JP2012033759A - 太陽電池、太陽電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スループットがよく、取り扱いの容易な絶縁膜材料を用いながら光電変換素子の特性を簡便に向上させることができる半導体層の製造方法と、太陽電池の製造方法とを提供する。
【解決手段】本発明に係る太陽電池は、pn接合を有し、光電変換素子を構成するものであって、光受光側とは反対側のp型半導体層の表面上にSiNx膜と裏面電極とが形成されているとともに、p型半導体層とSiNx膜との界面における界面固定電荷密度Qの値が、1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2の範囲内である。これにより、太陽電池の良好な諸特性が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、太陽電池およびその製造方法に関し、より具体的には、裏面パッシベーション型太陽電池およびその製造方法に関するものである。
光電変換素子の一種である太陽電池は、受光によって発生した+電荷の正孔が集まるp型半導体層と、−電荷の電子が集まるn型半導体層とのpn接合を基本構成としている。具体的には、p型シリコン基板の受光面側にn型不純物拡散層を形成することによって上記pn接合を形成し、さらに、p型シリコン基板の受光面側とその裏面側とに、それぞれ電極を設けている。
裏面に形成する電極は、一般的に、p型シリコン基板に形成されたp+層と、その層上に形成された金属層との二層構造により構成されている。
上記金属層の形成材料には、従来、アルミニウムが用いられている。アルミニウムを上記p型シリコン基板と接触させた状態で、700℃以上の熱を加えると、アルミニウムがp型シリコン基板中に拡散した拡散領域が形成され、アルミニウムとシリコンの合金が生成される。アルミニウムはシリコンに対して正孔を供給するドーパントとして働くので、上記拡散領域にはp+層が形成される。このようにアルミニウムの一部はp+層形成に寄与し、残りのアルミニウムはそのまま金属電極となる。
このタイプの太陽電池では、p型シリコン基板とp+層との界面(p/p+界面)には、ポテンシャル差に由来する電界が形成される。p+層が作り出すこの電界は、主としてp型シリコン基板内で発生し裏面に拡散してきた正孔と電子のうち、電子をp型シリコン基板内部に反射し、正孔を選択的にp+層へ通過させる働きを有する。すなわち、この作用は、電子を排斥し、太陽電池の裏面界面において正孔および電子が再結合することによるキャリア損失を低減するという効果(フィールドパッシベーション効果)をもたらす。
これは、上記p/p+界面に生じる電界が、上記裏面近傍において正孔と電子との各分布を空間的に引き離し、上記裏面において密度差を生じさせるので、両者の結合の確率を著しく低減するからである。この結果、太陽電池の変換効率向上に寄与することになる。
このようなアルミニウム合金層を裏面に備えた従来方式の太陽電池は、製造が比較的簡単であるため、量産技術として広く用いられている。しかし、本方式は太陽電池の究極的な高効率化という面から考えると次の問題を含んでいる。
すなわち、上述のように、大部分の電子はp+層が作り出す電界により排斥されるが、それでもなお、p/p+界面に生じるポテンシャル差より高い運動エネルギーを有する少数の電子は、このポテンシャル差を乗り越えて、p+層/裏面電極界面に至ることになる。ところが、上記従来方式においては、p+層/裏面電極界面には、界面再結合速度を減らす不活性化処理が何らなされていない。また、このp+層自体、高濃度にドーピングされたアルミニウムが再結合中心を形成するために、再結合中心の存在密度が高く、半導体としての品質が悪い領域となっている。
したがって、障壁を乗り越えた少数の電子は、p+層内、またはp+層/裏面電極界面において、高い確率で再結合を起こして消滅し、この電子消滅は、太陽電池の電気的出力の損失原因となる。
また、太陽電池の表面から入射して裏面に到達した一部の光は裏面において反射されることにより、再び太陽電池内部に戻り発電に寄与することが望ましい。しかし、上記従来方式では、p+層における光吸収率が大きい。このため、太陽電池裏面に到達した光は大部分がp+層で吸収されてしまい、その際に生じた電子正孔対もただちに再結合を起こして消滅してしまうので、電気的出力に寄与しない。さらには、一般に、p+層と電極との界面の物理的形状は凹凸が激しく、滑らかな平面とはなっていないので、この凹凸形状にも起因して到達光の反射率は低下してしまう。
このように、上記従来方式の太陽電池は、太陽電池裏面に到達した光を発電に有効に利用することができないという問題を有している。
この問題に対し、裏面パッシベーション型太陽電池は、上記従来方式の太陽電池の将来的な置き換えを目指して開発が進められている。本型太陽電池は、上記従来方式の太陽電池とは異なる。具体的には、太陽電池の裏面をパッシベーション膜で覆うことにより、基板とパッシベーション膜との界面に本来的に存在し再結合の原因となる未結合手を終端する。すなわち、裏面パッシベーション型太陽電池は、p/p+界面に生じる電界により、キャリア再結合速度を減らそうとするのではなく、裏面における再結合中心の密度自体を低減させ、キャリアの再結合を減らそうとする思想に基づいている。
したがって、本型太陽電池において、裏面パッシベーション膜の性能を十分に高くした場合、半導体として低品質なp+層は不要になり、p+層に起因した再結合損失及びp+層における大きな光吸収を排除することができる。さらに、パッシベーション膜と基板の界面を滑らかに作製することができ、界面における光反射率を高くすることができる。
裏面パッシベーション型太陽電池に使用される裏面パッシベーション膜にはシリコンや水素が含まれている。p型シリコン基板と裏面パッシベーション膜との界面に本来的に存在し再結合の原因となる未結合手は、裏面パッシベーション膜のシリコン元素や水素元素により終端される結果、再結合中心ではなくなる。したがって、裏面に到達した正孔と電子とは未結合手に捕捉されることなく、何事もなかったかのように界面で反射し、p型シリコン基板に戻っていく。
このアイデアは界面不活性化という一つの観点から見ると極めて有望に見える。しかし、実際の太陽電池セルに適用した場合には問題を含んでいる。太陽電池表面又は裏面には、パッシベーション膜で覆われた部分と電極とが隣り合って存在する。2者間での相互作用を考えたとき、必ずしも上記のように単純なシナリオが成立するわけではない。すなわち、裏面パッシベーション型太陽電池においてはパラサイティックシャンティングとして世に知られている特有の特性劣化現象が生じ、特性改善に限界を生じるという問題点が知られている。
ここで、パラサイティックシャンティング現象の発生原理について、図17〜図18を参照しながら説明しておく。
図17は、裏面パッシベーション型太陽電池の構造例を示す模式図である。同図において、P型シリコン基板81の表面には、n+層82、反射防止膜83が形成されている。裏面パッシベーション型太陽電池においても電気的出力を取り出すには、表面電極層84の他、裏面電極層85が必要である。同図において、裏面電極層85がP型シリコン基板81と接し、P型シリコン基板81から電気的出力を取り出すためのパッシベーション膜86の開口領域を裏面電極89と称する。
裏面電極89を形成する部分においてはP型シリコン基板81から電気的出力を取り出す必要があるので、パッシベーション膜86(多くの場合、絶縁体の膜)を堆積するわけにはいかない。裏面電極89は、裏面の一部にドット状またはストライプ状に設けられるので、裏面全体の数%の領域を占めることになる。この結果、裏面パッシベーション型太陽電池の裏面には、パッシベーション膜で覆われた部分と裏面電極部分とが隣り合って存在することになる。
このとき、P型シリコン基板81を用いる裏面パッシベーション型太陽電池の場合であって、パッシベーション膜86とP型シリコン基板81との界面(以降、裏面界面と呼ぶ)に正の固定電荷が存在するならば、パッシベーション膜86直下のP型シリコン基板81には、この固定電荷により電界が生じる結果、正孔は界面から排斥され、電子は界面に引き寄せられることになる。この結果、パッシベーション膜86直下にはp型シリコンでありながら電子が正孔の密度より高くなった反転層87が出現する。
この反転層87の出現は次の2つの効果を生む。
(1)上記裏面界面における電子の横方向への移動が容易になる。
