以下、図面を参照して本発明による情報記憶媒体、再生方法及び記録方法の実施の形態を説明する。
《本発明の実施形態の特徴と効果のまとめ》
(1)トラックピッチ/ビットピッチと最適記録パワーの関係
… 従来のように基板形状変化を伴う記録原理の場合、トラックピッチが詰まると“クロスライト”“クロスイレーズ”が発生し、ビットピッチを詰めると符号間クロストークが発生する。本実施形態のように基板形状変化を伴わない記録原理を考案する事で、トラックピッチ/ビットピッチを詰められて高密度化が可能となる。また、同時に上記の記録原理では記録感度が向上し、最適記録パワーを小さく設定できるため高速記録化と記録膜の多層化が可能となる
(2)620nm以下の短波長光記録で、ECCブロックが複数の小ECCブロックの組み合わせで構成されると共に連続する2セクター内の各データID情報が互いに異なる小ECCブロック内に配置
… 本実施形態に依れば、図1(b)に示すように、記録層3-2内での局所的な光学特性変化を記録原理とするため、記録時の記録層3-2内での到達温度が透明基板2-2の塑性変形又は有機色素記録材料の熱分解や気化(蒸発)による従来の記録原理よりも低い。従って、再生時の記録層3-2内での到達温度と記録温度の差が小さい。本実施形態では1ECCブロック内で小ECCブロック間のインターリーブ処理とデータIDの配置を工夫する事で繰り返し再生時に記録膜が万一劣化した場合の再生信頼性を向上させている。
(3)620nmよりも短い波長の光で記録され、記録された部分が非記録部分より反射率が上がる
… 一般的な有機色素材料の吸収分光特性の影響で620nmよりも短い波長の光では大幅に光吸収率が低下して記録感度が下がる。そのため従来のDVD−Rの記録原理である基板変形を発生させるには非常に大きな露光量を必要とする。本実施形態のように記録された部分(記録マーク)内で非記録部分より反射率が上がる“L→H”有機色素記録材料を採用する事で、“電子結合の分離による脱色作用”を用いた記録マークの形成により基板変形を不要とし、記録感度が向上する。
4.“L→H”有機色素記録膜とPSK/FSK変調ウォブルグルーブ
… 再生時のウォブル同期が取り易く、ウォブルアドレスの再生信頼性が向上する 5.“L→H”有機色素記録膜と再生信号変調度規定
… 記録マークからの再生信号に関する高いC/N比が確保でき、記録マークからの再生信頼性が向上
6.“L→H”有機色素記録膜とミラー部での光反射率範囲
… システムリードイン領域SYLDIからの再生信号に関する高いC/N比が確保でき、高い再生信頼性が確保できる
7.“L→H”有機色素記録膜とオントラック時の未記録領域からの光反射率範囲
… 未記録領域内でのウォブル検出信号に関する高いC/N比が確保でき、ウォブルアドレス情報に対する高い再生信頼性を確保できる
8.“L→H”有機色素記録膜とウォブル検出信号振幅範囲
… ウォブル検出信号に関する高いC/N比が確保でき、ウォブルアドレス情報に対する高い再生信頼性を確保できる
《 目 次 》
第0章 使用波長と本実施形態との関係説明
… 本実施形態適用範囲の使用波長説明
第1章 本実施形態における情報記憶媒体構成要素の組み合わせ説明
表1に本実施形態における情報記憶媒体構成要素内容と組み合わせ方法を示す。
第2章 相変化記録膜と有機色素記録膜との再生信号の違い説明
2-1)記録原理/記録膜構造の違いと再生信号生成に関する基本的な考え方の違い…λmax writeの定義
2-2)プリピット/プリグルーブ領域内での光反射層形状の違い
光反射層形状(スピンコートとスパッタ蒸着の違い)、再生信号に及ぼす影響
第3章 本実施形態における有機色素記録膜の特徴説明
3-1)従来の有機色素材料を用いた追記記録膜(DVD−R)での高密度化に対する問題点
3-2)本実施形態における有機色素記録膜に共通する基本的特徴説明
… 記録層厚みの下限値、本実施形態で効果が生まれるチャネルビット長/トラックピッチ、繰り返し再生可能回数、最適な再生パワー、
グルーブ幅とランド幅の比率…ウォブルアドレスフォーマットとの関係、
グルーブ部とランド部での記録層厚みの関係、
記録情報のエラー訂正能力の向上技術やPRMLとの組み合わせ
3-3)本実施形態における有機色素記録膜に共通する記録特性…最適記録パワーの上限値
3-4)本実施形態における“H→L”記録膜に関する特徴説明
… 未記録での反射率の上限値、
λmax writeの値とλlmaxの値(未記録/既記録位置での吸光度最大波長)の関係
未記録/既記録位置での反射率と変調度と再生波長での吸光値の相対値範囲…n・k範囲
要求解像度特性と記録層厚みの上限値の関係
第4章 再生装置または記録再生装置と記録条件/再生回路の説明
4-1)本実施形態での再生装置もしくは記録再生装置の構造と特徴説明
… 使用波長範囲、NA値、RIM Intensity
4-2)本実施形態での再生回路の説明
4-3)本実施形態での記録条件の説明
第5章 本実施形態における有機色素記録膜の具体的実施形態説明
5-1)本実施形態における“L→H”記録膜に関する特徴説明
… 記録原理、未記録/既記録位置での反射率と変調度
5-2)本実施形態の“L→H”記録膜に関する光吸収スペクトルの特徴
… 最大吸収波長λmax writeの値、Al405の値とAh405の値の設定条件
5-3)アニオン部:アゾ金属錯体+カチオン部:色素
5-4)アゾ金属錯体+中心金属として“銅”使用
… 記録後での光吸収スペクトルが“H→L”記録膜では広がり、“L→H”記録膜では狭くなる
記録前後での極大(最大)吸収波長変化量の上限値
記録前後での極大(最大)吸収波長変化量が少なく極大(最大)吸収波長での吸光度が変化する
5-5)中心金属が4個の酸素原子とイオン結合するアゾ金属錯体
第6章 塗布形有機色素記録膜と光反射層界面でのプリグルーブ形状/プリピット形状に関する説明
6-1)光反射層(材質と厚み)
… 厚み範囲と不動態化構造 … 記録原理と劣化防止(基板変形や空洞より信号劣化し易い)
6-2)塗布形有機色素記録膜と光反射層界面でのプリピット形状に関する説明
… システムリードイン領域でトラックピッチ/チャネルビットピッチを広げた効果 システムリードイン領域での再生信号振幅値と解像度
光反射層4-2でのランド部とプリピット部での段差量の規定
6-3)塗布形有機色素記録膜と光反射層界面でのプリグルーブ形状に関する説明
… 光反射層4-2でのランド部とプリグルーブ部での段差量の規定
プッシュプル信号振幅範囲
ウォブル信号振幅範囲 … ウォブル変調方式との組み合わせ
第7章 第1の次世代光ディスク:HD DVD方式(以下、Hフォーマットと称する)の説明
… 記録原理と再生信号劣化対策(基板変形や空洞より信号劣化し易い)… 誤り訂正符号(Error correction code)ECC構造、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式
グルーブ領域内広い平坦領域とウォブルアドレスフォーマットの関係
追加記録時には非データ部であるVFO領域で多重書きする
… 多重書き領域でのDC成分変化の影響が軽減。特に“L→H”記録膜で効果が顕著。
第8章 第2の次世代光ディスク:Bフォーマットの説明
… 記録原理と再生信号劣化対策(基板変形や空洞より信号劣化し易い)
グルーブ領域内広い平坦領域とウォブルアドレスフォーマットの関係
追加記録時には非データ部であるVFO領域で多重書きする
… 多重書き領域でのDC成分変化の影響が軽減。特に“L→H”記録膜で効果が顕著。
以下に本実施形態の説明を行う。
第0章 使用波長と本実施形態との関係説明
有機色素材料を記録材料に用いた追記形情報記憶媒体として、記録/再生用レーザ光源波長780nmを用いたCD−Rディスクと、記録/再生用レーザ光源波長650nmを用いたDVD−Rディスクが既に市販されている。さらに、高密度化した次世代の追記形情報記憶媒体では、後述する表1のHフォーマット(D1)またはBフォーマット(D2)のいずれのフォーマットでも記録または再生用のレーザ光光源波長は405nm近傍(つまり355nmから455nmの範囲)が使われる事を想定している。有機色素材料を用いた追記形情報記憶媒体では、使用光源波長がわずかに変化するだけで記録/再生特性が敏感に変化する。原理的には記録/再生用レーザ光源波長の二乗に反比例して密度が上げられるので、記録/再生用に用いられるレーザ光源波長は短い方が望ましいが、上記の理由からCD−RディスクやDVD−Rディスクに利用される有機色素材料を405nm用の追記形情報記憶媒体として使うことができない。しかも、405nmは紫外線波長に近いので、“405nm光で容易に記録可能”な記録材料は紫外線照射により特性変化し易く、長期安定性に欠ける欠点が生じやすい。利用される有機色素材料により特性が大幅に異なるので一般論として断定し辛いが、一例として具体的な波長で上記の特徴を説明する。650nm光で最適化された有機色素記録材料は使用する光が620nmより短くなると、記録/再生特性が歴然と変化する。従って、620nmよりも短い光で記録/再生を行う場合には、記録光または再生光の光源波長に最適な有機色素材料の新規開発が必要となる。530nmより短い光で記録が容易な有機色素材料は紫外線照射による特性劣化を起こし易く、長期安定性に欠ける。本実施形態では、405nm近傍での使用に適した有機記録材料に付いての実施形態について説明を行うが、半導体レーザ光源のメーカーによる発光波長の変動も考慮に入れた355〜455nmの範囲で安定に使用可能な有機記録材料に関する実施形態を説明する。すなわち、本実施形態の適応範囲は、620nm以下の光源に適合したもの、望ましくは530nmより短い光(最も狭い範囲の定義では355〜455nmの範囲)に対応している。
また、有機色素材料の光吸収スペクトルによる光記録感度も記録波長の影響を大きく受ける。長期安定性に適した有機色素材料は一般的に波長が短い光に対する吸光度が小さくなる傾向が有る。特に、620nmより短い光に対して吸光度が大幅に低下し、530nmより短い光では特に激減する。従って、最も厳しい条件として355〜455nmの範囲のレーザ光で記録する場合には、吸光度が低いために記録感度が悪く、本実施形態に示すような新たな記録原理を採用すると言う新規考案が必要となる。
記録または再生に用いられる集光スポットのサイズは使用される光の波長に比例して小さくなる。従って、集光スポットサイズの観点のみから考えると、波長を上述した値まで短くすると、従来技術である現行DVD−Rディスク(使用波長:650nm)に対して波長分だけトラックピッチやチャネルビット長を短くしたい。しかし“3−2−A〕本実施形態の技術の適用を必要とする範囲”で後述するように、DVD−Rディスクなど従来の追記形情報記憶媒体の記録原理を使用している限りトラックピッチやチャネルビット長を短くできないと言う問題が有る。下記に説明する本実施形態で考案した技術を利用する事で初めて上述した波長に比例してトラックピッチやチャネルビット長を短くできる。
第1章 本実施形態における情報記憶媒体構成要素の組み合わせ説明
本実施形態では620nm以下の光源に適合した有機記録材料(有機色素材料)を考案した所に大きな技術的特徴が有るが、その有機記録材料(有機色素材料)には記録マーク内で光反射率が増加すると言う従来のCD−RディスクやDVD−Rディスクには存在しない独自な特徴(Low to High特性)を有している。従って、本実施形態に示す有機記録材料(有機色素材料)の特徴をより効果的に生かす情報記憶媒体の構造、寸法あるいはフォーマット(情報記録形式)を組み合わせた所にも本実施形態の技術的な特徴とそれにより発生する新規な効果が生まれる。本実施形態での新たな技術的特徴と効果を生み出す組み合わせを表1に示す。すなわち、本実施形態における情報記憶媒体では構成要素としては
A〕有機色素記録膜、
B〕プリフォーマット(プリグルーブ形状/寸法やプリピット形状/寸法など)、
C〕ウォブル条件(ウォブル変調方法やウォブル変化形状、ウォブル振幅、ウォブル配置方法など)
D〕フォーマット(情報記憶媒体に記録する/予め記録されたデータの記録形式など)などが有り、各構成要素毎の具体的な実施形態が表1の各列に記載された内容となっている。そして、表1に示した各構成要素毎の具体的な実施形態の組み合わせ方に本実施形態の技術的な特徴と独自な効果が発生している。以下に実施形態を説明する段階で個々の実施形態の組み合わせ状態を記載するが、特に組み合わせを指定しない構成要素に関しては A5)任意の塗布記録膜、
B3)任意グルーブ形状と任意ピット形状、
C4)任意変調方式、
C6)任意振幅量と、
D4)任意の追記方法とフォーマット
を採用している事を意味する。
第2章 相変化記録膜と有機色素記録膜との再生信号の違い説明
2−1)記録原理/記録膜構造の違いと再生信号生成に関する基本的な考え方の違い 図1(a)に標準的な相変化記録膜構造(主に書替え形情報記憶媒体に使用されている)を示し、図1(b)に標準的な有機色素記録膜構造(主に追記形情報記憶媒体に使用されている)を示す。本実施形態の説明文内では図1に示した透明基板2−1、2−2を除いた記録膜構造全体を(光反射層4−1、4−2を含めて)“記録膜”と定義し、記録材料が配置されている記録層単体3−1、3−2とは区別する。相変化を用いた記録材料では一般的に既記録領域(記録マーク内)と未記録領域(記録マーク外)での光学的な特性変化量が小さいので、再生信号の相対的な変化率を強調するためのエンハンス構造を採用している。そのため相変化記録膜構造では図1(a)に示すように透明基板2−1と相変化形記録層3−1との間に下地中間層5を配置し、光反射層4−2と相変化形記録層3−1との間に上側中間層6を配置している。本実施形態では透明基板2−1、2−2の材料として透明プラスチック材料であるポリカーボネートPCあるいはアクリルPMMA(ポリ・メチル・メタクリレート)を採用している。本実施形態で使用されるレーザ光7の中心波長は405nmであり、この波長におけるポリカーボネートPCの屈折率n21、n22は1.62近傍になっている。相変化形記録材料として最も一般的に用いられているGeSbTe(ゲルマニウム・アンチモン・テルル)での405nmにおける標準的な屈折率n31と吸収係数k31は結晶領域ではn31≒1.5、k31≒2.5に対して非晶質領域ではn31≒2.5、k31≒1.8となっている。このように相変化形記録材料における(非晶質領域内での)屈折率は透明基板2−1の屈折率と大きく異なり、相変化記録膜構造では各層の界面でのレーザ光7の反射が起こり易くなっている。上記のように(1)相変化記録膜構造がエンハンス(強調)構造を取っている、(2)各層間の屈折率差が大きいなどの理由から相変化記録膜に記録された記録マークからの再生時における光反射量変化(記録マークからの光反射量と未記録領域からの光反射量の差分値)は下地中間層5、記録層3−1、上側中間層6、光反射層4−2のそれぞれの界面で発生する多重反射光の干渉結果として得られる。図1(a)ではレーザ光7が下地中間層5と記録層3−1との間の界面、記録層3−1と上側中間層6との間の界面、上側中間層6と光反射層4−2との間の界面のみで反射しているように見えるが、実際には複数回の多重反射光間の干渉結果で光反射光量変化が得られている。
それに対して有機色素記録膜構造は有機色素記録層3−2と光反射層4−2のみの非常に簡素な積層構造を取っている。この有機色素記録膜を使用した情報記憶媒体(光ディスク)は追記形情報記憶媒体と呼ばれ、1回のみの記録が可能であるが、前記相変化記録膜を用いた書替え形情報記憶媒体のように一度記録した情報の消去処理や書き替え処理はできない。一般的な有機色素記録材料の405nmでの屈折率はn32≒1.4(各種の有機色素記録材料の405nmでの屈折率範囲としてもn32=1.4〜1.9)、吸収係数k32≒0.2(各種の有機色素記録材料の405nmでの吸収係数範囲としてもk32≒0.1〜0.2)近傍が多い。有機色素記録材料と透明基板2−2間の屈折率差が小さいので記録層3−2と透明基板2−2との間の界面での光反射量はほとんど生じない。従って、有機色素記録膜からの光学的再生原理(反射光量変化を発生する理由)は上述したような相変化記録膜内での“多重干渉”では無く、“光反射層4−2で反射して戻って来るレーザ光7に対する光路途中での(干渉も含めた)光量損失”が主な要因となっている。光路途中での光量損失を引き起こす具体的な理由は“レーザ光7内で部分的に引き起こされる位相差による干渉現象”や“記録層3−2内での光吸収現象”が有る。プリグルーブやプリピットの無い鏡面上での未記録領域における有機色素記録膜の光反射率は光反射層4−2におけるレーザ光7の光反射率から記録層3−2内を通過する時の光吸収量を差し引いた値で単純に求まる所に特徴がある。上述したように“多重干渉”の計算により光反射率を求める相変化記録膜とは大きな違いが有る。
まず始めに従来技術として現行DVD−Rディスクで解釈されている記録原理について説明する。現行DVD−Rディスクでは記録膜にレーザ光7を照射すると、記録層3−2が局所的にレーザ光7のエネルギーを吸収して高熱になる。特定温度を越えると、透明基板2−2が局所的に変形する。透明基板2−2の変形を誘発するメカニズムはDVD−Rディスクの製造メーカーにより異なるが、
(1)記録層3−2の気化エネルギーによる局所的に透明基板2−2が塑性変形や
(2)記録層3−2から熱が透明基板2−2に伝わり、その熱により局所的に透明基板2−2が塑性変形
が原因と言われている。透明基板2−2が局所的に塑性変形すると、透明基板2−2を通過して光反射層4−2で反射し、再度透明基板2−2を通過して戻って来るレーザ光7の光学的距離が変化する。局所的に塑性変形した透明基板2−2の部分を通過して戻ってくる記録マーク内からのレーザ光7と、変形して無い透明基板2−2の部分を通過して戻ってくる記録マーク周辺部からのレーザ光7との間に位相差が生じるので、両社間の干渉により反射光の光量変化が生じる。また、特に、上記(1)のメカニズムが生じた場合には、記録層3−2の記録マーク内が気化(蒸発)により空洞化して生じる実質的な屈折率n32の変化、あるいは記録マーク内での有機色素記録材料の熱分解により生じる屈折率n32の変化も上記の位相差発生に寄与する。現行DVD−Rディスクでは、透明基板2−2が局所的に変形するまで記録層3−2が高温(上記(1)のメカニズムでは記録層3−2の気化温度、(2)のメカニズムでは透明基板2−2を塑性変形させるために必要な記録層3−2内温度)になる必要や、記録層3−2の一部を熱分解または気化(蒸発)させるために高温にする必要が有り、記録マークを形成させるためにはレーザ光7の大きなパワーが必要となる。
記録マークを形成するには第1段階として記録層3−2がレーザ光7のエネルギーを吸収できる必要が有る。記録層3−2内の光吸収スペクトルが有機色素記録膜の記録感度に大きく影響を及ぼす。記録層3−2を形成する有機色素記録材料内での光の吸収原理を本実施形態の(A3)を用いて説明する。
化1は表1に示した情報記憶媒体構成要素の具体的内容“(A3)アゾ金属錯体+Cu”の具体的な構造式を示している。化1に示したアゾ金属錯体の中心金属Mを中心とした円形の周辺領域が発色領域8となる。この発色領域8をレーザ光7が通過すると、この発色領域8内の局在電子がレーザ光7の電場変化に共鳴(共振)してレーザ光7のエネルギーを吸収する。この局在電子が最も共鳴(共振)してエネルギーを吸収し易い電場変化の周波数に対してレーザ光7の波長に換算した値を最大吸収波長と呼び、λmaxで表す。化1に示すような発色領域8(共鳴範囲)の長さが長くなる程、最大吸収波長λmaxが長波長側にシフトする。また、化1において中心金属Mの原子を代える事で中心金属M周辺の局在電子の局在範囲(中心金属Mが局在電子をどれだけ中心付近に引き寄せられるか)が変化し、最大吸収波長λmaxの値が変化する。
絶対零度でかつ純度が高く発色領域8が一箇所しか無い場合の有機色素記録材料の光吸収スペクトルは最大吸収波長λmax近傍で幅の狭い線スペクトルを描く事が予想されるが、常温で不純物を含み更に、複数の光吸収領域を含んだ一般的な有機色素記録材料の光吸収スペクトルは最大吸収波長λmaxを中心とした光の波長に対する幅の広い吸光特性を示している。現行DVD−Rディスクに用いられている有機色素記録材料の光吸収スペクトルの一例を図2に示す。図2において有機色素記録材料を塗布して形成した有機色素記録膜に対して照射する光の波長を横軸に取り、それぞれの波長の光を有機色素記録膜に照射した時の吸光度を縦軸に取ってある。吸光度とは追記形情報記憶媒体として完成した状態(あるいは透明基板2−2上に記録層3−2が形成されたのみの状態(図1(b)の構造に対して光反射層4−2が形成される前の状態))に対して透明基板2−2側から入射強度Ioのレーザ光を入射させ、反射したレーザ光強度Ir(記録層3−2側から透過したレーザ光の光強度It)を測定して得られる値で有る。吸光度Ar(At)は
Ar≡−log10(Ir/Io) (A−1)
At≡−log10(It/Io) (A−2)
で表される。今後特に断らない限り吸光度としては(A−1)式で表させる反射形の吸光度Arの事を示して説明を行うが、本実施形態においてはそれに限らず、(A−2)式で表させる透過形の吸光度Atとして考える事も出来る。図2に示した実施形態では発色領域8を含む光吸収領域が複数存在しているため、吸光度が極大になる位置が複数存在する。この場合には、吸光度が極大値を取る時の最大吸収波長λmaxが複数存在する。現行DVD−Rディスクにおける記録用レーザ光の波長は650nmになっている。本実施形態において最大吸収波長λmaxが複数存在した場合には、記録用レーザ光の波長に最も波長が近い最大吸収波長λmaxの値が重要になって来る。従って、本実施形態説明文中に限り、記録用レーザ光の波長に最も近い位置にある最大吸収波長λmaxの値を“λmax write”と定義し、他のλmax(λmax 0)と区別する。
2−2)プリピット/プリグルーブ領域内での光反射層形状の違い
プリピット領域またはプリグルーブ領域10での記録膜の形成形状比較を図3に示す。図3(a)は相変化記録膜に対する形状を示している。下地中間層5、記録層3−1、上側中間層6、光反射層4−1いずれの層を形成する場合にも真空中でスパッタ蒸着、真空蒸着またはイオンプレーティングのいずれかの方法を用いる。その結果、全ての層で透明基板2−1の凹凸形状を比較的忠実に複製する。例えば、透明基板2−1のプリピット領域またはプリグルーブ領域10での断面形状が矩形または台形になっていた場合には、記録層3−1と光反射層4−1の断面形状も概略矩形または台形となる。
図3(b)は有機色素記録膜を用いた場合の記録膜として従来技術である現行DVD−Rディスクの一般的記録膜断面形状を示す。この場合の記録膜3−2の形成方法としては図3(a)とは異なりスピンコーティング(またはスピナーコーディング)と言う全く異なる方法を用いる。スピンコーティングとは記録層3−2を形成する有機色素記録材料を有機溶剤に溶かして透明基板2−2上に塗布した後、透明基板2−2を高速で回転させて遠心力で塗布剤を透明基板2−2の外周側へ広げ、有機溶剤を気化させる事で記録層3−2を形成する方法である。この方法を用いると有機溶剤の塗布工程を用いるため、記録層3−2表面(光反射層2−2との界面)が平坦になり易い。その結果、光反射層2−2と記録層3−2との間の界面での断面形状は透明基板2−2の表面(透明基板2−2と記録層3−2との界面)形状とは異なった形状となる。例えば、透明基板2−2の表面(透明基板2−2と記録層3−2との界面)の断面形状が矩形または台形となっているプリグルーブ領域では光反射層2−2と記録層3−2との間の界面での断面形状は概略V字形の溝形状に、プリピット領域では概略円錐の側面形状になる。更に、スピンコーティング時に有機溶剤が凹部に溜まり易いため、プリピット領域またはプリグルーブ領域10内での記録層3−2の厚みDg(図3(b)に示すようにプリピット領域またはプリグルーブ領域10の底面から光反射層2−2との界面の最も低くなった位置までの距離)がランド領域12内での厚みDlよりも大幅に厚く(Dg>Dlと)なる。その結果、プリピット領域またはプリグルーブ領域10での透明基板2−2と記録層3−2との界面の凹凸量が透明基板2−2と記録層3−2との界面での凹凸量より大幅に少なくなっている。
このように光反射層2−2と記録層3−2との間の界面での凹凸形状が鈍るとともに凹凸量も大幅に小さくなるため、記録膜形成方法の違いにより透明基板2表面(プリピット領域またはプリグルーブ領域10)の凹凸形状と寸法が同じ場合には、レーザ光を照射した時の有機色素記録膜からの反射光の回折強度が相変化記録膜からの反射光の回折強度より大幅に劣化する。その結果、透明基板2表面(プリピット領域またはプリグルーブ領域10)の凹凸形状と寸法が同じ場合には、従来の有機色素記録膜を用いた場合には相変化記録膜を用いた場合に比べて
(1)プリピット領域からの光再生信号の変調度が小さく、プリピット領域からの信号再生信頼性が悪い
(2)プリグルーブ領域からのプッシュプル法による充分大きなトラックずれ検出信号が得辛い
(3)プリグルーブ領域がウォブリング(蛇行)した場合の充分に大きなウォブル検出信号が得辛い
と言う特徴が有る。
また、DVD−Rディスクではアドレス情報等の特定情報がランド領域12に微少な凹凸(ピット)形状で記録されているため、プリピット領域またはプリグルーブ領域10の幅Wgよりもランド領域12の幅Wlが広く(Wg>Wl)なっている。
第3章 本実施形態における有機色素記録膜の特徴説明
3−1)従来の有機色素材料を用いた追記記録膜(DVD−R)での高密度化に対する問題点
“2−1)記録原理/記録膜構造の違いと再生信号生成に関する基本的な考え方の違い”で既に説明したように、従来の有機色素材料を用いた追記形情報記憶媒体である現行のDVD−RとCD−Rの一般的な記録原理は“透明基板2−2の局所的な塑性変形”あるいは“記録層3−2内の局所的な熱分解や気化”を伴っている。従来の有機色素材料を用いた追記形情報記憶媒体における記録マーク9位置での具体的な透明基板2−2の塑性変形状況を図4に示す。代表的な塑性変形状況は2種類存在し、図4(a)に示すように記録マーク9位置でのプリグルーブ領域の底面14の深さ(隣接するランド領域12との間の段差量)が未記録領域でのプリグルーブ領域11の底面の深さと異なる場合(図4(a)に示した例では記録マーク9位置でのプリグルーブ領域の底面14の深さが未記録領域よりも浅くなっている)と、図4(b)に示すように記録マーク9位置でのプリグルーブ領域の底面14が歪み微少に湾曲する(底面14の平坦性が崩れる:図4(b)に示した例では記録マーク9位置でのプリグルーブ領域の底面14が下側に向かって微少に湾曲している)場合が有る。いずれの場合でも記録マーク9位置での透明基板2−2の塑性変形範囲が広い領域に及ぶ特徴が有る。従来技術である現行のDVD−Rディスクではトラックピッチが0.74μm、チャネルビット長が0.133μmとなっている。この程度の大きな値の場合には記録マーク9位置での透明基板2−2の塑性変形範囲が広い領域に及んでも比較的安定な記録処理と再生処理が行える。
しかし。トラックピッチを上記の0.74μmより狭くしていくと、記録マーク9位置での透明基板2−2の塑性変形範囲が広い領域に及ぶために隣接トラックへの悪影響が現れ、隣接トラックまで記録マーク9が広がる“クロスライト”や多重書きにより既に存在している隣接トラックの記録マーク9を実質的に消してしまう(再生不能にする)“クロスイレーズ”の現象が発生する。また、トラックに沿った方向(円周方向)においてチャネルビット長を0.133μmより狭くすると、符号間干渉が現れ、再生時のエラーレイトが大幅に増加して再生の信頼性が低下するという問題が発生する。
3−2)本実施形態における有機色素記録膜に共通する基本的特徴説明
3−2−A〕本実施形態の技術の適用を必要とする範囲
図4に示すように透明基板2−2の塑性変形あるいは記録層3−2内の局所的な熱分解や気化現象を伴う従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)においてどの程度トラックピッチを詰めると悪影響が現れるか、あるいはどの程度チャネルビット長を詰めると悪影響が現れるか、及びその理由について技術的な検討を行った結果を以下に説明する。従来の記録原理を利用した場合に悪影響が出始める範囲が本実施形態に示す新規の記録原理により効果を発揮する(高密度化に適した)範囲を示している。
(1)記録層3−2の厚みDgの条件
許容チャネルビット長の下限値や許容トラックピッチの下限値を理論的に割り出すために熱解析を行おうとすると、実質的に可能な記録層3−2の厚みDgの範囲が重要となる。図4に示すような透明基板2−2の塑性変形を伴う従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)において、情報再生用集光スポットが記録マーク9内に有る場合と、記録層3−2の未記録領域内に有る場合の光反射量の変化は“記録マーク9内と未記録領域内での光学的距離の違いによる干渉効果”の要因が最も大きい。また、その光学的距離の違いは主に“透明基板2−2の塑性変形による物理的な記録層3−2の厚みDg(透明基板2−2と記録層3−2の界面から記録層3−2と光反射層4−2の界面までの物理的な距離)の変化”と、“記録マーク9内での記録層3−2の屈折率n32の変化”が起因している。従って、記録マーク9内と未記録領域内との間で充分な再生信号(光反射量の変化)を得るためには、レーザ光の真空中の波長をλとした時、未記録領域での記録層3−2の厚みDgの値がλ/n32と比較して有る程度の大きさを持っている必要が有る。そうで無いと、記録マーク9内と未記録領域内との間での光学的距離の差(位相差)が現れず、光の干渉効果が薄くなる。実際には最低でも
Dg≧λ/8n32 (1)
望ましくは
Dg≧λ/4n32 (2)
の条件が必要となる。
取りあえず、現在の検討の時点ではλ=405nm近傍を仮定する。405nmにおける有機色素記録材料の屈折率n32の値は一般的に1.3〜2.0の範囲に有る。従って、記録層3−2の厚みDgの値としては(1)式にn32=2.0を代入する結果、
Dg≧25nm (3)
が必須の条件となる。なお、ここでは透明基板2−2の塑性変形を伴う従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)の有機色素記録層を405nmの光に対応させた時の条件について検討を行っている。後述するように本実施形態では透明基板2−2の塑性変形を起こさず、吸収係数k32の変化を記録原理の主要因として説明するが、記録マーク9からDPD(Differential Phase Detection)法を用いてトラックずれ検出をする必要が有るので、実際には記録マーク9内で屈折率n32の変化を起こしている。従って、(3)式の条件は透明基板2−2の塑性変形を起こさない本実施形態に於いても満たすべき条件となっている。
別の観点からも記録層3−2の厚みDgの範囲を指定できる。図3(a)に示した相変化記録膜の場合には透明基板の屈折率をn21とした時、プッシュプル法を用いて最もトラックずれ検出信号が大きく出る時のプリピット領域とランド領域間の段差量はλ/(8n21)となる。しかし、図3(b)に示した有機色素記録膜の場合には前述したように、記録層3−2と光反射層4−2の界面での形状が鈍り段差量も小さくなるので、透明基板2−2上でのプリピット領域とランド領域間の段差量はλ/(8n22)より大きくする必要が有る。透明基板2−2の材質として例えば、ポリカーボネートを用いた場合の405nmでの屈折率はn22≒1.62なので、プリピット領域とランド領域間の段差量は31nmより大きくする必要が有る。スピンコーティング法を用いる場合、プリグルーブ領域内の記録層3−2の厚みDgを透明基板2−2上でのプリピット領域とランド領域間の段差量より大きくしないとランド領域12での記録層3−2の厚みDlが無くなる危険性が有る。したがって上記の検討結果から
Dg≧31nm (4)
と言う条件も満足する必要が有る。(4)式の条件も透明基板2−2の塑性変形を起こさない本実施形態に於いても満たすべき条件となっている。(3)式、(4)式で下限値の条件を示したが、熱解析に用いた記録層3−2の厚みDgとしては(2)式の等号部にn32=1.8を代入して得た値Dg≒60nmを利用した。
そして、透明基板2−2の材料として標準的に用いられているポリカーボネートを仮定し、透明基板2−2側の熱変形温度の見積もり値としてポリカーボネートのカラス転移温度である150℃を設定した。熱解析を用いた検討には405nmにおける有機色素記録膜3−2の吸収係数の値としてk32=0.1〜0.2の値を想定した。さらに、集光用対物レンズのNA値及び対物レンズ通過時の入射光強度分布を従来のDVD−Rフォーマットでの前提条件であるNA=0.60及びHフォーマット(表1(D1):NA=0.65)とBフォーマット(表1(D2):NA=0.85)の場合を検討した。
(2)チャネルビット長の下限値条件
記録パワーを変化させた時の記録層3−2に接する透明基板2−2側の熱変形温度に達する領域のトラックに沿った方向での長さ変化を調べ、再生時のウィンドマージンも考慮した許容チャネルビット長さの下限値を検討した。その結果、チャネルビット長を105nmより小さくするとわずかな記録パワーの変化に応じて透明基板2−2側の熱変形温度に達する領域のトラックに沿った方向での長さ変化が発生して充分なウィンドマージンが取れないと考えられる。熱解析の検討上ではNAの値として0.60、0.65、0.85いずれの場合も類似した傾向を示している。NA値を変える事で集光スポットサイズは変化するが、熱の広がり範囲が広い(記録層3−2に接する透明基板2−2側の温度分布の勾配が比較的なだらか)のが原因と考えられる。上記熱解析では記録層3−2に接する透明基板2−2側の温度分布を検討しているため、記録層3−2の厚みDgの影響は現れない。
更に、図4に示す透明基板2−2の形状変化が生じた場合には基板変形領域の境界位置がぼやけている(曖昧)ため、より一層ウィンドマージンを低下させている。記録マーク9が形成されている領域の断面形状を電子顕微鏡で観察すると、基板変形領域の境界位置のぼけ量は記録層3−2の厚みDgの値が大きくなるほど広がると考えれる。上記記録パワー変化による熱変形領域長さの影響にこの基板変形領域の境界位置のぼけを考慮すると、充分なウィンドマージンが確保できるための許容されるチャネルビット長の下限値は記録層3−2の厚みDgの2倍程度が必要と考えられ、120nmより大きい事が望ましい。
上記では透明基板2−2の熱変形が生じる場合の熱解析による検討に付いて主に説明した。従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)での他の記録原理(記録マーク9の形成メカニズム)として透明基板2−2の塑性変形が非常にわずかで記録層3−2内での有機色素記録材料の熱分解や気化(蒸発)が中心の場合も存在するので、その場合についても付加説明する。有機色素記録材料の気化(蒸発)温度は有機色素材料により異なるが、一般的には220℃〜370℃の範囲内に有り、熱分解温度はそれより低い。上記検討では基板変形時の到達温度としてポリカーボネート樹脂のガラス転移温度150℃を前提としていたが、150℃と220℃との間の温度差は小さく、透明基板2−2が150℃に到達する時には記録層3−2内部では220℃を越えている。従って、有機色素記録材料による例外は有るが、透明基板2−2の塑性変形が非常にわずかで記録層3−2内での有機色素記録材料の熱分解や気化(蒸発)が中心の場合でも上記検討結果とほぼ同じ結果が得られている。
上記チャネルビット長に関する検討結果をまとめると透明基板2−2の塑性変形を伴う従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)ではチャネルビット長を120nmより狭くして行くとウィンドマージンの低下が発生し、更に、105nmより小さいと安定な再生が難しくなると考えられる。すなわち、チャネルビットが120nm(105nm)より小さくなる時には本実施形態に示す新規記録原理を用いる事の効果が発揮される。
(3)トラックピッチの下限値条件
記録パワーで記録層3−2を露光すると、記録層3−2内でエネルギーを吸収して高温になる。従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)では透明基板2−2側が熱変形温度に達するまで記録層3−2内でエネルギーを吸収させる必要が有る。記録層3−2内で有機色素記録材料の構造変化が起こり屈折率n32や吸収係数k32の値が変化を開始する温度は透明基板2−2が熱変形を開始するための到達温度より遙かに低い。従って、透明基板2−2側が熱変形している記録マーク9の周辺の記録層3−2内の比較的広い領域で屈折率n32や吸収係数k32の値が変化し、これが隣接トラックへの“クロスライト”や“クロスイレーズ”の原因と思われる。透明基板2−2側が熱変形温度を超えた時の記録層3−2内での屈折率n32や吸収係数k32を変化させる温度に到達する領域の広さで“クロスライト”や“クロスイレーズ”を起こさないトラックピッチの下限値を設定できる。上記の視点からトラックピッチが500nm以下の所で“クロスライト”や“クロスイレーズ”が生じる考えられる。更に、情報記憶媒体の反りや傾きの影響や記録パワーの変化(記録パワーマージン)も考慮すると、透明基板2−2側が熱変形温度に達するまで記録層3−2内でエネルギーを吸収させる従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)ではトラックピッチを600nm以下にするのは難しいと結論できる。上述したようにNA値を0.60、0.65、0.85と変化させても、中心部で透明基板2−2側が熱変形温度に達した時の周囲の記録層3−2内での温度分布の勾配が比較的なだらかで熱の広がり範囲が広いためほぼ同様の傾向を示している。従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)での他の記録原理(記録マーク9の形成メカニズム)として透明基板2−2の塑性変形が非常にわずかで記録層3−2内での有機色素記録材料の熱分解や気化(蒸発)が中心の場合でも、既に“(2)チャネルビット長の下限値条件”の所で説明したように“クロスライト”や“クロスイレーズ”が始まるトラックピッチの値はほぼ類似した結果が得られる。以上の理由からトラックピッチを600nm(500nm)以下にする時に本実施形態に示す新規記録原理を用いる事の効果が発揮される。
3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴
上述したように従来の追記形情報記憶媒体(CD−RやDVD−R)での記録原理(記録マーク9の形成メカニズム)として透明基板2−2の塑性変形を伴う場合や記録層3−2内で局所的に熱分解や気化(蒸発)が発生する場合には、記録マーク9の形成時に記録層3−2内部や透明基板2−2表面が高温に達するためにチャネルビット長やトラックピッチを狭くできないと言う問題が発生する。上記問題の解決策として本実施形態では基板変形や記録層3−2内での気化(蒸発)を起こす事無く
『比較的低温で発生する記録層3−2内での局所的な光学特性変化を記録原理とする』 “有機色素材料の発明”と上記記録原理が生じ易い“環境(記録膜構造や形状)の設定”を行った所に大きな特徴が有る。本実施形態の具体的な特徴として以下の内容を上げることができる。
α〕記録層3−2内部の光学特性変化方法として
・発色特性変化
… 発色領域8(化1)の質的変化による光吸収断面積の変化やモル分子吸光係数の変化
発色領域8が部分的に破壊されたり、発色領域8のサイズが変わる事により実質的な光吸収断面積が変化する事で光吸収スペクトル(図2)プロファイル(特性)自体は保存されたままλmax write位置での振幅(吸光度)が記録マーク9内で変化する
・発色現象に寄与する電子に対する電子構造(電子軌道)の変化
… 局所的な電子軌道の切断(局所的な分子結合の解離)による脱色作用や発色領域8(化1)の寸法や構造の変化に基付く光吸収スペクトル(図2)変化
・分子内(または分子間)の配向や配列の変化
… 例えば、化1に示したアゾ金属錯体内部の配向変化に基付く光学特性変化 ・分子内部での分子構造変化
… 例えば、アニオン部とカチオン部との間の結合解離や、アニオン部またはカチオン部のどちらか一方の熱分解、あるいは分子構造自体が破壊され、炭素原子が析出するタール化(黒色のコールタールに変質する)のいずれかを起こす有機色素材料を考案する。その結果、記録マーク9内の屈折率n32や吸収係数k32を未記録領域に対して変化させて光学的再生を可能にする。
β〕上記〔α〕の光学特性変化を安定に起こし易い記録膜構造や形状の設定を行う
… この技術に関する具体的内容については“3−2−C〕本実施形態に示した記録原理を発生させ易い理想的な記録膜構造”以降で詳細に説明する。
γ〕記録層内や透明基板表面が比較的低温の状態で記録マークを形成させるために記録パワーを下げる
… 上記〔α〕で示す光学特性変化は透明基板2−2の変形温度や記録層3−2内での気化(蒸発)温度より低い温度で生じる。そのため、記録時の露光量(記録パワー)を低くして透明基板2−2表面で変形温度を越えたり記録層3−2内で気化(蒸発)温度を越えるのを防止する。この内容については“3−3)本実施形態における有機色素記録膜に共通する記録特性”で詳細に後述する。また、逆に記録時の最適パワーの値を調べる事で上記〔α〕で示す光学特性変化が起きているかの判定も可能となる。
δ〕発色領域での電子構造を安定化させ、紫外線や再生光照射に対する構造分解が生じ辛くする
… 記録層3−2に対して紫外線を照射したり、再生時に再生光を記録層3−2に照射すると記録層3−2内の温度上昇が起きる。その温度上昇に対する特性劣化を防止すると共に、基板変形温度や記録層3−2内での気化(蒸発)温度より低い温度で記録すると言う温度特性上は一見矛盾する性能が要求される。本実施形態では“発色領域での電子構造を安定化”させる事で上記の一見矛盾する性能を確保する。この具体的技術内容については“第4章 本実施形態における有機色素記録膜の具体的実施形態説明”の所で説明を行う。
ε〕紫外線や再生光照射による再生信号劣化が万一発生した場合に備えて再生情報の信頼性を向上させる
… 本実施形態では“発色領域での電子構造を安定化”させるための技術的工夫を行っているが、透明基板2−2表面の塑性変形や気化(蒸発)により生じた記録層3−2内の局所的な空洞から比べると本実施形態に示した記録原理で形成される記録マーク9の信頼性は原理的に低下すると言わざるを得ない。その対策として本実施形態では“第7章 Hフォーマットの説明”と“第8章 Bフォーマットの説明”で後述するように強力なエラー訂正能力(新規なECCブロック構造)との組み合わせにより高密度化と記録情報の信頼性確保を同時に達成する効果を発揮する。更に、本実施形態では“4−2)本実施形態での再生回路の説明”で説明するように再生方法としてPRML(Pertial Response Maximum Likelyhood)法を採用し、ML復調時のエラー訂正技術と組み合わせる事でより一層の高密度化と記録情報の信頼性確保を同時に達成している。
上記の本実施形態の具体的な特徴の中で〔α〕〜〔γ〕は“狭トラックピッチ化”と“狭チャネルビット長化”を実現するために本実施形態で新規に考案した技術的工夫内容になっている事は既に説明した。また、“狭チャネルビット長化”は“最小記録マーク長の縮小化”の実現にも繋がる。残りの〔δ〕と〔ε〕に関する本実施形態の意味(目的)について詳細に説明する。本実施形態におけるHフォーマットでの再生時に記録層3−2を通過する集光スポットの通過速度(線速)を6.61m/sに設定し、Bフォーマットでの線速は5.0〜10.2m/sの範囲で設定する。いずれの場合でも、本実施形態における再生時の線速は5m/s以上になっている。図22に示すように、Hフォーマットでのデータリードイン領域DTLDIの開始位置は直径47.6mmであり、Bフォーマットを視野に入れた場合でも直径45mm以上の所でユーザーデータが記録される。直径45mmの円周は0.141mなので、この位置を線速5m/sで再生する時の情報記憶媒体の回転数は35.4回転/sとなる。本実施形態の追記形情報記憶媒体の利用方法の一つとしてTV番組などの映像情報録画が有る。例えば、ユーザーが録画した映像の再生時にユーザーが“ポーズ(一時停止)ボタン”を押すと、再生用集光スポットはその一時停止位置のトラック上に留まる。一時停止位置のトラック上に止まっていればユーザーが“再生開始ボタン”を押した直後に一時停止した位置から再生を開始できる。例えば、ユーザーが“ポーズ(一時停止)ボタン”を押して用足しに立ち上がった直後に来客が来た場合、接客対応で1時間ポーズボタンを押したままで放置される事もある。1時間の間で追記形情報記憶媒体は
35.4×60×60≒13万回転
しており、集光スポットはその間中ずっと同一トラック上をトレース(13万回繰り返し再生)する。もしその間に記録層3−2が繰り返し再生劣化して映像情報の再生が不可能になると、1時間後で戻って来たユーザーは一部分の映像が見れ無いので怒り心頭に発し、最悪の場合には裁判沙汰になる危険性が有る。従って、1時間程度放置(同一トラック内の連続再生)しても録画した映像情報が破壊され無い条件として最低でも10万回繰り返し再生しても再生劣化しない事を保証する必要が有る。一般的なユーザー使用状況として同一場所に対して1時間のポーズ放置(繰り返し再生)を10回繰り返す事はほとんど無い。従って、本実施の追記形情報記憶媒体として望ましくは100万回の繰り返し再生が保証されれば、一般的なユーザー利用には問題が生じず、記録層3−2が劣化しない繰り返し再生回数の上限値としては100万回程度に設定すれば充分と考えられる。繰り返し再生回数の上限値を100万回を大幅に越えた値に設定すると、“記録感度が低下する”とか“媒体価格が上昇する”などの不都合が発生する。
上記繰り返し再生回数の上限値を保証する場合に、再生パワー値が重要な要因となる。本実施形態において記録パワーは後述する(8)式〜(13)式で設定する範囲に規定される。半導体レーザの特性として最大使用パワーの80分の1以下の値では連続発光が安定しないと言われている。最大使用パワーの1/80のパワーではやっと発光を開始する(モードが立ち始める)所のため、モードホップし易い状況にある。従って、この発光パワーでは情報記憶媒体の光反射層4−2で反射した光が半導体レーザ光源に戻ると発光量が常に変動すると言う“戻り光ノイズ”が発生するためである。従って、本実施形態では再生パワーの値は(12)式または(13)式の右辺に記載されている値の1/80の値を基準として
[最適な再生パワー]
>0.19×(0.65/NA)2×(V/6.6) (B−1)
[最適な再生パワー]
>0.19×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (B−2)
に設定している。
また、最適な再生パワーの値としてはパワーモニター用光検出器のダイナミックレンジにより制約される。図9の情報記録再生部141内に図示してないが記録/再生用の光学ヘッドが存在する。この光学ヘッド内には半導体レーザ光源の発光量をモニターする光検出器が内蔵されている。本実施形態では再生時の再生パワーの発光精度を向上させるため、この光検出器で発光量を検出し発光時の半導体レーザ光源に供給する電流量にフィードバックを掛けている。光学ヘッドの価格を下げるためには非常に安価な光検出器を使う必要が有る。市販されている安価な光検出器は樹脂でモールドされている(光検出部が囲まれている)場合が多い。
“第0章 使用波長と本実施形態との関係説明”で示したように本実施形態での光源波長は530nm以下(特に455nm以下)を使用する。この波長領域の場合、光検出部をモールドしている樹脂(主にエポキシ系)は前記波長光を照射すると紫外線を照射した時に生じるような劣化(黄濁色に変色またはクラック(細かな白い筋)の発生など)が起こり光検出特性を悪化させてしまう。特に、本実施形態に示す追記形情報記憶媒体の場合には、図6に示すようなプリグルーブ領域11を持つのでモールド樹脂劣化を起こし易い。光学ヘッドの焦点ぼけ検出方式としてこのプリグルーブ領域11からの回折光による悪影響を除去するため情報記憶媒体に対する結像位置(結像倍率Mは3〜10倍程度)に光検出器を配置する“ナイフエッジ法”を採用する場合が最も多い。結像位置に光検出器を配置すると、光検出器上に光が集光するためモールド樹脂上に照射される光密度が高くなり、この光照射による樹脂劣化を起こし易くする。このモールド樹脂の特性劣化は主にフォトンモード(光学的作用)により生じるが、サーマルモード(熱励起)の光照射量との対比で許容照射量の上限値を予想できる。最悪の状態を想定して光学ヘッドとして結像位置に光検出器を配置する光学系を想定する。
