JP2012193325A - ポリビスマレイミド架橋微粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】粒子径が10nmから10μmの範囲にある単分散性に優れたポリビスマレイミド架橋微粒子とその製造方法を与えることを目的とする。
【解決手段】下記一般式Iで示される繰り返し単位と一般式IIの繰り返し単位を併せ有するポリビスマレイミド架橋微粒子であり、該架橋微粒子は分散重合法により製造される。
【化1】
【化2】
(一般式IおよびIIにおいて、Q1は共に同一である2価の連結基を表す。)
【選択図】図1
【解決手段】下記一般式Iで示される繰り返し単位と一般式IIの繰り返し単位を併せ有するポリビスマレイミド架橋微粒子であり、該架橋微粒子は分散重合法により製造される。
【化1】
【化2】
(一般式IおよびIIにおいて、Q1は共に同一である2価の連結基を表す。)
【選択図】図1
Description
本発明は、分子内にマレイミド基を2個有するモノマーを単独或いはこれと共重合可能な他のモノマーと共に分散重合法により重合することで得られる、単分散性に優れたポリビスマレイミド架橋微粒子とその製造方法に関する。
分散重合法とはポリマー微粒子を製造するための合成方法の一つである。ポリマー微粒子を合成する方法には分散重合法以外に乳化重合法や懸濁重合法が良く知られている。これらの方法を、合成で得られるポリマー微粒子の大きさから比較すると、乳化重合法においては、水中で大凡10nmから1μmの範囲の微粒子が得られるのに対して、懸濁重合法では、比較的粒子径の大きい大凡数10μm以上の粒子が得られる。一方、分散重合法においては、乳化重合法で得られる粒子径の範囲より広い範囲の粒子径がカバー出来、大凡10nmから10μmの範囲の粒子径を有するポリマー微粒子が得られる。また、分散重合法においては、重合媒体として通常モノマーを可溶化するために水以外の有機溶媒を使用することが特徴の一つである。重合を開始する前の状態では、モノマーは媒体に可溶性であることから均一な溶液であるが、重合によりポリマーを生成すると媒体に不溶性となり、ポリマーが析出することで重合系が均一系から不均一系に移行することが特徴である。更には、重合系には予め分散安定剤として作用する重合媒体に可溶性であるポリマーを共存させておくことも特徴の一つである。こうすることで重合系から析出するポリマーが安定な微粒子の形で形成されることが分散重合法の最大の特徴である。例えば、アルコール媒体を用いて、ポリビニルピロリドン等の分散安定剤の存在下でスチレンモノマーの重合を行い、μm領域のサイズの単分散性ポリスチレン微粒子を合成する例に関しては、特許文献1等が挙げられ、また炭化水素媒体中でのnm領域のサイズのポリ酢酸ビニル微粒子の合成とその応用に関しては特許文献2等の例が挙げられる。
分散重合法により様々なポリマー微粒子が合成され、各種用途への適用がなされてきたが、本発明が開示するポリビスマレイミド微粒子に関してはこれまでの知見からは見あたらず、ポリビスマレイミド架橋微粒子としての素材およびその製造方法に関しては全く知られていなかった。
従来から知られているマレイミド樹脂としては、分子内にマレイミド基を2個有するビスマレイミドとジアミンを反応させて得られるポリアミノビスマレイミド樹脂や、或いはビスマレイミドをトリアジンで架橋したビスマレイミドトリアジン樹脂など、その他様々な種類のマレイミド樹脂が知られている。例えば特許文献3には、ポリイミドとの組み合わせが開示され、特許文献4ではエポキシ樹脂との組み合わせによる熱硬化性樹脂としての用途が開示されている。これらは全てマレイミド基が有する高い反応性を利用するものである。マレイミド樹脂の特徴は、耐熱性が高く高温での連続使用が可能であり、高温での力学物性が良好で、耐摩耗性、誘電性、耐薬品性などに優れることが挙げられる。こうした特徴を生かした用途として、電子・電機部品、プリント配線板、半導体基板、IC封止剤などの電子材料分野における高耐熱性と高絶縁性、低誘電性が要求される樹脂組成物や、これを用いたプリプレグおよび積層板に利用されている。
マレイミド基の反応性を利用した他の注目される用途としてクロマトグラフ用担体としての用途が挙げられる。特許文献5および6にはマレイミド基含有架橋ポリスチレン粒子のアフィニティークロマトグラフィー用担体としての用途が開示されている。これは、マレイミド基へのチオール基の付加反応が室温において速やかに進行することを利用するものである。この場合、微粒子表面にマレイミド基が結合することによって特異的にメルカプト基の付加が生じるものであり、マレイミド含有微粒子としてのバイオ関連用途への展開として発展が期待されているが、マレイミド基の濃度を制御することが困難であり、また結合したマレイミド基の濃度も低い場合があり改良が望まれているのが現状である。
上記の例のように、分子内に2個以上のマレイミド基を有する化合物は、その高い反応性を利用した様々な用途と、ポリマレイミド構造に由来する高い熱安定性を利用した様々な用途の両方で発展が期待されるが、例えば特許文献3や4の例のように、ビスマレイミド化合物として利用されるのは、例えばビスマレイミドジフェニルメタンのような低分子化合物であるため、これから生成するマレイミド樹脂としての分子量は比較的小さいため、機械的に非常に脆い性質を示すことが欠点であった。マレイミド基を有する化合物の分子量を上げた例として例えば、特許文献7〜9等に見られる化合物を挙げることが出来る。しかしながら、マレイミド基は極性が高く、分子内に多数のマレイミド基を導入した場合の化合物としての各種溶剤や樹脂に対する溶解性が低下し、均質に混合したマレイミド樹脂を形成することが困難である場合があった。
上記のような、各種溶剤や樹脂に対する溶解性が向上したポリマレイミド化合物が求められており、或いは表面にマレイミド基が結合した微粒子として、更に高密度にマレイミド基が結合した微粒子が望まれているのが現状である。微粒子そのものの構造として更に架橋構造を有するものが望ましく、架橋構造を有することで優れた耐薬品性と機械的強度を発揮出来ることが期待される。
他方、ポリマレイミドに性質が類似したポリイミドは、耐熱性に優れたポリマーとして各種用途に広く利用されているが、特にポリイミドを微粒子の形で形成したポリイミド微粒子は、耐熱性が高く化学的にも安定であり、不溶不融の極めて機械的強度の高い微粒子として、充填剤やスペーサー樹脂、クロマト用担体、その他の用途に検討されている。例えば特許文献10では単分散性に優れた30nm〜700nmの粒子径範囲の球形ポリイミド微粒子を製造する方法が開示されている。
こうした微粒子の形で各種ポリマーとのブレンド系を作製する場合には、ポリマー同士の相溶性の欠如による相分離の問題は容易に解決され、微粒子を各種ポリマーマトリックス中に均一に分散させることで均一なブレンド系が形成されるため好ましい。このようにして作製した微粒子充填系では機械的強度や各種溶剤に対する耐溶剤性が向上する場合があり好ましく利用される。ポリイミドは微粒子に限らず様々な粒子径の粉体で利用することも好ましく行われ、これに関しては上記特許文献10以外にも特許文献11〜14において各種ポリイミドの粉体の製造方法が開示されている。
上記特許文献に示されるような方法で得られるポリイミド微粒子(もしくは粉体)は耐熱性、耐溶剤性、機械的強度などの点で極めて優れた素材であり様々な用途に使用されるが、一方でその製造にあたっては、テトラカルボン酸とジアミンからポリアミック酸を生成し、更にこれを脱水縮合してポリイミドを形成する合成方法がとられるため製造が煩雑でコストおよび時間がかかり必然的に素材として高価なものになる問題が存在していた。
ポリビスマレイミドはポリイミドと同様に優れた熱的、化学的および力学的性質を有するため、これを微粒子の形で利用することでポリイミド微粒子と同様に優れた耐熱性、耐溶剤性および機械的強度に優れた素材を与えることが期待されるが、こうした微粒子を製造する方法が見出されておらず、その解決策が求められていた。
特に上記のような微粒子を例えば充填剤などの用途で使用する場合には、微粒子の大きさには好ましい範囲が存在し、粒子径が10nmから10μmの範囲にある場合に最も均質な充填系が得られるため好ましいが、このような粒子径範囲をカバー出来るようなポリビスマレイミド架橋微粒子の製造方法が見出されていなかった。
本発明は、粒子径が10nmから10μmの範囲にある単分散性に優れたポリビスマレイミド架橋微粒子とその製造方法を与えることを目的とする。特に該架橋微粒子の表面に反応性マレイミド基がポリマー側鎖に結合した形で存在するポリビスマレイミド架橋微粒子を与えることを目的とする。
下記一般式Iで示される繰り返し単位と一般式IIの繰り返し単位を併せ有するポリビスマレイミド架橋微粒子。および下記一般式IIIで表される分子内にマレイミド基を2個有するモノマーを用い、溶媒として炭素数1〜5のアルコールおよび含窒素溶剤を1:0.2〜1:3の範囲の比率で混合してなる混合溶媒を使用し、更に分散安定剤として該混合溶媒に可溶性である分子量1000以上のポリマーの存在下で重合を行うことでポリビスマレイミド架橋微粒子を得るポリビスマレイミド架橋微粒子の製造方法により本発明の目的が達成される。