(2)裏面電極89とパッシベーション膜86との接触領域で電子密度の増加を招く。
上記(2)に述べられた接触領域、即ち裏面電極89の周辺部分には、前述のように、P型シリコン基板81内から選択的にp+層へ通過された正孔が集まってくるので、基板内部に比べて正孔の密度が高い状態となる。
裏面電極89とパッシベーション膜86との接触領域では、上記(2)により電子密度が増加するので、電子と正孔の密度の両方が高くなる。さらにこの接触領域は、電極材料とパッシベーション膜材料とが隣接している材料的に不連続な領域であるから、その不連続性に起因した高不正準位領域88が生じることになる。
それゆえ、図18(図17の構造例におけるパッシベーション膜と電極部分との接触領域を拡大して示す模式図)に示すように、裏面電極89とパッシベーション膜86との境界近傍では、電子91と正孔92との密度積の値が大きいので、これらが衝突再結合する確率が大きくなることに加えて、高不正準位領域88における不正準位密度も高くなり、その相互作用により大きなキャリア損失が生じる。
上記(1)により、このようなキャリア損失に釣り合うだけの電子がパッシベーション膜86とp型シリコン基板81の界面の反転層によって供給される。
即ち、上記(2)により高いキャリア再結合損失の土壌が生まれ、損失した電子を補うべく電子を効率的に輸送する輸送路が(1)により構築される。本現象はパラサイティックシャンティング現象として知られており、裏面パッシベーション型太陽電池の諸特性における深刻な劣化原因となる。
裏面パッシベーション型太陽電池において、パラサイティックシャンティング現象の発生を抑制するためには、パッシベーション膜とシリコン基板との界面に存在する正の界面固定電荷密度Qを低減し、好ましくは負の値とすることが求められる。
具体的な対策としては、パッシベーション膜材料を工夫することにより、界面固定電荷密度Qを負の値とすることにより、パラサイティックシャンティング現象の発生を抑制する技術が非特許文献1に開示されている。同文献記載の方法においては、パッシベーション膜材料として、代表的にはアルミナを採用することにより、パッシベーション膜とシリコン基板との界面における界面固定電荷密度Qが負の値となり、この界面固定電荷密度Qにより、シリコン中の正孔が界面に引き寄せられることになる。そうすると、直下のp+部に正孔が集まってくる電極部分近傍とパッシベーション膜部分との両方において、高密度となるキャリアは同じ種類(正孔)となるから、電子と正孔との再結合が起こりにくくなり、パラサイティックシャンティング現象の発生を回避して、裏面パッシベーション型太陽電池の特性劣化を抑制することが可能となる。
B. Hoex, J. Schmidt, R. Bock, P. P. Altermatt, M. C. M. van de Sanden, and W. M. M. Kessels, "Excellent passivation of highly doped p-type Si surfaces by the negative-charge-dielectric Al2O3", Appl. Phys. Lett. 91, 112107 (2007) S. Dauwe, ph-D. "Low-Temperature Surface Passivation of Crustalline Silicon and its Application to the Rear Side of Solar Cells", Hannover University, (2004)
しかし、上述のように、パッシベーション膜材料としてアルミナを採用すれば、界面固定電荷密度Qを負の値としてパラサイティックシャンティング現象の発生を回避することができるとしても、アルミナは、太陽電池の不活性化膜材料としてはあまり使われておらず、ALD(Atomic Layer Deposition)等の特殊な方法を用いて堆積する必要がある。一般に、ALDによるアルミナ堆積速度は極めて遅いので、スループットが低く、パッシベーション膜としての量産利用に適していない。
一方、本来的に正の界面固定電荷を有するが、太陽電池材料として使い慣れたSiNxを用いてパラサイティックシャンティング現象を回避できれば、それが最も簡易な方法で効果が高いことになる。ただし、現在までに、どの程度の界面固定電荷密度Qでパラサイティックシャンティング現象が生じるのか、界面固定電荷密度Qの適正範囲は現実的にどの程度なのか、さらにはその適正範囲内でSiNx膜を製膜できるのかについて、明確な調査結果はない。
かかる問題点に鑑みて、本願発明者は、裏面パッシベーション型太陽電池の性能向上を鋭意検討した結果、p型半導体層とその表面上に形成されるSiNx膜との界面における界面固定電荷密度Qを所定の数値範囲内とすることにより、パラサイティックシャンティング現象の発生を抑制することができることを見出した。
上記の問題点に鑑み、本発明は、パラサイティックシャンティング現象の発生を抑制し、良好な特性を実現する太陽電池を提供することを目的としている。
本発明に係る太陽電池は、上記の課題を解決するために、pn接合を有し、光電変換素子を構成する太陽電池であって、光受光側とは反対側のp型半導体層の表面上にSiNx膜と裏面電極とが形成されているとともに、前記p型半導体層と前記SiNx膜との界面における界面固定電荷密度Qの値が、1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2の範囲内であることを特徴としている。
上記の構成において、界面固定電荷密度Qの好ましい上限値は、裏面電極近傍のp型半導体層において生じるパラサイティックシャンティング現象の抑制効果を発揮する限界点、すなわち、Q=4e12cm−2であり、界面固定電荷密度Qの好ましい下限値は、SiNx膜の製膜後に施される一般的なアニール工程により、界面準位密度Ditを好適に低減させることができる限界点、すなわち、Q=1.3e12cm−2である。
本願発明者は、本願において、実際に太陽電池セルを試作実験することによって、数値モデル計算等では考慮されていなかった、アニール工程による界面準位密度Ditの劣化を考慮して、太陽電池を製造するにあたって、界面固定電荷密度Qの下限値とすることが好ましい値として、Q=1.3e12cm−2を採用した。
また、上記の構成においては、取り扱いが簡便でパッシベーション膜材料として広く用いられてきたSiNxを絶縁膜材料として採用しながら、パラサイティックシャンティング現象の発生回避と界面準位密度Ditを実用上適切な範囲のものとすることができる。それゆえ、従来の製造プロセスを大きく変更することなく、良好な諸特性を有する太陽電池を簡便に実現することができる。
以上のように、p型半導体層とその表面上に形成されるSiNx膜との界面における界面固定電荷密度Qの上限値が、Q=4e12cm−2となっていることから、裏面電極と絶縁膜との相互作用によって生じるパラサイティックシャンティング現象の発生が回避される一方、界面固定電荷密度Qの下限値が、1.3e12cm−2とすることにより、製造プロセスのうちのアニール工程による界面準位密度Ditの劣化も回避されることになる。
これにより、良好な諸特性を有する太陽電池を実現することができる。
本発明に係る太陽電池の製造方法は、上記の課題を解決するために、光電変換素子を構成する、pn接合を有した太陽電池の製造方法であって、光受光側とは反対側のp型半導体層の表面上にSiNx膜を形成するとともに、形成されるSiNx膜の製膜条件を制御することにより、前記p型半導体層と前記SiNx膜との界面における界面固定電荷密度Qfの値を、1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2の範囲内とする電荷密度調整段階を備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、SiNx膜の製膜条件を適切に制御することによって、界面固定電荷密度Qの好ましい範囲である1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2を実現することができる。
SiNx膜の製膜条件とは、例えば、プラズマを利用した気相成長法に用いる各原料ガスの流量比または混合比、あるいはSiNx膜の形成時または形成後のアニール条件(アニール温度やアニール時間、アニール時の雰囲気設定など)である。
