JP2012093325A - 原子間力顕微鏡用のカンチレバー、原子間力顕微鏡、および、原子間力の測定方法 - Google Patents

原子間力顕微鏡用のカンチレバー、原子間力顕微鏡、および、原子間力の測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ダイナミックモードで駆動されるカンチレバー、原子間力顕微鏡、および原子間力の測定方法において、原子間力の測定精度を高める。
【解決手段】原子間力顕微鏡1用のカンチレバー2は縦バネ2Aおよび回転バネ2Bからなる振動部と探針2Cとを備える。縦バネ2Aは第一の機械振動モードで振動自在であり、回転バネ2Bは第二の機械振動モードで振動自在である。第一の機械振動モードと第二の機械振動モードとは、互いの振動が独立する機械振動モードであり、それぞれの共振周波数が近接または一致する。探針2Cは、縦バネ2Aの振動に伴って変位する位置であって、且つ、当該変位に基づく原子間力の変化により回転バネ2Bの振動を振動部に励起させる位置に付設される。
【選択図】 図3

Description

この発明は、試料から探針に働く原子間力によって振動状態が変化する原子間力顕微鏡用のカンチレバー、カンチレバーの振動状態を検出することにより原子間力を測定する原子間力顕微鏡(AFM,Atomic Force Microscope)、およびカンチレバーの振動状態を検出することにより原子間力を測定する方法に関するものである。
走査型プローブ顕微鏡の一種に、鋭い探針の付いたカンチレバーを用いて試料と探針との間に働く原子間力を測定し、試料の表面形状画像を形成する原子間力顕微鏡がある。原子間力顕微鏡としては既に分子レベル・原子レベルの空間分解能を持つものが実用化されている。
図1は、原子間力顕微鏡の代表的な構成例を説明する模式図である。原子間力顕微鏡101は、レーザダイオード102、レンズ103、ビームスプリッタ104、カンチレバー105、チューブピエゾスキャナ106、ミラー107、フォトディテクター108を備える。カンチレバー105は先端部に先端曲率半径が10nm以下の探針(不図示)を備え、試料から探針に働く原子間力によって変形が生じる。レーザダイオード102は測位用レーザを照射する。レンズ103はレーザをコリメートする。ビームスプリッタ104はレーザを分光して一方のレーザをカンチレバー105に照射する。このレーザはカンチレバー105に反射され、ミラー107を介してフォトディテクター108に入射する。
原子間力顕微鏡101では、フォトディテクター108の出力に基づいて、カンチレバー105の変形量が一定になるように、チューブピエゾスキャナ106をフィードバック制御する。チューブピエゾスキャナ106は試料の垂直軸(Z軸)座標を調整する。これにより、試料表面を探針が走査するようにした場合、チューブピエゾスキャナ106の制御により試料の垂直軸(Z軸)座標が試料表面形状に応じて移動することになる。そのため、チューブピエゾスキャナ106の制御量に基づいて試料表面画像を形成することが可能になる。
この構成での検出手法は、光てこ方式と呼ばれるものであり、カンチレバー105の微小変形によるレーザ反射角の微小変化を、フォトディテクター108でのレーザ入射位置の変化として増幅して検出することができる。なお、光てこ方式の他にもカンチレバーの微小変形を検出する手法として、カンチレバーの機械歪を電気信号に変換する圧電素子を用いる手法や、カンチレバーの機械歪を電気抵抗変化に変換するピエゾ抵抗を用いる手法なども存在する。
また、原子間力顕微鏡においては、カンチレバーの駆動モードとして、コンタクトモードやダイナミックモードが知られている(例えば非特許文献1参照。)。図2(A)は、コンタクトモードで駆動するカンチレバーを示す模式図であり、図2(B)は、ダイナミックモードで駆動するカンチレバーを示す模式図である。
