JP2012023839A - 静電容量変化型発電装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】入力が小さい場合でも、効率よく発電を行うことのできる静電容量変化型発電装置を提供する。
【解決手段】タイヤ内に配置されて、タイヤの振動により容量が変化する可変電荷蓄積素子と、可変電荷蓄積素子の容量が増加したときに可変電荷蓄積素子に電荷を供給する第1の電荷蓄積素子と、可変電荷蓄積素子の容量が減少したときに可変電荷蓄積素子から供給される電荷を蓄積する第2の電荷蓄積素子とを備えた静電容量変化型発電装置において、前記可変電荷蓄積素子を、固定部材本体に設けられた櫛状の固定側電極と、バネを介してバネ固定部材に取付けられた可動部材と、この可動部材に設けられた櫛状の可動側電極とを備え、可動部を構成する可動部材及び可動側電極の質量とバネのバネ定数が、タイヤ周方向の振動スペクトルの2次ピークの周波数付近になるように設定された可変容量キャパシターから構成した。
【選択図】図6

Description

本発明は、タイヤ内に設置された計測器や通信機などに電力を供給するための静電容量変化型発電装置に関する。
従来、外力により静電容量が変化する可変容量キャパシターを用いて発電を行う静電容量変化型発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図7(a)はその一例を示す図で、この静電容量変化型発電装置50は、外力により静電容量が変化する可変容量キャパシター51と、入力側電圧源52と出力側電圧源53とを備えており、入力側電圧源52と可変容量キャパシター51、及び、可変容量キャパシター51と出力側電圧源53とはそれぞれダイオード54,55により接続されている。入力側電圧源52と出力側電圧源53とは、ともに一定電圧源であり、出力側電圧源53の電圧V2は、入力側電圧源52の電圧V1よりも高く設置されている。
可変容量キャパシター51は、図7(b)に示すように、櫛の歯状に形成されて基板51mに固定される固定電極51aと、一端がバネ固定部51nに固定されたバネ51kの他端側に取付けられて空中に浮いた状態で支持される櫛の歯状に形成された可動電極51bとを備えている。この可変容量キャパシター51では、外力が作用すると、可動電極51bの電極面が固定電極51aに対して同図の矢印に示す方向に相対的に移動する。これにより、固定電極51aの電極面と対向する面積S、すなわち、可変容量キャパシター51の電極面積が変化し、静電容量が変化する。
外力により、可変容量キャパシター51の静電容量が最大値のC0+ΔCとなったときには、入力側電圧源52から可変容量キャパシター51に電荷Q1が供給され、可変容量キャパシター51の電圧はV1=Q1/(C0+ΔC)となる。更に、可変容量キャパシター51の静電容量がC0まで減少すると、可変容量キャパシター51の電圧は出力側電圧源53の電圧V2まで上昇する。可変容量キャパシター51の静電容量が更に減少すると、ダイオード55が導通し、可変容量キャパシター51から出力側電圧源53に電荷が移動し、可変容量キャパシター51の容量が最小値C0−ΔCになった時点で、可変容量キャパシター51に蓄積される電荷は減少してQ2となる。つまり、外力により、可変容量キャパシター51の容量を最大値のC0+ΔCから最小値C0−ΔCに変化させることで、出力側電圧源53には電荷(Q1−Q2)が蓄積される。すなわち、外力により発電を行うことができる。
また、図8に示すような、個人用健康管理機器(Personal Vital Assistant;PVA)の電源として使用される、人体に装着され人体の振動により静電容量が変化する可変容量キャパシターCM1と電力回収回路PC2とを備えた静電容量変化型発電装置(発電チップ)CHIP2が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
可変容量キャパシターCM1は、MEMSプロセスによりシリコンチップから成る基板上に形成された2つの固定電極ST1,ST2と可動電極VT1とを備える。可動電極VT1は、アンカーPN1〜PN4以外はどこにも固定されておらず、発電チップCHIP2上に浮いているので、発電チップCHIP2がある加速度で振動すると、可動電極VT1は慣性力により2つの固定電極ST1,ST2間を振動する。これにより、可動電極VT1と固定電極ST1,ST2との電極間距離が変化し、可変容量キャパシターCM1の静電容量が変化する。この外部の振動による静電容量の変化により、可変容量キャパシターCM1に蓄えられる静電エネルギーが増加する。したがって、この静電エネルギーを電力回収回路PC2により回収して基板上のキャパシターC3を充電すれば、発電電力を蓄積できる。
