JP2012196346A - 穿刺針、薬剤投与装置およびシリンジポンプ - Google Patents

穿刺針、薬剤投与装置およびシリンジポンプ Download PDF

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Abstract

【課題】所定量の薬剤の容易な多点投与を実現できる穿刺針、薬剤投与装置およびシリンジポンプを提供すること。
【解決手段】本発明にかかる薬剤投与装置1は、内部に第1のルーメン12を有し、先端側の側面に第1のルーメン12と連通する開口13が設けられた外針10と、内部に第2のルーメン14を有するとともに、少なくとも先端部が外針10の第1のルーメン12に進退運動可能に挿通された内針11と、を備え、内針11は、進退運動によって、外針10の第1のルーメン12に先端部が収容される第1の状態と、外針10の開口13から少なくとも先端部の一部が突出する第2の状態との間を遷移する。
【選択図】図4

Description

この発明は、生体組織内に穿刺される穿刺針、生体組織に薬剤を投与する薬剤投与装置およびシリンジポンプに関するものである。
従来、人間を含む哺乳動物の生体組織内に穿刺されて、薬剤投与目標の生体組織に薬剤を投与する穿刺針が知られている(たとえば、特許文献1参照)。このような穿刺針を用いた薬剤投与方法として、静脈内の血流に薬剤を投与する方法のほか、対象とする部位への薬剤送達を確実化するために、腫瘍に抗癌剤などの薬剤を直接投与する方法がある。
例えば、すい臓癌の治療方法としてEUS−FNI(Edoscopic Ultrasonography guided Fine needle Injection:超音波内視鏡下薬液注入)が注目されており、超音波内視鏡によるエコー画像を用いて、腫瘍の位置を確認した上で、針を腫瘍に向けて穿刺し、薬剤を注入する治療法が研究されている。
特開平9−103433号公報
腫瘍に直接薬剤を投与する場合、特に悪性度の高い硬い腫瘍への注入性の悪さが問題となる。実際に本願発明者らが実施した実験によれば、悪性度の高いヒト膵臓がん株細胞へのボーラス投与を行なった場合、1箇所あたり100マイクロリットル程度の注入が必要であるにもかかわらず、1箇所あたり10〜20マイクロリットル程度の抗がん剤注入が限度であり、それを超える量の薬液を注入した場合、注入口からの逆流が発生する場合もあった。
そこで、腫瘍から逆流することなく相当量の抗がん剤を投与するために、微量の抗がん剤を絶えず持続して注入し続ける持続注入を採用することが考えられる。しかしながら、この場合には、体内への穿刺針の留置やポンプの携帯などの大きな負担を患者に与えてしまうという問題があった。
また、所定量の薬剤を注入するために注入回数を多くする場合、EUS−FNIでは、所定量を腫瘍に注入するために腫瘍への針の穿刺を複数回繰り返すこととなる。しかしながら、この場合には、超音波画像下で何度も正確に腫瘍を穿刺する必要があるため、術者の負担になってしまうという問題があった。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、所定量の薬剤の容易な多点投与を実現できる穿刺針、薬剤投与装置およびシリンジポンプを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる穿刺針は、生体組織に穿刺される穿刺針であって、内部に第1のルーメンを有し、先端側の側面に前記第1のルーメンと連通する開口が設けられた外針と、内部に第2のルーメンを有するとともに、少なくとも先端部が前記外針の前記第1のルーメンに進退運動可能に挿通された内針と、を備え、前記内針は、前記進退運動によって、前記針の前記第1のルーメンに前記先端部が収容される第1の状態と、前記外針の前記開口から少なくとも前記先端部の一部が突出する第2の状態との間を遷移することを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記内針の先端は、前記外針の前記開口から突出したときに外側となる角が鋭角を成すことを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記内針は、前記外針の前記第1のルーメンに対して前進することによって、当該内針の前記先端部の一部が突出し、前記外針は、前記内針の先端を前記第1のルーメンから前記開口に誘導するガイド面を、前記第1のルーメンに有することを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記開口は、前記外針の側面に複数設けられることを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記複数の開口は、前記外針の長手方向における位置がそれぞれ異なることを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記内針は、前記複数の開口に対応して先端が分岐することを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記外針は、前記内針の先端を前記第1のルーメンから前記開口に誘導するガイド面を、前記第1のルーメンに前記開口ごとに有し、各ガイド面は、それぞれ異なる角度の傾斜を有することを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記外針の前記開口の軸方向を基端側に延伸する延長線上には、マーカが付されていることを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記内針が前記第1の状態にあるときに、前記内針の運動と、前記外針の長手軸中心の回動運動とを連携させる連携機構をさらに備えたことを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記連携機構は、前記内針が前記第1の状態にあるときに、前記内針の進退運動によって前記外針の回転運動を生じさせる係合機構を含むことを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記係合機構は、係合ピンとカム溝を有し、前記係合ピンが前記カム溝に係合するものであることを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記カム溝は、軸方向に伸長する複数の直線溝と、各直線溝の基端と、各直線溝と隣り合う一方の前記直線溝の先端とをそれぞれ接続する溝であって前記複数の直線溝間を斜めに結ぶ複数の傾斜溝とによって形成されることを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記係合ピンは、前記外針に接続するとともに前記内針の前進運動にしたがって前進する接続部材に設けられており、前記接続部材の前進により前記カム溝の前記傾斜溝を進行することによって前記外針を回転させることを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記外針を一定の方向に回動するように付勢する付勢機構をさらに有することを