JP2012187730A - 繊維強化プラスチックの成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形用金型による中空状の断面をもつ成形品の成形時に、加圧気体や加圧流体を用いる大型のプレス機を不要として、中子の内圧を高めて変形させることができ、しかも、中子の内圧を高めたときに、上型が下型から離れる方向に移動することを防いで、高品位の成形品が得られる金型間隔保持手段を備えた、成形用金型を用いた繊維強化プラスチックの圧縮成形方法を提供する。
【解決手段】粒体4aを伸延性ある包装材で包装した中子4 を用い、上型2 を下降して下型1との間でプリプレグ3 を加圧して圧縮成形するとき、金型間隔保持手段20を作動させて、左右一対の押え部材21a,21a で上型2 が上方に移動することを阻止する。同時に、下型1に設けたピストンロッド5aをキャビティ内に突出させて、中子4 の一部を押圧する。中子4 をピストンロッド5aで押圧することにより、中子4 の粒体4aを流動させながら変形させ、中子4 とプリプレグ3 間にあった空隙をなくす。得られる成形品には内部にボイドがなく高品質が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、繊維に樹脂を含浸させたプリプレグに中子を用いて加熱加圧を行い、閉断面を有する繊維強化プラスチック(FRP)の成形体を製造する成形方法に関する。
閉断面を有する繊維強化プラスチックの成形体は、航空機の胴体や翼のような大型の成形体から、自転車のフレーム、テニスラケットや釣竿やゴルフシャフト等の小型の成形体に至るまで幅広く利用されている。また、開断面を有する繊維強化プラスチックの成形体としては、ヘルメットなどに幅広く利用されている。
閉断面を形成するための中子としては、粉粒体を包装フィルムで包んで真空パック包装を行って所定形状に形成した中子や、ブロー成形によって形成した中子などが用いられている。真空パック包装した粉粒体を所望の形状に形成した中子としては、多層プラスチック成形体とその製造方法(特許文献1参照)などが提案されており、ブロー成形によって形成した中子としては、多層プラスチック成形体とその製造方法(特許文献2参照)などが提案されている。
特許文献1に記載された発明を本発明の従来例1として、図8、図9を用いて説明する。図8は、成形用金型30によって閉断面の一種である中空部を有する成形品を製造する途中の状態を示している。すなわち、予備加熱を行って溶融状態にしたシート状の繊維強化熱可塑性樹脂材(FRTP)34を成形用金型30の下型31上に載置している。FRTP34は溶融状態にあるため、FRTP34は自重により垂れ下がり下型31の凹部に沈み込んだ状態になっている。
粉粒体33a を包装材33b で包み込み、真空パック包装によって所定形状に固形化した中子33は、FRTP34の凹部に載置されている。中子33を載置したFRTP34の上部には、加熱して溶融状態にした新たなシート状のFRTP35が載置される。この状態では、中子33の周囲は、FRTP 34 とFRTP 35 とによって囲まれた状態になっている。
この状態から、成形用金型30の上型32を下降させ、下型31との間でFRTP34とFRTP35とを加熱硬化することにより、中子33を内部に含んだ状態でFRTP34とFRTP35とを一体的に成形することができる。出来上がった半成形品から中子33を排出するためには、半成形品に小さな孔を開ける。半成形品に孔を開けると、真空パックされた中子33の粉粒体33a 間に空気が入り込むことになり、粉粒体33a 間の結束が緩められる。
そして、半成形品に形成した孔を通って、中子33を構成していた粉粒体33a を半成形品の外に排出して成形品を完成させることができる。このとき、粉粒体33a を真空パック包装していた包装材33b が、成形品に対して剥離性がよい材料から構成されていれば、包装材33b も成形品から取り外すことができる。
特許文献2に記載された発明を従来例2として、図10を用いて説明する。図10は、ブロー成形によって成形した中子43を、外層形成の成形用金型41a ,41b間にセットした状態を示している。図10に示すように、成形用金型41a ,41bは、中子43を収納可能とするように構成されており、成形用金型41a ,41bの型締め時には、成形用金型41a ,41bの各合せ面42a ,42bと中子43との間に溶融樹脂を充填させる中空部としてのキャビティが形成される。
キャビティ内には、押出し機44で可塑化された溶融樹脂45が供給される。型締め状態にある成形用金型41a ,41bのキャビティ内に溶融樹脂45を供給することによって、中空部を有する製品を所望の形状に賦形することができる。しかし、製品を賦形するときに、溶融樹脂の温度に対して中子43の耐熱性が低い場合や、中子43の肉厚が薄肉の場合には、賦形時に中子43に加わる圧力によって、中子43が変形してしまう場合がある。また、中子43の形状において広い平坦部分があると、この平坦部分では剛性が不足するため、同様に中子43が変形してしまう場合がある。
中子43の変形を防止するため、特許文献2に記載された発明では、中子43の内圧を加圧することができる構成になっている。そのための構成として、中子43に連通した加圧ユニット46が設けられており、加圧ユニット46から中子43の内部に加圧した気体や液体を導入することで、中子43の内圧を上げることができる。
特開平2−238912号公報 特開平7−100856号公報
特許文献1の発明では、FRTP34とFRTP35との間に中子33を挟んだ状態で上型32を下降させ、上型32と下型31との間でFRTP34及びFRTP35に加圧する。しかし、下型31の凹部に沈み込ませてFRTP34に形成した凹部に、中子33を載置したとき、また、中子33の上からFRTP35を被せたときに、下型31の凹部における隅部とFRTP34との間や中子33とFRTP34及びFRTP35との間に空隙が生じる。
この空隙が残っている状態で上型32と下型31とによる加熱加圧が行われると、中子33によってFRTP34及びFRTP35を内側から十分に支えておくことができず、特に、上型32が移動する上下方向と同じ方向に沿って成形されるFRTP34の部位、即ち、縦の部位において、肉厚の変化や、更には、FRTP34の外周面形状を下型31の凹部における隅部形状に沿った形状に形成することができず、また、外面にシワや、上下方向に座屈した形状に成形されてしまう。あるいは、縦の部位における長さ寸法が、規定の長さ寸法よりも短い長さ寸法に圧縮された状態で成形され、製品の寸法精度が低下してしまう。
