JP2012068157A - 回転検出装置および輸送機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】ロータの回転角が所定角度で回転停止する等の状況下でも、意図しない輸送機器の動きを排除しながらも、レゾルバや信号線等にかかる故障の有無を検出できる回転検出装置および輸送機器を提供することである。
【解決手段】回転検出装置70は、ステータとロータとを備えてロータの回転に伴って信号を出力するレゾルバ71と、回転停止しているロータを直接的または間接的に回転させる制御を行う回転制御手段72gと、回転制御手段72gによってロータが回転する際に出力される信号に基づいて故障の有無を検出する故障検出手段72mとを有する。この構成によれば、所定角度以外の回転角になれば信号値が変化するので、断線した場合と同値になることはなく、故障か否かを容易に判別できる。回転制御手段72gによるロータの回転は車両10(輸送機器)が動かない範囲で行うので、運転者等の意図に反しない。
【選択図】図1

Description

本発明は、ステータとロータとを備えるレゾルバを含む回転検出装置と、当該回転検出装置を含む輸送機器とに関する。
従来では、対象物の回転を検出するセンサとしてレゾルバを用い、信号処理をソフトウエア化してハードウエア構成を簡素化することを目的とする技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1の技術では、レゾルバのSIN,COS出力信号(アナログ信号)を励磁信号に同期してサンプリングし、サンプリングした2つの上記出力信号の2乗和を求め、求めた2乗和が所定の範囲内にあるか否かで断線が発生したか否かを判別する(特許文献1の段落番号0026−0031および図5を参照)。
また、モータの回転状態を検出するセンサの出力値を適切なタイミングで補正することを目的とする技術の一例が開示されている(例えば特許文献2を参照)。特許文献2の技術では、モータ(モータジェネレータ)を無負荷運転させて、当該モータの回転数をレゾルバで検出し、一定速度で回転するように制御する(特許文献2の段落番号0063−0066,0075−0077および図4,図5を参照)。このことは、逆に言えば一定速度で回転する制御ができない場合には、断線が発生していることを示す。
特許第3136937号公報 特開2007−244071号公報
しかし、特許文献1の技術を適用してサンプリングした出力信号の2乗和を求めても、回転停止しているロータの回転角θが所定角度(0°≦θ<360°の1回転区間における0°,90°,180°,270°を意味する。以下同じ。)のときは、故障か否かを正確に判別できない。これは、SIN出力信号およびCOS出力信号のうち一方の信号値(出力値)が断線した場合と同値になり、かつ、2乗和が「1」になるためである。
また、特許文献2の技術を適用してモータを無負荷運転させようとする場合、当該モータに車輪が直結されるように構成された車両ではモータの無負荷運転自体が事実上行えない。すなわち、モータを無負荷運転させようとしても、モータに車輪が直結されているために車両が動いてしまう。この動きは運転者等(車両等を操作する者を意味し、運転士や操縦士等を含む。以下同じ。)の意図に反するという問題が生じる。
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、ロータの回転角が所定角度で回転停止する等の状況下でも、意図しない輸送機器の動きを排除しながらも、レゾルバや信号線等に故障が発生しているか否かを検出できる回転検出装置および輸送機器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、ステータ(固定子)とロータ(回転子)とを備えて前記ロータの回転に伴って信号を出力するレゾルバと、所定角度で回転停止している前記ロータを直接的または間接的に回転させる制御を行う回転制御手段と、前記回転制御手段によって前記ロータが回転する際に出力される信号に基づいて故障の有無を検出する故障検出手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、回転制御手段が所定角度で回転停止しているロータを回転させ、この回転によって出力される信号に基づいて故障の有無を故障検出手段で検出する。所定角度以外の回転角になれば信号値が変化するので、断線した場合と同値になることはなく、故障か否かを容易に判別できる。また、回転制御手段によるロータの回転は、輸送機器が動かない範囲で行えば、運転者等の意図に反しない。故障検出手段が出力する信号に故障の有無を示す情報を含めることで、外部装置(例えばECUやコンピュータ等)はレゾルバや信号線等にかかる故障の有無を把握できる。
請求項2に記載の発明は、ステータとロータとを備えて前記ロータの回転に伴って信号を出力するレゾルバと、回転している前記ロータを直接的または間接的に故障の有無を検出可能な回転角で回転停止するように制御を行う回転制御手段と、前記回転制御手段によって回転停止した前記ロータの回転角に応じて出力される信号に基づいて故障の有無を検出する故障検出手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、回転制御手段は回転停止しようとするロータを所定角度以外の回転角で回転停止させ、回転停止時に出力される信号に基づいて故障の有無を故障検出手段で検出する。所定角度以外の回転角であれば、断線した場合と同値になることはなく、故障か否かを容易に判別できる。また、回転制御手段によるロータの回転は、輸送機器の動きに影響を与えない範囲で行えば、運転者等の意図に反しない。故障検出手段が出力する結果信号に故障の有無を示す情報を含めることで、外部装置はレゾルバや信号線等にかかる故障の有無を把握できる。
請求項3に記載の発明は、輸送機器において、動力源と、前記動力源で発生する動力によって回転する回転部材と、前記回転部材の回転に伴って前記ロータが回転するように構成された請求項1または2に記載の回転検出装置と、を有することを特徴とする。この構成によれば、回転させるロータが所定角度以外の回転角のときに故障の有無を検出する。よって、意図しない輸送機器の動きを排除しながらも、レゾルバや信号線等に故障が発生しているか否かを検出することができる。
