JP2012077373A - 硫化銅鉱物の浸出残渣からの金の回収方法 - Google Patents

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Yasushi Senda
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Abstract

【課題】金を含有する硫化銅鉱又は金を含むケイ酸鉱を含有する硫化銅鉱の浸出残渣から金を回収する際の、効率的な浮遊選鉱法の提供。
【解決手段】浸出残渣から効率的に浸出できない金を回収する際の浮遊選鉱法であって、前記浸出残渣を銅濃度が1.0mass%以下になるまで銅浸出操作を行い、その後、固液分離で浸出残渣を回収し、得た浸出残渣を水でリパルプし、浮遊選鉱にて金をイオウと一緒に回収する。なお、浮遊選鉱は、pH調整を行わず、捕収剤も添加しないで、起泡剤のみを添加する。
【選択図】図1

Description

本発明は硫化銅鉱物の浸出残渣からの効率的に浸出できない金の回収方法に関し、更に詳しくは、浸出操作によって生成した単体イオウと一緒に金を浮遊選鉱法で回収する際の、効率的な浮遊選鉱法に関するものである。
銅製錬において、銅鉱石に含有される金の回収は、不可避の課題であり、様々な回収方法が考案され、実施されている。
現在、硫化銅鉱物の大部分は乾式製錬法によって処理されている。乾式製錬法では、金や銀等の貴金属は、粗銅中に移行し、さらに粗銅を電解精製して電気銅とする電解工程で澱物中に濃縮する。金の回収は、この澱物を原料として種々の方法が行われている。
ところで近年、湿式製錬法に関する研究が進み、酸化銅鉱のみならず、二次硫化銅鉱や初生硫化鉱といった硫化銅鉱物を原料とする湿式製錬法が実用化されようとしている。湿式製錬法とは、硫酸又は塩酸を含む酸性水溶液を用いて、硫化銅鉱物を浸出し、銅や金を回収するプロセスである。
この湿式製錬法では、銅に比べ金の浸出が困難であり、金の浸出率を高めるには、一般的に浸出に用いる溶液の酸化還元電位をより高くする必要がある。そのため、第二鉄イオン、第二銅イオンのほか、強力な酸化剤が必要となる。
したがって、意図的に、金を浸出残渣中に残留させ、そこから金を回収する方法が特開2006−57133(特許文献1)に報告されている。
具体的には、実施例にある通り、浸出残渣を水でスラリーとし、pHを11に調整した後、浮遊選鉱で単体イオウと金を一緒に回収し、回収した浮遊物を加熱して、単体イオウを溶融しながら遠心分離に付し、金濃縮物と単体イオウを得た例が示されている。
銅と金を浸出する方法において、金の浸出率を80%以上とするには、操業法においてもコストにおいても、80%程度までと比べ、格段に困難となる。
したがって、金の浸出を行う場合でも、浸出残渣中の金を効率的に回収できるのであれば、金の一部を意図的に浸出残渣中に残留させることは、有用である。
特開2006−57133
発明が解決しようとしている課題
銅と金を浸出する方法において、金の浸出率を80%以上とするには、操業法においてもコストにおいても、80%程度までと比べ、格段に困難となる。
金を80%程度浸出した後、残りの20%程度の金を浸出残渣に濃縮し、回収することで、金を95%以上回収でき、かつ操業法やコスト面での負担を軽減できる。
また、銅浸出残渣中の金を効率的に浮遊選鉱法で回収する場合、銅精鉱に起因する硫化鉄の浮上を抑制するため、pHをアルカリ側にコントロールする必要がある。
一般的に浸出は強酸性領域で実施されるため、浮選前液をアルカリ側に調整するには多量のアルカリ試薬が必要となり、試薬コストも無視できない。
pH調整を実施しないで浸出残渣中の金を効率的に浮遊選鉱法で回収する方法ができれば、操業の簡素化、コストダウンに寄与することになる。
本発明者らは、銅浸出の進行に伴い、カルコパイライト(CuFeS2)中の鉄分や硫化鉄も浸出されることを確認した。
そして、銅浸出残渣中の銅濃度が1.0mass%以下の場合、硫化鉄を含む精鉱中の鉄分が浸出され、さらに浸出された鉄の一部は、浸出で生成したSO分と反応し、ジャロサイトやゲーサイトとして浸出残渣中に存在することを見出した。