特に、FRTP34及びFRTP35が、長繊維を用いた長繊維強化樹脂材料から構成されているときには、中子33とFRTP34及びFRTP35との間や上型32及び下型31とFRTP34及びFRTP35との間に空隙が存在したまま加圧成形されると、長繊維の繊維配向が乱れて屈曲が生じてしまい、繊維強化プラスチックとしての強度の低下、成形品における外観の悪化を招くことになる。
従来例1の構成を模式的に示した図9を用いて、更に詳しく説明する。図9では、上述した縦の部位を符号37で示している。そして、内部に中子33を配した環状のプリプレグ36を下型31に形成した凹部内に収納し、上型32を下型31に向かって下降させた状態を示している。
図9に示すように、上型32と下型31との間にプリプレグ36を挟んで加熱加圧することで、半成形品を製造することができる。そして、でき上がった半成形品に孔を開けて、中子33を構成している粒体を半成形品に開けた孔から外に排出することで、中空状の成形品が完成する。
しかし、下型31に収納したプリプレグ36に形成された凹部内に中子33を載置したとき、角部を有する形状に半成形品を賦形する場合などでは、角部における中子33の外周面とプリプレグ36の内周面との間に空隙が生じてしまう。特に、成形用金型にプリプレグ36をスムーズに投入させるため、成形用金型とプリプレグ36との間にある程度間隔を空けることになり、成形面における隅部とプリプレグ36との間でも、同様に空隙が生じやすくなってしまう。
そして、上型32を下型31に向かって下降させて、プリプレグ36を加熱加圧するときに、この空隙の影響によって、プリプレグ36における縦の部位37においてシワや曲がりが生じてしまったり、プリプレグ36における外面側の角部が、所望の直角形状に形成されず、未充填状態になってしまう。
特に、中子33を構成する粉粒体の使用量が少なくて、プリプレグ36と中子33との間に空隙が形成され、プリプレグ36における縦の部位37において曲がりが生じてしまう。その結果、図9に示したように、縦の部位37の一部が中子33側に湾曲した形状に変形することになる。また、中子33を構成する粉粒体の流動性が低い場合には、変形の影響が顕著になる。そして、図9に示すように、縦の部位37の一部が中子33側に湾曲した形状に変形しなくても、縦の部位37における長さ寸法が、規定の長さ寸法よりも短い長さ寸法に圧縮されてしまうことになる。
特許文献1の発明において、不良品を発生させないようにするためには、プリプレグ36と中子33との間に空隙が形成されないように、プリプレグ36のプリフォーム精度を向上させたり、中子33の形状が所望の形状となるように形成しておくことが必要になる。しかし、中子33を構成する粉粒体の使用量を正確に測定して構成し、形状も所望の形状に形成して、プリプレグ36を中子33に密着させ、更にプリプレグ36の外郭形状を、成形用金型の内面形状に沿わせることは、完全に固定されていない粉粒体や硬化していないプリプレグでは形状が安定しないため、多数の手間を必要とし長時間を要してしまうことになる。
特許文献2に記載された発明では、加圧した気体や液体を導入することで、中子43の内圧を加圧することができる。加圧した気体や液体では、任意の一点における圧力は、全ての方向において同一の圧力になる物理的性質を有している。このため、内圧を高めるために加圧された気体や液体の一部が、中子43から漏れ出たときには、漏れ出た気体や液体は、高速で高圧のジェット流になり、しかも、高温状態のままで、成形用金型41a ,41bの隙間から外部に噴出してしまうことになる。そして、特に、液体が噴出した場合は、成形用金型の周囲に大きな損害を与えたり、作業者に危害を加えてしまう虞れがあるため、十分な安全対策を講じた設備が必要になる。
しかして、上記特許文献1及び2に記載された発明のように、例えば可動型である上型32,41bの開閉動作には通常所要の内圧に耐えられる油圧シリンダーが使われ、その伸縮距離が制御されて、成形時における上型及び下型の間の間隔を一定に保持しようとしている。しかるに、成形時における中子の内圧の増加に伴う上型の内面に対するプリプレグの外面による押圧力の増加に耐えて、上型の位置を一定に維持すること、すなわち上型及び下型の間の間隔を一定に保持することが難しくなる。その結果、製品としての成形品が所定の寸法とならず、しかもその寸法バラツキも多く、歩留りの低下につながる。
本発明は、上述した従来の問題点を解決すると共に、成形用金型による閉断面を有する成形品の成形時に、気体や液体を用いることなくプリプレグと中子間における圧力を均一に高めることができ、しかも、中子に圧力を加えても、また通常の成形用金型を用いた場合であっても、中子を構成している媒体の一部が成形用金型から漏れ出ない、寸法精度に優れた繊維強化プラスチックの成形方法を提供することを目的としている。
上記課題を達成するために、本発明の繊維強化プラスチックの成形方法にあっては、流動性を有する多数の粒体を可撓性袋体に収容した所望形状に変形可能な中子を、プリプレグの内部に介装させること、中子を内包した前記プリプレグを成形用金型の上型と下型との間に配すること、前記成形用金型による型締め時又は加圧成形時に、前記上型と下型間の間隔が広がらないように金型間隔保持手段をもって保持すること、前記上型及び下型間のキャビティに向けて出没する押圧手段をもって、前記中子の外周面の一部を押圧して前記中子内の内圧を高めて変形させること、及び前記中子の押圧変形により、前記プリプレグと、前記金型及び前記中子との間の密着性を高めることを主要な構成としている。
また、本発明の好適な実施態様によれば、前記プリプレグを挟んで前記押圧手段が配された側とは反対側の金型面に、前記キャビティに嵌合する嵌合突出部を設け、前記成形用金型による型締め時又は加圧成形時に、前記成形用金型の成形面の一部を構成する前記嵌合突出部と前記押圧手段とをもって、前記中子を挟み込むように前記中子の外周面の一部をそれぞれ押圧することを含んでいる。
更に好ましくは、上記金型間隔保持手段を上記上型の左右側部に配すること、及び上型の左右側部に配された前記金型間隔保持手段を互いに接近する方向へと所定量移動させることにより前記上型の上方への移動を完全に規制することを含んでいる。上型の左右側面と金型間隔保持手段の当接面とが、相対的にくさび型の摺動面からなることが好ましい。また、前記押圧手段が油圧シリンダを含み、同油圧シリンダのピストンロッドの伸縮動作により、前記中子を挟み込むように前記中子の外周面の一部をそれぞれ押圧することが望ましい。
