JP2012184195A - キシログラニンa及びb - Google Patents
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Abstract
【課題】新規な化学物質を資源として提供する。
【解決手段】本発明に係るキシログラニンAとする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明に係るキシログラニンAとする。
【選択図】なし
Description
本発明は、新規化合物であるキシログラニンAに関し、更には、これらを用いた薬剤に関する。
現在の我々の生活において、天然の動植物、微生物等の体内に含まれる化学物質(以下「天然物」という。)として見出されたもののうち人体に有用な効果をもたらすものは生薬、医薬品の有効成分として使用されている。また、このようなものは更に有用な医薬品を開発するための研究材料としても様々な役割を有しており、非常に重要なものとなっている。
このように、人体に有益な効果をもたらす天然物の探索に関する報告としては、例えば下記非特許文献1に、変形菌からビスインドール化合物、ナフトキノン化合物、グリセリド化合物等を抽出した報告がある。
石橋正己、"未利用菌類の資源化:変形菌からの天然物探索"、有機合成化学協会誌、2003年、第61巻、第2号、152〜163頁
しかしながら一方で、天然物の探索が多数の者によって行なわれているにもかかわらず、探索の材料として検討、調査されたものは、地球上の全生物種の中で10%にも満たないといわれている。
本発明は、新規な化学物質を資源として提供することを目的とする。
本発明の一手段に係るキシログラニンAは、下記式で示される。
本発明の他の一手段に係るキシログラニンBは、下記式で示される。
また、本発明の他の一手段に係る薬剤は、下記式で示されるキシログラニンA及びその塩の少なくともいずれかを有効成分として含有する。
また、本発明の他の一手段に係る薬剤は、下記式で示されるキシログラニンB及びその塩の少なくともいずれかを有効成分として含有する。
なお、上記の薬剤は、癌の治療薬として有用であることが期待される。
本発明により、新規な化学物質を資源として提供することができる。特に、本発明に係る化学物質は、癌細胞に対し細胞増殖抑制作用を発揮するため、例えば癌の治療薬として利用が期待される。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態についての記載にのみ狭く解釈されるものではない。
本発明の一形態に係るキシログラニンA及びBは、下記式にて示される。
本実施形態に係るキシログラニンA、Bは、後述の実施例から明らかなように、センダン科植物Xylocarpus granatumより抽出することができるが、これに限定されず、合成することも可能である。
本実施形態に係るキシログラニンA、Bは、癌細胞に対し細胞増殖抑制作用を発揮するため、薬剤、例えば癌の治療薬として利用が期待される。なおキシログラニンA、Bを癌の治療薬として利用する場合、キシログラニンA、B及びこれらの塩のうち少なくともいずれかを有効成分として含有しておくことが好ましい。
また、本実施形態に係る癌の治療薬は、上記キシログラニンA、B及びこれらの塩のうち少なくともいずれかの他、薬学的に許容しうる通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤(例えば蒸留水)、pH緩衝剤(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤等の各種調剤用配合成分を含有させることができる。
またこの癌の治療薬は、患者の性別、体重、症状に見合った適切な投与量を経口的又は非経口的に投与することができる。経口的な投与としては、通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁液、油剤、乳化剤等の投与形態を採用することができる。また、非経口的な投与としては、通常用いられる投与形態、例えば上記の液剤、懸濁液等にしたものを直接患部に投与する方法、注射等により投与する形態を採用することができる。
