以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔ナノインプリント方法の説明〕
(概要)
図1は、インクジェットヘッド24から吐出させた光硬化性樹脂液体の吐出状態(飛翔中の状態)、及び基板20への着弾状態が模式的に図示されている。図1(a)は、一回の吐出により液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体が二滴(符号25A、25Bを付して図示)に分裂され、基板20に着弾させた状態が模式的に図示されている。
また、図1(b)は、一回の吐出により液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体が飛翔中に延ばされた状態(曳糸状態、符号25Cを付して図示)のまま基板20に着弾させた状態が模式的に図示されている。
図1(c)は、一回の吐出により液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体が曳糸状態と滴状態に分裂されて基板20に着弾させた状態が模式的に図示されている。
本例に示すナノインプリント方法は、図1(a)〜(c)に示すように、インクジェットヘッドのノズルから一回の吐出動作により液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体(機能性液体)を飛翔中に二滴以上に分裂させて基板上に着弾させるか、該光硬化性樹脂液体が飛翔中に延ばされた状態(曳糸状態)のまま基板上に着弾させている。
インプリントシステムでは、基板上に着弾した光硬化性樹脂液体のサイズをより小さくし、かつ、光硬化性樹脂液体をより密に配置することで、スループットが向上することが知られている。
一方、インクジェット方式において、一回の吐出における光硬化性樹脂液体を微細化すると、基板上に必要量の光硬化性樹脂液体を吐出させるためには、吐出数を多くしなければならない。
また、微細化された光硬化性樹脂液体を高密度に配置させ、かつ、所定の生産性を維持するには、ノズル数(ヘッド数)を多くするとともにノズルを高密度に配置し、さらに、インクジェットヘッドの吐出周波数を高くする必要がある。
しかし、液滴サイズの微細化による吐出性能のロバストの低下や、ノズル数の増加、吐出周波数の高速化による吐出安定性の低下が懸念される。
そこで、本例に示すナノインプリント方法では、一回の吐出により液柱状態の大きな光硬化性樹脂液体を吐出させ、飛翔中に二滴以上に分裂させて吐出時よりも小さい光硬化性樹脂液体を複数の位置に着弾させるか、又は飛翔中に延ばされた状態のまま、すなわち、小さい液滴が高密度に配置される状態と等価の状態で着弾させることで、ノズル数(ヘッド数)の増加、ノズルの高密度配置、吐出周波数の高速化をすることなく、光硬化性樹脂液体の吐出総量を増加させずに、光硬化性樹脂液体を微細液滴化させ、かつ、高密度に配置させることと等価の状態を実現している。
図1(a)〜(c)に図示した光硬化性樹脂液の着弾状態は、光硬化性樹脂液の粘度η(ミリパスカル秒)、駆動電圧の傾きγ(1/マイクロ秒)、光硬化性樹脂液体の吐出速度v(メートル毎秒)が所定の条件を満たすことで実現される(詳細後述)。
(各工程の説明)
まず、図2(a)〜(f)を用いて、本発明の実施形態に係るナノインプリント方法について、工程順を追って説明する。
本例に示すナノインプリント方法は、モールド(型、例えば、Siモールド)に形成された凹凸パターンを、基板(石英基板等)上に形成された光硬化性樹脂液体(機能性液体、例えば、レジスト液)を硬化させた光硬化性樹脂層に転写し、該光硬化性樹脂層をマスクパターンとして基板上に微細パターンを形成するものである。
まず、図2(a)に示す石英基板20(以下、単に「基板」と記載する。)を準備する。図2(a)に示す基板20は、表側面20Aにハードマスク層21が形成されており、この表側面20Aに微細パターンが形成される。基板20は、紫外線などの光を透過させる所定の透過性を有し、厚みが0.3ミリメートル(mm)以上であればよい。光透過性を有することで基板20の裏側面20Bからの露光が可能となる。
Siモールドを用いる場合に適用される基板20として、表面をシランカップリング剤で被覆したもの、Cr、W、Ti、Ni、Ag、Pt、Auなどからなる金属層を積層したもの、CrO2、WO2、TiO2などからなる金属酸化膜層を積層したもの、これらの積層体の表面をシランカップリング剤で被覆したものなどが挙げられる。
すなわち、図2(a)に図示したハードマスク層21は、上記の金属膜や金属酸化膜等の積層体(被覆材)が用いられる。積層体の厚みが30ナノメートル(nm)を超えると光透過性が低下してしまい、光硬化性樹脂の硬化不良が起こりやすいので、該積層体の厚みは30ナノメートル以下であり、好ましくは20ナノメートル以下である。
「所定の透過性」とは、基板20の裏側面20Bから照射した光が表側面20Aから出射して、表面に形成される機能性を有する液体(例えば、図2(b)に符号25を付して図示した光硬化性樹脂液体を十分に硬化させることができればよく、例えば、裏側面から照射された波長200ナノメートル以上の光の光透過率が5%以上であるとよい。
また、基板20の構造は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。基板20の材質は、石英以外にも、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂、などを適宜用いることができる。これらの材料は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を適宜合成して併用してもよい。
なお、基板20に石英以外の材料を用いるときは、モールド(同図に符号26を付して図示)の材料に石英を用いて、モールド側から露光がされる。
基板20の厚みは0.05ミリメートル以上が好ましく、0.1ミリメートル以上がより好ましい。基板20の厚みが0.05ミリメートル未満であると、被パターン形成体とモールドとの密着時に基板側に撓みが発生し、均一な密着状態を確保できない可能性がある。また、ハンドリングやインプリント中の押圧による破損を避けることを考慮して、基板20の厚みを0.3ミリメートル以上とするとより好ましい。
基板20の表側面20Aに対して、インクジェットヘッド24から光硬化性樹脂を含有する複数の光硬化性樹脂液体25を離散的に吐出させる(図2(b):吐出工程)。ここでいう「離散的に吐出させる液滴」とは、基板20上における隣接する着弾位置に着弾した他の液滴と接触せずに、所定の間隔を空けて着弾した複数の液滴を意味している。
図2(b)に示す吐出工程では、インクジェットヘッド24に具備される圧力室(図6に符号32を付して図示)を膨張させた後に収縮させて圧力室内の光硬化性樹脂液体を吐出させている。
また、一回の吐出動作で吐出させた液柱状態の光硬化性樹脂25’は、二滴以上に分裂させて基板20に着弾させるか、曳糸状態で基板20に着弾させている。図2(b)には、二滴に分裂させて基板20に着弾させた光硬化性樹脂液体25が図示されている。
かかる吐出状態及び着弾状態を実現するために、光硬化性樹脂液体の粘度η、光硬化性樹脂液体の吐出速度v、駆動電圧の傾きγの関係が決められている(詳細後述)。
また、光硬化性樹脂液体25の吐出量、配置密度は予め設定(調整)されている。例えば、吐出量及び配置密度は、モールド(図2(c)に符号26を付して図示)の凹凸パターンの凹部の空間体積が大きい領域では相対的に大きくされ、凹部の空間体積が小さい領域や凹部がない領域では相対的に小さくされるように調整される。調整後、所定の配置パターンに従って、基板20上に光硬化性樹脂液体25が配置される。
図2(b)に示す吐出工程の後に、凹凸パターンが形成されたモールド26の凹凸パターン面を基板20の表側面20Aに所定の押圧力によって押し付けて基板20上の光硬化性樹脂液体25を濡れ広がらせ、濡れ広がらせた複数の光硬化性樹脂液体25の結合からなる光硬化性樹脂層25”が形成される(図2(c):光硬化性樹脂層形成工程)。
光硬化性樹脂層形成工程では、モールド26と基板20との間の雰囲気を減圧または真空雰囲気にした後に、モールド26を基板20に押し付けることで残留気体を低減させることができる。
ただし、高真空雰囲気下では硬化前の光硬化性樹脂層25”が揮発してしまい、均一な膜厚を維持することが困難となる可能性がある。そこで、モールド26と基板20との間の雰囲気を、ヘリウム(He)雰囲気または減圧He雰囲気にすることで残留気体を低減するとよい。Heは石英基板20を透過するため、取り込まれた残留気体(He)は徐々に減少する。Heの透過には時間を要すため減圧He雰囲気とすることがより好ましい。
モールド26の押圧力は、100キロパスカル(kPa)以上10メガパスカル(MPa)以下の範囲とされる。押圧力が相対的に大きい方が樹脂の流動が促進され、また残留気体の圧縮、残留気体の光硬化性樹脂への溶解や、基板20中のHeの透過が促進され、タクトアップにつながる。
しかし、押圧力が大きすぎるとモールド26が基板20に接触するときに異物を噛みこんでしまい、モールド26及び基板20を破損してしまう可能性があるので、モールド26の押圧力は上記範囲とされる。
モールド26の押圧力の範囲は、より好ましくは100キロパスカル以上5メガパスカル以下であり、更に好ましくは100キロパスカル以上1メガパスカル以下である。100キロパスカル以上としたのは、大気中でインプリントを行う際、モールド26と基板20との間が光硬化性樹脂液体25で満たされているためであり、モールド26と基板20との間が大気圧(約101キロパスカル)で加圧されているためである。
その後、基板20の裏側面20Bから紫外線を照射して、光硬化性樹脂層25”に対する露光が行われ、光硬化性樹脂層25”を硬化させる(図2(c):光硬化性樹脂層硬化工程)。本例では、光(紫外線)によって光硬化性樹脂層25”を硬化させる光硬化方式を例示したが、熱硬化性樹脂を含有する液体を用いて熱硬化性樹脂液体の層を形成し、加熱によって熱硬化性樹脂液体の層を硬化させる熱硬化方式など、他の硬化方式を適用してもよい。
光硬化性樹脂層25”が十分に硬化した後に、光硬化性樹脂層25”からモールド26を剥離させる(図2(d):剥離工程)。モールド26を剥離させる方法は、光硬化性樹脂層25”のパターンに欠損が生じにくい方法であればよく、基板20の縁部から徐々に剥離させる方法や、モールド26の側から加圧しながら剥離させ、モールド26が光硬化性樹脂層25”から剥離する境界線上での光硬化性樹脂層25”へかかる力を低減させて剥離する方法(加圧剥離法)などの方法を用いることができる。
さらに、光硬化性樹脂層25”の近傍を加温し、モールド26と光硬化性樹脂層25”との界面での光硬化性樹脂層25”とモールド26の表面との付着力を低減させ、かつ、光硬化性樹脂層25”のヤング率を低下させて、脆性が良化させて変形による破断を抑制して剥離する方法(加熱アシスト剥離)を適用することも可能である。なお、上記の方法を適宜組み合わせた複合的手法を用いてもよい。
