JP2012063333A - 光学特性値計測装置、光学特性値計測方法及び光学特性値計測プログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】サンプルの散乱係数及び吸収係数を簡便に取得する。
【解決手段】本発明による光学特性値計測装置(100)は、サンプル(S)に照射された光の一部であって、サンプル(S)において反射された反射光に基づいてサンプル(S)の反射率を測定する反射率測定部(12)と、光のうちの一部とは異なる一部であって、サンプル(S)を透過した透過光に基づいてサンプルの透過率を測定する透過率測定部(14)とを有する測定部(10)と、反射率及び透過率に基づいて散乱係数及び吸収係数を取得する取得部(20)とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】本発明による光学特性値計測装置(100)は、サンプル(S)に照射された光の一部であって、サンプル(S)において反射された反射光に基づいてサンプル(S)の反射率を測定する反射率測定部(12)と、光のうちの一部とは異なる一部であって、サンプル(S)を透過した透過光に基づいてサンプルの透過率を測定する透過率測定部(14)とを有する測定部(10)と、反射率及び透過率に基づいて散乱係数及び吸収係数を取得する取得部(20)とを備える。
【選択図】図1
Description
本発明は光学特性値計測装置、光学特性値計測方法及び光学特性値計測プログラムに関する。
サンプルの特性は光を用いて測定可能である。例えば、サンプルに光を照射してその反射光や透過光を検出することによってサンプルの反射率及び透過率を比較的簡単に測定することができる。しかしながら、サンプルの反射率及び透過率はサンプルの厚さ等に依存して相対的に変化するものであり、これ自体でサンプルの特性を十分に表したことにはならない。
サンプルの固有の特性として光学特性値が知られており、特に、生体物質の光学特性値が注目されている。光学特性値には吸収係数および散乱係数がある。吸収係数μaは吸収によって光の強度が1/eになるまでに進む距離の逆数[単位:mm−1]であり、散乱係数μsは散乱によって光の強度が1/eとなるまでに進む距離の逆数[単位:mm−1]である。また、異方性因子gは一回の散乱による散乱パターンの非等方性を表す。このパラメーターgは1から−1までの値を示し、g=1、0、−1のときはそれぞれ完全な前方散乱、等方散乱、後方散乱になる。また、換算散乱係数μs’はμs×(1−g)と表される。
非特許文献1には、逆モンテカルロ法を用いて透過光強度および散乱光強度を吸収係数および散乱係数に変換する装置が開示されている。この装置では、積分球に対してサンプルをある位置に固定してサンプルの反射率を測定し、積分球に対してサンプルの位置を変更した上でサンプルの透過率を測定し、この反射率及び透過率から吸収係数および散乱係数が取得される。
田中ら、「近赤外における生体組織の光学特性測定」、日本機械学会熱光学講演会論文集、平成9年11月5〜7日、No.97−25
しかしながら、非特許文献1に記載された装置では、積分球に対してサンプル位置を変更した上でサンプルの反射率及び透過率を別々に測定する必要がある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、散乱係数および吸収係数を簡便に取得できる光学特性値計測装置を提供することにある。
本発明による光学特性値計測装置は、サンプルの散乱係数及び吸収係数を計測する光学特性値計測装置であって、前記サンプルに照射された光の一部であって、前記サンプルにおいて反射された反射光に基づいて前記サンプルの反射率を測定する反射率測定部と、前記光のうちの前記一部とは異なる一部であって、前記サンプルを透過した透過光に基づいて前記サンプルの透過率を測定する透過率測定部とを有する測定部と、前記反射率及び前記透過率に基づいて前記散乱係数及び前記吸収係数を取得する取得部とを備える。
ある実施形態において、前記取得部は、逆モンテカルロ法を用いる。
ある実施形態において、前記取得部は、所定の散乱係数及び所定の吸収係数に対応する所定の反射率及び所定の透過率を記憶した記憶部と、前記記憶部に記憶された前記所定の散乱係数及び前記所定の吸収係数と前記所定の反射率及び前記所定の透過率との対応関係に基づいて、前記サンプルの前記反射率及び前記透過率に対応する前記サンプルの前記散乱係数及び前記吸収係数を決定する係数決定部とを有する。
ある実施形態において、前記取得部は、モンテカルロ法を用いて前記所定の散乱係数及び前記所定の吸収係数から前記所定の反射率及び前記所定の透過率を計算し、前記所定の散乱係数及び前記所定の吸収係数に対応する前記所定の反射率及び前記所定の透過率を前記記憶部に記憶させる計算部をさらに有する。
ある実施形態において、前記反射率測定部は、前記サンプルに対して前記サンプルに照射される光の進行方向とは反平行な方向に配置された第1積分球を含み、前記透過率測定部は、前記サンプルに対して前記サンプルに照射される光の進行方向とは平行な方向に配置された第2積分球を含む。
ある実施形態において、前記サンプルは、前記第1積分球と前記第2積分球との間に配置される。
ある実施形態において、前記測定部は分光器を有し、前記分光器は、前記第1積分球を介した反射光、及び、前記第2積分球を通過した透過光の両方の分光を行う。
ある実施形態において、前記光学特性値計測装置は、前記サンプルを挟む一対のプレートの間の距離を調整するサンプル厚調整部をさらに備える。
ある実施形態において、前記光学特性値計測装置は、前記サンプルに入射する光を生成する入射光生成部をさらに備える。
ある実施形態において、前記入射光生成部から出射される光は、可視域から中赤外域までの波長を有する。
ある実施形態において、前記入射光生成部は、キセノンランプ、ハロゲンランプ、スーパーコンティニウム光源及びレーザー光源の少なくとも1つを含む。
ある実施形態において、前記取得部は、前記反射率が5%以上、または、前記透過率が10%以上の場合、前記サンプルの前記散乱係数及び前記吸収係数の取得を行い、前記反射率が5%未満、かつ、前記透過率が10%未満の場合に、前記サンプルの前記散乱係数及び前記吸収係数の取得を行わない。
本発明による光学特性値の計測方法は、サンプルに照射された光の一部であって、前記サンプルにおいて反射された反射光に基づいて前記サンプルの反射率を測定し、前記光のうちの前記一部とは異なる一部であって、前記サンプルを透過した透過光に基づいて前記サンプルの透過率を測定する工程と、前記サンプルの前記反射率及び前記透過率に基づいて前記サンプルの散乱係数及び吸収係数を取得する工程とを包含する。
本発明によるプログラムは、サンプルに照射された光の一部であって、前記サンプルにおいて反射された反射光に基づいて前記サンプルの反射率を反射率測定部が測定し、前記光のうちの前記一部とは異なる一部であって、前記サンプルを透過した透過光に基づいて前記サンプルの透過率を透過率測定部が測定する工程と、取得部が、前記サンプルの前記反射率及び前記吸収率に基づいて前記サンプルの散乱係数および吸収係数を取得する工程とを実行させる。
本発明による光学特性値計測装置は、サンプルの反射率及び透過率を一度に測定することができ、サンプルの散乱係数及び吸収係数を簡便に取得することができる。
以下、図面を参照して、本発明による光学特性値計測装置の実施形態を説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
図1に、本実施形態の光学特性値計測装置100の模式図を示す。光学特性値計測装置100は、サンプルSの散乱係数及び吸収係数を計測する。光学特性値計測装置100は、サンプルSの反射率及び透過率を測定する測定部10と、反射率及び透過率に基づいてサンプルSの散乱係数及び吸収係数を取得する取得部20とを備える。
測定部10は、サンプルSに照射された光の一部であって、サンプルSにおいて反射された反射光に基づいてサンプルSの反射率を測定する反射率測定部12と、光のうちの上記反射光となる光とは異なる一部であって、サンプルSを透過した透過光に基づいてサンプルSの透過率を測定する透過率測定部14とを有する。ここでは、サンプルSに照射される光は異なる波長を有しているが、後述するように、サンプルSに照射される光は単波長であってもよい。
測定部10は以下のようにサンプルSの反射率及び透過率を測定する。反射率測定部12は、サンプルSのない状態の光の強度とサンプルSのある状態の反射光の強度との比から反射率を測定する。同様に、透過率測定部14は、サンプルSのない状態の光の強度とサンプルSのある状態の透過光の強度との比から透過率を測定する。測定部10は、反射率測定部12とともに透過率測定部14を有しており、サンプルSに入射した光の反射光および透過光に基づき反射率および透過率を一度に測定することできる。なお、本明細書において、特に言及しない限り、反射率は散乱反射率を意味する。