本発明は、上記の課題を解決するもので、浸出残渣中の鉄の形態を硫化鉄以外とすることで、硫化鉄の抑制のためのpH調整を不要とし、効率良くかつ経済的に金を回収する方法を提供する。
発明が解決するための手段
本発明者らは、
(1)金を含有する硫化銅鉱又は金を含むケイ酸鉱を含有する硫化銅鉱の浸出残渣から金を回収する際の、効率的な浮遊選鉱法であって、前記浸出残渣を銅濃度が1.0mass%以下になるまで銅浸出操作を行い、その後、固液分離で浸出残渣を回収し、得た浸出残渣を水でリパルプし、浮遊選鉱にて金をイオウと一緒に回収する金の回収方法。
(2)浮遊選鉱は、pH調整を行わず、捕収剤も添加しないで、起泡剤のみを添加する上記(1)に記載の金の回収方法。
(3)前記浸出残渣は、硫化銅鉱を塩素イオン、第二鉄イオンを含む溶液で浸出して得られた浸出残渣である上記(1)又は(2)の何れかに記載の金の回収方法。
を見出した。
発明の効果
本発明によれば以下の効果を有する。
(1)浸出残渣の浮遊選鉱において、pH調整及び捕収剤の添加を必要としないため、コスト削減ができる。
(2)泡に付着分は基本的に回収となるため、浮選終点の判断が容易であり、管理を簡便にできる。
(3)プロセス全体での金の回収率が95%以上を達成できる。
本発明の一態様である金を含む銅精鉱からの銅、金の回収プロセスの概略図である。 本発明の一態様である浸出残渣の組成を示す図である。 本発明の一態様であるフロスの重量割合に対する、金回収工程1及び金回収工程2合算の金の回収率を示す図である。 本発明の一態様である浮遊選鉱時の各pHにおけるフロスの重量割合と銅精鉱浸出残渣に対する金と鉄の分配率の関係を示す図である。 本発明の一態様である浮遊選鉱時の各pHにおけるフロスの重量割合とフロスの金と硫黄の品位の関係を示す図である。
本発明の対象鉱石は、金を含有する硫化銅鉱や金を含むケイ酸鉱を含有する硫化銅鉱である。
本発明においては、金を含む銅精鉱からの銅、金の回収プロセスに関して本発明の具体例を、図1により示す。
このプロセスを、浸出、金回収1、酸化、銅回収、金回収2の五群に分け、浸出はCAL、金回収1はAR1、酸化はOX、銅回収はCR、金回収2はAR2で表示する。
浸出工程(CAL)
原料を塩化第2銅、塩化鉄、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム混合液(第1の酸性水溶液)に添加し、大気圧下70℃以上の温度で空気を溶液中に吹き込みながら反応させ原料中の銅を浸出する。代表的な銅の硫化鉱であるカルコパイライトを例にすると、次のような反応式に従って銅は、溶出すると考えられる。
CuFeS+3CuCl→4CuCl+FeCl+2S(1)
CuFeS+3FeCl→CuCl+4FeCl+2S(2)
これらの反応により大部分の銅を浸出することができる。
また、浸出液が第一の酸性水溶液の場合、銅の浸出に次いで金も浸出される。一般に金を浸出する場合、適切な酸化剤と浸出した金が再度還元されないための安定化剤が必要である。しかしながら、本フローは塩化物を溶液中に溶解した塩化浴であるため、特別な酸化剤は必要なく、三価のFeの酸化力によりAuを塩化金等の組成で溶液中に浸出できる。
第1の酸性水溶液においては塩化物のみでも銅、金浸出反応は進行するが、臭素イオンが存在する場合、浸出反応の酸化還元電位を低下できるため反応速度が速くなり、反応時間が短縮できる特徴があるため、上述の溶解及び反応を高い効率で実現するためには、第1の酸性水溶液中の塩化物イオンと臭化物イオンの濃度の合計が、120g/L〜200g/Lであることが好ましい。
銅浸出を促進するため、粉砕・摩鉱した原料を用いるほうが好ましく、その際の粒度は、原料全体の80%の粒径が40μm以下が好ましい。
浸出温度は70℃以上を必要とするが、浸出反応をより促進させるためには、温度を上げて反応を行うほうが良い。
金回収1工程(AR1)
浸出後液中に溶けたAuは酸化工程に先立って、活性炭による吸着や溶媒抽出など従来の方法により回収される。
酸化工程(OX)