なお、「輸送機器」は、人間や貨物等を輸送可能な機器であれば任意である。例えば、自動車,航空機,船舶,鉄道車両などが該当する。「動力源」は、輸送機器を動かす動力を発生させる機器や装置等であれば任意である。例えば、熱機関(すなわち内燃機関や外燃機関),電動機,圧縮空気機構などが該当する。「回転部材」は、輸送機器に備えられて回転する部材であれば任意である。例えば、シャフト,ロッド,バー,軸部材などが該当する。回転部材とロータとの結合方法は任意である。例えば、回転部材にロータを固定する方法や、回転部材とロータとの間に動力伝達機構(具体的にはギア機構やラック&ピニオン機構など)に介在させる方法などが該当する。
請求項4に記載の発明は、前記回転制御手段は、前記動力源と前記回転部材に結合された負荷との間に存在する弾性復元力の範囲内で前記動力源に動力を発生させ、前記回転部材を介して前記ロータを回転させることを特徴とする。この構成によれば、弾性復元力の範囲内で動力源に動力を発生させると、回転部材を通じてロータは回転するものの、輸送機器は意図する動きを継続するか、あるいは静止状態を維持する。よって、意図しない輸送機器の動きを排除しながらも、レゾルバや信号線等に故障が発生しているか否かを確実に検出することができる。
なお、「負荷」は回転部材に結合された物体であれば任意である。例えば、車輪(ローラーを含む),内燃機関,電動機,発電機,スクリュー(プロペラ)などが該当する。「弾性復元力」は、動力源で発生させた動力を負荷に伝達する場合に、当該負荷が何も変化しないか、変化しても元の状態に復元するような力を意味する。
請求項5に記載の発明は、前記負荷には車輪を適用し、前記回転制御手段は、前記車輪が回転しない非回転トルクの範囲内で前記動力源に動力を発生させ、前記回転部材を介して前記ロータを回転させることを特徴とする。この構成によれば、非回転トルクの範囲内で動力源に動力を発生させると、回転部材を通じてロータは回転するものの、輸送機器は意図する動きを継続するか、あるいは静止状態を維持する。よって、意図しない輸送機器の動きを排除しながらも、レゾルバや信号線等に故障が発生しているか否かを確実に検出することができる。なお、「非回転トルク」は、車輪が回転停止している場合には回転しないトルクを意味し、車輪が回転している場合にはさらに加速や減速を行わずに維持するトルクを意味する。
請求項6に記載の発明は、前記負荷には車輪を適用し、前記車輪の回転を強制的に阻止する回転阻止トルクを付与するトルク付与手段を有し、前記回転制御手段は、前記トルク付与手段によって付与される前記回転阻止トルクの範囲内で前記動力源に動力を発生させ、前記回転部材を介して前記ロータを回転させることを特徴とする。この構成によれば、回転阻止トルクの範囲内で動力源に動力を発生させると、回転部材を通じてロータは回転するものの、輸送機器の静止状態を維持する。よって、意図しない輸送機器の動きを排除しながらも、レゾルバや信号線等に故障が発生しているか否かを確実に検出することができる。なお、「回転阻止トルク」は、輸送機器が静止状態であるときに車輪の回転を強制的に阻止可能な手段であれば任意である。例えば、制動機構,内燃機関に供給する燃料を停止する機構,電動機に供給する電力を停止する機構などが該当する。
請求項7に記載の発明は、前記動力源に回転機を適用するとともに、前記負荷に内燃機関を適用し、前記回転制御手段は、前記回転機の発生トルクをゼロとし、前記内燃機関をトルクリップルの最小値から最大値までの範囲内でトルクを発生させ、前記回転部材を介して前記ロータを回転させることを特徴とする。この構成によれば、内燃機関をトルクリップルの最小値から最大値までの範囲内でトルクを発生させると、回転部材を通じてロータは回転する。一方、回転機の発生トルクはゼロであるので、輸送機器は静止状態を維持する。よって、意図しない輸送機器の動きを排除しながらも、レゾルバや信号線等に故障が発生しているか否かを確実に検出することができる。なお、「回転機」は、回転運動する機器であれば任意である。例えば、電動機や、発電機能と電動機能とを兼ね備える発電電動機などが該当する。
センサ装置を備える輸送機器(車両)の構成例を示す模式図である。 センサ装置の第1構成例を示すブロック図である。 強制回転制御処理の手続き例を示すフローチャートである。 励磁信号を有効にした場合の各信号の変化を示すタイムチャートである。 励磁信号を無効にした場合の各信号の変化を示すタイムチャートである。 有無切換手段に代わる縮小切換手段の構成例を示す回路図である。 回転停止制御処理の手続き例を示すフローチャートである。 励磁信号を縮小した場合の各信号の変化を示すタイムチャートである。 センサ装置の第2構成例を示すブロック図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。以下に示す各実施の形態は簡単のために、輸送機器(特に自動車の車両)に備えられる回転部材(特にシャフト)にかかる回転(回転角や回転数等)を検出するセンサ装置を前提として説明する。
〔実施の形態1〕
実施の形態1は、回転部材が回転停止している時に故障の有無を判別する一例であって、図1〜図5を参照しながら説明する。図1はセンサ装置を備える輸送機器(特に車両)の構成例を模式図で示す。図2はセンサ装置の第1構成例をブロック図で示す。図3は強制回転制御処理の手続き例をフローチャートで示す。図4と図5は各信号の変化をタイムチャートで示す例であり、図4では励磁信号を有効とし、図5では励磁信号を無効とする。
図1(A)に示す車両10は「輸送機器」に相当し、特に内燃機関20の動力と電動機43の動力とを利用して走行するハイブリッドカー(スプリット方式)の一例である。この車両10は、内燃機関20、回転部材30、発電機41、動力分割機構42、電動機43、パワーコントロールユニット50、車輪60、回転検出装置70、ECU80などを有する。以下では、車両10の各構成要素について簡単に機能等を説明する。
内燃機関20は「動力源」や「負荷」に相当し、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等のように、炭化水素系燃料を燃焼させることで動力を発生させる。回転部材30は、動力を回転力として伝達するために用いられる部材である。回転部材30の一例として、図1ではクランクシャフト31とドライブシャフト32を示す。クランクシャフト31は内燃機関20の出力軸に相当し、内燃機関20で発生した動力を動力分割機構42に伝達する。ドライブシャフト32は「プロペラシャフト」とも呼ばれ、電動機43で発生した動力および動力分割機構42を介して分割された動力のうちで一方または双方の動力を車輪60に伝達して車両10を走行させる。車輪60は「負荷」に相当する。