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記連携機構は、前記内針が前記第1の状態にあるときに、前記内針の回転運動によって前記外針の回転運動を生じさせる係合機構を有することを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記係合機構は、前記内針の外側面および前記外針の第1のルーメンの内側面のいずれか一方に設けられた係合ピンと、前記内針の外側面および外針の第1のルーメンの内側面の他方に設けられた被係合部材とを備え、前記係合ピンと前記被係合部材とは、前記内針が前記第1の区間にあるときに係合する位置関係を有し、前記係合ピンと前記被係合部材とが係合することによって、前記内針の回転運動が前記外針に伝達されて前記外針に回転運動が生じることを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記外針は、基端部分と、前記開口及び前記連携機構が位置するとともに前記基端部分に対して当該外針の軸周りに回動自在である先端部分とを備え、前記外針の前記先端部分は、前記連携機構によって前記基端部分に対して回動運動するように構成されていることを特徴とする。
また、この発明にかかる穿刺針は、上記の発明において、前記内針は、基端においてシリンジポンプと接続しており、前記シリンジポンプは、外面に雄ネジが形成されたプランジャと、内面に雌ネジが形成されたシリンジとを有することを特徴とする。
また、この発明にかかる薬剤投与装置は、生体組織に穿刺される穿刺針と、前記穿刺針に薬剤を送出する薬剤送出ユニットを有する薬剤投与装置であって、前記穿刺針は、内部に第1のルーメンを有し、先端側の側面に前記第1のルーメンと連通する開口が設けられた外針と、内部に第2のルーメンを有するとともに少なくとも先端部が前記外針の前記第1のルーメンに進退運動可能に挿通された内針とを備え、前記内針は、前記進退運動によって、前記外針の前記第1のルーメンに前記先端部が収容される第1の状態と、前記外針の前記開口から少なくとも前記先端部の一部が突出する第2の状態との間を遷移し、前記薬剤送出ユニットは、前記薬剤を保持する保持部と、前記保持部に保持される前記薬剤を前記内針の前記第2のルーメンに送出する送出ポンプと、少なくとも前記内針が前記第2の状態であり、かつ、前記内針が前記外針に対して後退しているときに前記送出ポンプに薬剤送出のための圧力を印加させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
また、この発明にかかるシリンジポンプは、外面に雄ネジが形成されたプランジャと、内面に雌ネジが形成されたシリンジと、を備えたことを特徴とする。
また、この発明にかかるシリンジポンプは、上記の発明において、前記プランジャに形成された前記雄ネジと、前記シリンジの内面に形成された前記雌ネジとの嵌合は、解除可能に構成されていることを特徴とする。
この発明にかかる穿刺針および薬剤投与装置によれば、穿刺針は、内部に第1のルーメンを有し、先端側の側面に第1のルーメンと連通する開口が設けられた外針と、内部に第2のルーメンを有するとともに、少なくとも先端部が外針の第1のルーメンに進退運動可能に挿通された内針と、を備え、内針は、進退運動によって、外針の第1のルーメンに先端部が収容される第1の状態と、外針の開口から少なくとも先端部の一部が突出する第2の状態との間を遷移できるため、内針が外針の開口より突出した状態で内針から薬剤を吐出させる操作と、内針を開口内に収納する操作、そして外針を回転させる操作を繰り返すことにより、薬剤の多点投与を容易に行うことができる。
また、この発明にかかるシリンジポンプによれば、外面に雄ネジが形成されたプランジャと、内面に雌ネジが形成されたシリンジと、を備えるため、プランジャの回転数を制御することによって、微量の薬剤等であっても正確に吐出できる。
図1は、実施の形態1における薬剤投与装置による生体組織に対する薬剤投与を説明する図である。 図2は、図1に示す穿刺針の先端部の斜視図である。 図3は、図1に示す穿刺針の先端部の斜視図である。 図4は、図2に示す穿刺針の先端部分を、該穿刺針の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図5は、図3に示す穿刺針の先端部分を、該穿刺針の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図6は、図1に示す穿刺針の一部分を、該穿刺針の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図7は、図1に示すシリンジの要部およびプランジャを示す斜視図である。 図8は、図1に示す薬剤投与装置を用いた薬剤投与処理の処理手順を示すフローチャートである。 図9は、図1に示す穿刺針および把持部の斜視図である。 図10は、図1に示す薬剤投与装置の薬剤投与軌跡を説明する図である。 図11は、実施の形態1の変形例1におけるシリンジおよびプランジャの分解斜視図である。 図12は、実施の形態1の変形例1におけるシリンジおよびプランジャの分解斜視図である。 図13は、実施の形態1の変形例2における薬剤投与装置の構成を説明する模式図である。 図14は、実施の形態1の変形例3における穿刺針の先端部分を、該穿刺針の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図15は、実施の形態1の変形例3における他の穿刺針の先端部分を、該穿刺針の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図16は、実施の形態2にかかる薬剤投与装置の分解斜視図である。 図17は、図16に示す薬剤投与装置の基端側要部を長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図18は、図16に示す薬剤投与装置の基端側要部を長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図19は、図17のA−A線切断図である。 図20は、図17に示すベースの空洞の内側面に形成されたカム溝を示す図である。 図21は、実施の形態3にかかる薬剤投与装置の基端側要部を長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図22は、実施の形態4における穿刺針の先端部分の斜視図である。 図23は、実施の形態4における穿刺針の先端部分の斜視図である。 図24は、図22に示す穿刺針の先端部分を、該穿刺針の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図25は、図23に示す穿刺針の先端部分を、該穿刺針の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。 図26は、図24および図25に示す被係合部材の形状を説明する模式図である。 図27は、図24および図25に示す他の被係合部材の形状を説明する模式図である。 図28は、図24および図25に示す被係合部材の形状を説明する模式図である。