図2(a)〜(d)に示す各工程を経て、基板20の表側面20Aに形成された光硬化性樹脂層25”にモールド26の凹凸パターンが転写される。基板20上に形成された光硬化性樹脂層25”は、モールド26の凹凸形状や光硬化樹脂を含有する液体の液物性に対応して、光硬化性樹脂層25”となる光硬化性樹脂液体25の吐出密度が最適化されているので、残渣厚が均一化され、欠損のない好ましい凹凸パターンが形成される。
次に、光硬化性樹脂層25”をマスクとして基板20(又は基板20に被覆させた金属膜等)に微細パターンが形成される。
基板20上の光硬化性樹脂層25”の凹凸パターンが転写されると、光硬化性樹脂層25”の凹部内の光硬化性樹脂が除去され、基板20の表側面20A、又は表側面20Aに形成される金属層等を露出させる(図2(e):アッシング工程)。
さらに、光硬化性樹脂層25”をマスクとしてドライエッチングが行われ(図2(f):エッチング工程)、光硬化性樹脂層25”が除去されると、光硬化性樹脂層25”に形成された凹凸パターンに対応した微細パターンが基板20上に形成される。
なお、基板20の表側面20Aに金属膜や金属酸化膜が形成される場合は、金属膜又は金属酸化膜に対して所定のパターンが形成される。
ドライエッチングの具体例としては、光硬化性樹脂層25”をマスクとして用いることができればよく、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、などが挙げられる。これらの中でも、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)が特に好ましい。
イオンミリング法は、イオンビームエッチングとも言われ、イオン源にArなどの不活性ガスを導入し、イオンを生成する。これを、グリッドを通して加速させ、試料基板に衝突させてエッチングするものである。
イオン源としては、カウフマン型、高周波型、電子衝撃型、デュオプラズマトロン型、フリーマン型、ECR(電子サイクロトロン共鳴)型などが挙げられる。イオンビームエッチングでのプロセスガスとしては、Arガス、RIEのエッチャントとしては、フッ素系ガスや塩素系ガスを用いることができる。
以上のように、本例に示すナノインプリント方法を用いた微細パターンの形成は、モールド26の凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂層25”をマスクとして、残膜の厚みムラおよび残留気体による欠陥のない当該マスクを用いてドライエッチングを行っているので、高精度で歩留まりよく基板20に微細パターンを形成することが可能となる。
〔ナノインプリントシステムの説明〕
次に、上述したナノインプリント方法を実現するためのナノインプリントシステム(ナノインプリント装置)について説明する。以下の説明では、先の説明と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略することとする。
(全体構成)
図3は、本発明の実施形態に係るナノインプリントシステムの概略構成図である。同図に示すナノインプリントシステム10は、石英ガラスなどの光透過性を有する基板20上に光硬化性樹脂液体(レジスト液)を吐出させる光硬化性樹脂液体吐出部12と、基板20上に配置された光硬化性樹脂液体に所望のパターンを転写するパターン転写部14と、基板20を搬送する搬送部22と、を備えて構成される。
光硬化性樹脂液体吐出部12は、複数のノズル(図3中不図示、図5に符号23を付して図示)が形成されるインクジェットヘッド24を備え、各ノズルから光硬化性樹脂液体25を吐出させ、飛翔中に分裂又は曳糸状態にさせて、この状態で基板20の表面(光硬化性樹脂液体着弾面)に光硬化性樹脂液体25を着弾させる。
パターン転写部14は、基板20上の光硬化性樹脂液体25に転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたモールド26と、紫外線を照射する紫外線照射装置28と、を備え、光硬化性樹脂液体25が着弾した基板20の表面にモールド26を押し当てた状態で、基板20の裏側(モールド26を押し当てた表面と反対側の面)から紫外線照射を行い、基板20上の光硬化性樹脂液体25を硬化させることにより、基板20上の光硬化性樹脂液体25(光硬化性樹脂層25”)に対してパターン転写を行う。
モールド26は、シリコンが適用される。また、基板20が紫外線照射装置28から照射される紫外線を透過可能な光透過性材料から構成されることにより、基板20の下方(モールド26とは反対側)に配置される紫外線照射装置28から紫外線照射が行われたとき、基板20で遮られることなく基板20上の光硬化性樹脂液体25に紫外線が照射され、該光硬化性樹脂液体25を硬化させることができる。
光透過性材料としては、例えば、ガラス、石英などを使用することができる。
モールド26は、図3の上下方向(両矢印線により図示した方向)に移動可能に構成されており、基板20の表面に対してモールド26のパターン形成面が略平行となる状態を維持しながら下方に移動して、基板20の表面全体に略同時に接触するように押し当てられ、パターン転写が行われる。
なお、図示は省略するが、モールド26を光透過性材料により構成し、基板20の表側(モールド側)から紫外線を照射する形態も可能である。
搬送部22は、例えば、搬送ステージなどの基板20を固定して搬送する搬送手段を含んで構成され、基板20を搬送手段の表面に保持しつつ、該基板20を光硬化性樹脂液体吐出部12からパターン転写部14に向かう方向(以下、「y方向」ということもある。)に搬送を行う。
該搬送手段の具体例として、リニアモータとエアスライダーの組み合わせや、リニアモータとLMガイドの組み合わせなどがあり得る。なお、基板20を移動させる代わりに、光硬化性樹脂液体吐出部12やパターン転写部14を移動させるように構成してもよいし、両者を移動させてもよい。
(光硬化性樹脂液体吐出部の説明)
図4は、光硬化性樹脂液体吐出部12の概略構成を示す構成図である。同図に示す光硬化性樹脂液体吐出部12は、シリアル型のインクジェットヘッド24を具備し、インクジェットヘッド24は、x方向に沿って設けられたガイド27に沿って移動可能なキャリッジ29に搭載されている。
図4に示す光硬化性樹脂液体吐出部12は、インクジェットヘッド24をx方向に走査させながらx方向への光硬化性樹脂液体25(図2参照)を吐出させ、x方向について一回の走査が終了すると基板20をy方向へ所定量移動させて、次の領域への光硬化性樹脂液体25を吐出させ、この動作を繰り返しながら基板20の全面にわたって光硬化性樹脂液体25を配置させるように構成されている。
図5(a),(b)は、図4に示すシリアル型のインクジェットヘッド24のノズル配置例を示す平面図である。図5(a)に示すインクジェットヘッド24は、y方向に沿って複数のノズル23が並べられた構造を有している。また、図5(b)に示すように、複数のノズル23を千鳥状に配置して、y方向の実質的なノズルピッチを小さくすることも可能である。
なお、本例ではシリアル方式のインクジェットヘッド24を例示したが、基板20の全幅に対応する長さにわたって、複数のノズルが並べられた構造を有するフルライン型のインクジェットヘッドを適用することも可能である。
また、ノズル配置は、マトリクス配置を適用してもよいし、千鳥配置や一列配置を適用してもよい。
(インクジェットヘッドの構造)
図6は、インクジェットヘッド24の一チャンネル分の液滴吐出素子の立体的構成を示す断面図である。同図に示すインクジェットヘッド24は、複数のノズル23の開口が形成されたノズルプレート23Aと、圧力室32や共通流路35等の流路が形成された流路板等を積層接合した構造から成る。
ノズルプレート23Aは、インクジェットヘッド24のノズル面23Bを構成し、各圧力室32にそれぞれ連通する複数のノズル23が形成されている。なお、図6では、一チャンネル分の図示のため、ノズル23が一つだけ図示されている。
流路板は、圧力室32の側壁部を構成するとともに、共通流路35から圧力室32にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口34を形成する流路形成部材である。
なお、説明の便宜上、図6では簡略的に図示しているが、流路板は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート23A及び流路板は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
共通流路35はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路35を介して各圧力室32に供給される。
圧力室32の一部の面(図7において天面)を構成する振動板36には、上部(個別)電極37A及び下部(共通)電極37Bを備え、上部電極37Aと下部電極37Bとの間に圧電体38Aがはさまれた構造を有する圧電素子38が接合されている。
振動板36を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、圧電素子38の下部電極37Bに相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
上部電極37Aに駆動電圧を印加することによって圧電素子38が変形して圧力室32の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル23からインクが吐出される。インク吐出後、圧電素子38が元の状態に戻る際、共通流路35から供給口34を通って新しいインクが圧力室32に再充填される。
(制御系の説明)
図7は、ナノインプリントシステム(ナノインプリント装置)10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示す制御系は、通信インターフェース50、システムコントローラ52、メモリ54、モータドライバー56、ヒータドライバー58、吐出制御部60、転写制御部61、バッファメモリ62、ヘッドドライバー64等を備えている。
通信インターフェース50は、ホストコンピュータ66から送られてくる光硬化性樹脂液体の配置を表す吐出データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース50としては、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
システムコントローラ52は、通信インターフェース50、メモリ54、モータドライバー56、ヒータドライバー58等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ52は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ66との間の通信制御、メモリ54の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ68やヒータ69を制御する制御信号を生成する。
メモリ54は、データの一時記憶領域、及びシステムコントローラ52が各種の演算を行うときの作業領域として使用される記憶手段である。通信インターフェース50を介して入力された光硬化性樹脂液体の配置を表す吐出データは、ナノインプリントシステム10に取り込まれ、一旦メモリ54に記憶される。