一般式IおよびIIにおいて、Q1は共に同一である2価の連結基を表す。
一般式IIIにおいて、Q2は2価の連結基を表す。
粒子径が10nmから10μmの範囲にある、耐熱性に優れた新規なポリビスマレイミド架橋微粒子を提供することが出来る。
本発明により得られる新規なポリビスマレイミド架橋微粒子は、下記一般式IおよびIIで示される繰り返し単位を有するポリマーから形成される架橋微粒子である。
一般式IおよびIIにおいてQ1は共に同一である2価の連結基を表す。Q1の好ましい例として、置換基を有していても良いアルキレン基、アリーレン基およびこれらの組み合わせからなる2価の連結基が挙げられる。
上記の繰り返し単位を有するポリマーを形成するために用いるモノマーは下記一般式IIIで示す分子内にマレイミド基を2個有する化合物である。
一般式IIIにおいてQ2は2価の連結基を表す。Q2の好ましい例として、置換基を有していても良いアルキレン基、アリーレン基およびこれらの組み合わせからなる2価の連結基が挙げられる。一般式IおよびIIにおけるQ1は一般式IIIにおけるQ2と同義である。Q1およびQ2の好ましい具体例としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、炭素数1〜10のアルキレン基、およびこれらの組み合わせからなる基が挙げられ、更にはこれらの基はエーテル結合、エステル結合やアミド結合を介して互いに結合して連結基を形成していても良い。また、連結基に含まれていても良い置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基やハロゲン等を挙げることが出来る。
一般式IIIで表される分子内にマレイミド基を2個有する化合物の好ましい例を下記に示す。
上記のような分子内にマレイミド基を2個有する化合物を以下に示す製造方法を用いて重合することで前記一般式IおよびIIで示される繰り返し単位を有するポリマーから形成される架橋微粒子が得られる。
上記のような分子内にマレイミド基を2個有する化合物を分散重合法により重合する場合の溶媒としては、該化合物を溶解することの出来る化合物を選択する必要がある。更には、該化合物が重合してポリマーを形成した場合には、該ポリマーは不溶性になり、重合系から析出するような化合物を選択する必要がある。上記の該化合物に対して溶媒として比較的溶解度の高い化合物として後述するような含窒素溶剤が挙げられる。含窒素溶剤を単独で用いた場合、重合で生成するポリマーも溶解性が高く、微粒子を形成しにくくなるため、該ポリマーに対する非溶剤を加えて、両者の混合溶剤として用いることが必要である。後者の非溶剤としては炭素数1〜5のアルコールを好ましく用いることが出来る。
上記の該窒素溶剤と炭素数1〜5のアルコールを混合して用いる際には、両者の比率に好ましい範囲が存在し、炭素数1〜5のアルコールおよび含窒素溶剤を1:0.2〜1:3の範囲の比率で混合してなる混合溶媒を使用することで、該混合溶媒を用いて重合を行う場合、モノマーの状態では該混合溶媒に可溶性であるが、後述するラジカル重合開始剤によって重合を行い、該モノマーが重合してポリマーを形成すると、該混合溶媒に不溶性となり、架橋した微粒子の形で析出することが本発明の特徴である。
本発明で用いることの出来る炭素数1〜5のアルコールとは、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール等が好ましく用いられ、これらは各々単独或いは幾つかを組み合わせて用いても良く、先の分子内にマレイミド基を有するモノマーおよびこれから生成するポリマーの溶解性にあわせて最適の溶媒組成が選択される。これらの内で最も好ましく用いられる溶媒はメタノール、エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノールであり、特にエタノールが好ましい。
上記の炭素数1〜5のアルコールに加えて、含窒素溶剤を混合して使用することが必要である。ここで本発明における含窒素溶剤とは、具体的にはN,N−ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ブチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどが好ましく用いられる。これらの内で特にN,N−ジメチルホルムアミドとN−メチルピロリドンが好ましい。これらの含窒素溶剤はマレイミド基を有する化合物を他の溶剤と比較して最も良く溶解することが特徴である。本発明においては分子内にマレイミド基を2個有する化合物を使用して分散重合を行うのであるが、含窒素溶剤を使用する場合においてのみ、これらの化合物を重合するのに適当な濃度範囲において、完全に溶解することが可能であることが特徴である。しかしながら、含窒素溶剤を単独で用いて重合を行うと、生成するポリマーがゲル状となり重合系全体がゲル化して目的とする架橋微粒子が得られないことが分かった。本発明の特徴は、こうした含窒素溶剤と前記のアルコールとの特定の混合比を以て作製した混合溶媒を用いることで、安定に架橋微粒子を得ることが出来ることを見出したものである。
上記の該含窒素溶剤と該アルコールとの好ましい混合比は、前述の通り質量比で1:0.2〜1:3の範囲にある。この範囲より少ない比率で含窒素溶剤を含む混合溶媒を用いて重合を行った場合、凝集物が発生する場合がある。また、上記範囲を超えて含窒素溶剤を含む場合は、微粒子が安定に形成されず、膨潤したゲルが生成する場合がある。
上記の混合溶媒において、更に他の溶剤もしくは水を添加することも出来る。水を添加して用いる場合には該混合溶媒全体に対して20質量%未満の添加量で用いることが好ましく、水を添加することで分子内にマレイミド基を2個有する化合物およびこれから生成するポリマーの溶解性が低下することで架橋微粒子の生成が促進され、より安定に架橋微粒子が形成される場合がある。その添加量に関しては、該混合溶媒全体に対して20質量%以上の添加量で用いた場合には、分子内にマレイミド基を2個有する化合物の溶解性が低下し、加熱しても均一な溶液が得られない場合がある。また、こうした状態から重合を行った場合、架橋微粒子以外に凝集物が副成する場合がある。
前記の該アルコールと該含窒素溶剤に加えて、他の有機溶剤を添加して溶媒として利用する場合には、該有機溶剤として好ましい種類と添加量が存在する。まず、好ましい有機溶剤とは、添加することで分子内にマレイミド基を2個有する化合物の媒体中における溶解度が増加し、重合濃度を高くすることにより製造単位当たりの収量を増すことが出来る効果や、或いは生成するポリビスマレイミド架橋微粒子の粒子径を調整する効果が認められる場合があり好ましい。このような有機溶剤として、例えば環状エーテル類として1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、或いは脂肪族ケトン類として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど、或いは脂肪族エステル類として、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなど、或いは芳香族類として、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの有機溶剤を添加することで一般に分子内にマレイミド基を2個有する化合物の重合媒体中における溶解性が増加し、また生成する架橋微粒子の粒子径も増加する傾向が認められる。
上記のような有機溶剤を添加して用いる場合には、該混合溶媒全体に対して好ましい割合が存在し、該混合溶媒全体に対して50質量%未満の割合で添加することが好ましく、更に30質量%未満とすることがより好ましい。これを超える量で添加した場合、重合が開始しても架橋微粒子が形成されにくく、場合によっては単にゲル化物、或いは凝集物が生成する場合があり本発明の効果が認められない場合がある。
本発明において、上記の該アルコールと該含窒素溶剤の混合溶媒に可溶性である分子量1000以上の分散安定剤であるポリマーを添加することが必要である。このようなポリマーの例として、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルピロリドン−酢酸ビニル)共重合体、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ポリ(アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル)、ポリ(アクリル酸−3−ヒドロキシプロピルエステル)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)ブロック共重合体、ポリヒドロキシエチルセルロースなどの各種のポリマーを好ましく用いることが出来るが、これらの内で、特にポリビニルピロリドンを使用した場合に、最も粒子が安定に製造でき、比較的粒子径分布の狭い、単分散性もしくはこれに近いポリビスマレイミド微粒子が製造出来ることから最も好ましく用いることが出来る。
