JP2012058218A - 導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置及び屈折率測定方法 - Google Patents

導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置及び屈折率測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】導波モード共鳴格子の構造が設計通りでない場合や配置がずれた場合でも、試料の屈折率の絶対値を容易に且つ高い精度で算出する。
【解決手段】屈性率が制御された複数の屈折液を用意し(S1)、それらの屈折率を精度よく測定する(S2)。各屈折液を導波モード共鳴格子に接触させ、出射光の強度を測定して角度スペクトルを算出し、共鳴放射角及び回折角や全反射角の差分値を求める(S3、S4)。屈折率と差分値との複数の関係が分かるので、これを用いたフィッティングを行い、これを校正曲線として記憶する(S5、S6、S7)。未知試料を導波モード共鳴格子に接触させ、同様にして共鳴放射角等を測定して差分値を求め(S8、S9)、校正曲線を参照して共鳴入射角から屈折率を求める(S10)。
【選択図】図6

Description

本発明は、誘電体及び吸収誘電体の固相、液相、気相など、様々な相における試料の屈折率を測定するための屈折率測定装置及び屈折率測定方法に関し、更に詳しくは、導波モード共鳴フィルタを利用した屈折率測定装置及び屈折率測定方法に関する。
従来、物質の屈折率を測定する手法として、様々な方法が利用され、また提案されている。例えば固体試料の屈折率を測定する方法としては、異なる屈折率を持つ誘電体の平坦な界面での屈折角を測定する最小偏角法や臨界角法などといった方法、或いは、エリプソメトリのような薄膜試料の干渉効果による反射特性を測定する方法、などが知られている。また、流体(気体及び液体)試料の屈折率を測定する方法としては、マイケルソンモーレー型干渉計や、吸収スペクトル分光法など、試料を伝播する光の吸収を測定するものが一般的である。
しかしながら、上述のような各種方法にはそれぞれデメリットがある。即ち、最小偏角法では、試料をプリズム化する必要があるため、試料の形状やサイズを任意に選ぶことができない。そのため、薄膜試料や微小化された試料を測定することできない。アッベ式やプルフリッヒ式などの臨界角法でも同様に、薄膜試料には十分に対応することができない。何故なら、薄膜試料では、その干渉効果により臨界線の境界が明確ではなくなり、高精度の測定が不可能だからである。
また、エリプソメトリを利用した測定法では、半導体結晶のエピタキシャル成長やスパッタリングによる蒸着などにより形成される、界面が極めて平坦で且つ平行となる薄膜試料しか測定することができず、測定可能な試料の制約が非常に大きい。さらに、マイケルソンモーレー型干渉計や吸収スペクトル分光法では、光路長を大きくとる必要があり、微小量の試料の測定には向かない。
近年、上記のような従来の屈折率の測定原理とは異なる、導波モード共鳴格子と呼ばれる光学素子を利用して屈折率を測定する方法が提案されている(非特許文献2参照)。導波モード共鳴格子(Guided-Mode Resonant Grating: GMRG)は、1985年にマシェフらにより初めて提案されたサブ波長回折格子の一種であり(非特許文献1参照)、誘電体材料の屈折率や寸法などを適当に定めた構造とすることにより非常に鋭い狭帯域特性を持つことが知られている。この特性を利用して、波長選択フィルタや波長シフタなどへの応用が進められている。
導波モード共鳴格子を用いた屈折率の測定は、導波モード共鳴格子に接する試料の屈折率によって共鳴反射の条件が変化することを利用する。例えば共鳴入射角度や共鳴波長は、導波モード共鳴格子に接する試料の屈折率に依存するため、その共鳴条件を測定し、定量化することで試料の屈折率を実部・虚部ともに推定することができる。
しかしながら、現実の素子構造は必ずしも設計通りのものであるとは限らず、製造上での素子構造の寸法誤差は必ず生じると言える。特に導波モード共鳴格子の場合、高い寸法精度で素子を製造することは未だ技術的に難しく、そのずれが測定値の誤差をもたらす。そのため、導波モード共鳴格子を利用した屈折率計では、2つの異なる試料の屈折率の差、つまり相対値については精度の高い測定が可能であるが、それぞれの試料の屈折率を絶対値として精度良く求めることは困難であるという問題がある。
そこで、本発明者は、異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として共鳴入射角度や共鳴波長を測定し、その測定結果から校正曲線を作成して未知試料の屈折率を求める方法を提案している(特許文献1)。校正曲線は、製造上生じる導波モード共鳴格子の個体差などを反映したものであるため、高い精度で未知試料の屈折率の絶対値を求めることができる。
しかし、特許文献1の方法には次の課題が残る。即ち、基準液について共鳴入射角度や共鳴波長を測定した後、試料の測定を行う場合は、導波モード共鳴格子に載せた基準液を取り除いて試料を載せる際に導波モード共鳴格子の素子配置に微妙なずれが生じ、正確度が低下する。
一方、導波モード共鳴格子に基準液と試料の両方を載せて同時に測定する場合は正確度は高くなるが、測定毎に基準液を消費することになる。また、基準液と試料の両方を導波モード共鳴格子に載せることで該導波モード共鳴格子の実効的な素子面積が小さくなり、放射効率を損なうおそれがある。
特開2009-229196号公報
マシェフ、ほか1名、「ゼロ・オーダー・アノマリー・オブ・ディエレクトリック・コーテッド・グレーティングス(Zero order anomaly of dielectric coated gratings)」、オプティカル・コミュニケーション(Optical Communication)、55、pp.377-380、1985 スー・シェン、ほか2名、「ストロング・リゾナント・カップリング・オブ・サーフェス・プラズモン・ポラリトンズ・トゥー・ラディエイション・モーズ・スルー・ア・スィン・メタル・スラブ・ウィズ・ディエレクトリック・グレーティングス(Strong resonant coupling of surface plasmon polaritons to radiation modes through a thin metal slab with dielectric gratings)」、ジャーナル・オブ・オプティカル・ソサイエティ(J. Opt. Soc.)、Vol. 24, No. 1, pp. 225-230、2007
本発明はかかる課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、導波モード共鳴格子の構造が設計通りでない場合や配置がずれた場合でも、試料の屈折率の絶対値を容易に且つ高い精度で算出することができる、導波モード共鳴格子を利用した屈折率測定装置及び屈折率測定方法を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明の第1態様は、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置であって、
a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の導波路端面に光を照射する光照射手段と、
c)該光照射手段による光照射について出射光スペクトルを測定し、該出射光スペクトルから異なる2つの導波モードの共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
d)異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として、前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された異なる2つの共鳴放射角の差分値と屈折率との離散的な関係に基づいて、校正曲線を作成する校正曲線作成手段と、
e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された異なる2つの共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
を備えることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために成された本発明の第2態様は、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置であって、
a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の基板面又は被測定物面に光を照射する光照射手段と、
c)該光照射手段による光照射に対する反射光を受け、照射光の入射角度を変化させたときの角度スペクトル又は照射光の波長を変化させたときの波長スペクトルを測定し、異なる2つの導波モードの共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
d)異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された異なる2つの共鳴放射角の差分値と屈折率との離散的な関係に基づいて、校正曲線を作成する校正曲線作成手段と、
e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された異なる2つの共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
を備えることを特徴とする。
