JP2012142409A - スピン流回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】スピンエレクトロニクスを用いて擬似的にダイオード特性を有するスピン流回路を提供する。
【解決手段】 このスピン流回路は、半導体層10C内に形成された主導電領域3Aと、半導体層内に形成され主導電領域から分岐した第1副導電領域3Bと、半導体層内に形成され主導電領域から分岐した第2副導電領域3Cと、主導電領域3A上に形成され主導電領域内にトンネル障壁層5を介して電子を注入する主強磁性体1と、主導電領域3A上に形成された収集電極4と、第1副導電領域3B上に形成され、主強磁性体1と同じ方向に磁化方向が固定された第1副強磁性体2’と、第2副導電領域3C上に形成され、第1副強磁性体2’とは磁化方向が異なる方向に固定された第2副強磁性体2”と、第1副強磁性体2’と第2副強磁性体2”との間の電圧を検出する電圧検出回路とを備えている。
【選択図】図1
【解決手段】 このスピン流回路は、半導体層10C内に形成された主導電領域3Aと、半導体層内に形成され主導電領域から分岐した第1副導電領域3Bと、半導体層内に形成され主導電領域から分岐した第2副導電領域3Cと、主導電領域3A上に形成され主導電領域内にトンネル障壁層5を介して電子を注入する主強磁性体1と、主導電領域3A上に形成された収集電極4と、第1副導電領域3B上に形成され、主強磁性体1と同じ方向に磁化方向が固定された第1副強磁性体2’と、第2副導電領域3C上に形成され、第1副強磁性体2’とは磁化方向が異なる方向に固定された第2副強磁性体2”と、第1副強磁性体2’と第2副強磁性体2”との間の電圧を検出する電圧検出回路とを備えている。
【選択図】図1
Description
本発明はスピン流を用いたスピン流回路に関する。
近年、従来の半導体技術から、電子スピンを利用したスピンエレクトロニクス技術への転換が期待されている。半導体技術の分野では、抵抗、キャパシタ及びダイオードが基本的構成要素であり、これらの結合によって、種々の電子回路が構成されている。
例えば、出願人が提案した特許文献1に開示されるスピン流回路は、第1スピン注入素子において発生したスピン流が流れる非磁性のチャンネル層と、チャンネル層上の異なる位置に設けられた複数の磁化自由層と、チャンネル層とそれぞれの磁化自由層との間に介在するトンネル障壁とを備えている。このスピン流回路によれば、磁化自由層とチャンネル層の間の電圧を、バラツキが抑制された状態で検出することができる。
また、非特許文献1には、GaAsを用いたスピンデバイスが開示されており、出力に特異なバイアス依存を示していることが報告されている。
PHYSICAL REVIEW B 80, 041305(R) (2009)
しかしながら、上述のような試みがあるものの、従来の半導体技術からスピンエレクトロニクス技術への飛躍のため、ダイオード特性を擬似的に有する素子の開発が期待されるが、未だ実現には至っていない。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、スピンエレクトロニクスを用いて擬似的にダイオード特性を有するスピン流回路を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明に係るスピン流回路は、半導体層内に形成された主導電領域と、前記半導体層内に形成され前記主導電領域から分岐した第1副導電領域と、前記半導体層内に形成され前記主導電領域から分岐した第2副導電領域と、前記主導電領域上に形成され前記主導電領域内にトンネル障壁層を介して電子を注入又は抽出する主強磁性体と、前記主導電領域上に形成された収集電極と、前記第1副導電領域上に形成され、前記主強磁性体と同じ方向に磁化方向が固定された第1副強磁性体と、前記第2副導電領域上に形成され、前記第1副強磁性体とは磁化方向が異なる方向に固定された第2副強磁性体と、前記第1副強磁性体と前記第2副強磁性体との間の電圧を検出する電圧検出手段と、を備えることを特徴とする。
このスピン流回路によれば、第1及び第2副強磁性体の電位の差分を電圧検出手段が検出するが、この出力は、主強磁性体に注入された或いは抽出された単位時間当たりの電子量に比例するため、注入された電子流(電流)の大きさを検出することができる。特に、電圧検出手段の出力は、主強磁性体への電子の注入方向によって大きく異なり、このスピン流回路は、擬似的にダイオード特性を有することとなる。