上述したように、取得部20は、サンプルSの反射率及び透過率に基づいてサンプルSの散乱係数及び吸収係数を取得する。例えば、取得部20は、例えば、逆モンテカルロ(Inverse Monte Carlo)法を用いてサンプルSの散乱係数及び吸収係数を取得する。
モンテカルロ法を用いると、特定の散乱係数及び特定の吸収係数に対応する特定の反射率及び特定の透過率を得ることができる。以下に、図2を参照してモンテカルロ法を説明する。モンテカルロ法では、光を多くの光子(群)に分け、それが散乱体(サンプルS)に衝突して方向を変え、また、吸収を受ける光のエネルギー粒子として扱う。所定の散乱係数及び所定の吸収係数を予め所定の値に設定し、この条件でモンテカルロ法を用いて計算を行うことにより、所定の散乱係数及び所定の吸収係数に対応する所定の反射率及び所定の透過率が得られる。
取得部20は、測定部10において測定された反射率及び透過率とほぼ等しい所定の反射率及び所定の透過率が得られるまで所定の散乱係数及び所定の吸収係数の少なくとも一方の値を変化させながら計算を繰り返し、測定された反射率及び透過率とほぼ等しい所定の反射率及び所定の透過率が得られると、所定の反射率及び所定の透過率に対応する所定の散乱係数及び所定の吸収係数をサンプルSの散乱係数及び吸収係数として取得する。このように、サンプルSの散乱係数及び吸収係数は、逆モンテカルロ法で取得することができる。
例えば、取得部20は、所定の反射率及び所定の透過率と、測定部10において測定された反射率及び透過率とを比較し、反射率の差および透過率の差がそれぞれ所定の値以下の場合、所定の散乱係数及び所定の吸収係数をサンプルSの散乱係数及び吸収係数と決定してもよい。また、反射率の差および透過率の差の少なくとも一方が所定の値よりも大きい場合、所定の散乱係数及び所定の吸収係数の少なくとも一方を先に設定した所定の値とは異なる値に設定し、新たに設定した所定の散乱係数及び所定の吸収係数に対応する反射率及び透過率と、測定部10において測定された反射率及び透過率との比較を行う。このような手順を繰り返すことにより、サンプルSの散乱係数及び吸収係数を取得することができる。以上のようにして、サンプルSの散乱係数および吸収係数が計測される。
本発明による光学特性値計測装置100によれば、サンプルSの反射率及び透過率を一度に測定することができ、サンプルSの散乱係数および吸収係数を簡便に取得することができる。
図3(a)に、測定部10の模式図を示す。反射率測定部12は、積分球12aと、光検出部12bとを有している。積分球12aは、サンプルSに対してサンプルSに照射される光の進行方向とは反平行な方向に配置される。光検出部12bは、積分球12aを通過した反射光を検出する。
透過率測定部14は、積分球14aと、光検出部14bとを有している。積分球14aは、サンプルSに対してサンプルSに照射される光の進行方向とは平行な方向に配置される。光検出部14bは、積分球14aを通過した透過光を検出する。
サンプルSは、積分球12aと積分球14aとの間に配置される。なお、積分球12aおよび積分球14bは等しくてもよく、異なってもよい。本明細書において、積分球12aを第1積分球と呼び、積分球14aを第2積分球と呼ぶことがある。
サンプルSは、積分球12aと積分球14aとの間に配置される。なお、積分球12aおよび積分球14bは等しくてもよく、異なってもよい。本明細書において、積分球12aを第1積分球と呼び、積分球14aを第2積分球と呼ぶことがある。
光検出部12b、14bはそれぞれフォトディテクタであってもよい。あるいは、光検出部12b、14bはそれぞれ分光器であってもよい。分光器12b、14bにより、サンプルSに照射される光がさまざまな波長を有していても、反射光および透過光の各波長の強度を測定することができる。
また、分光器12bとして、波長ごとに異なる分光器を用いてもよい。例えば、分光器12bとして、可視領域及び近赤外領域の光の分光を行う分光器と、中赤外領域の光の分光器を別々に用いてもよい。あるいは、これらの分光器を分光器12bとして同時に用いてもよい。同様に、分光器14bとして、可視領域及び近赤外領域の光の分光を行う分光器と、中赤外領域の光の分光器を別々に用いてもよい。あるいは、これらの分光器を分光器12bとして同時に用いてもよい。
なお、上述した説明では、反射率測定部12および透過率測定部14は積分球12a、14aをそれぞれ有しており、反射光全体及び透過光全体の強度を検出し、その結果に基づいてサンプルSの散乱係数および吸収係数を求めたが、本発明はこれに限定されない。一部の反射光及び一部の透過光から、サンプルSの散乱係数および吸収係数を求めてもよい。ただし、この場合、反射光強度及び透過光強度が減少するとともに光検出部12b、14bの正確な位置を特定することが必要となる。
なお、図3(a)に示した測定部10では、反射率測定部12、透過率測定部14がそれぞれ光検出部12b、14bを有していたが、本発明はこれに限定されない。図3(b)に示すように、測定部10は、反射率測定部12および透過率測定部14のそれぞれに共有される光検出部10bを有していてもよい。光検出部10bは、積分球12aおよび積分球14aを通過した反射光および透過光の両方を検出する。光検出部10bはフォトディテクタであってもよく。あるいは、分光器であってもよい。また、分光器10bとして、波長ごとに異なる分光器を用いてもよい。例えば、分光器10bとして、可視領域及び近赤外領域の光の分光を行う分光器と、中赤外領域の光の分光器を別々に用いてもよい。
図4(a)に、取得部20の模式図を示す。取得部20は、記憶部22および係数決定部24を有している。記憶部22は、所定の散乱係数および所定の吸収係数に対応する所定の反射率および所定の透過率を記憶している。係数決定部24は、記憶部22に記憶された所定の散乱係数および所定の吸収係数と所定の反射率および所定の透過率との対応関係に基づいて、サンプルSの反射率及び透過率に対応するサンプルSの散乱係数および吸収係数を決定する。
あるいは、図4(b)に示すように、取得部20は、計算部26をさらに有してもよい。計算部26は、モンテカルロ法を用いて所定の散乱係数および所定の吸収係数から所定の反射率および所定の透過率を計算し、所定の反射率および所定の透過率を記憶部22に記憶させる。
ここで、図5を参照して、記憶部22、係数決定部24および計算部26を有する取得部20によるサンプルSの吸収係数および散乱係数の計算方法を説明する。
S52において、計算部26は、モンテカルロ法を用いて、所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsに対応する所定の反射率RC及び所定の透過率TCを計算する。ここでは、μaおよびμsがそれぞれ最小値であるとする。この場合、μsを一定にしてμaは間隔a1 ごとにXまで変化し、各μa、μsのペアに対して対応する所定の反射率RC及び所定の透過率TCが計算される。その後、μsを間隔s1だけ変化させてμaは最小値から間隔a1ごとにXまで変化し、同様に、所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsの各ペアに対して対応する所定の反射率RC及び所定の透過率TCが計算される。このようにして、μsも最小値から間隔s1ごとにYまで変化させる。以上から、所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsに対応する所定の反射率RC及び所定の透過率TCが得られる。
S54において、記憶部22は、計算部26において計算された所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsに対応する所定の反射率及び所定の透過率を記憶する。記憶部22は、計算部26において所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsの各ペアに対して対応する所定の反射率RC及び所定の透過率TCの計算結果が得られるごとにこの対応関係を記憶してもよいし、全ての計算結果が得られた後に各対応関係を記憶してもよい。
S12において、測定部10はサンプルSの反射率及び透過率を測定する。ここでは、所定の波長λiの反射率Ri及び透過率Tiに着目する。
S14において反射率Ri及び透過率Tiに近い所定の反射率Rc及び所定の透過率Tcを求める。例えば、計算部26は、((Ri−Rc)2+(Ti−Tc)2)0.5が最小となる所定の反射率Rc及び所定の透過率Tcのペアを求める。ここでは、このペアを反射率Rci及び透過率Tciと示す。
S16において測定された反射率Riとこの反射率Rciとの差、および、測定された透過率Tiとこの透過率Tciとの差が、それぞれ所定の値よりも小さいか確認する。例えば、係数決定部24は、│Ri−Rci│/Ri<0.005、および、│Ti−Tci│/Ti<0.005の両方を満たすか判定する。この判定は、計算部26を利用して行ってもよい。なお、記憶部22には、所定の反射率Rci及び所定の透過率Tciに対応する所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsが記憶されている。ここでは、これらの所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsを吸収係数μac及び散乱係数μscと示す。