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態として、人間を含む哺乳動物の生体組織に導入される穿刺針および生体組織に薬剤を投与する薬剤投与装置について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における薬剤投与装置による生体組織に対する薬剤投与を説明する図である。
図1に示すように、実施の形態1における薬剤投与装置1は、先端に設けられ生体組織に穿刺される穿刺針2、穿刺針2の基端側に設けられた把持部3、穿刺針2に薬剤を導くチューブ4、および、内部に保持する薬剤をチューブ4に送出するシリンジ5を有する。穿刺針2は、たとえば、ステンレスやチタンなどによって形成される。チューブ4は、例えばシリコン、ポリエチレン、ポリウレタン等によって形成される。
図1に示す例では、穿刺針2は、体表6の奥に位置する臓器7に穿刺されている。操作者は、プランジャ8をシリンジ5に対して前進させることで、シリンジ5内部に蓄えられた薬剤を、チューブ4および穿刺針2を介して、臓器内に投与することができる。
図2〜図5を参照して、穿刺針2の先端部の構成について説明する。図2および図3は、図1に示す穿刺針2の先端部の斜視図である。図4は、図2に示す穿刺針2の先端部分を、該穿刺針2の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。図5は、図3に示す穿刺針2の先端部分を、該穿刺針2の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。図2〜図5に示すように、穿刺針2は、外針10および内針11を備える。
外針10は、内部に第1のルーメン12を有し、先端側の側面に、第1のルーメン12と連通する開口13が設けられるとともに、先端が尖った細長い形状を成す。外針10は、長手方向の中心軸との円直面で切断した場合、外側面が円形を形成する。
内針11は、少なくとも先端部が、外針10の第1のルーメン12に進退運動可能に挿通される。内針11は、第1のルーメン12に対して、前進および後退のいずれの運動も可能である。
内針11は、先端が開口した第2のルーメン14を内部に有する。内針11は、チューブ4に接続され、第2のルーメン14は、チューブ4の内部ルーメンと連通する。このチューブ4の内部ルーメンは、シリンジ5の内部空間と連通している。第2のルーメン14は、シリンジ5内に保持される薬剤や生理食塩水等が搬送される通路として機能し、内針11先端の開口11aから薬剤や生理食塩水等が吐出される。
外針10と把持部3(図1参照)とは、たとえば、一体的に形成されており、操作者は、把持部3を把持して把持部3を操作することによって、外針10を生体組織に穿刺することや、外針10を軸周りに回動させることが可能である。
ここで、内針11は、内針11の進退運動によって、外針10の第1のルーメン12に内針11の先端部が収容される第1の状態(図2および図4参照)と、外針10の開口13から少なくとも内針11の先端部の一部が突出する第2の状態(図3および図5参照)との間を遷移する。
内針11は、第1のルーメン12において前進することによって、外針10の第1のルーメン12に内針11の先端部が収容される第1の状態から、外針10の開口13から内針11の先端部の一部が突出する第2の状態に遷移する。
外針10は、内針11の先端を第1のルーメン12から開口13に誘導するガイド面10aを、第1のルーメン12に有する。このガイド面10aは、図4および図5に示すように、開口13の先端側端部から基端側に向かって傾斜する傾斜面である。内針11の先端が最も長く突出した場合に、突出した内針11の先端位置が薬剤を投与させたい位置に達するように、内針11の突出長さと薬剤を投与させたい位置とをもとにガイド面10aの傾斜角度が設定される。
内針11の先端は、外針10の前記開口13から突出したときに外側となる角が鋭角を成す。これによって、開口13から突出した内針11先端が、外針10周囲の生体組織を切り開きながら生体組織内に入りやすくなるため、内針11が外針10の外側に向かって開口から広がるように突出することができる。
図6に示すように、外針10の第1のルーメン12には、ストッパ15が前後に所定距離(位置Pおよび位置Qの間)だけ離間して設けられている。内針11の外部側面には、突起16が設けられ、前後のストッパ15の間に位置している。ストッパ15に内針11の突起16が当たることによって、第1のルーメン12において内針11が移動できる範囲は限定される。したがって、穿刺針2においては、外針10から内針11が過度に突出することや、内針11が誤って引き抜かかることがない。
次に、図1に示すシリンジ5とプランジャ8について説明する。図7は、図1に示すシリンジ5の要部およびプランジャ8を示す斜視図である。図7に示すように、プランジャ8の外面のうちシリンジ5内に挿入される領域には雄ネジ8aが形成されている。一方、シリンジ5のプランジャ8挿入部の内面には、プランジャ8の雄ネジ8aに嵌まり合う雌ネジ5aが形成される。
雄ネジ8aおよび雌ネジ5aが嵌まり合うようにした状態で、プランジャ8を、シリンジ5先端側に前進するようにシリンジ5に対して回転させることによって、薬剤等をシリンジ5先端から吐出することができる。たとえば、プランジャ8をシリンジ5に対して1回転することによって、シリンジ5先端から12.5マイクロリットルの薬剤等を吐出できる。したがって、このシリンジ5およびプランジャ8によれば、プランジャ8の回転数を制御することによって、微量の薬剤等を正確に吐出することができる。なお、シリンジ5の基端およびプランジャ8の基端部には、プランジャ8のシリンジ5に対する回転量が判別できるように、マーカ5b,8bが設けられている。
また、プランジャ8とシリンジ5とは雄ネジ8aおよび雌ネジ5aで嵌まり合うため、プランジャ8を押す力がなくなった場合であっても、プランジャ8は、シリンジ5に対してそのままの位置を保ち、外側に押し出されることはない。したがって、操作者は、薬剤等の吐出中であってもプランジャ8から手を離すことができる。
次に、図8を参照して、図1に示す薬剤投与装置1による薬剤投与処理の一例について説明する。図8は、図1に示す薬剤投与装置1を用いた薬剤投与処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、内針11の先端部を外針10内部の第1のルーメン12に収納した(ステップS1)第1の状態(図2および図4参照)としてから、外針10を生体組織に穿刺して外針10の先端を薬剤投与対象の臓器7の内部に導入する(ステップS2)。
外針10が生体組織に導入された状態において、操作者は、チューブ4を先端側に向かって押すことにより、内針11を外針10に対して前進させることによって、内針11の先端を外針10の開口13から突出させる(ステップS3)第2の状態(図3および図5参照)とする。この内針11先端の突出動作によって、内針11先端が広がる方向に位置する生体組織が内針11先端によって切り開かれ、切り込みができる。
操作者は、薬剤等の吐出量に対応する回転量分、プランジャ8を、シリンジ5先端側に前進するようにシリンジ5に対して回転させることによって、所定量の薬剤等をシリンジ5からチューブ4に送出し、内針11先端の開口11aから薬剤等を吐出させる(ステップS4)。吐出された薬剤は、内針11先端によって切り開かれた切り込みに浸潤してゆく。