また、メモリ54は、光硬化性樹脂液体の粘度の情報、モールド26の情報(濡れやすい方向の情報等)などが記憶されている。これ以外にも、インクジェットヘッド24の情報等の装置各部の情報が適宜記憶される。
例えば。光硬化性樹脂液体の粘度の情報は、不図示のユーザインターフェースから入力されてもよいし、光硬化性樹脂液体対が収容される容器に取り付けられた情報記憶体(ICタグ等)から自動的に読み取られてもよい。また、モールド26の情報はモールド26を検査して取得され、記憶される。
メモリ54としては、半導体素子からなるメモリの他、ハードディスクなどの磁気媒体を用いることができる。
モータドライバー56は、システムコントローラ52からの指示に従ってモータ68を駆動するドライバー(駆動回路)である。モータ68には、図2の搬送部22を駆動するためのモータやモールド26を上下動させるためのモータが含まれる。
ヒータドライバー58は、システムコントローラ52からの指示に従ってヒータ69を駆動するドライバーである。ヒータ69には、ナノインプリントシステム10の各部に設けられた温度調節用のヒータ(例えば、光硬化性樹脂液体を吐出させる前の基板20を加熱するヒータ等)が含まれる。
吐出制御部60は、システムコントローラ52の制御に従い、メモリ54内の光硬化性樹脂液体の配置データから吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号をヘッドドライバー64に供給する制御部である。
吐出制御部60において所要の信号処理が施され、該吐出データに基づいてヘッドドライバー64を介してインクジェットヘッド24から吐出される光硬化性樹脂液体の吐出量、吐出位置、インクジェットヘッド24の吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望の光硬化性樹脂液体の液滴の配置(分布)が実現される。
吐出制御部60にはバッファメモリ62が備えられており、吐出制御部60における吐出データ処理時に、吐出データやパラメータなどのデータがバッファメモリ62に一時的に格納される。なお、図7では、バッファメモリ62は吐出制御部60に付随する態様で示されているが、メモリ54と兼用することも可能である。
また、吐出制御部60とシステムコントローラ52とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバー64は、吐出制御部60から与えられる吐出データに基づいてインクジェットヘッド24の圧電素子38(図7参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子38に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバー64にはインクジェットヘッド24の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
センサ57は、インクジェットヘッド24から吐出させた液滴の飛翔状態を検出するためのセンサ(撮像素子)、基板20の位置を検出するためのセンサなど、基板20又はインクジェットヘッド24、モールド26等の回転角度(アライメントマーク)を検出するためのセンサ、本システム(装置)各部に設けられている各種センサが含まれる。
センサ57によって得られた情報は、システムコントローラ52へ送られ、装置各部の制御に利用される。
転写制御部61は、モールド26(図3参照)を移動(回転)させるモールド移動機構63の動作(モールド26の移動及び押圧)を制御するとともに、紫外線照射装置28のオンオフ、照射光量を制御する。
すなわち、光硬化性樹脂液体25(図2参照)を着弾させた基板20がパターン転写部14へ送られると、モールド26を移動させて基板20に押圧させ、紫外線照射装置28から紫外線を照射させる。
モールド26の凹凸パターンが転写され、光硬化性樹脂液体25が硬化して、光硬化性樹脂層25”(図2参照)によるマスクパターンが形成されると、紫外線照射が停止され、モールド26を基板から離間させる。
図8は、ヘッドドライバー64の構成例を示すブロック図である。同図に示す構成例は、ヘッドコントローラ82(図7のシステムコントローラ52、吐出制御部60に相当)から伝送されるデジタル形式の波形信号に基づいてアナログ形式の波形信号(駆動波形)を生成する駆動波形生成部84と、該駆動波形を電圧増幅及び電流増幅する増幅部(AMP)86と、を具備している。
ヘッドコントローラ82から伝送されるシリアル形式の印字データは、クロック信号に同期してクロック信号とともにシフトレジスタ88へ伝送される。駆動波形生成部84によって生成される駆動波形は、複数の波形要素が含まれる。この複数の波形要素の中から一つ又は複数の波形要素を選択することで、光硬化性樹脂液体の吐出量を段階的に変更することが可能となっている。
また、図示は省略するが、増幅部86はゲインを可変させるゲイン調整機能を有しており、増幅部86のゲインを可変させることで駆動電圧の最大電圧(振幅)を調整するこができ、光硬化性樹脂液体の吐出速度を調整可能である。
すなわち、駆動電圧の最大電圧を調整する駆動電圧調整手段を備え、該駆動電圧調整手段による駆動電圧の調整によって、光硬化性樹脂液体の吐出速度を調整することが可能である。
例えば、増幅部86のゲインを相対的に大きくすると、駆動電圧の最大電圧は相対的に大きくなり、光硬化性樹脂液体の吐出速度は相対的に大きくなる。なお、駆動電圧の最大電圧は、ヘッドコントローラ82におけるシリアル形式の印字データ(デジタルデータ)の調整により可変させることも可能である。
シフトレジスタ88に記憶された印字データは、ラッチ信号に基づいてラッチ回路90へラッチされる。ラッチ回路90にラッチされた信号はレベル変換回路92においてスイッチIC94を構成するスイッチ素子96を駆動可能な所定の電圧に変換される。
このレベル変換回路92の出力信号によってスイッチ素子96のオンオフが制御することで、複数の波形要素の中から少なくとも1つの波形要素が選択されて吐出量が決められ、ヘッドコントローラ82から送出されるセレクト信号及びイネーブル信号によって駆動される圧電素子38が選択される。
なお、インクジェットヘッド24の駆動方式は、共通の駆動電圧(駆動波形)を選択的に印加する方式に限定されず、総ノズル数が比較的少ないインクジェットヘッドでは、ノズルごとに駆動波形が生成される方式を適用することも可能である。
〔光硬化性樹脂液体が分裂状態又は曳糸状態で着弾する条件の説明〕
次に、図1に図示した、液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体が分裂状態又は曳糸状態で着弾するための条件について説明する。
(駆動電圧の説明)
図9(a),(b)は、インクジェットヘッド24に適用される駆動電圧の一例を示す図である。図9(a)に示す駆動電圧100は、静定状態の圧力室32(図6参照)を拡張させるように圧電素子38を動作させる引き波形102と、圧力室32を膨張させて状態を維持するように圧電素子38を動作させる維持波形104と、膨張させた圧力室32を収縮させる押し波形106が含まれる。
また、図9(b)に示す駆動電圧110は、静定状態の圧力室32を膨張させるように圧電素子38を動作させる第1の引き波形112と、圧力室32を膨張させて状態を維持するように圧電素子38を動作させる第1の維持波形114と、膨張させた圧力室32を静定状態よりも収縮させるように圧電素子38を動作させる押し波形116と、圧力室32を静定状態よりも収縮させた状態を維持するように圧電素子38を動作させる第2の維持波形118と、静定状態よりも収縮させた圧力室32を静定状態まで膨張させるように圧電素子38を動作させる第2の引き波形120と、を含んでいる。
なお、図9(b)の駆動電圧110における電圧V1は、圧力室32の静定状態が維持されるように圧電素子38を動作(静定)させるための電圧である。
すなわち、図9(a)に図示した駆動電圧100及び図9(b)に図示した駆動電圧110は、圧電素子38を引き押し駆動させて圧力室32を変形させ、圧力室32と光硬化性樹脂液体25との共振現象を利用してノズル23(図6参照)から光硬化性樹脂液体25を吐出させるものである。
図9(a)に図示した駆動電圧100の引き波形102の傾き(スリューレート)γ1(1/マイクロ秒)は、次式(1)と表すことができる。また、図9(b)に図示したように、中間電位V1(V1≠Vmax、V1≠Vmin)のとき、駆動電圧110(引き波形112)の傾きγ2は、次式(2)と表すことができる。さらに、図9(b)に図示した駆動電圧110(押し波形116)の傾きγ3は、次式(2’)と表すことができる。
γ1=|1/Δt|(1/マイクロ秒) …(1)
γ2=|{(V1−Vmin)/(Vmax−Vmin)}/Δt|(1/マイクロ秒) …(2)
γ3=|{(V1−Vmax)×(V1−Vmin)/(Vmax−Vmin)}/Δt|(1/マイクロ秒) …(2’)
すなわち、駆動電圧の傾きγ(γ1,γ2,γ3)は、1マイクロ秒あたりの電圧変化率であり、駆動電圧の最大値Vmaxと駆動電圧の最小値Vminとの差を1として求められている。例えば、1マイクロ秒で駆動電圧の最小値Vminから最大値Vmaxまで変化している場合の傾きγは1である。
なお、圧力室32の膨張、収縮に関わらず駆動電圧100(110)の傾きγは、上記式(1)から式(3)のように絶対値とする。
以下の説明では、押し波形102(112)の傾きと引き波形106(116)の傾きが等しいものとし、これらを総称して傾きγと記載する。
(評価実験の概要)
駆動電圧の傾きγを変えて、インクジェットヘッドから光硬化性樹脂液体を吐出させ、液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体が分裂して着弾する条件、及び液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体の曳糸状態が着弾まで継続する条件について評価した。
また、駆動電圧の傾きγごとに駆動電圧の最大電圧(電圧差)を変えて、吐出速度の違いによる光硬化性樹脂液体が分裂して着弾する条件、及び液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体の曳糸状態が着弾まで継続する条件を評価した。
実験装置は、ダイマティックス・マテリアルプリンター、DMP‐2831(富士フイルムダイマティック社製)を使用し、インクジェットヘッドから液滴を連続吐出させ、装置に内蔵されている観察用カメラを用いて液滴の飛翔状態を撮影した。
吐出速度vは、駆動電圧の入力タイミングから光硬化性樹脂液体25(図2参照)が所定位置に到達するまでの時間で、ノズル面23B(図6参照)から該所定位置までの距離を除算して求められる。
本評価実験の「所定位置」はノズル面23Bから垂直方向(光硬化性樹脂液体25の理想的な吐出方向)について300マイクロメートルの位置であり、v=300/t(メートル毎秒)とした。
ノズル面23Bから基板20(図2参照)までの距離は0.8ミリメートルとし、ノズル面23Bから基板20まで間で二滴に分裂しているか、曳糸状態であるかを観察した。なお、ノズル面から基板までの距離は一般的なインクジェット方式の画像形成と同様に、0.5ミリメートル以上1.5ミリメートル以下とすることが可能である。
