以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
図1は、本実施の形態に係るDCモータの正面図である。図2は、本実施の形態に係るDCモータの背面図である。図3は、本実施の形態に係るDCモータの側面図である。図4は、DCモータの主たる構成部品を説明するための分解斜視図である。
図1乃至図4に示すように、DCモータ(単に「モータ」という)10は、筒状のハウジング12の内部に回転子14が収容されて構成されている。ハウジング12は、有底筒状の金属ケース16と、筒状の樹脂製のブラシホルダ18とを組み付けて構成される。金属ケース16は、磁気回路を形成するヨークとしても機能し、その内周面には筒状の界磁マグネット(単に「マグネット」という)20が固定され、共に固定子を構成している。金属ケース16の底部中央にはボス部17が外方にやや突出するように形成され、後述する軸受を収容している。
回転子14は、回転軸となるシャフト22の一端側半部に、電機子24、コミテータ26、検出用マグネット28等が設けられて構成される。シャフト22は、ハウジング12の軸線に沿って挿通されている。また、電機子24は、シャフト22に固定され、マグネット20に対向するように配置されている。ブラシホルダ18には、コミテータ26に対向配置される一対のカーボンブラシ30が配設されている。ブラシホルダ18には、図示しない電装品と電気的に接続するためのコネクタ32が着脱可能に取り付けられる。
ブラシホルダ18は、コネクタ32を取り付けたブラシホルダ組立て体の状態で金属ケース16に挿入されるようにして組み付けられる。金属ケース16の開口端近傍の側面には切り欠き部34,35が設けられており、ブラシホルダ組立体を組み付ける際にコネクタ32およびブラシホルダ18の所定箇所が切り欠き部34,35の各基端部にそれぞれ係止されることにより適切な位置決めがなされる。
このようにブラシホルダ組立体を組み付けた後、金属ケース16の開口部をエンドプレート36により封止する。エンドプレート36は、金属ケース16の開口部とほぼ同形状の外形を有し、その開口部に挿通嵌合される。エンドプレート36は、金属ケース16内に挿入された後にエンドプレート36の開口端が内方にかしめられることにより、金属ケース16に対して固定される。エンドプレート36の周縁部には互いに反対側に延出する一対のフランジ部38が設けられ、各フランジ部38が電装品への取付部を形成している。
エンドプレート36の中央にはボス部39が外方にやや突出するように形成され、リング状であって潤滑用のオイルを含浸したいわゆるオイルレスメタルからなる滑り軸受37が圧入されている。ボス部39の底部にはその滑り軸受37と同軸状に挿通孔が設けられている。シャフト22の他端側半部は、この挿通孔を貫通して外部に露出し、図示しないギア等を介して駆動対象に接続される。なお、滑り軸受37をエンドプレート36ではなくブラシホルダ18に設けることもできるが、金属からなるエンドプレート36にて保持する本実施の形態の構成は、樹脂と比べて温度湿度変化に強く、モータ使用温度湿度環境の変化による体積の膨張収縮が小さいのでシャフト22の同軸度を向上させることができ、回転子14を高精度で安定した回転状態を保持することができる。
図5は、図1のA−A矢視断面図である。図5に示すように、金属ケース16、ブラシホルダ18、およびコネクタ32に囲まれるようにしてハウジング12の内部空間が形成される。エンドプレート36のボス部39には上述した滑り軸受37が圧入され、シャフト22の挿通されるシャフト孔40近傍の部分を回転自在に軸支している。一方、金属ケース16のボス部17には、滑り軸受であって外形形状が球形である球形滑り軸受41が同軸状に内挿嵌合された有底筒状の軸受ホルダ42が配置されている。球形滑り軸受41は、シャフト22の一端部に圧入されている。軸受ホルダ42の底部中央には断面三角形状の凸部43が設けられ、ボス部17の底部に設けられた同形状の凹部44に嵌合することで、その軸線周りの回動が阻止されている。つまり、これら凸部43および凹部44により軸受ホルダ42の回り止め構造が実現されている。また、球形滑り軸受41が、その外周の曲面部において軸受ホルダ42に相対的に回動可能となっている。すなわち、シャフト22と同軸の球形滑り軸受41の軸線が軸受ホルダ42の軸線と所定角度の傾きを許容する構成となっており、シャフト22の回転により自動調心がなされるようになっている。
