JP2012140042A - 能動型振動騒音抑制装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】マップデータに基づいて制御信号を生成しているため、適応制御のように制御の発散の生じないような制御を用いつつ、経年変化に追従することができる能動型振動騒音抑制装置を提供する。
【解決手段】発生源の周波数f、発生装置140から評価点20までの第一推定伝達関数Ghについての複数の周波数fに応じた第一マップデータ、および、発生源10から評価点20までの第二推定伝達関数Hhについての複数の周波数fに応じた第二マップデータを用いてフィルタ係数a,φを算出する。制御信号yは、周波数fとフィルタ係数a,φに基づいて生成される。第一マップデータ記憶部に記憶されている第一マップデータは、更新される。発生装置140により制御振動または制御音を出力した場合に評価点20における振動または音に基づいて算出された第一推定伝達関数Ghにより更新する。
【選択図】図10

Description

本発明は、マップデータを用いてフィルタ係数を算出し、当該フィルタ係数を用いて生成された制御信号に応じた制御振動または制御音を出力して、評価点における振動または騒音を能動的に抑制する能動型振動騒音抑制装置に関するものである。
従来、適応制御を用いて能動的に振動または騒音を抑制する装置として、特開平10−187164号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この装置は、制御信号の発生装置から評価点までの伝達系の伝達関数について同定処理を行い、同定処理によって得られた伝達関数の推定値を用いて、制御信号の適応フィルタのフィルタ係数を更新することで、能動的に振動または騒音を抑制するというものである。
一方、特開平11−259147号公報(特許文献2)、特開2005−233345号公報(特許文献3)および特開2005−233346号公報(特許文献4)には、適応制御ではなく、予め記憶したマップデータを用いてマップ制御(フィードフォワード制御)を行うことが記載されている。詳細には、特許文献3〜4のマップ制御では、適応制御法を用いてマップデータを更新することとされている。このようにすることで、特許文献3に記載されているように、初期に記憶したマップデータを用いたマップ制御では、経年変化や温度変化によって、十分な振動騒音抑制効果を得ることができない場合が生じるとの問題を解消することができるとされている。
特開平10−187164号公報 特開平11−259147号公報 特開2005−233345号公報 特開2005−233346号公報
ところで、特許文献1のような適応制御においては、実際の伝達関数と伝達関数の推定値とにずれが生じた場合には、評価点において振動または騒音が収束せずに発散するおそれがある。また、初期に記憶したマップデータを用いたマップ制御では、上述したように、経年変化や温度変化に追従することができないという問題を有するが、適応制御における発散の問題は生じることはない。ただし、特許文献3〜4に記載されているマップ制御では、適応制御法を用いてマップデータを更新しているため、やはり上記の適応制御における問題が生じるおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、マップデータに基づいて制御信号を生成しているため、適応制御のように制御の発散の生じないような制御を用いつつ、経年変化に追従することができる能動型振動騒音抑制装置を提供することを目的とする。
本発明における能動型振動騒音抑制装置は、マップデータを用いてフィルタ係数を算出し、当該フィルタ係数を用いて生成された制御信号に応じた制御振動または制御音を出力して、評価点における振動または騒音を能動的に抑制する能動型振動騒音抑制装置であって、前記制御信号に応じた前記制御振動または制御音を出力する制御振動制御音発生装置と、振動または騒音の発生源の周波数を検出する周波数検出部と、前記制御振動制御音発生装置から前記評価点までの第一伝達系における第一推定伝達関数Ghについて、複数の前記周波数に応じた第一マップデータとして記憶する第一マップデータ記憶部と、前記発生源から前記評価点までの第二伝達系における第二推定伝達関数Hhについて、複数の前記周波数に応じた第二マップデータとして記憶する第二マップデータ記憶部と、前記周波数検出部により検出された前記周波数に対応する前記第一マップデータおよび前記第二マップデータを用いて前記フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、前記周波数検出部により検出された前記周波数と前記フィルタ係数算出部により算出された前記フィルタ係数とに基づいて前記制御信号を生成する制御信号生成部と、前記評価点における振動または音である評価点信号を検出する評価点信号検出部と、前記制御振動制御音発生装置により前記制御振動または制御音を出力した場合に前記評価点信号検出部により検出された前記評価点信号に基づいて、前記制御振動制御音発生装置から前記評価点までの第一伝達系における第一推定伝達関数Ghを算出し、算出した前記第一推定伝達関数Ghに基づいて前記第一マップデータ記憶部に記憶されている前記第一マップデータを更新する第一マップデータ算出更新部とを備える。
ここで、理論上、評価点における振動または騒音をゼロにするためには、振動または騒音の発生源から制御信号生成部までの第三伝達系(発生源と制御信号生成部との間の伝達系に相当する)の伝達関数をWとした場合、W+H/G=0で表すことができる。ここで、Gは、制御振動制御音発生装置から評価点までの第一伝達系(制御信号生成部と評価点との間の伝達系に相当する)の真の第一伝達関数であり、Hは、振動または騒音の発生源から評価点までの第二伝達系の真の第二伝達関数である。つまり、制御信号生成部により生成すべき制御信号は、伝達関数Wに相当するものであるため、真の伝達関数H、Gが分かれば得られる。しかしながら、真の伝達関数H,Gは、未知である。