続いて、生体組織に外針10を導入した状態において、操作者はチューブ4を基端側に引いて、内針11を外針10に対して後退させ、内針11の先端を外針10の開口13の内部に収納して(ステップS5)、内針11を第1の状態とする。
この状態で、操作者は、薬剤等の吐出が予定した回数に達したかを判断する(ステップS6)。操作者は、薬剤等の吐出が予定した回数に達していないと判断した場合(ステップS6:No)、把持部3を持って外針10を、長手軸を中心に所定の角度だけ回動させる(ステップS7)。例えば、予定の回数として6回が決まっていれば、操作者は、1回の回動において、60°程度、外針10を回動させる。図9に示すように、開口13が外針10の周方向のどの方向を現に向いているかが判別できるように、体外に位置する把持部3の側面であって、外針10の開口13の軸方向の延長線上には、マーカ3aが付されている。もちろん図9に示すマーカ3aに限らず、外針10の開口13の軸方向の延長線上に位置する把持部3の側面の一部を切り欠いて平らにして、開口13が外針10の周方向のどの方向を現に向いているかが判別できるようにしてもよい。
その後、ステップS3に戻り、生体組織に外針10が穿刺された状態において、内針11の先端を外針10の開口13から突出させる(ステップS3)第2の状態とする。この内針11先端の突出動作によって、生体組織には前回とは別の角度の切込みが形成される。
一方、ステップS6において、操作者は、薬剤等の吐出が予定した回数に達したと判断した場合(ステップS6:Yes)、外針10を抜き出すか、または、外針10を留置するか判断する(ステップS8)。操作者は、外針10を抜き出すと判断した場合(ステップS8:抜出)、外針10内部の第1のルーメン12に内針11が収納された状態で外針10を臓器7から抜き出す(ステップS9)。一方、外針10を留置すると判断した場合(ステップS8:留置)、そのまま外針10を臓器7内に留置する(ステップS10)。
このように、実施の形態1においては、内針11が開口13より突出した状態で内針11から薬剤を吐出させる操作と、内針11を開口13内に収納して外針10を長手軸回りに回動させる操作とを予定の回数繰り返すことにより、多点投与を容易に行うことができる。
また、本実施の形態1においては、臓器の固形がんなどの硬い生体組織に対して薬剤を吐出する場合、プランジャ8とシリンジ5とは雄ネジ8aおよび雌ネジ5aで嵌まり合うため、シリンジ5内の圧力が保たれることで、臓器7内における内針11の軌跡上に薬剤が吐出される。つまり、上述のように角度を変えて内針からの薬剤などの吐出を繰り返すことにより、図10に模式的に示すように、内針11が外針10より突出した状態では、略円錐形の底面の周L1に上に位置するため、図8に示すステップを前述の如く繰り返すことにより、周L1上の複数個所に薬剤が吐出され、薬剤投与対象領域に十分な量の薬剤を保持させることができる。
また、本実施の形態1においては、内針11よりも外径の大きな外針10は、穿刺針2の生体組織への導入時および穿刺針2の生体組織からの抜き出し時にのみ、生体組織に対して進退する。このため、実施の形態1によれば、外径の大きな外針10による臓器7に対する侵襲を少なくしながら、臓器7内の複数の箇所への多点投与を実現することができる。
なお、実施の形態1においては、上述した図8のステップS4およびステップS5を並行して行ってもよい。すなわち、内針11を外針10に対して後退させるときにも、シリンジ5に対してプランジャ8を回転させて、薬剤の圧力を保った状態で内針11を後退させるように操作して、少なくとも内針11が第2の状態であり、かつ、内針11が外針10に対して後退しているときに薬剤を吐出させるようにしてもよい。このように操作することによって、図10に模式的に示すように、後退する内針11の軌跡において形成される空間、すなわち、図10の略円錐形の底面の周L1に加えて該略円錐形の側面L2に対応する空間にも薬剤を充填できるので、生体組織に対する薬剤の充填効率を高めることができる。
(実施の形態1の変形例1)
実施の形態1の変形例1について説明する。実施の形態1の変形例1においては、図7に示すシリンジ5に代えて、図11および図12に示すように、バネ107を介して係合部材106が取り付けられるシリンジ105を用いてもよい。
シリンジ105は、基端のグリップに、内側がプランジャ8の雄ネジ8aに当接する当接部105aが形成される。当接部105aの外側にはバネ107の一端が嵌まる突起部105bが形成される。シリンジ105のグリップには、グリップの一部が延伸し屈曲したつまみ部105cが形成される。
係合部材106は、プランジャ8が挿通可能である開口側面の一部に、雄ネジ8aに嵌合可能である雌ネジ部106aが形成される。係合部材106の開口側面には、雌ネジ部106aに対向して、バネ107の他端が嵌まる突起部106bが形成される。係合部材106には、一部が延伸し屈曲したつまみ部106cが形成される。つまみ部105cとつまみ部106cは、組み立て時には、図12に示すように対向する。
図12の矢印Y1のように、シリンジ105のつまみ部105cと係合部材106のつまみ部106cとが内側に押し付けられるようにつままれることによって、つまみ部106cが内側に移動し、これにともない、雌ネジ部106aも外側に移動する。この結果、雌ネジ部106aの雄ネジ8aへの嵌合が解除されて、プランジャ8は自由となり、矢印Y2のように上下に移動可能となる。
そして、つまみ部105cとつまみ部106cとのつまみが解除されると、縮んでいたバネ107が伸びて雌ネジ部106aがプランジャ8の雄ネジ8aに嵌合する。この状態で実施の形態1と同様にプランジャ8をシリンジ105に対して前進するように回転することによって、薬剤等をシリンジ105から吐出可能である。
実施の形態1の変形例1においては、つまみ部105cおよびつまみ部106cをつまむだけで、プランジャ8をシリンジ105から取り外すことができるため、シリンジ105内への薬剤補充処理などの処理も容易に行うことができる。
(実施の形態1の変形例2)
次に、実施の形態1の変形例2について説明する。図13に示すように、実施の形態1の変形例2にかかる薬剤投与装置1aにおいては、図1に示すシリンジ5およびプランジャ8に代えて、ポンプ17と、薬剤を格納するレザバー18とを有する薬剤送出ユニットを有する。ポンプ17は、レザバー18に収容された薬剤を内針11に送出する機能を有する。
このポンプ17は、制御ユニット19によって送出処理が制御される。制御ユニット19には、外針10と内針11との相対的な位置関係を検出するセンサー20が接続されている。
制御ユニット19は、センサー20の検出結果をもとに、内針11が外針10の開口からその先端部が突出した第2の状態にあることを検出し、かつ、内針11が最も前進した位置にいる、または、内針11が一度最も前進した位置に到達した後に外針10の開口13に向かって後退している位置にいることを検出した場合に、予め設定した圧力で薬剤を送出するようにポンプ17を制御する。