また、前記主導電領域の表面側の深さ20nm以下の平均不純物濃度は、1×1019/cm3以上5×1020/cm3以下であることが好ましい。
この場合、半導体と強磁性電極間の抵抗整合(conductivity mismatch)の問題が軽減され、効率的にスピン注入・検出が可能になるという効果がある。
また、前記半導体層はSiからなることが好ましい。
半導体層としてSiを用いた場合、GaAsを用いた場合よりも誤差が小さくなると考えられ、精度の高い電流検出が可能である。
また、本発明に係るスピン流回路は、前記主強磁性体上に形成された主反強磁性層と、前記第1副強磁性体上に形成された第1反強磁性層とを備えることを特徴とする。
強磁性体上に反強磁性層を形成することで、交換結合を行い、主強磁性体及び第1副強磁性体の磁化方向を固定することができる。
また、前記主強磁性体、前記第1副強磁性体、及び前記第2副強磁性体は、形状異方性により磁化方向が固定されていることを特徴とする。
主強磁性体、第1副強磁性体、及び第2副強磁性体は、それぞれ形状に異方性を持たせることで、磁化方向を固定することができる。すなわち、磁性体の縦横のアスペクト比が大きくなるほど、形状異方性は高くなり、磁化方向が固定される。
また、本発明に係るスピン流回路においては、前記電圧検出手段は、第1MOSFETのゲート電極及び第2MOSFETのゲート電極をそれぞれ入力端子とし、これらの入力端子への入力電位の差分を増幅して出力するアンプを有しており、前記第1副強磁性体は前記第1MOSFETの前記ゲート電極に接続され、前記第2副強磁性体は前記第2MOSFETのゲート電極に接続されていることが好ましい。
この場合、アンプの出力は、2つの入力端子としてのゲート電極への入力電位の差分となる。
本発明によれば、擬似的にダイオード特性を有するスピン流回路を実現することができる。
以下、実施の形態に係るスピン流回路について説明する。なお、同一要素には同一符号
を用い、重複する説明は省略する。
を用い、重複する説明は省略する。
図1はスピン伝導素子を備えるスピン流回路の平面図、図2は図1に示したスピン伝導素子のIIA線に沿った断面図(A)と、IIB線に沿った断面図(B)である。図1に示す平面は、XYZ三次元直交座標系におけるXY平面であり、基板の厚み方向がZ軸に一致している。
このスピン流回路は、スピン伝導素子が形成されたスピン伝導素子形成領域RG1と、電圧検出手段としての検出回路が形成された検出回路形成領域RG2とを備えている。本例では、検出回路形成領域RG2の内側に、スピン伝導素子形成領域RG1が設定されているが、双方の領域RG1,RG2が隣同士に並ぶ構成とすることも、もちろん可能である。
双方の領域RG1,RG2は、SOI(Semiconductor On Insulator)基板10における表面の半導体層(10C:図2参照)を用いて形成されている。このSOI基板10における半導体層の材料はSiであり、SOI基板10はSilicon On Insulatorの構造になっている。SOI基板10の半導体層として、Si以外の半導体や化合物半導体を用いることも可能ではあるが、例えばGaAsなどの半導体の場合には、出力誤差が大きくなることが予想されるので、本実施形態ではSiを採用している。この場合、GaAsを用いたものよりもバイアスに対する出力誤差が小さくなり、精度の高い電流検出が可能となる。
領域RG1内には、スピン伝導素子が形成されている。このスピン伝導素子は、半導体層(10C)内に形成された主導電領域3Aと、半導体層(10C)内に形成され主導電領域3Aから分岐した第1副導電領域3Bと、半導体層(10C)内に形成され主導電領域3Aから分岐した第2副導電領域3Cを備えている。これらの導電領域は全体としてはY字状の平面形状を有している。主導電領域3A、第1副導電領域3B、第2副導電領域3Cは、N型の不純物が添加された単一のチャネル半導体層3からなる。なお、Siに対するN型の不純物としては、Asを本例のものとして採用するが、5価の元素であれば適用することができる。また、アンプA1を構成する電界効果トランジスタに用いるSiに対するP型の不純物としては、Bを本例のものとして採用するが、3価の元素であれば適用することが可能である。
