JP2012032165A - 磁性体の透磁率計測装置および磁性体の透磁率計測方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】任意のサイズ、形状の磁性体の透磁率を計測でき、生産プロセスライン上のウエハ等において、切断や加工を施すことなく、プローブをスキャンすることにより、透磁率のウエハ内の分布を評価可能である磁性体の透磁率計測装置および磁性体の透磁率計測方法を提供する。
【解決手段】誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体によって挟んだ構造を有し、その導体と地導体あるいは導体に磁性体を絶縁体を介して近接配置する。磁界印加部により導体から磁性体に磁界を印加し、磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を信号計測器により測定する。信号計測器で測定された信号の差分から、磁性体の透磁率を最適化処理により求める。磁性体に対してプローブをスキャンすることによりウエハ内における透磁率の分布を評価可能である。
【選択図】図1
【解決手段】誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体によって挟んだ構造を有し、その導体と地導体あるいは導体に磁性体を絶縁体を介して近接配置する。磁界印加部により導体から磁性体に磁界を印加し、磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を信号計測器により測定する。信号計測器で測定された信号の差分から、磁性体の透磁率を最適化処理により求める。磁性体に対してプローブをスキャンすることによりウエハ内における透磁率の分布を評価可能である。
【選択図】図1
Description
本発明は、磁性体の透磁率計測装置および磁性体の透磁率計測方法に関する。
磁性体の高周波透磁率(通常数MHz〜数GHz)を計測する方法は1950年代ころから多数提案されているが、その全てがコイル(あるいはアンテナ)を用いる方法(例えば、非特許文献1乃至3参照)か伝送線路、導波管等(例えば、非特許文献4参照)を用いる方法に帰着される。一方、材料に短針を接触して抵抗率を測る手法(例えば、非特許文献5参照)は、普及している方法であるが、これは材料の抵抗率を測るもので、透磁率を計測するものではない。
本発明者は、幅100μm程度の微細短冊薄膜のインピーダンスからその透磁率を求める論文をすでに発表している(例えば、非特許文献6参照)。この論文と本発明との相違点は、非特許文献6が細い短冊に限定して透磁率を求めたものであった。しかし上記を含めたすべての透磁率計測方法は磁性体の透磁率評価のために、決まった形状やサイズに加工する必要があるため、材料開発の観点から非効率であった。
そこで本発明者は短冊に限らず、任意のサイズの磁性薄膜に適用可能な計測方法を発明した(特許文献7)。本発明は、試料の形状やサイズに依存せず、インラインでの透磁率の評価手段に関するものである。しかしこの方法では磁性膜内に導電電流を通電するため、電流が磁性体端部へ広がり、磁化困難軸方向のみあるいは磁化容易軸方向のみの透磁率を定量的に評価することは困難であった。
P.A.Calcagno, D.A.Thompson, "Semiautomatic permeance tester for thick magnetic films", Rev. Sci. Instrum, 1975, 46, p.904
B.C.Webb, M.E.Re, C.V.Jahnes and M.A.Russak, "High-frequency permeability of laminated and unlaminated, narrow thin-film magnetic stripes", J. Appl. Phys., 1991, vol 69, p.5611-5615
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H.B.Weir, "Automatic Measurement of Complex Dielectric Constant and Permeability at Microwave Frequencies", Proc IEEE, 1975, 62, p.33
L.B.Valdes, "Resistivity measurements on germanium for transistors", Proc. IRE, 1954, p.420-427
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従来の磁性体の透磁率の計測方法は、ウエハから数mm角程度の試料を透磁率測定用に切り出したり、透磁率測定用のパターンを作成して評価する必要があった。これは大規模な生産ラインにおける磁性体の磁気特性の管理や評価、あるいは系統的な材料開発には非効率であった。さらに磁性体へ探針等により電気的に接触して計測する方法では磁性体内部に導電電流が迂回し、磁性体の様々な方向の透磁率がミックスされた傾向が得られ、簡便な計測方法とは言えなかった。