特開平11−98868号公報 特開2004−24551号公報
しかしながら、従来の静電容量変化型発電装置50では、可変容量キャパシター51の静電容量の変化は入力の大きさに比例するので、入力が小さい場合には電極間の変位量も小さくなり、その結果、十分な発電量を得ることができなかった。
特に、可変容量キャパシターCM1のようにMEMSプロセスを用いて形成されたものは、全体の寸法が、例えば、10mm×10mm×0.5mm(深さ)と非常に小さいため、電極間の変位量を大きくとることができず、そのため、十分な発電量を得ることができないといった問題点があった。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、入力が小さい場合でも、効率よく発電を行うことのできる静電容量変化型発電装置を提供することを目的とする。
本願発明は、タイヤ内に配置されて、タイヤの振動により容量が変化する可変電荷蓄積素子と、前記電荷蓄積素子の容量が増加したときに前記可変電荷蓄積素子に電荷を供給する第1の電荷蓄積素子と、前記可変電荷蓄積素子の容量が減少したときに前記可変電荷蓄積素子から供給される電荷を蓄積する第2の電荷蓄積素子とを備えた静電容量変化型発電装置であって、前記可変電荷蓄積素子が、一方の電極が他方の電極に対して弾性体を介して揺動可能に支持されて、前記タイヤの振動により電極間距離と電極面積のいずれか一方もしくは両方が変化し、かつ、前記タイヤのタイヤトレッドの振動の周波数スペクトルに出現するピークの周波数と同じ共振周波数を有する可変容量キャパシターであることを特徴とする。
このように、可変電荷蓄積素子である可変容量キャパシターにタイヤトレッドの振動の周波数スペクトルに出現するピークの周波数と同じ共振周波数をもたせるようにすれば、入力が小さい場合でも、弾性体を介して支持された電極の変位量を大きくできる。その結果、電極間距離や電極面積を大きく変化させることができるので、効率よく発電を行うことができる。
また、本願発明は、前記ピークの周波数を、タイヤトレッドの周方向振動の周波数スペクトルの100Hz〜1kHzの範囲に出現する2次ピークの周波数としたものである。
タイヤ内面に設置された可変容量キャパシターには、タイヤ周方向振動、タイヤ幅方向振動、タイヤ径方向振動のいずれの振動も作用するが、タイヤ周方向振動が振幅も大きく、かつ、遠心力の影響を受けないので、大きな発電量を得ることができる。
また、発電量は、可動電極の変位量が大きいほど大きく、また、周波数が高いほど大きいので、特に、MEMSプロセスを用いて作製した可変容量キャパシターにおいて発電効率を高めるためには、共振周波数を100Hz以上とすることが好ましい。また、共振周波数が1kHzを超えると、タイヤ周方向振動そのものの大きさ(ピーク値)が小さくなるので、ピークの周波数を、タイヤトレッドの周方向振動の2次ピークの周波数とすることが好ましい。
また、本願発明は、前記可変容量キャパシターが、固定部材と、少なくとも一端が前記固定部材にそれぞれバネを介して取付けられた可動部材と、前記固定部材に設けられた固定側電極と、前記可動部材に前記固定側電極に対向するように設けられた可動側電極とを備え、前記バネがタイヤ周方向に振動するように配置され、かつ、前記可動部材の質量と前記バネのバネ定数とが、前記ピークの周波数となるように設定されていることを特徴とする。
これにより、可動部材をタイヤ周方向振動の2次ピークの周波数で確実に共振させることができるので、大きな発電量を安定して得ることができる。
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
本実施の形態に係る静電容量変化型発電装置の構成を示す図である。 静電容量変化型発電装置の取付け位置を示す図である。 本実施の形態に係る可変容量キャパシターの構成を示す図である。 可変容量キャパシターの動作を説明するための図である。 タイヤ内面振動の周波数スペクトルを示す図である。 静電容量変化型発電装置をタイヤに装着して走行させたときの可変容量キャパシターの静電容量の変化を測定した結果を示す図である。 従来の静電容量変化型発電装置の構成を示す図である。 従来の静電容量変化型発電装置の他の構成を示す図である。