電機子24は、シャフト22に圧入されたコア46と、コア46に巻回された巻線48を含んで構成されており、コア46の外周面がマグネット20の内周面と所定のクリアランス(磁気ギャップ)をあけて対向配置されている。これらマグネット20およびコア46による磁極構成の詳細については後述する。
シャフト22における電機子24と滑り軸受37との間には、電機子24側から順にコミテータ26、検出用マグネット28、ブッシュ50が並設されている。コミテータ26は、円筒状をなし、コネクタ32が金属ケース16に組み付けられた際にカーボンブラシ30に対向配置される位置にてシャフト22に圧入されている。ブラシホルダ18には筒状のカーボンホルダ31が固定されており、カーボンブラシ30は、このカーボンホルダ31に内挿されて支持されている。また、カーボンブラシ30は、この状態でコミテータ26の外周面に摺接するよう位置決めされている。
検出用マグネット28は、コミテータ26よりも外径がやや小さな円筒状をなし、コミテータ26に軸線方向に当接するようにシャフト22に挿通されている。コネクタ32の下面にはホール素子52が配設されており、コネクタ32が金属ケース16に組み付けられた際には、そのホール素子52が検出用マグネット28に対向配置される。検出用マグネット28がコミテータ26よりもやや小さく構成されることで、シャフト22が他端側からブラシホルダ18に挿通される際に検出用マグネット28がカーボンブラシ30に干渉するのが防止される。また、検出用マグネット28をコミテータ26よりも小さな範囲で大きくすることで、ホール素子52に近接配置できるようにされている。
検出用マグネット28は、回転に伴ってその外周面にN極とS極とが交互に現れるように2極に着磁されており、ホール素子52がその検出用マグネット28の回転に伴う磁極の切り替わり(境界)を検出してパルス信号を出力する。所定期間におけるそのパルス信号の数を取得することにより、モータ10の回転数を検出することができる。なお、本実施例では検出用マグネット28を2極着磁としたが、例えば4極着磁等その他の偶数極数に設定してもよい。
検出用マグネット28のブッシュ50との対向面には、断面四角形状の凹部54が設けられている。一方、ブッシュ50は、その凹部54と相補形状の外形を有する段付柱状をなしている。ブッシュ50は、その先端部を凹部54に嵌合させるようにシャフト22に圧入されており、その結果、検出用マグネット28のシャフト22に対する回転が防止されている。ブッシュ50は、鉄などの磁性材料からなり、検出用マグネット28の磁力を安定化させるバックヨークとしても機能する。
図6は、図5のB−B矢視断面図である。図7も同様に、図5のB−B矢視断面図である。なお、図6では、マグネット20の磁極を説明するためにそれ以外の部品が省略されている。また、図7では、金属ケースに電機子が挿入された状態を示しており、巻線は省略されている。
ハウジング12の一部を構成する金属ケース16の側面は、2対の対向する平坦面16aと、平坦面16a同士をつなぐ4つの連結面としての曲面16bとを有する。なお、以下の説明では、連結面の一例である曲面の場合について説明するが、連結面がフラットな面であってもかまわない。すなわち、金属ケース16は、4つの平坦面16aを有する4角形状の断面を有し、隣接する平坦面16aが湾曲状(R状)の角部により接続されている。このように、四角形状の角部を落としたような形状とすることで、モータ10全体の小型化を図っている。同時に、モータ性能を維持しつつ高価であるマグネットの使用量を削減している。
マグネット20は、ハウジング12の内面に沿って設けられており、その外周面が接着剤を介して金属ケース16の内周面に固着されており、金属ケース16の曲面16bに対応する位置にて厚肉となり、平坦面16aに対応する位置にて薄肉となるように構成されている。このマグネット20の内周面により形成される仮想円の中心が、電機子24の軸中心に一致するように構成されており、マグネット20の厚肉部分を中心に各磁極が形成されている。
