JP2012035282A - アルミニウム板材のプレス絞り成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミニウム板材の絞り成形において、広範囲の成形限界が得られる絞り成形方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム板材の表面に潤滑油を塗布し、これをダイとブランクホルダーとで狭持してしわ押さえ部にしわ押さえ面圧を発生させ、しわ押さえ面圧を付与しながらダイとブランクホルダーを同時に下降させてダイとパンチとによりアルミニウム板材のプレス絞り成形を行う方法において、アルミニウム板材の表面の粗さ曲線における中心線平均粗さRaの平均値B(μm)が、0.8≦Bであり、アルミニウム板材がパンチに接触した時点から下死点までの成形ストロークの80%に達した際におけるしわ押さえ面圧が10MPa以上であるアルミニウム板材のプレス絞り成形方法。
【選択図】図3

Description

本発明は、アルミニウム板材のプレス絞り成形方法に関し、所定の表面状態を満たすアルミニウム板材を用い、プレス成形時のパンチ荷重及びしわ押さえ面圧を制御することによって成形限界を向上できるプレス絞り成形方法に関する。
近年、自動車の燃費削減のために車体の軽量化が進められている。その対策の一つとして、従来、軟鋼板等の成形パネルが用いられていた自動車ボディシートに、より軽量なアルミニウム板材の成形パネルが用いられている。しかしながら、アルミニウム板材は、軟鋼板と比べると成形性が劣り、自動車ボディシートの中でも複雑な形状を有する部位や深い側壁を有する部位を一体成形することができず、アルミニウム板材の適用には制約があった。
加えて近年、成形後の洗浄のし易さ、コスト面及び防錆の観点から、アルミニウム板材は低粘度の防錆油を塗布してプレスされる。しかしながら、低粘度の防錆油の使用により成形限界を狭めてしまうことになる。
さらに、アルミニウム板材を自動車部品に成形する際に発生するスプリングバックに起因する形状凍結不良が問題になっている。この形状凍結不良は、部品間の建付け隙間の均一性の問題を含む最終製品の外観品質を著しく損なうばかりでなく、成形後に行われる組立作業において溶接不良の原因ともなる。このため、プレス成形時の形状凍結不良の改善が切望されている。
曲げ加工で観察されるスプリングバックは、曲げ加工時に金型内のブランクに生じた残留応力が除荷時に弾性回復変形するために生ずる現象であり、成形終了時点での残留応力が板厚方向に不均一に分布することが原因である。
形状凍結不良を低減させるためには、プレス成形時の曲げ加工部において発生する板厚方向の応力差を減少させることが効果的である。これは、特に成形ストロークの終盤においてブランクに対して引張応力を負荷することによって実現できる。この引張り応力は、成形中にダイとブランクホルダーの間にあるアルミニウム板材のフランジ部分にしわ押さえ荷重を負荷しながら、絞り加工を行うことによって発生させることができる。但し、このしわ押さえ荷重には適正な範囲があり、大き過ぎると割れを発生させてしまう。アルミニウム板材では軟鋼板に比べて、この適正なしわ押さえ荷重の範囲が狭いことが知られており、プレス成形品の品質を一定に保つことの障害の一つとなっていた。
成形性に対する素板の表面粗度の影響について、例えば非特許文献1で調査されているが、試験材はアルミキルド低炭素鋼冷延薄板であり、プレス成形用アルミニウム板材とは異なる。また、使用した潤滑油の動粘度の範囲は23〜390mm/s(50℃)のものを用いている。これは単に低粘度の防錆油が潤滑油となっているに過ぎない自動車部品等向けのアルミニウム板材とは成形性が大きく異なるので、非特許文献1の技術を必ずしも直ちに適用できるわけではない。
従来、プレス成形用の金属板の表面に関して、特許文献1、2に記載されている。特許文献1では、材料が亜鉛めっき鋼板であり、中心線平均粗さをある一定値以下とすることにより、真接触面積を増加させて局部的な凝着反応を抑制できるとしている。特許文献2では、材料の周辺部からの深さを2種類にしたことを特徴とし、プレス成形において広い面圧領域で成形性を改善できるとしている。