動力分割機構42は、内燃機関20で発生する動力を分割(分配)する機能を担い、状況(走行状態等)に応じて発電機41および電動機43のうちで一方または双方に動力を伝達する。上記機能を備える限りにおいて動力分割機構42の構成は任意であるが、例えばキャリア,サンギヤ,プラネタリギヤなどで構成される。発電機41は、動力分割機構42によって分割された動力によって電力を発生させる。この発電機41には、通常の発電機を用いてもよく、発電機能と電動機能とを兼ね備える発電電動機を用いてもよい。電動機43は「動力源」に相当し、パワーコントロールユニット50から供給される電力によって動力を発生させてドライブシャフト32に伝達する。また、電動機43は動力分割機構42から分割される動力をドライブシャフト32に中継し伝達する機能をも担う。
上述した動力分割機構42,発電機41および電動機43はそれぞれ個別に備えてもよいが、一点鎖線で示すトランスミッション40に一体化してもよい。トランスミッション40には、変速を行うためのリダクション機構や、動力を前後軸に分配するためのトランスファーなどを備える。トランスミッション40に一体化する場合には、動力の伝達損失が低く抑えられ、全体として小型化することが可能になる。
パワーコントロールユニット50は、発電機41で発生した電力の蓄電や、電動機43を回転駆動する電力の供給などの制御を司る。このパワーコントロールユニット50は、例えば昇圧コンバータ,インバータ,バッテリECUなどで構成される。ECU80は、クランクシャフト31の回転に基づいて制御を行う。例えば、エンジンECUや、モータECU、上記バッテリECUなどような種々のECUが該当する。エンジンECUは、燃料噴射制御や点火制御、吸入空気量調節制御などのような車両走行制御を行う。モータECUは、発電機41や電動機43等のような回転機の駆動制御を行う。バッテリECUは、図示しない蓄電手段(例えば二次電池や燃料電池等)との間における電力の蓄積や放出等の制御を行う。パワーコントロールユニット50やECU80にかかる具体的な構成要素や要素の機能等については周知であるので、図示および説明を省略する。
図1(A)に示す回転検出装置70は、回転部材30の回転検出を行い、検出結果(すなわち回転角や回転数等)をECU80に伝達する機能を担う。本形態では、回転部材30にクランクシャフト31を適用して説明する。
回転検出装置70は、レゾルバ71やセンサ装置72などで構成される。レゾルバ71は、励磁信号を用いてクランクシャフト31の回転検出を行い、検出信号を出力する「回転検出センサ」であって、図1(B)および図2を参照しながら説明する。励磁信号は、「検出対象とは異なる非対象信号」および「搬送波信号」に相当する。検出信号は「検出対象となる対象信号」および「変調信号」に相当し、本形態では後述する「SIN検出信号」および「COS検出信号」がそれぞれ該当する。センサ装置72は、主にレゾルバ71から出力された検出信号に基づいてクランクシャフト31の回転角や回転数等を出力する機能を担い、図2を参照しながら説明する。
図1(B)に示すレゾルバ71は、ロータ71a(回転子)やステータ71b(固定子)などを有する。ロータ71aは、クランクシャフト31と同一に回転するように設けられる。ロータ71aとクランクシャフト31との結合方法は任意である。例えば、ロータ71aをクランクシャフト31に固定する方法や、ロータ71aとクランクシャフト31との間に動力伝達機構(具体的にはギア機構やラック&ピニオン機構など)に介在させる方法などが該当する。ステータ71bは回転不能に設けられる。
図2に示す励磁コイルLeおよび検出コイルLs,Lcを、ロータ71aおよびステータ71bのいずれに巻くのかは様々な形態がある。以下では簡単のために、次の形態を想定して説明する。すなわち、ロータ71aを磁性体で形成する。ステータ71bには複数の凸状部(例えば突極部等)を形成し、励磁コイルLeおよび検出コイルLs,Lcをそれぞれ所定の凸状部に巻く。検出コイルLsはSIN検出信号を出力するコイルであり、検出コイルLcはCOS検出信号を出力するコイルである。励磁コイルLeおよび検出コイルLs,Lcを巻く箇所の数は任意であり、クランクシャフト31の径や検出精度等に応じて異なる。
図2に示すセンサ装置72は、有無切換手段72a、信号処理回路72b,72h、A/D変換器72c,72i、補正部72d,72j、回転制御手段72g、故障検出手段72mなどを有する。以下では図面の左側から右側に向かって順番に、各要素の機能や構成等について簡単に説明する。
有無切換手段72aは、発振回路90から入力される励磁信号を有効にする有効側(図示する端子a側)と、当該励磁信号を無効にする無効側(図示する端子b側)とのいずれか一方に切り換える機能を担う。有効側は発振回路90に接続され、無効側は共通電位Nに接続される。共通電位Nは、センサ装置72内で共通する電位であって、接地された場合には0[V]である。図2では理解し易くするために接点スイッチを用いた例を示すが、他には電磁スイッチ(リレーを含む)や半導体スイッチ(半導体リレーを含む)等を用いてもよい。
回転制御手段72gは、現時点におけるロータ71aの状態に応じて、当該ロータ71aの回転に関する直接的または間接的な制御を行う。例えばロータ71aが回転停止している場合には、ロータ71aを回転させる制御を行う。これに対してロータ71aが回転している場合には、故障の有無を検出可能な角度で回転停止するように制御を行う。「故障の有無を検出可能な角度」とは、基準位置を基準とした回転角θが1回転区間(すなわち0°≦θ<360°)において、所定角度(具体的には0°,90°,180°,270°)以外となる角度を意味する。所定角度では、励磁信号を励磁コイルLeに流しても、検出信号であるSIN検出信号およびCOS検出信号のいずれかが0になるために、故障か否かを判別できないためである。図2では動力源である内燃機関20や電動機43を直接的に制御するような構成を示すが、ECU80(あるいは他のECU)などに稼働信号を伝達して間接的に内燃機関20や電動機43を直接的に制御する構成が一般的である。直接的または間接的のいずれで制御を行うにせよ、内燃機関20や電動機43に動力を発生させることでクランクシャフト31を回転させ、当該クランクシャフト31の回転に伴ってロータ71aを回転または回転停止させる。