吐出周波数を2キロヘルツ(kHz)から10キロヘルツの範囲で可変させ、いずれの吐出周波数においても吐出状態に変化がなかったことを確認した。すなわち、吐出後のメニスカス残響の影響がない範囲で評価が行われた。
吐出ノズル数は、全ノズル(16ノズル)とした。吐出ノズル数を1ノズルとしても、吐出状態に差はなく、クロストークの影響がない範囲での評価であることを確認した。
駆動電圧のパルス幅は、維持波形104の時間を吐出速度が最大になるように調整した。すなわち、傾きγ及び駆動電圧が決められた後に、維持波形104の時間を変化させて吐出速度を評価して、吐出速度が最大となる維持波形104の時間を、ある傾きγ及び駆動電圧における維持波形104の時間とした。
(評価結果)
図10は、光硬化性樹脂液体の粘度ηが12ミリパスカル秒の場合の駆動電圧の傾きγ(対数表示)と光硬化性樹脂液体の吐出速度vとの関係を示している。また、図11は、光硬化性樹脂液体の粘度ηが8ミリパスカル秒の場合の駆動電圧の傾きγ(対数表示)と光硬化性樹脂液体の吐出速度vとの関係を示し、図12は、光硬化性樹脂液体の粘度ηが4ミリパスカル秒の場合の駆動電圧の傾きγ(対数表示)と光硬化性樹脂液体の吐出速度vとの関係を示している。なお、光硬化性樹脂液体の粘度ηは、インクジェットヘッドの温度を変えることで、上記の値に設定した。
図10から図12において、「○」は曳糸状態(図1(b)参照)となったことを表し、「△」は曳糸状態になる場合があることを表している。また、「□」は二滴(図1(a)参照)になったことを表し、「▲」は二滴にはなったが、滴間隔が小さい場合を表している。「×」は二滴にもならず、かつ、曳糸状態にもならない状態を表している。
さらに、「◇」は、二滴に分裂し、一方が曳糸状態(図1(c)参照)であることを表している。また図10から図12における右上がりの実線は、曳糸状態の境界条件を表し、右下がりの破線は、二滴状態の境界を表している。
なお、上側の曳糸境界は「△」を含まないものであり、下側の曳糸境界は「△」を含むものである。また、上側の二滴境界は「▲」を含まないものである、下側の二滴境界は「▲」を含むものである。
図10から図12において、二滴となる境界条件は破線により図示され、曳糸状態となる境界条件は二点破線により図示されている。
光硬化性樹脂液体の吐出速度vに関して、光硬化性樹脂液体の吐出速度vが12(メートル毎秒)以上となると、光硬化性樹脂液体の粘度ηや光硬化性樹脂液体の吐出速度vにかかわらず、二滴状態又は曳糸状態が得られる。
一方、光硬化性樹脂液体の吐出速度vが18(メートル毎秒)以上となると、曳糸状態が得られるものの、吐出が不安定となった。これは、吐出後のメニスカスの振動が大きくなり、連続吐出に影響したと考えられる。
すなわち、駆動電圧の傾きγ及び光硬化性樹脂液体の粘度ηによらず、光硬化性樹脂液体の吐出速度vが、次式(3)を満たすと、二滴状態が得られる。
12(メートル毎秒)≦v<18(メートル毎秒) …(3)
駆動電圧の傾きγに関して、駆動電圧の傾きγを大きくすると二滴になる場合が多くなる。これは、液柱状態で吐出された光硬化性樹脂液体に高周波の振動が重畳され、曳糸状態が切れやすいと考えられる。
また、光硬化性樹脂液体の粘度ηに関して、光硬化性樹脂液体の粘度ηが低いと二滴になる場合が多くなる。これは、粘度が低いと曳糸状態が維持されにくく二滴に分裂するためと考えられる。
上記の実験結果から、二滴となる境界条件は、次式(4)で表される。
v≧−2.5×log10(γ)+0.4η+6.8 …(4)
上記式(4)は、図10から図12における「▲」を含んだ条件であり、図10から図12における「▲」を含まない、より好ましい二滴境界条件は次式(4’)で表される。
v≧−2.5×log10(γ)+0.4η+7.8 …(4’)
また、曳糸状態となる境界条件は、次式(5)と表すことができる。
v≧3.5×log10(γ)−0.25×η+13 …(5)
上記式(5)は、図10から図12における「△」を含んだ条件であり、図10から図12における「△」を含まない、より好ましい曳糸境界条件は、次式(5’)と表すことができる。
v≧3.5×log10(γ)−0.25×η+14 …(5’)
なお、上記式(4),(4’),(5),(5’)の右辺と左辺の単位が整合するように、上記各式における右辺の第一項、第二項の定数は単位を持った値である。また、図10から図12に示した光硬化性樹脂液体の粘度は、本例に示すナノインプリントシステム(装置)に適用される光硬化性樹脂液体の粘度の例示である。
一般に、インクジェット方式による液体吐出において、吐出させた液滴の分離や曳糸状態のまとまりやすさは、液体の粘度η、液体の吐出速度(代表速度)U、液体の表面張力αを用いた無次元数のキャピラリー数Ca(=(η×U)/α)で考えることができる。
したがって、上記式(4)、(4’)、(5)、(5’)の粘度ηを含む定数項は、粘度の一次関数となることが合理的であり、上記式(4)、(4’)、(5)、(5’)は、実験パラメータとして例示した4ミリパスカル秒、8ミリパスカル秒、12ミリパスカル秒以外の粘度であっても、インクジェット方式に適用可能な粘度の範囲で拡張して考えることができる。
上記の如く構成されたナノインプリント方法及びシステムによれば、光硬化性樹脂液体の吐出速度vが上記式(3)を満たすことで、液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体を二滴に分裂させて基板上に着弾させることができる。
また、光硬化性樹脂液体の吐出速度v、駆動電圧の傾きγ、光硬化性樹脂液体の粘度ηが上記(4)の関係を満たすことで、液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体を二滴に分裂させて基板上に着弾させることができる。より好ましくは、光硬化性樹脂液体の吐出速度v、駆動電圧の傾きγ、光硬化性樹脂液体の粘度ηが上記(4’)の関係を満たすことである。
さらに、光硬化性樹脂液体の吐出速度v、駆動電圧の傾きγ、光硬化性樹脂液体の粘度ηが上記(5)の関係を満たすことで、液柱状態で吐出させた光硬化性樹脂液体を曳糸状態で基板上に着弾させることができる。より好ましくは、光硬化性樹脂液体の吐出速度v、駆動電圧の傾きγ、光硬化性樹脂液体の粘度ηが上記(5’)の関係を満たすことである。
〔応用例〕
次に、上述した実施形態の応用例について説明する。
(概要)
図13(a),(b)は、モールド26の光硬化性樹脂液体25に対する濡れの異方性を模式的に示す説明図である。
一般に、モールド26は、光硬化性樹脂液体25に対して濡れやすさの異方性がある。図12(a)に示すモールド26は、同図における横方向に濡れやすい性質を有しており、破線により図示した光硬化性樹脂液体25にモールド26を押し当てると、光硬化性樹脂液体25は、符号25Dを付して実線により図示した形状となる。
図13(b)に示すモールド26’は、同図中斜め方向(右下がり方向)に濡れやすい性質を有しており、破線により図示した光硬化性樹脂液体25にモールド26’を押し当てると、該光硬化性樹脂液体25は、符号25Eを付して実線により図示した形状となる。
このように、モールド26は濡れやすさに異方性があるので、濡れやすい方向と略直交する方向に二滴に分裂した状態の光硬化性樹脂液体を配置するか、濡れやすい方向と略直交する方向が曳糸状態の長手方向となるように光硬化性樹脂液体25を配置することで、濡れやすい方向に光硬化性樹脂液体25が少なく、濡れにくい方向に光硬化性樹脂液体25が多くなり、モールド26を基板20(図2参照)に押し当てて光硬化性樹脂液体25を濡れ広がらせる効率が向上し、スループットの向上につながる。
図14(a)〜(d)は、モールド26の濡れの異方性を考慮した光硬化性樹脂液体25の配置例を説明する図である。以下の説明において、同一又は類似する部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図14(a)は、光硬化性樹脂液体25が配置された基板20の全体を示す平面図であり、図14(b)は、図14(a)の符号20’を付した領域の拡大図である。図14(b)は、モールド26の濡れやすい方向が同図中上下方向である場合の光硬化性樹脂液体25の配置例を示している。
また、図14(c)は、モールド26が押し当てられた光硬化性樹脂液体25が濡れ広げられる状態が模式的に図示され、図14(d)は光硬化性樹脂液体25がさらに濡れ広げられる状態が模式的に図示されている。
二滴に分裂させた状態又は曳糸状態で基板20に光硬化性樹脂液体25を着弾させるためには、インクジェットヘッド24と基板20とを相対的に高速で移動させる必要がある。一方、インクジェットヘッド24と基板20とを相対的に高速で移動させると、インクジェットヘッド24の吐出周波数を高くしなければ、異なるタイミングで吐出させる光硬化性樹脂液体25の間隔が離れてしまい、モールド26内に必要量の光硬化性樹脂液体25を充填できなくなる。
そこで、モールド26の濡れやすい方向をインクジェットヘッド24の走査方向(x方向)として、インクジェットヘッド24をx方向に複数回走査させて、一回の走査により吐出させた光硬化性樹脂液体25‐1の間を、異なる走査により吐出させた光硬化性樹脂液体25‐2により埋めることで、異なるタイミングで吐出させた光硬化性樹脂液体25の間隔が調整される。
また、光硬化性樹脂層25”(図2参照)の厚みが面内でばらつくと、エッチング工程における処理厚みのばらつきの原因となるので、残渣厚(モールド26の凹凸に入り込まない光硬化性樹脂層25”の厚み)のばらつきを低減させて、光硬化性樹脂層25”の厚みを面内で一定する必要がある。
したがって、インクジェットヘッド24をx方向に複数回走査させて、x方向に並ぶように配置される光硬化性樹脂液体25が、異なるノズル23から吐出させたものを含むようにノズル23を選択することで、インクジェットヘッド24のノズル間の吐出量のばらつきが補正される。
もちろん、基板20の搬送方向(図4に図示したy方向)についても、同方向に並ぶ光硬化性樹脂液体25は複数のノズル23から吐出させたものを含むように、ノズル23が選択される態様も好ましい。
図14(b)に示す光硬化性樹脂液体の配置例では、符号25‐1を付した近接して配置される二つの光硬化性樹脂液体は、一回の吐出動作において二滴に分裂して着弾したものであり、一回目の走査により吐出させたものである。
一方、符号25‐2を付した近接して配置される二つの光硬化性樹脂液体は、一回の吐出動作において二滴に分裂して着弾したものであり、二回目の走査により吐出させたものである。
このようにして、モールド26の濡れやすい方向を考慮して、モールド26の濡れやすい方向についてより分散的に光硬化性樹脂液体25を配置するととともに、複数回のインクジェットヘッド24の走査により、モールド26の濡れやすい方向と直交する方向の光硬化性樹脂液体25の配置間隔を調整することで、モールド26の濡れの異方性が考慮された光硬化性樹脂液体25の配置が実現される。
図15(a),(b)は、モールド26の濡れの異方性が考慮された光硬化性樹脂液体25の他の配置例を説明する図である。
図15(a)に示すように、基板20上の光硬化性樹脂液体25‐1,25‐2の間隔を等間隔とするように、インクジェットヘッド24の走査速度、走査回数が調整され、吐出に用いられるノズルが選択される。