一方、特許文献3〜5においては、アルミニウム板材のプレス絞り成形での表面性状について記載されている。しかしながら、これら特許文献には、しわ押さえ面圧の制御方法について何も記載されていない。
特開2002−4020号公報 特開平09−29305号公報 特開平01−111850号公報 特開昭63−238903号公報 特開昭61−186110号公報
『塑性と加工』,深絞り性に及ぼす工具と薄板の表面粗さの影響、30−14(1962−3)、p.207
本発明は上記従来技術における問題に鑑み、成形可能高さの拡大を図ることによって深い側壁部位を成形することを可能として、アルミニウム板材の成形限界を向上することができ、また、耐形状凍結不良を向上させたアルミニウム板材のプレス絞り成形方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上型ダイを取り付けたスライドを上死点から下降させて、クッションパッドに接続されたブランクホルダーと上型ダイとでブランクであるアルミニウム板材の一部を狭持することによりしわ押さえ面圧を発生させた後、スライド及び前記クッションパッドを同時に下降させることによりしわ押さえ面圧を保持しつつブランクの下方位置に固定された下型パンチと上型ダイとでブランクの絞り成形加工を行なうアルミニウム板材のプレス絞り成形方法において、しわ押さえ荷重としわ押さえ部面積から算出されるしわ押さえ面圧の制御を所定の条件で行うことでパンチ肩部での割れを抑制しながら、耐形状凍結不良を向上できることを見出した。
すなわち、本発明は請求項1において、アルミニウム板材の表面に潤滑油を塗布し、これをダイとブランクホルダーとで狭持して当該アルミニウム板材のしわ押さえ部にしわ押さえ面圧を発生させ、しわ押さえ面圧を付与しながら前記ダイとブランクホルダーを同時に下降させてダイとパンチとにより前記アルミニウム板材のプレス絞り成形を行う方法において、アルミニウム板材の表面の粗さ曲線における中心線平均粗さRaの平均値B(μm)が0.8≦Bであり、アルミニウム板材がパンチに接触した時点から下死点までの成形ストロークの80%に達した際におけるしわ押さえ面圧が10MPa以上であることを特徴とするアルミニウム板材のプレス絞り成形方法とした。
本発明は請求項2において、しわ押さえ部の全体又は一部が縮みフランジ変形する金型を用いるものとした。
本発明は請求項3において、潤滑油の40℃における動粘度を2〜20mm/sとした。
本発明は請求項4において、前記アルミニウム板材の表面の粗さ曲線における凹凸の平均間隔Sm(μm)を75≦Sm≦100とした。
本発明は請求項5において、アルミニウム板材を5000系又は6000系のアルミニウム合金とした。
本発明は請求項6において、しわ押さえ面圧を制御する手段としてNCダイクッション機構を備えたプレス絞り成形機械を使用するものとした。
本発明に係る方法により、所定の表面形状を有するアルミニウム板材を用いて、成形中のしわ押さえ面圧を制御することによって、パンチ肩部での割れを発生させることなく、耐形状凍結性を向上することができる、アルミニウム板材のプレス絞り成形法を提供可能である。
縮みフランジ変形を説明する概念図である。 本発明に係るプレス絞り成形方法における、成形高さと加工速度の関係を示すグラフである。 本発明に係るプレス絞り成形方法に使用することができるプレス絞り成形機械の正面図である。 本発明に係るプレス絞り成形方法における、しわ押さえ面圧とパンチ頭部−縦壁部の角度の関係を示すグラフである。
本発明に係るプレス絞り成形方法に用いられるプレス絞り成形機械では、ダイを取り付けたスライドを上死点から下降させて、クッションパッドに接続されたブランクホルダーとダイとでブランクであるアルミニウム板材の一部を狭持する。これによって、アルミニウム板材のしわ押さえ部にしわ押さえ面圧を発生させる。その後、スライド及びクッションパッドを同時に下降させることによりアルミニウム板材に対するしわ押さえ面圧を保持しつつブランクの下方位置に固定されたパンチとダイとでブランクの深絞り成形加工を行うものである。
