立体視とは、両眼の網膜に結像する物体像を奥行きのあるものとして知覚することであり、視方向に対して視差を生ずる複数の視点から物体を観察する際に、左右眼に別々に得られた像の微妙な視位置の違いを知覚する、両眼視差による像のずれによって立体的な視覚として脳が知覚する画像情報を得ることをいう。
<立体視(ステレオ視)の説明>
まず図19を参照しながら、立体視(ステレオ視)について説明する。図19は、専用眼鏡91を用いて立体映像を取得する場合の結像位置を説明するための説明図である。
ある平面A上には、左眼用画像90Lと右眼用画像90Rとが交互に、あるいは同時に再生されるものとする。左眼用画像90Lには2次元画像9L−a、9L−b、9L−cが、右眼用画像90Rには2次元画像9R−a、9R−b、9R−cが描かれており、画像9L−b及び画像9R−bは、平面A上で重なり合うよう表示される。
専用眼鏡91は、左眼用レンズ91L及び右眼用レンズ91Rを有し、左眼用レンズ91Lは左眼用画像90Lのみを、右眼用レンズ91Rは右眼用画像90Rのみを、使用者に視覚させる。映像が映し出される平面Aを専用眼鏡91を用いて観察した場合、観察者は、対応点の間隔の違いを、奥行量として認識する。以下、具体的に説明する。
まず、2次元画像9L−aと2次元画像9R−aとは、平面A上で同じ位置に配置されており、当然その対応点も重なっている。従って両画像は、平面A上で2次元画像9−aとして結像する(以下、これを通常視と称する)。
次に、2次元画像9L−bと2次元画像9R−bとは、左眼と右眼の視線がその対応点9L−b′と対応点9R−b′とを通過する前に交差するように配置されているため、両画像は平面Aよりも手前に結像し、立体画像9−bとして認識される(以下、これを交差視と称する)。
一方、2次元画像9L−cと2次元画像9R−cとは、左眼と右眼の視線がその対応点9L−c′と対応点9R−c′とを通過した後に交差するよう配置されているため、両画像は平面Aよりも奥で結像し、立体画像9−cとして認識される(以下、これを平行視と称する)。
このように、立体映像は、通常視、交差視、平行視が同時に行われることで、輻湊角の差が奥行量となって現れ、観察者が立体感を感じるものである。以下、このような立体視の訓練を支援する立体視訓練支援装置について説明する。
<第1の実施形態>
本発明に係る立体視訓練支援装置は、意図的に視差の有無及び視差の程度を調整することで、使用者に視差による奥行きの手掛かりを知覚させることで立体視を認識させ、外眼筋の随意性の知覚と、融像機能を得るために必要な眼筋運動を促して支援するものである。
まず、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1の実施形態に係る立体視訓練支援装置1の斜視図、図2は、立体視訓練支援装置1の上面図、図3(a)は、対となるプリズム12L,13L(又は、12R,13L)の斜視図である。
立体視訓練支援装置1は、眼鏡型の器具であり、左眼用レンズ2L及び右眼用レンズ2Rと、これらのレンズを嵌めこんで固定するための筺体10と、使用者が耳に掛けるための左右のテンプル11と、を有している。なお、ここでは両レンズは度なしであるものとする。もちろん、矯正が必要な場合には、任意の度を入れてもよい。
また、筺体10の内部には、図2に示すように、使用者の左眼5Lの視線上で左眼用レンズ2Lと重なるよう配置される一対のプリズム12L及び13Lと、使用者の右眼5Rの視線上で右眼用レンズ2Rと重なるよう配置される一対のプリズム12R及び13Rとが、視線方向を偏向する手段として設けられている。元の視線の方向から変化した角度を、ここでは偏角と呼ぶ。なお、プリズムは色収差を除いたものが望ましい。
プリズム12L,13L,12R,13Rは、図3(a)に示すように、一方の面が斜面である平面プリズムであり、全て同形状、同屈折力を有する。各プリズムはプリズム回転機構によって、対となるプリズムが互いに逆方向へ等角度回転するようになっている。プリズム回転機構としては、例えば、図3(b)に記載するような機構を利用できる。図3(b)は、立体視訓練支援装置1のプリズム回転機構の概略説明図である。
図示するように、プリズム回転機構は、プリズム12L,12Rをそれぞれ保持し外周にかさ歯を有するリテーナ15Aと、プリズム13L,13Rをそれぞれ保持し外周にかさ歯を有するリテーナ15Bと、リテーナ15A及び15Bのかさ歯にかみ合い、これらを逆方向に回転させるかさ歯車16と、かさ歯車16を回転させるための回転ツマミ14と、を有している。
なお、かさ歯車16と回転ツマミ14とは、その中心を軸17が貫通し、両者の回転は連動する。また、回転ツマミ14は、筺体の側面から一部が外に突出しており(図1,2参照)、使用者は回転ツマミを回転させることで、対となるプリズムを互いに逆方向に、等角度だけ回転させることができる。
なお、プリズム回転機構はこのようなものに限らず、対となるプリズムが互いに逆方向に、等角度だけ回転するものであれば、どのような機構を用いてもよい。また、上下斜位など、水平斜位以外の斜位がある場合には、双方でその斜位をキャンセルする(打ち消す)方向となるプリズム対が別途必要となるが、ここでは省略する。
上記のような構成により、本発明の立体視訓練支援装置1は、対となるプリズムを回転させることによってそのプリズム屈折力を連続的に変化させることが可能である。具体的には、先ず、互いに逆となる一方のプリズムを基底上方に、他方のプリズムを基底下方とした場合には、見かけの偏角は±0となる(図3(a)(b)参照)。一方、対となる両プリズムを基底が外側(基底外方)となる方向に回転させると、徐々に光は外方側へと屈折し、両プリズムの基底が最も外方となるとき、偏角は外方側に最大となる。また、逆に両プリズムを基底が内側(基底内方)となる方向に回転させると、徐々に光は内方側へと屈折し、両プリズムの基底が最も内方となるとき、偏角は内方側に最大となる。本発明の立体視訓練支援装置1では、使用者の視線に任意の偏角を与えることで、使用者のその時点における輻輳力や融像力に適した注視訓練を行わせることができる。以下、その使用法について説明する。
(使用法)
図4は、立体視訓練支援装置1による通常視の説明図、図5(a)(b)は、立体視訓練支援装置1による交差視訓練の説明図、図6(a)(b)は、立体視訓練支援装置1による平行視訓練の説明図である。
(輻湊力の訓練1)