上記のような該混合溶媒に可溶性である分散安定剤として機能するポリマーの分子量は1000以上であることが必要で、これ未満の分子量のポリマーを用いた場合には分散安定剤としての効果が認められなくなり、場合によっては架橋微粒子が安定に形成されず、凝集物を生成する場合がある。分子量の上限に関しては特に制限は無いが、例えば重量平均分子量が100万を超えるポリマーを使用した場合には重合系の粘度が著しく高くなり、攪拌が困難で重合時の発熱を抑えて均一に加熱することが出来なくなる場合がある。最も好ましい分子量の範囲としては重量平均分子量として1万〜80万の範囲であり、更には重量平均分子量が3万〜70万の範囲である場合に、粒子径分布が最も狭くなる場合があり最も好ましく用いることが出来る。
上記の分散安定剤として機能するポリマーの重合系における割合についても好ましい範囲が存在する。分散安定剤の添加する割合は、重合系における濃度よりむしろ分子内にマレイミド基を2個有する化合物に対する割合に対して依存する。分子内にマレイミド基を2個有する化合物100質量部に対して、分散安定剤は5〜100質量部の範囲で添加することが好ましく、この範囲を下回る場合には凝集物が発生する場合がある。分散安定剤の添加量が増加するに従い、生成するポリビスマレイミド架橋微粒子の安定性が増加し、粒子径も減少する傾向が認められる場合があるが、添加量を上記の範囲を越えて用いた場合には、殆どの分散安定剤が架橋微粒子とは無関係に存在し、重合系の粘度を高くするのみで経済的に無駄である場合がある。最も好ましい範囲は20〜70質量部の範囲である。
上記の分散安定剤の存在下に、分子内にマレイミド基を2個有する化合物の重合を行う場合に、該化合物の重合系における濃度に関しては好ましい範囲が存在し、該化合物に対する分散安定剤の割合が上記の範囲内にある場合において、該化合物の濃度は5質量%から50質量%の範囲で重合を行うことが好ましく、これ以下の濃度では重合速度が遅く、また製造単位当たりの収量も低下するため好ましくない場合がある。また上記の範囲を超えて重合を行う場合、該化合物が重合溶媒に完全に溶解せず、凝集物が生成したり、或いは重合が完結しない場合がある。
本発明において、分子内にマレイミド基を2個有する化合物を重合するためにラジカル重合開始剤を用いることが必要である。好ましく用いることの出来るラジカル重合開始剤として、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔2−(1−ヒドロキシブチル)〕プロピオンアミド}、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2′−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕、2,2′−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、ジメチル−2,2′−アゾビスイソブチレート、4,4′−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)等のアゾ系重合開始剤が好ましく用いることが出来る。これらの内で、AIBNが最も好ましく用いることが出来る。
上記のようなラジカル重合開始剤を用いる場合には好ましい使用量が存在し、分子内にマレイミド基を2個有する化合物100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲で用いることが好ましく、これを下回る場合、重合が完結せず、未反応の該化合部が残存する場合がある。10質量部を上回る量を使用した場合、未反応のラジカル重合開始剤が残存する場合や、重合が急激に進行し、発熱のために溶媒が突沸する場合や、或いは生成するポリビスマレイミド架橋微粒子を構成するポリビスマレイミドの分子量が低下して耐熱性や機械的強度に劣る場合がある。最も好ましいラジカル重合開始剤の使用量は分子内にマレイミド基を2個有する化合物100質量部に対して、0.5〜5質量部の範囲である。
上記のようなラジカル重合開始剤を用いて重合を行う際の温度については好ましい範囲が存在し、40〜200℃の範囲であり、使用するアルコールの沸点もしくはこれ以下の温度で重合を行うことが好ましい。先に例示したようなラジカル重合開始剤を使用する場合には、重合温度は50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
本発明により得られるポリビスマレイミド架橋微粒子の粒子径は10nmから10μmの範囲で制御することが可能である。一般に、粒子径を小さくするためには、重合濃度を低下させ、分散安定剤の添加量を増大することが有効であり、更には重合系に水を添加することで、生成するポリビスマレイミドの溶解度を低下させることも有効である場合がある。逆に、粒子径を増大させるためには、重合濃度を高めたり、先に述べたような様々な有機溶剤を合わせて用いることで生成するポリビスマレイミドの媒体中における溶解度を増大することで粒子径を大きくすることが可能である場合がある。
本発明により得られるポリビスマレイミド微粒子を形成するポリビスマレイミドの分子量は、架橋しているため直接測定することは不可能である。代わりに溶剤で抽出される成分の分析を行うことで架橋していない可溶性成分の分析を行うことも可能である。本発明においては分子内にマレイミド基を2個有する化合物を主たる成分として重合を行うことから、重合が完結した場合には、残存する僅かの分子内にマレイミド基を2個有する化合物を除いて可溶性成分は実質的に存在しないことが確認されたが、下記に示すように他の共重合モノマーを使用して重合を行う場合には、その割合に応じて可溶性成分が認められる場合がある。
本発明においては分子内にマレイミド基を2個有する化合部に加えて、更に様々なラジカル重合性共重合モノマーを併せて用いることも出来る。このような共重合モノマーとして例えば、スチレン、4−メチルスチレン、4−アセトキシスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの種々のアルキル(メタ)アクリレート、或いは4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、更にはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することが出来る。これらの共重合モノマーの共重合体ポリマー中に占める割合としては、全体に対して最大でも30質量%未満であり、更には20質量%未満であることが好ましい。共重合モノマーの比率が増大するに従い、耐熱性が低下したり、或いはポリビスマレイミド架橋微粒子の粒子径分布が広くなり、粗大な粒子が副生する場合がある。
上記の共重合モノマーの内で、特にスチレン類およびビニルエーテル類を用いた場合には、分子内にマレイミド基を有するモノマーと交互共重合体を生成し易くなるため、これら共重合モノマーの添加量が上記の30質量%未満であっても、重合の初期には1:1交互共重合体を形成し、微粒子が形成されず凝集物を生成する場合がある。これを避けるためには、例えば共重合モノマーを一度に添加するのではなく、重合期間を通して少しずつ滴下する方法なども好ましく用いられる。
上記の様々な共重合モノマーの例に加えて、本発明において特に好ましく使用される共重合モノマーとして、下記一般式IVで示される構造の化合物が挙げられる。
一般式IVにおいてR3は置換基を有していても良いアリール基もしくは置換基を有していても良いアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数10以下の基が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピレン基、アクリジン基等が例示される。
上記したアルキル基或いはアリール基が有しても良い置換基として好ましい例としては、水酸基、カルボキシル基、酢酸エステルなどのエステル基、アセトアミド基、ウレイド基、ニトロ基、コハク酸イミド基、ハロゲン、ベンゾイミダゾール基、アルキル基、アリール基およびこれらの組み合わせからなる基を挙げることが出来る。置換基としてのアルキル基、アリール基としては、前述したアルキル基、アリール基と同様の基を挙げることが出来る。
一般式IVで表される化合物の好ましい例を下記に示す。
上記の一般式IVで示される化合物を共重合モノマーとして分子内にマレイミド基を2個有する化合物と併せて使用して重合を行う場合には両者の比率には好ましい範囲が存在し、一般式IVで示される共重合モノマーは全体の90質量%以下であることが好ましく、これ以上の割合で含まれる場合には、後述するように架橋微粒子に含まれる反応性マレイミド基がポリマー側鎖に結合した繰り返し単位の割合が低下することがある。
