JP2012195662A - 非可逆回路素子およびその周波数調整方法 - Google Patents

非可逆回路素子およびその周波数調整方法 Download PDF

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Abstract

【課題】中心周波数を簡便かつ迅速に変更・調整することができる非可逆回路素子を提供する。
【解決手段】導体3,3,3に配置された磁性体2と、磁性体2に直流磁界を印加する永久磁石6とを備えるアイソレータ1は、永久磁石6に、再着磁用のコイル7が配置されている。コイル7には、再着磁用の電流を供給する電源部8が接続され、電源部8には、電源部8を制御して直流磁界が所定の磁界強度となるように永久磁石6を再着磁する着磁制御部9が接続されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、特定方向にのみ高周波信号を伝送し、逆方向には伝送しないアイソレータやサーキュレータなどの非可逆回路素子およびその周波数調整方法に関するものである。
携帯電話、携帯型無線機などの他に、近年では、携帯型ゲーム機、パソコン、家電製品などの電子機器にも無線通信機能を有するものが多くある。このような無線通信機器に使用される部品として、アイソレータやサーキュレータなどの非可逆回路素子がある。非可逆回路素子は、伝送方向の挿入損失が小さく逆方向の挿入損失が大きい機能を有し、主として、インピーダンス不整合の場合にアンテナで生じる反射波などの不要な電磁波から送信アンプ等の送信回路を保護する目的で使用されている。非可逆回路素子の使用により、反射波による送信回路の破損が防止されると共に、送信回路の安定動作が保障され、ひいては通信の高品質化および低消費電力化が可能になっている。
近年の通信サービスの多様化に伴い、例えばマルチバンド対応の携帯電話のように、一つの無線通信機器で複数の周波数帯域を利用可能なものがある。この場合、無線通信機器内に各周波数帯域に対応した複数の無線回路が必要になるため、複数の非可逆回路素子が必要になる。特に携帯型の無線通信機器では、機器の小型化のために非可逆回路素子の占有率の低下が望まれているが、素子自体の小型化には限界がある。複数の非可逆回路素子を用いずに、一つの非可逆回路素子の中心周波数を変更して使用することができれば、素子の占有率を低下できるが、そのような非可逆回路素子は開発されていない。
例えば、特許文献1には、直流磁界が印加される磁性体の周囲に、周波数調整用の穴や導体を設け、この孔径や、導体の径および長さを変えることで、高周波の通過帯域の中心周波数を設定可能な非可逆回路素子が記載されている。しかしながら、この非可逆回路素子では、素子を組み立てる際に孔の径や導体の長さ等を変更する必要があり、使用中に周波数を変更設定することは想定されていない。
また、非可逆回路素子は、磁性体及び永久磁石を有して、磁性体のジャイロ磁気現象を利用することで非可逆的な伝送特性を実現しているが、磁性体と永久磁石との温度特性が異なる場合、温度変化により通過帯域の中心周波数が変化してしまう。特に、非可逆回路素子を小型化したときに、中心周波数の温度変動係数が大きくなる場合がある。
また、非可逆可変素子に限らず全ての電子部品に言えることであるが、製造ばらつきにより素子には個体差が生じる。この個体差により、中心周波数に許容範囲以上のばらつきが生じる場合がある。
特開2002−124804号公報
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、中心周波数を簡便かつ迅速に変更・調整することができる非可逆回路素子およびその周波数調整方法を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された非可逆回路素子は、導体または導波路に配置された磁性体と、該磁性体に直流磁界を印加する永久磁石とを備える非可逆回路素子であって、該永久磁石を再着磁するためのコイルを備えることを特徴とする。
請求項2に記載された非可逆回路素子は、請求項1に記載のものであり、前記コイルに再着磁用の電流を供給する電源部と、該電源部を制御して前記直流磁界が所定の磁界強度となるように前記永久磁石を再着磁する着磁制御部とを備えることを特徴とする。
請求項3に記載された非可逆回路素子は、請求項2に記載のものであり、前記着磁制御部は、中心周波数を設定するために入力される周波数設定信号に基づいて、該中心周波数に対応する前記所定の磁界強度に前記永久磁石を再着磁することを特徴とする。