“3−2−A〕本実施形態の技術の適用を必要とする範囲”内の“(1)記録層3−2の厚みDgの条件”に記載した内容から本実施形態における記録時に記録層3−2内で光学特性変化(サーマルモード)が発生している時には記録層3−2内では一時的に80℃〜150℃の範囲に温度上昇していると考えている。室温を15℃前後と考えると、温度差ΔTwriteは65℃〜135℃となる。記録時にはパルス発光しているが再生時には連続発光しているので、再生時にも記録層3−2内で温度上昇し、温度差ΔTreadが発生している。光学ヘッド内の検出系の結像倍率をMとすると、光検出器上に集光する検出光の光密度は記録層3−2上に照射される収束光の光密度の1/M2になるので、再生時の光検出器上での温度上昇量は粗い見積もりとしてΔTread/M2となる。モールド樹脂劣化がフォトンモードで発生する事を考えると、光検出器上で照射可能な光密度の上限値を温度上昇量で換算すると、ΔTread/M2≦1℃程度と考えられる。光学ヘッド内の検出系の結像倍率をMは一般的に3〜10倍程度なので暫定的にM2≒10と見積もると、
ΔTread/ΔTwrite≦20 (B−3)
になるように再生パワーを設定する必要が有る。記録時の記録パルスのデューティ比を仮に50%と見積もると
[最適な再生パワー]≦[最適な記録パワー]/10 (B−4)
が要求される。従って、後述する(8)式〜(13)式と上記(B−4)式を加味すると最適な再生パワーは
[最適な再生パワー]
<3×(0.65/NA)2×(V/6.6) (B−5)
[最適な再生パワー]
<3×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (B−6)
[最適な再生パワー]
<2×(0.65/NA)2×(V/6.6) (B−7)
[最適な再生パワー]
<2×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (B−8)
[最適な再生パワー]
<1.5×(0.65/NA)2×(V/6.6) (B−9)
[最適な再生パワー]
<1.5×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (B−10)
(各パラメーターの定義は“3−2−E〕本実施形態における記録層の厚み分布に関する基本的特徴”を参照。)
で与えられる。例えば、NA=0.65、V=6.6m/sの時には
[最適な再生パワー]<3mW、
[最適な再生パワー]<2mW、
または
[最適な再生パワー]<1.5mW
となる。実際には情報記憶媒体は回転して相対的に移動しているのに比べて光検出器は固定されているので、更に、それを考慮に入れて最適な再生パワーを上記式の1/3程度以下にする必要が有る。本実施形態における情報記録再生装置では再生パワーの値として0.4mWに設定している。
3−2−C〕本実施形態に示した記録原理を発生させ易い理想的な記録膜構造
本実施形態において上記記録原理が生じ易い“環境(記録膜構造や形状)の設定”方法に付いて説明する。
上記説明した記録層3−2内部の光学特性変化を起こし易い環境として
『記録マーク9形成領域内では光学特性変化が発生する臨界温度を超えると共に記録マーク9の中心部では気化(蒸発)温度を越えず、記録マーク9の中心部近傍の透明基板2−2表面が熱変形温度を超えない』
ように記録膜構造や形状に技術的工夫を行っている所に本実施形態の次の特徴が有る。
上記に関する具体的な内容について図5を用いて説明する。図5において中抜きの矢印は照射レーザ光7の光路を示し、破線の矢印は熱流を表している。図5(a)に示した記録膜構造が本実施形態に対応した記録層3−2内部の光学特性変化を最も起こし易い環境を示している。すなわち、図5(a)において有機色素記録材料からなる記録層3−2は(2)式、または(4)式に示す範囲の(充分に厚い)至る所均一な厚みを持ち、記録層3−2に対して垂直な方向からレーザ光7の照射を受ける。“6−1)光反射層(材質と厚み)”で詳しく後述するように、本実施形態では光反射層4−2の材質として銀合金を使用する。銀合金に限らず光反射率の高い金属を含む材質は一般に熱伝導率が高く放熱特性を持つ。従って、照射されたレーザ光7のエネルギーを吸収して記録層3−2の温度は上昇するが、放熱特性を持つ光反射層4−2へ向けて熱が放出される。図5(a)に示した記録膜は至る所均一な形状をしているため、記録層3−2内部では比較的均一な温度上昇が起き、中心部α点、及びβ点とγ点での温度差は比較的少ない。従って、記録マーク9の形成時にはβ点とγ点で光学特性変化が発生する臨界温度を超える時には中心部α点では気化(蒸発)温度を越える事無く、中心部α点に最も近い位置にある透明基板(図示して無い)表面が熱変形温度を超える事も無い。
それに比べて、図5(b)に示すように記録膜3−2の一部に段差が有ると、δ点とε点では記録層3−2が配列されている方向に対して斜め方向からレーザ光7の照射を受けるため、単位面積当たりのレーザ光7の照射量が中心部α点に比べて相対的に低下し、その結果、δ点とε点での記録層3−2内の温度上昇量が低下する。δ点とε点でも光反射層4−2へ向かう熱放出が有るので、中心部α点に比べてδ点とε点での到達温度は大幅に低下する。そのため、β点からδ点へ向けて熱が流れると共にγ点からε点へ向けて熱が流れるので、中心部α点に対するβ点とγ点での温度差が非常に大きくなる。記録時にβ点とγ点での温度上昇量が低く、β点とγ点でなかなか光学特性変化が発生する臨界温度を超え無い。その対策としてβ点とγ点で光学特性変化を起こすため(臨界温度以上にするため)、レーザ光7の露光量(記録パワー)を上げる必要が有る。図5(b)に示す記録膜構造ではβ点とγ点に対する中心部α点での温度差が非常に大きいため、β点とγ点で光学特性変化が起こる温度に上昇した時には中心部α点で気化(蒸発)温度を越えるか、中心部α点近傍の透明基板(図示して無い)表面が熱変形温度を越え易くなっている。
また、レーザ光7の照射を受ける側の記録層3−2の表面が至る所レーザ光7の照射方向に対して垂直になっていても、記録層3−2の厚みが場所により変化する場合には本実施形態の記録層3−2内部の光学特性変化を起こし辛い構造となる。例えば、図5(c)に示すように中心部α点での記録層3−2の厚みDgに対して周辺部の厚みDlが大幅に薄い(例えば、(2)式や(4)式を満足しない)場合を考える。中心部α点でも光反射層4−2へ向けた熱の放出は有るが、記録層3−2の厚みDgが充分に厚いために熱の蓄積が行え高温に達する事が出来る。それに比べて記録層3−2の厚みがDl大幅に薄いζ点とη点では充分な熱の蓄積を行う事無く光反射層4−2へ向けて熱が放出されるため、温度上昇量が少ない。その結果、光反射層4−2へ向けた熱の放出のみで無くβ点→δ点→ζ点へ向かう熱の放出、あるいはγ点→ε点→η点へ向かう熱の放出が起きるため、図5(b)と同様にβ点とγ点に対する中心部α点での温度差が非常に大きくなる。β点とγ点で光学特性変化を起こすため(臨界温度以上にするため)にレーザ光7の露光量(記録パワー)を上げると、中心部α点で気化(蒸発)温度を越えるか、中心部α点近傍の透明基板(図示して無い)表面が熱変形温度を越え易くなる。
上記説明した内容に基づき本実施形態の記録原理が生じ易い“環境(記録膜構造や形状)の設定”を行うためのプリグルーブ形状/寸法に関する本実施形態における技術的工夫内容と記録層の厚み分布に関する本実施形態における技術的工夫内容に付いて図6を用いて説明する。図6(a)はCD−RやDVD−Rなどの従来の追記形情報記憶媒体における記録膜構造を示し、図6(b)、(c)に本実施形態における記録膜構造を示す。本説明において図6に示すようにプリグルーブ領域11内に記録マーク9を形成する。
3−2−D〕本実施形態におけるプリグルーブ形状/寸法に関する基本的特徴
図6(a)に示すようにCD−RやDVD−Rなどの従来の追記形情報記憶媒体ではプリグルーブ領域11が“V溝”形状をしている場合が多かった。この構造の場合には、図5(b)で説明したようにレーザ光7のエネルギー吸収効率が低く、記録層3−2内の温度分布ムラが非常に大きく出る。図5(a)の理想状態に近付けるため、少なくとも“透明基板2−2側にプリグルーブ領域11内に入射レーザ光7の進行方向に直行する平面領域を設ける”所に本実施形態の特徴が有る。図5(a)を用いて説明したように、この平面領域はなるべく広くする事が望ましい。従って、プリグルーブ領域11内に平面領域を設けるだけでなく、プリグルーブ領域の幅Wgをランド領域の幅Wlよりも広くする(Wg>Wl)所に本実施形態の次の特徴が有る。本説明上ではプリグルーブ領域の幅Wgとランド領域の幅Wlをプリグルーブ領域の平面位置での高さとランド領域の最も高くなった位置での高さとの中間高さを持つ平面とプリグルーブ内の斜面とが交差する位置でのそれぞれの幅として定義する。
熱解析による検討と実際に試作した追記形情報記憶媒体にデータを記録し、記録マーク9位置での断面SEM(走査形電子顕微鏡)像による基板変形観察や記録層3−2内の気化(蒸発)により生じた空洞の有無観察を繰り返した結果、プリグルーブ領域の幅Wgをランド領域の幅Wlよりも広くする(Wg>Wl)事で効果が有る事が分かった。更に、プリグルーブ領域幅Wgとランド領域幅Wlの比率をWg:Wl=6:4、望ましくはWg:Wl=7:3より大きくする事で、記録時により一層安定して記録層3−2内での局所的な光学特性変化が起き易くなると考えられる。このようにプリグルーブ領域幅Wgとランド領域幅Wlの違いを大きくすると、図6(c)のようにランド領域12上に平坦面が無くなる。従来のDVD−Rディスクではランド領域12にプリピット(ランドプリピット:図示して無い)を形成し、ここにアドレス情報などを予め記録するフォーマットになっていた。そのためランド領域12に平坦領域を形成する事が必須条件となり、結果的にプリグルーブ領域11で“V溝”形状になる場合が多かった。また、従来のCD−Rディスクでは周波数変調によりプリグルーブ領域11にウォブル信号を入れていた。従来のCD−Rディスクでの周波数変調方式では、スロット間隔(詳細については各フォーマット説明の所で後述する)が一定せずウォブル信号検波時の位相合わせ(PLL:PhaseLockLoopの同期化)が比較的難しかった。そのため、再生用集光スポットの強度が最も高い中心付近にプリグルーブ領域11の壁面を集中させる(V溝に近くさせる)と共にウォブル振幅量を大きくしてウォブル信号検出精度を保証していた。図6(b)、(c)に示すように本実施形態でのプリグルーブ領域11内の平坦領域を広げ、プリグルーブ領域11の斜面を再生用集光スポットの中心位置より相対的に外側へ移動させるとウォブル検出信号が得辛くなる。本実施形態では上述したプリグルーブ領域の幅Wgを広げると共にウォブル検出時のスロット間隔が常に固定に保たれる位相変調(PSK:Phase Shift Keying)を利用したHフォーマットまたはFSK(Frequency Shift Keying)やSTW(Saw Tooth Wobble)を利用したBフォーマットを組み合わせる事で、低い記録パワーで安定な記録特性を保証(高速記録や多層化に適する)と共に安定なウォブル信号検出特性を保証している所にも大きな特徴が有る。特に、Hフォーマットでは上記組み合わせに加えて“ウォブル変調領域の比率を無変調領域よりも下げる”事でウォブル信号検出時の同期合わせをより一層容易にして更に、より一層ウォブル信号検出特性を安定化させている。
3−2−E〕本実施形態における記録層の厚み分布に関する基本的特徴
本説明では図6(b)、(c)に示すようにランド領域12内での最も記録層3−2が厚い部分での厚みをランド領域での記録層厚みDlと定義し、プリグルーブ領域11内での最も記録層3−2が厚い部分での厚みをプリグルーブ領域での記録層厚みDgと定義する。既に図5(c)を用いて説明したように、相対的にランド領域での記録層厚みDlを厚くする事で記録時に記録層3−2内で局所的な光学特性変化を安定に起こし易くなる。
上記と同様に熱解析による検討と実際に試作した追記形情報記憶媒体にデータを記録し、記録マーク9位置での断面SEM(走査形電子顕微鏡)像による基板変形観察や記録層3−2内の気化(蒸発)により生じた空洞の有無観察を繰り返した結果、プリグルーブ領域での記録層厚みDgとランド領域での記録層厚みDlとの比率は最大でもDg:Dl=4:1以下にする必要が有る。更に、Dg:Dl=3:1以下、望ましくはDg:Dl=2:1以下にすると本実施形態における記録原理の安定性が保証できる。
3−3)本実施形態における有機色素記録膜に共通する記録特性
“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”の一つとして〔γ〕で記載したように記録パワー制御が本実施形態における大きな特徴になっている。
記録層3−2内での局所的な光学特性変化による記録マーク9形成は従来の透明基板2−2の塑性変形温度や記録層3−2内での熱分解温度や気化(蒸発)温度よりも遙かに低い温度で起きるため、記録時に透明基板2−2が局所的に塑性変形温度を越えたり記録層3−2内で局所的に熱分解温度や気化(蒸発)温度を越えないように記録パワーの上限値を制限する。
熱解析による検討と平行して“4−1)本実施形態での再生装置もしくは記録再生装置の構造と特徴説明”で後述する装置を用い、“4−3)本実施形態での記録条件の説明”で後述する記録条件を用いて本実施形態に示した記録原理で記録が行われている場合の最適パワーの値の実証も行った。実証実験に用いた記録再生装置内の対物レンズNA(Numerical Apperture)値は0.65、記録時の線速は6.61m/sであった。後で“4−3)本実施形態での記録条件の説明”で定義する記録パワー(Peak Power)の値として ◎30mWでほとんどの有機色素記録材料で気化(蒸発)し、記録マーク内に空洞が生じる
… 記録層3−2近傍位置での透明基板2−2温度はガラス転移温度を大幅に超えている
◎20mWで記録層3−2近傍位置での透明基板2−2温度が塑性変形温度(ガラス転移温度)に達する
◎情報記憶媒体の面ブレ・反りや記録パワー変動などのマージンを見越して15mW以下が望ましい
と言う事が分かった。
上記で説明した“記録パワー”とは記録層3−2に照射される露光量の総和を意味している。集光スポット中心部で有り最も光強度密度の高い部分での光エネルギー密度が本実施形態での検討対象パラメータとなる。集光スポットサイズはNA値に反比例するので、集光スポット中心部での光エネルギー密度はNA値の2乗に比例して増加する。従って、 [異なるNAにも適応可能な記録パワー]
=[NA=0.65時の記録パワー]×0.652/NA2 (5)
の関係式を用いて後述するBフォーマットや表1(D3)に示した別のフォーマット(別のNA値)での最適な記録パワーの値に換算できる。
更に、最適な記録パワーは記録時の線速Vに依存して変化する。一般的に最適な記録パワーは相変化形記録材料では線速Vの1/2乗に比例して変化し、有機色素記録材料では線速Vに比例して変化すると言われている。従って、線速Vも考慮に入れた最適な記録パワーの換算式は(5)式を拡張させた
[一般的な記録パワー]
=[NA=0.65;6.6m/s時の記録パワー]
×(0.65/NA)2×(V/6.6) (6)
または
[一般的な記録パワー]
=[NA=0.65;6.6m/s時の記録パワー]
×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (7)
で得られる。以上の検討結果をまとめると本実施形態に示した記録原理を保証するための記録パワーとして
[最適な記録パワー]
<30×(0.65/NA)2×(V/6.6) (8)
[最適な記録パワー]
<30×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (9)
[最適な記録パワー]
<20×(0.65/NA)2×(V/6.6) (10)
[最適な記録パワー]
<20×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (11)
[最適な記録パワー]
<15×(0.65/NA)2×(V/6.6) (12)
[最適な記録パワー]
<15×(0.65/NA)2×(V/6.6)1/2 (13)
と言う上限値を設定する事が望ましい。上記各式の内、(8)式または(9)式の条件は必須条件となり、(10)式または(11)式が目標条件、(12)式または(13)式が望ましい条件となる。
3−4)本実施形態における“H→L”記録膜に関する特徴説明
記録マーク9内の光反射量が未記録領域での光反射量よりも低くなる特性を有した記録膜を“H→L”記録膜と呼び、逆に高くなる記録膜を“L→H”記録膜と呼ぶ。この中で “H→L”記録膜は
(1)光吸収スペクトルのλmax write位置での吸光度に対する再生波長での吸光度の比に上限値を設ける
(2)光吸収スペクトルプロファイルを変化させて記録マークを形成させる
所に本実施形態の大きな特徴が有る。
図7と化14を用いて上記内容に関する詳細な説明を行う。本実施形態におけるH→L記録膜では図7に示すようにλmax writeの波長が記録/再生に利用される使用波長(405nm近傍)よりも短い。化14から分かるように、λmax writeの波長近傍では未記録と既記録間で吸光度の変化が少ない。未記録と既記録間で吸光度の変化が少ないと再生信号振幅が大きく取れない。記録又は再生用レーザ光源の波長変動が生じても安定に記録または再生ができる事も視野に入れると、本実施形態においては図7に示すようにλmax writeの波長が355nm〜455nmの範囲の外側、すなわち355nmよりも短波長側に来るように記録膜3−2の設計を行っている。
既に“2−1)記録原理/記録膜構造の違いと再生信号生成に関する基本的な考え方の違い”で定義したλmax write位置での吸光度を“1”と規格化した時の“第0章 使用波長と本実施形態との関係説明”で説明した355nm、455nm、405nmにおける相対的な吸光度をAh355、Ah455、Ah405と定義する。
Ah405=0.0の場合には未記録状態での記録膜からの光反射率は光反射層4−2での405nmにおける光反射率に一致する。光反射層4−2の光反射率については“6−1)光反射層”の所で詳細に後述するが、ここでは説明の簡素化のために光反射層4−2の光反射率を100%として説明を進める。
本実施形態における“H→L”記録膜を用いた追記形情報記憶媒体では片側単層膜の場合の再生専用情報記憶媒体(HD DVD−ROMディスク)を用いた場合と再生回路を共通化させている。従って、この場合の光反射率を片側単層膜の再生専用情報記憶媒体(HD DVD−ROMディスク)の光反射率に合わせて40〜85%とする。そのためには未記録位置での光反射率を40%以上に設定する必要が有る。1−0.4=0.6なので、405nmにおける吸光度Ah405として
Ah405≦0.6 (14)
とすれば良い事が直感的に理解できる。上記(14)式を満足する場合には未記録位置での光反射率を40%以上にできる事が容易に理解できるので、本実施形態では未記録場所において(14)式を満足する有機色素記録材料を選定している。上記(14)式は図7においてλmax writeの波長光で記録層3−2越しに光反射層4−2を反射させた時の光反射率が0%になる事を仮定している。しかし、実際にはこの時の光反射率は0%にならず、有る程度の光反射率を持つので、厳密には(14)式に対する補正が必要となる。図7においてλmax writeの波長光で記録層3−2越しに光反射層4−2を反射させた時の光反射率をRλmax writeで定義すると、未記録位置での光反射率を40%以上に設定する厳密な条件式は
1−Ah405×(1−Rλmax write)≧0.4 (15)
となる。“H→L”記録膜では多くの場合、Rλmax write≧0.25なので(15)式は
Ah405≦0.8 (16)
となる。本実施形態の“H→L”記録膜では(16)式を満足する事が必須条件となる。上記(14)式の特性を持たせ、更に、記録層3−2の膜厚として(3)式または(4)式の条件を満足する事を条件として詳細な光学的な膜設計を行った結果、膜厚変動や再生光の波長変動などの各種マージンを考慮に入れると
Ah405≦0.3 (17)
が望ましい。(14)式を前提とすると、
Ah455≦0.6 (18)
あるいは
Ah355≦0.6 (19)
に設定すると、一層記録/再生特性が安定する。なぜなら(14)式が成り立つ上で少なくとも(18)式と(19)式のいずれかを満足する場合には、355nmから405nmの範囲、又は405nmから455nmの範囲に亘り(場合によっては355nmから455nmの範囲で)Ahの値が0.6以下になるので記録用レーザ光源(または再生用レーザ光源)の発光波長にばらつきが生じても吸光度の値が大きく変化しないためである。
本実施形態における“H→L”記録膜の具体的な記録原理としては既に説明した“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”内の〔α〕に列記した記録メカニズムの内“分子間の配列変化”または“分子内部での分子構造変化”の現象を利用する。その結果、上述した(2)に記載されているように光吸収スペクトルプロファイルを変化させる。本実施形態における記録マーク内での光吸収スペクトルプロファイルを化14中の実線で示し、未記録場所での光吸収スペクトルプロファイルを破線で重ね合わせる事で両者の比較が出来るようにした。本実施形態では記録マーク内での光吸収スペクトルプロファイルが比較的ブロードに変化しており、分子内部での分子構造変化が生じ一部炭素原子の析出(コールタール化)の可能性が有る。記録マーク内での吸光度が最大になる波長λlmaxの値を未記録位置での波長λmax writeの値よりも再生波長405nmに近付ける事により“H→L”記録膜での再生信号を発生している所に本実施形態の特徴が有る。これにより、吸光度が最も高くなる波長λlmaxでの吸光度が“1”よりも小さく再生波長405nmにおける吸光度Al405の値がAh405の値よりも大きくなる。その結果、記録マーク内でのトータル的な光反射率が低下する。
本実施形態におけるHフォーマットでは変調方式としてETM(Eight to Twelve:8ビットのデータコードを12チャネルビットに変換する)、RLL(1,10)(変調後のコード列の中でチャネルビット長Tに対する最小反転長が2T、最大反転長が11T)を採用している。“4−2)本実施形態での再生回路の説明”で後述する再生回路の性能評価を行った所、前記再生回路で安定に再生するには〔充分に長い長さ(11T)の未記録領域からの再生信号量I11H〕に対する〔前記I11Hと充分に長い長さ(11T)を持つ記録マークからの再生信号量I11Lとの差分値I11≡I11H−I11L〕の比率が最低でも
I11/I11H≧0.4 (20)
望ましくは
I11/I11H>0.2 (21)
を満足する必要が有る事が分かった。本実施形態では高密度に記録された信号再生時にPRML法を利用し、図13〜図15に示す(詳細説明は後述する)信号処理回路と状態遷移図を使用する。PRML法で精度良く検出するためには再生信号の線形性(リニアリティー)が要求される。図15に示した状態遷移図を基に図13、図14に示した信号処理回路特性を解析した結果、上記再生信号の線形性(リニアリティー)を確保するためには3Tの長さを持つ記録マークと未記録スペースの繰り返し信号からの再生信号振幅をI3とした時のこの値の上記I11に対する比率が
I3/I11≧0.35 (22)
望ましくは
I3/I11>0.2 (23)
を満足する必要が有る事も分かった。上記(16)式の条件を視野に入れながら(20)式、(21)式を満足するようにAl405の値を設定した所に本実施形態の技術的特徴が有る。(16)式を参照し
1−0.3=0.7 (24)
となる。(24)式を視野に入れ、(20)式との対応関係から
(Al405−0.3)/0.7≧0.4 すなわち、
Al405≧0.58 (25)
の条件が導かれる。(25)式は非常に粗い検討結果から導かれた式で基本的な考え方を示したに過ぎない。Ah405の設定範囲を(16)式で規定しているので、本実施形態ではAl405の条件として少なくとも
Al405>0.3 (26)
が必須となる。
具体的な“H→L”記録膜に適した有機色素材料の選定方法として本実施形態では光学的な膜設計を元に未記録状態での屈折率範囲がn32=1.3〜2.0、吸収係数範囲がk32=0.1〜0.2、望ましくはn32=1.7〜1.9、吸収係数範囲がk32=0.15〜0.17の有機色素材料を選定し、上記説明した一連の条件を満足させている。
図7または化14に示した“H→L”記録膜では未記録領域での光吸収スペクトルにおいてλmax writeの波長が再生光または記録/再生光の波長(例えば、405nm)よりも短くなっているが、本発明においてそれに限らず例えば、λmax writeの波長が再生光または記録/再生光の波長(例えば、405nm)よりも長くても良い。
上記(22)式または(23)式を満足させるためには記録層3−2の厚みDgが大きく影響する。例えば、記録層3−2の厚みDgが許容値を大幅に越えると、記録マーク9形成後の状態として記録層3−2内での透明基板2−2に接する一部のみの光学特性が変化するだけでその場所に隣接する光反射層4−2に接する部分の光学特性が他の未記録領域と同じ値のままになる。その結果、再生光量変化が低下して(22)式または(23)式におけるI3の値が小さくなり、(22)式または(23)式の条件が満足できなくなる。従って、(22)式を満足させるためには、図6(b)、(c)に示すように記録マーク9内の光反射層4−2に接する部分の光学特性まで変化させる必要が有る。さらに、記録層3−2の厚みDgが許容値を大幅に越えると記録マーク形成時に記録層3−2内の厚み方向で温度勾配が発生し、記録層3−2内の光反射層4−2に接する部分で光学特性変化温度に達する前に透明基板2−2に接する部分の気化(蒸発)温度を越えるか、透明基板2−2内で熱変形温度を超えてしまう。上記理由から本実施形態では熱解析検討により(22)式を満足させるために記録層3−2の厚みDgを“3T”以下とし、(23)式を満足させる条件として記録層3−2の厚みDgを“3×3T”以下にしている。基本的には記録層3−2の厚みDgが“3T”以下の場合には(22)式を満足させる事が出来るが、追記形情報記憶媒体の面ブレ・反りによるチルトの影響や焦点ぼけに対するマージンを考慮すると“T”以下にする場合もある。既に説明した(1)式と(2)式の結果も考慮すると、本実施形態における記録層3−2の厚みDgの範囲は必要最低な条件としては
9T≧Dg≧λ/8n32 (27)
望ましい条件としては
3T≧Dg≧λ/4n32 (28)
で与えられる範囲で記録層3−2の厚みDgを設定している。それに限らず、最も厳しい条件としては
T≧Dg≧λ/4n32 (29)
とする事も可能である。後述するようにチャネルビット長Tの値はHフォーマットでは102nm、Bフォーマットでは69nm〜80nmになっているので、3Tの値はHフォーマットでは306nm、Bフォーマットでは207nm〜240nm、9Tの値はHフォーマットでは918nm、Bフォーマットでは621nm〜720nmとなる。ここでは“H→L”記録膜に関して説明しているが、(27)式〜(29)式の条件はそれに限らず、“L→H”記録膜に対しても適用できる。
第4章 再生装置または記録再生装置と記録条件/再生回路の説明
4−1)本実施形態での再生装置もしくは記録再生装置の構造と特徴説明
情報記録再生装置の実施形態における構造説明図を図9に示す。図9において制御部143より上側が主に情報記憶媒体への情報記録制御系を表し、情報再生装置の実施形態では図9における前記情報記録制御系を除いた構造が該当する。図9に於いて太い実線矢印が再生信号または記録信号を意味するメイン情報の流れを示し、細い実線矢印が情報の流れ、一点鎖線矢印が基準クロックライン、細い破線矢印がコマンド指示方向を意味する。
図9に示した情報記録再生部141の中に図示してないが光学ヘッドが配置されている。本実施形態では光学ヘッド内に用いられる光源(半導体レーザ)の波長は405nmで有るが、それに限らず本実施形態として前述したように使用波長が620nm以下または530nm以下の光源あるいは355〜455nmの範囲の光源を使用する事が可能である。また、光学ヘッド内で上記波長の光を情報記憶媒体上に集光させるために用いられる対物レンズは2個搭載され、Hフォーマットの情報記憶媒体に対して記録/再生する場合はNA値が0.65の対物レンズを使用し、Bフォーマットの情報記憶媒体に記録/再生する場合にはNA=0.85の対物レンズを使用するように対物レンズが切り替えられるような構造になっている。対物レンズに入射する直前の入射光の強度分布として、中心強度を“1”とした時の対物レンズ周辺(開口部境界位置)での相対的な強度を“RIM Intensity”と呼ぶ。Hフォーマットにおける前記RIM Intensityの値は55〜70%になるように設定してある。この時の光学ヘッド内での波面収差量は使用波長λに対して最大0.33λ(0.33λ以下)になるように光学設計されている。
本実施形態では情報再生にPRML(Partial Response Maximum Likelihood)を用い、情報記憶媒体の高密度化を図っている(表1〔A〕)。種々の実験の結果、使用するPRクラスとしてはPR(1,2,2,2,1)を採用すると線密度が高くできるとともに再生信号の信頼性(例えば、焦点ぼけやトラックずれなどサーボ補正誤差が発生した時の復調信頼性)を高くできるので、本実施形態ではPR(1,2,2,2,1)を採用している(表1(A1))。本実施形態では(d,k;m,n)変調規則(前述した記載方法ではm/n変調のRLL(d,k)を意味している)に従って変調後のチャネルビット列を情報記憶媒体に記録している。具体的には変調方式としては8ビットデータを12チャネルビットに変換(m=8,n=12)するETM(Eight to Twelve Modulation)を採用し、変調後のチャネルビット列の中で“0”が続く長さに制限を掛けるランレングスリミテッドRLL制約として“0”が連続する最小値をd=1とし、最大値をk=10としたRLL(1,10)の条件を課している。本実施形態では情報記憶媒体の高密度化を目指して極限近くまでチャネルビット間隔を短くしている。その結果、例えば、d=1のパターンの繰り返しである“101010101010101010101010”のパターンを情報記憶媒体に記録し、そのデータを情報記録再生部141で再生した場合には再生光学系のMTF特性の遮断周波数に近付いているため、再生生信号の信号振幅はほとんどノイズに埋もれた形に成る。従って、そのようにMTF特性の限界(遮断周波数)近くまで密度を詰めた記録マークまたはピットを再生する方法としてPRML(Partial Response Maximum Likelihood)の技術を使っている。すなわち、情報記録再生部141から再生された信号はPR等化回路130により再生波形補正を受ける。AD変換器169で基準クロック発生回路160から送られてくる基準クロック198のタイミングに合わせてPR等化回路130通過後の信号をサンプリングしてデジタル量に変換し、ビタビ復号器156内でビタビ復号処理を受ける。ビタビ復号処理後のデータは従来のスライスレベルで2値化されたデータと全く同様なデータとして処理される。PRMLの技術を採用した場合、AD変換器169でのサンプリングタイミングがずれると、ビタビ復号後のデータのエラー率は増加する。従って、サンプリングタイミングの精度を上げるため、本実施の形態の情報再生装置ないしは情報記録再生装置では特にサンプリングタイミング抽出用回路(シュミットトリガー2値回路155とPLL回路174の組み合わせ)を別に持っている。このシュミットトリガー回路は2値化するためのスライス基準レベルに特定の幅(実際にはダイオードの順方向電圧値)を持たせ、その特定幅を越えた時のみ2値化される特性を持っている。従って、例えば、上述したように“101010101010101010101010”のパターンが入力された場合には、信号振幅が非常に小さいので2値化の切り替わりが起こらず、それよりも疎のパターンである例えば、“1001001001001001001001”などが入力された場合に再生生信号の振幅が大きくなるので、シュミットトリガー2値化回路155で“1”のタイミングに合わせて2値化信号の極性切り替えが起きる。本実施の形態ではNRZI(Non Return to Zero Invert)法を採用しており、上記パターンの“1”の位置と記録マークまたはピットのエッジ部(境界部)が一致している。
PLL回路174ではこのシュミットトリガー2値化回路155の出力である2値化信号と基準クロック発生回路160から送られる基準クロック198信号との間の周波数と位相のずれを検出してPLL回路174の出力クロックの周波数と位相を変化させている。基準クロック発生回路160ではこのPLL回路174の出力信号とビタビ復号器156の復号特性情報(具体的には図示してないが、ビタビ復号器156内のパスメトリックメモリ内の収束長(収束までの距離)の情報)を用いてビタビ復号後のエラーレートが低くなるように基準クロック198(の周波数と位相)にフィードバックを掛ける。この基準クロック発生回路160で発生される基準クロック198は再生信号処理時の基準タイミングとして利用される。
同期コード位置抽出部145はビタビ復号器156の出力データ列の中に混在している同期コード(シンクコード)の存在位置を検出し、上記出力データの開始位置の抽出役目を担っている。この開始位置を基準としてシフトレジスタ回路170に一時保存されたデータに対して復調回路152で復調処理を行う。本実施形態では12チャネルビット毎に復調用変換テーブル記録部154内に記録された変換テーブルを参照して元のビット列に戻す。その後はECCデコーディング回路162によりエラー訂正処理が施され、デスクランブル回路159によりデスクランブルされる。本実施形態の記録形(書替え形または追記形)情報記憶媒体ではウォブル変調によりアドレス情報が事前に記録されている。ウォブル信号検出部135で、このアドレス情報を再生し(すなわち、ウォブル信号の内容を判別し)希望場所へのアクセスに必要な情報を制御部143に対して供給する。
制御部143より上側に有る情報記録制御系について説明する。情報記憶媒体上の記録位置に合わせてデータID発生部165からデータID情報が生成され、CPR_MAIデータ発生部167でコピー制御情報が発生されるとデータID、IED、CPR_MAI、EDC付加部168により記録すべき情報にデータID、IED、CPR_MAI、EDCの各種情報が付加される。その後、デスクランブル回路157でデスクランブルされた後、ECCエンコーディング回路161でECCブロックが構成され、変調回路151でチャネルビット列に変換された後、同期コード生成・付加部146で同期コードが付加されて情報記録再生部141内で情報記憶媒体にデータが記録される。変調時にはDSV(Digital Sum Value)値計算部148で変調後のDSV値が逐次計算され、変調時のコード変換にフィードバックされる。
図9に示した同期コード位置検出部145を含む周辺部の詳細構造を図10に示す。同期コードは固定パターンを持った同期位置検出用コード部と可変コード部から構成されている。ビタビ復号器156から出力されたチャネルビット列の中から同期位置検出用コード検出部182により上記固定パターンを持った同期位置検出用コード部の位置を検出し、その前後に存在する可変コードのデータを可変コード転送部183、184が抽出してシンクフレーム位置識別用コード内容の識別部185により検出された同期コードが後述するセクター内のどのシンクフレームに位置するかを判定する。情報記憶媒体上に記録されたユーザー情報はシフトレジスタ回路170、復調回路152内の復調処理部188、ECCデコーディング回路162の順に順次転送される。
本実施形態の内、Hフォーマットではデータ領域、データリードイン領域、データリードアウト領域では再生にPRML方式を使う事で情報記憶媒体の高密度化(特に線密度が向上する)を達成すると共に、システムリードイン領域、システムリードアウト領域では再生にスライスレベル検出方式を使う事で、現行DVDとの互換性を確保するとともに再生の安定化を確保している。(詳細については“第7章 Hフォーマットの説明”の所で後述する。)
4−2)本実施形態での再生回路の説明
図11にシステムリードイン領域、システムリードアウト領域での再生時に使用されるスライスレベル検出方式を用いた信号再生回路の実施形態を示す。図11における4分割光検出器302は図9における情報記録再生部141内に存在する光学ヘッド内に固定されている。4分割光検出器302の各光検出セル1a、1b、1c、1dから得られる検出信号の総和を取った信号をここでは“リードチャンネル1信号”と呼ぶ。図11のプリアンプ304からスライサ310までが図9のスライスレベル検出回路132内の詳細構造に対応し、情報記憶媒体から得られた再生信号は再生信号周波数帯よりも低い周波数成分を遮断するハイパスフィルタ306を通過後にプリイコライザ308により波形等化処理が行われる。実験によると、このプリイコライザ308は7タップのイコライザを用いると最も回路規模が少なく、かつ精度良く再生信号の検出が出来る事が分かったので、本実施形態でも7タップのイコライザを使用している。図11のVFO回路・PLL312部分が図9のPLL回路に対応し、図11の復調回路、ECCデコーディング回路314が図9の復調回路152とECCデコーディング回路162に対応する。
図11のスライサ310回路内の詳細構造を図12に示す。スライス後の2値化信号を比較器316を使って発生させている。本実施形態ではデューティフィードバック法を用い、2値化後のバイナリーデータの反転信号に対してローパスフィルター出力信号を2値化時のスライスレベルに設定している。本実施形態ではこのローパスフィルターの遮断周波数を5KHzに設定している。この遮断周波数が高いとスライスレベル変動が早いためにノイズの影響を受け易く、逆に遮断周波数が低いとスライスレベルの応答が遅いので情報記憶媒体上のゴミや傷の影響を受けやすい。前述したRLL(1,10)とチャネルビットの基準周波数の関係も考慮位して5KHzに設定している。
データ領域、データリードイン領域、データリードアウト領域で信号再生に用いられるPRML検出法を用いた信号処理回路を図13に示す。図13における4分割光検出器302は図9における情報記録再生部141内に存在する光学ヘッド内に固定されている。4分割光検出器302の各光検出セル1a、1b、1c、1dから得られる検出信号の総和を取った信号をここでは“リードチャンネル1信号”と呼ぶ。図9におけるPR等化回路130内の詳細な構造が図13のプリアンプ回路304からタップ制御器332、イコライザ330、オフセットキャンセラ336までの各回路で構成されている。図13内のPLL回路334は図9のPR等化回路130内の一部であり、図9のシュミットトリガー2値化回路155とは別の物を意味する。図13におけるハイパスフィルタ回路306の1次の遮断周波数は1KHzに設定している。プリイコライザ回路308は図11と同様7タップのイコライザーを用いている(7タップを使用すると最も回路規模が少なく、かつ精度良く再生信号の検出が出来るためである)。A/Dコンバータ回路324のサンプルクロック周波数は72MHz、デジタルは8ビット出力になっている。PRML検出法では再生信号全体のレベル変動(DCオフセット)の影響を受けると、ビタビ復調時に誤差が発生し易くなる。その影響を除去するためにイコライザー出力から得た信号を用いてオフセットキャンセラ336によりオフセットを補正する構造になっている。図13に示した実施形態ではPR等化回路130内で適応等化処理がなされている。そのため、ビタビ復号器156の出力信号を利用してイコライザ330内の各タップ係数を自動修正するためのタップ制御器が利用されている。
図9または図13に示したビタビ復号器156内の構造を図14に示す。入力信号に対して予想し得る全てのブランチに対するブランチメトリックをブランチメトリック計算部340で計算し、その値をACS342へ送る。ACS342はAdd Compare Selectの略称で、ACS342の中で予想し得る各パスに対応してブランチメトリックを加算して得られるパスメトリックを計算すると共にその計算結果をパスメトリックメモリ350へ転送する。この時、ACS342内ではパスメトリックメモリ350内の情報も参照して計算処理を行う。パスメモリ346内では予想し得る各パス(遷移)状況とその各パスに対応しACS342で計算したパスメトリックの値を一時保存する。出力切替え部348で各パスに対応したパスメトリックを比較し、パスメトリック値が最小となるパスを選択する。
図15に本実施形態におけるPR(1,2,2,2,1)クラスにおける状態遷移を示す。PR(1,2,2,2,1)クラスにおける取り得る状態(ステート)の遷移は図15に示す遷移のみが可能なので、図15の遷移図を元にビタビ復号器156内では復号時の存在し得る(予想し得る)パスを割り出している。
4−3)本実施形態での記録条件の説明
“3−3)本実施形態における有機色素記録膜に共通する記録特性”で本実施形態における最適な記録パワー(ピークパワー)の説明を行ったが、その最適な記録パワーを調べる時に使用した記録波形(記録時の露光条件)に付いて図16を用いて説明する。
記録時の露光レベルとして記録パワー(ピークパワー:Peak power)、バイアスパワー1(Bias power 1)、バイアスパワー2(Bias power 2)、バイアスパワー3(Bias power 3)の4レベルを持ち、長さの長い(4T以上の)記録マーク9形成時には記録パワー(ピークパワー:Peak power)とバイアスパワー3(Bias power 3)の間でマルチパルスの形で変調される。本実施形態では“Hフォーマット”、“Bフォーマット”いずれの方式もチャネルビット長Tに対する最小マーク長は2Tとなっている。この2Tの最小マークを記録する場合には図16に示すようにバイアスパワー1(Bias power 1)の後で記録パワー(ピークパワー:Peak power)レベルの1個のライトパルスを使用し、ライトパルスの直後は一度バイアスパワー2(Bias power 2)になる。3Tの長さの記録マーク9を記録する場合にはバイアスパワー1(Bias power 1)の後に来る記録パワー(ピークパワー:Peak power)レベルのファーストパルスとラストパルスの2個のライトパルスを露光した後一旦バイアスパワー2(Bias power 2)になる。4T以上の長さの記録マーク9を記録する場合にはマルチパルスとラストパルスで露光した後、バイアスパワー2(Bias power 2)になる。
図16における縦の破線はチャネルクロック周期を示す。2Tの最小マークを記録する場合にはクロックエッジからTSFP遅れた位置から立ち上がり、その1クロック後のエッジからTELP後ろの位置で立ち下がる。その直後のバイアスパワー2(Bias power2)になる期間をTLCと定義する。TSFPとTELP及びTLCの値はHフォーマットの場合には後述するように制御データゾーンCDZ内の物理フォーマット情報PFI内に記録されている。3T以上の長い記録マーク形成時の場合にはクロックエッジからTSFP遅れた位置から立ち上がり、最後にラストパルスで終わる。ラストパルスの直後はTLCの期間バイアスパワー2(Bias power 2)になるが、ラストパルスの立ち上がり/立ち下がりタイミングのクロックエッジからのずれ時間をTSLP,TELPで定義する。また、先頭パルスの立ち下がりタイミングのクロックエッジから図った時間をTEFPで、さらに1個のマルチパルスの間隔をTMPで定義する。
TELP−TSFP、TMP、TELP−TSLP、TLCの各間隔は図17に示すように最大値に対する半値幅で定義する。また、本実施形態では上記パラメーターの設定範囲を
0.25T≦TSFP≦1.50T (30)
0.00T≦TELP≦1.00T (31)
1.00T≦TEFP≦1.75T (32)
−0.10T≦TSLP≦1.00T (33)
0.00T≦TLC ≦1.00T (34)
0.15T≦TMP ≦0.75T (35)
とする。さらに本実施形態では記録マークの長さ(Mark length)とその直前/直後のスペース長(Leading/Trailing space length)に応じて表2に示すように上記各パラメーターの値を変化できるようにしている。既に“3−3)本実施形態における有機色素記録膜に共通する記録特性”の所で説明した、本実施形態に示した記録原理で記録される追記形情報記憶媒体の最適な記録パワーを調べた時の各パラメーターの値を表3に示す。この時のバイアスパワー1(Bias power 1)、バイアスパワー2(Bias power 2)、バイアスパワー3(Bias power 3)の値は2.6mW、1.7mW、1.7mWであり、再生パワーは0.4mWだった。
第5章 本実施形態における有機色素記録膜の具体的説明
5−1)本実施形態における“L→H”記録膜に関する特徴説明
未記録領域に比べて記録マーク内で光反射量が低下する特性を有する“L→H”記録膜に関する説明を行う。この記録膜を用いた場合の記録原理としては“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”で説明した記録原理の中で主に ・発色特性変化
・発色現象に寄与する電子に対する電子構造(電子軌道)の変化〔脱色作用など〕
・分子間の配列変化
のいずれかを利用し、吸光スペクトルの特性を変化させる。“L→H”記録膜に関しては、特に未記録場所と既記録場所での反射量範囲を片面2層構造を持った再生専用情報記憶媒体の特性を視野に入れて規定した所に大きな特徴が有る。本実施形態で規定している“H→L”記録膜と“L→H”記録膜の未記録領域(非記録部)における光反射率範囲を図18に示す。本実施形態では“H→L”記録膜の非記録部での反射率下限値δが“L→H”記録膜の非記録部での上限値γより高くなるように規定している。情報記録再生装置あるいは情報再生装置に上記情報記憶媒体を装着した時、図9のスライスレベル検出部132またはPR等化回路130で非記録部の光反射率を測定し、瞬時に“H→L”記録膜か “L→H”記録膜の判別が出来るので、記録膜の種別判別が非常に容易になる。多くの製造条件を変えて作成した“H→L”記録膜と“L→H”記録膜を作成して測定した結果、 “H→L”記録膜の非記録部での反射率下限値δと“L→H”記録膜の非記録部での上限値γの間の光反射率αを32%〜40%の範囲以内にすると、記録膜の製造性が高く、媒体の低価格化が容易である事が分かった。“L→H”記録膜非記録部(“L”部)の光反射率範囲801を再生専用形情報記憶媒体における片面2記録層の光反射率範囲803に一致させ、“H→L”記録膜の非記録部(“H”部)の光反射率範囲802を再生専用形情報記憶媒体における片面単層の光反射率範囲804に一致させると、再生専用形情報記憶媒体との互換性が良く情報再生装置の再生回路を兼用化出来るので情報再生装置を安価に作ることができる。多くの製造条件を変えて作成した“H→L”記録膜と“L→H”記録膜を作成して測定した結果、記録膜の製造性を高めて媒体の低価格化を容易にするために本実施形態では“L→H”記録膜の非記録部(“L”部)の光反射率の下限値βを18%、上限値γを32%とし、“H→L”記録膜の非記録部(“H”部)の光反射率下限値δを40%、上限値εを85%にした。
本実施形態における各種記録膜での非記録位置と既記録位置での反射率を図19、表4に示す。Hフォーマット(“第7章 Hフォーマットの説明”を参照の事)を採用した場合、図18のように非記録部での光反射率範囲を規定する事でグルーブレベルを基準として“L→H”記録膜ではエンボス領域(システムリードイン領域SYLDIなど)と記録マーク領域(データリードイン領域DTLDI、データリードアウト領域DTLDOやデータ領域DTA)で同じ方向に信号が現れる。同様に“H→L”記録膜ではグルーブレベルを基準としてエンボス領域(システムリードイン領域SYLDIなど)と記録マーク領域(データリードイン領域DTLDI、データリードアウト領域DTLDOやデータ領域DTA)で反対方向に信号が現れる。この現象を利用し、“L→H”記録膜と“H→L”記録膜間での記録膜識別に使えるだけでなく、“L→H”記録膜と“H→L”記録膜に対応した検出回路設計が容易となる。また、本実施形態に示した“L→H”記録膜上に記録した記録マークから得られる再生信号特性を“H→L”記録膜から得られる信号特性に合わせて(20)式〜(23)式を満足させる。これにより、“L→H”記録膜と“H→L”記録膜いずれの記録膜を用いた場合にも同一の信号処理回路が使え、信号処理回路の簡素化と低価格化が図れる。