Au回収後のAu吸着後液の銅の酸化、一部の鉄の除去のために、金回収後の浸出後液に空気を吹き込み、酸化を行う。式(3)に示すように第二銅の酸化には酸素のほかに酸を消費する。このため、溶液のpHが上昇するが、pHの上昇にともない式(4)で示す反応によって鉄が沈殿し酸を生成する。
CuCl+(1/4)O+HCl→CuCl+(1/2)HO(3)
FeCl+2HO→FeOOH+3HCl(4)
式(4)により生成する酸(HCl)を利用して式(3)の銅の酸化を進行させる。銅の酸化が終了すれば、酸が残留することで溶液のpHが低下し、式(4)の反応が平衡に達することで酸化は終了する。
なお、銅を酸化する目的は、銅回収工程における銅抽出反応を円滑に進行させるためである。
銅回収工程(CR)
前述の銅浸出工程で得られた、銅浸出後液から銅を回収する。銅の回収は、公知の溶媒抽出、イオン交換、電解採取または置換、あるいはこれらの組合せにより行うことができる。
本フローにおいては、陽イオン交換型の有機金属抽出剤やイオン交換樹脂を使用することが好ましい。
銅回収後液は、浸出工程へ送られ再使用される。
金回収2工程(AR2)
浸出工程(CAL)で得た浸出残渣中の金は、浮遊選鉱法により硫黄とともに回収される。
浸出残渣の一例を図2に示す。■のマーカーがジャロサイトを、▲のマーカーがパイライトを示す。
浸出残渣中の各金属品位は、例えば、Au 10から30mass ppm、Cu 0.1から1.0mass%、Fe 10から25mass%、S 20から45mass%から成り、鉄の一部はジャロサイトとして存在する。
ここで、浸出残渣のCu品位は、1.0mass%以下が好ましい。
第一の理由として、浸出工程(CAL)で浸出したCuはほぼ100%回収されることから、浸出工程にて出来るだけ銅を浸出するのが銅回収率の観点から有利である。
第二の理由として、一般に鉱石中の金は鉄硫化鉱物中に取り込まれている事が多いにもかかわらず、金回収2工程で、フロス中に鉄と金が濃縮するのではなく、単体硫黄と金が濃縮される。よって、一度浸出した金が何かしらの原因で還元され、硫黄上に析出すると推察されるからである。
即ち、フロス中に単体硫黄と金が濃縮するには、先ず金を浸出する必要があるが、第一の酸性水溶液の場合、浸出残渣の銅品位が7.9mass%以下にまで浸出された後に金の浸出が進む。(特願2006−264423)
第三の理由として、浸出残渣の銅品位が1.0mass%以下にまで浸出した場合、硫化鉄の浸出も進んでおり、浸出された鉄の一部は、浸出工程で生成したSO4分と反応し、ジャロサイトとして浸出残渣中に存在する。ジャロサイトは、一般にパイライトなどの鉄硫化物に比べ浮遊性が低いため、浮遊選別時のフロスへのFeの混入を抑制する事ができる。また、残存している鉄硫化鉱も浸出され、粒径が細かく浮遊性が低いことが推察される。
これらの理由から浸出残渣のCu品位は、1.0mass%以下が好ましい。
浮遊選鉱に添加する試薬は、気泡剤のみで十分であり、例えば、主な組成が、テルペン化合物を合成したものから成る日香パインオイルNo10(日本香料薬品)を20から100μ/L添加する。また、浮遊選鉱時にpH調整を行う必要は無く、pH調整を行ってもAu,Fe回収率は変わらない。pH調整を行わずとも鉄化合物の浮遊を抑制し、フロスに金を優先的に回収できるのは以下の理由によると推察される。
第一の理由として、鉄の一部または大部分がジャロサイトとして存在しているため浮遊性が低く、残存している鉄硫化鉱も浸出により、粒径が細かく浮遊性が低いことが推察されるため。
第二の理由として、金がパイライト等の鉄硫化物中に取り組まれているのではなく、硫黄に付着した単体の金として存在しているため。
以上の理由により、pH調整を行わずとも鉄を抑制し、金を優先的に回収できる。
図3にフロスの重量割合に対する、金回収工程1及び金回収工程2合算の金の回収率を示す。全工程の金の回収率が、90から99%に成ることが把握できる。なお、銅浸出工程にて金が80%程度、浮遊選鉱工程にて金が10から20%程度回収される。