主導電領域3A、第1副導電領域3B及び第2副導電領域3Cの表面側の平均不純物濃度は、深さ20nm以下では、1×1019/cm3以上5×1020/cm3以下であり、高濃度に不純物が添加されている。この場合、温度に対する依存性が小さいという効果がある。半導体層(10C)の不純物濃度は、1×1019/cm3以上1×1020/cm3以下であり、この不純物濃度に一致する主導電領域3A、第1副導電領域3B及び第2副導電領域3Cを含む半導体層(3)の深さは、80nmである。この深さが、深すぎる場合には、半導体基板側の悪影響が現れるが、本形態では、SOI基板を用いており、予め半導体層自体の深さが制限されている。この深さは、効率的なスピン伝導の観点からは、好適には1〜60nmであることが好ましい。
また、本実施形態のスピン伝導素子は、主強磁性体1、収集電極4、第1副強磁性体(スピン収集電極)2’、及び第2副強磁性体(基準電極)2”を備えている。
主強磁性体1は、主導電領域3A上に形成され主導電領域3A内に絶縁層からなるトンネル障壁層(5:図2参照)を介して電子を注入するものである。MgOやAl2O3などからなるトンネル障壁層5は、トンネル効果が生じる厚さの層であり、トンネル効果は好適には2nm以下の厚みで生じる。主強磁性体1は、好適にはCoFeからなるが、強磁性体としては従来から知られる様々な物質を用いることが可能である。なお、トンネル障壁層は、強磁性金属と半導体とのショットキ接合を用い、これらの界面から広がる薄い空乏層を用いて構成することも可能である。なお、この電子の注入時とは逆方向に電圧を印加した場合には、電子が主強磁性体1から抽出されることになり、同様に機能する。
収集電極4は、主導電領域3A(3)上に形成され主強磁性体1から注入された電子を収集するものであり、非磁性体の金属であるCu、Al又はAuなどからなる。
第1副強磁性体2’は、第1副導電領域3B上に形成されており、主強磁性体1の直下の主導電領域3Aから拡散するスピンが、その直下のトンネル障壁層を介して、流れ込む位置に配置されている。第1副強磁性体2’は、主強磁性体1と同じ方向(+X方向)に磁化方向が固定されており、これと同じ材料からなる。
第2副強磁性体2”は、第2副導電領域3C上に形成されており、主強磁性体1の直下の主導電領域3Aから拡散するスピンを収集可能な位置に配置されている。もちろん、第2副強磁性体2”は、第1副強磁性体2’或いは主強磁性体1とは磁化方向が異なる方向(−X方向)に固定されており、大部分のスピンは、その直下のトンネル障壁層を介して、第2副強磁性体2”には吸収されない。第2副強磁性体2”は、基本的には、第1副強磁性体2’と同一の材料からなるが、磁化方向を、−X方向に向けている。
領域RG2内に検出される電圧検出回路(検出手段)は、第1副強磁性体2’と第2副強磁性体”との間の電圧を検出ものであり、反転入力端子と非反転入力端子に、それぞれ第1副強磁性体2’と第2副強磁性体”が電気的に接続されたオペアンプA1と、オペアンプA1の反転入力端子と出力端子Voutとの間に接続された抵抗Zとを備えている。出力端子Voutからは、第1副強磁性体2’と第2副強磁性体”との間の電位の差分を増幅した電圧が出力される。
なお、主強磁性体1、収集電極4、第1副強磁性体2’、及び第2副強磁性体2”には、それぞれパターニングされた配線1w、4w、2’w、2”wが物理的及び電気的に接続され、それぞれの配線1w、4w、2’w、2”wは、半導体層10C上に形成された絶縁層上に設けられた電極パッド1T、4T、2’T、2”Tに物理的及び電気的に接続されている。電極パッド2’Tはアンプの反転入力端子に接続され、電極パッド2”Tはアンプの非反転入力端子に接続される。
このスピン流回路によれば、第1副強磁性体2’及び第2副強磁性体2”の電位の差分を、アンプA1を備える電圧検出回路で検出するが、この出力は、主強磁性体1に注入された単位時間当たりの電子量に比例するため、注入された電子流(電流)の大きさを検出することができる。特に、アンプA1を含む電圧検出回路の出力は、主強磁性体1への電子の注入方向によって大きく異なり、このスピン流回路は、擬似的にダイオード特性を有することとなる(図10参照)。
上記スピン伝導素子の作用について説明する。
図2(A)を再び参照すると、SOI基板は、Siからなる半導体基板10Aと、半導体基板10A上にSiO2又はSiNxなどの絶縁層10Bを介して積層された半導体層10Cとを備えている。電子流源Aは、上述の電極パッド1Tと4T(図1参照)との間に接続されているが、電子流源Aからは、電極パッドと配線を介して、主強磁性体1に電子が供給される。主強磁性体1に注入された電子は、トンネル障壁層5を透過して、主導電領域である半導体層3に注入される。電子は、内部電界に沿って、半導体層3に接触した収集電極4によって収集されるが、電子注入位置からは、+X方向にスピン流も流れることとなる。このスピン流は、トンネル障壁層5を介して、主強磁性体1と同一の磁化方向を有する第1副強磁性体2’によって吸収され、第1副強磁性体2’は吸収したスピン流に応じた電位を有することになる。