5−2)本実施形態の“L→H”記録膜に関する光吸収スペクトルの特徴
“3−4)本実施形態における“H→L”記録膜に関する特徴説明”で説明したように“H→L”記録膜では未記録領域での相対的な吸光度が基本的に低いため、再生時に再生光を照射された時にその再生光のエネルギーを吸収して生じる光学特性変化が起こりにくい。仮に吸光度が高い記録マーク内で再生光のエネルギーを吸収して光学特性変化(記録作用の更新)が生じたとしても記録マーク内からの光反射率が下がる一方なので、再生信号の振幅(I11≡I11H−I11L)が増加する方向に働き、再生信号処理への悪影響は少ない。
それに比べて、“L→H”記録膜は“未記録部の光反射率が記録マーク内より低い”と言う光学的特性を持つ。この事は図1(b)を用いて説明した内容から分かるように、記録マーク内より未記録部の吸光度が高い事を意味している。そのため、“L→H”記録膜は“H→L”記録膜に比べると再生時の信号劣化が起こり易い。“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”内で説明したように、“ε〕紫外線や再生光照射による再生信号劣化が万一発生した場合に備えて再生情報の信頼性を向上させる”必要が有る。
有機色素記録材料の特性を詳細に調べた結果、再生光のエネルギーを吸収して光学特性変化を起こすメカニズムと紫外線照射による光学特性変化のメカニズムがほぼ類似している事が分かった。その結果、未記録領域での紫外線照射に対する耐久性を向上させる構造を持たせると再生時の信号劣化が起き辛くなる。そのため、“L→H”記録膜ではλmax write(記録光の波長に最も近い極大吸収波長)の値を記録光または再生光の波長(405nm近傍)よりも長くした所に本実施形態の大きな特徴がある。これにより紫外線に対する吸収率を低くでき、紫外線照射に対する耐久性を大幅に向上できる。図21から分かるように、λmax write近傍での既記録部と未記録部間での吸光度の違いが小さく、λmax write近傍の波長光で再生した場合の再生信号変調度(信号振幅)が小さくなる。半導体レーザ光源の波長変動も視野に入れると、355nm〜455nmの範囲では充分に大きな再生信号変調度(信号振幅)を取れる事が望ましい。従って、本実施形態においてλmax writeの波長は355nm〜455nmの範囲外(すなわち、455nmよりも長波長側)に存在するように記録膜3−2の設計を行っている。
本実施形態での“L→H”記録膜における光吸収スペクトルの一例を図20に示す。“5−1)本実施形態における“L→H”記録膜に関する特徴説明”で説明したように、本実施形態では“L→H”記録膜の非記録部(“L”部)の光反射率の下限値βを18%、上限値γを32%に設定している。1−0.32=0.68より上記条件を満足するためには405nmにおける未記録領域での吸光度の値Al405として
Al405≧68% (36)
を満足すべきなのが直感的に理解できる。図1における光反射層4−2の405nmにおける光反射率は100%より若干低下するが、説明の簡略化のためほぼ100%に近いと仮定する。従って、吸光度Al=0の時の光反射率はほぼ100%になる。図20においてλmax writeの波長での記録膜全体としての光反射率をRλmax writeで表す。この時の光反射率がゼロ(Rλmax write≒0)と仮定して(36)式を導いているが、実際には“0”とはならないので、より厳密な式を導く必要が有る。“L→H”記録膜の非記録部(“L”部)の光反射率の上限値γを32%に設定する厳密な条件式は
1−Al405×(1−Rλmax write)≦0.32 (37)
で与えられる。従来の追記形情報記憶媒体は全て“H→L”記録膜を使用しており、“L→H”記録膜に関する情報の蓄積が無いが、“5−3)アニオン部:アゾ金属錯体+カチオン部:色素”と“5−4)アゾ金属錯体+中心金属として“銅”使用”で後述する本実施形態を使用した場合には(37)式を満たす最も厳しい条件として
Al405≧80% (38)
となる。上記実施形態で後述する有機色素記録材料を使用した場合には、製造時の特性ばらつきや記録層3−2の厚み変化などのマージンも含めて記録膜の光学設計を行うと“5−1)本実施形態における“L→H”記録膜に関する特徴説明”で説明した反射率を満足する最低限の条件としては
Al405≧40% (39)
を満足すれば良い事が分かった。さらに
Al355≧40% (40)
Al455≧40% (41)
のいずれかを満足する事で355nmから405nmの範囲あるいは405nmから455nmの範囲(両方の式が同時に満足する場合には355nmから455nmの範囲)で光源の波長が変化しても安定な記録特性または再生特性を確保できる。
本実施形態の“L→H”記録膜における記録後の光吸収スペクトル変化状況を図21に示す。記録マーク内での最大吸収波長λlmaxの値がλmax writeの波長からずれており、分子間の配列変化(例えば、アゾ金属錯体同士の配列変化)が生じていると考えられる。更に、λlmaxの所での吸光度と405nmでの吸光度Al405のいずれもが低下していると共に光吸収スペクトルの広がり自体が広がっている所から平行して脱色作用(局所的な電子軌道の切断(局所的な分子結合の解離))が起きていると考えられる。
本実施形態の“L→H”記録膜においても(20)、(21)、(22)、(23)の各式を満足させる事で“L→H”記録膜と“H→L”記録膜どちらに対しても同一の信号処理回路を使えるようにして信号処理回路の簡素化と低価格化を図っている。(20)式において
I11/I11H≡(I11H−I11L)/I11H≧0.4 (42)
を変形すると
I11H≧/I11L/0.6 (43)
となる。既に説明したように本実施形態において“L→H”記録膜の未記録部(“L”部)の光反射率の下限値βを18%に設定しており、この値がI11Lに対応する。更に、概念的に
I11H≒1−Ah405×(1−Rλmax write) (44)
と対応するので、(43)式と(44)式から
1−Ah405×(1−Rλmax write)≧0.18/0.6 (45)となる。1−Rλmax write≒0の時は(45)式は
Ah405≦0.7 (46)
で得られる。上記(46)式と(36)式を比較すると吸光度の値として68%〜70%近傍を境にAl405とAh405の値を設定すれば良さそうな事が分かる。更に、Al405の値として(39)式の範囲になる場合と、信号処理回路の性能安定性を考えると、厳しい条件として
Ah405≦0.4 (47)
がある。なお、可能で有れば
Ah405≦0.3 (48)
を満足する事が望ましい。
5−3)アニオン部:アゾ金属錯体+カチオン部:色素
“5−1)本実施形態における“L→H”記録膜に関する特徴説明”で説明した特徴を有し、“5−2)本実施形態の“L→H”記録膜に関する光吸収スペクトルの特徴”で示した条件を満足する本実施形態における具体的に有機色素材料について説明する。記録層3−2の厚みは(3)、(4)、(27)、(28)の各式で示した条件を満足し、スピナーコーティング(スピンコーティング)により形成する。比較のために一例を上げると、“食塩”の結晶はプラスに帯電する“ナトリウムイオン”とマイナスに帯電する“塩素イオン”との間の“イオン結合”で組み立てられている。それと同様、高分子においても“イオン結合”に近い形で異なる複数の高分子が組み合わさり有機色素材料を構成する場合が有る。本実施形態における有機色素記録膜3−2はプラス側に帯電する“カチオン部”とマイナス側に帯電する“アニオン部”で構成されている。特にプラス側に帯電する “カチオン部”に発色特性を有する“色素”を利用し、対イオン部を意味しマイナス側に帯電する“アニオン部”に有機金属錯体を利用する事で結合の安定性を高め、“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”の中で示した“δ〕発色領域での電子構造を安定化させ、紫外線や再生光照射に対する構造分解が生じ辛くする”の条件を満足させた所に技術的な大きな特徴が有る。具体的な内容として本実施形態では有機金属錯体として化1に一般構造式を示した“アゾ金属錯体”を利用している。アニオン部とカチオン部の組み合わせからなる本実施形態においてこのアゾ金属錯体の中心金属Mとしてコバルトまたはニッケルを使用して光安定性を高めているが、それに限らずスカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀などを使っても良い。本実施形態ではカチオン部に使用する色素として化3に一般構造式を示したシアニン色素、化4に一般構造式を示したスチリル色素、化5に一般構造式を示したモノメチンシアニン色素のいずれかを使用する。本実施形態ではアニオン部にアゾ金属錯体を使用しているが、それに限らず例えば、化6に一般構造式を示すホルマザン金属錯体を使用しても良い。上記アニオン部とカチオン部からなる有機色素記録材料は最初粉末状になっている。記録層3−2を形成する場合にはこの粉末状の有機色素記録材料を有機溶剤に溶かした後、透明基板2−2上にスピンコーティングを行う。この時に使用する有機溶剤として例えば、フッ素アルコール系のTFP(テトラフルオロプロパノール)やペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル、石油ベンジンなどの炭化水素類、アルコール類、フェノール類、エーテル類、ニトリル類、ニトロ化合物や含硫化合物のいずれかかまたはそれらの組み合わせを使用する。
5−4)アゾ金属錯体+中心金属として“銅”使用
記録原理として本実施形態の光学特性変化を用いた“H→L”記録膜と“L→H”記録膜における記録(記録マーク形成)前後での光吸収スペクトル変化の一例を図40と図41に示す。記録前(未記録領域内で)のλmax write波長をλbmax write、このλbmax writeを中心とした光吸収スペクトル(b)の半値幅(λbmax writeでの吸光度Aを“1”とした時の“A≧0.5”の範囲を満足する波長領域の幅)をWas、記録後(記録マーク内で)の光吸収スペクトル(a)のλmaxwrite波長をλamax writeと定義する。図40と図41に示した特性を有する記録膜3−2は“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”の〔α〕に示した記録原理の内、“発色現象に寄与する電子に対する電子構造(電子軌道)の変化”と“分子内部での分子構造変化”を利用している。“発色現象に寄与する電子に対する電子構造(電子軌道)の変化”が生じると、例えば、化1に示すような発色領域8の寸法や構造が変化する。例えば、発光領域8の寸法が変化すると、そこの局在電子の共鳴吸収波長が変化するので、光吸収スペクトルの極大(最大)吸収波長がλbmax writeからλamax writeに変化する。同様に“分子内部での分子構造変化”が生じると発色領域8の構造も変化するので、同様に光吸収スペクトルの極大(最大)吸収波長が変化する。ここで極大(最大)吸収波長の変化量をΔλmaxと定義すると
Δλmax≡|λamax write−λbmax write| (49)
の関係が成り立つ。このように光吸収スペクトルの極大(最大)吸収波長が変化すると、連動して光吸収スペクトルの半値幅Wasも変化する。このように光吸収スペクトルの極大(最大)吸収波長と光吸収スペクトルの半値幅Wasが同時に変化した時に、記録マーク位置から得られる再生信号への影響を説明する。図40(図41)において記録前/未記録領域における光吸収スペクトルは(b)で与えられるので、405nm再生光での吸光度はAh405(Al405)になっている。もし仮に記録後(記録マーク内)の光スペクトルとして極大(最大)吸収波長のみがλamax writeに変化し、半値幅Wasの変化が無かった場合には光吸収スペクトルは図40(図41)(c)のようになり、405nm再生光での吸光度はA*405に変化するが、実際には半値幅が変化するために記録後(記録マーク内)の吸光度はAl405(Ah405)になってしまう。記録前後での吸光度の変化量|Al405−Ah405|は再生信号振幅値に比例するので、図40(図41)に示した例では極大(最大)吸収波長変化と半値幅変化が再生信号振幅増加に対する相殺作用をするため、再生信号のC/N比を悪化させるという問題が生じる。その問題を解消するための本実施形態の第1の応用例として極大(最大)吸収波長変化と半値幅変化が再生信号振幅増加に対して相乗的に働くように記録層3−2の特性を設定(膜設計)する所に大きな特徴が有る。すなわち、図40(図41)での変化から容易に予想が付くように
“H→L”記録膜では記録前のλbmax writeに対する記録後のλamax writeの移動方向に依らず
半値幅が広がり、
“L→H”記録膜では記録前のλbmax writeに対する記録後のλamax writeの移動方向に依らず
半値幅が狭くなる方向に変化するように記録層3−2の特性を設定(膜設計)する。
次に、本実施形態における第2の応用例について説明する。前述したように極大(最大)吸収波長変化と半値幅Was変化によりAh405とAl405との間の開きを相殺させて再生信号のC/N比を下げる場合がある。更に、上記第1の応用例や図40または図41に示した実施形態では極大(最大)吸収波長変化と光吸収スペクトルの半値幅Wasが同時に変化するため、記録後(記録マーク内で)の吸光度Aの値は極大(最大)吸収波長変化量Δλmaxと半値幅変化量の両方の影響を受ける。追記形情報記憶媒体12を量産した時にこの極大(最大)吸収波長変化量Δλmaxと半値幅変化量の両方の値を同時に精度良く制御する事が難しく、量産された追記形情報記憶媒体12に情報を記録した時の再生信号振幅のばらつきが大きくなり、図9に示した情報再生装置で再生した時の再生信号の信頼性が低下する。それに対して本実施形態における第2の応用例に示す記録層3−2の材質として記録前後(記録マーク内と未記録領域で)の極大(最大)吸収波長が変化しないように工夫する事で記録後(記録マーク内で)の吸光度Aの値のばらつきを抑え、そこからの再生信号振幅の個体間ばらつきを少なくする事で再生信号の信頼性を向上させた所に大きな特徴が有る。この第2の応用例では記録前後(記録マーク内と未記録領域で)の極大(最大)吸収波長が変化しないので、吸光度Aの値は記録前後(記録マーク内と未記録領域で)の光吸収スペクトルの広がりのみで決まる。数多く追記形情報記憶媒体12を量産した時に記録前後(記録マーク内と未記録領域で)の光吸収スペクトルの広がりのみを制御すれば良いので媒体間の特性のばら付きを小くできる。記録前後(記録マーク内と未記録領域で)の極大(最大)吸収波長が変化しないように工夫したとしても、厳密には図42に示すように完全にλbmax writeとλamax writeの値を完全に合わせるのは難しい。図40や図41に示すλbmax writeを中心とした光吸収スペクトルの半値幅Wasは一般的な有機色素記録材料では100nm〜200nmの範囲に入る場合が多い。従って、極大(最大)吸収波長変化量Δλmaxの値として100nmを越えると(b)の特性から得られる吸光度Ah405(Al405)と(c)の特性から得られる吸光度A*405との値に大きな開きが生じる事が図40や図41から容易に予想できる。従って、第2の応用例として“極大(最大)吸収波長が変化しない”と言う意味は
Δλmax≦100nm (50)
の条件を満足する事を意味している。さらに極大(最大)吸収波長変化量Δλmaxが(50)式の1/3
Δλmax≦30nm (51)
の条件になると(b)の特性から得られる吸光度Ah405(Al405)と(c)の特性から得られる吸光度A*405との間の差は非常に少なくなり、量産した時に媒体間の再生信号特性のばら付きが小さくできる。
(50)式または(51)式を満たす“L→H”記録膜特性を図42に示す。記録前(未記録領域で)の光吸収スペクトルは図42の特性(b)のように幅の広いスペクトルになっており、405nmの再生波長での吸光度Ah405は充分に小さな値になっている。記録後(記録マーク内で)の光吸収スペクトルは図42の特性(a)のように幅が狭くなり、405nmの再生波長での吸光度Al405が上昇する。
(50)式または(51)式を満たすために本実施形態では記録原理として“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”の〔α〕の中で“分子内の配向の変化”を利用する。以下に本実施形態(第2の応用例)に付いての具体的内容を説明する。化1に示したアゾ金属錯体において、ベンゼン核環内はラジカル結合しているために複数のベンゼン核環どうしは同一平面上に配置されている。すなわち、化1において中心金属Mよりも上側に有る4個のベンゼン核環はベンゼン核グループが作るU(up側)平面を形成し、中心金属Mよりも下側に有る4個のベンゼン核環はベンゼン核グループが作るD(down側)平面を形成する。上記U平面とD平面の間はどんな場合でも(記録前後に関わらず)常に互いに平行な関係を保っている。上記U平面とD平面に直交する形でR1とR3の各側鎖基が配置されている。中心金属原子Mと酸素原子Oとの間(実線部)はイオン結合で結合され、O−M−Oを結ぶ線が形成する平面は上記U平面とD平面に対して平行に配置されている。化1の丸い領域で囲まれた発色領域8はこのような立体構造をしている。今後の説明のため、U平面内でR4の方向からR5の方向に向かう方向を暫定的に“Yu方向”と定義し、D平面内でR4の方向からR5の方向に向かう方向を暫定的に“Yd方向”と定義する。U平面もしくはD平面内に含まれる窒素原子Nとその2面の間に挟まれた中心金属原子Mとの間(破線部)は配位結合で結合され、中心金属原子Mを中心とした窒素原子Nの位置が回転可能になっている。すなわち、上記U平面とD平面の間は互いに平行な関係を保ちながらYu方向に対してYd方向が回転できる構造になっている。化1に示したアゾ金属錯体は化2(a)に示すようにYu方向とYd方向が互いに平行になったり(向きは化2(a)のように反対向きになったり同じ向きになれる)、化2(b)のようにYu方向とYd方向が互いにねじれの関係になったりする。当然、化2(a)と化2(b)の間の任意の角度関係にもなる。前述したように、化1に示したR1とR3の各側鎖基は上記U平面とD平面に直交する形で配置されているため、化2(a)の構造では上下のR1またはR3の側鎖基または他のR4等の側鎖基間で衝突し易い。従って、化2(b)のようにYu方向とYd方向が互いにねじれの(U平面の遙か上の方から見るとYu方向とYd方向が互いに直交しているように見える)関係にある時が最も構造的に安定する。この化2(b)の状態になっている時の発色領域8での光吸収波長が図42におけるλamax write=λbmax writeの値に一致する。Yu方向とYd方向の関係が化2(b)の状態からずれ出すと発色領域8内の電子構造および光吸収電子の局在距離(局在領域のサイズ)が微妙に変化して光吸収波長がλamaxwrite=λbmax writeの値からずれる。スピナーコーティングにより透明基板2−2上に形成直後(未記録状態)の記録層3−2内部では上記Yu方向とYd方向の関係が任意に配向されている。そのため、図42の特性(b)に示すように光吸収スペクトルの分布幅は広くなっている。記録マーク形成のため記録層3−2内の温度を局所的に上げると、高温のため分子配向が動き出し、最終的にはほとんどが構造的に安定する化2(b)の状態になる。すると、記録マーク内の至る所で発色領域8内の電子構造が一致し、図42の特性(a)に示すように分布幅の狭い光吸収スペクトルに変化する。その結果、再生波長(例えば、405nm)における吸光度がAl405からAh405に変化する。
化1に示すようにアゾ金属錯体内の発色領域8を使用する別の効果について説明する。前述したアニオン部とカチオン部の組み合わせを利用する場合にはカチオン部に色素を利用する。化3から化5に示した各色素内の発色領域は各色素構造内の一部分を占めているが、発色領域に寄与しないアニオン部と組み合わせる事で記録層3−2内での発色領域の相対的な占有容積が減少する。そのため相対的に光吸収断面積が低くなりモル分子吸光係数が低下する結果、図20に示すλmax write位置での吸光度の値が小さくなり記録感度が低下する。それに比べてここで説明するアゾ金属錯体単体の中心金属周辺での発色特性を利用する場合には、アゾ金属錯体自体で発光するため前述したアニオン部のような発色領域に寄与しない余分な部分が存在しない。そのため発色領域の相対的な占有容積が減少する不要な要因が無く、さらに化1に示すようにアゾ金属錯体内での発色領域8の占有容積も広いので、光吸収断面積が高くなりモル分子吸光係数値が上昇する。その結果、図20に示すλmax write位置での吸光度の値が高くなり記録感度が向上すると言う効果を持つ。
“3−2−B〕本実施形態における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”で説明した“δ〕発色領域での電子構造を安定化させ、紫外線や再生光照射に対する構造分解が生じ辛くする”ための具体的な方法として上記アゾ金属錯体の中心金属を最適化して発色領域の構造安定化を実現した所に本実施形態の大きな特徴が有る。
金属イオンにはそれぞれ独自のイオン化傾向特性を持っている事が知られている。この各金属原子をイオン化傾向の強い順に並べると
Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Cu>Hg>Ag>Au
となっている。この金属原子のイオン化傾向は“金属が電子を放出して陽イオンになる性質”を表している。
化1に示す構造を持ったアゾ金属錯体の中心金属として各種の金属原子を入れて繰り返し再生の安定性(405nm近傍の光を再生パワーで繰り返し照射した時の発色特性の安定性)を調べた所、上記イオン化傾向の高い金属原子ほど電子を放出して結合が切れて発色領域8が破壊され易い事が分かった。数々の実験の結果、発色領域の構造安定化を確保するには中心金属としてニッケル(Ni)以降の金属材料(Ni、Cu、Hg、Ag、Au)を使うのが望ましい事が分かった。更に、“高い発色領域の構造安定性”、“低価格化”、“使用安全性”の観点から本実施形態として中心金属に銅(Cu)を用いるのが最も望ましい。なお本実施形態において化1の側鎖であるR1、R2、R3、R4、R5としてはCH3、CxHy、H、Cl、F、NO2、SO2NHCH3のいずれかを使用する。
次に、化1に示した分子構造を有する有機色素記録材料を記録層3−2として透明基板2−2上に形成する方法を説明する。始め粉末状になった上記有機色素記録材料1.49gをフッ素アルコール系溶媒である100mlのTFP(テトラフルオロ・プロパノール)に溶かす。上記数値は混合比として1.4ウェイト%にする事を意味し、追記形情報記憶媒体の製造量により実際の使用量は変わる。混合比としては1.2〜1.5ウェイト%の範囲が望ましい。溶媒としてはポリカーボネート樹脂で作られた透明基板2−2表面を溶かさない事が必須条件となり、上記のようなアルコール系を使う。上記TFP(テトラフルオロ・プロパノール)は極性を持つため、粉末状になった上記有機色素記録材料の溶解性が向上される。スピンドルモーター上の透明基板2−2を回転させながら透明基板2−2の中心部に上記溶媒に溶けた状態の有機色素記録材料を塗布し、遠心力を利用して広げた後に溶媒が蒸発するのを待ち、その後全体の温度を上げるベーキング処理により記録層3−2を固める。
5-5)中心金属が4個の酸素原子とイオン結合するアゾ金属錯体
化1に示した中心金属に対して2個の酸素原子がイオン結合している構造の場合には、記録原理として化2(a)、(b)に示すようにベンゼン核グループが作るU平面とD平面間のお互いの配列角度により、記録原理が行われている。
上記に説明したように中心金属Mの材質として銅などを用いることにより、分子結合が強く紫外線照射による分子破壊が起きずらい。そのため化2に示すように長期安定性は確保される。しかし、中心金属Mに対して2個だけの酸素原子がイオン結合している場合には、化2(a)、(b)に示すようにベンゼン核グループが作るU平面とD平面の間が容易に回転しやすくなっている。そのため、繰返し再生を行うことにより化2(a)に示す未記録領域が次第に化2(b)に示すように記録後の配置に変化するため、記録された信号が劣化するという現象が起きる。
以上の不具合点を解決するための応用例として本実施例では化7に示すように、中心金属に対し4個の酸素原子がイオン結合する構造を採用する。化7では中心金属として3荷のイオンを持つコバルトCoを使用する。本応用例としてはそれに限らずコバルトの代わりに3荷の中心金属イオンを持つものとして、鉄、希土類、アルミ、イットリウムなどを使うことができる。このように3荷の中心金属イオンを用いることにより化7に示すように中心金属イオンの周囲で、4個の酸素原子とイオン結合させることができる。このように中心金属コバルトイオンの周囲の対称位置に4個の酸素原子を配列させることにより、各酸素原子間の配置の影響で上下面での回転を阻止する。それにより回転運動による記録データの消去が防げる。化7では、例としてアゾ金属錯体を示しているが、本実施例にはそれに限らず有機金属錯体を使用することができる。すなわち3荷の中心金属イオンが4個の酸素原子とイオン結合する構造を有する有機金属錯体を使用することで下記の本実施例を実施できる。化7(a)に示す構造式内で発色領域8は共有結合しているベンゼン核と窒素原子とのつながり部分で構成している。具体的な立体構造を化7(b)に示す。各発色領域8がそれぞれ平面に配置され、互いにねじれの関係になっている。化7(a)に示すように3荷の金属イオンの周辺に4個の酸素原子とイオン結合している場合、1個の電子が過剰となるため中心金属の周辺では−の電荷が発生する。本実施例ではこの−の電荷を消すため、+の電荷を持った別の高分子を組合せている。本実施例において+の電荷を持った高分子として含有機窒素化合物を使用している。含有機窒素化合物の具体的な材料として本実施例では化8(a)に構造式を示すトリエチルアミンを採用している。その立体構造図を化8(b)に示す。本実施例では、+の電荷を持った高分子としてトリエチルアミンを使用しているが、それに限らず他の実施例としてアミニウム塩系化合物、アミン化合物、アミノチオールニッケル錯体系化合物、インモニウム系化合物、シアニン系化合物、イミニウム系化合物、ジチオールニッケル錯体化合物や、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオンなどのカチオンを使用することもできる。また、上記アミン化合物として、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、セカンダリー・ブチルアミン、ターシャリー・ブチルアミン、ヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、2,6−キシリジンなどを使用することもできる。更に本実施例ではプラスの電荷を持った高分子として特定の分子量の値以下に設定するところに大きな特徴がある。化8(a)に示したトリエチルアミンの分子量は118であるが、このプラスの電荷を持った高分子の分子量が1200を超えると記録層形成時の有機溶媒に対する溶解性が悪くなり安定した記録膜の形成が難しくなる。したがって、本実施例のこのプラスの電荷を持った高分子の分子量を1200以下に設定している。さらに各種の実験から溶媒に対する溶解性が高い条件として分子量が250以下であることが望ましいということがわかった。
本実施例では、マイナスの電荷を持った有機金属錯体に対して電気的に中和させるプラスの電荷を持った物質として有機の高分子を利用しているが、本発明においてはそれに限らず例えばナトリウムイオンなど金属イオンを使用することもできる。
化7に示したアゾ金属錯体と化8に示したトリエチルアミンの構造図を組み合わせた立体組合せ構造図を化9(a)に示す。具体的には、中心金属コバルトに近接した位置にトリエチルアミン内のN+が近接した位置に配置され、トリエチルアミン内の窒素イオンに近接した水素原子がコバルトと発色領域8の間に一部挿入される形に配置される。化9(a)に示した構造図に対する模式図を化9(b)に示す。
化7に示すアゾ金属錯体内の発色領域8における発色原理を以下に説明する。化7に示した構造式の一部を化10(a)に示し、その中での共有結合している部分でのπ電子軌道を化10(b)に示す。中心金属コバルトがない場合のπ電子軌道を破線で示してある。本来上下均一に電子軌道が配列されるべきところの近くに−イオン(電荷を持ったコバルト原子)が近づくと、中心金属イオンの影響を受けて、化10(b)に示すように電子軌道が歪み、その結果発色作用を起こす。化10(b)では、説明の簡素化のために−電荷が近づくことによる斥力での電子軌道の説明をしているが、実際には金属原子の一部のd軌道と上記π軌道間との混成軌道を作り発色を行っている。π電子の電子分布は、化10(c)に示すように、各原子の近くが最も電子分布密度が高く、各原子間での電子分布密度が低くなっている。化11に示すように、元の原子間距離に対しなんらかの力が働き、原子間距離が縮むと化11(a)のようにπ電子の局在範囲が狭くなり、その結果吸収光の波長が短くなる。それに対し化11(b)に示すように、逆に原子間距離が伸びるとπ電子の局在範囲が広くなり吸収光の波長が長くなる。という特徴がある。
上記の有機色素系記録材料を用いた場合には、“3-2)本実施例における有機色素記録膜に共通する基本的特徴説明”内の“3-2-B〕本実施例における有機色素記録材料に共通する基本的特徴”内に記載されている記録原理のうち、“分子内( または分子間 )の配向や配列の変化”を利用する。
すなわち、本実施例のアゾ金属錯体とトリエチルアミンの組合せを使用した場合には、記録前に各組合せ分子が整列し配置される。その結果、化12(a)に示すように上下方向に凝集力1001が働く。また記録時には熱エネルギーの影響で各分子の配列が大きく動き、記録後には化12(b)に示すようにランダム配置となりその結果、化12(a)に比べ凝集力が弱まる。また、化7(b)に示すように、中心金属とイオン結合した4個の酸素原子は発色領域8内のベンゼン核内の一個の炭素原子と結合している。そのため化12(a)に示すように凝集力が働くと酸素原子がベンゼン核を押し上げる。化13に示すように、押し上げた酸素原子と結合している炭素原子周辺での原子間距離が伸び、逆に前記酸素原子から離れた位置にあるベンゼン核内の炭素原子の原子間距離が縮まる。その結果吸収波長の範囲が広がり、吸光スペクトルの幅が広がる(図68“記録前の半値幅Was”参照)。さらに、化8(b)に示すように、トリエチルアミン内の窒素イオンを囲む3個の炭素原子と1個の水素原子は正四面体構造を持ち、アゾ金属錯体に対する楔形になっている。そのため、凝集力が働くことにより化14に示すようにトリエチルアミンが発色領域8内の窒素原子もしくは炭素原子を押し出し、その結果炭素原子間の距離もしくは窒素原子と炭素原子の距離または窒素原子間の距離が縮まり、最大吸収波長λb max write が小さくなる。その結果、図68(b)に示すように記録前の吸光スペクトルの半値幅Wasが広く、また、最大吸収波長λb max write の値が短くなっている。それに対し、化12(b)に示すように記録後に各分子がランダム配置することにより凝集力が弱まると上記の押す力が弱まり、その結果各原子間距離が元に戻る。そのため図68(a)に示すように、最大吸収波長λa max write がλb max write に比べて長波長側にシフトし半値幅Wasが狭くなる。その結果、再生光の405nmの位置で吸光度がAl405からAh405に下がり光反射率が増加する。上記説明したように3荷の中心金属イオンと4個の酸素原子がイオン結合した有機金属錯体と含有機窒素化合物の組み合わせにより有機色素記録材料が構成され、化12に示すように分子間配列の変化により記録が行われ、L→H記録特性を持たせた所に本実施例の大きな特長がある。前記説明したように、“分子内(または分子間の配光や配列の変化)”が起きた場合、原子間の距離が変わることによる最大吸収波長の変化量は比較的小さい。そのため、上記(50)式または(51)式のところで説明したように、最大吸収波長の変化Δλmaxの値が小さいため、数多く追記形情報記憶媒体12を量産した時の記録前後の媒体間の特性ばらつきを小さくでき、量産時の性能安定性を確保することができる。従って本実施例において吸光スペクトルの最大吸収波長の変化量Δλmaxの範囲として
Δλmax ≦ 100nm
の条件を満足するように工夫している。
化12に示した記録原理に対する他の応用例を以下に説明する。
化12では記録前に各分子が整列し記録後にランダムな配列となるが、以下に示す他の応用例では逆に記録前にランダム配列となり記録後に整列するような記録原理にしている。それを可能にするため本実施例では、有機色素系記録材料を用いた記録層を形成を用いる時に極性を持った溶媒を利用しているところに大きな特徴がある。具体的な極性を持った溶媒として本実施例では、フッ素アルコールを用いている。フッ素アルコールの一例として、化15(a)にテトラフルオロプロパノール(TFP)の構造式をに示す。
化15(a)に示すようにテトラフルオロプロパノールでは、3個の炭素原子が主鎖を作り、その周辺にフッ素原子が配列されているとともに、OH基が端に配列されている。ここでOH基とそれに隣接する炭素原子との間に電子の偏りが生じ化15(a)にようにOH基側に−電荷、それに隣接する炭素側に+電荷の分極が発生する。この場合の模式図を化15(b)に示す。化9(a)の構造をしたアゾ金属錯体とトリエチルアミンの分子を化15(a)に示すテトラフルオロプロパノール溶剤の中で溶かし、透明基板上に塗布して記録層を形成するが、このときにテトラフルオロプロパノールに分極を持つため、アゾ金属錯体内の中心金属(コバルト)とトリエチルアミン内の窒素イオンが配列している部分と前記テトラフルオロプロパノールが互いに引き合い、その結果記録層形成直後にも一部有機溶剤であるテトラフルオロプロパノールが残るという現象が起きる。その結果、揮発せずに残ったテトラフルオロプロパノールが分子配列の整列を阻害し、化16(a)のように、有機色素分子の配列をランダムにしてしまう。化16(a)内において、化15(b)の模式図であらわした部分が揮発されずに残ったテトラフルオロプロパノール分子を示している。記録時には高温になるため残った有機溶媒分子が完全に揮発し、その為整列を阻害する要因が解かれる。その結果、記録後には化16(b)に示すように有機色素分子間が整列する。以下に化16における分子配列の再生信号に及ぼす影響を説明する。
化16(a)に示すように、有機溶媒分子であるテトラフルオロプロパノールが残った部分では、その影響でアゾ金属錯体内のコバルトとトリエチルアミン内の窒素イオン間の距離が広がり、化17(a)のように発色領域8内の共有結合に対し、コバルトイオンのみの影響があらわれる。それに対し分極を持った有機溶媒分子が揮発すると、トリエチルアミン内の窒素イオンがアゾ金属錯体内の中心金属に近づき(化17(b))、そのため窒素イオンの持つ電荷により電荷的に中和され、化17(c)のようにπ電子軌道が下の方に伸びる。それにより最大吸収波長が長くなる。その結果、図68に示すようにλa max write がλb max write より大きくなり、405nmにおける再生光で再生した時の吸光度がAl405からAh405に変化し、それが再生信号としてあらわれる。しかし、化17に示すように窒素イオンの電荷的な中和によるπ電子軌道の変化量は非常に小さいため、図68に示すλa max write とλb max write 間の波長差Δλmax が小さく、上述した(50)式もしくは(51)式を満足する。そのため、数多く追記形情報記録媒体12を量産したときの記録前後での媒体間の特定のばらつきが少なく、安定な量産をすることができる。
以上説明したように、この実施例によれば下記の効果がある。
記録マーク内の光反射率が高くなるL→H特性を有し、基板の変形を伴わない記録原理による記録特性を有した記録材料を用いることにより記録マークの高密度化が可能なだけでなく再生信号特性が良く信号検出精度を上げることができる。
記録前後による吸光スペクトルの最大吸収波長の変化量Δλmaxが
Δλmax ≦ 100nm
の範囲を満足する記録特性を有した記録材料を用いることにより数多く追記形情報記憶媒体を量産した場合、媒体間の特性のばらつきを小さくでき、安定に生産することができる。
記録材料に少なくとも有機金属錯体が含まれ、有機金属錯体としてアゾ金属錯体を使用することにより溶媒への溶解度がよく、塗布性能に優れているため追記形情報記憶媒体の量産性が向上する。
有機金属錯体内に3荷の金属イオンを含み、有機金属錯体内の中心金属に対し4個の酸素原子がイオン結合する構造を持つことによりベンゼン核グループが作るU平面とD平面間の回転を防止でき、安定な構造を確保できるため繰返し再生時の長期安定性を確保できる。
記録材料に少なくとも含有機窒素化合物が含まれることにより、有機金属錯体と相互作用し記録前後の最大吸収波長を変化させて再生信号の変調度を大きく取ることができる。
第6章 塗布形有機色素記録膜と光反射層界面でのプリグルーブ形状/プリピット形状に関する説明
6−1)光反射層
“第0章 使用波長と本実施形態との関係説明”に記載したように本実施形態では405nmを中心とした特に355〜455nmの範囲を考えている。この波長帯での光反射率の高い金属材料は光反射率の高い順に並べるとAgが96%前後、Alが80数%前後、Rhが80数%前後となっている。有機色素記録材料を用いた追記形情報記憶媒体では図1(b)に示すように光反射層4−2からの反射光が基本になっているので光反射層4−2では光反射率の高い特性が要求される。特に本実施形態の“H→L”記録膜の場合には未記録領域での光反射率が低いので、光反射層4−2単体での光反射率が低いと特にプリピット(エンボス)領域からの再生信号C/N比が低く再生時の安定性に欠けてしまうので、特に光反射層4−2単体での光反射率が高い事が必須となる。従って、本実施形態では上記波長帯において最も反射率の高いAg(銀)を中心とした材料を使用する。光反射層4−2の材料として銀単体では“原子が移動し易い”、“腐食し易い”と言う問題が生じる。最初の問題点に対し別の原子を添加して一部合金化すると銀原子が移動し辛くなる。別原子を入れる第1の実施形態として光反射層4−2の材質をAgNdCuにする。AgNdCuは固溶状態になるので銀単体の状態よりは若干反射率が下がる。別原子を入れる第2の実施形態では光反射層4−2の材質をAgPdにして電位を変える事で電気化学的に腐食し辛くする。銀の酸化などにより光反射層4−2が腐食すると光反射率が低下する。図1の(b)に示す記録膜構造を有する有機色素記録膜で特に“第3章 本実施形態における有機色素記録膜の特徴説明”で示す有機色素記録膜の場合には、特に記録層3−2と光反射層4−2との間の界面での光反射率が非常に重要となる。この界面で腐食が発生すると光反射率が低下し光学的な界面形状がぼやけ、そこでの反射光によるトラックずれ検出信号(プッシュプル信号)やウォブル信号、プリピット(エンボス)領域からの検出信号特性が劣化する。特に、図6の(b)、(c)に示すようにプリグルーブ領域11の幅Wgがランド領域幅Wlよりも広い場合には、トラックずれ検出信号(プッシュプル信号)やウォブル信号が出辛いので腐食による記録層3−2と光反射層4−2との間の界面での光反射率の劣化の影響は大きくなる。この界面での光反射率の劣化を防止するため、第3の実施形態として光反射層4−2にAgBiを使用する。AgBiは表面(記録層3−2と光反射層4−2との間の界面)に不動態皮膜を形成するため非常に安定相を形成し、上記界面での光反射率の劣化を防止する。すなわち、AgにBi(ビスマス)をわずかに添加させると、Biが上記界面に浮き上がり、それが酸化して酸化ビスマスと言う非常に緻密な膜(不動態皮膜)を形成し、内部での酸化を食い止める働きが有る。この不動態皮膜は上記界面上に形成されて非常に安定な相を形成するため光反射率の劣化が起きず長期に亘ってトラックずれ検出信号(プッシュプル信号)やウォブル信号、プリピット(エンボス)領域からの検出信号特性の安定性を保証する。355〜455nm範囲の波長帯において銀単体が最も光反射率が高く、別原子の添加量を上げるに従って光反射率が低下する。そのため、本実施形態でのAgBi内のBi原子の添加量は5at%以下が望ましい(at%はatomic percentを意味し、例えば、AgBiの合計原子数100の中でBi原子が5個存在する事を示している)。実際に作成して特性評価した所、Bi原子の添加量が0.5at%以上有れば不動態皮膜化が可能な事が分かった。その評価結果に基付き本実施形態での光反射層4−2内のBi原子添加量を1att%としている。この第3の実施形態では添加原子がBiのみなので第1の実施形態AgNdCu(Ag内にNdとCuの2種類の原子を添加する)と比べると添加原子量を少なくでき、AgNdCuよりAgBiの方が光反射率を上げる事が出来る。その結果、本実施形態の“H→L”記録膜や図6の(b)、(c)に示すようにプリグルーブ領域11の幅Wgがランド領域幅Wlよりも広い場合でも、安定して精度の良いトラックずれ検出信号(プッシュプル信号)やウォブル信号、プリピット(エンボス)領域からの検出信号が得られる。上記第3の実施形態はAgBiに限らず、他に不動態皮膜を作る銀合金としてAgMg、AgNi、AgGa、AgNx、AgCo、AgAlもしくは前記記載された原子を含む3元系を用いても良い。この光反射層4−2の厚みとしては5nm〜200nmの範囲に設定している。厚みが5nmより薄いと光反射層4−2が均一にならずランド状に形成されてしまう。そのため光反射層4−2の厚みは5nmにしている。AgBi膜は厚みが80nm以下にすると裏側に透過し出すので、片面1記録層の場合には厚みを80nm〜200nm、好ましくは100nm〜150nmとし、片面2記録層の場合には厚みを5nm〜15nmの範囲に設定する。
6−2)塗布形有機色素記録膜と光反射層界面でのプリピット形状に関する説明
本実施形態のHフォーマットでは図23に示すようにシステムリードイン領域SYLDIを持ち、この中ではエンボスピット領域211になっており、図43に示すようにプリピットの形で事前に情報が記録されている。この領域での再生信号は再生専用情報記憶媒体からの再生信号特性に合わせ、図9に示す情報再生装置または情報記録再生装置内の信号処理回路を再生専用情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体で兼用させている。この領域から検出される信号に対する定義は“3−4)本実施形態における“H→L”記録膜に関する特徴説明”の定義に合わせる。すなわち、充分に長い長さ(11T)のスペース領域14からの再生信号量をI11Hと定義し、前記I11Hと充分に長い長さ(11T)を持つプリピット(エンボス)領域13からの再生信号をI11Lと定義すると共に両者の差分値をI11≡I11H−I11Lとする。本実施形態ではこの領域での再生信号を再生専用情報記憶媒体からの再生信号特性に合わせて
I11/I11H≧0.3 (54)
望ましくは
I11/I11H>0.5 (55)
とする。2T長さのプリピット(エンボス)領域13とのスペース領域14の繰り返し信号振幅をI2とした時
I2/I11≧0.5 (56)
望ましくは
I2/I11>0.7 (57)
にしている。
上記(54)式または(55)式を満足するための物理的な条件に付いて説明す
る。既に図1の(b)で説明したように、プリピットからの信号特性は主に光反射層4−2での反射光により支配される。従って、光反射層4−2でのスペース領域14とプリピット(エンボス)領域13間の段差量Hprにより再生信号振幅値I11が決まる。光学的な近似計算を行うとこの段差量Hprは再生光波長λ、記録層3−2内の屈折率n32に対して
I11∝sin2{(2π×Hpr×n32)/λ} (58)
の関係が有り、(58)式からHpr≒λ/(4×n32)の時にI11が最大となることがわかる。(54)式または(55)式を満たすには(58)式から最低でも
Hpr≧λ/(12×n32) (59)
望ましくは
Hpr>λ/(6×n32) (60)
を満足している必要が有る。“第0章 使用波長と本実施形態との関係説明”で説明したように本実施形態ではλ=355nm〜455nmを利用しており、“2−1)記録原理/記録膜構造の違いと再生信号生成に関する基本的な考え方の違い”で説明したようにn32=1.4〜1.9なので、この値を(59)式または(60)式に代入すると
Hpr≧15.6nm (62)
望ましくは
Hpr>31.1nm (63)
の条件を満たすように段差を作っている。従来の追記形情報記憶媒体では図43(b)に示すようにスペース領域14で記録層3−2の厚みが薄かったために光反射層4−2と記録層3−2との界面での段差が小さく、(62)式を満足できなかった。それに対して本実施形態ではプリピット(エンボス)領域13での記録層3−2の厚みDgとスペース領域14での記録層3−2の厚みDlの関係が“3−2−E〕本実施形態における記録層の厚み分布に関する基本的特徴”に記載した条件に合うように工夫した結果、図43(b)に示すように(62)式または(63)式を満足させる充分に大きな段差Hprを確保する事ができた。
上記のような光学的近似検討を行い、本実施形態では(56)式または(57)式を満足できるように充分な再生信号の解像度を確保するには図43(b)に示すようにプリピット(エンボス)領域13の幅Wpをトラックピッチの半分以下とし、プリピット(エンボス)領域13からの再生信号の解像度を大きく取れるように工夫している。
6−3)塗布形有機色素記録膜と光反射層界面でのプリグルーブ形状に関する説明
第7章 Hフォーマットの説明
以下に本実施形態におけるHフォーマットの説明を行う。
図22に本実施形態における情報記憶媒体の構造及び寸法を示す。実施形態としては ・再生専用で記録が不可能な“再生専用形情報記憶媒体”
・1回のみの追記記録が可能な“追記形情報記憶媒体”
・何回でも書き替え記録が可能な“書替え形情報記憶媒体”
の3種類の情報記憶媒体実施形態を明示する。図22に示すように、上記3種類の情報記憶媒体では大部分の構造と寸法が共通化されている。3種類の情報記憶媒体いずれも内周側からバーストカッティング領域BCA、システムリードイン領域SYLDI、コネクション領域CNA、データリードイン領域DTLDI、データ領域DTAが配置された構造になっている。OPT形再生専用媒体以外は全て外周部にデータリードアウト領域DTLDOが配置されている。後述するように、OPT形再生専用媒体では外周部にミドル領域MDAが配置される。システムリードイン領域SYLDIではエンボス(プリピット)の形で情報が記録されており、追記形および書替え形のいずれもこの領域内は再生専用(追記不可能)となっている。再生専用形情報記憶媒体ではデータリードイン領域DTLDI内もエンボス(プリピット)の形で情報が記録されているのに対し、追記形および書替え形情報記憶媒体ではデータリードイン領域DTLDI内は記録マーク形成による新規情報の追記(書替え形では書替え)が可能な領域となっている。後述するように、追記形および書替え形情報記憶媒体ではデータリードアウト領域DTLDO内は新規情報の追記(書替え形では書替え)が可能な領域とエンボス(プリピット)の形で情報が記録されている再生専用領域の混在になっている。前述したように、図22に示すデータ領域DTA、データリードイン領域DTLDI、データリードアウト領域DTLDO、ミドル領域MDAではそこに記録されている信号の再生にPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式を使う事で情報記憶媒体の高密度化(特に線密度が向上する)を達成すると共に、システムリードイン領域SYLDI、システムリードアウト領域SYLDOでは、そこに記録されている信号の再生にスライスレベル検出方式を使う事で現行DVDとの互換性を確保するとともに再生の安定化を確保している。
現行DVD規格とは異なり、図22に示す実施形態ではバーストカッティング領域BCAとシステムリードイン領域SYLDIとが重ならずに位置的に分離されている。両者を物理的に分離する事で情報再生時のシステムリードイン領域SYLDI内に記録された情報とバーストカッティング領域BCA内に記録された情報との間の干渉を防止し、精度の高い情報再生が確保できる。