請求項4に記載された非可逆回路素子は、請求項2または3に記載のものであり、前記着磁制御部は、所定周期毎に、前記所定の磁界強度に前記永久磁石を再着磁することを特徴とする。
請求項5に記載された非可逆回路素子は、請求項2から4のいずれかに記載のものであり、前記着磁制御部には、該永久磁石の温度を検出する温度センサが接続されており、該着磁制御部は、該温度センサの検出する温度に対応する前記所定の磁界強度に前記永久磁石を再着磁することを特徴とする。
請求項6に記載された非可逆回路素子は、請求項2から5のいずれかに記載のものであり、前記着磁制御部には、前記直流磁界の磁界強度を検出する磁界強度センサが接続されており、前記着磁制御部は、前記磁界強度センサの検出する前記磁界強度が前記所望の磁界強度の許容範囲内でないときに、前記永久磁石を再着磁することを特徴とする。
請求項7に記載された非可逆回路素子は、請求項1から6のいずれかに記載のものであり、前記導体が一対の前記磁性体で挟み込まれ、又は前記磁性体の内部に配置されていることを特徴とする。
請求項8に記載された非可逆回路素子の周波数調整方法は、導体または導波路に配置された磁性体と、該磁性体に直流磁界を印加する永久磁石とを備える非可逆回路素子の周波数設定方法であって、該永久磁石を再着磁するためのコイルに再着磁用の電流を供給し、該直流磁界が周波数に対応する所定の磁界強度になるように該永久磁石を再着磁することを特徴とする。
請求項9に記載された非可逆回路素子の周波数調整方法は、請求項8に記載のものであり、所定周期毎に、前記所定の磁界強度に前記永久磁石を再着磁することを特徴とする。
請求項10に記載された非可逆回路素子の周波数調整方法は、請求項8または9に記載のものであり、前記所定の磁界強度が温度に対応するように、前記永久磁石を前記再着磁することを特徴とする。
請求項11に記載された非可逆回路素子の周波数調整方法は、請求項8から10のいずれかに記載のものであり、前記所定の磁界強度が許容範囲内にないときに、前記永久磁石を前記再着磁することを特徴とする。
本発明の非可逆回路素子およびその周波数調整方法によれば、永久磁石に再着磁用のコイルを配置することにより、このコイルに再着磁用の電流を供給し、永久磁石の磁界強度を、中心周波数に対応する所定の磁界強度に設定することができるので、非可逆回路素子の周波数を調整することができる。永久磁石の再着磁は、電気的に短時間で行うことができるので、無線通信機器に搭載した状態であっても、周波数の調整を簡便かつ迅速に行うことができる。さらに、永久磁石の再着磁は短時間に行うことができるので、電力の消費量が少なく、省エネルギーである。また、個々の非可逆回路素子の特性にばらつきがあった場合、このばらつきを調整することができる。
非可逆回路素子が、コイルに再着磁用の電流を供給する電源部、および電源部を制御する着磁制御部を備える場合、再着磁用の電流をコイルに供給して周波数を調整することができる。電源部や着磁制御部は、非可逆回路素子に一体的に配置されていてもよく、無線通信機器の電気回路内に配置されていてもよい。一体的に配置されている場合、別個に電源部等を無線通信機器に備える必要がなく、非可逆回路素子単体で周波数の調整を行うことができるので便利である。
着磁制御部が、所定周期毎に、所定の磁界強度に永久磁石を再着磁することにより、永久磁石の直流磁界が所定時間毎にリフレッシュされるので、永久磁石の直流磁界が経時変化で弱くならず一定の強度になるため、中心周波数が時間経過とともにずれることが防止され、安定した性能を維持できる。
着磁制御部が、周波数設定信号に基づいて永久磁石を再着磁する場合、中心周波数を制御することができるので、例えばマルチバンド対応の携帯電話のように複数の周波数帯域で送信を行う無線機器であっても、複数の非可逆回路素子を用いることなく、一つの非可逆回路素子で対応することができる。
着磁制御部が、温度に基づいて永久磁石を再着磁する場合、温度変動による周波数のずれを調整することができる。
着磁制御部が、永久磁石の磁界強度が許容範囲にないときに永久磁石を再着磁する場合、経時変化などによる周波数のずれを調整することができる。
導体を一対の磁性体で挟み込み、又は磁性体の内部に配置する場合、周波数の調整可能な範囲を広くすることができる。