また、上記の製造方法においては、取り扱いが簡便でパッシベーション膜材料として広く用いられてきたSiNxを含む絶縁膜を採用しているので、従来の製造プロセスを大きく変更することなく、量産に必要とされるスループットを確保しながら、良好な諸特性を有する太陽電池を簡便に製造することができる。
本発明に係る太陽電池の製造方法は、上記の課題を解決するために、上記電荷密度調整段階においては、プラズマを利用した気相成長法に用いる各原料ガスの流量比として、SiH/NH流量比を1/10以上1以下に調整することを特徴としている。
上記の構成によれば、絶縁膜の形成に広く用いられているプラズマCVD法等の気相成長法において、各原料ガスの流量比を調整するという簡便な手法で、絶縁膜と半導体層との界面における界面固定電荷密度Qfの値を、上記の好ましい数値範囲とすることが可能となる。
例えば、SiNx膜からなる絶縁膜を形成する場合であれば、希釈用ガスの窒素(N)の他、原料ガスとして、モノシラン(SiH)、アンモニア(NH)の2種類のガスを用い、各原料ガスの流量比を1/10以上1以下に調整することにより、上記界面固定電荷密度Qの値を所定範囲内に制御することができる。
これにより、従来の製造プロセスを大きく変更することなく、簡便に良好な諸特性を有する太陽電池を製造することが可能となる。
裏面パッシベーション型太陽電池において、p型半導体層とSiNx膜との界面における界面固定電荷密度Qの値が、1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2の範囲内であることによって、良好な諸特性を有する太陽電池を実現することができるという効果を奏する。
なお、界面固定電荷密度Qの上記範囲は、SiNx膜の製膜条件を制御することにより実現することができる。
本発明における太陽電池における界面固定電荷密度の好適範囲を模式的に示すグラフである。 数値モデル計算に用いた太陽電池のモデル構造を模式的に示す断面図である。 界面固定電荷密度Qを変化させたときの太陽電池の諸特性計算結果を示すグラフであり、(a)は、界面固定電荷密度Qと開放電圧(VOC)との関係、同図(b)は、界面固定電荷密度Qと短絡電流密度(JSC)との関係、同図(c)は、界面固定電荷密度Qと曲線因子(FF)との関係、同図(d)は、界面固定電荷密度Qと光電変換効率(EFF)との関係を示している。 数値モデル計算において、界面固定電荷密度Qを正負に変化させたときの太陽電池の基板におけるエネルギーバンド図、および当該基板中での正孔密度および電子密度の変化の様子を示したグラフであり、(a)は、Q>0のときのエネルギーバンドおよびポテンシャル、(b)は、Q>0のときの様子、(c)は、Q<0のときのエネルギーバンドおよびポテンシャル、(d)は、Q<0のときの様子を示すものである。 数値モデル計算において、界面固定電荷密度Qを変化させたときの太陽電池の裏面界面近傍での正孔密度および電子密度の変化の様子を示したグラフである。 数値モデル計算において、界面固定電荷密度Qを変化させたときの太陽電池の裏面界面近傍における表面再結合速度(SRV)の変化の様子を示したグラフである。 =6e12cm−2のときの太陽電池の裏面電極近傍における電子電流の流れ(ベクトル)と電子電流の絶対値(コンター)を示した分布図である。 太陽電池の裏面電極近傍におけるSRH再結合確率分布であり、(a)は、Q=6e12cm−2のときの様子、(b)は、Q=1e12cm−2の様子を示すものである。 本発明に係る太陽電池の製造方法における前半の工程を順に示す工程図である。 上記製造方法における後半の工程を順に示す工程図である。 SiNx膜の製膜条件を変えた試作セル1〜5について、(a)は、界面固定電荷密度Qの実測値を示すグラフであり、(b)は、界面準位密度Ditの実測値を示すグラフである。 SiNx膜の製膜条件を変えた試作セル1〜5について、太陽電池特性の測定結果を示すグラフであり、(a)は、開放電圧VOCを示し、(b)は、短絡電流JSCを示している。 (a)〜(c)は、試作セル1、3、4における分光感度のバイアス光強度依存性を測定した結果を示すグラフである。 試作セル1〜5について、波長1000nmにおける分光感度のバイアス光強度依存性を抽出した結果を示すグラフである。 (a)は、原料ガスの流量比(SiH/NH)を変えて界面固定電荷密度Qを測定した結果を示すグラフであり、(b)は、原料ガスの流量比(SiH/NH)を変えて界面準位密度Ditの変化を測定した結果を示すグラフである。 アニール工程有りのサンプルのすべてについて、界面固定電荷密度Qを横軸にし、界面準位密度Ditを縦軸にして、両者の値をプロットして示すグラフである。 裏面パッシベーション型太陽電池の構造例を示す模式図である。 図17の構造例におけるパッシベーション膜と電極部分との接触領域を拡大して示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図16に基づいて詳細に説明する。
〔1.本発明に係る太陽電池の特徴点〕
以下に示す考察により、本願発明者は、裏面パッシベーション型太陽電池の諸特性を良好なものとするために、p型シリコン基板とパッシベーション膜との界面における界面固定電荷密度Qの値を、(1)2e11cm−2≦Q≦4e12cm−2とするように設計することが好ましいこと、特にパッシベーション膜をSiNx膜とした場合には、(2)1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2とするように設計することが好ましいことを見出した。なお、2e11は、2×1011を表し、1.3e12は、1.3×1012を表し、4e12は、4×1012を表している。
この界面固定電荷密度Qの好適範囲(1)を模式的に図示すると、図1のようになる。
同図に示すように、界面固定電荷密度Qが4e12cm−2より大きくなるとパラサイティックシャンティング現象による電極近傍での再結合増加により、裏面パッシベーション型太陽電池の諸特性(図1では、代表的な諸特性として光電変換効率EFFを図示した)が劣化する一方、界面固定電荷密度Qが2e11cm−2より小さくなると大きくなるとフィールドパッシベーション効果増加による再結合速度SRVの改善効果が十分に得られないので、2e11cm−2≦Q≦4e12cm−2の数値範囲が好ましい実用上適切な範囲となる。
本発明に係る裏面パッシベーション型太陽電池によれば、裏面パッシベーション型太陽電池において、パラサイティックシャンティング現象の発生を回避しながら、フィールドパッシベーション効果による良好な諸特性を実現することができるという効果を奏する。
〔2.数値モデル計算による界面固定電荷密度の好適化設計〕
次に、本願発明者が、数値モデル計算により、太陽電池のp型シリコン基板とパッシベーション膜との界面における界面固定電荷密度Qの上記好適範囲(1)を導出した詳細な手順について説明する。
前述のように、パッシベーション膜と裏面の電極部分との接触領域では、電子および正孔が高密度に混在し、さらには不正準位密度の高い領域が生じるために、正孔および電子が再結合することによるキャリア損失(パラサイティックシャンティング現象)が生じる。
ここで、パッシベーション膜の膜材料として、例えば一般的なSiNxを用いる場合には、パッシベーション膜とp型シリコン基板との界面に存在する界面固定電荷密度Qは負にはならないことが一般に知られているが、このような正の界面固定電荷を有する膜材料を採用する場合に界面固定電荷密度Qをどのような値とすれば、パラサイティックシャンティング現象の発生を回避することができるのかについては知られていない。
そこで、本願発明者は、コンピュータを用いた数値モデル計算により、現実的な設計のもとで界面固定電荷密度Qを変化させた場合、どのような界面固定電荷密度Qにおいて、太陽電池のパラサイティックシャンティング現象は発生するのか、仮にパラサイティックシャンティング現象が発生した場合、結果として、太陽電池の諸特性がどの程度劣化するのかを検証した。
〔2−1.数値モデル計算の具体的手法〕
数値モデル計算の基本原理は、基板内部のキャリア輸送を支配するポアソン方程式と電流連続式とを基本に、太陽光の吸収によって励起されるキャリアの発生率とキャリアの消滅速度とを生成消滅項に入れた基本方程式を解くことにある。数値モデル計算を実行するためには、この基本方程式を線形化した後に離散化を行い、数値計算可能な連立方程式とする。連立方程式を解くことで、デバイス内部の電位分布とキャリア密度分布が得られて電極間に流れる電流を求めることが可能となる。