まず、視差の無い視標を使用して行う輻湊力の訓練について説明する。使用者は訓練を開始する前に、回転ツマミ14を回転させ、図4に示すように、一方のプリズムが基底上方に、他方のプリズムが基底下方に向くよう調整する(偏角±0)。次に、このように視線がプリズムによって偏向されない状態で、任意の視標Bを注視する(通常視)。
次に、使用者は回転ツマミ14を回転させ、図5(a)に示すように、各プリズムが基底外方へ向くように調整する。各プリズムを基底外方へと回転させていくと、対となるプリズムは外方側への屈折力を徐々に増して光は漸次的に外方側へと屈折する。使用者にとってこのような変化は、プリズム屈折力の増加に伴う複視B′の出現として体感される(気付きを促す)。
従って、使用者が元の単一の像を得るためには、プリズムの屈折力を打ち消す眼球の輻湊運動を行う必要がある(図5(b)参照)。そのため使用者は、視標Bを凝視して明瞭な網膜像を得ようとする。これにより、眼球を内方へと輻湊させようとする外眼筋の動きが促される。プリズムの屈折力に応じて眼球が内方へと回旋すれば、複視B′が解消し、Bと同じ位置にB′′が融像される。
このような注視訓練により、使用者は、自然に眼球の融像に適した輻湊能力を身につけることができる。なお、まず小さい偏角で注視訓練を始め、慣れと共に偏角強度を大きくしていくことで、無理なくスムーズに融像を行えるようになる。
(輻湊力の訓練2)
次に、視差の有る視標を使用して行う輻湊力の訓練について説明する。上記訓練と同様に、使用者は訓練を開始する前に、一方のプリズムが基底上方に、他方のプリズムが基底下方に向くよう調整する(偏角±0)。次に、図6に示すように、任意の視標C1及びC2を注視する(通常視)。なお、視標C1及びC2には、単なる記号以外にも、焦点を意図的に前後にずらすことで立体視が可能な画像を利用することができる。例えば、視差を有する写真等のペア画像(ステレオペア)や、立体が浮かび上がる画像(ステレオグラム)等が挙げられる(これは、大脳視野領域における立体視の手掛り知覚の訓練でもある)。
次に、使用者は回転ツマミ14を回転させ、図7(a)に示すように、各プリズムが基底外方へ向くように調整する。各プリズムを基底外方へと回転させていくと、対となるプリズムは外方側への屈折力を徐々に増して光は漸次的に外方側へと屈折する。これに伴って使用者の左右眼のそれぞれの視野の中心に視標C1とC2を見ることができるようになると、左右の眼の網膜対応点に投影された状態となって、やがて視標C′として融像する。
ここで、融像ができて立体感が得られた状態からさらにプリズムを基底外方へ回転させる。立体視の状態を保つためには、使用者は、両眼の輻輳力を働かせなければならない。これを利用し、融像が壊れて視標が分離しない範囲でプリズムの基底外方への回転を繰り返すことで訓練を行う。これは視差の無い視標を使用して行う輻輳力の訓練に同じである。
このような注視訓練により、使用者は、自然に輻湊能力を身につけることができる。なお、この訓練方法によれば、プリズムが最初に視標C1及びC2の融像(平行視)を補助するため、融像が不可能な使用者であっても、平行視のプロセスを体感することが可能である。
このように本発明によれば、使用者に適した任意の屈折力を与えることによって、積極的な眼球の内転運動(輻湊眼球運動)が促され、使用者は自然に融像性輻湊力を向上させることができる。
(開散力の訓練1)
次に、視差の無い視標を使用して行う開散力の訓練について説明する。使用者はまず、図4に示す通常視の状態を作り出してから、回転ツマミ14を回転させ、図8(a)のように各プリズムが基底内方へ向くように調整する。各プリズムを基底内方へと回転させていくと、内方側への屈折力が徐々に増して視線は漸次的に内方側へと屈折する。使用者にとってこのような変化は、プリズム屈折力の増加に伴う複視B′の出現として体感される。
従って、使用者が元の単一の像を得るためには、プリズムの屈折力に応じた眼球の開散運動を行う必要がある(図8(b)参照)。そのため使用者は、視標Bを凝視して明瞭な網膜像を得ようとする。これにより、眼球を外方へと開散させようとする外眼筋の動きが促される。プリズムの屈折力に応じて眼球が外方へと回旋すれば複視B′が解消し、Bと同じ位置にB′′が融像される。
このような注視訓練により、使用者は、自然に眼球の開散能力を身につけることができる。なお、小さい偏角で注視訓練を始め、慣れと共に偏角強度を大きくして行くことで、無理なくスムーズに融像を行えるようになる。
(開散力の訓練2)
次に、視差の有る視標を使用して行う開散力の訓練について説明する。使用者はまず、図6に示す通常視の状態を作り出してから、回転ツマミ14を回転させ、図9(a)のように各プリズムが基底内方へ向くように調整する。各プリズムを基底内方へ回転させていくと、内方側への屈折力が徐々に増して視線は漸次的に内方側へと屈折する。これに伴って使用者の左右眼のそれぞれの視野の中心に視標C1とC2を見ることができるようになると、左右の眼の網膜対応点に投影された状態となって、やがて視標C′′が融像する。
ここで、融像ができて立体感が得られた状態からさらにプリズムを基底内方へ回転させる。使用者は、立体視の状態を保つためには両眼の輻輳力を働かせなければならない。これを利用し、融像が壊れて視標が分離しない範囲でプリズムの基底内方への回転を繰り返すことで訓練を行う。これは視差の無い視標を使用して行う開散力の訓練に同じである。
このような注視訓練により、使用者は、自然に眼球の輻湊による融像能力を身につけることができる。なお、この訓練方法によれば、プリズムが最初に視標C1及びC2の融像(交差視)を補助するため、融像が不可能な使用者であっても、交差視のプロセスを体感することが可能である。
このように本発明によれば、使用者に適した任意のプリズム屈折力を与えることによって、積極的な眼球の外転運動(開散眼球運動)が促され、使用者は自然に開散力を向上させることができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を説明しながら説明する。なお、上記実施形態と同様のものには同符号を付し、詳細な説明は省略する。図10は、第2の実施形態に係る立体視訓練支援装置2の斜視図、図11は、立体視訓練支援装置2の上面図、図12は、立体視訓練支援装置2の機能構成を説明するための機能構成図である。
(構成)
図示するように、本実施形態にかかる立体視訓練支援装置2はヘッドマウントディスプレイ型の装置であり、筺体20と、使用者が装置を耳に掛けて保持するための左右のテンプル21と、を有している。
