JP2012072429A - 軸受用鋼及びそれを用いた軸受部品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも油焼入れ又は水焼入れ及び焼き戻しを施して軸受部品を製造するための軸受用鋼である。質量%でC:0.50%〜1.00%、Si:0.50%超〜1.50%、Mn:0.40%〜1.00%、Cr:0.01〜0.70%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる。
【選択図】図1
Description
熱処理工程を短縮する方法としては、球状化焼鈍の処理時間を短縮する方法(特許文献1参照)が提案されている。
また、Crの含有量を低減する方法としては、Bを添加し焼入性を確保する方法(特許文献2参照)が提案されている。
特許文献1の方法においては、球状化焼鈍の処理時間を短縮又は省略するにあたり、必要な焼入れ性を得るためにCr及びMnの含有量を多くしてある。したがって、製造工程の短縮化は可能であるが、低合金化による省資源化及びコスト低減は困難である。
また、特許文献2の方法においては、C及びCrの含有量を抑えると共にSi及びMoを所定の量、添加することにより転動疲労寿命を大幅に向上させることができる。さらに、焼入性を確保するために添加したBが効果的に作用するようにTiを添加している。そのため、TiがNと結合しTiNを形成することにより、転動疲労寿命が低下するおそれがあり、その場合には必要な特性を確保することができない。また、特許文献2に示す成分構成は、高周波焼入れを行うことを前提としており、油又は水焼入れを用いて製造を行う軸受部品には適用できない。
質量%でC:0.50%〜1.00%、Si:0.50%超〜1.50%、Mn:0.40%〜1.00%、Cr:0.01〜0.70%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼にある(請求項1)。
質量%でC:0.50〜0.70%、Si:0.50超〜1.00%、Mn:0.40〜1.00%、Cr:0.01〜0.50%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼にある(請求項2)。
したがって、上記の優れた軸受鋼を用いること低コストで、かつ要求される特性を備えた軸受用部品を生産することができる。
Cは、転動疲労寿命を得るのに必須の元素である。Cの含有によって、マルテンサイトを固溶強化し、焼入れ及び焼戻しを行った後の硬度を向上させることができ、転動疲労寿命を向上させることができる。Cの含有量が0.50質量%未満では上述した効果が得られにくい。また、Cを多量に添加すると、炭化物が粗大化し、部分的に強度が低下するおそれがあるためC含有量の上限を1.00質量%とする。
Siは、脱酸効果を有すると共に、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向上する元素である。そのため、Siの含有により、焼戻し後の硬度を高めることができ、転動疲労寿命が向上する。Siの含有量が0.50質量%以下では上述した効果が得られにくい。また、Siを多量に添加すると加工性が低下するため、Si含有量の上限を1.50質量%とする。
Mnは、焼入れ性を向上させると共に、脱酸及び脱硫元素であり、鋼の低酸素化に対して有効な元素である。Mnの含有量が0.40質量%未満では必要とする焼入れ性が得られにくい。また、Mnを多量に添加すると加工性が低下するため、Mn含有量の上限を1.00質量%とする。
Crは、炭化物を安定化させ、焼入れ性を向上させる元素である。Crの含有量が0.01質量%未満では、添加による効果が得られにくい。また、Crを多量に添加するとコストの上昇を招くため、上限は0.70質量%とする。
尚、本発明に示す軸受用鋼は、SUJ2相当の高炭素クロム軸受鋼に比べ、Crの含有量を低減してある。それにより、コストを低減することができる。
Bは、上記軸受用鋼中に固溶することで、焼入れ性を著しく向上させる元素である。Bの含有量が0.0005質量%未満では、添加による効果が得られにくい。また、Bの含有量が、0.0050質量%を超えると焼入れ性の向上効果が飽和してしまうため、その上限を0.0050質量%とする。
Alは、脱酸効果を有すると共に、上記軸受用鋼中のNと結合しやすいため、BとNが結合することを抑制して、Bの焼入れ性向上効果の低減を防止する。AlとNが結合して形成されるAlNは、微細であり転動疲労寿命へ悪影響を及ぼしにくい。Alの含有量が、0.1%以下では上述した効果が表れにくい。また、Alの含有量が0.3%を超えるとAlNが粗大化し、転動疲労寿命を低下させてしまうため、その上限を0.3質量%とする。
Nは、上述したごとく、Alと結合し結晶粒が微細なAlNを形成する。Nの含有量が多量となると、AlNが粗大化し、転動疲労寿命が低下する。そのため、Nの含有量の上限は、150質量ppm以下とする。
Oは、Alと結びついてAl2O3となる。Oの含有量が多量となると、Al2O3が粗大化し、転動疲労寿命が低下する。そのため、Oの含有量の上限は、15質量ppmとする。
