JP2012112156A - 岩盤グラウト注入方法 - Google Patents

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遵 延藤
Hirokazu Sugiyama
博一 杉山
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Abstract

【課題】 塩水系地下水を含む岩盤内にグラウト注入を行う際に、グラウト材の所定のゲルタイムを確保し、有効な範囲にわたるグラウト注入を実現する。
【解決手段】 塩水系地下水環境下の岩盤亀裂に注入されるグラウト注入方法であって、グラウト孔からの水押し試験後に、水押し試験結果に基づき設定された所定水量の清水の追加注入を行い、その後、グラウト仕様の設定を行い、グラウト孔から清水が追加注入された岩盤亀裂内に適正注入圧、注入量のグラウト注入を行う。
【選択図】 図2

Description

本発明は岩盤グラウト注入方法に係り、特に塩水系地下水環境下にある岩盤の亀裂に注入するグラウト注入作業において、確実な施工が行え、十分なグラウト強度と品質とが確保できるようにした岩盤グラウト注入方法に関する。
コロイダルシリカグラウト工法は、粒径が10〜20nm程度のコロイド状に生成されたコロイダルシリカを、岩盤亀裂等に注入した後にゲル化させることで安定化させる岩盤グラウト技術である。現在、スウェーデン等の北欧諸国において、数十μmの微小な岩盤亀裂まで止水改良し、湧水量を数L/100m/分程度まで抑制することが要求される環境配慮型トンネルのトンネル周辺地盤の止水グラウトとして試験的に使用されている。また、同様に大深度の岩盤中に掘削された地下空間への湧水量を極めて微小な値に抑制することが要求される高レベル放射性廃棄物処分場の工事においても注目を集めているグラウト材料である。
コロイダルシリカグラウトを上述したような岩盤止水に用いる場合は、たとえば発破掘削による振動により、グラウト注入した領域の岩盤が損傷するおそれがあったり、トンネル周辺岩盤のグラウト注入領域へ補強ロックボルトを打設することによって、ボルト孔が水みちとなるおそれがあったり、地下300m以深の大深度下における掘削空間(坑道)の周囲に施工されたグラウト改良体に高い湧水圧が作用する場合等があり、これらのグラウトが晒される状況では、固化後のグラウトにある程度の強度性能が要求される。このため、シリカ濃度20〜30wt%程度の高濃度コロイダルシリカ水溶液を使用して、この高濃度コロイダルシリカ水溶液に硬化促進剤として無機塩を添加することで、水溶液中で電気的に安定しているシリカ粒子の電気二重層を破壊して、コロイダルシリカをゲル化させ、その後速やかに硬化を促進させ、早期に所定強度が確保されるようにしている。また、活性ケイ酸とコロイダルシリカとを有効成分とし、pHをアルカリ領域におさまるように調整し、シリカ濃度を高濃度にした場合に、よりコロイダルシリカの強度増進が図れるようにしたグラウト工法も提案されている(特許文献1参照)。
特開2004−35584号公報
沿岸地域においては、地下水が海水による影響を受けた塩水系地下水であることが多く、地下水中には塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の無機塩が存在する。このため、塩水系地下水環境においてコロイダルシリカを用いる場合は、注入時におけるゲルタイム調整ができず、ゲル化が急激に進行し、ダマ状の白濁ゲルが形成される。したがって、塩水を含む岩盤では、コロイダルシリカをグラウト材として微小な岩盤亀裂中に注入することは難しい。
一方、コロイダルシリカは酸性領域においてゲル化が遅延されるため、pH調整剤を用いてシリカ溶液を酸性にすることで注入時の急速なゲル化を抑制することは可能である。しかし、この場合は、グラウト液中に、周辺の地下水環境に与える影響が懸念される材料、たとえばpH調整剤(リン酸等)を使用することが必要になる上、pH調整剤の添加量によりゲル化時間が大きく変わるため、現場での注入材の計量管理を高い精度で行うことが要求され、施工上好ましくない。そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、塩水系地下水環境下において、その施工性、強度を十分確保できるようにした岩盤グラウト注入方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明は塩水系地下水環境下の岩盤亀裂に注入されるグラウト注入方法であって、グラウト孔からの水押し試験後に、該水押し試験結果に基づき設定された所定水量の清水の追加注入を行い、その後、前記グラウト孔から前記清水が追加注入された岩盤亀裂内にグラウト注入を行うことを特徴とする。
