JP2012031269A - 樹脂構造体の生体適合化処理方法、生体適合化処理された樹脂構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】可視光透過性で微小な3次元樹脂構造体に対する加熱処理を不活性ガス中又は真空中で行い、その3次元樹脂構造体を可視光透過性を維持しつつ生体適合化させる生体適合化処理方法。この方法により得られる生体適合化処理された樹脂構造体。
【選択図】図1
Description
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、可視光透過性で微小な3次元樹脂構造体に対する加熱処理を不活性ガス中又は真空中で行うことにより、その3次元樹脂構造体を、可視光透過性を維持しつつ生体適合化させる、樹脂構造体の生体適合化処理方法である。
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る樹脂構造体の生体適合化処理方法において、3次元樹脂構造体が光硬化性樹脂を用いて光造形されたものである。
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る樹脂構造体の生体適合化処理方法において、加熱処理を下記(1)又は(2)に該当する環境下で行う。
(1)ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及び窒素から選ばれる1種以上の不活性気体が90vol.%以上を占める不活性ガス中。
(2)10Pa以下に減圧された真空中。
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係る樹脂構造体の生体適合化処理方法において、加熱処理の条件が以下(3)〜(5)に従うものである。
(3)175℃〜250℃の温度での6時間の加熱である。
(4)3次元樹脂構造体を構成する樹脂のガラス転移点以上の温度での加熱である。
(5)3次元樹脂構造体を構成する樹脂の炭化を招かない加熱条件である。
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、第1発明〜第4発明のいずれかに記載の生体適合化処理方法で処理された3次元樹脂構造体であって、可視光透過性を維持し、かつ生体適合化されたものである、生体適合化処理された樹脂構造体である。
本発明に係る生体適合化処理方法において、処理の対象となる樹脂構造体は、可視光透過性(即ち、透明)で微小な3次元樹脂構造体であり、光造形法等の手法で成形された微細構造を持つ。
3次元樹脂構造体が「微小」であることは、本発明の効果を得るための条件ではなく、3次元樹脂構造体の用途として想定される各種マイクロデバイスの関係から規定しているに過ぎず、従って「微小」の具体的サイズを特段に明示する必要はないが、例えば最長径部の寸法が10cm以下であり、より好ましくは、最長径部の寸法が10cm以下であって、少なくとも一部にx,y,z座標方向の寸法がいずれも1mm未満である成形部分を有するものである。
樹脂構造体としては、元々可視光透過性を有することを条件として、後述する光硬化性樹脂を用いて光造形されたものが代表的であるが、必ずしもこのような樹脂構造体に限定されず、例えば、光硬化性樹脂を含む複合材を構成材料として成形された樹脂構造体も包含される。「光硬化性樹脂を含む複合材」とは、光硬化性樹脂と、シランカップリング剤、両親媒性高分子、ハイドロキシアパタイト等の他種材料とを硬化前に混合してから硬化させた複合材をいう。樹脂構造体としては、更に、光硬化性樹脂を用いた光硬化反応によらずに、公知の各種熱硬化性樹脂を熱硬化させた樹脂構造体や、2種類以上の化合物の反応で硬化させた樹脂構造体も包含される。
光硬化性樹脂とは、未硬化状態では液体であるが、紫外線や可視光線等の光を照射することにより重合が開始され、硬化する樹脂のことを言う。
光造形法とは、液状の光硬化性樹脂に光を照射して硬化させることにより、3次元構造体を作製する手法である。3次元構造体における任意の形状・構造を形成する手法は限定されないが、一般的には、液状の光硬化性樹脂に光を照射して硬化させ、硬化部分の上に新たな液状の樹脂を積層して順次硬化させていくことで、任意の3次元構造体を作製する手法が挙げられる。このような積層法として、光硬化性樹脂をスキージ方式で1層ごとに形成する方式や、光硬化性樹脂の低粘度液をインクジェットにより噴射して1層ごとに形成する方式を例示することができる。又、多光子吸収の利用によって積層工程を省く光造形法も利用することができる。
本発明の生体適合化処理方法は、可視光透過性で微小な3次元樹脂構造体に対して、不活性ガス中又は真空中で加熱処理を行うことにより、その3次元樹脂構造体を、可視光透過性を維持しつつ生体適合化させる方法である。生体適合化処理を行うに当たり、予め3次元樹脂構造体を1時間程度UVランプ等の紫外線で照射して硬化を促進させておくことが、より好ましい。