金を含有する硫化銅鉱(カルコパイライト)を塩化第2銅、塩化鉄、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム混合液(第1の酸性水溶液:塩素イオン、第二鉄イオンを含む溶液)に添加し、大気圧下70℃以上の温度で空気を溶液中に吹き込みながら反応させ原料中の銅を浸出する。
上記浸出処理により得られた銅精鉱浸出残渣を得た。
該浸出残渣は、各金属品位はAu 22mass ppm、Cu 0.2mass%、Fe 18mass%、S 32mass%、SO4 9.0mass%から成り、ジャロサイトであるFeの割合は41%である。なお、ジャロサイトである鉄の割合は、該浸出残渣残さ中のSO4が全てジャロサイトであるとして、ジャロサイトであるFeの品位を算出し、その値をTatalFe品位で割り、算出した。なお、該浸出残渣のXRDパターンを図2に示す。
この際、鉄の回収率が低く、金の回収率が高くなるように、Cu品位を1.0mass%以下に成るまで、浸出を行った。
浮遊選鉱を次の手順により行った。前記銅精鉱浸出残渣にパルプ濃度135g/Lになるよう純水を加え、リパルプした。
最後に、気泡剤として、主な組成が、テルペン化合物を合成したものから成る日香パインオイルNo10(日本香料薬品)を62μ/L添加し、アジテア型浮選機により浮遊選鉱を行った。
図4に浮遊選鉱時の各pHにおけるフロスの重量割合と銅精鉱浸出残渣に対する金と鉄の分配率の関係を、図5に浮遊選鉱時の各pHにおけるフロスの重量割合とフロスの金と硫黄の品位の関係を示す。また、該浸出残渣、フロスの重量割合が26%の時のフロス、及びフロスの重量割合が26%の時の尾鉱の平均粒子径を表1に示す。
Figure 2012077373
浸出工程において、浸出残渣中の銅を8mass%以下に成るまで、浸出を行ったため以下の効果が得られた。
この例で示すように、Au,Feの回収率は、フロスの重量割合に依存し、浮遊選鉱時のpHに依存しないことから、浮遊選鉱の前にpH調整を特に必要としない。
また、フロス中硫黄品位は55−80mass%、金品位は40−70mass ppmであり、浮遊選鉱時のpHに関係なく、フロスにSとAuが濃縮し、浸出残渣中のAuが少なくとも70mass%以上回収される。なお、尾鉱に残存するのは、SiO2等の脈石成分、ジャロサイト、粒径の細かいパイライトである。
また、図3に示すように、フロスの重量割合に対する、金回収工程1及び金回収工程2の金回収率が、合計して、92から99%までになることが把握される。
極めて高い回収率となる。

Claims (3)

  1. 金を含有する硫化銅鉱又は金を含むケイ酸鉱を含有する硫化銅鉱の浸出残渣から効率的に浸出できない金を回収する際の、浮遊選鉱法であって、
    前記浸出残渣を銅濃度が1.0mass%以下になるまで銅浸出操作を行い、
    その後、固液分離で浸出残渣を回収し、得た浸出残渣を水でリパルプし、浮遊選鉱にて金をイオウと一緒に回収することを特徴とする金の回収方法。
  2. 浮遊選鉱は、pH調整を行わず、捕収剤も添加しないで、起泡剤のみを添加することを特徴とする請求項1に記載の金の回収方法。
  3. 前記浸出残渣は、硫化銅鉱を塩素イオン、第二鉄イオンを含む溶液で浸出して得られた浸出残渣であることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の金の回収方法。
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Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006057133A (ja) * 2004-08-19 2006-03-02 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 銅精鉱浸出残渣から金濃縮物の回収方法

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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