本発明を適用する非可逆回路素子を模式的に示す概要構成図である。 本発明を適用する非可逆回路素子の等価回路図である。 本発明を適用する非可逆回路素子の原理を説明する磁化曲線である。 本発明を適用する非可逆回路素子(アイソレータ)における中心周波数設定方法を説明するためのフローチャートである。 本発明を適用するアイソレータにおける温度変化に対応する中心周波数の設定方法を説明するためのフローチャートである。 本発明を適用するアイソレータにおける磁界強度低下に対応する中心周波数の設定方法を説明するためのフローチャートである。 本発明を適用する他の非可逆回路素子の一部を模式的に示す概要構成図である。
以下、本発明の実施形態例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
図1に本発明を適用する非可逆回路素子の一例である集中定数型のアイソレータ1を示す。アイソレータ1は、磁性体2、複数の導体3(導体3,3,3)、複数の整合用コンデンサ4(整合用コンデンサ4,4,4)、終端抵抗5、永久磁石6、コイル7、電源部8、着磁制御部9、磁界強度センサ21、および温度センサ22を備えている。同図では、磁性体2、導体3、および永久磁石6を分解斜視図で示している。
磁性体2は、Fe,Co,Ni,Gdのうちの少なくとも一種を含む軟磁性体であり、例えばイットリウム−鉄−ガーネット(YIG:Yttrium-Iron-Garnet)フェライト単結晶である。磁性体2は、一例として円板形状の薄板に形成されている。この磁性体2の一平面(図の上側面)上には、板状または箔状の3本の導体3,3,3が、互いに電気的絶縁状態で重ねられて、120度の角度で交差して配置されている。磁性体2を例えばセラミック製などの基板上に膜状に形成してもよいし、導体3を磁性体2の上に膜状に形成してもよい。磁性体2は、等方性であってもよく、一軸磁気異方性、多軸磁気異方性を有していてもよい。一軸磁気異方性を有する場合が最も好ましく、この場合、後述する永久磁石6の磁界方向が磁化容易軸になっていて、永久磁石6の磁界方向に直行する面方向が磁化困難軸になっていることが好ましい。
導体3,3,3の一端部は、グランド電極(基準電位)に接続されている。導体3,3,3の他端部は、対応する整合用コンデンサ4,4,4を介してグランド電極に接続されている。また、導体3の他端部はポートPに接続され、導体3の他端部はポートPに接続されている。導体3の他端部は、例えば50Ωなどの所定抵抗値の終端抵抗5を介してグランド電極に接続されている。磁性体2の他平面(図の下側面)側には、板状のグランド電極(図示せず)が配置されている。
なお、終端抵抗5を配置せずに、導体3の他端部をポートPに接続した場合、アイソレータ1はサーキュレータとなる。
永久磁石6は、Fe,Co,Ni,Gdのうちの少なくとも一種を含む硬磁性体であり、例えば一般的なフェライト磁石である。永久磁石6は、磁性体2に直流磁界を印加するものであり、一例として磁性体2と同径の円板形状に形成されて、円板の面に直交する方向(円板の軸方向)に磁化されている。永久磁石6は、磁性体2と永久磁石6とで導体3,3,3を挟み込むように、磁性体2の上面側に所定間隔で近接または密着して配置されている。なお、永久磁石6を、例えばセラミック製などの基板上に膜状に形成してもよい。
コイル7は、永久磁石6を再着磁するためのものであり、コイル7の軸が永久磁石6の磁界方向と一致するように、永久磁石6に配置されている。この場合、コイル7は、円板形状の永久磁石6の側面に、永久磁石6と同軸で巻回されている。なお、永久磁石6を、基板上に膜状に形成した場合、コイル7を基板上の永久磁石6の周囲にパターンで形成してもよい。コイル7は、永久磁石6に直接、または永久磁石6の近傍の位置に配置することが磁界を掛ける観点から好ましいが、永久磁石6に再着磁用の磁界を掛けることができる位置であれば、永久磁石6から離れた位置に配置してもよい。コイル7は、永久磁石6に着磁することができれば、形状および配置を問わない。
電源部8は、コイルに再着磁用の電流を供給するものであり、コイル7に正方向に直流電流を供給する直流電流源11、コイル7に逆方向に直流電流を供給する直流電流源12、及び、コイル7に接続する直流電流源11,12を切換えるための切換スイッチ13を備えている。電源部8は、コイル7等の近くに一体的に配置されていてもよいし、無線通信機器の電気回路に配置してコイル7に電気ケーブルで接続されていてもよい。