励磁コイルLeおよび検出コイルLs,Lcは、いずれも二点鎖線で示すレゾルバ71に設けられる(図1を参照)。励磁コイルLeは、一端側が有無切換手段72aに接続され、他端側が共通電位Nに接続される。図示するように有無切換手段72aが有効側(端子a側)に切り換えた状態では、発振回路90から出力される励磁信号が励磁コイルLeを流れ、レゾルバ71(ロータ71aまたはステータ71bのいずれか一方)に磁束を発生させる。検出コイルLsは後述する信号処理回路72bに接続され、検出コイルLcは後述する信号処理回路72hに接続される。これらの検出コイルLsと検出コイルLcは90°の角度を確保して設けられ、ロータ71aの回転に伴って磁束が検出コイルLs,Lcを通ることで逆起電力が発生する。すなわち、検出コイルLsにはSIN検出信号が発生し、検出コイルLcにはCOS検出信号が発生する。
信号処理回路72bは、検出コイルLsに発生するSIN検出信号を処理する回路である。この信号処理回路72bは、差動増幅器Qaや抵抗器Ra,Rb,Rc,Rd,Reなどを有する。抵抗器Raは、検出コイルLsの一端側と差動増幅器Qaの正入力端子(「+」で図示するプラス端子)との間に接続される。抵抗器Rbは、差動増幅器Qaの正入力端子と共通電位Nとの間に接続される。結果として、差動増幅器Qaの正入力端子には、SIN検出信号を抵抗器Raと抵抗器Rbとで分圧(=Rb/(Ra+Rb))した信号が入力される。抵抗器Rcは、定電圧源Vcsと差動増幅器Qaの反転入力端子(「−」で図示するマイナス端子)との間に接続される。抵抗器Rdは、検出コイルLsの他端側と差動増幅器Qaの反転入力端子との間に接続される。負帰還用の抵抗器Reは、差動増幅器Qaの出力端子と反転入力端子との間に接続される。この回路構成によれば、検出コイルLsに逆起電力が発生せずSIN検出信号が無信号となる場合は、定電圧源Vcsの電圧が電圧信号Vaとして出力される。
信号処理回路72hは、検出コイルLcに発生するCOS検出信号を処理する回路である。この信号処理回路72hは、差動増幅器Qbや抵抗器Rf,Rg,Rh,Ri,Rjなどを有する。抵抗器Rfは、検出コイルLcの一端側と差動増幅器Qbの正入力端子との間に接続される。抵抗器Rgは、定電圧源Vccと差動増幅器Qbの正入力端子との間に接続される。抵抗器Rhは、検出コイルLcの他端側と差動増幅器Qbの反転入力端子との間に接続される。抵抗器Riは、差動増幅器Qbの反転入力端子と共通電位Nとの間に接続される。結果として、差動増幅器Qbの反転入力端子には、COS検出信号を抵抗器Rhと抵抗器Riとで分圧(=Ri/(Rh+Ri))した信号が入力される。負帰還用の抵抗器Rjは、差動増幅器Qbの出力端子と反転入力端子との間に接続される。この回路構成によれば、検出コイルLcに逆起電力が発生せずCOS検出信号が無信号となる場合は、定電圧源Vccの電圧が電圧信号Vbとして出力される。
A/D変換器72cは、差動増幅器Qaから出力されるアナログの電圧信号Vaをデジタル信号に変換して出力する。A/D変換器72iは、差動増幅器Qbから出力されるアナログの電圧信号Vbをデジタル信号に変換して出力する。
補正部72dは、補正値設定手段72eや信号補正手段72fなどを有する。補正部72jは、補正値設定手段72kや信号補正手段72nなどを有する。補正値設定手段72e,72kは、いずれも有無切換手段72aによって無効側に切り換えられた状態で回転検出を行い、A/D変換器72c,72iによってそれぞれデジタル化(数値化)された電圧信号Va,Vbの数値(対象信号として得られる数値)を補正値(オフセット値)として設定する。信号補正手段72f,72nは、いずれも有無切換手段72aによって有効側に切り換えられた状態で回転検出を行い、A/D変換器72c,72iによってそれぞれデジタル化(数値化)された電圧信号Va,Vb(対象信号)に対して補正値設定手段72e,72kによって設定された補正値で補正して出力する。
故障検出手段72mは、現時点におけるロータ71aの状態に応じて、ロータ71aの回転または回転停止に伴う信号に基づいて故障の有無を検出して出力する。例えば、ロータ71aが回転停止している場合には、回転制御手段72gによってロータ71aを回転させる際に出力される信号の信号値が変化するか否かで故障の有無を検出する。これに対してロータ71aが回転している場合には、回転制御手段72gによって回転停止したロータ71aの回転角に応じて出力される信号の信号値に基づいて故障の有無を検出する。
上述のように構成された車両10およびセンサ装置72において、ロータ71aが回転停止している場合に実行される制御処理の一例について図3を参照しながら説明する。なお、図3に示すステップS13はトルク付与手段に相当し、ステップS14は回転制御手段72gに相当し、ステップS15,S16,S20は故障検出手段72mに相当し、ステップS18は補正値設定手段72e,72kに相当する。図3の説明で言及しない限り、図2に示す有無切換手段72aは有効側に切り換えられ、発振回路90から出力される励磁信号が励磁コイルLeに流れて磁束が発生する。
図3に示す強制回転制御処理において、まずロータ71aが回転停止しているか否かを判別する〔ステップS10〕。もしロータ71aが回転している場合には(NO)、何も行わずにリターンする。一方、ロータ71aが回転停止している場合には(YES)、現時点における検出信号を入力し〔ステップS11〕、ロータ71aの回転角(角度)が所定角度であるか否かを判別する〔ステップS12〕。もしロータ71aがロータ71aの回転角が所定角度以外であれば(NO)、何も行わずにリターンする。一方、ロータ71aの回転角が所定角度であれば(YES)、ステップS13以降を実行する。
ステップS13は必要に応じて実行され、車両10の静止状態を維持するために、車輪60の回転を阻止する回転阻止トルクを付与する。この回転阻止トルクは、本形態では制動機構に付与する。回転阻止トルクが制動機構に付与されると、車両10を動かそうとする場合には当該回転阻止トルクを超える動力を内燃機関20や電動機43に発生させる必要がある。そのため、付与している回転阻止トルクを超えない範囲でクランクシャフト31を回転させることが可能になるので、車両10の静止状態を維持しながら回転可能なクランクシャフト31の回転角が増す。よって、故障判別が容易になる。
車両10の静止状態を維持しながらロータ71aを回転させるため、動力源に対して、(a)弾性復元力、(b)非回転トルク、(c)トルクリップル変動、のうちで一以上の範囲内で動力を発生させる〔ステップS14〕。ステップS14の動力の発生に伴って、クランクシャフト31が回転する。なお、動力源は、本形態では内燃機関20および電動機43のうち一方または双方が該当する。
