JP2012107898A - 電力ケーブル接続部の劣化診断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電力ケーブル接続部の劣化状況をより的確に判定可能な診断技術を提供することを目的とする。
【解決手段】架橋ポリエチレン絶縁ケーブルにおける接続部の経時使用により劣化したシリコーンオイルを採取し、採取したシリコーンオイルを赤外分光分析法により分析し、得られたシリコーンオイルのスペクトルにおいて、シリコーンオイルの劣化により生じる構造に由来する劣化物特有吸収ピークPkの高さに基づいて接続部における放電エネルギーの大きさを推定することにより、接続部の劣化状況を判定する。特に、シリコーンオイルの構造のうち接続部の経時使用によっても変化しない構造に由来するベース吸収ピークPbの高さHPbに対する劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkの比率(HPk/HPb)に基づいて判定を行う。
【選択図】図5

Description

本発明は、電力ケーブル接続部の劣化診断方法に関する。
従来、CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ケーブル)の終端接続部のような高圧ケーブルの接続部においては、絶縁補強と電界緩和のために、ストレスコーンと呼ばれるゴムモールド成形品が装着される。このストレスコーンをケーブル終端部に装着する際には、ストレスコーンの内面に潤滑油としてのシリコーンオイルを塗布しておき、ケーブル終端部をストレスコーンの貫通孔に挿入する。
特開平9−229831号公報
ところで、このような接続部では、ケーブルとストレスコーンとの界面において部分放電が発生する結果、界面に存在するシリコーンオイルが劣化し、析出物の発生等の劣化現象が生じる。このような劣化現象の診断技術としては、これまでに、放電生成ガスの一種であるアセチレンを検出し、その濃度により判定を行う技術(例えば特許文献1参照)等が提案されているが、未だ十分に確立されているとはいえない。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電力ケーブルの接続部の劣化状況をより的確に判定可能な診断技術を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段として、本発明の電力ケーブル接続部の劣化診断方法は、架橋ポリエチレン絶縁ケーブルの端部と、この架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと接合される相手側ケーブルと、前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと前記相手側ケーブルとの接合部に取り付けられ、前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルおよび前記相手側ケーブルの周囲を覆う被覆体と、前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルおよび前記相手側ケーブルと前記被覆体との界面に存在するシリコーンオイルと、を備える電力ケーブルの接続部において、前記接続部の経時使用により劣化した前記シリコーンオイルを採取する採取工程と、前記採取工程で採取した前記シリコーンオイルを赤外分光分析法により分析する分析工程と、前記分析工程で得られた前記シリコーンオイルのスペクトルにおいて、前記シリコーンオイルの分子構造のうち前記シリコーンオイルの劣化により生じる構造に由来する劣化物特有吸収ピークの高さに基づいて前記接続部における放電エネルギーの大きさを推定することにより前記接続部の劣化状況を判定する判定工程と、を含むものである。