本実施例では、Xylocarpus granatum葉部から上記キシログラニンA、Bを抽出しその効果を確認した。図1に、キシログラニンA、Bの単離についてのスキームの概略を示しておく。
まず、Xylocarpus granatum葉部のメタノール抽出物(15.1g)を、ヘキサン、酢酸エチル、ブタノールを用いて溶媒分配を行い、各可溶部を得た。このうち、ヘキサン可溶部について、ダイヤイオンHP20を担体とするカラム(φ50×300mm)に付し、メタノールで溶出させた画分1Aを得た。
次に、この画分をSilica gel 60Nを単体とするカラム(φ30×300mm)に付し、クロロホルム/メタノール98/2にて溶出した2Cを、ODSを単体とするカラム(φ30×300mm)に付し、メタノール、水の混合溶媒を用いて溶出させ、溶出順に3A−3Jの各画分を得た。
その後、得られた3Cのメタノール可溶部をセファデックスLH−20を担体とするカラム(φ20×450mm)付し、メタノールを用いて溶出させ、溶出順に4A−4Fの各画分を得た。
そして更に、得られた4Bを下記HPLC条件による分取HPLC(ODS)に付し、5A−5Mの各画分を得た。そしてこのうち単一化合物に分離できた5HをキシログラニンA(1.5mg)と命名した。
また、2Bを、再度Silica gel 60Nを担体とするカラム(φ10×210mm)に付し、溶出順に6A−6Qの各画分を得た。
得られた6Iを下記HPLC条件による分取HPLC(ODS)に付し、7A−7Jの各画分を得た。このうち単一化合物に分離できた7GをキシログラニンB(8.0mg)と命名した。
(キシログラニンAの構造)
キシログラニンAは、淡黄色固体として得られた。ESI−MSにてm/z 681.2866[M+Na]+が観測された。
キシログラニンAは、淡黄色固体として得られた。ESI−MSにてm/z 681.2866[M+Na]+が観測された。
また、キシログラニンAに対して紫外吸収測定(以下「UV測定」という。)を行い、紫外吸収スペクトル(以下「UVスペクトル」という。)を得た。この紫外吸収測定によるとend absorptionであり吸収ピークは確認できなかった。
また、キシログラニンAに対し、比旋光度[α]Dの測定を行った。キシログラニンAの濃度はメタノール溶媒において0.15g/dlとした。この結果、[α]Dは+4.7であり、光学活性を有することが確認できた。
また、キシログラニンAに対し、円偏光二色性スペクトル(CD)の測定も行った。この結果、264nm(Δε2.6)、241nm(Δε0.8)でコットン効果を示した。
また、キシログラニンAに対し、赤外吸収分光測定を行った。この結果、3650cm−1、1740cm−1に吸収のピークが確認できた。下記表に、比旋光度、HRESIMS、UV測定、IR測定の結果を示しておく。
更に、1H NMR、13C NMR、HMQCの解析から分子式がC35H46O12であることが判明した。1H NMRスペクトルにおいて、3H分のフラン環由来シグナル、2つのイソブチリル基に由来する2H分のセプテット、1つのメトキシ基、8つのメチル基由来のシグナルが観測された。またCOSYスペクトル、HMQCスペクトル、HMBCスペクトルの解析ならびに類似化合物Xyloccensin Xの文献値(Roy A.D.,Kumar R,Gupta P.,Khaliq T.,Narender T.,Aggarwal V.,Roy R.、Magin. Reson. Chem.、2006、44、1054−1057)との比較により、各プロトンシグナルおよび炭素シグナルの一部を帰属した。さらに、HMBCスペクトルの解析ならびにXyloccensin Xの文献値との比較より、本化合物は下記式に示すリモノイド骨格を持つ新規化合物であることが判明した。なお、図2に、キシログラニンA(及びキシログラニンB)の1H NMRデータ及び13C NMRデータを、図3にキシログラニンAの1H NMRスペクトルを、図4にキシログラニンAのCOSYスペクトルを、図5にキシログラニンAのHMQCスペクトルを、図6にキシログラニンAのHMBCスペクトルを、それぞれ示しておく。
(キシログラニンBの構造)
キシログラニンBは、淡黄色固体として得られた。ESI−MSにてm/z 727.2751[M+Na]+が観測された。