本発明では、高い流動性を有する構成にした多数の粒体を所望形状に形成した中子を用いている。しかも、成形用金型による圧縮成形時に、プリプレグを介して、又はプリプレグを介さずに、中子の一部外周面を押圧することで、中子の外周面に窪みを形成して、中子の内圧を強制的に高めている。そして、中子の内圧を高めることで、中子を構成している粒体間に滑りを生じさせ、中子を変形させている。
これにより、中子を包み込んでいるプリプレグと中子との間に空隙が形成されていても、中子の変形によってこの空隙を埋めて解消することができる。また、特に、成形用金型の成形面における隅部とプリプレグとの間に空隙が形成されていても、粒体の移動による中子の変形によってプリプレグを前記空隙を埋める方向に移動させることができ、空隙を解消することができる。すなわち、プリプレグと金型及び中子との間の密着性を高めることができる。
中子の変形によってプリプレグと中子との間に形成されていた空隙は、中子の変形によって潰れるか、空隙を構成していた空気がプリプレグを通って成形用金型から大気中に放出されることになる。空気がプリプレグを通ったときに形成された通路は、空気が通った後、溶融しているプリプレグによって自然に塞がれる。
中子は、多数の粒体を可撓性袋体に収容した所望形状に変形可能な構成になっている。このため、中子の外周面を押圧して外周面に窪みを形成して変形させても、中子内の内部圧力としては、液体や気体を用いたときのように、通常は全ての部位において同一の圧力状態にはならない。即ち、粒体に対して圧力を加えても、圧力が加えられた部位における圧力よりも小さい圧力が、他の部位において生じることになる。そして、加えられた圧力がある値を超えると、粒体間において滑りが生じることになる。
そのため、中子の外周面を押圧したときに、押圧により中子の外周面に窪みが形成された部位において、そこでの内部圧力が大きく上昇しても、この部位から離れた中子の外周面側における部位での圧力上昇は、窪みが形成された部位での圧力上昇よりも低くなる。
特に、中子内での圧力の伝達性、粒体の流動性は、粒体における粒子表面の粗さ、粒子径が影響する。均一の粒子径である粒体を用いると、中子内で粒体は最密充填されることになり、粒体の流動性が阻害され、圧力の伝達性が損なわれる。従って、中子内での粒子径の分布状況や粒子表面の粗さの分布状況を考慮したり、異なる粒子径の粒体を組み合わせて使用すると、中子内での粒体の流動性と圧力伝達性が向上する。
中子としては、上述の機能を有するのであれば、素材は限定はされない。すなわち、可撓性袋体は、必要な圧力において破壊されることなく適宜変形可能な素材を選択して用いればよい。また粒体についても、必要な圧力において変形、破壊されることなく適宜流動可能な素材を選択して用いればよい。また多数の粒体を可撓性の包装フィルムで包んで真空パック包装を行うことにより中子を形成すると、中子の形状精度を向上させることができるため好ましい。
押圧により窪みが形成された部位から離れた部位においても、粒体の滑りによって中子が変形する。これによって、プリプレグを成形用金型の成形面に沿って押圧することができ、例えば、上述したような縦の部位を支持している中子の部位とプリプレグ間での圧力を上昇させることができる。そして、上型と下型とによる加圧時において、上述したような縦の部位が屈曲して変形してしまうのを防止できる。
このとき、金型面に対するプリプレグによる押圧力は増大するが、上記左右一対の金型間隔保持手段を接近方向に所定の距離水平に移動させると、その途中で上型に当接し、上型がそれ以上上方へと移動することが阻止され、上述した縦の部位における上型と下型との間が規定の間隔に維持される。こうして成形用金型の型締め位置を固定し、中子の外周面とプリプレグの内面間における押圧力の上昇が確保される。これによって、上述したような縦の部位における縦方向の長さ寸法が、所定の寸法以下に圧縮されて短くなってしまうような事態の発生が回避でき、プリプレグを所望の肉厚に成形できる。このとき、上記金型間隔保持手段がなく、上型の上下動を油圧シリンダのみにより制御しようとすると、中子の拡張による圧力上昇が規定以上となり、上型をシリンダに抗して上動させてしまい、上下金型間の間隔が拡がり、規定の寸法よりも高さの高い製品が製造されてしまう。
因みに、上記金型間隔保持手段の好適な例としては、くさび面を採用することが好ましい。具体的な態様によれば、上型の左右側面の上端肩部を外側に向けて下傾斜面に形成する一方、左右一対の金型間隔保持手段の対向面の下端角部を同じく外側に向けて下傾斜面に形成する。例えば、金型間隔保持手段を接近方向に水平移動させて、上型と金型間隔保持手段との対面する傾斜面同士が当接したのち、更に左右の金型間隔保持手段を接近方向に移動させると、その移動量に応じて金型間隔保持手段の傾斜面が上型の傾斜面を押して、上型を下方へと移動させる。ここで、左右の金型間隔保持手段を停止させると、上型の上方への移動限位置が決まり、上型はそれ以上上方への移動が規制される。そのため、プリプレグを介して中子から受ける上型のキャビティ面に対する押圧力の増加によっても上型は前記移動限位置を維持する。
そのため、プリプレグの外周面における角部があっても、例えば、直角の隅部を形成する場合においても、角部を成形する成形用金型の隅部に十分な量のプリプレグを移動させることができるため、プリプレグの外郭形状を確実に成形することが可能となる。
ここで中子の内圧を高めると、各粒体は前後左右方向に滑りを生じて移動することにな
るが、各粒体を収容した可撓性袋体、例えば包装フィルムは延展可能な材質から構成されている。そのため、袋体は、各粒体の移動に伴う中子の外形形状の変形を許容できる。
仮に、成形用金型の型締めや、窪みを形成する押圧により粒体の圧力が上昇したとき、可撓性袋体は圧力に抗して粒体を保持する強度がないとき、粒体が可撓性袋体を破る場合がある。成形用金型の隙間が粒子の直径よりも小さければ、粒子が破砕しない限り、成形用金型から漏れ出すことはない。
中子の外周面の一部を押圧する手段としては、成形用金型の成形面内に出没自在なピストンロッドを用いることができる。ここで、成形用金型の成形面内に出没自在なピストンロッドを複数部位に配することもでき、複数の押圧部を設けることができる。
本発明では、中子の外周面を押圧したときに、プリプレグを介して又はプリプレグを介さずに中子の一部外周面を押圧することができる。略平面形状をもつ部位でプリプレグを介して押圧する場合には、プリプレグに凹部が形成される。凸形状の部位でプリプレグを介して押圧する場合には、プリプレグは平坦になることになる。これら押圧部位である凹部や平坦部、そして押圧部位以外でも、成形品から中子を構成している粒体を排出する排出孔を設けることができる。