本実施形態においては、pn接合を有した光電変換素子の1形態である裏面パッシベーション型太陽電池の数値モデル計算用構造として、図2に示す太陽電池10のモデル構造を採用した。同図において、太陽電池10の表面側(光入射側)においては、p型シリコン基板31の表面にn層32が形成される一方、太陽電池10の裏面側においては、裏面電極形成部33の直下にP+層34が形成されており、n層32の表面を被覆するように表面パッシベーション膜としての機能も有する反射防止膜35、p型シリコン基板31ないしP+層34の一部の表面を被覆するように裏面パッシベーション膜36が形成されている。これにより、P+層34と裏面パッシベーション膜36中の正電荷によりn化したp型シリコン基板31との界面とが太陽電池10の裏面側の平面で接する構造となっている。
さらに、反射防止膜35が除去された領域に電極層37が設けられ、裏面パッシベーション膜36が除去された領域に電極層33が設けられている。図中の電荷38は、p型シリコン基板31と裏面パッシベーション膜36との界面に固定的に存在する固定電荷の様子を模式的に示したものである。
上記モデル構造について、数値計算を実行するにあたっては、キャリア移動について、裏面パッシベーション膜とp型シリコン基板との界面に平行な方向と同界面に垂直な方向との二方向への移動を考慮する必要が生じるため、二次元でキャリア移動を扱うことのできる汎用デバイスシミュレータ(例えば、シノプシス社製 Sentaurus)を用いた。
また、具体的な計算にあたっては、上記モデル構造に対応するように、基板厚さ、不純物濃度、電子ライフタイム、表面再結合速度、表面不純物濃度、裏面パッシベーション膜接触幅、太陽光のスペクトル・照度、表面反射率、表面内部反射率、裏面内部反射率、電極直下影損失などのパラメータを、実際の値として適切なものとなるように設定した。
ただし、上記各種パラメータのうち、太陽電池10の裏面側において隣り合う電極層33によって形成される1区画の幅(Wtot)については、200μmに設定し、数値モデル計算には、太陽電池構造の対称性に鑑みて、100μmを用いた。また、n層32を含むp型シリコン基板31の厚さについては、計算結果において裏面パッシベーション構造の影響を強く反映させるために比較的小さく50μmに設定した。
〔2−2.界面固定電荷密度Qの好ましい下限値〕
まず、本願発明者が、数値モデル計算により、太陽電池1のp型シリコン基板31と裏面パッシベーション膜36との界面における界面固定電荷密度Qの上記好適範囲(1)のうち、好ましい下限値を導出した手順について、図3〜図6を参照しながら説明する。
図3(a)〜(d)は、数値モデル計算において、裏面パッシベーション膜36とp型シリコン基板31との界面に存在する界面固定電荷密度Qを、−1e12cm−2≦Q≦+5e13cm−2の範囲で変化させたときの太陽電池10の諸特性について、計算結果を示したグラフである。
具体的には、同図(a)は、界面固定電荷密度Qと開放電圧(VOC)との関係、同図(b)は、界面固定電荷密度Qと短絡電流密度(JSC)との関係、同図(c)は、界面固定電荷密度Qと曲線因子(FF)との関係、同図(d)は、界面固定電荷密度Qと光電変換効率(EFF)との関係を示している。なお、上記諸特性のうち、開放電圧とは、光照射時に於いて端子を開放した時の出力電圧を指し、短絡電流密度とは、光照射時に於いて端子を短絡した時の電流を有効受光面積で割ったものを指している。
図3(a)〜(d)のグラフを参照すると、いずれの諸特性についても、界面固定電荷密度Qが負の領域(Q<0)では、比較的単純な振る舞いをするのに対して、界面固定電荷密度Qが正の領域(Q>0)では、非常に複雑な振る舞いを示すことがわかる。
具体的には、界面固定電荷密度Qの絶対値が比較的小さい領域に着目すると、界面固定電荷密度Qが負の領域では、界面固定電荷密度Qの絶対値の増加と共に諸特性VOC、JSC、FF、EFFが概ね増加するのに対して、界面固定電荷密度Qが正の領域では、界面固定電荷密度Qの絶対値の増加と共に諸特性VOC、JSC、FF、EFFは減少し、Q=1e11cm−2のとき極小値をとって、さらに界面固定電荷密度Qの絶対値を増やしていくと、諸特性VOC、JSC、FF、EFFは増加して、Q=1e12cm−2のとき極大値をとり、さらに、界面固定電荷密度Qの絶対値を増やしていくと、諸特性VOC、JSC、FF、EFFは急激に減少する。
上記傾向の原因を考えるために、太陽電池10の裏面界面近傍(〜50μm)における諸パラメーターを計算した。図4(a)(c)は、p型シリコン基板31の厚み方向に沿ったエネルギーバンド図である。同グラフの横軸は、基板厚み方向の変位、縦軸はエネルギー準位の変化を示しており、各グラフの横軸右端部における50μmの位置は、図2におけるp型シリコン基板31の裏面界面に対応している。
界面固定電荷密度Qが正のとき(Q>0)、図4(a)に示すように、伝導帯端(Conduction band Edge)エネルギーEcおよび価電子帯端(Valence band Edge)エネルギーEvは、裏面界面において、低準位側へ曲げられる。なお、このときのポテンシャルは、裏面界面において、高準位側へ曲げられる。
一方、界面固定電荷密度Qが負のとき(Q<0)、図4(c)に示すように、伝導帯端エネルギーEcおよび価電子帯端エネルギーEvは、裏面界面において、上記とは逆に、高準位側へ曲げられる。なお、このときのポテンシャルは、裏面界面において、低準位側へ曲げられる。
上記のような裏面界面におけるポテンシャル変化を吸収し、シリコン基板内部にポテンシャル変化を伝えないようにするように、裏面界面近傍(〜50μm)の電荷が移動する。
図4(b)(d)は、上記裏面界面に存在する界面固定電荷密度Qを変化させたときの、太陽電池10のp型シリコン基板31の裏面界面近傍(〜50μm)での正孔密度および電子密度の変化の様子を示したグラフである。
図4(b)(d)によると、太陽電池10の裏面界面近傍(〜50μm)での正孔密度および電子密度は、界面固定電荷密度Qが正のとき(Q>0)、界面近傍では、正孔は排斥されてその密度が減少し、逆に電子の密度が高くなる。これに対して、界面固定電荷密度Qが負のとき(Q<0)、界面近傍では電子は排斥されてその密度が減少し、逆に正孔の密度が高くなる。
図5は、上記数値モデル計算において、界面固定電荷密度Qを変化させたときの太陽電池10の裏面界面近傍での正孔密度および電子密度の変化の様子を示したグラフである。そして図6は、界面固定電荷密度Qを変化させたときの太陽電池10の裏面界面近傍における表面再結合速度(SRV)の変化の様子を示したグラフである。
図5に示すように、正であれ負であれQの絶対値が大きくなったときには、正孔と電子の密度差は拡大する。この密度差の存在により両者の密度積は小さくなる。これは正孔と電子が再結合する確率、即ち裏面界面における再結合速度を減少させる。実際に図6を見ると、Qの絶対値が大きくなったときに再結合速度が減少している、即ち界面特性が改善していることが判る。
逆に裏面界面における正孔と電子の密度が近い値になったとき再結合速度は増加する。これは、正孔と電子が再結合する確率が相対的に増えるからである。図5を見ると、裏面界面における正孔と電子の密度がQ=1e11cm−2において同程度となるが、図6では、実際に、そのときに再結合速度が最大値となっていること、即ち界面特性が劣化していることが示されている。
このように、上記計算結果からは、太陽電池10の界面固定電荷密度Qの絶対値を大きくすれば、表面再結合速度(SRV)を減少させてキャリア損失を低減し、諸特性を良好なものとすることが理解される。
図5および図6に示した計算結果に基づいて、本願発明者は、表面再結合速度(SRV)を十分に減少させて、フィールドパッシベーション効果を太陽電池特性に反映させるためには、正の界面固定電荷密度Qの好ましい下限値として、2e11cm−2が適切であり、より好ましくは3e11cm−2が適切であり、更に好ましくは4e11cm−2が適切であると考察した。
〔2−3.界面固定電荷密度Qの好ましい上限値〕
次に、本願発明者が、数値モデル計算により、太陽電池1のp型シリコン基板31とパッシベーション膜36との界面における界面固定電荷密度Qの上記好適範囲(1)のうち、好ましい上限値を導出した手順について、図3、図7〜図8を参照しながら説明する。
2−2で述べた知見からは、一見すると、界面固定電荷密度Qが高いほど再結合速度が減少するので太陽電池特性にも良い効果が現れると考えられがちである。しかし、前述の図3(a)〜(d)を参照すると、界面固定電荷密度Q>2e12cm−2の領域においては、太陽電池10の諸特性VOC、JSC、FF、EFFは急激に劣化することがわかる。この太陽電池特性の急激な低下は、2−2で述べた正孔と電子の密度差に基づくフィールドパッシベーションの理屈では説明できない。
