JP2012181516A - セルロースエステルフィルム、偏光板、液晶表示装置、及びセルロースエステルフィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】可塑剤を少なくとも1種含有するセルロースエステルフィルムであって、下記式(1)〜(5)を満たすセルロースエステルフィルム。
|Re|≦5nm (1)
50nm<Rth<300nm (2)
25μm≦d≦65μm (3)
1×10−3≦Rth/d≦4×10−3(4)
3.8GPa<E’<5.0GPa(5)
なお、上記各式において、Reは面内方向のレターデーション値、Rthは厚み方向のレターデーション値、dはフィルム厚み、E’はフィルムの弾性率である。
【選択図】なし
Description
具体的には、以下の手段により、上記課題を解決した。
可塑剤を少なくとも1種含有するセルロースエステルフィルムであって、下記式(1)〜(5)を満たすセルロースエステルフィルム。
|Re|≦5nm (1)
50nm<Rth<300nm (2)
25μm≦d≦65μm (3)
1×10−3≦Rth/d≦4×10−3(4)
3.8GPa<E’<5.0GPa(5)
なお、上記各式において、Reは面内方向のレターデーション値、Rthは厚み方向のレターデーション値、dはフィルム厚み、E’はフィルムの弾性率である。
[2]
前記可塑剤が芳香族環を含有する重縮合エステルである、前記[1]に記載のセルロースエステルフィルム。
[3]
前記重縮合エステルが下記(I)及び(II)を満たす、前記[2]に記載のセルロースエステルフィルム。
(I)芳香族ジカルボン酸残基と平均炭素数4.0〜6.0の脂肪族ジカルボン酸残基とを含み、下式に表される芳香族ジカルボン酸残基比率が40mol%〜95mol%であるジカルボン酸残基を含む
芳香族ジカルボン酸残基比率(mol%)=〔芳香族ジカルボン酸残基(mol)/(芳香族ジカルボン酸残基(mol)+脂肪族ジカルボン酸残基(mol))〕×100
(II)平均炭素数2.0〜3.0の脂肪族ジオール残基を含む
[4]
前記重縮合エステルの数平均分子量が700以上2500以下である、前記[2]又は[3]に記載のセルロースエステルフィルム。
[5]
前記セルロースエステルフィルムが、TD方向に3%以上延伸されたものである前記[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
[6]
前記セルロースエステルフィルムがセルロースアシレートから構成されており、該セルロースアシレートのアシル基置換度が2.10〜2.95である前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
[7]
前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを有する偏光板。
[8]
前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム、又は前記[7]に記載の偏光板を有する液晶表示装置。
[9]
前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、セルロースエステルフィルムをTD方向に3%以上延伸することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
本発明のセルロースエステルフィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、下記式(1)〜(5)を満たす。
式(1) |Re|≦5nm
(式中、Reは波長590nmにおける面内レターデーションの値を減じた値(単位:nm)を表す。)
式(2) 50nm<Rth<300nm
式(3) 25μm≦d≦65μm
式(4) 1×10−3≦Rth/d≦4×10−3
(式中、Rthは波長590nmにおける膜厚方向のレターデーションの値(単位:nm)を表し、dはフィルム厚み(単位:μm)を表す。)
式(5) 3.8GPa<E’<5.0GPa
(式中、E’はフィルムの弾性率を表す。)
本発明のセルロースエステルフィルムは、セルロースアシレートを含んでなるセルロースアシレートフィルムであることが好ましく、総アシル置換度2.10〜2.95のセルロースアシレートを含み、フィルム搬送方向の弾性率が3200MPa以上であることが好ましい。
また、本発明のフィルムは、本発明のフィルムの製造方法によって、製造することができる。以下、本発明のフィルムについて、説明する。
(レターデーション)
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション及び厚さ方向のレターデーションを表す。本願明細書においては、特に記載がないときは、波長λは、590nmとする。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
式(12)
Rth={(nx+ny)/2−nz}xd
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
また、Rthは、50nm<Rth<300nmを満たすことが好ましく、65nm≦Rth≦150nmを満たすことがより好ましい。このようなRthとすることにより、よりRthの発現性の高い薄膜のCプレートを作製できる。
本発明のフィルムは、下記式(4)を満たすものであり、フィルムの薄膜化及び十分なRth発現の両立をし、かつフィルムの原料コストを下げることができる。
式(4) 1×10−3≦Rth/d≦4×10−3
(式中、Rthは波長590nmにおける膜厚方向のレターデーションの値(単位:nm)を表し、dはフィルム厚み(単位:μm)を表す。)
前記Rth/dは1.0〜4.0×10-3であることが好ましく、1.5〜3.0×10-3であることがより好ましい。
本発明のフィルムは、フィルムの弾性率E’が下記式(5)を満たす。
式(5) 3.8GPa<E’<5.0GPa
このような物性を満たすフィルムを用いることで、大面積化しても自己支持性を損なわず、積層体の支持体として用いる場合にも良好なハンドリング性を有するため好ましい。
また、TD方向とMD方向の弾性率の比であるE’(TD)/E’(MD)は、0.9〜1.1であることが好ましく、0.95〜1.05であることがより好ましく、1.0であることが特に好ましい。
本発明のフィルムの厚さは、用いる偏光板の種類等によって適宜定めることができるが、好ましくは25〜65μmであり、より好ましくは35〜60μmである。フィルムの厚さを65μm以下とすることにより、部材による薄型化に寄与することができ、合わせて原料使用量が減ることでコストを下げることができ好ましい。
本発明のフィルムは単層フィルムであっても、2層以上の積層構造を有していてもよい。特に、セルロースアシレートの置換度が2.6〜2.8の場合は、単層であることが好ましく、置換度2.1〜2.6の場合は2層以上が好ましい。その場合、本発明のフィルムは、2層以上の積層構造を有し、各層に含まれるセルロースアシレートの平均の総アシル置換度や含有量等の組成が互いに異なる様にすることができる。
本発明のフィルムは、フィルム幅が1000mm以上であることが好ましく、1500mm以上であることがより好ましく、1800mm以上であることが特に好ましい。
(原料)
本発明に用いられるセルロースアシレートは、少なくとも1種の総アシル置換度2.10〜2.95のセルロースアシレートを含む以外は、特に定めるものではない。アシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
本発明のフィルムは、各種の添加剤を含んでいてもよい。
本発明では添加剤として、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の高分子量添加剤及び低分子量添加剤を広く採用することができる。
本発明のフィルムでは、添加剤の添加量は、セルロースアシレートに対して1〜35質量%であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましく4〜15質量%であることが更に好ましい。添加剤の添加量が1質量%以上であれば、温度湿度変化に対応しやすく、添加量が35質量%以下であればフィルムが白化しにくい。更に、物理的特性も優れるものとなる。
ここで、本発明における添加剤とは、本発明のセルロースアシレートフィルムの諸機能の向上等を目的として添加される成分をいう。すなわち、不純物や残留溶媒等は、本発明における添加剤ではない。
以下、本発明のフィルムに用いることができる添加剤について詳細に説明する。
本発明に係る重縮合エステルは、芳香族環を含有する重縮合エステルであることが好ましく、少なくとも一種の芳香環を有するジカルボン酸(芳香族ジカルボン酸とも呼ぶ)と少なくとも一種の脂肪族ジカルボン酸との混合物であることがより好ましく、例えば、炭素数の平均が5.5以上10.0以下のジカルボン酸と、少なくとも一種の平均炭素数が2.5以上7.0以下の脂肪族ジオールとから得られることが好ましい。
ジカルボン酸残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値を平均炭素数とする。例えば、アジピン酸残基とフタル酸残基が50モル%ずつから構成される場合は、平均炭素数7.0となる。
また、ジオール残基の場合も同様で、脂肪族ジオール残基の平均炭素数は、脂肪族ジオール残基の組成比(モル分率)を構成炭素数に乗じて算出した値とする。例えばエチレングリコール残基50モル%と1,2−プロパンジオール残基50モル%から構成される場合は平均炭素数2.5となる。