このように、外針10と内針11との相対的位置をセンサー20で検出し、その検出した位置に応じて薬剤の吐出を自動的に行うように構成することによって、内針11が最も前進した位置で自動的に薬剤を投与できるとともに、内針11の後退軌跡において形成される空間にも薬剤を充填できるので、生体組織に対する薬剤の充填効率を高めることができる。
(実施の形態1の変形例3)
次に、実施の形態1の変形例3について説明する。図14は、実施の形態1の変形例3における穿刺針の先端部分を、該穿刺針の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。
図14に示すように、実施の形態1の変形例3における外針10Aは、内部にルーメン12aおよびルーメン12bを有し、各ルーメン12a,12bにそれぞれ連通する開口13a,13bを側面に有する。また、ルーメン12a,12bには、それぞれ内針11A,11Bが挿通される。この2つの内針11A,11Bは、それぞれ独立した進退運動が可能であるとともに、図示しない基端において、チューブおよびシリンジがそれぞれ接続しており、それぞれ独立して薬剤投与を行う。
このように、複数のルーメン12a,12b、開口13a,13bを設け、内針11A,11Bにおける進退運動および薬剤投与処理を独立して制御することによって、臓器7内の複数の箇所への多点投与を容易に実現することができる。
なお、図15の外針10Cに示すように、内部の第1のルーメン12cを先端で分岐させてもよい。この場合、第1のルーメン12cを非対称に分岐させて、各分岐した第1のルーメン12cとそれぞれ連通するとともに外針10Cの長手方向における位置がそれぞれ異なる開口13c,13dを外針10Cの側面に設けてもよい。そして、この場合には、第2のルーメン14cを有するとともに、複数の開口13c,13dに対応して先端が分岐した内針11Cを用いる。さらに、内針11Cの一方の先端11cを第1のルーメン12cから開口13cに誘導するガイド面10cと、内針11Cの他方の先端11dを第1のルーメン12cから開口13dに誘導するガイド面10dとを、それぞれ異なる角度に傾斜するように形成することによって、内針11Cの先端11c,11dの各開口13c,13dからの突出角度を変えてもよい。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、内針が、外針の第1のルーメンに内針の先端部が収容される第1の状態にあるときにのみ、内針の運動と外針の長手軸中心の回動運動を連携させる連携機構を設けた場合について説明する。
図16は、実施の形態2にかかる薬剤投与装置の分解斜視図である。図17および図18は、図16に示す薬剤投与装置201の基端側要部を長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。図17は、薬剤投与装置201の基端側要部を分解した状態について示す。図18は、薬剤投与装置201の基端側要部が組みつけられた状態であり、後述するプッシャが後述するプランジャ内に最も押し入れられた状態を示す。
図16〜図18に示すように、薬剤投与装置201は、内部に内針11を収容可能である外針10、外針10を内部ルーメンに収容する外筒202、略円筒形のベース部材222、略円筒形のチャージグリップ223を有する。
図16〜図18に示すように、チャージグリップ223は外周に滑り止め溝が加工されている。また、チャージグリップ223は、ベース部材222に対し回動できる構造となっている。
ベース部材222内部の空洞は、先端側と基端側とで内径が異なり、基端側の空洞222aの方が径大である。空洞222aの内側面には、内側面を一周するカム溝228が形成されている。このカム溝228は、軸方向に伸長する複数の直線溝と、各線溝の基端と、各直線溝と隣り合う一方の直線溝の先端とをそれぞれ接続する溝であって複数の直線溝間を斜めに結ぶ複数の傾斜溝とによって形成される。ベース部材222先端は、外筒202と連結する。外筒202は、外針10を回動自在にルーメン内に収容する。外筒202は、例えばPEEK樹脂チューブである。
シリンジ224は、内部に空洞を有するとともに、少なくとも先端部がベース部材222の空洞222aに回動自在に収容される小径部224aと、小径部224aに連なる径大の大径部224bとを有する。小径部224aの先端は、外針10の基端が連結している。大径部224b内部の空洞224cの内側面には、長手軸方向に延伸する直線形状のガイド溝226が形成されている。
小径部224aの外側面には、カム溝228と係合可能である係合ピン229が設けられている。この係合ピン229は、図17の矢印に示すように、外部に突出するように付勢されているとともに、上部から押された場合には小径部224aの外壁内に収容されるように構成される。
シリンジ224の先端部は、係合ピン229が小径部224aの外壁内に収容された状態で、収容された係合ピン229がベース部材222のカム溝228に到達するまで、ベース部材222の空洞222aに挿入される。係合ピン229は、カム溝228に到達すると外部方向に付勢されて突出し、カム溝228に係合する。係合ピン229は、カム溝228の溝の中を移動して、ベース部材222の内側面を一周することができる。この係合ピン229の移動にともなって、シリンジ224本体もカム溝228の輪郭に沿って回動可能である。そして、小径部224aの先端は外針10の基端が連結しているため、この外針10も、シリンジ224と一体となって回動する。
プランジャ225は、略円筒形状を有するとともに、少なくとも先端部がシリンジ224の空洞224cに回動自在に収容される。プランジャ225の外側面には、シリンジ224のガイド溝226と係合する係合ピン227が設けられている。プランジャ225の先端には、内針11の基端が連結しており、プランジャ225と内針11とは一体的に動く。
プッシャ225aは、プランジャ225の基端側からプランジャ225の空洞224c内に挿入され、薬剤吐出時には、操作者によって先端側に向かって押される。プッシャ225aの基端側側面には、レザバー17と接続するチューブ204が連結している。
チューブ204とプランジャ225の空洞との境界には、チューブ204からプランジャ225内に向かう方向の圧力が加えられたときにチューブ204内部の薬剤等をプランジャ225内に向かって通過させる一方向弁234が設けられる。すなわち、一方向弁234は、プッシャ225aがプランジャ225から引き出されるときに、薬剤等をプランジャ225の空洞内に向かって通過させる。
また、プランジャ225の空洞の先端部には、プランジャ225内から先端方向に向かう方向の力が加えられたときに、プランジャ225内部の薬剤等を外部に向かう方向に通過させる一方向弁235が設けられる。すなわち、一方向弁235は、プッシャ225aがプランジャ225内に押し入れられたときに、プランジャ225内の薬剤等をプランジャ225先端から吐出させる。
シリンジ224の外側面には、第1のバネ230が配設されている。第1のバネ230は、先端側端部230aがチャージグリップ223の基端側底面に固定され、基端側端部230bがシリンジ224の大径部224bに固定されている。