ただし、第一伝達関数Gは、所定の制御信号を発生させて、実際に制御振動制御音発生装置により制御振動または制御音を発生させて、そのときの評価点における振動または騒音(評価点信号に相当)を用いることにより推定することができる。つまり、第一伝達関数Gの推定値である第一推定伝達関数Ghは、任意のときに算出することができる。例えば、車両において、振動または騒音の発生源であるエンジンを停止している間に、第一推定伝達関数Ghを算出できる。従って、第一推定伝達関数Ghは、経年変化を考慮して、適宜算出したものとできる。つまり、第一推定伝達関数Ghについての第一マップデータは、経年変化に追従して更新することができる。
また、第二伝達関数Hは、実験などにより振動または騒音の発生源の部位に振動または騒音を実際に発生させたときの評価点における振動または騒音(評価点信号に相当)を用いることにより推定することができる。しかしながら、例えば車両において振動または騒音の発生源の部位に振動または騒音を発生させて、各周波数における評価点信号を得ることは容易ではない。そこで、例えば、能動型振動騒音抑制装置の製造初期や点検時において、第二推定伝達関数Hhを予め算出しておき、当該第二推定伝達関数Hhについての第二マップデータを予め記憶しておく。
そして、フィルタ係数を上述した第一推定伝達関数Ghについての第一マップデータと第二推定伝達関数Hhについての第二マップデータとに基づいて算出する。つまり、経年変化を考慮した第一マップデータを用いてフィルタ係数を算出している。その結果、制御信号は、現在の第一伝達系の状態に応じたものとなり、第一伝達系の第一伝達関数Gが経年変化したとしても、評価点における振動または騒音を確実に抑制することができる。
また、前記第二マップデータ記憶部は、前記発生源により振動または騒音を発生させた場合に前記評価点信号検出部により検出された前記評価点信号に基づいて予め算出した前記第二推定伝達関数Hhについて、前記第二マップデータとして記憶するようにしてもよい。
ここで、第二推定伝達関数Hhの算出に際して、振動または騒音の発生源の部位に振動または騒音を実際に発生させる必要がある。実際に発生させる振動または騒音を、振動または騒音の発生源により発生させることで、第二推定伝達関数Hhの算出のために、専用の振動または騒音の発生手段を用いる必要がなくなる。さらに、制御する際の状態を実際に再現して第二推定伝達関数Hhを算出することで、より高精度に第二推定伝達関数Hhを得ることができる。
また、前記第二マップデータ記憶部は、前記第二伝達系の状態をそれぞれ変更した複数の状態における前記第二推定伝達関数Hhについて、複数の前記第二マップデータとして記憶し、前記能動型振動騒音抑制装置は、複数の前記第二マップデータの中から、前記第一マップデータ記憶部に記憶されている前記第一マップデータとしての前記第一推定伝達関数Ghの共振周波数fG0に最も近い共振周波数fH0を有する前記第二推定伝達関数Hhの前記第二マップデータを選択する第二マップデータ選択部を備え、前記フィルタ係数算出部は、前記第一マップデータ記憶部に記憶されている前記第一マップデータと前記第二マップデータ選択部により選択された前記第二マップデータとに基づいて、前記フィルタ係数を算出するようにしてもよい。
ここで、上述したように、第一推定伝達関数Ghは、能動型振動騒音抑制装置を対象物に搭載後においても、比較的任意のときに容易に算出できる。従って、第一推定伝達関数Ghは、現在の真の第一伝達関数Gに近い状態とすることができる。これに対して、第二推定伝達関数Hhは、製造初期や点検時以外では容易に算出できないため、現在の真の第二伝達関数Hに近い状態とすることは容易ではない。
そこで、例えば製造初期や点検時において、第二伝達系の状態を予め複数の状態について再現して、複数の第二推定伝達関数Hhを算出しておく。そして、算出した複数の第二推定伝達関数Hhを複数の第二マップデータとして記憶しておく。これであれば、複数の第二推定伝達関数Hhを算出することができる。
そして、現在における第二推定伝達関数Hhを、予め記憶した複数の第二推定伝達関数Hhの中から選択する。この第二推定伝達関数Hhの選択に際して、比較的容易に算出可能な第一推定伝達関数Ghを用いる。ここで、第一伝達関数Gと第二伝達関数Hには、共通する振動または騒音の影響要素を含んでいる。そのため、第一伝達関数Gと第二伝達関数Hとは、相関を有する。具体的には、第一伝達関数Gの共振周波数fG0と第二伝達関数Hの共振周波数fH0とは、ほぼ一致するか、もしくは、ある程度近似する。そこで、まずは、第一マップデータ記憶部に記憶されている第一推定伝達関数Ghの共振周波数fG0を取得する。そして、第二マップデータ記憶部に記憶されている複数の第二マップデータの中から、第一推定伝達関数Ghの共振周波数fG0に最も近い共振周波数fH0を有する第二推定伝達関数Hhの第二マップデータを選択するようにしている。これにより、現在の第二伝達関数Hを推定することができる。つまり、選択された第二マップデータは、経年変化を考慮したものを得ることができる。
そして、経年変化を考慮した第一マップデータと第二マップデータとに基づいてフィルタ係数を算出する。つまり、制御信号は、現在の第一伝達系および現在の第二伝達系の状態に応じたものとなり、第一伝達系の第一伝達関数Gおよび第二伝達系の第二伝達関数Hが経年変化したとしても、評価点における振動または騒音を確実に抑制することができる。
また、前記第一推定伝達関数Ghの共振周波数fG0は、前記第一マップデータとしての前記第一推定伝達関数Ghの振幅成分および位相成分の少なくとも一方に基づいて導出し、前記第二推定伝達関数Hhの共振周波数fH0は、前記第二マップデータとしての前記第二推定伝達関数Hhの振幅成分および位相成分の少なくとも一方に基づいて導出するようにしてもよい。
これにより、第一推定伝達関数Ghの共振周波数fG0および第二推定伝達関数Hhの共振周波数fH0を確実に算出できる。例えば、第一推定伝達関数Ghにおける振幅成分がピーク値となる周波数が、共振周波数fG0となる。また、第一推定伝達関数Ghにおける位相成分が−90°となる周波数が、共振周波数fG0となる。このようにして、共振周波数fG0を得ることができる。また、例えば、第二推定伝達関数Hhにおける振幅成分がピーク値となる周波数が、共振周波数fH0となる。また、第二推定伝達関数Hhにおける位相成分が−90°となる周波数が、共振周波数fH0となる。このようにして、共振周波数fH0を得ることができる。
