JP2012040928A - ハイブリッド車両用制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】限られた状況に対応するための高い冷却性能を電動機に備えなくても、電動機の温度が上限温度を超えることを抑制して適切に電動機を保護する制御を行うことができるハイブリッド車両用制御装置を実現する。
【解決手段】電動機Mの状態が予め定められたゼロトルク制御実行条件を満たす場合に電動機Mの出力トルクをゼロにするゼロトルク制御を行うゼロトルク制御部13と、電動機Mの状態が、当該電動機Mの温度が所定の上限温度に達する可能性がある特定昇温状態であることを判定する昇温判定部15と、電動機Mのゼロトルク制御が実行されており、且つ昇温判定部15により特定昇温状態であることが判定されたことを条件として、発電機Gに発電を行わせて蓄電装置B1を充電し、電源電圧を上昇させる電圧上昇制御を行う電圧上昇制御部17と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両の駆動力源としての内燃機関及び電動機と、前記電動機の電源電圧を供給する蓄電装置と、前記内燃機関により駆動されて発電し、前記蓄電装置を充電可能な発電機と、を備えたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両用制御装置に関する。
近年、駆動力源としてエンジンと回転電機とを併用することにより、エンジンの燃費向上及び排出ガスの低減を図ることのできるハイブリッド車両が普及してきている。このようなハイブリッド車両に用いる駆動装置の一例として、例えば、下記の特許文献1に記載されたような、いわゆるパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置が知られている。この駆動装置は、内燃機関及び電動機を駆動力源として備え、電動機が基本的に内燃機関の回転速度に比例する回転速度で回転するように駆動連結されていると共に、これらの駆動力源の回転を変速機により変速して車輪側へ出力する構成を備えている。また、この駆動装置は、電動機の回転を減速して変速機入力軸に伝達するための減速機構と、内燃機関を変速機入力軸から選択的に切り離すことができるクラッチと、を備えている。
このような特許文献1に記載された駆動装置では、電動機を変速機入力軸から切り離すことができない構成となっているため、内燃機関による車両の駆動中、電動機は常に内燃機関の回転速度に比例する回転速度で回転することになる。従って、内燃機関が時間的に連続して高回転になる状況、例えば高車速走行時には、電動機も高回転で連続的に運転されることとなり、電動機の温度上昇を招く場合がある。このような場合に、電動機による車両駆動力の補助を止め、電動機の出力トルクをゼロとする電動機のゼロトルク制御を行うことにより、電動機の温度上昇を抑制する場合がある。
ところで、上記のように、高回転域において電動機のゼロトルク制御を行う構成であっても、電動機のロータに内蔵される永久磁石が回転して磁界変化を生じさせるために、ステータコアにおいて鉄損が生じる。この鉄損は、電動機の回転速度が高くなるに従って増加する。また、電動機の回転速度が高くなるに従って誘起電圧が高くなるが、誘起電圧が電源電圧を超えると、電動機を適切に制御することができなくなる。そこで、誘起電圧が電源電圧を超える回転域では、誘起電圧を電源電圧以下に抑えるために電動機の界磁磁束を弱める弱め界磁制御が行われる。しかし、弱め界磁制御を行うためには、ステータコイルに弱め界磁電流を流す必要があるため、電動機の回転速度が高くなって弱め界磁電流が増加するに従って、ステータコイルにおける銅損が増加する。
上記のように、電動機の回転速度が高くなり、鉄損及び銅損が増加すると、電動機からの発熱量が大きくなる。そして、電動機からの発熱量が当該電動機の冷却性能を超えると、電動機の温度が上昇する。電動機を構成するコイルの絶縁材等には許容される上限温度が存在するため、電動機の温度がこの上限温度を超えないようにする必要がある。車両側から要求される電動機の最高回転速度での発熱量に合わせた冷却性能を電動機に備えさせるためには、冷媒の循環構造を複雑なものにするなど高性能な冷却構造を備え、或いはコイル断面積を大きくして銅損を減らすために電動機の体格を大型化する等の対応が必要となる。しかし、このような対応は、電動機、ひいてはハイブリッド車両の高コスト化や重量増の要因となる。一方、電動機が最高回転速度付近で回転する状態がある程度の時間継続する状況は、最高車速付近の車速で長時間走行するといったような限られた状況でしか起こり得ない。このような限られた状況に対応するために、高い冷却性能を持つ電動機を採用することは、ハイブリッド車両の軽量化や低コスト化の妨げとなる。
特開2008−132812号公報
そこで、限られた状況に対応するための高い冷却性能を電動機に備えなくても、電動機の温度が上限温度を超えることを抑制して適切に電動機を保護する制御を行うことができるハイブリッド車両用制御装置の実現が望まれる。
本発明に係る、車両の駆動力源としての内燃機関及び電動機と、前記電動機の電源電圧を供給する蓄電装置と、前記内燃機関により駆動されて発電する発電機と、を備えたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両用制御装置の特徴構成は、前記電動機の状態が予め定められたゼロトルク制御実行条件を満たす場合に前記電動機の出力トルクをゼロにするゼロトルク制御を行うゼロトルク制御部と、前記電動機の状態が、当該電動機の温度が所定の上限温度に達する可能性がある特定昇温状態であることを判定する昇温判定部と、前記電動機の前記ゼロトルク制御が実行されており、且つ前記昇温判定部により前記特定昇温状態であることが判定されたことを条件として、前記発電機に発電を行わせて前記蓄電装置を充電し、前記電源電圧を上昇させる電圧上昇制御を行う電圧上昇制御部と、を備えた点にある。
この特徴構成によれば、ゼロトルク制御中に電動機の温度が所定の上限温度に達する可能性がある場合に、蓄電装置を充電して電源電圧を上昇させる電圧上昇制御を行うことで、電動機の回転速度が高い状況でステータコイルに流す弱め界磁電流を減少させることができる。これにより、電動機のステータコイルにおいて発生する銅損を減少させ、電動機の温度上昇を抑制することができる。従って、例えば最高車速付近の車速で長時間走行するといったような、限られた状況に対応するための高い冷却性能を電動機に備えなくても、電動機の温度が上限温度を超えることを抑制して適切に電動機を保護する制御を行うことができる。従って、車両側から要求される電動機の最高回転速度での発熱量に合わせた冷却性能を電動機に備えさせる場合に比べて、電動機を小型化、低コスト化することが可能となり、ハイブリッド車両の軽量化や低コスト化が容易となる。
ここで、前記昇温判定部は、前記電動機の温度が、前記上限温度より低い温度に設定された判定温度に達した場合に、前記特定昇温状態であると判定する構成であると好適である。
電動機からの発熱量が当該電動機の冷却性能を超えた状態が継続すると、電動機の温度は次第に上昇し、最終的には上限温度に達する。この構成によれば、電動機の温度が上限温度に達する前に適切に特定昇温状態であることを判定することができる。従って、電動機の温度が上限温度に達する前に電圧上昇制御を行って電動機の温度上昇を抑制することができ、適切に電動機を保護することができる。
また、前記昇温判定部は、前記電動機の温度が前記上限温度より低い温度に設定された判定温度以上である状態が、予め定められた時間継続した場合に、前記特定昇温状態であると判定する構成であると好適である。
電動機からの発熱量が当該電動機の冷却性能を超えると電動機の温度は上昇するが、当該温度上昇が短時間であって直ぐに電動機の温度が低下する場合には、電動機の温度が上限温度に達することはない。そこで、この構成によれば、電動機の温度変化に基づいて、電動機の温度が上限温度に達する可能性が高い場合にのみ特定昇温状態であると判定することができる。従って、無駄に電圧上昇制御を行うことを抑制して、車両の回生制動による充電機会を確保しつつ、電動機の温度が上限温度に達する前に電動機の温度上昇を抑制する制御を行い、適切に電動機を保護することができる。
また、前記判定温度は、前記上限温度に対して所定の余裕値だけ低い温度に設定され、前記余裕値は、前記電圧上昇制御によって前記電源電圧を予め定められた下限電圧から上限電圧まで上昇させるのに要する時間内で前記電動機の温度が上昇し得る上昇幅の最大値以上の値に設定されていると好適である。
この構成によれば、電動機の温度が判定温度に達したことに基づいて特定昇温状態であると判定する構成において、電動機の温度が上限温度に達する前に電源電圧を上限電圧まで上昇させて電動機の温度上昇を抑制することができるように、判定温度を適切に設定することができる。従って、電圧上昇制御を有効に実行して適切に電動機を保護することができる。
また、前記判定温度は、前記電源電圧が高くなるに従って高い温度に設定されていると好適である。
電圧上昇制御は電源電圧が上限電圧まで上昇した時点で終了せざるを得ないが、当該電圧上昇制御によって電源電圧を上限電圧まで上昇させるのに要する時間は、その時点の電源電圧によって異なる。すなわち、電源電圧が高くなるに従って電圧上昇制御によって電源電圧を上限電圧まで上昇させるのに要する時間は短くなる。そのため、判定温度を、電源電圧が高くなるに従って高い温度に設定することにより、当該電源電圧に応じて判定温度を適切に設定することができる。従って、電圧上昇制御を有効に実行して適切に電動機を保護することができる。
また、前記判定温度は、前記上限温度に対して所定の余裕値だけ低い温度に設定され、前記余裕値は、前記電源電圧が高くなるに従って少なくなる値であって、前記電圧上昇制御によって前記電源電圧を上限電圧まで上昇させるのに要する時間内で前記電動機の温度が上昇し得る上昇幅の最大値以上の値に設定されていると好適である。
この構成によれば、電源電圧が高くなるに従って判定温度を高い温度に設定しても、電動機の温度が上限温度に達する前に電源電圧を上限温度まで上昇させることができる。そして、このように判定温度を設定することにより、電源電圧に応じて電圧上昇制御の実行を可能な限り遅らせることができる。よって、この構成によれば、車両の回生制動による充電機会を確保しつつ、電動機の温度が上限温度に達する前に電動機の温度上昇を抑制する制御を行い、適切に電動機を保護することができる。
