JP2012101232A - 亜鉛めっき鋼板の隅肉アーク溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】亜鉛めっき鋼板のアーク溶接においてピット・ブローホール等の気孔欠陥、アンダーカット等の溶接不良を抑制でき、さらに耐ギャップ性が良好な亜鉛めっき鋼板の隅肉アーク溶接方法を提供することを目的とする。
【解決手段】亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接において、溶接金属中のSi含有率が質量%で0.5%以下であり、且つ上板の鋼板中のSiとAlの含有率の合計が質量%で0.35%以上であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法および溶接継手。
【選択図】図3

Description

本発明は、自動車等の構造部材として用いられる亜鉛めっき鋼板の溶接に関し、特にブローホールやピット等の溶接欠陥の発生を防止しつつ、良好な継手強度を得ることができる亜鉛めっき鋼板の隅肉アーク溶接方法に関するものである。
近年、自動車分野では車体重量軽減による燃費向上の観点から、高張力鋼板の適用による鋼材の薄厚化が進められている。さらに、鋼材の薄厚化に伴いともない、腐食による鋼材の穴開きが懸念されるようになり、腐食防止の観点から高強度亜鉛めっき鋼板の適用が検討されている。
鋼板の重ね隅肉アーク溶接は、図1に示すように、2枚の鋼板を重ね、一方の鋼板の端部(端面とその近傍部分)をもう一方の鋼板の表面に重ね、隅肉アーク溶接するものである。この端部を溶接する鋼板を上板、上板端部と溶接する表面を有する鋼板を下板という。一般に隅肉溶接する場合、上板を鉛直方向の上に、下板を下にして、上下に重ね、下向きに溶接ワイヤーを接近させて隅肉溶接をすることから、このように呼称する。しかし、実際の重ね隅肉溶接は、鉛直方向の上下に限られたものでなく、前述したような重ね方をした鋼板の相対的位置関係をもって上板、下板を定義するものである。
亜鉛めっき鋼板のアーク溶接では、溶接に伴う入熱により多量の亜鉛めっきが蒸発するため、溶接時の溶滴移行状態が不安定となりスパッタが増加するとともに、溶融金属内に亜鉛蒸気が混入することによってブローホールやピットが発生する(図1(a))。このスパッタ増加や溶接部のブローホール欠陥が、継手強度を低下させるため問題となる。
亜鉛めっき鋼板溶接時のスパッタおよびブローホールを低減させる技術として、重ね合わせ溶接する両部材間に0.5mm程度の間隙を設け、発生したガスを溶接部と反対側へ逃がすことが有効であることが知られている(例えば、特許文献1(特開平7-246465号公報))。図1(b)にその概要を示す。
前述したブローホール対策のための間隙に対する溶接条件範囲は狭く、この間隙に対する溶接性(耐ギャップ性)を改善するため、溶接ワイヤーにS(硫黄)やO(酸素)を添加することも提案されている(例えば特許文献2(特開平9−239583号公報))。SとOを溶接ワイヤーに添加することにより、溶接溶け込みを減少すると共に、ビード幅の拡大と溶接金属の母材濡れ性を向上し架橋性を改善することが、耐ギャップ性改善に結びついている。
さらに、亜鉛めっき鋼板に限らず、自動車用等の薄板の溶接においては、アンダーカットが発生すると応力集中が生じ、溶接継手の疲労強度を劣化させる原因となる。このため、薄板の高速アーク溶接において、アンダーカットなどがなく溶接止端部形状を改善させる目的で、被溶接材である鋼板中のSi(珪素)含有量と溶接ワイヤー中のSi含有量を規定することが提案されている(例えば特許文献3(特開2009−225476号公報))。
特開平7-246465号公報 特開平9−239583号公報 特開2009−225476号公報
高強度亜鉛めっき鋼板のアーク溶接においては、前述したように、亜鉛ガスによるピット・ブローホールの気孔欠陥の発生、スパッタの増加、アンダーカット等の溶接不良、間隙に対する溶接許容性(耐ギャップ性)の問題点がある。
特許文献1では、ブローホール抑制のための間隙を正確に設定する方法を示しているが、この方法を採用できる部分は限られている。さらに、溶接中は鋼板の熱変形が発生し、一定の間隙(ギャップ)を維持することが難しく、均質な溶接品質を保てないという問題がある。このため、ギャップ変動への対応性のよい、つまり耐ギャップ性のよい溶接ワイヤー、溶接方法が求められている。
特許文献2は、耐ギャップ性を改善する溶接ワイヤーを開示しているが、溶接ワイヤーの成分を規定することに留まり、被溶接材である鋼板の成分によっては、耐ギャップ性の改善効果は得られないという問題がある。また、特許文献2で言及している耐ギャップ性とは、被溶接材である2枚の鋼板の上板と下板との架橋性についてのみである。したがって、ギャップにも影響されるアンダーカット等の溶接不良については言及しておらず、総合的な耐ギャップ性のよい溶接方法が求められている。