また、前記第二マップデータ記憶部は、前記第二伝達系の支持ばねのばね定数を複数に区分したばね定数範囲毎に、前記第二マップデータを記憶するようにしてもよい。
これにより、支持ばねのばね定数が経年変化した場合に、現在のばね定数に応じた第二推定伝達関数Hhについての第二マップデータを選択することができる。従って、現在の支持ばねのばね定数を考慮した制御信号を出力することができる。
また、前記第一マップデータ記憶部は、前記第一伝達系の温度状態を複数に区分した温度範囲毎の前記第一マップデータを記憶し、前記第二マップデータ記憶部は、前記第二伝達系の温度を前記第一伝達系と同一の複数に区分した温度範囲毎の前記第二マップデータを記憶し、前記能動型振動騒音抑制装置は、前記第一伝達系の温度を検出する温度検出部と、複数の前記第一マップデータの中から、前記温度検出部により検出された前記第一伝達系の温度に応じた前記第一マップデータを選択する第一マップデータ選択部と、を備え、前記第二マップデータ選択部は、複数の前記第二マップデータの中から、前記温度検出部により検出された前記第一伝達系の温度と前記共振周波数fH0とに応じた前記第二マップデータを選択し、前記フィルタ係数算出部は、前記第一マップデータ選択部により選択された前記第一マップデータと前記第二マップデータ選択部により選択された前記第二マップデータとに基づいて、前記フィルタ係数を算出するようにしてもよい。
ここで、伝達系の温度が変化すると、当該伝達系の伝達関数が変化することが知られている。従って、第一伝達系の第一伝達関数Gおよび第二伝達系の第二伝達関数Hは、温度によって変化する。そこで、第一,第二マップデータをそれぞれの温度範囲毎に記憶しておき、現在の温度に対応する第一,第二マップデータを用いてフィルタ係数を算出することで、現在温度における第一伝達関数Gおよび第二伝達関数Hに応じた制御信号を生成することができる。従って、評価点における振動または騒音を確実に抑制することができる。
また、前記能動型振動騒音抑制装置は、エンジンを有する車両に適用され、前記第二マップデータ記憶部は、前記エンジンの駆動トルク変動を複数に区分したトルク変動範囲毎の前記第二マップデータを記憶し、前記能動型振動騒音抑制装置は、前記エンジンの駆動トルク変動を検出するトルク変動検出部を備え、前記第二マップデータ選択部は、複数の前記第二マップデータの中から、前記トルク変動検出部により検出された前記駆動トルク変動と前記共振周波数fH0とに応じた前記第二マップデータを選択するようにしてもよい。
ここで、車両において、エンジンの駆動トルク変動に応じて第二伝達関数Hは変化する。そこで、第二マップデータをそれぞれの駆動トルク変動毎に記憶しておき、現在の駆動トルク変動に対応した第二マップデータを用いてフィルタ係数を算出することで、現在の駆動トルク変動における第二伝達関数Hに応じた制御信号を生成することができる。従って、評価点における振動または騒音を確実に抑制することができる。
能動型振動騒音抑制装置の概要を示す機能ブロック図である。 第一推定伝達関数のマップデータの算出更新処理を示す機能ブロック図である。 周波数に対する第一推定伝達関数の振幅成分を示す図である。 周波数に対する第一推定伝達関数の位相成分を示す図である。 Ghマップデータの分類を示す図である。 第二推定伝達関数のマップデータの算出処理を示す機能ブロック図である。 周波数に対する第二推定伝達関数の振幅成分を示す図である。 周波数に対する第二推定伝達関数の位相成分を示す図である。 Hhマップデータの分類を示す図である。 振動騒音抑制制御処理を示す機能ブロック図である。
(1)能動型振動騒音抑制装置の概要
能動型振動騒音抑制装置100の概要について図1を参照して説明する。能動型振動騒音抑制装置100は、種々の発生源が振動または騒音(以下、「抑制対象振動等」と称する)を発生する場合に、所望の位置(評価点)20において当該振動または騒音を能動的に抑制するために、制御信号yに応じた制御振動または制御音(以下、「制御振動等」と称する)を発生させる装置である。つまり、抑制対象振動等に対して制御振動等を合成させることで、所定位置(評価点)20において、制御振動等が抑制対象振動等を打ち消すように作用する。その結果、評価点20において、抑制対象振動等が抑制されることになる。
ここで、自動車を例にあげて説明する。自動車において、エンジン(内燃機関)10が振動騒音発生源となり、エンジン10によって発生した振動や騒音が車室内に伝達されないようにすることが望まれる。そこで、エンジン10によって発生した振動や騒音(抑制対象振動等)を能動的に抑制するために、発生装置140によって制御振動等を発生させることとしている。なお、以下において、能動型振動騒音抑制装置100は、自動車に適用し、エンジン10によって発生される振動または騒音を抑制する装置を例に挙げて説明するが、これに限られるものではない。抑制すべき振動や騒音を発生するものであれば、全てに適用できる。
能動型振動騒音抑制装置100は、マップデータを用いてフィルタ係数(振幅フィルタ係数a,位相フィルタ係数φ)を算出し、当該フィルタ係数a,φを用いて生成された制御信号yに応じた制御振動または制御音を出力して、評価点20における振動または騒音を能動的に抑制する装置である。
上記の構成をブロック図として表すと、図1のようになる。つまり、評価点20において、エンジン10が発生した振動または騒音は、第二伝達関数Hを介して、X=A・sin(ωt+Φ)の振動または騒音が伝達される。ここで、Aは、第二伝達関数Hの振幅成分であり、Φは、第二伝達関数Hの位相成分である。また、ωはエンジン10により発生される振動または騒音の角周波数であり、tは時刻である。
一方、評価点20において、能動型振動騒音抑制装置100の制御信号生成部130が生成する制御信号yは、第一伝達関数Gを介して、Zの制御振動または制御音が伝達される。ここで、制御信号生成部130により生成される制御信号yは、y=a・sin(ωt+φ)であり、振幅フィルタ係数aおよび位相フィルタ係数φ、ならびに、エンジン10により発生される振動または騒音の周波数により表される。また、第一伝達関数Gの振幅成分をA、第一伝達関数Gの位相成分をΦと表すと、評価点20における制御振動または制御音Zは、Z=A・a・sin(ωt+φ+Φ)となる。