他の実施形態として“L→H形”記録膜を使った場合にバーストカッティング領域BCAの配置場所に予め微細な凹凸形状を形成する方法もある。後で表8における192バイト目に存在する記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報に関する説明を行う部分で、本実施形態では従来の“H→L”だけで無く“L→H”記録膜も規格内に組み込み、記録膜の選択範囲を広げ、高速記録可能や低価格媒体を供給可能とすると言う説明を行う。後述するように、本実施形態では“L→H”記録膜を使う場合も考慮する。バーストカッティング領域BCA内に記録するデータ(バーコードデータ)は記録膜に対して局所的にレーザ露光する事で形成する。図23に示すようにシステムリードイン領域SYLDIはエンボスピット領域211で形成するため、システムリードイン領域SYLDIからの再生信号は鏡面210からの光反射レベルと比べて光反射量が減る方向に現れる。もし、バーストカッティング領域BCAを鏡面210状態にし、“L→H”記録膜を用いた場合にはバーストカッティング領域BCA内に記録されたデータからの再生信号は(未記録状態の)鏡面210からの光反射レベルよりも光反射量が増加する方向に現れる。その結果、バーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号の最大レベルと最小レベルの位置(振幅レベル)とシステムリードイン領域SYLDIからの再生信号の最大レベルと最小レベルの位置(振幅レベル)との間に大きく段差が生じてしまう。図23の説明の所で後述するように情報再生装置または情報記録再生装置は
(1)バーストカッティング領域BCA内の情報の再生
→(2)システムリードイン領域SYLDI内の情報データゾーンCDZ内の情報の再生→(3)データリードイン領域DTLDI内の情報の再生(追記形または書替え形の場合)
→(4)参照コード記録ゾーンRCZ内での再生回路定数の再調整(最適化)
→(5)データ領域DTA内に記録された情報の再生もしくは新たな情報の記録
の順で処理を行うため、バーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号振幅レベルとシステムリードイン領域SYLDIからの再生信号振幅レベルに大きな段差が有ると情報再生の信頼性が低下すると言う問題が生じる。その問題を解決するため、この実施形態としては記録膜に“L→H”記録膜を使用する場合には、このバーストカッティング領域BCAに予め微細な凹凸形状を形成しておく所に特徴が有る。予め微細な凹凸形状を形成しておくと、局所的なレーザ露光によりデータ(バーコードデータ)を記録する前の段階で光の干渉効果により光反射レベルが鏡面210からの光反射レベルよりも低くなり、バーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号振幅レベル(検出レベル)とシステムリードイン領域SYLDIからの再生信号振幅レベル(検出レベル)の段差が大きく減り、情報再生の信頼性が向上し、上記の(1)から(2)へ移行する際の処理が容易になると言う効果が生まれる。“L→H”記録膜を使用する場合には、バーストカッティング領域BCAに予め形成する微細な凹凸形状の具体的内容としてシステムリードイン領域SYLDI内と同様にエンボスピット領域211とする方法が有るが、他の実施形態としてデータリードイン領域DTLDIやデータ領域DTAと同様にグルーブ領域214あるいはランド領域及びグルーブ領域213にする方法もある。システムリードイン領域SYLDIとバーストカッティング領域BCAを分離配置させる実施形態の説明の所に説明したように、バーストカッティング領域BCA内とエンボスピット領域211が重なると不要な干渉によるバーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号へのノイズ成分が増加する事を既に説明した。バーストカッティング領域BCA内の微細な凹凸形状の実施形態としてエンボスピット領域211にせずにグルーブ領域214あるいはランド領域及びグルーブ領域213にすると、不要な干渉によるバーストカッティング領域BCA内に形成されたデータからの再生信号へのノイズ成分が減少して再生信号の品質が向上すると言う効果が有る。バーストカッティング領域BCA内に形成するグルーブ領域214あるいはランド領域及びグルーブ領域213のトラックピッチをシステムリードイン領域SYLDIのトラックピッチに合わせると情報記憶媒体の製造性が向上する効果が有る。すなわち、情報記憶媒体の原盤製造時に原盤記録装置の露光部の送りモータ速度を一定にしてシステムリードイン領域内のエンボスピットを作成している。この時、バーストカッティング領域BCA内に形成するグルーブ領域214あるいはランド領域及びグルーブ領域213のトラックピッチをシステムリードイン領域SYLDI内のエンボスピットのトラックピッチに合わせる事でバーストカッティング領域BCAとシステムリードイン領域SYLDIとで引き続き送りモータ速度を一定に保持できるため、途中で送りモータの速度を変える必要が無いのでピッチムラが生じ辛く情報記憶媒体の製造性が向上する。
表5に再生専用形情報記憶媒体における本実施形態の各パラメータ値を、表6に追記形情報記憶媒体における本実施形態の各パラメータ値、表7に書替え専用形情報記憶媒体における本実施形態の各パラメータ値を示す。表5または表6と表7を比較(特に(B)の部分を比較)すると分かるように、再生専用形または追記形情報記憶媒体に対して書替え専用形情報記憶媒体の方がトラックピッチ及び線密度(データビット長)を詰める事により記録容量を高くしている。後述するように、書替え専用形情報記憶媒体ではランドグルーブ記録を採用する事で隣接トラックのクロストークの影響を低減させてトラックピッチを詰めている。または再生専用形情報記憶媒体、追記形情報記憶媒体、書替え形情報記憶媒体のいずれにおいてもシステムリードイン/アウト領域SYLDI/SYLDOのデータビット長とトラックピッチ(記録密度に対応)をデータリードイン/データリードアウト領域DTLDI/DTLDOよりも大きく(記録密度を低く)している所に特徴が有る。システムリードイン/システムリードアウト領域SYLDI/SYLDOのデータビット長とトラックピッチを現行DVDのリードイン領域の値に近付けることで現行DVDとの互換性を確保している。本実施形態でも現行DVD−Rと同様に追記形情報記憶媒体のシステムリードイン/システムリードアウト領域SYLDI/SYLDOでのエンボスの段差を浅く設定している。これにより、追記形情報記憶媒体のプリグルーブの深さを浅くし、プリグルーブ上に追記により形成する記録マークからの再生信号変調度を高くする効果が有る。逆に、その反作用としてシステムリードイン/システムリードアウト領域SYLDI/SYLDOからの再生信号の変調度が小さくなると言う問題が生じる。それに対して、システムリードイン/システムリードアウト領域SYLDI/SYLDOのデータビット長(とトラックピッチ)を粗くする事で、最も詰まった位置でのピットとスペースの繰り返し周波数を再生用対物レンズのMTF(Modulation Transfer Function)の光学的遮断周波数から離す(大幅に小さくする)事で、システムリードイン/システムリードアウト領域SYLDI/SYLDOからの再生信号振幅を引き上げ、再生の安定化を図る事が出来る。
各種情報記憶媒体におけるシステムリードインSYLDIとデータリードインDTLDI内の詳細なデータ構造比較を図23に示す。図23(a)は再生専用形情報記憶媒体のデータ構造、図23(b)は書替え形情報記憶媒体のデータ構造を示し、図23(c)は追記形情報記憶媒体のデータ構造を示す。
図23(a)に示すようにコネクションゾーンCNZのみ鏡面210となっている以外は再生専用形情報記憶媒体ではシステムリードイン領域SYLDIとデータリードイン領域DTLDI、データ領域DTA内は全てエンボスピットが形成されたエンボスピット領域211となっている。システムリードイン領域SYLDI内はエンボスピット領域211となっており、コネクションゾーンCNZが鏡面210になっている部分は共通しているが、図23(b)に示すように書替え形情報記憶媒体ではデータリードイン領域DTLDIとデータ領域DTA内はランド領域とグルーブ領域213が形成されており、追記形情報記憶媒体ではデータリードイン領域DTLDIとデータ領域DTA内はグルーブ領域214が形成されている。このランド領域とグルーブ領域213またはグルーブ領域214内に記録マークを形成する事で情報を記録する。
イニシャルゾーンINZはシステムリードインSYLDIの開始位置を示している。イニシャルゾーンINZ内に記録されている意味を持った情報としては、前述した物理セクタ番号または論理セクタ番号の情報を含むデータID(Identification Data)情報が離散的に配置されている。1個の物理セクタ内には後述するようにデータID、IED(ID Error Detection code)、ユーザ情報を記録するメインデータ、EDC(Error Detection Code)から構成されるデータフレーム構造の情報が記録されるが、イニシャルゾーンINZ内にも上記のデータフレーム構造の情報が記録される。しかしイニシャルゾーンINZ内ではユーザ情報を記録するメインデータの情報を全て“00h”に設定するため、イニシャルゾーンINZ内での意味の有る情報は前述したデータID情報のみとなる。この中に記録されている物理セクタ番号または論理セクタ番号の情報から現在位置を知る事ができる。すなわち、図9の情報記録再生部141で情報記憶媒体からの情報再生を開始する時にイニシャルゾーンINZ内の情報から再生開始した場合には、まずデータID情報の中に記録されている物理セクタ番号または論理セクタ番号の情報を抽出して情報記憶媒体内の現在位置を確認しつつ制御データゾーンCDZへ移動する。
バッファゾーン1 BFZ1及びバッファゾーン2 BFZ2はそれぞれ32ECCブロックから構成されている。表5〜表7に示すように、1ECCブロックはそれぞれ32物理セクタから構成されているので、32ECCブロックは1024物理セクタ分に相当する。バッファゾーン1 BFZ1及びバッファゾーン2 BFZ2内もイニシャルゾーンINZと同様にメインデータの情報を全て“00h”に設定している。
コネクション領域(Connection Area)CNA内に存在するコネクションゾーンCNZはシステムリードイン領域SYLDIとデータリードイン領域DTLDIを物理的に分離するための領域で、この領域はいかなるエンボスピットやプリブルーブも存在しないミラー面(鏡面)になっている。
再生専用形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体の参照コード記録ゾーン(Reference code zone)RCZは再生装置の再生回路調整用(例えば、図13のタップ制御器332内で行われる適応等化時の各タップ係数値の自動調整用)に用いられる領域で、前述したデータフレーム構造の情報が記録されている。参照コードの長さは1ECCブロック(=32セクタ)になっている。再生専用形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体の参照コード記録ゾーン(Reference code zone)RCZをデータ領域(Data Area)DTAの隣りに配置する所に本実施形態の特徴が有る。現行DVD−ROMディスク及び現行DVD−Rディスクいずれの構造においても参照コード記録ゾーン(Reference code zone)とデータ領域(Data Area)との間に制御データゾーンが配置されており、参照コード記録ゾーンとデータ領域との間が離れている。参照コード記録ゾーンとデータ領域との間が離れていると、情報記憶媒体の傾き量や光反射率あるいは(追記形情報記憶媒体の場合には)記録膜の記録感度が若干変化し、参照コード記録ゾーンの所で再生装置の回路定数を調整してもデータ領域での最適な回路定数がずれてしまうと言う問題が発生する。上記問題を解決するために、参照コード記録ゾーン(Reference code zone)RCZをデータ領域(Data Area)DTAに隣接配置すると、参照コード記録ゾーン(Reference code zone)RCZ内で情報再生装置の回路定数を最適化した場合に、隣接するデータ領域(Data Area)DTA内でも同じ回路定数で最適化状態が保持される。データ領域(Data Area)DTA内の任意の場所で精度良く信号再生したい場合には、
(1)参照コード記録ゾーン(Reference code zone)RCZ内で情報再生装置の回路定数を最適化する
→(2)データ領域DTA内の参照コード記録ゾーンRCZに最も近い部分を再生しながら情報再生装置の回路定数を再度最適化する
→(3)データ領域DTA内の目的位置と(2)で最適化した位置との中間位置で情報再生しながら回路定数を再々度最適化する
→(4)目的位置に移動して信号再生する
のステップを経る事で非常に精度良く目的位置での信号再生が可能となる。
追記形情報記憶媒体と書替え形情報記憶媒体内に存在するガードトラックゾーン1、2(Guard track zone)GTZ1、GTZ2はデータリードイン領域DTLDIの開始境界位置とディスクテストゾーンDKTZ、ドライブテストゾーンDRTZの境界位置を規定するための領域で、この領域には記録マーク形成による記録をしてはいけない領域として規定される。ガードトラックゾーン1 GTZ1、ガードトラックゾーン2 GTZ2はデータリードイン領域DTLDI内に存在するため、この領域内には追記形情報記憶媒体ではプリグルーブ領域、または書替え形情報記憶媒体ではグルーブ領域とランド領域は事前に形成されている。プリグルーブ領域、あるいはグルーブ領域、ランド領域内は表5〜表7に示すようにウォブルアドレスが予め記録されているので、このウォブルアドレスを用いて情報記憶媒体内の現在位置を判定する。
ディスクテストゾーンDKTZは情報記憶媒体の製造メーカーが品質テスト(評価)を行うために設けられた領域である。
ドライブテストゾーンDRTZは情報記録再生装置が情報記憶媒体への情報を記録する前に試し書きするための領域として確保されている。情報記録再生装置は予めこの領域内で試し書きを行い、最適な記録条件(ライトストラテジ)を割り出した後、その最適記録条件でデータ領域DTA内に情報を記録する事が出来る。
書替え形情報記憶媒体(図23(b))内に有るディスク識別ゾーンDIZ内の情報はオプショナル情報記録領域で記録再生装置の製造メーカー名情報とそれに関する付加情報及びその製造メーカーが独自に記録可能な領域から構成されるドライブ記述子(Drive description)を1組みとして1組み毎に追記可能な領域となっている。
書替え形情報記憶媒体(図23(b))内に有る欠陥管理領域1 DMA1、欠陥管理領域2 DMA2はデータ領域DTA内の欠陥管理情報が記録される場所で、例えば、欠陥個所が発生した時の代替え箇所情報などが記録されている。
追記形情報記憶媒体(図23(c))ではRMDディプリケーションゾーンRDZと記録位置管理ゾーンRMZ、R物理情報ゾーンR−PFIZが独自に存在する。記録位置管理ゾーンRMZ内にはデータの追記処理により更新されるデータの記録位置に関する管理情報で有る記録位置管理データRMD(Recording Management Data)が記録される(詳細は後述する)。後ほど図24の所で説明するように本実施形態では各ボーダー内領域BRDA毎にそれぞれ記録位置管理ゾーンRMZを設定し、記録位置管理ゾーンRMZの領域の拡張を可能としている。その結果、追記頻度が増加して必要とする記録位置管理データRMD領域が増加しても、逐次記録位置管理ゾーンRMZを拡張する事で対応可能なため、追記回数を大幅に増やせると言う効果が生まれる。その場合、本実施形態では各ボーダー内領域BRDAに対応した(各ボーダー内領域BRDAの直前に配置された)ボーダーインBRDI内に記録位置管理ゾーンRMZを配置する。本実施形態では最初のボーダー内領域BRDA#1に対応したボーダーインBRDIとデータリードイン領域DTLDIを兼用化し、データ領域DTA内での最初のボーダーインBRDIの形成を省略してデータ領域DTAの有効活用を行っている。すなわち図23(c)に示したデータリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZは最初のボーダー内領域BRDA#1に対応した記録位置管理データRMDの記録場所として利用されている。
RMDディプリケーションゾーンRDZは記録位置管理ゾーンRMZ内の下記の条件を満足する記録位置管理データRMDの情報を記録する場所で、本実施形態のように記録位置管理データRMDを重複して持つ事で、記録位置管理データRMDの信頼性を高めている。すなわち、追記形情報記憶媒体表面に付いたゴミや傷の影響で記録位置管理ゾーンRMZ内の記録位置管理データRMDが不可能になった場合、このRMDディプリケーションゾーンRDZ内に記録された記録位置管理データRMDを再生し、更に、残りの必要な情報をトレーシングにより収集する事で最新の記録位置管理データRMDの情報を復元できる。
このRMDディプリケーションゾーンRDZ内には(複数の)ボーダーをクローズする時点での記録位置管理データRMDが記録される。後述するように1個のボーダーをクローズし、次の新たなボーダー内領域を設定する毎に新たな記録位置管理ゾーンRMZを定義するので、新たな記録位置管理ゾーンRMZを作成する毎に、その前のボーダー内領域に関係した最後の記録位置管理データRMDをこのRMDディプリケーションゾーンRDZ内に記録すると言っても良い。追記形情報記憶媒体上に記録位置管理データRMDを追記する毎に同じ情報をこのRMDディプリケーションゾーンRDZに記録すると、比較的少ない追記回数でRMDディプリケーションゾーンRDZが一杯になってしまうため追記回数の上限値が小さくなってしまう。それに比べて本実施形態のようにボーダーをクローズした時やボーダーインBRDI内の記録位置管理ゾーン内が一杯になり、Rゾーンを用いて新たな記録位置管理ゾーンRMZを形成するなど新たに記録位置管理ゾーンを作る場合に、今までの記録位置管理ゾーンRMZ内の最後の記録位置管理データRMDのみをRMDディプリケーションゾーンRDZ内に記録する事でRMDディプリケーションゾーンRDZ内を有効活用して追記可能回数を向上できる効果が有る。
例えば、追記途中の(クローズする前の)ボーダー内領域BRDAに対応した記録位置管理ゾーンRMZ内の記録位置管理データRMDが追記形情報記憶媒体表面に付いたゴミや傷の影響で再生不可能になった場合には、このRMDディプリケーションゾーンRDZ内の最後に記録された記録位置管理データRMDを読み取る事で既にクローズされたボーダー内領域BRDAの場所が分かる。従って、情報記憶媒体のデータ領域DTA内のそれ以外の場所をトレースする事で追記途中の(クローズする前の)ボーダー内領域BRDAの場所とそこに記録された情報内容を収集でき、最新の記録位置管理データRMDの情報を復元できる。
図23(a)〜(c)に共通して存在する制御データゾーンCDZ内の物理フォーマット情報PFI(後で詳細に説明する)に類似した情報がR物理情報ゾーンR−PFIZ内に記録される。
追記形情報記憶媒体(図23(c))内に有るRMDディプリケーションゾーンRDZと記録位置管理ゾーンRMZ内のデータ構造を図24に示す。図24(a)は図23(c)と同じ物を示し、図23(c)内のRMDディプリケーションゾーンRDZと記録位置管理ゾーンRMZの拡大図が図24(b)に示されている。上述したようにデータリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZには最初のボーダー内領域BRDA内に対応した記録位置管理に関するデータが1個の記録位置管理データ(RecordingManagementData)RMDの中にそれぞれまとめて記録され、追記形情報記憶媒体への追記処理が行われた時に発生する記録位置管理データRMDの中身が更新される毎に新たな記録位置管理データRMDとして順次後ろ側に追記される。すなわち、記録位置管理データ(Recording Management Data)RMDは1物理セグメントブロック(物理セグメントブロックに付いては後述する)のサイズ単位で記録され、データ内容が更新される毎に新たな記録位置管理データRMDとして順次後ろに追記されて行く。図24(b)の例では事前に記録位置管理データRMD#1と#2が記録されていた所に管理データに変更が生じたので、変更後(アップデート後)のデータを記録位置管理データRMD#3として記録位置管理データRMD#2の直後に記録した例を示している。従って、記録位置管理ゾーンRMZ内では更に、追記可能なように予約領域273が存在している。
図24(b)ではデータリードイン領域DTLDI中に存在する記録位置管理ゾーンRMZ内の構造を示しているが、それに限らず後述するボーダーインBRDI内またはボーダー内領域BRDA内に有る記録位置管理ゾーンRMZ(または拡張記録位置管理ゾーン:拡張RMZと呼ぶ)内の構造も図24(b)に示した構造と同じである。
本実施形態では最初のボーダー内領域BRDA#1をクローズするかデータ領域DTAの終了処理(ファイナライズ)をする場合には、最後の記録位置管理データRMDで図24(b)に示した予約領域273を全て埋める処理を行う。これにより、
(1)“未記録状態”の予約領域273が無くなり、DPD(Differential Phase Detection)検出法によるトラッキング補正の安定化を保証する
(2)かつての予約領域273に最後の記録位置管理データRMDを多重書きする事になり、最後の記録位置管理データRMDに関する再生時の信頼性が大幅に向上する
(3)誤って未記録状態の予約領域273に異なった記録位置管理データRMDを記録する事件を防止できる
と言う効果が有る。
上記処理方法はデータリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZに限らず、本実施形態では後述するボーダーインBRDI内またはボーダー内領域BRDA内に有る記録位置管理ゾーンRMZ(または拡張記録位置管理ゾーン:拡張RMZと呼ぶ)に対しても対応するボーダー内領域BRDAをクローズするかデータ領域DTAの終了処理(ファイナライズ)をする場合には最後の記録位置管理データRMDで予約領域273を全て埋める処理を行う。
RMDディプリケーションゾーンRDZ内はRDZリードインRDZLIと対応RMZ最後の記録位置管理データRMDの記録領域271に分かれている。RDZリードインRDZLIの中は図24(b)に示すようにデータサイズが48KBのシステム予約領域SRSFとデータサイズが16KBのユニークID領域UIDFから構成される。システム予約領域SRSF内は全て“00h”にセットされる。
本実施形態では追記可能なデータリードイン領域DTLDI内にRDZリードインRDZLIを記録する所に特徴が有る。本実施形態の追記形情報記憶媒体では製造直後はRDZリードインRDZLIは未記録の状態で出荷される。ユーザサイドの情報記録再生装置内でこの追記形情報記憶媒体を使う段階で初めてRDZリードインRDZLIの情報を記録する。従って、追記形情報記憶媒体を情報記録再生装置に装着直後にこのRDZリードインRDZLIに情報が記録されているか否かを判定する事で、対象の追記形情報記憶媒体が製造・出荷直後の状態か少なくとも一回でも使用したかを容易に知る事が出来る。更に、図24に示すようにRMDディプリケーションゾーンRDZが最初のボーダー内領域BRDAに対応した記録位置管理ゾーンRMZより内周側に配置され、RMDディプリケーションゾーンRDZ内にRDZリードインRDZLIが配置される所に本実施形態の次の特徴が有る。
追記形情報記憶媒体が製造・出荷直後の状態か少なくとも一回でも使用したかの情報(RDZリードインRDZLI)を共通な利用目的(RMDの信頼性向上)に使われるRMDディプリケーションゾーンRDZ内に配置する事で情報収集の利用効率が向上する。また、RDZリードインRDZLIを記録位置管理ゾーンRMZより内周側に配置する事で必要情報収集に必要な時間の短縮化が図れる。情報記憶媒体を情報記録再生装置に装着すると、情報記録再生装置は図22に記載されるように最内周側に配置されたバーストカッティング領域BCAから再生を開始し、順次外側に再生位置を移動させながらシステムリードイン領域SYLSI、データリードイン領域DTLDIへと再生場所を変えて行く。RMDディプリケーションゾーンRDZ内のRDZリードインRDZLIに情報が記録されているかを判別する。出荷直後で一度も記録されて無い追記形情報記憶媒体では記録位置管理ゾーンRMZ内には一切の記録位置管理データRMDが記録されて無いので、RDZリードインRDZLIに情報が記録されて無い場合には“出荷直後で未使用”と判定し、記録位置管理ゾーンRMZの再生を省く事が出来、必要情報収集に必要な時間の短縮化が図れる。
ユニークID領域UIDF内は図24(c)に示すように、初めて出荷直後の追記形情報記憶媒体を使用した(記録を開始した)情報記録再生装置に関する情報が記録される。すなわち、情報記録再生装置のドライブメーカーID281や情報記録再生装置のシリアル番号283、モデル番号284が記録される。ユニークID領域UIDF内は図24(c)に示した2KB(厳密には2048バイト)の同じ情報が8回繰り返し記録されている。ユニークディスクID287内情報には図24(d)に示すように初めて使用(記録を開始)した時の年情報293、月情報294、日情報295、時間情報296、分情報297、秒情報298が記録される。それぞれの情報のデータタイプは図24(d)に記載されているようにHEX、BIN、ASCIIで記載され、使用バイト数も2バイトもしくは4バイト使われる。
このRDZリードインRDZLIの領域のサイズと前記1個の記録位置管理データRMDのサイズが64KBすなわち、1個のECCブロック内のユーザデータサイズの整数倍になっている所に本実施形態の特徴がある。追記形情報記憶媒体の場合、1個のECCブロック内のデータの一部を変更後に情報記憶媒体に変更後のECCブロックのデータを書き替えると言う処理が出来ない。従って、特に追記形情報記憶媒体の場合には後述するように、1個のECCブロックを含むデータセグメントの整数倍で構成されるレコーディングクラスタ単位で記録される。従って、RDZリードインRDZLIの領域のサイズと前記1個の記録位置管理データRMDのサイズがECCブロック内のユーザデータサイズと異なると、レコーディングクラスター単位に合わせるためのパディング領域またはスタッフィング領域が必要となり、実質的な記録効率が低下する。本実施形態のようにRDZリードインRDZLIの領域のサイズと前記1個の記録位置管理データRMDのサイズが64KBの整数倍に設定する事で記録効率の低下を防止できる。
図24(b)における対応RMZ最後の記録位置管理データRMD記録領域271についての説明を行う。登録2621459号に記載されているように、リードイン領域の内側に記録中断時の中間情報を記録する方法が有る。この場合には記録を中断する毎あるいは追記処理を行う毎に、この領域に中間情報(本実施形態では記録位置管理データRMD)を逐次追記する必要が有る。そのため、頻繁に記録中断または追記処理が繰り返されると、この領域が直ぐに満杯となり更なる追加処理が不可能になると言う問題が発生する。この問題を解決するために、本実施形態では特定の条件を満たす時にのみ更新された記録位置管理データRMDを記録できる領域としてRMDディプリケーションゾーンRDZを設定し、特定条件の下で間引かれた記録位置管理データRMDを記録する事を特徴とする。このようにRMDディプリケーションゾーンRDZ内に追記される記録位置管理データRMDの頻度を低下させる事でRMDディプリケーションゾーンRDZ内で満杯になるのを防ぎ、追記形情報記憶媒体に対する追記可能な回数を大幅に向上できると言う効果が有る。これと並行して、追記処理毎に更新される記録位置管理データRMDは図27(c)に示すボーダーインBRDI内(最初のボーダー内領域BRDA#1に関しては図24(a)に示すようにデータリードイン領域DTLDI内)の記録位置管理ゾーンRMZ、あるいは後述するRゾーンを利用した記録位置管理ゾーンRMZ内に逐次追記される。そして、次のボーダー内領域BRDAを作成(新たなボーダーインBRDIを設定)したりRゾーン内に新たな記録位置管理ゾーンRMZを設定するなど新たな記録位置管理ゾーンRMZを作る時に、最後の(新たな記録位置管理ゾーンRMZを作る直前の状態での最新の)記録位置管理データRMDをRMDディプリケーションゾーンRDZ(の中の対応RMZ最後の記録位置管理データRMD記録領域271)内に記録する。これにより、追記形情報記憶媒体への追記可能回数が大幅に増大するだけでなく、この領域を利用する事で最新のRMD位置検索が容易になると言う効果が生まれる。
図24に示した記録位置管理データRMD内のデータ構造を図26に示す。図26(a)から(c)までは図24(a)から(b)までと同じ内容になっている。前述したように、本実施形態では最初のボーダー内領域BRDA#1に対するボーダーインBRDIをデータリードインDTLDIと一部兼用しているため、データリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZには最初のボーダー内領域に対応する記録位置管理データRMD#1〜#3が記録されている。データ領域DTA内に全くデータが記録されて無い場合には、この記録位置管理ゾーンRMZ内は全てデータが未記録状態である予約領域273になる。データ領域DTA内にデータが追記される毎に更新された記録位置管理データRMDがこの予約領域273内の最初の場所に記録され、記録位置管理ゾーンRMZ内の最初のボーダー内領域に対応した記録位置管理データRMDが順次追記されて行く。記録位置管理ゾーンRMZ内に一回毎に追記される記録位置管理データRMDのサイズは64Kバイトにしている。本実施形態では64KBのデータで1ECCブロックを構成するため、この記録位置管理データRMDのデータサイズを1ECCブロックサイズに合わせる事で追記処理の簡素化を図っている。後述するように、本実施形態では1ECCブロックデータ412の前後にガード領域の一部を付加して1個のデータセグメント490を構成し、1個以上(n個)のデータセグメントに拡張ガードフィールド258、259を付加して追記もしくは書き換え単位のレコーディングクラスター540、542を構成する。記録位置管理データRMDを記録する場合には1個のデータセグメント(1個のECCブロック)のみを含むレコーディングクラスター540、542としてこの記録位置管理ゾーンRMZ内に順次追記する。後述するように、1個のデータセグメント531を記録する場所の長さは7個の物理セグメント550〜556から構成される1個の物理セグメントブロックの長さに一致している。
1個の記録位置管理データRMD#1内のデータ構造を図26(c)に示す。図26(c)ではデータリードイン領域DTLDI内の記録位置管理データRMD#1内のデータ構造を示しているが、これに限らず、RMDディプリケーションゾーンRDZ内に記録する記録位置管理データRMD#A、#B(図24)や後述するボーダーインBRDI内に記録される(拡張)記録位置管理データRMDやRゾーン内に記録される(拡張)記録位置管理データRMD内のデータ構造、およびボーダーアウトBRDO内に記録するRMDのコピーCRMD(図27(d))も同じ構造を取る。図26(c)に示すように1個の記録位置管理データRMD内はリザーブ領域と“0”から“21”までのRMDフィールドから構成されている。本実施形態では64KBのユーザデータから構成される1個のECCブロック内に32個の物理セクタが含まれており、1個の物理セクタ内には2KB(厳密には2048バイト)のユーザデータがそれぞれ記録されている。この1個の物理セクタ内に記録されるユーザデータサイズに合わせて各RMDフィールドはそれぞれ2048バイト毎に割り振られ、相対的な物理セクタ番号が設定されている。この相対的な物理セクタ番号順に追記形情報記憶媒体上にRMDフィールドが記録される。各RMDフィールド内に記録されるデータ内容の概要は
・RMDフィールド0 …ディスク状態に関する情報とデータエリアアロケーション(データ領域内の各種データの配置場所に関する情報)
・RMDフィールド1 …使用したテストゾーンに関する情報と推奨の記録波形に関する情報
・RMDフィールド2 …ユーザが使用できるエリア
・RMDフィールド3 …ボーダーエリアの開始位置情報と拡張RMZ位置に関する情報
・RMDフィールド4〜21…Rゾーンの位置に関する情報
となっている。
図23に示すように再生専用形、追記形、書替え形いずれの情報記憶媒体においてシステムリードイン領域がデータリードイン領域を挟んでデータ領域の反対側に配置され、更に、図22に示すようにシステムリードイン領域SYLDIを挟んでバーストカッティング領域BCAとデータリードイン領域DTLDIが互いに反対側に配置されている所に本実施形態の特徴が有る。情報記憶媒体を図9に示した情報再生装置または情報記録再生装置に挿入すると、情報再生装置または情報記録再生装置は
(1)バーストカッティング領域BCA内の情報の再生
→(2)システムリードイン領域SYLDI内の情報データゾーンCDZ内の情報の再生→(3)データリードイン領域DTLDI内の情報の再生(追記形または書替え形の場合)
→(4)参照コード記録ゾーンRCZ内での再生回路定数の再調整(最適化)
→(5)データ領域DTA内に記録された情報の再生もしくは新たな情報の記録
の順で処理を行う。
図23に示すように上記処理の順に沿って情報が内周側から順に配置されているため、不要な内周へのアクセス処理が不要となり、アクセス回数を少なくしてデータ領域DTAへ到達できるため、データ領域DTA内に記録された情報の再生もしくは新たな情報の記録の開始時間を早める効果が有る。また、システムリードイン領域SYLDIでの信号再生にスライスレベル検出方式を利用し、データリードイン領域DTLDIとデータ領域DTAでは信号再生にPRMLを用いるので、データリードイン領域DTLDIとデータ領域DTAを隣接させると、内周側から順に再生した場合、システムリードイン領域SYLDIとデータリードイン領域DTLDIの間で1回だけスライスレベル検出回路からPRML検出回路に切り替えるだけで連続して安定に信号再生が可能となる。そのため、再生手順に沿った再生回路切り替え回数が少ないので処理制御が簡単になりデータ領域内再生開始時間が早くなる。
各種情報記憶媒体におけるデータ領域DTAとデータリードアウト領域DTLDO内のデータ構造の比較を図25に示す。図25(a)が再生専用形情報記憶媒体のデータ構造を表し、図25(b)と(c)が書替え形情報記憶媒体のデータ構造、図25(d)〜(f)が追記形情報記憶媒体のデータ構造を示している。特に図25(b)と(d)が初期時(記録前)の構造を示し、図25(c)と(e)、(f)は記録(追記または書替え)が有る程度進んだ状態でのデータ構造を示している。
図25(a)に示すように再生専用形情報記憶媒体においてデータリードアウト領域DTLDOとシステムリードアウト領域SYLDO内に記録されているデータは図23のバッファゾーン1 BFZ1、バッファゾーン2 BFZ2と同様にデータフレーム構造(データフレーム構造に付いては後述)を持ち、その中のメインデータの値を全て“00h”に設定している。再生専用形情報記憶媒体ではデータ領域DTA内の全領域に亘りユーザデータの事前記録領域201として使用できるが、後述するように追記形情報記憶媒体と書替え形情報記憶媒体のいずれの実施形態でもユーザデータの書替え/追記可能範囲202〜205がデータ領域DTAよりも狭くなっている。
追記形情報記憶媒体あるいは書替え形情報記憶媒体ではデータ領域DTAの最内周部に代替え領域(Spare Area)SPAが設けて有る。データ領域DTA内に欠陥場所が発生した場合に前記代替え領域SPAを使って代替え処理を行い、書替え形情報記憶媒体の場合にはその代替え履歴情報(欠陥管理情報)を図23(b)の欠陥管理領域1 DMA1、欠陥管理領域2 DMA2及び図25(b)、(c)の欠陥管理領域3 DMA3、欠陥管理領域4 DMA4に記録する。図25(b)、(c)の欠陥管理領域3 DMA3、欠陥管理領域4 DMA4に記録される欠陥管理情報は図23(b)の欠陥管理領域1 DMA1、欠陥管理領域2 DMA2に記録される情報と同じ内容が記録される。追記形情報記憶媒体の場合には代替え処理を行った場合の代替え履歴情報(欠陥管理情報)は図23(c)に示したデータリードイン領域DTLDI内及び後述するボーダーゾーン内に存在する記録位置管理ゾーンへの記録内容のコピー情報C_RMZ内に記録される。現行のDVD−Rディスクでは欠陥管理を行わなかったが、DVD−Rディスクの製造枚数の増加に連れて一部に欠陥場所を持つDVD−Rディスクが出廻るようになり、追記形情報記憶媒体に記録する情報の信頼性向上を望む声が大きくなっている。図25に示す実施形態では追記形情報記憶媒体に対しても代替え領域SPAを設定し、代替え処理による欠陥管理を可能としている。これにより、一部に欠陥場所を持つ追記形情報記憶媒体に対しても欠陥管理処理を行うことで記録する情報の信頼性を向上させる事が可能となる。書替え形情報記憶媒体あるいは追記形情報記憶媒体では欠陥が多く発生した場合にユーザサイドで情報記録再生装置が判断して図25(b)、(d)に示すユーザへの販売直後の状態に対して自動的に拡張代替え領域(Extended Spare Area)ESPA、ESPA1、ESPA2を設定し、代替え場所を広げられるようにしている。このように拡張代替え領域ESPA、ESPA1、ESPA2を設定可能にする事で製造上の都合で欠陥の多い媒体も販売可能となり、その結果、媒体の製造歩留まりが向上して媒体の低価格化が可能となる。図25(c)や(e)、(f)に示すように、データ領域DTA内に拡張代替え領域ESPA、ESPA1、ESPA2を増設すると、ユーザデータの書替えあるいは追記可能範囲203、205が減少するので、その位置情報を管理する必要が有る。書替え形情報記憶媒体ではその情報は欠陥管理領域1 DMA1〜欠陥管理領域4 DMA4と後述するように制御データゾーンCDZ内に記録される。追記形情報記憶媒体の場合には後述するようにデータリードイン領域DTLDI内及びボーダーアウトBRDO内に存在する記録位置管理ゾーンRMZ内に記録される。後述するように記録位置管理ゾーンRMZ内の記録位置管理データ(Recording Management Data)RMDに記録される。記録位置管理データRMDは管理データ内容が更新される毎に記録位置管理ゾーンRMZ内でアップデート追記されるので、拡張代替え領域を何度設定し直しても(図25(e)の実施形態では最初に拡張代替え領域1 EAPA1を設定し、その拡張代替え領域1 EAPA1を全て使い果たした後でも欠陥が多くて更なる代替え領域設定が必要になったので、後日更に、拡張代替え領域2 ESPA2を設定した状態を示している)タイムリーにアップデートして管理する事が可能となる。
図25(b)、(c)に示すガードトラックゾーン3 GTZ3は欠陥管理領域4 DMA4とドライブテストゾーンDRTZ間の分離のために配置され、ガードトラックゾーン4 GTZ4はディスクテストゾーンDKTZとサーボキャリブレーション領域(Servo Calibration Zone)SCZとの間の分離のために配置されている。ガードトラックゾーン3 GTZ3、ガードトラックゾーン4 GTZ4は図23に示したガードトラックゾーン1 GTZ1、ガードトラックゾーン2 GTZ2と同様、この領域には記録マーク形成による記録をしてはいけない領域として規定される。ガードトラックゾーン3 GTZ3、ガードトラックゾーン4 GTZ4はデータリードアウト領域DTLDO内に存在するため、この領域内には追記形情報記憶媒体ではプリグルーブ領域、または書替え形情報記憶媒体ではグルーブ領域とランド領域は事前に形成されている。プリグルーブ領域、あるいはグルーブ領域、ランド領域内は表5〜表7に示すようにウォブルアドレスが予め記録されているので、このウォブルアドレスを用いて情報記憶媒体内の現在位置を判定する。
ドライブテストゾーンDRTZは図23と同様、情報記録再生装置が情報記憶媒体への情報を記録する前に試し書きするための領域として確保されている。情報記録再生装置は予めこの領域内で試し書きを行い、最適な記録条件(ライトストラテジ)を割り出した後、その最適記録条件でデータ領域DTA内に情報を記録する事が出来る。
ディスクテストゾーンDKTZは図23と同様、情報記憶媒体の製造メーカーが品質テスト(評価)を行うために設けられた領域である。
サーボキャリブレーション領域(Servo Calibration Zone)SCZ以外のデータリードアウト領域DTLDO内の全領域には追記形情報記憶媒体ではプリグルーブ領域、または書替え形情報記憶媒体ではグルーブ領域とランド領域は事前に形成され、記録マークの記録(追記または書替え)が可能になっている。図25(c)と(e)に示したようにサーボキャリブレーション領域(Servo Calibration Zone)SCZ内はプリグルーブ領域214、またはランド領域及びグルーブ領域213の代わりにシステムリードイン領域SYLDIと同じようにエンボスピット領域211となっている。この領域はデータリードアウト領域DTLDOの他の領域に続いてエンボスピットによる連続したトラックを形成し、このトラックはスパイラル状に連続してつながり情報記憶媒体の円周に沿って360度に亘りエンボスピットを形成している。この領域はDPD(Deferencial Phase Detect)法を用いて情報記憶媒体の傾き量を検出するために設けて有る。情報記憶媒体が傾くとDPD法を用いたトラックずれ検出信号振幅にオフセットが生じ、オフセット量で傾き量が、オフセット方向で傾き方向が精度良く検出する事が可能となる。この原理を利用し、情報記憶媒体の最外周部(データリードアウト領域DTLDO内の外周部)にDPD検出が出来るエンボスピットを事前に形成しておく事で、図9の情報記録再生部141内に存在する光学ヘッドに(傾き検出用の)特別な部品を付加する事無く安価に精度の良い傾き検出が可能となる。さらに、この外周部の傾き量を検出する事でデータ領域DTA内でも(傾き量補正による)サーボの安定化を実現できる。本実施形態ではこのサーボキャリブレーション領域SCZ内のトラックピッチをデータリードアウト領域DTLDO内の他の領域に合わせ、情報記憶媒体の製造性を向上させ、歩留まり向上による媒体の低価格化を可能にする。すなわち、追記形情報記憶媒体においてデータリードアウト領域DTLDO内の他の領域にはプリグルーブが形成されているが、追記形情報記憶媒体の原盤製造時に原盤記録装置の露光部の送りモータ速度を一定にしてプリグルーブを作成している。この時、サーボキャリブレーション領域SCZ内のトラックピッチをデータリードアウト領域DTLDO内の他の領域に合わせる事で、サーボキャリブレーション領域SCZ内も引き続き送りモータ速度を一定に保持できるため、ピッチムラが生じ辛く情報記憶媒体の製造性が向上する。
他の実施形態としてはサーボキャリブレーション領域SCZ内のトラックピッチまたはデータビット長の少なくともいずれかをシステムリードイン領域SYLDIのトラックピッチまたはデータビット長に合わせる方法も有る。DPD法を用いてサーボキャリブレーション領域SCZ内の傾き量とその傾き方向を測定し、その結果、をデータ領域DTA内でも利用してデータ領域DTA内でのサーボ安定化を図る事を前述したが、データ領域DTA内の傾き量を予想する方法としてシステムリードイン領域SYLDI内の傾き量とその方向を同じくDPD法により予め測定し、サーボキャリブレーション領域SCZ内の測定結果との関係を利用して予測する事ができる。DPD法を用いた場合、情報記憶媒体の傾きに対する検出信号振幅のオフセット量とオフセットが出る方向がエンボスピットのトラックピッチとデータビット長に依存して変化する特徴がある。従って、サーボキャリブレーション領域SCZ内のトラックピッチまたはデータビット長の少なくともいずれかをシステムリードイン領域SYLDIのトラックピッチまたはデータビット長に合わせる事で検出信号振幅のオフセット量とオフセットが出る方向に関する検出特性をサーボキャリブレーション領域SCZ内とシステムリードイン領域SYLDI内とで一致させ、両者の相関を取り易くしてデータ領域DTA内の傾き量と方向の予測を容易にすると言う効果が生じる。
図23(c)と図25(d)に示すように追記形情報記憶媒体では内周側と外周側の2箇所にドライブテストゾーンDRTZを設けて有る。ドライブテストゾーンDRTZに行う試し書きの回数が多い程、細かくパラメータを振って最適な記録条件を詳細に探すことが出来てデータ領域DTAへの記録精度が向上する。書替え形情報記憶媒体では重ね書きによるドライブテストゾーンDRTZ内の再利用が可能となるが、追記形情報記憶媒体では試し書きの回数を多くして記録精度を上げようとするとドライブテストゾーンDRTZ内をすぐに使い切ってしまうと言う問題が発生する。その問題を解決するために本実施形態では外周部から内周方向に沿って逐次拡張ドライブテストゾーン(Extended Drive Test Zone)EDRTZの設定を可能とし、ドライブテストゾーンの拡張を可能とする所に特徴が有る。拡張ドライブテストゾーンの設定方法とその設定された拡張ドライブテストゾーン内での試し書き方法に関する特徴として本実施形態では
1.拡張ドライブテストゾーンEDRTZの設定(枠取り)は外周方向(データリードアウト領域DTLDOに近い方)から内周側にむけて順次まとめて設定する
… 図25(e)に示すようにデータ領域内の最も外周に近い場所(データリードアウト領域DTLDOに最も近い場所)からまとまった領域として拡張ドライブテストゾーン1 EDRTZ1を設定し、その拡張ドライブテストゾーン1 EDRTZ1を使い切った後で、それより内周側に存在するまとまった領域として拡張ドライブテストゾーン2 EDRTZ2を次に設定可能とする。
2.拡張ドライブテストゾーンEDRTZの中では内周側から順次試し書きを行う
… 拡張ドライブテストゾーンEDRTZの中で試し書きを行う場合には内周側から外周側に沿ってスパイラル状に配置されたグルーブ領域214に沿って行い、前回試し書きをした(既に記録された)場所のすぐ後ろの未記録場所に今回の試し書きを行う。
データ領域内は内周側から外周側に沿ってスパイラル状に配置されたグルーブ領域214に沿って追記される構造となっており、拡張ドライブテストゾーン内での試し書きが直前に行われた試し書き場所の後ろに順次追記する方法で行う事により、“直前に行われた試し書き場所の確認”→“今回の試し書きの実施”の処理がシリアルに行えるため、試し書き処理が容易となるばかりでなく、拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内での既に試し書きされた場所の管理が簡単になる。
3.拡張ドライブテストゾーンEDRTZも含めた形でデータリードアウト領域DTLDOの再設定可能
… 図25(e)にデータ領域DTA内に2箇所拡張代替え領域1 ESPA1、拡張代替え領域2 ESPA2を設定し、2箇所の拡張ドライブテストゾーン1 EDRTZ1、拡張ドライブテストゾーン2 EDRTZ2を設定した例を示す。この場合に本実施形態では図25(f)に示すように拡張ドライブテストゾーン2 EDRTZ2までを含めた領域に対してデーターリードアウト領域DTLOとして再設定出来る所に特徴が有る。これに連動して範囲を狭めた形でデータ領域DTAの範囲の再設定を行うことになり、データ領域DTA内に存在するユーザデータの追記可能範囲205の管理が容易になる。図25(f)のように再設定した場合には図25(e)に示した拡張代替え領域1 ESPA1の設定場所を“既に使い切った拡張代替え領域”と見なし、拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内の拡張代替え領域2 ESPA2内のみに未記録領域(追記の試し書きが可能な領域)が存在すると管理する。この場合、拡張代替え領域1 ESPA1内に記録され、代替えに使われた非欠陥の情報はそっくりそのまま拡張代替え領域2 ESPA2内の未代替え領域の場所に移され、欠陥管理情報が書き替えられる。この時再設定されたデータリードアウト領域DTLDOの開始位置情報は表11に示すように記録位置管理データRMD内のRMDフィールド0の最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報内に記録される。