本発明の第1態様、第2態様、及びそのほかの以下の全ての態様において、基準液はユーザ等が自ら調製したものでもよいが、屈折率が制御された市販の屈折液を用いると便利である。具体的には、株式会社島津製作所が販売している接触液(インターネット<URL : http://www.shimadzu.co.jp/products/opt/products/se.html>参照)や株式会社モリテックスが販売している米国カーギル社製の標準屈折液(インターネット<URL : http://www.moritex.co.jp/products/func/refraction-liquid.php>参照)などを利用することができる。前者は、標準的には波長587.56nmでの屈折率が1.48〜1.78の範囲で0.01刻みの製品が入手可能である。後者はより広い屈折率範囲で公差±0.0002の製品が入手可能である。
なお、上述したような市販の屈折液を基準液として用いる場合、屈折液の屈折率は既知であるものの、高い精度での測定が要求される場合には、例えばプリズムセルを用いた最小偏角法などの手法によって基準液の屈折率を測定することが望ましい。
導波モード共鳴格子は、その素子構造や入射条件を適切に設定することにより、複数の共鳴放射モードを発現させることができる。これは、導波モード共鳴格子の導波路端面に光を照射する端面入射の場合、基板面又は被測定物面に光を照射する格子結合の場合のいずれの場合も可能である。これら共鳴放射モードの放射角度は試料の屈折率に依存するため、異なる共鳴放射モード間の放射角度の差分値も試料の屈折率に依存する。また、導波モード共鳴格子の素子配置のずれにより共鳴放射角が変動しても、異なる2つの共鳴放射角の差分値、つまり相対値は変動せず、精度の高い測定が可能である。
そこで、本発明の第1態様及び第2態様に係る屈折率測定装置では、屈折率が既知である複数の基準液について異なる2つの導波モードの共鳴放射角の差分値を求める。これにより、屈折率と異なる2つの導波モードの共鳴放射角の差分値との対応点が複数求まるから、周知の手法を用いて、校正曲線又は校正曲線を表す計算式を算出する。ここで周知の手法とは特に限定されないが、例えば直線近似、スプライン関数近似などの様々なカーブフィッティングの手法を用いることができる。
この校正曲線は導波モード共鳴格子の寸法のずれ、配置のずれ等が全て反映されたものである。従って、校正曲線を参照して、未知試料の測定により得られた異なる2つの導波モードの共鳴放射角の差分値から屈折率を求めることにより、導波モード共鳴格子の間隔や深さなどのサイズが設計通り、また理想通りに製造されたものでなくても、さらに、測定時に導波モード共鳴格子の配置がずれても、高い精度で未知試料の屈折率の絶対値を求めることができる。
また、屈折率と共鳴放射角との関係、換言すれば共鳴放射角の屈折率依存性(「分散の度合い」とも言う)は数値計算によっても解析することが可能であるが、この計算には導波モード共鳴格子の寸法のずれ等が反映されない。例えば共鳴格子が目論見通りの構造に近ければ、上記のような製造上のずれがあっても、共鳴放射角の屈折率依存性を示すカーブ(直線も含む)の形状、つまり相対的な関係には変化がないとみなせる場合がある。そこで、既知の屈折率を有する基準液を1つだけ測定することで屈折率と共鳴放射角との対応関係を確定し、これを利用して共鳴放射角の屈折率依存性を示すカーブの絶対値を決めるようにしてもよい。
即ち、上記課題を解決するために成された本発明の第3態様に係る導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置は、
a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の導波路端面に光を照射する光照射手段と、
c)該光照射手段による光照射について出射光スペクトルを測定し、該出射光スペクトルから異なる2つの導波モードの共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
d)前記導波モード共鳴格子の設計上の理論値に基づいて計算される屈折率と異なる2つの共鳴放射角の差分値との関係を示す分散曲線を、既知の屈折率を有する基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された異なる2つの共鳴放射角の差分値と屈折率との関係に基づいて修正することで校正曲線を取得する校正曲線取得手段と、
e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された異なる2つの共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
を備えることを特徴としている。
また、上記課題を解決するために成された本発明の第4態様に係る導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置は、
a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の基板面又は被測定物面に光を照射する光照射手段と、
c)該光照射手段による光照射に対する反射光を受け、照射光の入射角度を変化させたときの角度スペクトル又は照射光の波長を変化させたときの波長スペクトルを測定し、共鳴放射角及び非共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
d)前記導波モード共鳴格子の設計上の理論値に基づいて計算される屈折率と共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値との関係を示す分散曲線を、既知の屈折率を有する基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値と屈折率との関係に基づいて修正することで校正曲線を取得する校正曲線取得手段と、
e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
を備えることを特徴としている。
これら本発明の第3態様及び第4態様によっても、第1態様及び第2態様と同様に、未知試料の屈折率の絶対値を高い精度で算出することができる。なお、共鳴入射角度や共鳴波長の屈折率依存性の数値計算は、市販されているソフトウエアを利用して行うことが可能である。例を挙げると、厳密結合波解析に基づく計算ソフトウエアである米国グレーティング・ソルバー・デベロップメント(Grating Solver Development)社のGSOLVER(インターネット<URL : http://www.gsolve.com/>参照)、FDTD法に基づく解析・シミュレーションソフトウエアである日本アールソフトデザイングループ社のFullWAVE(インターネット<URL : http://www.rsoftdesign.co.jp/pdfs/fullwave_jpn.pdf>参照)、などを用いることができる。
導波モード共鳴格子の導波路端面や基板面又は被測定物面に光を照射することで得られる出射光には、共鳴放射の他、回折や全反射による出射光、つまり非共鳴放射が含まれる。これら共鳴放射及び非共鳴放射の測定はいずれも空気中で行われる。従って、導波モード共鳴格子の素子構造や入射条件を適切に設定すれば、回折角や全反射角等の非共鳴放射角は測定する媒体(空気)の屈折率にのみ依存するように、つまり試料の屈折率には依存しないようにすることができる。一方、導波モードの共鳴放射角は試料の屈折率に依存する。このため、共鳴放射角と非共鳴放射角の差分値も試料の屈折率に依存する。また、導波モード共鳴格子の素子配置のずれにより共鳴放射角が変動すると、同様に非共鳴放射角も変動するため、共鳴放射角と非共鳴放射角との差分値、つまり相対値は変動せず、精度の高い測定が可能である。
そこで、上記課題を解決するために成された本発明の第5態様に係る導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置は、
a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の導波路端面に光を照射する光照射手段と、
c)該光照射手段による光照射に対する出射光スペクトルを測定し、該出射光スペクトルから共鳴放射角及び非共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
d)異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として、前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値と屈折率との離散的な関係に基づいて、校正曲線を作成する校正曲線作成手段と、
e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
を備えることを特徴とする。
また、上記課題を解決するために成された本発明の第6態様に係る導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置は、
a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の基板面又は被測定物面に光を照射する光照射手段と、
c)該光照射手段による光照射に対する反射光を受け、照射光の入射角度を変化させたときの角度スペクトル又は照射光の波長を変化させたときの波長スペクトルを測定し、共鳴放射角及び非共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
d)異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値と屈折率との離散的な関係に基づいて、校正曲線を作成する校正曲線作成手段と、
e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
を備えることを特徴とする。
上記課題を解決するために成された本発明の第7態様に係る導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置は、
a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の導波路端面に光を照射する光照射手段と、
