%以下、Siが0.2質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは、Coが1.5質量%以上3.0質量%以下、Siが0.3質量%以上1.0質量%以下である。
合金中のCo及びSiの質量%比(Co/Si)は、金属間化合物であるコバルトシリサイドの濃度に近づけることにより良好な特性が得られる。コバルトシリサイドの組成は、Co2Siで表される。Co/Siは、3.0以上5.0以下であり、好ましくは3.7以上4.7以下であり、更に好ましくは4.2程度である。Co/Siが3.0未満の場合には、コバルトシリサイドとして析出しないSi濃度が高いため、導電率が低下する。一方、Co/Siが5より大きい場合には、コバルトシリサイドとして析出しないCo濃度が高いため導電率が低下するため、電子材料用として好ましくない。そのため、Co/Siを、3.0以上5.0以下とすることで、強度向上と導電率の維持とを図ることができる。
副成分として、Ni、Cr、Mg、Mn、Ag、P、Sn、Zn、As、Sb、Be、B、Ti、Zr、Al及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を所定量含んでもよい。上記元素よりなる群に含まれる元素は、析出強化効果や固溶強化効果を補強し、強度、導電率、曲げ加工性、さらにはめっき性や鋳塊組織の微細化による熱間加工性等の特性を改善する効果がある。上記元素の総量は、0.001質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以上1.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上1.0質量%以下である。添加元素の総量を2.0質量%以下とすることで、導電率の低下や製造性の劣化を抑制することができる。また、添加元素の総量を0.001質量%以上とすることで、強度、導電率、曲げ加工性、熱間加工性等所望の効果を得ることができる。また、上記元素の各々の成分の含有量は0.001質量%以上0.5質量%以下とするのが好ましい。上記元素の添加量が0.001質量%以下では、添加効果が得られない。また、上記元素の添加量が0.5質量%を超えると、上記のような効果が得られないほか、導電率が低下する。そのため、上記元素の各々の成分の含有量を上記範囲内とすることで、添加効果を得ると共に、導電率の低下を抑制する。
(析出物)
Cu相中に含まれる析出物は、Co及びSiの金属間化合物で構成される第二相粒子のほか、Co及びSi以外の他の添加元素や不可避的不純物が含まれる第二相粒子を含む。
析出物のうち、粒子径が20nm以上100nm以下の析出物は、銅合金のプレス打抜き性の向上をもたらし、金型の金型摩耗を抑制できる。しかし、粒子径が20nm以上100nm以下の析出物は、Cu相との整合性が低下するため、強度向上への寄与が少ない。さらに、粒子径が100nmを超えるような析出物は、曲げ加工時のクラックの起点となりやすく、曲げ加工性を低下させることがある。
一方、粒子径が20nm未満の析出物は、強度の向上に寄与する。そのため、所望の強度を得るためには、粒子径が20nm未満の析出物を含むことが必要であり、粒子径が10nm未満の析出物を含むことが好ましい。しかし、粒子径が20nm未満の析出物は、銅合金のプレス打抜き性を向上させる機能が十分発揮されない。
粒子径が20nm以上100nm以下の析出物の含有量としては、0.1個/μm2以上であることが必要である。好ましくは、0.15個/μm2以上であり、更に好ましくは、0.2個/μm2以上である。粒子径が20nm以上100nm以下の析出物の含有量が、上記範囲内より少ないと、プレス打抜きの際、表面においてクラック発生の起点が少なくなり、かつクラック伝播作用も十分に発揮されないため、結果的にプレス打抜き性の向上は不十分となる。また、粒子径が20nm以上100nm以下の析出物の含有量の上限を特に設けないが、添加元素の濃度から50個/μm2以下となる。
粒子径が20nm未満の析出物の含有量に関しては、粒子径が5nm未満の析出物を観察することが難しいため、粒子径が5nm以上20nm未満の析出物の含有量を評価する。なお、粒子径が5nm未満の析出物の含有量と粒子径が5nm以上20nm未満の析出物の含有量の間には相関関係があるため、粒子径が5nm以上20nm未満の析出物の含有量で評価することで粒子径が20nm未満の析出物の含有量を評価できる。粒子径が5nm以上20nm未満の析出物の含有量としては、50個/μm2以上であることが必要である。好ましくは、100個/μm2以上であり、更に好ましくは、200個/μm2以上である。粒子径が5nm以上20nm未満の析出物の含有量が、上記範囲内より少ないと、強度が不足する。また、粒子径が20nm以上100nm以下の析出物の含有量の上限を特に設けないが、添加元素の濃度から、1000個/μm2以下となる。