S16において少なくともいずれか一方が満たされない場合、S56において、さらに細かい間隔で所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsを変化させて、それに対応する所定の反射率RC及び所定の透過率TCを計算する。例えば、計算部26は、μac±anの範囲およびμsc±snの範囲で、間隔an+1、sn+1(an+1<an、sn+1<sn)の所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsを用意し、これらの所定の吸収係数μa及び所定の散乱係数μsに対応する所定の反射率RC及び所定の透過率TCを計算する。S54において、記憶部22は、これらの対応関係を記憶する。
再び、S14において反射率Ri及び透過率Tiに近い所定の反射率Rc及び所定の透過率Tcを求める。例えば、計算部26は、(Ri−Rc)2+(Ti−Tc)2)0.5が最小となる所定の反射率Rc及び所定の透過率Tcのペアを求める。ここでは、このペアを反射率Rci及び透過率Tciと示す。以下、同様に、S16において反射率の差および透過率の差が所定の値よりも低くなるまでS56、S54、S14、S16を繰り返す。
S16において、両方が満たされる場合、S18において、係数決定部24は、これらの吸収係数μac及び散乱係数μscを取得すべき吸収係数μa及び散乱係数μsと決定する。以上のようにして、所定の波長λiに対する吸収係数μa及び散乱係数μsが決定される。その後、S20において所定の波長を波長λi+1に更新され、同様に、所定の波長λi+1に対する吸収係数μa及び散乱係数μsの取得が行われる。このようにして、サンプルSの各波長に対する吸収係数及び散乱係数を取得することができる。
なお、図6に示すように、サンプルSに照射される光は入射光生成部30において生成されてもよい。なお、入射光生成部30において生成される光は、可視域から中赤外域までの波長を有することが好ましい。例えば、入射光生成部30は、キセノンランプ、ハロゲンランプ、スーパーコンティニウム光源及びレーザー光源の少なくとも1つを含む。あるいは、入射光生成部30はレーザであってもよく、入射光生成部30から単波長の光が出射されてもよい。入射光生成部30からの光は、その反射光及び透過光が検出可能な強度でサンプルSに絞られた状態で平行に入射することが好ましい。
なお、詳細は後述するが、取得部20は、反射率が5%以上または透過率が10%以上の場合に散乱係数および吸収係数の取得を行い、反射率が5%未満かつ透過率が10%未満の場合に、散乱係数および吸収係数の取得を行わなくてもよい。
なお、典型的には、サンプルSは一対のプレートの間に挟まれる。例えば、プレートはガラスから形成される。特に、サンプルSが生体物質を含む場合、サンプルSが一対のプレートによって押しつぶされると、サンプルSの特性が変動してしまう。このため、図7に示すように、光学特性値計測装置100は、サンプルSを挟む一対のプレートsa、sbの間の距離を調整するサンプル厚調整部40をさらに備えることが好ましい。サンプル厚調整部40は、例えば、マイクロメーターから構成され、サンプル厚調整部40はμm単位でサンプルの厚さを調整可能である。なお、一般に、サンプルが厚いほど、反射率が増加し、サンプルSが薄いほど、透過率が増加する。
なお、サンプル厚調整部40によるサンプルSへの圧力を測定する圧力センサを設けてもよい。圧力センサを用いることにより、サンプルSへの負荷がかかりすぎることを抑制することができる。
また、図8に示すように、光学特性値計測装置100は、サンプルSを設置した後、測定部10がサンプルSの反射率及び透過率を測定し、取得部20が反射率及び透過率に基づいてサンプルSの吸収係数及び散乱係数を取得するように測定部10および取得部20に実行させる処理部50をさらに備えてもよい。処理部50は、プログラムに基づいて測定部10および取得部20(必要に応じて入射光生成部30)が所定の動作を行うように実行させてもよい。
図9に、光学特性値計測装置100のより具体的な模式図を示す。サンプルSはプレートによって挟まされる。例えば、プレートは光学結晶板を含む。ここでは、2つの分光器10b1、10b2を用いている。分光器10b1は可視領域および近赤外領域の波長の光の分光を行い、分光器10b2は中赤外領域の波長の光の分光を行う。また、ここでは、入射光生成部30の光源は、測定する波長ごとに交換される。具体的には、入射光生成部30の光源として可視領域(例えば、波長350nm以上750nm以下)の光を出射する光源、近赤外領域(例えば、波長750nm以上2.5μm以下)の光を出射する光源、中赤外領域(例えば、波長2.5μm以上12.5μm以下)の光を出射する光源が交換して用いられる。
また、入射光生成部30から出射される光の波長に応じて積分球12a、14aを変更してもよい。例えば、波長350nm以上2.5μm以下の光に対してはスペクトラロンでコーティングされた積分球を積分球12a、14aとして使用し、波長2.5μm以上12.5μm以下の光に対しては金でコーティングされた積分球を積分球12a、14aとして使用する。これにより、積分球12a、14a内の拡散反射を効率的に行うことができる。また、サンプル厚調整部40は、波長350nm以上2.5μm以下の光に対して調整単位100μmで100μm以上5mm以下の範囲で厚さの調整が可能であり、波長350nm以上2.5μm以下の光に対して調整単位0.5μmで13mm以下の範囲で厚さの調整が可能である。
以上により、例えば、広帯域の波長にわたってサンプルSの散乱係数および吸収係数を計測することができる。
なお、サンプルSとして生体物質を用いることが好ましい。生体物質は、軟組織であってもよく、硬組織であってもよい。一般に生体物質の散乱係数および吸収係数は変化しやすいため、取得しにくいが、光学特性値計測装置100によれば、これらの物質に固有の特性を示す散乱係数および吸収係数も簡便に計測することができる。例えば、光学特性値には吸収係数μa、散乱係数μs、異方性パラメータgおよび屈折率nがあるが、一般的な生体物質では、異方性パラメータgの値は可視域ではほぼ0.9であることが知られているため、異方性パラメータgは0.9とされる。また、屈折率nを水の屈折率と等しく1.33にされる。生体物質の散乱係数および吸収係数を簡便に取得できることにより、データベース化を図るとともに治療や診断への活用が期待される。
以下に、図10を参照して本実施形態の光学特性値計測装置100Aを説明する。光学特性値計測装置100Aは、反射率測定部12および透過率測定部14を含む測定部10と、取得部20と、入射光生成部30とを備えている。ここでは、積分球12a、14aは互いに等価なものである。なお、図10は、測定部10bの分光器10bおよび取得部20を省略して図示している。
光学特性値計測装置100Aは、さらに、ミラー31a、凸レンズ32a、凹レンズ33a、凹レンズ34a、凸レンズ35aを有しており、ミラー31aと凸レンズ32aとの間に絞りLa、凹レンズ33aと凹レンズ34aとの間に絞りLb、凸レンズ35aと積分球12aとの間に絞りLcが設けられている。
サンプルSは2枚のスライドガラスに挟まれる。例えば、2枚のスライドガラス(S−1112、松浪硝子工業)にサンプルを挟むことにより、サンプルSの表面の凹凸による拡散を抑制できる。例えば、サンプルSとして疑似生体材料が用いられる。なお、サンプルへの加圧によってサンプルの吸収係数μaおよび散乱係数μsが増加することがあるため、スライドガラスでサンプルを圧縮しないように挟む。また、スライドガラス間の距離は、既知の厚さのスペーサーを用いて調整される
。
。
積分球12a、14aは外部光によるノイズを低減するために、暗室内に設置される。積分球12a、14aは、それぞれ外径100.0mm、内径83.82mm、入射ポート径10.0mm、サンプルポート径10.0mmである。なお、積分球12aおよび14a内で光が完全に反射するように、積分球12a、14aの内部表面に、反射率が99%を超えるBaSO4が塗布されていることが好ましい。例えば、積分球12a、14aとして、Lab sphere社製のCSTM−3P−GPS−033−SLが用いられる。
入射光生成部30において生成される光の波長は広帯域であることが好ましい。例えば、入射光生成部30から波長220nm以上2000nm以下の範囲の光が出射されることが好ましい。この場合、広い波長域にわたって各波長の反射率及び透過率を測定し、各波長の反射率及び透過率に基づいて散乱係数および吸収係数を取得することができる。
ここでは、入射光生成部30としてキセノンランプ、電源およびランプハウスが用いられる。例えば、浜松ホトニクス社製のキセノンランプ(L2274(GS))、電源(C8849)および、ランプハウス(E7536)が用いられる。