コンタクトモードで駆動するカンチレバー105Aは探針111Aを備える。カンチレバー105Aにより試料表面を走査する際には、探針111Aの先端が試料表面に常に接触した状態を維持し、試料表面から探針111Aに働く原子間力(接触斥力)によってカンチレバー105Aが変形する(反る)。
ダイナミックモードで駆動するカンチレバー105Bは探針111Bを備え、振動を励起するアクチエータ112が付設される。カンチレバー105Bにより試料表面を走査する際には、探針111Bが試料表面に対する垂直軸(Z軸)に沿って振動し、試料表面から探針111Bに働く原子間力によってカンチレバー105Bの振動状態(振幅、周波数、位相など)が変化する。
探針と試料との間に働く原子間力には、引力であるファンデルワールス力とファンデルワールス力よりも作用距離が非常に短い接触斥力とがある。一般的には探針と試料とが接近する際には、ある程度の距離まではファンデルワールス力がより大きく作用し、それを超えて探針と試料とが接近すると逆に接触斥力がより大きく作用する。
"オリンパス マイクロカンチレバ:SPMについて"、[online]、[平成22年9月15日検索]、インターネット〈URL:http://www.olympus.co.jp/jp/insg/probe/product/spm.cfm〉
ダイナミックモードでカンチレバーを駆動する従来手法の原子間力顕微鏡においては、原子間力による振動状態の変化がフォトディテクター等による検出信号の変化として現れる。原子間力が働いていない状態でのカンチレバーの振動状態はアクチエータ駆動信号に相関するため、通常はアクチエータ駆動信号を基準(比較信号)にして検出信号の変化が測定される。しかしながら、原子間力が働いていない状態での実際のカンチレバーの振動状態とアクチエータ駆動信号との相関性は、アクチエータの励振効率やアクチエータからカンチレバーへの振動伝播効率がドリフトする等の要因によって低下してしまい、このことは測定誤差要因になってしまう。
また従来手法の原子間力顕微鏡においては、カンチレバーの振動に同期して周期的に原子間力が変動し、探針が試料表面に最も近傍したときにファンデルワールス力や接触斥力がそれぞれ最大になる。換言すると、原子間力はカンチレバーの変位と同位相、または逆位相で働くことになる。カンチレバーに作用する外力と位相との関係を考えると、カンチレバーの変位と±90°位相の異なる周期で外力を受けた場合には、カンチレバーは加振または制振されて振幅が大きく変化する。一方、カンチレバーの変位と同位相または逆位相の周期で外力を受けた場合には、カンチレバーの振幅は小さくしか変化しない。この事情を勘案すると、探針と試料表面との間に働く原子間力はカンチレバーの変位と逆位相もしくは同位相の周期で働くため、カンチレバーの振動状態をあまり大きく変化させることができないということがわかる。すなわち、従来手法は、本質的に測定精度の低さを抱えていることになる。
そこで、本発明の目的は、原子間力の測定精度を高めることが可能な、ダイナミックモードで駆動されるカンチレバー、原子間力顕微鏡、および原子間力の測定方法を提供することにある。
この発明の原子間力顕微鏡用のカンチレバーは振動部と探針とを備える。振動部は第一の機械振動モードと第二の機械振動モードとで振動自在である。第一の機械振動モードと第二の機械振動モードとは、互いの振動が独立する機械振動モードであり、かつ、それぞれの共振周波数が近接または一致する。探針は、第一の機械振動モードの振動に伴って変位する振動部上の位置であって、且つ、当該変位に基づく原子間力の変化により第二の機械振動モードの振動を振動部に励起させる位置に付設される。
この発明の原子間力顕微鏡は、上述のカンチレバーとアクチエータと検出器とを備える。アクチエータは、振動部に第一の機械振動モードが励起するように加振する。検出器は、振動部の第二の機械振動モードの振動を検出する。