このため、強度とプレス打ち抜き性を両立させるためには、粒子径が20nm以上100nm以下の析出物と、粒子径が20nm以下の析出物を共存させる必要がある。しかし、前述したように共存させることは難しいことから、プレス打ち抜き性に影響する表面部には粒子径が20nm以上100nm以下の析出物を存在させ、強度に影響する中央部には粒子径が20nm以下の析出物を存在させることが好ましい。
また、本実施形態においては、析出物の粒子径は、析出物を取り囲む最小円の直径をいう。
(粒子径が5nm以上100nm以下の析出物の分布)
図1は、本実施形態に係る銅合金の断面の一部を模式的に示す部分断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る銅合金10は、粒子径が5nm以上100nm以下の析出物を含んでいる。本実施形態では、銅合金10の表面部に含まれる粒子径が5nm以上100nm以下の析出物(第1の析出物)11の平均粒子径は、銅合金10の中央部に含まれる粒子径が5nm以上100nm以下の析出物(第2の析出物)12の平均粒子径より大きい。
本実施形態においては、平均粒子径とは、析出物の粒子径の平均値をいう。
本実施形態においては、銅合金の表面部とは、銅合金の表面に垂直な平面で銅合金を切ったときの断面において、銅合金の表面から板厚の15%以下までの深さをいう。銅合金の中央部とは、銅合金の板厚方向の中心部から板厚の±30%の部分をいう。
粒子径が5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径が大きいほど、粒子径が大きい析出物が多く含まれている傾向にあるため、粒子径が20nm以上100nm以下の析出物が多くなり、強度向上への寄与は少なくなるが、プレス打ち抜き性が向上する。
一方、粒子径が5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径が小さいほど、粒子径が小さい析出物が多く含まれている傾向にあるため、粒子径が20nm未満の析出物が多くなり、プレス打抜き性の向上は不十分となるが、強度向上に寄与することができる。
銅合金10の表面部では、第1の析出物11による影響を大きく受けることになるため、プレス打抜き性が改善され、金型摩耗を抑制する効果が得られる。また、銅合金10の中央部では、第2の析出物12による影響を大きく受けることになるため、強度を向上させる効果が得られる。
したがって、銅合金10は、第1の析出物11の平均粒子径を第2の析出物12の平均粒子径より大きくすることで、高い強度を維持すると共に、プレス打抜き性が改善され、金型摩耗を軽減することができるなど、通電部品用の材料に必要な特性を有することができる。
銅合金10の第1の析出物11の平均粒子径と第2の析出物12の平均粒子径との比(Ds/Di)は、下記式(1)を満たすことが好ましい。Ds/Diは、下記式(2)を満たすことがより好ましい。
1.2≦Ds/Di≦2.0 ・・・(1)
1.4≦Ds/Di≦1.5 ・・・(2)
上記式(1)を満たすことにより、表面部に含まれる粒子径が20nm以上100nm以下の析出物の含有量を、0.1個/μm2以上に、中央部に含まれる粒子径が5nm以上20nm未満の析出物の含有量としては、50個/μm2以上にすることができる。このため、高い強度を有すると共に、金型摩耗の軽減を図ることができる。
本実施形態に係る銅合金のように、銅合金の表面部に含まれる粒子径が5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径を、その中央部に含まれる粒子径が5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径よりも大きくすることは、後述する本実施形態に係る銅合金の製造条件を採用したことにより、制御することが可能である。
<銅合金の製造方法>
上述したような構成を有する本実施形態に係る銅合金の製造方法について図面を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る銅合金の製造方法を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係る銅合金の製造方法は、溶解鋳造工程(ステップS11)と、熱間圧延工程(ステップS12)と、空冷工程(ステップS13)と、第1の冷間圧延工程(ステップS14)と、溶体化処理工程(ステップS15)と、時効処理工程(ステップS16)と、第2の冷間圧延工程(ステップS17)と、歪取り焼鈍工程(ステップS18)とを含む。
[溶解鋳造工程:ステップS11]