例えば、絞りLaとして虹彩絞り(IDC−025、シグマ光機株式会社)が用いられ、凸レンズ32aとして、平凸レンズ(SLB−50.8−70P、シグマ光機株式会社)が用いられ、凹レンズ33aとして、両凹レンズ(SLSQ−50.8−60N、シグマ光機株式会社)が用いられる。また、凹レンズ34aとして両凹レンズ(KBC043、Newport)が用いられ、凸レンズ35aとして両凸レンズ(φ=30mm、f=30mm)が用いられ、絞りLcとして虹彩絞り(IDC−003、シグマ光機株式会社)が用いられる。
ミラー31aが入射光生成部30から出射された光の進行方向を変化させ、絞りLaにより、所定のビーム径が得られる。また、凸レンズ32aおよび凹レンズ33aにより、ビームは擬似的に平行化される。このビームが絞りLbを通過した後、凹レンズ34a、凸レンズ35aおよび絞りLcによって絞られたビーム径1mmのビームが積分球12a内に入射する。
積分球12a、14aのサンプルポート径は、拡散反射率Rdおよび透過率Ttの測定誤差を少なくするように設定される。測定サンプルは、積分球12a、14aのサンプルポートを覆い、また、サンプルに入射したビームの端からサンプルポートの端までの距離は、1/(μa+μs’)で規定される横方向への光の伝搬距離よりも長い。これは、サンプル側面で光が損失し、光学特性値を取得する際、吸収係数μaを過大評価することを防ぐためである。
サンプルSの拡散反射光および透過光は積分球12a、14aの内部表面で拡散反射され、最終的に検出ポートからコア径600μmのマルチモードファイバー(QP600−1−VIS−NIR、 Ocean Optics)を通して分光器10bに伝送される。分光器10bとして、例えば、高分解能分光器(Maya2000−Pro; 200−1100nm、Ocean Optics)を用いて、波長350nm〜1000nmの拡散反射率Rd及び透過率Ttを測定する。この分光器10bの受光感度は、およそ0.32 Counts/e−、波長分解能は、0.41nm〜0.48nmである。ここでは、逆モンテカルロ法が用いて、拡散反射率RDおよび透過率TTに基づいてサンプルSの吸収係数および散乱係数を取得する。
例えば、以下の点から、光学特性値計測装置100Aの評価を行う。
[入射光生成部30の安定性の評価]
入射光生成部30の安定性は、入射光生成部30が一定強度で光を出射した状態で受光強度の相対誤差および絶対誤差を用いて評価する。ここでは、入射光生成部30としてキセノンランプを用いている。
[入射光生成部30の安定性の評価]
入射光生成部30の安定性は、入射光生成部30が一定強度で光を出射した状態で受光強度の相対誤差および絶対誤差を用いて評価する。ここでは、入射光生成部30としてキセノンランプを用いている。
図11および図12に、キセノンランプ30の出力の相対誤差および絶対誤差をそれぞれ示す。図11、図12の縦軸は、それぞれ相対誤差、絶対誤差を、横軸は波長を示している。図11および図12のそれぞれにおいて□は最大誤差を示し、×は最小誤差を示す。ここでは、入射光生成部30の強度を1分ごとに20分間測定し、平均値からの相対誤差及び絶対誤差を用いている。波長350nm〜1000nmにおいて、受光強度の変動は、±0.2%(相対誤差)、±33counts(絶対誤差)程度であり、入射光生成部30は比較的安定である。
[光学特性値計測装置100Aの測定の正確性の評価]
市販の分光分析装置と比較して光学特性値計測装置100Aによる測定の正確性を評価する。ここでは、2つの市販の分光分析装置を用意する。1つは、Microplate Photospectrometer(SpectraMax M5; 190−850 nm、 MolecularDevices)であり、もう1つは、UV/VIS spectrophotometer(U−3500;187−3200 nm、Hitachi)である。サンプルとして、ヘモグロビン粉末(H7379−10G、sigma−aldrich)を蒸留水で溶かし、濃度0.025、0.05、0.1、0.2、0.4、0.8、1.6mg/mlに調整したヘモグロビン水溶液を用いる。1mlのサンプルがマイクロキュベットに入れられる。このヘモグロビン水溶液の吸収極大波長である403nmの透過率を5回測定し、測定後、ランバート・ベール則を用いて透過率から吸光度を算出し、検量線の比較を行う。
市販の分光分析装置と比較して光学特性値計測装置100Aによる測定の正確性を評価する。ここでは、2つの市販の分光分析装置を用意する。1つは、Microplate Photospectrometer(SpectraMax M5; 190−850 nm、 MolecularDevices)であり、もう1つは、UV/VIS spectrophotometer(U−3500;187−3200 nm、Hitachi)である。サンプルとして、ヘモグロビン粉末(H7379−10G、sigma−aldrich)を蒸留水で溶かし、濃度0.025、0.05、0.1、0.2、0.4、0.8、1.6mg/mlに調整したヘモグロビン水溶液を用いる。1mlのサンプルがマイクロキュベットに入れられる。このヘモグロビン水溶液の吸収極大波長である403nmの透過率を5回測定し、測定後、ランバート・ベール則を用いて透過率から吸光度を算出し、検量線の比較を行う。
図13に、光学特性値計測装置100Aおよび市販の分光分析装置において得られたヘモグロビン水溶液の検量線を示す。縦軸はサンプルの吸光度を示し、横軸はヘモグロビン濃度を示す。図13においてエラーバーは標準偏差を、式とRは、測定結果から求めた回帰式と回帰式の相関係数をそれぞれ示す。ヘモグロビン濃度0.025〜0.4mg/mlにおいて、光学特性値計測装置100Aで測定されたサンプルの吸光度とヘモグロビン濃度には正の相関関係(p<0.01、R=0.994)が認められる。また、MolecularDevicesを用いた測定結果も同様に、正の相関関係(p<0.01、R=0.999)が認められる。なお、ヘモグロビン濃度0.4mg/mlにおいて、光学特性値計測装置100Aで測定した吸光度の平均値は2.13であった。以上の結果から、吸光度2以下であれば、光学特性値計測装置100Aの正確さは市販の分光器と同等であることが示唆される。
[光学特性値計測装置100Aの測定の再現性の評価]
疑似生体物質を含むサンプルの反射率及び透過率を5回ずつ測定し、測定値の平均値と標準偏差から変動係数を算出することによって測定値の再現性を評価する。 なお、一般に、生体物質は強い散乱特性を持つ。このため、サンプルには、標準散乱物質として強い散乱特性をもつイントラリピッド溶液(FB−01IL20、TERUMO)、標準吸収物質として血液中の吸収体であるヘモグロビン、および、ゼラチン(G2500−500G、sigma−aldrich)を含めている。ヘモグロビン濃度は0.8mg/ml、イントラリピッド濃度は4vol%、また、ゼラチンの濃度は0.1g/mlである。サンプルの厚さは、スペーサーを用いて1mmに調整している。サンプルの乾燥によるサンプルの変性を防ぐため、サンプルを挟むスライドガラス間の間隙をパラフィルムで覆っている。
疑似生体物質を含むサンプルの反射率及び透過率を5回ずつ測定し、測定値の平均値と標準偏差から変動係数を算出することによって測定値の再現性を評価する。 なお、一般に、生体物質は強い散乱特性を持つ。このため、サンプルには、標準散乱物質として強い散乱特性をもつイントラリピッド溶液(FB−01IL20、TERUMO)、標準吸収物質として血液中の吸収体であるヘモグロビン、および、ゼラチン(G2500−500G、sigma−aldrich)を含めている。ヘモグロビン濃度は0.8mg/ml、イントラリピッド濃度は4vol%、また、ゼラチンの濃度は0.1g/mlである。サンプルの厚さは、スペーサーを用いて1mmに調整している。サンプルの乾燥によるサンプルの変性を防ぐため、サンプルを挟むスライドガラス間の間隙をパラフィルムで覆っている。
図14に、光学特性値計測装置100Aにおいて測定された反射スペクトルRd及び透過スペクトルTtを示す。図14におけるエラーバーは標準偏差を示す。図14の波長400nm付近の反射率及び透過率の低下はサンプルに含まれているヘモグロビン由来の吸収によるものと考えられる。測定結果より、標準偏差の最大値は、波長350nmの反射率において、平均値18.2%、標準偏差0.17%である。また、波長999nmの透過率において、平均値46.7%、標準偏差0.36%である。このため、反射率及び透過率における変動係数の最大値は、それぞれ0.94%、1.46%である。この結果は、測定値の高い再現性を示唆している。
[光学特性値計測装置100Aの測定値の変動に伴う光学特性値への影響の評価]