そして、評価点20における振動または音は、エンジン10が発生した振動または騒音が第二伝達関数Hを介して伝達されたXと、制御信号yに応じた制御振動または制御音が第一伝達関数Gを介して伝達されたZとが合成された振動または音(X+Z)となる。
そうすると、理想的には、X+Z=0となるように、制御信号yの振幅フィルタ係数aおよび位相フィルタ係数φを算出するとよい。つまり、理想的な振幅フィルタ係数aおよび位相フィルタ係数φは、式(1)により表される。なお、式(1)において、位相フィルタ係数φは「±180°」の何れか一方を用いる。つまり、位相進みとして適用する場合と位相遅れとして適用する場合を含む意味で示している。
Figure 2012140042
従って、制御信号生成部130において生成される制御信号yのフィルタ係数a,φを式(1)に示す値として算出することができるとよい。しかしながら、実際の第一伝達関数Gおよび実際の第二伝達関数Hを常に得ることはできないため、第一伝達関数Gの推定値Gh(以下、「第一推定伝達関数Gh」と称する)および第二伝達関数Hの推定値Hh(以下、「第二推定伝達関数Hh」と称する)を用いる。つまり、フィルタ係数a,φを算出する際に、予め算出した第一推定伝達関数Ghのマップデータおよび第二推定伝達関数Hhのマップデータを用いる。
(2)能動型振動騒音抑制装置の詳細説明
能動型振動騒音抑制装置100の詳細について説明する。ここで、上述したように、能動型振動騒音抑制装置100は、第一推定伝達関数Ghのマップデータおよび第二推定伝達関数Hhのマップデータを用いて制御信号yを生成して、当該制御信号yに応じた制御振動または制御音を発生させることにより、評価点20における振動または騒音を抑制することとしている。
そこで、まずは第一推定伝達関数Ghのマップデータの算出更新処理について説明し、その後に、第二推定伝達関数Hhのマップデータの算出処理について説明し、さらにその後に、能動型振動騒音抑制装置100による振動騒音抑制制御について説明する。
(2.1)第一推定伝達関数Ghのマップデータの算出更新処理
第一推定伝達関数Ghのマップデータの算出更新処理について、図2〜図5を参照して説明する。Ghマップデータの算出更新処理は、製造初期において行うと共に、例えば、エンジン10の停止の都度行うようにする。つまり、Ghマップデータ記憶部180に記憶されるGhマップデータは、逐次更新される。
Ghマップデータ(本発明における「第一マップデータ」に相当)は、Ghマップデータ記憶部180(本発明における「第一マップデータ記憶部」に相当)に記憶されている。ここで、各図および各数式において、Gの上部に「^(ハット)」を付した記号は、推定値を意味する。ただし、記載の都合上、以下の説明において、第一伝達関数Gの推定値「Gハット」は、第一推定伝達関数「Gh」と記載する。
1枚のGhマップデータには、図3に示すような制御対象周波数fに応じた第一推定伝達関数Ghの振幅成分Ah、および、図4に示すような制御対象周波数fに応じた第一推定伝達関数Ghの位相成分Φhが設定されている。ここで、各図および各数式において、第一推定伝達関数Ghの振幅成分Ahは、Aの上部に「^」を付し、添字として「G」を付している。また、第一推定伝達関数Ghの位相成分Φhは、Φの上部に「^」を付し、添字として「G」を付している。そして、図3および図4に示すように、第一推定伝達関数Ghの共振周波数は、fG0である。つまり、1枚のGhマップデータには、共振周波数fG0の情報が含まれている。
ここで、第一推定伝達関数Ghの共振周波数fG0は、Ghマップデータの振幅成分Ahに基づいて導出することもでき、Ghマップデータの位相成分Φhから導出することもできる。例えば、第一推定伝達関数Ghにおける振幅成分Ahがピーク値となる周波数fが、共振周波数fG0となる。また、第一推定伝達関数Ghにおける位相成分Φhが−90°となる周波数が、共振周波数fG0となる。
そして、それぞれのGhマップデータは、図5に示すように、例えば、第一伝達系の温度状態を9つに区分した温度範囲毎について、更新前情報と更新後情報の2種を記憶されている。すなわち、Ghマップデータ記憶部180には、18枚のGhマップデータが記憶されている。つまり、第一推定伝達関数Ghは、式(2)に示すように、周波数fおよび温度範囲Teに応じた振幅成分Ahおよび位相成分Φhにより表される。
Figure 2012140042
図2に示すように、能動型振動騒音抑制装置100において、第一推定伝達関数Ghのマップデータの算出更新処理に用いられる構成は、周波数設定部110と、フィルタ係数設定部120と、制御信号生成部130と、発生装置140と、評価点信号検出部150と、Ghマップデータ算出更新部160と、温度検出部170と、Ghマップデータ記憶部180とを備えている。
周波数設定部110は、Ghマップデータを算出(同定)するための制御信号yに用いる制御対象周波数fを設定する。例えば、エンジン10の周波数帯のうち30Hz〜70Hzの範囲を制御対象周波数とする。フィルタ係数設定部120は、Ghマップデータを算出(同定)するための制御信号yに用いる振幅フィルタ係数aおよび位相フィルタ係数φを設定する。
制御信号生成部130は、周波数設定部110にて設定された周波数fおよびフィルタ係数設定部120にて設定された各フィルタ係数aに基づいて、式(3)に従って得られる制御信号yを生成する。ここで、添字のnは、サンプリング数(時間ステップ)を表す添字である。
Figure 2012140042
発生装置140は、実際に振動や音を発生する装置である。この発生装置140は、制御信号生成部130によって生成された制御信号yに基づいて駆動する。例えば、制御振動を発生させる発生装置140としては、例えば、駆動系につながるフレームやサブフレーム(図示せず)などに配置される振動発生装置である。より詳細には、エンジン10を支持する能動型エンジンマウントや、リヤサブフレームに取り付けられる能動型ダイナミックダンパなどである。また、制御音を発生させる発生装置140としては、例えば、スピーカー等である。