生体適合化処理方法における加熱処理の条件は、3次元樹脂構造体の可視光透過性を維持しつつ生体適合化させるという目的を達成できる限りにおいて限定されない。3次元樹脂構造体を構成する樹脂の種類ごとに生体適合化を達成できる加熱条件が異なり、しかもガラス転移点や樹脂の炭化を招く加熱条件も異なる。又、一般的に、加熱の温度が高温になるほど加熱時間を短縮できるという関係にある。従って、目的を達成できる加熱処理の条件を一律に規定することは困難である。
(3)175℃〜250℃の温度での6時間の加熱である。
(4)3次元樹脂構造体を構成する樹脂のガラス転移点以上の温度での加熱である。
(5)3次元樹脂構造体を構成する樹脂の炭化を招かない加熱条件である。
(6)175℃以上の温度での24時間以上の加熱時間であること。
(7)200℃以上の温度での6時間以上の加熱時間であること。
(8)3次元樹脂構造体を構成する樹脂のガラス転移点よりも50℃以上高い温度での加熱であること。
生体適合化処理を不活性ガス中で行う場合において、不活性ガスとしては、限定はされないが、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン又は窒素を好ましく用いることができる。あるいは、これらの不活性気体の内の任意の2種類以上の混合ガスを好ましく用いることもできる。これらの1種類の不活性気体又は2種類以上の不活性気体の混合ガスに例えば空気等が僅かに混入していても良いが、その場合でも不活性気体が90vol.%以上を占めることが好ましい。
生体適合化処理された樹脂構造体は、上記の生体適合化処理方法で処理された3次元樹脂構造体であって、その可視光透過性を維持し、かつ生体適合化されたものである。
光硬化性樹脂材料SCR751(ガラス転移温度108℃、株式会社ディーメック製)を用いて、光造形法により、外径16mm、内径15mm、壁面高さ2mm、底面厚さ0.8mmであるウェル形状の透明な細胞培養容器を4個(番号1〜4)成形した。
以上の番号1〜4の細胞培養容器を文字列が印刷された白い紙の上に載置し、文字列に対する透視性を比較した写真が図1である。図1の上段に番号1の細胞培養容器を、図1の下段の左側に番号2の細胞培養容器を、図1の下段の中央に番号3の細胞培養容器を、図1の下段の右側に番号4の細胞培養容器を、それぞれ示す。
次に、番号1〜4の細胞培養容器について、吸光度を用いた透明度の評価を行った。吸光度を使用するのは、細胞培養容器における光吸収成分の濃度が吸光度と比例するからである。吸光度はShimazu製のBioSpec1600で測定し、細胞培養容器の底面(厚さ0.8mm)を測定箇所とした。それぞれの吸光度を図2に示す。図2において、図の右側に「真空」と注記したグラフ線が番号4の細胞培養容器についてのもの、「窒素」と注記したグラフ線が番号3の細胞培養容器についてのもの、「空気」と注記したグラフ線が番号2の細胞培養容器についてのもの、「非加熱」と注記したグラフ線が番号1の細胞培養容器についてのものである。
番号2〜4の細胞培養容器について、同形状の市販の細胞培養容器をコントロールとして、細胞増殖率(%)を用いた生体適合性の評価を行った。
上記の各実施例において、番号3と番号4の細胞培養容器が共に可視光透過性を良好に維持しつつ十分に生体適合化された理由は、直接的には窒素ガス雰囲気中又は真空中で適正な加熱処理に供された点にある。しかし、光硬化性樹脂の加熱処理による無毒化のメカニズム等を考慮すると、「無酸素状態における適正な加熱処理」に供された点に本質的な理由を求めることが可能である。
Claims (5)
- 可視光透過性で微小な3次元樹脂構造体に対する加熱処理を不活性ガス中又は真空中で行うことにより、その3次元樹脂構造体を、可視光透過性を維持しつつ生体適合化させることを特徴とする樹脂構造体の生体適合化処理方法。
- 前記3次元樹脂構造体が光硬化性樹脂を用いて光造形されたものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂構造体の生体適合化処理方法。
- 前記加熱処理を下記(1)又は(2)に該当する環境下で行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂構造体の生体適合化処理方法。
(1)ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及び窒素から選ばれる1種以上の不活性気体が90vol.%以上を占める不活性ガス中。
(2)10Pa以下に減圧された真空中。 - 前記加熱処理の条件が以下(3)〜(5)に従うものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の樹脂構造体の生体適合化処理方法。
(3)175℃〜250℃の温度での6時間の加熱である。
(4)3次元樹脂構造体を構成する樹脂のガラス転移点以上の温度での加熱である。
(5)3次元樹脂構造体を構成する樹脂の炭化を招かない加熱条件である。 - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の生体適合化処理方法で処理された3次元樹脂構造体であって、可視光透過性を維持し、かつ生体適合化されたものであることを特徴とする生体適合化処理された樹脂構造体。
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