JP2012149167A - 樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、特定のベンゼントリカルボン酸トリエステル化合物、ポリカーボネート等の樹脂、及びアリールアミン等の電荷輸送物質を含む樹脂組成物に関する。
電子機器がデジタル化の進展を受けるに伴い、例えば、有機薄膜素子、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜太陽電池、薄型ディスプレイ等の各種電子部品・電子機器や、プリンタ、複写機等に用いられる電子写真感光体には、ポリカーボネート等の樹脂と電荷輸送物質を含む樹脂組成物が広く用いられるようになってきた。現在では、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子では、トリフェニルアミン類等の電荷輸送物質の劣化を防止することによる高耐久化の検討が盛んに行われている。また、電子写真感光体に使用される上記樹脂組成物の劣化は、電子写真の解像度低下の原因となるため、同様に高耐久化の検討がなされている。
ポリカーボネート等の樹脂と電荷輸送物質を含む上記樹脂組成物は、上述の各種用途において薄膜(塗膜)とされて用いられるが、該塗膜には、水蒸気、NOx等の有害気体が流出入するため、着色等の劣化が生じる。塗膜の劣化は、有害気体により、ポリカーボネート等の樹脂そのものが劣化すること、及び電荷輸送物質が酸化劣化することが原因とされている。
樹脂組成物から形成された塗膜の劣化防止には、電荷輸送物質の酸化劣化を防ぐことが特に効果的であり、その観点から樹脂組成物に酸化防止剤を添加することが広く知られている。しかしながら、酸化防止剤と有害気体が反応して着色するため、その使用量に制限があることが広く知られている。
また、有機エレクトロルミネッセンス素子を高耐久化するために電荷輸送物質をポリカーボネート中に組み込む方法が、特許文献1に記載されている。このような電荷輸送性ポリカーボネートは、有機低分子に比較して卓越した薄膜特性維持能を有しているが、その合成が難しいという問題があった。また、電荷輸送物質をポリマーの主鎖中に導入する方法が特許文献2に記載されているが、この方法では、薄膜化するためには特定の溶媒を使用しなければならない等、製膜技術が難しいという問題があった。
更に、上記樹脂組成物にテレフタル酸エステル化合物を添加剤として用いることで、上記塗膜のガスバリア性を高める方法が特許文献3に開示されている。しかしながら、上記樹脂組成物による塗膜は、溶剤によって希釈された樹脂組成物を塗工し、加熱乾燥により製造されるのが一般的であるところ、特許文献3に記載の添加剤は昇華性を有しているものが多く、実際には、その耐熱性の悪さにより、十分な性能の樹脂膜を得ることができず、その耐久性を向上させた塗膜が得られないという問題があった。
また、同様に特許文献4及び5には、樹脂組成物にエステル化合物を添加剤として用い、ガスバリア性を向上することが記載されているが、それにより得られた樹脂組成物から形成された薄膜の強度が向上したとの記述はない。特に電子写真用感光体においては、上記樹脂組成物から形成された塗膜層の強度(耐摩耗性)が印刷耐久性に影響を与えるため、塗膜の高い耐摩耗性も要求される。
従って、本発明の目的は、加熱乾燥工程を経ても、ガスバリア性及び耐摩耗性を十分に満足できる樹脂薄膜を容易に形成することができる樹脂組成物を提供することにある。
本発明者等は、樹脂組成物に、特定の構造を有するベンゼントリカルボン酸トリエステルを含有させることにより、ガスバリア性及び耐磨耗性に優れた樹脂薄膜が形成できることを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、下記一般式(I)で表される化合物(A)、樹脂(B)、電荷輸送物質(C)及び溶剤(D)を含有してなる樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、下記一般式(I’)で表される化合物を提供するものである。
本発明によれば、加熱乾燥工程を経ても、ガスバリア性及び耐摩耗性を十分に満足できる樹脂薄膜を容易に形成できる樹脂組成物を提供することができる。
さらに詳しくは、上記一般式(I)で表される化合物は、樹脂薄膜において水蒸気、オゾンガスやNOx等の低分子の有害気体の透過を抑制することができ、これによって樹脂薄膜のガスバリア性が向上する。上記一般式(I)で表される化合物は耐熱性が高いため、薄膜形成時に加熱乾燥工程を経ても、斯かるガスバリア性向上効果が奏される。さらに、上記一般式(I)で表される化合物を含む本発明の樹脂組成物は、その樹脂薄膜の強度が向上し、耐摩耗性が向上する。