特許文献3は、薄鋼板の隅肉アーク溶接継手において、高速溶接においても高疲労強度を確保する溶接方法に関するものである。薄鋼板の溶接継手の総合的な評価指標として疲労強度を取り上げており、総合的な観点からの溶接方法を提案している。しかし、対象はめっきではない薄鋼板であるので、亜鉛めっき鋼板の溶接に特有の問題点である、ブローホール、スパッタ、耐ギャップ性については考慮していない。
以上のように、亜鉛めっき鋼板のアーク溶接においては、ピット・ブローホールの気孔欠陥、スパッタ、アンダーカット等の溶接不良、耐ギャップ性の全てを満足する溶接方法はまだなく、その開発が求められている。特に溶接継手強度に直結するピット・ブローホールの気孔欠陥、アンダーカット等の溶接不良を抑制でき、さらに耐ギャップ性が良好な亜鉛めっき鋼板の隅肉アーク溶接方法の開発は喫緊の課題であることから、本発明は、この課題を解決し、安定した亜鉛めっき鋼板の隅肉アーク溶接方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ブローホールの発生は、溶接金属中のSi含有量が強く影響することがわかった。解析の結果、溶接金属中のSi含有量が質量%で0.5%未満であればブローホールの発生が抑制されることを見出した。また、さらに耐ギャップ性に関する検討を進めた結果、被溶接材である鋼板中のSi含有量とAl含有量が耐ギャップ性(ギャップ寸法に対する溶接安定性)の維持に影響することがわかった。解析の結果、鋼板中のSi含有量とAl含有量が、質量%で0.35%以上であれば良好な耐ギャップ性が得られることを見出した。
本発明は、これら知見を基になされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)2枚の亜鉛めっき鋼板を、上板となる鋼板の端部が下板となる鋼板の表面に位置するように重ね、該上板の端部に沿って該上板と該下板を溶接する亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法において、溶接金属中のSi含有率が質量%で0.5%以下であり、且つ前記2枚の亜鉛めっき鋼板の前記上板の母材である鋼板中のSiとAlの含有率の合計が質量%で0.35%以上であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法。
(2)また、前記上板と前記下板の間に上板の板厚のX%の幅の間隙を設けたとき、前記溶接金属中のSi含有率が質量%で 0.5+X/800 %以下であることを特徴とする(1)に記載の亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法。つまり、前記上板と前記下板の間に上板の板厚の75%以上80%以下の幅の間隙を設け、前記溶接金属中のSi含有率が質量%で0.6%以下であることを特徴とする(1)に記載の亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法。
(3)前記上板と前記下板の間に間隙なく重ねることを特徴とする(1)に記載の亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法。
(4)2枚の亜鉛めっき鋼板を、上板となる鋼板の端部が下板となる鋼板の表面に位置するように重ね、該上板の端部に沿って該上板と該下板を溶接する亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接継手において、溶接金属中のSi含有率が質量%で0.5%以下であり、且つ前記2枚の亜鉛めっき鋼板の前記上板の母材である鋼板中のSiとAlの含有率の合計が質量%で0.35%以上であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接継手。
(5)前記上板と前記下板の間に上板の板厚の75%以上80%以下の幅の間隙を設け、前記溶接金属中のSi含有率が質量%で0.6%以下であることを特徴とする(4)に記載の亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接継手。
(6)前記上板と前記下板の間に間隙なく重ねることを特徴とする(4)に記載の亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接継手。
本発明は、亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接において、ブローホールやアンダーカットを抑制し、耐ギャップ性も良好な、高品質の溶接継手を得るという効果を奏する。