まず、高周波誘導溶解炉を用いて電気銅又は無酸素銅、Co、Siを溶解し、所定量のCoおよびSiと、残部としてCu及び不可避的不純物を含み、CoとSiとの質量比(Co/Si)を3.0以上5.0以下とする所望の組成を有する溶湯を得、インゴット(鋳塊)に鋳造する(ステップS11)。
[熱間圧延工程:ステップS12]
得られたインゴットを950℃以上1050℃以下で1時間以上5時間以下加熱した後、熱間圧延を行い、板状の銅合金素材を得る(ステップS12)。鋳造時の凝固過程では粗大な晶出物が、その冷却過程では粗大な析出物が不可避的に生成するため、その後の工程においてこれらの晶出物を母相中に固溶する必要がある。そこで、950℃以上1050℃以下で1時間以上、炉中で加熱して保持する。これにより、インゴットの均質化と鋳造時に生じた析出物の再固溶を行う。その後、炉から抽出して熱間圧延を行う。熱間圧延終了時の温度を850℃以上とすることで、Co、Siを母相中に固溶することができる。
熱間圧延前の保持温度が950℃未満では、Co、Si等の添加元素の固溶が不十分であり、熱間圧延前の保持温度が1050℃を超えると、材料が溶解する可能性がある。そのため、熱間圧延前の保持温度を950℃以上1050℃以下とすることで、Co、Si等の添加元素の固溶を十分行うと共に、材料が溶解することを抑制することができる。
このとき、熱間圧延して得られる銅合金素材の仕上げ厚さは、20mm以上100mm以下とし、好ましくは20mm以上60mm以下とし、より好ましくは20mm以上40mm以下とする。銅合金素材は、上述の通り板状体である。通常、熱間圧延して得られる銅合金素材の仕上げ厚さは5mm以上10mm以下としているのに対し、本実施形態では、熱間圧延して得られる銅合金素材の仕上げ厚さは、20mm以上と厚くしている。
[空冷工程:ステップS13]
インゴットを熱間圧延した(ステップS12)後、熱間圧延して得られた銅合金素材を空冷する(ステップS13)。空冷は、熱間圧延後の銅合金素材をそのまま大気中に放置することにより行われる。また、大気中の温度を調整することで、熱間圧延後の銅合金素材の冷却速度を調整することができる。850℃から400℃までの冷却速度は、熱間圧延して得られた銅合金素材の厚さにもよるが、20℃/min以上75℃/min以下が好ましい。ここで、850℃から400℃までの冷却速度は、(850℃−400℃)/(850℃から400℃まで温度低下するのに所用した時間)で求められる。
従来、熱間圧延して得られた銅合金素材の厚さを5mmから10mm程度として水冷していた。熱間圧延後の冷却中にCoやSiなど固溶した元素が再び析出し、Coを含有するSi系化合物が析出し、冷却速度が遅いほど、析出量が多くなるが、従来は、板厚が薄く冷却速度が大きいため、析出物が小さく板厚方向に均一に分散していた。
しかし、本実施形態では、熱間圧延して得られた銅合金素材の仕上げ厚さを20mm以上とし、熱間圧延して得られた銅合金素材の冷却方法を空冷とすることにより、熱間圧延して得られた銅合金素材の板厚の中央部と表面部とでは冷却速度が異なり、銅合金素材の板厚の中央部の冷却速度は銅合金素材の表面部の冷却速度に比べて遅くなる。このため、銅合金素材の板厚の中央部での析出物の析出量は銅合金素材の表面部での析出物の析出量より多くすることができる。
これにより、後述のように、熱間圧延して得られた銅合金素材を冷間圧延、溶体化処理、時効処理、冷間圧延などする際、銅合金素材の表面部での析出物の量は少ない。このため、溶体化処理においてCoやSiなどの添加元素の固溶量は銅合金素材の表面部の方が銅合金素材の中央部より多くなる。
そして、所定の時効温度における時効時間と強度との関係を示す時効曲線のピークとなる時点の温度又は時効時間との関係を予め求めておき、時効曲線のピークとなる時点の温度又は時効時間以上で時効処理を行う。図3は、時効時間又は温度と析出物の平均粒子径との関係を示す図である。予め求めた所定の時効温度における時効時間と強度との関係を示す時効曲線のピークとなる時点の温度又は時効時間の何れか一方又は両方以上で時効処理を行うと、図3に示すように、固溶量が多いほど析出物の粒子径は大きくなる。
よって、時効曲線のピークとなる時点の温度又は時効時間の何れか一方又は両方以上で時効処理を行うことで、得られる銅合金の表面部のみに含まれる析出物が大きくなるため、得られる銅合金の強度を維持しつつプレス打ち抜き性は良好となり、金型の金型摩耗を低下させることができる。
[第1の冷間圧延工程:ステップS14]
空冷した(ステップS13)後、空冷した銅合金素材を第1の冷間圧延をする(ステップS14)。第1の冷間圧延の圧下率は、70%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。