直流電流源11、12は、電気的な制御で出力する直流電流値を各々調整可能な可変直流定電流源であり、着磁制御部9に制御される。直流電流源11、12は、公知の直流電源や電流制御回路を用いてもよく、また、コンデンサに電流値に対応する電荷を充電させ、その電荷を瞬間的に放電させるようにしたコンデンサ式の放電回路を用いてもよい。
切換スイッチ13は、切換え動作を電気的に制御可能なリレーまたは半導体スイッチであり、着磁制御部9に制御される。切換スイッチ13は、中間ポイント付きの双方向の切換スイッチであり、中心電極13a、および切換電極13b、13cを有している。この切換スイッチ13は、中心電極13aを、切換電極13bに接続、切換電極13cに接続、または開放のいずれかの切換制御が可能になっている。切換スイッチ13の中心電極13aには、コイル7の一端が接続されている。切換スイッチ13の切換電極13bには、直流電流源11の正極が接続されている。また、切換スイッチ13の切換電極13cには、直流電流源12の負極が接続されている。直流電流源11の負極、および直流電流源12の正極は、コイル7の他端に接続されている。
着磁制御部9は、電源部8を制御して、永久磁石6が磁性体2に印加する直流磁界が所定の磁界強度となるように、永久磁石6を再着磁するものである。着磁制御部9は、一例として、CPU、フラッシュROM、RAM、A/D変換器、および入出力インタフェース回路(いずれも図示せず)などを備え、ROMに記憶されたプログラムにしたがって動作する。なお、着磁制御部9は、論理回路を組み合わせて構成したものであってもよい。着磁制御部9には、前述した直流電流源11,12および切換スイッチ13の他に、磁界強度センサ21および温度センサ22が接続されている。さらに、着磁制御部9には、例えばアイソレータ1を搭載する無線通信機器(例えばマルチバンド対応の携帯電話)の制御回路(図示せず)から周波数設定信号が入力される。着磁制御部9は、コイル7等と一体的に配置されていてもよく、別体で無線通信機器の電気回路内に配置されていてもよい。また、着磁制御部9は、無線通信機器の制御回路と兼用されていてもよい。兼用されている場合には、内部的に発生する周波数設定信号を使用する。
磁界強度センサ21は、例えば、ホール素子、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子、ファラデー素子、直交フラックスゲート磁気センサなどである。磁界強度センサ21は、例えば永久磁石6の上面中央部などの永久磁石6に近接する位置に配置されて、永久磁石6が磁性体2に印加する直流磁界の磁界強度を検出して、着磁制御部9に出力する。温度センサ22は、例えば、熱電対、白金測温抵抗体などであり、永久磁石6に直接または近接させて配置されて、永久磁石6の温度を検出して、着磁制御部9に出力する。
次に、アイソレータ1の動作原理について説明する。
図2にアイソレータ1の等価回路を示す。導体3,3,3は、各々、磁性体2の透磁率μの影響を受けたインダクタンスL,L,Lを有する。インダクタンスLの導体3と、静電容量Cの整合用コンデンサ4とが並列接続されて、LC並列共振回路になっている。同様に、インダクタンスL,Lの導体3,3と、対応する静電容量C,Cの整合用コンデンサ4,4とが各々LC並列共振回路になっている。一例として、これらインダクタンスL,L,Lは、同じ値になるように導体3,3,3の幅等の寸法が規定されている。また、一例として、静電容量C,C,Cは同じ値に設定されている。これらのLC並列共振回路の共振周波数がアイソレータ1の中心周波数となる。
ここで、インダクタンスL,L,Lは、磁性体2の透磁率μが変化すると、透磁率μの大きさに比例して変化する。磁性体2の透磁率μは、磁性体2に印加される直流磁界Hが変化すると、直流磁界Hの大きさに反比例して変化する。したがって、インダクタンスL,L,Lは、磁性体2に印加される直流磁界Hの大きさに反比例して変化する。したがって、直流磁界Hの大きさを変化させると、インダクタンスL,L,Lが変化して、LC並列共振周波数、すなわちアイソレータ1の中心周波数が変化する。
磁性体2に印加する直流磁界Hの大きさは、永久磁石6の残留磁束密度の大きさに比例する。つまり、いわゆる強い永久磁石6の場合に直流磁界Hが大きく、弱い永久磁石6の場合に直流磁界Hが小さくなる。