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施の形態に係る静電容量変化型発電装置10の構成を示す図である。
静電容量変化型発電装置10は、第1の電荷蓄積素子11と、可変電荷蓄積素子20と、第2の電荷蓄積素子12と、第1の電荷蓄積素子11と可変電荷蓄積素子20との間に設けられたダイオード13と、可変電荷蓄積素子20と第2の電荷蓄積素子12との間に設けられたダイオード14とを備える。
本例では、第1の電荷蓄積素子11と第2の電荷蓄積素子12として、静電容量が一定の容量一定型のキャパシターを用い、可変電荷蓄積素子20として可変容量キャパシターを用いた。本例の可変容量キャパシターは外力により静電容量が変化するキャパシターである。以下、可変電荷蓄積素子20を可変容量キャパシター20という。
なお、前記電荷蓄積素子11,12としては、キャパシターの他に二次電池(充電式電池)などを用いることができる。
第1の電荷蓄積素子11は可変容量キャパシター20に電荷を供給する電荷供給用のキャパシターで、第2の電荷蓄積素子12は可変容量キャパシター20から電荷を受けとって蓄電する蓄電用のキャパシターである。
可変容量キャパシター20は、図2に示すように、タイヤ30のインナーライナー31のタイヤ気室32側で、かつ、トレッド33の幅方向中心部の裏面側に配置されており、タイヤの振動、具体的には、タイヤのトレッド33の振動により静電容量が変化するキャパシターである。なお、第1の電荷蓄積素子11、第2の電荷蓄積素子12、ダイオード13,14も可変容量キャパシター20と一体に構成されて、例えば、タイヤ30のインナーライナー31のタイヤ気室32側や、インナーライナー31とカーカスプライ34との間のゴム部材中や、サイドウォールのゴム中などの、タイヤ30の内部に設置される。
図3(a),(b)は本発明による可変容量キャパシター20の構成を示す図で、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のA−A断面図である。
可変容量キャパシター20は、固定部材本体21と、複数の固定側電極22と、バネ固定部材23a,23bと、バネ24a,24bと、複数の可動側電極25と、可動部材26とを備える。複数の固定側電極22は固定部材本体21に設けられ、複数の可動側電極25は可動部材26に設けられている。可動部材26は、両端がバネ24a,24bを介してバネ固定部材23a,23bにそれぞれ取付けられている。
固定部材本体21と固定側電極22とバネ固定部材23a,23bとが可変容量キャパシター20の固定部を構成し、可動部材26と可動側電極25とが可動部を構成する。
固定部材本体21は、四角板状の底板21kの周縁部に立設されて枠状を成す4つの直方体状のブロック21a〜21dとを備えた升状の部材である。以下、底板21kと4つのブロック21a〜21dとに囲まれた空間をキャビティ27という。
固定側電極22は、固定部材本体21の互いに対向するブロック21a,21cのキャビティ27側の側面からキャビティ27に向かって突出するように設けられた板状の電極で、固定側電極22の電極面とブロック21a,21cのキャビティ27側の側面とは直交している。また、固定側電極22は、隣接する固定側電極22同士が所定の間隔を隔てて配列されており、全体として、櫛型電極を形成している。
本例では、ブロック21a,21cの延長方向、すなわち、固定側電極22の電極面に垂直な方向がタイヤ周方向と平行な方向、固定側電極22の突出方向がタイヤ幅方向と平行な方向になるように、可変容量キャパシター20をタイヤ踏面の裏面側に取付けるようにしている。したがって、底板21kに垂直な方向がタイヤ径方向となる。
バネ固定部材23a,23bは、キャビティ27の内部の固定側電極22が設けられていない側のブロック21b,21d側に、底板21kから上部に突出するように設けられた直方体状のブロックで、このバネ固定部材23a,23bに、バネ24a,24bがそれぞれ取付けられる。
バネ24a,24bは、それぞれ、固定部材取付部24mと可動側取付部24nとバネ本体24kとを備えた板状の部材で、固定部材取付部24mは枠状に形成されてバネ固定部材23a,23bの周縁部に取付けられる。可動側取付部24nはタイヤ幅方向に平行な方向に延長する板材で、バネ24a,24bの両端に取付けられる。バネ本体24kは固定部材取付部24mのタイヤ幅方向端部からタイヤ周方向に延長する水平片と、一端が垂直片の端部に接続され他端が可動側取付部24nに接続されるタイヤ幅方向に平行な垂直片とを有するL字型に形成されて、可動部材26をバネ固定部材23a,23bに対してタイヤ周方向に揺動可能に支持する。