また、本発明の他の電力ケーブル接続部の劣化診断方法は、架橋ポリエチレン絶縁ケーブルの端部と、この架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと接合される相手側ケーブルと、前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと前記相手側ケーブルとの接合部に取り付けられ、前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルおよび前記相手側ケーブルの周囲を覆う複数の被覆体と、前記複数の被覆体のうち一の被覆体と他の被覆体との界面に存在するシリコーンオイルと、を備える電力ケーブルの接続部において、前記接続部の経時使用により劣化した前記シリコーンオイルを採取する採取工程と、前記採取工程で採取した前記シリコーンオイルを赤外分光分析法により分析する分析工程と、前記分析工程で得られた前記シリコーンオイルのスペクトルにおいて、前記シリコーンオイルの分子構造のうち前記シリコーンオイルの劣化により生じる構造に由来する劣化物特有吸収ピークの高さに基づいて前記接続部における放電エネルギーの大きさを推定することにより前記接続部の劣化状況を判定する判定工程と、を含むものである。
劣化物特有吸収ピークとしては、例えば3300cm−1または1650cm−1に位置するピークを使用できる。
判定工程において、判定は、劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkのみに基づいて行ってもよいが、シリコーンオイルの分子構造のうち接続部の経時使用によっても変化しない構造に由来するベース吸収ピークPbの高さHPbに対する劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkの比率(HPk/HPb)に基づいて行うことが好ましい。
この場合、ベース吸収ピークとしては、例えば1250cm−1または800cm−1に位置するピークを使用できる。
本発明によれば、電力ケーブル接続部の劣化状況をより的確に判定できる。
CVケーブル終端接続部の断面図 課電試験における試験装置の概略図 課電試験における部分放電測定回路の概略図 課電試験において、吸収比(HPk(3300cm−1)/HPb(1250cm−1))と放電エネルギーとの関係を示すグラフ 課電試験において、吸収比(HPk(1650cm−1)/HPb(1250cm−1))と放電エネルギーとの関係を示すグラフ
以下、本発明の劣化診断方法をCVケーブルの終端接続部に適用した場合を例にとり説明する。本発明の劣化診断方法の適用対象となるCVケーブルの終端接続部を図1に示した。
この終端接続部1においては、CVケーブル2の端部と、このCVケーブル2と相手側ケーブル3とが接合され、接合部の周囲がストレスコーン4(本発明の一の被覆体に該当する)により覆われている。ストレスコーン4は、中心にケーブルを通すための貫通孔5を有する略紡錘形をなし、ケーブル終端または相手側ケーブル3側の絶縁体部分6と、ケーブル本体側の半導電体部分7を一体成形してなる。このストレスコーン4をCVケーブル2の終端部に装着する際には、貫通孔5の内面に潤滑油としてのシリコーンオイルを塗布しておき、CVケーブル2の終端部をストレスコーン4の貫通孔に挿入する。したがって、CVケーブル2および相手側ケーブル3の表面とストレスコーン4における貫通孔5の内周面との界面にはシリコーンオイルが存在することとなる。また、ストレスコーン4において相手側ケーブル3側の部分は周囲をエポキシ座8(本発明の他の被覆体に該当する)により覆われており、ストレスコーン4とエポキシ座8との界面にも潤滑油としてのシリコーンオイルが存在している。
このような終端接続部1においては、CVケーブル2とストレスコーン4との界面、またはストレスコーン4とエポキシ座6との界面において部分放電が発生する結果、界面に存在するシリコーンオイルが劣化し、析出物の発生等の劣化現象が生じる。通常、最も放電が生じ易い箇所は電界強度の大きい半導電体部分7の立上り部である。電界強度は小さいが欠陥があるような場合はストレスコーン4とエポキシ座6との界面も放電劣化部の対象となる。
ストレスコーン4とCVケーブル2との界面及びストレスコーン4とエポキシ座6との界面は密閉構造となっているため、何らかの不具合により界面が負圧になる場合もあり、負圧状態では運転電界の条件でも放電が容易に生じることを本発明者らは見出している。
このような劣化現象の状態を診断するためには、まず、経時使用した終端接続部1から、CVケーブル2とストレスコーン4との界面、またはストレスコーン4とエポキシ座6との界面に存在するシリコーンオイルを採取する(採取工程)。シリコーンオイルは、劣化があまり進行していない場合には液状であるが、劣化が進行するとゲル状になっていたり、固形化した析出物となっていたりすることがある。