図3に、永久磁石6の磁化曲線(BHカーブ)を示す。この磁化曲線は、一般的なものであり、例えば永久磁石6に正方向の大きな磁場Hを掛けると、永久磁石6が磁気飽和して、磁化曲線のa点になる。この状態から磁場Hを弱くして0にすると、磁化曲線はb点を通り、さらに逆方向に磁場Hを強くしていくと磁化曲線はc点を通って、磁場Hrのときに逆方向に磁気飽和してd点になる。この状態から、磁場Hを正方向に強くしていくと、磁化曲線はe点(逆方向の残留磁束密度Br)→f点→a点となる。このように磁化曲線はヒステリシスカーブを描く。永久磁石6を製造するときには、残留磁束密度Bが0の磁化前の磁石母材に、磁界H以上の磁場を掛けて磁化させている。
発明者は、永久磁石6に逆方向の磁場Hrを掛け、続いて磁場Hを掛けてから磁場を0に戻すと、同図に示すように磁化曲線はd点→e点→s点→s点になり、永久磁石6が残留磁束密度Bに着磁されることに気がついた。また同様のことを磁場Hで行うと、磁化曲線はd点→e点→t点→t点になり、永久磁石6が残留磁束密度Bに着磁される。つまり、永久磁石6に逆方向の磁場Hrを掛けて一度リセットしてから、磁場H、H、H等の所定の強度の磁場を掛けることで、永久磁石6の残留磁束密度をB、B、Bのように所望の大きさに自在に設定することが可能であることが解った。この原理を利用することで、永久磁石6の直流磁界Hの強さを適宜変更・調整し、磁性体2の透磁率μの値を調整して、これからインダクタンスL,L,Lを所望の値に設定することで、アイソレータ1の中心周波数を変更設定することを可能とした。しかも、永久磁石6の再着磁は短時間に電気的な制御で行うことができるので、中心周波数の変更や設定を、短時間で迅速、簡便に行うことが可能である。
永久磁石6の残留磁束密度の大きさを設定するためには、磁場Hの大きさを制御する必要があるので、磁化曲線のf点からa点までの傾きがなだらか(傾きが小)であることが好ましい。これは磁化曲線の傾きが急(傾きが大)であると、僅かに磁場Hを変化させただけで残留磁束密度Bが大きく変わってしまうので、磁場Hを精密に制御する必要があるためである。強力なネオジム永久磁石やサマリウムコバルト永久磁石は、磁化曲線の傾きが急であるので、磁場Hを精密に制御する必要がある。ストロンチウム−フェライト永久磁石やバリウム−フェライト永久磁石は、磁化曲線の傾きがなだらかであるので、磁場Hの制御が容易であり、好ましい。
次に、アイソレータ1の使用方法について説明する。
先ず、アイソレータ1の使用前の準備について説明する。
使用する前に予め、設定する必要のある各中心周波数に対応させて、永久磁石6の残留磁束密度を設定するために直流電流源11に出力させる電流値(以下、設定電流値という)、永久磁石6をリセットするために直流電流源12に出力させる電流値(以下、リセット電流値という)、及び、正常に中心周波数が設定されたときの磁界強度の許容範囲を、着磁制御部9に記憶させておく。さらに、アイソレータ1の中心周波数に温度変動がある場合又は必要性に応じて、中心周波数を再設定する温度閾値、並びに各温度において最適な上記の直流電流源11,12の電流値及び磁界強度の許容範囲を、各中心周波数及び各温度閾値に対応させて、着磁制御部9に記憶させておく。なお、永久磁石6をリセットするための電流値は、各条件で共通であれば1つだけ記憶させておいてもよい。
これら予め設定する電流値等は、永久磁石6の残留磁束密度を異ならせたアイソレータ1の特性の取得を実験的に繰り返すことで、最適な値を選択して決定する。例えば、直流電流源11,12の流す電流値をパラメータとして変化させ、必要であれば周囲温度をパラメータとして変化させて、アイソレータ1のポートPからPへの伝送損失やポートPからPへの減衰度などの通過帯域特性をネットワークアナライザで取得して、得られた特性の中から最適な電流値等に決定する。このように得られた電流値等を、製造した複数のアイソレータ1に共通して適用してもよいし、個々のアイソレータ1ごとに特性を取得して、アイソレータ1ごとに最適な値を適用してもよい。個々のアイソレータ1ごとに最適な電流値等を求める場合には、個々の製造ばらつきを無くすことができる。以上で、使用前の準備が終了する。
次に、アイソレータ1の中心周波数設定方法について、図1、図4を参照して説明する。
図1に示すアイソレータ1は、無線通信機器(図示せず)の送信部に実装され、例えば、ポートPは送信アンプ出力に接続されると共に、ポートPはアンテナに接続されて使用される。無線通信機器が複数の周波数帯域を切り替えて送信を行う場合、無線通信機器を統括的に制御する制御回路(図示せず)は、アイソレータ1に、中心周波数を示すための周波数設定信号を出力する。