可動部材26は長手方向がタイヤ周方向である直方体状のブロックから成り、可動側電極25は、固定部材本体21のブロック21a,21cに対向する面であるタイヤ幅方向に垂直な面から固定側電極22に向かって突出するように形成されている。可動側電極25の電極面と可動部材26のタイヤ幅方向に垂直な面とは直交している。すなわち、可動側電極25の電極面に垂直な方向がタイヤ周方向と平行な方向となる。また、可動側電極25も、固定側電極22と同様に、隣接する可動側電極25同士が所定の間隔を隔てて配列されており、全体として、櫛型電極を形成している。
図4の中央の図にも示すように、外力が作用していない状態では、バネ本体24kが伸縮していない状態で、かつ、可動側電極25が隣接する2つの固定側電極22のほぼ中間に位置するように、可動部材26を、バネ24a,24bを介して、バネ固定部材23a,23bに取付ける。固定側電極22と可動側電極25とにより、キャパシターを形成することができる。このキャパシターの外力が作用していない状態での静電容量は、固定側電極22と可動側電極25との対向している部分の面積をS、固定側電極22と可動側電極25との距離をdとすると、可変容量キャパシター20の静電容量は、C=ε0・εr・(S/d)となる(ε0;真空の誘電率、εr;電極間物質の比誘電率)。
タイヤの振動がない場合、固定側電極22と可動側電極25との距離dは一定で、この状態を以下、中立状態という。なお、本例では、電極間に誘電体を挿入していないので、εr≒1である。
可変容量キャパシター20にタイヤ径方向の入力が作用すると、固定側電極22と可動側電極25との距離dが変化し、可変容量キャパシター20の静電容量は変化する。このとき、入力に可動部材26の質量とバネ24a,24bのバネ定数とにより決まる固有共振周波数が含まれていると、可動部材26は、固定部材本体21に対して、外力が作用していないときの位置を中心として、前記固有共振周波数で共振する。
例えば、図4の左側の図に示すように、可動部材26が固定部材本体21に対して右側に移動して固定側電極22aとその右側にある可動側電極25aとの距離がd+Δd(Δd<d)となった場合には、可動側電極25aとその右側にある固定側電極22bとの距離はd−Δdとなるので、固定側電極22a、可動側電極25a、及び、固定側電極22bから成るキャパシターの静電容量は、外力が作用していない状態、すなわち、中立状態での静電容量よりも大きくなる。逆に、図4の右側の図に示すように、可動部材26が固定部材本体21に対して左側に移動して、固定側電極22aとその右側にある可動側電極25aとの距離がd−Δdとなった場合には、可動側電極25aとその右側にある固定側電極22bとの距離はd+Δdとなるので、この場合も、静電容量は中立状態の静電容量よりも大きくなる。すなわち、可変容量キャパシター20の静電容量の大きさは中立状態で最小値Cminとなり、可動部材26が固定部材本体21に対して最も大きく振れたときに最大値Cmaxとなる。
本例では、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスを用いて、電極の1枚当たりの厚みが約0.5mm、電極間距離が約100μmの櫛型電極を有する可変容量キャパシター20を形成するとともに、可動側電極25と可動部材26とから成る可動部の共振周波数が、タイヤトレッドの振動の周波数スペクトルに出現するピークの周波数と同じ共振周波数を有するように、可動側電極25及び可動部材26の質量とバネ24a,24bのバネ定数とを設定している。
図5は、タイヤ30のインナーライナー31のタイヤ気室32側のタイヤ幅方向中心に加速度センサーを設置して計測したタイヤトレッドの振動の周波数スペクトルの一例を示す図で、同図の太い実線で示す曲線Gxがタイヤ周方向の振動スペクトル、同図の一点鎖線で示す曲線Gyがタイヤ幅方向の振動スペクトル、同図の細い実線で示す曲線Gzがタイヤ径方向の周方向の振動スペクトルである。
本例では、前記可動部の共振周波数を、同図の矢印で示した、タイヤ周方向の振動スペクトルの、100Hz〜1kHzの範囲に出現する2次ピークの周波数fx2(ここでは、500Hz付近)になるように、可動部の質量とバネ24a,24bのバネ定数とを設定した。
このように、走行中のタイヤに取付けられた可変容量キャパシター20を周波数fx2で共振させるようにすれば、タイヤの振動が小さい場合でも電極間の変位量を大きくとることができる。また、共振周波数が高いので、単位時間当たりの電荷の移動量も多くなる。したがって、十分な発電量を得ることができる。