また、前記昇温判定部は、前記電動機が、予め定められた判定回転速度以上の回転速度で回転する状態を予め定められた時間継続した場合に、前記特定昇温状態であると判定する構成であると好適である。
上記のように、電動機の回転速度が高くなると、鉄損及び銅損が増加して電動機からの発熱量が大きくなる。そして、電動機からの発熱量が当該電動機の冷却性能を超えると、電動機の温度が上昇する。この構成によれば、電動機の回転速度が所定の判定回転速度以上である状態が所定時間継続したことに基づいて、特定昇温状態であるか否かを適切に判定することができる。従って、電動機の温度が上限温度に達する前に電圧上昇制御を行って電動機の温度上昇を抑制することができ、適切に電動機を保護することができる。
また、前記判定回転速度は、連続運転可能回転速度以上の回転速度に設定され、前記連続運転可能回転速度は、前記電源電圧が予め定められた下限電圧である状態において前記電動機の発熱量と冷却性能とが均衡する回転速度であると好適である。
この構成によれば、電動機からの発熱量が当該電動機の冷却性能を超えて電動機の温度が上昇を開始する回転速度を基準として判定回転速度を適切に設定することができる。これにより、特定昇温状態であるか否かを適切に判定することが可能となる。
また、前記電圧上昇制御部は、前記電源電圧が、予め定められた上限電圧に達したときに前記電圧上昇制御を終了する構成であると好適である。
この構成によれば、電源電圧が上限電圧に達したときに電圧上昇制御を終了するので、電動機の発熱量が最も少ない状態となるまで電圧上昇制御を行うことになる。従って、電動機の回転速度が高く、発熱量が多い場合にも、適切に電動機の温度上昇を抑制し、電動機を保護することができる。
また、前記ゼロトルク制御実行条件は、前記電動機の回転速度が所定の出力限界回転速度を超えていること、及び前記電動機の温度が所定の出力限界温度を超えていること、の少なくとも一方であるとすることができる。なお、前記出力限界温度は、前記判定温度よりも低い温度に設定される。
この構成によれば、電動機の温度上昇を招く可能性がある場合に適切にゼロトルク制御を開始することができる。従って、電動機の温度上昇を効果的に抑制することができる。
また、前記ハイブリッド車両は、前記内燃機関が、変速機構を含む駆動伝達機構を介して車輪に駆動連結され、前記電動機が、前記駆動伝達機構のいずれかの回転要素に対して、常に駆動力を伝達する状態で駆動連結され、前記発電機が、前記内燃機関に駆動連結された構成を備えていると好適である。
本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
このような構成のハイブリッド車両では、内燃機関又は車輪に比例する回転速度で電動機が回転することになる。従って、電動機が高回転で連続的に運転される場合があり、電動機の温度上昇を招く場合がある。本発明に係る構成では、電動機の温度上昇を抑制することが可能となり、冷却性能を強化し、或いは電動機の損失を低減させる等の方法に比べて、電動機を小型化、低コスト化することができると共に、バッテリの低電圧化、インバータの小型化が可能となる。従って、ハイブリッド車両の軽量化や低コスト化が容易となる。
本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド車両用制御装置の全体のシステム構成を示す図である。 本発明の第一の実施形態に係るハイブリッド車両の機械的構成を示す図である。 本発明の第一の実施形態に係る電動機の駆動可能範囲の例を示す図である。 本発明の第一の実施形態に係る、電源電圧毎の電動機の損失と回転速度との関係を示す図である。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置による電圧上昇制御に関する制御方法の全体の手順を示すフローチャートである。 本発明の第一の実施形態に係る制御装置による特定昇温状態判定処理の手順を示すフローチャートである。 本発明の第二の実施形態に係る電動機の駆動可能範囲の例を示す図である。 本発明の第二の実施形態に係る電動機温度とトルク制限率との関係の例を示す図である。 本発明の第二の実施形態に係る制御装置による電圧上昇制御に関する制御方法の全体の手順を示すフローチャートである。 昇温判定部による特定昇温状態の判定に用いる、電源電圧に応じて設定される判定温度の一例を示す図である。
1.第一の実施形態
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るハイブリッド車両用制御装置(以下、単に「制御装置1」という。)の全体のシステム構成を示すブロック図である。なお、図1において、一点鎖線は電力の伝達経路を示し、実線矢印は各種情報の伝達経路を示している。図2は、本実施形態に係る制御装置1による制御対象となるハイブリッド車両2の機械的構成を示すスケルトン図である。図2に示すように、本実施形態に係るハイブリッド車両2は、車両の駆動力源として内燃機関IEと1個の電動機Mとを備え、これらの駆動力源の駆動力を、変速機構4を含む駆動伝達機構3を介して車輪に伝達する、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両として構成されている。
そして、図1に示すように、このハイブリッド車両2に対する制御を行う制御装置1は、電動機Mの状態が予め定められたゼロトルク制御実行条件を満たす場合に電動機Mの出力トルクQをゼロにするゼロトルク制御を行うゼロトルク制御部13を備えている。また、この制御装置1は、電動機Mの状態が、当該電動機Mの温度Tが所定の上限温度Tmaxに達する可能性がある特定昇温状態であることを判定する昇温判定部15を備えている。そして、制御装置1は、電動機Mのゼロトルク制御が実行されており、且つ昇温判定部15により特定昇温状態であることが判定されたことを条件として、発電機Gに発電を行わせて蓄電装置としての第一バッテリB1を充電し、電動機Mの電源電圧Vを上昇させる電圧上昇制御を行う電圧上昇制御部17を備えている。これにより、電動機Mの温度Tが所定の上限温度Tmaxに達する可能性がある場合に、電動機Mのステータコイルに流す弱め界磁電流を減少させて銅損を減少させ、電動機Mの温度上昇を抑制することができる構成となっている。以下、本実施形態に係る制御装置1及びハイブリッド車両2の構成について詳細に説明する。
1−1.ハイブリッド車両の構成
図2に示すように、このハイブリッド車両2は、車両の駆動力源としての内燃機関IE及び電動機Mと、電動機Mの電源電圧Vを供給する蓄電装置としての第一バッテリB1と、内燃機関IEにより駆動されて発電する発電機Gと、を備えている。また本実施形態では、ハイブリッド車両2は、内燃機関IEが、変速機構4を含む駆動伝達機構3を介して車輪Wに駆動連結されている。そして、電動機Mが、駆動伝達機構3の所定の回転要素に対して、常に駆動力を伝達する状態で駆動連結されている。また、発電機Gが、内燃機関IEに駆動連結されている。
内燃機関IEは、燃料の燃焼による動力を出力する原動機であり、例えば、ガソリンエンジン等の火花点火機関やディーゼルエンジン等の圧縮着火機関などを用いることができる。本実施形態では、内燃機関IEは、第一クラッチC1を介して変速機構4の入力部材としての変速入力軸43に選択的に駆動連結される。これにより、第一クラッチC1の係合状態で、内燃機関IEの回転及び駆動力が、変速機構4を含む駆動伝達機構3を介して車輪Wへ伝達される。また、内燃機関IEは、第二クラッチC2を介して発電機Gに選択的に駆動連結される。更に、内燃機関IEは、スタータ23にも駆動連結される。
発電機Gは、内燃機関IEにより駆動されて発電する装置である。図示は省略するが、発電機は、ロータとステータとを有している。このロータと一体回転する発電機Gの回転軸には、第二従動ギヤ33が一体回転するように設けられている。第二従動ギヤ33は、第二伝動部材42を介して第二駆動ギヤ34に駆動連結されている。ここで、第二伝動部材42としては、例えば、ベルトやチェーン等が用いられる。そして、この第二駆動ギヤ34が、第二クラッチC2を介して内燃機関IEの出力軸に駆動連結されている。本例では、第二駆動ギヤ34は、第二クラッチC2の係合状態で、内燃機関IEの出力軸と一体回転するように設けられている。このような構成を備えることにより、内燃機関IEの回転及び駆動力を発電機Gに伝達し、発電機Gにおいて発電を行うことができる。本実施形態では、発電機Gが発電した電力は、第一バッテリB1へ供給され、それにより第一バッテリB1が充電される。本実施形態では、発電機Gは、一般的なオルタネータとすることができ、交流発電機と整流器とを有して構成されている。
スタータ23は、内燃機関IEを始動するための装置である。本実施形態では、スタータ23は電動機とされており、図示は省略するが、ロータとステータとを有している。このロータと一体回転するスタータ23の回転軸には、第三駆動ギヤ35が一体回転するように設けられている。第三駆動ギヤ35は、第三従動ギヤ36に噛み合うように構成されている。そして、この第三従動ギヤ36が、内燃機関IEの出力軸に駆動連結されている。本例では、第三従動ギヤ36は、内燃機関IEの出力軸と一体回転するように設けられている。このような構成を備えることにより、スタータ23の回転及び駆動力が内燃機関IEに伝達され、内燃機関IEを始動させることができる。本実施形態では、スタータ23は、第二バッテリB2から電力の供給を受けて動作する。
電動機Mは、内燃機関IEと共に車両の駆動力源として用いられる。本実施形態では、電動機Mは、電力の供給を受けて動力を発生する電動機としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生する発電機としての機能との双方を果たすことが可能とされている。すなわち、この電動機Mは、車輪Wを駆動すると共に、ハイブリッド車両2の減速時には、車輪W側からの駆動力の伝達を受けて発電することにより、車両の回生制動を行うように構成されている。電動機Mは、ロータとステータとを有している。このロータと一体回転する電動機Mの回転軸には、第一駆動ギヤ31が一体回転するように設けられている。第一駆動ギヤ31は、第一伝動部材41を介して第一従動ギヤ32に駆動連結されている。ここで、第一伝動部材41としては、例えば、ベルトやチェーン等が用いられる。そして、この第一従動ギヤ32が、変速入力軸43に駆動連結されている。本例では、第一従動ギヤ32は、変速入力軸43と一体回転するように設けられている。このような構成を備えることにより、変速機構4を含む駆動伝達機構3を介して、電動機Mの回転及び駆動力が車輪Wへ伝達され、或いは車輪Wの回転及び駆動力が電動機Mに伝達される。また、第一クラッチC1の係合状態では、電動機Mは内燃機関IEの回転速度に比例する回転速度で回転する。ここで電動機Mと内燃機関IEとの回転速度の比は、第一駆動ギヤ31と第一従動ギヤ32とのギヤ比によって定まり、本例では、例えば電動機Mの回転速度が内燃機関IEの回転速度の3倍となるようにギヤ比が設定されている。電動機Mは、第一バッテリB1から電力の供給を受けて動作する。本実施形態では、電動機Mは、交流電動機とされており、インバータ21を介して第一バッテリB1に電気的に接続されている。