図2(B)を参照すると、主強磁性体1注入された電子は、トンネル障壁層5を透過して、主導電領域である半導体層3に注入されるが、このとき電子注入位置からは、+X方向にスピン流も流れ、一部分は、トンネル障壁層5を介して、主強磁性体1とは異なる磁化方向を有する第2副強磁性体2”によって僅かに吸収され、第2副強磁性体2”は吸収したスピン流に応じた電位を有することになる。
本回路は、第1副強磁性体2’と第2副強磁性体2”との間の電位差を計測している。
図3は主強磁性体1の詳細な断面図(A)、第1副強磁性体2’の断面図(B)、第2副強磁性体2”の断面図(C)である。
図3(A)に示すように、主強磁性体1は、トンネル障壁層5上に形成されているが、主強磁性体1には、反強磁性層1H、保護膜1Pが順に形成されており、保護膜1Pに設けられた開口を介して、配線1wが反強磁性層1Hに接触し、強磁性体1に電気的に接続されている。
同様に、図3(B)に示すように、第1副強磁性体2’は、トンネル障壁層5上に形成されているが、第1副強磁性体2’には、反強磁性層2’H、保護膜2’Pが順に形成されており、保護膜2’Pに設けられた開口を介して、配線2’wが反強磁性層2’Hに接触し、第1副強磁性体2’に電気的に接続されている。
同様に、図3(C)に示すように、第2副強磁性体2”は、トンネル障壁層5上に形成されているが、第2副強磁性体2”には、保護膜2”Pが形成されており、保護膜2”Pに設けられた開口を介して、配線2”wが第2強磁性体2”に接触し、これに電気的に接続されている。なお、第2副強磁性体2”上には、第1副強磁性体2’と同様に、反強磁性層を設けることとしてもよい。
すなわち、このスピン流回路は、主強磁性体1上に形成された主反強磁性層1Hと、第1副強磁性体2’上に形成された反強磁性層2’Hとを備えている。強磁性体上に反強磁性層を形成することで、交換結合を行い、主強磁性体及び第1副強磁性体の磁化方向を固定することができる。
反強磁性層1H、2’H、2”は、IrMn又はPtMnなどから構成され、保護膜1P,2’P,2”Pは、SiO2又はSiNxから構成される。
もちろん、主強磁性体1、第1副強磁性体2’、及び第2副強磁性体2”は、形状異方性により磁化方向が固定されていてもよい。すなわち、これらの強磁性体のX軸方向の長さを、Y軸方向の長さよりも十分に、例えば5倍以上に長くすることにより、X軸方向に沿って磁化方向が固定される。このように、主強磁性体1、第1副強磁性体2’、及び第2副強磁性体2”に、それぞれ形状に異方性を持たせることで、磁化方向を固定することができる。なお、磁性体の縦横のアスペクト比が大きくなるほど、形状異方性は高くなり、磁化方向が固定される傾向が高くなる。
図4は。図2に示したスピン伝導素子のIVA線に沿った断面図(A)、IVB線に沿った断面図(B)、IVC線に沿った断面図(C)である。
図4(A)に示すように、主強磁性体1を含むYZ断面内において、半導体層10Cの露出した両側面は、保護膜11で被覆されている。同様に、図4(B)、図4(C)に示すように、第1副強磁性体2’を含むYZ断面内において、半導体層10Cの露出した両側面は、保護膜11で被覆され、第2副強磁性体2”を含むYZ断面内において、半導体層10Cの露出した両側面は、保護膜11で被覆されている。
保護膜11は、SiO2又はSiNxから構成される。なお、図4(A)〜図4(C)において、YZ断面内における導電領域3の幅は、半導体層10Cの幅よりも狭い例が図示されているが、これらの幅は同一であってもよい。
図5は更に具体的なスピン流回路の平面図である。これらの回路の接続は、図7に示す通りである。
上記のオペアンプA1は、基本的には、7つのMOSFET(電界効果トランジスタ)PMOS(1)、PMOS(2)、PMOS(3)、NMOS(1)、NMOS(2)、NMOS(3)、NMOS(4)から構成されている。なお、PMOSはPチャネルもMOSFETであり、NMOSはNチャネルのMOSFETである。
PMOSにおいては、図6(A)に示すように、ドレイン電極D及びソース電極Sの直下の半導体領域D1、S1がP型半導体領域からなり、これらの間の半導体層10Cのチャネルは無バイアス状態においてN型半導体となるようにN型不純物が添加され、半導体層10C上には絶縁層12を介してゲート電極Gが設けられている。絶縁層12は、SiO2からなる。