図16(a)〜(d)は、曳糸状態で着弾させた光硬化性樹脂液体25の配置例を説明する図である。
図16(b)に示すように、モールド26の濡れやすい方向と直交する方向が曳糸状態の長手方向となるように光硬化性樹脂液体25を配置することで、モールド26の濡れの異方性が考慮された光硬化性樹脂液体25の配置が実現される。
(比較例の説明)
図17(a)〜(d)及び図18(a),(b)は、一滴状態で着弾させた光硬化性樹脂液体25の配置を示している。図14(a)〜(d)及び図15(a),(b)と比較すると、光硬化性樹脂液体25が均一に濡れ広げられていないことがわかる。かかる場合には、光硬化性樹脂液体25が足りない領域にさらに光硬化性樹脂液体25を配置する必要があるが、光硬化性樹脂液体25が過剰となる領域が生じる可能性がある。
(具体的な装置構成の説明)
図19は、モールド26の濡れやすい方向に光硬化性樹脂液体25を配置するための装置構成を示す構成図である。
同図に示す光硬化性樹脂液体吐出部212は、インクジェットヘッド224をxy平面内で回転させるインクジェットヘッド回転機構221と、インクジェットヘッド224が搭載されるキャリッジ229と、インクジェットヘッド224をx方向に走査させる走査機構227と、基板220をy方向に移動させる水平移動機構222と、インクジェットヘッド224をz方向(x方向及びy方向と直交する垂直方向)に移動させる垂直移動機構225と、インクジェットヘッド224のz方向における位置を規制するストッパー223とを備えている。
モールド26の濡れの異方性は、モールド26に形成されるパターンによって異なるために、図19に示す光硬化性樹脂液体吐出部212は、モールド26の濡れの異方性に合わせて、基板220とインクジェットヘッド224との位置を調整できるように構成されている。
図19に示す構成では、インクジェットヘッド224を基板220に対して回転可能に構成されている。モールド26の濡れの異方性は最大で90°の違いがあるので、インクジェットヘッド回転機構221は、90°以上の回転が必要である。
一般的なインクジェットヘッド224は−10°から+10°程度のアライメント機能が具備されているので、このアライメント機能との併用を考慮して、インクジェットヘッド回転機構221は−10°から+100℃の範囲でインクジェットヘッド224を回転させるように構成される。
なお、インクジェットヘッド224を回転させる代わりに、又はこれと併用して、基板220をインクジェットヘッド224に対して回転させてもよい。上述したように、基板220のアライメントを考慮して、基板220の回転範囲は−10°から+100°とされる。
なお、フルライン型インクジェットヘッドを備える形態では、吐出データを変更して(データ上でパターンを回転させて)、光硬化性樹脂液体が吐出されるノズルを変更することで、モールド26(図3参照)の濡れの異方性に対応することが可能である。
また、モールド26と基板20との位置合わせを行う際に、基板20に着弾した光硬化性液体のパターンと、モールド26の濡れやすい方向とを合わせるように、基板20とモールド26との位置が調整される。
固定された基板20に対してモールド26を回転させる回転機構を備えてもよいし、固定されたモールド26に対して基板20を回転させる回転機構を備えてもよい。
(モールドの濡れの異方性の検査)
モールド26の濡れの異方性に対応してインクジェットヘッド224又は基板220を回転させる際に、モールド26の濡れの異方性を検査しておき、モールド26の濡れの異方性情報を取得し、記憶しておく必要がある。
図20(a)〜(d)は、モールド26の濡れの異方性を検査する方法を模式的に図示した説明図である。
図20(a)に示すように、インクジェットヘッド24(又はピペットのような滴下部材)からモールド26へ光硬化性樹脂液体25を滴下する。図20(b)は、モールド26に光硬化性樹脂液体25が滴下された状態である。
図20(c)は、モールド26に滴下された光硬化性樹脂液体25が濡れ広がった状態を観察装置240によって観察されている様子が模式的に図示されている。図20(c)に示す矢印線の方向は、モールド26の濡れやすい方向となる。
このモールド26の濡れやすい方向の情報は、モールド26の情報として所定の記憶部に記憶される。観察装置240の形態の一例として、拡大光学系を備えた観察装置(顕微鏡等)が挙げられる。
〔光硬化性樹脂液体の説明〕
次に、本例に示すナノインプリントシステムに適用される光硬化性樹脂液体の一例として、レジスト組成物(以下、単に「レジスト」と記載することがある。)について詳細に説明する。
レジスト組成物は、一種以上のフッ素を含む界面活性剤(含フッ素界面活性剤)と重合性化合物と、光重合開始剤Iとを少なくとも含有するインプリント用硬化性組成物である。
レジスト組成物には、機能として多官能重合性基を有することによる架橋性の発現を狙い、又は炭素密度を高める、又は結合エネルギーの総量を高める、又は硬化後の樹脂中に含まれるO、S、N、等の電気陰性度が高い部位の含有率を抑制する等によりエッチング耐性を向上させる目的で重合性官能基を有する1官能以上のモノマー成分を含んでもよく、更に、必要に応じて、基板とのカップリング剤、揮発性溶剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
基板とのカップリング剤としては、前述の基板の密着処理剤と同様の材料を用いることができる。含有量としては、基板とレジスト層との界面に配置する程度に含有していれば良く、10質量パーセント(質量%)以下であれば良く、5質量パーセント以下がより好ましく、2質量パーセント以下が更により好ましく、0.5質量パーセント以下であることが最も好ましい。
レジスト組成物の粘度は、モールド26(図6参照)に形成されたパターンへのレジスト組成物中の固形分(揮発溶剤成分を除いた成分)の入り込みと、モールド26への濡れ広がり性の観点から、固形分の粘度は、1000ミリパスカス秒以下であることが好ましく、100ミリパスカス秒以下であることがより好ましく、20ミリパスカス秒以下であることが更により好ましい。しかしながら、インクジェット方式を利用する場合は、室温またはヘッドで吐出時に温度制御可能であればその温度範囲内にて20ミリパスカス秒以下となることが好ましく、またレジスト組成物の表面張力が20ミリニュートン毎メートル(mN/m)以上40ミリニュートン毎メートル以下の範囲、さらにミリニュートン毎メートル以上、36ミリニュートン毎メートル以下となることが、インクジェットでの吐出安定性を確保する観点で好ましい。
(重合性化合物)
レジスト組成物の主成分となる重合性化合物としては、以下の〔数1〕で示される化合物中のフッ素含有率が5%以下であるか、またはフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を実質的に含まない重合性化合物であることとする。
重合性化合物としては、硬化後のパターンの精度及びエッチング耐性等の品質の良好なものであることが好ましい。かかる重合性化合物としては、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含むことが好ましく、多官能単量体は、少なくとも1つの2価又は3価の芳香族基を有するものであることが好ましい。
硬化(重合)後に三次元構造を有するレジストの場合は、硬化処理後の形状維持性が良く、モールド剥離時にモールドとレジストとの付着力によって、レジストにかかる応力がレジスト構造体の特定エリアに集中し、パターンが塑性変形することが抑制される。しかしながら、重合後に三次元構造を有する重合体となる多官能モノマーの比率や、重合後に三次元架橋を形成する部位の密度が上昇すると、硬化後のヤング率が大きくなって変形性が低下し、また膜の脆性が悪化するため、モールド剥離時に破断しやすくなってしまうことが懸念される。特にパターンサイズが30ナノメートル幅以下でパターンアスペクト比が2以上のパターンを残膜厚みが10ナノメートル以下となる態様では、ハードディスクパターンや半導体パターンなどの広エリアでの形成を試みた場合に、パターンの剥がれやもげが発生する確率が大きくなると考えられる。
従って、多官能単量体は、重合性化合物中に10質量パーセント以上含有されることが好ましく、20質量パーセント以上含有されることがより好ましく、30質量パーセント以上含有されることが更に好ましく、40質量パーセント以上であることが最も好ましいことを見出した。
また、次式〔数2〕で表される架橋密度が0.01個/ナノ平方メートル以上10個/ナノ平方メートル以下であることが好ましく、0.1個/ナノ平方メートル以上6個/ナノ平方メートル以下であることがより好ましく、0.5個/ナノ平方メートル以上5.0個/ナノ平方メートル以下であることがもっとも好ましいことを見出した。組成物の架橋密度は、各分子の架橋密度を求め、更に重量平均より求めるか、または組成物の硬化後密度を測定し、Mw、および(Nf−1)についてそれぞれの値を重量平均した値と次式〔数2〕より求める。
但し、Daは1分子の架橋密度、Dcは硬化後密度、Nfはモノマー1分子中に含まれるアクリレート官能基数、Naはアボガドロ定数、Mwは分子量である。
重合性化合物の重合性官能基としては、特に制限されないが、反応性及び安定性が良好であることから、メタクリレート基、アクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
ドライエッチング耐性は、レジスト組成物の大西パラメータ及びリングパラメータにより評価することができる。大西パラメータが小さく、また、リングパラメータが大きいものほどドライエッチング耐性に優れる。本発明において、レジスト組成物は、大西パラメータが4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下となるように、また、リングパラメータが0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上となるものを好適としている。
上記各パラメータは、レジスト組成物を構成する揮発溶剤成分以外の構成物質について、構造式を元に後述の計算式を用いて算出された材料パラメータ値を、組成重量比を元に組成物全体で平均化した値として求める。従って、レジスト組成物の主成分である重合性化合物についても、レジスト組成物中のその他の成分、及び上記パラメータを考慮して選択することが好ましい。
大西パラメータ=(化合物中の総原子数)/{(化合物中の炭素原子数)−(化合物中の酸素原子数)}
リングパラメータ=(環構造を形成する炭素質量)/(化合物の全質量)
重合性化合物としては、以下に示す重合性単量体、及びかかる重合性単量体が数単位重合したオリゴマー等が挙げられる。パターン形成性とエッチング耐性の観点から、重合性単量体(Ax)、及び特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物のうちの少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。
(重合性単量体(Ax))
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化1〕に示す一般式(I)で表される。