筺体20には、制御装置200と、スピーカ26L,26Rを含む音声出力部40と、ディスプレイ27を含む表示部50と、図示しないスイッチ群を含む操作部60と、プリズム12L,13L,12R,13Rを含むプリズム調整部70と、図示しない電源と、がそれぞれ電気的に接続されて内蔵されている。
音声出力部40は、供給される音声信号を音声に変換して出力するイヤホン型のスピーカ26L,26Rを有している。本実施形態にかかる音声出力部40のスピーカ26L,26Rは、音声信号線と共にテンプル21の内部から外部に引き出されている。このような構成により、使用者は、テンプル21を耳に掛けた状態で、スピーカ26L,26Rを装着可能である。
表示部50は、使用者がプリズム12L,13L,12R,13Rを通して視聴可能な位置(プリズムを挟んで眼と逆側)に設けられたディスプレイ27を有する。ディスプレイ27は例えば、画像を表示するLCD(Liquid Crystal Display)と、表示された画像を拡大する光学系とを備え、供給される画像信号に基づいて画像を表示する。
操作部60は、図示しない複数の操作スイッチ群を備える。使用者は、操作スイッチ群を介して、立体視訓練支援装置2に関する操作、例えば、電源のオン/オフ、再生、停止、早送り、巻戻し、音量の変更、その他の制御処理に対するあらゆる指示を入力することが可能である。これらのスイッチを介して入力された操作指示は、後述する入出力インターフェース部230(以下、I/F部と称する)を介して制御部210に送信される。なお、操作部60以外の入力手段としては、使用者の頭部の動きに関する方向情報を角速度や加速度として検出する角速度センサや加速度センサが挙げられる。これにより、検出した速度に対応する処理を実行するような構成としても良い。また、操作スイッチ群を設ける位置については、任意に設計することができる。例えば、テンプルや筺体の一部、有線/無線のリモコン等が挙げられる。
プリズム調整部70は、上記実施形態に記載した対となるプリズムを備え、これら互いに逆方向へ等角度回転させる。これは例えば、図3(b)に記載のプリズム調整機構の回転ツマミ14に代えて、かさ歯車に図示しないモータを接続することで実現できる。なおここでは、左右のプリズム対は、同じ回転角、対向する基底方向(基底内方又は基底外方)に回転するよう設定されているものとする。
また、プリズム調整部70は、対となるプリズムを横方向(X軸方向)へと移動させることも可能なものとする。これにより、プリズム12Lと12R、プリズム13Lと13Rの距離を自由に調整でき、眼幅調整を可能とする。
次に、上記各部を統括する制御装置200について説明する。制御装置200は、図12に示すように、制御部210と、記憶部220と、I/F部230と、を備えている。
I/F部230は、各部を信号の送受信可能に制御装置200に接続する。また、図示しないネットワークとの接続や、各機能部間におけるインターフェースを提供する。
記憶部220は、使用者情報記憶領域221と、データ記憶領域222と、判定表記憶領域223と、を有している。
使用者情報記憶領域221には、使用者に関する情報である使用者情報2210が記憶されている。図13は、使用者情報2210の概略説明図である。
使用者情報2210は例えば、使用者を特定するための情報である使用者IDを格納する使用者ID格納領域2211と、使用者に関する情報である瞳孔間距離を格納するP.D.格納領域2212と、使用者の輻湊開散力に関する情報である輻湊開散力格納領域2213と、後述の判定テストのスコアが格納される判定テストスコア格納領域2214と、を有している。輻湊開散力としては、使用者が前回の訓練において融像が可能であった、最大のプリズム屈折力(Prism Diopter)が格納される。なお、プリズム屈折力の最小単位はここでは0.25としているが、自由に設定可能な構成としてもよい。
データ記憶領域222には、対となるプリズムの屈折力と、該屈折力を実現する際のプリズムの偏角(回転量)との関係を規定したプリズムデータと、制御部210によって実行されるコンテンツデータとが記憶されている。コンテンツデータとは、例えば、音楽や映像、画像、文書等のデジタルデータである。
判定表記憶領域223には、使用者の融像力を判定するための判定表2230が記憶されている。図14は、判定表2230の概略説明図である。
判定表2230は例えば、使用者の融像力の視標としてのレベルが格納されるレベル格納領域2231と、該レベルの判定を行うために参照される輻湊開散力の範囲が格納される輻湊開散力格納領域2232と、レベルの判定を行うために参照される後述の判定テストのスコア範囲が格納される判定テストスコア格納領域2233と、を有している。
次に、制御部210について説明する。制御部210は、使用者に対して立体視訓練支援を行う訓練支援部211と、使用者及び訓練支援部211からの指示に従って各部を動作させる信号処理部212と、を備えている。
ここで、訓練支援部211による訓練支援について、詳細に説明する。訓練支援部211は、操作部60を介して使用者から訓練支援の開始の指示を受け付けると、その処理を開始する。
まず、訓練支援部211は、新規の使用者か否かを使用者に確認し、使用者が新規使用者である場合には、使用者登録処理を実行する。具体的に、訓練支援部211は、まず、使用者情報2210に新たなレコードを作成して一意に定まる使用者IDを付与し、使用者ID格納領域2211に格納する。
そして、訓練支援部211は、使用者に関する情報を取得する。使用者に関する情報としては、例えば、左右の瞳孔間の距離である瞳孔間距離(P.D.)が挙げられる(図13参照)。なお、年齢、性別、視力等の他の条件を取得し、併せて使用者情報2210に記憶させてもよい。
なお、瞳孔間距離の取得は例えば、表示部50に入力画面を表示させて、使用者に操作部60を介した瞳孔間距離の入力を促すことによって行うことができる。なお、使用者が瞳孔間距離を把握していない場合には、鏡を使用した自己計測方法を説明するガイダンス画面や音声案内で自己計測を促してもよいし、予め記憶されている一般的な瞳孔間距離の値を使用してもよい。例えば、一般的な瞳孔間距離の値を性別や年齢等の条件別に記憶しておくことで、使用者の条件に合わせた値を設定できる。訓練支援部211は、このようにして得た値をP.D.格納領域2212に格納する。