上記の共重合モノマーの例に加えて、更に分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する共重合モノマーを使用することも好ましく行うことが出来る。このような共重合モノマーの例として、ジビニルベンゼンや、或いは、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の各種多官能性(メタ)アクリレート、或いは、ビス〔4−(ビニロキシ)ブチル〕アジペート、ビス〔4−(ビニロキシ)ブチル〕スクシネート、ビス〔4−(ビニロキシ)ブチル〕イソフタレート、ビス〔4−(ビニロキシ)ブチル〕テレフタレート等の多官能性ビニルエーテル類を使用することが出来る。これらの分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する共重合モノマーの共重合体ポリマー中に占める割合としては、全体に対して最大でも10質量%未満であり、更には5質量%未満であることが好ましい。分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する共重合モノマーの比率が増大するに従い、安定に架橋微粒子が形成されず、重合系全体がゲル化する場合がある。
本発明において得られるポリビスマレイミド架橋微粒子は、分子内にマレイミド基を2個有する化合物を重合することで形成されるが、該マレイミド基は重合が完結した場合においても全てが重合するのではなく、一部が未反応のマレイミド基として残存することが後述する実施例に示すように、本発明の特徴の一つである。分子内にマレイミド基を2個有する化合物が重合する際に、該マレイミド基の1個が重合してポリマーに組み込まれるが、残りの1個のマレイミド基が更に重合して架橋構造を形成する場合と、残存して未反応のマレイミド基としてポリマー側鎖に結合して架橋微粒子に残存する場合がある。これは、架橋微粒子を構成するポリビスマレイミドポリマーの主鎖の可動性が失われ、マレイミド基同士が接近出来ずに重合に関与しないで取り残されるためであると推測され、実施例において示すように、架橋微粒子中のマレイミド基の密度が高くなるほど未反応の側鎖マレイミド基の比率が高くなることが特徴である。更には、特に該マレイミド基を2個有する化合物としてフェニレンビスマレイミドを用いた場合、マレイミド基の密度が最も高く、結果としてこれを用いて作製したポリビスマレイミド架橋微粒子に存在する未反応側鎖マレイミド基の割合が最も高くなるため特に好ましい。
上記のポリビスマレイミド架橋微粒子に存在する未反応側鎖マレイミド基は、粒子表面において様々な反応に関与することが可能である。例えば先の特許文献5に開示されるようなメルカプト基との選択的な付加反応を利用するアフィニティークロマトグラフィー用担体としての利用や、特許文献3および4等に開示されるポリマレイミド化合物の置き換えとして、熱硬化性樹脂への充填剤としてのポリマレイミド樹脂としての使用も可能である。
本発明において、ポリビスマレイミド架橋微粒子は使用する溶媒中に微粒子の形で安定に分散した分散物として製造されるが、これから溶媒を取り除いた微粒子単体として取り出し、粉体として用いることが好ましく行われる。このために利用する製造方法として遠心分離による微粒子の沈降を利用して分離する方法や、溶剤を加えて微粒子を凝集沈殿させ分離する方法などが挙げられる。遠心分離を利用する場合には遠心分離機が必要であり、大量に処理を行う場合に支障をきたす場合がある。これに対して、溶剤を加えて微粒子を凝集沈殿させ分離する方法は、最も簡便に大量に処理を行う際に適しており、好ましく利用することが出来る。本発明においては、様々な溶剤を試験し、迅速に凝集沈殿し、粉体の形でポリビスマレイミド架橋微粒子を純度良く高収率で分離する系を調べた結果、最も優れた溶剤として、アルキルエーテル類が見出された。特に、ジイソプロピルエーテル、エチルエーテル、石油エーテルなどのアルキルエーテル類が最も好ましく利用出来る。これらの溶剤の添加量としては、ポリビスマレイミド架橋微粒子を製造して得られる分散物100質量部に対して50質量部以上の添加量で加えることでポリビスマレイミド架橋微粒子を凝集沈殿させ効率よく分離することが出来る。更に好ましくは100〜500質量部の範囲で添加することで、ポリビスマレイミド架橋微粒子以外の残存溶媒や分散安定剤、未反応モノマーやその他の不純物を有効に除去し、純度の高いポリビスマレイミド微粒子を取り出すことが出来るため好ましい。特に不純物として分散安定剤や未反応モノマーが残存した場合には、耐熱性が低下する場合があるため、ポリビスマレイミド架橋微粒子の純度は高い方が好ましい。
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の百分率は断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
〔ポリ(1,3−フェニレンジマレイミド)架橋微粒子の合成例〕
攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を備えた500ml丸底フラスコ内に、1,3−フェニレンジマレイミド(BM−2)を100グラム導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を50グラム加え、更にエタノール100グラム、N,N−ジメチルホルムアミド200グラムおよび1,4−ジオキサン50グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を85℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを1グラム投入すると直ちに重合が開始して系が白濁した。内温が上昇し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は桜白色の分散物であり、凝集物は認められず、室温で数日放置しても沈殿の発生も認められず安定な分散物であった。得られた分散物から微粒子を粉体で取り出すため分散物50mlをジイソプロピルエーテル100ml中に加えた。直ちに桜白色の沈殿が生成し、濾過により桜白色粉体を回収した。少量のジイソプロピルエーテルを加えて粉体を洗浄し、真空乾燥機内で乾燥を行った。90%の収率でポリ(1,3−フェニレンジマレイミド)微粒子の粉体を得た。なお、粉体の取り出し方法の比較として、分散物50mlを100mlのアセトンおよび水に各々添加したが沈殿は生成せず、粉体の回収は出来なかった。同様に、分散物50mlを100mlのn−ヘキサンに添加したところ、液体同士の2層に分離し、沈殿は生成せず粉体の回収は出来なかった。
〔ポリ(1,3−フェニレンジマレイミド)架橋微粒子の合成例〕
攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を備えた500ml丸底フラスコ内に、1,3−フェニレンジマレイミド(BM−2)を100グラム導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を50グラム加え、更にエタノール100グラム、N,N−ジメチルホルムアミド200グラムおよび1,4−ジオキサン50グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を85℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを1グラム投入すると直ちに重合が開始して系が白濁した。内温が上昇し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は桜白色の分散物であり、凝集物は認められず、室温で数日放置しても沈殿の発生も認められず安定な分散物であった。得られた分散物から微粒子を粉体で取り出すため分散物50mlをジイソプロピルエーテル100ml中に加えた。直ちに桜白色の沈殿が生成し、濾過により桜白色粉体を回収した。少量のジイソプロピルエーテルを加えて粉体を洗浄し、真空乾燥機内で乾燥を行った。90%の収率でポリ(1,3−フェニレンジマレイミド)微粒子の粉体を得た。なお、粉体の取り出し方法の比較として、分散物50mlを100mlのアセトンおよび水に各々添加したが沈殿は生成せず、粉体の回収は出来なかった。同様に、分散物50mlを100mlのn−ヘキサンに添加したところ、液体同士の2層に分離し、沈殿は生成せず粉体の回収は出来なかった。
〔ポリ(1,3−フェニレンジマレイミド)微粒子中の残存モノマーの定量〕
上記でジイソプロピルエーテルを加えて沈殿を取り出し得られた粉体について、以下のようにして残存モノマーの定量を行った。即ち、粉体試料10ミリグラムを秤量し、これに1グラムのN,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静値した。微粒子は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。分散物の濾過を行い、濾液を以下の条件でGPC分析を行った。即ち、GPC測定用カラムとして、東ソー株式会社製TSK−GEL α−2500、α−3000およびα−5000の3本を使用し、10mM過塩素酸リチウムを溶解したN,N−ジメチルホルムアミドを溶離液として流速0.5mlでGPC分析を行った。検出器は示差屈折率系および紫外可視分光光度計(波長254nm)を使用して測定を行った。その結果、分子量1000以上のポリマーおよびオリゴマーの存在は認められず、またモノマーである1,3−フェニレンジマレイミドの残存も認められなかった。