本発明の重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。また、末端が封止のないポリエステルポリオールの場合、重量あたりの水酸基の量(以下、水酸基価)により算出することもできる。水酸基価は、ポリエステルポリオールをアセチル化した後、過剰の酢酸の中和に必要な水酸化カリウムの量(mg)を測定する。
なお、本発明にかかる芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物としてのジカルボン酸である場合は、炭素数の平均が5.5以上10.0以下のジカルボン酸であることが好ましい。より好ましくは5.6以上8以下である。
炭素数の平均が5.5以上であれば耐久性に優れた偏光板を得ることができる。炭素数の平均が10以下であればセルロースエステルへの相溶性が優れ、セルロースエステルフィルムの製膜過程でブリードアウトの発生を抑制することができる。
本発明に係る重縮合エステルは、可塑剤として用いることができる。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジカルボン酸HOOC−R−COOHより形成されるジカルボン酸残基は−OC−R−CO−である。
本発明に用いる重縮合エステルのジカルボン酸残基中の芳香族ジカルボン酸残基比率は40mol%以上であることが好ましく、40mol%〜95mol%であることが好ましい。45mol%〜70mol%であることがより好ましく、50mol%〜70mol%であることが更に好ましい。
芳香族ジカルボン酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られ、耐久性に優れた偏光板を得ることができる。また、95mol%以下であればセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
重縮合エステルには混合に用いた芳香族ジカルボン酸により芳香族ジカルボン酸残基が形成される。
具体的には、芳香族ジカルボン酸残基は、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、より好ましくはフタル酸残基、テレフタル酸残基の少なくとも1種を含み、更に好ましくはテレフタル酸残基を含む。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用いることで、よりセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくいセルロースエステルフィルムとすることができる。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
フタル酸とテレフタル酸の2種の芳香族ジカルボン酸を併用することにより、常温での重縮合エステルを軟化することができ、ハンドリングが容易になる点で好ましい。
重縮合エステルのジカルボン酸残基中のテレフタル酸残基の含有量は40mol%〜95mol%であることが好ましく、45mol%〜70mol%であることが好ましく、50mol%〜70mol%であることが好ましい。
テレフタル酸残基比率を40mol%以上とすることで、十分な光学異方性を示すセルロースエステルフィルムが得られる。また、95mol%以下であればセルロースエステルとの相溶性に優れ、セルロースエステルフィルムの製膜時及び加熱延伸時においてもブリードアウトを生じにくくすることができる。
本発明で好ましく用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
重縮合エステルには混合に用いた脂肪族ジカルボン酸より脂肪族ジカルボン酸残基が形成される。
脂肪族ジカルボン酸残基の場合は、平均炭素数が2以上10.0以下であることが好ましく、4〜8.0であることがより好ましく、4〜6.0であることが更に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の平均炭素数が6.0以下であれば化合物の加熱減量が低減でき、セルロースアシレートウェブ乾燥時のブリードアウトによる工程汚染が原因と考えられる面状故障の発生を防ぐことができる。また、脂肪族ジカルボン酸の平均炭素数が4以上であれば相溶性に優れ、重縮合エステルの析出が起き難く好ましい。
具体的には、コハク酸残基を含むことが好ましく、2種用いる場合は、コハク酸残基とアジピン酸残基を含むことが好ましい。
すなわち、重縮合エステルの形成における混合に、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよく、2種用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。1種用いる場合は、コハク酸を用いることが好ましい。ジオール残基の平均炭素数を所望の値に調整することができ、セルロースエステルとの相溶性の点で好ましい。
本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばジオールHO−R−OHより形成されるジオール残基は−O−R−O−である。
重縮合エステルを形成するジオールとしては芳香族ジオール及び脂肪族ジオールが挙げられ、少なくとも脂肪族ジオールを含むことが好ましい。
重縮合エステルには平均炭素数が2.0以上7.0以下の脂肪族ジオール残基を含むことが好ましい。好ましくは平均炭素数が2.0以上4.0以下の脂肪族ジオール残基であり、特に好ましくは平均炭素数が2.0以上3.0以下の脂肪族ジオール残基である。脂肪族ジオール残基の平均炭素数が7.0以下であれば、セルロースエステルとの相溶性が低くならず、ブリードアウトが生じ難くなり、また、化合物の加熱減量が増大し過ぎず、セルロースアシレートウェブ乾燥時の工程汚染が原因と考えられる面状故障が発生し難い。また、脂肪族ジオール残基の平均炭素数が2.0未満では合成が困難となる。
本発明に用いられる脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
重縮合エステルには混合に用いたジオールによりジオール残基が形成される。
ジオール残基はエチレングリコール残基、1,2−プロパンジオール残基、及び1,3−プロパンジオール残基の少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコール残基又は1,2−プロパンジオール残基であることがより好ましい。
脂肪族ジオール残基のうち、エチレングリコール残基が20mol%〜100mol%であることが好ましく、50mol%〜100mol%であることがより好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸類としては酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。封止に用いるモノアルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が好ましく、メタノールが最も好ましい。重縮合エステルの末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障が発生しない。
本発明の重縮合エステルの末端はより好ましくは封止がなくジオール残基のままか、酢酸又はプロピオン酸による封止が更に好ましい。
本発明にかかる重縮合エステルの両末端は封止、未封止を問わない。
縮合体の両末端が未封止の場合、重縮合エステルはポリエステルポリオールであることが好ましい。
本発明にかかる重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5以上7.0以下であり、縮合体の両末端は未封止である重縮合エステルを挙げることができる。
縮合体の両末端が封止されている場合、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましい。このとき、該重縮合エステルの両末端はモノカルボン酸残基となっている。本明細書中では、残基とは、重縮合エステルの部分構造で、重縮合エステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。好ましくは脂肪族モノカルボン酸残基であり、モノカルボン酸残基が炭素数22以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数3以下の脂肪族モノカルボン酸残基であることが更に好ましい。また、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸残基であることが好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
本発明にかかる重縮合エステルの態様の一つとして脂肪族ジオール残基の炭素数が2.5より大きく7.0以下であり、縮合体の両末端はモノカルボン酸残基である重縮合エステルを挙げることができる。
重縮合エステルの両末端のモノカルボン酸残基の炭素数が3以下であると、揮発性が低下し、重縮合エステルの加熱による減量が大きくならず、工程汚染の発生や面状故障の発生を低減することが可能である。
即ち封止に用いるモノカルボン酸類としては脂肪族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸が炭素数2〜22の脂肪族モノカルボン酸であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸であることが更に好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸であることが特に好ましい。
例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。
封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。
