JP2012167155A - セルロース誘導体、樹脂組成物、成形体及びその製造方法並びに電気電子機器用筐体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】A)炭化水素基:−R1(R1はメチル基を表す。)
B)炭化水素基:−R2(R2は炭素数2〜8の炭化水素基を表す。)
C)アシル基:−CO−R3とアルキレンオキシ基:−R4−O−とを含む基(R3は炭化水素基を表す。R4は炭素数2〜4の炭化水素基を表す。)、及び
D)アシル基:−CO−R5(R5は炭化水素基を表す。)を有するセルロース誘導体。
【選択図】なし
Description
しかし、剛性、及び靭性についてより高い性能が求められており、さらなる改良が望まれている。
本発明の目的は、良好な成形性、靭性、剛性を有し、折り曲げ耐性に優れたセルロース誘導体及び樹脂組成物を提供することである。
すなわち、上記課題は以下の手段により達成することができる。
A)炭化水素基:−R1(R1はメチル基を表す。)
B)炭化水素基:−R2(R2は炭素数2〜8の炭化水素基を表す。)
C)アシル基:−CO−R3とアルキレンオキシ基:−R4−O−とを含む基(R3は炭化水素基を表す。R4は炭素数2〜4の炭化水素基を表す。)、及び
D)アシル基:−CO−R5(R5は炭化水素基を表す。)を有するセルロース誘導体。
〔2〕
前記B)におけるR2がエチル基又はn−プロピル基である〔1〕記載のセルロース誘導体。
〔3〕
前記C)におけるR4がエチレン基又はn−プロピレン基である〔1〕又は〔2〕に記載のセルロース誘導体。
〔4〕
前記R3及びR5が表す炭化水素基が、脂肪族炭化水素基である、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載のセルロース誘導体。
〔5〕
前記R3及びR5が、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基である、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載のセルロース誘導体。
〔6〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のセルロース誘導体の製造方法であって、
炭化水素基:−R1、炭化水素基:−R2、及びヒドロキシアルキル基:−R4−OH(R1はメチル基を表す。R2は炭素数2〜8の炭化水素基を表す。R4は炭素数2〜4の炭化水素基を表す。)を有するセルロースエーテルをエステル化する工程を含む、セルロース誘導体の製造方法。
〔7〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のセルロース誘導体を含有する樹脂組成物。
〔8〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又は〔7〕に記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
〔9〕
〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又は〔7〕に記載の樹脂組成物を加熱し、成形する工程を備えた、成形体の製造方法。
〔10〕
〔8〕に記載の成形体から構成される電気電子機器筐体。
1.セルロース誘導体
本発明のセルロース誘導体は、
A)炭化水素基:−R1(R1はメチル基を表す。)
B)炭化水素基:−R2(R2は炭素数2〜8の炭化水素基を表す。)
C)アシル基:−CO−R3とアルキレンオキシ基:−R4−O−とを含む基(R3は炭化水素基を表す。R4は炭素数2〜4の炭化水素基を表す。)、及び
D)アシル基:−CO−R5(R5は炭化水素基を表す。)を有する。
すなわち、本発明におけるセルロース誘導体は、セルロース{(C6H10O5)n}に含まれる水酸基の水素原子の少なくとも一部が、前記A)炭化水素基:−R1、B)炭化水素基:−R2、C)アシル基(−CO−R3)とアルキレンオキシ基(−R4−O−)とを含む基、及び前記D)アシル基(−CO−R5)により置換されている。
より詳細には、本発明におけるセルロース誘導体は、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する。
また、このセルロース誘導体は、成形体としても優れた剛性及び靭性を発現することができ、特に熱成形材料として有用である。更には、セルロースは完全な植物由来成分であるため、カーボンニュートラルであり、環境に対する負荷を大幅に低減することができる。
前記A)炭化水素基:−R1(R1はメチル基を表す。)で置換された基を少なくとも1つ、
前記B)炭化水素基:−R2(R2は炭素数2〜8の炭化水素基を表す。)で置換された基を少なくとも1つ、
前記C)アシル基:−CO−R3とアルキレンオキシ基:−R4−O−とを含む基(R3は炭化水素基を表す。R4は炭素数2〜4の炭化水素基を表す。)とを含む基で置換された基を少なくとも1つ、及び
前記D)アシル基:−CO−R5(R5は炭化水素基を表す。)で置換された基を少なくとも1つ含む。
本発明のセルロース誘導体は、前記A)〜D)として異なる2種以上の基を有していてもよい。
より具体的な態様としては、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)RA、RB、及びRCの一部が、A)炭化水素基(メチル基)で置換されている繰り返し単位と、RA、RB、及びRCの一部が、B)炭化水素基(R2)で置換されている繰り返し単位と、RA、RB、及びRCの一部が、C)アシル基(−CO−R3)とアルキレンオキシ基(−R4−O−)とを含む基で置換されている繰り返し単位と、RA、RB、及びRCの一部が、D)アシル基(−CO−R5)で置換されている繰り返し単位と、から構成されるセルロース誘導体。
(2)置換位置や置換基の種類が異なる繰り返し単位が、ランダムに結合しているセルロース誘導体。