本発明者らは、アルミニウム板材のプレス絞り成形につき検討した結果、単にアルミニウム板材の表面形状だけを制御しても、パンチ肩部における割れの防止や形状凍結不良の改善は困難であることが判明した。プレス絞り成形においては、アルミニウム板材の表面凹凸がつぶれることにより、表面凹凸に保持された潤滑油が板表面と金型の接触する部分に供給され、金型と材料との間に潤滑油膜が形成される効果でパンチ肩部のわれを防止し、高いしわ押さえ面圧をかけることで形状凍結不良を改善することが出来る。表面凹凸の変形を制御するためには、しわ押さえ面圧を厳密に制御する必要がある。本発明は、しわ押さえ面圧を制御することによって、アルミニウム板材の表面凹凸変形を制御し、成形中の潤滑状態を良好とすることで、アルミニウム板材の成形性を向上させるものである。
A.しわ押さえ面圧
アルミニウム板材の表面の凹凸はプレス絞り成形中に変形するが、成形中のしわ押さえ面圧を制御することでその変形度合いを制御できると本発明者らは考え、プレス絞り成形について試行錯誤を繰り返した。その結果、ブランクであるアルミニウム板材がパンチに接触した時点から下死点までの成形ストロークの80%に達した際におけるしわ押さえ面圧が10MPa以上の場合に、変形度合いを良好に制御できることが判明した。ブランクがパンチに接触した時点から下死点までの成形ストロークの80%に達した際におけるしわ押さえ面圧が10MPa未満の場合には、アルミニウム板材の表面凹凸の変形が不十分なため、表面凹凸に保持した潤滑油を金型との接触部に供給することが出来ない。ここで、成形ストロークとは、ブランクがパンチに接触した時点から下死点に至るまでの距離をいう。なお、成形開始直後におけるしわ押さえ面圧は、4.43MPa以上となるように設定することが望ましい。4.43MPa未満では、成形過程においてアルミニウム板材のフランジ部にしわが発生し、成形不良となってしまう。
しわ押さえ部とは、スライドに取り付けられたダイとクッションパッドに接続されたブランクホルダーとによって狭持されているアルミニウム板材部分を指す。しわ押さえ部の面積は、しわ押さえ部が引張り力を受けてダイス内側に流入していくため、成形とともに変化する。ある成形量時点でのしわ押さえ部面積D(mm)は、成形開始直後のしわ押さえ部面積F(mm)、成形高さG(mm)、パンチ周長H(mm)、パンチ肩半径I(mm)及びダイ肩半径J(mm)とすると、D=F−H×(G−I−J)によって算出することができる。ここで、しわ押さえ面圧E(MPa)は、しわ押さえ荷重C(N)、しわ押さえ部面積D(mm)とすると、E=C/Dによって算出される。ただし、成形高さG(mm)がパンチ肩半径I(mm)とダイ肩半径J(mm)との和を超えるまでの間は、絞り変形が板材に与えられておらず張り出し成形に近い変形となるので、しわ押さえ部面積減少は無視できるほど小さく、D=Fで計算される。
また、ブランクがパンチに接触した時点から下死点までの成形ストロークの80%のときのしわ押え面圧を規定する理由は次のとおりである。本発明は、アルミニウム板材のしわ押さえ部の全体又は一部が縮みフランジ変形することにより、材料表面凹凸が変形する現象を利用するものである。成形高さが低いときにしわ押さえ面圧を高くすると、縮みフランジ変形が有効に発生しておらず、潤滑油を供給する効果が得られないため、割れが発生する。また成形高さが高くなりすぎたときにしわ押さえ面圧を高くした場合には、残りのストロークが短いため形状凍結性向上効果が得られない。本発明者らはアルミニウム板に縮みフランジ変形が有効に発生し、アルミニウム板材表面の凹凸がつぶれて、潤滑油を十分に保持し供給するために、成形ストロークが80%である時点からのしわ押さえ面圧を規定するのが最もよいことを見出した。このような理由からブランクがパンチに接触した時点から下死点までの成形ストロークの80%のときのしわ押え面圧を規定するものである。
以上のように、本発明に係るプレス絞り成形方法においては、ブランクがパンチに接触した時点から下死点までの成形ストロークの80%に達した際におけるしわ押さえ面圧を10MPa以上とする。
