JP2012072775A - 圧縮機およびその運転制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ベーンレスディフューザ7Aを備えた圧縮機において、ベーンレスディフューザ7Aの出口側に入口12Aが開口され、出口12Bがインペラ5Aのハブディスク5C背面と対向するケーシングの壁面に開口されている流体循環流路12を有し、該流体循環流路12は、複数の連通孔、もしくは、1または複数のスリットにより構成されており、入口12Aから取り込んだ流体を出口12Bよりインペラ5Aのハブディスク5C背面に向けて噴出し、該ハブディスク5C背面により周方向流速を付与してベーンレスディフューザ7A入口でインペラ5Aからの流体主流と合流される循環流が形成可能とされている。
【選択図】図2
Description
図10は、上記遠心圧縮機の要部断面図である。遠心圧縮機は、回転軸01と、回転軸01と一体に回転するインペラ02とを備えている。このインペラ02の出口側には、インペラ02により遠心力が付与された流体の流路となるベーンレスディフューザ03が設けられる。また、インペラ02のシュラウドディスク04とシュラウドケーシング05との間にはラビリンス06が設けられ、回転軸01とハブケーシング07との間にはラビリンス08が設けられている。
この旋回失速は、特に、遠心圧縮機を低流量域で運転した場合に発生することが知られている。図11は、旋回失速が発生する流量Qと圧縮機の出口圧(ヘッド圧)Hおよび効率ηとの関係を示すものであり、流量Q1が旋回失速発生点、それより低流量域の流量範囲が旋回失速発生領域W1となる。
そこで、旋回失速の発生を阻止することを目的に、ディフューザに、その内部圧力よりも高い圧力の高圧流体を導入するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
また、ディフューザの内部圧力よりも高い高圧流体を噴出するために、インペラ出口から取込管を介してチャンバ内に圧縮流体を導入して溜め込み、これを流量が旋回失速発生領域まで低下したとき、噴出管を介してディフューザ内部に噴出する構成、または、最終段の圧縮ステージから高圧の圧縮流体を連通管経由で取り込む構成、あるいは、別に設置された高圧流体供給部から高圧流体を供給する構成等を採用しているが、これがディフューザ周りの構造を複雑化し、構造が簡単であるというベーンレスディフューザの利点を損なうこととなっている。
すなわち、本発明にかかる圧縮機は、インペラの出口側に、該インペラにより流体に与えられた運動エネルギーを圧力エネルギーに変換するベーンレスディフューザを備えた圧縮機において、前記ベーンレスディフューザの出口側に入口が開口され、出口が前記インペラのハブディスク背面と対向するケーシング壁面に開口されている流体循環流路を有し、該流体循環流路は、複数の連通孔、もしくは、1または複数のスリットにより構成されており、前記入口から取り込んだ流体を前記出口より前記インペラのハブディスク背面に向けて噴出し、該ハブディスク背面により周方向流速を付与して前記ベーンレスディフューザ入口で前記インペラからの流体主流と合流される循環流が形成可能とされていることを特徴とする。
また、流体循環流路の出口をハブディスク背面と対向するケーシング壁面に開口しているため、流体循環流路の出口から噴出される循環流により、インペラを流れる流体主流が乱されることがない。しかも、この循環流がベーンレスディフューザ入口で流体主流と合流する際、流体主流と略同程度の周方向流速となっている。従って、流れのせん断による圧力損失の増加をも抑制することができる。
さらに、流体循環流路が複数の連通孔、もしくは、1または複数のスリットにより構成されているため、連通孔の数および孔径、もしくは、スリットの数、幅および長さを適宜選択することによって、所要の循環流量が得られる流体循環流路を適宜設定することができる。
なお、本発明において、ベーンレスディフューザの出口側とは、当該圧縮ステージが最終圧縮ステージの場合は、当該圧縮ステージのベーンレスディフューザ出口からスクロールまでの間の高圧流路を云い、下流側が最終圧縮ステージでない場合は、当該圧縮ステージのベーンレスディフューザ出口から下流圧縮ステージのリターンベーン入口までだけでなく、リターンベーン出口までの間の高圧流路を云う。
なお、この場合は、スワールキャンセラー効果を阻害しないように、シャントホールのホール径やホール数等を設定する必要がある。
なお、この場合、旋回失速抑制時にのみ流体循環流路に流体を循環させればよく、効率低下をほとんど気にする必要がないため、旋回失速抑制を最優先に流体の循環流量比率を大きく設定することができる。