測定時に反射率及び透過率の変動によって光学特性値にどの程度の変動が生じるかを評価する。ここでは、最も変動の大きな反射率及び透過率を用いて光学特性値を取得し、反射率及び透過率の平均値を用いて取得した光学特性値との相対誤差を求めている。図15に、光学特性値計測装置100Aにおいて取得された換算散乱係数及び吸収係数を示す。また、図16および図17に、光学特性値計測装置100Aにおいて取得された吸収係数及び換算散乱係数のそれぞれの相対誤差を示す。図16および図17において、縦軸はそれぞれ吸収係数μa及び換算散乱係数μs’の相対誤差を示し、横軸は波長を示す。また、図15及び図16から、吸収係数μa及び換算散乱係数μs’の相対誤差の最大値はそれぞれ3.2%、1.9%である。この結果は、光学特性値は、吸収係数μa及び換算散乱係数μs’において、それぞれ3.2%、1.9%の誤差を含む事を示唆している。
測定時に反射率及び透過率の変動によって光学特性値にどの程度の変動が生じるかを評価する。ここでは、最も変動の大きな反射率及び透過率を用いて光学特性値を取得し、反射率及び透過率の平均値を用いて取得した光学特性値との相対誤差を求めている。図15に、光学特性値計測装置100Aにおいて取得された換算散乱係数及び吸収係数を示す。また、図16および図17に、光学特性値計測装置100Aにおいて取得された吸収係数及び換算散乱係数のそれぞれの相対誤差を示す。図16および図17において、縦軸はそれぞれ吸収係数μa及び換算散乱係数μs’の相対誤差を示し、横軸は波長を示す。また、図15及び図16から、吸収係数μa及び換算散乱係数μs’の相対誤差の最大値はそれぞれ3.2%、1.9%である。この結果は、光学特性値は、吸収係数μa及び換算散乱係数μs’において、それぞれ3.2%、1.9%の誤差を含む事を示唆している。
[光学特性値計測装置100Aの取得した光学特性値の定量性の評価]
サンプルの吸収係数μa及び換算散乱係数μs’を取得してヘモグロビン及びイントラリピッドの検量線を作成し、取得した光学特性値の定量性を評価する。吸収係数μaの定量性の評価の為に、サンプル内のヘモグロビン濃度を0.25、0.5、1.0、2.0mg/mlと異ならせ、イントラリピッドの濃度を4.0 vol%一定に調整する。また、換算散乱係数μs’の定量性の評価の為に、サンプル内のイントラリピッドの濃度を0.5、1.0、2.0、4.0vol%と異ならせ、ヘモグロビンの濃度を2.0 mg/ml一定に調整する。
サンプルの吸収係数μa及び換算散乱係数μs’を取得してヘモグロビン及びイントラリピッドの検量線を作成し、取得した光学特性値の定量性を評価する。吸収係数μaの定量性の評価の為に、サンプル内のヘモグロビン濃度を0.25、0.5、1.0、2.0mg/mlと異ならせ、イントラリピッドの濃度を4.0 vol%一定に調整する。また、換算散乱係数μs’の定量性の評価の為に、サンプル内のイントラリピッドの濃度を0.5、1.0、2.0、4.0vol%と異ならせ、ヘモグロビンの濃度を2.0 mg/ml一定に調整する。
ヘモグロビンの検量線は以下のように得られる。
図18および図19に、光学特性値計測装置100Aにおいて取得された吸収係数スペクトルおよび換算散乱係数スペクトルをそれぞれ示す。図18から、波長403nmに吸収極大を示すヘモグロビン由来の吸収が確認される。
図18および図19に、光学特性値計測装置100Aにおいて取得された吸収係数スペクトルおよび換算散乱係数スペクトルをそれぞれ示す。図18から、波長403nmに吸収極大を示すヘモグロビン由来の吸収が確認される。
図20に、光学特性値計測装置100Aにおいて得られたヘモグロビンの検量線を示す。図20は、図18に示された波長403nmの吸収係数μaを用いて作成されている。図20の縦軸は吸収係数μaを、横軸はサンプルのヘモグロビン濃度を示す。図20には、式とRは、それぞれ最小2乗法を用いて求めた回帰式と回帰式の相関係数を示す。この結果より、吸収係数μaとサンプルのヘモグロビン濃度には高い相関(p<0.01、R=0.99)があることが確認される。このため、光学特性値計測装置100Aを用いてサンプルの吸収係数μaを定量的に評価できると考えられる。
イントラリピッドの検量線は以下のように得られる。
図21および図22に、光学特性値計測装置100Aにおいて取得された吸収係数スペクトルおよび換算散乱係数スペクトルをそれぞれ示す。ここでは、サンプル内のイントラリピッド濃度を変化させている。
図21および図22に、光学特性値計測装置100Aにおいて取得された吸収係数スペクトルおよび換算散乱係数スペクトルをそれぞれ示す。ここでは、サンプル内のイントラリピッド濃度を変化させている。
図23に、光学特性値計測装置100Aにおいて得られたイントラリピッドの検量線を示すグラフである。このイントラリピッドの検量線は、図22に示された波長405、600、800、1000nmの換算散乱係数μs’を用いて作成している。図23の縦軸は換算散乱係数μs’を、横軸は測定したサンプルのイントラリピッド濃度を示す。図23において、式とRは、それぞれ最小2乗法を用いて求めた回帰式と回帰式の相関係数を示す。この結果より、広帯域における、換算散乱係数μs’とイントラリピッド濃度の高い相関が確認される。このように、光学特性値計測装置100Aを用いることにより、サンプルの換算散乱係数μs’を定量的に評価できる。なお、図19の波長400nm付近において、換算散乱係数μs’の特異的なピークが観測される。この傾向は、イントラリピッド濃度の異なる換算散乱係数μs’スペクトルに一様にも認められる。このような特異的なピークについて後述する。
以上のように、光学特性値計測装置100Aは、波長350nm〜1000nmの可視〜近赤外領域において組織の光学特性を定量的に評価できる。光学特性値計測装置100Aは、例えば、光治療への応用として用いられる。悪性新生物等の治療に用いられている光線力学療法やレーザー凝固治療前後の生体組織の光学特性値を取得することにより、さらに高度な光治療が期待される。今後、医療において、定量的な光診断・治療技術の需要は、ますます増加していくと考えられる。
図24に、本実施形態の光学特性値計測装置100Bの模式図を示す。光学特性値計測装置100Bは、反射率測定部12および透過率測定部14を含む測定部10と、取得部20と、入射光生成部30とを備えている。ここでは、積分球12a、14aは互いに等価なものである。なお、図24は、測定部10bの分光器10bおよび取得部20を省略して図示している。光学特性値計測装置100Bは、さらに、凹面ミラー31bと、平面ミラー32bと、凸レンズ33bとを有しており、凹面ミラー31bと平面ミラー32bとの間に絞りla、凸レンズ33bと積分球12aとの間に絞りLbが設けられている。積分球12a、14aのサイズは3.3インチであり、絞りla、Lbはそれぞれ直径4mm、1mmであり、凸レンズ33bのfは12.0mmである。ここでは、サンプルは疑似生体物質を含む。例えば、サンプルは、イントラリピッド4%volm、ヘモグロビン2.0mg/mlおよびゼラチン0.1mg/mlを含むゲルであり、サンプルの厚さは1mmである。
図25(a)および図25(b)に、光学特性値計測装置100Bにおいて取得された吸収係数スペクトル及び換算散乱係数スペクトルをそれぞれ示す。一般に、散乱はレイリー散乱およびミー散乱が支配的と考えられており、換算散乱係数μ’sは1/λ4に比例すると考えられる。しかしながら、図25(b)から理解されるように、吸収係数の比較的高い波長域(波長400nm近傍)において換算散乱係数はこの理論から乖離している。本明細書においてこの乖離を特異的乖離とも呼ぶ。ここで、乖離度を(1−(実験値/散乱理論値))×100(%)と定義する。乖離度が10%以上の場合には、乖離が顕著に発生していると言える。
本願発明者らは、この乖離について以下のような検討を行った。
図26に、図25(b)に示した光学特性値計測装置100Bにおいて取得された換算散乱係数スペクトルを改変したグラフを示す。ここでは、参考のために、図25(b)に示した光学特性値計測装置100Bにおいて取得された換算散乱係数スペクトルとともに、特異的乖離がないと仮定した改変換算散乱係数スペクトルを示している。
図26に、図25(b)に示した光学特性値計測装置100Bにおいて取得された換算散乱係数スペクトルを改変したグラフを示す。ここでは、参考のために、図25(b)に示した光学特性値計測装置100Bにおいて取得された換算散乱係数スペクトルとともに、特異的乖離がないと仮定した改変換算散乱係数スペクトルを示している。
図27(a)および図27(b)に、図25(a)および図26に示された吸収係数スペクトルおよび改変換算散乱係数スペクトルにそれぞれ示された吸収係数および換算散乱係数に対してモンテカルロ法を行うことによって得られた透過率および反射率をそれぞれ示す。なお、参考のために、図27(a)および図27(b)には、光学特性値計測装置100Bにおいて測定された透過率および反射率を併せて示している。さらに、図27(b)では、波長400nm近傍を拡大して示している。図27(a)から理解されるように、測定された透過率は、計算によって得られた透過率とほぼ等しい。これに対して、図27(b)から理解されるように、測定された反射率は、計算によって得られた反射率に対して波長400nm近傍において1%程度異なる。このように、測定された反射率と計算によって得られた反射率との差は比較的大きい。