NMOSにおいては、図6(B)に示すように、ドレイン電極D及びソース電極Sの直下の半導体領域D2、S2がN型半導体領域からなり、これらの間の半導体層Cのチャネルは無バイアス状態においてP型半導体となるようにP型不純物が添加され、半導体層10C上には絶縁層12を介してゲート電極Gが設けられている。絶縁層12は、SiO2からなる。
このように、本実施形態の電圧検出回路は、第1MOSFET(NMOS(1))のゲート電極G及び第2MOSFET(NMOS(2))のゲート電極Gをそれぞれ入力端子とし、これらの入力端子への入力電位の差分を増幅して出力するアンプを有している。第1副強磁性体2’は第1MOSFET(NMOS(1))のゲート電極Gに接続され、第2副強磁性体2”は第2MOSFET(NMOS(2))のゲート電極Gに接続されている。
ゲート電極Gを共通とするPMOS(1)及びPMOS(2)と、PMOS(3)のソース電極(S)は、電源電位Vddに接続されており、NMOS(1)及びNMOS(2)のソース電極Sは、NMOS(3)を介して、グランドに接続されている。また、PMOS(3)のドレイン電極も、NMOS(4)を介して、グランドに接続されている。NMOS(3)及びNMOS(4)のゲート電極Gには、出力調整用のバイアス電位Vbiasが与えられる。アンプの入出力端子間には、抵抗Zがポリシリコンなどで形成されている。
この場合、アンプの出力Voutは、2つの入力端子としてのゲート電極Gへの入力電位の差分となる。
次に、上記スピン流回路が、ダイオード特性を示す原理について説明する。
図8はスピン伝導素子に順方向(強磁性体から半導体)に電子を注入した場合の磁界E(Oe)とスピン蓄積電圧(V)との関係を示すグラフである。注入する電子流の大きさは、0.1mA、1mA、3mAとし、この場合に、一方の副強磁性体に、磁界E(Oe)を印加した場合の、副強磁性体の電位Vsa(スピン蓄積電位)を示している。実線は、図1の-Yから+Yの向きに磁場を印加した場合のデータを示し、点線は、図1の+Yから-Yの向きに磁場を印加した場合のデータを示す。注入電流の大きさに拘らず、主強磁性体と副強磁性体の磁化方向が、一致した場合には、大きな出力(負電位)を得ることができる。
図9はスピン伝導素子に逆方向(半導体から強磁性体)に電子を注入した場合の磁界E(Oe)とスピン蓄積電圧(V)との関係を示すグラフである。注入する電子流の大きさは、0.1mA、1mA、3mAとし、この場合に、一方の副強磁性体に、磁界E(Oe)を印加した場合の、副強磁性体の電位Vsa(スピン蓄積電位)を示している。実線は、図1の-Yから+Yの向きに磁場を印加した場合のデータを示し、点線は、図1の+Yから-Yの向きに磁場を印加した場合のデータを示す。注入電流や磁化方向に拘らず、大きな出力(負電位)を得ることはできない。
上述の磁化方向が固定された強磁性体1,2’、2”の関係は、大きな負電位が得られる近傍の電界が第1副強磁性体2’に印加され、これと逆向きの電界が第2副強磁性体2”に印加された場合に相当する。
図10は注入した電子量Bais(mA)と、出力電圧(ΔV)の関係を示すグラフである。出力電圧(ΔV)は、第1副強磁性体2’と第2副強磁性体2”と間の電位差を示している。すなわち、順方向に電子流を流した場合には、出力電圧(ΔV)は、注入した電子量に比例し、逆方向に電子流を流した場合には、出力電圧(ΔV)は、殆ど変動せず、ダイオード特性を示すこととなる。
なお、電圧検出回路は、上述の構成に限定されない。
図11はスピン伝導素子を備える別のスピン流回路の平面図である。
すなわち、このスピン伝導素子では、半導体層10Cの副導電領域3B、3Cに接触するように、それぞれ電極4’、4”を設けてある。そして、領域R2には、配線電圧計V1,V2及び差分回路DIFを形成する。電圧計V1によって、電極2’、4’間の電圧(V1とする)を測定し、電圧計V2によって、電極2”、4”間の電圧(V2とする)を測定し、これらの出力を差分回路DIFに入力する。電極4’及び4”には配線4’w、4”wを電気的に接続する。場合、差分回路DIFからは、電圧V1とV2の差分が検出され、出力端子Voutから出力される。電極4’、4”の電位は、共通であるため、電圧V1とV2の差分は、第1副強磁性体2’と第2副強磁性体2”と間の電位差を検出していることになる。
なお、注入する電子流は、直流である方が好ましい。なぜならば、交流の電子流を用いた場合には、出力が半分になるからである。