また、旋回失速が発生するおそれがない領域では、開閉手段により流体循環流路を閉じることによって、上記の流体循環を中止させることができるため、流体循環流路を備えていない圧縮機と同様に、効率優先の運転を行わせることができる。
さらに、流体循環流路を1つのケーシング内に設けることができるため、旋回失速の抑制を可能とする流体循環流路を簡易に構成することができる。従って、構造が簡単であるというベーンレスディフューザの利点をそのまま維持することができる。また、流体循環流路が複数の連通孔、もしくは、1または複数のスリットにより構成されているため、連通孔の数および孔径、もしくは、スリットの数、幅および長さを適宜選択することによって、所要の循環流量が得られる流体循環流路を適宜設定することができる。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図3を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態にかかる遠心圧縮機1の縦断面図が示されている。
遠心圧縮機1は、複数のパーツを組み合わせて構成されるケーシング2と、ケーシング2内に図示省略の軸受を介してその軸線L回りに回転可能に支持される回転軸4と、この回転軸4と一体に回転するように設けられたクローズドタイプまたはオープンタイプの2つのインペラ5A,5B(本実施形態では、クローズドインペラが示されている。)と、を有している。
この圧縮流体は、2段目のインペラ5Bによっても同様に遠心力が付与され、2段目のベーンレスディフューザ7Bで運動エネルギーが圧力エネルギーに変換され、さらに高圧の圧縮流体となってスクロール10に吐出される。そして、スクロール10からケーシング2に設けられている流体流出口11を経て図示省略の吐出配管へと送出されるようになっている。このように、本実施形態では、2段遠心圧縮機1が例示されている。
このベーンレスディフューザ7A,7Bにおいては、前述したとおり、遠心圧縮機1を低流量域で運転した場合に、円周方向の流れが不均一となる旋回失速が発生する。
この旋回失速の発生を抑制するため、本実施形態では、以下の構成を採用している。
ベーンレスディフューザ7Aは、ハウジング2を構成するシュラウドケーシング2Aとハブケーシング2Bとによって形成されている。そして、このベーンレスディフューザ7Aの出口側おける下流圧縮ステージ、すなわち2段目(本実施形態では最終段)の圧縮ステージへのリターンベンド8頂部位置においてハブケーシング2Bの壁面に入口12Aが開口され、出口12Bがインペラ5Aを構成するハブディスク5Cの背面と対向するハブケーシング2Bの壁面に開口されている流体循環孔12が、ハブケーシング2B内に設けられている。
なお、上記噴出流体に対して、ハブディスク5Cの背面によりその周速×0.5の周方向流速が付与されるので、出口12Bからの噴出流体が、ベーンレスディフューザ7Aの入口においてインペラ5Aを流れる流体主流と合流する際の周方向流速を、該流体主流と略同程度の周方向流速とすることができる。
なお、図2中において、符号13は、シュラウドケーシング2Aとシュラウドディスク5Dとの間に設けられるラビリンス、14は回転軸4とハブケーシング2Bとの間に設けられるラビリンスであり、それぞれの間に形成される隙間から流体が漏出するのを防止する目的で設置されている。
遠心圧縮機1が、低流量域で運転された場合においても、上記の如く流体循環孔12が設けられているため、この流体循環孔12の出入口間の圧力差によって、ベーンレスディフューザ7A出口位置の高圧圧縮流体の一部が、流体循環孔12を介してインペラ5Aのハブディスク5C背面位置に循環される。そして、ハブディスク5Cの背面によって周方向の流速が付与された状態で、インペラ5Aを流れる流体主流とその出口、すなわちベーンレスディフューザ7Aの入口で合流し、再びベーンレスディフューザ7Aへと流入される。このようにベーンレスディフューザ7Aの出入口間で高圧流体の一部(流体主流の10%程度)を循環させることにより、ベーンレスディフューザ7Aを流れる流体流量を増加させることができる。
図3中において、流量Q2が旋回失速発生点、それより低流量域の流量範囲が旋回失速発生領域W2であり、図13に示された流体循環孔12を有していないものと比べ、旋回失速発生点Q2が低流量域側へシフトされ、旋回失速発生領域W2が著しく狭くなり、遠心圧縮機1を安定して運転できる範囲が拡大されていることが理解される。