光学特性値計測装置100Bにおいて測定された反射率が理論値よりも低い要因として、以下の要因が考えられる。
(1)主に計算条件、仕様が原因と考えられる項目
・gパラメーター、屈折率
・サンプルを挟むスライドガラスの計算条件の変更
(2)主に計測装置、手法が原因と考えられる項目
・双積分球と単積分球
・入射光生成部(白色光源、レーザー)の違い
・入射ポート径の大きさ
・サンプルポート径の大きさ
(3)サンプルの条件が関連すると考えられる項目
・サンプル(吸収体)の濃度
・サンプルの厚さ
(1)主に計算条件、仕様が原因と考えられる項目
・gパラメーター、屈折率
・サンプルを挟むスライドガラスの計算条件の変更
(2)主に計測装置、手法が原因と考えられる項目
・双積分球と単積分球
・入射光生成部(白色光源、レーザー)の違い
・入射ポート径の大きさ
・サンプルポート径の大きさ
(3)サンプルの条件が関連すると考えられる項目
・サンプル(吸収体)の濃度
・サンプルの厚さ
以下、(1)から(3)について順番に検討する。まず、(1)計算条件について検討する。
図28(a)に、gパラメータを変化させたときの換算散乱係数スペクトルを示す。gパラメータを0.5、0.6、0.7、0.8、0.9に変化させても、換算散乱係数はほとんど変化しない。このため、gパラメータを0.9にしたことによる乖離への影響はほとんどないと考えられる。
図28(b)に、サンプルの屈折率を変化させたときの散乱係数スペクトルを示す。サンプルの屈折率を1.33、1.5、2.0に変化させた場合、波長400nm付近だけでなく他の波長においても散乱係数は変化する。このため、サンプルの屈折率を1.33にしたことによる乖離への影響はほとんどないと考えられる。
また、別の原因として、スライドガラスの屈折率の波長依存性の影響が考えられる。
図28(c)に、波長に関わらず屈折率1.52のスライドガラスおよび波長に応じて屈折率の変化するスライドガラスを用いたときせの換算散乱係数スペクトルを示す。図28(d)に、スライドガラスの屈折率の波長依存性を示す。
図28(c)から理解されるように、スライドガラスの波長依存性にかかわらず、換算散乱係数はほとんど変化しない。このため、スライドガラスの屈折率の波長依存性による乖離への影響はほとんどないと考えられる。以上から、計算条件が原因とは考えられない。
図28(a)に、gパラメータを変化させたときの換算散乱係数スペクトルを示す。gパラメータを0.5、0.6、0.7、0.8、0.9に変化させても、換算散乱係数はほとんど変化しない。このため、gパラメータを0.9にしたことによる乖離への影響はほとんどないと考えられる。
図28(b)に、サンプルの屈折率を変化させたときの散乱係数スペクトルを示す。サンプルの屈折率を1.33、1.5、2.0に変化させた場合、波長400nm付近だけでなく他の波長においても散乱係数は変化する。このため、サンプルの屈折率を1.33にしたことによる乖離への影響はほとんどないと考えられる。
また、別の原因として、スライドガラスの屈折率の波長依存性の影響が考えられる。
図28(c)に、波長に関わらず屈折率1.52のスライドガラスおよび波長に応じて屈折率の変化するスライドガラスを用いたときせの換算散乱係数スペクトルを示す。図28(d)に、スライドガラスの屈折率の波長依存性を示す。
図28(c)から理解されるように、スライドガラスの波長依存性にかかわらず、換算散乱係数はほとんど変化しない。このため、スライドガラスの屈折率の波長依存性による乖離への影響はほとんどないと考えられる。以上から、計算条件が原因とは考えられない。
次に、(2)計測装置について検討する。
図29(a)に、積分球およびサンプル近傍の模式図を示す。ここで、積分球12aのうち入射光生成部において生成された光が入射する開口部を入射ポートと呼び、この光が積分球12aを通過してサンプルに向かう開口部をサンプルポートと呼ぶ。
図29(b)に、積分球を1つおよび2つ用いて得られた換算散乱係数スペクトルを示す。この場合も、波長400nm以外の波長においても散乱係数は変化する。このため、積分球の数による乖離への影響はほとんどないと考えられる。
図30に、異なる光源を用いたときの散乱係数スペクトルを示す。ここでは、光源として、キセノンランプおよびレーザを用いた。レーザから出射される光の波長は、405nmおよび664nmである。波長405nmの光を用いた場合、散乱係数の乖離は比較的小さい。
図31に、入射ポート径の大きさを変化させたときの換算散乱係数スペクトルを示す。ここでは、入射ポート径を5mmおよび10mmとしている。この場合も、波長400nm付近だけでなく他の波長においても散乱係数は変化する。このため、入射ポート径よる乖離への影響はほとんどないと考えられる。
図32に、サンプルポート径の大きさを変化させたときの換算散乱係数スペクトルを示す。サンプルポート径を5mmおよび10mmとしている。ここでも、波長400nm以外の波長においても散乱係数はほぼ等しく、波長400nm付近の散乱係数が理論に近づいている。このため、サンプルポート径よる乖離への影響は若干あると考えられる。以上から、計測装置による乖離への影響は若干あるものの、それほど大きくないと考えられる。
図29(a)に、積分球およびサンプル近傍の模式図を示す。ここで、積分球12aのうち入射光生成部において生成された光が入射する開口部を入射ポートと呼び、この光が積分球12aを通過してサンプルに向かう開口部をサンプルポートと呼ぶ。
図29(b)に、積分球を1つおよび2つ用いて得られた換算散乱係数スペクトルを示す。この場合も、波長400nm以外の波長においても散乱係数は変化する。このため、積分球の数による乖離への影響はほとんどないと考えられる。
図30に、異なる光源を用いたときの散乱係数スペクトルを示す。ここでは、光源として、キセノンランプおよびレーザを用いた。レーザから出射される光の波長は、405nmおよび664nmである。波長405nmの光を用いた場合、散乱係数の乖離は比較的小さい。
図31に、入射ポート径の大きさを変化させたときの換算散乱係数スペクトルを示す。ここでは、入射ポート径を5mmおよび10mmとしている。この場合も、波長400nm付近だけでなく他の波長においても散乱係数は変化する。このため、入射ポート径よる乖離への影響はほとんどないと考えられる。
図32に、サンプルポート径の大きさを変化させたときの換算散乱係数スペクトルを示す。サンプルポート径を5mmおよび10mmとしている。ここでも、波長400nm以外の波長においても散乱係数はほぼ等しく、波長400nm付近の散乱係数が理論に近づいている。このため、サンプルポート径よる乖離への影響は若干あると考えられる。以上から、計測装置による乖離への影響は若干あるものの、それほど大きくないと考えられる。
次に、(3)サンプルの条件について検討する。
図33(a)に、異なるヘモグロビンの濃度のサンプルを用いたときの換算散乱係数スペクトルを示す。ここでは、吸収体として機能するヘモグロビンの濃度を0.25、0.5、1.0、2.0、4.0mg/mlと変化させている。サンプルの濃度が増加するほど、乖離が大きくなっている。これは、測定対象に応じて剥離の程度にばらつきが生じることを意味している。
図33(a)に、異なるヘモグロビンの濃度のサンプルを用いたときの換算散乱係数スペクトルを示す。ここでは、吸収体として機能するヘモグロビンの濃度を0.25、0.5、1.0、2.0、4.0mg/mlと変化させている。サンプルの濃度が増加するほど、乖離が大きくなっている。これは、測定対象に応じて剥離の程度にばらつきが生じることを意味している。
図33(b)に、異なる厚さのサンプルを用いたとき換算散乱係数スペクトルを示す。ここでは、サンプルの厚さは0.1、0.2、0.3mmである。サンプルが薄い場合には乖離が小さい。このため、図5を参照して上述したサンプル厚調整部40を用いて、サンプルを圧迫しない程度にサンプルを薄くすることが好ましい。
図34に、反射率に対する透過率の変化を示す。図34に示すように、反射率5%未満および透過率10%未満の場合に特異的な乖離が発生しやすい。このため、反射率5%未満および透過率10%未満の場合には光学特性値の取得を行わなくてもよい。
図35(a)に、光学特性値計測装置100Bにおいて取得された吸収係数スペクトルを示し、図35(b)に、本実施形態の光学特性値計測装置において取得された換算散乱係数スペクトルを示す。
ここでは、サンプルは、へモグラビン、イントラリピッドおよびゼラチンを含んでおり、このように、波長1000nm以上の近赤外、中赤外の領域の吸収係数スペクトル及び換算散乱係数スペクトルを得ることが好ましい。