図28を参照して追記形情報記憶媒体におけるボーダー領域の構造について説明する。追記形情報記憶媒体に初めて1個のボーダー領域を設定した時は図28(a)に示すように内周側(データリードイン領域DTLDIに最も近い側)にボーダー内領域(Bordered Area)BRDA#1を設定後、その後ろにボーダーアウト(Border out)BRDOを形成する。
更に、その次のボーダー内領域(Bordered Area)BRDA#2を設定したい場合には、図28(b)に示すように前の(#1の)ボーダーアウトBRDOの後ろに次の(#1の)ボーダーイン(Border in)BRDIを形成した後に次のボーダー内領域BRDA#2を設定し、次のボーダー内領域BRDA#2をクローズしたい場合にはその直後に(#2)のボーダーアウトBRDOを形成する。本実施形態ではこの前の(#1の)ボーダーアウトBRDOの後ろに次の(#1の)ボーダーイン(Border in)BRDIを形成して組みにした状態をボーダーゾーン(Border Zone)BRDZと呼んでいる。ボーダーゾーンBRDZは情報再生装置(DPD検出法を前提)で再生した時の各ボーダー内領域BRDA間で光学ヘッドがオーバーランするのを防止するために設定している。従って、情報が記録された追記形情報記憶媒体を再生専用装置で再生する場合には、このボーダーアウトBRDOとボーダーインBRDIが既に記録されると共に最後のボーダー内領域BRDAの後ろにボーダーアウトBRDOが記録されるボーダークローズ処理がなされる事が前提となる。最初のボーダー内領域BRDA#1は4080個以上の物理セグメントブロックで構成され、追記形情報記憶媒体上の半径方向で最初のボーダー内領域BRDA#1が1.0mm以上の幅を持っている必要が有る。図28(b)ではデータ領域DTA内に拡張ドライブテストゾーンEDRTZを設定した例を示している。
追記形情報記憶媒体をファイナライズ(Finalization)した後の状態を図28(c)に示す。図28(c)の例では拡張ドライブテストゾーンEDRTZをデータリードアウト領域DTLDO内に組み込み、更に、拡張代替え領域ESPAも設定済みの例を示している。この場合にはユーザデータの追加可能範囲205を残さないように最後のボーダーアウトBRDOで埋める。
上記説明したボーダーゾーンBRDZ内の詳細なデータ構造を図28(d)に示す。各情報は後述する1物理セグメントブロック(フィジカルセグメントブロック:Physical Segment Block)のサイズ単位で記録される。ボーダーアウトBRDO内の最初には記録位置管理ゾーンへ記録された内容のコピー情報C_RMZが記録され、ボーダーアウトBRDOで有る事を示すボーダー終了用目印(Stop Block)STBが記録される。さらに次のボーダーインBRDIが来る場合には、このボーダー終了用目印(Stop Block)STBが記録された物理セグメントブロックから数えて“N1番目”の物理セグメントブロックに次にボーダー領域が来る事を示す最初の目印(Next Border Marker)NBMが、そして“N2番目”の物理セグメントブロックに次にボーダー領域が来る事を示す2番目の目印NBM、“N3番目”の物理セグメントブロックに次にボーダー領域が来る事を示す3番目の目印NBMがそれぞれ1物理セグメントブロックのサイズ毎に離散的に合計3箇所に記録される。次のボーダーインBRDI内にはアップデートされた物理フォーマット情報(Updated Physical Format Information)U_PFIが記録される。現行のDVD−RまたはDVD−RWディスクでは次のボーダー領域が来ない場合には(最後のボーダーアウトBRDO内では)、図28(d)に示した“次のボーダーを示す目印NBM”を記録すべき場所(1物理セグメントブロックサイズの場所)は“全くデータを記録しない場所”のまま保持される。この状態でボーダークローズされると、この追記形情報記憶媒体(現行のDVD−RまたはDVD−RWディスク)は従来のDVD−ROMドライブまたは従来のDVDプレーヤーでの再生が可能な状態となる。従来のDVD−ROMドライブまたは従来のDVDプレーヤーではこの追記形情報記憶媒体(現行のDVD−RまたはDVD−RWディスク)上に記録された記録マークを利用してDPD(Differential Phase Detect)法を用いたトラックずれ検出を行う。しかし、上記の“全くデータを記録しない場所”では1物理セグメントブロックサイズにも亘って記録マークが存在しないので、DPD(Differential Phase
Detect)法を用いたトラックずれ検出が行え無いので安定にトラックサーボがかから無いと言う問題が有る。上記の現行のDVD−RまたはDVD−RWディスクの問題点の対策として本実施形態では
(1)次のボーダー領域が来ない場合には“次のボーダーを示す目印NBMを記録すべき場所”には予め特定パターンのデータを記録しておく
(2)次のボーダー領域が来る場合には上記予め特定パターンのデータが記録されている“次のボーダーを示す目印NBM”の場所には部分的かつ離散的に特定の記録パターンで『重ね書き処理』を行う事で“次のボーダー領域が来る事”を示す識別情報として利用すると言う方法を新規に採用している。
このように重ね書きにより次のボーダーを示す目印を設定する事で、(1)に示すように次のボーダー領域が来ない場合でも“次のボーダーを示す目印NBMを記録すべき場所”には予め特定パターンの記録マークが形成でき、ボーダークローズ後に再生専用の情報再生装置でDPD法によりトラックずれ検出を行っても安定にトラックサーボが掛かると言う効果が生まれる。追記形情報記憶媒体において既に記録マークが形成されている部分に対して部分的にでもその上に新たな記録マークを重ね書きすると、情報記録再生装置または情報再生装置において図9に示したPLL回路の安定化が損なわれる危惧が有る。その危惧対策として本実施形態では更に、
(3)1物理セグメントブロックサイズの“次のボーダーを示す目印NBM”の位置に重ね書きする時に同一データセグメント内の場所により重ね書き状況を変化させる方法と (4)シンクデータ432内に部分的に重ね書きを行い、シンクコード431上での重ね書きを禁止する
(5)データIDとIEDを除いた場所に重ね書きする
と言う方法を更に、新規に採用している。後で詳細に説明するように、ユーザデータを記録するデータフィールド411〜418とガード領域441〜448が交互に情報記憶媒体上に記録される。データフィールド411〜418とガード領域441〜448を組み合わせた組をデータセグメント490と呼び、1個のデータセグメント長は1個の物理セグメントブロック長に一致する。図9に示したPLL回路はVFO領域471、472内で特にPLLの引き込みがし易くなっている。従って、VFO領域471、472の直前ならばPLLが外れてもVFO領域471、472を用いてPLLの再引き込みが容易に行われるので、情報記録再生装置または情報再生装置内でのシステム全体としての影響は軽減される。この状況を利用し上記のように(3)データセグメント内の場所により重ね書き状況を変化させ、同一データセグメント内のVFO領域471、472に近い後ろの部分で特定パターンの重ね書き量を増やす事で“次のボーダーを示す目印”の判別を容易にすると共に再生時の信号PLLの精度劣化を防止できると言う効果が有る。図55と図38を用いて詳細に説明するように1個の物理セクタ内はシンクコード433(SY0〜SY3)が配置されている場所と、そのシンクコード433の間に配置されたシンクデータ434の組み合わせで構成されている。情報記録再生装置あるいは情報再生装置は情報記憶媒体上に記録されているチャネルビット列の中からシンクコード433(SY0〜SY3)を抽出し、チャネルビット列の切れ目を検出している。後述するようにデータIDの情報から情報記憶媒体上に記録されているデータの位置情報(物理セクタ番号または論理セクタ番号)を抽出している。その直後に配置されたIEDを用いてデータIDのエラーを検知している。従って、本実施形態では(5)データIDとIED上での重ね書きを禁止するとともに(4)シンクコード431を除いたシンクデータ432内に部分的に重ね書きを行う事で、“次のボーダーを示す目印NBM”内でもシンクコード431を用いたデータID位置の検出とデータIDに記録された情報の再生(内容判読)を可能にしている。
追記形情報記憶媒体におけるボーダー領域の構造に関する図28とは異なる他の実施形態を図27に示す。図27(a)、(b)は図28(a)、(b)と同じ内容を示している。図27では追記形情報記憶媒体をファイナライズ(Finalization)した後の状態が図28(c)とは異なる。例えば、図27(c)に示すようにボーダー内領域BRDA#3内の情報記録を終了させたのちにファイナライズ(Finalization)したい場合には、ボーダークローズ処理としてボーダー内領域BRDA#3の直後にボーダーアウトBRDOを形成する。その後、ボーダー内領域BRDA#3直後のボーダーアウトBRDOの後ろにターミネイター(Terminator)領域TRMを形成し、ファイナライズに必要な時間の短縮を図っている。図28(c)の実施形態では拡張代替え領域ESPAの直前までボーダーアウトBRDOで埋める必要があり、このボーダーアウトBRDO形成のために長時間必要となりファイナライズ時間が掛かる問題が生じる。これに対して、図27(c)の実施形態では比較的長さの短いターミネーター領域TRMを設定し、ターミネーターTRMより外側全てを新たなデータリードアウト領域NDTLDOと再定義し、ターミネーターTRMより外側にある未記録部分を使用禁止領域911に設定する。すなわち、データ領域DTAがファイナライズされる時には記録データの最後(ボーダーアウトBRDOの直後)にターミネーター領域TRMを形成する。この領域内のメインデータの情報を全て“00h”に設定する。この領域のタイプ情報をデータリードアウトNDTLDOの属性に設定される事で、図27(c)に示すようにこのターミネーター領域TRMを新たなデータリードアウト領域NDTLDOとして再定義される。この領域のタイプ情報は後述するようにデータID内の領域タイプ情報935に記録される。すなわち、このターミネーター領域TRM内でのデータID内の領域タイプ情報935を図30に示すように“10b”に設定することでデータリードアウトDTLDO内に有る事を示す。本実施形態ではデータID内領域タイプ情報935によりデータリードアウト位置の識別情報を設定する所に大きな特徴がある。図9に示した情報記録再生装置または情報再生装置において情報記録再生部141が追記形情報記憶媒体上の特定目標位置に粗アクセスした場合を考える。粗アクセス直後は情報記録再生部141は追記形情報記憶媒体上の何処に到達したか知るために必ずデータIDを再生し、データフレーム番号922を解読する必要が有る。データID内にはデータフレーム番号922の近くに領域タイプ情報935が有るため、同時にこの領域タイプ情報935を解読するだけで情報記録再生部141がデータリードアウト領域DTLDO内に居るか否かが即座に分かるため、アクセス制御の簡素化と高速化を図ることが出来る。上述したようにターミネーター領域TRMのデータID内設定によりデータリードアウト領域DTLDOの識別情報を持たせる事でターミネーター領域TRM検出が容易となる。
特例としてもし最後のボーダーアウトBRDOがデータリードアウトNDTLDOの属性として設定された場合(すなわち、ボーダーアウトBRDO領域内のデータフレームのデータID内の領域タイプ情報935を“10b”に設定した場合)には、このターミネーター領域TRMの設定は行わない。従って、データリードアウトNDTLDOの属性を持ったターミネーター領域TRMが記録されると、このターミネーター領域TRMがデータリードアウト領域NDTLDOの一部と見なされるためデータ領域DTAへの記録が不可能となり、図27(c)のように使用禁止領域911として残る場合が有る。
本実施形態ではターミネーター領域TRMのサイズを追記形情報記憶媒体上の位置により変える事でファイナライズ時間の短縮化と処理の効率化を図っている。このターミネーター領域TRMは記録データの最後位置を示すだけでなく、DPD方式でトラックずれ検出を行う再生専用装置に使用した場合でもトラックずれによるオーバーランを防止するためにも利用されている。従って、このターミネーター領域TRMの追記形情報記憶媒体上での半径方向の幅(ターミネーター領域TRMで埋められた部分の幅)としては、再生専用装置の検出特性の関係から最低でも0.05mm以上の長さが必要となる。追記形情報記憶媒体上での1周の長さは半径位置により異なるため、1周内に含まれる物理セグメントブロック数が半径位置で異なる。そのため、半径位置すなわち、ターミネーター領域TRM内最初に位置する物理セクタの物理セクタ番号によりターミネーター領域TRMのサイズが異なり、外周側に行くに従ってターミネーター領域TRMのサイズが大きくなっている。許容されるターミネーター領域TRMの物理セクタ番号の最小値は“04FE00h”より大きい必要がある。これは前述したように最初のボーダー内領域BRDA#1は4080個以上の物理セグメントブロックで構成され、追記形情報記憶媒体上の半径方向で最初のボーダー内領域BRDA#1が1.0mm以上の幅を持っている必要が有るための制約条件から来る。ターミネーター領域TRMは物理セグメントブロックの境界位置から開始する必要が有る。
図27(d)では前述したのと同じ理由から各情報が記録される場所が1物理セグメントブロックサイズ毎に設定され、各1個の物理セグメントブロック内に32個の物理セクタ内に分散記録された合計64KBのユーザデータが記録される。それぞれの情報に対して図27(d)に示すように相対的な物理セグメントブロック番号が設定されており、相対的な物理セグメントブロック番号の若い順に追記形情報記憶媒体に各情報が順次記録される形になっている。図27に示した実施形態では図28(d)の記録位置管理ゾーンへの記録内容のコピー情報記録領域C_RMZ内に同一内容であるRMDのコピーCRMD#0〜#4が5回多重書きされている。このように多重書きする事で再生時の信頼性を向上させ、追記形情報記憶媒体上にゴミや傷が付いても安定して記録位置管理ゾーンへの記録内容のコピー情報CRMDを再生できる。図27(d)におけるボーダー終了目印STBは図28(d)のボーダー終了用目印STBと一致しているが、図27(d)の実施形態では図28(d)の実施形態に示すような次のボーダーを示す目印NBMを持た無い。リザーブ領域901、902内でのメインデータの情報は全て“00h”に設定する。
ボーダーインBRDIの最初にはアップデートされた物理フォーマット情報U_PFIとして全く同じ情報が相対的な物理セグメントブロック番号としてN+1からN+6まで6回多重書きされ、図28のアップデートされた物理フォーマット情報U_PFIを構成している。このようにアップデートされた物理フォーマット情報U_PFIを多重書きする事で情報の信頼性を向上させている。
図27(d)ではボーダーゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZをボーダーインBRDI内に持たせた所に大きな特徴がある。図24に示すようにデータリードイン領域DTLDI内の記録位置管理ゾーンRMZのサイズが比較的小さく、新たなボーダー内領域BRDAの設定を頻繁に繰り返すと記録位置管理ゾーンRMZ内に記録される記録位置管理データRMDが飽和し、途中で新たなボーダー内領域BRDAの設定が不可能になってしまう。図27(d)の実施形態のようにボーダーインBRDI内にその後に続くボーダー内領域BRDA#3内に関する記録位置管理データRMDを記録する記録位置管理ゾーンを設けた事により、新たなボーダー内領域BRDAの設定を多数回行えると共にボーダー内領域BRDA内での追記回数を大幅に増やせると言う効果が生まれる。このボーダーゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZが含まれるボーダーインBRDIに続くボーダー内領域BRDA#3がクローズされるかデータ領域DTAがファイナライズされる場合には、記録位置管理ゾーンRMZ内の未記録状態にある予約領域273(図26)内全てに対して最後の記録位置管理データRMDを繰り返し記録して全て埋める必要が有る。これにより、未記録状態の予約領域273を無くし、再生専用装置での再生時の(DPDによる)トラック外れを防止すると共に記録位置管理データRMDの多重記録により記録位置管理データRMDの再生信頼性を向上させる事ができる。リザーブ領域903の全てのデータを “00h”に設定している。
ボーダーアウトBRDOはDPDを前提とした再生専用装置でのトラック外れによるオーバーラン防止の役割が有るが、ボーダーインBRDI内はアップデートされた物理フォーマット情報U_PFIとボーダーゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZの情報を持つ以外は特に大きなサイズを持つ必要が無い。従って、新たなボーダー内領域BRDA設定時の(ボーダーゾーンBRDZ記録に必要な)時間短縮の意味からなるべくサイズを小さくしたい。図27(a)に対してボーダークローズによるボーダーアウトBRDO形成前の時には、ユーザデータの追記可能範囲205は充分広く追記回数も多く行われる可能性が高いので、ボーダーゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZには多数回記録位置管理データが記録できるように図27(d)の“M”の値を大きく取っておく必要が有る。それに比べて、図27(b)に対してボーダー内領域BRDA#2をボーダークローズする前でボーダーアウトBRDOを記録する前の状態では、ユーザデータの追記可能範囲205が狭まっているのでボーダーゾーン内の記録位置管理ゾーンRMZ内に追記される記録位置管理データの追記回数もそれ程多くはならないと考えられる。従って、ボーダー内領域BRDA#2の直前にあるボーダーインBRDI内の記録位置管理ゾーンRMZの設定サイズ “M”は相対的に小さく取れる。すなわち、ボーダーインBRDIが配置される場所が内周側の方が記録位置管理データの追記予想回数が多く、外周に行くに従って記録位置管理データの追記予想回数が少なくなるので、ボーダーインBRDIサイズが外周側で小さくすると言う特徴を持たせている。その結果、新ボーダー内領域BRDA設定時間の短縮化と処理効率化が図れる。
図28(c)に示すボーダー内領域BRDA内に記録する情報の論理的な記録単位をRゾーン(R Zone)と呼ぶ。従って、1個のボーダー内領域BRDA内には少なくとも1個以上のRゾーンから構成されている。現行のDVD−ROMではファイルシステムにUDF(Universal Disc Format)に準拠したファイル管理情報とISO9660に準拠したファイル管理情報の両方が同時に1枚の情報記憶媒体内に記録される“UDFブリッジ”というファイルシステムを採用している。ISO9660に準拠したファイル管理方法では1個のファイルが情報記憶媒体内に必ず連続して記録されなければならない決まりが有る。すなわち、1個のファイル内の情報が情報記憶媒体上に離散的な位置に分割配置する事を禁止している。従って、例えば、上記UDFブリッジに準拠して情報が記録された場合、1個のファイルを構成する全情報が連続的に記録されるので、この1個のファイルが連続して記録される領域が1個のRゾーンを構成するように適応させる事もできる。
図29に制御データゾーンCDZとR物理情報ゾーンRIZ内のデータ構造を示す。図29(b)に示すように制御データゾーンCDZ内には物理フォーマット情報(Physical Format Information)PFIと媒体製造関連情報(Disc Manufacturing Information)DMIが存在し、R物理情報ゾーンRIZ内には同じく媒体製造関連情報(Disc Manufacturing Information)DMIとR物理フォーマット情報(R-Physical Format Information)R_PFIから構成される。
媒体製造関連情報DMI内は媒体製造国名に関する情報251と媒体メーカー所属国情報252が記録されている。販売された情報記憶媒体が特許侵害している時に製造場所が有る国内または情報記憶媒体を消費して(使って)いる国内に対して侵害警告を掛ける場合が多い。情報記憶媒体内に前記の情報の記録を義務付ける事で製造場所(国名)が判明し、特許侵害警告が掛け易くする事で知的財産が保証され技術の進歩が促進される。更に、媒体製造関連情報DMI内はその他媒体製造関連情報253も記録されている。
物理フォーマット情報PFIまたはR物理フォーマット情報R_PFI内には記録場所(先頭からの相対的なバイト位置)により記録される情報の種類が規定されている所に本実施形態の特徴が有る。すなわち、物理フォーマット情報PFIまたはR物理フォーマット情報R_PFI内の記録場所として0バイト目から31バイト目までの32バイトの領域にはDVDファミリー内の共通情報261が記録され、32バイト目から127バイト目までの96バイトが本実施形態の対象となっているHD_DVDファミリー内の共通な情報262が記録され、128バイト目から511バイト目までの384バイトが各規格書タイプやパートバージョンに関するそれぞれ独自な情報(固有情報)263が記録され、512バイト目から2047バイト目までの1536バイトが各リビジョンに対応した情報が記録される。このように情報内容により物理フォーマット情報内の情報配置位置を共通化する事で媒体の種類に依らず記録されている情報の場所が共通化されているので、情報再生装置あるいは情報記録再生装置の再生処理の共通化と簡素化が図れる。0バイト目から31バイト目までに記録されているDVDファミリー内の共通情報261は図29(d)に示すように更に、0バイト目から16バイト目までに記録されている再生専用形情報記憶媒体と書替え形情報記憶媒体、追記形情報記憶媒体の全てに共通に記録して有る情報267と17バイト目から31バイト目までに書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体には共通に記録され再生専用形では記録されて無い情報268に分かれる。
図29に示した制御データゾーン内のデータ構造に関する他の実施形態を図31に示す。図23(c)に示すように制御データゾーンCDZはエンボスピット領域211の一部として構成されている。この制御データゾーンCDZは物理セクタ番号151296(024F00h)で始まる192個のデータセグメントから構成されている。図31の実施形態では制御データゾーンCDZ内は16データセグメントで構成される制御データセクションCTDSと16データセグメントで構成されるコピーライトデータセクションCPDSがそれぞれ2箇所ずつ配置され、その間にはリザーブ領域RSVが設定されている。2箇所ずつ配置することで記録情報の信頼性を向上させると共に間にリザーブ領域RSVを配置することで2箇所間の物理的な距離を広げ、情報記憶媒体表面の傷などにより発生するバーストエラーに対する影響を軽減している。
1個の制御データセクションCTDSの中は図31(c)に示すように相対的な物理セクタ番号が“0”から“2”までの最初の3個の物理セクタ情報が16回繰り返して記録されている。このように16回多重書きする事で、記録情報の信頼性を向上させている。相対的な物理セクタ番号が“0”であるデータセグメント内の最初の物理セクタには表8または表19に記載された物理フォーマット情報PFIが記録される。相対的な物理セクタ番号が“1”であるデータセグメント内の2番目の物理セクタには媒体製造関連情報DMIが記録されている。更に、相対的な物理セクタ番号が“2”であるデータセグメント内の3番目の物理セクタにはコピーライトプロテクション情報CPIが記録される。相対的な物理セクタ番号が“3”から“31”までのリザーブ領域RSVにはシステムで使用できるようにリザーブされている。
上記の媒体製造関連情報DMIの中身としては
0バイト目から127バイト目までの128バイトに媒体製造社名(Disc Manufacturer's name)が記録され、
128バイト目から255バイト目までの128バイトに媒体製造者が存在する場所情報(何処でこの媒体が製造されたかを示す情報)が記録される。
上記媒体製造社名はASCIIコードで記載される。但し、媒体製造者名として使用可能なASCIIコードは“0Dh”までと“20h”から“7Eh”までに限られている。この領域内の最初の1バイト目から媒体製造者名が記載され、この領域内の余った部分には“0Dh”のデータで埋められる(ターミネートされる)。あるいは他の記載方法として、媒体製造者名として記載可能サイズを最初から“0Dh”までの範囲とし、それよりも媒体製造者名が長い場合には“0Dh”までで打ち切り、“0Dh”より後は“20h”のデータで埋めても良い。
どこでこの媒体が製造されたかを示す上記の媒体製造者が存在する場所情報は該当する国名(country)または地域(region)をASCIIコードで記載する。ここの領域も媒体製造者名と同様に使用可能なASCIIコードは“0Dh”までと“20h”から“7Eh”までに限られている。この領域内の最初の1バイト目から媒体製造者が存在する場所情報が記載され、この領域内の余った部分には“0Dh”のデータで埋められる(ターミネートされる)。あるいは他の記載方法として、媒体製造者が存在する場所情報として記載可能サイズを最初から“0Dh”までの範囲とし、それよりも媒体製造者が存在する場所情報が長い場合には“0Dh”までで打ち切り、“0Dh”より後は“20h”のデータで埋めても良い。
図31(c)のリザーブ領域RSV内は全て“00h”のデータで埋められる。
図29または図31に示した物理フォーマット情報PFIまたはR物理フォーマット情報R_PFI内の具体的な情報内容と物理フォーマット情報PFI内情報の媒体種類(再生専用形か書替え形か追記形か)による比較を表8に示す。DVDファミリー内の共通情報261内の再生専用形、書替え形、追記形の全てに共通に記録して有る情報267としてはバイト位置0から16までに順次に規格書のタイプ(再生専用/書替え/追記)情報とバージョン番号情報、媒体サイズ(直径)と最大可能データ転送レート情報、媒体構造(単層か2層か、エンボスピット/追記領域/書き替え領域の有無)、記録密度(線密度とトラック密度)情報、データ領域DTAの配置場所情報、バーストカッティング領域BCAの有無情報(本実施形態は全て有り)が記録されている。
DVDファミリー内の共通情報261で有り、書替え形と追記形に共通に記録して有る情報268として、28バイト目から31バイト目まで順次最大記録スピードを規定したリビジョン番号情報、最大記録スピードを規定したリビジョン番号情報、リビジョン番号テーブル(応用リビジョン番号)、クラス状態情報、拡張された(パート)バージョン情報が記録されている。この28バイト目から31バイト目までの情報を持たせた事は物理フォーマット情報PFIまたはR物理フォーマット情報R_PFIの記録領域内に記録速度に応じたリビジョン情報を持たせると言う本実施形態の特徴が有る。従来、2倍速や4倍速など媒体への記録速度が上がる媒体が開発されると、それに応じてその都度新たに規格書を作り直すという非常に面倒な手間が掛かっていた。それに対して、本実施形態では大きく内容が変更に、なった時にバージョンを変更させる規格書(バージョンブック)と記録速度など小変更に、対応してリビジョンを変更して発行するリビジョンブックに分け、記録速度が向上する毎にリビジョンのみを更新したリビジョンブックのみを発行する。これにより、将来の高速記録対応の媒体への拡張機能を保証し、リビジョンと言う簡単な方法で規格を対応できるので新たな高速記録対応媒体が開発された場合に、高速で対応が可能になると言う効果が有る。特に、17バイト目の最高記録速度を規定したリビジョン番号情報の欄と18バイト目の最低記録速度を規定したリビジョン番号情報の欄を別々に設ける事で記録速度の最高値と最低値でリビジョン番号を別に設定可能とする所に本実施形態の特徴が有る。例えば、非常に高速に記録可能な記録膜を開発した場合、その記録膜は非常に高速での記録は可能であるが、記録速度を落とすと急に記録できなくなったりあるいは記録可能な最低速度を低く出来るような記録膜は非常に高価にになったりする場合が多い。これに対して、本実施形態のように記録速度の最高値と最低値でリビジョン番号を別に設定可能とする事で、開発可能記録膜の選択範囲を広げ、その結果、より高速記録が可能な媒体やより低価格な媒体が供給可能になると言う効果が生じる。本実施形態の情報記録再生装置では各リビジョン毎の可能最高記録速度と可能な最低記録速度の情報を事前に持っている。情報記憶媒体をこの情報記録再生装置に掛けると、最初に図9に示した情報記録再生部141でこの物理フォーマット情報PFIまたはR物理フォーマット情報R_PFI内の情報を読み取り、得られたリビジョン番号情報を元に制御部143内でメモリー部175内に事前に記録されている各リビジョン毎の可能最高記録速度と可能な最低記録速度の情報を参照して装着された情報記憶媒体の可能最高記録速度と可能な最低記録速度を割り出し、その結果、に基付いて最適な記録速度で記録を行う。
次に、図29(c)に示した128バイト目から511バイト目までの各規格書のタイプとバージョンの固有情報263の意味と512バイト目から2047バイト目までの各リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264の意味について説明する。すなわち、128バイト目から511バイト目までの各規格書のタイプとバージョンの固有情報263内では各バイト位置での記録情報内容の意味がタイプが異なる書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体に依らず一致し、512バイト目から2047バイト目までの各リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264としてはタイプが異なる書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体との違いのみならず同じ種類の媒体においてもリビジョンが異なると各バイト位置での記録情報内容の意味が異なる事を許容する。
表8に示すようにタイプが異なる書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体で各バイト位置での記録情報内容の意味が一致する各規格書のタイプとバージョンの固有情報263の中の情報としては順次、媒体製造メーカー名情報、媒体製造メーカーからの付加情報、記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報、記録時もしくは再生時の線速度情報、円周方向に沿った光学系のリムインテンシティ値、半径方向に沿った光学系のリムインテンシティ値、再生時の推奨レーザパワー(記録面上の光量値)が記録される。
特に192バイト目に記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報(Mark Polarity Descriptor)を持たせた所に本実施形態の特徴が有る。従来の書替え形あるいは追記形DVDディスクでは未記録状態(反射レベルが相対的に高い:High)に対して記録マーク内の光反射量が低下(Low)する“H→L”(High to Low)記録膜しか認めていなかった。それに対して“高速記録対応”や“低価格化”あるいは物理的な性能として “クロスイレーズの減少”や“書き替え回数上限値の増加”などの要求が媒体に対して出されると、従来の“H→L”記録膜だけでは対応し切れないと言う問題が生じる。これに対して、本実施形態では“H→L”記録膜だけで無く、記録マーク内で光反射量が増加する“L→H”記録膜の使用まで許容するため、従来の“H→L”だけで無く“L→H”記録膜も規格内に組み込み、記録膜の選択範囲を広げることで高速記録可能や低価格媒体を供給できると言う効果が生じる。
具体的な情報記録再生装置の実装方法を以下に説明する。規格書(バージョンブック)あるいはリビジョンブックで“H→L”記録膜からの再生信号特性と“L→H”記録膜からの再生信号特性の両方を併記し、それに対応して図9のPR等化回路130とビタビ復号器156内に2通りずつの対応回路を用意しておく。情報再生部141内に情報記憶媒体を装着すると、まず始めにシステムリードイン領域SYLDI内の情報を読むためのスライスレベル検出回路132を起動させる。このスライスレベル検出回路132で、この192バイト目に記録された記録マークの極性(“H→L”か“L→H”かの識別)情報を読み取った後“H→L”か“L→H”かの判別を行い、それに合わせてPR等化回路130とビタビ復号器156内の回路を切り替えた後に、データリードイン領域DTLDIまたはデータ領域DTA内に記録されている情報を再生する。上記の方法により比較的早くしかも精度良くデータリードイン領域DTLDIまたはデータ領域DTA内の情報を読む事が出来る。17バイト目に最高記録速度を規定したリビジョン番号情報と18バイト目に最低記録速度を規定したリビジョン番号情報が記載されているが、前記の情報は最高と最低を規定した範囲情報でしかない。最も安定に記録する場合には記録時に最適な線速情報が必要となるので、その情報が193バイト目に記録されている。
各リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264内に含まれる各種の記録条件(ライトストラテジ)情報に先立つ位置に光学系条件情報として194バイト目の円周方向に沿った光学系のリムインテンシティ値と195バイト目の半径方向に沿った光学系のリムインテンシティ値の情報が配置されている所に本実施形態の次の大きな特徴が有る。これらの情報は後ろ側に配置される記録条件を割り出す時に使用した光学ヘッドの光学系の条件情報を意味している。リムインテンシティとは情報記憶媒体の記録面上に集光する前に対物レンズに入射する入射光の分布状況を意味し、
『入射光強度分布の中心強度を“1”とした時の対物レンズ周辺位置(瞳面外周位置)での強度値』
で定義される。対物レンズへの入射光強度分布は点対称ではなく、楕円分布をし、情報記憶媒体の半径方向と円周方向でリムインテンシティ値が異なるので2通りの値が記録される。リムインテンシティ値が大きいほど情報記憶媒体の記録面上での集光スポットサイズが小さくなるので、このリムインテンシティ値により最適な記録パワー条件が大きく変わる。情報記録再生装置は自分が持っている光学ヘッドのリムインテンシティ値情報を事前に知っているので、まず情報記憶媒体内に記録されている円周方向と半径方向に沿った光学系のリムインテンシティ値を読み取り、自分が持っている光学ヘッドの値と比較する。比較した結果に大きな違いが無ければ後ろ側に記録されている記録条件を適用できるが、比較した結果で大きな食い違いが有れば後ろ側に記録されている記録条件を無視し、図23または図25に記載されているドライブテストゾーンDRTZを利用して記録再生装置自ら試し書きをしながら最適な記録条件の割り出しを始める必要が有る。
このように後ろ側に記録されている記録条件を利用するか、その情報を無視して自ら試し書きをしながら最適な記録条件の割り出しを始めるかの判断を早急に行う必要が有る。表8に示すように推奨される記録条件が記録されている位置に対する先行位置にその条件を割り出した光学系の条件情報を配置する事で、まず始めにそのリムインテンシティ情報を読み取る事が出来、後に配置される記録条件の適合可否を高速に判定出来ると言う効果が有る。
上述したように本実施形態では大きく内容が変更に、なった時にバージョンを変更させる規格書(バージョンブック)と記録速度など小変更に、対応してリビジョンを変更して発行するリビジョンブックに分け、記録速度が向上する毎にリビジョンのみを更新したリビジョンブックのみを発行できるようにしている。従って、リビジョン番号が異なるとリビジョンブック内の記録条件が変化するので、記録条件(ライトストラテジ)に関する情報が主にこの512バイト目から2047バイト目までの各リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264の中に記録される。表8から明らかなように512バイト目から2047バイト目までの各リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264としてはタイプが異なる書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体との違いのみならず同じ種類の媒体においてもリビジョンが異なると各バイト位置での記録情報内容の意味が異なる事を許容する。
表8におけるピークパワー、バイアスパワー1、バイアスパワー2、バイアスパワー3の定義は図16で定義されているパワー値に一致している。表8におけるファーストパルスの終了時間とは図16で定義したTEFPの事を意味し、マルチパルス間隔とは図16で定義したTMPの事を意味し、ラストパルスの開始時間とは図26で定義したTSLPの事を意味し、2Tマークのバイアスパワー2の期間とは図16で定義したTLCの事を意味する。
表8に示した物理フォーマット情報とR物理フォーマット情報内のデータ構造に関する他の実施形態を表19に示す。表19では更に、“アップデートされた物理フォーマット情報”に付いても比較記載した。表19において0バイト目から31バイト目までをDVDファミリー内の共通情報269の記録領域として利用し、32バイト目以降を各規格書用に設定している。
追記形情報記憶媒体において、図23(c)に示すようにデータリードイン領域DTLDI内のR物理情報ゾーンRIZ内に記録されたR物理フォーマット情報(R-physical format information)は物理フォーマット情報PFI(HD_DVDファミリーの共通情報のコピー)にボーダーゾーンの開始位置情報(First borderの最外周アドレス)が付加されて記録されている。図28(d)または図27(d)に示すボーダーインBRDI内のアップデートされた物理フォーマット情報U_PFI内には物理フォーマット情報PFI(HD_DVDファミリーの共通情報のコピー)にアップデートされた開始位置情報(自己borderの最外周アドレス)が付加されて記録されている。表8ではこのボーダーゾーンの開始位置情報が197バイト目から204バイト目までに配置されているのに対して、表19に示した実施形態ではピークパワーやバイアスパワー1など記録条件に関する情報(各リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264)よりも先行した位置で有り、かつDVDファミリー内の共通情報269よりも後の位置である133バイト目から140バイト目に配置される所に特徴が有る。アップデートされた開始位置情報もボーダーゾーンの開始位置情報と同様にピークパワーやバイアスパワー1など記録条件に関する情報(各リビジョン毎に固有に設定できる情報内容264)よりも先行した位置で有り、かつDVDファミリー内の共通情報269よりも後の位置である133バイト目から140バイト目に配置される。将来リビジョン番号がアップしてより精度の高い記録条件が求められた結果、書替え形情報記憶媒体の記録条件情報として197バイト目から207バイト目までを使用する可能性が有る。この場合には、表8の実施形態のように追記形情報記憶媒体内に記録されるR物理フォーマット情報のボーダーゾーンの開始位置情報を197バイト目から204バイト目に配置すると、記録条件の配置位置に関する書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体間での対応(互換性)が崩れる危険性がある。表19に示すようにボーダーゾーンの開始位置情報とアップデートされた開始位置情報を133バイト目から140バイト目に配置する事で将来記録条件に関する情報量が増加しても書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体間での各種情報間の記録位置の対応(互換性)が確保できると言う効果が有る。ボーダーゾーンの開始位置情報に関する具体的な情報内容は133バイト目から136バイト目に現在使用している(カレントの)ボーダー内領域BRDAの外側にあるボーダーアウトBRDOの開始位置情報が物理セクタ番号(PSN:Physical Sector Number)で記載され、137バイト目から140バイト目には次に使用されるボーダー内領域BRDAに関するボーダーインBRDIの開始位置情報が物理セクタ番号(PSN)で記載されている。
アップデートされた開始位置情報に関する具体的な情報内容はボーダー内領域BRDAが新たに設定された場合の最新のボーダーゾーン位置情報を示し、133バイト目から136バイト目に現在使用している(カレントの)ボーダー内領域BRDAの外側にあるボーダーアウトBRDOの開始位置情報が物理セクタ番号(PSN:Physical Sector Number)で記載され、137バイト目から140バイト目には次に使用されるボーダー内領域BRDAに関するボーダーインBRDIの開始位置情報が物理セクタ番号(PSN)で記載されている。次のボーダー内領域BRDAが記録不可能な場合には、ここ(137バイト目から140バイト目)は全て“00h”で埋められる。
表8に示した実施形態に比べて表19の実施形態では“媒体製造メーカー名情報”と“媒体製造メーカーからの付加情報”が削除され、128バイト目から記録マークの極性( “H→L”か“L→H”かの識別)情報が配置される。
表8または表19で4から15バイト目に記録されているデータ領域DTAの配置場所情報内に記録される詳細な情報の内容比較を表9に示す。媒体の種別と物理フォーマット情報PFIとR物理フォーマット情報R_PFIの区別無くデータ領域DTAの開始位置情報が共通に記録されている。終了位置を示す情報として再生専用形情報記憶媒体の中ではデータ領域DTAの終了位置情報が記録されている。
追記形情報記憶媒体の物理フォーマット情報PFI内ではユーザデータの追記可能範囲の最後の位置情報が記録されているが、この位置情報は例えば、図25(e)に示した例ではζ点の直前位置を意味している。
これに対して、追記形情報記憶媒体のR物理フォーマット情報R_PFI内では該当するボーダー内領域BRDAの中での既記録データの最後の位置情報が記録される。
更に、再生専用形情報記憶媒体内では再生側光学系から見た手前の層である“0層”内での最後のアドレス情報と書替え形情報記憶媒体内ではランド領域とグルーブ領域間の各開始位置情報の差分値の情報も記録されている。
図23(c)に示すようにデータリードイン領域DTLDI中に記録位置管理ゾーンRMZが存在する。そして、図28(d)に示すようにそのコピー情報が記録位置管理ゾーンへの記録内容のコピー情報C_RMZとしてボーダーアウトBRDO内にも存在している。この記録位置管理ゾーンRMZの中は図24(b)に示すように1物理セグメントブロックサイズと同じデータサイズを持った記録位置管理データ(Recording Management Data)RMDが記録され、その記録位置管理データRMDの内容が更新される毎に更新された新たな記録位置管理データRMDとして順次後ろに追記可能な形になっている。この1個の記録位置管理データRMD内の詳細なデータ構造を表10、表11、表12、表13、表14、表15に示す。記録位置管理データRMD内は更に、1個が2048バイトサイズの細かなRMDフィールド情報RMDFに分割されている。
記録位置管理データRMD内の最初の2048バイトはリザーブ領域になっている。
次の2048バイトサイズのRMDフィールド0には記録位置管理データフォーマットコード情報、対象の媒体が(1)未記録状態か、(2)ファイナライズ前の記録途中か、(3)ファイナライズ後かのいずれかで有るかを示す媒体状態情報、ユニークディスクID(ディスク識別情報)、データ領域DTAの配置位置情報と最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報、記録位置管理データRMDの配置位置情報が順次配置されている。データ領域DTAの配置位置情報の中には初期状態でのユーザデータの追記可能範囲204(図25(d))を示す情報としてデータ領域DTAの開始位置情報と初期時におけるユーザデータの記録可能範囲204の最終位置情報〔図25(d)の実施形態ではこの情報はβ点の直前位置を示す事になる〕が記録される。
本実施形態では図25(e)と(f)に示すようにユーザデータの追記可能範囲204内に拡張ドライブテストゾーンEDRTZと拡張代替え領域ESPAの追加設定が可能になっている所に特徴が有るが、このように拡張するとユーザデータの追記可能範囲205が狭くなる。誤ってこの拡張領域EDRTZとESPAにユーザデータを追記しないように“最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報”内に関連情報が記録されている所に本実施形態の次の特徴が有る。すなわち、拡張ドライブテストゾーンEDRTZの有無識別情報により拡張ドライブテストゾーンEDRTZが増設されたかどうかが分かり、拡張代替え領域ESPAの有無識別情報により拡張代替え領域ESPAが増設されたか否かが分かる。更に、記録位置管理データRMD内で管理するユーザデータの追記可能範囲205に関する記録可能範囲情報として、表10に示すようにRMDフィールド0内の最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報内に記録されている最新のユーザデータの記録可能範囲205の最終位置が有ることで図25(f)に示したユーザデータの追記可能範囲205が即座に分かり、今後記録可能な未記録領域のサイズ(未記録の残量)の高速検出が可能となる。これにより、例えば、ユーザが指定した録画予約時間に合わせて最適な記録時の転送レートを設定する事で実現可能な最も高画質でしかもユーザが指定した録画予約時間が漏れなく媒体内に録画できると言う効果が生じる。図25(d)の実施形態を例に取ると、前記の“最新のユーザデータの記録可能範囲205の最終位置”はζ点の直前位置を意味する。これらの位置情報は物理セクタ番号で記述する代わりに、他の実施形態としてECCブロックアドレス番号で記述する事も可能となる。後述するように本実施形態では32セクタで1ECCブロックを構成する。従って、特定のECCブロック内の先頭に配置されたセクタの物理セクタ番号の下位5ビットは隣接するECCブロック内の先頭位置に配置されたセクタのセクタ番号と一致する。ECCブロック内の先頭に配置されたセクタの物理セクタ番号の下位5ビットが“00000”になるように物理セクタ番号を設定した場合には、同一ECCブロック内に存在する全てのセクタの物理セクタ番号の下位6ビット目以上の値が一致する。従って、上記同一ECCブロック内に存在するセクタの物理セクタ番号の下位5ビットデータを除去し、下位6ビット目以上のデータのみを抽出したアドレス情報をECCブロックアドレス情報(またはECCブロックアドレス番号)と定義する。後述するように、ウォブル変調により予め記録されたデータセグメントアドレス情報(または物理セグメントブロック番号情報)は上記ECCブロックアドレスと一致するので、記録位置管理データRMD内の位置情報をECCブロックアドレス番号で記述すると
(1)特に未記録領域へのアクセスが高速化する
… 記録位置管理データRMD内の位置情報単位とウォブル変調により予め記録されたデータセグメントアドレスの情報単位が一致するため差分の計算処理が容易となるため (2)記録位置管理データRMD内の管理データサイズを小さくできる
… アドレス情報記述に必要なビット数が1アドレス当たり5ビット節約できるためと言う効果が生まれる。後述するように1物理セグメントブロック長は1データセグメント長に一致し、1データセグメント内に1ECCブロック分のユーザデータが記録される。従って、アドレスの表現として“ECCブロックアドレス番号”とか“ECCブロックアドレス”あるいは“データセグメントアドレス”、“データセグメント番号”、“物理セグメントブロック番号”などの表現を行うが、これらは全て同義語の意味を持つ。
