JP2012085632A - ヒト化モノクローナル抗体のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列、並びにヒト化モノクローナル抗体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】腫瘍壊死因子αに結合するヒト化モノクローナル抗体。特定のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変領域、及び特定のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域を含み、前記アミノ酸配列は、少なくとも一つのアミノ酸置換を有し、アミノ酸置換は、軽鎖可変領域の第10アミノ酸のイソロイシンのトレオニンへの置換、第18アミノ酸のリジンのアルギニンへの置換、また、重鎖可変領域配列の第2アミノ酸のリジンのグルタミンへの置換、第10アミノ酸のトリプトファンのロイシンへの置換、第18アミノ酸のリジンのアルギニンへの置換、および第41アミノ酸のグルタミン酸のグリシンへの置換よりなる群から選択される少なくとも一つである、前記ヒト化モノクローナル抗体。
【選択図】なし
Description
本発明の他のヒト化モノクローナル抗体は、軽鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号5の配列を含む軽鎖、及び重鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号6の配列を含む重鎖を含み、前記ヒト化モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子αに結合するところに要旨を有するものである。
A.ヒト腫瘍壊死因子α(TNF−α)と結合するマウスモノクローナル抗体
1.ヒト腫瘍壊死因子αと結合するマウスモノクローナル抗体の獲得と精製
ヒト腫瘍壊死因子αと結合するマウスモノクローナル抗体を産生し得るハイブリドーマ細胞株357−104−4(ECACC No.92030603)(ヨーロピアン・コレクション・オブ・セル・カルチャーから購入)をマウス腹腔内に注射し、マウスに腫瘍と腹水を生じさせた。生成したマウス腹水は、大量のヒト腫瘍壊死因子αと結合するマウスモノクローナル抗体(m357IgG)を含む。上述のステップは、GlycoNEX Inc.(http://www.glyconex.com.tw/)に委託して行なった。
ここで、m357IgGの軽鎖のcDNAに用いるプライマー対は以下のとおりである:
357VL’Ascプライマー:
5’-CAGGCGCGCCGAAATTGTGCTGACCCAGTC-3’(配列番号11)
357VL3’Glinkプライマー:
5’-CCAGAGCCACCTCCGCCTGAACCGCCTCCACCCAATTTCCAGCTTGC-3’(配列番号12)。
357VH5’Glinkプライマー:
5’-TCAGGCGGAGGTGGCTCTGGCGGTGGCGGATCGGTGAAACTGCAGGA-3’(配列番号13)
357VH3’Not:
5’-CAGCGGCCGCTGAGGAGACGGTGACCGTGGT-3’(配列番号14)。
Discovery Studioモデリング2.1(Accelrys社、サンディエゴ、カナダ)を使用して、ヒト腫瘍壊死因子αと結合するマウスモノクローナル抗体(m357IgG)のホモロジーモデリングプロセスを行なった。m357IgGの軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)に対し、二個の別々のBLASTP検索を行なった。蛋白質データバンク(http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do)中で検索することによって配列を分析し、m357蛋白質配列のホモロジーを同定した。マウス抗乳癌抗体Fab断片の重鎖可変領域SM−3[PDB entry:1SM3](Dokurnoら、1998)と抗サーマス・アクタチクス(thermus aquaticus)DNA ポリメラーゼIモノクローナル抗体Fab断片の軽鎖可変領域構造[PDB entry:1AY1](Muraliら、1998)のホモロジーモデリングに基づいて、m357IgG Fv断片の三次元(3D)構造を構築した。最終的な三次元モデルは、MODELLERモジュール(Saliら、1995)により生成され、空間的拘束を満足させる(satisfaction of spatial restraints)ことにより、比較蛋白質構造モデリングの自動方法を行なった。m357IgGに対し、蛋白質ホモロジーモデリングおよびループモデリングを自動的に行なった。