変速機構4は、変速入力軸43の回転を所定の変速比で変速して変速出力軸44へ伝達する装置である。ここで、変速機構4は、変速入力軸43から変速出力軸44へ伝達される回転の変速比を変更可能に構成されている。このような変速機構4としては、公知の有段又は無段の各種の自動変速機構や手動変速機構が用いられる。変速機構4の出力軸である変速出力軸44には、第四駆動ギヤ37が一体回転するように設けられている。第四駆動ギヤ37は、第四従動ギヤ38に噛み合うように構成されている。ここでは、第四従動ギヤ38が、出力用差動歯車装置DFの入力ギヤとされている。従って、変速出力軸44の回転及び駆動力は、出力用差動歯車装置DFに伝達され、当該出力用差動歯車装置DFにより左右二つの車輪Wに分配されて伝達される。これらの変速機構4及び出力用差動歯車装置DFを含む、内燃機関IEから車輪Wまでの回転及び駆動力の伝達経路上に位置する全ての機構が、駆動伝達機構3を構成している。
第一バッテリB1は、ハイブリッド車両2のメインバッテリであり、電動機Mの電源電圧Vを供給する蓄電装置として機能する。このような第一バッテリB1としては、公知の各種二次電池を用いることができ、例えば、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等を用いることができる。第一バッテリB1は、第二バッテリB2よりも高圧のバッテリであり、例えば、ノミナル電圧Vnomが50〜300〔V〕程度のものを用いることができる。第二バッテリB2は、ハイブリッド車両2のサブバッテリであり、上述したスタータ23の他、図示しないエアコンディショナのコンプレッサ等の補機類、ヘッドランプ等の灯火類などを動作させるために用いられる。このような第二バッテリB2としては、一般的な車両に用いられる公知の各種二次電池を用いることができ、例えば、鉛蓄電池等を用いることができる。第二バッテリB2は、第一バッテリB1よりも低圧のバッテリであり、例えば、ノミナル電圧が12〜24〔V〕程度のものを用いることができる。
インバータ21は、直流−交流変換を行う装置である。ここでは、インバータ21は、第一バッテリB1から供給される直流の電源電圧Vを交流電圧に変換して電動機Mに供給し、或いは電動機Mが回生制動を行う際には電動機Mが発電して生成する交流電圧を直流に変換して第一バッテリB1へ供給する。コンバータ22は、いわゆるDC−DCコンバータであり、直流同士の電圧変換を行う装置である。ここでは、コンバータ22は、第二バッテリB2の電圧を昇圧して第一バッテリB1へ供給し、或いは第一バッテリB1の電圧を降圧して第二バッテリB2へ供給する。これにより、第二バッテリB2の電力を用いた第一バッテリB1の充電、及び第一バッテリB1の電力を用いた第二バッテリB2の充電の双方を行うことができ、第一バッテリB1及び第二バッテリB2の双方の充電状態を適切に調節することが可能となっている。
1−2.制御装置のシステム構成
次に、本実施形態に係る制御装置1のシステム構成について説明する。図1に示すように、ハイブリッド車両2は、各部を制御するための制御装置1を備えている。制御装置1は、内燃機関制御ユニット24、電動機制御ユニット25、発電機制御ユニット26、及びスタータ制御ユニット27との間で、相互に情報伝達が可能な状態で接続されている。内燃機関制御ユニット24は、内燃機関IEの各部を制御することにより、内燃機関IEが所望のトルクや回転速度を出力するように制御する。電動機制御ユニット25は、インバータ21を制御することにより、電動機Mが所望のトルクや回転速度を出力するように制御する。発電機制御ユニット26は、発電機Gの励起電流を調整することにより、内燃機関IEの回転速度やトルクに関わらず、発電電圧が第一バッテリB1の電源電圧Vに基づいて定まる所定の電圧となるように調整する。スタータ制御ユニット27は、スタータ23を制御し、内燃機関IEの始動を制御する。
また、制御装置1は、ハイブリッド車両2の各部の情報を取得するために、車両の各部に設けられたセンサ等からの情報を取得可能に構成されている。図示の例では、制御装置1は、電動機温度センサS1、電動機回転速度センサS2、第一バッテリセンサS3、第二バッテリセンサS4、車速センサS5、及び内燃機関回転速度センサS6からの情報を取得可能に構成されている。電動機温度センサS1は、電動機Mの温度、ここでは電動機Mのステータの温度を検出する。電動機回転速度センサS2は、電動機Mのロータの回転速度を検出する。第一バッテリセンサS3は、第一バッテリB1の状態を検出する。第一バッテリセンサS3は、例えば電圧センサや電流センサ等を有して構成され、第一バッテリB1の電圧である電源電圧Vや、第一バッテリB1の充電量等を検出可能に構成されている。本実施形態では、第一バッテリセンサS3は、電源電圧Vを検出するように構成されている。第二バッテリセンサS4は、第二バッテリB2の状態を検出する。第二バッテリセンサS4は、例えば電圧センサや電流センサ等を有して構成され、第二バッテリB2の電圧や充電量等を検出可能に構成されている。本実施形態では、第二バッテリセンサS4は、第二バッテリB2の電圧を検出するように構成されている。車速センサS5は、ハイブリッド車両2の車速を検出するために車輪W又は車輪Wに比例して回転する部材の回転速度を検出する。内燃機関回転速度センサS6は、内燃機関IEの出力軸の回転速度を検出する。
制御装置1は、各センサS1〜S6で取得される情報を用いて、内燃機関IE、電動機M、インバータ21、発電機G、コンバータ22、スタータ23等の制御を行う。そして、制御装置1は、後述するゼロトルク制御、電圧上昇制御を含む各種の動作制御を行う。この際、制御装置1は、内燃機関制御ユニット24、電動機制御ユニット25、発電機制御ユニット26、及びスタータ制御ユニット27を介して、内燃機関IE、電動機M、発電機G、及びスタータ23の動作状態を協調制御することにより、実行中の制御状態に応じて適切に車両の走行が行われるように制御する。
1−3.制御装置の構成
次に、制御装置1の構成及び動作について詳細に説明する。制御装置1は、ハイブリッド車両2の各部の動作制御を行う。本実施形態では、制御装置1は、内燃機関制御部11、電動機制御部12、ゼロトルク制御部13、発電機制御部14、昇温判定部15、電源管理部16、及び電圧上昇制御部17を備えている。この制御装置1は、1又は2以上の演算処理装置、及びソフトウェア(プログラム)やデータ等を格納するためのRAMやROM等の記憶媒体等を備えて構成されている。そして、制御装置1の上記各機能部11〜17は、前記演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うためのハードウェア又はソフトウェア或いはその両方により構成されている。また、制御装置1は、タイマ18、及び記憶部19を備えている。記憶部19には、ハイブリッド車両2の制御に用いる各種データが格納されており、その中には、後述する特定昇温状態判定条件51のデータも含まれている。
本実施形態においては、制御装置1は、車輪Wに伝達することが要求されるトルクである車両要求トルクを決定する。ここで、制御装置1は、運転者の操作に応じて適切に車両を走行させるために車両要求トルクを決定する。したがって、制御装置1は、図示しない車両のアクセルペダル及びブレーキペダルの操作量と車速センサS5により検出される車速に応じて、予め定められたマップ等に従って車両要求トルクを決定する。
内燃機関制御部11は、内燃機関IEの動作点である内燃機関動作点を決定し、当該内燃機関動作点に従って内燃機関IEが動作するように、内燃機関制御ユニット24を介して内燃機関IEを制御する処理を行う。内燃機関制御部11は、決定した内燃機関動作点の情報を、内燃機関制御ユニット24へ出力する。内燃機関制御ユニット24は、内燃機関動作点に示されるトルク及び回転速度で内燃機関IEを動作させるように制御する。内燃機関動作点は、内燃機関IEが発生することを要求される出力(仕事率)と最適燃費とを考慮して決定される内燃機関IEの制御目標点を表す指令値であって、回転速度指令値とトルク指令値により定まる。この内燃機関動作点の決定は、所定の内燃機関動作点マップに基づいて行う。
電動機制御部12は、電動機Mの動作点である電動機動作点を決定し、当該電動機動作点に従って電動機Mが動作するように、電動機制御ユニット25を介して電動機Mを制御する処理を行う。電動機制御部12は、決定した電動機動作点の情報を、電動機制御ユニット25へ出力する。電動機制御ユニット25は、電動機動作点に示されるトルク及び回転速度で電動機Mを動作させるようにインバータ21を制御する。電動機動作点は、車速と車両要求トルクと内燃機関動作点とに基づいて決定される電動機Mの制御目標点を表す指令値であって、回転速度指令値とトルク指令値により定まる。但し、本実施形態では、電動機Mは変速入力軸43に常時駆動連結されているため、電動機Mの回転速度Rは、車速と変速機構4のそのときの変速比とに応じて自動的に決定される。従って、ここでは、電動機制御部12は、電動機動作点としてトルク指令値を決定する。電動機動作点のトルク指令値は、車両要求トルクと内燃機関動作点に示される内燃機関IEの出力トルクとに基づいて定まる。具体的には、電動機動作点のトルク指令値は、車両要求トルクに基づいて内燃機関IE及び電動機Mが出力する必要があるトルクから、内燃機関IEの出力トルクを減算して導出される。これにより、内燃機関IEから車輪Wに伝達されるトルクの車両要求トルクに対する過不足を補うトルクを、電動機Mに発生させることができる。