B.中心線平均粗さRaの平均値B(μm)
アルミニウム板材の表面の粗さ曲線における中心線平均粗さRaはJISB0601に規定され、カットオフ0.8mmとした値である。アルミニウム板材の圧延方向に直交する方向の中心線平均粗さRaを5点測定し、その平均値をB(μm)とした。
プレス絞り成形中において、アルミニウム板材の表面凹凸は、縮みフランジ変形と金型との摺動により変形する。この凹凸の変形のし易さの程度を良く示しているのは、表面粗さパラメーターの中では中心線平均粗さRaであると本発明者らは考え、プレス絞り成形について試行錯誤を繰り返した。その結果、中心線平均粗さRaの平均値B(μm)として、0.8≦Bがアルミニウム板材の表面凹凸の変形との関係で良好な範囲であることを見出した。
Bが0.8μm未満では、金型との摺動によって成形初期に大半の潤滑油がアルミニウム板と金型の接触部分から掃きだされてしまうため、成形中に十分な量の潤滑油が保持されず、しわ押さえ面圧を高くすると割れが発生する。一方で、アルミニウム板材のBが0.8μm以上であれば、十分な量の潤滑油を保持することが可能となり、しわ押さえ面圧を高くすることで割れが発生せず、形状凍結性を向上することが出来る。したがって、本発明に係るプレス絞り成形方法においては、アルミニウム板材の表面の粗さ曲線における中心線平均粗さRaの平均値B(μm)を0.8以上とする。また、Bの上限は規定していないが、2.0μmを超えると表面に目視で確認できる程の凹凸が生じるため外観が劣化するなどの理由から工業的に使用される例は少ない。したがって、アルミニウム板材のBは2.0μm以下が好ましい。
C.縮みフランジ変形
図1に示すように、アルミニウム板材のしわ押さえ部が引張り力を受けてダイス内側に流入する際に、板面内で流入方向と直角方向に圧縮応力を受ける変形を縮みフランジ変形という。縮みフランジ変形は板表面の凹凸形状の変形を大きくし、潤滑油の供給状態を良好にすることができる。そこで、本発明に係るプレス絞り成形方法においては、アルミニウム板材のしわ押さえ部の全体又は一部が縮みフランジ変形する金型を用いるのが好ましい。
D.潤滑油
プレス絞り成形方法に用いられる潤滑油の動粘度については、2mm/s(40℃)未満のものは、プレス成形が不安定になる場合があり成形不良を生じ易くなる。一方、動粘度が20mm/s(40℃)を超えるものは、プレス成形後の洗浄を行い難い場合がある。そこで、本発明に係るプレス絞り成形方法においてアルミニウム板材に塗布する潤滑油としては、40℃における動粘度が2〜20mm/sを用いるのが好ましい。
本発明は、アルミニウム板材の絞り成形において、防錆油のような低粘度の油を潤滑油として用いた場合でも、パンチ肩部での割れの発生を防止し、生産性を低下させることなく、成形限界を向上できるプレス絞り成形方法を提供できるものである。
E.凹凸の平均間隔Sm
上述の中心線平均粗さRaの平均値Bに加えて、アルミニウム板材の表面の粗さ曲線における凹凸の平均間隔Smが75μm≦Sm≦100μmを満たすアルミニウム板材を用いることにより、更に良好な成形状態を得ることができる。Smが75μm未満では、曲げモーメントに対する変形抵抗が小さくなり、凸部の変形で潤滑油の大半を成形開始直後から消費してしまう場合がある。一方、Smが100μmを超えると、曲げモーメントに対する抵抗が大きくなり過ぎて変形が進行せず、潤滑油を十分に消費しないまま、成形が終了する場合がある。したがって、本発明に係るプレス絞り成形方法においては、アルミニウム板材の表面の粗さ曲線における凹凸の平均間隔Smは、75〜100μmとするのが好ましい。
ここで、SmはJISB0601に規定され、カットオフ0.8mmとした値である。アルミニウム板材の圧延方向に直行する方向のSmを5点測定し、その平均値をもってSmとした。
F.アルミニウム板材