鋼板の重ね隅肉アーク溶接の概念を示す図である。図1(a)は、ブローホール、スパッタの概念を示し、図1(b)(c)は重ね隅肉アーク溶接部の断面の概念を示す図である。図1(b)は上板と下板の間にギャップがない場合を、図1(c)はギャップがある場合の概念図である。 亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接部のX線透過写真を示す図である。図2(a)は、ブローホール率4%の場合の、図2(c)は、ブローホール率17%の場合の図である。 亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接において、溶接金属中のSi含有量とブローホール率の関係を示す図である。 亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接において、ギャップがない場合とギャップがある場合(上板厚の75―80%の場合)の関係を示す図である。 亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接の断面の一例を示す図である。図5(a)は、アンダーカット長さが過大で、のど厚も基準値に達していない場合の例、図5(b)は、のど厚は基準値に達しているもののアンダーカット長さが過大な場合の例、図5(c)は、のど厚もアンダーカット長さも適正範囲に達した例を示す。
以下に、本発明の実施の形態について実施例に従い、詳細に説明する。
まず、本発明で解決しなければならないブローホールについて説明する。
ブローホールは、溶接時の入熱により、鋼板表面にめっきされた亜鉛や亜鉛合金から、融点の低い亜鉛が蒸発し、ガス状となって、溶接金属中に発生するものである。溶接金属が溶融状態のうちに発生するため、溶接金属の凝固とともに、溶接金属中に閉じ込められ、溶接金属中の空孔となる。これがブローホールである。
また、溶融中の溶接金属中で成長したブローホールが、溶接金属表面に達し大気開放し、そのまま溶接金属が凝固するため、溶接金属表面に開孔する。これがピットである。
図2(a)(b)に、パルスアーク溶接機で、亜鉛合金めっき鋼板を重ね隅肉溶接したときのX線透過写真の一例を示す。黒く見える部分がブローホールである。図2(a)にブローホール率4%のX線投影写真を、図2(b)にブローホール率17%のX線投影写真を示す。ブローホール率は、溶接継手のX線透過写真において、溶接ビードに平行に直線を引き、その直線が横切るブローホールの長さを累計したものが、その直線長さに占める割合を示す。図2(a)(b)では、溶接ビード長さ50mmあたりのブローホール率を示している。
ブローホールおよびピットは、本質的同等のものであり、X線透過写真ではどちらも黒く写るため、ブローホール率には、ピットも含まれている。以下、単にブローホールと呼ぶときは、ピットも含んでいるものとする。
一般に溶接継手は母材に比べて溶接金属の強度を高め、溶接金属での破断を防ぐように設計される。特に亜鉛めっき鋼板のような薄鋼板の溶接では、比較的低入熱溶接のため溶接金属の冷却速度が速くなり、溶接金属の合金成分による焼入れ性増加の効果と相まって、溶接金属の硬度(引張強さ)が母材に比べて30%〜50%増加する。このため、溶接金属の内部にブローホール率で20%程度のブローホールが存在する溶接継手の引張試験を行っても、溶接金属での破断は起こらず、母材もしくは溶接熱影響部での破断となる。
発明者らの重ね隅肉溶接継手での調査検討によれば、ブローホール率20%以下であれば継手の強度劣化はほとんどないことが確認されている。そのため、ブローホール率20%未満を「良好」とし、ブローホール率20%以上を「不良」として評価した。
次に溶接金属中のSi量について検討した。一般的に溶接ワイヤーには、溶接金属の脱酸のために、Siが0.2〜1.5%程度添加されている。この脱酸元素が不十分の場合は、鋼中のCと溶接雰囲気中の酸素が反応しCOガスが発生するため、これに起因するブローホールが発生してしまう。
一方で亜鉛めっき鋼板の溶接では、過剰なSi添加は脱酸反応が過剰となり、溶接金属中の酸素をスラグアウトさせ、溶接金属の粘性・表面張力を高めてしまう問題がある。溶接金属の粘性・表面張力が高くなると、溶融金属中に生成されたブローホールが溶融金属外に排出されることを妨げ、ブローホールを残存させてしまう。そこで、溶接金属中のSi量を低減させ、ブローホール排出性を改善することを試みた。
そこで、発明者らは溶接金属中のSi含有量とブローホール発生(ブローホール率)との関係に着目し、実験を行った。
鋼板は、上板、下板とも同じものとし、表1に示すようにSi含有量の異なる鋼板を使用した。溶接ワイヤーについても、表2に示すようにSi含有量の異なるワイヤーを使用した。また、溶接条件については、表3に示す条件にて溶接を行った。