次に、静電容量変化型発電装置10の動作について図1及び図4を参照して説明する。
図4の右側もしくは左側の図に示すように、タイヤの振動により、可動部材26が固定部材本体21に対して大きく振れて可動側電極25と左右いずれかの固定側電極22との距離が小さくなると、可変容量キャパシター20の静電容量が最大値Cmaxになる。すなわち、可変容量キャパシター20の電圧Vrは第1の電荷蓄積素子11の電圧V1よりも低くなり、その結果、ダイオード13が導通して、第1の電荷蓄積素子11から可変容量キャパシター20にQ=Cmax・V1の電荷が供給される。なお、Vrは第2の電荷蓄積素子12の電圧V2よりも低いので、ダイオード14には電流が流れない。
可変容量キャパシター20にQ=Cmax・V1の電荷が供給されると、可変容量キャパシター20の電圧Vrは第1の電荷蓄積素子11の電圧V1まで上昇する。その結果、ダイオード13には電流が流れなくなるので、電荷Qは可変容量キャパシター20に保持される。
次に、可動部材26が逆方向に移動して、図4の中央の図に示すように、可動側電極25と左右の固定側電極22との距離が同じになると、可変容量キャパシター20の静電容量は最小値Cminになる。これにより、可変容量キャパシター20の電圧は更に上昇して、第2の電荷蓄積素子11の電圧V2よりも高くなる。すなわち、Vr=(Q/Cmin)>V2となる。その結果、ダイオード14が導通して、可変容量キャパシター20から第2の電荷蓄積素子12にQ’=Cmin・(Vr−V2)の電荷が移動する。そして、第2の電荷蓄積素子12の電圧V2が可変容量キャパシター20と等しくなった時点で、ダイオード14に電流が流れなくなり、電荷の移動は止まる。
そして、可動部材26が固定部材本体21に対して、図4の中央の図から、図4の左側もしくは右側の位置まで更に移動すると、可変容量キャパシター20の静電容量は上昇する。その後、可変容量キャパシター20の静電容量が最大値Cmaxになる。これにより、可変容量キャパシター20の電圧Vrは第1の電荷蓄積素子11の電圧V1よりも低くなり、その結果、ダイオード13が導通して、第1の電荷蓄積素子11から可変容量キャパシター20に電荷が供給される。
このような動作を繰り返すことにより、電荷が第1の電荷蓄積素子11から第2の電荷蓄積素子12に移動し、第2の電荷蓄積素子12に蓄積される。すなわち、タイヤの振動によって可変容量キャパシター20の静電容量を変化させることにより、発電を行うことができる。前記の1サイクルにおいて、可変容量キャパシター20に蓄えられるエネルギーΔEgは、以下の式(1)で表わせる。
Figure 2012023839
すなわち、左右のキャパシターである第1及び第2の電荷蓄積素子11,12の電圧変化を無視して単純化すれば、可変容量キャパシター20は、電荷Qを保存して、電極間距離を広げただけ発電している。
本例では、可変容量キャパシター20を500Hzという高い周波数で共振させるようにしているので、単位時間当たりの電荷の移動量も多くなる。したがって、十分な発電量を得ることができる。
このように、本実施の形態では、タイヤ30内に配置されて、タイヤの振動により容量が変化する可変電荷蓄積素子20と、可変電荷蓄積素子20の容量が増加したときに可変電荷蓄積素子20に電荷を供給する第1の電荷蓄積素子11と、可変電荷蓄積素子20の容量が減少したときに可変電荷蓄積素子20から供給される電荷を蓄積する第2の電荷蓄積素子12とを備えた静電容量変化型発電装置10において、可変電荷蓄積素子20を、固定部材本体21に設けられた櫛状の固定側電極22と、バネ24a,24bを介してバネ固定部材23a,23bに取付けられた可動部材26と、この可動部材26に設けられた櫛状の可動側電極25とを備えた可変容量キャパシターから構成するとともに、可動部を構成する可動部材26及び可動側電極25の質量とバネ24a,24bのバネ定数を、タイヤ周方向の振動スペクトルの2次ピークの周波数である500Hz付近になるように設定したので、タイヤの振動が小さい場合でも電極間の変位量を大きくとることができる。また、共振周波数が高いので、単位時間当たりの電荷の移動量も多くなる。したがって、十分な発電量を得ることができる。