また、プリプレグを介さずに中子の一部外周面を押圧する場合には、ロッド等の押圧部に相当する孔をプリプレグに開けておき、中子に直接押圧して、この成形品の前記孔位置から可撓性袋体を破り、粒子を排出させる。可撓性袋体は離型材を塗布するなど離型処理を行う、又は二重包装とすることにより、粒子が接する可撓性袋体も除去することが可能となる。
本発明の実施例1における加圧成形時を示す模式図である。 実施例1におけるプリプレグと中子の内部構造を示す模式図である。 中空状の成形品の成形工程の一例を示す模式図である。 実施例2における加圧成形時を示す模式図である。 実施例3における加圧成形時を示す模式図である。 本発明における金型間隔保持手段の構成例を示す模式図である。 内圧とストロークとの関係を示す説明図である。 従来の中子を使った中空状の異形断面をもつ成形品の成形時の状態を示す説明図である。 図8の加圧成形時を示す模式図である。 従来の成形用金型間に中子をセットしたときの状態を示す断面図である。
以下、本発明の好適な実施の形態について、代表的な実施例を挙げて添付図面を参照しつつ具体的に説明する。ここで、本発明に係る繊維強化プラスチックの成形方法は以下に述べる実施例に限定されるものではなく、成形時に上型と下型と間の間隔を広げることなく一定の間隔が保持され、所要の圧力をもって中子を変形させることができる構成であれば、本発明に適用が可能である。
図1に示すように、中子4 を内包したプリプレグ3 を、室温にて成形用金型15の内周面形状と略同じ形状に賦形して、これを予め加熱した成形用金型15の下型1 に形成した凹部1a内に載置する。
プリプレグ3 は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維等の繊維に未硬化の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含浸させたシート状に形成されている。図示例では、プリプレグ3 は断面形状が筒状に形成され、内部に中子4 を介装させている。例えば、二枚のシート状のプリプレグ間に中子4 を包み込むようにする。そして、成形用金型の加熱により、流動可能な状態にあるマトリックス樹脂を含むプリプレグ3 を、前記下型1 と上型2 とからなる成形用金型15内で加圧成形することにより硬化させ、所望の形状をもつ中空部を有する様々な断面の繊維強化プラスチック(FRP )の成形品を成形することができる。熱硬化性樹脂の代わりに熱可塑性樹脂を含浸させた場合は、プリプレグ3 を予め加熱して賦形したプリフォームを、成形用金型にて加圧冷却し、所望の形状のFRP成形品を製造することができる。
繊維強化プラスチック(FRP )の成形品として、図示例では断面形状が矩形状の形状を呈しているが、繊維強化プラスチック(FRP )の成形品としては、かかる形状に限定されるものではなく、曲面形状等と組み合わせた断面形状に成形することができる。
繊維に含浸させる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、フェノール樹脂等を用いることができ、熱可可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、塩化ビニール、ポリアミド樹脂などを用いることができる。
中子4 は、粒体4aを包装フィルム4bで包装し真空パックして、所望の外形形状としている。中子4 を構成する粒体4aには、アルミナ、ジルコニア等セラミック、ガラス、硬質耐熱樹脂、金属、鋳物砂、石英等の粒体物が用いられ、中子4 の形態保持に用いる包装フィルム4bとしては、ナイロン製のフィルム、ポリエチレン製のフィルム、フッ素樹脂フィルム、シリコーン等を用いることができる。粒体4aとして、特にジルコニア、石英を用いた場合には、これらの材質は熱伝導率が低いため、中子4 の粒体4aとして好適な材料となる。
図示例によれば、下型1 の凹部1aに、成形用金型15のキャビティ内に出没可能なピストンロッド5aを有するシリンダ5 を設けている。なお、図1では、ピストンロッド5aを摺動させるためにシリンダ5 の圧力室に作動流体を給排する配管の図示は省略している。上型2 と下型1 とを互いに近接する方向に移動させることで型締めを行い、下型1 の凹部1aに載置したプリプレグ3 を加熱硬化させることができる。この段階では圧力は高くなく、次の段階でピストンロッド5aを伸長させることにより、中子4 を変形させながら内圧を高めると同時にプリプレグ3 をも成形用金型15の成形面に沿って変形させる。このとき中子4 と成形用金型15との間の圧力を高めるため、型締め機としては上下型2,1 の開閉機構を備えていれば足り、格別な高圧プレス機は不要となる。
上型2 と下型1 との間を型締め状態にしたとき、あるいは上型2 と下型1 とによってプリプレグ3 を所定の圧力で加圧している加圧状態にしたとき、上型2 と下型1 との間隔がそれ以上拡がらないようにする。そのため、図示例によれば上型2 に上下型2,1 の間隔を一定に保持する金型間隔保持手段20が設けられている。図1に示すように、金型間隔保持手段20には、ピストンロッド5aで中子4 を押圧変形させたときに、上型2 に対してプリプレグ3 の変形による押圧力の増大で上型2 が持ち上がらない構成が採用される。
図1及び図6(A) に示す例では、前記金型間隔保持手段20は、上型2 の左右側面上端部( 図1の左右上端肩部)に形成した下傾斜面2a,2a と、同下傾斜面2a,2a に面接触状態で摺接するくさび面21b,21b を有し、上型2 の移動方向(上下方向)に直交する方向(水平方向)に摺動自在な左右一対の押え部材21a,21a と、同押え部材21a,21a を水平方向に移動させて互いに接近及び離間方向に駆動する図示せぬ駆動部とを備えている。左右一対の押え部材21a,21a の対向するくさび面21b,21b の形状は、図6(A) に示すように、相対す
るくさび面21b,21b 間の間隔が下方に向かって拡開する形状とされている。
上型2 と下型1 とによる型締め状態又は加圧状態にあって、一対の押え部材21a,21a を上型2 の左右側面の上端部に形成された下傾斜面に向けて接近するように水平に移動させることにより、上型2 の左右側面の上端部に形成した下傾斜面2a,2a とくさび面21b ,21bとによるくさび作用が働く。ここで、前記押え部材21a の左右方向への移動停止位置により、上下型2,1 の上下成形面間の離間距離が決まり、上型2 の上方への、それ以上の移動が阻止される。すなわち、上型2 と下型1 との間の間隔が前記押え部材21a の停止位置により決まるため、その停止位置を調整することにより上型2 と下型1 との間の間隔を任意に調整することができる。この停止位置が決まると、たとえ上型2 に下方から強大な力が作用したとしても、上型2 は不動状態を維持し、その不動位置が確実に保持されるため、寸法精度の高い成形品を得ることができる。