c)該光照射手段による光照射に対する出射光スペクトルを測定し、該出射光スペクトルから共鳴放射角及び非共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
d)前記導波モード共鳴格子の設計上の理論値に基づいて計算される屈折率と共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値との関係を示す分散曲線を、既知の屈折率を有する基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値と屈折率との関係に基づいて修正することで校正曲線を取得する校正曲線取得手段と、
e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
を備えることを特徴とする。
上記課題を解決するために成された本発明の第8態様に係る導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置は、
a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の基板面又は被測定物面に光を照射する光照射手段と、
c)該光照射手段による光照射に対する反射光を受け、照射光の入射角度を変化させたときの角度スペクトル又は照射光の波長を変化させたときの波長スペクトルを測定し、共鳴放射角及び非共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
d)前記導波モード共鳴格子の設計上の理論値に基づいて計算される屈折率と共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値との関係を示す分散曲線を、既知の屈折率を有する基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値と屈折率との関係に基づいて修正することで校正曲線を取得する校正曲線取得手段と、
e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
を備えることを特徴とする。
本発明の第1〜第8態様に係る屈折率測定装置では、前記スペクトル測定手段が光照射手段に対する出射光又は反射光を受光するCCDを備えて構成されており、異なる導波モードの共鳴放射角の差分値又は共鳴放射角と非共鳴放射角の差分値をCCD画像データとして取り込むようにすると良い。
また、第1〜第8態様に係る屈折率測定装置では、基準液の屈折率の温度依存性が大きい場合には、基準液及び未知試料の測定時に同時にそれぞれの温度を測定し、その温度の相違及び基準液の温度特性に基づいて、未知試料の屈折率を補正するようにしてもよい。
一方、上記課題を解決するために成された本発明の第9態様は、第1〜第8態様に係る屈折率測定装置を用いた屈折率測定方法であって、同一の導波モード共鳴格子を用いて基準液の測定と未知試料の測定とを時分割で行うことを特徴とする。
また、本発明の第10態様は、第1〜第8態様に係る屈折率測定装置を用いた屈折率測定方法であって、同一の導波モード共鳴格子の異なる部位を用いて、基準液の測定と未知試料の測定とを同時並行的に行うことを特徴とする。
第9態様の場合には、1ないし複数の基準液を導波モード共鳴格子に接触させた測定を行う毎に、該共鳴格子の接触面を洗浄し、次の基準液又は未知試料の測定を実行する。この場合、装置の構成は簡単になる。
一方、第10態様の場合、基準液の測定と未知試料の測定とをほぼ同じ時刻に同じ環境(主として温度)の下で行うことができる。したがって、例えば基準液の屈折率の温度依存性が大きくても、この影響を殆ど受けずに精度よく未知試料の屈折率を算出することができる。
本発明の第1〜第10態様に係る導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置及び屈折率測定方法によれば、導波モード共鳴格子の素子構造や素子配置に関係なく、誘電体の固相、液相、気相など、様々な相の試料の屈折率(複素屈折率の実部)の絶対値を高い精度で測定することが可能となる。
本発明に係る屈折率測定装置に利用される典型的な導波モード共鳴格子の構造を説明するための概略断面図。 図1(a)に示した導波モード共鳴格子を用いた測定系の一例を示す概略構成図。 図2の測定系で測定光の入射角を走査したときに得られる角度スペクトルの一例を示す図。 図1(a)に示した導波モード共鳴格子を用いた測定系の別の例を示す概略構成図。 図4の測定系において集光素子を用いた例を示す図。 本発明に係る屈折率測定方法の手順を示すフローチャート。 本発明に係る屈折率測定装置の一実施形態の概略構成図。 本発明に係る屈折率測定装置の他の実施形態の概略構成図。 回折角を基準点とする実施例1の原理を説明するための図。 波長が532nmのTM偏光を導波モード共鳴格子の導波路端面に入射させたときの、共鳴放射角及び-1次光回折角の試料屈折率依存性を示す図。 全反射角を基準点とする実施例2及び異なる導波モードの共鳴放射角を用いて屈折率を求める実施例3の原理を説明するための図。 波長が441.6nmのTM偏光を導波モード共鳴格子の導波路端面から入射させたときの共鳴放射角θgmrf及び全反射角の試料屈折率依存性を示す図。 波長が441.6nmのTM偏光を導波モード共鳴格子の導波路端面から入射させたときに励起されるTM偏光及びTE偏光の共鳴放射角θgmrfの試料屈折率依存性を示す図。 異なる次数の導波モードの共鳴放射角を用いて屈折率を求める実施例4の原理を説明するための図。 波長が632.8nmのTE偏光を導波モード共鳴格子の導波路端面から入射させたときに励起される1次及び2次の共鳴放射角θgmrfの試料屈折率依存性を示す図。 波長が632.8nmのTE偏光を導波モード共鳴格子の導波路端面から入射させたときに励起される次数及びモードが異なる共鳴放射角の試料屈折率依存性を示す図。 導波モード共鳴格子の両側の導波路端面から光を入射させることで双方向励起させて、試料屈折率を求める測定系の例を示す図。 導波モード共鳴格子1の基板面又は/及び被測定物面から光を入射させて双方向励起を行い、試料屈折率を求める測定系の例を示す図。 双方向励起を行うことで得られる2つの導波モードの共鳴放射角から基板法線の傾きを補正する方法を説明するための図。 双方向励起の共鳴放射角の加重平均でゼロ点補正を行う方法を説明するための図。 双方向励起の場合の2つの導波モードの共鳴放射角の試料屈折率依存性を示す図。 双方向励起により試料屈折率を求める測定系の例を示す図。 共鳴放射角及び回折角の試料屈折率依存性を示す図。 双方向励起により試料屈折率を求める測定系の例を示す図。 共鳴放射角と全反射角の試料屈折率依存性を示す図。 双方向励起により試料屈折率を求める測定系の例を示す図。 正方向及び負方向の共鳴放射角と全反射角の試料屈折率依存性を示す図。 CCDカメラを用いて共鳴放射角及び回折角の角度差を測定する例を説明するための図であって、共鳴放射角及び回折角の試料屈折率依存性を示す図。
まず、導波モード共鳴格子について説明する。一般的に、導波モード共鳴格子には幾つか形態がある。図1は、典型的な導波モード共鳴格子の構造を説明するための概略断面図である。これらは、比較的作製が容易なものである。
図1(a)に示す導波モード共鳴格子1Aでは、平板状の基板2の上に所定の厚さの導波層3が形成され、さらにその上に、断面矩形状で紙面に直交する方向に延伸する格子4aが周期的に配置された格子層4が形成されている。基板2の屈折率はns、導波層3と格子層4(格子4a)は同一材料であり、同じ屈折率n1である。また、導波モード共鳴格子が光学フィルタや光スイッチとして利用される場合には、通常、格子層4の上方の空間は空気層であるが、ここでは、これを試料を配置する媒体層5とする。この媒体層5の屈折率はn0である。基板2上に誘電体材料の薄膜を形成し、その後、エッチングで導波層3を残存させるように格子4aを形成することができる。
図1(b)に示す導波モード共鳴格子1Bは、その基本的な構造は図1(a)と同じであるが、導波層3と格子層4とは異なる誘電体材料からなり、前者は屈折率がn2、後者は屈折率がn1である。基板2上に異なる誘電体材料の薄膜を二層積層し、上の層だけをエッチングすることで格子4aを形成することができる。例えば格子層4をフォトレジスト材料とすることで、導波層3を浸食しないエッチング終了を容易に実現することができる。
図1(c)に示す導波モード共鳴格子1Cは、格子自体が導波層を兼ねるものであり、互いに屈折率の相違する第1格子6aと第2格子6bとが周期的に交互に配置された格子層6を基板2の上に形成している。
なお、上記導波モード共鳴格子1A、1B、1Cでは、上方側(つまり媒体層5)からでも下方側(つまり基板2)からでも相反的な光学特性を示すから、基板2と媒体層5とを入れ替えて上側を基板2、下側を媒体層5とすることもできる。
以下の説明では、導波層3と格子層4とが同一誘電体材料から成る導波モード共鳴格子1を考える。この導波モード共鳴格子1を用いた測定系の例を図2及び図4に示す。いずれの測定系においても被測定物である試料Sは格子層4を覆い、隣接する格子4aの間の空間にまで侵入するように設けられているものとする。この場合、試料Sは液体又は気体である。
図2の測定系では、光源10から放出された所定の波長範囲の成分を含む測定光11は、導波層3及び格子層4を挟んで試料Sとは反対側の基板2の一面(図中の下面)に所定の入射角で以て入射される。この導波モード共鳴格子1からの反射光12が検出器13により検出され、反射光の光量に応じた検出信号が取り出される。測定光11の入射角θは所定角度範囲で走査され、これと連動して、検出器13に入射する反射光12の出射角も入射角と同一になるように検出器13の位置も移動される。例えば、入射角をθ→θ+Δθに変化させるように光源10の位置を符号10’の位置に移動させたとき、検出器13の位置も符号13’の位置に移動される。いわゆるθ−2θ光学系を使用して鏡面反射の強度スペクトルを得ることになるが、そのためには周知のゴニオメータなどを利用して光源10と検出器13とを同期して移動させればよい。