また、上記一般式(I’)で表される本発明の化合物は、ポリカーボネート等の樹脂に添加剤として添加して用いることができ、本発明の化合物を添加した樹脂からは、ガスバリア性及び耐磨耗性に優れた塗膜を形成することができる。また、本発明の化合物は、溶解性に優れるという特徴を有し、この特徴は上記塗膜を形成する際に有利である。
以下、本発明について、その好ましい実施形態について詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、上記一般式(I)で表される化合物(A)、樹脂(B)、電荷輸送物質(C)及び溶剤(D)を含有してなる。
上記一般式(I)で表される化合物(A)の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜20質量部である。
上記一般式(I)で表される化合物(A)の含有量は、樹脂(B)100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、さらに好ましくは1〜20質量部である。
上記一般式(I)中のX1〜X3で表される炭素原子数3〜20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。該シクロアルキル基は置換基を有するものでもよく、該置換基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ヘキサデシル基等のアルキル基が挙げられる。尚、X1〜X3は、該置換基を含めた基全体の炭素原子数が3〜20の範囲を満たすものとする。
上記一般式(I)で表される化合物(A)のうち、下記一般式(II)で表されるものは製造が容易であり、耐熱性も特に優れるため好ましい。
上記一般式(II)中のR1〜R3が表す炭素原子数1〜3のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、a、b及びcが2以上である場合、複数あるR1〜R3は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、a、b及びcが0〜5のものは、合成原料の入手が容易で製造しやすいため特に好ましい。
また、上記一般式(I)又は(II)で表される化合物(A)のうち、ベンゼン環を置換する3つのカルボン酸エステルが同一であるものは製造が容易であるためより好ましい。
上記一般式(I)又は(II)におけるl、m及びnが0〜3の整数であるものは、耐摩耗性に特に優れるため好ましい。
また、上記一般式(I)中のエステルを構成する部分(下記一般式(P1)で表される部分、下記一般式(P2)で表される部分及び下記一般式(P3)で表される部分)並びに上記一般式(II)中のエステルを構成する部分(下記一般式(P1’)で表される部分、下記一般式(P2’)で表される部分及び下記一般式(P3’)で表される部分)の炭素原子数がそれぞれ6〜12であるものは、特に耐熱性に優れるため特に好ましい。
上記一般式(I)又は(II)におけるl、m及びnが0〜3の整数であるものは、耐摩耗性に特に優れるため好ましい。
また、上記一般式(I)中のエステルを構成する部分(下記一般式(P1)で表される部分、下記一般式(P2)で表される部分及び下記一般式(P3)で表される部分)並びに上記一般式(II)中のエステルを構成する部分(下記一般式(P1’)で表される部分、下記一般式(P2’)で表される部分及び下記一般式(P3’)で表される部分)の炭素原子数がそれぞれ6〜12であるものは、特に耐熱性に優れるため特に好ましい。
上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜No.14が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
本発明に用いられる上記一般式(I)で表される化合物(A)は、その製造方法に制限されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができる。該製造方法としては、例えば下記に示される反応式1により合成する方法が挙げられる。
本発明の樹脂組成物に用いられる上記樹脂(B)としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂又はポリアリレート樹脂である。
また、これらの樹脂は、単独で用いてもよく、又は2種以上の混合物として用いることができる。
また、これらの樹脂は、単独で用いてもよく、又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、さらに上記電荷輸送物質(C)を含有する。上記電荷輸送物質(C)の含有量は、上記樹脂(B)100質量部に対して、10〜200質量部であることが好ましく、さらに好ましくは50〜100質量部である。