例えば、図12は直流電流をスピン伝導素子に入力した場合のスピン流回路について説明する図(A)と、交流電流をスピン伝導素子に入力した場合のスピン流回路について説明する図(B)である。なお、強磁性体1,2’と導電領域3との間には、トンネル障壁層が介在している。このような素子を構成した場合の出力は、図13に示すようになる。
図13は図12の(A)、(B)それぞれのスピン流回路に、直流(DC)と交流(AC)の電流Ibを入力した場合の出力電圧V(V)を示すグラフである。交流を入力した場合には、その極性が正又は負の場合の一方のときにのみ出力をサンプリングするからであり、電極2’、4’間の電圧V(V)は、直流を入力した場合の半分となる。したがって、大きな出力を得るためには、上述の実施形態に係るスピン流回路においても、直流の電子流を主強磁性体に注入することが好ましい。
次に、図1に示したスピン流回路の製造方法について説明する。
(第1製造方法)
(工程1)まず、上記SOI基板に適当なマスクを用いてアライメントマークを形成する。次に、スピン伝導素子における導電領域3のみが開口したマスクを、半導体層10C上に形成し、この領域内にN型の元素のイオン注入を行う。例えば、5×1019cm-3の濃度とように不純物を半導体層10C中に打ち込む。イオン注入において、少なくとも界面(Si表面から20nm程度の深さまでの平均不純物濃度は、1×1019cm−3から5×1020cm−3になるように設定する。なお、界面直下の不純物濃度と、チャネルの不純物濃度は、必ずしも一致している必要はない。
(工程2)次に、スピン伝導素子が形成される領域RG1にマスクを施し、周囲の領域RG2内において、電圧検出回路を形成する。半導体層10Cに、N型又はP型の不純物をイオン注入することで、NMOS又はPMOSにおけるソース及びドレイン領域を形成する。
(工程3)注入した不純物が活性化するように、赤外線を用いて、半導体層10Cにフラッシュアニールを実施する。半導体層10Cの表面に、熱酸化又はスパッタ法によりSiO2からなる絶縁層12を形成する(図6参照)。この絶縁層12に、ソース電極及びドレイン電極を形成するためのコンタクトホールを形成し、コンタクトホール内にアルミニウムなどからなるソース電極及びドレイン電極を形成する。これらの電極はスパッタ法で形成することができる。さらに、ソース領域とドレイン領域間の絶縁層12上に、ゲート電極を形成し、NMOS及びPMOSが完成する。なお、NMOSのチャネル領域には予めP型の不純物を注入しておき、PMOSのチャネル領域には予めN型の不純物を注入し、アニールにより活性化しておく。各トランジスタには配線が接続され、図5に示す電極パッドが端部に形成されている。また、ポリシリコンからなる抵抗Zを半導体層上に形成し、アンプの入出力間に配線で接続する。各トランジスタ及び抵抗は、図5に示すように配線で接続される。
(工程4)次に、領域RG2にマスク(絶縁膜SiN)をパターニングし、領域RG1における半導体層10Cを露出させる。このマスクは、領域RG1にレジストを塗布した後、スパッタ法を用いて絶縁膜をRG2に堆積することにより、形成することができる。レジストは、絶縁膜の形成後に剥離する。露出した半導体層10Cの表面を洗浄する。この洗浄には、フッ酸水溶液及びRCA洗浄を用いることができる。
(工程5)更に、MBE(分子線ビームエピタキシー)法を用いて、領域RG1における半導体層10Cの表面に、トンネル障壁層(MgO)、強磁性体層(CoFe)、酸化防止膜(Ti)を順次積層する。これはMBE装置を用いて行う。
(工程6)次に、スパッタ装置にSOI基板を搬送し、チャンバ内において、酸化防止膜をArでスパッタすることで除去し、チャンバから、SOI基板を取り出すことなく、露出した強磁性体層上にスパッタ法で反強磁性層(IrMn又はPtMn)を堆積し、更に、この上にSiO2などの保護膜をスパッタ法で堆積する。磁界中にSOI基板を配置し、X軸方向の磁界(3kOe)を印加した状態で、これを加熱し(250℃、1時間)、強磁性体層(1,2’)の磁化方向を一方向に固定する。
(工程7)導電領域3よりも若干のマージンをとった大きさのマスクを積層された磁性層上の保護膜上に形成する。エッチングガスとしてAr、XeやSF6/O2を用いたドライエッチングを用い、領域RG1内において、マスクの外側の不要領域(保護膜、磁性層、トンネル障壁層、Si)を、中間絶縁層10B(図2参照)に到達するまで除去し、Y字型の電子及びスピン伝送領域を形成する。
