JP2012120480A - カワニナ類の飼育方法およびカワニナ類飼育水槽 - Google Patents
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Abstract
【課題】人工的なカワニナ類の飼育環境を実現するための技術を提供する。
【解決手段】蛍幼虫の餌となるカワニナ類の飼育する際に、水温を摂氏15度乃至30度に維持し、濾過装置を用いて循環させた水槽中内で、稚貝の殻成分を溶出する直径5乃至10cm程度の石灰石を配置し、稚貝の餌となる珪藻の付着が容易な人工水草、朴木の落葉または魚や草食動物用の配合飼料ペレットを供給して、飼育するようにした。
【選択図】図1
【解決手段】蛍幼虫の餌となるカワニナ類の飼育する際に、水温を摂氏15度乃至30度に維持し、濾過装置を用いて循環させた水槽中内で、稚貝の殻成分を溶出する直径5乃至10cm程度の石灰石を配置し、稚貝の餌となる珪藻の付着が容易な人工水草、朴木の落葉または魚や草食動物用の配合飼料ペレットを供給して、飼育するようにした。
【選択図】図1
Description
本発明は、蛍の幼虫の餌となるカワニナ類の飼育技術に関する。
蛍の生息過程において1年から2年間の幼虫時代のうち、1齢〜5齢までは水中で生活し、6齢(終齢)で土中で生活しサナギから羽化する。この水中生活での間に補食する餌の質と量が成虫となってからの寿命に影響すると考えられる。
蛍の幼虫の餌としては、カワニナ類と呼ばれる淡水性巻貝が適していることが知られている。カワニナ(成貝)は殻長約30mm、殻径約12mm程度の全体的に丸みを帯びた円錐形をしている。
したがって、水中時代の蛍の幼虫を効率的に飼育するためには、餌となる良好なカワニナ類をどの程度確保できるかがカギとなる。この点について、カワニナの飼育に考慮した先行技術文献としては、特開平8−322429号公報(特許文献1)がある。この特許文献1では、市街地の河川または水路、公園等の従来ホタルがいない場所にホタルを棲息させることを目的として、ホタルの餌になるカワニナの成育と繁殖に適し、かつこれを餌にするホタルの棲息のために適した人工水路を作り上げるものであり、具体的には、単位水路の両側縁に植石を配置し、少なくともその底面をコンクリートによって形成した湛水部分と流水部分を有するようにして、その左右に流水平面部を設け、流水平面部にはホウキ目を入れ、単位水路の接続部には越流堰を設けたものである。つまり、湛水部分と流水路部分の底面をコンクリートによって形成することによって、カワニナの餌となる珪藻類がよく育つようにしている。その繁茂した珪藻類にカワニナが繁殖し、このような環境で水路に上水が流れるとともに、適当な水たまりが形成されることによって、カワニナを食する水性ボタルの成育に適した環境ができるというものであった。
前記特許文献1では、市街地の河川または水路においてカワニナの餌となる珪藻類を育ててカワニナが繁殖することを期待するものであった。このように自然環境に依存するために、天気、温度、湿度、風雨等の影響が大きく、かならずしも期待した通りに珪藻類が育たず、そのためにカワニナが繁殖することもなく最終的にホタルの存在が確認できないことも少なくなかった。
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、人工的なカワニナ類の飼育環境を実現することを課題とする。
本発明は、前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
本発明の請求項1は、蛍幼虫の餌となるカワニナ類の飼育方法であって、水温を摂氏15度乃至30度に維持し、濾過装置を用いて循環させた水槽中内で、稚貝の殻成分を溶出する直径5乃至10cm程度の石灰石を配置し、稚貝の餌となる珪藻の付着が容易な人工
水草、朴木の落葉または魚や草食動物用の配合飼料ペレットを供給して、カワニナ類を稚貝から成貝に至るまで飼育するカワニナ類の飼育方法である。
水草、朴木の落葉または魚や草食動物用の配合飼料ペレットを供給して、カワニナ類を稚貝から成貝に至るまで飼育するカワニナ類の飼育方法である。