本実施形態では、電動機制御部12は、電動機Mを電流ベクトル制御法により制御する。電流ベクトル制御法では、ステータコイルに流す電流を、界磁の磁束方向に設定されるd軸と、界磁の向きに対して電気角でπ/2進んだ方向に設定されるq軸とによって規定される回転座標系におけるd軸電流とq軸電流とに分離し、これらの電流値を制御する。すなわち、電動機制御部12は、電動機動作点としてトルク指令値と電動機Mの回転速度Rとに基づいてd軸電流及びq軸電流の指令値を決定し、当該d軸電流及びq軸電流の指令値に基づいてPWM制御等を行って電動機Mのステータコイルに適切な交流電流を流すことにより、電動機Mがトルク指令値に従ったトルクを出力するように制御する。この際、d軸電流は磁束生成電流として機能し、q軸電流はトルク生成電流として機能するので、d軸電流の指令値を調整することにより、電動機Mの界磁磁束を調整することができる。ところで、電動機Mは、回転速度Rが高くなるに従ってステータコイルに発生する誘起電圧が高くなり、電動機Mを駆動するために必要となる交流電圧である駆動必要電圧も高くなる。そして、この駆動必要電圧が、電源電圧Vを超えると、電動機を適切に制御することができなくなる。そこで、電動機制御部12は、誘起電圧が電源電圧Vを超える前に、d軸電流を調整することにより電動機Mの界磁磁束を弱める弱め界磁制御を行う。弱め界磁制御を行うと、ステータコイルに影響を与える電動機Mの界磁磁束が弱まるため、誘起電圧を下げることができる。具体的には、電動機制御部12は、弱め界磁制御に際して、トルク指令値と電動機Mの回転速度Rとに基づいて定まるd軸電流の指令値に対して負方向にd軸電流指令値を調整することにより、ステータコイルに弱め界磁電流を流し、誘起電圧が電源電圧Vを超えないように電動機Mの界磁磁束を調整する制御を行う。
ゼロトルク制御部13は、電動機Mの状態が予め定められたゼロトルク制御実行条件を満たす場合に電動機Mの出力トルクQをゼロにするゼロトルク制御を行う制御部である。本実施形態では、ゼロトルク制御部13は、電動機制御部12に含まれており、所定のゼロトルク制御実行条件を満たす場合に、電動機動作点のトルク指令値をゼロとすることによりゼロトルク制御を行う。本実施形態では、ゼロトルク制御を行う条件となるゼロトルク制御実行条件を、電動機Mの回転速度Rが所定の出力限界回転速度Roを超えていることとする。よって、本実施形態に係るゼロトルク制御部13は、電動機Mの回転速度Rが所定の出力限界回転速度Roを超えた場合に電動機Mのゼロトルク制御を行う。ここで、出力限界回転速度Roは、電動機Mの駆動可能範囲Aaにおける回転速度Rの上限値の最大値に設定される。駆動可能範囲Aaとは、電動機Mが正トルク又は負トルクを出力する状態で駆動されることが可能に設定された範囲であって、回転速度Rと出力トルクQとにより領域が規定される。図3に、本実施形態に係る電動機Mの駆動可能範囲Aaの例を示している。図3中で太い実線で囲まれる領域内が、電動機Mの駆動可能範囲Aaである。なお、図1では省略しているが、この電動機Mの駆動可能範囲Aaは駆動可能範囲マップとしてマップ化されて記憶部19に記憶される。出力限界回転速度Roは、この駆動可能範囲Aaの上限の回転速度(太い実線上の値)の最大値に設定される。ここでは、出力トルクQがゼロのときに駆動可能範囲Aaの上限の回転速度が最大値となり、この回転速度が出力限界回転速度Roとなっている。この出力限界回転速度Roは、電動機Mの仕様によって異なるが、例えば、10000〜15000〔rpm〕程度の回転速度に設定される。そして、駆動可能範囲Aaの外となる出力限界回転速度Ro以上の回転速度Rでは、ゼロトルク制御部13により電動機Mのゼロトルク制御が行われる。従って、駆動可能範囲Aaの外では、電動機Mの動作点は、出力トルクQがゼロの軸上の値のみを取り得る。そして、ゼロトルク制御中の電動機Mが取り得る上限回転速度Rmaxは、内燃機関IEの上限回転速度によって制限される。すなわち、電動機Mの上限回転速度Rmaxは、内燃機関IEの上限回転速度に電動機Mと内燃機関IEとの回転速度の比を乗算した値となる。
ところで、上記のとおり、第一クラッチC1の係合状態では、電動機Mは内燃機関IEの回転速度に比例する回転速度で回転する。この際、電動機Mの回転を減速して変速入力軸43に伝達するため、電動機Mは内燃機関IEに対して数倍の回転速度で回転する。例えば、電動機Mと内燃機関IEとの回転速度の比が3倍に設定されている場合であって、出力限界回転速度Roが15000〔rpm〕に設定されている場合、内燃機関IEの回転速度が5000〔rpm〕以上となる高回転領域では、電動機Mの回転速度Rが出力限界回転速度Ro以上となる。このとき、電動機Mは、ゼロトルク制御部13によりトルクを出力しないゼロトルク制御とされ、内燃機関IEによって受動的に回転する状態となる。これにより、高回転領域において電動機Mにトルクを出力させることが不要となる。従って、高回転領域において電動機Mにトルクを出力させるために、高い電源電圧Vを有する第一バッテリB1を用い、或いは電源電圧Vを昇圧するための昇圧回路等を備える必要がなく、ハイブリッド車両2を軽量かつ安価に構成することが可能となっている。
ゼロトルク制御部13は、電動機Mのゼロトルク制御を以下のようにして行う。すなわち、ゼロトルク制御部13は、電動機Mで生じる誘起電圧が電源電圧Vより低い状態では、上述した弱め界磁制御を行う必要がないため、d軸電流及びq軸電流を共にゼロとするように制御を行う。これにより、電動機Mの出力トルクQはゼロとされる。また、電動機Mで生じる誘起電圧が電源電圧Vより高くなる高回転領域では、負のd軸電流である弱め界磁電流を電動機Mに流す弱め界磁制御を実行する。これにより、電動機Mの界磁磁束を弱めて誘起電圧が電源電圧Vを超えないように制御する。このときd軸電流は弱め界磁制御のために必要最小限の値とされ、q軸電流はゼロに維持される。よって、このときも電動機Mの出力トルクQはゼロとされる。
発電機制御部14は、発電機Gにより発電する電力量を決定し、当該発電電力量を発電する状態で発電機Gが動作するように、発電機制御ユニット26を介して発電機Gを制御する処理を行う。発電機制御部14は、決定した発電機電力量の情報を、発電機制御ユニット26へ出力する。発電機制御ユニット26は、決定した発電機電力量を発電するように発電機Gを制御する。ここで、発電機Gは、第一バッテリB1を充電する。従って、発電機Gによる発電電圧は、第一バッテリB1の電源電圧Vよりも高い電圧とされる必要がある。ここでは、電源電圧Vよりわずかに高い電圧となるように、発電電圧が電源電圧Vに応じて自動的に定められる。従って、発電機制御部14は、発電機Gにより発電する電流量を決定することにより、発電電力量を決定する。発電機制御部14は、第一バッテリセンサS3により検出される第一バッテリB1の充電状態、及び第二バッテリセンサS4により検出される第二バッテリB2の充電状態に基づいて、発電機Gによる発電電力量を決定する。本実施形態では、発電機Gは第一バッテリB1を直接的に充電する構成となっている。従って、第二バッテリB2を充電する際には、制御装置1がコンバータ22を制御し、第一バッテリB1の電圧を降圧して第二バッテリB2へ供給して充電する。すなわち、この発電機Gは、第一バッテリB1及びコンバータ22を介して、間接的に第二バッテリB2を充電可能に構成されている。そこで、発電機制御部14は、第一バッテリB1及び第二バッテリB2の充電状態としての電圧や充電量(SOC:state of charge)が一定範囲内に維持されるように、第一バッテリB1を充電する電力量を決定し、当該充電電力量に基づいて発電電力量を決定する。
ところで、第二クラッチC2の係合状態では、発電機Gは内燃機関IEの回転速度に比例する回転速度で回転するため、発電機Gの回転速度も、内燃機関IEの回転速度に応じて自動的に定まる。そこで、発電機制御ユニット26は、発電機Gの励起電流を調整することにより、内燃機関IEの回転速度やトルクに関わらず、発電電圧が第一バッテリB1の電源電圧Vに基づいて定まる所定の電圧となるように調整する。なお、発電機Gと内燃機関IEとの回転速度の比は、第二駆動ギヤ34と第二従動ギヤ33とのギヤ比によって定まり、本例では、例えば発電機Gの回転速度が内燃機関IEの回転速度の5倍となるようにギヤ比が設定されている。そして、発電機Gが発電した電力は、第一バッテリB1へ供給され、第一バッテリB1が充電される。発電機制御部14は、決定された発電電力量がゼロである場合には第二クラッチC2を解放状態とし、決定された発電電力量がゼロより大きくなった場合に第二クラッチC2を係合状態とする。
昇温判定部15は、電動機Mの状態が、当該電動機Mの温度Tが所定の上限温度Tmaxに達する可能性がある特定昇温状態であることを判定する機能部である。電動機Mの冷却性能には限界があり、電動機Mからの発熱量が当該冷却性能を超えると、電動機Mの温度Tは次第に上昇し、その状態が継続すると最終的には上限温度Tmaxに達する。昇温判定部15は、このように電動機Mの温度Tが次第に上昇する状態であって、当該電動機Mの温度Tが所定の上限温度Tmaxに達する可能性がある状態であることを、特定昇温状態として判定する。電動機Mの上限温度Tmaxは、電動機Mを構成する各部材の許容上限温度の中で最も低い温度に設定される。電動機Mを構成する部材の中で温度の影響を受け易い部材としてコイルの絶縁材や永久磁石等があり、例えば、絶縁材の機能を維持するために許容される上限温度が電動機Mの上限温度Tmaxとされる。そして、昇温判定部15は、記憶部19に記憶された特定昇温状態判定条件51に基づいて、特定昇温状態であるか否かの判定を行う。
ところで、電動機Mからの発熱量は、電動機Mで発生する損失である電動機損失Lに比例する。本実施形態では、電動機Mの発熱量が冷却性能と均衡するときの電動機損失Lを連続運転可能損失Luとする。図4には、電源電圧Vの値毎に、ゼロトルク制御中に発生する電動機Mの損失Lと回転速度Rとの関係を示している。そして、連続運転可能損失Luを、この図4中に一点鎖線で示している。電動機損失Lがこの連続運転可能損失Luを超えた状態では、電動機Mからの発熱量が当該冷却性能を超えた状態となり、電動機Mの温度Tが次第に上昇する。一方、電動機損失Lが連続運転可能損失Lu以下の状態では、電動機Mの温度Tは上昇しない。このように電動機損失Lが連続運転可能損失Lu以下となる電動機Mの動作点の範囲(出力トルクQ及び回転速度Rの範囲)を連続運転可能領域Acとし、図3に斜線ハッチングの領域で示している。なお、図3には、電源電圧Vが下限電圧Vminである状態での連続運転可能領域Acの例を示している。電源電圧Vが下限電圧Vminよりも高い状態では、連続運転可能領域Acは、図3に示すよりも全体的に広い領域となる。電動機Mの動作点が連続運転可能領域Ac内にある状態では、電動機損失Lは連続運転可能損失Lu以下となり、その状態で連続運転しても電動機Mの温度Tが上昇することはない。一方、電動機Mの動作点が、連続運転可能領域Acの外にある状態では、電動機損失Lは連続運転可能損失Luを超え、その状態で連続運転すると電動機Mの温度Tが次第に上昇する。