訓練支援部211は、上述の使用者登録が終了した場合、又は、使用者が新規使用者で無かった場合、眼幅調整処理へと進む。眼幅調整処理は、プリズム12Lと12R,プリズム13Lと13Rの中心点C間の距離を、使用者の瞳孔間距離と等しくする処理である。具体的に、訓練支援部211は、P.D.格納領域2212に格納される瞳孔間距離を読み出して、図11に示すように、各プリズムの中心点Cを結んだ線上で、プリズム12Lの中心Cから12Rの中心Cの距離、及びプリズム13Lの中心Cから13Rの中心Cの距離が、瞳孔間距離だけ離れ、かつ、所定の基準点Bから等距離に位置する座標を算出する。そして、訓練支援部211は、対となるプリズムを該座標に移動させるように、信号処理部212に要求する。信号処理部212は、プリズム調整部70にプリズムの移動指示信号を出力し、該信号を受信したプリズム調整部70は各プリズムを移動させる。
眼幅調整処理が終了すると、訓練支援部211は、表示部50にメニュー画面を表示させる。使用者は、メニュー画面を介して、使用者に関する情報の変更を含む各種の設定や、モードの選択指示を行うことができる。
モードとは、使用者が本装置を利用して行う訓練や視聴に関する様々な処理の形式を規定したものである。例えば、動画の再生を行う動画モード、画像が表示される画像モード、訓練支援処理が開始される訓練モード等である。もちろん、これらに限定されず、楽曲の再生を行う音楽モード、別途カメラを設けて動画や画像を撮像する撮像モード、ゲームが行えるゲームモード等を備えていてもよい。
動画モードでは、2D映像や3D映像の再生が実行される。なお、3D映像は、上記のような専用眼鏡91の左眼用レンズ91L及び右眼用レンズ91Rを、立体視訓練支援装置2に別途取り付けたり、ディスプレイ27に専用のフィルムを貼りつけたりすることで、立体的な映像を視聴可能である。
画像モードでは、2D画像や3D画像の再生が実行される。例えば、視差の無い1枚の、或いは、視差を有する2枚の画像(ステレオペア)、及び、ノイズから立体が浮かび上がる画像(ランダム・ドット・ステレオグラム)等の3D画像を再生できる。
なお、映像データや画像データ、音楽データ等を外部から自由に取り込み、データ記憶領域222に記憶させておくことで、これらを視聴することも可能である。また、訓練支援部211に2D画像を3D画像に変換する変換処理機能を設けておくことで、取り込んだ写真を3D画像に変換して視聴することもできる。
訓練モードでは、訓練支援部211による訓練が実行される。該訓練モードでは、まず、訓練内容の設定が行われる。訓練内容としては、例えば、輻湊開散力の訓練を行う訓練支援処理や、融像力のレベルを判定するための融像力判定処理が挙げられる。
(訓練支援処理)
まず、輻湊力及び開散力の訓練法の一例について説明する。使用者が訓練支援を選択した場合に、訓練支援部211は以下のような訓練支援処理を開始する。具体的に、訓練支援部211は、輻湊力と開散力の何れを訓練するかを問う選択画面を表示部50に表示させて、使用者に選択させる。そして、選択のあった方に該当するプリズム屈折力を、使用者情報2210から取得する。例えば、図13における使用者00001が輻湊力の訓練を選択した場合、使用者ID00001の輻湊力のプリズムディオプター値「10.75」が読み出され、プリズム屈折力として設定される。なお、輻湊開散力格納領域2213に値が格納されていない場合(使用者が初めて訓練を行う場合)には、訓練支援部211は、プリズム屈折力の値を「0」と設定する。
次に、訓練支援部211は、データ記憶領域に記憶されるプリズムデータを参照して、設定されたプリズム屈折力の値に応じたプリズム回転角を求め、当該回転角と、訓練内容と、を信号処理部212へと出力する。具体的に、訓練支援部211は、使用者ID00001の輻湊力のプリズムディオプター値「10.75」を読み出すと、当該プリズムディオプター値に応じた偏角を求め、該偏角の回転量だけ対となるプリズムを基底外方に回転させるよう信号処理部212に要求する。なお、開散力を訓練させる場合には、開散力のプリズムディオプター値に応じた回転量だけ、対となるプリズムを基底内方に回転させる。信号処理部212は、受付けたプリズム回転量だけ各プリズムを回転させる。
そして、訓練支援部211は、ディスプレイ27に任意の視標を映し出す。なお、この際の視標は、第一の実施形態に記載したように、視差の無い単一の視標Bを用いてもよいし(図5,8参照)、視差の有る2つの視標C1及びC2(図7,9参照)を用いてもよい。
次に、訓練支援部211は、使用者が適切な眼球運動を行えているか否かを質問する。例えば、視標Bを用いた場合には、視標B´が融像されて見えているかを質問し、視標C1及びC2を用いた場合には、視標C´が分離して見えるか、融像して見えるかを質問する。これは例えば音声出力部40に、「マークが分離して(あるいは融像して)見えていますか?」等の音声を再生させることで実現できる。使用者はこれに対し、操作部60を介して質問に答える。使用者がYESと答えた場合には、訓練支援部211は、現在のプリズムディオプター値を輻湊開散力格納領域2213に格納する。そして、これに所定の値(ここでは、0.25とする)を足した値に応じたプリズム回転量を求め、信号処理部212へと出力して処理を繰り返す。これにより、プリズム屈折力がさらに増した状態で次の訓練が実行される。なお、ここでは、プリズムディオプターの変位量を0.25としているが、これに限らず、変位量を設定して増減させることができる。
使用者が上記質問にNOと答えた場合には、訓練支援部211は、現在のプリズム屈折力から所定の値(ここでは、0.25とする)を引いた値を輻湊開散力格納領域2213に格納する。そして、当該1を引いた値に応じたプリズム回転量を求め、信号処理部212へと出力して処理を繰り返す。これにより、プリズム屈折力を弱めた状態で次の訓練を行われる。
このように、輻湊開散力格納領域2213には、常に使用者が対応可能であった負荷に応じたプリズムディオプター値が記憶される。これにより、訓練支援部211は、使用者に適したプリズム負荷を調整しながら、段階的な訓練支援処理を実行することができる。
(融像力判定処理)
次に、融像力判定の一例について説明する。使用者が判定テストを選択した場合に、訓練支援部211は、以下のような判定処理を開始する。なお、判定テストの内容としては、使用者の輻湊開散力を測るようなものであればどのようなものを用いても良いが、例えば、以下のような方法が挙げられる。
図15(a)に、ステレオペア画像と、該画像が立体視出来たか否かの質問を組み合わせた画面の一例を示す。訓練支援部211は、このような画面をディスプレイ27に表示させ、使用者の操作部60を介した質問への回答を受け付ける。なお、図15(a)ではステレオペア画像を使用しているが、この限りではなく、ステレオグラム等どのようなものを用いても構わない。