次に、採取工程で採取したシリコーンオイルを赤外分光分析法により分析する(分析工程)。分析装置としては、FT−IR(フーリエ変換赤外分光分析装置)を使用することができる。
次に、分析工程で得られたシリコーンオイルのスペクトルにおいて、シリコーンオイルの劣化により生じる構造に由来する劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkに基づいて終端接続部の劣化状況を判定する(判定工程)。
ここで、劣化物特有吸収ピークとは、劣化したシリコーンオイルの分子構造中、劣化により生じる官能基等の構造に由来する吸収ピークであって、その例としては3300cm−1または1650cm−1に位置する吸収ピークが挙げられる。ここで、3300cm−1に現れる吸収ピークは水酸基(OH)の吸収ピーク、1650cm−1に現れるピーク吸収はカルボニル基(C=O)の吸収ピークであると考えられる。これらの水酸基やカルボニル基は、放電によるシリコーンオイルの酸化によって生成したものと考えられる。
判定は、劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkのみに基づいて行ってもよいが、分析工程に供されるシリコーンオイルの分量等にばらつきがあっても精度よく判定を行えるように、ベース吸収ピークPbの高さHPbに対する劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkの比率(HPk/HPb)に基づいて行われることが好ましい。ベース吸収ピークとは、劣化したシリコーンオイルの分子構造のうち、終端接続部の使用中に発生する部分放電によっても変化しない構造に由来する吸収ピークであって、その例としては1250cm−1または800cm−1に位置する吸収ピークが挙げられる。終端接続部1において使用されるシリコーンオイルは通常、ジメチルシリコーンであり、1250cm−1、800cm−1に現れるピークはいずれもSi−CHの吸収に由来するものであると考えられる。
劣化状態の判定は、上記の劣化物特有吸収ピークPkの高さHPk、またはベース吸収ピークPbの高さHPbに対する劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkの比率(HPk/HPb)に基づき、終端接続部1においてCVケーブル2とストレスコーン4との界面、またはストレスコーン4とエポキシ座6との界面に存在するシリコーンオイルが受けた放電エネルギーの大きさを推定することにより行われる。ここで、本発明者らは、劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkとシリコーンオイルが受ける放電エネルギーとの間には相関関係があり、特に、ベース吸収ピークPbの高さHPbに対する劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkの比率(HPk/HPb)と放電エネルギーとが概ね直線的な相関関係を示すことを見出した。したがって、あらかじめ、ピーク比率(HPk/HPb)と放電エネルギーとの相関を表す回帰式を求めておき、終端接続部1から採取した劣化シリコーンオイルを分析して求めたピーク比率(HPk/HPb)をその回帰式に代入することにより、放電エネルギーを推定することができる。そして、推定された放電エネルギーの大きさにより、終端接続部1の余命等の判断を行うことが可能となる。
以上のように本実施形態の劣化診断方法によれば、電力ケーブルの終端接続部の劣化状況をより的確に判定可能である。
なお、終端接続部に限らず、ゴムストレスコーンとエポキシ注型品を組み合わせた中間接続部であるプレハブジョイントの界面も本発明の対象となる。
CVケーブル終端接続部においてケーブルとストレスコーンとの界面での部分放電を模擬したサンプルを作成し、課電劣化試験を行ってシリコーンオイルの劣化状況を検証した。
上記のように、ストレスコーンとCVケーブルとの界面は密閉構造となっているため、何らかの不具合により界面が負圧になる場合もあり、負圧状態では運転電界の条件でも放電が容易に生じることを本発明者らは見出している。そこで、この状態を模擬した負圧条件での部分放電劣化試験を行った。