本発明の請求項2は、蛍幼虫の餌としてのカワニナ類を飼育するための飼育水槽であって、飼育水を張設した水槽と、前記飼育水を環流させる濾過装置と、前記飼育水を摂氏15度乃至30度に維持する水温制御装置と、前記水槽の水中底面に敷設した直径5乃至10cm程度の石灰石と、飼育水中に、稚貝の餌となる珪藻の付着が容易な人工水草、朴木の落葉または魚や草食動物用の配合飼料ペレットが選択的に供給されたカワニナ類の飼育水槽である。
本発明の請求項3は、蛍幼虫の餌としてのカワニナ類を飼育するための飼育水槽であって、飼育水を張設した水槽内を、水面近傍に設けられた成貝を収容する成貝用稚貝産出領域と、前記成貝用稚貝算出領域の下部に設けられた稚貝を飼育するための稚貝飼育領域とに隔成したカワニナ類の飼育水槽である。
本発明の請求項4は、前記成貝用稚貝産出領域には、成貝の餌としての落葉または配合飼料ペレットが供給され、前記稚貝飼育領域には 稚貝の餌となる珪藻の付着が容易な人
工水草が供給された請求項3記載のカワニナ類の飼育水槽である。
工水草が供給された請求項3記載のカワニナ類の飼育水槽である。
本発明によれば、蛍の幼虫の餌としてのカワニナ類の飼育に特化した水槽構造としたことにより、カワニナの育成環境を人工的に構築し、蛍の幼虫の成育率を高めることができる。
本発明を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態である飼育水槽を示す正面図である。
本実施形態では、カワニナとして、チリメンカワニナ(Semisulcospira libertina reiniana)を飼育した例で説明する。したがって、以下の実施形態では、このチリメンカワニ
ナを含めて「カワニナ」と総称する。
ナを含めて「カワニナ」と総称する。
図1の飼育水槽は、横方向約60〜90cm、縦方向約30〜50cm、高さ方向約30〜50cm程度の大型水槽であることが望ましい。
飼育水槽には約80〜90%程度水が満たされており、その上方には濾過装置が配設されて水を濾過しつつ循環させるようになっている。
カワニナ類の飼育に際しては、エアレーション装置で酸素を供給するのみでは長期間の飼育に適さず(水が腐ってしまうため)、このような濾過装置を設置して水を常に浄化する必要がある。
水槽底部には、5〜10cm程度の直径を有する石灰石を数個配置しておくことが望ましい。これにより、カワニナ類の殻の成分(炭酸カルシウム)の溶出が期待でき、カワニナ類の稚貝の生息を早めることができる。
水槽の清掃、維持管理や稚貝の採取の手間を考慮して、水槽底部には砂利を敷き詰める必要はない。
水中には、ビニール紐を束ねた人工水草を配置する。この人工水草には珪藻類が付着してカワニナ類の稚貝の餌となる。ただ、大量のカワニナ類を飼育するためには人工水草に付着する珪藻類だけでは餌が不足するため、朴木などの落葉樹の落ち葉を水槽内に浸積させてもよい。また、カワニナ類の餌としては、金魚や兎等の草食動物用配合飼料ペレットを併用してもよい。本実施形態の飼育事例では、人工水草、朴の落ち葉と、兎用配合飼料ペレットを併用してもよい。1回に与えるペレットの量は、水質の悪化を防ぐために3〜4時間程度で完食できる程度(カワニナ稚貝100匹に対して4〜5粒程度)とした結果、90cm水槽で1000個体の飼育に成功した。
なお、カワニナ類の餌となる落ち葉は朴木に限らないが、葉が薄くて硬い欅や紅葉はカワニナ類はほとんど捕食しなかった。また、カワニナ類も稚貝の間は、前記兎用配合飼料ペレットはあまり好まずに、朴木の落ち葉や、人工水草または水槽壁面に付着する微少藻類をよく捕食していた。
さらに本発明者らの実験によれば、人参やキャベツの芯等の野菜くず(無農薬栽培品)もよく捕食するが、水が腐敗しやすくなり、水質劣化によりカワニナ類の健康状態を損なうので適さない。
水質管理としては、カワニナ類は大量の餌を捕食するため分泌物も多い。餌の食べ残しや排泄物が腐敗すると有害なアンモニアや亜硝酸塩が発生し、活性が低下して産出稚貝の量も減少する。したがって、循環ポンプの取水口の付近にカワニナ類の排泄物が集まるように濾過装置からの水量を調整し、集まった段階で速やかに排泄物を除去する必要がある。試験的に、過密飼育状態で約4週間程度水交換を行わずに放置した結果、水分中の窒素およびリンの濃度が高くなり、稚貝の産出量は最も多い状態の約4分の1程度にまで減少し、成貝の活性も低下した。