また、セルロース誘導体の一部には、無置換の繰り返し単位(すなわち、前記一般式(1)において、RA、RB、及びRCすべてが水素原子である繰り返し単位)を含んでいてもよい。
また、セルロース誘導体は、A)炭化水素基、B)炭化水素基、C)アシル基及びD)アシル基以外のその他の置換基を有していても良い。
B)炭化水素基(R2)は、炭素数2〜8であれば脂肪族基及び芳香族基のいずれでもよい。
脂肪族基である場合は、直鎖、分岐及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
芳香族基である場合は、単環、及び縮環のいずれでもよい。R2が芳香族基である場合の好ましい炭素数は6〜8であり、より好ましくは6である。芳香族基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
B)炭化水素基(R2)は、得られる成形材料(以下「樹脂組成物」と称する場合がある。)の耐衝撃性が優れることから、脂肪族基であることが好ましく、メルトフローレート等の成形加工性が優れることから、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは炭素数2〜4のアルキル基(低級アルキル基)である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、i−ヘプチル基、ベンジル基等が挙げられ、エチル基又はn−プロピル基が特に好ましい。
R3が脂肪族基である場合は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
R3が芳香族基である場合は、単環、及び縮環のいずれでもよい。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
R3は、好ましくはアルキル基又はアリール基である。R3は、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、より更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数1又は2のアルキル基である。
また、R3は、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基であることも好ましく、炭素数3〜10の分岐構造を有するアルキル基であることがより好ましく、炭素数3〜8の分岐構造を有するアルキル基であることが更に好ましい。
R3としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、及びi−プヘプチル基等が挙げられる。好ましくは、R3はメチル基、エチル基、n−プロピル基、又は2−エチルヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、又はn−プロピル基である。
アルキレンオキシ基(−R4−O−)としては、具体的には下記構造が挙げられる。
本発明のセルロース誘導体において、アルキレンオキシ基を1つだけ含む前記C)の基(上記式一般式(3)においてnが1である基)と、アルキレンオキシ基を2以上含む前記C)の基(上記式一般式(3)においてnが2以上である基)とを含んでいてもよい。
なお、「カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さない」とは、本発明におけるセルロース誘導体が全くカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を有さない場合のみならず、本発明におけるセルロース誘導体が水に不溶な範囲で微量のカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を有する場合を包含するものとする。例えば、原料であるセルロースにカルボキシル基が含まれる場合があり、これを用いて前記A)〜D)の置換基を導入したセルロース誘導体はカルボキシル基が含まれる場合があるが、これは「カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さないセルロース誘導体」に含まれるものとする。
この場合、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩の好ましい含有量としては、セルロース誘導体に対して1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
B)炭化水素基(R2)の置換度DSb(繰り返し単位中、β−グルコース環の2位、3位及び6位の水酸基に対するB)炭化水素基(R2)の数)は、0.5<DSbであることが好ましく、0.5<DSb<2.5がより好ましい。
C)アシル基(−CO−R3)とアルキレンオキシ基(−R4−O−)とを含む基の置換度DSc(繰り返し単位中、β−グルコース環のセルロース構造の2位、3位及び6位の水酸基に対するB)アシル基とアルキレンオキシ基を含む基の数)は、0<DScであることが好ましい。0<DScであることにより、溶融開始温度を低くできるので、熱成形をより容易に行うことができる。
D)アシル基(−CO−R5)の置換度DSd(繰り返し単位中、β−グルコース環のセルロース構造の2位、3位及び6位の水酸基に対するC)アシル基の数)は、0.1<DSdであることが好ましく、0.1<DSd<2.0であることがより好ましい。
分子量分布(MWD)は1.1〜12.0の範囲が好ましく、5.0〜11.0の範囲が更に好ましい。この範囲の分子量分布とすることにより、成形性等を向上させることができる。
本発明における、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができる。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めることができる。