表10に示すようにRMDフィールド0内に有る記録位置管理データRMDの配置位置情報には、この記録位置管理データRMDを内部に順次追記できる記録位置管理ゾーンRMZの設定されたサイズ情報がECCブロック単位または物理セグメントブロック単位で記録されている。図24(b)に示したように、1個の記録位置管理ゾーンRMDが1個の物理セグメントブロック毎に記録されているので、この情報で記録位置管理ゾーンRMZの中に何回更新(アップデート)された記録位置管理データRMDが追記できるかが分かる。その次には記録位置管理ゾーンRMZ内での現在の記録位置管理データ番号が記録される。これは記録位置管理ゾーンRMZ内で既に記録された記録位置管理データRMDの数情報を意味している。例えば、図24(b)に示す例として今この情報が記録位置管理データRMD#2内の情報だとすると、この情報は記録位置管理ゾーンRMZ内で2番目に記録された記録位置管理データRMDなので、“2”の値がこの欄の中に記録される。その次には記録位置管理ゾーンRMZ内での残量情報が記録される。この情報は記録位置管理ゾーンRMZ内での更に追加可能な記録位置管理データRMD数の情報を意味し、物理セグメントブロック単位(=ECCブロック単位=データセグメント単位)で記述される。上記3情報の間には
[RMZの設定されたサイズ情報]
=[現在の記録位置管理データ番号]+[RMZ内での残量]
の関係が成立する。記録位置管理ゾーンRMZ内の記録位置管理データRMDの既使用量または残量情報を記録位置管理データRMDの記録領域内に記録する所に本実施形態の特徴が有る。
例えば、1枚の追記形情報記憶媒体に1回で全ての情報を記録する場合には、記録位置管理データRMDは1回だけ記録すれば良いが、1枚の追記形情報記憶媒体に非常に細かくユーザデータの追記(図25(f)でのユーザデータの追記可能範囲205内へのユーザデータの追記)を繰り返して記録したい場合には、追記毎に更新された記録位置管理データRMDも追記する必要が有る。この場合、頻繁に記録位置管理データRMDを追記すると、図24(b)に示す予約領域273が無くなってしまい、情報記録再生装置としてはそれに対する善処が必要となる。従って、記録位置管理ゾーンRMZ内の記録位置管理データRMDの既使用量または残量情報を記録位置管理データRMDの記録領域内に記録する事で記録位置管理ゾーンRMZ領域内の追記不可能な状態が事前に分かり情報記録再生装置の早めの対処が可能となる。
本実施形態では図25(e)から(f)への移行で示したように、拡張ドライブテストゾーンEDRTZを内部に含めた形でデータリードアウト領域DTLDOを設定する事が出来る所に特徴が有る(図1(E4))。この時にはデータリードアウト領域DTLDOの開始位置が図25(e)のβ点からε点へ変化する。この状況を管理するため、表10のRMDフィールド0の最新の(更新された)データ領域DTAの配置位置情報内にデータリードアウト領域DTLDOの開始位置情報を記録する欄が設けられている。前述したように、ドライブテスト(試し書き)は基本的にデータセグメント(ECCブロック)単位で拡張可能なクラスター単位で記録される。従って、データリードアウト領域DTLDOの開始位置情報はECCブロックアドレス番号で記述されるが、他の実施形態としてこの最初のECCブロック内の最初に配置される物理セクタの物理セクタ番号または物理セグメントブロック番号、データセグメントアドレス、ECCブロックアドレスで記述する事も可能である。
RMDフィールド1には対応媒体の記録を行った情報記録再生装置の履歴情報が記録され、それぞれの情報記録再生装置毎に製造メーカー識別情報、ASCIIコードにて記述されたシリアル番号とモデル番号、ドライブテストゾーンを用いた記録パワー調整を行った日時情報および追記時に行った記録条件情報が各リビジョン毎に固有に設定できる情報264(表8)内の全記録条件情報のフォーマットに従って記述されるようになっている。
RMDフィールド2はユーザ使用領域で例えば、記録した(記録したい)コンテンツの情報などをユーザがここに記録できるようになっている。
RMDフィールド3内には各ボーダーゾーンBRDZの開始位置情報が記録される。すなわち、表11に示すように最初から50番目までのボーダーアウトBRDOの開始位置情報が物理セクタ番号で記載される。
例えば、図28(c)に示した実施形態では最初のボーダーアウトBRDOの開始位置はη点の位置を表し、2番目のボーダーアウトBRDOの開始位置はθ点の位置を示している。
RMDフィールド4内では拡張ドライブテストゾーンの位置情報が記録される。最初に図24(c)に記載されたデータリードイン領域DTLDIに有るドライブテストゾーンDRTZ内で既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報と図25(d)〜(f)に記載されたデータリードアウト領域DTLDOに有るドライブテストゾーンDRTZ内で既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報が記録される。ドライブテストゾーンDRTZ内では内周側(物理セクタ番号の小さい方)から外周方向(物理セクタ番号が大きくなる方向)へ向かって順次試し書きに使用される。試し書きに使用される場所単位は後述するように追記単位であるクラスター単位で行われるので、ECCブロック単位となる。従って、既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報としてECCブロックアドレス番号で記載されるか、または物理セクタ番号で記載される場合には試し書きに用いられたECCブロックの最後に配置された物理セクタの物理セクタ番号を記載することになる。1度試し書きに使用された場所は既に記録されているので、次に試し書きを行う場合には既に試し書きに使用された最後の位置の次から試し書きを行うことになる。従って、上記ドライブテストゾーンDRTZ内で既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報(=ドライブテストゾーンDRTZ内の既使用量)を利用して情報記録再生装置は次に何処から試し書きを開始すればよいかが瞬時に分かるだけでなく、その情報からドライブテストゾーンDRTZ内に次に試し書きが可能な空きスペースが有るか否かを判定できる。データリードイン領域DTLDIに有るドライブテストゾーンDRTZ内で、更に追加試し書き出来る領域サイズ情報あるいはこのドライブテストゾーンDRTZを使い切ってしまったか否かを示すフラグ情報とデータリードアウト領域DTLDOに有るドライブテストゾーンDRTZ内で更に追加試し書き出来る領域サイズ情報あるいはこのドライブテストゾーンDRTZを使い切ってしまったか否かを示すフラグ情報が記録される。データリードイン領域DTLDIに有るドライブテストゾーンDRTZのサイズとデータリードアウト領域DTLDOに有るドライブテストゾーンDRTZのサイズは予め分かっているので、データリードイン領域DTLDIに有るドライブテストゾーンDRTZ内あるいはデータリードアウト領域DTLDOに有るドライブテストゾーンDRTZで既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報だけでドライブテストゾーンDRTZ内で更に追加の試し書きが出来る領域のサイズ(残量)は割り出す事は可能であるが、この情報を記録位置管理データRMD内に持つ事で、即座にドライブテストゾーンDRTZ内の残量が分かり、拡張ドライブテストゾーンEDRTZの新規設定有無判断までの時間を短縮化できる。他の実施形態として、この欄にはドライブテストゾーンDRTZ内で更に追加試し書き出来る領域サイズ(残量)情報の代わりにこのドライブテストゾーンDRTZを使い切ってしまったか否かを示すフラグ情報を記録することも出来る。既に使い切ってしまった事が瞬時に分かるフラグが設定されていれば誤ってこの領域に試し書きを試行する危険性を排除できる。
RMDフィールド4内では次に拡張ドライブテストゾーンEDRTZの追加設定回数情報が記録される。図25(e)に示した実施形態では拡張ドライブテストゾーン1EDRTZ1と拡張ドライブテストゾーン2EDRTZ2の2箇所に拡張ドライブテストゾーンEDRTZを設定しているので、“拡張ドライブテストゾーンEDRTZの追加設定回数=2”となる。更に、フィールド4内では各拡張ドライブテストゾーンEDRTZ毎の範囲情報と既に試し書きに使用された範囲情報が記録される。このように拡張ドライブテストゾーンの位置情報を記録位置管理データRMD内で管理できるようにする事で、複数回の拡張ドライブテストゾーンEDRTZの拡張設定を可能にすると共に追記形情報記憶媒体において記録位置管理データRMDの更新追記と言う形で逐次拡張された拡張ドライブテストゾーンEDRTZの位置情報を正確に管理でき、ユーザデータの追記可能範囲204(図25(d))と誤って判断して拡張ドライブテストゾーンEDRTZ上にユーザデータを重ね書きする危険性を排除できる。上述したように試し書きの単位もクラスター単位(ECCブロック単位)で記録されるので、各拡張ドライブテストゾーンEDRTZ毎の範囲はECCブロックアドレス単位で指定される。図25(e)に示した実施形態では最初に設定した拡張ドライブテストゾーンEDRTZの開始位置情報は拡張ドライブテストゾーン1EDRTZ1を最初に設定したので、γ点を示し、最初に設定した拡張ドライブテストゾーンEDRTZの終了位置情報はβ点の直前位置が対応する。位置情報の単位は同じくECCブロックアドレス番号または物理セクタ番号で記述される。表10、表11の実施形態では拡張ドライブテストゾーンEDRTZの終了位置情報を示したが、それに限らず代わりに拡張ドライブテストゾーンEDRTZのサイズ情報を記載しても良い。この場合には最初に設定した拡張ドライブテストゾーン1EDRTZ1のサイズは“β−γ”となる。最初に設定した拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内で既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報もECCブロックアドレス番号または物理セクタ番号で記述される。その次に最初に設定した拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内で更に追加試し書き出来る領域サイズ(残量)情報が記録される。既に拡張ドライブテストゾーン1EDRTZ1のサイズとその中で既に使用されている領域のサイズが上記の情報から分かっているので、自動的に更に追加試し書き出来る領域サイズ(残量)が求められるが、この欄を設けることにより新たなドライブテスト(試し書き)をする時に現在のドライブテストゾーンで足りるか否かが直ぐに分かり、更なる拡張ドライブテストゾーンEDRTZの追加設定を決断するまでの判断時間を短縮化できる。この欄は更に追加試し書き出来る領域サイズ(残量)情報が記録できるようになっているが、他の実施形態としてこの拡張ドライブテストゾーンEDRTZを使い切ってしまったか否かを示すフラグ情報をこの欄に設定する事も可能である。既に使い切ってしまった事が瞬時に分かるフラグが設定されていれば、誤ってこの領域に試し書きを試行する危険性を排除できる。
図9に示した情報記録再生装置で新たに拡張ドライブテストゾーンEDRTZを設定し、そこに試し書きを行う処理方法の一例について説明する。
(1)追記形情報記憶媒体を情報記録再生装置に装着する
→(2)情報記録再生部141でバーストカッティング領域BCAに形成されたデータを再生し、制御部143へ送る→制御部143内で転送された情報を解読し、次のステップへ進めるか判定する
→(3)情報記録再生部141でシステムリードイン領域SYLDI内の制御データゾーンCDZに記録されて有る情報を再生し、制御部143へ転送する
→(4)制御部143内で推奨記録条件を割り出した時のリムインテンシティの値(表8の194、195バイト目)と情報記録再生部141で使われている光学ヘッドのリムインテンシティの値を比較し、試し書きに必要な領域サイズを割り出す
→(5)情報記録再生部141で記録位置管理データ内の情報を再生し、制御部143へ送る。制御部ではRMDフィールド4内の情報を解読し、(4)で割り出した試し書きに必要な領域サイズの余裕の有無を判定し、余裕が有る場合には(6)へ進み、余裕が無い場合には(9)へ進む
→(6)RMDフィールド4内から試し書きに使用するドライブテストゾーンDRTZまたは拡張ドライブテストゾーンEDRTZ内の既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報から今回試し書きを開始する場所を割り出す
→(7) (6)で割り出した場所から(4)で割り出したサイズ分試し書きを実行する→(8) (7)の処理により試し書きに使用した場所が増えたので、既に試し書きに使用した場所の最後の位置情報を書き替えた記録位置管理データRMDをメモリー部175に一時保存し、(12)へ進む
→(9)RMDフィールド0に記録されて有る“最新のユーザデータの記録可能範囲205の最終位置”の情報または表9に示した物理フォーマットPFI内のデータ領域DTAの配置場所情報内に記録されている“ユーザデータの追記可能範囲の最後の位置情報”を情報記録再生部141で読み取り、制御部143内で更に、新たに設定する拡張ドライブテストゾーンEDRTZの範囲を設定する
→(10) (9)の結果に基付きRMDフィールド0に記録されて有る“最新のユーザデータの記録可能範囲205の最終位置”の情報を更新すると共にRMDフィールド4内の拡張ドライブテストゾーンEDRTZの追加設定回数情報を1だけインクリメント(回数を1だけ加算)し、さらに新たに設定する拡張ドライブテストゾーンEDRTZの開始/終了位置情報を付け加えた記録位置管理データRMDをメモリー部175に一時保存する→(11) →(7)→(12)へ移動する
→(12) (7)で行った試し書きの結果得られた最適な記録条件でユーザデータの追記可能範囲205内に必要なユーザ情報を追記する
→(13) (12)に対応して新たに発生したRゾーン内の開始/終了位置情報(表13)を追記して更新された記録位置管理データRMDをメモリー部175に一時保存する→(14)制御部143が制御して情報記録再生部141がメモリー部175に一時保存されている最新の記録位置管理データRMDを記録位置管理ゾーンRMZ内の予約領域273(例えば、図24(b))内に追加記録する
表13に示すようにRMDフィールド5内は拡張代替え領域ESPAの位置情報が記録される。追記形情報記憶媒体において代替え領域が拡張可能となっており、その代替え領域の位置情報が位置管理データRMDで管理される。図25(e)に示す実施形態では拡張代替え領域1ESPA1と拡張代替え領域2ESPA2の2箇所に拡張代替え領域ESPAを設定しているので、RMDフィールド5内の最初に記載されている“拡張代替え領域ESPAの追加設定回数”は“2”となる。最初に設定した拡張代替え領域ESPAの開始位置情報はδ点位置、最初に設定した拡張代替え領域ESPAの終了位置情報はγ点の直前の位置、2番目に設定した拡張代替え領域ESPAの開始位置情報はζ点の位置、2番目に設定した拡張代替え領域ESPAの終了位置情報はε点の直前位置に対応する。
表13のRMDフィールド5内は欠陥管理に関する情報が記録される。表13のRMDフィールド5内の最初の欄でデータリードイン領域DTLDIに隣接した代替え領域内で既に代替えに使用したECCブロックの数情報または物理セグメントブロック数情報が記録される。本実施形態ではユーザデータの追記可能範囲204内で発見された欠陥領域に対してはECCブロック単位で代替え処理がなされる。後述するように1ECCブロックを構成する1個のデータセグメントが1個の物理セグメントブロック領域に記録されるので、既に行われた代替え回数は既に代替えに使用したECCブロックの数(または物理セグメントブロック数、データセグメント数)に等しくなる。従って、この欄での記載情報の単位はECCブロック単位または物理セグメントブロック単位、データセグメント単位となる。追記形情報記憶媒体では代替え領域SPAあるいは拡張代替え領域ESPA内では交替処理として使用される場所はECCブロックアドレス番号の若い内周側から順次使用される場合が多い。従って、この欄の情報として他の実施形態では代替えへの使用済み場所の最後の位置情報としてECCブロックアドレス番号を記載する事も可能である。表13に示すように最初に設定した拡張代替え領域1ESPA1と2番目に設定した拡張代替え領域2ESPA2に対しても同様な情報(“最初に設定した拡張代替え領域ESPA内の既に代替えに使用したECCブロックの数情報または物理セグメントブロック数情報あるいは代替えへの使用済み場所の最後の位置情報(ECCブロックアドレス番号)”と “2番目に設定した拡張代替え領域ESPA内の既に代替えに使用したECCブロックの数情報または物理セグメントブロック数情報あるいは代替えへの使用済み場所の最後の位置情報(ECCブロックアドレス番号)”)を記録する欄が存在する。これらの情報を利用して
(1)次に代替え処理する時にユーザデータの追記可能範囲205内で見つかった欠陥領域に対する新たに設定すべき代替え場所が即座に分かる
… 代替えへの使用済み場所の最後の位置の直後に新たな代替えを行う
(2)計算により代替え領域SPAまたは拡張代替え領域ESPA内の残量が求められ、(残量が足りない場合には)新たな拡張代替え領域ESPAの設定の必要性有無が分かる
が出来るという効果が有る。データリードイン領域DTLDIに隣接した代替え領域SPAのサイズは事前に知られているので、代替え領域SPA内で既に代替えに使用したECCブロックの数に関する情報が有れば代替え領域SPA内での残量を計算できるが、代替え領域SPA内での残量情報である今後代替えに使用可能な未使用場所のECCブロックの数情報または物理セグメントブロック数情報の記録枠を設けることで即座に残量が分かり、更なる拡張代替え領域ESPAに関する設定必要性の有無判定に必要な時間の短縮化が図れる。同様な理由から“最初に設定した拡張代替え領域ESPA内での残量情報”と “2番目に設定した拡張代替え領域ESPA内での残量情報”も記録できる枠が設けられている。本実施形態では追記形情報記憶媒体において代替え領域SPAを拡張可能とし、その位置情報を記録位置管理データRMD内で管理する形となっている。図25(e)に示すように、ユーザデータの追記可能範囲204内に必要に応じて任意の開始位置、任意のサイズで拡張代替え領域1 ESPA1、拡張代替え領域2 ESPA2などが拡張設定できる。従って、RMDフィールド5内に拡張代替え領域ESPAの追加設定回数情報が記録され、最初に設定した拡張代替え領域ESPAの開始位置情報や2番目に設定した拡張代替え領域ESPAの開始位置情報が設定可能となっている。これらの開始位置情報は物理セクタ番号またはECCブロックアドレス番号(あるいは物理セグメントブロック番号、データセグメントアドレス)で記述される。表10、表11の実施形態では拡張代替え領域ESPAの範囲を規定する情報として“最初に設定した拡張代替え領域ESPAの終了位置情報”や“2番目に設定した拡張代替え領域ESPAの終了位置情報”が記録される形になっているが他の実施形態としてそれら終了位置情報の変わりに拡張代替え領域ESPAのサイズ情報がECCブロック数または物理セグメントブロック数、データセグメント数、ECCブロック数あるいは物理セクタ数で記録される事も可能である。
RMDフィールド6には欠陥管理情報が記録される。本実施形態では欠陥処理に関する情報記憶媒体に記録する情報の信頼性を向上する方法として
(1)欠陥場所に記録を予定していた情報を代替え場所に記録する従来の“交替モード”と
(2)同じ内容の情報を情報記憶媒体上の異なる場所に2回記録して信頼性を上げる“多重化モード”
の2種類の方法が対応できるようにし、どちらのモードで処理するかの情報を表14に示すように記録位置管理データRMD内の2次欠陥リストエントリ情報内の“欠陥管理処理の種別情報”内に記録される。2次欠陥リストエントリ情報内の内容は
(1)交替モードの場合には
・欠陥管理処理の種別情報を“01”に設定し(従来のDVD−RAMと同様)、
・“交替元ECCブロックの位置情報”とはユーザデータの追記可能範囲205の中で欠陥場所として発見されたECCブロックの位置情報を意味し、本来ここへ記録予定の情報が記録されず代替え領域内などに記録される。
・“交替先ECCブロックの位置情報”とは図25(e)の代替え領域SPAまたは拡張代替え領域1 ESPA1、拡張代替え領域2 ESPA2の中に設定される交替先の場所の位置情報を示し、ユーザデータの追記可能範囲205内で発見された欠陥場所に記録予定の情報がここに記録される。
が対応し、
(2)多重化モードの場合には
・欠陥管理処理の種別情報を“10”に設定し、
・“交替元ECCブロックの位置情報”とは非欠陥の場所であり、記録予定の情報が記録されると共にここに記録された情報は正確に再生できる場所の位置情報を表す。
・“交替先ECCブロックの位置情報”とは図25(e)の代替え領域SPAまたは拡張代替え領域1 ESPA1、拡張代替え領域2 ESPA2の中に設定される多重化のために上記“交替元ECCブロックの位置情報”に記録された情報と全く同じ内容が記録される場所の位置情報を表す。
が対応する。
上記“(1)交替モード”で記録した場合には、記録直後の段階では情報記憶媒体へ記録された情報が正確に読み出せる事は確認される。しかしその後にユーザの不手際などで情報記憶媒体に傷やゴミが付着して上記記録が再生できなくなる危険性が有る。それに対して上記“(2)多重化モード”で記録した場合には、ユーザの不手際などで情報記憶媒体に傷やゴミが付着して部分的に情報が読めなくなったとしても他の部分に同じ情報がバックアップされているので情報再生の信頼性が格段に向上する。この時に読めなかった情報に対して上記バックアップされた情報を利用して“(1)交替モード”の交替処理を行えば更に、信頼性が向上する。従って、上記“(2)多重化モード”の処理あるいは“(1)交替モード”の処理と“(2)多重化モード”の処理を組み合わせる事で傷やゴミの対策も考慮に入れた記録後の高い情報再生信頼性を確保出来ると言う効果が有る。上記ECCブロックの位置情報を記述する方法として上記ECCブロックを構成する先頭位置に有る物理セクタの物理セクタ番号を記述する方法以外にECCブロックアドレスまたは物理セグメントブロックアドレスあるいはデータセグメントアドレスを記載する方法も有る。後述するように本実施形態では1ECCブロックサイズのデータが入るデータ上の領域をデータセグメントと呼ぶ。データを記録する場所の情報記憶媒体上の物理的な単位として物理セグメントブロックが定義されており、1個の物理セグメントブロックサイズと1個のデータセグメントを記録する領域のサイズが一致している。
本実施形態では交替処理前に事前に検出された欠陥位置情報も記録できる仕組みも持っている。これにより情報記憶媒体の製造メーカーが出荷直前にユーザデータの追記可能範囲204内の欠陥状態を検査し、発見された欠陥場所を(交替処理前に)事前に記録したり、ユーザの所で情報記録再生装置がイニシャライズ処理を行った時にユーザデータの追記可能範囲204内の欠陥状態を検査し、発見された欠陥場所を(交替処理前に)事前に記録できるようにしてある。このように交替処理前に事前に検出された欠陥位置を示す情報が表14に示す2次欠陥リストエントリ情報内の“欠陥ブロックの代替えブロックへの交替処理有無情報”(SLR:Status of Linear Replacement)であり、
◎欠陥ブロックの代替えブロックへの交替処理有無情報SLRが“0”の時には
… “交替元ECCブロックの位置情報”で指定された欠陥ECCブロックに対して交替処理がなされ、
“交替先ECCブロックの位置情報”で指定された場所に再生可能な情報が記録されている。
◎欠陥ブロックの代替えブロックへの交替処理有無情報SLRが“1”の時には
… “交替元ECCブロックの位置情報”で指定された欠陥ECCブロックは交替処理前の段階で事前に検出された欠陥ブロックを意味し、
“交替先ECCブロックの位置情報”の欄はブランク(何も情報が記録されて無い)となっている。
このように欠陥場所が事前に分かっていると、情報記録再生装置がユーザデータを追記形情報記憶媒体に追記する段階で高速に(かつリアルタイムで)最適な交替処理を行えると言う効果が有る。特に映像情報などを情報記憶媒体に記録する場合には記録時の連続性を保証する必要が有り、上記情報に基付く高速な交替処理が重要となる。
ユーザデータの追記可能範囲205内に欠陥が有ると代替え領域SPAあるいは拡張代替え領域ESPA内の所定場所で交替処理が行われるが、その1回の交替処理毎に1個の2次欠陥リストエントリ(Secondary Defect List Entry)情報が付加され、欠陥ECCブロックの位置情報と代替えに利用されたECCブロックの位置情報の組情報がこのRMDフィールド6内に記録される。ユーザデータの追記可能範囲205内に新たにユーザデータの追記を繰り返す時に新たな欠陥場所が発見されると交替処理を行い、2次欠陥リストエントリ情報の数が増える。この2次欠陥リストエントリ情報の数が増えた記録位置管理データRMDを図24(b)に示すように記録位置管理ゾーンRMZ内の予約領域273内に追記する事により欠陥管理の管理情報領域(RMDフィールド6)が拡張できる。この方法を行うことで下記の理由から欠陥管理情報自体の信頼性を向上させることが出来る。
(1)記録位置管理ゾーンRMZ内の欠陥場所を回避して記録位置管理データRMDを記録できる
… 図24(b)に示す記録位置管理ゾーンRMZ内でも欠陥場所が発生する場合が有る。記録位置管理ゾーンRMZ内で新たに追記した記録位置管理データRMDの内容を追記直後に確認(ベリファイ)する事で欠陥による記録不可能な状態を検知でき、その場合にはその隣に記録位置管理データRMDを書き直す事で記録位置管理データRMDを高い信頼性を保証した形で記録する事が出来る。
(2)情報記憶媒体表面に付いた傷などにより過去の記録位置管理データRMDの再生が不可能になっても有る程度のバックアップが可能となる
… 例えば、図24(b)の例を取った場合、記録位置管理データRMD#2を記録した後でユーザのミス等で情報記憶媒体表面に傷が付き、記録位置管理データRMD#2の再生が不可能になった状態を例として想定する。この場合、代わりに記録位置管理データRMD#1の情報を再生する事で有る程度過去の欠陥管理情報(RMDフィールド6内の情報)を修復できる。
RMDフィールド6の最初にはRMDフィールド6のサイズ情報が記録されており、このフィールドサイズを可変にして欠陥管理の管理情報領域(RMDフィールド6)を拡張可能としている。各RMDフィールドは2048サイズ(1物理セクタサイズ分)に設定していると既に説明したが、情報記憶媒体の欠陥が多く、交替処理回数が多くなると2次欠陥リスト情報(Secondary Defect List)のサイズが増大し、2048バイトサイズ(1物理セクタサイズ分)では収まらなくなる。その状況を考慮してRMDフィールド6は2048サイズの複数倍(複数のセクタに跨って記録可能)に出来る形となっている。つまり、“RMDフィールド6のサイズ”が2048バイトを越えた場合には複数物理セクタ分の領域をRMDフィールド6に割り当てる事になる。
2次欠陥リスト情報SDL内には上記説明した2次欠陥リストエントリ情報の他に、2次欠陥リスト情報SDLの開始位置を示す“2次欠陥リスト識別情報”、この2次欠陥リスト情報SDLを何回書き替えたかの回数情報を示す“2次欠陥リストのアップデートカウンタ(アップデート回数情報)”が記録される。“2次欠陥リストエントリの数情報”により2次欠陥リスト情報SDL全体のデータサイズが分かる。
ユーザデータの追記可能範囲205内には論理的にRゾーン(R Zone)単位でユーザデータの記録を行う事を既に説明した。すなわち、ユーザデータを記録するために予約されるユーザデータの追記可能範囲205内の一部をRゾーン(R Zone)と呼ぶ。記録条件に応じこのRゾーンは2種類のRゾーンに分けられる。その中に追加ユーザデータが更に、記録できるタイプを“オープン形Rゾーン(Open R Zone)”と呼び、その中に更なるユーザデータが追加できないタイプを“完結形Rゾーン(Complete R Zone)”と呼ぶ。ユーザデータの追記可能範囲205内では3個以上の“オープン形Rゾーン”を持つ事が出来ない(すなわち、ユーザデータの追記可能範囲205内では“オープン形Rゾーン”は2箇所までしか設定できない)。ユーザデータの追記可能範囲205内で上記2種類いずれかのRゾーンを設定していない場所、すなわちユーザデータを記録するために(上記2種類のRゾーンのいずれかとして)予約され場所を“未指定状態のRゾーン(Invisible R Zone)”と呼ぶ。ユーザデータの追記可能範囲205内に全てユーザデータが記録され、追加できない場合には、この“未指定状態のRゾーン”は存在しない。RMDフィールド7内は254番目までのRゾーンの位置情報が記録される。RMDフィールド7内の最初に記録される“全体のRゾーンの数情報”はユーザデータの追記可能範囲205内に論理的に設定される“未指定状態のRゾーン(Invisible R Zone)”の数と“オープン形Rゾーン(Open R Zone)”の数と“完結形Rゾーン(Complete R Zone)”の数の合計数を表している。次に最初の“オープン形Rゾーン(Open R Zone)”の数情報と2番目の“オープン形Rゾーン(Open R Zone)”の数情報が記録されるが、前述したようにユーザデータの追記可能範囲205内では3個以上の“オープン形Rゾーン”を持つ事が出来ないので、ここは“1”または“0”(最初または2番目のオープン形Rゾーンが存在しない場合)が記録される。次には最初の“完結形Rゾーン(Complete R Zone)”の開始位置情報と終了位置情報が物理セクタ番号で記載される。その次には2番目から254番目までの開始位置情報と終了位置情報
が順次物理セクタ番号で記載される。
RMDフィールド8以降は255番目以降の開始位置情報と終了位置情報が順次物理セクタ番号で記載され、“完結形Rゾーン(Complete R Zone)”の数に応じて最大RMDフィールド15まで(最大2047個の完結形Rゾーンまで)記載可能になっている。
表10〜表15に示した記録位置管理データRMD内のデータ構造に対する他の実施形態を表16、表17に示す。
表16、表17の実施形態では1枚の追記形情報記憶媒体上に128個までのボーダー内領域BRDAが設定可能になっている。従って、最初から128個までのボーダーアウトBRDOの開始位置情報がRMDフィールド3内に記録されている。もし途中まで(128個以下)しかボーダー内領域BRDAが設定されて無い場合には、それ以降のボーダーアウトBRDOの開始位置情報として“00h”を設定する。これにより、RMDフィールド3内でどこまでボーダーアウトBRDOの開始位置情報が記録されているかを調べるだけで追記形情報記憶媒体上に何個ボーダー内領域BRDAが設定されているかが分かる。
表16、表17の実施形態では1枚の追記形情報記憶媒体上に128個までの拡張記録位置管理ゾーンRMZを設定可能になっている。上述したように拡張記録位置管理ゾーンRMZとして
1)ボーダーインBRDI内に設定された拡張記録位置管理ゾーンRMZと
2)Rゾーンを利用して設定された拡張記録位置管理ゾーンRMZ
の2種類存在するが、表16、表17に示した実施形態ではその2種類を区別することなく拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置情報(物理セクタ番号で表示)とサイズ情報(占有する物理セクタの数情報)の組をRMDフィールド3内に記録することで管理している。表16、表17の実施形態では拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置情報(物理セクタ番号で表示)とサイズ情報(占有する物理セクタの数情報)の組の情報が記録されているが、それに限らず拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置情報(物理セクタ番号で表示)と終了位置情報(物理セクタ番号で表示)の組で記録されても良い。表16、表17の実施形態では追記形情報記憶媒体上に設定された順番に拡張記録位置管理ゾーンRMZの番号が付けられているが、それに限らず開始位置として物理セクタ番号の若い順に拡張記録位置管理ゾーンRMZの番号を付ける事も出来る。そして、最新の記録位置管理データRMDが記録され、現在使用中(オープンになってRMDの追記が可能な)記録位置管理ゾーンの指定をこの拡張記録位置管理ゾーンRMZの番号で指定している。従って、情報記録再生装置または情報再生装置はこれらの情報から現在使用中(オープンになっている)記録位置管理ゾーンの開始位置情報を知り、そこからどれが最新の記録位置管理データRMDで有るかの識別を行う。拡張記録位置管理ゾーンを追記形情報記憶媒体上に分散配置しても表16、表17に示したデータ構造を取る事で情報記録再生装置または情報再生装置はどれが最新の記録位置管理データRMDで有るかの識別を容易に行う事が出来る。これらの情報から現在使用中(オープンになっている)記録位置管理ゾーンの開始位置情報が分かり、その場所にアクセスして何処まで既に記録位置管理データRMDが記録されているかを知ることで情報記録再生装置または情報再生装置は何処に更新された最新の記録位置管理データを記録すれば良いかか容易に分かる。また、上記の
2)Rゾーンを利用して設定された拡張記録位置管理ゾーンRMZ
の設定をした場合には1個のRゾーン全体がそのまま1個の拡張記録位置管理ゾーンRMZに対応するので、RMDフィールド3内に記載した対応する拡張記録位置管理ゾーンRMZの開始位置を表す物理セクタ番号がRMDフィールド4〜21内に記載される対応したRゾーンの開始位置を表す物理セクタ番号に一致する。
表16、表17の実施形態では1枚の追記形情報記憶媒体には4606個(4351+255)までRゾーンの設定が可能になっている。この設定されたRゾーンの位置情報がRMDフィールド4〜21内に記録される。各Rゾーンの開始位置情報が物理セクタ番号の情報で表示されると共に、各Rゾーン内での最後の記録位置を表す物理セクタ番号LRA(Last recorded Address)が対になって記録される。記録位置管理データRMD内に記載されるRゾーンの順番は表16、表17の実施形態ではRゾーンの設定順になっているが、それに限らず開始位置情報を表す物理セクタ番号の若い順に順番を設定することもできる。対応番号のRゾーン設定を行って無い場合には、この欄には“00h”を記録する。インビジブルRゾーンの番号情報がRMDフィールド4内に記載されているが、このインビジブルRゾーンの番号情報はインビジブルRゾーン(データ領域DTA内でデータ記録のための領域予約を行って無い領域)数とオープン形Rゾーン(後から追記できる未記録領域を持っているRゾーン)数と完結形Rゾーン(既に完結しており、後から追記できる未記録領域を持っていないRゾーン)数の合計値で示される。表16、表17の実施形態では追記が可能なオープン形Rゾーンの設定は2個まで設定可能になっている。このように2個までオープン形Rゾーンの設定を行えることで1個のオープン形Rゾーン内に連続記録や連続再生が保証される必要のある映像情報や音声情報を記録し、残りの1個のオープン形Rゾーン内にその映像情報や音声情報に対する管理情報やパーソナルコンピューターなどで使用される一般情報あるいはファイルシステムの管理情報を記録するなどの記録すべきユーザデータの種類により別のオープン形Rゾーン内にそれぞれ分けて記録する事が出来、AV情報(映像情報や音声情報)の記録や再生などに利便性が向上する。表16、表17の実施形態ではどのRゾーンがオープン形Rゾーンで有るかをRMDフィールド4〜21内に配列されたRゾーンの配置番号で指定する。すなわち、最初と2番目のオープン形Rゾーンに対応するRゾーンの番号で指定する。このようなデータ構造を取る事でオープン形Rゾーンの検索が容易となる。オープン形Rゾーンが存在しない場合にはこの欄は“00h”が記録される。本実施形態では完結形Rゾーン内ではRゾーンの終了位置が最後の記録位置と一致しているが、オープン形Rゾーン内ではRゾーンの終了位置とRゾーン内の最後の記録位置LRAとが異なっている。オープン形Rゾーン内にユーザ情報を追記している途中(その結果、更新されるべき記録位置管理データRMDの追記処理が完了する前の段階)では最後の記録位置と更に、追記可能な最終記録位置がずれる。しかし、ユーザ情報の追記処理が完了し、更新されるべき最新の記録位置管理データRMDの追記処理が完了した後には最後の記録位置と更に、追記可能な最終記録位置が一致する。従って、更新されるべき最新の記録位置管理データRMDの追記処理が完了した後に新たなユーザ情報の追記を行う場合には図9に示した情報記録再生装置内の制御部143内では
(1)RMDフィールド4内に記載されているオープン形Rゾーンに対応するRゾーンの番号を調べ
(2)RMDフィールド4〜21内に記載されているオープン形Rゾーン内での最後の記録位置を表す物理セクタ番号を調べて追記可能な最終記録位置を割り出し
(3)上記割り出した追記可能な最終記録位置NWAから追記を開始する
と言う手順で処理を行う。このようにRMDフィールド4内のオープン形Rゾーン情報を利用して新たな追記開始位置を割り出す事で簡単かつ高速に新たな追記開始位置の抽出が可能となる。
表16、表17の実施形態におけるRMDフィールド1内のデータ構造を表18に示す。表10〜表15に示した実施形態に比べて内側の(データリードイン領域DTLDIに属する)ドライブテストゾーンDRTZ内での記録条件調整を行った場所のアドレス情報と外側の(データリードアウト領域DTLDOに属する)ドライブテストゾーンDRTZ内での記録条件調整を行った場所のアドレス情報が追加されている。これらの情報はいずれも物理セグメントブロックアドレス番号で記載する。さらに表18の実施形態では記録条件自動調整方法(ランニングOPC)に関する情報と記録終了時の最後のDSV(Digital Sum Value)値が付加されている。
2048バイト単位のユーザデータを記録したデータフレーム構造からECCブロックを構成し、同期コードを付加した後、情報記憶媒体に記録する物理セクタ構造を形成するまでの変換手順の概略に付いて図32に示す。この変換手順は再生専用形情報記憶媒体、追記形情報記憶媒体、書替え形情報記憶媒体いずれも共通に採用される。各変換段階に応じて、データフレーム(Data Frame)、スクランブル後のフレーム(scrambled frame)、レコーディングフレーム(Recording Frame)または記録データフィールド(Recorded Data Field)と呼ぶ。データフレームはユーザデータが記録される場所であり2048バイトからなるメインデータ、4バイトのデータID、2バイトのIDエラー検出コード(IED)、6バイトの予約バイト(Reserved Bytes)RSV、4バイトのエラー検出コード(EDC)から構成される。始めに後述するデータIDにIED(IDエラー検出コード)が付加された後、6バイトの予約バイトとデータフレームはユーザデータが記録される場所であり2048バイトからなるメインデータを付加し、更に、エラー検出コード(EDC)を付加した後、メインデータに対するスクランブルが実行される。ここで、スクランブルされた32個のデータフレーム(スクランブルドフレーム)に対して、クロスリードソロモンエラーコレクションコード(Cross Reed-Solomon Error Correction Code)が適用されて、ECCエンコード処理が実行される。これによりレコーディングフレームが構成される。このレコーディングフレームは、アウターパリティコード(Parity of Outer-code)PO、インナーパリティコード(Parity of Inner-code)PIを含む。PO、PIは、それぞれ32個のスクランブルドフレームによりなる各ECCブロックに対して作成されたエラー訂正コードである。記録フレームは、前述したように8データビットを12チャネルビットに変換するETM(Eight to Twelve Modulation)変調される。そして、91バイト毎に先頭に同期コード(シンクコード:Sync Code)SYNCが付加され32個の物理セクタが形成される。図32の右下の枠内に記載されているように32セクタで一つのエラー訂正単位(ECCブロック)を構成する所に本実施形態の特徴がある。後述するように図36または図37での各枠内の“0”から“31”までの番号は各物理セクタの番号を示し、“0”から“31”までの合計32個の物理セクタで1個の大きなECCブロックを構成する構造になっている。次世代DVDにおいては現世代DVDと同じ程度の長さの傷が情報記憶媒体表面に付いた場合でもエラー訂正処理で正確な情報が再生できる事を要求される。本実施形態で大容量化を目指して記録密度を高めた。その結果、従来の1ECCブロック=16セクタの場合には、エラー訂正で補正可能な物理的傷の長さが従来のDVDに比べて短くなる。本実施形態のように1ECCブロックを32セクタで構成する構造にする事で、エラー訂正可能な情報記憶媒体表面傷の許容長さを長くできると共に現行DVDECCブロック構造の互換性・フォーマット継続性を確保できると言う効果が有る。
図33にデータフレーム内の構造を示す。1個のデータフレームは、172バイト×2×6行からなる2064バイトであり、そのなかに2048バイトのメインデータを含む。IEDとはID Error Detection Codeの略でデータID情報に対する再生時のエラー検出用付加コードを意味している。REVはReserveの略で将来情報を設定できるための予約領域を意味している。EDCとはError Detection Codeの略でデータフレーム全体のエラー検出用付加コードを意味している。
図30に図33に示されたデータID内のデータ構造を示す。データIDはデータフレーム情報921とデータフレーム番号922の情報から構成され、データフレーム番号は対応するデータフレームの物理セクタ番号922を表示している。
データフレーム情報921内は下記の情報から構成されている。
・フォーマットタイプ931 … 0b:CLVを表し、
1b:ゾーン構成を表す
・トラッキング方法932 … 0b:ピット対応で、本実施形態ではDPD(Differential Phase Detect)法を使用する
1b:プリグルーブ対応で、Push-Pull法またはDPP(Differential Push-Pull)法を使用する
・記録膜の反射率933 … 0b:40%以上
1b:40%以下
・レコーディングタイプ情報934 … 0b:一般データ
1b:リアルタイムデータ(Audio Videoデータ)
・領域タイプ情報935 … 00b:データ領域DTA
01b:システムリードイン領域SYLDIかデータリードイン領域DTLDI
10b:データリードアウト領域DTLDOかシステムリードアウト領域SYLDO
・データタイプ情報936 … 0b:再生専用データ
1b:書き替え可能データ
・レイヤー番号937 … 0b:レイヤー0
1b:レイヤー1
図34(a)は、スクランブル後のフレームを作成するときに、フィードバックシフトレジスタに与える初期値の例を示し、図34(b)は、スクランブルバイトを作成するためのフィードバックシフトレジスタの回路構成を示している。r7(MSB)からr0(LSB)が、8ビットずつシフトし、スクランブルバイトとして用いられる。図34(a)に示すように本実施形態では16種類のプリセット値が用意されている。図34(a)の初期プリセット番号は、データIDの4ビット(b7(MSB)〜b4(LSB))に等しい。データフレームのスクランブルの開始時には、r14〜r0の初期値は、図34(a)のテーブルの初期プリセット値にセットしなければならない。16個の連続するデータフレームに対して、同じ初期プリセット値が用いられる。次には、初期プリセット値が切り換えられ、16個の連続するデータフレームに対しては、切り換わった同じプリセット値が用いられる。
r7〜r0の初期値の下位8ビットは、スクランブルバイトS0として取り出される。その後、8ビットのシフトが行なわれ、次にスクランブルバイトが取り出され、2047回このような動作が繰り替えされる。
図35に本実施形態におけるECCブロック構造を示す。ECCブロックは、連続する32個のスクランブルドフレームから形成されている。縦方向に192行+16行、横方向に(172+10)×2列が配置されている。B0,0、B1,0、…はそれぞれ1バイトである。PO、PIは、エラー訂正コードであり、アウターパリティ、インナーパリティである。本実施形態では積符号を用いたECCブロック構造を構成している。すなわち、情報記憶媒体に記録するデータを2次元状に配置し、エラー訂正用付加ビットとして “行”方向に対してはPI(Parity in)、“列”方向に対してはPO(Parity out)を付加した構造になっている。このように積符号を用いたECCブロック構造を構成する事で、イレイジャー訂正および縦と横の繰り返し訂正処理による高いエラー訂正能力を保証できる。図35に示すECCブロック構造は従来のDVDのECCブロック構造とは異なり、同一“行”内で2箇所PIを設定している所に特徴がある。すなわち、図35において中央に記載された10バイトサイズのPIは、その左側に配置されている172バイトに対して付加される。すなわち、例えば、B0,0からB0,171の172バイトのデータに対してPIとしてB0,172からB0,181の10バイトのPIを付加し、B1,0からB1,171の172バイトのデータに対してPIとしてB1,172からB1,181の10バイトのPIを付加する。図35の右端に記載された10バイトサイズのPIは、その左側で中央に配置されている172バイトに対して付加される。すなわち、例えば、B0,182からB0,353の172バイトのデータに対してPIとしてB0,354からB0,363の10バイトのPIを付加する。
図36にスクランブル後のフレーム配列説明図を示す。(6行×172バイト)単位が1スクランブル後のフレームとして扱われる。すなわち、1ECCブロックは連続する32個のスクランブル後のフレームからなる。さらに、このシステムでは(ブロック182バイト×207バイト)をペアとして扱う。左側のECCブロックの各スクランブル後のフレームの番号にLを付け、右側のECCブロックの各スクランブル後のフレームの番号にRを付けると、スクランブル後のフレームは、図36に示すように配置されている。すなわち、左側のブロックに左と右のスクランブル後のフレームが交互に存在し、右側のブロックにスクランブル後のフレームが交互に存在する。
すなわち、ECCブロックは、32個の連続スクランブル後のフレームから形成される。奇数セクタの左半分の各行は、右半分の行と交換されている。172×2バイト×192行は172バイト×12行×32スクランブルドフレームに等しく、データ領域となる。16バイトのPOが、各172×2列にRS(208,192,17)のアウターコードを形成するために付加される。10バイトのPI(RS(182,172,11))が、左右のブロックの各208×2行に付加される。PIは、POの行にも付加される。フレーム内の数字は、スクランブルドフレーム番号を示し、サフィックスのR,Lは、スクランブルドフレームの右側半分と、左側半分を意味する。同一のデータフレーム内を複数の小ECCブロックに分散配置する所に本実施形態の特徴がある。具体的には本実施形態では2個の小ECCブロックで大きな1ECCブロックを構成し、同一のデータフレーム内をこの2個の小ECCブロック内に交互に分散配置する。図35の説明の所で中央に記載された10バイトサイズのPIは、その左側に配置されている172バイトに対して付加され、右端に記載された10バイトサイズのPIは、その左側で中央に配置されている172バイトに対して付加される事を既に説明した。つまり図35の左端から172バイトと連続する10バイトのPIで左側(Left側)の小ECCブロックを構成し、中央の172バイトから右端の10バイトのPIで右側(Right側)の小ECCブロックを構成している。それに対応して図36の各枠内の記号が設定されている。例えば、図36内の“2−R”などの意味はデータフレーム番号と左右の小ECCブロックのどちらに属するか(例えば、2番目のデータフレーム内でRight側の小ECCブロックに属する)を表している。後述するように最終的に構成される各物理セクタ毎に同一物理セクタ内のデータも交互に左右の小ECCブロック内に分散配置される(図37における左半分の列は左側の小ECCブロック(図39に示した左側の小ECCブロックA)内に含まれ、右半分の列は右側の小ECCブロック(図39に示した右側の小ECCブロックB)内に含まれる。