前記グラウト注入は、コロイダルシリカグラウト材を用い、該コロイダルシリカグラウト注入量は、前記水押し試験結果に基づいて設定され、予測されたグラウト注入量の少なくとも2倍量の清水を追加注入することが好ましい。
前記清水の追加注入量は、前記水押し試験結果のルジオン値に所定係数を乗じて設定することが好ましい。
以上に述べたように、本発明によれば、塩水系地下水を含む岩盤内にグラウト注入を行う際に、グラウト材の急激なゲル化が生じるのを緩和し、設計で予定された所定のゲルタイムを確保し、有効な範囲にわたり、所定量のグラウト注入を行うことができるという効果を奏する。
削孔したグラウト孔にコロイダルシリカグラウト注入を行うための全体設備の構成を示した説明図。 本発明のコロイダルシリカグラウト作業の作業手順を示した作業フローチャート。 グラウト孔先端部における清水の追加注水状態を示した施工説明図。 グラウト孔先端部におけるグラウト注入状態を示した施工説明図。
以下、本発明の岩盤グラウト注入方法を実施するための形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
図1は、所定深度の岩盤1位置にグラウト孔先端が位置した状態を示したグラウト孔2(断面)とグラウトの事前試験及び注入作業のための設備を併せて示した説明図である。同図には、グラウト設計のための事前試験としての、水押し試験のための設備と、グラウト注入作業のための設備とが地上部に設備されている。
本発明では、図1に示したグラウト孔先端位置を横切る亀裂に、高い濃度の塩分を含む地下水が浸透している状態(以下、塩水系地下水環境と呼ぶ。)を想定している。この塩水系地下水環境においては、上述したように、注入したグラウト材のゲルタイム調整が困難なことが知られている。そこで、以下、本発明の構成およびその作用により、有効なグラウト作業を実現する点について説明する。
グラウト孔2の先端に加圧部2bを形成するためにグラウト孔先端近傍に、パッカー3が配置されている。このパッカー3は地上の加圧ポンプ4の動作により膨張し、グラウト孔2の中央部に挿通されたグラウトパイプ5と孔壁2aとの間を閉塞し、グラウト孔先端の所定範囲にわたり、加圧部2bを形成する。
グラウト注入作業に利用されるグラウト設備として、地上部には、パイプ内圧力計6、流量計7、および清水タンク10、グラウトタンク11とそれぞれの材料を、切替弁9を介してグラウトパイプ5を通じて圧送する材料供給ポンプ8とが配備されている。
図1は、グラウト作業前における水押し試験の状態を示している。この水押し試験はルジオンテストを簡易手順で行うグラウト計画用の透水性試験であり、引き続き行われるグラウト作業におけるグラウト設計のための亀裂性岩盤の評価のために行う。試験は、清水注入圧力状態を昇圧、降圧時それぞれ2,3段階ごとに設定し、それぞれの圧力で安定した際の注入量を測定し、ルジオン値(Lu)、限界圧力を求める。また、試験時に得られた限界圧力は、後工程のグラウト作業時のグラウト最大注入圧として用いる。
この水押し試験の実施により、グラウト孔先端の加圧部2bに位置する、当初塩水で満たされていた亀裂12内には、高圧の孔内側から塩水を押し戻すように清水13が注入されることになる。したがって、グラウト孔2の周辺岩盤の亀裂12内は加圧注入された清水13で満たされることになる。本発明では、水押し試験の実施に引き続き、さらに所定量の清水13を追加注入し、清水13で満たされる亀裂のグラウト孔からの範囲を拡大させ、その後、清水13で満たされた各亀裂12内にコロイダルシリカグラウト注入を行うことを構成としている。
以下、この水押し試験の実施からグラウト作業までの一連の作業手順について、図2のフローチャート、図3,図4の作業状態図を参照して説明する。上述した水押し試験の実施により、ルジオン値、最大注入圧が得られるが、その際、グラウト注入の実績のない最初のグラウト範囲では、当初の水押し試験により注入された清水に対しての追加注水量を決定する必要がある。このために水押し試験の実施により求められたルジオン値を参照する。最初のグラウト範囲では、ルジオン値をもとにコロイダルシリカグラウト注入量が設定されるが、その前に追加注水量を設定する。その設定では、ルジオン値Luに対して所定の係数倍(200×Lu)リットルを想定している。これは、コロイダルシリカグラウトを行うような亀裂幅でのルジオン値は1Lu以下であり、その際のグラウト量がおよそ数十リットルから数百リットルの範囲であることが知られていることに基づいている。そこで、当初の追加注水量はルジオン値に対して所定の係数(たとえば200リットル)と設定することとした。