この発明の原子間力の測定方法は、上述のカンチレバーを、少なくとも第一の機械振動モードが振動部に励起するように加振し、少なくとも第二の機械振動モードの振動を振動部から検出し、その振動状態の変化を利用して探針と試料の間に働く原子間力を測定する。
上述のようなカンチレバーに、第二の機械振動モードの共振周波数、もしくは第二の機械振動モードの共振周波数に近い周波数で、第一の機械振動モードを励起しておく。第一の機械振動モードと第二の機械振動モードの共振周波数は近接しているため、この場合でも、第一の機械振動モードは比較的効率良く励起される。この状態では、探針に働く原子間力が第二の機械振動モードの共振周波数に一致するまたは近接する周波数で変動することになる。そして、この原子間力の変動によってカンチレバーに第二の機械振動モードの振動が励起することになる。そこで、その振動の検出信号を利用することにより原子間力の変化を観察することが可能になる。
なお、以下、探針に働く原子間力を変動させる第一の機械振動モードの振動を「駆動振動」と呼称し、原子間力の働きを観察するために検出される第二の機械振動モードの振動を「検出振動」と呼称する。則ち、本発明は、カンチレバーを駆動振動させることにより発生する原子間力の変動を、駆動振動から独立して原子間力の変動によって発生する検出振動を利用して観測するものである。
上記カンチレバーにおいて、前記第一の機械振動モードの振動は撓み振動であり、前記第二の振動モードの振動はねじり振動であると好適である。
上記カンチレバーにおいて、前記振動部は2つの梁状部が交差する形状であって、第一の梁状部は片持ち支持または両持ち支持されていて、第二の梁状部は第一の梁状部に連結支持されて前記探針が付設されていると好適である。
上記原子間力顕微鏡において、前記アクチエータを複数備え、これらのアクチエータによって前記振動部に前記第一の機械振動モードのみが励起するように各アクチエータが出力調整させると好適である。
上記原子間力顕微鏡において、前記検出器は前記振動部の前記第一の機械振動モードの振動も検出可能であると、好適である。
上記原子間力顕微鏡において、前記アクチエータに駆動信号を入力するとともに前記カンチレバーのZ軸移動を制御する駆動回路と、前記検出器から検出信号が入力されるとともに探針に働く原子間力に応じた検出情報を生成する検出回路とをさらに備えると好適である。
この発明によれば、探針先端に働く原子間力の変動を誘起する駆動振動の振幅そのものを比較信号として、原子間力の変動によって誘起される検出振動を検出することが可能になる。そのため、アクチエータ駆動信号を比較信号とする従来の方法と比較して、下記の長所がある。
第一に、アクチエータの励振効率やアクチエータからカンチレバーへの振動伝播効率がドリフトする等の要因により、カンチレバーの駆動振動とアクチエータ駆動信号との間の相関性が低下しても、アクチエータ駆動信号を用いることなく原子間力を測定でき、上記ドリフト等による測定誤差の発生を防ぐことができる。
第二に、駆動振動による変位に対して原子間力は同位相または逆位相で作用するが、検出振動の変位は原子間力の位相に対して90°ずれた位相で発生し、原子間力の変動に対して高い感度で影響を受ける。したがって、この検出振動を利用して原子間力を観測することにより高い測定精度を実現することが可能になる。
従来の原子間力顕微鏡での光てこ方式による検出例を説明する模式図である。 従来の原子間力顕微鏡でのカンチレバーの駆動例を説明する模式図である。 本発明の実施形態に係る原子間顕微鏡の模式構成を説明する図である。 図3に示す原子間顕微鏡のブロック構成例を説明する図である。 図3に示すカンチレバーの第1の詳細構成例を説明する図である。 図5に示すカンチレバーの機械振動モードを説明する図である。 図5に示す原子間力顕微鏡の検出信号の一例を説明する図である。 図3に示すカンチレバーの第2の詳細構成例を説明する図である。
以下、本発明の実施形態に係る原子間力顕微鏡用のカンチレバー、原子間力顕微鏡、原子間力の測定方法を説明する。