上記でジイソプロピルエーテルを加えて沈殿を取り出し得られた粉体について、以下のようにして残存モノマーの定量を行った。即ち、粉体試料10ミリグラムを秤量し、これに1グラムのN,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静値した。微粒子は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。分散物の濾過を行い、濾液を以下の条件でGPC分析を行った。即ち、GPC測定用カラムとして、東ソー株式会社製TSK−GEL α−2500、α−3000およびα−5000の3本を使用し、10mM過塩素酸リチウムを溶解したN,N−ジメチルホルムアミドを溶離液として流速0.5mlでGPC分析を行った。検出器は示差屈折率系および紫外可視分光光度計(波長254nm)を使用して測定を行った。その結果、分子量1000以上のポリマーおよびオリゴマーの存在は認められず、またモノマーである1,3−フェニレンジマレイミドの残存も認められなかった。
〔ポリ(1,3−フェニレンジマレイミド)架橋微粒子の粒子径分布の測定〕
走査型電子顕微鏡を使用して上記の合成例において得られた架橋微粒子を観察したところ、平均粒子径が650nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図1に示す。
走査型電子顕微鏡を使用して上記の合成例において得られた架橋微粒子を観察したところ、平均粒子径が650nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図1に示す。
〔ポリ(1,3−フェニレンジマレイミド)架橋微粒子の熱安定性の測定〕
示差走査型熱量計(DSC)および熱重量測定装置(TGA)を用いて、窒素気流下、昇温速度20℃/分で上記の合成例で得られた粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
示差走査型熱量計(DSC)および熱重量測定装置(TGA)を用いて、窒素気流下、昇温速度20℃/分で上記の合成例で得られた粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
〔ポリ(1,3−フェニレンジマレイミド)架橋微粒子のFT−IRスペクトルの測定と架橋微粒子中に存在するマレイミド基の定量〕
島津製作所製FT−IRを使用して上記の合成例で得られた粉体微粒子を用いて、拡散反射法を利用して赤外吸収スペクトルの測定を行ったところ、図2に示すスペクトルチャートを得た。1710cm−1におけるC=O伸縮振動による特徴的な吸収ピークが認められ、更に、マレイミド基に特徴的なC=C二重結合に基づく825cm−1の吸収が顕著に観察された。先にGPC測定条件で残存モノマーの定量を試みたが、試料中には残存モノマーが存在しないことが確認出来たことから、ここで認められた825cm−1の吸収はポリマー側鎖に結合したマレイミド基に依るものであることは明かであった。試料中に含まれるマレイミド基の定量を行うため、別途ポリ(N−フェニルマレイミド)(図3にポリ(N−フェニルマレイミド)を試料として用いたFT−IRスペクトルチャートを示す)に種々の濃度でN−フェニルマレイミド(図4にポリ(N−フェニルマレイミド)とN−フェニルマレイミドを質量比で1:1の比率で含む試料を用いたFT−IRスペクトルチャートを示す)を添加して作製した標準試料を用い、1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の検量線を作製し、これに基づき定量を行った結果、試料中には約35質量%(N−フェニルマレイミド換算)の割合でマレイミド基が含まれていることが分かった。これより、上記の合成例で得られたポリマレイミド架橋微粒子中に含まれるマレイミド基の濃度は2.0mmol/gであることが分かった。即ち、本試料の構造式は下記化学式(V)で示される繰り返し単位に加えて、側鎖にマレイミド基が結合した化学式(VI)の構造単位が2.0mmol/gの濃度で含まれることが分かった。なお、図2において1660cm−1に現れる吸収は、化学式(V)に基づく架橋構造に由来するものと推測される。
島津製作所製FT−IRを使用して上記の合成例で得られた粉体微粒子を用いて、拡散反射法を利用して赤外吸収スペクトルの測定を行ったところ、図2に示すスペクトルチャートを得た。1710cm−1におけるC=O伸縮振動による特徴的な吸収ピークが認められ、更に、マレイミド基に特徴的なC=C二重結合に基づく825cm−1の吸収が顕著に観察された。先にGPC測定条件で残存モノマーの定量を試みたが、試料中には残存モノマーが存在しないことが確認出来たことから、ここで認められた825cm−1の吸収はポリマー側鎖に結合したマレイミド基に依るものであることは明かであった。試料中に含まれるマレイミド基の定量を行うため、別途ポリ(N−フェニルマレイミド)(図3にポリ(N−フェニルマレイミド)を試料として用いたFT−IRスペクトルチャートを示す)に種々の濃度でN−フェニルマレイミド(図4にポリ(N−フェニルマレイミド)とN−フェニルマレイミドを質量比で1:1の比率で含む試料を用いたFT−IRスペクトルチャートを示す)を添加して作製した標準試料を用い、1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の検量線を作製し、これに基づき定量を行った結果、試料中には約35質量%(N−フェニルマレイミド換算)の割合でマレイミド基が含まれていることが分かった。これより、上記の合成例で得られたポリマレイミド架橋微粒子中に含まれるマレイミド基の濃度は2.0mmol/gであることが分かった。即ち、本試料の構造式は下記化学式(V)で示される繰り返し単位に加えて、側鎖にマレイミド基が結合した化学式(VI)の構造単位が2.0mmol/gの濃度で含まれることが分かった。なお、図2において1660cm−1に現れる吸収は、化学式(V)に基づく架橋構造に由来するものと推測される。
〔ポリ(1,3−フェニレンジマレイミド)架橋微粒子表面に含まれるマレイミド基の化学的定量〕
特許文献6の実施例1に記載される方法を用いて上記で得られた架橋微粒子の表面に含まれるマレイミド基の定量を行った。即ち、該架橋微粒子粉体をエタノールに分散し、予め濃度を調整した2−メルカプトエチルアミンを過剰量加えて室温で6時間攪拌を行った後、遠心分離により該架橋微粒子を分離した。上澄み液をとり、これに4,4′−ジチオピリジンを加えて反応を行い、紫外吸収スペクトル測定により324nmの波長における吸光度について、微粒子を加えない比較溶液に対する吸光度の減少から、該架橋微粒子表面において反応した2−メルカプトエチルアミンの量を定量した。その結果、マレイミド基の濃度として1.8mmol/gの値が求められた。この値は上記のFT−IRスペクトルの測定から見積もられた値に近い値であった。これらの結果から、架橋微粒子中には全部で2mmol/gの濃度でマレイミド基が存在し、この内架橋微粒子表面に存在して実際に反応性を有するマレイミド基の濃度は1.8mmol/gであることを示唆する結果であった。
特許文献6の実施例1に記載される方法を用いて上記で得られた架橋微粒子の表面に含まれるマレイミド基の定量を行った。即ち、該架橋微粒子粉体をエタノールに分散し、予め濃度を調整した2−メルカプトエチルアミンを過剰量加えて室温で6時間攪拌を行った後、遠心分離により該架橋微粒子を分離した。上澄み液をとり、これに4,4′−ジチオピリジンを加えて反応を行い、紫外吸収スペクトル測定により324nmの波長における吸光度について、微粒子を加えない比較溶液に対する吸光度の減少から、該架橋微粒子表面において反応した2−メルカプトエチルアミンの量を定量した。その結果、マレイミド基の濃度として1.8mmol/gの値が求められた。この値は上記のFT−IRスペクトルの測定から見積もられた値に近い値であった。これらの結果から、架橋微粒子中には全部で2mmol/gの濃度でマレイミド基が存在し、この内架橋微粒子表面に存在して実際に反応性を有するマレイミド基の濃度は1.8mmol/gであることを示唆する結果であった。
(実施例2)
〔ポリ(N−フェニルマレイミド)−(1,3−フェニレンジマレイミド)(1:5)共重合体架橋微粒子の合成例〕