この位置が決まった状態で、押圧手段であるピストンロッド5aを成形用金型15のキャビティ内に突出させて、プリプレグ3 の外周面の一部を押圧して、プリプレグ3 内に内包された中子4 の一部外周面に凹陥部6 を形成する。このように、ピストンロッド5aによってプリプレグ3 を介して中子4 の一部外周面を押圧すると、中子4 内の容積は、粒体4aの容積に突入したピストンロッド5aの容積が強制的に加わった状態になるため、中子4 内の内圧を高めることができる。
中子4 の内圧が高まることによって、包装フィルム4bに収納された各粒体4aは相互の粒体間で滑りを生じて前後左右方向に移動することになる。しかも、各粒体4aを包装している包装フィルム4bは伸展できる材質から構成されているので、包装フィルム4bは各粒体4aの移動を許容するように変形する。
このように、中子4 の内圧を高め、粒体4a間での滑りを生じさせることにより、中子4 が変形し、図2に示すような、中子4 とプリプレグ3 との間の空隙や、成形用金型15の成形面とプリプレグ3 との間の空隙を形成させることがない。
すなわち、中子4 の内圧が高まることによって、中子4 内の粒体4aは滑りが生じて中子4 を変形させる。そして、プリプレグ3 の内面における四隅から、下型1 の凹部1a壁面に沿って形成される縦の部位の内面に沿った領域に曲がり、シワや空隙が生じないように、中子4 を変形させてプリプレグ3 の内面に密接させることができる。
プリプレグ3 を成形用金型15内に載置した際に、中子4 を被包しているプリプレグ3 と中子4 との間に空隙が形成されていても、空隙を構成していた気体は、中子の押圧による内圧を受け、プリプレグ3 を通って成形用金型15の僅かな隙間から大気中に放出される。空気がプリプレグ3 の通過時に形成された通路は、空気の通過後に中子4 による圧力を受けてプリプレグ3 の溶融樹脂が流動して自然に塞がれ、ボイドの発生要因とはならない。
また、プリプレグ3 を成形用金型15内に載置した際に、成形用金型15の隅部において、成形用金型15とプリプレグ3 との間に空隙が存在していた場合であっても、中子4 の内部を移動する粒体4aの押圧によってプリプレグ3 を空隙側へと変形させる。そして、この空隙を形成していた空気を成形用金型15から大気中に押し出す。空気が排出された空隙の部分にはプリプレグ3 が移動して、プリプレグ3 は成形用金型15の隅部形状に沿った形状に形成される。これにより、プリプレグ3 を加圧成形して形成した成形品は、例えば、隅部が金型の形状に沿った高品位の成形品になる。
中子4 の内圧が高まることによって、各粒体4aは相互の粒体間で滑りを生じて四方に分散移動することになる。しかも、各粒体4aを包装している包装フィルム4bは伸延できる材
質から構成されているので、包装フィルム4bは各粒体4aの移動を許容するように拡張される。
このように、中子4 の内圧を高め、粒体4a間での滑りを生じさせることができるので、中子を変形させることができ、図2に示すように、中子4 とプリプレグ3 との間に空隙を形成させないことができる。しかも、プリプレグ3 を成形用金型15内に載置した際に空隙が生じていても、中子4 の変形は、プリプレグ3 との間での圧力の低い部位において生じるので、上型2 と下型1 との間を型締め状態にする際には空隙は形成されず、プリプレグ3 の肉厚を所定の肉厚に維持しておくことができる。
こうして、所定の肉厚を有し、所望の外周面形状を備えた形状にプリプレグ3 を加圧成形することができる。
なお、実施例の説明で用いる各図において、包装フィルム4bを分かり易く説明するため、誇張した状態で包装フィルム4bの肉厚を示している。実際には、包装フィルム4bは、薄いフィルム状に構成されており、通常その厚みは1mm以下である。
図3(a)は、成形用金型15による加圧成形が終了した半成形品10a を、成形用金型15から取り出した状態を示している。ピストンロッド5aで押圧したプリプレグ3 の部位には、凹陥部6 が形成されている。
図3(b)に示すように、凹陥部6 の底面に排出用の孔を開けると、この孔から中子4 を構成していた粒体4a間に空気が流入し、粒体4a間の結合状態が崩れる。そして、結合状態が崩れた粒体4aを、凹陥部6 に形成した排出用の孔から外部に排出することができる。そして、図3(c)に示すように、中空部10b を有する成形品10を完成させることができる。
ここで、包装フィルム4bを用いて粒体4aを真空パック包装しているときは、包装フィルム4bを、成形品10に対して剥離性がよい材料で構成しておけば、包装フィルム4bも成形品10から取外すことができる。また、包装フィルム4bを二重にすれば、粒体4aに接する包装フィルム4bを成形品10から取外すことができる。
このように、中子4 とプリプレグ3 との間に空隙が存在しない状態でプリプレグ3 に対する加圧成形を行うことができるので、成形品10としては曲がりやシワがない所望の肉厚で所望の品質および外周面形状を有する製品を製造することができる。また、成形用金型を閉めた状態で中子4 内の内圧が低い場合であっても、ピストンロッド5aの突出量を増加させれば、中子4 内の内圧を高めるので、成形品10としては所望の肉厚で所望の外周面形状を有する製品に製造することができる。
次に、図7を用いて、プリプレグ3 における内圧の変化と、上型2 の移動ストローク及びピストンロッド5aの伸長ストロークとの関係を説明する。図7の説明を行う前に、幾つかの仮定条件について述べる。
例えば、図1に示す上型2 でプリプレグ3 を押圧する押圧面が長方形形状であって、押圧面の横幅W が100mm の長さで、奥行きが300mm の長さであると仮定する。このとき、押圧面の面積としては、10cm×30cm=300cm2になる。また、ピストンロッド5aの直径をφ38mmと仮定し、シリンダ5 のシリンダ径をφ130mm と仮定する。そして、上型2 を押圧するプレス装置における油圧シリンダのシリンダ径をφ252mm とする。
このとき、前記プレス装置のプレス圧が25kg/ cm2 であるとすると、このとき上型2 に加えることができる荷重は、プレス圧×油圧シリンダの面積=25kg/ cm2 ×25.2cm×25.2cm×3.14/4 =約12.5ton になる。そして、前記プレス装置でのプレス圧が25kg/ cm2 の2 倍である50kg/ cm2 であるときには、上型2 に加えることができる荷重は、上述したプ