発生装置140が例えば磁力を用いて制御振動や制御音を発生させる装置の場合には、コイル(図示せず)に供給する電流、電圧または電力を、各時刻tにおける制御信号yに応じるように制御することで、発生装置140が制御信号yに応じた制御振動または制御音を発生する。ここで、発生装置140により制御振動または制御音を発生させるとき、図5を用いて上述したように、第一伝達系の温度状態を9つに区分した温度範囲毎に行う。
そして、評価点20においては、発生装置140によって発生された制御振動等が伝達系Bを介して振動または音Zが伝達される。この振動または音Zは、式(4)で表される。
Figure 2012140042
評価点信号検出部150は、評価点20に配置されており、評価点20における振動または音e1を検出する。ここでは、評価点信号検出部150により検出される振動または音e1は、Zに等しい。例えば、評価点20における振動e1を検出する評価点信号検出部150としては、加速度センサなどを適用できる。また、評価点20における音e1を検出する評価点信号検出部150としては、吸音マイクなどを適用できる。なお、第一伝達関数Gは、発生装置140から評価点20までの第一伝達系の第一伝達関数である。つまり、第一伝達関数Gは、発生装置140そのものの伝達関数と、発生装置140と評価点20との間の伝達系Bの伝達関数とを含む。
Ghマップデータ算出更新部160は、制御信号生成部130により生成された制御信号yと、評価点信号検出部150により検出された評価点20における振動または音e1とに基づいて、第一推定伝達関数Ghの振幅成分Ahおよび位相成分Φhを算出する。このGhマップデータ算出更新部160は、Ghマップデータ記憶部180に初期状態としてGhマップデータを記憶した後においても、Ghマップデータ記憶部180に既に記憶されているGhマップデータを新たに算出したGhマップデータに更新する。
温度検出部170は、第一伝達系(制御信号生成部130と評価点20との間における伝達系)の温度Teを検出する。例えば、温度検出部170は、温度センサが適用され、発生装置140あるいはその近傍に設けられ、第一伝達系(制御信号生成部130と評価点20との間における伝達系)の雰囲気温度を検出する。ここで、上述したように、発生装置140により制御振動または制御音を発生させるとき、図5を用いて上述したように、第一伝達系の温度状態を9つに区分した温度範囲毎に行う。つまり、温度検出部170は、図5に示すように9つに区分した温度範囲のいずれの範囲に位置するかを検出することができる。
Ghマップデータ記憶部180は、Ghマップデータ算出更新部160により算出された制御対象周波数fに応じた第一推定伝達関数Ghの振幅成分Ahおよび位相成分Φhと、制御信号を発生したときの第一伝達系の温度範囲Teとを関連づけて、複数枚のGhマップデータとして記憶する。
詳細には、上述したように、1枚のGhマップデータには、図3に示すような制御対象周波数fに応じた第一推定伝達関数Ghの振幅成分Ah、および、図4に示すような制御対象周波数fに応じた第一推定伝達関数Ghの位相成分Φhが設定されている。また、1枚のGhマップデータには、共振周波数fG0の情報が含まれている。また、Ghマップデータ記憶部180には、温度範囲Te毎におけるGhマップデータが記憶されている。つまり、Ghマップデータ記憶部180には、初期状態において、9枚のGhマップデータが記憶されている。
ここで、Ghマップデータの算出更新処理は、上述したように、製造初期の他、例えば、エンジン10の停止の都度行うことにより、Ghマップデータは逐次更新される。そこで、Ghマップデータ記憶部180に記憶されるGhマップデータは、更新前情報と更新後情報の2種を記憶している。つまり、Ghマップデータ記憶部180には、更新前情報としての9枚のGhマップデータと、更新後情報としての9枚のGhマップデータが記憶されている。
このように、Ghマップデータは、例えばエンジン10の停止の都度、更新するようにしているため、現在の第一伝達関数Gの状態に適合したマップデータとなる。つまり、現在記憶されているGhマップデータは、第一伝達関数Gが経年変化したとしても、その経年変化に追従して更新されている。
(2.2)第二推定伝達関数Hhのマップデータの算出処理
第二推定伝達関数Hhのマップデータの算出処理について、図5〜図9を参照して説明する。ここで、製造初期や点検時に予め複数の状態について再現して、複数のHhマップデータの算出を行う。つまり、Hhマップデータ記憶部250(本発明における「第二マップデータ記憶部」に相当)には、複数のHhマップデータ(本発明における「第二マップデータ」に相当)が記憶されている。ここで、各図および各数式において、Hの上部に「^(ハット)」を付した記号は、推定値を意味する。ただし、記載の都合上、以下の説明において、第二伝達関数Hの推定値「Hハット」は、第二推定伝達関数「Hh」と記載する。
1枚のHhマップデータには、図7に示すような制御対象周波数fに応じた第二推定伝達関数Hhの振幅成分Ah、および、図8に示すような制御対象周波数fに応じた第二推定伝達関数Hhの位相成分Φhが設定されている。ここで、各図および各数式において、第二推定伝達関数Hhの振幅成分Ahは、Aの上部に「^」を付し、添字として「H」を付している。また、第二推定伝達関数Hhの位相成分Φhは、Φの上部に「^」を付し、添字として「H」を付している。
そして、図7および図8に示すように、第二推定伝達関数Hhの共振周波数は、fH0である。つまり、1枚のHhマップデータには、共振周波数fH0の情報が含まれている。ここで、第二推定伝達関数Hhの共振周波数fH0は、Hhマップデータの振幅成分Ahに基づいて導出することもでき、Hhマップデータの位相成分Φhから導出することもできる。例えば、第二推定伝達関数Hhにおける振幅成分Ahがピーク値となる周波数が、共振周波数fH0となる。また、第二推定伝達関数Hhにおける位相成分Φhが−90°となる周波数が、共振周波数fH0となる。