本発明の重縮合エステルの両末端は酢酸又はプロピオン酸による封止が好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基(アセチル残基と称する場合がある)となることが最も好ましい。
両末端を封止した場合は常温での状態が固体形状となりにくく、ハンドリングが良好となり、また湿度安定性、偏光板耐久性に優れたセルロースエステルフィルムを得ることができる。
PA-2:1,3−プロパンジオール/グルタル酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量1500)
PA-3:1,3−プロパンジオール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量900)
PA-4:1,3−プロパンジオール/エチレングリコール/アジピン酸(1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量1500)
PA-6:エチレングリコール/コハク酸/アジピン酸(2/1/1モル比)からなる縮合物の両末端のアセチルエステル化体(数平均分子量1000)
PA-7:1,4−シクロヘキサンジオール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量1800)
PA-9:1,3−プロパンジオール/グルタル酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のシクロヘキシルエステル化体(数平均分子量1500)
PA-10:エチレングリコール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のアセチルエステル化体(数平均分子量3000)
PA-11:1,3−プロパンジオール/エチレングリコール/アジピン酸(1/1/2モル比)からなる縮合物の両末端のイソノニルエステル化体(数平均分子量1500)
PA-13:2−メチル−1,3−プロパンジオール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のアセチルエステル化体(数平均分子量1700)
PA-15:1,4−ブタンジオール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端のブチルエステル化体(数平均分子量1100)
PA-16:ポリ(平均重合度5)プロピレンエーテルグリコール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2800)
PA-18:ポリ(平均重合度4)プロピレンエーテルグリコール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2200)
PA-19:ポリ(平均重合度5)プロピレンエーテルグリコール/コハク酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端ブチルエステル化体(数平均分子量1900)
PA-21:ポリ(平均重合度4)プロピレンエーテルグリコール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端アセチルエステル化体(数平均分子量1500)
PA-22:ポリ(平均重合度4)プロピレンエーテルグリコール/フタル酸(1/1モル比)からなる縮合物の両末端プロピオニルエステル化体(数平均分子量1900)
PA-23:エチレングリコール/アジピン酸(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量1000)
次に、芳香族高分子量可塑剤(PB)ではジオールとして芳香族環含有ジオールも使用できる。好ましい該芳香族環含有ジオールとしては、炭素数6〜20の芳香族ジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールであり、ビスフェノールA、1,2−ヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ベンゼン−1,4−ジメタノールが挙げられ、好ましくはビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシベンゼン、ベンゼン−1,4−ジメタノールである。
PB-1:コハク酸/フタル酸/エチレングリコール(1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量900)
PB-2:グルタル酸/イソフタル酸/1,3−プロパンジオール(1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量1300)
PB-3:アジピン酸/テレフタル酸/1,2−プロパンジオール(1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量1200)
PB-4:コハク酸/テレフタル酸/エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール(1/1/1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量3000)
PB-6:コハク酸/アジピン酸/テレフタル酸/エチレングリコール/1,2−プロパンジオール(1/1/1/2/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2800)
PB-7:コハク酸/アジピン酸/1,4−ナフタレンジカルボン酸/エチレングリコール/1,2−プロパンジオール(1/1/1/2/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2000)
PB-8:コハク酸/テレフタル酸/ポリ(平均重合度5)プロピレンエーテルグリコール/1,2−プロパンジオール(2/1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量2500)
PB-10:コハク酸/テレフタル酸/エチレングリコール(1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量2100)の両末端のアセチルエステル化体
PB-11:グルタル酸/イソフタル酸/1,3−プロパンジオール(1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量1500)の両末端のシクロヘキシルエステル化体
PB-12:アジピン酸/テレフタル酸/1,2−プロパンジオール(1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量2500)の両末端の2−エチルヘキシルエステル化体
PB-14:コハク酸/グルタル酸/アジピン酸/テレフタル酸/イソフタル酸/エチレングリコール/1,2−プロパンジオール(1/1/1/1/1/3/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量3000)の両末端のプロピルエステル化体
PB-15:コハク酸/アジピン酸/テレフタル酸/エチレングリコール/1,2−プロパンジオール(1/1/1/2/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量3000)の両末端の2−エチルヘキシルエステル化体
PB-16:コハク酸/アジピン酸/1,4−ナフタレンジカルボン酸/エチレングリコール/1,2−プロパンジオール(1/1/1/2/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量3000)の両末端の安息香酸エステル化体
PB-18:コハク酸/テレフタル酸/ポリ(平均重合度4)エチレンエーテルグリコール/1,2−プロパンジオール(1/3/2/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量2500)の両末端の2−エチルヘキシルエステル化体
PB-19:コハク酸/フタル酸/エチレングリコール(1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量2500)の両末端のアセチルエステル化体
PB-20:コハク酸/イソフタル酸/フタル酸/テレフタル酸/エチレングリコール/1,3−プロパンジオール(1/1/1/1/2/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量1300)の両末端のアセチルエステル化体
PB-22:コハク酸/テレフタル酸/エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール(1/1/1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量3000)の両末端のプロピオニルエステル化体
PB-24:コハク酸/テレフタル酸/ポリ(平均重合度3)エチレンエーテルグリコール/1,2−プロパンジオール(1/3/2/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量2500)の両末端のアセチルエステル化体
PB-25:コハク酸/ビスフェノールA(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2000)
PB-26:コハク酸/テレフタル酸/エチレングリコール/ビスフェノールA(2/1/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量2500)