導波モード共鳴格子1は原理的には限りなく狭帯域なフィルタリングの作用を有する。そのため、入射角を変化させながら反射率を測定した角度スペクトルには、図3に示すように特定の入射角においてピークが現れる。また、このピークの位置は試料Sの屈折率(複素屈折率の実部)に応じて左右にシフトする。したがって、原理的には、このピークトップが出現する入射角から、試料Sの屈折率を求めることができる。また、測定光11の入射角の代わりに測定光11の波長を走査して波長スペクトルを作成した場合でも、試料Sの屈折率に応じた波長にピークトップが現れる。したがって、このピークトップが出現する波長から、試料Sの屈折率を求めることもできる。
図4の測定系では、光源10から放出された所定の波長範囲の測定光11はシリンドリカルレンズ150で導波層3の端面サイズ、即ち導波モード(横モード)の広がり程度にまで絞られ、導波層3の端面から当該導波層3に直接入射し結合する。このとき、測定光11はシリンドリカルレンズ150によって導波層3の導波横モードに合致する強度分布にビーム整形されている。
導波層3の端面から導入された光は固有の伝播モードを保持しながら進行し、格子4aと結合した後、導波層3のうち格子層4とは反対側の面から出射する。この出射光16が検出器13により検出され、出射光16の光量に応じた検出信号が取り出される。このとき、試料の屈折率に応じて共鳴放射角θが変化するから、出射光の強度スペクトルを得ることにより、試料の屈折率に依存したスペクトル情報(角度スペクトル)が得られる。例えば試料Sの屈折率がn→n+Δnに変化すると、共鳴放射角がθ→Δθに変化する。試料の屈折率によって共鳴放射角が異なるため、予め屈折率が既知の複数の基準液を被測定物として共鳴放射角の屈折率依存性を把握しておくことで、試料Sの屈折率を求めることができる。
このように、導波路端面から光を入射させれば、入射角度の機械的走査が不要であり、また、光源10と検出器13とを同期して移動させる必要がない。
なお、光源が可視光光源の場合、導波横モードの幅は波長程度、つまりサブミクロンのオーダーとなる。半導体レーザを光源に用いる場合は、発振横モード自体が共振器の導波モードであるため、導波モード共鳴格子の導波横モードと多少の違いがあっても整合性が良い。しかし、固体レーザやガスレーザ、輝線ランプなど空間的に広がりのある光線を用いる場合には発振横モードの大きさがミリオーダー、センチオーダーであり、レンズ系を用いて集光するには、レンズの設計・製作に種々の収差を考慮した最適化を図る必要があり、手間がかかる。
従って、光源の種類に応じて、図5の(a)に示すように、シリンドリカルレンズ150と導波モード共鳴格子1との間に集光素子151を配置すると良く、これにより導波横モードに合致するように簡単に測定光11をビーム整形することができる。この結果、入射光の格子を通した結合効率を最大化でき、得られる出射光強度を最大化できる。集光素子151は、出口側の形状、サイズが導波モード共鳴格子1の導波横モードに近くなるように設計されている。
図5の(b)及び(c)に集光素子151の具体例を示す。図5(b)に示す集光素子は、2枚のミラー152を、光源側から導波路端面側に向かって徐々に間隔が狭くなるように向かい合って配置されたものである。ミラー152として、金属ミラー、誘電体ミラーを用いることができる。図5の(c)に示す集光素子151は、くさび形の誘電体から成る。これら集光素子151の入口側から入射した光は集光素子151の反射面(界面)で全反射による多重反射を起こしながら出口側に向かい、集光される。なお、集光素子151がくさび形の誘電体から成る場合は、集光素子と導波路端面との間に上述の接触液や反射防止膜を施すと良い。
上記の他、集光素子151としてファイバーバンドルや、浜松ホトニクス株式会社製のテーパ・ファイバ・オプティク・プレート(インターネット<URL : http://jp.hamamatsu.com/products/other/pd021/J5735/index_ja.html#Specifications>参照)等を利用することができる。
集光素子151を用いることで、測定光11を、集光素子の入口の幅/出口の幅の分だけ光の強度を増強することができる。例えば、集光素子11の入口部の幅を10mm、出口部の幅を10μmとすると、光の強度〈密度)は1000倍になる。従って、SN比を飛躍的に向上することができる。
また、上述した測定系では、光源10として単色光源、白色光源のいずれを用いることもできる。単色光源としては、波長可変レーザや、光源からの光を分光器で波長分散して所定波長域の光を出力光学系を通して出力するように構成された波長可変単色光源を用いることができる。また、白色光源を用いる場合は、フォトダイオードアレイ検出器やCCDアレイのような多波長同時検出型の検出器を用いると、格子層4と結合放射された所定波長範囲の光を一斉に検出できる。
ところで、上述のピーク波長やピーク入射角・ピーク出射角、共鳴放射角の屈折率依存性等は、導波モード共鳴格子1の溝の深さや間隔などの構造の変動によっても変化する。屈折率の要求精度にも依るが、導波モード共鳴格子の構造を設計通りに製造するのは困難であり、通常、その構造の誤差は屈折率の要求精度を満たせないほど大きい。これに対して、特許文献1に示すように、基準液の測定結果に基づき作成された校正曲線を用いると、導波モード共鳴格子の構造の誤差による影響をなくして、屈折率を精度良く測定することができる。しかし、特許文献1の方法では、測定時における導波モード共鳴格子1や光学系等の配置のずれに起因する測定精度の低下は避けられない。そこで、本発明では次のような特徴的な屈折率測定方法により、基準液と試料Sの両方を測定する場合でも高い精度で試料Sの屈折率を算出できるようにしている。図6はこの屈折率測定方法のフローチャートである。
まず、測定を実行するに先立って、互いに異なる屈折率を有する複数の、屈折率が制御された基準液を用意する(ステップS1)。基準液は例えば上述したような市販の屈折液を用いるとよい。次に、その複数の基準液の屈折率を、既存の屈折率測定法(例えばプリズムセルを用いた最少偏角法やアッベ屈折法など)で必要とされる精度で以て測定する(ステップS2)。上述のように屈折率が制御された屈折液を用い、且つその屈折液の屈折率精度(ばらつき)が最終的に得られる校正曲線の要求精度を満たすものであれば、ステップS2の実測定は省略できる。なお、基準液の屈折率が温度依存性を持つ場合には、その温度依存性も測定するとよい。
その後、複数の基準液を順に上記原理を利用した屈折率測定装置で測定し、共鳴放射角又は/及び非共鳴放射角を測定する(ステップS3)。つまり、図2中の試料Sに代えて基準液を導波モード共鳴格子1に接触させ、これに導波層の端面から測定光11を入射させ、検出器13で得た信号に基づいて出射光のスペクトル情報(角度スペクトル、波長スペクトル)を作成する。そして、その出射光のスペクトル情報から共鳴放射角や非共鳴放射角を求める。具体例として、異なる2つの導波モードの共鳴放射角を求める場合、共鳴放射角と非共鳴放射角であるm次回折光の回折角を求める場合、共鳴放射角と全反射角を求める場合が挙げられる。ここで、「非共鳴放射」とは、試料の屈折率に依存しない、導波モード共鳴格子1の素子構造によって決まる出射光を意味し、試料の屈折率に応じて変化する共鳴放射に対して、導波モード共鳴格子1固有の基準線となるものである。
次に、異なる2つの導波モードの共鳴放射角の差分値、共鳴放射角と非共鳴放射角との差分値(以下、単に「差分値」という)を算出する(ステップS4)。共鳴放射角や非共鳴放射角の測定終了後には導波モード共鳴格子1を有機溶媒などで洗浄して基準液を取り除く。そして、用意された全ての基準液の測定が終了していなければ(ステップS5でNO)、ステップS3に戻って未測定である他の基準液の共鳴放射角や非共鳴放射角を測定し、差分値を求める。なお、基準液の屈折率が温度依存性を持つ場合には、共鳴放射角や非共鳴放射角測定時の温度も同時に測定しておく。
各基準液について、それぞれ屈折率(ステップS2で得られた精密な測定値)と差分値のペアが求まるから、その値のペアを利用して、周知の各種のカーブフィッティング手法により、最も確からしい曲線又は直線を描き、これを校正曲線とする(ステップS6)。最低2つの屈折率と差分値との値のペアから直線近似により校正曲線を求めることができるが、一般的には屈折率と共鳴放射角と回折角との差分値との関係が直線的であるとみなせる範囲は狭く、特にこの範囲を逸脱すると誤差が大きくなる。したがって、好ましくは、スプライン関数などの高次曲線による最適フィッティングを行うほうがよい。こうして求めた校正曲線を例えばフラッシュROMなどの記憶部に保存しておく(ステップS7)。
次いで、導波モード共鳴格子1を有機溶媒などで洗浄して清浄化した後に、測定対象の試料Sを導波モード共鳴格子1に接触させ、上記基準液の測定時と同様にして共鳴放射角や非共鳴放射角の測定を行い、差分値を求める(ステップS8、S9)。そして、校正曲線を参照して、試料の差分値から屈折率を算出する(ステップS10)。基準液の屈折率が温度依存性を持つ場合には、この試料の共鳴放射角や非共鳴放射角の測定時にも温度を測定し、基準液の共鳴放射角、非共鳴放射角測定時の温度との差を求め、この温度差と基準液の屈折率の温度依存性の測定値とを用いて試料の屈折率を補正するとよい。そうして得られた屈折率値を出力する(ステップS11)。
なお、上記フローチャートにおいて作業の手順は必ずしもステップ番号の順である必要はない。例えば、基準液と試料との測定を済ませた後に、校正曲線を求める演算を実行し、その校正曲線を利用した試料の測定結果から屈折率を算定するようにしてもよい。