なお、ベーンレスディフューザ7Aを流れる流体流量を増加させ、旋回失速発生点Q2を低流量側へシフトさせて旋回失速の発生を抑制することにより、副次的にサージング発生点を低流量側へシフトできる可能性もある。
次に、本発明の第2実施形態について、図4を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、流体循環孔12を設ける位置(圧縮ステージ)およびその入口12Aの開口位置が異なっている。その他の点については、第1および第2実施形態と同様であるので、説明は省略する。
本実施形態は、図4に示されるように、最終段の圧縮ステージ(単段圧縮機の場合はその圧縮ステージ、2段以上の多段圧縮機の場合は2段目以降の最終段の圧縮ステージ)に流体循環孔12を設けた例である。この場合、流体循環孔12は、最終段圧縮ステージを構成する吐出ケーシング2C内に設けることができ、その入口12Aは、最終圧縮ステージのスクロール10底面位置に開口することができる。また、流体循環孔12の出口12Bは、インペラ5Bを構成するハブディスク5Eの背面と対向する吐出ケーシング2Cの壁面に開口されている。
なお、図4中の符号15は、インペラのスラストを調整するために設けられているバランスピストン、16は、バランスピストン15と吐出ケーシング2Cとの間に設けられているバランスピストンラビリンスである。
次に、本発明の第3実施形態について、図5を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第2実施形態に対して、流体循環孔12の入口12Aの開口位置が異なっている。その他の点については、第2実施形態と同様であるので、説明は省略する。
遠心圧縮機の中には、図5に示されるように、バランスピストン15のラビリンス16に流入する旋回流を緩和して不安定振動を低減するため、一端がスクロール10の底面に開口され、他端がバランスピストンラビリンス16に連通されているスワールキャンセラー用のシャントホール17を設けているものがある。本実施形態は、流体循環孔12の入口12Aを、このシャントホール17の途中位置に開口したものである。
従って、本実施形態においても、上記した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、本実施形態では、既存のシャントホール17を利用して流体循環孔12を構成することができるため、流体循環孔12をより簡易に構成することができる。
なお、この場合は、スワールキャンセラー効果を阻害しないように、高圧流体の流量増加に対応して、シャントホール17のホール径やホール数等を設定する必要がある。
次に、本発明の第4実施形態について、図6および図7を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1ないし第3実施形態に対して、ベーンレスディフューザ7Aの出口位置に入口12Aが開口された流体循環孔12中に、該流体循環孔12を開閉する開閉手段18を設けている点が異なっている。その他の点については、第1ないし第3実施形態と同様であるので、説明は省略する。
本実施形態では、図6に示されるように、流体循環孔12の途中に、流体循環孔12を開閉する電磁弁等により構成される開閉手段18が設けられている。
また、旋回失速領域となる低流量域での運転時は、開閉手段18により流体循環孔12を開放することにより、上記の如くベーンレスディフューザ7Aを流れる流体流量を増加させ、旋回失速発生点Q2を低流量側へシフトさせて旋回失速を抑制し、圧縮機を安定運転できる範囲を拡大することができる。
上記開閉手段18は、ベーンレスディフューザ7Aを流れる流体流量を図示省略のセンサーにより検出し、その流量が予め設定された旋回失速発生領域になったとき、開閉手段18を開放する構成としてもよい。
すなわち、遠心圧縮機1が部分負荷運転されると、ベーンレスディフューザ7Aを流れる流体の流量も減るため、低流量域での運転となって、旋回失速が発生する可能性が生じる。そこで、運転負荷が所定負荷以下となったとき、開閉手段18を開放し、流体循環孔12により高圧流体の一部をベーンレスディフューザ7Aの入口側に循環させることによって、ベーンレスディフューザ7Aを流れる流体流量を増加させることができる。
これによって、部分負荷運転時の旋回失速の発生を抑制し、圧縮機を安定運転できる範囲および部分負荷による運転範囲を拡大することが可能となる。
次に、本発明の第5実施形態について、図8を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1ないし第4実施形態に対して、流体循環孔12の入口12Aの開口位置が異なっている。その他の点については、第1ないし第4実施形態と同様であるので、説明は省略する。