すなわち、マグネット20は、磁極60(N極)、磁極61(S極)、磁極62(N極)、磁極63(S極)が周方向に等間隔で設けられた4極界磁の偏肉筒状体からなり、厚肉部となる各磁極の中心が金属ケース16の4つの曲面16bの部分にそれぞれ配置されている。マグネット20は、例えば磁性材料を偏肉筒形状に一体成形して金属ケース16に固定した後、磁界発生装置により金属ケース16の外部から着磁させることで形成できるが、その着磁技術については公知であるため詳細な説明を省略する。
一方、図7に示すように、コア46は、シャフト22に圧入された中央円筒部から放射状に延出する6つの磁極64〜69を有し、各磁極に巻線が巻回される。なお、コア46と巻線との間には、絶縁用のコーティングパウダーの塗布が施される。
図8は、ブラシホルダにコネクタが取り付けられたブラシホルダ組立体を図5のC方向からみた矢視図である。図8に示すように、ブラシホルダ18は有底筒状をなし、金属ケース16と同様に四角形状の断面の角部が湾曲状に形成されている。ブラシホルダ18の中央にはその軸線方向にコミテータ26や検出用マグネット28を挿通可能な円孔が形成されており、その周囲に各種機能部品がスペースを有効利用するよう最適配置されている。なお、ブラシホルダ18の軸線方向は、そのブラシホルダ18に挿通されるシャフト22の長さ方向となる。
すなわち、ブラシホルダ18の図8の左右下方の角部には、周方向に90度をなすように一対の筒状のカーボンホルダ31が固定され、その内部にカーボンブラシ30が摺動可能に収容されている。カーボンホルダ31は、導電性金属からなる断面四角形状の長尺筒状体からなり、ブラシホルダ18の軸中心からその半径方向に沿って延びるように配設されている。
カーボンブラシ30は、長方形状の断面を有する長尺角柱状をなし、カーボンホルダ31に摺動可能に内挿され支持されている。これにより、金属ケース16、回転子14、ブラシホルダ組立体が組み付けられた際には、カーボンブラシ30が、ブラシホルダ18の角部とコミテータ26の軸中心とをつなぐ線上に延びるように配置されるようになる。本実施の形態において、この軸中心と角部とをつなぐ線上は、ブラシホルダ18の平坦部をつないで構成される正方形の対角線上でもあり、ブラシホルダ18内の周方向位置においてその半径方向のスペースが最も長くなる位置である。このため、カーボンブラシ30は、その長さが最も長く確保可能な位置に配置されることになる。
ブラシホルダ18の角部と側面部との間のスペースには、ねじりばね70ねじりばね70が配設されている。ねじりばね70は、その巻回部71がブラシホルダ18の側面部に近接配置されたボス部68に挿通されて支持され、その巻回部71から延出する一端部72がカーボンブラシ30の後端面に当接される。巻回部71から延出する他端部は、ブラシホルダ18の底部に固定されている。ねじりばね70は、その巻回部71にて付勢力を蓄積し、一端部72がその付勢力をカーボンブラシ30に伝達してコミテータ26側に付勢する。
カーボンホルダ31のねじりばね70との対向面には、カーボンブラシ30のストローク方向に沿ったスリット(図11参照)が設けられている。これにより、カーボンブラシ30がコミテータ26側にストロークしたとしても、ねじりばね70の一端部72がそのスリットを介して変位し、常にカーボンブラシ30に付勢力を付与できる。すなわち、カーボンブラシ30が経年により摩耗して短くなっても、コミテータ26との安定した接触状態を保持することができる。一方、ねじりばね70の巻回部71をカーボンブラシ30のストローク範囲の延長線上から外れた位置に設けることで、あらかじめカーボンブラシ30として可能な限り長いものを選択することができ、カーボンブラシ30そのもの、ひいてはモータ10の高寿命化を図ることができる。
ブラシホルダ18の内部スペースには、さらに、2つのチョークコイル76、プリント基板80等が配設されている。チョークコイル76は、電気ノイズ消去素子であり、図の左右上方の角部にそれぞれ配置されている。また、チョークコイル76は、その軸線がブラシホルダ18の軸線と平行となるように設けられているため、ブラシホルダ18の断面のスペースを節約し、小型化を図っている。
プリント基板80は、ブラシホルダ18の図の上部空間に沿った矩形の外形を有し、一対のチョークコイル76を正面側から覆うようにしてブラシホルダ18に取り付けられる。プリント基板80には、電気的ノイズをカットするためのコンデンサ、回路保護用のダイオード、ホール素子52用の抵抗などの各種回路素子が実装されている。このような構成により、万が一チョークコイル76の固定が外れてしまっても、これが電機子24に接触することがないようにされている。