レス圧が25kg/ cm2 のときの12.5ton の倍である約25ton を加えることができる。
12.5ton の荷重を上型2 に加えると、上型2 の押圧面でプリプレグ3 を押圧しているときの単位面積当たりの応力は、荷重/(上型2 の押圧面積)=12,500Kg/300 cm2 =約42kg/ cm2 になる。12.5ton の2倍である25ton の荷重を上型2 に加えた場合には、上型2 の押圧面でプリプレグ3 を押圧しているときの単位面積当たりの応力としては、12.5ton の荷重を上型2 に加えたときの倍である約84kg/ cm2 となる。
また、φ130mm のシリンダ5 におけるシリンダ圧が7kg/ cm2であるとすると、このときピストンロッド5aに加えることができる押圧力は、シリンダ圧×シリンダ5 の面積=7kg/
cm2×13.0cm×13.0cm×3.14/4 =約929Kg になる。そして、ピストンロッド5aで中子4 を押圧するときの単位面積当たりの応力は、押圧力/ピストンロッド5aの面積=929Kg /3.8cm ×3.8cm ×3.14/4 =約82kg/ cm2 となる。
上記で計算した数値を用いて、図7を説明する。
図7では、縦軸に応力(kg/ cm2 )を示し、横軸にピストンロッド5aのストローク(cm)を示している。なお、図は、応力とストロークの関係を分かりやすく説明するためのものであって、スケール等は縮小したり誇張させたりして示している。
プレス装置を作動させると、A 点において上型2 はプリプレグ3 に当接し、プリプレグ3 を押圧することができる。同図中の破線は、上型2 だけでプリプレグ3 を押圧していった場合を示している。太線は、本発明に基づいて、上型2 によるプリプレグ3 の押圧とピストンロッド5aによる中子4 の押圧とを併用した場合を示している。なお、応力がゼロから応力IIに上昇するまでの間は、破線と太線とは重なった状態になっている。
最初に、破線について説明する。そして、破線のようにして応力をIIの状態にまで増大させた場合には、成形用金型15とプリプレグ3 との間及びプリプレグ3 と中子4 との間に生じていた余裕を無くすことができるものとする。この場合では、例えば、プレス装置でのプレス圧が25kg/ cm2 であれば、上型2 をA 点から更にB 点まで移動させることができ、応力としては更に応力I まで増加させることができる。このときの応力I は、仮に上述の計算で求めた42 kg/ cm2となる。このあとも、引き続きプレス装置の作動を続けることにより、図7に破線で示すように、C 点まで達する。このときの応力は応力I の大きさとなる。
次に、太線について説明する。上述のように、上型2 がB 点に達するまではピストンロッドは作動しておらず、プレス装置による単独の加圧がなされて、プレス装置でのプレス圧を25kg/ cm2 にして、上型2 をA 点からB 点まで移動させることができ、応力としては応力IIまで増加させることができる。このときの応力IIは、上述の計算で求めた42 kg/ cm2になる。上型2 がA 点からB 点まで移動したときに、金型間隔保持手段20を作動させて上型2 が下型1 から離れる方向に移動しないよう、その位置を保持する。
この保持状態からピストンロッド5aをキャビティ内に突出させる。このとき、ピストンロッド5aは中子4 に当接して中子4 の内圧を上昇させることになるが、中子4 を構成している粒体4aの量が包装体の容積より少ないときには、中子4 を変形させながら、その内圧を所望の内圧まで高めて中子4 を元々の形状に戻すために、ピストンロッド5aをC 点まで伸長させる。このときの応力はIIのままである。そして、成形用金型15とプリプレグ3 との間及びプリプレグ3 と中子4 との間に生じていた空隙を無くそうとするには、ピストンロッド5aをC 点から更にE 点までの任意の点へと伸長させて中子4 内の内圧を所望の内圧まで上昇させていくことになる。
このとき、中子4 内の内圧が上昇するとともに、中子4 内を粒体4aが流動して中子4 を
変形させていくと、中子4 とプリプレグ3 との間での圧力も上昇する。そして、太線で示すように上型2 とプリプレグ3 との間の応力は、応力IIの状態から応力I'の状態に向かって上昇していく。ここで、応力IIの状態では粒体4aが中子4 の全体に渡って隈なく行き届いていないときは、更にピストンロッド5aを伸長させる。このとき、上型2 は反力を受けて型を開く上方へと逃げようとする。
本発明にあっては、上述のとおり、上型2 には金型間隔保持手段20が設けられている。金型が開く方向へと動こうとする上型2 は、前記金型間隔保持手段20によって不動状態を維持し、上型2 が開く方向に動くことがないため、中子4 の内圧を所望以上に確実に上昇させることができ、プリプレグ3 と金型のキャビティ面との間に存在していた空気を積極的に型外に排出し、所望の形状と品質をもつ高品位の強化繊維プラスチック成形体が得られる。その結果、上述の計算で求めたように、ピストンロッド5aからの押圧力によって82kg/ cm2 以上の適正な応力を、中子4 を介してプリプレグ3 に作用させることができる。
このように、上型2 をA 点から更にD 点まで移動させたときに生じさせた84 kg/ cm2と略同等の応力82kg/ cm2 の応力をピストンロッド5aからの押圧力によって得ることができる。即ち、ピストンロッド5aで中子4 の一部を押圧することによって、例えば、上型2 に25ton の荷重を加えなくても、上型2 に12.5ton の荷重を加えた後に、929kg の押圧力をもつピストンロッド5aで中子4 を押圧することによっても、空隙を解消させることができる。
なお、応力とストロークとの関係は、ピストンロッドの伸長長さに基づく容積変化が影響するため、実際には直線ではなく複雑な曲線形状になるが、応力とストロークとの関係を分かり易く説明するため、グラフとしては直線のグラフを用いて説明している。
このように、本発明では、大型のプレス装置で上型2 を押圧しなくても、小型のプレス装置と中子4 を押圧するシリンダ5 によって、大型のプレス装置を用いた場合と同様に、成形用金型15とプリプレグ3 との間及びプリプレグ3 と中子4 との間に生じていた空隙を排除することができる。
図7では、上型2 に荷重を加えた構成について説明を行ったが、上述した計算で示したようにピストンロッド5aによる押圧力でも、大型のプレス装置で生じさせた応力と略同じ応力をプリプレグ3 に作用させることができる。このため、成形用金型15を型締め状態とした後に、ピストンロッド5aを中子4 に作用させた場合であっても応力I の状態にまで応力を高めることができる。つまり、上型2 に12.5ton の荷重を加えた後にピストンロッド5aを作動させた場合であっても、成形用金型15とプリプレグ3 との間及びプリプレグ3 と中子4 との間に生じていた空隙を無くすことができる。