このように同一のデータフレーム内を複数の小ECCブロックに分散配置すると物理セクタ(図37)内データのエラー訂正能力を向上させる事による記録データの信頼性向上が図れる。例えば、記録時にトラックが外れて既記録データ上をオーバーライトしてしまい、1物理セクタ分のデータが破壊された場合を考える。本実施形態では1セクタ内の破壊データを2個の小ECCブロックを用いてエラー訂正を行うため、1個のECCブロック内でのエラー訂正の負担が軽減され、より性能の良いエラー訂正が保証される。本実施形態ではECCブロック形成後でも各セクタの先頭位置にデータIDが配置される構造になっているため、アクセス時のデータ位置確認が高速で行える。
図37にPOのインターリーブ方法の説明図を示す。図37に示す様に、16のパリティ行は1行ずつ分散される。すなわち、16のパリティ行は2つのレコーディングフレーム置きに対して、1行ずつ配置される。したがって、12行からなるレコーディングフレームは12行+1行となる。この行インターリーブが行なわれた後、13行×182バイトはレコーディングフレームとして参照される。したがって、行インターリーブが行なわれた後のECCブロックは32個のレコーディングフレームからなる。1つのレコーディング内には、図36で説明したように、右側と左側のブロックの行が6行ずつ存在する。POは左のブロック(182×208バイト)と右のブロック(182×208バイト)間では、異なる行に位置するように配置されている。図37では、1つの完結型のECCブロックとして示している。しかし、実際のデータ再生時には、このようなECCブロックが連続してエラー訂正処理部に到来する。このようなエラー訂正処理の訂正能力を向上するために、図37に示すようなインターリーブ方式が採用された。
図33に示した1個のデータフレーム内の構造から図37に示したPOのインターリーブ方法までの関係に付いて図39を用いて詳細に説明する。図39では図37に示したPOインターリーブ後のECCブロック構造図の上側部分を拡大し、その中に図33に示したデータID、IED、RSV、EDCの配置場所を明示する事で、図33から図37までの変換のつながりが一目で分かるようにした。図39の“0−L”、“0−R”、“1−R”、“1−L”は図36の各“0−L”、“0−R”、“1−R”、“1−L”に対応する。“0−L”や“1−L”は図33の左半分すなわち、中央線から左側の172バイトと6行で構成されるまとまりに対してメインデータのみにスクランブルを掛けた後のデータを意味する。同様に、“0−R”や“1−R”は図33の右半分すなわち、中央線から右側の172バイトと6行で構成されるまとまりに対してメインデータのみにスクランブルを掛けた後のデータを意味する。従って、図33から明らかなように“0−L”や “1−L”の最初の行(0行目)の最初から12バイト目までにデータID、IED、RSVが順番に並んでいる。図39において中心線から左側が左側の小ECCブロックAを構成し、中心線から右側が右側の小ECCブロックBを構成している。従って、図39から分かるように“0−L”や“2−L”内に含まれるデータID#1、データID#2、IED#0、IED#2、RSV#0、RSV#2は左側の小ECCブロックAの中に含まれる。図36において左側に“0−L”や“2−L”が配置され、右側に“0−R”や “2−R”が配置されているのに対して“1−R”と“1−L”の配置は左右逆転し、右側に“1−L”が、左側に“1−R”がそれぞれ配置される。“1−L”の中の最初の行の最初から12バイト目までにデータID#1、IED#1、RSV#1が配置されているので、左右の配置が逆転した結果、図39から分かるように“1−L”内に含まれるデータID#1、IED#1、RSV#1が右側の小ECCブロックBの中に構成される。本実施形態では図39における“0−L”と“0−R”の組み合わせを“0番目のレコーディング・フレーム”、“1−L”と“1−R”の組み合わせを“1番目のレコーディング・フレーム”と呼ぶ。各レコーディング・フレーム間の境界は図39の太字で示している。図39から分かるように各レコーディング・フレームの先頭にはデータID、各レコーディング・フレームの最後にはPOとPI−Lが配置される。図39に示すようにレコーディング・フレームの奇数と偶数番目でデータIDが含まれる小ECCブロックが異なり、レコーディング・フレームの連続に従ってデータID、IED、RSVが左側と右側の小ECCブロックAとBに交互に配置される所に大きな特徴が有る。1個の小ECCブロック内でのエラー訂正能力には限界が有り、特定数を越えたランダムエラーや特定長を越えたバーストエラーに対してはエラー訂正が不可能となる。上記のようにデータID、IED、RSVを左側と右側の小ECCブロックAとBに交互に配置する事でデータIDの再生信頼性を向上させる事が出来る。すなわち、情報記憶媒体上の欠陥が多発してどちらかの小ECCブロックのエラー訂正が不可能となり、そちらに属するデータIDの解読が不可能となっても、データID、IED、RSVが左側と右側の小ECCブロックAとBに交互に配置されるために他方の小ECCブロックではエラー訂正が可能であり、残りのデータIDの解読が可能となる。データID内のアドレス情報に連続性が有るため、解読可能なデータIDの情報を用いて解読が不可能だったデータIDの情報に対して補間が可能である。その結果、図39に示した実施形態によりアクセスの信頼性を高める事が出来る。図39左側の括弧で囲った番号はPOインターリーブ後のECCブロック内の行番号を示している。情報記憶媒体に記録される場合には行番号順に左から右に沿って順次記録される。図39において各レコーディング・フレーム内に含まれるデータID間隔は常に一定間隔で配置されているため、データID位置検索性が向上する効果が有る。
物理セクタ構造を図38に示す。図38(a)が偶数番目の物理セクタ構造を示し、図38(b)が奇数番目のデータ構造を示す。図38において偶数記録データ領域(Even Recorded data field)及び奇数記録データ領域(Odd Recorded data field)のいずれも最後の2シンクフレーム(すなわち、最後のシンクコードがSY3の部分とその直後のシンクデータ及びシンクコードがSY1の部分とその直後のシンクデータが並んだ部分)内のシンクデータ領域に図37で示したアウターパリティPOの情報が挿入される。
偶数記録データ領域内の最後の2シンクフレーム箇所には図36に示した左側のPOの一部が挿入され、奇数記録データ領域内の最後の2シンクフレーム箇所には図36に示した右側のPOの一部が挿入される。図36に示すように1個のECCブロックはそれぞれ左右の小ECCブロックから構成され、セクタ毎に交互に異なるPOグループ(左の小ECCブロックに属するPOか、右の左の小ECCブロックに属するPOか)のデータが挿入される。図38(a)に示した偶数番目の物理セクタ構造と図38(b)に示した奇数番目のデータ構造いずれも中心線で2分割され、左側の“24+1092+24+1092チャネルビット”が図35または図36に示した左側(Left側)の小ECCブロック内に含まれ、右側の“24+1092+24+1092チャネルビット”が図35または図36に示した右側(Right側)の小ECCブロック内に含まれる。図38に示した物理セクタ構造が情報記憶媒体に記録される場合には1列毎にシリアルに記録される。従って、例えば、図38(a)に示した偶数番目の物理セクタ構造のチャネルビットデータを情報記憶媒体に記録する場合には、最初に記録する2232チャネルビットのデータが左側(Left側)の小ECCブロック内に含まれ、次に記録する2232チャネルビットのデータが右側(Right側)の小ECCブロック内に含まる。更に、次に記録する2232チャネルビットのデータは左側(Left側)の小ECCブロック内に含まれる。それに対して、図38(b)に示した奇数番目のデータ構造のチャネルビットデータを情報記憶媒体に記録する場合には、最初に記録する2232チャネルビットのデータが右側(Right側)の小ECCブロック内に含まれ、次に記録する2232チャネルビットのデータが左側(Left側)の小ECCブロック内に含まる。更に、次に記録する2232チャネルビットのデータは右側(Right側)の小ECCブロック内に含まれる。このように本実施形態では同一の物理セクタ内を2個の小ECCブロック内に2232チャネルビット毎に交互に所属させる所に特徴がある。これを別の形で表現すると右側(Right側)の小ECCブロック内に含まれデータと左側(Left側)の小ECCブロック内に含まれるデータを2232チャネルビット毎に交互に分散配置した形で物理セクタを形成して情報記憶媒体に記録する事になる。その結果、バーストエラーに強い構造を提供できると言う効果が生じる。例えば、情報記憶媒体の円周方向に長い傷が付き、172バイトを越えるデータの判読が不可能になったバーストエラーの状態を考える。この場合の172バイトを越えるバーストエラーは2つの小さいECCブロック内に分散配置されるので、1個のECCブロック内でのエラー訂正の負担が軽減され、より性能の良いエラー訂正が保証される。
図38に示すように1個のECCブロックを構成する物理セクタの物理セクタ番号が偶数番号か奇数番号かで物理セクタ内のデータ構造が異なる所に特徴がある。つまり
(1)物理セクタの最初の2232チャネルビットデータが属する小ECCブロック(右側か左側か)が異なる
(2)セクタ毎に交互に異なるPOグループのデータが挿入される構造になっている その結果、ECCブロックを構成した後でも全ての物理セクタの先頭位置にデータIDが配置される構造を保証するため、アクセス時のデータ位置確認が高速で行える。また、同一物理セクタ内に異なる小ECCブロックに属するPOを混在挿入するより図37のようなPO挿入方法を採る方法が構造が簡単になり、情報再生装置内でのエラー訂正処理後の各セクタ毎の情報抽出が容易になると共に、情報記録再生装置内でのECCブロックデータの組立て処理の簡素化が図れる。
上記内容を具体的に実現する方法としてPOのインターリーブ・挿入位置が左右で異なる構造としている。図37内の狭い2重線で示された部分、あるいは狭い2重線と斜線で示された部分がPOのインターリーブ・挿入位置を示し、偶数番目の物理セクタ番号では左側の最後に、奇数番目の物理セクタ番号では右側の最後にそれぞれPOが挿入される。この構造を採用する事でECCブロックを構成した後でも物理セクタの先頭位置にデータID配置される構造になっているため、アクセス時のデータ位置確認が高速で行える
図38に示した同期コード(シンクコード)“SY0”から“SY3”までの具体的なパターン内容の実施形態を表20に示す。本実施の形態の変調規則(詳細説明は後述)に対応してState0からState2までの3状態(State)を有する。SY0からSY3までのそれぞれ4種類のシンクコードが設定され、各状態に応じて表20の左右のグループから選択される。現行DVD規格では変調方式として8/16変調(8ビットを16チャネルビットに変換)のRLL(2,10)(Run Length Limited:d=2、k=10:“0”が連続して続く範囲の最小値が2、最大値が10)を採用しており、変調にState1からState4までの4状態、SY0からSY7までの8種類のシンクコードが設定されている。それに比べると本実施の形態は同期コード(シンクコード)の種類が減少している。情報記録再生装置または情報再生装置では情報記憶媒体からの情報再生時にパターンマッチング法によりシンクコードの種別を識別する。本実施の形態のようにシンクコードの種類を大幅に減らすことにより、マッチングに必要な対象パターンを減らし、パターンマッチングに必要な処理を簡素化して処理効率を向上させるばかりで無く、認識速度を向上させることが可能となる。
表20において“#”で示したビット(チャネルビット)はDSV(Digital Sum Value)制御ビットを表している。上記DSV制御ビットは後述するようにDSV制御器(DSVコントローラ)によりDC成分を抑圧する(DSVの値が“0”に近付く)ように決定される。同期コード内に極性反転チャネルビット“#”を含む所も本実施形態の特徴となっている。上記同期コード(シンクコード)を挟んだ両側のフレームデータ領域(図38の1092チャネルビットの領域)を含め、巨視的に見てDSV値が“0”に近付くように“#”の値を“1”か“0”に選択でき、巨視的な視野に立ったDSV制御が可能になると言う効果が有る。
表20に示すように本実施の形態におけるシンクコードは下記の部分から構成されている。
(1)同期位置検出用コード部
全てのシンクコードで共通なパターンを持ち、固定コード領域を形成する。このコードを検出することでシンクコードの配置位置を検出出来る。具体的には表20の各シンクコードにおける最後の18チャネルビット“010000 000000 001001”の所を意味している。
(2)変調時の変換テーブル選択コード部
可変コード領域の一部を形成し、変調時のState番号に対応して変化するコードである。表20の最初の1チャネルビットのところが該当する。すなわち、State1、State2のいずれかを選択する場合にはSY0からSY3までのいずれのコードでも最初の1チャネルビットが“0”となり、State0選択時にはシンクコードの最初の1チャネルビットが “1”となっている。但し、例外としてState0でのSY3の最初の1チャネルビットは “0”となる。
(3)シンクフレーム位置識別用コード部
シンクコード内でのSY0からSY3までの各種類を識別するコードで、可変コード領域の一部を構成する。表20の各シンクコードにおける最初から1番目から6番目までのチャネルビット部がこれに相当する。後述するように連続して検出される3個ずつのシンクコードのつながりパターンから同一セクタ内の相対的な位置を検出できる。
(4)DC抑圧用極性反転コード部
表20における“#”位置でのチャネルビットが該当し、上述したようにここのビットが反転もしくは非反転することで前後のフレームデータを含めたチャネルビット列のDSV値が“0”に近付くように働く。
本実施の形態では変調方法に8/12変調(ETM:Eight to Twelve Modulation)、RLL(1,10)を採用している。すなわち、変調時に8ビットを12チャネルビットに変換し、変換後の“0”が連続して続く範囲は最小値(d値)が1、最大値(k値)が10になるように設定している。本実施の形態ではd=1とすることで従来より高密度化を達成できるが、最密マークのところでは充分に大きな再生信号振幅を得難い。
そこで、図9に示すように本実施の形態の情報記録再生装置では、PR等化回路130とビタビ復号器156を持ち、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)の技術を用いて非常に安定な信号再生を可能としている。また、k=10と設定しているので、変調された一般のチャネルビットデータ内には“0”が連続して11個以上続くことが無い。この変調ルールを利用し、上記の同期位置検出用コード部では変調された一般のチャネルビットデータ内には現れ無いパターンを持たせている。すなわち、表20に示すように同期位置検出用コード部では“0”を連続的に12(=k+2)個続けている。情報記録再生装置または情報再生装置ではこの部分を見付けて同期位置検出用コード部の位置を検出する。また、余りに長く“0”が連続的に続くとビットシフトエラーが起き易いので、その弊害を緩和するため同期位置検出用コード部内ではその直後に“0”の連続個数が少ないパターンを配置している。本実施の形態ではd=1なので、対応パターンとしては“101”の設定は可能であるが、上述したように“101”のところ(最密パターンのところ)では充分に大きな再生信号振幅が得難いので、その代わりに“1001”を配置し、表20に示すような同期位置検出用コード部のパターンにしている。
本実施の形態において、表20に示すようにシンクコード内の後ろ側の18チャネルビットを独立して(1)同期位置検出用コード部とし、前側の6チャネルビットで(2)変調時の変換テーブル選択コード部、(3)シンクフレーム位置識別用コード部、(4)DC抑圧用極性反転コード部を兼用しているところに特徴がある。シンクコード内で(1)同期位置検出用コード部を独立させることで単独検出を容易にして同期位置検出精度を高め、6チャネルビット内に(2)〜(4)のコード部を兼用化することでシンクコード全体のデータサイズ(チャネルビットサイズ)を小さくし、シンクデータの占有率を高めることで実質的なデータ効率を向上させる効果がある。
表20に示す4種類のシンクコードの内、SY0のみを図38に示すようにセクタ内の最初のシンクフレーム位置に配置したところに本実施の形態の特徴がある。その効果としてSY0を検出するだけで即座にセクタ内の先頭位置が割り出せ、セクタ内の先頭位置抽出処理が非常に簡素化される。
連続する3個のシンクコードの組み合わせパターンは同一セクタ内で全て異なると言う特徴も有る。
図23に示した参照コード記録ゾーンRCZに記録される参照コードのパターン内容に付いて詳細に説明する。現行DVDでは変調方式として8ビットデータを16チャネルビットに変換する“8/16変調”方式を採用し、変調後の情報記憶媒体に記録されるチャネルビット列としての参照コードのパターンは“00100000100000010010000010000001”の繰り返しパターンが用いられている。それに比べて、本実施形態では表5〜表7に示すように8ビットデータを12チャネルビットに変調するETM変調を用い、RLL(1,10)のランレングス制約を行っていると共にデータリードイン領域DTLDI、データ領域DTA、データリードアウト領域DTLDO及びミドル領域MDAからの信号再生にPRML法を採用している。従って、上記変調規則とPRML検出に最適な参照コードのパターンを設定する必要が有る。RLL(1,10)のランレングス制約に従えば“0”が連続する最小値は“d=1”で“10101010”の繰り返しパターンとなる。“1”または“0”のコードから次の隣接コードまでの距離を“T”とすると、上記パターンでの隣接する“1”間の距離は“2T”となる。本実施形態では情報記憶媒体の高密度化のため、前述したように情報記憶媒体上に記録した“2T”の繰り返しパターン(“10101010”)からの再生信号は光学ヘッド内の対物レンズ(図9の情報記録再生部141内に存在する)のMTF(Modulation Transfer Fuction)特性の遮断周波数近傍にあるため、ほとんど変調度(信号振幅)が得られ無い。従って、情報再生装置あるいは情報記録再生装置の回路調整(例えば、図13のタップ制御器332内で行う各タップ係数の初期最適化)に使用する再生信号として“2T”の繰り返しパターン(“10101010”)からの再生信号を用いた場合にはノイズの影響が大きく安定化に乏しい。従って、RLL(1,10)のランレングス制約に従って行う変調後の信号に対しては次に密度の高い“3T”のパターンを使って回路調整を行うのが望ましい。再生信号のDSV(Digital Sum Value)値を考えた場合には“1”の直後に来る次の“1”までの間の“0”が連続する回数に比例してDC(直流)値の絶対値が増加して直前のDSV値に加算される。この加算されるDC値の極性は“1”が来る毎に反転する。従って、参照コードが連続するチャネルビット列が続いた所でDSV値を“0”にする方法としてETM変調後の12個のチャネルビット列内でDSV値が“0”になるように設定するより、ETM変調後の12個のチャネルビット列に出現する“1”の発生数を奇数個にして12チャネルビットからなる1組の参照コードセルで発生するDC成分を次の組からなる12チャネルビットの参照コードセルで発生するDC成分で相殺させる方が参照コードパターン設計の自由度が増す。従って、本実施形態ではETM変調後の12個のチャネルビット列からなる参照コードセル内で出現する“1”の数を奇数個に設定している。本実施形態では高密度化のために“1”の所が記録マークもしくはエンボスピットの境界位置に一致するマークエッジ記録法を採用している。例えば、“3T”の繰り返しパターン(“100100100100100100100”)が続いた場合に記録条件あるいは原盤作成条件により記録マークもしくはエンボスピットの長さとその間にあるスペースの長さが若干異なる場合が生じる。PRML検出法を用いた場合には再生信号のレベル値が非常に重要となり、前記のように記録マークもしくはエンボスピットの長さとその間にあるスペースの長さが若干異なった場合でも安定かつ精度良く信号検出できるようにその若干の異なり分を回路的に補正する必要が生じる。従って、回路定数を調整するための参照コードとしては“3T”の長さの記録マークもしくはエンボスピットと同じく“3T”の長さのスペースが有った方が回路定数の調整の精度が向上する。そのため、本実施形態の参照コードパターンとして“1001001”のパターンが内部に含まれると、必ず“3T”の長さの記録マークもしくはエンボスピットとスペースが配置される事になる。また、回路調整には密度の詰まったパターン(“1001001”)だけで無く、密度が疎の状態のパターンも必要となる。従って、ETM変調後の12個のチャネルビット列の中で“1001001”のパターンを除いた部分で密度が疎の状態(“0”が連続して多く発生するパターン)を発生させ、かつ“1”の出現数を奇数個に設定する事を考慮すると参照コードパターンは図44に示すように“100100100000”の繰り返しが最適条件となる。変調後のチャネルビットパターンが前記パターンにするには図示していないが本実施形態のHフォーマットで規定された変調テーブルを利用すると変調前のデータワードは“A4h”に設定する必要が有る。この“A4h”(16進法表現)のデータはデータシンボル“164”(10進法表現)に対応する。
前記のデータ変換規則に従った具体的なデータの作り方を以下に説明する。前述したデータフレーム構造内でメインデータ“D0〜D2047”にデータシンボル“164”(=“0A4h”)をまず設定する。次にデータフレーム1からデータフレーム15に対してイニシャルプリセット番号“0Eh”で予めプリスクランブルを掛けておき、データフレーム16からデータフレーム31に対してはイニシャルプリセット番号“0Fh”で予めプリスクランブルを掛けておく。予めプリスクランブルを掛けておくと前記のデータ変換規則に従ってスクランブルを掛けた時に二重でスクランブルを掛けた事になり、(二重でスクランブルを掛けると元のパターンに戻る)データシンボル“164”(=“0A4h”)がそのまま現れる。32物理セクタからなる参照コード全てにプリスクランブルを掛けるとDSV制御が出来なくなるので、データフレーム0だけは事前のプリスクランブルは掛けない。前記スクランブルを掛けた後、変調すると図44に示したパターンが情報記憶媒体上に記録される。
図45を用いて本実施形態における各種情報記憶媒体毎のデータ記録形式(フォーマット)の比較を説明する。図45(a)は従来の再生専用形情報記憶媒体DVD−ROMと従来の追記形情報記憶媒体DVD−R及び従来のDVD−RWにおけるデータ記録形式を示し、図45(b)は本実施形態における再生専用形情報記憶媒体のデータ記録形式、図45(c)は本実施形態における追記形情報記憶媒体のデータ記録形式、図45(d)は書替え形情報記憶媒体のデータ記録形式を示している。比較のために各ECCブロック411〜418の大きさを同じに合わせているが、図45(a)に示した従来の再生専用形情報記憶媒体DVD−ROMと従来の追記形情報記憶媒体DVD−R及び従来のDVD−RWでは16物理セクタにより1個のECCブロックを構成しているのに対し、図45(b)〜(d)に示した本実施形態では32物理セクタで1個のECCブロックを構成している所が異なる。本実施形態では図45(b)〜(d)に示すように各ECCブロック#1411〜#8418の間にシンクフレーム長433と同じ長さのガード領域442〜448を設けている所に本実施形態の特徴が有る。従来の再生専用形情報記憶媒体DVD−ROMでは図45(a)に示すように各ECCブロック#1411〜#8418が連続に記録されている。従来の追記形情報記憶媒体DVD−Rや従来のDVD−RWで従来の再生専用形情報記憶媒体DVD−ROMとデータ記録形式(フォーマット)の互換性を確保しようとしてすると制限付きオーバーライト(Restricted Overwrite)と呼ばれる追記又は書き替え処理を行うと書き重ねによりECCブロック内の一部を破壊し、再生時のデータ信頼性を大きく損なうと言う問題が有った。それに対して本実施形態のようにデータフィールド(ECCブロック)間にガード領域442〜448を配置すると書き重ね場所をガード領域442〜448内に制限してデータフィールド(ECCブロック)のデータ破壊を防止できる効果が有る。上記ガード領域442〜448の長さを図45に示すように1シンクフレームサイズであるシンクフレーム長433に合わせた所に本実施形態の次の特徴が有る。図38に示すように1116チャネルビットと言う一定のシンクフレーム長433間隔で同期コード(シンクコード)が配置されており、図9に示す同期コード位置検出部145内ではこの一定周期間隔を利用して同期コード位置の抽出を行っている。本実施形態でガード領域442〜448の長さシンクフレーム長433に合わせる事で再生時にガード領域442〜448を跨ってもこのシンクフレーム間隔が不変に保たれるので再生時の同期コード位置検出を容易にすると言う効果が有る。
更に、
(1)ガード領域442〜448を跨った場所でも同期コードの出現頻度を一致させて同期コード位置検出の検出精度を向上させる
(2)ガード領域442〜448も含めた物理セクタ内の位置の判別を容易にする
を目的として本実施形態ではガード領域内に同期コード(シンクデータ)を配置する。具体的には図47に示すように各ガード領域442〜468の開始位置にはポストアンブル領域(Postamble field)481が形成され、そのポストアンブル領域481には表20に示したシンクコード番号“1”の同期コード“SY1”が配置されている。図38から分かるように物理セクタ内の3個の連続する同期コードのシンクコード番号の組み合わせは全ての場所で異なっている。更に、ガード領域442〜448内のシンクコード番号“1”まで加味した3個の連続する同期コードのシンクコード番号の組み合わせも全ての場所で異なっている。従って、任意の領域内での連続する3個の同期コードのシンクコード番号組み合わせにより物理セクタ内の位置情報のみならず、ガード領域の場所も含めた物理セクタ内の位置の判別が可能となる。
図45に示したガード領域441〜448内の詳細な構造を図47に示す。物理セクタ内の構造はシンクコード431とシンクデータ432の組み合わせから構成されるが、ガード領域441〜448内も同様にシンクコード433とシンクデータ434の組み合わせから構成され、ガード領域#3443内のシンクデータ434領域内もセクタ内のシンクデータ432と同じ変調規則に従って変調されたデータが配置される所に本実施形態の特徴が有る。図35に示す32個の物理セクタから構成される1個分のECCブロック#2412内の領域を本発明ではデータフィールド470と呼ぶ。
図47におけるVFO(Variable Frequency Oscillator)領域471、472はデータ領域470を再生する時の情報再生装置または情報記録再生装置の基準クロックの同期合わせに利用する。この領域471、472内に記録されるデータ内容として、後述する共通の変調規則における変調前のデータは“7Eh”の連続繰り返しとなり、変調後の実際に記録されるチャネルビットパターンは“010001 000100”の繰り返しパターン(“0”が連続3個ずつ繰り返すパターン)となる。なお、このパターンが得られるためにはVFO領域471、472の先頭バイトは変調におけるState2の状態に設定される必要が有る。
プリシンク領域477、478は前記VFO領域471、472とデータ領域470間の境目位置を表し、変調後の記録チャネルビットパターンは“100000 100000”(“0”が連続5個ずつ繰り返すパターン)の繰り返しになっている。情報再生装置または情報記録再生装置ではVFO領域471、472内の“010001 000100”の繰り返しパターンから、プリシンク領域477、478内の“100000 100000”の繰り返しパターンのパターン変化位置を検出し、データ領域470が近付くことを認識する。
ポストアンブル領域481はデータ領域470の終了位置を示すと共にガード領域443の開始位置を表している。ポストアンブル領域481内のパターンは上述したように表20に示す同期コード(SYNC Code)の内“SY1”のパターンと一致している。
エキストラ領域482はコピー制御や不正コピー防止用に使われる領域である。特にコピー制御や不正コピー防止用に使われ無い場合にはチャネルビットで全て“0”に設定する。
バッファ領域はVFO領域471、472と同じ変調前のデータは“7Eh”の連続繰り返しとなり、変調後の実際に記録されるチャネルビットパターンは“010001 000100”の繰り返しパターン(“0”が連続3個ずつ繰り返すパターン)となる。なお、このパターンが得られるためにはVFO領域471、472の先頭バイトは変調におけるState2の状態に設定される必要が有る。
図47に示すように“SY1”のパターンが記録されているポストアンブル領域481がシンクコード領域433に該当し、その直後のエキストラ領域482からプリシンク領域478までの領域がシンクデータ領域434に対応する。VFO領域471からバッファ領域475に至る領域(つまりデータ領域470とその前後のガード領域の一部を含む領域)を本発明ではデータセグメント490と呼び、後述する“物理セグメント”とは異なる内容を示している。図47に示した各データのデータサイズは変調前のデータのバイト数で表現している。
本実施形態は図47に示した構造に限らず、他の実施形態として下記の方法を採用することもできる。すなわち、VOF領域471とデータ領域470の境界部にプリシンク領域477を配置する代わりに図47のVOF領域471、472の途中にプリシンク領域477を配置する。この他の実施形態ではデータブロック470の先頭位置に配置される “SY0”のシンクコードとプリシンク領域477との間の距離を離すことで距離相関を大きく取り、プリシンク領域477を仮Syncとして設定し、本物のSync位置の距離相関情報(他のSync間距離とは異なるが)として利用する。もし本物のSyncが検出できなければ、仮Syncから生成した本物が検出されるであろう位置で、Syncを挿入する。このようにしてプリシンク領域477を本物シンク(“SY0”)と多少の距離を取る所に他の実施形態の特徴が有る。プリシンク領域477をVFO領域471、472の始めに配置すると、読み取りクロックのPLLがロックしていない為プリシンクの役目が弱くなる。従って、プリシンク領域477をVFO領域471、472の中間位置に配置するのが望ましい。
本発明では記録形(書替え形あるいは追記形)情報記憶媒体におけるアドレス情報はウォブル変調を用いて予め記録されている。ウォブル変調方式として±90度(180度)の位相変調を用いると共にNRZ(Non Returen to Zero)方法を採用して情報記憶媒体に対してアドレス情報を事前に記録する所に本実施形態の特徴がある。図48を用いて具体的な説明を行う。本実施形態ではアドレス情報に関しては1アドレスビット(アドレスシンボルとも呼ぶ)領域511内を4ウォブル周期で表現し、1アドレスビット領域511内は至る所周波数および振幅と位相は一致している。アドレスビットの値として同じ値が連続する場合には各1アドレスビット領域511の境界部(図48の“三角印”を付けた部分)で同位相が継続し、アドレスビットが反転する場合にはウォブルパターンの反転(位相の180度シフト)が起きる。図9に示した情報記録再生装置のウォブル信号検出部135内では上記アドレスビット領域511の境界位置(図48の“三角印”を付けた場所)と1ウォブル周期の境界位置であるスロット位置412を同時に検出している。ウォブル信号検出部135内では図示してないがPLL(Phase Lock Loop)回路が内蔵され、上記アドレスビット領域511の境界位置とスロット位置412の両方に同期してPLLが掛かる。このアドレスビット領域511の境界位置またはスロット位置412がずれるとウォブル信号検出部135では同期が外れて正確なウォブル信号の再生(判読)が不可能となる。隣接するスロット位置412間の間隔をスロット間隔513と呼び、このスロット間隔513が物理的に短い程PLL回路の同期が取り易く、安定にウォブル信号の再生(情報内容の解読)が可能となる。図48から明らかなように180度または0度にシフトする180度の位相変調方式を採用すると、このスロット間隔513は1ウォブル周期と一致する。ウォブルの変調方法としてウォブル振幅を変化させるAM(Amplitude Modulation)方式では情報記憶媒体表面に付着したゴミや傷の影響を受け易いが、上記位相変調では信号振幅では無く位相の変化を検出するため、比較的情報記憶媒体表面のゴミや傷の影響を受け辛い。他の変調方式として周波数を変化させるFSK(Frequency Shift Keying)方式ではウォブル周期に対してスロット間隔513が長く、PLL回路の同期が相対的に取り辛い。従って、本実施形態のようにウォブルの位相変調によりアドレス情報を記録するとスロット間隔が狭く、ウォブル信号の同期が取り易いと言う効果が有る。
図48に示すように1アドレスビット領域511にはそれぞれ“1”か“0”かのバイナリーデータが割り振られるが、本実施形態におけるビットの割り振り方法を図49に示す。図49の左側に示すように1ウォブルの開始位置から最初に外周側に蛇行するウォブルパターンをNPW(Normal Phase Wobble)と呼び、“0”のデータを割り当てる。右側に示すように1ウォブルの開始位置から最初に内周側に蛇行するウォブルパターンをIPW(Invert Phase Wobble)と呼び、“1”のデータを割り当てる。
本発明追記形情報記憶媒体のHフォーマットにおけるウォブル変調を用いたアドレス情報の記録形式について説明する。本実施形態におけるウォブル変調を用いたアドレス情報設定方法では図45に示した“シンクフレーム長433を単位として割り振りを行っている”所に大きな特徴がある。図38に示すように1セクタは26シンクフレームから構成され、図32から分かるように1ECCブロックは32物理セクタから成り立っているので、1ECCブロックは26×32=832個のシンクフレームから構成される。図45に示すようにECCブロック411〜418間に存在するガード領域442〜468の長さは1シンクフレーム長433に一致するので、1個のガード領域462と1個のECCブロック411を足した長さは832+1=833個のシンクフレームから構成される。所で、
833=7×17×7
に素因数分解できるので、この特徴を生かした構造配置にしている。すなわち、1個のガード領域と1個のECCブロックを足した領域の長さに等しい領域を書き替え可能なデータの基本単位としてデータセグメント531と定義(図47に示したデータセグメント490内の構造は再生専用形情報記憶媒体と書替え形情報記憶媒体、追記形情報記憶媒体の別に依らず全て一致している)し、1個のデータセグメント490の物理的な長さと同じ長さの領域を“7個”の物理セグメントに分割し、各物理セグメント毎にウォブル変調の形でアドレス情報を事前に記録しておく。データセグメント490の境界位置と物理セグメントの境界位置は一致せずに後述する量だけずれている。さらに、各物理セグメント毎にそれぞれ17個のウォブルデータユニット(WDU:Wobble Data Unit)に分割する。上記の式から1個のウォブルデータユニットの長さにはそれぞれ7個のシンクフレーム分が割り当てられる事が分かる。このように17ウォブルデータユニットで物理セグメントを構成し、7物理セグメント長をデータセグメント長に合わせる事でガード領域442〜468を跨った範囲でシンクフレーム境界を確保しシンクコードの検出を容易にしている。
各ウォブルデータユニット#0560〜#11571の中は図50に示すように16ウォブル分の変調領域598と68ウォブル分の無変調領域592、593から構成される。本実施形態では変調領域に対する無変調領域592、593の占有比を大幅に大きくしている所に大きな特徴がある。無変調領域592、593は常に一定周波数でグルーブ領域またはランド領域がウォブルしているため、この無変調領域592、593を利用してPLL(Phase Locked Loop)を掛け、情報記憶媒体に記録された記録マークを再生する時の基準クロックまたは新たに記録する時に使用する記録用基準クロックを安定に抽出(生成)する事が可能となる。このように本実施形態において変調領域598に対する無変調領域592、593の占有比を大幅に大きくする事で、再生用基準クロックの抽出(生成)または記録用基準クロックの抽出(生成)の精度と抽出(生成)安定性を大幅に向上させる事が出来る。すなわち、ウォブルでの位相変調を行った場合、波形整形のために再生信号をバンドパスフィルターに通過させると位相変化位置前後で整形後の検出信号波形振幅が小さくなる現象が現れる。従って、位相変調による位相変化点の頻度が多くなると波形振幅変動が多くなって上記のクロック抽出精度が落ち、逆に変調領域内で位相変化点の頻度が低いとウォブルアドレス情報検出時のビットシフトが発生しやすくなると言う問題点が生じる。そのため、本実施形態では位相変調による変調領域と無変調領域を構成し、無変調領域の占有率を高くする事で上記のクロック抽出精度を向上させる効果が有る。本実施形態では変調領域と無変調領域の切り替わり位置が予め予想できるので、上記のクロック抽出に対しては無変調領域にゲートを掛けて無変調領域のみの信号を検出し、その検出信号から上記クロック抽出を行うことが可能となる。特に、本実施形態による記録原理を用いた有機色素記録材料で記録層3−2を構成する場合には“3−2)本実施形態における有機色素膜に共通する基本的特徴説明”内の“3−2−D〕本実施形態におけるプリグルーブ形状/寸法に関する基本的特徴”に記載するプリグルーブ形状/寸法を用いた場合に比較的ウォブル信号が取り辛くなる。この状況に対して上記のように変調領域に対する無変調領域590、591の占有比を大幅に大きくする事でウォブル信号検出の信頼性を向上させている。
無変調領域592、593から変調領域598に移る時には4ウォブル分または6ウォブル分を使って変調開始マークとしてのIPW領域を設定し、図50(c)、(d)に示すウォブルデータ部ではこの変調開始マークであるIPW領域を検出直後にウォブル変調されたウォブルアドレス領域(アドレスビット#2〜#0)が来るように配置されている。図50(a)、(b)は後述する図51(c)に示すウォブルシンク領域580に対応したウォブルデータユニット#0560内の中身を表し、図50(c)、(d)は図51(c)のセグメント情報727からCRCコード726までのウォブルデータ部に対応したウォブルデータユニットの中身を示している。図50(a)、(c)は後述する変調領域の1次配置場所(Primary position)701に対応したウォブルデータユニット内を示し、図50(b)、(d)は変調領域の2次配置場所(Secondary position)702に対応したウォブルデータユニット内を示している。図50(a)、(b)に示すようにウォブルシンク領域580ではIPW領域に6ウォブル、IPW領域に囲まれたNPW領域に4ウォブルを割り当て、図50(c)、(d)に示すようにウォブルデータ部ではIPW領域と全てのアドレスビット領域#2〜#0それぞれに4ウォブル分を割り当てている。
図51に追記形情報記憶媒体でのウォブルアドレス情報内のデータ構造に関する実施形態を示す。図51(a)には比較のため、書替え形情報記憶媒体のウォブルアドレス情報内のデータ構造を示した。追記形情報記憶媒体でのウォブルアドレス情報内のデータ構造に関する2通りの実施形態に付いて図51(b)と(c)に示す。
ウォブルアドレス領域610では12ウォブルで3アドレスビットを設定(図48を参照)している。つまり、連続する4ウォブルで1アドレスビットを構成している。このように本実施形態ではアドレス情報を3アドレスビット毎に分散配置させた構造を取っている。ウォブルアドレス情報610を情報記憶媒体内の一箇所に集中記録すると、表面のゴミや傷が付いた時に全ての情報が検出困難になる。本実施形態のようにウォブルアドレス情報610を1個のウォブルデータユニット560〜576に含まれる3アドレスピット(12ウォブル)毎に分散配置し、3アドレスビットの整数倍アドレスビット毎にまとまった情報を記録し、ゴミや傷の影響で一箇所の情報検出が困難な場合でも他の情報の情報検出を可能に出来るという効果が有る。
上記のようにウォブルアドレス情報610を分散配置させると共に1物理セグメント毎にウォブルアドレス情報610を完結的に配置させることで物理セグメン毎にアドレス情報が分かるので、情報記録再生装置がアクセスした時に物理セグメント単位での現在位置を知る事ができる。
本実施形態では図48に示すようにNRZ法を採用しているので、ウォブルアドレス領域610内では連続する4ウォブル内で位相が変化する事は無い。この特徴を利用してウォブルシンク領域580を設定している。すなわち、ウォブルアドレス情報610内では発生し得無いウォブルパターンをウォブルシンク領域580に対して設定する事で、ウォブルシンク領域580の配置位置識別を容易にしている。本実施形態では連続する4ウォブルで1アドレスビットを構成するウォブルアドレス領域586、587に対してウォブルシンク領域580位置では1アドレスビット長を4ウォブル以外の長さに設定している所に特徴がある。すなわち、ウォブルシンク領域580では図50(a)、(b)に示すようにウォブルビットが“1”になる領域(IPW領域)を4ウォブルとは異なる“6ウォブル→4ウォブル→6ウォブル”と言う図50(c)、(d)に示すようにウォブルデータ部では起こり得ないウォブルパターン変化を設定している。ウォブルデータ部では発生し得無いウォブルパターンをウォブルシンク領域580に対して設定する具体的な方法として上述したようにウォブル周期を変える方法を利用すると
(1)図9のウォブル信号検出部135内で行っているウォブルのスロット位置512(図48)に関するPLLが崩れる事無く安定にウォブル検出(ウォブル信号の判定)を継続できる
(2)図9のウォブル信号検出部135内で行っているアドレスビット境界位置のずれにより容易にウォブルシンク領域580と変調開始マーク561、582の検出が行えると言う効果が生まれる。図50に示すようにウォブルシンク領域580を12ウォブル周期で形成してウォブルシンク領域580の長さを3アドレスビット長に一致させているする所にも本実施形態の特徴が有る。これにより、1個のウォブルデータユニット#0560内での変調領域(16ウォブル分)全てをウォブルシンク領域580に割り当てる事で、ウォブルアドレス情報610の開始位置(ウォブルシンク領域580の配置位置)の検出容易性を向上させている。このウォブルシンク領域580は物理セグメント内の最初のウォブルデータユニットに配置されている。このようにウォブルシンク領域580を物理セグメント内の先頭位置に配置する事で、ウォブルシンク領域580の位置を検出するだけで容易に物理セグメントの境界位置を抽出できると言う効果が生じる。
図50(c)、(d)に示すようにウォブルデータユニット#1561〜#11571内ではアドレスビット#2〜#0に先行し、先頭位置に変調開始マークとしてのIPW領域(図49参照)が配置されている。それに先行した位置に配置されている無変調領域592、593では連続的にNPWの波形になっているので、図9に示したウォブル信号検出部135ではNPWからIPWへの切り替わり目を検出して変調開始マークの位置を抽出する。
参考までに図51(a)に示した書替え形情報記憶媒体におけるウォブルアドレス情報610の中身は
(1)物理セグメントアドレス601
… トラック内(情報記憶媒体221内での1周内)での物理セグメント番号を示す情報。
(2)ゾーンアドレス602
… 情報記憶媒体221内のゾーン番号を示している。
(3)パリティー情報605
… ウォブルアドレス情報610からの再生時のエラー検出用に設定された物で、予約情報604からゾーンアドレス602までの14アドレスビットを各アドレスビット単位で個々に加算し、加算結果が偶数か奇数かの表示を行う情報で、このアドレスパリティ情報605の1アドレスビットも含めた合計15アドレスビットに対して各アドレスビット単位で排他的OR(Exclusive OR)を取った結果が“1”になるようにパリティー情報605の値を設定する。
(4)ユニティー領域608
… 前述したように各ウォブルデータユニットの中は16ウォブル分の変調領域598と68ウォブル分の無変調領域592、593から構成されように設定し、変調領域598に対する無変調領域592、593の占有比を大幅に大きくしている。更に、無変調領域592、593の占有比を広げて再生用基準クロックまたは記録用基準クロックの抽出(生成)の精度と安定性をより向上させている。ユニティー領域608内は全てNPW領域が連続しており、均一位相の無変調領域になっている。
が記録される。上記各情報に割り当てたアドレスビット数を図51(a)に示した。上述したようにウォブルアドレス情報610内はそれぞれ3アドレスビット毎に分離されて各ウォブルデータユニット内に分散配置される。情報記憶媒体表面のゴミや傷によりバーストエラーが発生しても異なる各ウォブルデータユニットを跨ってエラーが広がっている確率は非常に低い。従って、同一情報が記録される場所として異なるウォブルデータユニット間を跨る回数を極力減らし、各情報の切れ目とウォブルデータユニットの境界位置を一致させるように工夫している。これにより、仮に情報記憶媒体表面のゴミや傷によりバーストエラーが発生して特定の情報が読めなくても、他の各ウォブルデータユニット内に記録された他の情報が読めるようにしてウォブルアドレス情報の再生信頼性を向上させている。
図51(a)〜(c)に示すようにウォブルアドレス情報610内でユニティ領域608、609を最後に配置した所も本実施形態の大きな特徴となっている。上述したようにユニティ領域608、609ではウォブル波形はNPWに成っているので、実質的に3個もの連続したウォブルデータユニット内で連続してNPWが続く。この特徴を利用して図9のウォブル信号検出部135では3個のウォブルデータユニット576分の長さで連続してNPWが続く場所を探す事で容易にウォブルアドレス情報610の最後に配置されたユニティ領域608の位置が抽出でき、その位置情報を利用してウォブルアドレス情報610の開始位置を検出できる効果が生まれる。
図51(a)に示した各種アドレス情報の内、物理セグメントアドレス601とゾーンアドレス602は隣接トラック間で同じ値を示しているのに対し、グルーブトラックアドレス606とランドトラックアドレス607は隣接トラック間で値が変わる。従って、グルーブトラックアドレス606とランドトラックアドレス607が記録される領域には不定ビット領域504が現れる。この不定ビット頻度を低減させるため、本実施形態ではグルーブトラックアドレス606とランドトラックアドレス607に関してはグレイコードを用いてアドレス(番号)を表示している。グレイコードとは元の値が“1”変化した時の変換後のコードが何処でも“1ビット”だけしか変化しないコードを意味している。これにより不定ビット頻度を低減させてウォブル検出信号のみならず記録マークからの再生信号も信号検出安定化が図れる。
図51(b)、(c)に示すように追記形情報記憶媒体においても書替え形情報記憶媒体と同様ウォブルシンク領域680を物理セグメント先頭位置に配置し、物理セグメントの先頭位置あるいは隣接する物理セグメント間の境界位置の検出を容易にしている。図51(b)に示した物理セグメントのタイプ識別情報721は上述したウォブルシンク領域580内のウォブルシンクパターンと同様物理セグメント内の変調領域の配置位置を示す事で同一物理セグメント内の他の変調領域598の配置場所が事前に予測でき、次に来る変調領域検出の事前準備が出来るので変調領域での信号検出(判別)精度を上げる事ができると言う効果が有る。具体的には
・物理セグメントのタイプ識別情報721が“0”の時は図53(b)に示す物理セグメント内全てが1次配列場所(Primary Position)になっているか、あるいは図53(d)に示す1次配置場所と2次配置場所の混合状態を表し、
・物理セグメントのタイプ識別情報721が“1”の時は図53(c)に示すように物理セグメント内全てが2次配置場所(Secondary Position)になっている事を示す。
