JP2012046730A - ファンクラッチ用流体組成物 - Google Patents

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健司 林
Kenji Yamada
賢司 山田
Kenichi Sekine
顕一 関根
Teiji Masuda
定司 増田
Yukio Okano
幸夫 岡野
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Abstract

【課題】 高温下において熱酸化安定性及びせん断安定性に優れ、長期間に亘り粘度変化の少ないファンクラッチ用流体組成物を提供する。
【解決手段】
25℃の動粘度が1,000〜50,000mm/sのジメチルシリコーンオイルからなる基油に、カルシウムスルホネートを組成物全量に対して0.01〜5質量%含有させた組成物であって、かつ該組成物の塩基価が0.5〜20mgKOH/gであることを特徴とするファンクラッチ用流体組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高温下において熱酸化安定性及びせん断安定性に優れ、長期間に亘り粘度変化の少ないファンクラッチ用流体組成物に関する。
ファンクラッチは、ラジエーターを通過する空気の温度に感応して、ファンの回転を制御することにより風量を変化させてエンジン冷却系のヒートバランスを最適な状態に保つ機能を持っている。ファンクラッチのファンは、エンジンからの回転がベルトを介してファンクラッチに入力されることで回転するが、その際ファンクラッチに内封されているシリコーン油を介してファンが回転する機構になっている。ここで、使用されるシリコーン油は入力回転数とファンの出力回転数の差を調節する働きをする。
そのため、長期間安定的にトルク伝達能力を維持するにはシリコーン油の安定性の向上が望まれる。具体的には、高温下においても熱酸化安定性に優れ、長期にわたる粘度変化が少ないことが重要である。
このような状況において、シリコーン油の熱酸化安定性を向上するため、種々の試みがなされている。(特許文献1、特許文献2、特許文献3参照。)。
近年、機器の高性能化により、シリコーン油は益々高温下にさらされる傾向にあり、より一層の熱酸化安定性が望まれている。
特開平3−143997号公報 特開平4−59895号公報 特開平6−287584号公報
本発明は、高温下において熱酸化安定性に優れ、長期間に亘り粘度変化の少ないファンクラッチ用流体組成物に関する。
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、25℃の動粘度が1,000〜50,000mm/sのジメチルシリコーンオイルからなる基油に、特定量のカルシウムスルホネートを含有させた組成物であって、かつ該組成物の塩基価を0.5〜20mgKOH/gとすることにより、高温下における熱酸化安定性が大幅に向上し、長期間に亘り粘度変化が少なくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、25℃の動粘度が1,000〜50,000mm/sのジメチルシリコーンオイルからなる基油に、カルシウムスルホネートを組成物全量に対して0.01〜5質量%含有させた組成物であって、かつ該組成物の塩基価が0.5〜20mgKOH/gであることを特徴とするファンクラッチ用流体組成物を提供する。
本発明のファンクラッチ用流体組成物は、高温下における熱酸化安定性に優れ、長期間に亘り粘度変化を少なくすることができる。
(1)基油
本発明に使用する基油としては、式(1)に示すジメチルシリコーンオイルである。
(CHSiO−〔Si(R)(R)−O−〕−Si(CH (1)
(式中、R、Rはメチル基であり、nは1〜2000の整数である。)
本発明で使用するシリコーンオイルにおいては、JIS K2283動粘度試験方法による25℃における動粘度の値が、1,000〜50,000mm/sが好ましく、より好ましくは2,000〜45,000mm/s、特に好ましくは3,000〜40,000mm/sである。動粘度が、あまり小さすぎるとトルクの伝達効率が低くなる傾向にある。動粘度が大きすぎるとせん断安定性が低くなる傾向にある。
(2)カルシウムスルホネート