上述した測定方法では、屈折率が異なる複数の基準液を利用し、その測定結果をカーブフィッティングなどの演算処理に供することで校正曲線を求めるようにしている。これとは別の方法として、差分値の屈折率依存性を数値計算により求めることで校正曲線の形状を決定し、屈折率が既知である1つの基準液の測定結果を用いて校正曲線の絶対位置を決めることで、最終的な校正曲線を得るようにしてもよい。差分値の屈折率依存性を解析するために、上述したような各種の市販のソフトウエアを利用して行うことが可能である。
上記測定方法を実施するための屈折率測定装置の概略構成例を図7、図8に示す。図7は基準液の測定と試料の測定とを時分割で、つまり順番に実行する場合の構成であり、図8は基準液の測定と試料の測定とを同時並行的に実行可能な構成である。
図7において、モータを含む駆動部14は、制御部15による制御の下に、検出器13を移動させるものである。これにより、導波モード共鳴格子1からの出射光が出射角度毎に検出される。検出器13の検出信号を受けて処理するデータ処理部20は、出射光スペクトル算出部21、差分値算出部22、校正曲線作成部23、校正曲線記憶部24、及び屈折率算出部25を含む。出射光スペクトル算出部21は駆動部14により検出器13が移動されるに従い順次入力される検出信号に基づいて、横軸が出射角、縦軸が反射率又は回折効率などである角度スペクトル等の出射光スペクトルを作成する。差分値算出部22は出射光スペクトルに対して所定の処理を実行し、共鳴放射角や回折角、全反射角を求め、異なる導波モードの共鳴放射角の差分値、共鳴放射角と回折角の差分値、共鳴放射角と全反射角の差分値等を算出する。校正曲線作成部23は外部から設定される基準液の屈折率と測定により得られた差分値に基づいて、又は差分値の屈折率依存性の数値計算をも利用して、校正曲線を作成する。校正曲線記憶部24は作成された校正曲線を記憶する。屈折率算出部25は校正曲線記憶部24に記憶されている校正曲線を参照して、試料の測定結果から屈折率を算出する。
図7に示した屈折率測定装置において、導波モード共鳴格子1への試料Sの供給や測定後の洗浄などを自動的に行う手段を設けることもできる。それによって、ユーザは 試料と1ないし複数の基準液を用意し、且つ、基準液の測定により得た屈折率値を入力するだけで、自動測定を行って試料の屈折率を出力部26から得ることができる。
図8の構成では、1つの導波モード共鳴格子1の隔壁100で隔てられた異なる部位に、基準液Srと試料Ssとがそれぞれ収容される。この導波モード共鳴格子1は移動部17により移動可能であり、測定光11の照射位置が基準液Srの収容部位と試料Ssの収容部位とに切り替えできるように構成されている。基準液が複数である場合には、基準液毎に収容部位を設けるようにするとよい。この構成では、導波モード共鳴格子1を洗浄することなしに、1ないし複数の基準液と試料とを連続的に測定することができる。したがって、同時測定であるとみなすことができ、特に洗浄作業が間に挟まれないことにより、測定時の温度条件が同一であるとみなせるという利点がある。
なお、導波モード共鳴格子1を移動させる代わりに光源10、検出器13、駆動部14などを移動させてもよい。また、図7及び図8では、導波モード共鳴格子1の導波路端面から測定光を入射させたが、基板面又は被測定物面から測定光を入射させるようにしても良い。
次に、上記の屈折率測定方法で屈折率が精度良く求まることを、図1(a)に示した構造の導波モード共鳴格子を例に説明する。この導波モード共鳴格子の構造を決めるパラメータを図9に示す。即ち、格子4aの周期Λは416.7nm、デューティー比は0.5、溝深さ(格子層4の厚さ)は10nm、導波層3の膜厚は90nmである。導波層3及び格子層4の屈折率nwgは共に1.662であり、基板2の屈折率nsbは1.52である。試料は格子層4と導波層3に接触させる。ここで、試料の屈折率をnsmplとすると、導波モードが形成されるための条件は
nsmpl<nwg=1.662 (1)
となる。
このような構造の導波モード共鳴格子1では、試料側及び基板側でそれぞれ次の回折条件が成立する。
Figure 2012058218

ここで、θ0(smpl)、θm(smpl)は、それぞれ試料側の入射角(即ち、試料側から導波層への入射角)とm次の回折角、θ0(sb)、θm(sb)は、それぞれ基板側の入射角(即ち基板側から導波層への入射角)とm次の回折角、λは光の波長である。
格子4aを形成する界面は試料Sと導波層3の界面であるが、導波層3内の光は安定して閉じこめられて伝播し、徐々に結合によって放射される成分しか存在せず、回折には寄与しない。基板側で回折に寄与する入射成分は基板側から導波層に屈折する成分なので、基板側の実効的な入射媒体は基板そのものとすることができる。そこで、上記式(3)が成立する。
このように、試料側及び基板側に入射した光がスネルの法則に従い空気側に伝播するとき、その回折角はそれぞれ次の式(4)及び(5)となる
Figure 2012058218

となる。
ここで、θm(smpl→air)、θm(sb→air)は、それぞれ試料から空気側へのm次の回折角、基板から空気側へのm次の回折角である。
このような導波モード共鳴格子1の紙面左側の導波路端面に光を入射させる場合を考える。導波路端面に入射する光は、紙面右方に向かう成分(つまりθ0 (smpl)0 (sb)=90°)だけでなく、回折によって若干の角度広がりを持つ。また、この入射条件では、導波モード共鳴格子1の外部に出現する回折光は0次光と-1次光のみである。0次光は素子端面からの入射光と方角が重なるため、基準線としては不適格であり、-1次光の回折光が基準線となる。-1次光の回折条件式は下記のように表される。
Figure 2012058218
式(6)及び(7)で不等号が用いられるのは、入射角度に幅があることによる。式(6)及び(7)より以下の式(8)及び(9)が成立する。
Figure 2012058218
試料側からも基板側からも、それぞれの入射成分に対して反射成分と透過成分が存在する。具体的には、基板側には「基板側から入射した反射成分」と「試料側から入射した透過成分」が存在し、試料側には「試料側から入射した反射成分」と「基板側から入射した透過成分」が存在する。これらは重畳して回折パターンを形成する。このとき、nsb>nsmplという条件下では、
Figure 2012058218

が成立する。式(10)は、Max{θ-1 (sb→air)}以下の領域には連続的に-1次光が分布し、その上限であるMax{θ-1 (sb→air)}は試料屈折率に依存しないことを意味する。
図9に示すように、導波層3の端面から波長λが532nmのTM偏光を入射させた場合、
Max{θ-1 (sb→air)}=14.08° (11)
となる。
この角度は出射光の明暗の境界であり、導波モード共鳴格子1の素子構造によって決まる固有の値である。従って、上記角度で出射する回折光を基準線とすることができる。
図10は、波長λが532nmであるTM偏光を導波路端面に入射させたときの、共鳴放射角θgmrf及び-1次光回折角θ-1の試料屈折率依存性を示す図である。図10は、格子層4の有効屈折率を2次の有効屈折率近似で求め、さらにスラブ導波路の分散方程式を解くことで求めたものである。即ち、図10は導波モード共鳴格子1が設計通りの寸法で理想的に作製された場合の、屈折率と共鳴放射角の関係を示す分散曲線であり、実際には製造上生じる寸法誤差が避けられないため、通常は光学特性のずれが生じ、図10に示す角度からずれた角度で共鳴放射が生じる。また、導波モード共鳴格子1に載せた試料を取り除くとき等に生じる配置のずれに起因する共鳴放射角のずれも生じる。
一方、-1次光回折角は、上述したように、試料屈折率に依存しない、素子固有の値であり、共鳴放射角と-1次光の回折角との差分値、つまり相対的は、導波モード共鳴格子1の素子配置がずれても変動しない。
従って、異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として共鳴放射角と-1次光回折角を測定し、これら共鳴放射角及び回折光角度の差分値と屈折率との関係に基づき理論上の分散曲線のフィッティングを行う、あるいは、基準液のサンプリング点のみで構成される多項式近似やスプライン曲線を素子固有の分散特性とする。
そして、定量化された素子固有の分散特性をもって、試料の共鳴放射角と回折角との差分値を読み取ることで、真の屈折率を求めることができる。
高屈折率媒体から低屈折率媒体に光が入射すると、ある角度で全反射が生じる。逆に、低屈折率媒体から界面すれすれに光を入射させると、可逆的現象として屈折角の上限が生じる。この角度が臨界角、即ち全反射角である。
図11に示す導波モード共鳴格子1に、端面から光を入射させる場合を考える。この導波モード共鳴格子1の構造を決めるパラメータは図11に示すとおりである。即ち、格子4aの周期Λは416.7nm、デューティー比は0.5、溝深さ(格子層4の厚さ)は20nm、導波層3の膜厚は230nmである。導波層3及び格子層4の屈折率nwgは共に2.164であり、基板2の屈折率nsbは1.50である。試料は格子層4と導波層3に接触させる。
図11に示すように、基板2が高屈折率値nh=1.80の素材200に接している場合には、端面から基板2内部に入射した光は、全反射の可逆現象として高屈折率素材200側に屈折する。その臨界角(全反射角)θtrはスネルの法則から次式で与えられる。
Figure 2012058218

図11に示す例では、基板2の屈折率nsbが1.50であるため全反射角θtr=56.44°となる。図12は、入射光が波長=441.6nmのTM偏光であるときの、共鳴放射角θgmrf及び全反射角θtrの試料屈折率依存性を示す図である。図12は、格子層4の有効屈折率を2次の有効屈折率近似で求め、さらにスラブ導波路の分散方程式を解くことで求めたものである。角度がθtrよりも小さいところは明領域となるが、これから離れたところでは暗領域となるため、共鳴放射による明線が観察される。従って、共鳴放射角と全反射角の差分値を特定できる。従って、全反射角を基準点とし、該全反射角と共鳴放射角との差分値を読み取ることで、導波モード共鳴格子の素子配置のずれの影響を受けることなく、真の屈折率を精度良く求めることができる。