なお、前記実施の形態では、静電容量変化型発電装置10の共振周波数を500Hzとしたが、これに限るものではなく、タイヤトレッドの周波数スペクトルに出現する周波数であればよい。このとき、静電容量変化型発電装置10の共振周波数を、タイヤトレッドの周方向振動の周波数スペクトルの100Hz〜1kHzの範囲に出現する2次ピークの周波数とすれば、特に好ましい。
また、前記例では、可変容量キャパシター20の固定部であるバネ固定部材23a,23bと可動部材26とを連結するバネ24a,24bがタイヤ周方向に振動するように可変容量キャパシター20を配置したが、タイヤ幅方向に振動するように配置してもよいし、タイヤ径方向に振動するように配置してもよい。但し、タイヤ幅方向の入力はタイヤ周方向に比較して小さく、また、タイヤ径方向では、バネ24a,24bが遠心力の影響を受けるので、バネ24a,24bは、本例のように、タイヤ周方向に振動するように配置することが好ましい。
また、バネ固定部材を一つとし、可動部材26を片持ち梁としてもよいが、片持ち梁の構造は両持ち梁の構造に対して耐久性の点で劣るだけでなく、可動部材26を安定して一方向(ここでは、タイヤ周方向)に確実に変位させるためには、本例のように、両持ち梁の構造とすることが好ましい。
MEMSプロセスを用いて作製した静電容量変化型発電装置をタイヤのインナーライナーのタイヤ気室側のタイヤ幅方向中心に取り付けたタイヤを車両に搭載し、30km/hrの速度で走行させて可変容量キャパシターの静電容量の変化を測定した結果を図6に示す。
タイヤサイズは225/55R17で、静電容量変化型発電装置のサイズは10mm×10mm×1mm(厚さ)である。
静電容量変化型発電装置としては、可動部材を支持する板バネの厚さを変化させることにより、共振周波数が400Hzと500Hzの2種類作製した。静電容量変化が大きいほど発電能力が高い。
図6から明らかなように、同図の細い実線で示した共振周波数がタイヤ周方向の振動スペクトルの2次ピークの周波数fx2=500Hzである静電容量変化型発電装置の方が共振周波数が2次ピークの周波数400Hzである静電容量変化型発電装置よりも静電容量変化が大きいことが確認された。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
本発明の静電容量変化型発電装置は、入力が小さい場合でも効率よく発電を行うことができるので、小型で効率のよいタイヤ内発電装置を得ることができる。
10 静電容量変化型発電装置、11 第1の電荷蓄積素子、
12 第2の電荷蓄積素子、13,14 ダイオード、
20 可変電荷蓄積素子(可変容量キャパシター)、21 固定部材本体、
22 固定側電極、23a,23b バネ固定部材、24a,24b バネ、
25 可動側電極、26 可動部材、27 キャビティ、
30 タイヤ、31 インナーライナー、32 タイヤ気室、33 トレッド、
34 カーカスプライ。

Claims (3)

  1. タイヤ内に配置されて、タイヤの振動により容量が変化する可変電荷蓄積素子と、前記可変電荷蓄積素子の容量が増加したときに前記可変電荷蓄積素子に電荷を供給する第1の電荷蓄積素子と、前記可変電荷蓄積素子の容量が減少したときに前記可変電荷蓄積素子から供給される電荷を蓄積する第2の電荷蓄積素子とを備えた静電容量変化型発電装置において、
    前記可変電荷蓄積素子が、一方の電極が他方の電極に対して弾性体を介して揺動可能に支持されて、前記タイヤの振動により電極間距離と電極面積のいずれか一方もしくは両方が変化し、かつ、前記タイヤのタイヤトレッドの振動の周波数スペクトルに出現するピークの周波数と同じ共振周波数を有する可変容量キャパシターであることを特徴とする静電容量変化型発電装置。
  2. 前記ピークの周波数は、タイヤトレッドの周方向振動の周波数スペクトルの100Hz〜1kHzの範囲に出現する2次ピークの周波数であることを特徴とする請求項1に記載の静電容量変化型発電装置。
  3. 前記可変容量キャパシターが、
    固定部材と、
    少なくとも一端が前記固定部材にそれぞれバネを介して取付けられた可動部材と、
    前記固定部材に設けられた固定側電極と、
    前記可動部材に前記固定側電極に対向するように設けられた可動側電極とを備え、
    前記バネがタイヤ周方向に振動するように配置され、かつ、前記可動部材の質量と前記バネのバネ定数とが、前記ピークの周波数となるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の静電容量変化型発電装置。
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