(a)弾性復元力は、動力源とクランクシャフト31に結合された負荷との間に存在する。具体的には、動力源で発生させた動力を負荷に伝達する場合に、当該負荷が何も変化しないか、変化しても動力源による動力の発生を停止すれば元の状態に復元するような力を意味する。負荷は回転部材に結合された物体であれば任意であり、本形態では車輪60や内燃機関20などが該当する。
(b)非回転トルクは、動力源で発生させた動力を車輪60に伝達しても、当該車輪60が回転しないトルクを意味する。
(c)トルクリップル変動は、電動機43の発生トルクをゼロとし、内燃機関20で発生させた動力(すなわちトルク)に生ずるリップルであって、そのトルクリップルの最小値から最大値までの範囲を意味する。特に、動力源として電動機43を適用するとともに、負荷として内燃機関20を適用した場合に有効である。
ステップS14の実行によってロータ71aが回転するので検出信号を入力し〔ステップS15〕、ステップS11で入力した検出信号の信号値と比べて変化しているか否かを判別する〔ステップS16〕。もし、信号値が変化していない場合は(NO)、レゾルバ71や信号ケーブル等に故障が生じていることを示すので、ECU80に対して故障信号を出力(伝達)して〔ステップS20〕、リターンする。
一方、ステップS16で信号値が変化した場合は(YES)、レゾルバ71や信号ケーブル等が正常である。このことを正常時における信号変化を示す図4を参照しながら説明する。図4(A)には励磁コイルLeに流す励磁信号Veを示し、図4(B)には検出コイルLsで発生するSIN検出信号Vsを示し、図4(C)には検出コイルLcで発生するCOS検出信号Vcを示す。「搬送波信号」に相当する励磁信号Veには、正弦波信号を用いる。「検出信号」に相当するSIN検出信号VsおよびCOS検出信号Vcは、破線で図示するように、励磁信号Veを変調した変調信号になっている。
例えばステップS10において、時刻t1で示すような状態でロータ71aが回転停止していると仮定する。ステップS11で入力する検出信号は、SIN検出信号Vsは電圧Vs1(=0[V])であり、COS検出信号Vcは電圧Vc1(=電圧Vcn)である。ステップS14の実行によってロータ71aが回転すると、時刻t2にステップS15で入力する検出信号は、SIN検出信号Vsは電圧Vs2(<0[V])であり、COS検出信号Vcは電圧Vc2(>電圧Vcn)である。このようにロータ71aの回転に伴ってSIN検出信号VsおよびCOS検出信号Vcが変化する場合には、レゾルバ71およびケーブル等が正常であることを意味する。
そこで、有無切換手段72aを無効側に切り換えて励磁信号Veを励磁コイルLeに流さないようにし〔ステップS17〕、この状態で図2に示す信号処理回路72b,72hから出力される電圧信号Va,Vbをそれぞれ補正値として設定する〔ステップS18〕。例えば図5(A)に示す励磁信号Veは0[V]で変化せず、励磁コイルLeには電流が流れない。このとき、SIN検出信号Vsについて図5(B)に示すオフセット電圧Vsoffを補正値として設定し、COS検出信号Vcについて図5(C)に示すオフセット電圧Vcoffを補正値として設定する。
次回以降の処理に備えて、有無切換手段72aを有効側に切り換えたうえで〔ステップS19〕、リターンする。図示しないが、クランクシャフト31の回転検出を行う通常検出時において、センサ装置72では信号補正手段72f,72nが上記ステップS18で設定された補正値で信号値を補正してECU80に出力(伝達)する。
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる。まず請求項1に対応し、ロータ71aの回転に伴って信号(すなわちSIN検出信号VsおよびCOS検出信号Vc)を出力するレゾルバ71と、所定角度で回転停止しているロータ71aを直接的または間接的に回転させる制御を行う回転制御手段72gと、回転制御手段72gによってロータ71aが回転する際に出力される信号に基づいて故障の有無を検出する故障検出手段72mとを備える構成とした(図2,図4を参照)。この構成によれば、回転制御手段72gが内燃機関20に動力を発生させて(図3のステップS14)、所定角度で回転停止しているロータ71aを回転させ、この回転によって出力される信号に基づいて故障の有無を故障検出手段72mで検出する(図3のステップS15,S16,S20)。所定角度以外の回転角になればSIN検出信号VsやCOS検出信号Vcの信号値が変化するので(図4に示す時刻t1から時刻t2への変化)、断線した場合と同値になることはなく、故障か否かを容易に判別できる。また、回転制御手段72gによるロータ71aの回転は(a)から(c)で示した範囲で行うので車両10は動かず、運転者等の意図に反しない。故障検出手段72mが故障信号を出力するか否かで(図3のステップS16,S20)、外部装置はレゾルバ71や信号線等にかかる故障の有無を把握できる。
請求項3に対応し、車両10(輸送機器)において、内燃機関20(あるいは電動機43;動力源)と、内燃機関20で発生する動力によって回転するクランクシャフト31(回転部材30)と、クランクシャフト31の回転に伴ってロータ71aが回転するように構成された回転検出装置70とを備える構成とした(図1,図2を参照)。この構成によれば、回転させるロータ71aが所定角度以外の回転角のときに故障の有無を検出する(図3のステップS14,S15,S16,S20)。よって、意図しない車両10の動きを排除しながらも、レゾルバ71や信号線等に故障が発生しているか否かを検出することができる。
請求項4に対応し、回転制御手段72gは、内燃機関20(動力源)とクランクシャフト31(回転部材30)に結合された車輪60(負荷)との間に存在する弾性復元力の範囲内で内燃機関20に動力を発生させ、クランクシャフト31を介してロータ71aを回転させる構成とした(図3のステップS14を参照)。この構成によれば、弾性復元力の範囲内で内燃機関20に動力を発生させると、クランクシャフト31を通じてロータ71aは回転するものの、車両10は意図する動きを継続するか、あるいは静止状態を維持する。よって、意図しない車両10の動きを排除しながらも、レゾルバ71や信号線等に故障が発生しているか否かを確実に検出することができる。