本発明で用いられるカルシウムスルホネートとしては、下記一般式(2)や一般式(3)で表されるものや、これとカルシウムの炭酸塩を炭酸ガス存在下で反応させることにより過塩基化したのものなどが挙げられる。式中、R5・R6は、水素原子又は炭素数1〜30のアルキル基を示し、好ましくは6〜18のアルキル基であり、それらが複数存在する場合は、それぞれ同一であっても、異なってもよい。nは、1〜4の整数である。
Figure 2012046730
カルシウムスルホネートの塩基価は200mgKOH/g以上であり、好ましくは300mgKOH/g以上であり、特に好ましくは320mgKOH/g以上である。塩基価が200mgKOH/g未満では、本発明で規定する組成物の所定の塩基価とするために配合量が多くなってしまい、結果として十分に油中に分散させることができず、十分な熱酸化安定性を得ることができないおそれがある。一方、上限値は特に限定はないが、通常入手しやすいものは600mgKOH/g以下のものであるが、好ましくは560mgKOH/g以下である。なお、本願における塩基価は、上記も含め全てJIS K2501の過塩素酸法によって測定される塩基価である。
なお、本発明で使用するカルシウムスルホネートはアルカリ土類金属型清浄剤であるが、カルシウムスルホネートに代えてマグネシウムスルホネートやバリウムスルホネートを使用した場合には油中への分散性が良好でないことなどから良好な熱酸化安定性を得ることができない。また、カルシウムフェネートやカルシウムサリシレートを使用した場合にも油中への分散性が良好でないことなどから良好な熱酸化安定性を得ることができない。
本発明においては、マグネシウムスルホネート、バリウムスルホネート、カルシウムフェネート及びカルシウムサリシレートの含有量は、できるだけ低くすることが好ましく、具体的には組成物全量に対して0.005質量%以下にすることがより好ましく、全く含有しないことが特に好ましい。
カルシウムスルホネートの配合割合は、本発明の組成物全量に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.1〜3質量%である。配合割合が0.01質量%未満であると熱酸化安定性の向上が望めず、10質量%を超えて配合した場合には分散性が低下し、本来の機能を発揮できないばかりか、沈殿物によるトラブル発生の原因となるおそれもある。
また、カルシウムスルホネートは、上記配合量の範囲内であると共に、組成物の塩基価に換算して0.5〜20mgKOH/gとなる量が配合され、好ましくは0.5〜10mgKOH/g、より好ましくは、0.7〜5mgKOH/g配合される。塩基価が低すぎると、所定の熱酸化安定性を保持することができなし。また高すぎると分散性が低下し、本来の機能を発揮できないばかりか、沈殿物によるトラブル発生の原因となるおそれもある。
(3)組成物の塩基価
組成物の塩基価は0.5〜20mgKOH/gであり、より好ましくは0.5〜10mgKOH/g、特に好ましくは、0.7〜5mgKOH/gである。塩基価が低すぎると、所定の熱酸化安定性を保持することができない。また高すぎると分散性が低下し、本来の機能を発揮できないばかりか、沈殿物によるトラブル発生の原因となるおそれもある。
(4)酸化防止剤
本発明においては、酸化防止剤を含有させることが好ましい。本発明においては、所定量のカルシウムスルホネートと共に、酸化防止剤を含有させることにより、高温下における熱酸化安定性を向上させ、長期間に亘り粘度変化を少なくすることができる。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネートなどのフェノール系化合物などのフェノール系酸化防止剤、ナフチルアミン類やジアルキルジフェニルアミン類などの芳香族アミン化合物などのアミン系酸化防止剤、シリコーン油との相溶性に優れる、例えばジルコニウム−シロキサン、芳香族アミン基を有するシロキサン等のシロキサン化合物系酸化防止剤などの各種酸化防止剤などが挙げられる。
これらのうち、アミン系酸化防止剤、シロキサン化合物系酸化防止剤が好ましく、アミン系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤の含有量は、組成物全量に対して0.01〜3.0質量%が好ましく、0.01〜2.0質量%がより好ましく、0.05〜1.5質量%が特に好ましい。
(5)その他の添加剤
組成物は必要に応じて各種添加剤または固体潤滑剤を配合することもできる。