本発明で用いるアルミニウム板材としては、成形性及び強度の観点から5000系又は6000系のアルミニウム合金が好適に用いられる。5000系アルミニウム合金板材は、強度が高く、成形性が良好なことから様々な用途に用いられている。6000系アルミニウム合金板材は、5000系に比べて成形性は若干劣るが、塗装焼付け時に強度が上昇する特性を有しており、近年フード等の自動車用パネルとして採用されている。そこで、本発明に係るプレス絞り成形方法において用いるアルミニウム板材は、5000系又は6000系のアルミニウム合金が好ましい。なお、5000系及び6000系のアルミニウム合金はいずれも鋼板に比べて成形性が劣るので、この点については今後の改善が望まれている。また、本発明で用いるアルミニウム板材の厚さは、一般のプレス絞り成形において成形されるブランクの厚さであり、0.6〜2.0mmである。
G.プレス絞り成形機械
本発明に係るプレス絞り成形方法を具体的に実現するには、しわ押さえ面圧を所望の通りに制御することが可能なプレス絞り成形機械が使用される。これには、NCダイクッション機構を備えたものを使用するのが、本発明の目的を達成するために極めて有効である。
H.成形速度
本発明に係るプレス絞り成形方法における、成形高さと加工速度の関係を表わすグラフを図2に示す。生産性の観点からプレス絞り成形の成形速度は、100mm/s以上とするのが望ましい。
I.金型
本発明は、アルミニウム板材のプレス成形ならではのものである。但し、金型の表面粗度が大きすぎると成形品の表面に目視できる凹凸を生じさせる懸念がある。したがって、目視レベルでの表面凹凸を認識させないため、金型の表面粗度を5μm以下とすることが望ましい。加えて、金型の材料に関しては成形品の寸法精度やプレス成形が安定して行えるよう、形状や表面粗度が容易に変化しない通常用いられている鋼製の金型が望ましい。
実施例としてプレス絞り成形を行った。公称の板厚が1mmで表面粗度の異なる5000系アルミニウム板材JIS5023−O材、JIS5182−O材、JIS5052−O材、6000系アルミニウム板材AA6022−T4材、AA6016−T4材、AA6111−T4材を用いた。アルミニウム板材の表面は、ミルフィニッシュとダルフィニッシュで仕上げた。潤滑油として、市販の潤滑油1(動粘度3.9mm/s(40℃))、潤滑油2(動粘度16.5mm/s(40℃))、潤滑油3(動粘度1.5mm/s(40℃))、潤滑油4(動粘度20.7mm2/s(40℃))を用いた。
プレス絞り成形には、図3に示すプレス絞り成形機械を使用した。ダイ2を取り付けたスライド1を上死点から下降させて、クッションピン5を介してクッションパッド8に接続されたブランクホルダー4とダイ2とでブランクであるアルミニウム板材3の一部を狭持することによりアルミニウム板材3にしわ押さえ面圧を発生させた。次いで、スライド1及びクッションパッド8を同時に下降させることにより、しわ押さえ面圧を保持しつつアルミニウム板材3の下方位置に固定されたパンチ6とダイ2とでアルミニウム板材3の絞り成形加工を行なった。しわ押さえ荷重としわ押さえ部面積から求められるしわ押さえ面圧は、NCダイクッション機構によって制御した。
このプレス絞り成形機械は、リンク機構をサーボモーターで制御するリンクサーボプレスであり、成形中の速度としわ押さえ面圧を制御できる。リニアスケール20でスライドの位置を検出し、圧力センサ10で油圧室9内の圧力を検出し、パルスコーダ17からのパルス信号を制御部18にフィードバックして、記憶部19に接続された制御部18がサーボモーター11を制御する。サーボモーター11は小プーリー16に接続され、タイミングベルト15を介して小プーリー16と大プーリー14が配置される。大プーリー14はボールナット12で固定されたボールねじ13に接続されている。
成形試験では、短辺150mm、長辺300mmの長方形状の角筒絞り金型で絞り成形を行った。アルミニウム板材の形状は、短辺304mm、長辺426mmでコーナーをカットした。成形条件として、成形開始直後のしわ押さえ部の面圧を4.95MPaとし、成形高さを50mmとした。アルミニウム板材の両面には、上記潤滑油を塗布した。ダイ、ブランクホルダー、パンチの表面の粗度は1.6μmとした。