(工程8)このエッチングにより露出した半導体層10Cの両側面に絶縁層11(図4参照)を形成する。絶縁層11はSiO或いはSiO2からなり、厚みは100nmである。絶縁層11の形成には、スパッタ法、CVD(化学的気相成長)法、又は、Siの熱酸化法を用いることができる。
(工程9)次に、Y字型のマスクを除去し、磁性層及び保護膜が形成された領域を露出させる。更に、露出した表面にレジストを塗布し、主強磁性体1、第1副強磁性体2’、第2副強磁性体2”が形成される領域のみが被覆されるようにレジストをパターニングし、これらの領域をマスクする。Arを用いたイオンミリングにより、上部の保護膜、反強磁性層、強磁性層を除去し、これらの下にある半導体層10Cの表面或いはトンネル障壁層を露出させる。なお、主強磁性体1、第1副強磁性体2’、第2副強磁性体2”が形成される領域には、保護膜、反強磁性層、及び強磁性層は残留している。次に、このマスクを除去する。
(工程10)更に、一方の第2副強磁性体2”に相当する領域のみが開口したマスクをレジストで形成し、Arを用いたイオンミリングによって、この領域内の保護膜、反強磁性層を除去し、除去によって露出した強磁性層上にスパッタ法などで保護膜(SiO2)を改めて形成する。しかる後、このマスクを除去する。第2副強磁性体2”の磁化の向きは、第1副強磁性体2’の磁化方向と逆向きに設定する。
(工程11)露出した半導体層10Cの表面又は、トンネル障壁層に開口を形成することによって露出した半導体層10Cの表面上に、電極4(及び4’、4”)をスパッタ法又は蒸着法で形成する。それぞれの電極4(図11の構造では加えて電極4’、4”)、強磁性体1,2’,2”上に、配線4w(4’w、4”w)、1w、2’w、2”wを電気的に接続する。これらの配線は、Ta(5nm)上に、AuCu(100nm)、Ta(5nm)をスパッタ法又は蒸着法により積層したものを用いる。なお、強磁性体に配線を接続する場合には、上部に位置する保護膜にコンタクトホールを設け、この内部に配線を形成する。
(工程12)次に、各配線1w,2’w、2”w、4wの端部に電極パッド1T,2’T、2”T、4Tをスパッタ法又は蒸着法で形成する。電極パッドとしては、AuCu(200nm)を用いることができる。
(工程13)次に、領域RG2に設けていたマスクを除去し、電圧検出回路を露出させる。これらの電圧検出回路の各トランジスタに、配線を施し、スピン伝導素子と電圧検出回路とを接続する。
(第2製造方法)
この製造方法は、(工程1)〜(工程5)までは、第1製造方法と同一であり、(工程6)を行わずに、続いて、以下の工程を実行する。
(工程A)導電領域3よりも若干のマージンをとった大きさのマスクを、強磁性層上に形成する。エッチングガスとしてAr、XeやSF6/O2を用いたドライエッチングを用い、領域RG1内において、マスクの外側の不要領域(強磁性層、トンネル障壁層、Si)を、中間絶縁層10B(図2参照)に到達するまで除去し、Y字型の電子及びスピン伝送領域を形成する。
(工程B)このエッチングにより露出した半導体層10Cの両側面に絶縁層11(図4参照)を形成する。絶縁層11はSiO或いはSiO2からなり、厚みは100nmである。絶縁層11の形成には、スパッタ法、CVD(化学的気相成長)法、又は、Siの熱酸化法を用いることができる。
(工程C)次に、Y字型のマスクを除去し、強磁性層が形成された領域を露出させる。更に、露出した表面にレジストを塗布し、主強磁性体1、第1副強磁性体2’、第2副強磁性体2”が形成される領域のみが被覆されるようにレジストをパターニングし、これらの領域をマスクする。Arを用いたイオンミリングにより、強磁性層を除去し、これらの下にある半導体層10Cの表面或いはトンネル障壁層を露出させる。なお、主強磁性体1、第1副強磁性体2’、第2副強磁性体2”が形成される領域には、強磁性層は残留している。次に、このマスクを除去する。主強磁性体1の磁化の向きと、第1副強磁性体2’及び第2副強磁性体2”の磁化の向きとは、同一方向にして設定する。その後、第1副強磁性体2’及び第2副強磁性体2”の保持力差を利用して第1副強磁性体2’及び第2副強磁性体2”の磁化の向きが逆向きになるように外部磁場を印加する。
(工程D)露出した半導体層10Cの表面又は、トンネル障壁層に開口を形成することによって露出した半導体層10Cの表面上に、電極4(及び4’、4”)をスパッタ法又は蒸着法で形成する。それぞれの電極4(図11の構造では加えて電極4’、4”)、強磁性体1,2’,2”上に、配線4w(4’w、4”w)、1w、2’w、2”wを電気的に接続する。これらの配線は、Ta(5nm)上に、AuCu(100nm)、Ta(5nm)をスパッタ法又は蒸着法により積層したものを用いる。