飼育事例では、水の色(次第に黄色く変色していく)や稚貝の産出量を計数しながら、およそ2週間に1回程度の間隔で水の交換を行い、高い生存率を得た。
本飼育水槽を屋外に設置してもよいが、夏季の直射日光下で水温が摂氏35度前後になるとカワニナ類の活性が極端に低下するため、日陰の涼しい環境を選んで設置する必要がある。水温を摂氏15〜35度程度に保つと、年間を通じて稚貝の産出が期待できる。屋内飼育の場合、冬季に水温を上げる際は室温で調整し、ヒーターは用いない方がよい。熱帯魚飼育に用いるヒーターによりカワニナ類の火傷が認められた。
図2は、本発明の別の実施形態である飼育水槽を示している。
同図では、飼育水槽内を、水面近傍に設けられた成貝を収容する成貝用稚貝産出領域と、前記成貝用稚貝算出領域の下部に設けられた稚貝を飼育するための稚貝飼育領域とに隔成した点が特徴である。両領域は、網部材によって隔成されており、水の流通が可能である。また、網目としては収容された成貝が産出した稚貝が通過できる程度の網目であることが好ましい。つまり、産出された稚貝は、網目を通過して下部の稚貝飼育領域に移動して、人工水草に付着した珪藻類を捕食して成長する。
前記成貝用稚貝産出領域には、成貝用の餌となる朴木の落ち葉、あるいは飼料用ペレットを供給してもよい。要するに、成貝には大量に捕食可能な落ち葉やペレットを与え、産
出された稚貝には珪藻類を捕食できるような構造となっている。
出された稚貝には珪藻類を捕食できるような構造となっている。
本実施形態の2層構造の飼育水槽としたことにより、成貝の個体数と稚貝の個体数とが同時に目視で確認でき、産出率を一目で把握することができる。
本発明は、蛍の幼虫の餌となるカワニナ類の育成に利用できる。
Claims (4)
- 蛍幼虫の餌となるカワニナ類の飼育方法であって、
水温を摂氏15度乃至30度に維持し、濾過装置を用いて循環させた水槽中内で、
稚貝の殻成分を溶出する直径5乃至10cm程度の石灰石を配置し、
稚貝の餌となる珪藻の付着が容易な人工水草、朴木の落葉または魚や草食動物用の配合飼料ペレットを供給して、
カワニナ類を稚貝から成貝に至るまで飼育するカワニナ類の飼育方法。 - 蛍幼虫の餌としてのカワニナ類を飼育するための飼育水槽であって、
飼育水を張設した水槽と、
前記飼育水を環流させる濾過装置と、
前記飼育水を摂氏15度乃至30度に維持する水温制御装置と、
前記水槽の水中底面に敷設した直径5乃至10cm程度の石灰石と、
飼育水中に、稚貝の餌となる珪藻の付着が容易な人工水草、朴木の落葉または魚や草食動物用の配合飼料ペレットが選択的に供給された
カワニナ類の飼育水槽。 - 蛍幼虫の餌としてのカワニナ類を飼育するための飼育水槽であって、
飼育水を張設した水槽内を、水面近傍に設けられた成貝を収容する成貝用稚貝産出領域と、前記成貝用稚貝算出領域の下部に設けられた稚貝を飼育するための稚貝飼育領域とに隔成したカワニナ類の飼育水槽。 - 前記成貝用稚貝産出領域には、成貝の餌としての落葉または配合飼料ペレットが供給され、前記稚貝飼育領域には 稚貝の餌となる珪藻の付着が容易な人工水草が供給された請
求項3記載のカワニナ類の飼育水槽。
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JP2017201976A (ja) * | 2016-05-05 | 2017-11-16 | 鹿島建設株式会社 | 貝類飼育システム及び貝類飼育方法 |
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2010
- 2010-12-08 JP JP2010273674A patent/JP2012120480A/ja active Pending
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