これを説明するため、前述のパラサイティックシャンティングの概念を導入する。Q(>0)が大きくなると裏面界面に電子密度が高い反転層87(図11参照)が出現し、この事実は次の2つの効果を生む。この2つの効果の相互作用によりパラサイティックシャンティングが生じることは前述のとおりである。
(1)裏面界面における電子の横方向への移動が容易になる。
(2)裏面電極とパッシベーション膜との接触領域で電子密度の増加を招く。
これら2つの効果を個別に数値計算により検証する。図7は、パラサイティックシャンティングが生じているために、太陽電池特性の低下が見られるQ=6e12cm−2のとき、太陽電池10裏面の電極層33(図2参照)近傍における電子電流の流れ(ベクトル)と電子電流の絶対値(コンター:Acm−2)とを示した分布図である。図中の矢印は電子の向きを意味している。
なお、x=0は、図2に示す電極層33(裏面電極)の中心で、電極層33の端部とパッシベーション膜36との接点はx=10μmの位置である。y軸は太陽電池10の厚み方向を示しており、y=50の位置はp型シリコン基板31の裏面の位置に相当する。色分布の示す値は電子電流密度であり、Acm−2の次元を持っている。
図7において、x>15μmの領域では、裏面パッシベーション膜36に向かって電子が流入する様子が現れている。この電流のうち一部は、裏面パッシベーション膜36において正孔と再結合を起こして消滅するが、消滅せずに残る大部分の電流は、セル裏面近傍のごく薄い部分である反転層を電極に向かって図中横方向に流れることになる。
同図において、上記のような電流の様子は、裏面パッシベーション膜36とp型シリコン基板31(図2参照)との界面に存在する、x<0方向の大きな矢印として表されており、電子がx<0方向すなわち電極に向かっていることを示している。このように、上記効果(1)が実際に生じていることが示された。
このような電子の流れは、電極近傍に達し、P+層34(図2参照)とパッシベーション膜36とに挟まれた領域において、正孔と再結合して消滅するものと推測された。この推測を検証するために、Q=6e12cm−2のときの裏面電極近傍におけるSRH再結合確率(cm−3−1)の分布図が図8(a)である。x軸およびy軸の定義は図7と同じである。同図(a)における10μm<x<12μmの領域では、電子の流れが、電極近傍に達し、P+層34と裏面パッシベーション膜36とに挟まれた領域において正孔と再結合して消滅するとの推測通り、正孔との再結合速度が著しく増加して、SRH再結合確率が1.0E+20(cm−3−1)に近づき、電子の吸収端となっていることがわかる。このように、上記効果(2)が実際に生じていることが示された。
この吸収端では、電子が大量に消滅するので、その消滅分に釣り合うだけの電子が、裏面パッシベーション膜36とp型シリコン基板31との界面における電子の横方向輸送によって供給されることになる。以上のように、これら2つの計算結果は、パラサイティックシャンティング現象の発生を示すものであると考えられる。
これに対して、諸特性の劣化が見られなかった領域(図3参照)のうち、Q=1e12cm−2における再結合の様子を示す分布図が図8(b)である。
図8(b)においては、同図(a)において見られたような電子の吸収端、すなわち電極近傍での再結合増大領域は存在せず、パラサイティックシャンティング現象は発生していないことがわかる。
このように、太陽電池10における諸特性の計算結果(図3参照)と、図7および図8(a)(b)の分布図とを対比することにより、上記諸特性VOC、JSC、FF、EFFの劣化とパラサイティックシャンティング現象の発生との間に相関関係が存在することを確認することができた。
すなわち、界面固定電荷密度Qが大きくなると、パラサイティックシャンティング現象の発生が顕著になり、太陽電池10の諸特性の劣化に大きく影響を与えるようになると考えられるので、同現象の発生を回避して太陽電池10の諸特性を良好なものとするためには、界面固定電荷密度Qを所定値以下とすることが好ましいことがわかる。
図3に示した計算結果に基づいて考察すると、パラサイティックシャンティング現象の発生が顕著になり、太陽電池の諸特性を大きく劣化させるようになるのは、Q>4e12cm−2の領域であると考えられる。そこで、本願発明者は、パラサイティックシャンティング現象の発生を回避して、太陽電池の諸特性を良好なものとするためには、界面固定電荷密度Qの好ましい上限値として、4e12cm−2が適切であり、より好ましくは3e12cm−2が適切であり、更に好ましくは2e12cm−2が適切であると判断した。
〔2−4.好適範囲のまとめ〕
以上のように、本願発明者は、太陽電池10の諸特性を良好なものとするために、パッシベーション膜36とp型シリコン基板2との界面における界面固定電荷密度Qの値を、2e11cm−2≦Q≦4e12cm−2とするように設計することが好ましいことを見出した。
すなわち、界面固定電荷密度Qが4e12cm−2より大きくなるとパラサイティックシャンティング現象による電極部分近傍での再結合増加により、裏面パッシベーション型太陽電池の諸特性が劣化する一方、界面固定電荷密度Qが2e11cm−2より小さくなると大きくなるとフィールドパッシベーション効果増加による再結合速度の改善効果が十分に得られないので、2e11cm−2≦Q≦4e12cm−2の数値範囲が好ましい実用上適切な範囲となる。
なお、界面固定電荷密度Qの下限値および上限値として、上記したより好ましい値、およびさらに好ましい値を任意に組み合わせて得られる範囲も、本発明の範囲内であることはいうまでもない。
〔3.製造プロセスの具体例〕
以下の説明は、本実施形態に係る太陽電池10の製造プロセス例を示すものである。
図9に示すように、第一に、p型多結晶シリコン基板20(縦横10cm×10cm、厚さ200μm、抵抗率1Ωcm)を、RCA社が開発したRCA洗浄法で洗浄した。続いて、NaOH水溶液とイソプロピルアルコールとの混合液を用いて、液温約90℃でテクスチャエッチングを行うことによって、同図にS1として示すように、p型多結晶シリコン基板20(以下、シリコン基板20と略称する)の表面(受光面、光入射面)に高さ数μmの微小ピラミッド21を形成した。
なお、シリコン基板20は、多結晶シリコン基板にホウ素、アルミニウムまたはガリウムなどの3価元素を微量に加えることによって得られる。また、単結晶シリコンを用いたp型シリコン基板も、本発明の適用対象である。
また、上記テクスチャエッチングには、反応性イオンエッチング法を用いてもよい。シリコン基板の表面に微細凹凸構造を形成することによって、シリコン基板表面の光の反射を抑えることができるので、太陽電池10の光利用効率を上げることができる。
第二に、図9にS2として示すように、POClを含む高温気体中にシリコン基板20を置くことでリンを熱拡散させ、厚さ1.0μm、不純物濃度1.2×1020cm−3のn型シリコン層22,23を受光面側及び裏面側に形成した。熱拡散時のシリコン基板20の温度および拡散炉の温度は850℃とし、拡散時間を10分に設定した。
なお、シリコン基板20の表面にリンを拡散させる方法として、例えば、POClを用いた上記の気相拡散法以外に、Pを用いた塗布拡散法、Pイオンを直接拡散させるイオン打ち込み法等がある。
第三に、図9にS3として示すように、プラズマCVD(化学気相堆積;Chemical Vapor Deposition)法によって、シリコン基板20の受光面側に、不活性化膜および反射防止膜としてSiNx膜24を80nm堆積した。
ここで、パッシベーション効果を奏する不活性化膜の機能を兼ねる反射防止膜としては、例えば、SiNx膜のほかに、酸化アルミニウム膜、酸化シリコン膜または酸化チタン膜などが用いられる。中でも、多結晶シリコン基板を用いた太陽電池の場合には、変換効率を向上させる観点から、水素を含むSiNxを用いることが好ましい。
また、反射防止膜を形成する方法として、上記プラズマCVD法のほかに、触媒CVD
法、常圧熱CVD法、減圧熱CVD法または光CVD法などのCVD法や、真空蒸着法またはスパッタリング法などのPVD(物理気相堆積;Physical Vapor Deposition)法を用いることができる。なお、反射防止膜としてSiNx膜を用いる場合には、膜厚を制御しやすい観点からプラズマCVD法が好ましい。