試験装置10および試料20の概略図を図2に示した。
1.試料
CVケーブル絶縁体と同種のXLPE(架橋ポリエチレン)製のシート21(70mm×70mm)を、一定の課電電圧(5kV)に対して所定の電界レベルとなる厚さに調整した。すなわち、XLPEシート厚は電界が2.3kV/mm又は3.4kV/mmとなるように2.17mm(5/2.17=2.3kV/mm用)又は1.47mm(5/1.47=3.4kV/mm用)とした。2.3kV/mm及び3.4kV/mmは77kVクラスCVケーブル終端のケーブル/ストレスコーン立上り部の電界範囲の最小値(小導体サイズ対象)と最大値(大導体サイズ対象)相当の値である(表1参照)。なお、後述表2の試料No1〜No6は2.3kV/mm試験、No7〜No12は3.4kV/mm試験のデータである。
また、前述のように本試験は負圧下の課電試験を行っており、負圧条件では沿面放電が起きる。これを避けるため、後述のように試料の周囲をフッ素油に浸漬している。そのため、LDPE(低密度ポリエチレン)製の絶縁ブロック22に直径30mmの貫通孔23を形成して、これをXLPEシートの上面に載置し、その内部にシリコーンオイル24を入れた。このようにLDPEブロックにより浸漬油(フッ素油)の侵入を防ぐ構造としており、LDPEは同時にシリコーンオイルの流出を防ぐ役割も果たしている。
なお、シリコーンオイル24としては、ジメチルシリコーン(信越化学工業(株)製 KF−96−1000cs)を使用し、貫通孔23内部のシリコーンオイル24の油膜厚を100μmとした。
2.試験装置
デシケータ11内に上記1.で準備した試料20の複数個を設置し、試料20の下部が絶縁油としてのフッ素油12に浸漬されるようにした。デシケータは内部の観察ができるように透明プラスチック製(アクリル樹脂製)のものを用い、沿面破壊防止用のフッ素油はデシケータに直接接触するので、アクリル樹脂に対する耐油性と絶縁性を考慮してフッ素油を用いている。
先端部直径15mmの棒電極13の先端をシリコーンオイル油膜に浸漬した。棒電極先端の油膜との境界でできる空隙部がCVケーブル/ストレスコーン界面の欠陥(空隙部)を模擬しており、電圧印加時に主にこの箇所が放電してシリコーンオイルの劣化生成物を発生させる。
試料20におけるXLPEシート21の下面に接地板14を設置し、接地線15を介して接地した。各棒電極13を、スイッチ16を介して直流高電圧電源17に接続した。
前述のように負圧課電では放電劣化の加速試験とできるため、 室温環境下で、60mmHg減圧下で課電試験を行った。スイッチ16を順次切り替えることにより各試料20を順次PD(部分放電)測定回路30に接続して初期PDを測定した。PD測定回路30の回路構成を図3に示す。図3において、31はトランス、32は分圧器、33は電圧計、34はカップリングコンデンサ、35はPD検出抵抗、36は校正パルス発生器、37はPD測定器である。
初期PD測定後、課電をスタートさせた。スタート後、所定時間経過毎にPD測定を行うとともに、分析用としてシリコーンオイルの劣化物を少量採取した。
試験に供した試料の種類を表1に示す。
Figure 2012107898
3.結果
(1)シリコーンオイルの目視観察
第1回経時PD測定時(課電スタート後約14日=343hr経過時)においては、 シリコーンオイルの変質は小さかった。このため、分析用シリコーンオイル劣化物の採取は見送った。
第2回経時PD測定(課電スタート後約27日=653hr経過時)においては、シリコーンオイルのゲル化がかなり進行していた。
第3回経時PD測定(課電スタート後約56日=1343hr経過時)においては、シリコーンオイルは棒電極の直下ではゲル状、それ以外では固形化にまで達していた。
第4回経時PD測定(課電スタート後約97日=2327hr経過時)においては、シリコーンオイルは棒電極の直下ではゲル状、それ以外では固形化が前回採取時よりも進行していた。
(2)放電エネルギーの算出
PD測定により取得した各試料についてのPD測定チャートから平均放電電荷量と放電頻度を読み取り、下記式(1)、(2)より放電エネルギーを計算した。
QT=Qa×放電頻度×放電期間...(1)
E=(1/2)QT×5000...(2)
なお、Qa:平均放電電荷量(単位:pC)、QT:トータル放電電荷量(単位:C)、放電頻度(単位:pps)、放電期間(単位:s)であり、式(2)中の5000は課電電圧を表す。