図3は実施形態に係る原子間力顕微鏡1におけるカンチレバー2の駆動方法を説明するための模式図である。原子間力顕微鏡1はカンチレバー2とアクチエータ3とを備える。カンチレバー2は縦バネ2Aと回転バネ2Bと探針2Cとを備える。アクチエータ3は縦バネ2Aを介してカンチレバー2に接続され、回転バネ2Bの共振周波数と略一致する周波数で駆動される。縦バネ2Aと回転バネ2Bとは特許請求の範囲に記載の「振動部」を構成する。縦バネ2Aは、アクチエータ3から加振され、これによりカンチレバー2を図中上下に往復振動させる第1の機械振動モード(駆動振動モード)の振動が励起する。回転バネ2Bは、中央近傍(探針2Cと回転バネ2Bとの重心)に縦バネ2Aが接続されていて、縦バネ2Aの機械振動モードから独立した第2の機械振動モード(検出振動モード)を持つ。なお、この検出振動モードは、駆動振動モードの共振周波数と近接または一致する共振周波数であり、回転バネ2Bが縦バネ2Aとの接続位置を回転中心に揺動する機械振動モードである。探針2Cは、先端部分の先端曲率半径が極めて小さく、回転バネ2Bの一方端部に付設されている。
このカンチレバー2は、ダイナミックモードで駆動されるものであり、試料49の表面を走査する際に、アクチエータ3からの駆動によって縦バネ2Aが駆動振動される。すると、探針2Cおよび回転バネ2Bが試料49の表面に対する垂直軸(Z軸)に沿って振動する。探針2Cが試料49に接近する際には原子間力(接触斥力およびファンデルワールス力それぞれ)が増大し、探針2Cが試料49から離れる際には原子間力が低減し、原子間力の繰り返し変動が引き起こされる。この原子間力は、縦バネ2Aと回転バネ2Bとの両方に影響を及ぼすが、縦バネ2Aの振動に比べて回転バネ2Bの振動は振幅が小さく、探針2Cの変位や原子間力は縦バネ2Aによりほぼ決定される。そして、原子間力の繰り返し変動によって回転バネ2Bに検出振動が生じ、回転バネ2Bには縦バネ2Aに接続される位置を回転中心にした揺動が生じることになる。この揺動は原子間力の変動に対して、試料表面の物性にもよるがおよそ90°ずれた位相で生じ、本質的に原子間力の変動に対する感度が高いものになる。
原子間力顕微鏡1は、このカンチレバー2の検出振動を検出し、その検出信号を利用して探針2Cに働く原子間力を把握する。検出振動は原子間力の変動に対する感度が高く、したがって検出振動を利用して原子間力を観測することにより高い測定精度を実現することが可能になる。
なお、検出振動を検出する具体的構成については、従来の原子間力顕微鏡の公知技術、例えば図1に示したような光てこ法の構成、ピエゾ抵抗素子を用いた構成、圧電素子を用いた構成などを採用すると良い。また、原子間力顕微鏡1のその他の構造にも、従来の原子間力顕微鏡の公知技術や公知構成を採用するとよい。
ここで原子間力顕微鏡1のブロック構成例について簡単に説明する。図4は原子間力顕微鏡1のブロック構成例を説明する図である。
原子間力顕微鏡1は、前述のカンチレバー2(不図示)に加え、PC5、DSP6、検出振動検出部7、駆動振動検出部8、X−Yステージ駆動部9、Z軸駆動部10、およびアクチエータ駆動部11を備える。
検出振動検出部7は前述の回転バネ(2B)の検出振動の変位を検出する。駆動振動検出部8は前述の縦バネ(2A)の駆動振動の変位を検出する。DSP6は、検出振動検出部7の出力と駆動振動検出部8の出力とを受け、駆動振動の検出信号を基準として検出振動の検出信号を演算処理またはテーブル処理することにより原子間力に関する検出情報を導出し、PC5に出力する。PC5は、入力される検出情報をもとに試料表面形状を推定し、試料表面検出位置の直交座標系での座標を取得し、メモリにマッピングして試料の表面形状画像を形成する。またDSP6は、駆動振動検出部8や検出振動検出部7の出力に基づいて駆動振動が一定の振幅を維持しながら試料表面を走査するように、X−Yステージ駆動部9、Z軸駆動部10、およびアクチエータ駆動部11に制御信号を出力する。X−Yステージ駆動部9はDSP6からの制御信号を受けて、試料とカンチレバー2とのX−Y面での相対位置を制御する。Z軸駆動部10はDSP6からの制御信号を受けて、試料またはカンチレバー2のZ軸座標を制御する。アクチエータ駆動部11はDSP6からの制御信号を受けて、前述のアクチエータ3(不図示)を一定の周波数で駆動させるアクチエータ駆動信号を出力する。