パンチとアルミニウム板材とが当接する時のスライド下降速度は、175mm/sとした。各加速度条件において出来るだけ加速して成形する時間を長くとり、成形中に871mm/sの加速度で加速してその後に減速を行う速度パターンを実施した。今回の試験では絞り抜くわけではないので、下死点で成形速度は必ず0にならなければならない。よって、パンチの減速は必ず行わなければならない。
発明例1〜26および比較例1〜20として、種々の表面形状を持つ材料種5023−O、5182−O、5052−O、6022−T4、6016−T4、6111−T4、潤滑油1、潤滑油2、潤滑油3、潤滑油4を用いて、成形ストロークが80%に達した際における種々のしわ押さえ面圧での成形性、形状凍結性、脱脂性を評価した。成形性の評価は、コーナーのパンチ肩部での括れおよび割れによって判定した。判定は目視によって行った。具体的には、割れが発生していないものを○、括れが発生したものを△、割れが発生したものを×とした。○、△を合格とし、×を不合格とした。形状凍結性の評価は、成形体のパンチ頭部と縦壁部の角度を測定した。測定した結果を図4に示す。この角度が92.0°以内に収まっているものを○、それを超えるものを×とした。○を合格とし、×を不合格とした。なお、測定には輪郭形状測定器を用いた。参考評価として脱脂性も評価した。具体的には、成形パネルをアルカリ脱脂し、その水濡れ性を評価した。パネル表面全体(100%)が水に濡れた場合を○、パネル表面の80%以上で100%未満が水に濡れた場合を△、80%を下回る場合を×とした。成形性が○、△、形状凍結性が○の場合を発明例とし、結果を表1に示す。成形性及び形状凍結性の少なくともいずれかが×の場合を比較例とし、結果を表2に示す
Figure 2012035282
Figure 2012035282
発明例1〜18は、材料種5023−O、5182−O、5052−O、6022−T4、6016−T4、6111−T4を用いて、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa以上、潤滑油1、潤滑油2を用いた場合であり、成形性、形状凍結性が合格、脱脂性が○となった。
発明例19、20は、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa以上、潤滑油3を用いた場合であり、成形性評価の結果、パンチ肩部に括れが発生し、成形性が若干劣った。
発明例21、22は、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa以上、潤滑油4を用いた場合であり、脱脂性評価の結果、水濡れ性が△となり、脱脂性が劣った。
発明例23、24は、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa以上、凹凸の平均間隔Smが100μmより大きい場合であり、成形性評価の結果、パンチ肩部で括れが発生し、成形性が若干劣った。
発明例25、26は、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa以上、凹凸の平均間隔Smが75μmより小さい場合であり、成形性評価の結果、パンチ肩部で括れが発生し、成形性が若干劣った。
比較例1〜4は、Raが0.8μm未満、しわ押さえ面圧が10MPa以上の場合であり、成形性評価の結果、パンチ肩部で割れが発生し、成形性が不合格となった。
比較例5〜10は、材料種5023−Oを用いて、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa未満の場合である。形状凍結性評価の結果、パンチ頭部と縦壁部の角度が92.0°を超え、形状凍結性が不合格となった。
比較例11〜12は、材料種5182−Oを用いて、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa未満の場合である。形状凍結性評価の結果、パンチ頭部と縦壁部の角度が92.0°を超え、形状凍結性が不合格となった。