モデル抗体ループ(Model antibody Loops)モジュールを使用することにより、最高の配列鑑別度で、PDBデータベースからテンプレート構造を選択してCDRループのモデル構築を行い、、且つ、ループ精製モジュールを使用して、CDRループのモデル構築を完全にし、立体衝突(steric clash)を最小化すると共に、正確な結合距離と角度を確認した。その後、Discovery Studioモデリング2.1中のCHARMm(B.R.Brooks、1983)プログラムと、Accelrys CHARMm forcefieldにより、構造のエネルギーを最小化して、このモデル全体を更に純化した。構造のエネルギー最小化は、二つのステップで行なった。まず、抑制最急降下最小化(restrained steepest descent minimization)を5000ステップいった後、続いて、フレームワーク(framework)のαカーボンが、適切な位置で維持固定されるまで、共役勾配最小化(conjugated gradient minimization)を5000ステップ行なった。AREAIMOLプログラム(CCP4、1994)により、三次元モデル上で、m357IgG残基の溶媒接近表面積(solvent−accessible surface areas)を計算した。相対接近が30%以上の残基は、接近可能であると定義した。
オーバーラッピングPCRにより、m357IgGのヒト化可変領域(軽鎖可変領域および重鎖可変領域)をエンコードするcDNA断片を獲得した。続いて、ヒトIgGからの定常領域配列とオーバーラッピングPCRにより合成される可変領域配列を、哺乳動物発現ベクターpSecTag2/Hygro(重鎖)(Invitrogen)とpcDNA3.3−TOPO TA(軽鎖)(Invitrogen)中で、サブクローニングした。その後、EcoRV制限酵素認識部位を利用して、二個の構築体(construct)を融合させ、pSec−pcDNA−h357−IgGを生成した。メーカーの使用説明書により、エフェクテン(Effectene、Qiagen)を使用し、重鎖と軽鎖遺伝子を含むプラスミドを、マウス骨髄腫NS0細胞(ヨーロピアン・コレクション・オブ・アニマル・セル・カルチャー、Salisbury、Wiltshire、英国)中でトランスフェクトさせた。ハイグロマイシン(Hygromycin)(400μg/ml)で4週間抽出した後、安定したクローンを、無血清の既知組成培地HyQNS0(Hyclone)中で、5×105cells/mlの初期播種密度にてシェーカー中で培養した。37℃で5日間後の培養基を取り出し、蛋白質A(GE Health−care)クロマトグラフィにより、抗体を上澄みから精製した。
既知の方法(Matthews N、1987)に従って、アクチノマイシンDで処理されたマウス線維芽細胞L929細胞(ATCC Cat.No.CCL−1)により、ヒト腫瘍壊死因子αに対するm357IgGおよびh357IgGの中和活性を測定した。要約すると、L929細胞を、96ウェルプレート中に3×105cells/wellで三回播種すると共に、10%(v/v)ウシ胎仔血清を添加したRPMI 1640培地中で16時間培養した。その後、幾つかの抗体希釈液を調製し、アクチノマイシンD(2μg/ml)と腫瘍壊死因子α(TNF−α)(100ng/ml)を含む培地中に入れ、37℃で16時間培養した。上清を除去した後、3−(4,5−ジメチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(5mg/ml)(Sigma−Aldrich)を加え、37℃で4時間培養した。その後、SDS溶液(10%)をウェル中に加えた。室温で24時間培養した後、色度計により、各ウェル中の色が紫色に変化するのを記録した。570nmで測定される溶出の光学密度(OD)を測定した結果、生存細胞の数量と正の相関が見られた。ブランクの対照群(培養物のみ)、腫瘍壊死因子αの対照群(腫瘍壊死因子αのみ)、および抗体の対照群(抗体のみ)もまた、上記実験中で行なわれた。シグマプロットソフトウェア(Systat software,Inc、Richmond、カナダ)を用いて複雜なS状非線形回帰(complex sigmoid non−linear regression)分析によりED50値を計算した。
既知の技術(Perezら、1990)で示されるように、抵抗腫瘍壊死因子α変換酵素(TNF−α converting enzyme、TACE)媒介開裂に対して耐性がある欠失変異体膜貫通腫瘍壊死因子αを、部位特異的変異導入法によって生成した。非開裂形式の膜貫通腫瘍壊死因子αでは、天然の膜貫通腫瘍壊死因子αのアミノ酸+1〜+12が削除された。非開裂形式の膜貫通腫瘍壊死因子α遺伝子は、pSecTag2/Hygro哺乳動物発現ベクター(Invitrogen)にクローン化されると共に、エフェクテンにより、マウス骨髄腫NS0細胞にトランスフェクトされ、細胞表面上で膜貫通腫瘍壊死因子αを発現させた。