以後、グラウト箇所を移動した場合には、前回の注入量をフィードバックする情報化施工手法を用い、適正な係数を設定することが好ましい。このとき初期段階の追加注水量、グラウト注入実績にもとづく追加注水量は、それぞれグラウト注入量の少なくとも2倍程度にすることが安全側設計として好ましい。
本発明で使用するグラウト材としては、コロイダルシリカを主成分としたグラウト材を高強度に設定している。グラウト材の配合設計では、湧水圧により固化体が坑道内へと還流したり、湧水による希釈により注入したグラウト材が流失しないように、シリカ濃度は20〜30wt.%とすることが好ましい。さらに、コロイダルシリカグラウトのゲルタイム調整をのために、硬化促進剤としては、NaCl,KCl,CaCl2等の無機塩を添加することが好ましい。
上述した追加注水作業およびグラウト注入作業状況について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、グラウト孔先端部における水押し試験の実施後の追加注水状態を示した説明図である。水押し試験の結果、設定された追加注水量の清水13は、試験時に確認された最大注水圧で、同図に模式的に示したように、水押し試験ですでに注水された亀裂12内において、矢印先端付近まで注水される。この範囲では、被圧状態の地下水圧より大きい注水圧で清水13が亀裂内に入り込むため、矢印までの範囲の亀裂12内の塩水は希釈され、あるいは清水13と置換され、ほぼ清水13で満たされた状態にある。この矢印までの範囲は設計グラウト注入範囲より広い範囲に設定されている。
その後、図1に示した地上設備において、供給タンクとしての清水タンク10、グラウトタンク11の切り替えを行い、供給経路をグラウト注入用とする。グラウト注入開始時は、図3に示したように、グラウト孔先端部の加圧部2bに面する亀裂12内は、清水13あるいは塩分濃度が希釈された状態にある。その亀裂12部分に図4に示したように、コロイダルシリカグラウト(以下、単にグラウト)15による注入を行う。あらかじめ、グラウト注入量の少なくとも2倍程度の清水13が加圧注水された状態にあるため、その清水13部分を亀裂12の深部に押し込むように比重の大きなグラウト15が注入される。このため、清水13が注入されたグラウト15よりさらに深部に浸透するように、各亀裂12内は孔壁側からゲル状態のグラウト15で満たされる。このとき、塩分を含む地下水との接触は、その間に位置する清水あるいは塩分が希釈された地下水の範囲20で緩衝されるため、グラウト15のゲルタイムは塩分の影響を受けることなく、所定の範囲まで確実に浸透した状態でゲル化が進行する。
グラウト方法としてシングルパッカー3を盛り替えて行き、グラウト孔2内でのグラウト範囲(深度)を移動させて連続してグラウト注入作業を行うことが可能である。その場合には、図2に示したフローチャートに示したように、水押し試験の結果後、その前のグラウト範囲での注入実績を考慮した情報化施工を行うことにより、追加注水量、グラウト注入量を適正に設定することができる。このようにして、塩水系地下水環境の地下水が浸透している岩盤亀裂においても、水押し試験後に適正な追加注水を行うことで、その後の高品質のコロイダルシリカグラウトの注入作業を、確実かつ連続的に施工することができる。
1 岩盤
2 グラウト孔
2b 加圧部
3 パッカー
5 グラウトパイプ
10 清水タンク
11 グラウトタンク
12 亀裂
13 清水
15 グラウト

Claims (3)

  1. 塩水系地下水環境下の岩盤亀裂に注入されるグラウト注入方法であって、グラウト孔からの水押し試験後に、該水押し試験結果に基づき設定された所定水量の清水の追加注入を行い、その後、前記グラウト孔から前記清水が追加注入された岩盤亀裂内にグラウト注入を行うことを特徴とする岩盤グラウト注入方法。
  2. 前記グラウト注入は、コロイダルシリカグラウト材を用い、該コロイダルシリカグラウト注入量は、前記水押し試験結果に基づいて設定され、該グラウト注入量の少なくとも2倍量の清水が追加注入されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の岩盤グラウト注入方法。
  3. 前記清水の追加注入量は、前記水押し試験結果のルジオン値に所定係数を乗じて設定したことを特徴とする請求項1に記載の岩盤グラウト注入方法。
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