本発明におけるセルロース誘導体の製造方法は特に限定されず、セルロースを原料とし、セルロースに対しエーテル化及びエステル化することにより本発明のセルロース誘導体を製造することができる。セルロースエーテルに対しエーテル化及びエステル化する工程あるいはセルロースエーテルに対しエステル化する工程を含むことが更に好ましく、最も好ましくは、本発明のセルロース誘導体の製造方法は、炭化水素基:−R1、炭化水素基:−R2、及びヒドロキシアルキル基:−R4−OH(R1はメチル基を表す。R2は炭素数2〜8の炭化水素基を表す。R4は炭素数2〜4の炭化水素基を表す。)を有するセルロースエーテルを更にエステル化する工程を含むものである。セルロースの原料としては限定的でなく、例えば、綿、リンター、パルプ等が挙げられる。
アルキルハライド又はアルキレンオキシド等を反応させる方法としては、例えば、「セルロースの事典」131頁〜164頁(朝倉書店、2000年)等に記載の方法を参考に行うことができる。また、酸クロライドを反応させる方法としては、例えばCellulose 10;283−296,2003に記載の方法を用いることができる。
前記セルロースエーテルとしては、例えば、セルロースに含まれるβ−グルコース環の2位、3位、及び6位の水酸基の水素原子の少なくとも一部が、炭化水素基に置換されたものを用いることができ、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、アリルセルロース、ベンジルセルロース等が挙げられる。
炭化水素基とヒドロキシプロピル基を有するセルロースエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルアリルセルロース、ヒドロキシプロピルベンジルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースである。
なお、前述したとおり、本発明におけるセルロース誘導体は置換基としてカルボン酸を有さないことが好ましいため、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸等、セルロースと反応させてカルボキシル基が生じる化合物を用いないことが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記で説明したセルロース誘導体を含有しており、必要に応じてその他の添加剤を含有することができる。
熱成形材料に含まれる成分の含有割合は、特に限定されない。好ましくはセルロース誘導体を75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは80〜100質量%含有する。
本発明の熱成形材料は、本発明のセルロース誘導体のほか、必要に応じて、フィラー、難燃剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
具体的には、無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等の繊維状の無機フィラーや;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等の板状や粒状の無機フィラーが挙げられる。
難燃剤は、特に限定されず、常用のものを用いることができる。例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂との複合時や成形加工時に熱分解してハロゲン化水素が発生して加工機械や金型を腐食させたり、作業環境を悪化させたりすることがなく、また、焼却廃棄時にハロゲンが気散したり、分解してダイオキシン類等の有害物質の発生等によって環境に悪影響を与える可能性が少ないことから、リン含有難燃剤及びケイ素含有難燃剤が好ましい。
これらのリン含有難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのケイ素含有難燃剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他の成分としては、例えば、前記セルロース誘導体以外のポリマー、可塑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーン)、帯電防止剤、難燃助剤、加工助剤、ドリップ防止剤、抗菌剤、防カビ剤等が挙げられる。更に、染料や顔料を含む着色剤などを添加することもできる。
また、各種アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、ジエン系ゴム(例えば、1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(例えば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合させたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエン又はイソプレンとの共重合体、ブチルゴム、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、その他ポリウレタン系やポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
これらのポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
より具体的には、前記セルロース誘導体、又は、前記セルロース誘導体及び必要に応じて各種添加剤等を含む樹脂組成物を加熱し、各種の成形方法により成形する工程を含む製造方法によって得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形等が挙げられる。