また、熱間圧延(ステップS12)し、空冷(ステップS13)及び第1の冷間圧延(ステップS14)をした後には、時効処理を予備的に行ってよい(このときの時効処理を、第1次時効処理という)。この場合の時効処理は溶体化処理の際のピンニング効果を目的とするために行うものであり、時効温度、時効時間について特に限定されるものではないが、適度な時効温度、時効時間で行うことが好ましい。第1次時効処理する際の時効条件としては、例えば350℃以上800℃以下で1分以上24時間以下で行う。
[溶体化処理工程:ステップS15]
第1の冷間圧延を行った(ステップS14)後、溶体化処理を行う(ステップS15)。溶体化処理(ステップS15)では、高温で加熱して、析出物をCu母相中に固溶させる。溶体化温度は800℃以上1050℃以下とし、好ましくは850℃以上1000℃以下である。このとき、溶体化処理(ステップS15)により、結晶粒が先に成長し、その後に析出物が固溶するため、結晶粒の成長を制御することが可能となる。ただし、析出物が固溶した後は結晶粒の成長を抑制する効果がなくなるため、長時間、溶体化処理を行うと、結晶粒が大きくなってしまう。そこで、溶体化処理の時間は、800℃以上1050℃以下では60秒以上300秒以下、好ましくは120秒以上180秒以下であり、850℃以上1000℃以下では30秒以上180秒以下、好ましくは60秒以上120秒以下である。
溶体化処理(ステップS15)を行った後、時効処理(ステップS16)および第2の冷間圧延(ステップS17)をそれぞれ少なくとも1回ずつ行う。
[時効処理工程:ステップS16]
溶体化処理(ステップS15)を行った後、時効処理(ステップS16)を行う。時効処理では、350℃以上650℃以下の温度範囲で1時間以上24時間以下加熱して時効処理を行い、溶体化処理で固溶させた析出物をナノメートルオーダーの微細粒子として析出させる。これにより、時効処理(ステップS16)を行うことにより得られる本実施形態に係る銅合金の強度および導電率が上昇する。
時効処理の条件は、実施する回数や冷間圧延の条件によっても変わるが、所定の時効温度における時効時間と強度との関係を示す時効曲線のピークとなる時点の温度又は時効時間との関係を予め求めておき、時効曲線のピークとなる時点の温度又は時効時間以上で、析出物が粗大化しすぎないように時効温度及び時効時間を設定する。時効処理の条件としては、例えば、350℃以上650℃以下で1時間以上24時間以下が好ましく、より好ましくは450℃以上625℃以下の温度範囲で1時間以上24時間以下であり、更に好ましくは500℃以上600℃以下の温度範囲で1時間以上24時間以下である。なお、時効処理(ステップS16)後の冷却速度は析出物の大小にほとんど影響を与えない。
[第2の冷間圧延工程:ステップS17]
時効処理(ステップS16)を実施した後、第2の冷間圧延(ステップS17)を行う。第2の冷間圧延(ステップS17)は、時効処理(ステップS16)の前後の何れか一方又は両方で行うことができる。時効処理の前後の何れかで第2の冷間圧延(ステップS17)を行うことで、より高い強度の銅合金を得ることができる。時効処理(ステップS16)する前に第2の冷間圧延(ステップS17)を行う場合は、析出サイトを増やし、析出サイトを利用して時効硬化を促進させて得られる銅合金の強度の上昇を図る。時効処理後に第2の冷間圧延(ステップS17)を行う場合は、析出物を利用して加工硬化を促進させて強度上昇を図る。
第2の冷間圧延(ステップS17)の加工度は、第2の冷間圧延(ステップS17)を時効処理(ステップS16)する前に行う場合は、10%以上70%以下であり、好ましくは15%以上55%以下である。第2の冷間圧延(ステップS17)を時効処理(ステップS16)した後に行う場合は、第2の冷間圧延(ステップS17)の加工度は、10%以上50%以下であり、好ましくは15%以上25%以下である。なお、加工度は以下の式で定義される。
加工度(%)=(圧延前の板厚−圧延後の板厚)/圧延前の板厚×100
溶体化処理(ステップS15)をした後、最終的な目標板厚に応じて、時効処理(ステップS16)及び第2の冷間圧延(ステップS17)は少なくとも1回以上行ってもよい。
本実施形態では、時効処理(ステップS16)の後に第2の冷間圧延(ステップS17)を実施するようにしているが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、時効処理(ステップS16)の前または時効処理(ステップS16)の前後両方で第2の冷間圧延(ステップS17)を行うようにしてもよい。
[歪取り焼鈍工程:ステップS18]