キシログラニンBは、淡黄色固体として得られた。ESI−MSにてm/z 727.2751[M+Na]+が観測された。
また、キシログラニンBに対して紫外吸収測定(以下「UV測定」という。)を行い、紫外吸収スペクトル(以下「UVスペクトル」という。)を得た。この紫外吸収測定によると218nmに吸収ピークを確認することができた。
また、キシログラニンBに対し、比旋光度[α]Dの測定を行った。キシログラニンAの濃度はクロロホルム溶媒において0.5g/dlとした。この結果、[α]Dは+10.7であり、光学活性を有することが確認できた。
また、キシログラニンBに対し、円偏光二色性スペクトル(CD)の測定も行った。この結果、238nm(Δε 13.7)、214nm(Δε −2.4)、208nm(Δε 2.2)でコットン効果を示した。
また、キシログラニンBに対し、赤外吸収分光測定を行った。この結果、3530cm−1、1720cm−1に吸収のピークが確認できた。下記表に、比旋光度、HRESIMS、UV測定、IR測定の結果を示しておく。
さらに13C NMRおよびHMQCの解析よりキシログラニンBの分子式は、C39H44O12であることが判明した。また1Hおよび13C NMRスペクトルにおいてキシログラニンBのデータは、キシログラニンAとよく類似していたことから、本化合物はキシログラニンAと同様にリモノイド構造をもつことが示唆された。
一方,キシログラニンBとキシログラニンAの1H NMRを比較したところ,低磁場側のフラン環由来シグナルに加え、芳香族由来のシグナルが観測された。COSYスペクトル、HMQC、HMBCスペクトルの解析より、各プロトンシグナルおよび各炭素シグナルを帰属した。さらにHMBCスペクトルの解析より、本化合物は下記式に示すリモノイド骨格を持つ新規化合物であることが判明した。なお、図7に、キシログラニンBの1H NMRスペクトルを、図8に、キシログラニンBの13C NMRスペクトルを、図9に、キシログラニンBのCOSYスペクトルを、図10に、キシログラニンBのHMQCスペクトルを、図11に、キシログラニンBのHMBCスペクトルを、それぞれ示しておく。
(細胞増殖阻害活性)
上記単離したキシログラニンBについて、ヒト大腸がん細胞株3種類(HCT116、DLD1)、及び、ヒト胎児腎上皮細胞株である293T細胞(正常細胞)に対する細胞増殖阻害活性を検討した。
上記単離したキシログラニンBについて、ヒト大腸がん細胞株3種類(HCT116、DLD1)、及び、ヒト胎児腎上皮細胞株である293T細胞(正常細胞)に対する細胞増殖阻害活性を検討した。
まず、各細胞株をそれぞれ96穴プレート(Nunk)に6×103細胞/穴の濃度で播種し一晩培養した後、各細胞株に対してキシログラニンBを細胞に暴露し、24時間培養した。培養後、培地を除去し、フルオロセインジアセテート(和光)が10μg/mL となるようにPBSに溶解させた溶液を各穴に200μL添加し、1時間後に蛍光を測定することで各試料濃度での細胞生存率を算出し、50%細胞増殖阻害濃度(IC50値)を計算した。この結果を下記表に示す。なお、上記細胞生存率の算出は、“Larsson R.,Kristensen J.,Sandberg C.,Nygren P.、Int. J. Cancer、199、2、50、177−1815”に記載の算出方法を用いて行った。
この結果,XG−4はヒト大腸がん細胞株2種類に対して細胞増殖阻害活性をもち、特にHCT116に対して強い細胞増殖阻害活性をもつことが判明した。一方、正常細胞株である293Tには細胞増殖阻害活性を有しておらず選択性を有していることが確認できた。
本発明は新規化合物を有効成分とし、薬剤として産業上の利用可能性を有する。
Claims (5)
- 下記式で示されるキシログラニンA。
- 下記式で示されるキシログラニンB。
- 下記式で示されるキシログラニンA及びその塩の少なくともいずれかを有効成分として含有する薬剤。
- 下記式で示されるキシログラニンB及びその塩の少なくともいずれかを有効成分として含有する薬剤。
- 癌の治療薬である請求項3又は4記載の薬剤。
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