本発明において、電荷輸送物質とは、正孔や電子の電荷を輸送する物質であり、公知のものが使用できる。その代表的な例としては、アリールアミン系化合物が挙げられ、該アリールアミン系化合物の具体例としては、化合物No.C1〜No.C7が挙げられる。
また、電荷輸送物質(C)としては、上記アリールアミン系化合物以外に、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、キノン系化合物、フルオレン系化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンジジン系化合物、アントラセン系化合物、ピレン系化合物、オキサジアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、トリフェニルメタン系化合物、ピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、スチルベン系化合物等の化合物が挙げられ、上記アリールアミン系化合物を含め、これらの電荷輸送物質は、単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、さらに上記溶剤(D)を含んでなり、該溶剤としては、特に限定されないが、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、ジオキサン等が挙げられる。本発明の樹脂組成物において、上記溶剤(D)の含有量は、上記成分(A)、(B)及び(C)を均一に溶解できれば特に制限されるものではないが、固形分(溶剤(D)以外の全成分)の含有量が、本発明の樹脂組成物中に好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは1〜20質量%となる量が望ましい。
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、レベリング剤、分散剤等の任意の添加剤を用いることが出来る。任意の添加剤を使用する場合、その使用量としては、上記溶剤(D)を除いた固形分中において0.001〜10質量%の範囲が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、プリンタ、複写機等に用いられる電子写真感光体;有機EL発光体、有機薄膜素子、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜太陽電池、薄型ディスプレイ等の各種電子部品・電子機器の用途に用いることができる。
次に、本発明の新規の化合物について説明する。
本発明の化合物は、上記一般式(I’)で表されるもので、上述した本発明の樹脂組成物において化合物(A)として用いられる上記一般式(I)で表される化合物のうち、n、m及びlが1〜6のものである。尚、特に説明しない点については、本発明の樹脂組成物に関してした説明が適宜適用される。
本発明の化合物は、上記一般式(I’)で表されるもので、上述した本発明の樹脂組成物において化合物(A)として用いられる上記一般式(I)で表される化合物のうち、n、m及びlが1〜6のものである。尚、特に説明しない点については、本発明の樹脂組成物に関してした説明が適宜適用される。
上記一般式(I’)で表される化合物の中でも下記一般式(II’)で表される化合物は、合成原料の入手が容易で製造しやすいため好ましい。
上記一般式(II’)中のR1〜R3が表す炭素原子数1〜3のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、a、b及びcが2以上である場合、複数あるR1〜R3は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
以下、実施例等を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に制限されるものではない。
下記合成例1〜3は、本発明の樹脂組成物に用いられる上記一般式(I)で表される化合物(A)の合成例を示す。実施例1、2においては、合成例1、2で得られた化合物(A)を用いて本発明の樹脂組成物を調製し、該樹脂組成物からなる樹脂膜の耐磨耗性及びガスバリア性の評価を行なった。また、下記評価例においては、合成例1〜3で得られた化合物について、耐熱性及び溶解性の評価を行なった。
〔合成例1〕化合物No.2の合成
シクロヘキサンメタノール17.41g(152.5mmol)、トリエチルアミン16.70g(165mmol)、トルエン25gを混合し、室温で撹拌した。これに、トルエン50gにトリメソイルクロリド13.27g(50.0mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、90℃まで昇温し、1時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、塩酸水を用いて中和後、水洗を数回実施した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、シリカゲル処理した。溶媒を減圧留去し、イソプロピルアルコールで再結晶した。得られた白色粉末を減圧乾燥し、収量16g(収率64.2%)で目的物を得た。合成した化合物が目的物であることは、1H−NMR、IRによる分析にて確認した。分析結果を以下に示す。