また、第2回〜第4回PD測定時における合計放電エネルギー(部分放電によりシリコーンオイルが受けた放電エネルギーの累積値)を算出した。合計放電エネルギーの算出法は、以下のようである。
例えば、「初期PD測定〜第1回経時PD測定」間(課電時間343hr)の算出は、初期PD時の放電が343hr継続したとして算出した計算値と第1回経時PD測定時の放電が343hr継続したとして算出した計算値との平均値を合計放電エネルギーとした。「第1回経時PD測定〜第2回経時PD測定」間、「第2回経時PD測定〜第3回経時PD測定」間、「第3回経時PD測定〜第4回経時PD測定」間についても同様に求め、その合計値により算出した。
初回PD測定における放電エネルギー、および第2回〜第4回PD測定における合計放電エネルギーの算出結果を表2に示す。
Figure 2012107898
(3)赤外分光分析
第2回経時PD測定〜第4回経時PD測定において採取したシリコーンオイル劣化物をFT−IR(フーリエ変換赤外分光分析装置)により分析した。
測定サンプルのスペクトルには、劣化していないシリコーンオイルのスペクトルには認められない3300cm−1、1650cm−1の吸収ピーク(以下、「劣化物特有ピークPk」という)が特徴的に観測された。3300cm−1のピークは水酸基(OH)の吸収ピークであり、1650cm−1のピークはカルボニル基(C=O)の吸収ピークであると考えられる。これらの水酸基やカルボニル基は、放電によるシリコーンオイルの酸化によって生成したものと考えられる。
(4)赤外分光分析における吸収ピークと放電エネルギーとの相関についての検討
第2回経時PD測定〜第4回経時PD測定において採取したシリコーンオイル劣化物のうち、棒電極に付着したシリコーンオイル劣化物を採取したものを選択し、対象試料とした。なお、棒電極に付着した劣化物を解析対象としたのは、直接大きい放電エネルギーに晒され、放電エネルギーの反映が大きいと考えられるためである。
課電の前後で吸収ピークの大きさの変化が少ない1250cm−1、800cm−1の吸収ピークをベース吸収ピークPbとし、このベース吸収ピークPbの高さHPbに対する劣化物特有ピークPkの高さHPkの比率(HPk/HPb)(以下、「吸収比(HPk/HPb)」という)と放電エネルギーとの相関を検討した。なお、吸収ピークの高さが最も低い1900cm−1のピークの頂点の高さをベースラインとしこの、ベースラインから各吸収ピークの頂点までの距離をその吸収ピークの高さとした。
合計放電エネルギーを横軸、吸収比(HPk/HPb)を縦軸としたグラフ上に各試料のデータをプロットし、回帰直線を求めたものを、図4および図5に示した。なお、図4においては、吸収比として1250cm−1のベース吸収ピークの高さHPb(1250cm−1)に対する3300cm−1の劣化物特有ピークの高さHPk(3300cm−1)の比率(HPk(3300cm−1)/HPb(1250cm−1))を用いた。また、図5においては、吸収比として1250cm−1のベース吸収ピークの高さHPb(1250cm−1)に対する1650cm−1の劣化物特有ピークの高さHPk(1650cm−1)の比率(HPk(1650cm−1)/HPb(1250cm−1))を用いた。
吸収比(HPk(3300cm−1)/HPb(1250cm−1))と合計放電エネルギー、および吸収比(HPk(1650cm−1)/HPb(1250cm−1))と合計放電エネルギーとの間には、ほぼ直線的な相関が認められることが分かった。特に、吸収比(HPk(1650cm−1)/HPb(1250cm−1))を用いた場合(図5)に良好な相関が認められた。
このことより、あらかじめ、ピーク比率(HPk/HPb)とシリコーンオイルが受けた放電エネルギーの累積値との相関を表す回帰式を求めておき、終端接続部から採取した劣化シリコーンオイルを分析して求めたピーク比率(HPk/HPb)をその回帰式に代入することにより、終端接続部の経時使用中にシリコーンオイルが受けた放電エネルギーの累積値を推定することができる、といえる。そして、推定された放電エネルギーの大きさに基づいて、終端接続部の余命等の判断を行うことが可能と考えられる。