なお、上記〔化1〕に示す一般式(I)中、Arは置換基を有していてもよい2価または3価の芳香族基を表し、Xは単結合または有機連結基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは2または3を表す。
上記の一般式(I)中、Arとしては、n=2のときは2価の芳香族基(すなわちアリーレン基)を表し、n=3のときは3価の芳香族基を表す。アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基などの炭化水素系アリーレン基;インドール、カルバゾールなどが連結基となったヘテロアリーレン基などが挙げられ、好ましくは炭化水素系アリーレン基であり、さらに好ましくは粘度、エッチング耐性の観点からフェニレン基である。アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基が挙げられる。
Xの有機連結基としては、鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。その中でも、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。Xとしては、単結合またはアルキレン基であることが特に好ましい。
R1は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。R1が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、特に制限はないが、例えば水酸基、ハロゲン原子(フッ素を除く)、アルコキシ基、アシルオキシ基を挙げることができる。nは2または3であり、好ましくは2である。
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化2〕に示す一般式(I−a)、又は一般式(I−b)で表される重合性単量体であることが、組成物粘度を低下させる観点から好ましい。
なお、上記の一般式(I−a)、(I−b)中、X1、X2は、それぞれ独立に単結合または炭素数1〜3の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R1は水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
一般式(I−a)中、前記X1は、単結合またはメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが粘度低減の観点からより好ましい。X2の好ましい範囲は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
R1は上記の一般式(I)におけるとR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。重合性単量体(Ax)は25℃において液体であると、添加量を増やした際にも異物の発生が抑制でき好ましい。重合性単量体(Ax)は25℃における粘度が70ミリパスカル秒未満であることがパターン形成性の観点から好ましく、50ミリパスカル秒以下であることがより好ましく、30ミリパスカル秒以下であることが特に好ましい。
以下の〔化3〕に好ましい重合性単量体(Ax)の具体例を示す。R1は一般式(I)におけるR1と同義である。R1としては硬化性の観点から、水素原子が好ましい。
これらの中でも、以下の〔化4〕に示す化合物が25℃において液体であり、かつ、低粘度で、さらに良好な硬化性を示し、特に好ましい。
レジスト組成物においては、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、必要に応じて重合性単量体(Ax)と、以下に説明する重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体と、を併用することが好ましい。
(他の重合性単量体)
他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテルまたはブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
これらの他の重合性単量体のうち、インプリント適性とドライエッチング耐性、硬化性、粘度等の観点から、特開2009‐218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物をより好ましく含むことが出来る。更に他に含むことが出来る前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2‐アクリロイロキシエチルフタレート、2‐アクリロイロキシ2‐ヒドロキシエチルフタレート、2‐アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2‐アクリロイロキシプロピルフタレート、2‐エチル‐2‐ブチルプロパンジオールアクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐メトキシエチル(メタ)アクリレート、3‐メトキシブチル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1‐または2‐ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
これらの中で特に、芳香族構造および/または脂環炭化水素構造を有する単官能(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性を改善する観点から好ましい。具体例ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、が特に好ましい。
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9‐ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)の具体例として、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などが挙げられる。
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6‐ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR‐6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM‐2400、KRM‐2410、KRM‐2408、KRM‐2490、KRM‐2720、KRM‐2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry ofheterocyclic compounds−SmallRingHeterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,AnInterscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11‐100378号公報明細書、特許第2906245号公報明細書、特許第2926262号公報明細書などの文献を参考にして合成できる。
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2‐エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール‐1,4‐ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2‐プロパンジオールジビニルエーテル、1,3‐プロパンジオールジビニルエーテル、1,3‐ブタンジオールジビニルエーテル、1,4‐ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1‐トリス〔4‐(2‐ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,PolymersPaintColour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、β‐メチルスチレン、p‐メチル‐β‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、p‐メトキシ‐β‐メチルスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテルまたはブテニルエーテルとしては、例えば1‐ドデシル‐1‐プロペニルエーテル、1‐ドデシル−1−ブテニルエーテル、1‐ブテノキシメチル‐2‐ノルボルネン、1‐4‐ジ(1‐ブテノキシ)ブタン、1,10‐ジ(1‐ブテノキシ)デカン、1,4‐ジ(1‐ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1‐ブテニル)エーテル、1,2,3‐トリ(1‐ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
(含フッ素界面活性剤)
本例に示すインプリントシステムでは、含フッ素界面活性剤は、レジストパターンの一部となるため、良好なパターン形成性、硬化後のモールド離型性及びエッチング耐性の良好なレジスト特性を有するものであることが好ましい。
含フッ素界面活性剤の含有量は、レジスト組成物中、例えば、0.001質量パーセント以上5質量パーセント以下であり、好ましくは0.002質量パーセント以上4質量パーセント以下であり、さらに好ましくは、0.005質量パーセント以上3質量パーセント以下である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001質量パーセント以上5質量パーセント以下の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化や、インプリント後のエッチング工程におけるエッチング適性の劣化を招きにくい。
(重合開始剤I)
重合開始剤Iとしては、レジスト組成物を硬化させる際に用いる光L1により活性化してレジスト組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始する活性種を発生するものであれば特に制限されない。重合開始剤Iとしては、ラジカル重合開始剤が好ましい。また、本発明において、重合開始剤Iは複数種を併用してもよい。
重合開始剤Iとしては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましく、例えば、特開平2008‐105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
重合開始剤Iの含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01質量パーセント以上15質量パーセント以下であり、好ましくは0.1質量パーセント以上12質量パーセント以下であり、さらに好ましくは0.2質量パーセント以上7質量パーセント以下である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の含有量が0.01質量パーセント以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量パーセント以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