シクロヘキサンメタノール17.41g(152.5mmol)、トリエチルアミン16.70g(165mmol)、トルエン25gを混合し、室温で撹拌した。これに、トルエン50gにトリメソイルクロリド13.27g(50.0mmol)を溶解させた溶液を滴下した。滴下後、90℃まで昇温し、1時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、塩酸水を用いて中和後、水洗を数回実施した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、シリカゲル処理した。溶媒を減圧留去し、イソプロピルアルコールで再結晶した。得られた白色粉末を減圧乾燥し、収量16g(収率64.2%)で目的物を得た。合成した化合物が目的物であることは、1H−NMR、IRによる分析にて確認した。分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.00−1.40(5H、m)、1.70−1.87(6H、m)、4.20(6H、d)、8.85(3H、s)
IR(cm-1):2929、2852、1733、1450、1337、1291、1260、1243、992、740
〔合成例2〕化合物No.4の合成
合成例1のシクロヘキサンメタノールをシクロヘキサンエタノール19.55g(152.5mmol)に変更した以外は合成例1と同様の手法で、目的物を収量18.2g(収率67.3%)で得た。得られた化合物が目的物であることは、1H−NMR、IRによる分析にて確認した。分析結果を以下に示す。
合成例1のシクロヘキサンメタノールをシクロヘキサンエタノール19.55g(152.5mmol)に変更した以外は合成例1と同様の手法で、目的物を収量18.2g(収率67.3%)で得た。得られた化合物が目的物であることは、1H−NMR、IRによる分析にて確認した。分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)δ:0.95−1.05(6H、m)、1.17−1.30(9H、m)、1.48(3H、m)、1.71−1.81(21H、m)、4.42(6H、t)、8.84(3H、s)
IR(cm-1):2926、2850、1725、1448、1277、1257、1244、985、741
〔合成例3〕化合物No.14の合成
合成例1のシクロヘキサンメタノールを3−シクロヘキサン−1−プロパノール19.55g(152.5mmol)に変更した以外は合成例1と同様の手法で、目的物を収量12.3g(収率42.2%)で得た。得られた化合物が目的物であることは、1H−NMR、IRによる分析にて確認した。分析結果を以下に示す。
合成例1のシクロヘキサンメタノールを3−シクロヘキサン−1−プロパノール19.55g(152.5mmol)に変更した以外は合成例1と同様の手法で、目的物を収量12.3g(収率42.2%)で得た。得られた化合物が目的物であることは、1H−NMR、IRによる分析にて確認した。分析結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)δ:0.85−0.95(6H、m)、1.10−1.34(18H、m)、1.69−1.83(21H、m)、4.35(6H、t)、8.83(3H、s)
IR(cm-1):2922、2851、1729、1450、1335、1259、1245、739
〔実施例1〜2及び比較例1〜5〕
上記一般式(I)で表される化合物(A)として表1に記載の試験化合物、樹脂(B)としてポリ(ビスフェノール A カーボネート)〔ALDRICH製〕、及び電荷輸送物質(C)としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トルイル)ベンジジン〔化合物No.C1、東京化成工業製〕を用い、試験化合物、成分(B)、成分(C)それぞれについて、各10質量%クロロホルム溶液を予め調製した。試験化合物のクロロホルム溶液5質量部、成分(B)のクロロホルム溶液55質量部、成分(C)のクロロホルム溶液40質量部の割合で各溶液を混合して、実施例1及び2の樹脂組成物をそれぞれ得た。
また、比較例1では、試験化合物を用いず、樹脂(B)のクロロホルム溶液を60質量部とし、比較例2〜5では、試験化合物として、化合物(A)に代えて以下に示す比較化合物No.1〜4(表1参照)を使用し、それ以外は実施例1及び2と同様にして、比較例1〜5の樹脂組成物をそれぞれ得た。