請求項5に対応し、負荷には車輪60を適用し、回転制御手段72gは、車輪60が回転しない非回転トルクの範囲内で内燃機関20(動力源)に動力を発生させ、クランクシャフト31(回転部材30)を介してロータ71aを回転させる構成とした(図3のステップS14を参照)。この構成によれば、非回転トルクの範囲内で動力源に動力を発生させると、クランクシャフト31を通じてロータ71aは回転するものの、車両10は意図する動きを継続するか、あるいは静止状態を維持する。よって、意図しない車両10の動きを排除しながらも、レゾルバ71や信号線等に故障が発生しているか否かを確実に検出することができる。
請求項6に対応し、負荷には車輪60を適用し、車輪60の回転を強制的に阻止する回転阻止トルクを付与するトルク付与手段を有し、回転制御手段72gは、トルク付与手段によって付与される回転阻止トルクの範囲内で内燃機関20(動力源)に動力を発生させ、クランクシャフト31(回転部材30)を介してロータ71aを回転させる構成とした(図3のステップS14を参照)。この構成によれば、回転阻止トルクの範囲内で内燃機関20に動力を発生させると、クランクシャフト31を通じてロータ71aは回転するものの、車両10の静止状態を維持する。よって、意図しない車両10の動きを排除しながらも、レゾルバ71や信号線等に故障が発生しているか否かを確実に検出することができる。
請求項7に対応し、動力源に電動機43(回転機)を適用するとともに、負荷に内燃機関20を適用し、回転制御手段72gは、電動機43の発生トルクをゼロとし、内燃機関20をトルクリップルの最小値から最大値までの範囲内でトルクを発生させ、クランクシャフト31(回転部材30)を介してロータ71aを回転させる構成とした(図3のステップS14を参照)。この構成によれば、内燃機関20をトルクリップルの最小値から最大値までの範囲内でトルクを発生させると、クランクシャフト31を通じてロータ71aは回転する。一方、回転機の発生トルクはゼロであるので、車両10は静止状態を維持する。よって、意図しない車両10の動きを排除しながらも、レゾルバ71や信号線等に故障が発生しているか否かを確実に検出することができる。
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、回転している回転部材を停止させた後に故障の有無を判別する一例であって、図6〜図8を参照しながら説明する。図6には有無切換手段に代わる縮小切換手段の構成例を回路図で示す。図7には回転停止制御処理の手続き例をフローチャートで示す。図8には励磁信号を縮小した場合の各信号の変化をタイムチャートで示す。なお、車両10やセンサ装置72の構成等は実施の形態1と同様であり、図示および説明を簡単にするために実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
実施の形態2は、図2に示す有無切換手段72aに代えて、図6に示す縮小切換手段72pを用いる点で実施の形態1と相違する。縮小切換手段72pは、発振回路90から入力される励磁信号を縮小しない非縮小側(図示する端子a側)と、当該励磁信号を縮小する縮小側(図示する端子b側)とのいずれか一方に切り換える機能を担う。この回路例では、発振回路90と端子bとの間に抵抗器Rkを接続し、端子bと共通電位Nとの間に抵抗器Rmを接続する。この構成では、発振回路90から入力される励磁信号は、抵抗器Rkと抵抗器Rmとで分圧(=Rm/(Rk+Rm))され、励磁コイルLeに流れる。
上述のように構成された車両10およびセンサ装置72において、回転しているロータ71aが回転停止しようとしている場合に実行される制御処理の一例について図7を参照しながら説明する。なお、図7に示すステップS32は停止角推定手段に相当し、ステップS35は補正値設定手段72e,72kに相当し、ステップS37は回転制御手段72gに相当し、ステップS39,S40は故障検出手段72mに相当する。図7の説明で言及しない限り、図6に示す縮小切換手段72pは非縮小側に切り換えられ、発振回路90から出力される励磁信号がそのまま励磁コイルLeに流れて磁束が発生する。
図7に示す回転停止制御処理において、まずロータ71aが回転しているか否かを判別する〔ステップS30〕。もしロータ71aが回転停止している場合には(NO)、何も行わずにリターンする。一方、ロータ71aが回転している場合には(YES)、現時点における検出信号を入力し〔ステップS31〕、回転停止しようとしているロータ71aが回転停止したときの回転角(以下では単に「停止角」と呼ぶ。)を推定する〔ステップS32〕。もし、ステップS32で推定した停止角が所定角度以外の回転角であれば(NO)、後述するステップS38以降を実行する。
一方、ステップS32で推定した停止角が所定角度であれば(YES)、縮小切換手段72pを縮小側に切り換えて、励磁信号Veを縮小して励磁コイルLeに流し〔ステップS34〕、この状態で図2に示す信号処理回路72b,72hから出力される電圧信号Va,Vbをそれぞれ補正値として設定し〔ステップS35〕、次の処理に備えて縮小切換手段72pを非縮小側に切り換える〔ステップS36〕。
ステップS35では、次のように設定する。例えば図8(A)に示す励磁信号Veが縮小されて電圧Ve3と電圧Ve4の間で振幅するとき、SIN検出信号Vsは図8(B)のように変化し、COS検出信号Vcは図8(C)のように変化する。SIN検出信号VsおよびCOS検出信号Vcについては、それぞれ複数の信号値を取得して平均値を求め、求めた平均値を補正値として設定する。SIN検出信号Vsは電圧Vs3と電圧Vs4の間で振幅し、COS検出信号Vcは電圧Vc3と電圧Vc4の間で振幅するので、図4に示す振幅よりは大幅に小さい。そのため、平均値を補正値として設定しても、従来の最大値と最小値との平均値を補正値とするよりは誤差が小さくなる。
そして、ロータ71aが所定角度で回転停止しないようにするため、動力源(内燃機関20および電動機43のうち一方または双方)に対して、図3のステップS14と同様に動力を発生させる〔ステップS37〕。この動力によってさらに回転するロータ71aが回転停止するまで待機する(ステップS38でNO)。
ロータ71aが回転停止したとき(ステップS38でYES)、停止角は所定角度以外の回転角になり、検出信号(SIN検出信号VsおよびCOS検出信号Vc)は0以外の信号値になる。そこで、検出信号を入力し〔ステップS39〕、入力した検出信号の信号値に基づいて故障か否かを判別して対応する信号をECU80に出力(伝達)したうえで〔ステップS40〕、リターンする。図示しないが、クランクシャフト31の回転検出を行う通常検出時において、センサ装置72では信号補正手段72f,72nが上記ステップS35で設定された補正値で信号値を補正してECU80に出力(伝達)する。