本実施形態では、昇温判定部15は、以下の(第一判定条件)及び(第二判定条件)のいずかが満たされた場合に特定昇温状態であると判定する。
(第一判定条件)電動機Mの温度Tが、上限温度Tmaxより低い温度に設定された判定温度Ttに達したこと
(第二判定条件)電動機Mが、予め定められた判定回転速度Rt以上の回転速度Rで回転する状態を予め定められた時間継続したこと
すなわち、第一判定条件によれば、昇温判定部15は、電動機Mの温度Tが、上限温度Tmaxより低い温度に設定された判定温度Ttに達した場合に、特定昇温状態であると判定する。また第二判定条件によれば、昇温判定部15は、電動機Mが、予め定められた判定回転速度Rt以上の回転速度Rで回転する状態を予め定められた時間継続した場合に、特定昇温状態であると判定する。本実施形態では、これらの第一判定条件及び第二判定条件が、特定昇温状態判定条件51として記憶部19に記憶されている。
まず、上記第一判定条件について説明する。第一判定条件に係る判定温度Ttは、上限温度Tmaxに対して所定の余裕値だけ低い温度に設定される。この余裕値は、後述する電圧上昇制御部17による電圧上昇制御によって電源電圧Vを予め定められた下限電圧Vminから上限電圧Vmaxまで上昇させるのに要する時間内で電動機Mの温度Tが上昇し得る上昇幅の最大値以上の値に設定すると好適である。例えば、電圧上昇制御によって電源電圧Vを下限電圧Vminから上限電圧Vmaxまで上昇させるのに要する時間が30秒であり、その間に電動機Mの温度Tが上昇し得る上昇幅の最大値が10〔℃〕である場合、余裕値は10〔℃〕以上の値、例えば15〔℃〕に設定される。例えば、電動機Mの上限温度Tmaxが200〔℃〕である場合、判定温度Ttは185〔℃〕に設定される。判定温度Ttをこのように設定すれば、電動機Mの温度Tが上限温度Tmaxに達する前に、後述する電圧上昇制御によって電源電圧Vを上限電圧Vmaxまで上昇させ、適切に電動機Mの温度上昇を抑制することができる。なお、電動機Mの温度Tが上昇し得る上昇幅の最大値は、電動機損失Lが最も高い状態、すなわち、図4に示すように、電動機Mの回転速度Rが上限回転速度Rmaxである状態であって、電動機Mの冷却性能が最も低くなる状態、例えば環境温度が想定される範囲内で最も高い状態を基準として実験的に求めることができる。第一判定条件によれば、電動機Mの温度Tが、このような判定温度Ttに達したことで特定昇温状態であると判定するので、電動機Mの温度Tが上限温度Tmaxに達する前に特定昇温状態であることを適切に判定することができる。
次に、上記第二判定条件について説明する。第二判定条件に係る判定回転速度Rtは、連続運転可能回転速度Rc以上の回転速度に設定される。ここで連続運転可能回転速度Rcは、電源電圧Vが下限電圧Vminである状態において電動機Mの発熱量と冷却性能とが均衡する電動機Mの回転速度Rである。図3には、電源電圧Vが下限電圧Vminである状態での連続運転可能領域Acを示している。すなわち、図3に示される連続運転可能領域Acは、電源電圧Vが下限電圧Vminである状態での電動機損失Lが、電動機Mの発熱量が冷却性能と均衡する連続運転可能損失Lu以下となる電動機Mの動作点の範囲を示している。従って、この連続運転可能領域Acにおける、電動機Mの出力トルクQがゼロのときの回転速度Rの上限値が、ゼロトルク制御中における連続運転可能回転速度Rcとなる。本実施形態では、判定回転速度Rtを連続運転可能回転速度Rcに一致する回転速度Rとしている。このようにすれば、電動機Mの発熱量が冷却性能を超えて電動機Mの温度Tが上昇を開始する回転速度である連続運転可能回転速度Rcに判定回転速度Rtを設定することができるので、特定昇温状態であるか否かの判定を適切に行うことができる。なお、連続運転可能領域Ac、連続運転可能損失Lu、及び連続運転可能回転速度Rcは、電動機Mの冷却性能が最も低くなる状態、例えば環境温度が想定される範囲内で最も高い状態を基準として実験的に求めることができる。
そして、第二判定条件によれば、このように設定された判定回転速度Rt以上の回転速度Rで電動機Mが回転する状態が予め定められた判定時間以上継続した場合に、特定昇温状態であると判定する。この判定に用いる判定時間は、電動機Mが判定回転速度Rtで回転することで、電動機Mの温度Tが判定温度Ttに達するまでの時間に設定すると好適である。このような判定時間は、電動機Mの冷却性能が最も低くなる状態、例えば環境温度が想定される範囲内で最も高い状態を基準として実験的に求めることができる。以上のような第二判定条件によれば、電動機Mの回転速度Rが所定の判定回転速度Rt以上である状態が所定時間継続したことに基づいて、特定昇温状態であるか否かを判定するので、電動機Mの温度Tが上限温度Tmaxに達する前に適切に特定昇温状態を判定することができる。
電源管理部16は、第一バッテリB1及び第二バッテリB2の状態管理を行う機能部である。本実施形態では、電源管理部16は、第一バッテリセンサS3により検出される電源電圧V、及び第二バッテリセンサS4により検出される第二バッテリB2の電圧に基づいて、これらの各バッテリB1、B2の電圧が適正な値となるように充放電の管理を行う。すなわち、各バッテリB1、B2は、二次電池であるので、放電することにより電源電圧Vが下降し、充電することにより電源電圧Vが上昇する。そのため、各バッテリB1、B2の電圧は、充電状態に応じてノミナル電圧から上下に変動する。本実施形態では、電源管理部16は、各バッテリB1、B2の電圧に基づいて各バッテリの充電量を推定し、管理している。そして、電源管理部16は、各バッテリB1、B2の電圧が、基準電圧であるノミナル電圧を中間値として、予め定められた下限電圧から上限電圧までの間の値となるように充放電の管理を行う。
すなわち、電源管理部16は、第一バッテリB1については、電源電圧Vが、ノミナル電圧Vnomを中間値として下限電圧Vminから上限電圧Vmaxまでの間に維持されるように第一バッテリB1の充放電を管理する。より具体的には、電源管理部16は、ハイブリッド車両2の走行状態に応じて電動機Mの力行及び回生を適切に行いつつ、電源電圧Vが下限電圧Vminに近づいたら第一バッテリB1の充電を優先する制御行い、電源電圧Vが上限電圧Vmaxに近づいたら第一バッテリB1の放電を優先する制御を行う。これにより、電源電圧Vを下限電圧Vminから上限電圧Vmaxまでの間に保ちつつ、電動機Mの力行及び回生を効率的かつ適切に行うことができるようにする。なお、第一バッテリB1の充電は、電動機Mによる回生や発電機Gによる発電で得られた電力によって行われ、第一バッテリB1の放電は、電動機Mの力行やコンバータ22を介した第二バッテリB2の充電のために行われる。第二バッテリB2についても同様に、電源管理部16は、第二バッテリB2の電圧がノミナル電圧を中間値として下限電圧から上限電圧までの間に維持されるように第二バッテリB2の充放電を管理する。より具体的には、電源管理部16は、第二バッテリB2からの電力が供給される各部の動作を適切に行いつつ、第二バッテリB2の電圧が下限電圧に近づいたら第二バッテリB2を充電する制御行う。なお、第二バッテリB2の充電は、上記のとおり、コンバータ22を制御し、第一バッテリB1の電圧を降圧して第二バッテリB2へ供給することにより行われる。
電圧上昇制御部17は、電源電圧Vを上昇させる電圧上昇制御を行う制御部である。本実施形態では、電圧上昇制御部17は、電源管理部16に含まれており、所定の条件を満たす場合に電圧上昇制御を行う。すなわち、電圧上昇制御部17は、電動機Mのゼロトルク制御が実行されており、且つ昇温判定部15により特定昇温状態であることが判定されたことを条件として電圧上昇制御を行う。上記のとおり、第一バッテリB1は、充電により電源電圧Vが上昇し、放電により電源電圧Vが下降する。そこで、電圧上昇制御部17は、電圧上昇制御を、発電機Gに発電を行わせ、蓄電装置としての第一バッテリB1を充電することにより行う。ところで、図3に示すように、電動機Mの動作点が連続運転可能領域Acの外になるのは、駆動可能範囲Aa内では電動機Mの出力トルクQが比較的大きい領域である。このように電動機Mの出力トルクQが比較的大きい状態は、ハイブリッド車両2の加速中や減速中等に起こるため、長時間連続することはほとんどなく、それによって電動機Mの温度Tが上限温度Tmaxに達することもほとんどない。従って、電圧上昇制御部17は、電動機Mがゼロトルク制御中であることを電圧上昇制御の実行条件としている。また、電圧上昇制御を実行して電源電圧Vを上昇させると、後述するように電動機Mの温度上昇を抑制することができるが、第一バッテリB1に対して充電可能な電力量が減少する。このため、ハイブリッド車両2の減速時に電動機Mの回生制動によって得られた電力を回収することが難しくなり、ハイブリッド車両2のエネルギ効率が低下することになる。そのため、電圧上昇制御部17は、無駄に電圧上昇制御を実行することを避け、必要な場合にのみ電圧上昇制御を行うべく、昇温判定部15により特定昇温状態であることが判定されたことを電圧上昇制御の実行条件としている。
電圧上昇制御部17が電圧上昇制御を行うことにより、電動機Mの回転速度Rが高い状況でステータコイルに流す弱め界磁電流を減少させることができる。これにより、電動機Mのステータコイルにおいて発生する銅損を減少させ、電動機Mの温度上昇を抑制することができる。その理由を図4に基づいて説明する。図4には、電源電圧Vの値毎に、ゼロトルク制御中に発生する電動機Mの損失Lと回転速度Rとの関係を示している。すなわち、図4おける実線の曲線LL1〜LL3は、電源電圧Vが下限電圧Vmin、ノミナル電圧Vnom、上限電圧Vmaxのそれぞれの場合における、ゼロトルク制御中に発生する電動機損失Lと回転速度Rとの関係を表す、下限電圧損失ラインLL1、ノミナル電圧損失ラインLL2、上限電圧損失ラインLL3である。また、二点鎖線の曲線LL4は、電動機Mの弱め界磁制御を行わない場合にゼロトルク制御により発生する鉄損と回転速度Rとの関係を表す鉄損ラインLL4である。従って、鉄損ラインLL4に対して各損失ラインLL1〜LL3が上回っている分が、弱め界磁制御を行ったことによる損失、すなわち弱め界磁電流によりステータコイルで発生する銅損の大きさを示している。本例では、図中において「Rw」で示される回転速度Rから弱め界磁制御を開始する。このため、LL1〜LL4の全ての損失ラインは弱め界磁開始回転速度Rwまでは同一のライン上に重なっており、弱め界磁開始回転速度Rwより高い回転速度Rでは、それぞれの弱め界磁電流の大きさに応じて損失Lの大きさが異なっている。なお、下限電圧損失ラインLL1に示される電動機損失Lが連続運転可能損失Luに一致するときの電動機Mの回転速度Rが、電源電圧Vが下限電圧Vminである状態において電動機Mの発熱量と冷却性能とが均衡する連続運転可能回転速度Rcとなる。