図36(a)〜(d)は異なる照射時間でEr:YAGレーザの照射を行った生体物質の模式図である。ここでは、生体物質は鳥の胸肉であり、図36(a)〜(d)の照射時間は、それぞれ、10、30、60、90秒である。ここでは、Er:YAGレーザの平均パワー密度は4.0W/cm2である。照射時間が長くなるほど、生体物質表面が白い部分が大きくなり、さらに黄色部分が発生する。このように照射時間に応じて、反射率が変化していることが理解される。
図37(a)及び図37(b)に、光学特性値計測装置100Bにおいて取得されたレーザの照射時間の異なるサンプルに対して吸収係数スペクトル及び換算散乱係数スペクトルをそれぞれ示す。レーザの照射時間に応じて吸収係数及び換算散乱係数が大きく変化することが理解される。
なお、近赤外領域の光のS/N比が小さいことがある。このため、以下の点から、S/N比の改善を試みた。例えば、積分球の球径を83.8mmから38.1mmに小さくしたが、S/Nの改善効果はそれほど大きくなかった。
また、検出器の冷却を行った。図38に、光学特性値計測装置100Bにおける分光器を冷却する冷却部60の模式図を示す。冷却部60は、光検出部と接する放熱板61と、ペルチェ素子62、63、64、65と、ラジエター66と、ファン67a、67bと、バッファb1、b2とを有している。例えば、ペルチェ素子62、63、64のそれぞれの最大電圧、最大電流は12V、8.5Aであり、ペルチェ素子65の最大電圧、最大電流は5V、3Aである。
図39に、冷却部60を備える光学特性値計測装置における冷却開始後の相対ノイズ強度および検出温度を示す。このように、ペルチェ素子を備えた冷却部60を利用することにより、検出器の温度を低下させてノイズを低減させることができる。
さらに、S/N比の改善を図るために光源の変更を行う。ここで、強度および安定性の観点から、キセノンランプ、スーパーコンティニウム光源およびハロゲンランプを検討する。
図40に、光学特性値計測装置100Bの入射光生成部30としてハロゲンランプ、スーパーコンティニウム光源(SC光源)及びキセノンランプを用いて取得された水の吸収スペクトルを示す。ここでは、基準吸収率を比較している。
キセノンランプの安定性は、特に、波長1800nm以上においてそれほど高くない。スーパーコンティニウム光源の安定性もそれほど高くない。これに対して、ハロゲンランプは高安定性を示す。
図41に、光学特性値計測装置100Bにおいて取得された強度およびS/N比のスペクトルを示す。入射光生成部としてキセノンランプを用いる場合、S/Nの改善効果はそれほど大きくない。また、入射光生成部としてスーパーコンティニウム光源を用いる場合、S/Nの改善効果はそれほど大きくない。一方、入射光生成部としてキセノンランプを用いる場合、S/Nの改善効果は比較的大きい。
以上のように、キセノンランプは、高強度であり、ある程度の安定性を有しているが、特に、波長1800nm以上において安定性が高くない。スーパーコンティニウム光源の強度および安定性のいずれもそれほど高くない。ハロゲンランプは高強度および高安定性を示す。
光学特性値計測装置100Bにおいて近赤外領域のS/N比は50であったが、入射光生成部としてハロゲンを用いるとともに冷却部60を設けることにより、S/N比は200にまで向上した。
図42(a)に、光学特性値計測装置100Bにおいて測定された反射率スペクトルを示し図42(b)は光学特性値計測装置100Bにおいて測定された透過率スペクトルを示す。ここでは、サンプルとして3種類の疑似生体物質を用いている。具体的には、いずれのサンプルもヘモグロビン1.0mg/mlおよびゼラチン0.1mg/mlを含むゲルであり、それぞれは、1、2、4%volのイントラリピッドを含んでいる。また、いずれのサンプルの厚さも0.3mmである。
波長350−2000nmにわたって改善されたS/N比で透過率および反射率が測定される。なお、波長1000−2000nmにおいてS/N比のさらなる改善が行われることが好ましい。例えば、このために、検出器を−30℃まで冷却するか、露光時間および積算回数を最適化するか、生理条件を長時間維持することが考えられる。
波長350−2000nmにわたって改善されたS/N比で透過率および反射率が測定される。なお、波長1000−2000nmにおいてS/N比のさらなる改善が行われることが好ましい。例えば、このために、検出器を−30℃まで冷却するか、露光時間および積算回数を最適化するか、生理条件を長時間維持することが考えられる。
図43(a)に、光学特性値計測装置100Bにおいて取得された吸収係数スペクトルを示し、図43(b)に、光学特性値計測装置100Bにおいて取得された換算散乱係数スペクトルを示す。波長1500nm付近および波長1950nm付近において吸収係数が大きなところで換算散乱係数に特異的な変動がみられる。
ここで、赤外の波長の光の生成に着目する。例えば、入射光生成部として白色光源を用いて中赤外域の測定を行うことが考えられる。
以下、図44を参照して本実施形態の光学特性値計測装置100Cを説明する。図44には、本実施形態の光学特性値計測装置100Cにおいて用いられる光を生成する入射光生成部30Aの模式図を示す。入射光生成部30Aは、光源30と、放物面ミラー31cと、放物面ミラー32cと、ビームスプリッタ33cと、固定ミラー34cと、移動ミラー35cと、反射ミラー36cとを有している。入射光生成部30Aにおいて生成された光は、平面ミラー37cおよび放物面ミラー38cによって反射されて積分球12aに入射される。なお、この入射光生成部30Aは、フーリエ変換赤外分光(Foruier Transform infrared spectroscopy:FTIR)装置の光源としても用いられる。
図45に、光学特性値計測装置100Cにおいて測定された透過率スペクトルを示す。参考のために、フーリエ変換赤外分光で求めた透過率も併せて示している。このように透過率の測定は可能であり、測定結果も、フーリエ変換赤外分光で求めた結果とほぼ等しい。
図46(a)に、光学特性値計測装置100Bにおいて測定された歯の反射率スペクトルを示し、図46(b)に、図46(a)に示された歯を示す。反射率は、光量不足のため、十分に測定できなかった。なお、白色光源からの光束を増加させてみたものの、積分球における光量は充分ではなかった。
なお、図44に示した光学特性値計測装置100Cでは、平面ミラー37cは、入射光生成部30Aから出射された光を放物面ミラー38cに向けてほぼ直角に反射したが、本発明はこれに限定されない。平面ミラー37cは、入射光生成部30Aから出射された光を放物面ミラー38cに向けて直角とは異なる角度で反射してよい。
図47(a)に、直角反射の場合の光の挙動の概略計算結果を示し、図47(b)は改善された光の挙動の概略計算結果を示す。図47(a)及び図47(b)から、放物面ミラー38cに角度をつけることにより、焦点をあわせることができる。
なお、図44に示した光源30が白色光源である場合、白色光源の種類によってはビームを十分に絞りきれないことがある。図48に、ビームを十分に絞りきれない場合の光のビームプロファイルの模式図を示す。このように、ビームを十分に絞りきれない場合、適切な計測を行うことができない。
なお、上述した説明では、入射光生成部30Aと積分球12aとの間に、平面ミラー37cおよび放物面ミラー38cが設けられていたが、本発明はこれに限定されない。放物面ミラー38cの前に、平面ミラー37cに変えて放物面ミラー37cが設けられてもよい。
図49(a)は光学特性値計測装置100Cにおける入射光生成部30Aと積分球12aとの間の光学系の模式図である。ここでは、入射光生成部30Aと積分球12aとの間に、放物面ミラー37c、38cが設けられている。放物面ミラー37cの焦点距離は170mmであり、放物面ミラー38cの焦点距離は40mmであり、放物面ミラー37c、38cの焦点は互いにほぼ一致している。放物面ミラー38cにおいて反射された光が積分球12aに入射される。
なお、放物面ミラー38cと積分球12aとの間にさらに放物面ミラーが配置されてもよい。
図49(b)は光学特性値計測装置100Cにおける入射光生成部30Aと積分球12aとの間の光学系の模式図である。ここでは、放物面ミラー38cと積分球12aとの間に、放物面ミラー37c、38cに加えて放物面ミラー38c1が設けられており、放物面ミラー38c1において反射された光が積分球12aに入射される。
あるいは、図44に示した模式図では、放物面ミラー38cにおいて反射された光が積分球12aに入射されたが、本発明はこれに限定されない。
図49(c)は光学特性値計測装置100Cにおける入射光生成部30Aと積分球12aとの間の光学系の模式図である。ここでは、放物面ミラー38cと積分球12aとの間に、平面ミラー37c、放物面ミラー38cに加えて、平凹レンズ39cが設けられており、放物面ミラー38cにおいて反射された光は平凹レンズ39cを介して積分球12aに入射される。
あるいは、赤外域の光を生成するために、入射光生成部30Bは別の構成を有してもよい。