PB-28:コハク酸/アジピン酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ビスフェノールA/ジエチレングリコール(1/1/2/2/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量2500)
PB-29:コハク酸/テレフタル酸/エチレングリコール/ビスフェノールA(1/2/1/2モル比)からなる縮合物(数平均分子量2500)の両末端の2−エチルヘキシルエステル化体
PB-30:コハク酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ビスフェノールA/プロパンジオール(1/2/2/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2300)の両末端の2−エチルヘキシルエステル化体
PB-31:コハク酸/ビスフェノールA(1/1モル比)からなる縮合物(数平均分子量2200)の両末端のアセチルエステル化体
PB-32:コハク酸/アジピン酸/フタル酸/テレフタル酸/エチレングリコール(5/5/1/9/20モル比)からなる縮合物(数平均分子量800)の両末端のアセチルエステル化体
PB-33:アジピン酸/フタル酸/テレフタル酸/エチレングリコール(10/1/9/20モル比)からなる縮合物(数平均分子量800)の両末端のアセチルエステル化体
PB-34:アジピン酸/フタル酸/テレフタル酸/エチレングリコール(5/2/3/10モル比)からなる縮合物(数平均分子量1000)の両末端のアセチルエステル化体
PB-35:コハク酸/アジピン酸/フタル酸/エチレングリコール(1/1/2/4モル比)からなる縮合物(数平均分子量1000)の両末端のアセチルエステル化体
本発明で使用される重縮合エステルに含まれるジカルボン酸残基、ジオール残基、モノカルボン酸残基の各残基の種類及び比率はH−NMRを用いて通常の方法で測定することができる。通常、重クロロホルムを溶媒として用いることができる。
重縮合エステルの数平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することができ、通常、ポリスチレンを標準試料として用いることができる。
重縮合エステルの水酸基価の測定は、日本工業規格 JIS K3342(廃止)に記載の無水酢酸法等を適用できる。重縮合体がポリエステルポリオールである場合は、水酸基価が50以上190以下であることが好ましく、50以上130以下であることが更に好ましい。
本発明に用いられる可塑剤としては、上記の重縮合エステル以外にセルロースアシレートの可塑剤として知られる、添加した場合に可塑性を付与する多くの化合物も有用に使用することができる。重縮合エステル以外の可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステル、糖エステル等の化合物が用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。
−糖残基−
前記糖エステル化合物とは、該化合物を構成する多糖中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基)の少なくとも1つと、少なくとも1種の置換基とがエステル結合されている化合物のことを言う。すなわち、ここで言う糖エステル化合物には広義の糖誘導体類も含まれ、例えばグルコン酸のような糖残基を構造として含む化合物も含まれる。すなわち、前記糖エステル化合物には、グルコースとカルボン酸のエステル体も、グルコン酸とアルコールのエステル体も含まれる。
前記糖エステル化合物を構成する多糖中の置換可能な基は、ヒドロキシル基であることが好ましい。
本発明のフィルムはレターデーション値を発現するために、レターデーション発現剤を含有してもよいが、レターデーション発現剤の含有量は前記セルロースアシレートに対して8質量%以下であることが好ましい。前記レターデーション発現剤としては、特に制限はないが、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。上記棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレート成分100質量部に対して8質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。前記レターデーション発現剤中に含まれる円盤状化合物が、前記セルロースアシレート100質量部に対して8質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、4質量部以下であることが特に好ましい。
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、縮合ベンゼン環、ビフェニル環が好ましい。特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が好ましく用いられる。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及び1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基及び1−ヘキシニル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、更に置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基及びエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基及びエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミド基が含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基及びn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及び2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基及びジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基及びモルホリノ基が含まれる。
レターデーション発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
R201は、各々独立に、オルト位、メタ位及びパラ位の少なくともいずれかに置換基を有する芳香族環又は複素環を表す。
X201は、各々独立に、単結合又は−NR202−を表す。ここで、R202は、各々独立に、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基又は複素環基を表す。
X201が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることが更に好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例えば、O、S)を有していてもよい。以下に、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基の例を示す。ここで、−C4H9 nは、n−C4H9を示す。
R202が表す芳香族環基及び複素環基は、R201が表す芳香族環及び複素環と同様であり、好ましい範囲も同様である。芳香族環基及び複素環基は更に置換基を有していてもよく、置換基の例にはR201の芳香族環及び複素環の置換基と同様である。
本発明ではレターデーション制御の手段の1つとして、レターデーション低減剤として、リン酸系であるエステル系の化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の化合物を広く採用することができる。
該公報一般式(1)の化合物は、スルホニルクロリド誘導体とアミン誘導体との縮合反応により得ることができる。
本発明においてはセルロースアシレート溶液に公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4、4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1、1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2、2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2、5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。更に、トリス(4−メトキシ−3、5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。劣化防止剤の添加量は、セルロース系樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加する。
本発明においてはセルロースアシレート溶液に、偏光板又は液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2、2−メチレンビス(4−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2、4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1、3、5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、セルロースアシレートフィルム全体中に質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
本発明のフィルムは、マット剤を含有することが、フィルムすべり性、及び安定製造の観点から好ましい。前記マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