第2の冷間圧延(ステップS17)を行った後、冷間圧延して得られた銅合金素材の歪取り焼鈍(低温焼鈍)を行う(ステップS18)。歪取り焼鈍(ステップS18)は必ずしも行う必要はない。歪取り焼鈍(ステップS18)を行う場合、歪取り焼鈍(ステップS18)の条件は慣用的な条件であればよく、例えば、200℃以上600℃以下で30秒以上3秒以下行う。このとき、適宜温度や時間を調節する。
歪取り焼鈍(ステップS18)をした後、本実施形態に係るCu−Co−Si系銅合金が得られる。
また、上記各工程の合間には、適宜、表面の酸化スケール除去のための研削、研磨、ショットブラスト酸洗、必要に応じて脱脂等を適宜行う。
このようにして得られた銅合金は、熱間圧延して得られた銅合金素材の仕上げ厚さを20mm以上とし、熱間圧延して得られた銅合金素材の冷却方法を空冷とすることにより、銅合金素材の板厚の中央部の冷却速度は銅合金素材の表面部の冷却速度に比べて遅くなる。このため、銅合金素材の板厚の中央部での析出物の量は銅合金素材の表面部での析出物の量より多くすることができる。この銅合金素材を空冷(ステップS13)後の処理(第1の冷間圧延工程(ステップS14)〜第2の冷間圧延工程(ステップS17))を行う際、銅合金素材の表面部での析出物の量は少ないため、溶体化処理(ステップS15)においてCoやSiなどの添加元素の固溶量は銅合金素材の表面部の方が中央部より多くなる。そして、予め求めた所定の時効温度における時効時間と強度との関係を示す時効曲線のピークとなる時点の温度又は時効時間の何れか一方又は両方以上で時効処理を行う。添加元素の固溶量は銅合金素材の表面部の方が銅合金素材の中央部より多いため、得られる銅合金の表面部のみに含まれる析出物の粒子径が大きくなるため、得られる銅合金のプレス打ち抜き性は良好となり、プレスに用いる金型の摩耗を低下させることができる。また、本実施形態に係る銅合金はCu−Co−Si系であるため、高い導電率を有し、高電流化に対応可能なほど十分な導電率を有することができる。さらに、銅合金の中央表面部に粒子径が20nm未満のような粒子径が小さい析出物を含んでいるため、高い強度を有することができる。
本実施形態に係る銅合金は、Cu−Co−Si系銅合金であり、種々の伸銅品、例えば、箔、板、条、管、棒及び線に加工することができ、コネクタ、端子、リードフレーム、ピン、リレー、スイッチ、ソケット、バスパー、二次電池用箔材等の電子部品の通電部品として使用することができる。
本発明の内容を実施例及び比較例を用いて以下に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
[試験片の作製]
高周波誘導溶解炉を用いてアルゴン雰囲気中で電気銅、Co、Siが表1に示す所定濃度となるように所定量添加し、溶銅温度を1300℃に調整した後、溶湯を鋳型(材質:鋳鉄)を使用して厚さ100mmのインゴットに鋳造した。次いで、このインゴットを1000℃に加熱して3時間保持した後、板厚40mmに熱間圧延した。熱間圧延終了後は空気中に放置して冷却した。次いで、表面のスケール除去のため、厚さ38mmまで面削を施した後、冷間圧延により厚さ0.375mmの板状体に成形した。次いで、溶体化温度(ST温度)900℃として60秒、溶体化処理を行った後、不活性雰囲気中で550℃として3時間時効処理を行った。次いで、加工度を20%として冷間圧延を行った後、500℃で180秒歪取り焼鈍し、厚さ0.30mmの平板の試験片を作製した。本実施例において得られた試験片のCo、Siの各成分濃度、熱間圧延終了後の仕上げ厚さ、冷却方法、溶体化処理した際の溶体化温度を表1に示す。
<実施例2〜5、比較例1、5>
試験片に添加元素として含まれるCo、Siの各成分濃度を変更し、熱間圧延終了後の仕上げ厚さ、溶体化処理した際の溶体化温度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。各実施例及び比較例において得られた試験片のCo、Siの各成分濃度、熱間圧延終了後の仕上げ厚さ、冷却方法、溶体化処理した際の溶体化温度を表1に示す。
<実施例6〜8>
試験片に添加元素として含まれるCo、Siの各元素濃度を変更し、副成分としてNi、Cr、Mg、Mn等を添加し、溶体化処理温度を変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。実施例において得られた試験片の各元素濃度、熱間圧延終了後の仕上げ厚さ、冷却方法、溶体化処理した際の溶体化温度を表1に示す。
<比較例2、6>
試験片に添加元素として含まれるCo、Siの各成分濃度を変更し、溶体化処理した際の溶体化温度、熱間圧延終了後の冷却方法を空気中での放冷から水冷に変更したこと以外は、実施例1と同様にして行った。各比較例において得られた試験片のCo、Siの各成分濃度、熱間圧延終了後の仕上げ厚さ、冷却方法、溶体化処理した際の溶体化温度を表1に示す。