溶接後溶接金属中のSi含有量を測定した。また、ブローホールの発生には、前述したように、2枚の鋼板の間隙(ギャップ)が影響するため、上板厚に対し75%〜80%になるようにギャップを設定し溶接した場合と、ギャップなし、つまり2枚の鋼板を密着させた状態で溶接した場合とで実験した。表4に溶接金属中のSi含有量(質量%)とブローホール率の測定結果の一例を示す。また、図3に、溶接金属中のSi含有量とブローホール率の関係を示す。
図3からもわかるように、ギャップなしの場合、溶接金属中のSi含有量が0.5%以下であれば、ブローホール率が20%以下となることがわかる。
また、ギャップ大(上板厚の75〜80%)の場合、ブローホールの発生はギャップによっても抑制されるため、溶接金属中のSiは0.6%以下であればブローホール率を20%以下とすることができることが確認された。
図3中の「ギャップ中」は、ギャップ厚が上板厚の40%のときを示す。これからもわかるように、ブローホール率はギャップ厚に応じて低減される。図3が示すように、ギャップ厚40%(ギャップ中)の場合、溶接金属中のSiは0.55%以下であればブローホール率を20%以下とすることができることが確認された。さらに、ギャップ中は、ギャップなしの場合とギャップ大の場合のちょうど中間の特性となることもわかった。
このことから、ギャップ厚の対上板厚比率をX(%)としたとき、溶接金属中のSiが、0.5+X/80×0.1=0.5+X/800(%)以下であればブローホール率を20%以下とすることができる。このとき、ギャップ厚の許容範囲は、実験からX%を中心に±5%、好ましくは(X−5)%〜X%の間である。
また、図4に示すように、ギャップがない場合のブローホール率とギャップを設けた場合のブローホール率は、ギャップ以外の溶接条件を同一とした場合、きれいな相関関係があることが確認された。例えば、ギャップを設けない場合、ブローホール率が33%あっても、上板厚の80%弱のギャップをつけることによりブローホール率が20%まで低減できる。このことにより、ギャップを設けることはブローホール率を低減させることに効果があることが確認された。
以上のことから、少なくとも溶接金属中のSi含有量が、質量%で、0.5%以下であれば、ギャップの大きさに関わらず、ブローホール率を20%以下に抑えることができる。
次に、耐ギャップ性およびアンダーカット等の溶接不良との関係について検討した。ここで、溶接不良の品質指標としてアンダーカットとのど厚を設定した。溶接継手の強度を決定する事項は、継手形状とブローホールである。このうち、継手形状で応力集中点となるアンダーカット部と、強度自体を決めるのど厚が、設計上の重要な品質指標となるからである。
ここで、のど厚とは、図5(a)に示すように、上板のルート部(上板と溶接金属の界面において、溶接ワイヤー側とは反対側の界面)溶融端を中心とする円が、溶接ワイヤー側の溶接金属表面に内接する時の半径と定義する。のど厚が小さいと継手に負荷がかかったときの応力が高くなり、継手強度が低下する。一般的な継手設計においては、のど厚は上板厚80%以上が合格で、当然100%を超えても問題ない。
アンダーカットとは、のど厚を測定した際の内接円が溶接金属表面と接した点から上板表面を延長した仮想面への垂線距離と定義する。このアンダーカットが上板の板厚の30%以下であれば、溶接継手の設計上、応力集中の起点とならず問題がないレベルである。
図5(a)はアンダーカットが上板板厚の47%、のど厚が79%であり、どちらも不合格の場合の例である。図5(b)は、のど厚が95%で合格レベルであるが、アンダーカットが上板板厚の32%で不合格であるため、総合的に不合格とされる場合の例である。図5(c)は、アンダーカットが上板板厚の23%、のど厚が108%であり、どちらも合格レベルに達している場合の例である。
発明者らは、こうした溶接品質に影響を及ぼす成分について検討した。特に、上板と溶接金属の界面で、のど厚が決まり、アンダーカットが発生することから、上板の鋼材成分が強く影響することに着目した。そこで、上記ブローホール率の評価のときと同様、表1に示す鋼材と表2に示す溶接ワイヤーを用い、表3に示す溶接条件にて、ギャップを0、上板厚の60%程度、80%弱、100%とし、実際に亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接を行い、のど厚、アンダーカット長さ、耐ギャップ性について評価した。結果を表5に示す。
この解析を通し、発明者らの検討の結果、上板鋼板中の成分のうち、SiとAlの合計含有量(質量%)が、耐ギャップ性およびのど厚やアンダーカットの生成に関係があることがわかった。表5には、上板鋼板中のSi+Alの含有量を質量%で表示してある。
表5からわかるように、上板中のSi+Alの含有量が少ないと、ギャップの拡大に伴い、のど厚が確保できず、またアンダーカット長さも長くなる。即ち、耐ギャップ性が悪くなることがわかった。これとは逆に、上板中のSi+Alの含有量が多いと、のど厚が確保され、アンダーカット長さも短く、良好な溶接継手が得られることがわかった。即ち、耐ギャップ性が良好になることが確認された。