第四に、図9にS4として示すように、受光面に保護テープを貼り、硝酸:フッ酸=3:1の溶液に約4分間浸漬した。これにより、裏面に存在するn型シリコン層22が除去されるので、p型シリコン面が露出する。
第五に、図9にS5として示すように、プラズマCVD法を用いて、裏面にSiNx膜25を約100〜130nm堆積した。本実施形態においては、多結晶シリコン基板を用いた太陽電池の場合には、変換効率を向上させる観点から、水素を含むSiNxを用いた。反射防止膜としてSiNx膜を用いる場合には、膜厚を制御しやすい観点からプラズマCVD法が好ましい。
本実施形態のプラズマCVD法においては、SiNx膜25の形成に、希釈用ガスとしての窒素(N)の他、原料ガスとして、モノシラン(SiH)、アンモニア(NH)の2種類のガスを用いるが、この製膜時のプロセス条件を、当該絶縁膜とn型シリコン層22との界面における界面固定電荷密度Qの値を、前述のように、2e11cm−2≦Q≦4e12cm−2の数値範囲内となるように制御している。
具体的には、上記絶縁膜形成段階においては、プラズマを利用した気相成長法に用いるモノシラン(SiH)、アンモニア(NH)の流量比または混合比(SiH/NH)を変化させることにより、界面固定電荷密度Qの値を上記範囲内のものとなるように調整ないし制御している。
一般的に、界面固定電荷密度Qは、窒素を多く含む窒化シリコン膜とシリコンの界面においては小さく、シリコンを多く含む窒化シリコン膜とシリコンの界面においては増大することが知られている。界面固定電荷密度Qを制御する最も基本的且つ直感的理解のし易い方法は、上記絶縁膜形成段階において、プラズマを利用した気相成長法に用いるモノシラン(SiH)とアンモニア(NH)の流量比または混合比(SiH/NH)を変化させることにより、窒化シリコン膜の窒素とシリコンの組成比を変化させることである。これにより界面固定電荷密度Qの値を上記範囲内のものとなるように調整ないし制御できる。
また、上記方法の他に、プラズマを利用した気相成長時の圧力、RFパワー、放電ギャップ、基板温度を変える、さらに水素を原料ガスに添加することによっても上記組成比を変化させ、界面固定電荷密度Qの値を制御することができる。
また、窒化シリコン膜の製膜に先立ち、シリコン表面をアンモニア(NH)プラズマ、または酸素(O)プラズマ、またはNOプラズマに暴露して、20nm以下の表面層を窒化又は酸化することによって、シリコン基板内部に異なる原子構造を作り込み、界面を形成することができる。このような方法によっても界面固定電荷密度Qの値を制御できることが知られている。特にこれらの方法は1011cm−2台の低いQの値を得ることができる方法として有望である。
なお、上記の説明においては、反射防止膜としてSiNx膜を採用したが、本発明において採用する絶縁膜の種類はこれに限られるものではなく、SiO膜など他の膜材料を採用してもよい。
上記の説明においては、界面固定電荷密度Qの値を制御する方法として、気相成長法に用いる混合ガスの流量比または混合比を変化させる方法を示したが、絶縁膜における界面固定電荷密度Qの値を制御する方法はこれに限られるものではなく、S6におけるアニール温度やアニール時間、アニール時の雰囲気設定など、他のプロセス条件を調整することにより、界面固定電荷密度Qの値が上記範囲に収まるようにしてもよい。また、このアニールは、SiNx膜25の形成後の他、形成時に行われてもよい。
それゆえ、気相成長法に用いる各原料ガスの流量比または混合比を調整するなど、他の製造プロセスの調整では界面固定電荷密度Qの値を上記数値範囲とすることが難しい場合であっても、アニール工程の実施または併用によって、界面固定電荷密度Qの値を上記数値範囲のものとすることができる。
第六に、図10にS6として示すように、フォトリソグラフィー等の方法を用いて、SiNx膜25に、前記裏面電極形成部4に対応した孔を開けた。
第七に、図10にS7として示すように、裏面全面にアルミニウム膜26を2μm蒸着した。なお、アルミニウム膜26の形成法として、コスト重視の観点では、アルミニウムとガラスフリットとを主成分とするペースト材料を用いて印刷する方法が好ましい。また、真空蒸着法のほかに、スパッタ法を用いることもできる。
第八に、図10にS8として示すようにアニールを行った。このアニール工程によって、アルミニウム膜26からシリコン基板20へ、アルミニウムがp型不純物として拡散し、前記アルミニウム合金部6が形成されると同時にSiNx膜のアニールが行われた。
第九に、図10にS9として示すように、受光面側に、導電性ペーストを用いて主面電極27を印刷し、アニールした。このときに発生するファイヤースルー現象により、主面電極27はSiNx膜24を貫通し、n型シリコン層23に到達する。この結果、主面電極27から電気的出力を取り出すことができる。
上記主面電極27を構成する材料は特に限定されず、例えば太陽電池の分野で従来から用いられているアルミニウム、銀、チタン、パラジウムまたは金などの材料を用いることができる。中でも、ファイヤースルー現象が生じる材料として、銀が最も好ましい。また、主面電極27の形成方法も特に限定されず、例えばスクリーン印刷法または真空蒸着法などを用いることができるが、量産性の向上および製造コストの低下の観点からはスクリーン印刷法を用いることが好ましい。
以上のプロセスによって、裏面パッシベーション特性に優れ、かつ正孔密度の高い良好なp+層としてのアルミニウム合金部6が生成され、光電変換効率の高い太陽電池10を製造することができた。
これにより、本実施形態の太陽電池10によれば、パラサイティックシャンティング現象による電極近傍での再結合増加を抑制して、フィールドパッシベーション効果増加による再結合速度の改善効果を担保して、諸特性を良好なものとすることができる。
〔4.界面固定電荷密度の更なる好適化−実験による検証および導出〕
〔4−1.試作セルの作成〕
以上のように、裏面パッシベーション型太陽電池においては、裏面電極とパッシベーション膜との境界近傍において、パラサイティックシャンティング現象の発生が、諸特性の深刻な劣化原因となるが、本章においては、本願発明者は、実際に太陽電池セルを試作し、実験的見地から、パラサイティックシャンティング現象の発生原因となる界面固定電荷密度Qをどのような値とすれば、パラサイティックシャンティング現象の発生を抑制できるかについて検討した。
その結果、前述した界面固定電荷密度Qの好適範囲(2)1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2を見出し、数値モデル計算により導出した好適範囲(1)の正当性を実証することができた。
本実施形態では、裏面パッシベーション膜としてSiNxを用いながら、そのp型半導体層との界面における界面固定電荷密度Qを制御しながら、まず、界面固定電荷密度Qの好適範囲の上限を探るために、製膜条件を5通りに変えた5種類の太陽電池(試作セル1〜試作セル5)を作成した。
図11(a)は、完成した試作セル1〜5のうち、界面固定電荷密度Qの実測値をグラフにプロットしたものであり、同図(b)は、完成した試作セル1〜5のうち、界面準位密度Ditの実測値をグラフにプロットしたものである。
なお、p型半導体層とSiNx膜との界面(シリコン/SiNx界面)にエネルギー準位(界面準位)が存在する場合、それを再結合中心としてキャリア再結合が生じるため、界面準位を消滅させるか、あるいは界面準位密度Ditを小さくすることによって、キャリア再結合の低減を期待することができる。
図11(a)に示すように、界面固定電荷密度Qの値は、試作セル5が最も高くなっており、試作セル4、3、2、1となるにつれて、徐々に界面固定電荷密度Qが低くなる。また、図11(b)に示すように、界面準位密度Ditは凡そ1.0e11cm−2eV−1の近傍に位置しており、試作セル1〜5間で界面準位密度Ditの値に大きな違いはない。
なお、図11(a)(b)の各測定点の具体的な数値を、図11(c)に示す。
〔4−2.界面固定電荷密度の具体的制御方法〕
前述のとおり、試作セル1〜5は、図11(a)に示した裏面パッシベーション膜(SiNx)とp型半導体層との界面における界面固定電荷密度Qを、約2.0e12cm−2〜5.6e12cm−2の範囲で変化させるように、電荷密度調整段階として、製膜時のプロセス条件を制御しながら作製した。太陽電池の作製方法は前記「製造プロセスの具体例」に示す方法に準じたものである。太陽電池完成時の基板板厚は110〜120μmであった。