図4から明らかなように、電源電圧Vが高くなるに従って、弱め界磁制御による損失が減少し、電動機損失Lが少なくなる。また、電源電圧Vが高くなるに従って、電動機損失Lが連続運転可能損失Luを超える回転速度Rが高くなる。すなわち、電圧上昇制御を行って電源電圧VをVmin、Vnom、Vmaxのように上昇させることにより、連続運転可能領域Acに含まれる電動機Mの回転速度Rの上限を次第に高くすることができ、より高い回転速度Rまでゼロトルク制御によって電動機Mを連続運転可能となる。また、電圧上昇制御を行って電源電圧Vを上昇させることにより、電動機損失Lを減少させ、すなわち電動機Mの発熱量を減少させ、電動機Mの温度上昇を抑制することができる。従って、電動機Mが上限温度Tmaxに達することを抑制できる。
上記のように、弱め界磁制御は、ステータコイルに発生する誘起電圧が電源電圧Vを超えないように、電動機Mの界磁磁束を弱める弱め界磁電流をステータコイルに流す制御である。そして、弱め界磁電流の値は、弱め界磁制御を行わなかった場合に発生する誘起電圧と電源電圧Vとの差が大きくなるに従って大きい値となる。ここで、弱め界磁制御を行わなかった場合に発生する誘起電圧は電動機Mの回転速度Rに応じた値となるため、同じ回転速度Rでは同じ誘起電圧が発生する。従って、電源電圧Vが高くなれば誘起電圧との差が小さくなるため、必要な弱め界磁電流の値も小さくなる。電源電圧Vが高くなるに従って弱め界磁電流が減少し、弱め界磁制御による損失も減少する。これにより、例えば、ハイブリッド車両2が最高車速付近の車速で長時間走行したために電動機Mが上限回転速度Rmax付近で長時間運転されるといったような、限られた状況に対応するための高い冷却性能を電動機Mに備えなくても、電動機Mの温度が上限温度Tmaxを超えることを抑制して適切に電動機Mを保護する制御を行うことができる。従って、ハイブリッド車両2側から要求される電動機Mの上限回転速度Rmaxでの発熱量に合わせた冷却性能を電動機Mに備えさせる場合に比べて、電動機Mを小型化、低コスト化することが可能となり、ハイブリッド車両2の軽量化や低コスト化が容易となる。
また本実施形態では、電圧上昇制御部17は、電源電圧Vが上限電圧Vmaxに達したときに電圧上昇制御を終了する。上記のとおり、電源電圧Vが高くなるに従って、電動機損失Lが少なくなり、電動機Mの発熱量が減少する。従って、電源電圧Vが上限電圧Vmaxに達するまで電圧上昇制御を行うことにより、電動機を発熱量が最も少ない状態にすることができる。従って、電動機の温度上昇をより効果的に抑制し、電動機Mの温度Tが上限温度Tmaxに達しないように適切に電動機Mを保護することが可能となる。
1−4.ハイブリッド車両の制御方法
次に、本実施形態に係る制御装置1によるハイブリッド車両2の制御方法について、フローチャートに基づいて説明する。図5は、本実施形態に係る制御装置1による電圧上昇制御に関するハイブリッド車両2の制御方法の全体の手順を示すフローチャートである。また、図6は、図5のステップ#02に係る特定昇温状態判定処理の手順を示すフローチャートである。このハイブリッド車両2に対する制御方法は、制御装置1における、主に昇温判定部15及び電圧上昇制御部17を構成するハードウェア又はソフトウェア(プログラム)或いはその両方により実行される。上記の各機能部がプログラムにより構成される場合には、制御装置1が有する演算処理装置が、上記の各機能部を構成するプログラムを実行するコンピュータとして動作する。
制御装置1は、電圧上昇制御に関連する処理に際しては、まず、ゼロトルク制御部13により電動機Mのゼロトルク制御が行われているか否かを判定する(ステップ#01)。上記のとおり、ゼロトルク制御部13は、電動機Mの状態が予め定められたゼロトルク制御実行条件を満たす場合、本実施形態では、電動機Mの回転速度Rが所定の出力限界回転速度Roを超えている場合に電動機Mのゼロトルク制御を行う。電動機Mがゼロトルク制御中でない場合には(ステップ#01:No)、処理は終了する。そして、ゼロトルク制御中であった場合には(ステップ#01:Yes)、昇温判定部15により電動機Mの状態が特定昇温状態であるか否かを判定する特定昇温状態判定処理を実行する(ステップ#02)。この特定昇温状態判定処理の手順については、後で図6に係るフローチャートに基づいて詳細に説明する。このステップ#02の判定処理の結果、電動機Mの状態が特定昇温状態でないと判定された場合には(ステップ#03:No)、処理は終了する。そして、電動機Mの状態が特定昇温状態であると判定された場合には(ステップ#03:Yes)、電圧上昇制御部17による電圧上昇制御が実行される(ステップ#04)。上記のとおり、電圧上昇制御部17は、発電機Gに発電を行わせて第一バッテリB1を充電することにより、電源電圧Vを上昇させる電圧上昇制御を行う。そして、電源電圧Vが上限温度Tmaxになるまでの間は(ステップ#05:No)電圧上昇制御が継続され、電源電圧Vが上限温度Tmaxとなったときに(ステップ#05:Yes)電圧上昇制御を終了する(ステップ#06)。以上で電圧上昇制御に関連する処理を終了する。
次に、図6に基づいて、特定昇温状態判定処理の手順について説明する。特定昇温状態判定処理では、まず、昇温判定部15は、電動機Mの温度Tを検出する(ステップ#11)。電動機Mの温度Tは、電動機温度センサS1により検出される。次に、昇温判定部15は、上述した第一判定条件の判定を行う。すなわち、昇温判定部15は、電動機Mの温度Tが上限温度Tmaxより低い温度に設定された判定温度Tt以上である(T≧Tt)か否かを判定する(ステップ#12)。そして、電動機Mの温度Tが判定温度Tt以上である場合には(ステップ#12:Yes)、第一判定条件が満たされたので、昇温判定部15は、電動機Mの状態が特定昇温状態であると判定する(ステップ#15)。一方、電動機Mの温度Tが判定温度Tt未満である場合には(ステップ#12:No)、昇温判定部15は、次に、上述した第二判定条件の判定を行う。すなわち、昇温判定部15は、まず電動機Mの回転速度Rが所定の判定回転速度Rt以上である(R≧Rt)か否かを判定する(ステップ#13)。そして、電動機Mの回転速度Rが所定の判定回転速度Rt未満である場合には(ステップ#13:No)、第二判定条件も満たされないので、昇温判定部15は、電動機Mの状態が特定昇温状態でないと判定する(ステップ#16)。一方、電動機Mの回転速度Rが所定の判定回転速度Rt以上である場合には(ステップ#13:Yes)、昇温判定部15は、その状態が所定の判定時間以上継続したか否かを判定する(ステップ#14)。このような判定時間は、タイマ18(図1参照)を用いて計測される。電動機Mの回転速度Rが所定の判定回転速度Rt以上である状態が所定の判定時間以上継続した場合には、第二判定条件が満たされたので、昇温判定部15は、電動機Mの状態が特定昇温状態であると判定する(ステップ#15)。電動機Mの回転速度Rが所定の判定回転速度Rt以上となっても、その状態が判定時間以上継続しなかった場合には(ステップ#14:No、ステップ#13:No)、昇温判定部15は、電動機Mの状態が特定昇温状態でないと判定する(ステップ#16)。以上で特定昇温状態判定処理を終了する。
2.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。本実施形態では、上記第一の実施形態とは異なり、電動機Mの温度Tが所定の出力限界温度Toを超えていることをゼロトルク制御実行条件としている。従って本実施形態では、ゼロトルク制御部13は、電動機Mの回転速度Rではなく、電動機の温度Tに基づいてゼロトルク制御を実行する。更に、本実施形態では、電動機制御部12が、電動機Mの温度Tに基づいて、電動機Mの出力トルクQを制限するトルク制限制御を実行する。本実施形態に係るゼロトルク制御は、このトルク制限制御によるトルク制限が最大となった状態である。以下では、本実施形態に係る制御装置1について、上記第一の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
図7に本実施形態に係る電動機Mの駆動可能範囲Aaの例を示している。この図に示すように、本実施形態では、電動機制御部12は、内燃機関IEの上限回転速度によって制限される電動機Mの上限回転速度Rmaxまで、電動機Mに正トルク又は負トルクを出力させるように構成されている。但し、上述のとおり、電動機Mが高回転で連続的に運転される状況では、電動機Mの温度Tが次第に上昇する可能性がある。そこで、本実施形態に係る電動機制御部12は、電動機Mの温度Tに基づいて、電動機Mの出力トルクを制限するトルク制限制御を実行する。これにより、ステータコイルに流す電流(特にq軸電流)を減少させ、電動機Mの発熱を抑え、電動機Mの温度Tが上昇することを抑制する。図8に、電動機Mの温度Tとトルク許容率QAとの関係の一例を示す。ここで、トルク許容率QAは、トルク制限制御を行う場合における、出力可能な最大トルクに対する出力許容トルクの割合である。具体的には、図7に示す電動機Mの駆動可能範囲Aa内における各回転速度Rでの電動機Mの出力トルクQの絶対値の最大値が出力可能な最大トルクである。一方、トルク制限制御による制限後に出力することを許容される最大のトルクが出力許容トルクである。トルク制限制御の実行中は、電動機Mの出力トルクQは、この出力許容トルク以下に制限される。本実施形態では、トルク許容率QAは、出力許容トルクを最大トルクにより除算して百分率で表したものとしている。すなわち、トルク許容率QAが100〔%〕の場合には、トルク制限制御は行われず、出力許容トルクは最大トルクに一致する。一方、トルク許容率QAが0〔%〕の場合には、最大トルクの値に関わらず出力許容トルクがゼロとなる。この状態は、トルク制限制御によるトルク制限が最大となった状態であり、ゼロトルク制御部13によるゼロトルク制御が実行される。また、例えばトルク許容率が70〔%〕である場合には、トルク制限制御により、出力許容トルクは最大トルクの70〔%〕の値に制限される。例えば、ある回転速度Rでの電動機Mの最大トルクが50〔N・m〕であり、トルク許容率が70〔%〕である場合には、出力許容トルクは35〔N・m〕とされる。このように、トルク許容率QAは、トルク制限制御によるトルク制限の程度を表している。