これまで、染料および/または顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤の添加量が種々検討されてきたが、インプリント用等の光インプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/または顔料を含む系では、開始剤がラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、レジスト組成物では、染料および/または顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
本例に示すインプリントシステムに適用されるレジストに含有するラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィン系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008‐105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
なお、光L1には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波の他に、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248ナノメートルエキシマレーザー、193ナノメートルエキシマレーザー、172ナノメートルエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
光重合開始剤Iは、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、レジスト組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させてしまったりするなどの問題を生じる。
レジスト組成物では、含まれる重合性単量体がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤Iが光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましい。
(その他成分)
既に述べたように、本例に示すインプリントシステムに適用されるレジスト組成物は、上述の重合性化合物、含フッ素界面活性剤、及び光重合開始剤Iの他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。以下にその他の成分について概要を説明する。
(酸化防止剤)
レジスト組成物では、公知の酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01質量パーセント以上10質量パーセント以下であり、好ましくは0.2質量パーセント以上5質量パーセント以下である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NOx、SOx(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
(重合禁止剤)
レジスト組成物は、重合禁止剤を少量含有することが好ましい。重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001質量パーセント以上1質量パーセント以下であり、より好ましくは0.005質量パーセント以上0.5質量パーセント以下、さらに好ましくは0.008質量パーセント以上0.05質量パーセント以下である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。
(溶剤)
レジスト組成物は、必要に応じて、種々の溶剤を含むことができる。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜280℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
レジスト組成物中の溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中0〜99質量パーセントが好ましく、0〜97質量パーセントがさらに好ましい。特に膜厚500ナノメートル以下のパターンを形成する際には20質量パーセント以上99質量パーセント以下が好ましく、40質量パーセント以上9質量パーセント以下がさらに好ましく、70質量パーセント以上98質量パーセント以下が特に好ましい。
(ポリマー成分)
レジスト組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量パーセントが好ましく、より好ましくは0〜20質量パーセント、さらに好ましくは0〜10質量パーセント、最も好ましくは0〜5質量パーセントである。
レジスト組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点から、ポリマー成分を含有していてもよい。かかるポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000以上100000以下が好ましく、5000以上50000以下がさらに好ましい。
ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量パーセントが好ましく、より好ましくは0〜20質量パーセント、さらに好ましくは0〜10質量パーセント、最も好ましくは2質量パーセント以下である。パターン形成性の観点から、レジスト組成物において、溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量パーセント以下である方が好ましい。樹脂成分はできる限り少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
レジスト組成物には、上記した成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
レジスト組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、各成分を混合した後、例えば、孔径0.003マイクロメートル〜5.0マイクロメートルのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。光インプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行われる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
かかるレジスト組成物は、インクジェット方式による微小液滴化が可能な範囲の粘度に調整される。インクジェット方式による吐出可能な粘度の範囲は、4ミリパスカル秒から20ミリパスカル秒であり、好ましくは8ミリパスカル秒から15ミリパスカル秒である。このときの溶媒量は、10重量パーセント以下とされる。また、経時により溶媒が揮発した場合の粘度上昇は、10ミリパスカル秒以下とされる。
上記のようにインクジェット方式に適した粘度に調整されたレジスト組成物の表面張力は、20ミリニュートン毎メートル以上40ミリニュートン毎メートル以下であり、好ましくは25ミリニュートン毎メートル以上35ミリニュートン毎メートル以下である。
上記実施形態では、光硬化性樹脂液体吐出部12と、パターン転写部14と備えたナノインプリントシステム10を例示したが、光硬化性樹脂液体吐出部12及びパターン転写部14を個別の装置として構成する態様も可能である。
すなわち、本発明に係るナノインプリントシステム(装置)10として、光硬化性樹脂液体吐出装置と、パターン転写装置と、を備える構成も可能である。
本発明に係る機能性液体吐出装置及びインプリントシステム並びに機能性液体吐出方法は、以下のような製造の際に好適に用いることができる。
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。
第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ‐TAS(Micro-Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。
第三の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶、反射防止構造体(モスアイ)などの永久膜形成用途においても有用である。
以上、本発明に係る液体吐出装置及び液体吐出方法並びにナノインプリントシステムの具体例として、ナノインプリントシステム(装置)について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):所定の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有する駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、前記生成された駆動電圧の振幅を調整する駆動電圧調整手段と、前記生成され、振幅が調整された駆動電圧を前記圧電素子に印加して、前記圧電素子を引き押し動作させる液体吐出ヘッド駆動手段と、を備え、前記駆動電圧調整手段は、前記圧電素子への前記駆動電圧の印加タイミングを基準とし、前記機能性液体が前記ノズルの開口面から300ミクロンの位置に達するタイミングまでの時間t(マイクロ秒)を用いて、v=300/t(メートル毎秒)で表される前記機能性液体の吐出速度vと、前記機能性液体の粘度η(ミリパスカル秒)と、前記駆動電圧の前記引き波形要素及び前記押し波形要素の傾きγ(1/マイクロ秒)と、の関係が、次式v≧−2.5×log10(γ)+0.4×η+6.8を満たすように前記駆動電圧を調整するか、次式v≧3.5×log10(γ)−0.25×η+13を満たすように前記駆動電圧を調整し、液体吐出ヘッド駆動手段は、前記調整された駆動電圧を前記圧電素子に印加して前記圧電素子を一回引き押し動作させて、前記ノズルから液柱状態で吐出させた前記機能性液体を複数に分裂させて前記基板上に着弾させるように前記液体吐出ヘッドを駆動させるか、前記ノズルから液柱状態で吐出させた前記機能性液体を曳糸状態で前記基板上に着弾させるように液体吐出ヘッドを駆動させることを特徴とする機能性液体吐出装置。
本発明によれば、一回の圧電素子の引き押し動作によって、ノズルから液柱状態で吐出させた機能性液体を基板上に分裂させて着弾させるか、曳糸状態で着弾させるように、機能性液体の吐出速度vと、機能性液体の粘度ηと、駆動電圧の傾きγが決められるので、ノズル数やヘッド数の増加、吐出周波数の高速化をすることなく、基板上に着弾させた機能性液体の液滴量が微小化された状態と等しい状態を得ることができ、かつ、微細化された状態と等しい状態の機能性液体を高密度に配置させることが可能となる。