<比較例3>
試験片に添加元素として含まれるCo、Siの各成分濃度を変更し、溶体化処理した際の溶体化温度を変更し、熱間圧延後に空気中で放冷して冷間圧延を行った後、不活性雰囲気中で600℃で5時間時効処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして行った。本比較例において得られた試験片のCo、Siの各成分濃度、熱間圧延終了後の仕上げ厚さ、冷却方法、溶体化処理した際の溶体化温度を表1に示す。
<比較例4>
試験片に添加元素として含まれるCo、Siの各成分濃度を変更し、溶体化処理した際の溶体化温度、熱間圧延終了後の冷却方法を空気中での放冷から水冷に変更し、熱間圧延後に空気中で放冷して冷間圧延を行った後、不活性雰囲気中で600℃で5時間時効処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして行った。本比較例において得られた試験片のCo、Siの各成分濃度、熱間圧延終了後の仕上げ厚さ、冷却方法、溶体化処理した際の溶体化温度を表1に示す。
<比較例7>
試験片に添加元素として含まれるCo、Siの各成分濃度を変更し、熱間圧延終了後の冷却方法を空気中での放冷から水冷に変更し、溶体化処理を行った後、時効処理を600℃に変更して行ったこと以外は、実施例1と同様にして行った。本比較例において得られた試験片のCo、Siの各成分濃度、熱間圧延終了後の仕上げ厚さ、冷却方法、溶体化処理した際の溶体化温度を表1に示す。
<比較例8>
試験片に添加元素として含まれるCo、Siの各成分濃度を変更し、熱間圧延終了後の冷却方法を空気中での放冷から水冷に変更し、熱間圧延後に空気中で放冷して冷間圧延を行った後、不活性雰囲気中で800℃で5時間時効処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして行った。本比較例において得られた試験片のCo、Siの各成分濃度、熱間圧延終了後の仕上げ厚さ、冷却方法、溶体化処理した際の溶体化温度を表1に示す。
<特性の評価>
このようにして得られた各試験片につき、引張強さ(TS)、導電率(EC)、曲げ加工性、金型摩耗、表面部に含まれる5nm以上100nm以下の析出物(以下、「粒子径が5nm〜100nmの析出物」という)の平均粒子径Dsと中央部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径Diとの比(Ds/Di)、中央部の5nm以上20nm以下の析出物(以下、「粒子径が5nm〜20nmの析出物」という)の平均粒子径、および表面部の20nm以上100nm以下の析出物(以下、「粒子径が20nm〜100nmの析出物」という)の密度の各種特性の評価を以下のように行った。
[強度]
JIS Z2241に準拠して、試験片の引張方向が圧延方向と平行になるようにして引張試験を行い、引張強さの降伏強度(TS:MPa)を測定した。
[導電率]
JIS H 0505に準拠して、4端子法を用いて測定し、ダブルブリッジによる体積抵抗率測定により導電率(EC;%IACS)を求めた。
[曲げ加工性]
JIS H 3130に準拠して、Badway(曲げ軸が圧延方向と同一方向)のW曲げ試験を行い、W字型の金型を用いて曲げ半径を変化させ、割れの発生しない最小曲げ半径(R)と厚さ(t)の比(R/t)を求めた。
[プレス打抜き性]
プレス打抜き性はバリ高さおよびダレ量により評価した。金型クリアランスを10%とし、250spmの打抜き速度で、金型で試験片に角孔(1mm×5mm)を多数打抜き、打ち抜いた後の試験片の断面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)により観察し、試験片のバリ高さ(10箇所の平均値)とダレ量(10箇所の平均値)を得られたSEM像を用いて測定した。図4は、試験片のプレス打抜き部分の断面を模式的に示す部分断面図である。図4に示すように、Tは試験片の板厚であり、aはダレ量であり、bはバリ高さである。バリ高さが15μm以下且つダレ量が30μm以下のものを好適なものとして○と評価し、バリ高さが15μm以上もしくはダレ量が30μm以上のものを不適合なものとして×と評価した。
[表面部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径Dsと中央部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径Diとの比(Ds/Di)]