膜貫通腫瘍壊死因子αトランスフェクトNS0細胞を、m357−IgGとh357−IgGの連続希釈物(対数希釈)と共に、2%のウシ胎仔血清を含むリン酸緩衝生理食塩水(蛍光活性化細胞分類[FACS]バッファ)中にて4℃で1時間培養した。この細胞を、蛍光活性化細胞分類バッファで3回洗浄した後、それぞれ、m357−IgGのAlexa Fluor 488ヤギ抗マウスIgG(H+L)とh357−IgGのAlexa Fluor 647ヤギ抗ヒトIgG(H+L)により、4℃で1時間染色した。FACSCaliburフロー血球計算器(Becton Dickinson、San Jose、カナダ)により蛍光強度を測定した。
目標物質であるh357−IgGの抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)の活性を、LDH細胞毒性検出キット(Clontech)により測定し、製造メーカーの取扱説明書に基づいて、損傷した細胞のサイトゾルから遊離するLDH活性を測定した。要約すると、高度に表現された膜貫通腫瘍壊死因子αの細胞を、異なる濃度のh357抗体の存在下で、5%CO2インキュベーターのアッセイ培地(1%FBS含有DEME)中で1時間培養した後、エフェクター細胞として梢血単核細胞(PBMC)を加えた(エフェクター細胞:目標細胞=20:1)。更に37℃で16時間培養した後、ウェル毎に100μlの上澄みを採取し、新しい96−ウェルの平底プレート中に移した。LDH基質(100μl)を各ウェルに加え、避光下にて室温で30分間培養した。サンプルの吸光度を、ELISAリーダーにより490nmで測定した。溶解バッファにより最大放出(release)を決定した。以下の式により、特定の溶解百分率を計算した:%細胞毒性=[実験例の放出−自然放出]/[最大放出−自然放出]×100。
A.ヒト腫瘍壊死因子αと結合するマウスモノクローナル抗体(m357IgG)
精製したm357IgGに対してSDS−PAGE分析を行なった。この結果を図1のレーン1とレーン2に示す。レーン1は非還元状態における精製したm357IgGのSDS−PAGE分析結果であり、レーン2は還元状態における精製したm357IgGのSDS−PAGE分析結果である。
ポリメラーゼ連鎖反応により得られたm357IgGの軽鎖と重鎖のcDNAについて電気泳動分析を行なった。この結果を図2に示す。レーン1はm357IgGの軽鎖のcDNA(配列番号9)であり、レーン2はm357IgGの重鎖のcDNA(配列番号10)である。
RT−PCRにより、ハイブリドーマ細胞株357−101−4(ECACC No. 92030603)からの抗腫瘍壊死因子αモノクローナル抗体m357IgGの重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)をエンコードしたcDNA(データは示さず)を得た。「材料と方法」中に記載したホモロジーモデリング(program MODELLER)により、それぞれ、m357IgGの重鎖可変領域VH、および軽鎖可変領域VLの推定アミノ酸配列の三次元構造を構築した。その後、PDBからの1SM3(配列同一性および相似性が、それぞれ、87%と93%)テンプレート構造が1.95Å、PDBからの1AY1(配列同一性および相似性が、それぞれ、85%と91%)テンプレート構造が2.20Åの解析度で、m357IgGの重鎖可変領域および軽鎖可変領域をそれぞれ、モデリングした。Discovery Studioモデリング2.1プログラムにより、m357IgGの重鎖可変領域VHおよび軽鎖可変領域VLの最終の正確な構造を獲得した。この結果を図3Aに示す。
可変領域再構成によるヒト化は、最初にPadlanが1991年に提案した。この方法では、抗体のフレームワーク領域中の潜在抗原部位は排除され、抗体の抗原親和性に影響しない(Padlan、1991)。この方法は、ヒト抗マウス抗体(HAMA)が、表面残基から派生する可変領域だけに反応することを前提としており、他の研究者(Fontayneら、2006;O’Connorら、1998;Staelensら、2006)により採用され改変されてきた。本実施例では、以下の三つのステップにより、m357IgGの可変領域再構成を行なった。まず、m357IgGの重鎖可変領域と軽鎖可変領域をそれぞれ構築した。次に、AREAIMOLプログラムを使用して溶媒接近可能残基を計算し、非ヒト様のフレームワーク表面残基を同定した。