図4のフローチャートに示すように、着磁制御部9は、周波数設定信号が入力されたときに(ステップS11)、直流電流源12を制御して、周波数設定信号で示された中心周波数(設定周波数)に対応するリセット電流値で電流を出力させると共に、これに連動させて切換スイッチ13を制御して、中心電極13aと切換電極13cとを所定時間(例えば10μsec)だけ接にする(ステップS12)。これにより、コイル7が永久磁石6の磁界方向とは逆方向の磁場Hr(図3参照)を発生し、この磁場Hrが永久磁石6に所定時間が掛かり、永久磁石6が逆方向に磁気飽和後、残留磁束密度Brになって残留磁束密度がリセットされる。
続いて、着磁制御部9は、直流電流源11を制御して、その中心周波数に対応する設定電流値で電流を出力させると共に、これに連動させて切換スイッチ13を制御して中心電極13aと切換電極13bとを所定時間(例えば10μsec)だけ接にする(ステップS13)。これにより、コイル7が永久磁石6を再着磁する磁界方向と同方向の例えば磁場H(図3参照)を発生し、この磁場Hが永久磁石6に所定時間掛かり、永久磁石6が設定周波数に対応する例えば残留磁束密度B(図3参照)に着磁する。
ステップS12,S13でコイル7に電流を流す所定時間は、永久磁石6の磁化させるために必要な時間であるが、通常短時間でよい。したがって、電力の消費がほとんどなく省エネルギーである。
続いて、着磁制御部9は、磁界強度センサ21が検出した磁界強度を読み込んで(ステップS14)、着磁制御部9に予め記憶されている磁界強度の許容範囲内であるか否か判別する(ステップS15)。許容範囲内であれば周波数設定動作を終了し、許容範囲内でなければステップS12に戻り、再度、永久磁石6を着磁する。許容範囲内でない場合、許容範囲内に入るように、設定電流値を増減させてステップS13を行わせてもよい。
以上で、中心周波数の設定動作が終了し、アイソレータ1の中心周波数が設定される。無線通信機器から異なる中心周波数に変更する周波数設定信号が入力されたときには、再度、中心周波数の設定動作を行って、アイソレータ1を異なる中心周波数に設定する。なお、必要であれば、着磁制御部9は、ステップS12を行う前に、温度センサ22が検出した周囲温度を読み込んで、その温度及び中心周波数に対応したリセット電流値及び設定電流値でステップS12,S13を行ってもよい。また、磁界強度を検出する必要がない場合、同図中に破線で示すように、ステップS13を行った後、終了してもよい。
着磁制御部9は、この中心周波数の設定動作を、所定周期毎に行うことが好ましい。この所定周期は、永久磁石6の残留磁束密度が経時変化で許容値よりも弱くなる時間間隔よりも短い時間間隔に設定する。
次に、温度変化に対応する中心周波数の設定方法について図1、図5を参照して説明する。
アイソレータ1は送信アンプの近くに配置されることが多く、送信アンプの発熱により、アイソレータ1が高温になり、中心周波数が設定周波数からずれる場合がある。以下、このような中心周波数のずれを元に戻す動作について説明する。
図5のフローチャートに示すように、着磁制御部9は、温度センサ22(図1参照)の検出した温度を常時読み込んで(ステップS21)、予め記憶された温度閾値を超えるか否か判別する(ステップS22)。この温度閾値は、中心周波数のずれが許容できなくなる温度に設定されている。温度閾値は、複数設定されていてもよい。また、温度閾値は、温度が上昇する場合と低下する場合とで異なる値であってもよい。温度閾値よりも高温側、および低温側の各々に対応する設定電流値、リセット電流値、および磁界強度の許容範囲が着磁制御部9に予め記憶されている。
ステップS22で、温度閾値を超えたと判別されたときには、着磁制御部9は、直流電流源12を制御して、その検出温度(かつそのときの設定周波数)に対応するリセット電流値で電流を出力させると共に、切換スイッチ13を制御して中心電極13aと切換電極13cとを所定時間だけ接にする(ステップS23)。これにより、既に説明したステップS12と同様に永久磁石6がリセットされる。
続いて、着磁制御部9は、直流電流源11を制御して、予め記憶されたその検出温度に対応する設定電流値、つまりその検出温度で中心周波数を設定周波数に正しく設定できる設定電流値で電流を出力させると共に、切換スイッチ13を制御して中心電極13aと切換電極13bとを所定時間だけ接にする(ステップS24)。これにより、永久磁石6がその温度に対応する残留磁束密度Bに着磁する。
続いて、着磁制御部9は、既に説明したステップS14,S15と同様にして、ステップS25、S26を行い、磁界強度センサ21が検出した磁界強度を確認し、磁界強度がその温度での許容範囲内にあるか確認し、必要であれば再設定して、ステップS21に戻る。