本発明のフィルムは、下記一般式(1)で表される有機酸を含むことが好ましい。
一般式(1)
X−L−(R1)n
(式中、Xは酸解離定数が5.5以下の酸性基を表し、Lは単結合又は2価以上の連結基を表し、R1は炭素数6〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数6〜30の複素環基を表し、更に置換基を有していてもよい。nはLが単結合の場合は1であり、Lが2価以上の連結基の場合は(Lの価数−1)である。)
更に、酸性基である前記X部分が支持体の金属表面に付着し、特定の構造の疎水性基である前記R1部分が支持体の金属表面を酸素等の酸化剤からブロックすることにより、前記R1の範囲から外れる疎水性基を有する有機酸に比べて、金属の腐食を防止することができる。
以下、本発明のフィルムに用いることができる剥離促進剤について説明する。
本明細書中、酸解離定数としては、化学便覧、丸善株式会社刊に記載の値を採用する。
R1は更に好ましくは、炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基であり、最も好ましくは炭素数10〜24の直鎖のアルキル基、アルケニル基である。
ユニット:−O−、−CO−、−N(−R2)−(前記R2は炭素数1〜5のアルキル基)、−CH=CH−、−CH(OH)−、−CH2−、−SO2−、
また、前記Lは、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては特に制限はなく前記R1が有していてもよい置換基を挙げることができるが、その中でも−OH基が好ましい。
これらの中でも、前記Lはグリセリン由来の基を含む連結基であることがより好ましい。
前記Lとしては、具体的に以下の構造であることが好ましい。但し、以下においてp、q、rはそれぞれ1〜40の整数を表し、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜6であることが特に好ましい。また、qは2〜4であることがより特に好ましい。
−(CH2)p−CO−O−(CH2)q−O−;
−(CH2)p−CO−O−(CH2)q−(CH(OH))−(CH2)r−O−;
−(CH2)p−CO−O−(CH2)q−(CH(OCO−R3))−(CH2)r−O−;
−(CH2)p−CO−O−(CH2)q−(CH(OH))−(CH2)r−O−CO−;
−(CH2)p−CO−O−(CH2)q−(CH(OCO−R3))−(CH2)r−O−CO−。
なお、上記のLの具体例に含まれるR3は、前記一般式(1)における前記R1と同義である。すなわち、−(CH2)p−CO−O−(CH2)q−(CH(OCO−R3))−(CH2)r−O−という連結基におけるR3は便宜上Lの内部に記載しているだけであり、連結基LはR3を除いた部分を意味する。つまり、この場合Lは3価である。一般式(1)で表すと、X−L−(R1)2、[但しLは−(CH2)p−CO−O−(CH2)q−(CH(OCO−))−(CH2)r−O−を表す]と記載でき、すなわちこのときの連結基Lは3価の連結基となっている。
前記Lと前記Xはエステル結合又はアミド結合で結合していることが好ましく、エステル結合で結合していることがより好ましい。また、前記Xにはエステル結合やアミド結合が存在しない方が好ましい。
前記Lと前記R1はエステル結合、エーテル結合又はアミド結合で結合していることが好ましく、エステル結合又はアミド結合で結合していることがより好ましく、エステル結合で結合していることが特に好ましい。また、前記R1にはエステル結合やエーテル結合やアミド結合が存在しない方が好ましい。
《脂肪酸》
ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、ウンデカン酸。
《アルキル硫酸》
ミリスチル硫酸、セチル硫酸、オレイル硫酸。
《アルキルベンゼンスルフォン酸》
ドデシルベンゼンスルフォン酸、ペンタデシルベンゼンスルフォン酸。
《アルキルナフタレンスルフォン酸》
セスキブチルナフタレンスルフォン酸、ジイソブチルナフタレンスルフォン酸。
《ジアルキルスルフォコハク酸》
ジオクチルスルフォコハク酸、ジヘキシルスルフォコハク酸、ジシクロヘキシルコハク酸、ジアミルスルフォコハク酸、ジトリデシルスルフォコハク酸。
前記一般式(1)で表される有機酸は、多価有機酸の一部誘導体であることが好ましい。本明細書中、多価有機酸の一部誘導体とは、多価アルコール1分子に脂肪酸1分子と多価有機酸がエステル結合した構造を有しており、多価カルボン酸由来の無置換の酸性基を少なくとも1つ有する化合物のことを言う。なお、本明細書中、脂肪酸とは、脂肪族モノカルボン酸を意味する。すなわち、本明細書中における脂肪酸は、いわゆる高級脂肪族に限定されるものではなく、酢酸やプロピオン酸などの炭素数12以下の低級脂肪酸も含まれる。
前記多価有機酸の一部誘導体は、多価カルボン酸の一部誘導体であることが好ましい。すなわち、前記一般式(1)で表される有機酸は、多価アルコール1分子に脂肪酸1分子と多価カルボン酸1分子がエステル結合した構造を有しており、多価カルボン酸由来の無置換のカルボキシル基を少なくとも1つ有することが好ましい。前記多価カルボン酸の一部誘導体に用いられる多価カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、クエン酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、リンゴ酸、アジピン酸が好ましい。
その中でも、有機酸モノグリセリド又は有機酸ジグリセリドがより好ましく、有機酸モノグリセリドがより特に好ましい。本明細書中における有機酸モノグリセリドとは、グリセリンの3個の水酸基のうち1個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基のうち1個又は2個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物のことを言う。本明細書中における有機酸ジグリセリドとは、グリセリンの3個の水酸基のうち2個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基1個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物のことを言う。
前記有機酸モノグリセリドの中でも、グリセリンの3個の水酸基のうち1個が脂肪酸とエステル結合を作っており、残りの水酸基のうち1個が無置換の水酸基であり、残りの水酸基1個が多価有機酸とエステル結合を作っており、該多価有機酸由来の酸性基を有する構造の化合物であることがより特に好ましい。前記有機酸モノグリセリドの脂肪酸とエステル結合している水酸基は非対称の位置(いわゆるαモノグリセリドの位置)であることが好ましく、前記有機酸モノグリセリドの多価有機酸とエステル結合している水酸基は同様に非対称の位置(いわゆるαモノグリセリドの位置)であることが好ましい。すなわち、前記有機酸モノグリセリドの中でも、無置換の水酸基を有し、かつ脂肪酸とエステル結合している水酸基の直結する炭素原子と、多価有機酸とエステル結合している水酸基の直結する炭素原子とが隣り合わない構造の化合物であることが好ましい。
前記多価カルボン酸のモノグリセリドに用いられる前記脂肪酸は限定されないが、炭素数8〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸が好ましく、具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等があげられる。
反応は、通常、無溶媒条件下で行われ、例えば無水コハク酸と炭素数18の脂肪酸モノグリセリドの反応では、温度120℃前後において90分程度で反応が完了する。かくして得られた有機酸モノグリセリドは、通常、有機酸、未反応モノグリセリド、ジグリセリド、及びその他オリゴマーを含む混合物となっている。本発明においては、このような混合物のまま使用してもよい。
前記カルボキシル基含有有機酸モノグリセリドの純度を高めたい場合は、上記のような混合物中のカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドを蒸留等により精製すればよく、また、純度の高いカルボキシル基含有有機酸モノグリセリドとしては、蒸留モノグリセリドとして市販されているものを使用できる。前記カルボキシル基含有有機酸モノグリセリドの市販品としては、例えば、理研ビタミン株式会社製ポエムK−37V(グリセリンクエン酸オレイン酸エステル)、花王社製ステップSS(グリセリンステアリン酸/パルミチン酸コハク酸エステル)等があげられる。
本発明のフィルムに含まれる前記一般式(1)で表される有機酸の添加量は、前記セルロースアシレートに対して0.1質量%〜20質量%の割合であり、0.5質量%〜10質量%であることが特に好ましく、0.6質量%〜5質量%であることがより特に好ましく、1.5質量%〜5質量%であることがより特に好ましい。
添加量が0.1質量%以上であれば偏光子耐久性改良効果及び剥離性改良効果が十分となる。また、20質量%以下の添加量であれば、高温高湿経時において有機酸がブリードアウトし難く、偏光板の直交透過率が上昇しにくく、好ましい。
前記一般式(1)で表される有機酸の分子量は、200〜1000であることが好ましい。
本発明のフィルムは、以下に詳述する本発明のフィルムの製造方法(以下、本発明の製造方法とも言う)により、セルロースアシレートとしてセルロースアセテートを用いた場合と、セルロースブチレート又はセルロースプロピオネートを用いた場合それぞれによって異なる製膜条件を採用することで、効率良く製造することができる。