例として、経年撤去のCVケーブル終端部を回収・解体して採取した析出物をFT−IRにより分析して吸収比(HPk(3300cm−1)/HPb(1250cm−1))、(HPk(1650cm−1)/HPb(1250cm−1))を算出し、それぞれ図4および図5の回帰直線上にプロットして受けた放電エネルギー量を推定した。2つの析出物のプロットを、図4、図5中にそれぞれ「実機析出物1」「実機析出物2」として示す。
図5より、実機析出物1(経年29年品)の受けた放電エネルギー量は3.2×10J、実機析出物2(経年19年品)の受けた放電エネルギー量は2.0×10Jと推定された。
1...終端接続部(接続部)
2...CVケーブル
3...相手側ケーブル
4...ストレスコーン(一の被覆体)
8...エポキシ座(他の被覆体)

Claims (5)

  1. 架橋ポリエチレン絶縁ケーブルの端部と、
    この架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと接合される相手側ケーブルと、
    前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと前記相手側ケーブルとの接合部に取り付けられ、前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルおよび前記相手側ケーブルの周囲を覆う被覆体と、
    前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルおよび前記相手側ケーブルと前記被覆体との界面に存在するシリコーンオイルと、を備える電力ケーブルの接続部において、
    前記接続部の経時使用により劣化した前記シリコーンオイルを採取する採取工程と、
    前記採取工程で採取した前記シリコーンオイルを赤外分光分析法により分析する分析工程と、
    前記分析工程で得られた前記シリコーンオイルのスペクトルにおいて、前記シリコーンオイルの分子構造のうち前記シリコーンオイルの劣化により生じる構造に由来する劣化物特有吸収ピークの高さに基づいて前記接続部における放電エネルギーの大きさを推定することにより前記接続部の劣化状況を判定する判定工程と、を含む、電力ケーブル接続部の劣化診断方法。
  2. 架橋ポリエチレン絶縁ケーブルの端部と、
    この架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと接合される相手側ケーブルと、
    前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルと前記相手側ケーブルとの接合部に取り付けられ、前記架橋ポリエチレン絶縁ケーブルおよび前記相手側ケーブルの周囲を覆う複数の被覆体と、
    前記複数の被覆体のうち一の被覆体と他の被覆体との界面に存在するシリコーンオイルと、を備える電力ケーブルの接続部において、
    前記接続部の経時使用により劣化した前記シリコーンオイルを採取する採取工程と、
    前記採取工程で採取した前記シリコーンオイルを赤外分光分析法により分析する分析工程と、
    前記分析工程で得られた前記シリコーンオイルのスペクトルにおいて、前記シリコーンオイルの分子構造のうち前記シリコーンオイルの劣化により生じる構造に由来する劣化物特有吸収ピークの高さに基づいて前記接続部における放電エネルギーの大きさを推定することにより前記接続部の劣化状況を判定する判定工程と、を含む、電力ケーブル接続部の劣化診断方法。
  3. 前記劣化物特有吸収ピークが3300cm−1または1650cm−1に位置するピークである、請求項1または請求項2に記載の電力ケーブル接続部の劣化診断方法。
  4. 前記判定工程が、前記シリコーンオイルの分子構造のうち前記接続部の経時使用によっても変化しない構造に由来するベース吸収ピークPbの高さHPbに対する前記劣化物特有吸収ピークPkの高さHPkの比率(HPk/HPb)に基づいて判定を行うものである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電力ケーブル接続部の劣化診断方法。
  5. 前記ベース吸収ピークが1250cm−1または800cm−1に位置するピークである、請求項4に記載の電力ケーブル接続部の劣化診断方法。
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