添加剤としては、例えば、アルケニルこはく酸イミド、アルケニルこはく酸イミド硼素化変性物、ベンジルアミン、などの分散剤、;ポリメタクリレート系、エチレンプロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体の水素化物あるいはポリイソブチレン等の各種粘度指数向上剤などが挙げられる。添加剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明においては、摩耗防止剤の含有量は、できるだけ低くすることが好ましく、具体的には組成物全量に対して0.005質量%以下にすることがより好ましく、全く含有しないことが特に好ましい。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
表1及び表2に、各表に示すそれぞれの基材を表中の添加量で配合し、以下の試験を実施した結果を記載した。
(熱酸化安定度試験)
試験は、100ccのガラス製シリンジに試料を30cc封入し、これを恒温槽に静置し、200℃で168時間加熱後の粘度変化を測定した。
粘度変化率(%)={(試験後の25℃動粘度)−(試験前の25℃動粘度)}÷(試験前の25℃動粘度)
油は、熱履歴を受けることにより粘度低下を起こす傾向にあるため、この粘度変化が少ない程、熱酸化安定性に優れ、長寿命化につながる傾向にある。
(せん断安定性試験)
SONIC超音波せん断安定性試験により行った。試験条件は、50mlのガラス製ビーカーに試料40mlを入れ、この試料を振動数10Hz、振れ幅10μmで15hr超音波せん断後の粘度変化を測定した。
粘度変化率(%)={(試験後の25℃動粘度)−(試験前の25℃動粘度)}÷(試験前の25℃動粘度)
油は、せん断を受けることによっても粘度低下を起こす傾向にあるため、熱酸化安定性試験と同様、粘度変化が少ない程、せん断安定性に優れ、長寿命化につながる傾向にある。
(分離性試験)
試料30ccを2000Gで1時間、遠心分離を行い、沈殿の有無について評価した。分離性試験で沈殿が無いほうが分散性に優れ、長期間油中に安定に存在することから、長寿命化につながる傾向にある。
Figure 2012046730
Figure 2012046730
(エンジン駆動ファンクラッチ耐久試験)
前記実施例1と比較例1のファンクラッチ用流体組成物を用いて、実機を模擬したエンジン駆動ファンクラッチ耐久試験を行った。エンジン駆動ファンクラッチ耐久試験は、日本製の2000ccのガソリンエンジンと直径190mmのファンクラッチを使用した。ファンクラッチに前記実施例1と比較例1のファンクラッチ用流体組成物の各試験油を別々に50g充填して、エンジンに設置し、回転数4700rpmで、200時間運転後の粘度変化を測定した。その試験の結果を表3に示す。
Figure 2012046730
上記エンジン駆動ファンクラッチ耐久試験は、実機を模擬した試験である。すなわち、各試験油は実機と同レベルのせん断にさらされて高温に長期間さらされるため、このエンジン駆動ファンクラッチ耐久試験は前述の熱酸化安定性試験やせん断安定性試験と比較してより過酷な試験条件となっている。このような実機を模擬した過酷な条件下であっても、本発明である実施例1のファンクラッチ用流体組成物については、粘度低下はほとんど見られなかった。一方、本発明で規定するCaスルホネートを含まない比較例1のファンクラッチ用流体組成物は、76.1%と大きく粘度低下した。
以上のように、本発明のファンクラッチ用流体組成物は、熱酸化安定性及びせん断安定性に極めて優れている。
本発明のファンクラッチ用流体組成物は、自動車のラジエーター等の冷却用ファンの回転機構に用いることができる。

Claims (1)

  1. 25℃の動粘度が1,000〜50,000mm/sのジメチルシリコーンオイルからなる基油に、カルシウムスルホネートを組成物全量に対して0.01〜5質量%含有させた組成物であって、かつ該組成物の塩基価が0.5〜20mgKOH/gであることを特徴とするファンクラッチ用流体組成物。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH04110396A (ja) * 1990-08-31 1992-04-10 Matsumura Sekiyu Kenkyusho:Kk 高塩基性カルシウムスルホネートの製造方法
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