コネクタ32は、モータ10を駆動対象である電装品に直接接続するためのいわゆるダイレクトコネクタであり、一対の給電端子82と、ホール素子52の信号を取り出すための一対の出力端子84とが一体に組み付けられている。コネクタ32の下面には、上述のようにホール素子52のほか、電気的ノイズをカットするためのフィルムコンデンサが配設されている。
給電端子82の一方は、プリント基板80、一方のチョークコイル76などを介して一方のカーボンブラシ30に電気的に接続される。給電端子82の他方は、プリント基板80、他方のチョークコイル76などを介して他方のカーボンブラシ30に電気的に接続される。なお、上記プリント基板80の電気的接続は、並列の電気的接続となっている。
以上のように、本実施の形態に係るモータ10は、筒状のハウジング12と、ハウジング12の内面に沿って設けられ、周方向に間隔をおいた複数の磁極61〜64を有するマグネット20と、ハウジング12の軸線に沿って挿通されたシャフト22と、シャフト22に固定され、マグネット20に対向配置せれた電機子24と、電機子24と同軸になるようにシャフト22に取り付けられたコミテータ26と、柱状の本体を有し、ハウジングにおいて、その本体の長手方向がコミテータ26の半径方向に沿うように配設され、その先端面がコミテータ26の外周面に摺接するカーボンブラシ30と、ハウジングに設けられ、カーボンブラシ30をコミテータ26の半径方向にストローク可能に支持するカーボンホルダ31と、ハウジングに配設され、カーボンブラシ30をコミテータ側に付勢するねじりばね70と、を備える。
また、本実施の形態に係るDCモータ10は、全体が小型化されており、ハウジング12の断面積も小さくなっている(例えば、600mm2未満)。当然、ハウジング12に収納されるコミテータの直径も従来より小さくなっている。このように全体が小型化されたDCモータは、駆動対象のユニットの負荷が環境や経年劣化によって高まると、ノイズが発生したりノイズレベルが所定の上限値を超えたりする場合が、大型のDCモータと比較して多い。
これは以下のような理由が考えられる。DCモータは、その動作に応じてカーボンブラシが摩耗した場合であっても、カーボンブラシとコミテータとの接触を確保すべくカーボンブラシが摺動できるように、カーボンブラシとカーボンホルダとの間にはある程度のクリアランスが設けられている。このクリアランスは、カーボンホルダの加工や組付けの公差を加味して設定されている。そのため、カーボンホルダの加工や組付けの公差が大きい場合、ばらつきによってカーボンブラシが摺動できなくならないように、クリアランスを大きく取る必要がある。断面積が大きな大型DCモータの場合、コミテータの直径も大きくできるため、クリアランスによるモータ位相への影響は小さい。しかしながら、本発明者らの検討により、小型化の要請で断面積が狭くなっているDCモータの場合、モータ位相に与えるクリアランスの影響がより顕著になることが明らかになってきた。
図9(a)は、実施例および比較例のモータ構成における、コミテータとカーボンホルダとの位置関係を説明するための模式図、図9(b)は、図9(a)の領域Dを拡大した図である。
はじめに、比較例のモータ構成の場合について、図9(a)、図9(b)の右半分を用いて説明する。比較例のコミテータ26は、その直径が9mmであり、カーボンホルダ31とカーボンブラシ30との間には、カーボンブラシ30をコミテータ26の半径方向にストローク可能とするクリアランスG1が形成されている。比較例の場合、クリアランスG1は、0.17mmである。また、カーボンホルダ31のコミテータ26と対向する側の端部31aと、コミテータ26との距離dは、0.5mm程度である。このような構成において、クリアランスG1の両端P1,P2と、シャフトの中心(環状のコミテータの中心)とを結ぶ2本の直線が成す角は、1.77°となる。
図10は、コミテータの直径が10mm未満の小型のDCモータのクリアランスとライフサイクル数との関係を示すグラフである。