図15(b)は、ステレオグラム画像と、該画像の立体視により出現する模様の選択肢の質問を組み合わせた画面の一例である。これにより、使用者が立体視出来ているか否かを判定できる。なお、図15(b)ではランダムドットステレオグラム (Random Dot Stereogram, RDS)を使用しているが、この限りではなく、ステレオグラムであればどのようなものを用いても構わない。
図15(c)は、ステレオグラム画像と、該画像の立体視により出現する模様の状態を問う画面の一例である。訓練支援部211は、このような画面をディスプレイ27に表示させ、使用者に平行視或いは交差視を促す。そしてその結果、所定の位置や文字等が飛び出て見えているか、へこんで見えているかを選択肢から選択させる。これにより、使用者が平行視と交差視を使い分けているか否かを判定できる。図15(c)ではカラーフィールドステレオグラム (Color Field Stereogram, CFS)を使用しているが、この限りではなく、ステレオグラムであればどのようなものを用いても構わない。
次に訓練支援部211は、このような判定テストのスコアを算出する。なお、問題とスコアとの得点の対応については、図示しない点数表を記憶部220に予め記憶させておくことで計算できる。また、使用者から回答を受け付けるまでの所要時間を図示しないタイマで計測し、記憶部220へと記憶させておくことで、これをスコアに反映させることもできる。例えば、所要時間が短いほど、高スコアが得られる。なお、所定の時間内(例えば、20秒以内)に回答が得られなかった場合には、最大所要時間(20秒)を記憶部220へと記憶させる。さらにこの場合、ペナルティとして所定の時間を加算してもよい。
また、基本的に判定テストの際はプリズムの偏角は±0に設定されているものとするが、プリズムの屈折力を増減させて判定テストを行い、これを得点に反映させてもよい。すなわち、プリズム偏角と逆らう方向に眼筋を動かす場合には高得点、プリズム偏角が融像を補助する方向である場合には低得点が獲得されるよう設定しておけばよい。
訓練支援部211は、このようにして算出した判定テストのスコアと、輻湊開散力とから、使用者の融像力のレベルを判定する。レベルは、例えば、図14に示す所定の対応表2230を参照することで導き出せる。まず、訓練支援部211は、使用者の輻湊解散力の値と、判定テストのスコアが、対応表2230に記憶されているどのレベルの範囲内に存在するかを判断する。そして、輻湊解散力の値と、判定テストのスコアとが、同じレベルに含まれているときはそのレベルを、違うレベルである場合にはレベルの低い方を使用者のレベルとして決定する。もちろん、高い方を使用者のレベルとして選択しても良い。
最後に、訓練支援部211は、スコアとレベルを表示部50に表示させる。なお、過去のスコア及びレベルを同時に表示してもよい。またさらに、スコアやレベルに応じた、任意の3D映像等を再生させてもよい。このような構成によれば、使用者は、ゲーム感覚で訓練をしながら、融像能力を高めることができる。
ここで、制御装置200のハードウェア構成について説明する。図18は制御装置200の電気的な構成を示すブロック図である。
図18に示すように、制御装置200は、各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)901と、各種データを書換え可能に記憶するメモリ902と、各種のプログラム、プログラムの生成するデータ等を格納する外部記憶装置903と、これらを接続するバス904と、を備える。制御装置200は、例えば、外部記憶装置903に記憶されている所定のプログラムを、メモリ902に読み込み、CPU901で実行することにより実現可能である。
なお、上記した各構成要素は、制御装置200の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。処理ステップの分類の仕方やその名称によって、本発明が制限されることはない。制御装置200が行う処理は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
また、各機能部は、ハードウエア(ASICなど)により構築されてもよい。また、各機能部の処理が一つのハードウエアで実行されてもよいし、複数のハードウエアで実行されてもよい。
以上のように構成される本実施形態にかかる制御装置200を、図16に示すフローチャートを用いて説明する。図16は、本実施形態に係る制御装置200の実行する処理の流れを示すフローチャートである。
まず、操作部60を介して立体視訓練支援装置2に電源が投入されると、訓練支援部211は、表示部50に確認画面を表示させて、使用者が新規使用者であるか否かを確認する(S2100)。使用者が新規使用者であった場合には(YES)、訓練支援部211は、ステップS2101の処理を開始する。使用者が新規使用者でなかった場合には(NO)、ステップS2102へと進む。
使用者が新規使用者の場合(S2100でYES)、訓練支援部211は、使用者登録処理を行う(S2101)。具体的に、訓練支援部211は、使用者情報2210に新たなレコードを作成すると共に、当該使用者に使用者IDを付与してID格納領域2211に使用者IDを格納する。そして、訓練支援部211は、表示部50を介して瞳孔間距離の入力を受け付け、P.D.格納領域2212に格納する。そして、ステップS2102へと進む。
使用者が新規使用者でなかった場合(S2100でNO)、及び、使用者登録処理が終了すると、訓練支援部211は、眼幅調整処理を行う(S2102)。具体的に、訓練支援部211は、P.D.格納領域2212に格納される瞳孔間距離を読み出して、各プリズムの中心点Cを結んだ線上で、プリズム12Lの中心Cから12Rの中心Cの距離、及びプリズム13Lの中心Cから13Rの中心Cの距離が、瞳孔間距離だけ離れ、かつ、所定の基準点Bから等距離の座標に位置するようにプリズムをX軸方向に移動させるよう、信号処理部212に要求する。信号処理部212は、プリズム調整部70にプリズムの移動指示を出力し、各プリズムを要求位置に移動させる。
次に、訓練支援部211は、使用者からモードの選択を受け付ける(S2103)。具体的に、訓練支援部211は、表示部50に選択画面を表示させ、操作部60を介して、使用者に実行するモードの選択を促す。ここでは、動画再生モードが選択された場合はステップS2104へ、画像表示モードが選択された場合はステップS2106へ、訓練支援モードが選択された場合には、ステップS2105へと進む。