尚、C、Si及びCr以外の化学成分の含有量について、その決定理由は、上述した第1の発明の内容と同様である。
上述したごとく、Cは、転動疲労寿命を得るのに必須の元素である。Cの含有によって、マルテンサイトを固溶強化し、焼入れ及び焼戻しを行った後の硬度を向上させることができ、転動疲労寿命を向上させることができる。Cの含有量が0.50質量%未満では上述した効果が得られにくい。また、第2の発明においては、炭化物の生成量を低減して、球状化焼鈍処理を省略するために、Cの含有量の上限を低減して0.70質量%とする。
上述したごとく、Siは、脱酸効果を有すると共に、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗性を向上する元素である。そのため、Siの含有により、焼戻し後の硬度を高めることができ、転動疲労寿命が向上する。Siの含有量が0.50質量%以下では上述した効果が得られにくい。また、球状化焼鈍の省略による硬度の向上及び加工性(特に切削性)の悪化を防止すべく、Siの最大含有量を低減し、加工性を確保する必要がある。したがって、Siの含有量の上限を低減して1.00質量%とする。
上述したごとく、Crは、炭化物を安定化させ、焼入れ性を向上させる元素である。Crの含有量が0.01質量%未満では、添加による効果が得られにくい。また、炭化物の生成量低減のため、Crの含有量の上限を低減して0.50質量%とする。
本例は、本発明の実施例にかかる軸受用鋼及び軸受部品について説明する。
本例では、本発明の発明鋼として、表1の試料1〜試料4に示す組成の鋼を作製した。また、試料5は、従来鋼であるSUJ2を示し、試料6〜試料14は、比較鋼として同表に示す組成の鋼を作製した。
転動疲労寿命の試験は、図1に示すごとく、直径Dがφ60mm、厚さtが10mmの円盤状の試験片Pを作製し、森式スラスト型転動疲労試験機10により行った。試験方法は、同図に示すごとく、荷重軸14により、荷重Fを付与して試験片Pの上面を球体13に押し当てつつ、回転軸11を回転させることにより、球体13を試験片Pの上面で転動させた。そして、試験片Pの上面に破損が生じた際の応力繰り返し数(回)を計測した。尚、本例においては、最大接触面圧を5.3GPaとし、回転速度を1500cpmとした。
焼入れ性の試験は、JIS G0561規格に準拠してジョミニー試験により行った。図3には、ジョミニー試験結果の一例を示し、縦軸をロックウェル硬さ(HRC)として、横軸を表層からの距離(/16inch)とした。試料1〜試料14において、ジョミニー試験の結果より、ロックウェル硬さがHRC60となる表層からの距離を求めた。尚、実線X2は比較する試料Z(試料1〜試料14のいずれか)の試験結果を、実線Y2は試料5(SUJ2)の試験結果をそれぞれ示すものである。
硬さ試験は、ロックウェル硬さ試験により行った。上述したごとく作製した試料1〜試料14の試験片において、その表面のロックウェル硬さを測定した。
硬さの評価は、試験片表面におけるロックウェル硬さがHRC60以上であれば要求される硬さを有しているものとした。
このように、本発明によれば、合金成分の含有量を低減すると共に製造工程における熱処理工程の短縮化を可能とし、生産性に優れ、低コストで、かつ要求される特性を備えた軸受用鋼及びそれを用いた軸受部品を提供することができる。
Claims (3)
- 少なくとも油焼入れ又は水焼入れ及び焼き戻しを施して軸受部品を製造するための軸受用鋼であって、
質量%でC:0.50%〜1.00%、Si:0.50%超〜1.50%、Mn:0.40%〜1.00%、Cr:0.01〜0.70%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼。 - 少なくとも油焼入れ又は水焼入れ及び焼き戻しを施して軸受部品を製造するための軸受用鋼であって、
質量%でC:0.50%〜0.70%、Si:0.50%超〜1.00%、Mn:0.40%〜1.00%、Cr:0.01〜0.50%、B:0.0005〜0.0050%、Al:0.10超〜0.30%、N:150ppm以下、O:15ppm以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする軸受用鋼。 - 請求項1又は2に記載の軸受用鋼を用い少なくとも油焼入れ又は水焼入れ及び焼き戻しを施して製造した軸受部品。
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JPH09217143A (ja) * | 1996-02-09 | 1997-08-19 | Kawasaki Steel Corp | 冷間鍛造性、高周波焼入れ性および転動疲労特性に優れた機械構造用鋼 |
WO2010082685A1 (ja) * | 2009-01-16 | 2010-07-22 | 新日本製鐵株式会社 | 表面硬化用機械構造用鋼及び機械構造用部品 |
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2010
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