以上のようなブロック構成で原子間力顕微鏡1は構成することができる。この構成では、DSP6およびPC5が、従来のようにアクチエータ駆動部11の出力するアクチエータ駆動信号を基準としてカンチレバーの駆動振動を処理するのではなく、駆動振動検出部8の出力を基準として検出振動検出部7で検出する検出振動を処理するので、ドリフト等の要因による影響を受けずに、検出振動から原子間力を観察して測定誤差を抑制できる。
《実施例1》
次に、カンチレバー2の詳細構成例を説明する。図5(A)は実施例1に係るカンチレバー2の平面図であり、図5(B)は実施例1に係るカンチレバー2の斜視図である。
カンチレバー2は厚み1.5μmのシリコン製であり、平面視して十字型に交差する第1梁状部21と第2梁状部22とを備え、第2梁状部22の一端近傍の底面側に探針2Cを備える。第1梁状部21は長手寸法が18μmで幅寸法が3μmであり、両端部が固定アンカー24と固定アンカー25に固定される。第2梁状部22は長手寸法が13μmで幅寸法が2μmであり、長手方向の略中央で第1梁状部21の略中央に連結される。探針2Cは、先端部分の曲率半径が10nm以下である。
このカンチレバー2は、共振周波数がそれぞれ700kHz程度の第1の機械振動モードと第2の機械振動モードとを持つ。第1の機械振動モードは、第1梁状部21が固定アンカー24,25との連結部分を振動の節とし、第2梁状部22との連結部分を振動の腹として撓み振動し、探針2Cとともに第2梁状部22が全体的に上下に往復する駆動振動モードである。第2の機械振動モードは、第2梁状部22が第1梁状部21との連結部分を回転中心に揺動振動し、探針2Cが上下に往復する検出振動モードである。
このカンチレバー2と固定アンカー25との連結部分の天面側には、圧電アクチエータ31と圧電アクチエータ32とを、第1梁状部21の幅方向に並ぶように付設している。圧電アクチエータ31,32は、それぞれ窒化アルミニウムからなる圧電薄膜の上下を導体薄膜電極で挟み込むことによって形成している。
カンチレバー2が理想的に対称な形状で作れていれば、圧電アクチエータ31,32に700kHz程度の交流電圧を同位相・同振幅で印加することで、カンチレバー2には駆動振動のみが励起され検出振動は励起されないはずである。しかしながら、現実には製造バラツキなどに起因する対象性の崩れがあるため、カンチレバー2には若干の検出振動も励起されてしまう。そこで、圧電アクチエータ31,32に印加する電圧の振幅や位相を調整することにより、カンチレバー2に駆動振動のみが励起され検出振動が励起されない状態をつくることができる。すると、カンチレバー2は原子間力が作用していない状態では駆動振動モードのみが励起して振動し、原子間力が作用する状態では、駆動振動モードに検出振動モードが重畳される形で振動することになる。
図5に示した当実施例1においては、カンチレバー2と固定アンカー25の連結部に、圧電アクチエータ31と圧電アクチエータ32の二つの圧電アクチエータを用いる構成としたが、さらにカンチレバー2と固定アンカー24の連結部に、同様に2個の圧電アクチエータを配置して、合計4つの圧電アクチエータに印加する駆動信号を調整できるように構成しても良い。
ここで、このような構成のカンチレバー2に対する振動解析の結果に基づいて、駆動振動モードと検出振動モードとの振動形態について具体的な説明する。
図6(A)は駆動振動モードを示す図であり、図6(B)は検出振動モードを示す図である。各図中の三角錐表示は最大変位の大きさと方向を表し、大きさが変位量を、方向が変位方向を表している。