本実施形態では、図8に示されるように、流体循環孔12の入口12Aが、下流圧縮ステージ、すなわち2段目(本実施形態では最終段)の圧縮ステージのリターンベーン9出口位置においてハブケーシング2Bの壁面に開口されている。
次に、本発明の第6実施形態について、図9を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1ないし第5実施形態に対して、流体循環孔12の出口12Bの開口構造が異なっている。その他の点については、第1ないし第5実施形態と同様であるので、説明は省略する。
本実施形態では、図9(A),(B)に示されるように、流体循環孔12の出口12Bが、インペラ5Aの旋回方向に斜めに指向されて設けられている。
なお、上記出口12Bの開口構造は、上記第1ないし第6実施形態にも同様に適用できることはもちろんである。
また、流体循環孔12は、必ずしもすべての圧縮ステージに設ける必要はなく、旋回失速の影響が大きい圧縮ステージに限って設けることができ、この場合、圧縮機全体の効率低下量をさらに小さくすることができる。
2 ケーシング
2B ハブケーシング
2C 吐出ケーシング
5A,5B インペラ
5C,5E ハブディスク
7A,7B ベーンレスディフューザ
8 リターンベンド
9 リターンベーン
10 スクロール
12 流体循環孔
12A 流体循環孔の入口
12B 流体循環孔の出口
15 バランスピストン
16 バランスピストンラビリンス
17 シャントホール
18 開閉手段(電磁弁)
Claims (11)
- インペラの出口側に、該インペラにより流体に与えられた運動エネルギーを圧力エネルギーに変換するベーンレスディフューザを備えた圧縮機において、
前記ベーンレスディフューザの出口側に入口が開口され、出口が前記インペラのハブディスク背面と対向するケーシング壁面に開口されている流体循環流路を有し、
該流体循環流路は、複数の連通孔、もしくは、1または複数のスリットにより構成されており、
前記入口から取り込んだ流体を前記出口より前記インペラのハブディスク背面に向けて噴出し、該ハブディスク背面により周方向流速を付与して前記ベーンレスディフューザ入口で前記インペラからの流体主流と合流される循環流が形成可能とされていることを特徴とする圧縮機。 - 前記入口は、下流圧縮ステージへのリターンベンド頂部位置におけるハブケーシング壁面に開口されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
- 前記入口は、最終圧縮ステージのスクロール底面位置に開口されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
- 前記入口は、一端が最終圧縮ステージのスクロール底面に開口され、他端がバランスピストンラビリンスに連通されているスワールキャンセラー用シャントホールの途中位置に開口されていることを特徴とする請求項3に記載の圧縮機。
- 前記入口は、下流圧縮ステージのリターンベーン出口位置におけるハブケーシング壁面に開口されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
- 前記出口は、前記インペラの旋回方向に斜めに指向されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の圧縮機。
- 前記出口は、前記インペラ外径の半分以下の位置において前記ケーシング壁面に開口されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の圧縮機。
- 前記流体循環流路の流体循環流量を、前記インペラを流れる流体主流の10%程度に設定することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の圧縮機。
- 前記流体循環流路中に、該流体循環流路を開閉する開閉手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の圧縮機。
- 請求項9に記載の圧縮機を運転制御する圧縮機の運転制御方法であって、ベーンレスディフューザを流れる流体流量を検出し、その流量が旋回失速領域になったとき、前記開閉手段により前記流体循環流路を開放することを特徴とする圧縮機の運転制御方法。
- 前記開閉手段を、所定負荷以下の部分負荷運転時に開放することを特徴とする請求項10に記載の圧縮機の運転制御方法。
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