なお、実施例2では、光の入射条件は端面入射に限られる。
多くの場合、導波モード共鳴格子では、複数の次数、異なるモードの偏光が励起される。次数やモードが異なると、分散特性、即ち、共鳴放射角の試料屈折率依存性が異なる。従って、次数や導波モード(TE偏光、TM偏光)が異なる共鳴放射角の差分値を利用することで、導波モード共鳴格子の構造上の誤差や素子配置のずれ等の影響を受けることなく屈折率を精度良く求めることができる。
まず、図11に示す素子構造の導波モード共鳴格子1に、素子端面から光を入射させる場合を考える。この導波モード共鳴格子1の素子端面に波長が441.6nmの光を入射させると、実際は多くのモードが励起され、そのうち2次のTE導波モード及びTM導波モードの共鳴放射角の試料屈折率依存性は、図13に示すとおりである。図13において、「TM21」はTM偏光の共鳴放射角と、「TE21」はTE偏光の共鳴放射角を示す。なお、図13も、格子層4の有効屈折率を2次の有効屈折率近似で求め、さらにスラブ導波路の分散方程式を解くことで求めたものである。
図13に示すように、異なる導波モードの共鳴放射角はそれぞれ異なる分散特性を有するため、それらの差分値も分散特性、つまり試料屈折率依存性を有する。従って、それらの共鳴放射角の差分値を用いることで、屈折率を精度良く求めることができる。
なお、実施例3の光の入射条件は端面入射、格子結合のいずれでも良い。
実施例4は、異なる次数のTE偏光の共鳴放射角の差分値を利用する例である。ここでは、図14に示すパラメータの素子構造を有する導波モード共鳴格子1を例に挙げて説明する。即ち、格子4aの周期Λは416.7nm、デューティー比は0.5、溝深さ(格子層4の厚さ)は10nm、導波層3の膜厚は75nmである。導波層3及び格子層4の屈折率nwgは共に1.653であり、基板2の屈折率nsbは1.52である。図14では、導波路端面から光を入射させているが、光の入射条件は端面入射、格子結合のいずれでも良い。
図15は、上記導波モード共鳴格子1の導波路端面に波長が632.8nmのTE偏光を入射させたときの、1次及び2次のTE偏光の共鳴放射角(図15において「1st」、「2nd」と示す。)の試料依存性を示す。なお、図15は、格子層4の有効屈折率を2次の有効屈折率近似で求め、さらにスラブ導波路の分散方程式を解くことで求めたものであり、基板中の放射角度を示す。
図15に示すように、異なる次数のTE偏光の共鳴放射角はそれぞれ異なる分散特性を有するため、それらの差分値も試料屈折率に依存する。
実施例5は、次数及びモードが異なる共鳴放射角の差分値を利用する例である。この実施例5で用いる導波モード共鳴格子の素子構造は実施例4と同じとする(図14参照)。図16は、上記導波モード共鳴格子1の導波路端面に波長が632.8nmのTE偏光を入射させたときの、2次のTE偏光と1次のTM偏光の共鳴放射角(図16において「TE21」、「TM11」と示す。)の試料依存性を示す。なお、図16は、格子層4の有効屈折率を2次の有効屈折率近似で求め、さらにスラブ導波路の分散方程式を解くことで求めたものであり、基板中の放射角度を示す。
図16に示すように、異なる次数及びモードの共鳴放射角はそれぞれ異なる分散特性を有するため、それらの差分値も試料屈折率に依存する。
ところで、実施例1〜5では、導波路内に一方向の進行モードが励起されるように導波モード共鳴格子に光を入射させ、そのときの共鳴放射角や回折角、全反射角から試料屈折率を求めた。これに対して、導波路内に前進及び後進モードが励起されるように導波モード共鳴格子に光を入射させ、そのときの本発明の共鳴放射角や回折角、全反射角から試料屈折率を求めることも可能である。ここでは、一方向の進行モードだけが励起される場合を「一方向励起」、前進及び後進モードが励起される場合を「双方向励起」と呼ぶ。以下、双方向励起が行われるように導波モード共鳴格子に光を入射させて、屈折率を求める原理について説明する。
図17は、導波モード共鳴格子1の両側の導波路端面から光を入射させることで双方向励起させて、試料屈折率を求める測定系の例を示す図である。
図17(a)では、光源10から放出された測定光11はビームスプリッタ101にて分岐され、一方の分岐光は図示左側の導波路端面に入射される。他方の分岐光は、ミラー102〜104によって反射されることで、図示右側の導波路端面に導かれ、該導波路端面から入射される。図17(b)では、導波モード共鳴格子1の左右両側に2個の光源10a及び10bが配置され、これら光源10a及び10bから放出された測定光11a及び11bが図示両側の導波路端面から入射される。図17(c)では、導波モード共鳴格子1の左側に光源10が配置され、該導波モード共鳴格子1の右側の導波路端面に金属ミラーや多層膜ミラー等のミラー105が形成されている。前記光源10から放出され左側の導波路端面から入射した測定光の一部は導波層を右方に向かって進行する。そして、右側の端面に設けられたミラー105によって反射され、導波層内を左方に向かって進行する。
図18は、導波モード共鳴格子1の基板面又は/及び被測定物面から光を入射させて双方向励起を行い、試料屈折率を求める測定系の例を示す図である。
図18(a)では、光源10から放出された測定光11はビームスプリッタ101にて分岐され、一方の分岐光は導波モード共鳴格子1の基板面のうち図示左端部から基板内に入射される。他方の分岐光は、ミラー102によって反射され、導波モード共鳴格子1の基板面のうち図示右端部から基板内に入射される。図18(b)では、導波モード共鳴格子1の基板面の左端部及び被測定物面の右端部付近にそれぞれ光源10a及び10bが配置され、これら光源10a及び10bから放出された測定光11a及び11bは基板面及び被測定物面から導波モード共鳴格子内に入射する。
図17の(a)〜(c)のいずれにおいても、導波路端面から入射した光は前進及び後進モードが励起され(双方向励起)、これら導波モードが格子を通じて結合することによって共鳴放射が生じる。また、通常の回折、或いは全反射が生じる。
一方、図18の(a)及び(b)のいずれにおいても、基板面・被測定物面から入射した光は、格子を通じて結合することで前進モード及び後進モードが励起され、さらに、これら2つの導波モードが回折格子と再結合することによって共鳴放射が生じる。また、同時に、通常の回折、全反射が生じる。
このとき、2つの導波モードについて生じる共鳴放射、回折、全反射は左右対称であるため、例えば同一波長、同一モードの共鳴放射角を測定することで、ゼロ点補正が可能となる。
即ち、導波モード共鳴格子の素子構造や素子配置、角度測定系の配置等に全く誤差がない場合は、一方の導波モード、即ち左方からの共鳴放射角θ+と他方の導波モード、即ち右方からの共鳴放射角θ-との間に、
θ+=−θ-
の関係が成立する。しかし、導波モード共鳴格子の素子構造や素子配置、角度測定系の配置等に誤差がある場合はこの関係が成立しない。従って、左方及び右方からの共鳴放射角の加重平均
Δθ=(θ++θ-)/2
を加算することで、基板2に対する法線の傾きを0°に校正する(つまり、法線をLからL’に変更する)ことができる(図19参照)。なお、このような校正は、回折角、全反射角についても同様に可能である。
また、図20に示すように、双方向励起の共鳴放射角の加重平均(Δθ)をゼロ点として、共鳴放射角や全反射角、回折角をゼロ点補正するようにしても良い。なお、共鳴放射の励起光源が強度の弱い輝線であり、ビーム分割できない場合には、共鳴放射とは別の波長のレーザ光でゼロ点補正を行っても良い。
また、共鳴放射角は負の値となる場合があるが、全反射角は必ず正の値になる。そのため、一方向励起の場合、入射条件等によっては共鳴角度と全反射角との間隔が大きくなり、検出器の角度走査のダイナミックレンジを大きくする必要がある。これに対して、双方向励起の場合は正及び負の全反射角を測定することができるため、共鳴放射角が負の値のときは負の全反射角を基準点とし、共鳴放射角が正の値のときは正の全反射角を基準点とすることで、ダイナミックレンジを小さくすることができる。ダイナミックレンジを小さくすることで、機械系の誤差を小さくすることができ、測定精度の向上を図ることができる。
なお、回折角も双方向励起の場合は正及び負の値になる。そのため、全反射角と同様、共鳴放射角が正及び負のいずれであるかに応じて適宜の基準点を選択することができる。
共鳴放射角の分散(試料屈折率依存性)には正及び負の分散が存在する。正分散とは、試料屈折率の増加に伴い共鳴放射角も増加する関係をいい、負分散とは逆の関係をいう。
一方向励起の場合、共鳴放射角と、その共鳴放射角に対する基準点となる別の共鳴放射角の両方が正の分散であると、或いは両方が負の分散であると、相殺によりその差分値の分散の度合いが弱められてしまう。
これに対して、図21に示すように、双方向励起の場合は前進モード及び後進モードの共鳴放射がそれぞれ逆の分散を持つ。従って、両者の差分値の分散は2倍に増強されることになり、屈折率分解能を向上することができる。
双方向励起により試料屈折率を求める測定系の具体例を図22〜図27に示す。
図22及び図23は、双方向励起の回折角を基準点として試料屈折率を測定する例であり、図9及び図10に示す一方向励起の実施例1に対応するものである。従って、この例でも、光の入射条件は端面入射に限られる。この導波モード共鳴格子1は、格子4aの周期Λが416.7nm、デューティー比が0.5、溝深さ(格子層4の厚さ)が20nm、導波層3の膜厚が230nmとする。導波層3及び格子層4の屈折率nwgは共に2.164であり、基板2の屈折率nsbは1.50である。試料は格子層4と導波層3に接触させる。試料の屈折率をnsmplとすると、導波モードが形成されるための条件は
nsmpl<nwg=2.164
となる。
実施例1で説明したように、基板の屈折率nsb>試料の屈折率nsmplという条件下で、上記構造の導波モード共鳴格子1に両側の導波路端面から光を入射させると、
Figure 2012058218