図8に示すような電動機Mの温度Tとトルク許容率QAとの関係は、トルク許容率マップとしてマップ化され、図1に示す記憶部19に記憶されると好適である。そして、電動機制御部12が、適宜トルク許容率マップを参照してトルク許容率QAを導出し、同じく記憶部19に記憶された駆動可能範囲Aaのマップに基づいて出力許容トルクを決定する。図8に示すように、本実施形態では、トルク許容率QAは、トルク制限開始温度Ts未満では100〔%〕に設定されている。従って、電動機制御部12は、電動機Mの温度Tがトルク制限開始温度Ts未満の状態ではトルク制限制御を実行しない。一方、トルク許容率QAは、トルク制限開始温度Ts以上では電動機Mの温度Tが上昇するに従って次第に低くなるように設定されている。具体的には、トルク許容率QAは、トルク制限開始温度Tsでの100〔%〕から出力限界温度Toでの0〔%〕まで、電動機Mの温度Tの上昇に比例して減少する値に設定されている。従って、電動機制御部12は、電動機Mの温度Tがトルク制限開始温度Ts以上であって出力限界温度To未満の状態では、電動機Mの温度Tが高くなるに従って出力許容トルクを小さくする(トルク制限の程度を大きくする)トルク制限制御を実行する。そして、トルク許容率QAは、出力限界温度To以上では0〔%〕に設定されている。従って、電動機制御部12は、電動機Mの温度Tが出力限界温度To以上の状態では出力許容トルクをゼロとする。これにより、ゼロトルク制御部13が、電動機Mの出力トルクQをゼロにするゼロトルク制御を実行する。電動機Mの温度Tとトルク許容率QAとの関係をこのように設定することにより、電動機Mの温度Tが所定の出力限界温度Toを超えていることをゼロトルク制御実行条件としている。よって、本実施形態に係るゼロトルク制御部13は、電動機Mの温度Tが所定の出力限界温度Toを超えた場合に電動機Mのゼロトルク制御を行う。ここで、この出力限界温度Toは、電動機Mの温度上昇を抑制するために、電動機Mによる正トルク又は負トルクの出力を停止し、ゼロトルク制御を開始する必要がある温度に設定される。このような出力限界温度Toは、電動機Mの仕様によって異なり、例えば電動機Mの冷却性能や発熱量等に応じて設定される。いずれにしても、出力限界温度Toは、特定昇温状態の判定のための判定温度Ttよりも低い温度に設定される。
本実施形態では、このように電動機Mの温度Tに基づいてゼロトルク制御を実行することにより、回転速度Rに基づいてゼロトルク制御を実行する上記第一の実施形態に比べて、電動機Mがトルクを出力可能な領域を広げている。すなわち、電動機Mの回転速度Rが上限回転速度Rmax付近の高回転域であっても、電動機Mの温度Tが出力限界温度Toに達するまでの短時間であればトルクを出力することを許容し、電動機Mによる駆動力補助や回生制動を行うことができる。従って、上記の第一実施形態に比べて、電動機Mのトルク制限が少ないハイブリッド車両2を実現することが可能となっている。
次に、本実施形態に係る制御装置1によるハイブリッド車両2の制御方法について、図9に示すフローチャートに基づいて説明する。この図9に示すように、本実施形態では、まず、電動機制御部12が、電動機温度センサS1により電動機Mの温度Tを検出する(ステップ#21)。次に、電動機制御部12は、図8に示すトルク許容率マップに基づいて、ステップ#21で検出した電動機Mの温度Tに対応するトルク許容率QAを決定する(ステップ#22)。その後、電動機制御部12は、ステップ#22で決定したトルク許容率QAに基づいて出力許容トルクを決定する(ステップ#23)。具体的には、電動機制御部12は、図7に示す駆動可能範囲マップに基づいて、そのときの電動機Mの回転速度Rにおいて出力可能な最大トルクを決定する。そして、電動機制御部12は、当該最大トルクとトルク許容率QAとを乗算して出力許容トルクを決定する。次に、電動機制御部12は、電動機動作点としてのトルク指令値が、出力許容トルクより大きいか否かを判定する(ステップ#24)。そして、トルク指令値が出力許容トルク以下である場合には(ステップ#24:No)、処理を終了する。一方、トルク指令値が出力許容トルクより大きい場合には(ステップ#24:Yes)、電動機制御部12は、トルク制限制御を実行する(ステップ#25)。上記のとおり、トルク制限制御の中にはゼロトルク制御も含まれており、ステップ#23で決定された出力許容トルクが0〔N・m〕である場合には、トルク制限制御として、ゼロトルク制御部13によるゼロトルク制御が実行される。その後、ステップ#26〜#31の処理へ進むが、これらの処理は、上記第一の実施形態に係る図5で説明したステップ#01〜#06の処理と同じである。よって、これらの各ステップに係る処理の説明は省略する。以上で電圧上昇制御に関連する処理を終了する。
3.その他の実施形態
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の各実施形態では、昇温判定部15が、電動機Mの温度Tに基づく第一判定条件と、電動機Mの回転速度Rに基づく第二判定条件の少なくとも一方が満たされたことにより特定昇温状態であると判定する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、昇温判定部15が、上述した第一判定条件及び第二判定条件の双方が満たされたことを条件として特定昇温状態であると判定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、昇温判定部15が、上述した第一判定条件及び第二判定条件のいずれか一方の条件のみを判定し、当該一方の条件のみに基づいて特定昇温状態の判定を行う構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(2)上記の各実施形態では、昇温判定部15が特定昇温状態であると判定するための第一判定条件に係る判定温度Ttが一定値である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、判定温度Ttが電源電圧Vに応じた可変値とされていても好適である。例えば、図10に示すように、判定温度Ttを、電源電圧Vが高くなるに従って高い温度に設定することも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合において、判定温度Ttは、電動機Mの上限温度Tmaxに対して所定の余裕値だけ低い温度に設定され、当該余裕値が、電源電圧Vが高くなるに従って少なくなる値であって、電圧上昇制御部17の電圧上昇制御によって電源電圧Vを上限電圧Vmaxまで上昇させるのに要する時間内で電動機Mの温度Tが上昇し得る上昇幅の最大値以上の値に設定されていると好適である。この余裕値は、下限電圧Vminから上限電圧Vmaxまでの各電源電圧Vの値毎に設定され、各電源電圧Vの値から上限電圧Vmaxまで電圧を上昇させるのに要する時間内での電動機Mの温度上昇幅の最大値に基づいて設定される。例えば、電源電圧Vがノミナル電圧Vnomであるときに上限電圧Vmaxまで上昇させるのに要する時間が15秒であり、その間に電動機Mの温度Tが上昇し得る上昇幅の最大値が5〔℃〕である場合、余裕値は5〔℃〕以上の値、例えば7〔℃〕に設定される。例えば、電動機Mの上限温度Tmaxが200〔℃〕である場合、ノミナル電圧Vnomについての判定温度Ttnomは193〔℃〕に設定される。当然ながら、電源電圧Vの値が高くなるに従って上限電圧Vmaxまで上昇させるのに要する時間が短くなり、その間に電動機Mの温度Tが上昇し得る上昇幅は小さくなる。従って、上記のようにして各電圧値について判定温度Ttをそれぞれ設定すれば、電源電圧Vが高くなるに従って高い判定温度Ttが設定される。図10に示す例では、下限電圧Vminでの判定温度Ttminから上限電圧Vmaxでの判定温度Ttmaxまで、電源電圧Vの値に比例して高い値となる判定温度Ttを設定している。このような判定温度Ttを設定することにより、電源電圧Vに応じて電圧上昇制御の実行を可能な限り遅らせることが可能となる。従って、ハイブリッド車両2の回生制動による充電機会を確保しつつ、電動機Mの温度Tが上限温度Tmaxに達する前に電動機Mの温度上昇を抑制するように電圧上昇制御を実行し、適切に電動機Mを保護することができる。
(3)上記の各実施形態では、電源電圧が上限電圧に達したときに電圧上昇制御を終了する構成を例として説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、電源電圧が上限電圧以下に設定された終了設定電圧に達した時点で電圧上昇制御を終了する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。またこの際、電動機の回転速度に応じて、電動機の発熱量が冷却性能を下回るように終了設定電圧を可変決定する構成としても好適である。更にこの場合、終了設定電圧は、電動機の回転速度が高くなるに従って高い電圧に設定されていると好適である。この構成によれば、電圧上昇制御を行った場合であっても電源電圧を上限電圧未満として車両の回生制動による充電の余地を残すことが可能となる。よって、車両の回生制動による充電機会を確保しつつ、電動機の温度が上限温度に達する前に電動機の温度上昇を抑制する制御を行い、適切に電動機を保護することができる。
(4)上記の各実施形態では、発電機Gが発電した電力が、高圧の第一バッテリB1へ供給されて第一バッテリB1が充電される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、発電機Gが発電した電力が、低圧の第二バッテリB2へ供給されて第二バッテリB2が充電される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、発電機Gは、第二バッテリB2及びコンバータ22を介して、間接的に第一バッテリB1の充電を行う。従って、電圧上昇制御では、電圧上昇制御部17は、まず発電機Gに発電を行わせて第二バッテリB2を充電し、当該第二バッテリB2の電圧をコンバータ22により昇圧して第一バッテリB1の充電を行うことにより、第一バッテリB1の電源電圧Vを上昇させる。