実施例1と同様にして、攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を備えた300ml丸底フラスコ内に、1,3−フェニレンジマレイミド(BM−2)を50グラムとN−フェニルマレイミド10グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を20グラム加え、更にエタノール80グラム、N,N−ジメチルホルムアミド120グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を80℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始して系が白濁した。内温が上昇し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は桜白色の分散物であり、凝集物は認められず、室温で数日放置しても沈殿の発生も認められず安定な分散物であった。得られた分散物から微粒子を粉体で取り出すため分散物50mlをジイソプロピルエーテル100ml中に加えた。直ちに沈殿が生成し、濾過により桜白色粉体を回収した。少量のジイソプロピルエーテルを加えて粉体を洗浄し、真空乾燥機内で乾燥を行った。90%の収率でポリ(N−フェニルマレイミド)−(1,3−フェニレンジマレイミド)(1:5)共重合体架橋微粒子の粉体を得た。粉体の一部をとり、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静値した。粉体は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。実施例1の場合と同様にFT−IRを用いて測定を行い、同様に1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の定量を行った結果、試料中には約1.2mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。更に、2−メルカプトエチルアミンと4,4′−ジチオピリジンの組み合わせで実施例1と同様にして架橋微粒子表面で反応するマレイミド基の濃度を定量した結果試料中には約0.9mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。また、走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図5に示した。平均粒子径として約450nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。また実施例1と同様にして粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
〔ポリ(N−フェニルマレイミド)−(1,3−フェニレンジマレイミド)(1:5)共重合体架橋微粒子の合成例〕
実施例1と同様にして、攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を備えた300ml丸底フラスコ内に、1,3−フェニレンジマレイミド(BM−2)を50グラムとN−フェニルマレイミド10グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を20グラム加え、更にエタノール80グラム、N,N−ジメチルホルムアミド120グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を80℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始して系が白濁した。内温が上昇し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は桜白色の分散物であり、凝集物は認められず、室温で数日放置しても沈殿の発生も認められず安定な分散物であった。得られた分散物から微粒子を粉体で取り出すため分散物50mlをジイソプロピルエーテル100ml中に加えた。直ちに沈殿が生成し、濾過により桜白色粉体を回収した。少量のジイソプロピルエーテルを加えて粉体を洗浄し、真空乾燥機内で乾燥を行った。90%の収率でポリ(N−フェニルマレイミド)−(1,3−フェニレンジマレイミド)(1:5)共重合体架橋微粒子の粉体を得た。粉体の一部をとり、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静値した。粉体は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。実施例1の場合と同様にFT−IRを用いて測定を行い、同様に1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の定量を行った結果、試料中には約1.2mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。更に、2−メルカプトエチルアミンと4,4′−ジチオピリジンの組み合わせで実施例1と同様にして架橋微粒子表面で反応するマレイミド基の濃度を定量した結果試料中には約0.9mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。また、走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図5に示した。平均粒子径として約450nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。また実施例1と同様にして粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
(実施例3)
〔ポリ(N−フェニルマレイミド)−(1,3−フェニレンジマレイミド)(1:1)共重合体架橋微粒子の合成例〕
実施例2と同様にして、攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を備えた300ml丸底フラスコ内に、1,3−フェニレンジマレイミド(BM−2)を30グラムとN−フェニルマレイミド30グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を20グラム加え、更にエタノール80グラム、N,N−ジメチルホルムアミド50グラムおよび1,4−ジオキサン50グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を75℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始して系が白濁した。内温が上昇し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は白色の分散物であり、凝集物は認められず、室温で数日放置しても沈殿の発生も認められず安定な分散物であった。得られた分散物から微粒子を粉体で取り出すため分散物50mlをジイソプロピルエーテル100ml中に加えた。直ちに白色の沈殿が生成し、濾過により白色粉体を回収した。少量のジイソプロピルエーテルを加えて粉体を洗浄し、真空乾燥機内で乾燥を行った。90%の収率でポリ(N−フェニルマレイミド)−(1,3−フェニレンジマレイミド)(1:1)共重合体架橋微粒子の白色粉体を得た。粉体の一部をとり、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静置した。粉体は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。実施例1の場合と同様にFT−IRを用いて測定を行い、同様に1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の定量を行った結果、試料中には約0.6mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。更に、2−メルカプトエチルアミンと4,4′−ジチオピリジンの組み合わせで実施例1と同様にして架橋微粒子表面で反応するマレイミド基の濃度を定量した結果試料中には約0.3mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。また、走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図6に示した。平均粒子径として約500nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。また実施例1と同様にして粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
〔ポリ(N−フェニルマレイミド)−(1,3−フェニレンジマレイミド)(1:1)共重合体架橋微粒子の合成例〕