図6(A)に示す駆動振動モードにおいては、第1梁状部は中心付近が振動の腹、両端付近が振動の節となって変形し、第1梁状部および第2梁状部が同方向に変位する。第2梁状部は、第1梁状部の変位にあおられる形で変形し、中心付近よりも両端付近での変位がより大きくなる。図6(B)に示す検出振動モードにおいては、第1梁状部は殆ど変位せずにその場で回転し、第2梁状部は両端がそれぞれ逆方向に変位し、端部に近いほど変位量が大きくなる。
このように、本実施例のカンチレバー2の構成では、互いに独立する2つの機械振動モードを持つことになる。
再び図5に戻り説明を続ける。上述のような機械振動モードでカンチレバー2は振動するが、探針2Cに作用する原子間力を検出するために、各機械振動モードそれぞれの振動を独立して検出する必要がある。そこで、ここでは光てこ法を用いて各機械振動モードの振動を検出する。
第1に、カンチレバー2の中心の位置(第1梁状部21と第2梁状部22との交差する領域の中央、図5(B)参照。)にレーザAを照射し、レーザAの反射光をフォトディテクターで検出する。このレーザAを反射する領域の法線方向は、検出振動によって第1梁状部21の長手方向の軸回りに回転する。このため、レーザAの反射光を受光するフォトディテクターでは、レーザ受光位置の第2梁状部22の長手方向に沿った振動として、検出振動を検出することができる。
第2に、カンチレバー2の中心位置と、カンチレバー2と固定アンカー25との連結位置との中間の位置にレーザBを照射し、レーザBの反射光をフォトディテクターで検出する。このレーザBを反射する領域の法線方向は、駆動振動によって第1梁状部21の長手方向に大きく傾斜する。このため、レーザBの反射光を受光するフォトディテクターでは、レーザ受光位置の第1梁状部21の長手方向に沿った振動として、駆動振動を検出することができる。
なお、各レーザA,Bの反射位置自体も変位することになるが、その変位による影響は前述の法線方向の傾きによる影響に比べて極めて微小であり、カンチレバー2とフォトディテクターとの距離を十分に確保することによりフォトディテクターのレーザ受光位置に及ぼす影響を殆ど無くすことができる。
図7はレーザAの検出信号とレーザBの検出信号との一例を示す波形図である。図中の実線は原子間力作用時のレーザAの検出信号(検出振動の検出信号、以下、回転検出信号と称する。)であり、図中の破線は原子間力作用時のレーザBの検出信号(駆動振動の検出信号、以下、駆動検出信号と称する。)であり、図中の一点鎖線は原子間力が作用しない時の駆動検出信号である。
駆動検出信号の原子間力作用時と非作用時とを比較すると、振幅の変化は極微小であり、若干の位相変化が生じている。これは、原子間力の振動が駆動振動の変位に対して同位相か逆位相になり、駆動振動が原子間力による影響をあまり受けないためである。従来はこのような駆動検出信号の微小変化から原子間力を把握する必要があり、本質的に測定精度を高めることが容易ではなかった。一方、本発明で利用する回転検出信号は、原子間力が作用しない状態では発生せず原子間力の作用により発生するので、原子間力の変動に対する回転検出信号の感度が本質的に高く、この回転検出信号を利用して原子間力を測定することで測定精度を高めることができる。例えば、回転検出信号と駆動検出信号との振幅比だけでなくそれらの位相差も用いれば、原子間力の大きさや位相を厳密に知ることができ、従来よりも情報量が増えるために試料の表面物性に対する解析性が高まる。
本実施例においては、2つのレーザA,Bを用いて駆動振動と検出振動を検出する方法を採用した。しかし、レーザBを受光する位置変化の方向が、駆動振動に起因するものと、検出振動に起因するものとで、90°異なるため、レーザBだけでも、駆動振動と検出振動の両方を検出することができる。
《実施例2》