そして、それぞれのHhマップデータは、図9に示すように、例えば、第二伝達系の支持ばねのばね定数を大、中、小の3つに区分したばね定数範囲毎、第二伝達系の温度状態を9つに区分した温度範囲毎、かつ、エンジン10の駆動トルク変動態様を2つに区分したトルク変動範囲毎に記憶されている。すなわち、Hhマップデータ記憶部250には、54枚(=3×9×2)のHhマップデータが記憶されている。つまり、第二推定伝達関数Hhは、式(5)に示すように、周波数f、ばね状態K、温度範囲Te、トルク変動態様ΔTrに応じた振幅成分Ahおよび位相成分Φhにより表される。なお、トルク変動態様として、エンジン10の暖気前と暖気後の2種類としているが、より細分化してもよい。そして、トルク変動は、例えば、アクセル開度などに相関を有する。つまり、例えば、トルク変動として、アクセル開度を用いて判定してもよい。
Figure 2012140042
図6に示すように、能動型振動騒音抑制装置100において、第二推定伝達関数Hhのマップデータの算出処理に用いられる構成は、評価点信号検出部150と、Hhマップデータ算出部220と、周波数算出部230と、温度検出部170と、トルク変動検出部240と、Hhマップデータ記憶部250とを備えている。
エンジン制御指令部40は、Hhマップデータの算出を行うために、エンジン制御部30に指令を出力して、エンジン制御部30によってエンジン10駆動させる。ここで、エンジン制御指令部40により、指令を出力する前に、第二伝達系の状態を予め変更した複数の状態を再現しておく。そして、それぞれの状態について、エンジン制御指令部40が、エンジン制御部30に指令を出力する。当該指令には、エンジン10により発生される振動または騒音の周波数が30Hz〜70Hzの制御対象周波数fの範囲内となるようにするための情報が含まれている。つまり、当該指令を受けたエンジン制御部30は、エンジン10の振動または騒音の周波数が制御対象周波数fの各周波数となるように、順次周波数を変化させて行う。さらに、当該指令には、エンジン10の暖気前状態と暖気後状態の2種類について実行する情報が含まれている。
そして、第二伝達系は、図9に示したように、3つの支持ばねのばね定数範囲、および、9つの温度範囲により表されるおよび27種類の状態を再現する。例えば、第二伝達系の状態を、支持ばねのばね定数を大の状態であり、第二伝達系の温度範囲を70℃〜80℃の範囲として、Hhマップデータの算出処理を実行する。
評価点信号検出部150は、上述したGhマップデータの算出において用いた評価点信号検出部150と同一である。ただし、Hhマップデータの算出において、評価点信号検出部150は、エンジン10により発生した振動または騒音が第二伝達関数Hを介して伝達された評価点20における振動または音e2を検出する。つまり、評価点信号検出部150により検出する振動または音e2は、現在再現された第二伝達関数Hの状態に応じた、エンジン10の振動または騒音が伝達された評価点20における振動または音Xに等しい。なお、第二伝達関数Hは、エンジン10から評価点20までの第二伝達系の第二伝達関数である。
Hhマップデータ算出部220は、評価点信号検出部150により検出された評価点20における振動または音e2に基づいて、第二推定伝達関数Hhの振幅成分Ahおよび位相成分Φhを算出する。
周波数算出部230は、エンジン10の回転パルス信号に基づいて、エンジン10の爆発周期を算出する。つまり、周波数算出部230は、エンジン制御指令部40によりエンジン制御部30がエンジン10を駆動した場合に、実際のエンジン10の振動または騒音の周波数fを算出することになる。
温度検出部170は、上述したGhマップデータの算出において用いた温度検出部170と同一である。つまり、温度検出部170は、第一伝達系(制御信号生成部130と評価点20との間における伝達系)の温度Teを検出する。
トルク変動検出部240は、エンジン制御部30からエンジン10のトルク変動態様に関する情報を受け取り、エンジン10のトルク変動態様を検出する。本実施形態においては、トルク変動検出部240は、エンジン10が暖気前状態であるか暖気後状態であるかを検出する。
Hhマップデータ記憶部250は、Hhマップデータ算出部220により算出された制御対象周波数fに応じた第二推定伝達関数Hhの振幅成分Ahおよび位相成分Φhと、周波数算出部230により算出された周波数fと、温度検出部170により検出された第一伝達系の温度範囲Teと、トルク変動検出部240により検出されたトルク変動態様とを関連づけて、複数枚のHhマップデータとして記憶する。
詳細には、上述したように、1枚のHhマップデータには、図7に示すような周波数fに応じた第二推定伝達関数Hhの振幅成分Ah、および、図8に示すような周波数fに応じた第二推定伝達関数Hhの位相成分Φhが設定されている。また、1枚のHhマップデータには、共振周波数fH0の情報が含まれている。また、Hhマップデータ記憶部250には、支持ばねのばね定数、温度範囲Teおよびトルク変動態様毎におけるHhマップデータが記憶されている。つまり、Hhマップデータ記憶部250には、54枚のHhマップデータが記憶されている。
ここで、第二伝達関数Hの共振周波数fH0は、支持ばねのばね定数、温度範囲Teおよびトルク変動態様によって変化する。つまり、それぞれのHhマップデータにおける共振周波数fH0は異なる状態となる。
(2.3)能動型振動騒音抑制装置による振動騒音抑制制御
次に、能動型振動騒音抑制装置100による振動騒音抑制制御処理について、図10を参照して説明する。当該振動騒音抑制制御処理は、車両が走行中やアイドリング中において、エンジン制御部30によりエンジン10が駆動されているとき、評価点20におけるエンジン10により発生した振動または騒音を抑制する制御処理である。
能動型振動騒音抑制装置100において、振動騒音抑制制御処理に用いられる構成は、温度検出部170と、トルク変動検出部240と、周波数算出部230と、Ghマップデータ記憶部180と、Hhマップデータ記憶部250と、Ghマップデータ選択部310と、Hhマップデータ選択部320と、フィルタ係数算出部330と、制御信号生成部130と、発生装置140とを備えている。
温度検出部170は、上述したGhマップデータの算出およびHhマップデータの算出において用いた温度検出部170と同一である。つまり、温度検出部170は、第一伝達系(制御信号生成部130と評価点20との間における伝達系)の温度Teを検出する。