図50に、光学特性値計測装置100Dの模式図を示す。光学特性値計測装置100Dにおいて、入射光生成部30Bは、波長可変Cr:フォルステライトレーザ30aと、Nd:YAGレーザ30bと、差周波発生素子30cとを有している。なお、波長可変Cr:フォルステライトレーザ30aのポンピングのために、波長可変Cr:フォルステライトレーザ30a1が用いられる。
波長可変Cr:フォルステライトレーザ30aからは波長1.15〜1.36μmの光が出射される。Nd:YAGレーザ30bからは波長1064nmの光が出射される。波長可変Cr:フォルステライトレーザ30aおよびNd:YAGレーザ30bのそれぞれから出射された光は、差周波発生素子30cに入射される。差周波発生素子30cは、例えば、AgGaS2(Type II)である。差周波発生素子30cからは、レーザ30aとレーザ30bと間の差周波の光が発生される。この場合、差周波発生素子30cから出射される光の波長は5.5μm以上10μm以下であり、強度は1mJである。なお、集光径は1mmであり、白色光の径は5mmである。この入射光生成部30Bのパワー密度は、白色光と比べて数千倍である。このような入射光生成部30Bは、赤外波長可変レーザとも呼ばれる。入射光生成部30Bから出射された光はビームスプリッタ31dおよび絞りLaを介して積分球12aに入射される。例えば、絞りLaの直径は1mmである。このような赤外波長可変レーザ30Bを用いることにより、赤外領域においてもビーム径を絞ることができるとともに十分な光強度が得られる。
波長可変Cr:フォルステライトレーザ30aからは波長1.15〜1.36μmの光が出射される。Nd:YAGレーザ30bからは波長1064nmの光が出射される。波長可変Cr:フォルステライトレーザ30aおよびNd:YAGレーザ30bのそれぞれから出射された光は、差周波発生素子30cに入射される。差周波発生素子30cは、例えば、AgGaS2(Type II)である。差周波発生素子30cからは、レーザ30aとレーザ30bと間の差周波の光が発生される。この場合、差周波発生素子30cから出射される光の波長は5.5μm以上10μm以下であり、強度は1mJである。なお、集光径は1mmであり、白色光の径は5mmである。この入射光生成部30Bのパワー密度は、白色光と比べて数千倍である。このような入射光生成部30Bは、赤外波長可変レーザとも呼ばれる。入射光生成部30Bから出射された光はビームスプリッタ31dおよび絞りLaを介して積分球12aに入射される。例えば、絞りLaの直径は1mmである。このような赤外波長可変レーザ30Bを用いることにより、赤外領域においてもビーム径を絞ることができるとともに十分な光強度が得られる。
ただし、波長可変レーザでは出力が変動することがある。このため、リアルタイムで出力の変動を計測し、その結果を反映させてもよい。例えば、ビームスプリッタ31dによって反射された光を用いて入射光生成部30Bの出力を測定してもよい。
図51に、光学特性値計測装置100Dにおいて測定された透過率スペクトルを示す。ここでは、サンプルとして、ゼラチン薄膜を用いており、図51の縦軸はこのサンプルの総透過率を示す。参考のために、フーリエ変換赤外分光で求めた結果を合わせて示している。中赤外帯域において、光学特性値計測装置100Dの測定結果は、フーリエ変換赤外分光で求めた結果とほぼ等しい。
図52に、光学特性値計測装置100Dにおいて測定された歯の拡散反射率スペクトルを示す。ここでも、参考のために、フーリエ変換赤外分光で求めた結果を合わせて示している。フーリエ変換赤外分光では、拡散反射率の測定は困難であったが、光学特性値計測装置100Dを用いることにより、拡散反射率を測定することができる。
ここで、フーリエ変換赤外分光、および、光学特性値計測装置100Dの測定を比較する。図53(a)に、フーリエ変換赤外分光装置の模式図を示し、図53(b)に、積分球の模式図を示す。図53(c)に、フーリエ変換赤外分光装置で測定される反射成分を示し、図53(d)に、積分球で測定される反射成分を示す。
フーリエ変換赤外分光装置では、拡散反射光のうちの一部のみが測定されるだけでなく正反射光も併せて測定される。これに対して、光学特性値計測装置100Dでは正反射光をほとんど測定することなく拡散反射光のうちのほぼすべてを測定することができる。以上のように、光学特性値計測装置100Dを用いることにより、中赤外帯域の光の散乱係数及び吸収係数を取得することができる。
本発明によれば、サンプルの反射率及び透過率を一度に測定することができ、サンプルの散乱係数及び吸収係数を簡便に取得することができる。
10 測定部
20 取得部
30 入射光生成部
100 光学特性値計測装置
20 取得部
30 入射光生成部
100 光学特性値計測装置
Claims (14)
- サンプルの散乱係数及び吸収係数を計測する光学特性値計測装置であって、
前記サンプルに照射された光の一部であって、前記サンプルにおいて反射された反射光に基づいて前記サンプルの反射率を測定する反射率測定部と、
前記光のうちの前記一部とは異なる一部であって、前記サンプルを透過した透過光に基づいて前記サンプルの透過率を測定する透過率測定部とを有する測定部と、
前記反射率及び前記透過率に基づいて前記散乱係数及び前記吸収係数を取得する取得部と
を備える、光学特性値計測装置。 - 前記取得部は、逆モンテカルロ法を用いる、請求項1に記載の光学特性値計測装置。
- 前記取得部は、
所定の散乱係数及び所定の吸収係数に対応する所定の反射率及び所定の透過率を記憶した記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記所定の散乱係数及び前記所定の吸収係数と前記所定の反射率及び前記所定の透過率との対応関係に基づいて、前記サンプルの前記反射率及び前記透過率に対応する前記サンプルの前記散乱係数及び前記吸収係数を決定する係数決定部と
を有する、請求項1に記載の光学特性値計測装置。 - 前記取得部は、モンテカルロ法を用いて前記所定の散乱係数及び前記所定の吸収係数から前記所定の反射率及び前記所定の透過率を計算し、前記所定の散乱係数及び前記所定の吸収係数に対応する前記所定の反射率及び前記所定の透過率を前記記憶部に記憶させる計算部をさらに有する、請求項3に記載の光学特性値計測装置。
- 前記反射率測定部は、前記サンプルに対して前記サンプルに照射される光の進行方向とは反平行な方向に配置された第1積分球を含み、
前記透過率測定部は、前記サンプルに対して前記サンプルに照射される光の進行方向とは平行な方向に配置された第2積分球を含む、請求項1から4のいずれかに記載の光学特性値計測装置。 - 前記サンプルは、前記第1積分球と前記第2積分球との間に配置される、請求項5に記載の光学特性値計測装置。
- 前記測定部は分光器を有し、
前記分光器は、前記第1積分球を介した反射光、及び、前記第2積分球を通過した透過光の両方の分光を行う、請求項5または6に記載の光学特性値計測装置。 - 前記サンプルを挟む一対のプレートの間の距離を調整するサンプル厚調整部をさらに備える、請求項1から7のいずれかに記載の光学特性値計測装置。
- 前記サンプルに入射する光を生成する入射光生成部をさらに備える、請求項1から8のいずれかに記載の光学特性値計測装置。
- 前記入射光生成部から出射される光は、可視域から中赤外域までの波長を有する、請求項9に記載の光学特性値計測装置。
- 前記入射光生成部は、キセノンランプ、ハロゲンランプ、スーパーコンティニウム光源及びレーザー光源の少なくとも1つを含む、請求項9または10に記載の光学特性値計測装置。
- 前記取得部は、前記反射率が5%以上、または、前記透過率が10%以上の場合、前記サンプルの前記散乱係数及び前記吸収係数の取得を行い、
前記反射率が5%未満、かつ、前記透過率が10%未満の場合に、前記サンプルの前記散乱係数及び前記吸収係数の取得を行わない、請求項1から11のいずれかに記載の光学特性値計測装置。 - サンプルに照射された光の一部であって、前記サンプルにおいて反射された反射光に基づいて前記サンプルの反射率を測定し、前記光のうちの前記一部とは異なる一部であって、前記サンプルを透過した透過光に基づいて前記サンプルの透過率を測定する工程と、
前記サンプルの前記反射率及び前記透過率に基づいて前記サンプルの散乱係数及び吸収係数を取得する工程と
を包含する、光学特性値の計測方法。 - サンプルに照射された光の一部であって、前記サンプルにおいて反射された反射光に基づいて前記サンプルの反射率を反射率測定部が測定し、前記光のうちの前記一部とは異なる一部であって、前記サンプルを透過した透過光に基づいて前記サンプルの透過率を透過率測定部が測定する工程と、
取得部が、前記サンプルの前記反射率及び前記吸収率に基づいて前記サンプルの散乱係数および吸収係数を取得する工程と
を実行させるプログラム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2010-09-20 JP JP2010210309A patent/JP2012063333A/ja active Pending
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