次に、カンチレバー2の別の詳細構成例を説明する。図6(A)は実施例2に係るカンチレバー2の平面図である。本実施例は、光てこ法を用いることなく振動状態の検出を可能にする振動検出用の圧電素子41,42を設けた点で実施例1と相違する。
圧電素子41,42は、カンチレバー2と固定アンカー24との連結部分に設けられていて、互いに第1梁状部21の幅方向に並ぶ。これら圧電素子41,42は、カンチレバー2の変形に伴って変形し、その機械歪みに応じた電気信号を発生する。両者の電気信号を適切に処理することで、カンチレバー2の駆動振動と検出振動とをそれぞれ検出できる。
なお、これらの圧電素子41,42と同様な配置でピエゾ抵抗素子を配置しても、同様にそれらの電気抵抗値を検出し、その値の変動を適切に数値処理することにより、カンチレバー2の駆動振動と検出振動とをそれぞれ検出できる。
以上の各実施例に示したようにカンチレバーは構成することができる。ただし、カンチレバーの詳細構造は上記以外でもよく、例えば一つの固定アンカーによってカンチレバーの一端が支持される片持ち梁構成とすることや、平面視してT字形やY字形などの構成とすることもできる。
1…原子間力顕微鏡
2…カンチレバー
2A…縦バネ
2B…回転バネ
2C…探針
3…アクチエータ
5…PC
6…DSP
7…検出振動検出部
8…駆動振動検出部
9…X−Yステージ駆動部
10…Z軸駆動部
11…アクチエータ駆動部
21…第1梁状部
22…第2梁状部
24,25…固定アンカー
31,32…圧電アクチエータ
41,42…圧電素子
49…試料

Claims (8)

  1. 互いの振動が独立して励起し、それぞれの共振周波数が近接または一致する第一の機械振動モードと第二の機械振動モードとで振動自在な振動部と、
    前記第一の機械振動モードの振動に伴って変位する前記振動部上の位置であって、且つ、当該変位に基づく原子間力の変化により前記第二の機械振動モードの振動を前記振動部に励起させる位置に付設される探針と、
    を備える原子間力顕微鏡用のカンチレバー。
  2. 前記第一の機械振動モードの振動は撓み振動であり、前記第二の振動モードの振動はねじり振動である、請求項1に記載の原子間力顕微鏡用のカンチレバー。
  3. 前記振動部は2つの梁状部が交差する形状であって、第一の梁状部は片持ち支持または両持ち支持されていて、第二の梁状部は前記第一の梁状部に連結支持されて前記探針が付設されている、請求項1又は請求項2に記載の原子間力顕微鏡用のカンチレバー。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のカンチレバーと、
    前記振動部に前記第一の機械振動モードが励起するように加振するアクチエータと、
    前記振動部の前記第二の機械振動モードの振動を検出する検出器と、
    を備える原子間力顕微鏡。
  5. 前記アクチエータを複数備え、これらのアクチエータによって前記振動部に前記第一の機械振動モードのみが励起するように各アクチエータが出力調整させる、請求項4に記載の原子間力顕微鏡。
  6. 前記検出器は前記振動部の前記第一の機械振動モードの振動も検出可能である、請求項4または5に記載の原子間力顕微鏡。
  7. 前記アクチエータに駆動信号を入力するとともに前記カンチレバーのZ軸移動を制御する駆動回路と、前記検出器から検出信号が入力されるとともに探針に働く原子間力に応じた検出情報を生成する検出回路とをさらに備える、請求項4〜6のいずれかに記載の原子間力顕微鏡。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載のカンチレバーを、少なくとも前記第一の機械振動モードが前記振動部に励起するように加振し、少なくとも前記第二の機械振動モードの振動を前記振動部から検出し、その振動状態の変化を利用して前記探針と試料の間に働く原子間力を測定する、原子間力の測定方法。
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