最後に、ヒトフレームワークの配列アライメント結果に基づいて、これらの表面残基を、ヒトの対応表面残基に突然変異させた。可変領域上で、マウスm357IgGの非ヒト様フレームワーク表面残基を置換するため、ヒト目標配列から、一組の高度に相同性を有する表面残基を選択した。IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr/)中で検索を行い、検索結果から、ファージ提示法、またはヒト化抗体の配列を排除して、m357IgGと対応する可変領域に対し、相同性が最も高いヒト重鎖可変領域と軽鎖可変領域の配列ペアを同定した。ヒト配列で見出される最も同一性の高い表面残基は、PPS4の可変領域である(フレームワーク領域中の配列同一性は、それぞれ、重鎖可変領域;76%、軽鎖可変領域:73%)(図4)。AREAIMOLプログラムの計算結果に基づいて、重鎖可変領域中の20個の表面残基のうち8個は、ヒトとマウスの配列間で非保存的であり、軽鎖可変領域中の16個の表面残基のうち9個は非保存的であった。これら17個(8個+9個)の表面残基は、置換の候補者であった。しかし、CDR領域中の重鎖H52BQ、重鎖H52CS、重鎖H54N、重鎖H61E、軽鎖L31F、軽鎖L55S、軽鎖L90W、軽鎖L92D、軽鎖L93Y、および軽鎖L96Rの置換は、CDRのコンフォメーションを潜在的に変化させ、軽鎖中のCDR2近くの5Å内の余分な非定常表面残基であるL59Vも、結合親和性に潜在的に影響する(図3B)。その結果、これらの11個のマウス残基は維持され、抗原親和性を保持する。最後に、残りの6個の残基を選択して、ヒト保存残基に置換した。PPS4と比較すると、軽鎖可変領域の第10の比較位置におけるイソロイシンはトレオニンに置換され(m357IgGの軽鎖可変領域の第10アミノ酸のイソロイシンがトレオニンに置換される)、第18の比較位置のリジンはアルギニンに置換される(m357軽鎖可変領域の第18のアミノ酸のリジンがアルギニンに置換される)。PPS4と比較すると、重鎖可変領域の第3の比較位置のリジンはグルタミンに置換され(m357重鎖可変領域の第2アミノ酸のリジンがグルタミンに置換される)、第11の比較位置のトリプトファンがロイシンに置換され(m357重鎖可変領域の第10アミノ酸のトリプトファンがロイシンに置換される)、第19の比較位置のリジンがアルギニンに置換され(重鎖可変領域の第18アミノ酸のリジンがアルギニンに置換される)、第42の比較位置のグルタミン酸がグリシンに置換される(重鎖可変領域の第41アミノ酸のグルタミン酸がグリシンに置換される)(図4)。
m357IgGのヒト化重鎖可変領域と軽鎖可変領域のアミノ酸配列を、インフレームで、ヒトIgG1の重鎖とカッパ軽鎖定常領域に融合させた。完全なヒト化357(h357)IgG1分子を発現するため、二種の哺乳動物発現ベクターであるpSecTag2/HygroとpcDNA3.3−TOPO TAを使用し、h357IgGのヒト化重鎖と軽鎖をそれぞれ、導入した。その後、軽鎖発現カセットを重鎖発現pSecTag2/Hygroベクターに連接させ、単一の発現ベクターを得た。組み換えh357IgGの発現レベルは約14mg/Lであった。蛋白質Aクロマトグラフィにより、m357IgGとh357IgGを含む培養基をそれぞれ、精製すると共に、SDS−PAGEにより蛋白質精製物を決定した(図1)。図1に示すように、非還元状態下で、二つの抗体は、155kDaの分子量を有する単一バンド(レーン1と3)を示した。還元状態下では、二つの抗体は、それぞれ55kDa(重鎖)と26kDa(軽鎖)の分子量を有する二つの蛋白質バンド(レーン2と4)を生成した。
抗腫瘍壊死因子α抗体の機能活性を調べるために、可溶性腫瘍壊死因子α活性を抑制する抗体の能力をテストした。腫瘍壊死因子αは、マウスL929細胞に対して細胞毒性を生じさせる。組み換えヒト腫瘍壊死因子α抗体および上記細胞の共培養により、L929アッセイでm357IgGとh357IgGを両方評価した。図5に示すように、100ng/mlのヒト腫瘍壊死因子αで処理されたL929細胞中の腫瘍壊死因子α媒介細胞毒性は、m357IgGとh357IgGの両方により、用量依存的に効果的に中和され、ED50値はそれぞれ、3.07nMと2.30nMであった。この結果は、ヒト化357IgGは、マウス357IgGと同程度の濃度で、腫瘍壊死因子αの中和活性を維持することを示している。