具体的には、プラズマCVD法(プラズマを利用した気相成長法)において、絶縁膜としてのSiNx膜の形成に、希釈用ガスの窒素(N)の他、原料ガスとして、モノシラン(SiH)、アンモニア(NH)の2種類のガスを用い、この製膜時のプロセス条件を、上記界面固定電荷密度Qの値が所定の範囲のものとなるように制御した。
今回の試作実験においては、プラズマCVD法に用いる各原料ガスの流量比(SiH/NH)を調整することによって、各試作セル1〜5の界面固定電荷密度Q、そして界面準位密度Dを変化させている。それゆえ、絶縁膜の形成に広く用いられている気相成長法において、各原料ガスの流量比または混合比を調整するという簡便な手法によって、絶縁膜と半導体層との界面における界面固定電荷密度Qの値を好ましい数値範囲とすることが可能となる。
〔4−3.実験により導出した界面固定電荷密度Qの好適な上限値〕
〔4−3−1.試作セルの太陽電池特性〕
各試作セル1〜5の太陽電池特性を図12(a)(b)に示す。なお、太陽電池特性の測定においては、同一の製膜条件について複数枚の試作セルを作製したので、図12(a)(b)には、各製膜条件に対して複数の測定結果が示されている。同図(a)は、試作セルの違い、すなわち製膜条件の違いによる開放電圧VOCの変化の様子を示し、同図(b)は、製膜条件の違いによる短絡電流密度JSCの変化の様子を示している。同図(a)の様子からは、試作セル1〜試作セル4と徐々に、界面固定電荷密度Qの値が増加すると、開放電圧VOCが増加している様子が理解される。
このように、界面固定電荷密度Qの増加にともなって、開放電圧(VOC)が増え続ける事実は、界面固定電荷密度Qの変化が、界面近傍での正孔及び電子密度の差を生みだすことに関係している。前述のように、界面固定電荷密度Qを変化させると、パッシベーション膜とp型シリコン基板との界面近傍での正孔及び電子密度は、界面固定電荷とバランスを取るように変化し、界面近傍での正孔及び電子密度の差を作り出す。この密度差の存在により両者の密度積は小さくなる。これは正孔と電子が再結合する確率、即ち裏面界面における再結合速度の減少、即ちフィールドパッシベーション効果の増大を生みだす。
図12(a)において、試作セル1〜試作セル4における界面固定電荷密度Qの増加とともに、開放電圧VOCが増加している事実は、上記のフィールドパッシベーション効果の増大予想を裏付けるものと考えられる。なお、試作セル4(Q=4e12cm−2)と試作セル5(Q=5.6e12cm−2)との間においては、両者のVOCの値に有意な差は見られなくなっている。すなわち、開放電圧VOCが、試作セル4〜試作セル5において飽和する傾向にあることが窺える。
これに対して、同図(b)の様子からは、試作セル1〜試作セル4となるにつれて、界面固定電荷密度Qを大きくしていったとしても、短絡電流JSCの変化はほとんど見られない。この短絡電流JSCの抑制現象は、パラサイティックシャンティング現象によるものと考えられる。以下、この抑制現象について説明する。
〔4−3−2.パラサイティックシャンティング現象の発生診断方法〕
各試作セルにおいて、パラサイティックシャンティング現象が発生したか否かを診断する診断方法としては、前掲の非特許文献2に開示された診断方法を用いた。同文献に開示された診断方法は、概ね次のようなものである。
一般に、太陽電池セル中において、パラサイティックシャンティング現象が発生し、セル裏面側の電極とシリコンバルクとの間に、キャリア移動が可能なパスが存在するようになると、バイアス光を弱くしていったとき、太陽電池セルの長波長分光感度が低下する、即ち長波長分光感度はバイアス光依存性をもつようになることが知られている。
上記の現象を利用すれば、バイアス光を弱くしながら長波長分光感度を測定し、かかる長波長分光感度の低下を検出することにより、太陽電池セル内におけるパラサイティックシャンティング現象の発生を診断することが可能となる。
本願発明者は、上記の各試作セル1〜5において、バイアス光を弱くしていくときの長波長分光感度の感度低下を検出することにより、パラサイティックシャンティング現象により発生したパスの存在を確かめた。
〔4−3−3.パラサイティックシャンティング現象の検証〕
図13は、試作セル1、試作セル3、試作セル4における分光感度のバイアス光強度依存性を測定した結果を示すグラフである。同図(a)は試作セル1、同図(b)は試作セル3、同図(c)は試作セル4の測定結果を示している。
同図(c)をみると、試作セル4においては、他の試作セル1、試作セル3と比較して、高波長領域(例えば、900nm〜1100nm領域)における分光感度が、バイアス光の強度を10%に弱めた場合に大幅に劣化していることがわかる。
図14は、各試作セル1〜5について、波長1000nmにおける分光感度のバイアス光強度依存性を抽出した結果を示している。ここで、各試作セルの分光感度の値は、同セルにおける100%バイアス時の値でそれぞれ規格化してある。
理論的には、裏面パッシベーション型太陽電池において、界面固定電荷密度Qが増加すると、パッシベーション膜直下のp型シリコン基板に出現する反転層の発生も大きくなると考えられるので、前述のパラサイティックシャンティング現象の発生は増大するものと考えられる。
実際、図14に示されるように、試作セル1〜4にかけて、パッシベーション膜とp型シリコン基板との界面に存在する界面固定電荷密度Qの絶対値が増大すると共に、波長1000nmにおける長波長分光感度の特性劣化が大きくなっていることがわかる。
なお、図14において、試作セル5に関しては、試作セル4よりも若干分光感度が増加しており矛盾を含むようにも見えるが、同図に示された実験結果は、押し並べて、パッシベーション膜とp型シリコン基板との界面に存在する界面固定電荷密度Qと長波長分光感度の特性劣化の間には相関が認められ、このことは、界面固定電荷密度Q増加に伴って、パラサイティックシャンティング現象の抑制が徐々になくなり、同現象の発生が増大することを裏付けているといえる。
〔4−3−4.界面固定電荷密度Qの好適な上限値の考察〕
前記図12(b)において、試作セル1〜試作セル5となるにつれて、界面固定電荷密度Qを大きくしていったとしても、短絡電流JSCの変化がほとんど見られなかったのは、界面固定電荷密度Qが大きくなるにつれて、本来フィールドパッシベーション効果により得られているはずのJSCの増加分がパラサイティックシャンティング現象の発生により抑制されており、界面固定電荷密度QによるJSCの依存性を無いものにしていると考えられる。
図13(a)(b)(c)における分光感度のバイアス光強度依存性の測定結果に示されるように、パラサイティックシャンティング現象の発生による長波長分光感度の特性劣化は、同図(a)と同図(b)に示される試作セル1(Q=約2.0e12cm−2)と試作セル3(Q=約2.5e12cm−2)との間よりも、同図(b)と同図(c)に示される試作セル3(Q=約2.5e12cm−2)と試作セル4(Q=約4e12cm−2)との間で大きくなっている。この事実は、界面固定電荷密度Q=4e12cm−2を超えた場合には、パラサイティックシャンティング現象がより顕著に生じることを示唆している。
また、界面固定電荷密度Qが大きくなると、開放電圧VOCが、試作セル4〜試作セル5において飽和する傾向にあることからも、およそQ=4e12cm−2値が、パラサイティックシャンティング現象の抑制の限界点、即ち、Qの上限になると予測される。
また、前述の数値モデル計算によって導出した上限Q=4e12cm−2とも一致する。したがって、界面固定電荷密度Qの好適範囲(2)の上限を4e12cm−2と結論する。
〔4−4.実験により導出した界面固定電荷密度Qの好適な下限値〕
次に、界面固定電荷密度Qの好適範囲(2)の下限について説明する。界面固定電荷密度Qの下限についての考え方は、p型半導体層とSiNx膜との界面(シリコン/SiNx界面)に存在する界面準位密度Ditの界面固定電荷密度Qに対する依存性から導かれる。その依存性を調べるために、SiNx膜を製膜するプラズマCVDにおいて、原料ガスの流量比(SiH/NH)を変え、さらにアニール工程の有無の条件を変えて、複数のサンプルを作製した。
図15(a)は、原料ガスの流量比(SiH/NH)を変えて界面固定電荷密度Qを測定した結果を示し、図15(b)は、原料ガスの流量比(SiH/NH)を変えて界面準位密度Ditの変化を測定した結果を示している。