本発明は、任意のサイズ、形状の磁性体の透磁率を計測でき、生産プロセスライン上のウエハ等において、切断や加工を施すことなく、透磁率を直接評価可能であり、生産ラインや材料開発の現場において、大きく生産性を向上させうる磁性体の透磁率計測装置を提供することを目的とする。また導体と磁性体を絶縁させることにより、導電電流が磁性体に迂回して流れることを防げるためほぼ一方向へのみ励磁することが可能となり、その結果一方向のみの透磁率を正確かつ簡便に計測可能となった。
上記目的を達成するために、本発明に係る磁性体の透磁率計測装置は、誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体とによって挟んだ構造と、前記導体と前記地導体あるいは前記導体と磁性体を絶縁体を間に配置した構造と、前記磁性体に磁界を印加するための磁界印加部と、前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を測定する信号計測器と、前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求める処理手段とを、有することを特徴とする。
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記磁性体は磁性薄膜であることが好ましい。本発明に係る磁性体の透磁率計測装置は、前記導体をつづら折れ構造により構成されていることが好ましい。本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記導体は、スパイラル構造あるいはヘリカル構造であってもよい。
前記導体と地導体とによって挟んだ構造を磁性体に対して移動させ、透磁率の分布を計測すること、あるいは前記磁性体を前記導体と地導体とによって挟んだ構造に対して移動させ、透磁率の分布を計測してもよい。これらにより磁性体の透磁率の平面的な分布が計測できる。
本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記磁界印加部は永久磁石あるいはコイルにより直流磁界を印加し、前記磁性体を励磁させるよう構成されていてもよい。本発明に係る磁性体の透磁率計測装置で、前記信号計測器は前記磁性体からの反射信号の差分を測定してもよい。また、前記導体は2個から成り、前記信号計測器は、一方の導体から信号を前記磁性体へ印加したとき、他方の導体への透過信号の差分を測定してもよい。
このように、本発明は、磁性体表面とプローブを絶縁しながら近接配置させて、磁性体へ直流磁界を印加し、磁界印加の有無におけるインピーダンスの変化から、磁性体の透磁率を最適化処理により求める方法である。
本発明により、任意のサイズの磁性体で透磁率の評価が可能になる。また、製造ラインのウエハそのもので透磁率が簡便に評価可能になり、材料開発の観点および生産ラインの管理において、大きなメリットを有する。
以下、本発明の実施の形態として一実施例を、図1〜図8に基づいて説明する。
図1はプローブの構成を示し、図2はプローブと磁性薄膜の配置を模式的に示した図である。プローブは2本のセミリジッドケーブとミアンダ構造のマイクロストリップ線路で構成されている。マイクロストリップ線路は厚さ0.5 mm,銅箔18 μmのテフロン(登録商標)基板(CGK-500 XP0002,比誘電率 = 5)を使用した。プリント基板加工機(ミッツ製 FP-21型)により幅0.8 mm,線間隔0.8 mm,長さ5.0 mm,3ターンのミアンダ形状とし,特性インピーダンスはほぼ50 Ωとした。ミアンダ線路に流れる高周波電流は幅方向に高周波磁界を励磁するため,図2の場合高周波インピーダンスは,困難軸方向の透磁率に対応する。プローブと磁性薄膜の間にポリビニルフィルム(厚さ10 μm)を挟み,磁性薄膜にミアンダ線路を押し付けることで磁性薄膜の高周波インピーダンスを計測する。
図1はプローブの構成を示し、図2はプローブと磁性薄膜の配置を模式的に示した図である。プローブは2本のセミリジッドケーブとミアンダ構造のマイクロストリップ線路で構成されている。マイクロストリップ線路は厚さ0.5 mm,銅箔18 μmのテフロン(登録商標)基板(CGK-500 XP0002,比誘電率 = 5)を使用した。プリント基板加工機(ミッツ製 FP-21型)により幅0.8 mm,線間隔0.8 mm,長さ5.0 mm,3ターンのミアンダ形状とし,特性インピーダンスはほぼ50 Ωとした。ミアンダ線路に流れる高周波電流は幅方向に高周波磁界を励磁するため,図2の場合高周波インピーダンスは,困難軸方向の透磁率に対応する。プローブと磁性薄膜の間にポリビニルフィルム(厚さ10 μm)を挟み,磁性薄膜にミアンダ線路を押し付けることで磁性薄膜の高周波インピーダンスを計測する。
図3は本計測システムの構成を示した図である。パソコン,ネットワークアナライザ(ADVANTEST R3767CG),プローブ,ヘルムホルツコイル,直流電源から構成されており,プローブは同軸ケーブルを介してネットワークアナライザに接続する。これらの装置から磁性膜の透過係数(S21)を測定し,GP-IBでパソコンにデータを取り込み,最適化処理により複素透磁率を求める。