腫瘍壊死因子αは、膜関連の前駆体(膜貫通腫瘍壊死因子α)として存在し、腫瘍壊死因子α変換酵素(TNF変換酵素、TACE)により媒介される蛋白分解切断により成熟した可溶体が放出される。多くの研究により、腫瘍壊死因子α拮抗薬は、アポトーシス、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)、補体依存性細胞障害活性(CDC)、外側から内側へのシグナリングメカニズムにより、細胞溶解を生じることが調査されてきた(Aroraら、2009;Caronら、1999;Mitomaら、2008;Scallonら、1995)。h357IgGと膜貫通腫瘍壊死因子αとの結合能力を分析するため、膜貫通腫瘍壊死因子αの非開裂形式のcDNAを、NS0細胞にトランスフェクトして細胞膜上で発現させ、フロー血球計算器を用いてm357IgGとh357IgGの両方の結合活性を評価した。図6のデータは、m357IgGとh357IgGは共に、濃度依存的に膜貫通腫瘍壊死因子αと結合することを示しており、KD値はそれぞれ、12.0nMと16.8nMである。同程度のKD値は、ヒト化過程において、膜貫通TNF−αの結合親和性を変化させないことを示す。h357IgGがナノモル範囲の結合親和性を有することは、h357IgGが、膜貫通腫瘍壊死因子αを介して、更に多くのエフェクター機能、またはアポトーシスメカニズムを潜在的にトリガーすることを示唆している。
既知の文献で示されるように、インフリキシマブおよびアダリムマブの膜貫通腫瘍壊死因子αに対する結合親和性は、エタネルセプトよりも高く、抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC)、補体依存性細胞障害活性(CDC)、またはアポトーシスにより、細胞表面発現膜貫通腫瘍壊死因子αの細胞死滅作用に影響するが、これは、臨床疾病で異なる効果が生じる原因のひとつである(Taylor、2010)。細胞表面発現腫瘍壊死因子α様マクロファージと単球は、例えばクローン病やウェゲナー肉芽腫症などの肉芽腫性疾患において非常に重要な役割を果たしており、抗体依存性細胞媒介性細胞障害により、細胞を直接、死滅させる(Beenhouwerら、2004)。腫瘍壊死因子α拮抗薬が膜貫通型腫瘍壊死因子α発現細胞に結合すると、これらの細胞は、ナチュラルキラー細胞のターゲットとされる。ヒトIgG1由来のFc領域からなるh357IgGは、腫瘍壊死因子α産生細胞中で、潜在的に細胞溶解を生じる。よって、h357IgGの、膜貫通腫瘍壊死因子α発現目標細胞に対するADCC仲介能力を評価するため、分離した末梢血単核球PMBCを抗体依存性細胞媒介性細胞障害の分析に用いた。エフェクター細胞:目標細胞(E:T)は20:1である。h357IgGの濃度が6.25ug/mlのときに、腫瘍壊死因子α目標細胞の20%以上が溶解した(図7)。これらのデータは、h357IgGが、細胞表面で発現された膜貫通腫瘍壊死因子αとの結合によって抗体依存性細胞媒介性細胞障害を仲介することを示唆している。従って、h357IgGは、ADCC能を有する治療抗体と同様、更に効果的な腫瘍壊死因子α中和抗体に発展する可能性を有している。
Claims (17)
- ヒト化モノクローナル抗体のアミノ酸配列であって、
配列番号1の配列を含む軽鎖の可変領域のアミノ酸配列、及び
配列番号2の配列を含む重鎖の可変領域のアミノ酸配列
を含み、
前記配列番号1の配列と前記配列番号2の配列は、少なくとも一つのアミノ酸置換を有し、
前記アミノ酸置換は、配列番号1の第10アミノ酸のイソロイシンのトレオニンへの置換、配列番号1の第18アミノ酸のリジンのアルギニンへの置換、配列番号2の第2アミノ酸のリジンのグルタミンへの置換、配列番号2の第10アミノ酸のトリプトファンのロイシンへの置換、配列番号2の第18アミノ酸のリジンのアルギニンへの置換、および配列番号2の第41アミノ酸のグルタミン酸のグリシンへの置換よりなる群から選択される少なくとも一つであり、且つ、
前記ヒト化モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子αに結合することを特徴とするヒト化モノクローナル抗体のアミノ酸配列。 - 前記腫瘍壊死因子αは、ヒト腫瘍壊死因子αである請求項1に記載のヒト化モノクローナル抗体のアミノ酸配列。
- ヒト化モノクローナル抗体のアミノ酸配列であって、
配列番号5の配列を含む軽鎖の可変領域のアミノ酸配列、及び
配列番号6の配列を含む重鎖の可変領域のアミノ酸配列
を含み、
前記モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子αに結合することを特徴とするヒト化モノクローナル抗体のアミノ酸配列。 - 前記腫瘍壊死因子αは、ヒト腫瘍壊死因子αである請求項3に記載のヒト化モノクローナル抗体のアミノ酸配列。
- ヒト化モノクローナル抗体のヌクレオチド配列であって、
配列番号7の配列を含む軽鎖の可変領域のヌクレオチド配列、及び
配列番号8の配列を含む重鎖の可変領域のヌクレオチド配列