得られた樹脂組成物1gをそれぞれφ9.5cmのシャーレに気泡が入らないように入れ、一晩静置し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜の耐磨耗性及びガスバリア性を、それぞれ以下の方法により評価した。
上記一般式(I)で表される化合物(A)として表1に記載の試験化合物、樹脂(B)としてポリ(ビスフェノール A カーボネート)〔ALDRICH製〕、及び電荷輸送物質(C)としてN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トルイル)ベンジジン〔化合物No.C1、東京化成工業製〕を用い、試験化合物、成分(B)、成分(C)それぞれについて、各10質量%クロロホルム溶液を予め調製した。試験化合物のクロロホルム溶液5質量部、成分(B)のクロロホルム溶液55質量部、成分(C)のクロロホルム溶液40質量部の割合で各溶液を混合して、実施例1及び2の樹脂組成物をそれぞれ得た。
また、比較例1では、試験化合物を用いず、樹脂(B)のクロロホルム溶液を60質量部とし、比較例2〜5では、試験化合物として、化合物(A)に代えて以下に示す比較化合物No.1〜4(表1参照)を使用し、それ以外は実施例1及び2と同様にして、比較例1〜5の樹脂組成物をそれぞれ得た。
得られた樹脂組成物1gをそれぞれφ9.5cmのシャーレに気泡が入らないように入れ、一晩静置し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜の耐磨耗性及びガスバリア性を、それぞれ以下の方法により評価した。
(耐磨耗性評価方法)
荷重変動摩擦磨耗試験システムHHS2000(新東科学社製)の試験台上に上記で得られた樹脂膜を固定し、先端をSUS球とし、負担荷重20g、移動速度20mm/s、移動距離10mm、100往復の条件で試験した。磨耗深度を触針式表面形状測定器Dektak6M(アルバック社製)にて測定した。結果を〔表1〕に示す。磨耗深度が小さいほど耐摩耗性が高いことを意味する。
荷重変動摩擦磨耗試験システムHHS2000(新東科学社製)の試験台上に上記で得られた樹脂膜を固定し、先端をSUS球とし、負担荷重20g、移動速度20mm/s、移動距離10mm、100往復の条件で試験した。磨耗深度を触針式表面形状測定器Dektak6M(アルバック社製)にて測定した。結果を〔表1〕に示す。磨耗深度が小さいほど耐摩耗性が高いことを意味する。
(ガスバリア性評価方法)
水蒸気透過率測定装置7002(DKSHジャパン社製)で測定時5cm2フォルダーを用いて水蒸気透過量を測定した。成分(A)を含有しない比較例1の水蒸気透過量を100とした場合の、実施例及びその他の比較例の樹脂膜の水蒸気透過量を相対値として下記〔表2〕に示す。
水蒸気透過率測定装置7002(DKSHジャパン社製)で測定時5cm2フォルダーを用いて水蒸気透過量を測定した。成分(A)を含有しない比較例1の水蒸気透過量を100とした場合の、実施例及びその他の比較例の樹脂膜の水蒸気透過量を相対値として下記〔表2〕に示す。
〔表1〕及び〔表2〕の結果より、化合物(A)を添加したものは、無添加のものと比較して、耐磨耗性及びガスバリア性が向上していることが明らかである。また、化合物(A)を添加したものは、比較化合物を添加したものと比較しても、耐磨耗性及びガスバリア性が向上している。
〔評価例〕化合物(A)の耐熱性及び溶解性
下記〔表3〕に示す試験化合物の耐熱性及び溶解性を調べた。耐熱性としては、TG−DTAを用いて5%重量減少温度を測定した。溶解性については、クロロホルムに対し30質量%又は40質量%の濃度で添加し、溶解した場合を○、溶解しなかった場合を×としてそれぞれ評価した。それらの結果を下記〔表3〕に示す。
下記〔表3〕に示す試験化合物の耐熱性及び溶解性を調べた。耐熱性としては、TG−DTAを用いて5%重量減少温度を測定した。溶解性については、クロロホルムに対し30質量%又は40質量%の濃度で添加し、溶解した場合を○、溶解しなかった場合を×としてそれぞれ評価した。それらの結果を下記〔表3〕に示す。
〔表3〕の結果より、本発明の樹脂組成物に用いられる上記一般式(I)で表される化合物(A)は、耐熱性及び溶解性に優れることが明白である。
以上の結果より、本発明の樹脂組成物に用いられる上記一般式(I)で表される化合物(A)は、耐熱性に優れ、樹脂組成物を塗工後に加熱乾燥しても樹脂組成物中から昇華し難いことが分かる。また、該化合物(A)を含有する本発明の樹脂組成物は、耐摩擦性に優れ磨耗しにくく、低分子ガスバリア性にも優れる樹脂膜を形成することができることは明白である。
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