図4に計測方法のフローチャートを示す。本システムの計測手順は図3のように結線し,ローブと磁性薄膜の間にポリビニルフィルム(厚さ10 μm)を挟んで近接させる。そして,ヘルムホルツコイルの中に入れ約800 Oeの直流磁界を加えて磁性薄膜を飽和させ,ネットワークアナライザでキャリブレーションする。そうすることで,プローブおよびケーブルの電気長,磁性膜の直流的なインピーダンス,非磁性信号等を除去する。その後,直流磁界を解除して磁性膜の寄与分の透過係数(S21)を測定し,(1)式により磁性膜のインピーダンスを求める。図5は評価試料の形状であり,周波数が高くなるほど表皮効果により膜の表面にのみ電流が流れるようになる。図5のように膜厚方向へ電流が表皮効果で偏ることでインピーダンスZが決定されることを仮定し,(2)〜(4)式を用いてNewton-Raphson法により複素透磁率を最適化する。
図6は評価を行ったCoNbZr薄膜(25 mm × 25 mm,厚み0.1 μm)のM-Hループの測定結果である。評価した磁性薄膜はRFスパッタ法で,ガラス基板に0.1 μm成膜した。その後,熱処理を施し,異方性を付与した。図6より,評価した磁性薄膜の異方性磁界Hkは40 Oe程度であった。
図7は本計測方法による高周波インピーダンスの測定結果である。低周波ではインピーダンスは0に近い値を示しており,周波数の増加に伴って表皮効果によりインピーダンスが増加していることが分かる。強磁性共鳴周波数の前後ではリアクタンスが減少し,抵抗分が極大値となっている。
図8は図7のインピーダンス測定結果から最適化処理により求めた透磁率の計測結果である。●及び○が計測値であり,実線及び破線は図6のM-Hループから得られたHk = 40 Oe としたときのLLG方程式と渦電流損を考慮した理論値である。評価結果は大まかに理論値と対応しており,1.8 GHz付近で強磁性共鳴が確認された。多少の誤差の原因は,作成した磁性膜のHcが大きいことやスルーホールによるはんだの若干の盛り上がり等と考えられる。この結果より,磁性薄膜を特性サイズに切り出すことなく,大まかな透磁率が評価できたと考えられる。
ただし,ρは抵抗率,lは試料長さ,wは試料幅,tは膜厚,fは周波数,μrは複素比透磁率である。
1 磁性薄膜
2 プローブ
3 同軸ケーブル
4 ネットワークアナライザ
5 制御用パソコン
6 心線
7 地導体(地導体面)
8 セミリジットケーブル
9 テフロン(登録商標)基板
10 磁界
11 電流
12 基板
13 スルーホール
14 導体(ミアンダ)
15 電源
16 ヘルムホルツコイル
2 プローブ
3 同軸ケーブル
4 ネットワークアナライザ
5 制御用パソコン
6 心線
7 地導体(地導体面)
8 セミリジットケーブル
9 テフロン(登録商標)基板
10 磁界
11 電流
12 基板
13 スルーホール
14 導体(ミアンダ)
15 電源
16 ヘルムホルツコイル
Claims (10)
- 誘電体もしくは絶縁体を導体と地導体とによって挟んだ構造と、
前記導体と前記地導体あるいは前記導体と磁性体を絶縁体を間に配置した構造と、
前記磁性体に磁界を印加するための磁界印加部と、
前記磁界印加部による磁界印加の有無による信号の振幅情報あるいは複素情報の差分を測定する信号計測器と、
前記信号計測器で測定された信号の差分から前記磁性体の透磁率を最適化処理により求める処理手段とを、
有することを特徴とする磁性体の透磁率計測装置。 - 前記磁性体は磁性薄膜であることを特徴とする請求項1記載の磁性体の透磁率計測装置。
- 前記導体がつづら折れ構造を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁性体の透磁率計測装置。
- 前記導体がスパイラル構造を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁性体の透磁率計測装置。
- 前記導体がヘリカル構造を有することを特徴とする請求項1または2記載の磁性体の透磁率計測装置。
- 前記導体と地導体とによって挟んだ構造を磁性体に対して移動させ、透磁率の分布を計測することを特徴とする請求項1、2、3、4または5のいずれかに記載の磁性体の透磁率計測装置。
- 前記磁性体を前記導体と地導体とによって挟んだ構造に対して移動させ、透磁率の分布を計測することを特徴とする請求項1、2、3、4、または5記載の磁性体の透磁率計測装置。
- 前記磁界印加部は永久磁石あるいはコイルにより直流磁界を印加し、前記磁性体を励磁させるよう構成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、または7記載の磁性体の透磁率計測装置。
- 前記信号計測器は前記磁性体による透過信号の差分を測定することを特徴とする請求項1記載の磁性体の透磁率計測装置。
- 前記信号計測器は前記磁性体による反射信号の差分を測定することを特徴とする請求項1記載の磁性体の透磁率計測装置。
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JP2015227866A (ja) * | 2014-05-02 | 2015-12-17 | 学校法人東北学院 | 磁界センサとその製造方法 |
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WO2021200533A1 (ja) * | 2020-03-30 | 2021-10-07 | 国立大学法人東北大学 | 透磁率計測用プローブ及びそれを用いた透磁率計測装置 |
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2010
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