加熱温度は、通常160〜300℃であり、好ましくは180〜260℃である。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた2Lの三ツ口フラスコにヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名マーポローズ90MP4000;松本油脂製)50g、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム92g/水62mL)を量りとり、室温で1時間攪拌した。更に、トルエン62mL、ベンジルクロリド248mLを投入し、120℃で6時間反応させた。反応液を室温まで放冷し、室温で激しく攪拌しながらメタノール2Lを添加すると白色無定形固体が得られた。白色無定形固体を大量のヘキサンで洗浄、ろ過を繰り返すことで、白色粉体が得られた。得られた白色粉体を100℃で6時間真空乾燥することで、目的のセルロース誘導体(P−1)の前駆体メチルベンジルヒドロキシプロピルセルロースを白色粉体として得た(61g)。
次に、メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた5Lの三ツ口フラスコに前記のメチルベンジルヒドロキシプロピルセルロース50g、N,N−ジメチルアセトアミド2000mLを量り取り、室温で攪拌した。反応系が透明になり完溶したことを確認した後、アセチルクロライド300mLをゆっくりと滴下し、系の温度を80℃〜90℃に昇温した。このまま3時間攪拌した後、反応系の温度を室温まで冷却した。反応溶液を水10Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量の水で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体(P−1)を白色粉体として得た(48g)。
合成例1においてベンジルクロリドをプロピルブロミドに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−2)を黄白色粉体として得た(収量49g)。
オートクレーブ(耐圧硝子工業製、簡易型オートクレーブTEM−D3000M)にヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名マーポローズ90MP4000;松本油脂製)100g、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム148g/水150mL)を量り取り、窒素雰囲気下、45℃で1時間攪拌した。放冷後、ドライアイス/メタノールバスで−40℃に冷却し、更に、トルエン150mL、クロロエタン93gを加えて、60℃で1時間、90℃で6時間攪拌した。室温に戻した後、系内の残存ガスを排気し、内容物を水6Lへ激しく攪拌しながら投入することで灰褐色固体を得た。得られた灰褐色固体を熱水6Lで洗浄する操作を3回、更にメタノール2L/水6L混合溶媒で洗浄する操作を3回繰り返すことで灰白色固体を得た。得られた灰白色固体を吸引濾過によりろ別し、100℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体(P−3)の前駆体メチルエチルヒドロキシプロピルセルロースを灰白色粉体として得た(収量125g)。
次に、メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた5Lの三ツ口フラスコに前記のメチルエチルヒドロキシプロピルセルロース50g、N,N−ジメチルアセトアミド2000mLを量り取り、室温で攪拌した。反応系が透明になり完溶したことを確認した後、アセチルクロライド300mLをゆっくりと滴下し、系の温度を80℃〜90℃に昇温した。このまま3時間攪拌した後、反応系の温度を室温まで冷却した。反応溶液を水10Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量の水で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体(P−3)を白色粉体として得た(45g)。
合成例3においてヒドロキシプロピルメチルセルロースをメチルセルロース(商品名SM−15:信越化学製)に、クロロエタンをクロロエタン/1,2−ブチレンオキシドに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−4)を白色粉体として得た(収量43g)。
合成例1においてベンジルクロリドをヘキシルブロミドに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−5)を白色粉体として得た(収量51g)。
合成例1においてベンジルクロリドをイソプロピルブロミドに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−6)を黄白色粉体として得た(収量46g)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた5Lの三ツ口フラスコに前記のメチルエチルヒドロキシエチルセルロース(商品名Bermocoll8000:アクゾノーベル製)100g、N,N−ジメチルアセトアミド4000mLを量り取り、室温で攪拌した。反応系が透明になり完溶したことを確認した後、プロピオニルクロリド300mLをゆっくりと滴下し、系の温度を80℃〜90℃に昇温した。このまま3時間攪拌した後、反応系の温度を室温まで冷却した。反応溶液を水10Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量の水で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体(P−7)を白色粉体として得た(110g)。
合成例7においてプロピオニルクロリドをヘキサノイルクロリドに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−8)を黄白色粉体として得た(収量130g)。