試験片を用いて、表面部又は中央部のみが残るように、その表面を機械的に研磨した後、ツインジェット式電解研磨装置によって厚み10nm〜100nmの試料を作成した。表面部は、試験片の表面から板厚の10%の範囲内とした。中央部は、試験片の中央部から板厚の30%の範囲内とした。そして、得られた試験片の表面部と中央部との測定用試料を、各々、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM:HITACHI社製)を用いて、加速電圧を200kVとし、倍率を500000倍として観察し、画像を5枚撮影した。撮影した画像に基づいて試験片の表面部と中央部に含まれる各々の析出物の粒子径をすべて算出した。5nm〜100nmの析出物の粒子径は、各析出物の圧延平行方向の径と圧延直角方向の径との平均値とした。そして、算出した5nm〜100nmのすべての析出物の粒子径の平均値を求め、平均粒子径を算出した。そして、表面部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径Dsと中央部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径Diとの比(Ds/Di)を求めた。
[中央部の5nm〜20nmの析出物の密度]
試験片を用いて、試験片の中央部から板厚の30%の範囲内のみが残るように、その表面を機械的に研磨した後、ツインジェット式電解研磨装置によって厚み10nm〜100nmの試料を作成した。そして、得られた試験片の中央部の測定用試料を、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧を200kVとし、倍率を500000倍として観察し、画像を5枚撮影した。撮影した画像に基づいて試験片の中央部に含まれる5〜20nmの析出物の個数をカウントした。密度はカウントした個数を撮影した5枚の画像の面積で除して求めた。
[表面部の粒子径が20nm〜100nmの析出物の密度]
試験片を用いて、試験片の表面から板厚の10%の範囲内のみが残るように、その表面を機械的に研磨した後、ツインジェット式電解研磨装置によって厚み10nm〜100nmの試料を作成した。そして、得られた試験片の表面部の測定用試料を、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧を200kVとし、倍率を500000倍として観察し、画像を5枚撮影した。撮影した画像に基づいて試験片の表面部に含まれる20〜100nmの析出物の個数をカウントした。密度はカウントした個数を撮影した5枚の画像の面積で除して求めた。
上述の試験によって得られた各実施例及び比較例に係る銅合金の引張強さ(TS)、導電率(EC)、曲げ加工性、金型摩耗、表面部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径Dsと中央部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径Diとの比(Ds/Di)、中央部の5nm〜20nmの析出物の密度、および表面部の粒子径が20nm〜100nmの析出物の密度の各特性を表1に示す。
Figure 2012224922
表1に示すように、実施例1〜5では、いずれも強度が650MPa以上であり、導電性が55%IACS以上であり、曲げ加工性が1.0以下であり、ダレ率a/Tも低く金型摩耗を抑制でき、実施例1〜8は、強度、導電性、曲げ加工性及び金型摩耗のいずれも良好であった。これに対し、比較例1〜8では、強度、導電性、曲げ加工性及び金型摩耗の何れかが良好ではなかった。すなわち、比較例7では、強度が600MPa以下であり、強度は低かった。また、比較例5、6、8では、曲げ加工性がR/tで1.5以上であり、非常に悪かった。また、比較例1〜6では、いずれもダレ率a/Tが高く金型の摩耗を抑制できなかった。
これら各実施例及び比較例の試験結果から、試験片の表面部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径が試験片の中央部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径より大きく、1.2以上とすることで、試験片の強度、導電性、曲げ加工性及び金型摩耗のバランスを良好に保っているといえる。特に、中央部の5nm〜20nmの析出物の密度が高いほど試験片の強度は高くでき、表面部の5nm〜20nmの析出物の密度が高いほど試験片のプレス打ち抜き性を良好にできるといえる。
また、実施例6〜8では、強度が690MPa以上となり、実施例2に比べ、さらに高くなり、導電性、曲げ加工性およびプレス打ち抜き性はいずれも良好であり、実施例2の試験片とほぼ同等に維持できた。Co、Si以外のその他の添加元素として、Ni、Cr、Mg、Mn、Ag、P、Sn、Zn、As、Sb、Be、B、Ti、Zr、Al及びFeは、析出強化効果や固溶強化効果を補強し、強度、導電率、曲げ加工性、さらにはめっき性や鋳塊組織の微細化による熱間加工性等の特性を改善する効果があるといえる。そのため、Co、Si以外に、上述のその他の添加元素として少なくとも1種を所定量含むことで、試験片の強度を高めつつ、導電性、曲げ加工性およびプレス打ち抜き性を良好に維持することができたといえる。