動画再生モードが選択された場合、訓練支援部211は、使用者から再生する動画の選択を受け付けて、選択された動画をデータ記憶領域222から読み出して、これを再生するよう信号処理部212へと要求する(ステップS2104)。信号処理部212は、要求に従って当該動画を表示部50に再生させ、処理を終了する。
画像表示モードが選択された場合、訓練支援部211は、使用者から再生する画像の選択を受け付けて、選択された画像をデータ記憶領域222から読み出して、これを再生するよう信号処理部212へと要求する(ステップS2106)。信号処理部212は、要求に従って当該画像を表示部50に表示させ、処理を終了する。
訓練支援モードが選択された場合、訓練支援部211は、訓練支援処理を開始する(S2105)。なお、訓練支援処理については、図17に別途記載のフローチャートを参照しながら説明する。図17は、訓練支援部211の実行する訓練支援処理を説明するためのフローチャートである。なお、使用者によって電源がオフにされたり、訓練を終了する旨の操作があったりした場合には、いつでも訓練支援処理は終了されるものとする。
訓練支援部211は、まず、使用者から訓練内容の選択を受け付けて、訓練内容を設定する(S1051)。具体的に、訓練支援部211は、輻湊力訓練、開散力訓練、及び評価テストの何れかの訓練内容を選択するための選択画面を表示部50に表示させて、使用者からの操作部60を介した選択を受け付ける。使用者が輻湊力訓練又は開散力訓練を選択した場合には、ステップS1052へと進み、使用者が評価テストを選択した場合には、ステップS1059へと進む。
まず、使用者が輻湊力訓練又は開散力訓練を選択した場合について説明する。訓練支援部211は、使用者情報2210の輻湊開散力格納領域2213から、ステップS1051で設定した訓練内容(輻輳力又は開散力)に応じたプリズムディオプター値を取得する。そして、データ記憶領域222に記憶されているプリズムデータを参照して、当該プリズムディオプター値に応じたプリズム回転量を算出する(S1052)。
さらに、訓練支援部211は、ステップS1052で算出されたプリズム回転量と、訓練内容と、を信号処理部212へと出力する。信号処理部212はプリズム調整部70を介して、受け付けた訓練内容に応じたプリズム基底方向に、受付けた回転量だけ、各プリズムを回転させる(S1053)。
そして、訓練支援部211は、表示部50に任意の視標を表示させ、視標が適切に見えているか否かを質問して、回答を受け付ける(S1054)。具体的に、訓練支援部211は、音声出力部40に質問音声を再生させて、操作部60を介して使用者からの選択操作を受け付ける。使用者が視標を融像/分離できている場合には(YES)、ステップS1055へと進み、使用者が視標を融像/分離できていない場合には(NO)、ステップS1057へと進む。
使用者が視標を融像/分離できている場合(ステップS1054でYES)訓練支援部211は、現在設定されているプリズム屈折力を、使用者情報2210の輻湊開散力格納領域2213へと登録する(S1055)。
そして、訓練支援部211は、設定されているプリズム屈折力に所定の値を足した値を新たなプリズム屈折力として設定し、データ記憶領域222に記憶されているプリズムデータを参照して、当該屈折力に応じたプリズム回転角を算出する(S1056)。そして、ステップS1053へ戻って処理を繰り返す。
使用者が視標を融像/分離できていない場合(ステップS1054でNO)、訓練支援部211は、現在設定されているプリズム屈折力から所定の値を引いた値を、使用者情報2210の輻湊開散力格納領域2213へと登録する(S1057)。
そして、訓練支援部211は、登録された値を新たなプリズム屈折力として設定し、データ記憶領域222に記憶されているプリズムデータを参照して、当該屈折力に応じたプリズム回転角を算出する(S1058)。そして、ステップS1053へ戻って処理を繰り返す。
ステップS1051でまず、使用者が判定テストを選択した場合、訓練支援部211は、判定処理を開始し、判定テストを実行する(S1059)。そして、判定テストが終了すると、そのスコアを使用者情報2210の判定テストスコア格納領域2214に格納する。そして、訓練支援部211は、当該テストスコアと、輻湊開散力とから、使用者のランクを算出し、表示部50に表示させて(S1060)処理を終了する。
なお、上記したフローの各処理単位は、制御装置200の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。構成要素の分類の仕方やその名称によって、本発明が制限されることはない。また、制御装置200の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分割することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
以上、立体視訓練支援装置2が訓練支援を行う際の一実施例について説明した。このように、本発明の立体視訓練支援装置2によれば、プリズムの屈折力により両眼視線の向きを強制的にずらすため、外眼筋調節のきっかけを掴むのが難しい使用者でも、立体視に必要な外眼筋との連動を容易に行うようにすることができる。また、使用者は自分の融像能力を、数値や視標として具体的に把握することもできる。
さらに、常に使用していないと衰えてしまう外眼筋との連動を、場所を選ばず手軽に行うことができる。また、プリズムの屈折力を使用者の能力に合わせて段階的に調節できるため、無理なく訓練が可能である。
加えて、このような訓練を行うことで、同じものを長時間に亘って見る検査、例えば、VDT作業等の視覚系に負担がかかる作業の作業者に見られるような、外眼筋に関連する眼精疲労を和らげることができる。また、プリズムによる融像を可能とするため、立体視ができない使用者が補助具として利用することもできる。
なお、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
例えば、訓練や判定テストとして、奥行知覚(深径覚)を調べる深視力検査が可能な構成としてもよい。深視力検査は、一般的に用いられている三桿方式を画面上で再現することで実現可能である。
例えば、訓練時に音声等によるガイドを行ってもよい。例えば、輻湊力を訓練する場合には「眼を中心に寄せて下さい」、開散力を訓練する場合には「遠くを見るようにして下さい」等のアドバイスを行う。