上述した実施の形態2によれば、請求項2に対応し、ロータ71aの回転に伴って信号(すなわちSIN検出信号VsおよびCOS検出信号Vc)を出力するレゾルバ71と、回転しているロータ71aを直接的または間接的に故障の有無を検出可能な回転角で回転停止するように制御を行う回転制御手段72gと、回転制御手段72gによって回転停止したロータ71aの回転角に応じて出力される信号に基づいて故障の有無を検出する故障検出手段72mとを備える構成とした(図2,図6を参照)。この構成によれば、回転制御手段72gが内燃機関20に動力を発生させて(図7のステップS37)、回転停止しようとするロータ71aを所定角度以外の回転角で回転停止させ、回転停止時に出力される信号に基づいて故障の有無を故障検出手段72mで検出する。所定角度以外の回転角で回転停止するので、断線した場合と同値になることはなく、故障か否かを容易に判別できる。また、回転制御手段72gによるロータ71aの回転は、(a)から(c)で示した範囲で行うので車両10は加速や減速等をせず、運転者等の意図に反しない。故障検出手段72mが故障の有無を信号で出力するので(図7のステップS40)、外部装置はレゾルバ71や信号線等にかかる故障の有無を把握できる。
他の請求項(すなわち請求項3から請求項7まで)については、参照箇所が図3のステップS14から図7のステップS37に変わる点を除けば同様であるので、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1,2に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
実施の形態1,2では、輸送機器として自動車の車両10に適用した(図1を参照)。この形態に代えて、自動車以外の車両(例えば鉄道車両等)、船舶、航空機などのような他の輸送機器にも適用することができる。その他には、クランクシャフト31やドライブシャフト32等と同様の回転部材を用いる産業用機器(例えば工作機械等)にも適用することができる。いずれにせよ、他の輸送機器や産業用機器に備える回転部材の回転検出を行う場合において、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
実施の形態1,2では、車両10として内燃機関20の動力と電動機43の動力とを利用して走行するスプリット方式のハイブリッドカーを適用した(図1を参照)。この形態に代えて、他の方式(シリーズ方式またはパラレル方式)のハイブリッドカーや、内燃機関20の動力のみを利用する車両、電動機43のみの動力のみを利用する車両(いわゆる電気自動車)などのような他の車両にも適用することができる。他の車両であっても形態が相違するに過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
実施の形態1,2では、回転部材30としてクランクシャフト31を適用した(図1を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、図1に示すドライブシャフト32や、ステアリングロッド(あるいはトーションバー)、操舵軸等のように、回転可能な他の回転部材を適用することができる。他の回転部材であっても、レゾルバ71を取り付けることができれば、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
実施の形態1,2では、「搬送波信号」に相当する励磁信号Veに正弦波信号を用いた(図4や図8を参照)。この形態に代えて(あるいは加えて)、磁束を発生可能な他の波形信号を用いてもよい。他の波形信号としては、例えば矩形波信号(パルス波信号),三角波信号,のこぎり波信号などが該当する。いずれの信号を用いるにせよ、励磁信号Veを無効としたり縮小することで、精度を向上させた補正値(オフセット値)を得ることができる。よって、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
実施の形態1,2では、検出信号(SIN検出信号VsおよびCOS検出信号Vc)は信号処理回路72b,72hおよびA/D変換器72c,72iを経て、補正値を設定したり、設定した補正値を用いて信号値を補正する構成とした(図2を参照)。この形態に代えて、図9に示すように、検出信号は信号処理回路72b,72hを経て、補正値を設定したり、設定した補正値を用いて信号値を補正した後、A/D変換器72c,72iでデジタル信号に変換する構成としてもよい。この場合、補正部72d,72jおよび故障検出手段72mはハードウェア回路で構成する必要がある。回路構成上の相違に過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
実施の形態1,2では、センサ装置72とは別個に発振回路90を備える構成とした(図2を参照)。この形態に代えて、センサ装置72内に発振回路90を備える構成としてもよい。この場合は、有無切換手段72aをそのまま備える構成や、発振回路90を作動/非作動(あるいは縮小出力/非縮小出力)をECU80等から出力する切換信号に基づいて切り換える構成などが該当する。単に構成上の相違に過ぎないので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
実施の形態1,2では、負荷として車輪60を適用した(図1を参照)。例外として、ステップS14,S37の(c)では負荷として内燃機関20を適用した。この形態に代えて、クランクシャフト31を含む回転部材30に結合された他の物体を負荷として適用することもできる。他の物体は、例えば電動機43,発電機41,スクリュー(プロペラ)などが該当する。いずれにせよ、負荷に影響を及ぼさない範囲で動力源から動力を発生させるので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
実施の形態1,2では、ステップS14,S37の(c)で車輪60に付与する回転阻止トルクを制動機構で実現した。この形態に代えて、車両10等の輸送機器が静止状態であるときに負荷の動きを強制的に阻止可能な他の回転阻止手段で実現してもよい。他の回転阻止手段は、例えば内燃機関20に供給する燃料を停止(カット)する機構や、電動機43に供給する電力を停止(カット)する機構などが該当する。いずれにせよ、輸送機器の静止状態が維持されるので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