なお、sccm(standard cubic centimeter per minute)は、流量の単位であり、1気圧および一定温度の条件下で規格化された1分間あたりのガス体積(cm)を表している。
〔4−4−1.アニール工程の有無による影響〕
図15(a)を読み取ると、原料ガスの流量比(SiH/NH)を減少させると、界面固定電荷密度Qは概ね低下する一方、アニール工程の有無によっては、界面固定電荷密度Qには、ほとんど違いが生じないことがわかる。
他方、図15(b)に示される、界面準位密度Ditを見ると、アニール工程無しの場合には、SiH/NH流量比を変化させても大きな違いはない。
しかし、アニール工程を施した場合には、SiH/NH流量比が25/200以上では、アニール工程無しの場合に比べて、界面準位密度Ditが良好に低減するのに対し、SiH/NH流量比が19/200以下に小さくなると、アニール工程無しの場合と比較して、界面準位密度Ditは低減せず、逆に増大し、その結果、アニール工程無しの場合の界面準位密度Ditに接近することがわかる。
〔4−4−2.界面準位密度Ditと界面固定電荷密度Qとの関係〕
アニール工程有りのサンプルのすべてについて、界面固定電荷密度Qを横軸にし、界面準位密度Ditを縦軸にして両者の値をプロットすると図16のようになる。アニール工程を施した場合の界面準位密度Ditは、界面固定電荷密度Qが1.3e12cm−2〜2.0e12cm−2を閾値として、それより低い値となると増大することがわかる。
このことは、界面固定電荷密度Qが小さいSiNx膜はアニールに対して弱いため、これを裏面パッシベーション型太陽電池の裏面パッシベーション膜として用いるのは困難であることを意味している。すなわち、界面準位密度Ditが劣化、すなわち増大する現象が生じる界面固定電荷密度Qの下限となる閾値は、1.3e12cm−2である。この下限値は、前述の数値モデル計算によって導出した2e11cm−2≦Q≦4e12cm−2の範囲に含まれているので、妥当性を有していることがわかる。
なお、上記のアニール工程を施す場合のアニール条件は、裏面パッシベーション太陽電池の作成プロセスにおいて用いられる一般的なアニール条件と同じであり、例えば700℃から800℃程度の温度でアニール工程が行われる。800℃を超えるアニール温度は、多結晶シリコンバルク内部のキャリア再結合を増大させ、太陽電池の特性を劣化させるので、一般的には用いられず、本実験においても採用しなかった。
〔4−5.実験により導出した好適範囲のまとめ〕
以上のように、試作セルを用いた実験結果より、本願発明者は、太陽電池の諸特性を良好なものとするために、パッシベーション膜とp型シリコン基板の界面における界面固定電荷密度Qの値を、1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2とするように設計することが好ましいことを見出した。
すなわち、Qの好ましい上限値は、パラサイティックシャンティング現象の抑制の限界点、すなわち、およそQ=4e12cm−2であり、Qの好ましい下限値は、必要とされるアニール工程により、界面準位密度Ditを好適に低減させることができる限界点、すなわち、およそQ=1.3e12cm−2である。
上記のセル試作による実験結果に基づいて導出した界面固定電荷密度Qの好適範囲を、前述の数値モデル計算により導出した界面固定電荷密度Qの好適範囲と比較すると、パラサイティックシャンティング現象の抑制のために、数値モデル計算により導出した上限値と、表面再結合速度(SRV)を十分に減少させて、フィールドパッシベーション効果を太陽電池特性に反映させるために、数値モデル計算により導出した下限値とで規定された数値範囲が、特に下限値の増大によって絞り込まれたことになる。
このように、好ましい界面固定電荷密度Qの下限値が、数値モデル計算とセル試作による実験結果とによって1桁異なるのは、前述のように、セル試作による実験結果においては、数値モデル計算では考慮されていなかった、アニール工程による界面準位密度Ditの劣化を考慮する必要が生じたためである。
このようにして、今回のセル試作による実験結果から、本願発明者は、界面固定電荷密度Qが4e12cm−2より大きくなると、パラサイティックシャンティング現象による電極部分近傍での再結合増加により、裏面パッシベーション型太陽電池の諸特性が劣化する一方、界面固定電荷密度Qが1.3e12cm−2より小さくなると、アニール工程により界面準位密度Ditの劣化が生じるので、1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2の数値範囲を、界面固定電荷密度Qの好適範囲として導出したことになる。
なお、界面固定電荷密度Qの下限値および上限値として、上記したより好ましい値、およびさらに好ましい値を任意に組み合わせて得られる範囲も、本発明の範囲内であることはいうまでもない。
〔4−5.製膜条件の最適範囲〕
上記実験において、SiNx膜は平行平板型プラズマ源を用いたプラズマCVD装置を用いて下記の条件で作製された。
圧力:100Pa
基板温度:450℃
RFパワー密度:0.074W/cm
電極間距離:30mm
設定膜厚:100〜130nm
本条件において、特に前記界面固定電荷密度Qの好適範囲1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2であるSiNx膜は、図15(a)の横軸に示すように、SiH/NH流量比を19sccm/200sccm以上25sccm/25sccm以下、より好ましくは、25sccm/200sccm以上25sccm/25sccm以下に設定することにより得られた。
この結果より、界面固定電荷密度Qの好適範囲は、プラズマを利用した気相成長法において、SiH/NH流量比を約1/10以上1以下、より好ましくは、1/8以上1以下に設定すればよいことがわかる。
また、上記方法の他に、プラズマ気相成長時の圧力、RFパワー、放電ギャップ、基板温度を変える、さらに水素を原料ガスに添加することによっても上記組成比を変化させ、Qの値を制御することができる。
また、SiNx膜製膜に先立ち、シリコン表面をアンモニア(NH)プラズマ、または酸素(O)プラズマ、またはNOプラズマに暴露して、20nm以下の表面層を窒化又は酸化することによって、シリコン基板内部に異なる原子構造を作り込み、界面を形成することができる。このような方法によっても界面固定電荷密度Qの値を制御できることが知られている。
これらの方法を用いてQを上記好適範囲に制御することも可能である。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上記実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる他の実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、光電変換素子を構成する太陽電池に関し、より具体的には、例えば裏面パッシベーション型太陽電池に好適に利用することができる。
10 太陽電池(光電変換素子)
31 p型シリコン基板(p型半導体層)
33 電極層(裏面電極)
36 裏面パッシベーション膜(絶縁膜)

Claims (3)

  1. pn接合を有し、光電変換素子を構成する太陽電池であって、
    光受光側とは反対側のp型半導体層の表面上にSiNx膜と裏面電極とが形成されているとともに、前記p型半導体層と前記SiNx膜との界面における界面固定電荷密度Qの値が、1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2の範囲内であることを特徴とする太陽電池。
  2. 光電変換素子を構成する、pn接合を有した太陽電池の製造方法であって、
    光受光側とは反対側のp型半導体層の表面上にSiNx膜を形成するとともに、形成されるSiNx膜の製膜条件を制御することにより、前記p型半導体層と前記SiNx膜との界面における界面固定電荷密度Qの値を、1.3e12cm−2≦Q≦4e12cm−2の範囲内とする電荷密度調整段階を備えることを特徴とする太陽電池の製造方法。
  3. 上記電荷密度調整段階においては、プラズマを利用した気相成長法に用いる各原料ガスの流量比として、SiH/NH流量比を1/10以上1以下に調整することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池の製造方法。
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