が成立する。式(10)は、Max{θ-1 (sb→air)}以下の領域には連続的に-1次光が分布し、その上限であるMax{θ-1 (sb→air)}は試料屈折率に依存しないことを意味する。
図22に示すように、導波層3の一方の端面から波長λが441.6nmのTM偏光を入射させた場合、
Max{θ-1 (sb→air)}=26.12° (11’)
となる。この角度は出射光の明暗の境界となるため、これを基準線とすることができる。
ただし、式(11’)は正方向に伝搬する光に対する回折角であり、負方向に伝搬する光に対する回折角は、
Min{θ-1 (sb→air)}=-26.12° (11”)
が成立する。負方向の場合は角度が-26.12°以下の領域には回折光が存在せず、暗領域となる。負方向の場合も、上記角度(-26.12°)を基準線とすることができる。
このとき、正方向の複数の伝播モードの中に、式(11”)の値(-26.12)付近の共鳴放射角を有する成分がある。その共鳴放射角の試料屈折率依存性を図23に示す。そうすると、図23に示す共鳴放射角と回折角(=-26.12°)との差分値を測定することで、試料屈折率を求めることができる。また、共鳴放射角が負の値のときは負の回折角を基準点とすることで、ダイナミックレンジを小さくすることができる。
図24及び図26は、双方向励起の全反射角を基準点として試料屈折率を測定する例であり、図11及び図12に示す一方向励起の実施例2に対応するものである。図24に示す導波モード共鳴格子1の構造を決めるパラメータは、図11の導波モード共鳴格子1と同じである。
図24に示すように、基板2が高屈折率値nh=1.80の素材200に接している場合には、端面から基板2内部に入射した光は、全反射の可逆現象として高屈折率素材200側に屈折する。その臨界角(全反射角)θtrはスネルの法則から次式で与えられる。
Figure 2012058218

図24に示す例では、基板2の屈折率nsbが1.50であるため全反射角θtr=56.44°となる。これは正方向の伝播モードの全反射角であり、負方向の伝播モードの全反射角は-56.44°となる。
このとき、入射波長が441.6nmのTM偏光であるときの、正方向の複数の伝播モードの中に、負方向の伝播モードの全反射角(-56.44°)近くの放射角を有する成分がある。この放射角の屈折率依存性を図26に示す。図26は、格子層の有効屈折率を2次の有効屈折率近似で求め、さらに、スラブ導波路の分散方程式を数値的に解くことで求めたものである。従って、図26に示す共鳴放射角と全反射角(=-56.44°)との差分値を測定することで、試料屈折率を求めることができる。また、共鳴放射角が負の値のときは負の全反射角を基準点とすることで、ダイナミックレンジを小さくすることができる
図26及び図27は、双方向励起することで正及び負方向の共鳴放射を生じさせ、共鳴放射角の分散を増大することで屈折率分解能を向上させる例を示すものである。
即ち、双方向励起すると、同一モードで正方向及び負方向の共鳴放射が生じる。これら共鳴放射角の分散は一方が正であれば他方は負となるため、これらの差分値の分散は、式(13)に示すように、一方向励起の場合の2倍になり、屈折率分解能が向上する。
Figure 2012058218
図27は、図26に示す構造の導波モード共鳴格子1に波長が441.6nmのTM偏光を入射させた場合の、2次のTM導波モードの共鳴放射角の試料屈折率依存性を示す。図27において、θ及びθ-は、それぞれ正方向及び負方向励起による共鳴放射角を表す。両者は符号が異なるだけなので、その差分値の分散は単純に2倍になる。
尚、上記した実施例では、導波モード共鳴格子1からの出射光や反射光を検出する検出器13を駆動部14で移動させて該出射光や反射光の受光角を検出するようにしたが、導波モード共鳴格子1からの出射光や反射光を受光するCCDアレイを設けても良い。この場合、CCDの1画素あたりの角度幅が分かればその差分に相当する角度差を測定できるため、CCD画像データから、異なる導波モードの共鳴放射角の差分値や共鳴放射角と非共鳴放射角の差分値を求めることができる。
例えば、図22及び図23に示す例において、Min{θ-1 (sb→air)}(=-26.12°)と導波モード共鳴の放射を記録するCCDカメラを設けた場合を考える。この場合、Min{θ-1 (sb→air)}と導波モード共鳴の放射を同時にCCD画像として記録し、その差分、つまり、共鳴ピークと回折カットオフとの間隔に相当する画素数から試料屈折率が求められる。
ただし、励起光の波長によっては、試料屈折率が小さくなると参照光による回折角と共鳴放射角との差が大きくなり、Min{θ-1 (sb→air)}と導波モード共鳴の放射を同時にCCD画像として記録することができない場合がある。この場合は、励起波長を変更すると良い。例えば、TM偏光の波長を435nmにしたときの負方向に伝搬する光の回折角(-27.13°)を図28中、一点鎖線L1で示す。このように、試料屈折率が1.48以下の領域では回折角がシフトした分だけ共鳴放射角との差分を小さくすることができる。
1、1A、1B、1C…導波モード共鳴格子
2…基板
3…導波層
4、6…格子層
6a…第1格子
6b…第2格子
4a…格子
5…媒体層
Sr…基準液
S、Ss…試料
100…隔壁
10…光源
11…測定光
12…反射光
13…検出器
14…駆動部
15…制御部
17…移動部
20…データ処理部
21…出射光スペクトル算出部
22…差分値算出部
23…校正曲線作成部
24…校正曲線記憶部
25…屈折率算出部
26…出力部
101…ビームスプリッタ
102,105…ミラー
150…シリンドリカルレンズ
151…集光素子
152…ミラー

Claims (18)

  1. a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
    b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の導波路端面に光を照射する光照射手段と、
    c)該光照射手段による光照射について出射光スペクトルを測定し、該出射光スペクトルから異なる2つの導波モードの共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
    d)異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として、前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された異なる2つの共鳴放射角の差分値と屈折率との離散的な関係に基づいて、校正曲線を作成する校正曲線作成手段と、
    e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された異なる2つの共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
    を備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  2. a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
    b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の導波路端面に光を照射する光照射手段と、
    c)該光照射手段による光照射に対する出射光スペクトルを測定し、該出射光スペクトルから異なる2つの導波モードの共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
    d)前記導波モード共鳴格子の設計上の理論値に基づいて計算される屈折率と異なる2つの共鳴放射角の差分値との関係を示す分散曲線を、既知の屈折率を有する基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された異なる2つの共鳴放射角の差分値と屈折率との関係に基づいて修正することで校正曲線を取得する校正曲線取得手段と、
    e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された異なる2つの共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
    を備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  3. a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
    b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の導波路端面に光を照射する光照射手段と、
    c)該光照射手段による光照射について出射光スペクトルを測定し、該出射光スペクトルから共鳴放射角及び非共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
    d)異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として、前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値と屈折率との離散的な関係に基づいて、校正曲線を作成する校正曲線作成手段と、
    e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
    を備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  4. a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
    b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の導波路端面に光を照射する光照射手段と、
    c)該光照射手段による光照射に対する出射光スペクトルを測定し、該出射光スペクトルから共鳴放射角及び非共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