トルク変動検出部240は、上述したHhマップデータの算出において用いたトルク変動検出部240と同一である。つまり、トルク変動検出部240は、エンジン制御部30からエンジン10のトルク変動態様に関する情報を受け取り、エンジン10のトルク変動態様を検出する。本実施形態においては、トルク変動検出部240は、エンジン10が暖気前状態であるか暖気後状態であるかを検出する。
周波数算出部230は、上述したHhマップデータの算出において用いた周波数算出部230と同一である。つまり、周波数算出部230は、実際のエンジン10の振動または騒音の周波数fを算出する。
Ghマップデータ記憶部180は、上述したGhマップデータの算出更新処理により得られたGhマップデータが記憶されている。Ghマップデータ記憶部180に記憶されているGhマップデータは、製造初期の他、例えば、エンジン10の停止の都度、Ghマップデータの算出更新処理を行うことにより、Ghマップデータは逐次更新される。そして、Ghマップデータ記憶部180には、更新前情報としての9枚のGhマップデータと、更新後情報としての9枚のGhマップデータが記憶されている。
Hhマップデータ記憶部250は、上述したHhマップデータの算出処理により得られた54枚のHhマップデータが記憶されている。このHhマップデータは、通常は更新されるものではないが、点検などの際に更新されるようにしてもよい。
Ghマップデータ選択部310は、温度検出部170により検出された温度Teに基づいて、Ghマップデータ記憶部180に記憶されている9枚のGhマップデータの中から、温度Teに対応するGhマップデータを選択する。ここで、選択されたGhマップデータは、現在の第一伝達系の温度Teに応じたGhマップデータとなる。従って、選択されたGhマップデータは、第一伝達関数Gの経年変化に追従したGhマップデータであると共に、現在の第一伝達系の温度Teに応じたGhマップデータとなる。
Hhマップデータ選択部320は、Hhマップデータ記憶部250に記憶されている54枚のHhマップデータの中から、温度検出部170により検出された温度Teおよびトルク変動検出部240により検出されたトルク変動態様ΔTrに対応する3枚のHhマップデータを選択する。さらに、Hhマップデータ選択部320は、温度Teおよびトルク変動態様ΔTrに応じて選択された3枚のHhマップデータの中から、Ghマップデータ選択部310により選択されたGhマップデータを用いて、1枚のHhマップデータを選択する。
具体的には、Hhマップデータ選択部320は、3枚のHhマップデータの中から、選択されたGhマップデータの共振周波数fG0に最も近い共振周波数fH0を有するHhマップデータを選択する。
ここで、例えば、FR(フロントエンジン、リヤドライブ)車において、本実施形態の能動型振動騒音抑制装置100をリヤサブフレームに搭載した能動型ダイナミックダンパとし、リヤサブフレームの振動を抑制するように制御した場合を考える。このとき、第一伝達関数Gは、主としてリヤサブフレームの車両本体に対する支持ばねのばね定数の影響を受ける。一方、第二伝達関数Hも、主としてリヤサブフレームの車両本体に対する支持ばねのばね定数の影響を受ける。このように、第一伝達関数Gと第二伝達関数Hとは、同一の支持ばねのばね定数の影響を受ける。従って、リヤサブフレームの支持ばねのばね定数が経年変化した場合には、第一伝達関数Gが変化すると共に、第二伝達関数Hも変化することになる。
より詳細には、第一伝達関数Gの共振周波数fG0と第二伝達関数Hの共振周波数fH0とは、ほぼ一致するか、もしくは、ある程度近似する。つまり、第一伝達関数Gが経年変化して第一伝達関数Gの共振周波数fG0が変化したときに、第二伝達関数Hの共振周波数fH0も同様に変化している。
なお、この現象は、例えば、本実施形態の能動型振動騒音抑制装置100をエンジン10のサブフレームに搭載した能動型エンジンマウントとし、エンジン10のサブフレームの振動を抑制するように制御した場合についても同様となる。
そこで、上述したように、Hhマップデータ選択部320は、3枚のHhマップデータの中から、選択されたGhマップデータの共振周波数fG0に最も近い共振周波数fH0を有するHhマップデータを選択する。これにより、経年変化した現在の第二伝達関数Hの状態に応じたHhマップデータを選択できる。
フィルタ係数算出部330は、制御信号yの振幅フィルタ係数aおよび位相フィルタ係数φを算出する。詳細には、フィルタ係数算出部330は、Ghマップデータ選択部310により選択されたGhマップデータと周波数算出部230により算出された周波数fとに基づいて、現時点の周波数fにおける第一推定伝達関数Ghの振幅成分Ahおよび位相成分Φhを算出する。
さらに、フィルタ係数算出部330は、Hhマップデータ選択部320により選択されたHhマップデータと周波数算出部230により算出された周波数fとに基づいて、現時点の周波数fにおける第二推定伝達関数Hhの振幅成分Ahおよび位相成分Φhを算出する。
そして、フィルタ係数算出部330は、第一推定伝達関数Ghの振幅成分Ahと第二推定伝達関数Hhの振幅成分Ahとに基づいて、式(6)に従って振幅フィルタ係数aを算出する。さらに、フィルタ係数算出部330は、第一推定伝達関数Ghの位相成分Φhと第二推定伝達関数Hhの位相成分Φhとに基づいて、式(6)に従って位相フィルタ係数φを算出する。なお、式(6)において、位相フィルタ係数φは「±180°」の何れか一方を用いる。つまり、位相進みとして適用する場合と位相遅れとして適用する場合を含む意味で示している。
Figure 2012140042
制御信号生成部130は、周波数算出部230にて算出された周波数fおよびフィルタ係数算出部330にて算出された各フィルタ係数aに基づいて、式(7)に従って得られる制御信号yを生成する。
Figure 2012140042
発生装置140は、上述したGhマップデータの算出において用いた発生装置140と同一である。この発生装置140は、制御信号生成部130によって生成された制御信号yに基づいて駆動する。そして、評価点20において、エンジン10の発生した振動または騒音が第二伝達関数Hを介して伝達された振動または騒音に、発生装置140により発生した制御振動または制御音が第一伝達関数Gを介して伝達された制御振動または制御音が干渉する。その結果、評価点20において、エンジン10の発生した振動または騒音が第二伝達関数Hを介して伝達された振動または騒音が抑制される。