センサ装置72の構成要素として、実施の形態1では有無切換手段72aを適用し(図2を参照)、 実施の形態2では縮小切換手段72pを適用した(図6を参照)。この形態に代えて、実施の形態1において縮小切換手段72pを適用し、 実施の形態1において有無切換手段72aを適用してもよい。この場合は、図3に示すステップS17,S19と、図7に示すステップS34,S36とが入れ替わる。従来よりは精度の高い補正値(オフセット値)を設定できるので、実施の形態1,2と同様の作用効果が得られる。
〔他の発明の態様〕
以上では発明の実施の形態について説明したが、当該実施の形態には特許請求の範囲に記載した発明の態様のみならず他の発明の態様を含む。この発明の態様を以下に列挙するとともに、必要に応じて関連説明を行う。なお、請求項3から請求項7までに示す回転検出装置および回転制御手段に対して、態様1,2に示す回転検出装置および回転制御手段を適用することもできる。
〔態様1〕
ステータとロータとを備えて前記ロータの回転に伴って信号を出力するレゾルバと、
所定角度で回転停止している前記ロータを直接的または間接的に回転させる制御を行う回転制御手段と、
前記回転制御手段によって前記ロータが回転する際に出力される信号に基づいて故障の有無を検出する故障検出手段と、
励磁信号を有効にする有効側と、前記励磁信号を無効にする無効側とのいずれか一方に切り換える有無切換手段と、
前記有無切換手段によって前記無効側に切り換えられた状態で前記ロータの回転検出を行い、検出信号として得られる信号値を補正値として設定する補正値設定手段と、
前記有無切換手段によって前記有効側に切り換えられた状態で前記ロータの回転検出を行い、前記検出信号に対して前記補正値設定手段によって設定された補正値で補正した前記検出信号を出力する信号補正手段と、
を有することを特徴とする回転検出装置。
〔態様2〕
ステータとロータとを備えて前記ロータの回転に伴って信号を出力するレゾルバと、
所定角度で回転停止している前記ロータを直接的または間接的に回転させる制御を行う回転制御手段と、
前記回転制御手段によって前記ロータが回転する際に出力される信号に基づいて故障の有無を検出する故障検出手段と、
励磁信号の大きさを縮小する縮小側と、前記励磁信号の大きさを縮小しない非縮小側とのいずれか一方に切り換える縮小切換手段と、
前記縮小切換手段によって前記縮小側に切り換えられた状態で前記ロータの回転検出を行い、前記検出信号として得られる信号値を補正値として設定する補正値設定手段と、
前記縮小切換手段によって前記非縮小側に切り換えられた状態で前記ロータの回転検出を行い、前記検出信号に対して前記補正値設定手段によって設定された補正値で補正した前記検出信号を出力する信号補正手段と、
を有することを特徴とする回転検出装置。
〔態様1および態様2の関連説明〕
態様1および態様2の構成によれば、回転制御手段によってロータを回転させ、当該回転によって出力される信号に基づいて故障検出手段が故障の有無を検出するとともに、有無切換手段によって無効側に切り換えられた状態で補正値設定手段が補正値(オフセット値)を設定する。1回だけロータを輸送機器に影響を及ぼさない範囲で回転させれば、故障の有無の検出と、補正値の設定との双方が行える。
10 車両(輸送機器)
20 内燃機関(動力源)
30 回転部材
31 クランクシャフト(回転部材)
32 ドライブシャフト(回転部材)
40 トランスミッション
41 発電機(発電電動機)
42 動力分割機構
43 電動機(発電電動機,動力源)
50 パワーコントロールユニット
60 車輪(負荷)
70 回転検出装置
71 レゾルバ
71a ロータ
71b ステータ
72 センサ装置
72a 有無切換手段
72b,72h 信号処理回路
72c,72i A/D変換器
72d,72j 補正部
72e,72k 補正値設定手段
72f,72n 信号補正手段
72g 回転制御手段
72m 故障検出手段
72p 縮小切換手段
80 ECU(制御装置)
90 発振回路
Le 励磁コイル
Ls,Lc 検出コイル

Claims (7)

  1. ステータとロータとを備えて前記ロータの回転に伴って信号を出力するレゾルバと、
    所定角度で回転停止している前記ロータを直接的または間接的に回転させる制御を行う回転制御手段と、
    前記回転制御手段によって前記ロータが回転する際に出力される信号に基づいて故障の有無を検出する故障検出手段と、
    を有することを特徴とする回転検出装置。
  2. ステータとロータとを備えて前記ロータの回転に伴って信号を出力するレゾルバと、
    回転している前記ロータを直接的または間接的に故障の有無を検出可能な回転角で回転停止するように制御を行う回転制御手段と、
    前記回転制御手段によって回転停止した前記ロータの回転角に応じて出力される信号に基づいて故障の有無を検出する故障検出手段と、
    を有することを特徴とする回転検出装置。
  3. 動力源と、
    前記動力源で発生する動力によって回転する回転部材と、
    前記回転部材の回転に伴って前記ロータが回転するように構成された請求項1または2に記載の回転検出装置と、
    を有することを特徴とする輸送機器。
  4. 前記回転制御手段は、前記動力源と前記回転部材に結合された負荷との間に存在する弾性復元力の範囲内で前記動力源に動力を発生させ、前記回転部材を介して前記ロータを回転させることを特徴とする請求項3に記載の輸送機器。
  5. 前記負荷には車輪を適用し、
    前記回転制御手段は、前記車輪が回転しない非回転トルクの範囲内で前記動力源に動力を発生させ、前記回転部材を介して前記ロータを回転させることを特徴とする請求項4に記載の輸送機器。
  6. 前記負荷には車輪を適用し、
    前記車輪の回転を強制的に阻止する回転阻止トルクを付与するトルク付与手段を有し、
    前記回転制御手段は、前記トルク付与手段によって付与される前記回転阻止トルクの範囲内で前記動力源に動力を発生させ、前記回転部材を介して前記ロータを回転させることを特徴とする請求項4または5に記載の輸送機器。
  7. 前記動力源に回転機を適用するとともに、前記負荷に内燃機関を適用し、
    前記回転制御手段は、前記回転機の発生トルクをゼロとし、前記内燃機関をトルクリップルの最小値から最大値までの範囲内でトルクを発生させ、前記回転部材を介して前記ロータを回転させることを特徴とする請求項4に記載の輸送機器。
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