実施例2と同様にして、攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を備えた300ml丸底フラスコ内に、1,3−フェニレンジマレイミド(BM−2)を30グラムとN−フェニルマレイミド30グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を20グラム加え、更にエタノール80グラム、N,N−ジメチルホルムアミド50グラムおよび1,4−ジオキサン50グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を75℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始して系が白濁した。内温が上昇し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は白色の分散物であり、凝集物は認められず、室温で数日放置しても沈殿の発生も認められず安定な分散物であった。得られた分散物から微粒子を粉体で取り出すため分散物50mlをジイソプロピルエーテル100ml中に加えた。直ちに白色の沈殿が生成し、濾過により白色粉体を回収した。少量のジイソプロピルエーテルを加えて粉体を洗浄し、真空乾燥機内で乾燥を行った。90%の収率でポリ(N−フェニルマレイミド)−(1,3−フェニレンジマレイミド)(1:1)共重合体架橋微粒子の白色粉体を得た。粉体の一部をとり、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静置した。粉体は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。実施例1の場合と同様にFT−IRを用いて測定を行い、同様に1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の定量を行った結果、試料中には約0.6mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。更に、2−メルカプトエチルアミンと4,4′−ジチオピリジンの組み合わせで実施例1と同様にして架橋微粒子表面で反応するマレイミド基の濃度を定量した結果試料中には約0.3mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。また、走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図6に示した。平均粒子径として約500nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。また実施例1と同様にして粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
(実施例4)
〔ポリ(N−フェニルマレイミド)−(4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン)(1:1)共重合体架橋微粒子の合成例〕
実施例2と同様にして、攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を備えた300ml丸底フラスコ内に、4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン(BM−3)を30グラムとN−フェニルマレイミド30グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を20グラム加え、更にエタノール120グラム、N−メチルピロリドン40グラムおよび1,4−ジオキサン30グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を75℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始して系が白濁した。内温が上昇し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は白色の分散物であり、凝集物は認められず、室温で数日放置しても沈殿の発生も認められず安定な分散物であった。得られた分散物から微粒子を粉体で取り出すため分散物50mlをジイソプロピルエーテル100ml中に加えた。直ちに白色の沈殿が生成し、濾過により白色粉体を回収した。少量のジイソプロピルエーテルを加えて粉体を洗浄し、真空乾燥機内で乾燥を行った。90%の収率でポリ(N−フェニルマレイミド)−(4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン)(1:1)共重合体微粒子の白色粉体を得た。粉体の一部をとり、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静置した。粉体は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。実施例1の場合と同様にFT−IRを用いて測定を行い、同様に1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の定量を行った結果、試料中には約0.3mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。更に、2−メルカプトエチルアミンと4,4′−ジチオピリジンの組み合わせで実施例1と同様にして架橋微粒子表面で反応するマレイミド基の濃度を定量した結果試料中には約0.15mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。また、走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図7に示した。平均粒子径として約500nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。また実施例1と同様にして粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
〔ポリ(N−フェニルマレイミド)−(4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン)(1:1)共重合体架橋微粒子の合成例〕
実施例2と同様にして、攪拌機、温度計、窒素導入管、還流冷却管を備えた300ml丸底フラスコ内に、4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン(BM−3)を30グラムとN−フェニルマレイミド30グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を20グラム加え、更にエタノール120グラム、N−メチルピロリドン40グラムおよび1,4−ジオキサン30グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を75℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始して系が白濁した。内温が上昇し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は白色の分散物であり、凝集物は認められず、室温で数日放置しても沈殿の発生も認められず安定な分散物であった。得られた分散物から微粒子を粉体で取り出すため分散物50mlをジイソプロピルエーテル100ml中に加えた。直ちに白色の沈殿が生成し、濾過により白色粉体を回収した。少量のジイソプロピルエーテルを加えて粉体を洗浄し、真空乾燥機内で乾燥を行った。90%の収率でポリ(N−フェニルマレイミド)−(4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン)(1:1)共重合体微粒子の白色粉体を得た。粉体の一部をとり、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静置した。粉体は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。実施例1の場合と同様にFT−IRを用いて測定を行い、同様に1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の定量を行った結果、試料中には約0.3mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。更に、2−メルカプトエチルアミンと4,4′−ジチオピリジンの組み合わせで実施例1と同様にして架橋微粒子表面で反応するマレイミド基の濃度を定量した結果試料中には約0.15mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。また、走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図7に示した。平均粒子径として約500nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。また実施例1と同様にして粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
(実施例5)
〔ポリ(4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン)架橋微粒子の合成例〕