セルロースアシレートとしてセルロースアセテートを用いた場合、本発明の製造方法は、総アシル置換度2.10〜2.95のセルロースアセテートを含むドープを金属支持体上に溶液流延してフィルムを得る工程と、前記フィルムを金属支持体から下記式(i)を満たす残留揮発分H1で剥ぎ取る工程と、剥ぎ取られたフィルムを、下記式(ii)を満たす残留揮発分H2の状態でフィルム搬送方向に1〜100%で延伸する工程と、剥ぎ取られたフィルムを、下記式(iii)を満たす残留揮発分H3の状態でフィルム搬送方向に直交する方向に3〜150%延伸する工程を含み、前記延伸工程が下記式(iv)を満たすことを特徴とする。
式(i) 20%≦H1≦60%
式(ii) 10%≦H2≦60%
式(iii) 5%≦H3≦45%
式(iv) TD延伸倍率≧3%
(式中、TD延伸倍率はフィルム搬送方向に直交する方向への延伸倍率(単位:%)を表す。)
セルロースアシレートとしてセルロースブチレート又はセルロースプロピオネートを用いた場合、総アシル置換度2.10〜2.95のセルロースブチレート又はセルロースプロピオネートを含むドープを金属支持体上に溶液流延してフィルムを得る工程と、前記フィルムを金属支持体から下記式(i)を満たす残留揮発分H1で剥ぎ取る工程と、剥ぎ取られたフィルムを、下記式(ii)を満たす残留揮発分H2の状態でフィルム搬送方向に1〜100%で延伸する工程と、剥ぎ取られたフィルムを、下記式(iii)を満たす残留揮発分H3の状態でフィルム搬送方向に直交する方向に3〜150%延伸する工程を含み、前記延伸工程が下記式(iv)を満たすことを特徴とする。
式(i) 20%≦H1≦60%
式(ii) 10%≦H2≦60%
式(iii) 5%≦H3≦45%
式(iv) TD延伸倍率≧3%
以下、本発明の製造方法を説明する。
本発明の製造方法では、セルロースアシレートをフィルム状に形成する工程において、溶液流延製膜法を用いても、溶融製膜法を用いてもよい。その中でも、溶液流延製膜法を用いることが好ましく、セルロースアシレート及び溶媒を含むドープを支持体上に流涎する方法を用いることがより好ましい。また、本発明の製造方法では、ドープを支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてセルロースアシレートフィルムを形成することが特に好ましい。
本発明の製造方法において、ドープ中に含まれていることが好ましい各成分について説明する。但し、レターデーション発現剤を前記セルロースブチレート又はセルロースプロピオネートに対して3質量%以上含まないことが好ましい。その他の添加剤については、前記本発明のフィルムの説明において例示した範囲で好ましく用いることができ、ドープへの添加時期についても特に制限はない。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、
ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることが更に好ましく、40〜60モル%であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素の例として、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化メチル、四塩化炭素、トリクロル酢酸、臭化メチル、ヨウ化メチル、トリ(テトラ)クロロエチレン等が挙げられ、少なくともジクロロメタンを含むことが好ましい。
更に、貧溶媒の沸点は、120℃以下であることが好ましく、40〜100℃であることがより好ましい。沸点を120℃以下とすることにより、溶媒の乾燥速度をより早くすることができ好ましい。
このような貧溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及び水が好ましい例として挙げられ、メタノールがより好ましい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
本発明では、調製したドープから、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレテートフィルムを製造することが好ましい。
更に特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平7−032391号、特開平3−193316号、特開平5−086212号、特開昭62−037113号、特開平2−276607号、特開昭55−014201号、特開平2−111511号、及び特開平2−208650号の各公報に記載のセルロースアシレート製膜技術を本発明では応用できる。
本発明のフィルムの形成においては共流延法、逐次流延法、塗布法などの積層流延法を用いることが好ましく、特に同時共流延法を用いることが、安定製造及び生産コスト低減の観点から特に好ましい。
共流延法及び逐次流延法により製造する場合には、先ず、各層用のセルロースアセテート溶液(ドープ)を調製する。共流延法(重層同時流延)は、流延用支持体(バンド又はドラム)の上に、各層(3層あるいはそれ以上でも良い)各々の流延用ドープを別のスリットなどから同時に押出す流延用ギーサからドープを押出して、各層同時に流延し、適当な時期に支持体から剥ぎ取って、乾燥しフィルムを成形する流延法である。
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブの残留揮発分(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に金属支持体上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
ここで、製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離することで製膜速度を上げることができる)としてゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。例えば、ドープ中にセルロースアシレートに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体上でゲル化させ剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め製膜速度を上げることができる。
金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により5〜150質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
式(i) 20%≦H1≦60%
前記H1は22〜55%であることが好ましく、25〜45%であることが特に好ましい。
残留溶媒量は下記の式で表すことができる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、Nは質量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
式(v) W×30≧L≧W×2
(式中、Lは前記剥ぎ取り工程から前記テンターまでの距離(単位:mm)を表し、Wは剥ぎ取られたフィルムの幅(単位:mm)を表す。)
本発明の製造方法は、W×28≧L≧W×2.5を満たすことがより好ましく、W×25≧L≧W×3を満たすことが特に好ましい。
本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を延伸する工程を含む。(1)セルロースアシレートとしてセルロースアセテートを用いた場合と(2)セルロースアシレートとしてセルロースブチレート又はセルロースプロピオネートを用いた場合で好ましい範囲が異なるため、以下、順に説明する。
式(ii) 10%≦H2≦60%
式(iii) 5%≦H3≦45%
式(iv) TD延伸倍率≧3%
(式中、TD延伸倍率はフィルム搬送方向に直交する方向への延伸倍率(単位:%)を表す。)
なお、ここでいう「延伸倍率(%)」とは、以下の式により求められるものを意味する。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
ウェブ中の残留揮発分が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。
セルロースアシレートとしてセルロースアセテートを用いた場合、フィルム搬送方向に直交する方向への延伸における延伸倍率は、1〜60%であることが好ましく、1〜10%であることがより好ましい。
ウェブ中の残留揮発分が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。
延伸温度≦Te+30℃ (I)
Te=T[tanδ]−ΔTm (II)
ΔTm=Tm(0)−Tm(x) (III)
(式(II)中、T[tanδ]は残留溶媒量が0%のときのセルロースアシレートの動的粘弾性tanδを測定した際にtanδがピークを示す温度を表し、Tm(0)は残留溶媒量が0%のときのセルロースアシレートの結晶融解温度を表し、Tm(x)は該セルロースアシレートに対する残留溶媒量がx%のときのセルロースアシレートの結晶融解温度を表す。)、であることが好ましい。以下、このような温度範囲での延伸を低温延伸とも言う。フィルム状に形成されたフィルムを低温延伸することにより、本発明のフィルムの膜厚を厚くせずにRth発現性を高めることができ、すなわちRth(590)/dをより高めることができ、好ましい。いかなる理論に拘泥するものでもないが、前記低温延伸では延伸中のポリマーや添加剤の配向が高温延伸時よりもおきにくいため、Rthを低下させずに、Reを発現することができる。前記延伸温度はTe−30〜Te℃であることがより好ましい。フィルム搬送方向に延伸する場合も、フィルム幅方向に延伸する場合も好ましい範囲は同様である。