上記の実施形態に対する他の実施形態としてウォブルシンクパターンと物理セグメントのタイプ識別情報721の組み合わせにより物理セグメント内の変調領域の配置場所を示す事も出来る。前記2種類の情報を組み合わせる事で図53(b)から(d)に示した3種類以上の変調領域の配置パターンを表現でき、変調領域の配置パターンを複数持たせる事が可能となる。なお上記の実施形態ではウォブルシンク領域580と物理セグメントのタイプ識別情報721が含まれている物理セグメント内の変調領域の配置場所を示しているが、本発明ではそれに限らず例えば、他の実施形態としてウォブルシンク領域580と物理セグメントのタイプ識別情報721は次に来る物理セグメント内の変調領域の配置場所を示しても良い。そうするとグルーブ領域に沿って連続的にトラッキングしている場合に次の物理セグメント内の変調領域の配置場所が事前に分かり、変調領域検出の準備時間が長く取れると言う効果が有る。
図51(b)に示した追記形情報記憶媒体における層番号情報722とは片面1記録層か片面2記録層の場合のどちらの記録層を示しているかを表し、
・“0”の時には片面1記録層媒体か片面2記録層の場合の“L0層”(レーザ光入射側の手前層)
・“1”の時には片面2記録層の“L1層”(レーザ光入射側の奥側の層)
を意味する。
物理セグメント順番情報724は同一物理セグメントブロック内の相対的な物理セグメントの配置順を示している。図51(a)と比較して明らかなようにウォブルアドレス情報610内での物理セグメント順番情報724の先頭位置は書替え形情報記憶媒体における物理セグメントアドレス601の先頭位置に一致している。物理セグメント順番情報位置を書替え形に合わせる事で媒体種別間の互換性を高め、書替え形情報記憶媒体と追記形情報記憶媒体の両方が使える情報記録再生装置でのウォブル信号を用いたアドレス検出用制御プログラムの共有化よ簡素化が図れる。
図51(b)のデータセグメントアドレス725はデータセグメントのアドレス情報を番号で記述する。既に説明したように本実施形態では32セクタで1ECCブロックを構成する。従って、特定のECCブロック内の先頭に配置されたセクタの物理セクタ番号の下位5ビットは隣接するECCブロック内の先頭位置に配置されたセクタのセクタ番号と一致する。ECCブロック内の先頭に配置されたセクタの物理セクタ番号の下位5ビットが“00000”になるように物理セクタ番号を設定した場合には同一ECCブロック内に存在する全てのセクタの物理セクタ番号の下位6ビット目以上の値が一致する。従って、上記同一ECCブロック内に存在するセクタの物理セクタ番号の下位5ビットデータを除去し、下位6ビット目以上のデータのみを抽出したアドレス情報をECCブロックアドレス(またはECCブロックアドレス番号)とする。ウォブル変調により予め記録されたデータセグメントアドレス725(または物理セグメントブロック番号情報)は上記ECCブロックアドレスと一致するので、ウォブル変調による物理セグメントブロックの位置情報をデータセグメントアドレスで表示すると、物理セクタ番号で表示するのと比べて5ビットずつデータ量が減り、アクセス時の現在位置検出が簡単になると言う効果が生まれる。
図51(b)、(c)のCRCコード726は物理セグメントのタイプ識別情報721からデータセグメントアドレス725までの24アドレスビットに対するCRCコード(エラー訂正コード)またはセグメント情報727から物理セグメント順番情報724までの24アドレスビットに対するCRCコードで部分的にウォブル変調信号を誤って判読してもこのCRCコード726により部分的に修正できる。
追記形情報記憶媒体では残りの15アドレスビット分に相当する領域はユニティ領域609に割り当てられ、12番目から16番目までの5個のウォブルデータユニット内は全てNPWになっている(変調領域598が存在しない)。
図51(c)における物理セグメントブロックアドレス728とは7個の物理セグメントから1個のユニットを構成する物理セグメントブロック毎に設定されるアドレスで、データリードインDTRDI内の最初の物理セグメントブロックに対する物理セグメントブロックアドレスを“1358h”に設定する。データ領域DTAを含め、データリードインDTLDI内の最初の物理セグメントブロックからデータリードアウトDTLDO内の最後の物理セグメントブロックまで順次この物理セグメントブロックアドレスの値が1ずつ加算されて行く。
物理セグメント順番情報724は1個の物理セグメントブロック内での各物理セグメントの順番を表し、最初の物理セグメントに対して“0”、最後の物理セグメントに対して “6”を設定する。
図51(c)の実施形態において物理セグメント順番情報724より先行した位置に物理セグメントブロックアドレス728を配置所に特徴がある。例えば、表18に示したRMDフィールド1のようにアドレス情報をこの物理セグメントブロックアドレスで管理する場合が多い。これらの管理情報に従って所定の物理セグメントブロックアドレスにアクセスする場合、図9内に示したウォブル信号検出部135内ではまず始めに図51(c)に示したウォブルシンク領域580の場所を検出し、その後ウォブルシンク領域580の直後に記録された情報から順次解読していく。物理セグメント順番情報724より先行した位置に物理セグメントブロックアドレスが有る場合には、先に物理セグメントブロックアドレスを解読し、物理セグメント順番情報724を解読せずに所定の物理セグメントブロックアドレスか否かを判定できるため、ウォブルアドレスを用いたアクセス性が向上すると言う効果が有る。
セグメント情報727内はタイプ識別情報721と予約領域723から構成されている。タイプ識別情報721は物理セグメント内の変調領域の配置場所を表し、このタイプ識別情報721の値が
“0b”の場合は後述する図53(b)の状態を表し、
“1b”の場合には後述する図53(c)または(d)の状態を表している。
図51(c)においてウォブルシンク領域580の直後にタイプ識別情報721が配置されている所にも本実施形態の特徴が有る。上述したように図9内に示したウォブル信号検出部135内ではまず始めに図51(c)に示したウォブルシンク領域580の場所を検出し、その後ウォブルシンク領域580の直後に記録された情報から順次解読していく。従って、ウォブルシンク領域580の直後にタイプ識別情報721を配置する事で即座に物理セグメント内の変調領域の配置場所確認が行えるため、ウォブルアドレスを用いたアクセス処理の高速化が実現できる。
本実施形態の追記形情報記憶媒体ではグルーブ領域の上に記録マークを形成し、CLV記録方式を採用している。この場合隣接トラック間でのウォブルスロット位置がずれるため、ウォブル再生信号に隣接ウォブル間の干渉が乗り易い事を説明した。この影響を除去するため、本実施形態では変調領域が隣接トラック間で互いに重ならないように変調領域をずらす工夫をしている。
具体的には図52に示すように変調領域の配置場所に1次配置場所(Primary Position)701と2次配置場所702(Secondary Position)を設定可能とする。基本的には配置場所として仮に全て1次配置場所で配置を行い、隣接トラック間で変調領域が一部重なる場所が生じたら部分的に2次配置場所にずらす方法を取る。例えば、図52においてグルーブ領域505の変調領域を1次配置場所に設定すると隣接するグルーブ領域502の変調領域とグルーブ領域506の変調領域とが一部重なってしまうので、グルーブ領域505の変調領域を2次配置場所にずらす。これにより、ウォブルアドレスからの再生信号における隣接トラックの変調領域間の干渉を防止し、安定にウォブルアドレスを再生できる効果が生じる。
変調領域に関する具体的な1次配置場所と2次配置場所は同一のウォブルデータユニット内配置場所の切り替えにより設定する。本実施形態では変調領域より無変調領域の占有率を高く設定しているので、同一のウォブルデータユニット内での配置変更のみで1次配置場所と2次配置場所の切り替えが行える。具体的には1次配置場所(Primary Position)701では図50(a)、(c)に示すように1個のウォブルデータユニット内の先頭位置に変調領域598を配置し、2次配置場所702(Secondary Position)では図50(b)、(d)に示すように1個のウォブルデータユニット560〜571内の後半位置に変調領域598を配置する。
図50で示した1次配置場所(Primary Position)701と2次配置場所702(Secondary Position)の適応範囲すなわち、1次配置場所または2次配置場所が連続的に続く範囲を本実施形態では物理セグメントの範囲に規定している。すなわち、図53に示すように同一物理セグメント内での変調領域の配置パターンを(b)から(d)までの3種類(複数種類)持たせ、物理セグメントのタイプ識別情報721の情報から物理セグメント内での変調領域の配置パターンを図9のウォブル信号検出部135が識別すると、同一物理セグメント内の他の変調領域598の配置場所が事前に予測できる。その結果、次に来る変調領域検出の事前準備が出来るので変調領域での信号検出(判別)精度を上げる事ができると言う効果が有る。
図53(b)は物理セグメント内のウォブルデータユニットの配置を示し、各枠内に記述された番号は同一物理セグメント内のウォブルデータユニット番号を示す。0番目のウォブルデータユニットは1段目に示すようにシンクフィールド711と呼び、このシンクフィールド内の変調領域にウォブルシンク領域が存在している。1番目から11番目のウォブルデータユニットをアドレスフィールド712と呼び、このアドレスフィールド712内の変調領域にアドレス情報が記録される。更に、12番目から16番目のウォブルデータユニット内はウォブルパターンが全てNPWのユニティフィールド713になっている。
図53(b)、(c)、(d)に記載された“P”のマークはウォブルデータユニット内で変調領域が1次配置場所になっている事を示し、“S”のマークはウォブルデータユニット内で変調領域が2次配置場所になっている事を示している。“U”のマークはウォブルデータユニットがユニティフィールド713に含まれ、変調領域が存在しない事を示している。図53(b)に示した変調領域の配置パターンは物理セグメント内全てが1次配置場所(Primary Position)になっている事を示し、図53(c)に示した変調領域の配置パターンは物理セグメント内全てが2次配置場所(Secondary Position)になっている事を示す。図53(d)は同一物理セグメント内で1次配置場所と2次配置場所が混合されており、0番目から5番目のウォブルデータユニット内で変調領域が1次配置場所になり、6番目から11番目のウォブルデータユニット内で変調領域が2次配置場所になる。図53(d)のようにシンクフィールド711とアドレスフィールド712を合わせた領域に対して1次配置場所と2次配置場所を半々にする事で細かく隣接トラック間での変調領域の重なりを防止する事が出来る。
以上説明したウォブル変調によりアドレス情報が事前に記録されている物理セグメントもしくは物理セグメントブロックに対して前述したデータセグメントデータを記録する方法について説明する。書替え形情報記憶媒体及び追記形情報記憶媒体いずれも連続してデータを記録する単位としてレコーディングクラスター単位でデータを記録する。図54にこのレコーディングクラスター内のレイアウトを示す。レコーディングクラスター540、542内はデータセグメントが1個以上(整数個)連続して繋がり、その始めか終わりに拡張ガードフィールド528、529が設定されている。レコーディングクラスター540、542単位で新たにデータを追記または書き替えした時に隣接したレコーディングクラスターとの間に隙間が出来ないように、隣接したレコーディングクラスターとの間に物理的にオーバーラップさせて一部重ね書きさせるために拡張ガードフィールド528、529がレコーディングクラスター540、542内に設定される。レコーディングクラスター540、542内に設定される拡張ガードフィールド528、529の位置として図54(a)の実施形態ではレコーディングクラスター540の最後に拡張ガードフィールド528を配置している。この方法を用いた場合には図55(a)に示すポストアンブル領域526の後ろに拡張ガードフィールド528が来るので、特に書替え形情報記憶媒体では書替え時に誤ってポストアンブル領域526を破壊する事は無く、書替え時のポストアンブル領域526の保護が行え、データ再生時のポストアンブル領域526を用いた位置検出の信頼性が確保できる。他の実施形態として図54(b)のようにレコーディングクラスター542の最初に拡張ガードフィールド529を配置する事も出来る。この場合には図54(b)と図55を組み合わせて分かるようにVFO領域522の直前に拡張ガードフィールド529が来るので、書替えまたは追記した時にVFO領域522を充分長く取る事が出来るためデータフィールド525再生時の基準クロックに関するPLL引き込み時間を長く取れ、データフィールド525内に記録されたデータの再生信頼性を向上させる事が出来る。このように書き替え単位を表すレコーディングクラスターが1個以上のデータセグメントから構成される構造にする事で少ないデータ量を何度も書き替える事の多いPCデータ(PCファイル)と多量のデータを一度に連続して記録するAVデータ(AVファイル)の同一情報記憶媒体への混在記録処理を容易に出来ると言う効果が生まれる。すなわち、パーソナルコンピュータ用に使われるデータは比較的少量のデータを何度も書き替える場合が多い。従って、書替え又は追記のデータ単位を極力小さく設定するとPCデータに適した記録方法になる。本実施形態では図32に示すように32物理セクタからECCブロックが構成されので、ECCブロックを1個のみ含むデータセグメント単位で書き替え又は追記を行うことが効率良く書替え又は追記を行う最小の単位となる。従って、書替え単位または追記単位を表す記録用クラスター内に1個以上のデータセグメントが含まれる本実施形態における構造がPCデータ(PCファイル)に適した記録構造となる。AV(Audio Video)データでは非常に多量な映像情報や音声情報が途中で途切れる事無く連続的に記録される必要が有る。この場合、連続的に記録されるデータは1個のレコーディングクラスターとしてまとめて記録される。AVデータ記録時に1個のレコーディングクラスターを構成するデータセグメント毎にランダムシフト量やデータセグメント内の構造、データセグメントの属性などを切り替えると、切り替わり処理の時間が掛かり、連続記録処理が難しくなる。本実施形態では図54に示すように同一形式(属性やランダムシフト量を変えず、データセグメント間に特定情報を挿入する事無く)のデータセグメントを連続して並べてレコーディングクラスターを構成する事で多量のデータを連続して記録するAVデータ記録に適した記録フォーマットを提供できるだけでなく、レコーディングクラスター内の構造の簡素化を果たして記録制御回路と再生検出回路の簡素化を達成して情報記録再生装置または情報再生装置の低価格化を可能とする。図54に示されたレコーディングクラスター540内の(拡張ガードフィールド528を除いた)データセグメントが連続して並んだデータ構造は図45(b)に示した再生専用情報記憶媒体及び図45(c)に示した追記形情報記憶媒体と全く同じ構造をしている。このように再生専用形/追記形/書替え形に依らず全ての情報記憶媒体で共通のデータ構造になっているため、媒体の互換性が確保され、互換性が確保された情報記録再生装置または情報再生装置の検出回路の兼用化が図れ、高い再生信頼性が確保できると共に低価格化の実現が可能となる。
図54の構造を取る事で必然的に同一レコーディングクラスター内では全てのデータセグメントのランダムシフト量が一致する。書替え形情報記憶媒体ではランダムシフトさせてレコーディングクラスターを記録する。本実施形態では同一レコーディングクラスター540内では全てのデータセグメントのランダムシフト量が一致しているので同一レコーディングクラスター540内で異なるデータセグメントを跨って再生した場合にVFO領域(図55の522)での同期合わせ(位相の設定し直し)が不要となり連続再生時の再生検出回路の簡素化と再生検出の高い信頼性確保が可能となる。
書替え形情報記憶媒体に記録する書替え可能なデータ記録方法を図55に示す。以下に書替え形情報記憶媒体を中心に説明するが、追記形情報記憶媒体に対する追記方法も基本的に同じ方法を取っている。本実施形態の書替え形情報記憶媒体におけるレコーディングクラスター内のレイアウトは図54(a)のレイアウトを取る例を使って説明するが、本実施形態においてはそれに限らず書替え形情報記憶媒体に対して図54(b)に示したレイアウトを採用しても良い本実施形態では書替え可能なデータに関する書替えは図55(b)及び(e)に示すレコーディングクラスター540、541単位で行われる。1個の記録用クラスターは後述するように1個以上のデータセグメント529〜531と、最後に配置される拡張ガードフィールド528から構成される。すなわち、1個の記録用クラスター531の開始はデータセグメント531の開始位置に一致し、VFO領域522から始まる。複数のデータセグメント529、530を連続して記録する場合には、図55(b)、(c)に示すように同一のレコーディングクラスター531内に複数のデータセグメント529、530が連続して配置されると共に、データセグメント529の最後に存在するバッファ領域547と次のデータセグメントの最初に存在するVFO領域532が連続してつながっているため両者間の(記録時の記録用基準クロックの)位相が一致している。連続記録が終了した時にはレコーディングクラスター540の最後位置に拡張ガード領域528を配置する。この拡張ガード領域528のデータサイズは変調前のデータとして24データバイト分のサイズを持っている。
図55(a)と図55(c)の対応から分かるように書替え形のガード領域461、462の中にポストアンブル領域546、536、エキストラ領域544、534、バッファ領域547、537、VFO領域532、522、プリシンク領域533、523が含まれ、連続記録終了場所に限り拡張ガードフィールド528が配置される。書替え時の重複箇所541で拡張ガード領域528と後側のVFO領域522が一部重複するように書き換えまたは追記を行う所に本実施形態の特徴があるそのように一部重複させて書替えまたは追記する事でレコーディングクラスター540、541間に隙間(記録マークが形成されない領域)の発生を防止し、片面2記録層の記録可能な情報記憶媒体における層間クロストークを除去する事で安定した再生信号を検出できる。
本実施形態における1個のデータセグメント内の書替え可能なデータサイズは
67+4+77376+2+4+16=77469(データバイト)
となる。1個のウォブルデータユニット560は
6+4+6+68=84(ウォブル)
で構成されており、17個のウォブルデータユニットで1個の物理セグメント550を構成し、7個の物理セグメント550〜556の長さが1個のデータセグメント531の長さに一致しているので1個のデータセグメント531の長さ内には
84×17×7=9996(ウォブル)
が配置される。従って、上記の式から1個のウォブルに対して
77496÷9996=7.75(データバイト/ウォブル)が対応する。
図56に示すように物理セグメントの先頭位置から24ウォブル以降に次のVFO領域522と拡張ガードフィールド528の重なり部分が来るが物理セグメント550の先頭から16ウォブルまではウォブルシンク領域580となるが、それ以降68ウォブル分は無変調領域590内になる。したがって24ウォブル以降の次のVFO領域522と拡張ガードフィールド528が重なる部分は無変調領域590内となる。このように物理セグメントの先頭位置24ウォブル以降にデータセグメントの先頭位置が来るようにする事で重複箇所が無変調領域590内になるだけでなくウォブルシンク領域580の検出時間と記録処理の準備時間が相応に取れるので、安定でかつ精度の良い記録処理を保証できる。
本実施形態における書替え形情報記憶媒体の記録膜は相変化記録膜を用いている。相変化記録膜では書き替え開始/終了位置近傍で記録膜の劣化が始まるので、同じ位置での記録開始/記録終了を繰り返すと記録膜の劣化による書き替え回数の制限が発生する。本実施形態では上記問題を軽減するため、書き替え時には図56に示すようにJm+1/12データバイト分ずらし、ランダムに記録開始位置をずらしている。
図55(c)、(d)では基本概念を説明するため拡張ガードフィールド528の先頭位置とVFO領域522の先頭位置が一致しているが、本実施形態では厳密に言うと図56のようにVFO領域522の先頭位置がランダムにずれている。
現行の書替え形情報記憶媒体であるDVD−RAMデイスクでも記録膜として相変化記録膜を使用し、書替え回数向上のためにランダムに記録開始/終了位置をずらしている。現行のDVD−RAMディスクでのランダムなずらしを行った時の最大ずらし量範囲は8データバイトに設定している。現行のDVD−RAMディスクでの(ディスクに記録される変調後のデータとして)チャネルビット長は平均0.143μmに設定されている。本実施形態の書替え形情報記憶媒体実施形態ではチャネルビットの平均長さは表7から(0.087+0.093)÷2=0.090(μm)となる。物理的なずらし範囲の長さを現行のDVD−RAMディスクに合わせた場合には、本実施形態でのランダムなずらし範囲として最低限必要な長さは上記の値を利用して
8バイト×(0.143μm÷0.090μm)=12.7バイト
となる。本実施形態では再生信号検出処理の容易性を確保するため、ランダムなずらし量の単位を変調後の“チャネルビット”に合わせた。本実施形態では変調に8ビットを12ビットに変換するETM変調(Eight to Twelve modulation)を用いているので、ランダムなずらし量を表す数式表現としてデータバイトを基準として
Jm/12(データバイト)
で表す。Jmの取り得る値としては上式の値を用いて
12.7×12=152.4
なので、Jmは0から152となる。以上の理由から上式を満足する範囲で有ればランダムなずらしの範囲長さは現行DVD−RAMディスクと一致し、現行DVD−RAMディスクと同様な書き替え回数を保証できる。本実施形態では現行以上の書き替え回数を確保するため、最低限必要な長さに対してわずかにマージンを持たせ、
ランダムなずらし範囲の長さを14(データバイト)
に設定した。これらの式から14×12=168なので
Jmの取り得る値は0〜167
と設定した。上記のようにランダムシフト量をJm/12(0≦Jm≦154)より大きな範囲とする事で、ランダムシフト量に対する物理的な範囲の長さが現行DVD−RAMと一致するため、現行DVD−RAMと同様な繰り返し記録回数を保証できると言う効果が有る。
図55において記録用クラスター540内でのバッファ領域547とVFO領域532の長さは一定となっている。図54(a)からも明らかなように同一の記録用クラスター540内では全てのデータセグメント529、530のランダムずらし量Jmは至る所同じ値になっている。内部に多量のデータセグメントを含む1個の記録用クラスター540を連続して記録する場合には、記録位置をウォブルからモニターしている。すなわち、図51に示すウォブルシンク領域580の位置検出をしたり、図50の無変調領域592、593内ではウォブルの数を数えながら情報記憶媒体上の記録位置の確認を記録と同時に行う。この時にウォブルのカウントミスや情報記憶媒体を回転させている回転モータの回転ムラによりウォブルスリップ(1ウォブル周期分ずれた位置に記録する事)が生じ、情報記憶媒体上の記録位置がずれる事が希に有る。本実施形態の情報記憶媒体では上記のように生じた記録位置ずれが検出された場合には図55の書替え形のガード領域461内で調整を行い、記録タイミングの修正を行う所に特徴が有る。ここでは、Hフォーマットに付いて説明しているがこの基本的な考え方は後述するようにBフォーマットでも採用されている。図55においてポストアンブル領域546、エキストラ領域544、プリシンク領域533ではビット欠落やビット重複が許容できない重要な情報が記録されるが、バッファ領域547、VFO領域532では特定パターンの繰り返しになっているため、この繰り返し境界位置を確保している限りでは1パターンのみの欠落や重複が許容される。従って、本実施形態ではガード領域461の中で特にバッファ領域547またはVFO領域532で調整を行い、記録タイミングの修正を行う。
図56に示すように本実施形態では位置設定の基準となる実際のスタートポイント位置はウォブル振幅“0”の(ウォブルの中心)位置と一致するように設定される。しかし、ウォブルの位置検出精度は低いので本実施形態では図56内の“±1max”と記載されているように、実際のスタートポイント位置は最大
±1データバイト”までのずれ量
を許容している。
図55および図56においてデータセグメント530でのランダムシフト量をJmとし(上述したように記録用クラスター540内は全てのデータセグメント529のランダムシフト量は一致する)、その後に追記するデータセグメント531のランダムシフト量をJm+1とする。上記式に示すJmとJm+1の取り得る値として例えば、中間値を取り、Jm=Jm+1=84であり、実際のスタートポイントの位置精度が充分高い場合には図55に示すように拡張ガードフィールド528の開始位置とVFO領域522の開始位置が一致する。
これに対してデータセグメント530が最大限後位置に記録され、後で追記または書き替えられるデータセグメント531が最大限前位置に記録された場合にはVFO領域522の先頭位置がバッファ領域537内へ最大15データバイトまで入り込む事が有る。バッファ領域537の直前のエキストラ領域534には特定の重要情報が記録されている。従って、本実施形態において
バッファ領域537の長さは15データバイト以上
必要となる。図55に示した実施形態では1データバイトの余裕を加味し、バッファ領域537のデータサイズを16データバイトに設定している。
ランダムシフトの結果、拡張ガード領域528とVFO領域522の間に隙間が生じると片面2記録層構造を採用した場合にその隙間による再生時の層間クロストークが発生する。そのため、ランダムシフトを行っても必ず拡張ガードフィールド528とVFO領域522の一部が重なり、隙間が発生しない工夫がされている。従って、本実施形態において拡張ガードフィールド528の長さは15データバイト以上に設定する必要が有る。後続するVFO領域522は71データバイトと充分に長く取って有るので、拡張ガードフィールド528とVFO領域522の重なり領域が多少広くなっても信号再生時には支障が無い(重ならないVFO領域522で再生用基準クロックの同期を取る時間が充分確保されるため)。従って、拡張ガードフィールド528は15データバイトよりもより大きな値に設定する事が可能である。連続記録時に希にウォブルスリップが発生し、1ウォブル周期分記録位置がずれる場合が有る事を既に説明した。1ウォブル周期は7.75(≒8)データバイトに相当するので本実施形態では
拡張ガードフィールド528の長さを(15+8=)23データバイト以上
に設定している。図55に示した実施形態ではバッファ領域537と同様に1データバイトの余裕を加味し、拡張ガードフィールド528の長さを24データバイトに設定している。
図55(e)において記録用クラスター541の記録開始位置を正確に設定する必要が有る。本実施形態の情報記録再生装置では書替え形または追記形情報記憶媒体に予め記録されたウォブル信号を用いてこの記録開始位置を検出する。図50に示したようにウォブルシンク領域580以外は全て4ウォブル単位でパターンがNPWからIPWに変化している。それに比べてウォブルシンク領域580ではウォブルの切り替わり単位が部分的に4ウォブルからずれているため、ウォブルシンク領域580が最も位置検出し易い。そのため、本実施形態の情報記録再生装置ではウォブルシンク領域580位置を検出後、記録処理の準備を行い、記録を開始する。そのためレコーディングクラスター541の開始位置はウォブルシンク領域580の直後の無変調領域590の中に来る必要が有る。図56ではその内容を示している。物理セグメント(Physical segment)の切り替わり直後にウォブルシンク領域580が配置されている。ウォブルシンク領域580の長さは16ウォブル周期分になっている。更に、そのウォブルシンク領域580を検出後、記録処理の準備にマージンを見越して8ウォブル周期分必要となる。従って、図56に示すようにレコーディングクラスター541の先頭位置に存在するVFO領域522の先頭位置がランダムシフトを考慮していも物理セグメントの切り替わり目位置から24ウォブル以上後方に配置される必要が有る。
図55に示すように書替え時の重複箇所541では何度も記録処理が行われる。書替えを繰り返すとウォブルグルーブまたはウォブルランドの物理的な形状が変化(劣化)し、そこからのウォブル再生信号品質が低下する。本実施形態では図55(f)に示すように書替え時あるいは追記時の重複箇所541がウォブルシンク領域580やウォブルアドレス領域586内に来るのを避け、無変調領域590内に記録されるように工夫している。無変調領域590は一定のウォブルパターン(NPW)が繰り返されるだけなので、部分的にウォブル再生信号品質が劣化しても前後のウォブル再生信号を利用して補間できる。このように書替え時あるいは追記時の重複箇所541位置を無変調領域590内に来るように設定したため、ウォブルシンク領域580またはウォブルアドレス領域586内での形状劣化によるウォブル再生信号品質の劣化を防止し、ウォブルアドレス情報610からの安定なウォブル検出信号を保証できると言う効果が生じる。
次に、追記形情報記憶媒体上に記録される追記形データの追記方法の実施形態を図57に示す。物理セグメントブロックの境界位置から24ウォブル後方の位置が書き込み開始ポイントになっている。ここから新たに追記されるデータは71データバイト分のVFO領域を形成した後、ECCブロック内のデータ領域(データフィールド)が記録される。この書き込み開始ポイントと直前に記録した記録データのバッファ領域537の終了位置が一致し、それより8データバイト分の長さだけ拡張ガードフィールド528が形成された後ろが追記データの記録終了位置(書き込み終了ポイント)になる。従って、データを追記した場合には、直前に記録されている拡張ガードフィールド529と新たに追記するVFO領域の部分で8データバイト分だけ重複記録される。
第8章 Bフォーマットの説明
Bフォーマットの光ディスク仕様
表21は青紫色レーザ光源を使うBフォーマットの光ディスクの仕様を示す。Bフォーマットの光ディスクは書き換え型(REディスク)と、再生専用(ROMディスク)と、追記型(Rディスク)に分類されるが、表21に示すように、標準のデータ転送速度以外はどのタイプでも共通の仕様であり、異なるタイプに共通の互換性のあるドライブの実現が容易である。現行DVDでは厚さが0.6nmのディスク基板2枚を張り合わせているのに対して、Bフォーマットでは、ディスクでは厚さが1.1nmのディスク基板上に記録層を設け、0.1nmの透明なカバー層で覆う構造である。片面2層媒体も規定されている。
[誤り訂正方式]
Bフォーマットではピケット(picket)コードと呼ばれるバースト誤りを効率的に検知できる誤り訂正方式を採用している。ピケットは一定間隔でメインデータ(ユーザデータ)の列に挿入される。メインデータは強力で効率的なリードソロモン符号により保護されている。ピケットはメインデータとは別の第2の非常に強力で効率的なリードソロモン符号により保護されている。復号の際は、先ずピケットが誤り訂正される。訂正情報はメインデータ内のバーストエラーの位置を推定するために使うことができる。これらの位置のシンボルはメインデータのコードワードを訂正する時に利用されるErasureと呼ばれるフラグが立てられる。
図58はピケットコード(誤り訂正ブロック)の構成を示す。Bフォーマットの誤り訂正ブロック(ECCブロック)は、Hフォーマットと同様に64Kバイトのユーザデータを単位に構成している。このデータは非常に強固なリードソロモン符号LDC(long distance code)によって保護されている。
LCDは304個のコードワードから成る。それぞれのコードワードは216個の情報シンボルと32個のパリティシンボルから成る。つまりコードワード長は248(=216+32)シンボルである。これらのコードワードはECCブロックの縦方向に2×2ごとにインターリーブしてあり、横152(=304÷2)バイト×縦496(=2×216+2×32)バイトのECCブッロクを構成している。
ピケットのインターリーブ長は155×8バイト(496バイト中に制御コードの訂正系列が8個ある)、ユーザデータのインターリーブ長は155×2バイトである。縦方向の496バイトは31行毎が記録単位とされる。メインデータのパリティシンボルは2グループのパリティシンボルが1行毎に入れ子となっている。
Bフォーマットでは、このECCブッロクに「柱」のような形で一定の間隔で埋め込むピケットコードを採り入れた。その誤りの状況を見ることよってバースト誤りを検知する。具体的には、1つのECCブロッの中に4本のピケット列を等間隔に配置した。ピケットの中にはアドレスもある。ピケットは独自のパリティを含む。
ピケット列内のシンボルも訂正する必要があるので、右3列のピケットはBIS(burst indicator subcode)によって誤り訂正符号化し、保護している。このBISは30個の情報シンボルと32個のパリティシンボルから成り、コードワード長は62シンボルである。情報シンボルとパリティシンボルの比率から、極めて強力な訂正能力があることが分かる。
BISのコードワードは、それぞれ496バイトで構成している3列のpicket列にインタリ一ブして格納する。ここで、LDCとBISの両コードが持つ1コードワード当たりのパリティシンボル数は両者とも32個で等しい。これは、1つの共通のリードソロモン復号器でLDCもBISも復号できることを意味している。
データを復号する際は、まずBISによってピケット列の訂正処理を行う。それによってバースト誤りの場所を推定し、その場所にErasureと呼ぶフラグを立てておく。これをメインデータのコードワードを訂正するときに利用する。
なお、BISコードで保護した情報シンボルは、メインデータとは別の付加的なデータチャネル(サイドチャネル)を形成している。このサイドチャネルにはアドレス情報を格納してある。アドレス情報の誤り訂正は、メインデータとは別に用意した専用のリードソロモン符号を使う。このコードは5つの情報シンボルと4つのパリティシンボルから成る。これによって、メインデータの誤り訂正体系とは独立した、高速かつ信頼性の高いアドレスの把握を可能とした。
[アドレスフォーマット]
REディスクにはCD−Rディスクと同様に記録トラックとして渦巻気のように極めて細い溝が刻まれている。記録マークを書き込むのは、その凹凸のうち、レーザ光の入射方向から見て凸の部分だけである(オングルーブ記録)。
ディスク上の絶対位置を示すアドレス情報はCD−Rディスクなどと同じようにこのグルーブをわずかにウォブル(蛇行、揺動)させることによって埋め込んでいる。信号を変調し、蛇行の形状や周期などに“1”や“0”を表すデジタルデータを載せている。図59にウォブル方式を示す。蛇行の振幅はディスク半径方向にわずか±10nmである。56ウォブル(ディスク上の長さで約0.3mm)がアドレス情報1ビット=ADIPユニット(後述)となる。
微細な記録マークをほとんど位置ズレなく書き込むには、安定で正確な記録用クロック信号を生成する必要がある。そこで、ウォブルの主な周波数成分が単一で、かつグルーブがスムーズに連続する方式に注目した。周波数が単一であれば、フィルタで抽出したウォブル成分から容易に安定な記録用クロック信号を生成できる。
この単一周波数をベースとしたウォブルにタイミング情報やアドレス情報を付加する。そのために施すのが、「変調」である。この変調方式には、光ディスク固有のさまざまな歪みがあっても誤りを起こしにくいものが選ばれる。
光ディスクで発生するウォブル信号の歪みは、原因別に整理すると次の4つとなる。
(1)ディスク雑音:製造時にグルーブの部分に生じた表面形状の乱れ(表面粗さ)、記録膜で発生する雑音、記録したデータから漏れてくるクロストーク雑音など。
(2)ウォブルシフト:記録再生装置においてウォブル検出位置が正規位置より相対的にズレることで検出感度が低下する現象。シーク動作の直後などに発生しやすい。
(3)ウォブルビート:記録したいトラックと隣接トラックのウォブル信号の間に発生するクロストーク。回転制御方式がCLV(constant linear velocity)において、隣接ウォブルの角周波数にズレがある場合に起こる。
(4)欠陥:ディスク表面のゴミや傷による局所欠陥によって生じる。
REディスクでは、これら異なる4タイプの信号歪みのすべてに対して高い耐性を備えることを条件に、異なる2つのウォブル変調方式を、相乗効果を生み出す形で組み合わせている。一般に1種類の変調方式だけでは達成が困難な、4タイプの信号歪みに対する耐性が副作用なしに得られるからである。
2つの方式とは、MSK(minimum shift keying)方式とSTW(saw tooth wobble)方式である(図60)。STWの名前は、その波形が「のこぎりの歯形」に似ていることから命名されている。
REディスクでは、合計56個のウォブルで“0”または“1”の1ビットを表現する。この56個をひとまとまりの単位、すなわちADIP(address inpre groove)ユニットと呼ぶ。このADIPユニットを83個連続して読み出すと、1つのアドレスを示すADIPワードとなる。ADIPワードは、24ビット長のアドレス情報と12ビット長の補助データ、リファレンス(校正)領域、誤り訂正用データなどから成る。REディスクでは、メインデータを記録するRUB(recording unit block、64Kバイト単位)1つ当たりに3個のADIPワードを割り当てた。
56ウォブルから成るADIPユニットは、前半と後半に大きく分けられる。ウォブル番号が0番〜17番までの前半はMSK方式、18番から55番の後半はSTW方式で、次のADIPユニットへと滑らかにつないでいる。1つのADIPユニットで1ビットを表現できる。“0”か“1”かによって、先ず前半ではMSK方式の変調を施したウォブルの位置を変え、後半ではのこぎり波の形状の向きを変えて区別している。
MSK方式の前半部分は、さらにMSK変調を施した3個のウォブルの領域と、モノトーンウォブルcos(wt)の領域に分かれる。まず0番から2番までの3個のウォブルは、どのADIPユニットでも必ず、MSK変調を施したもので始まる。これをビットシンク(ADIPユニットの開始位置を示す識別子)と呼ぶ。
それが過ぎると、次にモノトーンウォブルの連続になる。そして次に再び現れるMSK変調を施した3個のウォブルまで何個のモノトーンウォブルがあるかで、データを表す。具体的には11個の場合は“0”で、9個の場合は“1”である。ウォブル2個分のズレでデータを区別している。
MSK方式は基本波の局所的な位相変化を利用している。言い換えると、位相変化が無い領域は支配的である。この領域はSTW方式でも、基本波の位相が変化しない場所として有効に利用される。
MSK変調を施した領域はウォブル3個長の長さがある。1個目のところは、モノトーンウォブルに対して周波数を1.5倍にして(cos(1.5wt))、2個目はモノトーンウォブルと同じ周波数とし、3個目は再び周波数を1.5倍にして、位相を元に戻す。こうすると2個目(中央)のウォブルは、モノトーンウォブルに対してちょうど極性が反転し、これが検出される。1個目の始点と3個目の終点は、モノトーンウォブルとぴったり位相が合っている。従って、不連続部がない滑らかな接続が可能である。
一方、後半のSTW方式の波形は2種類ある。1つは、ディスク外周側に向かって急峻に立ち上がり、ディスク中心側へ緩い傾斜で戻ってくる波形で、もう1つは逆に緩い傾斜で立ち上がって急峻に戻る波形である。前者はデータ“0”を、後者はデーダ“1”を表す。1つのADIPユニットの中でMSK方式とSTW方式の両方を使って同じビットを指し示すことで、データの信頼性を増している。
STW方式を数学的に表現すると基本波cos(wt)に、振幅が1/4の2次高調波sin(2wt)を加算または減算したものといえる。ただし、STW方式が“0”と“1”のどちらを表すものであっても、ゼロクロス点はモノトーンウォブルと同じである。つまり、MSK方式のモノトーンウォブルの部分と共通の基本波成分からクロック信号を抽出するにあたり、その位相に全く影響を与えない。
以上のようにMSK方式とSTW方式は、互いに相手の弱点を補うように働く。
図61はADIPユニットを示す。アドレスウォブルフォーマットの基本ユニットはADIPユニットである。56NML(公称ウォブル長:Nominal Wobble Length)の各グループがADIPユニットと呼ばれる。1NMLは69チャンネルビットに等しい。異なるタイプのADIPユニットは変調ウォブル(MSKマーク)をADIPユニット内の特定の位置に挿入することにより定義される(図60参照)。83個のADIPユニットが1個のADIPワードとされる。ディスクに記録されるデータの最小区分は連続する3個のADIPワードに正確に一致する。各ADIPワードは36情報ビット(そのうちの24ビットはアドレス情報ビットである)を含む。
表22、表23は1個のADIPワードの構成を示す。
1個のADIPワードは15個のニブルを含み、表24に示すように、9個のニブルが情報ニブルである。他のニブルはADIPの誤り訂正のために使われる。15個のニブルは[15,9,7]のリードソロモン符号のコードワードを構成する。
コードワードは9個の情報ニブルからなり、6個の情報ニブルはアドレス情報を記録し、3個の情報ニブルは補助情報(例えば、ディスク情報)を記録する。
[15,9,7]のリードソロモン符号は非体系的であり、事前の知識が“Informed Decoding”によるハミング距離を増加させることができる。“Informed Decoding”とは全てのコードワードが距離7を有し、ニブルn0の全てのコードワードが共通に距離8を有するので、n0に関する事前の知識がハミング距離を増加する。ニブルn0はレイヤインデックス(3ビット)と物理セクタ番号のMSBからなる。ニブルn0が既知であれば、距離が7から8に増加する。
図62はトラック構造を示す。ここでは、片面2層構造のディスクの第1層(第1層はレーザ光源から遠い層とする)と第2層のトラック構造を説明する。プッシュプル方式のトラッキングを可能とするためにグルーブが設けられている。複数のタイプのトラック形状が用いられている。第1層レイヤL0と第2層レイヤL1はトラッキング方向が異なり、第1層では図の左から右がトラッキング方向であり、第2層では右から左がトラッキング方向となる。図の左側がディスクの内周であり、右側が外周である。第1層のストレートグルーブからなるBCA領域と、HFM(High Frequency Modulated)グルーブからなるプリ記録領域と、書き換え領域内のウォブルグルーブ領域とがHフォーマットのリードイン領域に相当し、第2層の書き換え領域内のウォブルグルーブ領域と、HFM(High Frequency Modulated)グルーブからなるプリ記録領域と、ストレートグルーブからなるBCA領域とがHフォーマットのリードアウト領域に相当する。ただし、Hフォーマットでは、リードイン領域、リードアウト領域はグルーブ方式ではなくプレピット方式で記録されている。HFMグルーブは層間クロストークが生じないように、第1層と第2層とで位相をずらしている。
図63は記録フレームを示す。図58に示したように、ユーザデータは64Kバイトの区分毎に記録される。ECCクラスタの各行はフレームシンクビットとDCコントロールビットを付加することにより記録フレームに変換される。各行の1240ビット(155バイト)のストリームは次のように変換される。1240ビットのストリームは先頭に25ビットのデータが配置され、以下は45ビットのデータに分割され、20ビットのフレームシンクが25ビットのデータの前に付加され、25ビットのデータの後ろに1ビットのDCコントロールビットが付加され、以下同様に45ビットのデータの後ろに1ビットのDCコントロールビットが付加される。最初の25ビットのデータを含むブロックがDCコントロールブロック#0とされ、以下、45ビットのデータと1ビットのDCコントロールビットがDCコントロールブロック#1、#2、…#27とされる。496個の記録フレームが物理クラスタと称される。
記録フレームは2/3のレートで1−7PP変調される。先頭のフレームシンクを除いた1268ビットに変調規則を適用し、1902チャンネルビットとし、それ全体の先頭に30ビットのフレームシンクを付加する。すなわち、1932チャンネルビット(=28NML)が構成される。チャンネルビットはNRZI変調されてディスクに記録される。
フレームシンクの構造
各物理クラスタは16個のアドレスユニットを含む。各アドレスユニットは31個の記録フレームを含む。各記録フレームは30チャンネルビットのフレームシンクで始まる。フレームシンクの最初の24ビットは1−7PP変調規則に違反する(9Tの2倍のランレングスを含む)。1−7PP変調規則とは(1,7)PLL変調方式を用い、Parity Preserve/ProhibitPMTR(repeated minimum transition runlength)を行うものである。Parity Preserveは符号のいわゆるDC(直流)成分の制御(符号のDC成分を減らす)を行う。フレームシンクの残りの6ビットは変化し、7フレームシンクFS0、FS1、…FS6を識別する。これらの6ビットの記号は偏移量に関する距離が2以上であるように選ばれる。
7個のフレームシンクは16個のアドレスユニットだけよりも詳細な位置情報を得ることを可能とする。もちろん、7個の異なるフレームシンクだけでは31個の記録フレームを識別するのが不十分である。したがって、31個の記録フレームから、各フレームが自身のフレームシンクと4個の先行するフレームのいずれかのフレームシンクとの組み合わせにより識別できるように、7個のフレームシンクシーケンスが選択される。
図64は記録ユニットブロックRUBの構造を示す。記録の単位はRUBと呼ばれる。同図(a)に示すように、RUBは40ウォブルのデータ・ラン・インと、496×28ウォブルの物理クラスタと、16ウォブルのデータ・ラン・アウトからなる。データ・ラン・インとデータ・ラン・アウトは完全にランダムな上書きを容易にするために十分なデータバッファリングを可能とする。RUBは1個1個記録されてもよいし、あるいは同図(b)に示すように複数のRUBが連続して記録されてもよい。
データ・ラン・インは主に3T/3T/2T/2T/5T/5Tの繰り返しパターンからなり、この中に2つのフレームシンク(FS4、FS6)が次の記録ユニットブロックの開始位置を示すインジケータとして互いに40cbs離間している。
データ・ラン・アウトはFS0で開始し、FS0の次にデータの終了を示す9T/9T/9T/9T/9T/9Tパターンが続き、主に3T/3T/2T/2T/5T/5Tの繰り返しパターンからなる。
図65はデータ・ラン・インとデータ・ラン・アウトの構造である。
図66はウォブルアドレスに関するデータの配置を示す図である。物理クラスタは496フレームである。データ・ラン・インとデータ・ラン・アウトの合計の56ウォブル(NWL)は2×28ウォブルであり、2個の記録フレームに相当する。
1RUB=496+2=498記録フレーム
1ADIPユニット=56NWL=2記録フレーム
83ADIPユニット=1ADIPワード(1ADIPアドレスを含む)
3ADIPワード=3×83ADIPユニット
3ADIPワード=3×83×2=498記録フレーム
追記型のディスクではデータを記録する際に、既に記録されているデータに連続して次のデータを記録することが必要である。データの間に隙間が生じると、再生できなくなる。そこで、後続記録フレームの最初のデータ・ラン・イン領域を先行記録フレームの最後のデータ・ラン・アウト領域に重ねて記録(上書き)するために、図67に示すようにデータ・ラン・アウト領域の最後にガード3領域を配置する。同図(a)は1個の物理クラスタだけ記録する場合であり、同図(b)は複数の物理クラスタを連続して記録する場合であり、最後のクラスタのラン・アウトの後だけガード3領域を設ける。このように、単独で記録された各記録ユニットブロック、あるいは連続して記録された複数の記録ユニットブロックはガード3領域で終結される。ガード3領域は2つの記録ユニットブロック間に未記録領域がないことを保証する。
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。