(工程E)次に、各配線1w,2’w、2”w、4wの端部に電極パッド1T,2’T、2”T、4Tをスパッタ法又は蒸着法で形成する。電極パッドとしては、AuCu(200nm)を用いることができる。
(工程F)次に、領域RG2に設けていたマスクを除去し、電圧検出回路を露出させる。更に、SOI基板の露出表面全体を覆うように絶縁膜を形成し、これをCMP(化学機械研磨)し、絶縁膜表面を平坦化する。上記電極パッドが位置する領域と電圧検出回路の電極パッド及び入力端子となるゲート電極上の絶縁膜に開口を形成し、開口内に金属(Cu)を埋め込み、しかる後、平坦化された絶縁膜を這うように、これらを図5に示すように接続する配線を形成する。すなわち、電圧検出回路のゲート電極とスピン伝導素子の電極パッド間を、絶縁膜上の配線を介して接続し、スピン伝導素子と電圧検出回路とを接続する。なお、上記では、各強磁性体1,2’,2”に配線を接続してから端部に電極パッドを設けたが、これはCMPを施す絶縁膜の形成後に、各磁性体1,2’,2”に到達する孔を、絶縁膜にあけ、この孔の開口内に金属を埋め込み、磁性体2’、2”と電圧検出回路におけるゲート電極を、絶縁膜上の配線を介して接続してもよい。なお、電流源が接続される電極パッドや電圧検出回路の出力用の電極パッドは、絶縁膜に設けられたコンタクトホール内の金属を介して、外部に引き出し、この金属上に電極パッドを更に形成することとしてもよい。
以上、説明したように、上述のスピン流回路は、スピン流の注入電流の大きさと向きにより生じる電圧のダイオード効果を利用した電流センサーである。この回路は、金属にスピンを注入するための電流を入力した場合、スピン流によって得られる出力電圧は電流の向きと電流量に対応して得られ、電流センサーとしても利用可能である。このセンサーは、磁性電極の磁化反転を伴わない構造であり、磁化反転に伴う余分なエネルギーの消費を抑制することができる。
10C・・・半導体層、3A・・・主導電領域、3B・・・第1副導電領域、3C・・・第2副導電領域、5・・・トンネル障壁層、1・・・主強磁性体、4・・・収集電極、2’・・・第1副強磁性体、2”・・・第2副強磁性体、A1・・・アンプ。
Claims (6)
- 半導体層内に形成された主導電領域と、
前記半導体層内に形成され前記主導電領域から分岐した第1副導電領域と、
前記半導体層内に形成され前記主導電領域から分岐した第2副導電領域と、
前記主導電領域上に形成され前記主導電領域内にトンネル障壁層を介して電子を注入又は抽出する主強磁性体と、
前記主導電領域上に形成された収集電極と、
前記第1副導電領域上に形成され、前記主強磁性体と同じ方向に磁化方向が固定された第1副強磁性体と、
前記第2副導電領域上に形成され、前記第1副強磁性体とは磁化方向が異なる方向に固定された第2副強磁性体と、
前記第1副強磁性体と前記第2副強磁性体との間の電圧を検出する電圧検出手段と、
を備えることを特徴とするスピン流回路。 - 前記主導電領域の表面側の深さ20nm以下の平均不純物濃度は、1×1019/cm3以上5×1020/cm3以下であることを特徴とする請求項1に記載のスピン流回路。
- 前記半導体層はSiからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピン流回路。
- 前記主強磁性体上に形成された主反強磁性層と、
前記第1副強磁性体上に形成された第1反強磁性層と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスピン流回路。 - 前記主強磁性体、前記第1副強磁性体、及び前記第2副強磁性体は、形状異方性により磁化方向が固定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のスピン流回路。
- 前記電圧検出手段は、第1MOSFETのゲート電極及び第2MOSFETのゲート電極をそれぞれ入力端子とし、これらの入力端子への入力電位の差分を増幅して出力するアンプを有しており、
前記第1副強磁性体は前記第1MOSFETの前記ゲート電極に接続され、
前記第2副強磁性体は前記第2MOSFETのゲート電極に接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のスピン流回路。
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