よって、銅合金の表面部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径を銅合金の中央部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径より大きくし、銅合金の表面部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径Dsと中央部に含まれる5nm〜100nmの析出物の平均粒子径Diとの比(Ds/Di)を所定値以上とすることで、銅合金の強度および導電性を向上させると共に、曲げ加工性に優れ、プレス打ち抜き性を向上させ、打ち込みによる金型摩耗を軽減するなど各種特性を良好とすることができる。また、得られる銅合金は、組成として、Co、Si以外にその他の添加元素を所定量含むことで、強度、導電性、曲げ加工性、およびプレス打ち抜き性を向上させることができる。従って、本発明の銅合金は、銅を原料として用いられる電子部品等の原料として有用であることが判明した。
10 銅合金
11 第1の析出物
12 第2の析出物

Claims (8)

  1. Coを0.5質量%以上3.0質量%以下、Siを0.1質量%以上1.0質量%以下、残部としてCuおよび不可避不純物を含み、
    CoとSiとの質量比(Co/Si)が3.0以上5.0以下であり、
    銅合金の表面部に含まれる析出物の平均粒子径を銅合金の厚さ方向の中央部に含まれる析出物の平均粒子径よりも大きくすることを特徴とする銅合金。
  2. 請求項1において、
    銅合金の表面部に含まれる5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径Dsと中央部に含まれる5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径Diとの比(Ds/Di)は、下記式を満たす銅合金。
    1.2≦Ds/Di≦2.0 ・・・(1)
  3. 請求項1または2において、
    Ni、Cr、Mg、Mn、Ag、P、Sn、Zn、As、Sb、Be、B、Ti、Zr、Al及びFeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を、副成分として含む銅合金。
  4. 請求項1から3のいずれか1つの銅合金を加工して得られることを特徴とする伸銅品。
  5. 請求項1から3のいずれか1つの銅合金を含むことを特徴とする電子部品。
  6. Coを0.5質量%以上3.0質量%以下、Siを0.1質量%以上1.0質量%以下、残部としてCuおよび不可避不純物を含み、CoとSiとの質量比(Co/Si)が3.0以上5.0以下である組成を有する銅合金素材を溶解鋳造する溶解鋳造工程と、
    前記銅合金素材を950℃以上1050℃以下の温度で1時間以上5時間以下加熱した後、前記銅合金素材の仕上げ厚さを20mm以上100mm以下に熱間圧延を行う熱間圧延工程と、
    熱間圧延した銅合金素材を空冷する空冷工程と、
    空冷した銅合金素材を冷間圧延する第1の冷間圧延工程と、
    800℃以上1050℃以下で30秒以上8分以下熱処理する溶体化処理工程と、
    前記銅合金素材を350℃以上650℃以下で1時間以上48時間以下、時効処理を行う時効処理工程と、
    前記銅合金素材を圧下率10%以上で冷間圧延する第2の冷間圧延工程と、
    を含み、
    得られる銅合金の表面部に含まれる析出物の平均粒子径を銅合金の厚さ方向の中央部に含まれる析出物の平均粒子径よりも大きくすることを特徴とする銅合金の製造方法。
  7. 請求項6において、
    前記時効処理工程における時効処理を、予め求めた所定の時効温度における時効時間と強度との関係を示す時効曲線のピークとなる温度又は時効時間の何れか一方又は両方の温度又は時効時間以上で行う銅合金の製造方法。
  8. 請求項6又は7において、
    銅合金の表面部に含まれる5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径Dsと中央部に含まれる5nm以上100nm以下の析出物の平均粒子径Diとの比(Ds/Di)は、下記式を満たす銅合金の製造方法。
    1.2≦Ds/Di≦2.0 ・・・(1)
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