「機能性液体」とは、基板上に微細パターンを形成しうる機能性材料の成分を含有する液体であり、その一例としてレジスト液などの光硬化性樹脂液体や、熱硬化性樹脂液体が挙げられる。
機能性液体が「分裂」させた状態とは、ノズルから液柱状態で吐出させた機能性液体が二つ以上の微液滴に分かれた状態や、微液滴と曳糸状態に分かれた状態が含まれる。
機能性液体の「曳糸状態」とは、ノズルから液柱状態で吐出させた機能性液体が飛翔中に延ばされた状態をいう。機能性液体が曳糸状態で基板に着弾すると、機能性液体が薄く延ばされた状態と等価になり、単位面積あたりの機能性液体量を小さくすることができる。
本発明において、v≧−2.5×log10(γ)+0.4×η+7.8を満たして、前記ノズルから液柱状態で吐出させた前記機能性液体を複数に分裂させて前記基板上に着弾させるように前記液体吐出ヘッドを駆動させるか、v≧3.5×log10(γ)−0.25×η+13を満たして、前記ノズルから液柱状態で吐出させた前記機能性液体を曳糸状態で前記基板上に着弾させるように液体吐出ヘッドを駆動させる態様も好ましい。
(発明2):発明1に記載の機能性液体吐出装置において、前記相対移動手段は、前記液体吐出ヘッドを前記基板に対して走査させる走査手段と、前記走査手段の走査方向と直交する方向について、前記基板を移動させる基板移動手段と、を含み、前記走査手段は、前記液体吐出ヘッドを前記基板の同一の領域について複数回走査させ、前記インクジェットヘッド駆動手段は、前記走査手段の複数回の走査のそれぞれについて、機能性液体を吐出させることを特徴とする。
かかる態様によれば、液体吐出ヘッドの走査速度を上げて、所定の機能性液体の配置密度を確保することができる。
(発明3):発明1又は2に記載の機能性液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッド駆動手段は、前記相対移動方向に沿って配置される機能性液体を複数のノズルから吐出させることを特徴とする。
かかる態様によれば、ノズルごとの吐出特性に起因する吐出量のばらつきにより生じる、残渣厚のばらつきを低減させることができる。
(発明4):発明1から3のいずれかに記載の機能性液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッド駆動手段は、前記機能性液体の吐出速度vが12メートル毎秒以上18メートル毎秒未満となるように前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
かかる態様によれば、機能性液体の吐出の安定性を確保しつつ、確実に分裂状態又は曳糸状態の機能性液体を基板に着弾させることができる。
(発明5):所定の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有する駆動電圧を生成する駆動電圧生成手段と、前記生成された駆動電圧の振幅を調整する駆動電圧調整手段と、前記生成され、振幅が調整された駆動電圧を前記圧電素子に印加して、前記圧電素子を引き押し動作させる液体吐出ヘッド駆動手段と、を備え、前記駆動電圧調整手段は、前記圧電素子への前記駆動電圧の印加タイミングを基準とし、前記機能性液体が前記ノズルの開口面から300ミクロンの位置に達するタイミングまでの時間t(マイクロ秒)を用いて、v=300/t(メートル毎秒)で表される前記機能性液体の吐出速度vと、前記機能性液体の粘度η(ミリパスカル秒)と、前記駆動電圧の前記引き波形要素及び前記押し波形要素の傾きγ(1/マイクロ秒)と、の関係が、次式v≧−2.5×log10(γ)+0.4×η+6.8を満たすように前記駆動電圧を調整するか、次式v≧3.5×log10(γ)−0.25×η+13を満たすように前記駆動電圧を調整し、液体吐出ヘッド駆動手段は、前記調整された駆動電圧を前記圧電素子に印加して前記圧電素子を一回引き押し動作させて、前記ノズルから液柱状態で吐出させた前記機能性液体を複数に分裂させて前記基板上に着弾させるように前記液体吐出ヘッドを駆動させるか、前記ノズルから液柱状態で吐出させた前記機能性液体を曳糸状態で前記基板上に着弾させるように液体吐出ヘッドを駆動させることを特徴とするインプリントシステム。
本発明によれば、基板上に着弾させた機能性液体の液滴量が微小化された状態と等しい状態を得ることができ、かつ、微細化された状態と等しい状態の機能性液体を高密度に配置させることが可能となり、均一な残渣厚を有する好ましい機能性液体の凹凸パターンを形成しうる。
(発明6):発明5に記載のインプリントシステムにおいて、前記転写手段は、前記型における前記機能性液体の濡れやすい方向と略直交する方向に、前記分裂させた機能性液体が配置される方向、あるいは前記曳糸状態の機能性液体の長手方向が合わされるように前記型と前記基板とを接触させることを特徴とする。
かかる態様において、型の濡れの異方性に合わせて濡れにくい方向により多くの機能性液体を配置させることで、機能性液体を効率よく濡れ広がらせることができ、型の凹凸パターンへの充填時間が短縮され、タクトアップが可能となる。
(発明7):発明5又は6に記載のインプリントシステムにおいて、前記型における前記機能性液体の濡れやすい方向を検出する検出手段と、前記検出された型における前記機能性液体の濡れやすい方向と略直交する方向に、前記分裂させた機能性液体が配置されるか、あるいは前記曳糸状態の機能性液体の長手方向が合わされるように前記液体吐出ヘッドと前記基板との相対位置を調整する調整手段を備えたことを特徴とする。
かかる態様における検出手段の一例として、型に機能性液体を滴下させ、濡れ広がる状態を観察する態様がある。また、検出結果が型情報として記憶される態様も好ましい。
かかる態様における調整手段の一例として、液体吐出ヘッド及び前記基板のいずれか一方を回転させる態様が挙げられる。
(発明8):発明5又は6に記載のインプリントシステムにおいて、前記型における前記機能性液体の濡れやすい方向を検出する検出手段を備え、前記転写手段は、前記検出された型における前記機能性液体の濡れやすい方向と略直交する方向に、前記分裂させた機能性液体が配置されるか、あるいは前記曳糸状態の機能性液体の長手方向が合わされるように前記型と前記基板との相対位置を調整することを特徴とする。
かかる態様における型と基板との相対位置調整の一例として、基板を固定して型を回転させる態様、型を固定して基板を回転させる態様。型及び基板の両方を回転させる形態が挙げられえる。
(発明9):発明5から8のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置において、前記相対移動手段は、前記液体吐出ヘッドを前記基板に対して走査させる走査手段と、前記走査手段の走査方向と直交する方向について、前記基板を移動させる基板移動手段と、を含み、前記走査手段は、前記液体吐出ヘッドを前記基板の同一の領域について複数回走査させ、前記液体吐出ヘッド駆動手段は、前記走査手段の複数回の走査のそれぞれについて、機能性液体を吐出させることを特徴とする。
(発明10):発明5から9のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッド駆動手段は、前記相対移動方向に沿って配置される機能性液体を複数のノズルから吐出させることを特徴とする。
(発明11):発明5から10のいずれか1項に記載の機能性液体吐出装置において、前記液体吐出ヘッド駆動手段は、前記機能性液体の吐出速度vが12メートル毎秒以上18メートル毎秒未満となるように前記機能性液体を吐出させることを特徴とする。
(発明12):発明5から11のいずれかに記載のインプリントシステムにおいて、前記機能性液体は、光重合性モノマー、光重合開始剤、及び溶媒を含み、前記転写手段は、前記パターンが転写された機能性液体に対して光を照射させて硬化させることを特徴とする。
かかる態様において、光重合性モノマー、光重合開始剤が反応しうる様々な波長の光を適用しうる。例えば、紫外線、可視光線などが挙げられる。
(発明13):発明5から12のいずれかに記載のインプリントシステムにおいて、前記機能性液体は、フッ素モノマーを含有することを特徴とする。
かかる態様によれば、型との濡れ性を制御することができ、型に形成されるパターン内へ機能性液体を充填することが容易になる。
また、機能性液体を、液体吐出ヘッドの吐出性が良好となる表面張力に調整することができる。
(発明14):発明5から13のいずれかに記載のインプリントシステムにおいて、前記転写手段は、前記型の凹凸パターンが形成されている面を前記基板の液体が着弾した面に押し当てる押圧手段と、前記型と前記基板との間の液体を硬化させる硬化手段と、前記型と前記基板とを剥離させる剥離手段と、を備えたことを特徴とする。
かかる態様によれば、型の凹凸パターンが転写されたマスクパターンが形成される。
(発明15):所定の粘度を有する機能性液体を基板上に吐出させるノズルを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板とを相対的に移動させる相対移動工程と、前記圧力室を静定状態から膨張させる引き波形要素及び前記膨張させた圧力室を収縮させる押し波形要素を有する駆動電圧を生成する駆動電圧生成工程と、前記生成された駆動電圧の振幅を調整する駆動電圧調整工程と、前記生成され、振幅が調整された駆動電圧を前記圧電素子に印加して、前記圧電素子を引き押し動作させて前記液体吐出ヘッドから前記基板上に前記機能性液体を吐出させる機能性液体吐出工程と、を含み、前記駆動電圧調整工程は、前記圧電素子への前記駆動電圧の印加タイミングを基準とし、前記機能性液体が前記ノズルの開口面から300ミクロンの位置に達するタイミングまでの時間t(マイクロ秒)を用いて、v=300/t(メートル毎秒)で表される前記機能性液体の吐出速度vと、前記機能性液体の粘度η(ミリパスカル秒)と、前記駆動電圧の前記引き波形要素及び前記押し波形要素の傾きγ(1/マイクロ秒)と、の関係が、次式v≧−2.5×log10(γ)+0.4×η+6.8を満たすように前記駆動電圧を調整するか、次式v≧3.5×log10(γ)−0.25×η+13を満たすように前記駆動電圧を調整し、液体吐出ヘッド駆動工程は、前記調整された駆動電圧を前記圧電素子に印加して前記圧電素子を一回引き押し動作させて、前記ノズルから液柱状態で吐出させた前記機能性液体を複数に分裂させて前記基板上に着弾させるように前記液体吐出ヘッドを駆動させるか、前記ノズルから液柱状態で吐出させた前記機能性液体を曳糸状態で前記基板上に着弾させるように液体吐出ヘッドを駆動させることを特徴とする機能性液体吐出方法。
本発明において、相対移動工程は、液体吐出ヘッドを基板に対して走査させる走査工程と、走査工程の走査方向と直交する方向について、基板を移動させる基板移動工程と、を含み、前記走査工程は、液体吐出ヘッドを前記基板の同一の領域について複数回走査させ、機能性液体吐出工程は、走査工程の複数回の走査のそれぞれについて、機能性液体を吐出させる態様が好ましい。
また、機能性液体吐出工程は、相対移動工程の相対移動方向に沿って配置される機能性液体が複数のノズルから吐出される態様が好ましい。
また、機能性液体吐出工程は、機能性液体の吐出速度vが12メートル毎秒以上18メートル毎秒未満となるように前記機能性液体を吐出させる態様が好ましい。