ここで、図19は、図17のA−A線切断図である。図19に示すように、ベース部材222の外側面には、カム溝228よりも先端側に穴222dが形成される。また、チャージグリップ223の内側面には、カム溝228よりも先端側に穴223bが形成される。この穴222d,223bは、両者間に介在する係合部材232によって係合しており、チャージグリップ223は、ベース部材222に対し、一方向には回動するが、逆の方向には回動しないように構成されている。係合部材232は、たとえば、1個のバネと1個のボールとを1組として形成される。
このような係合部材232でベース部材222とチャージグリップ223とを係合するため、回転可能な方向にチャージグリップ223およびシリンジ224を回動させると、回動のエネルギーが第1のバネ230にチャージされる。シリンジ224には外針10が連結するため、図19に示す係合部材232は、外針10を一定の方向に回動するように付勢する付勢機構として機能する。
プランジャ225の外側面には、第2のバネ231が配設されている。第2のバネ231は、基端側端部はプランジャ225の基端に固定されており、先端側端部は移動が自由となるように固定されていない。プランジャ225がシリンジ224内部に押し込まれると、第2のバネ231が縮むことで基端方向に向かうエネルギーがチャージされ、プランジャ225は押し戻す方向に付勢される。
プッシャ225aには、第3のバネ233が配設されている。プッシャ225aがプランジャ225内部に押し込まれると、第3のバネ233が縮むことで基端方向に向かうエネルギーがチャージされ、プッシャ225aは押し戻す方向に付勢される。
第2のバネ231は、第1のバネ230に比べて強い弾性を有するバネである。第3のバネ233は、第2のバネ231に比べてさらに強い弾性を有するバネである。
次に、図20を参照して、薬剤投与装置201の基端側の各構成要素の動作を説明する。図20は、ベース部材222の空洞222aの内側面に形成されたカム溝228を示す図である。
まず、初期状態として、カム溝228において、係合ピン229は、位置A(図20参照)に位置する。この状態で、プッシャ225aが押されると、プッシャ225aを押す力は、第3のバネ233および第2のバネ231を介してシリンジ224に伝達して、シリンジ224を押す力となる。シリンジ224が押されることによって、係合ピン229にも、先端側に押される力がかかり、係合ピン229は、カム溝228の傾斜溝部分に沿ってカム溝228の位置Bの位置まで移動する。したがって、係合ピン229が傾斜溝部分に沿ってベース部材222の外側面を斜めに回動するように移動するため、シリンジ224もベース部材222の空洞222a内で回動する。図18の紙面との直交面から見たときにシリンジ224が回動する角度は、例えば30°から180°が望ましい。そして、シリンジ224が押されることにともない、第1のバネ230は収縮する。
この場合、第1のバネ230が最も収縮した状態に至るまでの間、第2のバネ231は、僅かな収縮に留まるにすぎないため、内針11先端は、外針10から突出することはない。このため、内針11の先端は外針10の第1のルーメン内に収容されたままの状態で、外針10が回動する。もちろん、第3のバネ233は、さらに僅かに収縮するのみであるため、薬液の吐出は行われない。
さらに強くプッシャ225aが押されると、プッシャ225aを押す力は、第3のバネ233を介してプランジャ225に伝達してプランジャ225を押す力となり、プランジャ225がシリンジ224内部を先端方向に向かって前進する。これにともない、プランジャ225外側面に設けられた第2のバネ231が収縮を開始する。このとき、係合ピン227がガイド溝226先端まで前進し、これにともない、プランジャ225先端に連結する内針11も前進し、内針11の先端が外針10の開口13から突出する。内針11の先端の突出は、ガイド溝226の先端で係合ピン227の前進が止まると停止する。
この場合、第3のバネ233は、さらに僅かに収縮するのみであるため、薬液の吐出は行われない。なお、第2のバネ231および第3のバネ233で付勢されている部材に予めストッパを設けてストロークを制限する構成、つまり動作開始前においても先端側に若干押す力がかかっている状態にしてもよい。この場合には、第2のバネ231および第3のバネ233の収縮に関わる各部材の動きは、一つのバネに関わる動きが完了してから次のバネに関わる動きが開始されるため、各部材はさらに規則的に動作する。すなわち、第2のバネ231は、第1のバネ230の収縮に関する部材の動き(シリンジ244の回動動作)が完了してから、収縮を開始する。そして、第3のバネ233は、第2のバネ231の収縮に関する部材の動き(内針11の突出動作)が完了してから収縮を開始する。
さらに強くプッシャ225aが押されると、第3のバネ233が収縮し、プッシャ225aがプランジャ225内に押し入れられる。この結果、プランジャ225内には、プランジャ225内から先端方向に向かう方向の力が加えられ、一方向弁235を経由して、プランジャ225内の薬剤等がプランジャ225先端から吐出される。プランジャ225先端から吐出された薬剤等は、内針11の内部ルーメンを流れ、内針11の先端から生体組織に向けて吐出される。
その後、プッシャ225aから操作者が指を離すと、プッシャ225aを押す力が解除されるため、まず、第3のバネ233に蓄えられた弾性エネルギーによってプッシャ225aが基端方向に後退する。このプッシャ225aの後退によって、チューブ204からプランジャ225内に向かう方向の圧力が加えられるため、一方向弁234を経由してチューブ204からプランジャ225内に薬剤が供給される。
続いて、第2のバネ231に蓄えられた弾性エネルギーによって、プランジャ225は基端方向に後退する。プランジャ225先端に接続する内針11も後退する。この結果、内針11の先端は、外針10の開口13を経由して外針10の内部に再び収容される。その後、第1のバネ230に蓄えられた弾性エネルギーによって、シリンジ224は、基端方向に後退して、初期状態に復帰する。このシリンジ224の後退によって、係合ピン229は、カム溝228において位置Bから位置Cまで後退移動する。
係合ピン229がカム溝228の位置Cに到着すると、第1のバネ230に予めチャージされた回動エネルギーの作用によって、シリンジ224が僅かに回動する。この結果、係合ピン229の位置は、カム溝228の位置Cから位置Dに移動する。
このように、実施の形態2においては、操作者がプランジャ225を押す動作を繰り返すことによって、外針10の軸周りの回動、外針10の開口13からの内針11の突出、内針11先端からの薬剤等の吐出、チューブ204からプランジャ225内への薬剤の供給、および、内針11の外針10の開口13内への収納のサイクルを繰り返すことができるため、臓器7内の複数の箇所への多点投与をさらに容易に実現することができる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。図21は、実施の形態3にかかる薬剤投与装置の基端側要部を長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。