比較例13〜14は、材料種5052−Oを用いて、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa未満の場合である。形状凍結性評価の結果、パンチ頭部と縦壁部の角度が92.0°を超え、形状凍結性が不合格となった。
比較例15〜16は、材料種6022−T4を用いて、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa未満の場合である。形状凍結性評価の結果、パンチ頭部と縦壁部の角度が92.0°を超え、形状凍結性が不合格となった。
比較例17〜18は、材料種6016−T4を用いて、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa未満の場合である。形状凍結性評価の結果、パンチ頭部と縦壁部の角度が92.0°を超え、形状凍結性が不合格となった。
比較例19〜20は、材料種6111−T4を用いて、Raが0.8μm以上、しわ押さえ面圧が10MPa未満の場合である。形状凍結性評価の結果、パンチ頭部と縦壁部の角度が92.0°を超え、形状凍結性が不合格となった。
本発明に係るアルミニウム板材のプレス絞り成形方法によって、深い側壁部位の成形、成形限界の向上、ならびに、耐形状凍結不良の向上を達成することが可能となった。
1…スライド
2…ダイ
3…アルミニウム板材(ブランク)
4…ブランクホルダー
5…クッションピン
6…パンチ
7…ボルスタ
8…クッションパッド
9…油圧室
10…圧力センサ
11…サーボモーター
12…ボールナット
13…ボールねじ
14…大プーリー
15…タイミングベルト
16…小プーリー
17…パルスコーダ
18…制御部
19…記憶部
20…リニアスケール

Claims (6)

  1. アルミニウム板材の表面に潤滑油を塗布し、これをダイとブランクホルダーとで狭持して当該アルミニウム板材のしわ押さえ部にしわ押さえ面圧を発生させ、しわ押さえ面圧を付与しながら前記ダイとブランクホルダーを同時に下降させてダイとパンチとにより前記アルミニウム板材のプレス絞り成形を行う方法において、前記アルミニウム板材の表面の粗さ曲線における中心線平均粗さRaの平均値B(μm)が0.8≦Bであり、当該アルミニウム板材がパンチに接触した時点から下死点までの成形ストロークの80%に達した際におけるしわ押さえ面圧が10MPa以上であることを特徴とするアルミニウム板材のプレス絞り成形方法。
  2. 前記しわ押さえ部の全体又は一部が縮みフランジ変形する金型を用いる、請求項1に記載のアルミニウム板材のプレス絞り成形方法。
  3. 前記潤滑油の40℃における動粘度が2〜20mm/sである、請求項1又は2に記載のアルミニウム板材のプレス絞り成形方法。
  4. 前記アルミニウム板材の表面の粗さ曲線における凹凸の平均間隔Smが75〜100μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミニウム板材のプレス絞り成形方法。
  5. 前記アルミニウム板材が5000系又は6000系のアルミニウム合金板材である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルミニウム板材のプレス絞り成形方法。
  6. 前記しわ押さえ面圧を制御する手段としてNCダイクッション機構を備えたプレス絞り成形機械を使用する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルミニウム板材のプレス絞り成形方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015020208A (ja) * 2013-07-23 2015-02-02 しのはらプレスサービス株式会社 金属材料の融合プレス加工方法
CN113857351A (zh) * 2020-06-30 2021-12-31 宝山钢铁股份有限公司 一种钢、铝零件通用的冲压模具设计方法

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