以上で、温度変化に対応する中心周波数の設定動作が終了し、温度でずれたアイソレータ1の中心周波数が設定周波数に戻る。温度が検出閾値を超えて上昇した場合、および検出閾値を超えて低下した場合に、中心周波数が再設定される。なお、磁界強度を確認する必要がない場合、同図中に破線で示すように、ステップS24を行った後、ステップS21に戻ってもよい。
次に、磁界強度低下に対応する中心周波数の再設定方法について図1、図6を参照して説明する。
永久磁石6の磁界強度は、その材質の種類により変化の度合いは異なるが、着磁してから時間が経過すると低下する。以下、このような磁界強度の低下による中心周波数のずれを元に戻す動作について説明する。
図6のフローチャートに示すように、着磁制御部9は、磁界強度センサ21(図1参照)の検出した磁界強度を常時読み込んで(ステップS31)、設定周波数(及び温度)に対応する磁界強度の許容範囲内であるか否か判別する(ステップS32)。許容範囲内であればステップS31に戻る。
ステップS32で、許容範囲内でないと判別されたときには、着磁制御部9は、直流電流源12を制御して設定周波数(及び温度)に対応するリセット電流値で電流を出力させると共に、切換スイッチ13を制御して中心電極13aと切換電極13cとを所定時間だけ接にする(ステップS33)。これにより、既に説明したステップS12と同様に永久磁石6がリセットされる。
続いて、着磁制御部9は、直流電流源11を制御して設定周波数(及び温度)に対応する設定電流値で電流を出力させると共に、切換スイッチ13を制御して中心電極13aと切換電極13bとを所定時間だけ接にする(ステップS34)。これにより、永久磁石6がその設定周波数に対応する残留磁束密度Bに着磁してステップS31に戻る。
以上で、磁界強度低下に対応する中心周波数の再設定動作が終了し、アイソレータ1の中心周波数が設定周波数に戻る。
図4の中心周波数設定方法、図5の温度変化に対応する中心周波数の設定方法、図6の磁界強度低下に対応する中心周波数の設定方法は、全て行ってもよいし、必要性に応じていずれか選択して行ってもよい。温度を検出しない場合、温度センサ22は不要になり、磁界強度を検出しない場合、磁界強度センサ21は不要になる。
次に、本発明を適用する非可逆回路素子の他の一例である集中定数型のアイソレータ1aについて図7を参照して説明する。同図では構成を模式的に分解斜視図で示している。なお、既に説明した構成と同じ構成については同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
図7に示すアイソレータ1aは、導体3を一対の磁性体2,2で挟み込み、磁性体2,2の両側を、さらに一対の永久磁石6,6で挟み込んだものである。永久磁石6,6には、各々コイル7,7が巻回されている。コイル7,7には、各々電源部8,8が接続され、電源部8,8には各々着磁制御部9,9(図示せず)が接続されている。なお、導体3を1つの磁性体2の内部に配置し、この磁性体2を2つの永久磁石6,6で挟み込んでもよい。また、導体3を1つの磁性体2の内部に配置し、この磁性体2に1つの永久磁石6を配置してもよい。なお、コイル7,7を直列接続して、一つの電源部8からコイル7,7に着磁用の電流を流す構成としてもよい。
このように、導体3の両面側に磁性体2,2がある場合、インダクタンスの最大値が大きくなるので、永久磁石6の磁界強度の調整によるインダクタンスの可変幅が大きくなり、アイソレータ1の中心周波数の可変幅を大きくすることができる。また、2つの永久磁石6を用いることで、磁性体2,2の透磁率μの可変幅を大きくすることができるので、インダクタンスの可変幅が大きくなり、アイソレータ1の中心周波数の可変幅を大きくすることができる。
なお、導体3と整合用コンデンサ4とを並列共振させた例について説明したが、インピーダンスマッチングやフィルタリングのために導体3と整合用コンデンサ4を直列接続して直列共振させるアイソレータに本発明を適用してもよい。また、3つの導体3を磁性体2に配置した3ポート型のアイソレータ1について説明したが、2つの導体を磁性体に配置した2ポート型のアイソレータに本発明を適用してもよい。また、集中定数型のアイソレータ1について説明したが、分布定数型のアイソレータの永久磁石にコイルを配置して、永久磁石を所定の磁界強度に磁化させてもよい。分布定数型のアイソレータの場合にも、永久磁石の磁界強度を変えることで、中心周波数を変化させることができる。また、同様に、導波管などの導波路に磁性体及び永久磁石を配置した導波管型のアイソレータに本発明を適用してもよい。このように、アイソレータ自体の基本構成は、公知の種々の構成を採用することができる。サーキュレータについても同様に、公知の種々の構成を採用することができる。少なくともアイソレータやサーキュレータの永久磁石を再着磁するためのコイルを備えているものは、全て本発明の範囲に含まれる。