図21に示すように、実施の形態3にかかる薬剤投与装置は、実施の形態2にかかる薬剤投与装置201と比して、図16〜図18に示す第3のバネ233を省略した構成を有する。薬剤投与装置301は、図16〜図18に示すプッシャ225aに代えて、図7に示すプランジャ8をプッシャとして有する。薬剤投与装置301は、図16〜図18に示すプランジャ225に代えて、プランジャ225と比して、内部にプランジャ8の雄ネジ8aが嵌る雌ネジ325aが基端側内部に形成されたプランジャ325を有する。
この実施の形態3によれば、プランジャ325に対して、プッシャとして機能するプランジャ8を回転させることによって、微量の薬剤を送出可能にしている。
さらに、実施の形態3においては、ベース部材222とシリンジ224とプランジャ325とは、ロック機構によって相対的な位置関係がロックされる構成としてもよい。この場合、操作者はプランジャ325から手を離すことができる。そして、この状態でプランジャ8をプランジャ325に対して回転させることで薬剤の注入を実現する。
操作者がプランジャ325を押すと、ロック機構が外れる。その後、操作者がプランジャ325から指を離すと、プランジャ325を押す力が解除されるため、第2のバネ231に蓄えられた弾性エネルギーによってプランジャ325は基端方向に後退する。続いて、第1のバネ230に蓄えられた弾性エネルギーによって、プランジャ325は、シリンジ224とともにさらに基端方向に後退して、初期状態に復帰する。この移動によって、係合ピン229は、カム溝228において位置B(図20参照)から位置C(図20参照)に後退する。この係合ピン229の後退にともなって、シリンジ224内に先端が収容されるプランジャ325も後退するため、プランジャ325先端に接続する内針11も後退し、内針11の先端は、外針10の内部に再び収容される。
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。実施の形態4においては、実施の形態2,3とは異なる連携機構を設けた場合について説明する。
図22および図23は、本実施の形態4における穿刺針の先端部分の斜視図である。図24は、図22に示す穿刺針402の先端部分を、該穿刺針402の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。図25は、図23に示す穿刺針402の先端部分を、該穿刺針402の長手方向の中心軸に沿って切断した断面図である。
図22および図23に示すように、実施の形態4の穿刺針402は、開口13が側面に設けられるとともに内部に連携機構が設けられる先端部441と、先端部441に対して軸周りに回動自在の基端部442とを有する外針410を備える。連携機構は、外針410の先端部441のみを回動運動させるものであり、基端部442を回動させるものではない。
内針411は、外針410の第1のルーメン412に進退運動可能に挿通される。内針411は、内針411の進退運動によって、外針410内に内針411の先端部が収容される第1の状態(図22および図24参照)と、外針410の開口13から少なくとも内針411の先端部の一部が突出する第2の状態(図23および図25参照)との間を遷移する。内針411の基端は、外針410の基端部442の第1のルーメン412を延伸する。内針411の基端は、実施の形態1と同様に、シリンジ5の内部空間と連通するチューブ4に連結する。
内針411の外側面および外針410の第1のルーメン412の内側面には、それぞれが係合可能である係合機構が設けられる。図24および図25に示す例では、内針411の外表面に係合ピン443が設けられており、第1のルーメン412の内側面に、係合ピン443が係合可能である被係合部材444が設けられている。図24および図25に示すように、係合ピン443と被係合部材444とは、内針11が外針410内に内針11の先端部が収容される第1の状態であるときにのみ係合する位置関係にある。
外針410の内側面であって被係合部材444よりも先端側には、係合ピン443の前進を阻止可能であるストッパ445が設けられており、内針411の先端が過度に突出するのを防止している。
図26は、図24および図25に示す被係合部材444の形状を説明する模式図である。図26は、説明のため、被係合部材444を図24および図25に示す状態から90°左周りに回転した状態を示す。
図26に示すように、被係合部材444は、円筒の側面が山型に切りかかれた形状を有する。切り欠き形状は、外針410の軸方向に平行な面と、外針410の軸方向に平行な面の基端と、この面と隣り合う他の外針410の軸方向に平行な面の先端とを接続する傾斜面とによって形成される。
実施の形態4においては、操作者は、内針411を外針410に対して前進させる。この結果、図26の矢印Y41に示すように、内針411の係合ピン443も前進するため、内針411の係合ピン443と外針410の被係合部材444との係合が外れる。そして、操作者は、係合ピン443がストッパ445で止まるまで内針411をさらに前進させて、内針411の先端を外針410の開口13から突出させる第2の状態(図23および図25参照)としてから、薬剤を内針411の第2のルーメン14に供給して、投薬を行う。なお、この状態で操作者が内針411を回動させても、外針410は、被係合部材444が内針411の係合ピン443に係合していないため回動しない。
続いて、操作者は、内針411を外針410に対して後退させて、内針411の先端を外針410の内部ルーメン412に収容する第1の状態(図22および図24参照)とする。操作者が、内針411の係合ピン443が被係合部材444に接触するまで内針411を後退させた後、内針411を所定方向に回動させる。
内針411を所定方向(たとえば図26の矢印Y42が向く方向)に回動すると、その回動運動は、被係合部材444の軸方向に平行な面に当たった係合ピン443によって被係合部材444に伝達され、これにともない、外針410も矢印Y42の方向に回動し、開口13の向く方向も変化する。ただし、内針411が他方向(たとえば、矢印Y42が向く方向とは逆方向)に回動しても、内針411の回動運動は、係合ピン443は被係合部材444の軸方向に平行な面に当たらないため、係合ピン443から被係合部材444に伝達されることはなく、外針410も回動しない。したがって、係合ピン443と被係合部材444とは、内針411が第1の状態にあるときに、内針411の回転運動によって前記外針の回転運動を生じさせる係合機構として機能する。
このように、実施の形態4においては、操作者が内針411の前進、後退および所定の方向への回動を繰り返すことによって、外針410の開口13からの内針11の突出、内針411先端からの薬剤等の吐出、内針411の外針410の開口13内への収納、および、外針410の軸周りの回動のサイクルを繰り返すことができるため、臓器7内の複数の箇所への多点投与を容易に実現することができる。
なお、実施の形態4においては、図26に示す被係合部材444よりも、外針410の軸方向に平行な面を傾斜面と同じ方向に傾斜させて、切り欠かれた山型形状の頂角をさらに鋭角化させた被係合部材444a(図27参照)を用いてもよい。そして、内針411が前進する際に被係合部材444aの山型形状の頂角部分を乗り越えられるように、係合ピン443に弾性を持たせればよい。また、外針410の被係合部材は、内針411を一方向に回動させたときに、その回動運動が係合ピン443によって伝達されるように、後退しきった内針411の係合ピン443が引っ掛かる角が基端側にあれば足りるため、図28に示す被係合部材444bのように、必ずしも山型形状に形成されていなくともよい。