さらに、表示部50の代わりに度なしのレンズを設け、使用者に任意の視標を注視させてもよい。その場合には、音声による訓練支援のみが行われる。
また例えば、別途低周波治療機能を設けてマッサージを行うマッサージモード等を実行可能な構成としてもよい。マッサージモードを搭載する場合には、スピーカ26L,26Rと同様に、一般的な低周波治療器用の治療パッドをテンプル21から引き出すことで、使用者は眼の周辺に治療パッドを貼付してコリをほぐすことができる。
また、上記のような各モードを組み合わせたモードを用意することも可能である。例えば、ヒーリング効果の高い動画再生とマッサージを連動させて同時に実行するリラックスモードが挙げられる。さらに、芳香剤を染み込ませた部材等を別途取り付け可能とすることで、さらなるリラックス効果が期待でき、同じものを見る時間の長い検査等の作業者に見られるような、眼筋の疲れを和らげることが可能である。
さらに、信号処理部212は、表示部50に出力している映像信号を、外部の表示装置に外部出力し、外部の表示装置を利用してコンテンツデータの再生や訓練支援を行う構成としてもよい。このような構成の立体視訓練支援システム30について、以下、説明する。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について、図面を説明しながら説明する。なお、上記実施形態と同様のものには同符号を付し、詳細な説明は省略する。図20は、第3の実施形態に係る立体視訓練支援システム30の機能構成を説明するための機能構成図である。
図示するように、本実施形態にかかる立体視訓練支援システム30は、立体視訓練支援装置3と、画像処理装置500と、を有している。立体視訓練支援装置3は、I/F部230により、直接又は図示しないネットワークを介して画像処理装置500のI/F部530と接続されている。
立体視訓練支援装置3の制御装置300は、制御装置200とほぼ同様の処理を実行する。しかし、上述の実施形態において信号処理部212が表示部50に出力していた映像信号を、信号処理部312は画像処理装置500に外部出力する点で異なっている。また、強度判定部511は、画像処理装置500からの要求に応じて使用者の立体視能に関する情報を提供する。
画像処理装置500は表示部540(外部の表示装置であってもよい)に立体映像を再生させることが可能な装置であり、例えば、一般的なコンピュータ、テレビやレコーダー等の各種AV機器、携帯端末、ゲーム機、カーナビゲーション装置等である。なお、このような画像処理装置500も、図18に記載するハードウェア構成によって実現可能である。
画像処理装置500は、視聴者の立体視能にあわせて適切な立体強度を判断し、これにあわせた立体映像を生成する制御部510と、立体映像を含むコンテンツデータ及び後述の強度判定表400を記憶する記憶部520と、入出力インターフェース部530と、表示部540と、操作部550と、を有している。
一般的に立体映像データには、図21に示すように、サイズ等の基本的な画像情報を含むヘッダ901と、3D画像か否かを識別するための情報を含む3D識別情報902と、3D画像の立体強度を表す情報を含む3D表示情報903と、2次元の画像データ本体904とが含まれている。
ここで、立体強度について図19を参照して説明する。交差視の場合、立体画像9−bは、平面Aよりも距離ΔDfだけ手前に飛び出した像として観察者に認識される。一方平行視の場合、立体画像9−cは、平面Aよりも距離ΔDbだけ奥に引っ込んだ像として観察者に認識される。従って、飛び出し距離ΔDf又は奥行き距離ΔDbが大きいほど立体強度が強く、小さいほど立体強度が弱いといえる。また、このような飛び出し距離ΔDfは、平面Aにおける対応点9L−b′と対応点9R−b′間の視差量ΔFを変化させることで調整でき、奥行き距離ΔDbは、平面Aにおける対応点9L−c′と対応点9R−c′間の視差量ΔFを増減させることによって調整することができる。また、視差量ΔFが大きいほど立体強度が強く、小さいほど立体強度が弱い。
3D表示情報903には、立体強度を表す情報として、表示視差情報、及び/又は表示深度情報が含まれている。表示深度情報とは、各フレーム画像における各画素の表示深度(デプス値ΔD)の分布であるデプスマップとして記憶されている。一方、表示視差情報とは、このようなデプスマップに対応する各画素の表示視差(視差量ΔF)の分布を表す視差マップである。従って、このようなデプスマップから視差マップを導くことができ、逆に視差マップからデプスマップを導くことも可能である。
例えば8ビット階調のデプスマップの場合、デプス値ΔD=0の際に所定の最大飛び出し距離の閾値ΔDfmaxとなる視差量ΔFmaxが対応し、デプス値ΔD=255の際に所定の最大奥行き距離の閾値ΔDbmaxとなる視差量ΔFminが対応するよう構成されている(逆も可能)。このようなデプス値ΔDの範囲は各規格によって異なるため、必ずしも0〜255である必要はない。なお、本実施形態では便宜上、デプス値ΔDの範囲を−127〜+127と定義して説明する。即ち、デプス値ΔD=−127のとき視差量はΔFmin、デプス値ΔD=+127のとき視差量はΔFmax、デプス値ΔD=0のとき視差量もΔF=0となるよう対応付けられているものとする。
画像処理装置500の制御部510は、上記のような立体映像のデプスマップを使用者の立体視能に応じたものに書き換え、視聴に適切な立体強度に補正する。具体的に、強度判定部511はまず、立体視訓練支援装置3から使用者の立体視能のレベルを取得する。そして、その立体視能に応じた立体強度を、図22に記載の強度判定表400を用いて判定する。
強度判定表400は例えば、使用者のレベルが格納されるレベル格納領域401、該レベルに応じたデプス値ΔD又は視差量ΔFの倍率が格納される倍率格納領域402と、を有している。なお、強度判定表400はこれに限らず、使用者の立体視能からそれに応じた立体強度を判定し得るものならどのようなものであってもよい。例えば、レベルに換えてテストスコアを倍率に対応させてもよい。
強度判定部511は、このような強度判定表400から使用者のレベルに応じた倍率を抽出して、画像補正部512に当該倍率に応じた立体映像を生成させる。
画像補正部512はまず、立体映像を所定のフォーマットで逆多重化して分割し、3D表示情報903と、2次元の画像データ本体904を得る。そして、3D表示情報903に含まれるデプスマップの各画素のデプス値ΔD、又は、視差マップの各画素の視差量ΔFを、強度判定部511が抽出した倍率に縮小する。