図10に示すグラフにおいて、横軸はカーボンブラシとカーボンホルダとのクリアランスを示し、縦軸はノイズが初期レベルから所定量増大するまでのDCモータのライフサイクル数を示している。また、グラフ中にある3つの曲線は、動作時の負荷が停電トルクTsの1/2(最大負荷)、1/4(中負荷)、1/6(低負荷)の場合に対応している。図10に示すように、比較例に係るDCモータは、低負荷の場合のライフサイクル数が3400回程度となっている。
次に、実施例に係るDCモータの場合について、図9(a)、図9(b)の左半分を用いて説明する。モータ10は、コミテータ26の直径が9mmであり、クリアランスG2が0.08mmに設定されている。なお、カーボンブラシ30の幅は1.8mm〜2mm程度の範囲で選択すればよい。このような構成において、クリアランスG1の両端P3,P4と、シャフトの中心とを結ぶ2本の直線が成す角は、0.84°となる。従って、図10に示すように、実施例に係るDCモータ10は、低負荷の場合のライフサイクル数が4400回程度となっており、DCモータの小型化と低騒音性を高いレベルで両立しつつ、長寿命化も図られている。
このように、モータの断面積が小さくコミテータの直径が小さい場合であっても、クリアランスをある程度小さくすることで、モータの低騒音化、長寿命化が可能なことが明らかになった。なお、更に検討すると、モータ位相に影響を与えるのは、クリアランスそのものの大きさというよりも、クリアランスに伴うカーボンブラシのコミテータ周方向へのずれ量が要因とも考えられる。つまり、クリアランスの両端と、シャフトの中心とを結ぶ2本の直線が成す角が、クリアランスによるカーボンブラシのずれとして、モータ位相に与える影響をより直接的に表しているとも考えられる。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、本実施の形態に係るDCモータ10は、直径が10mm未満のコミテータの場合、カーボンホルダのコミテータと対向する側の端部におけるクリアランスの両端と、シャフトの中心とを結ぶ2本の直線が成す角が1.5度未満となるように構成されている。
このように、コミテータ26の小型化に応じてカーボンブラシ30とカーボンホルダ31とのクリアランスも小さく設定されているため、モータ位相に与えるクリアランスの影響が低減され、ノイズの発生やノイズの上昇が抑制される。クリアランスは、0.15mm以下に設定されていればよく、0.1mm以下に設定されていることが好ましい。これにより、小型化されたモータ10においても低騒音を実現できる。
また、本実施の形態に係るモータ10のように、4極のマグネット20を備えている場合、2極のマグネットと比較してクリアランスの大きさがモータ位相に与える影響が大きい。換言すれば、本実施の形態に係るモータ10の構成では、2極のDCモータと比較して、ノイズの発生やノイズの上昇が起きやすいので、それらを抑制する効果がより顕著となる。
加えて、本実施の形態に係るモータ10は、一対のカーボンブラシ30を、互いの長手方向が成す角度が90°となるように配置されている。つまり、一対のカーボンブラシ30は、4つの連結面を結ぶ2つの対角線に沿ってそれぞれ一つずつ配置されている。これにより、一対のカーボンブラシをコミテータの中心を挟んで互いに対向させた場合と比較して、ノイズの発生やノイズの上昇が起きやすいので、それらを抑制する効果がより顕著となる。
次に、カーボンブラシ30とカーボンホルダ31とのクリアランスを、カーボンブラシの摺動を妨げない範囲で小さくする構成について説明する。前述のように、単にクリアランスを小さくしようとする場合、カーボンホルダの加工や組付けの公差が大きいと、公差の範囲であってもカーボンブラシが摺動できなくなる可能性がある。そのため、クリアランスの目標設計値を小さくするためには、カーボンホルダの加工や組付けの公差自体を小さくできる構成が好ましい。
図11は、本実施の形態に係るカーボンホルダ31の全体斜視図である。図12は、本実施の形態に係る金属プレートの全体斜視図である。図13は、金属プレートを介してカーボンホルダをブラシホルダ18に取り付ける様子を示す模式図である。
はじめに、本実施の形態に係るカーボンホルダ31は、カーボンブラシ30を挟み込む一対の平坦面31b,31cを有している。カーボンホルダ31は、一対の平坦面31b,31cが互いに平行となるように曲げ加工されている。平坦面31bには、前述のように、ねじりばね70の一端部72が侵入し変位できるようにスリット31dが形成されている。一対の平坦面31b,31cは、それぞれの先端が、ブラシホルダ18に形成された取付穴18aに挿入可能な2つの脚31e(挿入部)として一体的に形成されている。