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に前述のような熱処理工程を設けてもよい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことが更に好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことが更に好ましい。
得られたフィルムを巻き取る巻き取り機には、一般的に使用されている巻き取り機が使用でき、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロ−ル法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。以上の様にして得られたセルロースアシレートフィルムロールは、フィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±2度であることが好ましく、更に±1度の範囲であることが好ましい。又は、巻き取り方向に対して直角方向(フィルムの幅方向)に対して、±2度であることが好ましく、更に±1度の範囲にあることが好ましい。特にフィルムの遅相軸方向が、巻き取り方向(フィルムの長手方向)に対して、±0.1度以内であることが好ましい。あるいはフィルムの幅手方向に対して±0.1度以内であることが好ましい。
以上の本発明のフィルムの製造方法によって得られたセルロースアシレートフィルムは、最終仕上がりフィルムの残留揮発分で1質量%以下、更に0.2質量%以下であることが、寸度安定性が良好なフィルムを得る上で好ましい。
本発明の偏光板は、偏光子と、本発明のセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする。
本発明のフィルムは、フィルム光学特性が良好であり、フィルム弾性率も良好であるため、偏光板用保護フィルムに好ましく用いられる。また、本発明のフィルムは面状が良好であり、フィルム面状を偏光板クロスニコル下にて観察した際にむらが少ないため、偏光板用保護フィルムに好適である。偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に保護フィルムを貼り合わせ積層することによって形成される。偏光子は従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如き親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。セルロースアシレートフィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、水溶性ポリマーの水溶液からなる接着剤により行うことができる。この水溶性ポリマー接着剤は完全鹸化型のポリビニルアルコ−ル水溶液が好ましく用いられる。
また、本発明のフィルムを用いた偏光板は遅相軸分布にバラツキが少なく、良好な表示性能の液晶表示装置を提供することができる。更に、本発明のフィルムが広幅の好ましい態様である場合、本発明のフィルムを用いて偏光子と貼り合わせて偏光板を製造するときに、フィルム幅方向においていわゆる偏光板の2丁取り、3丁取りを行なうことが可能となり、偏光板の製造コストを低減することができる。また、フィルム幅方向のσ600、σ−600も良好である態様である場合、更に2丁取り、3丁取りを行なった偏光板の性能も改善することができる。
本発明の液晶表示装置は、セルロースアシレートフィルム又は本発明の偏光板を含むことを特徴とする。
本発明のフィルムは、偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルム/液晶セル/本発明のフィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成、若しくは偏光板用保護フィルム/偏光子/本発明のフィルム/液晶セル/本発明の偏光板用保護フィルム/偏光子/偏光板用保護フィルムの構成で好ましく用いることができる。特に、TN型、VA型、OCB型などの液晶セルに貼り合わせて用いることによって、視野角に優れ、着色が少ない視認性に優れ、かつ、面内均一性にも優れた液晶表示装置を提供することができる。また、本発明のフィルムを用いた偏光板は高温高湿条件下での劣化が少なく、長期間安定した性能を維持することができ、すなわち本発明の液晶表示装置は耐久性も良好である。
<1−1> セルロースアシレート溶液
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃で約10分間加熱した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
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セルロースアシレート溶液
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表4に記載のセルロースアシレート 100.0質量部
ジクロロメタン 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
次に上記方法で作成したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
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マット剤分散液
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平均粒子径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
ジクロロメタン 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
セルロースアシレート溶液 10.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
上記方法で作成したセルロースアシレート溶液をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、下記表4に記載の各添加剤を添加して、添加剤溶液を調製した。また、各添加剤について以下説明する。
化合物Uは下記の構造のレターデーション発現剤を表す。
なお、ドープの原料として用いたセルロースアシレート及び各種添加剤は、あらかじめ(株)奈良機械製作所製のサイロを用いて120℃にて2時間乾燥を行ったものを用いた。
続いてストックタンク内のドープを1次増圧用のギアポンプで高精度ギアポンプの1次側圧力が0.8MPaになるようにインバーターモーターによりフィードバック制御を行い送液した。高精度ギアポンプは容積効率99.3%、吐出量の変動率0.4%以下の性能であった。また、吐出圧力は1.4MPaであった。
ダイ、フィードブロック、配管は、すべて作業工程中は36℃に保温した。ダイはコートハンガータイプのダイであり、厚み調整ボルトが20mmピッチに設けられており、ヒートボルトによる自動厚み調整機構を具備しているものを使用した。このヒートボルトは予め設定したプログラムにより高精度ギアポンプの送液量に応じたプロファイルを設定することもでき、製膜工程内に設置した赤外線厚み計のプロファイルに基づいた調整プログラムによってフィードバック制御も可能な性能を有するものである。流延エッジ部20mmを除いたフィルムで50mm離れた任意の2点の厚み差は1μm以内であり、幅方向厚みの最小値で最も大きな差が2μm/m以下となるように調整した。また、ダイの1次側には減圧するためのチャンバーを設置した。この減圧チャンバーの減圧度は流延ビードの前後で1Pa〜5000Paの圧力差を印加できるようになっていて、流延スピードに応じて調整が可能なものである。その際に、ビードの長さが2mm〜50mmになるような圧力差に設定した。
ダイの材質は、オーステナイト相とフェライト相の混合組成を持つ2相系ステンレス鋼であり、熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下の素材であり、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有する素材を使用した。流延ダイ及びフィードブロックの接液面の仕上げ精度は、表面粗さで1μm以下、真直度はいずれの方向にも1μm/m以下であり、スリットのクリアランスは自動調整により0.5mm〜3.5mmまで調整可能であった。本フィルムの製造では、1.5mmで実施した。ダイリップ先端の接液部の角部分について、Rはスリット全巾に亘り50μm以下になるように加工した。ダイ内部での剪断速度は1(sec−1)〜5000(sec−1)の範囲であった。
支持体として長さが100mのステンレス製のエンドレスバンドを利用した。バンドの厚みは1.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下に研磨し、材質はSUS316製であり、十分な耐腐食性と強度を有するものとした。バンドの全体の厚みムラは0.5%以下であった。バンドは2個のドラムにより駆動するタイプを用い、その際のバンドのテンションは1.5×104kg/mに調整し、バンドとドラムの相対速度差が0.01m/分以下となるものであった。また、バンド駆動の速度変動は0.5%以下であった。また1回転の巾方向の蛇行は1.5mm以下に制限するようにバンドに両端位置を検出して制御した。また、流延ダイ直下における支持体表面のドラム回転に伴う上下方向の位置変動は200μm以下にした。支持体は、風圧振動抑制手段を有したケーシング内に設置されている。この支持体上にダイからドープを流延した。流延直前の支持体中央部の表面温度は15℃であった。両端の温度差は6℃以下であった。金属支持体の表面欠陥はあってはならないものであり、30μm以上のピンホールは皆無であり、10μm〜30μmのピンホールは1個/m2以下、10μm以下のピンホールは2個/m2以下である支持体を使用した。