しかして、ピストンロッド5aの突出量によって前述のとおりの高圧が得られるが、プリプレグ3 の全体的な肉厚を更に薄く均一にしようとして、成形時のプリプレグ3 に対する加圧力を更に高めようとすると、上述のようなプレス装置のプレス力の限界を越えて上型2 を上方へ押し上げて、上型2 の成形面と下型1 の成形面との間隔が所望の間隔よりも大きくなる虞れがある。
本発明にあっては、上述のように上下型2,1 の上下間隔を一定に保つため、上型2 に金型間隔保持手段20を設けている。
金型間隔保持手段20の左右一対の押え部材21a,21a を上型2 の左右側面の上端部に形成された下傾斜面2a,2a に向けて接近するように水平に移動させると、上型2 の左右側面の上端部に形成した下傾斜面2a,2a とくさび面21b ,21bとによるくさび作用が働く。ここで、前記押え部材21a の左右方向への移動停止位置により、上下型2,1 の上下成形面間の離
間距離が決まり、上型2 の上方への、それ以上の移動が阻止される。すなわち、押え部材21a,21a の接近移動を停止させると、たとえ上型2 に対して下方から如何に強大な力が作用しても、上型2 はそれ以上上方へと移動せず不動状態を維持し、寸法精度の高い成形品を得ることができる。
なお、上述の説明では、ピストンロッド5aを下型1 に設けた構成について説明をしてきたが、ピストンロッド5aを上型2 に設けた構成を採用することができる。このとき、ピストンロッド5aを上型2 側に設け、下型1 を土台等の上に載置して移動が規制されている。上型2 は相変わらず上下に可動である。そのため、ピストンロッド5aで中子4 を押圧したときに上型2 が持ち上がらないようにするための金型間隔保持手段20の構成として、図1と同様の構成を採用できる。
本実施例1にあっては、図1に示すように、ジルコニア粒子(直径1mm、3mmの混合)をナイロンフィルムで真空パック包装した中子4 を作製した。炭素繊維強化エポキシ樹脂プリプレグ3 (三菱レイヨン社製TR3110 391IMU )を5プライで当該中子4 を内包し、成形用金型15の内周面形状と略同形状に、室温にてプリフォームを形成した。プリフォームを予め140℃に加熱した成形用金型15の下型1 に形成した凹部1a内に載置し、上型2 と下型1 の型締めを行い、続いて金型間隔保持手段20を作動させて上型2 が下型1 から離れる方向に移動しないよう、その位置を保持し、続いてピストンロッド5aで中子4 の外周面の一部を82kg/cm2で押圧した。10分後、型開きを行い、成形品を取り出した。ピストンロッド押圧により形成された凹陥部6 (図3(a))に排出用の孔を開け、粒体4aを排出用孔から外部に排出し(図3(b))、中空成形品を得た(図3(c))。この成形品は寸法精度が高く、外面にシワなど欠陥のない外観に優れるものであった。
図4及び図6(B)を用いて、本発明に係わる実施例2を説明する。上記実施例1では、金型間隔保持手段20の押え部材として、単純に傾斜したくさび面21b,21b を有する一対の押え部材21a,21a を用いた例について説明したが、実施例2では、金型間隔保持手段20に、鋸歯状のくさび面22b,22b をそれぞれに有する一対の押え部材22a,22a を用いている。また、各押え部材22a,22a に形成した鋸歯状のくさび面22b,22b に摺接するため、上型2 の両端部には、鋸歯状の面がそれぞれ形成されている。
他の構成は、実施例1と同様の構成を備えており、同様の構成部材については、実施例1で用いた部材符号と同じ部材符号を用いることにより、その部材についての説明は省略する。
図6(B)に示すように、一対の押え部材22a,22a に形成された鋸歯状のくさび面22b,22b は、水平方向に形成された水平面22c,22c と同水平面22c,22c の基端から連続して下傾斜する下傾斜面22d,22d とを備えた形状が繰り返された構成になっている。そして、図4に示すように、上型2 が下型1 に向かって下降してプリプレグ3 に対して予め設定された圧力を加える位置に達したとき、金型間隔保持手段20を作動させて一対の押え部材22a,22a 間を接近させると、上型2 に形成した鋸歯状の面のうち水平面と各押え部材22a,22a の水平面22c,22c とが面接触する。これによって、上型2 が上方に移動するのを確実に阻止することができる。
この状態からピストンロッド5aを作動させて、中子4 をピストンロッド5aで強制的に押圧変形させることができる。つまり、ピストンロッド5aによる押圧により中子4 を変形させ、中子4 とプリプレグ3 との間に空隙をなくすことができる。これによって、所望の肉厚で所望の外周面形状を有する高品位の成形品が製造できるように、プリプレグ3 を加圧成形することができる。
本実施例2にあっては、図4に示すように、金型間隔保持手段20に、鋸歯状のくさび面22b,22b をそれぞれに有する一対の押え部材22a,22a を用いて実施例1と同様に成形を行った。型開きを行い、成形品を取り出し、ピストンロッド押圧により形成された凹陥部6 (図3(a))に排出用の孔を開け、粒体4aを排出用孔から外部に排出し(図3(b))、中空成形品を得た(図3(c))。この成形品は寸法精度が高く、外面にシワなど欠陥のない外観に優れるものであった。
図5及び図6(C)を用いて、本発明に係わる実施例3の構成について説明する。実施例1では、金型間隔保持手段20として、単純に傾斜したくさび面21b を有する一対の押え部材21a,21a を用いた構成について説明したが、実施例3では、金型間隔保持手段20として、水平方向に延びる下面に上傾斜面を形成したくさび部23b,23b と、その外側端部から垂直下方に延びる垂直部23f,23f とを有する一対の押え部材23a,23a を用いており、一方の上型2 の左右両端部を、前記一対の押え部材23a,23a を前記両端部に当接させたとき、各押え部材23a,23a の対向面が密接する面形状に形成している。
この実施例3では、上型2 の上部キャビティ面が単なる平面ではなく突出部8 を形成した構成としている。
他の構成は、実施例1と同様の構成になっており、同様の構成部材については、実施例1で用いた部材符号と同じ部材符号を用いることにより、その部材についての説明を省略する。