合成例7においてプロピオニルクロリドをベンゾイルクロリドに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−9)を白色粉体として得た(収量121g)。
合成例7においてプロピオニルクロリドをアセチルクロリドに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−10)を白色粉体として得た(収量97g)。
合成例7においてプロピオニルクロリドをブチリルクロリドに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−11)を白色粉体として得た(収量105g)。
合成例7においてメチルエチルヒドロキシエチルセルロースをヒドロキシプロピルセルロース(東京化成試薬)に、プロピオニルクロリドをアセチルクロリド/プロピオニルクロリドに変更した以外は同様にして目的の比較化合物(H−3)を白色粉体として得た(収量130g)。
得られたセルロース誘導体について、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、を測定した。これらの測定方法は以下の通りである。
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いた。具体的には、N‐メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めた。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用した。数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)をまとめて表1に示す。
得られたセルロース誘導体について、熱分解開始温度を測定した。これらの測定方法は以下のとおりである。
熱重量/示差熱分析装置(Seiko Instruments Inc.製)を用い、窒素雰囲気下にて10℃/minで昇温したときのサンプルの2%重量減少温度を測定し、熱分解開始温度(Td)とした。熱分解開始温度(Td)をまとめて表1に示す。
[試験片作製]
上記で得られたセルロース誘導体(P−1)を射出成形機((株)井元製作所製、半自動射出成形機)に供給して表1に記載の成形温度(シリンダー温度)、金型温度40℃、射出圧力2.0kgf/cm2にて4×10×80mmの多目的試験片(衝撃試験片及び折り曲げ試験片)を成形した。
実施例1と同様にして、セルロース誘導体(P−2)〜(P−11)、比較化合物としてセルロース誘導体(H−1)(アクゾノーベル社製:Bermocoll EBM8000)、(H−2)(松本油脂製:マーポローズ90MP−100000)、比較例(H−3)を用いて、表1の成形条件に従って成形し多目的試験片を作製した。
得られた試験片について、下記の方法にしたがってシャルピー衝撃強度、曲げ弾性率及び折り曲げ耐性を測定した。結果を表2に示す。
<シャルピー衝撃強度>
ISO179に準拠して、射出成形にて成形した試験片に入射角45±0.5°、先端0.25±0.05mmのノッチを形成し、30℃±2℃、50%±5%RHで48時間以上調整した後、シャルピー衝撃試験機によってエッジワイズにて衝撃強度を測定した。
<曲げ弾性率及び折り曲げ耐性>
JISK7171に準拠して曲げ試験機によって曲げ弾性率を測定した。また、曲げ弾性率試験において試験片の折り曲げ耐性を下記ランクに従い評価した。
◎:測定限界まで折り曲げても破壊されず、元の形状に戻る
○:測定限界まで折り曲げても破壊されないが、元の形状には戻らない
×:測定中に破壊される(破断する、若しくは亀裂を生じる)
Claims (10)
- A)炭化水素基:−R1(R1はメチル基を表す。)
B)炭化水素基:−R2(R2は炭素数2〜8の炭化水素基を表す。)
C)アシル基:−CO−R3とアルキレンオキシ基:−R4−O−とを含む基(R3は炭化水素基を表す。R4は炭素数2〜4の炭化水素基を表す。)、及び
D)アシル基:−CO−R5(R5は炭化水素基を表す。)を有するセルロース誘導体。 - 前記B)におけるR2がエチル基又はn−プロピル基である請求項1記載のセルロース誘導体。
- 前記C)におけるR4がエチレン基又はn−プロピレン基である請求項1又は2に記載のセルロース誘導体。
- 前記R3及びR5が表す炭化水素基が、脂肪族炭化水素基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース誘導体。
- 前記R3及びR5が、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、又はn−プロピル基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース誘導体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロース誘導体の製造方法であって、
炭化水素基:−R1、炭化水素基:−R2、及びヒドロキシアルキル基:−R4−OH(R1はメチル基を表す。R2は炭素数2〜8の炭化水素基を表す。R4は炭素数2〜4の炭化水素基を表す。)を有するセルロースエーテルをエステル化する工程を含む、セルロース誘導体の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロース誘導体を含有する樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又は請求項7に記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロース誘導体又は請求項7に記載の樹脂組成物を加熱し、成形する工程を備えた、成形体の製造方法。
- 請求項8に記載の成形体から構成される電気電子機器筐体。
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