を含み、
前記モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子αに結合することを特徴とするヒト化モノクローナル抗体のヌクレオチド配列。 - 前記腫瘍壊死因子αは、ヒト腫瘍壊死因子αである請求項5に記載のヒト化モノクローナル抗体のヌクレオチド配列。
- ヒト化モノクローナル抗体であって、
軽鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号1の配列を含む軽鎖、及び
重鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号2の配列を含む重鎖
を含み、
前記配列番号1の配列と前記配列番号2の配列は、少なくとも一つのアミノ酸置換を有し、
前記アミノ酸置換は、配列番号1の第10アミノ酸のイソロイシンのトレオニンへの置換、配列番号1の第18アミノ酸のリジンのアルギニンへの置換、配列番号2の第2アミノ酸のリジンのグルタミンへの置換、配列番号2の第10アミノ酸のトリプトファンのロイシンへの置換、配列番号2の第18アミノ酸のリジンのアルギニンへの置換、および配列番号2の第41アミノ酸のグルタミン酸のグリシンへの置換よりなる群から選択される少なくとも一つであり、且つ、
前記モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子αに結合することを特徴とするヒト化モノクローナル抗体。 - 前記腫瘍壊死因子αは、ヒト腫瘍壊死因子αである請求項7に記載のヒト化モノクローナル抗体。
- 前記腫瘍壊死因子αは、放出型腫瘍壊死因子α、または膜貫通型腫瘍壊死因子αを含む請求項7に記載のヒト化モノクローナル抗体。
- 前記ヒト化モノクローナル抗体の前記膜貫通型腫瘍壊死因子αに対する結合親和性は、約20−40nMである請求項9に記載のヒト化モノクローナル抗体。
- ヒト化モノクローナル抗体であって、
軽鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号5の配列を含む軽鎖、及び
重鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号6の配列を含む重鎖
を含み、
前記ヒト化モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子αに結合することを特徴とするヒト化モノクローナル抗体。 - 前記腫瘍壊死因子αは、ヒト腫瘍壊死因子αである請求項11に記載のヒト化モノクローナル抗体。
- 前記腫瘍壊死因子αは、放出型腫瘍壊死因子α、または膜貫通型腫瘍壊死因子αを含む請求項11に記載のヒト化モノクローナル抗体。
- 前記ヒト化モノクローナル抗体の前記膜貫通型腫瘍壊死因子αに対する結合親和性は、約20−40nMである請求項13に記載のヒト化モノクローナル抗体。
- 膜貫通型腫瘍壊死因子αを中和する方法であって、
ヒト化モノクローナル抗体を膜貫通型腫瘍壊死因子αに結合させる工程を含み、
前記ヒト化モノクローナル抗体は、
軽鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号5の配列を含む軽鎖、及び
重鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号6の配列を含む重鎖
を含むことを特徴とする膜貫通型腫瘍壊死因子αを中和する方法。 - 抗体依存性細胞媒介性細胞障害を生じさせる方法であって、
ヒト化モノクローナル抗体を対象の膜貫通型腫瘍壊死因子αに結合させる工程を含み、
前記ヒト化モノクローナル抗体は、
軽鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号5の配列を含む軽鎖、及び
重鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号6の配列を含む重鎖
を含むことを特徴とする抗体依存性細胞媒介性細胞障害を生じさせる方法。 - 膜貫通型腫瘍壊死因子αに関する疾病を治療する薬物を調製する方法であって、
ヒト化モノクローナル抗体を提供する工程を含み、
前記ヒト化モノクローナル抗体は、
軽鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号5の配列を含む軽鎖、及び
重鎖の可変領域のアミノ酸配列が配列番号6の配列を含む重鎖
を含み、且つ、
前記ヒト化モノクローナル抗体は、腫瘍壊死因子αに結合することを特徴とする膜貫通型腫瘍壊死因子αに関する疾病を治療する薬物を調製する方法。
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