左右一対の押え部材23a,23a に形成されたくさび部23b,23b は、図6(C)に示すように、上型2 に向けて横方向に延びた上傾斜面23c,23c と、この上傾斜面23c,23c の両端縁側から上下に延びる垂直面23d,23e を備えた形状を有するくさび部23b,23b と垂直部23f,23f とからなる。そして、図5に示すように、上型2 における左右両端部の傾斜面と押え部材23a,23a の上傾斜面23c,23c とが面接触することによって、上型2 の上方への移動を確実に阻止しておくことができる。また、一対の押え部材23a,23a を互いに接近/離間する方向に摺動させることによって、上型2 を下型1 に接近/ 離間方向へと移動させて、上型2 を下型1 との間隔を調整することができる。
図5に示すように、上型2 を下型1 に向かって下降させてプリプレグ3 を加圧成形するとき、上型2 に設けた突出部8 で中子4 を強制的に押圧する。そして、この加圧状態は、金型間隔保持手段20を作動させて一対の押え部材23a,23a の間を接近させると、上型2 に形成した傾斜面と各押え部材23a,23a の上傾斜面23c,23c とが面接触することによって、上型2 の上方への移動を確実に阻止して、定位置に保持させておくことができる。
この状態からピストンロッド5aを作動させて、中子4 を突出部8 とピストンロッド5aとの間で強制的に押圧変形させる。これによって、既述したとおり、中子4 を変形させ、中子4 とプリプレグ3 との間の空隙をなくすことができる。こうして、本実施例にあっても、所望の肉厚で所望の外周面形状を有する高品位の中空状の強化繊維プラスチック成形品が製造できるようになる。
本実施例3にあっては、図5に示すように、上型2 の上部キャビティ面が単なる平面ではなく突出部8 を形成した構成で、金型間隔保持手段20に、横方向に延びる下面に上傾斜面を形成したくさび部23b,23b と、その外側端部から垂直下方に延びる垂直部23f,23f とを有する一対の押え部材23a,23a を用いて実施例1と同様に成形を行った。型開きを行い、成形品を取り出し、ピストンロッド押圧により形成された凹陥部6 (図3(a))に排出用の孔を開け、粒体4aを排出用孔から外部に排出し(図3(b))、中空成形品を得た(図3(c))。この成形品は寸法精度が高く、外面にシワなど欠陥のない外観に優れる
ものであった。
金型間隔保持手段20における一対の押え部材の構成としては、図6に示したような多様な構成が採用できる。図6(A)〜図6(C)の構成については、上述した実施例1〜3として説明したが、図2及び図6(B)に示した実施例2の押え部材の変形例を、図6(D)をもって説明する。図6(D)に示した一対の押え部材24a,24a は、くさび面24b,24b の形状が鋸歯状に形成されているが、実施例2で示した図6(B)のような片歯の鋸歯形状でなく両歯の鋸歯形状に構成されている。この例では、図示を省略しているが、上型2 の左右両端部は、前記くさび面24b,24b の形状に対応したくさび面が形成されている。
かかる構成によって、金型間隔保持手段20を作動させると、一対の押え部材24a,24a におけるくさび面24b,24b と上型2 の両端部に形成したくさび面とが係合し、上型2 の上下両方向への移動を完全に阻止することになる。
本発明は、中子を用いた成形加工において好適に適用することができる。
1 下型
1a 凹部
2 上型
2a 下傾斜面
3 プリプレグ
4 中子
4a 粒体
4b 包装フィルム
5 シリンダ
5a ピストンロッド
6 凹陥部
8 突出部
10 成形品
10a 半成形品
10b 中空部
15 成形用金型
20 金型間隔保持手段
21a 押え部材
21b くさび面
22a 押え部材
22b くさび面
22c 水平面
22d 下傾斜面
23a 押え部材
23b くさび部
23c 上傾斜面
23d,23e 垂直面
23f 垂直部
24a 押え部材
24b くさび面
30 成形用金型
31 下型
32 上型
33 中子
33a 粉粒体
33b 包装材
34,35 繊維強化熱可塑性樹脂材(FRTP)
36 プリプレグ
37 縦の部位
41a,41b 成形用金型
42a,42b 合せ面
43 中子
44 押出し機
45 溶融樹脂
46 加圧ユニット

Claims (6)

  1. 流動性を有する多数の粒体を可撓性袋体に収容した所望形状に変形可能な中子を、プリプレグの内部に介装させること、
    中子を内包した前記プリプレグを成形用金型の上型と下型との間に配すること、
    前記成形用金型による型締め時又は加圧成形時に、前記上型と下型間の間隔が広がらないように金型間隔保持手段をもって保持すること、
    前記上型及び下型間のキャビティに向けて出没する押圧手段をもって、前記中子の外周面の一部を押圧して前記中子内の内圧を高めて変形させること、及び
    前記中子の押圧変形により、前記プリプレグと、前記金型及び前記中子との間の密着性を高めることを含んでなる、繊維強化プラスチックの成形方法。
  2. 上記金型間隔保持手段を上記上型の左右側部に配すること、及び上型の左右側部に配された前記金型間隔保持手段を互いに接近する方向へと所定量移動させることにより前記上型の上方への移動を完全に規制することを含んでなる、請求項1に記載の繊維強化プラスチックの成形方法。
  3. 前記上型の左右側面と金型間隔保持手段の当接面とを、互いにくさび状の摺動面に形成することを含んでなる、請求項1又は2に記載の繊維強化プラスチックの成形方法。
  4. 前記押圧手段がシリンダを含み、同シリンダのピストンロッドの伸縮動作により、前記中子を挟み込むように前記中子の外周面の一部を、前記プリプレグを介して押圧することを含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形方法。
  5. 前記プリプレグを挟んで前記押圧手段が配された側とは反対側の金型面に、前記キャビティに密嵌する嵌合突出部を設け、前記成形用金型による型締め時又は加圧成形時に、前記成形用金型の前記嵌合突出部と前記押圧手段とをもって、前記中子を挟み込むように前記中子の外周面の一部表面をそれぞれ押圧することを含んでなる、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形方法。
  6. 圧縮成形後、前記押圧手段により形成された凹部に前記プリプレグを介して前記中子の外周面の一部に中子の内部に通じる孔を開け、その孔から前記粒体を排出することを含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化プラスチックの成形方法。
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