前記流延ダイ及び支持体などが設けられている流延室の温度は、35℃に保った。バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m2・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部の上流側を130℃とし、下流側を135℃とした。また、バンド下部は、65℃とした。それぞれのガスの飽和温度は、いずれも−8℃付近であった。支持体上での乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。また、流延室内の溶媒を凝縮回収するために、凝縮器(コンデンサ)を設け、その出口温度は、−10℃に設定した。
剥ぎ取られたフィルムは、クリップを有したテンターで両端を固定しながらテンターの乾燥ゾーン内を搬送し、乾燥風により乾燥した。クリップには、20℃の伝熱媒体を供給して冷却した。テンターの駆動はチェーンで行い、そのスプロケットの速度変動は0.5%以下であった。また、テンター内を3ゾーンに分け、それぞれのゾーンの乾燥風温度を上流側から90℃、100℃、110℃とした。乾燥風のガス組成は−10℃の飽和ガス濃度とした。テンター内での平均乾燥速度は120質量%(乾量基準溶剤)/分であった。テンターの出口ではフィルム内の残留溶剤の量は10質量%以下となるように調整し、本フィルムの製造では7質量%となるように乾燥ゾーンの条件を調整した。テンター内では搬送しつつ幅方向に延伸も行った。なお、テンターに搬送された際の幅を100%としたときの拡幅量を103%(延伸倍率3%)とした。剥取ローラーからテンター入口に至る延伸率(テンター駆動ドロー)は、102%とした。テンター内の延伸率はテンター噛み込み部から10mm以上離れた部分における実質延伸率の差異が10%以下であり、かつ20mm離れた任意の2点の延伸率差異は、5%以下であった。
そして、テンター出口から30秒以内に両端の耳切りを行った。NT型カッターにより両側50mmの耳をカットした。テンター部の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するため空気を窒素ガスで置換した。後述するローラー搬送ゾーンで高温乾燥させる前に、100℃の乾燥風が供給されている予備乾燥ゾーンでフィルムを予備加熱した。
前述した方法で得られた耳切り後のポリマーフィルムを、ローラー搬送ゾーンで高温乾燥した。ローラー搬送ゾーンを4区画に分割して、上流側から120℃,130℃,130℃,130℃の乾燥風を給気した。このとき、フィルムのローラー搬送テンションは100N/巾として、最終的に残留溶剤量が0.3質量%になるまでの約10分間、乾燥した。該ローラーのラップ角度は、90度及び180度を用いた。該ローラーの材質はアルミ製若しくは炭素鋼製であり、表面にはハードクロム鍍金を施した。ローラーの表面形状はフラットなものとブラストによりマット化加工したものとを用いた。ローラーの回転による振れは全て50μm以下であった。また、テンション100N/巾でのローラー撓みは0.5mm以下となるように選定した。
乾燥されたフィルムを第1調湿室に搬送した。ローラー搬送ゾーンと第1調湿室の間の渡り部には、110℃の乾燥風を給気した。第1調湿室には、温度50℃,露点が20℃の空気を給気した。更に、フィルムのカールの発生を抑制する第2調湿室にフィルムを搬送した。第2調湿室では、フィルムに直接90℃、湿度70%の空気をあてた。
乾燥後のポリマーフィルムは、30℃以下に冷却して両端耳切りを行った。耳切りはフィルム端部をスリットする装置をフィルムの左右両端部に、2基ずつ設置して(片側当たりスリット装置数は2基)、フィルム端部をスリットした。ここで、スリット装置は、円盤状の回転上刃と、ロール状の回転下刃とから構成されており、回転上刃の材質は超硬鋼材であり、回転上刃の直径が200mm、及び切断箇所の刃の厚みが0.5mmであった。ロール状の回転下刃の材質は超硬鋼材であり、回転下刃のロール径が100mmであった。
ここで、フィルム断面の表面粗さの測定は、ZYGO社製の表面粗さ測定器(NewView5010)を用い、対物レンズ50倍、及びイメージズーム1.3倍の装置条件で測定した。またこの場合、測定条件は、Mesure Cntrlキーで適宜設定し、測定したデータは、Analyze Cntrlキーを適宜設定して、データ処理を行なった。
更にフィルムの両端にナーリングを行った。ナーリングは片側からエンボス加工を行なうことで付与し、ナーリングする幅は10mmであり、最大高さは平均厚みよりも平均12μm高くなるように押し圧を設定した。
その他のフィルム試料についても、表4に示した材料を用い、膜厚を調整して表4に記載したRe及びRthになるように、実施例1と同様に作製した。すなわち、フィルムの幅方向への延伸における拡幅量は103%とした。
(フィルム光学特性)
面内のレターデーションReを前述の方法により自動複屈折計KOBRA−WR(王子計測器(株)製)を用いて波長590nmにおいて3次元複屈折測定を行って求め、膜厚方向のレターデーションRthは傾斜角を変えてReを測定することで求めた。
更に、得られたRth(単位:nm)の値を各フィルムの膜厚d(単位:μm)で割り、フィルム膜厚当たりのRth、Rth/dを求めた。
試料150mm×10mm(TD×MD)を、25℃、相対湿度65%、2時間調湿し、東洋ボールドウィン製万能引張試験機STM T50BPを用い、23℃で相対湿度60%の雰囲気中、初期試料長50mm、10%/分でのTD方向への延伸処理により応力歪み曲線を測定してMD方向のフィルム弾性率E’(TD)(単位:MPa)を求めた。
更に、幅手100mm毎に、試料19個においてE’(TD)を測定した。それらの平均値を求め、フィルム幅方向における弾性率E’(TD)の標準偏差σ(単位:GPa)を、以下の方法から求めた。
得られた19個のデータに対して、
これらの測定結果を下記表4に記載した。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
鹸化処理した実施例1のセルロースアシレートフィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)に同様の鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作成した実施例1のフィルムを貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に鹸化処理後のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と作成した実施例1のフィルムの遅相軸とは平行になるように配置した。また、偏光子の透過軸と市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸とは、直交するように配置した。
このようにして実施例1のフィルムを保護フィルムとして有する偏光板を作製した。実施例1のフィルムは30μmであったが、ハンドリング性や加工性に支障なく、良好な偏光板を得ることができた。
Claims (9)
- 可塑剤を少なくとも1種含有するセルロースエステルフィルムであって、下記式(1)〜(5)を満たすセルロースエステルフィルム。
|Re|≦5nm (1)
50nm<Rth<300nm (2)
25μm≦d≦65μm (3)
1×10−3≦Rth/d≦4×10−3(4)
3.8GPa<E’<5.0GPa(5)
なお、上記各式において、Reは面内方向のレターデーション値、Rthは厚み方向のレターデーション値、dはフィルム厚み、E’はフィルムの弾性率である。 - 前記可塑剤が芳香族環を含有する重縮合エステルである、請求項1に記載のセルロースエステルフィルム。
- 前記重縮合エステルが下記(I)及び(II)を満たす、請求項2に記載のセルロースエステルフィルム。
(I)芳香族ジカルボン酸残基と平均炭素数4.0〜6.0の脂肪族ジカルボン酸残基とを含み、下式に表される芳香族ジカルボン酸残基比率が40mol%〜95mol%であるジカルボン酸残基を含む
芳香族ジカルボン酸残基比率(mol%)=〔芳香族ジカルボン酸残基(mol)/(芳香族ジカルボン酸残基(mol)+脂肪族ジカルボン酸残基(mol))〕×100
(II)平均炭素数2.0〜3.0の脂肪族ジオール残基を含む - 前記重縮合エステルの数平均分子量が700以上2500以下である、請求項2又は3に記載のセルロースエステルフィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムが、TD方向に3%以上延伸されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
- 前記セルロースエステルフィルムがセルロースアシレートから構成されており、該セルロースアシレートのアシル基置換度が2.10〜2.95である請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムを有する偏光板。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム、又は請求項7に記載の偏光板を有する液晶表示装置。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法であって、セルロースエステルフィルムをTD方向に3%以上延伸することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
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