(5)上記の各実施形態では、昇温判定部15が、電動機Mの温度Tに関して、当該温度Tが、上限温度Tmaxより低い温度に設定された判定温度Ttに達した場合に特定昇温状態であると判定する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、昇温判定部15は、電動機Mの温度Tが、上限温度Tmaxより低い温度に設定された判定温度Tt以上である状態が、予め定められた判定時間継続した場合に特定昇温状態であると判定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、判定温度Ttは、上記の実施形態における判定温度Ttと同様に設定することができる。また、予め定められた判定時間継続することを条件とするので、上記の実施形態における判定温度Ttよりも低い温度に設定しても好適である。ここで、判定温度Tt以上である状態が所定の判定時間以上継続することを条件とするのは、電動機Mの温度Tが短時間だけ上昇して直ぐに下降する場合であって上限温度Tmaxまで到達する可能性が低い場合にまで電圧上昇制御を行うことを避けるためである。従って、判定時間は、判定温度Ttとの関係で、電動機Mの温度Tが上限温度Tmaxまで上昇する可能性があることを判定できるような時間を設定すると好適である。
(6)上記の各実施形態では、昇温判定部15が、電動機Mの回転速度Rに基づいて特定昇温状態を判定する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。上記の実施形態のように、電動機Mの回転速度Rと内燃機関IEの回転速度とが比例する場合には、内燃機関IEの回転速度に基づいて特定昇温状態を判定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。例えば、内燃機関IEが、予め定められた判定回転速度以上の回転速度で回転する状態を予め定められた時間継続したことを条件として電圧上昇制御を実行する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(7)上記の各実施形態では、昇温判定部15により特定昇温状態であると判定された場合に必ず、電圧上昇制御部17が電圧上昇制御を実行する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、電源電圧Vが予め定められた上限電圧Vmaxよりも低い電圧に設定された上昇制御許可電圧以下であることを条件として、電圧上昇制御部17が電圧上昇制御を行う構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。ここで、上昇制御許可電圧は、電圧上昇制御を行っても電動機Mの温度上昇を抑制する効果がほとんど得られない電圧、すなわち電源電圧Vの上限電圧Vmaxに非常に近い温度に設定すると好適である。これにより、電圧上昇制御を行っても電源電圧Vの上昇幅が小さいために電動機Mの温度上昇を抑制する効果が少ない場合に、無駄な電圧上昇制御を実行しない構成とすることができる。なお、このような場合には、例えば、変速機構4の変速比を上昇させ、電動機M及び内燃機関IEの回転速度を低下させる制御を行うことができる。
(8)上記第一の実施形態では、電動機Mの回転速度Rが所定の出力限界回転速度Roを超えていることをゼロトルク制御実行条件とする場合について説明し、上記第二の実施形態では、電動機Mの温度Tが所定の出力限界温度Toを超えていることをゼロトルク制御実行条件とする場合について説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、電動機Mの回転速度Rが所定の出力限界回転速度Roを超えていること及び電動機Mの温度Tが所定の出力限界温度Toを超えていることの双方を判定し、これらの一方が満たされた場合にゼロトルク制御を実行する構成、或いは、これらの一方が満たされた場合にゼロトルク制御を実行する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。また、ゼロトルク制御実行条件として、これら以外の条件を設定することも可能である。例えば、電動機Mが、出力限界回転速度Ro以上の回転速度Rで回転する状態を予め定められた時間継続したことをゼロトルク制御実行条件とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(9)上記の各実施形態では、本発明に係る制御装置1による制御対象となる車両が、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両2である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御対象となる車両を、少なくとも3つの回転要素を有する動力分配用の差動歯車装置を備え、差動歯車装置の第一の回転要素に内燃機関IE、第二の回転要素に発電機G、第三の回転要素に電動機M及び車輪Wが駆動連結される、いわゆるスプリット方式のハイブリッド車両とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このようなスプリット方式のハイブリッド車両においても、高車速域において電動機Mのゼロトルク制御を行い、主に内燃機関IEのトルクにより車両を走行させるモードを有する場合がある。このような場合には、本発明の構成を適用することができる。
本発明は、車両の駆動力源としての内燃機関及び電動機と、前記電動機の電源電圧を供給する蓄電装置と、前記内燃機関により駆動されて発電し、前記蓄電装置を充電可能な発電機と、を備えたハイブリッド車両を制御する制御装置に好適に利用可能である。
1:制御装置(ハイブリッド車両用制御装置)
2:ハイブリッド車両
3:駆動伝達機構
4:変速機構
13:ゼロトルク制御部
15:昇温判定部
17:電圧上昇制御部
IE:内燃機関
M:電動機
G:発電機
B1:第一バッテリ(蓄電装置)
W:車輪
Q:出力トルク
T:電動機温度
Tmax:上限温度
Tt:判定温度
V:電源電圧
Vmax:上限電圧
Vmin:下限電圧
R:回転速度
Ro:出力限界回転速度
Rt:判定回転速度
Rc:連続運転可能回転速度

Claims (11)

  1. 車両の駆動力源としての内燃機関及び電動機と、前記電動機の電源電圧を供給する蓄電装置と、前記内燃機関により駆動されて発電する発電機と、を備えたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両用制御装置であって、
    前記電動機の状態が予め定められたゼロトルク制御実行条件を満たす場合に前記電動機の出力トルクをゼロにするゼロトルク制御を行うゼロトルク制御部と、
    前記電動機の状態が、当該電動機の温度が所定の上限温度に達する可能性がある特定昇温状態であることを判定する昇温判定部と、
    前記電動機の前記ゼロトルク制御が実行されており、且つ前記昇温判定部により前記特定昇温状態であることが判定されたことを条件として、前記発電機に発電を行わせて前記蓄電装置を充電し、前記電源電圧を上昇させる電圧上昇制御を行う電圧上昇制御部と、
    を備えたハイブリッド車両用制御装置。
  2. 前記昇温判定部は、前記電動機の温度が、前記上限温度より低い温度に設定された判定温度に達した場合に、前記特定昇温状態であると判定する請求項1に記載のハイブリッド車両用制御装置。
  3. 前記昇温判定部は、前記電動機の温度が前記上限温度より低い温度に設定された判定温度以上である状態が、予め定められた時間継続した場合に、前記特定昇温状態であると判定する請求項1に記載のハイブリッド車両用制御装置。
  4. 前記判定温度は、前記上限温度に対して所定の余裕値だけ低い温度に設定され、
    前記余裕値は、前記電圧上昇制御によって前記電源電圧を予め定められた下限電圧から上限電圧まで上昇させるのに要する時間内で前記電動機の温度が上昇し得る上昇幅の最大値以上の値に設定されている請求項2又は3に記載のハイブリッド車両用制御装置。
  5. 前記判定温度は、前記電源電圧が高くなるに従って高い温度に設定されている請求項2又は3に記載のハイブリッド車両用制御装置。
  6. 前記判定温度は、前記上限温度に対して所定の余裕値だけ低い温度に設定され、
    前記余裕値は、前記電源電圧が高くなるに従って少なくなる値であって、前記電圧上昇制御によって前記電源電圧を上限電圧まで上昇させるのに要する時間内で前記電動機の温度が上昇し得る上昇幅の最大値以上の値に設定されている請求項5に記載のハイブリッド車両用制御装置。
  7. 前記昇温判定部は、前記電動機が、予め定められた判定回転速度以上の回転速度で回転する状態を予め定められた時間継続した場合に、前記特定昇温状態であると判定する請求項1から6のいずれか一項に記載のハイブリッド車両用制御装置。
  8. 前記判定回転速度は、連続運転可能回転速度以上の回転速度に設定され、
    前記連続運転可能回転速度は、前記電源電圧が予め定められた下限電圧である状態において前記電動機の発熱量と冷却性能とが均衡する回転速度である請求項7に記載のハイブリッド車両用制御装置。
  9. 前記電圧上昇制御部は、前記電源電圧が、予め定められた上限電圧に達したときに前記電圧上昇制御を終了する請求項1から8のいずれか一項に記載のハイブリッド車両用制御装置。
  10. 前記ゼロトルク制御実行条件は、前記電動機の回転速度が所定の出力限界回転速度を超えていること、及び前記電動機の温度が所定の出力限界温度を超えていること、の少なくとも一方である請求項1から9のいずれか一項に記載のハイブリッド車両用制御装置。
  11. 前記ハイブリッド車両は、
    前記内燃機関が、変速機構を含む駆動伝達機構を介して車輪に駆動連結され、
    前記電動機が、前記駆動伝達機構のいずれかの回転要素に対して、常に駆動力を伝達する状態で駆動連結され、
    前記発電機が、前記内燃機関に駆動連結された構成を備えている請求項1から10のいずれか一項に記載のハイブリッド車両用制御装置。
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