実施例4において、モノマーとして4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン(BM−3)のみを60グラム使用した以外は全く同様にして重合を行ったところ同様に分散安定性に優れた白色分散物が得られた。分散物の一部をとり、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静置した。分散物中の微粒子は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。先の実施例と同様に1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の定量を行った結果、試料中には約0.3mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。更に、2−メルカプトエチルアミンと4,4′−ジチオピリジンの組み合わせで実施例1と同様にして架橋微粒子表面で反応するマレイミド基の濃度を定量した結果試料中には約0.1mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。また、走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図8に示した。平均粒子径として約70nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。また実施例1と同様にして粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
〔ポリ(4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン)架橋微粒子の合成例〕
実施例4において、モノマーとして4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン(BM−3)のみを60グラム使用した以外は全く同様にして重合を行ったところ同様に分散安定性に優れた白色分散物が得られた。分散物の一部をとり、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて室温で1昼夜静置した。分散物中の微粒子は溶解せず、架橋した構造を有することが確認された。先の実施例と同様に1710cm−1における吸光度に対する825cm−1の吸光度の比からマレイミド基の定量を行った結果、試料中には約0.3mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。更に、2−メルカプトエチルアミンと4,4′−ジチオピリジンの組み合わせで実施例1と同様にして架橋微粒子表面で反応するマレイミド基の濃度を定量した結果試料中には約0.1mmol/gの濃度でマレイミド基が含まれていることが分かった。また、走査型電子顕微鏡による架橋微粒子の拡大写真を図8に示した。平均粒子径として約70nmであるほぼ単分散に近い粒子径分布であることが分かった。また実施例1と同様にして粉体微粒子の熱分析を行った結果、300℃付近まで何ら熱重量変化や熱分解等において見られる吸発熱ピーク等の変化は観察されず、少なくとも300℃までの温度では安定であることが確認された。
(比較例1)
4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン(BM−3)を30グラムとN−フェニルマレイミド30グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を20グラム加え、更にエタノール140グラム、N,N−ジメチルホルムアミド10グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を75℃に上昇して均一に溶解しようと試みたが懸濁状態のまま不溶物が残存した。不均一状態のまま重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は凝集物が大部分であった。
4,4′−ビスマレイミドジフェニルメタン(BM−3)を30グラムとN−フェニルマレイミド30グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を20グラム加え、更にエタノール140グラム、N,N−ジメチルホルムアミド10グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を75℃に上昇して均一に溶解しようと試みたが懸濁状態のまま不溶物が残存した。不均一状態のまま重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始し、エタノールが還流状態になり、この温度で7時間加熱攪拌を行った後、室温まで冷却した。生成物は凝集物が大部分であった。
(比較例2)
1,3−フェニレンジマレイミド(BM−2)を100グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を50グラム加え、更にエタノール50グラム、N,N−ジメチルホルムアミド250グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を75℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始し、内温が上昇すると共に系の粘度が上昇し、次第に全体がゲル化したため重合禁止剤としてハイドロキノンを添加して重合系を冷却し重合を停止した。
1,3−フェニレンジマレイミド(BM−2)を100グラムを導入し、ポリビニルピロリドン(東京化成工業製試薬、K−60、35%水溶液、重量平均分子量22万)水溶液を50グラム加え、更にエタノール50グラム、N,N−ジメチルホルムアミド250グラムを加えて攪拌を行い、水浴上で内温を75℃に上昇して均一に溶解した。重合開始剤としてAIBNを0.5グラム投入すると直ちに重合が開始し、内温が上昇すると共に系の粘度が上昇し、次第に全体がゲル化したため重合禁止剤としてハイドロキノンを添加して重合系を冷却し重合を停止した。
本発明のポリビスマレイミド架橋微粒子は、クロマトグラフ用担体、或いは液晶表示装置関連におけるスペーサー粒子、或いは電子・電機部品、プリント配線板、半導体基板、IC封止剤などの電子材料分野における充填剤としての高耐熱性と高絶縁性、低誘電性が要求される樹脂組成物や、これを用いたプリプレグおよび積層板に利用することが可能である。
Claims (4)
- 下記一般式Iで示される繰り返し単位と一般式IIの繰り返し単位を併せ有するポリビスマレイミド架橋微粒子。
- 下記一般式IIIで表される分子内にマレイミド基を2個有するモノマーを用い、溶媒として炭素数1〜5のアルコールおよび含窒素溶剤を1:0.2〜1:3の範囲の比率で混合してなる混合溶媒を使用し、更に分散安定剤として該混合溶媒に可溶性である分子量1000以上のポリマーの存在下で重合を行うことでポリビスマレイミド架橋微粒子を得ることを特徴とするポリビスマレイミド架橋微粒子の製造方法。
- 前記分子量1000以上のポリマーが、重量平均分子量が3万〜70万の範囲にあるポリビニルピロリドンである請求項2記載のポリビスマレイミド架橋微粒子の製造方法。
- アルキルエーテルを添加することでポリビスマレイミド架橋微粒子を凝集沈殿させ分離精製する請求項2または3の何れかに記載のポリビスマレイミド架橋微粒子の製造方法。
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JP2011060431A JP2012193325A (ja) | 2011-03-18 | 2011-03-18 | ポリビスマレイミド架橋微粒子およびその製造方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015127810A (ja) * | 2013-11-27 | 2015-07-09 | キヤノン株式会社 | 光学用部材及びその製造方法 |
JP2020132880A (ja) * | 2019-02-18 | 2020-08-31 | 積水化学工業株式会社 | 樹脂材料及び多層プリント配線板 |
WO2021193911A1 (ja) * | 2020-03-26 | 2021-09-30 | 積水化学工業株式会社 | 樹脂粒子、導電性粒子、導電材料、及び、接続構造体 |
US12122885B2 (en) | 2020-03-26 | 2024-10-22 | Sekisui Chemical Co., Ltd. | Resin particles, electrically conductive particles, electrically conductive material, and connection structure |
-
2011
- 2011-03-18 JP JP2011060431A patent/JP2012193325A/ja not_active Withdrawn
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