1,201,301 薬剤投与装置
2,402 穿刺針
3 把持部
4,204 チューブ
5,105,224 シリンジ
5a 雌ネジ
6 体表
7 臓器
8,225,325 プランジャ
8a 雄ネジ
10,10A,10C,410 外針
11,11A,11B,11C,411 内針
12,12a,12b,12c,412 第1のルーメン
13,13a,13b,13c,13d 開口
14 第2のルーメン
15 ストッパ
16 突起
17 ポンプ
18 レザバー
19 制御ユニット
106 係合部材
107 バネ
202 外筒
222 ベース部材
223 チャージグリップ
225a プッシャ
226 ガイド溝
227,229,443 係合ピン
228 カム溝
230 第1のバネ
231 第2のバネ
232 係合部材
233 第3のバネ
234,235 一方向弁
441 先端部
442 基端部
444,444a,444b 被係合部材
445 ストッパ

Claims (21)

  1. 生体組織に穿刺される穿刺針であって、
    内部に第1のルーメンを有し、先端側の側面に前記第1のルーメンと連通する開口が設けられた外針と、
    内部に第2のルーメンを有するとともに、少なくとも先端部が前記外針の前記第1のルーメンに進退運動可能に挿通された内針と、
    を備え、
    前記内針は、前記進退運動によって、前記外針の前記第1のルーメンに前記先端部が収容される第1の状態と、前記外針の前記開口から少なくとも前記先端部の一部が突出する第2の状態との間を遷移することを特徴とする穿刺針。
  2. 前記内針の先端は、前記外針の前記開口から突出したときに外側となる角が鋭角を成すことを特徴とする請求項1に記載の穿刺針。
  3. 前記内針は、前記外針の前記第1のルーメンに対して前進することによって、当該内針の前記先端部の一部が突出し、
    前記外針は、前記内針の先端を前記第1のルーメンから前記開口に誘導するガイド面を、前記第1のルーメンに有することを特徴とする請求項1に記載の穿刺針。
  4. 前記開口は、前記外針の側面に複数設けられることを特徴とする請求項1に記載の穿刺針。
  5. 前記複数の開口は、前記外針の長手方向における位置がそれぞれ異なることを特徴とする請求項4に記載の穿刺針。
  6. 前記内針は、前記複数の開口に対応して先端が分岐することを特徴とする請求項4に記載の穿刺針。
  7. 前記外針は、前記内針の先端を前記第1のルーメンから前記開口に誘導するガイド面を、前記第1のルーメンに前記開口ごとに有し、
    各ガイド面は、それぞれ異なる角度の傾斜を有することを特徴とする請求項4に記載の穿刺針。
  8. 前記外針の前記開口の軸方向を基端側に延伸する延長線上には、マーカが付されていることを特徴とする請求項1に記載の穿刺針。
  9. 前記内針が前記第1の状態にあるときに、前記内針の運動と、前記外針の長手軸中心の回動運動とを連携させる連携機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の穿刺針。
  10. 前記連携機構は、前記内針が前記第1の状態にあるときに、前記内針の進退運動によって前記外針の回転運動を生じさせる係合機構を含むことを特徴とする請求項9に記載の穿刺針。
  11. 前記係合機構は、係合ピンとカム溝を有し、前記係合ピンが前記カム溝に係合するものであることを特徴とする請求項10に記載の穿刺針。
  12. 前記カム溝は、軸方向に伸長する複数の直線溝と、各直線溝の基端と、各直線溝と隣り合う一方の前記直線溝の先端とをそれぞれ接続する溝であって前記複数の直線溝間を斜めに結ぶ複数の傾斜溝とによって形成されることを特徴とする請求項11に記載の穿刺針。
  13. 前記係合ピンは、前記外針に接続するとともに前記内針の前進運動にしたがって前進する接続部材に設けられており、前記接続部材の前進により前記カム溝の前記傾斜溝を進行することによって前記外針を回転させることを特徴とする請求項12に記載の穿刺針。
  14. 前記外針を一定の方向に回動するように付勢する付勢機構をさらに有することを特徴とする請求項11に記載の穿刺針。
  15. 前記連携機構は、前記内針が前記第1の状態にあるときに、前記内針の回転運動によって前記外針の回転運動を生じさせる係合機構を有することを特徴とする請求項9に記載の穿刺針。
  16. 前記係合機構は、前記内針の外側面および前記外針の第1のルーメンの内側面のいずれか一方に設けられた係合ピンと、前記内針の外側面および外針の第1のルーメンの内側面の他方に設けられた被係合部材とを備え、
    前記係合ピンと前記被係合部材とは、前記内針が前記第1の区間にあるときに係合する位置関係を有し、
    前記係合ピンと前記被係合部材とが係合することによって、前記内針の回転運動が前記外針に伝達されて前記外針に回転運動が生じることを特徴とする請求項15に記載の穿刺針。
  17. 前記外針は、基端部分と、前記開口及び前記連携機構が位置するとともに前記基端部分に対して当該外針の軸周りに回動自在である先端部分とを備え、
    前記外針の前記先端部分は、前記連携機構によって前記基端部分に対して回動運動するように構成されていることを特徴とする請求項9に記載の穿刺針。
  18. 前記内針は、基端においてシリンジポンプと接続しており、
    前記シリンジポンプは、外面に雄ネジが形成されたプランジャと、内面に雌ネジが形成されたシリンジとを有することを特徴とする請求項1に記載の穿刺針。
  19. 生体組織に穿刺される穿刺針と、前記穿刺針に薬剤を送出する薬剤送出ユニットを有する薬剤投与装置であって、
    前記穿刺針は、内部に第1のルーメンを有し、先端側の側面に前記第1のルーメンと連通する開口が設けられた外針と、内部に第2のルーメンを有するとともに少なくとも先端部が前記外針の前記第1のルーメンに進退運動可能に挿通された内針とを備え、前記内針は、前記進退運動によって、前記外針の前記第1のルーメンに前記先端部が収容される第1の状態と、前記外針の前記開口から少なくとも前記先端部の一部が突出する第2の状態との間を遷移し、
    前記薬剤送出ユニットは、前記薬剤を保持する保持部と、前記保持部に保持される前記薬剤を前記内針の前記第2のルーメンに送出する送出ポンプと、少なくとも前記内針が前記第2の状態であり、かつ、前記内針が前記外針に対して後退しているときに前記送出ポンプに薬剤送出のための圧力を印加させる制御部と、を備えたことを特徴とする薬剤投与装置。
  20. 外面に雄ネジが形成されたプランジャと、
    内面に雌ネジが形成されたシリンジと、
    を備えたことを特徴とするシリンジポンプ。
  21. 前記プランジャに形成された前記雄ネジと、前記シリンジの内面に形成された前記雌ネジとの嵌合は、解除可能に構成されていることを特徴とする請求項20に記載のシリンジポンプ。
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