表5に示すように、上板中のSi+Al含有量が0.37%以上あると、耐ギャップ性が良好であると言える。上板中のSi+Al含有量に対するアンダーカット長さおよびのど厚の変化から、上板中のSi+Al含有量が0.35%以上あると、耐ギャップ性が良好であることが推定できる。
しかしながら、ギャップ幅が上板厚と同じ長さとなると、上板中のSi+Al含有量を上げてもアンダーカット長さの短縮効果が相対的に小さくなる。このことから、ギャップ幅を上板厚の80%以下にすることが望ましいことがわかる。
鋼板中のSiの影響については、特許文献3に記載されているように、アーク溶接における溶接止端形状の改善効果があることが知られている。
しかし、Alの影響については、従来は溶接への影響は小さく、単に鋼板の脱酸の観点から添加されていた。上記発明者らの解析により、Siと同様Alも溶接止端形状の改善効果があるもの推察される。
以上のように、亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接での問題点であるブローホールの発生を抑制し、また耐ギャップ性が高く、アンダーカットやのど厚も許容範囲となる溶接方法を得ることができた。
なお、本発明に有効な亜鉛めっき鋼板は、自動車用鋼板として用いられている合金化溶融亜鉛めっき鋼板の他、一般的な溶融亜鉛めっき鋼板、高耐食めっき鋼板として知られているZn-Al-Mg−Si系めっき鋼板やZn-Al-Mg系めっき鋼板などがあげられる。亜鉛を主体としためっきを施した鋼板であれば、特にめっき組成や、母材となる鋼材の種類は問わない。
また、亜鉛めっき鋼板の板厚は、特に問わないが、良好なビード形状を得るために、0.5〜3.2mmの範囲が適している。
また、溶接継手態様については、重ね隅肉アーク溶接であれば、シールドガスの種類や溶接モード、溶接条件等は問わない。
本発明は、亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接であれば、いかなる用途においても利用することができる。自動車や家電をはじめ、亜鉛めっき鋼板の用途は広く、本発明の適用分野も広いものと考えている。特に、近年そのニーズが高まっている自動車産業において利用することで、その有利な効果を享受することができる。

Claims (6)

  1. 2枚の亜鉛めっき鋼板を、上板となる鋼板の端部が下板となる鋼板の表面に位置するように重ね、該上板の端部に沿って該上板と該下板を溶接する亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法において、溶接金属中のSi含有率が質量%で0.5%以下であり、且つ前記2枚の亜鉛めっき鋼板の前記上板の母材である鋼板中のSiとAlの含有率の合計が質量%で0.35%以上であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法。
  2. 前記上板と前記下板の間に上板の板厚のX%の幅の間隙を設けたとき、前記溶接金属中のSi含有率が質量%で 0.5+X/800 %以下であることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法。
  3. 前記上板と前記下板の間に間隙なく重ねることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接方法。
  4. 2枚の亜鉛めっき鋼板を、上板となる鋼板の端部が下板となる鋼板の表面に位置するように重ね、該上板の端部に沿って該上板と該下板を溶接する亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接継手において、溶接金属中のSi含有率が質量%で0.5%以下であり、且つ前記2枚の亜鉛めっき鋼板の前記上板の母材である鋼板中のSiとAlの含有率の合計が質量%で0.35%以上であることを特徴とする亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接継手。
  5. 前記上板と前記下板の間に上板の板厚の75%以上80%以下の幅の間隙を設け、前記溶接金属中のSi含有率が質量%で0.6%以下であることを特徴とする請求項4に記載の亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接継手。
  6. 前記上板と前記下板の間に間隙なく重ねることを特徴とする請求項4に記載の亜鉛めっき鋼板の重ね隅肉アーク溶接継手。
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