また、電源部8が直流電流源11,12を有していて、永久磁石6を再着磁させる電流(設定電流、リセット電流)が直流電流である例について説明したが、設定電流やリセット電流は、瞬間的なパルス電流であってもよいし、sin波、台形波、ノコギリ波のような交流電流であってもよい。交流電流の場合、正の波高値が設定電流値に対応し、負の波高値がリセット電流値に対応して、電源部8は、負(リセット電流)から正(設定電流)の1周期(または整数周期)の交流電流を出力する。
1,1aはアイソレータ、2は磁性体、3,3,3は導体、4,4,4は整合用コンデンサ、5は終端抵抗、6は永久磁石、7はコイル、8は電源部、9は着磁制御部、11,12は直流電流源、13は切換スイッチ、13aは中心電極、13b,13cは切換電極、21は磁界強度センサ、22は温度センサ、C,C,Cは静電容量、L,L,Lはインダクタンス、P,P,Pはポートである。

Claims (11)

  1. 導体または導波路に配置された磁性体と、該磁性体に直流磁界を印加する永久磁石とを備える非可逆回路素子であって、該永久磁石を再着磁するためのコイルを備えることを特徴とする非可逆回路素子。
  2. 前記コイルに再着磁用の電流を供給する電源部と、該電源部を制御して前記直流磁界が所定の磁界強度となるように前記永久磁石を再着磁する着磁制御部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の非可逆回路素子。
  3. 前記着磁制御部は、中心周波数を設定するために入力される周波数設定信号に基づいて、該中心周波数に対応する前記所定の磁界強度に前記永久磁石を再着磁することを特徴とする請求項2に記載の非可逆回路素子。
  4. 前記着磁制御部は、所定周期毎に、前記所定の磁界強度に前記永久磁石を再着磁することを特徴とする請求項2または3に記載の非可逆回路素子。
  5. 前記着磁制御部には、該永久磁石の温度を検出する温度センサが接続されており、該着磁制御部は、該温度センサの検出する温度に対応する前記所定の磁界強度に前記永久磁石を再着磁することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の非可逆回路素子。
  6. 前記着磁制御部には、前記直流磁界の磁界強度を検出する磁界強度センサが接続されており、前記着磁制御部は、前記磁界強度センサの検出する前記磁界強度が前記所定の磁界強度の許容範囲内でないときに、前記永久磁石を再着磁することを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の非可逆回路素子。
  7. 前記導体が一対の前記磁性体で挟み込まれ、又は前記磁性体の内部に配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の非可逆回路素子。
  8. 導体または導波路に配置された磁性体と、該磁性体に直流磁界を印加する永久磁石とを備える非可逆回路素子の周波数設定方法であって、該永久磁石を再着磁するためのコイルに再着磁用の電流を供給し、該直流磁界が周波数に対応する所定の磁界強度になるように該永久磁石を再着磁することを特徴とする非可逆回路素子の周波数調整方法。
  9. 所定周期毎に、前記所定の磁界強度に前記永久磁石を再着磁することを特徴とする請求項8に記載の非可逆回路素子の周波数調整方法。
  10. 前記所定の磁界強度が温度に対応するように、前記永久磁石を前記再着磁することを特徴とする請求項8または9に記載の非可逆回路素子の周波数調整方法。
  11. 前記所定の磁界強度が許容範囲内にないときに、前記永久磁石を前記再着磁することを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の非可逆回路素子の周波数調整方法。
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