ここで、フィルタ係数算出部330により算出されたフィルタ係数a,φは、経年変化および温度変化を考慮した第一伝達関数G、および、経年変化、温度変化、トルク変動態様を考慮した第二伝達関数Hに対応している。つまり、制御信号生成部130により生成される制御信号yは、現在の第一伝達関数Gおよび現在の第二伝達関数Hの状態に応じたものとなる。従って、第一伝達関数Gおよび第二伝達関数Hが経年変化、温度変化やトルク変動により変化したとしても、評価点20における振動または騒音を確実に抑制することができる。
10:エンジン、 20:評価点 100:能動型振動騒音抑制装置

Claims (7)

  1. マップデータを用いてフィルタ係数を算出し、当該フィルタ係数を用いて生成された制御信号に応じた制御振動または制御音を出力して、評価点における振動または騒音を能動的に抑制する能動型振動騒音抑制装置であって、
    前記制御信号に応じた前記制御振動または制御音を出力する制御振動制御音発生装置と、
    振動または騒音の発生源の周波数を検出する周波数検出部と、
    前記制御振動制御音発生装置から前記評価点までの第一伝達系における第一推定伝達関数Ghについて、複数の前記周波数に応じた第一マップデータとして記憶する第一マップデータ記憶部と、
    前記発生源から前記評価点までの第二伝達系における第二推定伝達関数Hhについて、複数の前記周波数に応じた第二マップデータとして記憶する第二マップデータ記憶部と、
    前記周波数検出部により検出された前記周波数に対応する前記第一マップデータおよび前記第二マップデータを用いて前記フィルタ係数を算出するフィルタ係数算出部と、
    前記周波数検出部により検出された前記周波数と前記フィルタ係数算出部により算出された前記フィルタ係数とに基づいて前記制御信号を生成する制御信号生成部と、
    前記評価点における振動または音である評価点信号を検出する評価点信号検出部と、
    前記制御振動制御音発生装置により前記制御振動または制御音を出力した場合に前記評価点信号検出部により検出された前記評価点信号に基づいて、前記制御振動制御音発生装置から前記評価点までの第一伝達系における第一推定伝達関数Ghを算出し、算出した前記第一推定伝達関数Ghに基づいて前記第一マップデータ記憶部に記憶されている前記第一マップデータを更新する第一マップデータ算出更新部と、
    を備える能動型振動騒音抑制装置。
  2. 請求項1において、
    前記第二マップデータ記憶部は、前記発生源により振動または騒音を発生させた場合に前記評価点信号検出部により検出された前記評価点信号に基づいて予め算出した前記第二推定伝達関数Hhについて、前記第二マップデータとして記憶する能動型振動騒音抑制装置。
  3. 請求項1において、
    前記第二マップデータ記憶部は、前記第二伝達系の状態をそれぞれ変更した複数の状態における前記第二推定伝達関数Hhについて、複数の前記第二マップデータとして記憶し、
    前記能動型振動騒音抑制装置は、複数の前記第二マップデータの中から、前記第一マップデータ記憶部に記憶されている前記第一マップデータとしての前記第一推定伝達関数Ghの共振周波数fG0に最も近い共振周波数fH0を有する前記第二推定伝達関数Hhの前記第二マップデータを選択する第二マップデータ選択部を備え、
    前記フィルタ係数算出部は、前記第一マップデータ記憶部に記憶されている前記第一マップデータと前記第二マップデータ選択部により選択された前記第二マップデータとに基づいて、前記フィルタ係数を算出する能動型振動騒音抑制装置。
  4. 請求項3において、
    前記第一推定伝達関数Ghの共振周波数fG0は、前記第一マップデータとしての前記第一推定伝達関数Ghの振幅成分および位相成分の少なくとも一方に基づいて導出し、
    前記第二推定伝達関数Hhの共振周波数fH0は、前記第二マップデータとしての前記第二推定伝達関数Hhの振幅成分および位相成分の少なくとも一方に基づいて導出する能動型振動騒音抑制装置。
  5. 請求項3または4において、
    前記第二マップデータ記憶部は、前記第二伝達系の支持ばねのばね定数を複数に区分したばね定数範囲毎に、前記第二マップデータを記憶する能動型振動騒音抑制装置。
  6. 請求項3〜5の何れか一項において、
    前記第一マップデータ記憶部は、前記第一伝達系の温度状態を複数に区分した温度範囲毎の前記第一マップデータを記憶し、
    前記第二マップデータ記憶部は、前記第二伝達系の温度を前記第一伝達系と同一の複数に区分した温度範囲毎の前記第二マップデータを記憶し、
    前記能動型振動騒音抑制装置は、
    前記第一伝達系の温度を検出する温度検出部と、
    複数の前記第一マップデータの中から、前記温度検出部により検出された前記第一伝達系の温度に応じた前記第一マップデータを選択する第一マップデータ選択部と、
    を備え、
    前記第二マップデータ選択部は、複数の前記第二マップデータの中から、前記温度検出部により検出された前記第一伝達系の温度と前記共振周波数fH0とに応じた前記第二マップデータを選択し、
    前記フィルタ係数算出部は、前記第一マップデータ選択部により選択された前記第一マップデータと前記第二マップデータ選択部により選択された前記第二マップデータとに基づいて、前記フィルタ係数を算出する能動型振動騒音抑制装置。
  7. 請求項3〜5の何れか一項において、
    前記能動型振動騒音抑制装置は、エンジンを有する車両に適用され、
    前記第二マップデータ記憶部は、前記エンジンの駆動トルク変動を複数に区分したトルク変動範囲毎の前記第二マップデータを記憶し、
    前記能動型振動騒音抑制装置は、前記エンジンの駆動トルク変動を検出するトルク変動検出部を備え、
    前記第二マップデータ選択部は、複数の前記第二マップデータの中から、前記トルク変動検出部により検出された前記駆動トルク変動と前記共振周波数fH0とに応じた前記第二マップデータを選択する能動型振動騒音抑制装置。
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