例えば、使用者のレベルがBの場合、該当する倍率が80%であるため、各デプス値の絶対値、又は、各視差量の絶対値を80%まで下げた補正デプスマップ、又は、補正視差マップが生成される。このような補正デプスマップのデプス値ΔDの範囲は−(127×0.8)〜(127×0.8)となり、補正視差マップの視差量ΔFの範囲は(ΔFmin×0.8)〜(ΔFmax×0.8)となる。このような補正後の各マップでは即ち、元のマップよりも立体強度が20%抑えられている。画像補正部512は、2次元画像データと、補正後のマップとを所定のフォーマットに従って多重化し、立体強度が80%抑制された補正立体映像データを合成する。
以上のように構成される本実施形態にかかる画像処理装置500を、図23に示すフローチャートを用いて説明する。図23は、本実施形態に係る画像処理装置500の制御部510が実行する処理の流れを示すフロー図である。
強度判定部511は、操作部550を介して、画像処理装置500の記憶部520、或いはI/F部530を介して外部装置や記憶媒体等に記憶されるコンテンツデータの再生指示を受け付けると、当該コンテンツデータが立体映像か否かを判断する(S5100)。
具体的に強度判定部511は、コンテンツデータが動画或いは静止画データであれば、3D識別情報902を読み出して、当該映像データが3D画像か否かを識別する。3D画像であった場合には(YES)ステップS5101の処理を開始する。3D画像でなかった場合には(NO)ステップS5106へと進む。
コンテンツデータが3D画像であった場合には(S5100でYES)、強度判定部511は、当該コンテンツデータの立体強度を補正行うか否かについて使用者に選択させる(S5101)。
例えば、強度判定部511は、立体強度の補正を行うか否かについての選択画面を表示部540に表示させ、操作部550を介してその選択結果を受け付ける。補正を行う選択結果を受け付けた場合には(YES)、ステップS5102へと進む。補正を行わない選択結果を受け付けた場合には(NO)、ステップS5106へと進む。
補正を行う選択結果を受け付けた場合には(S5101でYES)、強度判定部511は、使用者の立体視能に関する情報を取得する(S5102)。
具体的に強度判定部511は、立体視訓練支援装置3に使用者の立体視能に関する情報を要求する。立体視訓練支援装置3の訓練支援部311はこれに応答して、例えば使用者の最新のレベルを含む情報を生成し、画像処理装置500へと送信する。
そして強度判定部511は、強度判定表400を用いて、使用者の立体視能から、立体映像の立体強度を判定する(S5103)。
例えば強度判定部511は、使用者のレベルから、表示深度及び/又は表示視差の倍率を判定する。そして、画像補正部512に補正処理の実行を要求する。
画像補正部512は、補正処理の実行の要求を受けると、コンテンツデータを補正する補正処理を実行する(S5104)。
具体的に画像補正部512は、コンテンツデータを所定のフォーマットで逆多重化して、3D表示情報903を取り出す。そして、3D表示情報903に含まれる視差マップ及び/又はデプスマップを、ステップS5103で判定された立体強度に補正する。
そして画像補正部512は、補正された視差マップ及び/又はデプスマップと、画像データ904とを所定のフォーマットで多重化して、立体強度が補正された立体映像を合成して記憶部520に記憶させる(S5105)。
最後に画像補正部512は、立体映像の再生を開始して(S5106)、処理を終了する。
なお、上記したフローの各処理単位は、制御部510の処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。構成要素の分類の仕方やその名称によって、本発明が制限されることはない。また、制御部510の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分割することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
以上、画像処理装置500が行う処理について説明した。このように、本発明の立体視訓練支援システム30によれば、使用者の立体視能に応じて自動的に適した強度の立体映像が生成されるため、使用者は無理のない視聴を行うことが可能である。また、立体視訓練支援装置3によって立体視能を判定すれば、現在の眼の状態に合わせた強度の立体映像を生成することができる。
なお、上記の実施形態は、本発明の要旨を例示することを意図し、本発明を限定するものではない。本発明の技術的思想の範囲内で様々な変形が可能である。
例えば、画像処理装置500は必ずしも別に容易される必要はなく、立体視訓練支援装置3がこの機能を兼ねてもよい。一方で、画像処理装置500も、必ずしも立体視訓練支援装置3の接続を要するものでなくてもよい。例えば操作部550を介して、使用者に立体視能のレベル等を選択させることによって立体視能に関する情報を得ることもできる。
また、立体強度の補正は、必ずしも強度を抑制するものでなくてもよい。例えば、立体視能のレベルが高い使用者に対しては、強度を上げた画像を合成するようにしてもよい。これは強度判定表400に格納される倍率を、「120%」等に設定しておくことで実現可能である。
さらには、使用者に適した立体強度の判定に必ずしも強度判定表400を用いる必要はなく、例えば輻湊開散力格納領域2213に格納される輻湊側及び開散側のディオプタ値と、視差量ΔFとを対応付けてもよい。具体的には、輻湊側のディオプタ値に適したΔFmaxの値を定め、開散側のディオプタ値に適したΔFminの値を定めて視差マップの範囲を定義し、これに対応するようΔDに割り当てればよい。このような方法によれば、使用者の眼の状態により適した立体映像が合成できる。
なお、このようなディオプタ値とΔF、及びΔDとの関係は、瞳孔間距離P.D.と、瞳孔から画面までの視聴距離S.D.による影響を受ける。これらの値は一般的な瞳孔間距離P.D.や視聴距離S.D.(機器の種類によって異なる)を利用することも可能であるが、より好適な結果を得るにためは状況に合わせた値を利用することが望ましい。例えば、瞳孔間距離P.D.については立体視訓練支援装置3から取得可能である。視聴距離S.D.については、操作部550を介して使用者からの入力を受け付けてもよいし、立体視訓練支援装置、又は表示画面に測距センサを設けて、使用者から表示画面までの距離を測定してもよい。このような構成によれば、より信頼性の高い立体映像を合成することが可能となる。