これにより、カーボンホルダ31は、平坦面31b(31c)と脚31eとが同一面を構成しているため、加工が容易となる。そのため、加工によって作製されるカーボンホルダ31の寸法精度が向上し公差が小さくなるため、結果的に、クリアランスを小さく設定することができる。
また、カーボンホルダ31は、一対の平坦面31b,31cおよび脚31eが一度の曲げ加工により形成されている。これにより、複数回の曲げ加工によりカーボンホルダを作製する場合と比較して、カーボンホルダ31の寸法精度が向上し公差が小さくなるため、クリアランスを小さく設定することができる。
図12に示す金属プレート90は、その平らな面91に、カーボンホルダ31の4つの脚31eが挿入され貫通する4つの貫通孔92が形成されている。金属プレート90は、真鍮からなり、厚みは0.3mm〜約1.0mmが好ましい。貫通孔92は、スリット形状となっており、カーボンホルダ31の一対の平坦面31b,31cの間隔が所定の範囲に含まれるように、平らな面91の中央に近い側の側壁92aが加工されている。本実施の形態では、加工精度を考慮して打ち抜き加工により貫通孔92が形成されている。つまり、一対の平坦面31b,31cの間隔に対応する、貫通孔92の側壁92a同士の間隔Hのばらつきが抑えられる。
ここで、所定の範囲は以下の観点から設定されている。所定の範囲の下限値は、カーボンホルダ31に支持されているカーボンブラシ30が少なくともストローク可能な程度のクリアランスが確保できる間隔である。本実施の形態の下限値は、カーボンブラシ30のコミテータ周方向の幅よりも少なくとも0.01mm大きい値以上である。また、所定の範囲の上限値は、前述したモータ位相に与えるクリアランスの影響を考慮して設定される間隔である。本実施の形態の上限値は、カーボンブラシ30のコミテータ周方向の幅よりも0.15mm大きい値以下である。そして、本実施の形態では、所定の範囲に含まれるとは、一対の平坦面の間隔が前述の下限値から上限値までのいずれかの値となっていることを意味する。
そして、図13に示すように、カーボンホルダ31は、脚31eが金属プレート90の貫通孔92に挿入され、さらに、ブラシホルダ18の取付穴18aに挿入されることでブラシホルダ18に固定される。そのため、金属プレート90の寸法精度の高い貫通孔92の側壁92aによって一対の平坦面31b,31cが位置決めされる。従って、仮にカーボンホルダ31の加工による形状のばらつきが生じても、一対の平坦面31b,31cの間隔が金属プレート90によって矯正される。つまり、平らな面を打ち抜き加工された寸法精度の高い貫通孔92によって一対の平坦面31b,31cの間隔が決まるため、公差が小さくなり、カーボンブラシ30とカーボンホルダ31とのクリアランスを小さく設定することができる。
図14は、ブラシホルダ18の取付穴18aの大きさと、金属プレート90の貫通孔92の大きさとの関係を説明するための図である。樹脂製のブラシホルダ18は、金属プレート90と比較して加工精度が悪い。その結果、カーボンホルダ31の脚31eがブラシホルダ18の取付穴18aに触れた状態で位置決めされると、一対の平坦面31b,31cの間隔は、取付穴18aの加工精度に依存することになり、公差が大きくなる。そのため、クリアランスを小さく設定するには好ましくない。
そこで、図14に示すように、本実施の形態に係るモータ10では、脚31eが貫通孔92の側壁92aにより確実に当接するように、貫通孔92の幅W1よりも取付穴18aの幅W2が広くなるように構成されている。
図15は、最終的にカーボンホルダ31をブラシホルダ18に固定した状態を示す断面図である。カーボンホルダ31の脚31eのそれぞれは、金属プレート90の貫通孔92およびブラシホルダ18の取付穴18aを貫通し、その先端部31fが互いに外側に曲げられることでブラシホルダ18に対してかしめられている。これにより、図15の矢印に示すように、脚31eは金属プレート90の貫通孔92の内側の側壁92aに押し付けられるため、一対の平坦面31b,31cの間隔の寸法精度が向上する。
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。