    d)前記導波モード共鳴格子の設計上の理論値に基づいて計算される屈折率と共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値との関係を示す分散曲線を、既知の屈折率を有する基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値と屈折率との関係に基づいて修正することで校正曲線を取得する校正曲線取得手段と、
    e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
    を備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の屈折率測定装置であって、
    前記導波モード共鳴格子が、対向する一対の導波路端面を有し、
    前記光照射手段が、一方の導波路端面から光を入射させる第1光源と他方の導波路端面から光を入射させる第2光源とを備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の屈折率測定装置であって、
    前記導波モード共鳴格子が、対向する一対の導波路端面を有し、
    前記光照射手段が、1個の光源と、該光源からの光を一対の導波路端面の一方に導く第1光路及び他方に導く第2光路に分岐するビームスプリッタとを備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の屈折率測定装置であって、
    前記導波モード共鳴格子が、対向する一対の導波路端面を有し、
    前記光照射手段が、一方の導波路端面から光を入射させる光源と、他方の導波路端面に設けられ、一方の導波路端面から入射して他方の導波路端面に到達した光を反射させる反射部材とから構成されていることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の屈折率測定装置であって、
    前記光照射手段からの光を集光して導波路端面から導く集光素子を備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  9. a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
    b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の基板面又は被測定物面に光を照射する光照射手段と、
    c)該光照射手段による光照射に対する反射光を受け、照射光の入射角度を変化させたときの角度スペクトル又は照射光の波長を変化させたときの波長スペクトルを測定し、異なる2つの導波モードの共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
    d)異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された異なる2つの共鳴放射角の差分値と屈折率との離散的な関係に基づいて、校正曲線を作成する校正曲線作成手段と、
    e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された異なる2つの共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
    を備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  10. a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
    b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の基板面又は被測定物面に光を照射する光照射手段と、
    c)該光照射手段による光照射に対する反射光を受け、照射光の入射角度を変化させたときの角度スペクトル又は照射光の波長を変化させたときの波長スペクトルを測定し、異なる2つの導波モードの共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
    d)前記導波モード共鳴格子の設計上の理論値に基づいて計算される屈折率と異なる2つの共鳴放射角の差分値との関係を示す分散曲線を、既知の屈折率を有する基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された異なる2つの共鳴放射角の差分値と屈折率との関係に基づいて修正することで校正曲線を取得する校正曲線取得手段と、
    e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された異なる2つの共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
    を備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  11. a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
    b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の基板面又は被測定物面に光を照射する光照射手段と、
    c)該光照射手段による光照射に対する反射光を受け、照射光の入射角度を変化させたときの角度スペクトル又は照射光の波長を変化させたときの波長スペクトルを測定し、共鳴放射角及び非共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
    d)異なる既知の屈折率を有する複数の基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段によりそれぞれ測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値と屈折率との離散的な関係に基づいて、校正曲線を作成する校正曲線作成手段と、
    e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
    を備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  12. a)格子層と導波層との複層構造体又は両者の機能を併せ持つ単層構造体が基板上に形成された導波モード共鳴格子と、
    b)該導波モード共鳴格子の複層構造体又は単層構造体を挟んで基板と反対側の面に被測定物が接触した状態で、該導波モード共鳴格子の基板面又は被測定物面に光を照射する光照射手段と、
    c)該光照射手段による光照射に対する反射光を受け、照射光の入射角度を変化させたときの角度スペクトル又は照射光の波長を変化させたときの波長スペクトルを測定し、共鳴放射角及び非共鳴放射角を求めるスペクトル測定手段と、
    d)前記導波モード共鳴格子の設計上の理論値に基づいて計算される屈折率と共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値との関係を示す分散曲線を、既知の屈折率を有する基準液を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角の差分値と屈折率との関係に基づいて修正することで校正曲線を取得する校正曲線取得手段と、
    e)未知試料を被測定物として前記スペクトル測定手段により測定された共鳴放射角及び非共鳴放射角から、前記校正曲線を参照して、未知試料の屈折率を求める演算処理手段と、
    を備えることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の屈折率測定装置であって、
    前記スペクトル測定手段が、前記光照射手段に対する出射光又は反射光を受光するCCDを備えて構成され、異なる導波モードの共鳴放射角の差分値又は共鳴放射角と非共鳴放射角の差分値をCCD画像データとして取り込むことを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  14. 請求項3、4、11、12のいずれかに記載の屈折率測定装置であって、前記非共鳴放射角が高次光回折角であることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  15. 請求項3、4、11、12のいずれかに記載の屈折率測定装置であって、前記非共鳴放射角が全反射角であることを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  16. 請求項1〜15のいずれかに記載の屈折率測定装置であって、基準液及び未知試料の測定時に同時にそれぞれの温度を測定する温度検出手段をさらに備え、その温度の相違及び基準液の温度特性とに基づいて、未知試料の屈折率を補正することを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定装置。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の屈折率測定装置を用いた屈折率測定方法であって、
    同一の導波モード共鳴格子を用いて基準液の測定と未知試料の測定とを時分割で行うことを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定方法。
  18. 請求項1〜16のいずれかに記載の屈折率測定装置を用いた屈折率測定方法であって、同一の導波モード共鳴格子の異なる部位を用いて、基準液の測定と未知試料の測定とを同時並行的に行うことを特徴とする、導波モード共鳴格子を用いた屈折率測定方法。
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